JPWO2004108860A1 - 新燃料製造プラント及びこれに用いられる海水淡水化装置 - Google Patents
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Abstract
本発明の目的は、逆浸透膜方式と同等の海水取水量で蒸発法による造水装置の適用を可能にし、プラント設置場所の自由度が高く、逆浸透膜法式に比べ造水中の塩分濃度を低減し、また、メンテナンスコストが安価な蒸発法による造水装置の利点をも享受できる新燃料製造プラント及びこれに用いられる海水淡水化装置を提供することにある。新燃料製造部(100)は、原料から合成ガスを製造し、製造された合成ガスから新燃料を合成するとともに、これらの過程から出る余剰熱を回収して蒸気を発生する排熱回収ボイラ(5,8)を有する。排熱利用部(200)は、排熱回収ボイラ(5,8)で発生する蒸気で駆動する蒸気タービン(9,12,17,18,21)を含んでいる。開放循環式冷却水供給部(300)は、蒸気タービンの排気用を含むプラントの冷却水を供給するとともに、蒸発法を用いて海水を淡水化して、冷却水の補給用に淡水を供給する海水淡水化装置(38,39)を有する。海水淡水化装置38,39で製造される淡水の凝縮に開放循環式冷却水供給部から供給される冷却水を用いる。
Description
本発明は、新燃料を製造する新燃料製造プラント及びこれに用いられる海水淡水化装置に関する。
最近、ガスツーリキッド(GTL)やジメチルエーテル(DME)などの新燃料を製造するプラントが注目されている。新燃料製造プラントとしては、例えば、特開平10−195008号公報に記載のように、天然ガスを原料としてジメチルエーテルを製造するものが知られている。
GTL,DMEなど新燃料製造プラント(以下、「新燃料製造プラント」又は、単に「プラント」と称する)では、燃料合成に必要な合成ガス製造に炭化水素等を原料とした部分酸化法や自己熱改質法(オートサーマルリフォーミング)等が用いられる。これら合成ガス製造法では、反応/改質炉の出口の合成ガスは非常な高温(1200〜1500℃)となる。一方後続の燃料合成のため、合成ガスを燃料合成反応器入り口で合成反応温度(200〜300℃)に冷却する必要があり、また燃料合成反応自体も発熱反応である。このことから、新燃料製造プラントでは必然的に多量の余剰熱が発生し、排熱ボイラを設置して高圧,中圧蒸気を発生させ熱回収を行う必要がある。発生した高圧,中圧蒸気は、プラント内の圧縮機,ポンプ,発電機等の駆動用蒸気タービンに用いることができる。
蒸気タービンを用いるシステムでは、蒸気の復水のため、多量の冷却水を必要とする。従来、大量の冷却水を必要とする設備では、主として経済的理由から海水を冷却水として用いる例が多かった。しかしながら、最近の環境問題の高まりから、海水の有料化や、海水冷却水温度差(海水の戻り温度と供給温度の差)の制限などの規制により海水を冷却水として使用するメリットが無くなってきつつある。海水冷却水温度差の制限により、冷却水必要量が従来の3〜5倍となる場合もあり、この場合は巨大な取水設備を設けなければならず、経済的ではなくなる場合が多い。このため、プラントの冷却水システムとして、冷却塔を設けた開放式循環冷却水システムを採用し、冷却塔からの蒸発、飛散、及び強制ブローによる損失のみを海水の淡水化で補填することによって海水使用量の最小化が計られている。
この場合、海水淡水化方式としては、残留塩分濃度が高い、海水の性状によっては設置出来ない場合がある、装置費の約1/3を占める膜の頻繁な交換が必要なためメンテナンス費が嵩むなどの問題点はあるものの、海水取水量の少なさのため、逆浸透膜方式が最初に検討される。余剰低圧蒸気の有力使用先候補でもある多段フラッシュ法や多重効用法などの蒸発法は逆浸透膜方式に比べて、従来許されていた海水の取水/放流温度差10℃の場合でも同一造水量に対し海水取水量が3〜4倍、取水/放流温度差がそれ以下に制限されればさらに多量の取水が必要となるため検討の対象外となっている。
本発明の目的は、逆浸透膜方式と同等の海水取水量で蒸発法による造水装置の適用を可能にし、プラント設置場所の自由度が高く、逆浸透膜法式に比べ造水中の塩分濃度を低減し、また、メンテナンスコストが安価な蒸発法による造水装置の利点をも享受できる新燃料製造プラント及びこれに用いられる海水淡水化装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、原料から合成ガスを製造し、製造された合成ガスから新燃料を合成するとともに、これらの過程から出る余剰熱を回収して蒸気を発生する排熱回収ボイラを有する新燃料製造プラントにおいて、前記排熱回収ボイラで発生する蒸気で駆動する蒸気タービンを含む排熱利用部と、この蒸気タービンの排気用を含むプラントの冷却水を供給する開放循環式冷却水供給部及びこの開放循環式冷却水の補給用に淡水を供給する蒸発法を用いた海水淡水化装置を備え、この海水淡水化装置で製造される淡水の凝縮に前記開放循環式冷却水供給部から供給される冷却水を用いるようにしたものである。
かかる構成により、逆浸透膜方式と同等の海水取水量で造水でき、逆浸透膜方式に比べ造水中の残留塩分濃度が少なくメンテナンスコストの安い冷却水の供給が可能となる。
また、上記目的を達成するために、本発明は、蒸発法を用いて海水を淡水化して、淡水を供給する海水淡水化装置において、この海水淡水化装置で製造される淡水の凝縮に開放循環式冷却水供給部から供給される冷却水を用いるようにしたものである。
かかる構成により、逆浸透膜方式と同等の海水取水量で造水でき、逆浸透膜方式に比べ造水中の残留塩分濃度が少なくメンテナンスコストの安い冷却水の供給が可能となる。
蒸気タービンを用いるシステムでは、蒸気の復水のため、多量の冷却水を必要とする。従来、大量の冷却水を必要とする設備では、主として経済的理由から海水を冷却水として用いる例が多かった。しかしながら、最近の環境問題の高まりから、海水の有料化や、海水冷却水温度差(海水の戻り温度と供給温度の差)の制限などの規制により海水を冷却水として使用するメリットが無くなってきつつある。海水冷却水温度差の制限により、冷却水必要量が従来の3〜5倍となる場合もあり、この場合は巨大な取水設備を設けなければならず、経済的ではなくなる場合が多い。このため、プラントの冷却水システムとして、冷却塔を設けた開放式循環冷却水システムを採用し、冷却塔からの蒸発、飛散、及び強制ブローによる損失のみを海水の淡水化で補填することによって海水使用量の最小化が計られている。
この場合、海水淡水化方式としては、残留塩分濃度が高い、海水の性状によっては設置出来ない場合がある、装置費の約1/3を占める膜の頻繁な交換が必要なためメンテナンス費が嵩むなどの問題点はあるものの、海水取水量の少なさのため、逆浸透膜方式が最初に検討される。余剰低圧蒸気の有力使用先候補でもある多段フラッシュ法や多重効用法などの蒸発法は逆浸透膜方式に比べて、従来許されていた海水の取水/放流温度差10℃の場合でも同一造水量に対し海水取水量が3〜4倍、取水/放流温度差がそれ以下に制限されればさらに多量の取水が必要となるため検討の対象外となっている。
本発明の目的は、逆浸透膜方式と同等の海水取水量で蒸発法による造水装置の適用を可能にし、プラント設置場所の自由度が高く、逆浸透膜法式に比べ造水中の塩分濃度を低減し、また、メンテナンスコストが安価な蒸発法による造水装置の利点をも享受できる新燃料製造プラント及びこれに用いられる海水淡水化装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、原料から合成ガスを製造し、製造された合成ガスから新燃料を合成するとともに、これらの過程から出る余剰熱を回収して蒸気を発生する排熱回収ボイラを有する新燃料製造プラントにおいて、前記排熱回収ボイラで発生する蒸気で駆動する蒸気タービンを含む排熱利用部と、この蒸気タービンの排気用を含むプラントの冷却水を供給する開放循環式冷却水供給部及びこの開放循環式冷却水の補給用に淡水を供給する蒸発法を用いた海水淡水化装置を備え、この海水淡水化装置で製造される淡水の凝縮に前記開放循環式冷却水供給部から供給される冷却水を用いるようにしたものである。
かかる構成により、逆浸透膜方式と同等の海水取水量で造水でき、逆浸透膜方式に比べ造水中の残留塩分濃度が少なくメンテナンスコストの安い冷却水の供給が可能となる。
また、上記目的を達成するために、本発明は、蒸発法を用いて海水を淡水化して、淡水を供給する海水淡水化装置において、この海水淡水化装置で製造される淡水の凝縮に開放循環式冷却水供給部から供給される冷却水を用いるようにしたものである。
かかる構成により、逆浸透膜方式と同等の海水取水量で造水でき、逆浸透膜方式に比べ造水中の残留塩分濃度が少なくメンテナンスコストの安い冷却水の供給が可能となる。
図1は、本発明の一実施形態による新燃料製造プラントの構成図である。
以下、図1を用いて、本発明の一実施形態による新燃料製造プラントの構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による新燃料製造プラントの構成図である。
本実施形態による新燃料製造プラントは、新燃料製造部100と、排熱利用部200と、冷却水供給部300とから構成されている。新燃料製造部100は、原料から新燃料を製造するとともに、排熱を用いて蒸気を発生する。排熱利用部200は、新燃料製造部100で発生した蒸気を用いて、蒸気タービンを駆動し、回転機械等を駆動する。冷却水供給部300は、排熱利用部200の蒸気タービンの復水器で使用する冷却水を供給する。
新燃料製造部100は、空気圧縮機1と、空気分離装置2と、酸素昇圧装置3と、反応/改質炉4と、排熱回収ボイラ5,8と燃料合成反応器7等で構成されている。
反応/改質炉4には、配管50から原料が供給される。原料としては、石炭,石油,天然ガス等の炭化水素や、バイオマスや廃プラスチック等の使用可能な原料が供給される。なお、この例では天然ガスを原料としている。また、図示はしていないが、これら原料に加えて蒸気、炭酸ガス等を加えることもある。また、反応/改質炉4には、空気圧縮機1で空気を圧縮し、空気分離装置2にて空気を分離し、酸素昇圧装置3で昇圧された酸素が配管51を経て供給される。反応/改質炉4では、配管50から供給された原料ガスと、配管51から供給された酸素とにより、部分酸化や自己熱改質法(オートサーマルリフォーミング)等により、主として水素と一酸化炭素よりなる合成ガスを製造する。製造された合成ガスは、配管52から取り出される。
反応/改質炉4で製造された高温の合成ガスは、排熱回収ボイラ5に供給され、蒸気(ここでは、高圧蒸気)を発生させることによって減温されて、燃料合成反応器7に供給される。燃料合成反応器7において、合成ガスは触媒の働きにより新燃料に合成される。このとき発生した反応熱は、排熱回収ボイラ8により蒸気(ここでは、中圧蒸気)を発生させることによって回収される。燃料合成反応器7で合成された新燃料及び未反応ガス等は、配管53を経て、後続の液化/精製工程に送られ液化/精製される。なお、燃料合成反応の反応熱は、図示するように反応器を出たあと反応生成物から回収される場合と、反応器内から直接回収される場合がある。
これら合成ガス製造法では、反応/改質炉4の出口の合成ガスは非常な高温となる。一方、後続の燃料合成反応器7における燃料合成反応は発熱反応であり、燃料合成反応器7の入り口では合成ガスを合成反応に適した温度まで冷却する必要がある。このことから、新燃料製造プラントでは多量の余剰熱が発生するため、排熱ボイラ5,8を設置して高圧,中圧蒸気を発生して熱回収を図っている。
発生した高圧,中圧蒸気は、排熱利用部200において、プラント内の圧縮機,ポンプ,発電機等の駆動用蒸気タービンに用いられるが、低圧蒸気は燃料合成反応ガス液化/精製装置の一部のリボイラー用熱源、ボイラ給水脱気器用熱源等しか使用先が無く、余り気味である。また、蒸気タービンを効率よく使用するため、また一方では低圧蒸気の使用先が少ないため、蒸気バランス上復水タービンを多く用いると、それに応じて蒸気の復水のため、多量の冷却水が必要となる。
次に、排熱利用部200について説明する。排熱利用部200は、高圧蒸気系統と、中圧蒸気系統と、低圧蒸気系統から構成される。
高圧蒸気系統は、排熱回収ボイラ5,高圧ボイラ6,高圧蒸気ヘッダー54より構成され、排熱回収ボイラ5で発生した高圧蒸気は、原料空気圧縮機1の駆動用蒸気タービン9,酸素昇圧装置3の駆動用蒸気タービン12等で使用される。それぞれの駆動用蒸気タービン9,12の排気は、復水器10,13等でプラント循環冷却水により冷却され、復水移送ポンプ11,14等により脱気器25に戻る。高圧ボイラ給水は脱気器25より抜き出され、高圧ボイラ給水ポンプ27で所定の圧力まで昇圧されて排熱回収ボイラ5,高圧ボイラ6に供給される。また、中圧ボイラ給水は脱気器25より抜き出され、中圧ボイラ給水ポンプ26で所定の圧力まで昇圧されて排熱回収ボイラ8に供給される。なお、蒸気バランス上不足する高圧蒸気は、高圧ボイラ6により高圧蒸気ヘッダー54に供給される。
中圧蒸気系統は、排熱回収ボイラ8,中圧蒸気ヘッダー55より構成され、排熱回収ボイラ8で発生した中圧蒸気は、ポンプ駆動用蒸気タービン17,プロセスガス圧縮機駆動用蒸気タービン18,21等で使用される。蒸気バランスに基づき、ポンプ駆動用蒸気タービン17とプロセスガス圧縮機駆動用蒸気タービン18等は背圧タービンとし、低圧蒸気を低圧蒸気ヘッダー56に供給する。プロセスガス圧縮機駆動用蒸気タービン21は復水タービンとする。蒸気バランスに基づき、プロセスガス圧縮機駆動用蒸気タービン21等の排気は、復水器22等でプラント循環冷却水により冷却され、復水移送ポンプ23等により脱気器25に戻る。
ここで、蒸気タービン18としては、復水タービンを使用することも可能である。しかし、ブラインヒーター40での低圧蒸気使用量を考慮すると、プロセスガス圧縮機駆動用蒸気タービン18に復水タービンを用いると低圧蒸気の供給量が十分でないため、背圧タービンを用いて、低圧蒸気の供給量増加を図るようにしている。
また、中圧蒸気系統は、ガスタービン発電機36と、ガスタービン排熱ボイラ37とを備えている。ガスタービン排熱ボイラ37で中圧蒸気を発生させ、中圧蒸気ヘッダー55に供給している。
低圧蒸気系統は、低圧蒸気ヘッダー56より構成され、ポンプ駆動用蒸気タービン17等より受け入れた低圧蒸気をリボイラー47,脱気器25等に供給するとともに、ブラインヒーター40に供給され、蒸発法による海水淡水化装置の熱源として利用される。この場合、蒸発法による海水淡水化装置の造水率を調整することにより余剰蒸気は零としている。
次に、冷却水供給部300について説明する。冷却水供給部300は、プラント開放循環式冷却水系統と、造水系統から構成される。
プラント開放循環式冷却水系統は、冷却塔34,冷却水循環ポンプ35,冷却水循環配管59より構成される。冷却水は、冷却水循環配管59を経て、復水器10,13,22等に供給される。復水器10,13,22等で熱交換して温度が上昇した冷却水は、冷却塔34で大気により冷却されることで温度を下げ、冷却水循環ポンプ35で昇圧されて系内を循環する。冷却塔34で大気冷却により一部蒸発することで失われた冷却水は、造水系統より補給される。
造水系統は、蒸発法のうち多段フラッシュ法を用いている。造水系統は、多段フラッシュ式造水装置放熱部38,多段フラッシュ式造水装置熱回収部39,ブラインヒーター40,海水/ブライン熱交換器41,脱気槽42,ブライン循環ポンプ43,真空発生装置44より構成されている。
多段フラッシュ式造水装置放熱部38は、循環ブラインから蒸発した蒸気を冷却、凝縮させ淡水を回収する。生産された脱塩水は一旦脱塩水タンク31に貯蔵され、脱塩水供給ポンプ32でプラント循環冷却水系の補給水として供給される。多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として、配管66から供給されるプラント循環冷却水を用いる。多段フラッシュ式造水装置放熱部38より出た冷却水は、配管63により冷却塔34に戻される。
海水/ブライン熱交換器41は、配管60から供給される海水と、配管61から排出される放出ブラインの熱交換を行い、ブラインの放流温度を下げるとともに、供給海水への熱回収を計る。海水/ブライン熱交換器41を経た海水は、脱気槽42で脱気された後、配管65により、配管64で循環される低温循環ブラインに供給される。
新たに海水62を補給された低温循環ブライン64は、ブライン循環ポンプ43で昇圧され、多段フラッシュ式造水装置熱回収部39に導入される。ここで、低温循環ブライン64は、高温循環ブラインより蒸発した蒸気を冷却凝縮させるとともに熱回収して自らの温度を上昇させる。
ブラインヒーター40で低圧蒸気により更に昇温されたブラインは高温循環ブライン67となり、中圧蒸気を用いた真空発生装置44により低圧となった多段フラッシュ式造水装置熱回収部39及び多段フラッシュ式造水装置放熱部38の各段(ステージ)に順次導入されてフラッシュする。高温循環ブライン67は、各ステージでフラッシュすることにより順次濃縮,降温されて、多段フラッシュ式造水装置放熱部38より配管61から一部系外にブローされ、残りは低温循環ブライン64として再循環される。
なお、造水系統に用いる蒸発法は、上述した多段フラッシュ法に限らず、多重効用法を用いることもでき、さらに、多段フラッシュ法と多重効用法を組み合わせたものを用いることもできる。
以上説明した本実施形態による新燃料製造プラントにおいて、第1の特徴は、多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として、配管66から供給されるプラント循環冷却水を用いることにある。例えば、造水系統において、750t/時の淡水を製造する場合、従来の逆浸透膜法による海水淡水化装置では、最も淡水回収率の高い部類の装置で、必要とされる淡水の約2倍の1500t/時の海水を取水する必要がある。一方、蒸発法では海水冷却水温度差を10℃として、逆浸透膜法の4倍の海水取水量が必要であるとすると、従来の蒸発法による海水淡水化装置では6000t/時の海水取水量となり、このうち多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として使用される海水は4500t/時、造水に必要な海水量は1500t/時となる。ここで、多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として、配管66から供給されるプラント循環冷却水を用いると、配管60から取水する海水の量Q1は1500t/時と逆浸透法による海水淡水化装置のそれと同等となる。近年要求される最も厳しい部類の海水冷却水温度差制限2℃が適用された場合、従来の蒸発法による海水淡水化装置では、海水取水量は24000t/時(=4500x10/2+1500)の大容量となるが、多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として、配管66から供給されるプラント循環冷却水を用いる場合海水取水量は海水冷却水温度差制限の影響は受けず、1500t/時のままである。冷却塔34の冷却能力にもよるが、配管66を流れる冷却水と配管63からの戻り冷却水の温度差ΔT2を10℃とすることは一般的であり、この場合、温度差が5倍となると、冷却効率も5倍となるので、配管66から多段フラッシュ式造水装置放熱部38に供給する冷却水量Q2は、4500t/時{=(24000−1500)t/時×1/5}となる。排熱利用部200に対して、冷却塔34から配管59を介して供給する冷却水量Q3は、例えば、33600t/時程度であるため、この冷却水量に比べて、配管66から多段フラッシュ式造水装置放熱部38に供給する冷却水量Q2は13%程度となる。
以上のように、本実施形態では、多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として、配管66から供給されるプラント循環冷却水を用いることにより、海水の取水量は、逆浸透膜法による海水淡水化装置と同等の海水取水量とすることができる。また、本実施形態によれば、多段フラッシュ式造水装置の放熱部38の管材質として、海水の塩分に対する腐食性を考慮しないでよいため、安価な材質のものを用いることができる。
また、本実施形態の第2の特徴としては、海水淡水化の造水系統に、多段フラッシュ法や多重効用法からなる蒸発法を適用することにより、多額の膜交換が不要となるため造水装置のメンテナンスコストが下がり、また、一般に、逆浸透膜法と蒸発法を比較した場合、逆浸透法に比べて蒸発法の方が、製造された淡水中の残留塩分濃度を低くすることが可能となるため冷却水系統のメンテナンスコストも安くなる。
次に、本実施形態の第3の特徴として、ブラインヒーター40での低圧蒸気使用量を賄うため、プロセスガス圧縮機駆動用蒸気タービン18として背圧タービンを用いることが上げられる。これによって、低圧蒸気の供給量を増加することができる。また、背圧タービンを用いることにより、復水タービンで使用する復水器が不要となるため、その分循環冷却水が減少する。上述したように、多段フラッシュ式造水装置放熱部38での循環冷却水量Q2が4500t/時増加するとしても、復水器を使用しないことにより、1500t/時程度循環冷却水量を少なくすることができる。
次に、本実施形態の第4の特徴として、プラントの電力供給源として、ガスタービン発電機36を設け、またガスタービン排熱ボイラ37を設けて中圧蒸気を発生させたことがある。プラントの電力供給源としては、図中の符号Xで示す位置に、蒸気タービン12と同様に、蒸気タービン発電機を備えることも可能である。しかし、プラントの電力供給源として、蒸気タービンを用いた場合には、駆動用蒸気タービン12,復水器13,復水移送ポンプ14と同様の構成とする必要があるため、復水器が必要となる。ガスタービンを使用することにより、復水器が不要であるため、その分循環冷却水が減少する。上述したように、多段フラッシュ式造水装置放熱部38での循環冷却水量Q2が例えば、4500t/時増加するとしても、復水器を使用しないことにより、3100t/時程度循環冷却水量を少なくすることができる。
結果として、蒸気タービン18に背圧タービンを使用し、また、蒸気タービン発電機の代わりにガスタービン発電機36を用いて、ガスタービン排熱ボイラ37を備えることにより、2つの復水器にて使用する冷却水量4600t/時(=1500t/時+3100t/時)の分だけ、循環冷却水量を少なくすることができる。上述したように、本実施形態では、多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として、配管66から供給されるプラント循環冷却水を用いた場合、配管66から供給する冷却水量Q2として4500t/時が増加したとしても、2つの復水器にて使用する冷却水量4600t/時の分だけ、循環冷却水量を少なくすることにより、全体としての循環冷却水量は、100t/時だけ低減できる。この数値は一例であるが、多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として、配管66から供給されるプラント循環冷却水を用いることにより、冷却水量が増加したとしても、他の構成を変更することにより、全体としての循環冷却水量は同等若しくは低減することができる。
さらに、プラントの電力供給源としてガスタービン発電機を用いることにより、本実施形態による新燃料製造プラントの自立起動が可能となり、プラントの運用性が向上する。また、造水方式として蒸発法を用いることにより、逆浸透膜方式で必要であった大電力を消費する高圧海水ポンプ29が不要となるため、発電機の出力を約15%程度低減することができる。 また、発電機駆動機をガスタービンとすることにより、高圧蒸気必要量が減少するため、高圧ボイラの運転容量が減少する。
また、本実施形態では、第5の特徴として、排熱利用部200で発生する低圧蒸気は、多段フラッシュ式造水装置のブラインヒータ40に供給して利用される。ここで、低圧蒸気に余剰があるときは、造水装置の造水倍率を変えることにより消費可能であり、蒸気バランスを最適化して余剰蒸気をなくすことができる。なお、造水倍率の調整の場合、低圧蒸気が余って造水倍率を低い方に調整できる場合は、造水装置の段数,缶数を減らして設備費を低減することも可能となる。
また、本実施形態では、第6の特徴として、蒸発式の造水装置から放流されるブライン61と同造水装置への供給海水63を海水/ブライン熱交換器41で熱交換することにより、熱回収を計るとともに環境対策として取放水の温度差が規定された場合に放流温度を規定温度以下とすることを可能とする。
以上のようにして、一部の蒸気タービン駆動機をガスタービン駆動機に変更すること、一部の復水タービンを背圧タービンに変更すること、放流されるブラインから熱回収を計ること、蒸発法による造水装置の造水倍率を調整することにより、プラントの蒸気バランスを最適化し、プラント余剰蒸気を無くし、プラント総合熱効率を向上できる。
なお、本実施形態における海水淡水化装置は、蒸発法を用いて海水を淡水化して、冷却水の補給用に淡水を供給するものであり、この海水淡水化装置で製造される淡水の凝縮に開放循環式冷却水供給部から供給される冷却水を用いる点に特徴がある。かかる海水淡水化装置は、新燃料製造プラントにおける冷却水の供給用だけでなく、例えば、精油所,ケミカルプラント,蒸気タービン発電プラント等における淡水供給源としても用いることができる。
図1は、本発明の一実施形態による新燃料製造プラントの構成図である。
本実施形態による新燃料製造プラントは、新燃料製造部100と、排熱利用部200と、冷却水供給部300とから構成されている。新燃料製造部100は、原料から新燃料を製造するとともに、排熱を用いて蒸気を発生する。排熱利用部200は、新燃料製造部100で発生した蒸気を用いて、蒸気タービンを駆動し、回転機械等を駆動する。冷却水供給部300は、排熱利用部200の蒸気タービンの復水器で使用する冷却水を供給する。
新燃料製造部100は、空気圧縮機1と、空気分離装置2と、酸素昇圧装置3と、反応/改質炉4と、排熱回収ボイラ5,8と燃料合成反応器7等で構成されている。
反応/改質炉4には、配管50から原料が供給される。原料としては、石炭,石油,天然ガス等の炭化水素や、バイオマスや廃プラスチック等の使用可能な原料が供給される。なお、この例では天然ガスを原料としている。また、図示はしていないが、これら原料に加えて蒸気、炭酸ガス等を加えることもある。また、反応/改質炉4には、空気圧縮機1で空気を圧縮し、空気分離装置2にて空気を分離し、酸素昇圧装置3で昇圧された酸素が配管51を経て供給される。反応/改質炉4では、配管50から供給された原料ガスと、配管51から供給された酸素とにより、部分酸化や自己熱改質法(オートサーマルリフォーミング)等により、主として水素と一酸化炭素よりなる合成ガスを製造する。製造された合成ガスは、配管52から取り出される。
反応/改質炉4で製造された高温の合成ガスは、排熱回収ボイラ5に供給され、蒸気(ここでは、高圧蒸気)を発生させることによって減温されて、燃料合成反応器7に供給される。燃料合成反応器7において、合成ガスは触媒の働きにより新燃料に合成される。このとき発生した反応熱は、排熱回収ボイラ8により蒸気(ここでは、中圧蒸気)を発生させることによって回収される。燃料合成反応器7で合成された新燃料及び未反応ガス等は、配管53を経て、後続の液化/精製工程に送られ液化/精製される。なお、燃料合成反応の反応熱は、図示するように反応器を出たあと反応生成物から回収される場合と、反応器内から直接回収される場合がある。
これら合成ガス製造法では、反応/改質炉4の出口の合成ガスは非常な高温となる。一方、後続の燃料合成反応器7における燃料合成反応は発熱反応であり、燃料合成反応器7の入り口では合成ガスを合成反応に適した温度まで冷却する必要がある。このことから、新燃料製造プラントでは多量の余剰熱が発生するため、排熱ボイラ5,8を設置して高圧,中圧蒸気を発生して熱回収を図っている。
発生した高圧,中圧蒸気は、排熱利用部200において、プラント内の圧縮機,ポンプ,発電機等の駆動用蒸気タービンに用いられるが、低圧蒸気は燃料合成反応ガス液化/精製装置の一部のリボイラー用熱源、ボイラ給水脱気器用熱源等しか使用先が無く、余り気味である。また、蒸気タービンを効率よく使用するため、また一方では低圧蒸気の使用先が少ないため、蒸気バランス上復水タービンを多く用いると、それに応じて蒸気の復水のため、多量の冷却水が必要となる。
次に、排熱利用部200について説明する。排熱利用部200は、高圧蒸気系統と、中圧蒸気系統と、低圧蒸気系統から構成される。
高圧蒸気系統は、排熱回収ボイラ5,高圧ボイラ6,高圧蒸気ヘッダー54より構成され、排熱回収ボイラ5で発生した高圧蒸気は、原料空気圧縮機1の駆動用蒸気タービン9,酸素昇圧装置3の駆動用蒸気タービン12等で使用される。それぞれの駆動用蒸気タービン9,12の排気は、復水器10,13等でプラント循環冷却水により冷却され、復水移送ポンプ11,14等により脱気器25に戻る。高圧ボイラ給水は脱気器25より抜き出され、高圧ボイラ給水ポンプ27で所定の圧力まで昇圧されて排熱回収ボイラ5,高圧ボイラ6に供給される。また、中圧ボイラ給水は脱気器25より抜き出され、中圧ボイラ給水ポンプ26で所定の圧力まで昇圧されて排熱回収ボイラ8に供給される。なお、蒸気バランス上不足する高圧蒸気は、高圧ボイラ6により高圧蒸気ヘッダー54に供給される。
中圧蒸気系統は、排熱回収ボイラ8,中圧蒸気ヘッダー55より構成され、排熱回収ボイラ8で発生した中圧蒸気は、ポンプ駆動用蒸気タービン17,プロセスガス圧縮機駆動用蒸気タービン18,21等で使用される。蒸気バランスに基づき、ポンプ駆動用蒸気タービン17とプロセスガス圧縮機駆動用蒸気タービン18等は背圧タービンとし、低圧蒸気を低圧蒸気ヘッダー56に供給する。プロセスガス圧縮機駆動用蒸気タービン21は復水タービンとする。蒸気バランスに基づき、プロセスガス圧縮機駆動用蒸気タービン21等の排気は、復水器22等でプラント循環冷却水により冷却され、復水移送ポンプ23等により脱気器25に戻る。
ここで、蒸気タービン18としては、復水タービンを使用することも可能である。しかし、ブラインヒーター40での低圧蒸気使用量を考慮すると、プロセスガス圧縮機駆動用蒸気タービン18に復水タービンを用いると低圧蒸気の供給量が十分でないため、背圧タービンを用いて、低圧蒸気の供給量増加を図るようにしている。
また、中圧蒸気系統は、ガスタービン発電機36と、ガスタービン排熱ボイラ37とを備えている。ガスタービン排熱ボイラ37で中圧蒸気を発生させ、中圧蒸気ヘッダー55に供給している。
低圧蒸気系統は、低圧蒸気ヘッダー56より構成され、ポンプ駆動用蒸気タービン17等より受け入れた低圧蒸気をリボイラー47,脱気器25等に供給するとともに、ブラインヒーター40に供給され、蒸発法による海水淡水化装置の熱源として利用される。この場合、蒸発法による海水淡水化装置の造水率を調整することにより余剰蒸気は零としている。
次に、冷却水供給部300について説明する。冷却水供給部300は、プラント開放循環式冷却水系統と、造水系統から構成される。
プラント開放循環式冷却水系統は、冷却塔34,冷却水循環ポンプ35,冷却水循環配管59より構成される。冷却水は、冷却水循環配管59を経て、復水器10,13,22等に供給される。復水器10,13,22等で熱交換して温度が上昇した冷却水は、冷却塔34で大気により冷却されることで温度を下げ、冷却水循環ポンプ35で昇圧されて系内を循環する。冷却塔34で大気冷却により一部蒸発することで失われた冷却水は、造水系統より補給される。
造水系統は、蒸発法のうち多段フラッシュ法を用いている。造水系統は、多段フラッシュ式造水装置放熱部38,多段フラッシュ式造水装置熱回収部39,ブラインヒーター40,海水/ブライン熱交換器41,脱気槽42,ブライン循環ポンプ43,真空発生装置44より構成されている。
多段フラッシュ式造水装置放熱部38は、循環ブラインから蒸発した蒸気を冷却、凝縮させ淡水を回収する。生産された脱塩水は一旦脱塩水タンク31に貯蔵され、脱塩水供給ポンプ32でプラント循環冷却水系の補給水として供給される。多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として、配管66から供給されるプラント循環冷却水を用いる。多段フラッシュ式造水装置放熱部38より出た冷却水は、配管63により冷却塔34に戻される。
海水/ブライン熱交換器41は、配管60から供給される海水と、配管61から排出される放出ブラインの熱交換を行い、ブラインの放流温度を下げるとともに、供給海水への熱回収を計る。海水/ブライン熱交換器41を経た海水は、脱気槽42で脱気された後、配管65により、配管64で循環される低温循環ブラインに供給される。
新たに海水62を補給された低温循環ブライン64は、ブライン循環ポンプ43で昇圧され、多段フラッシュ式造水装置熱回収部39に導入される。ここで、低温循環ブライン64は、高温循環ブラインより蒸発した蒸気を冷却凝縮させるとともに熱回収して自らの温度を上昇させる。
ブラインヒーター40で低圧蒸気により更に昇温されたブラインは高温循環ブライン67となり、中圧蒸気を用いた真空発生装置44により低圧となった多段フラッシュ式造水装置熱回収部39及び多段フラッシュ式造水装置放熱部38の各段(ステージ)に順次導入されてフラッシュする。高温循環ブライン67は、各ステージでフラッシュすることにより順次濃縮,降温されて、多段フラッシュ式造水装置放熱部38より配管61から一部系外にブローされ、残りは低温循環ブライン64として再循環される。
なお、造水系統に用いる蒸発法は、上述した多段フラッシュ法に限らず、多重効用法を用いることもでき、さらに、多段フラッシュ法と多重効用法を組み合わせたものを用いることもできる。
以上説明した本実施形態による新燃料製造プラントにおいて、第1の特徴は、多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として、配管66から供給されるプラント循環冷却水を用いることにある。例えば、造水系統において、750t/時の淡水を製造する場合、従来の逆浸透膜法による海水淡水化装置では、最も淡水回収率の高い部類の装置で、必要とされる淡水の約2倍の1500t/時の海水を取水する必要がある。一方、蒸発法では海水冷却水温度差を10℃として、逆浸透膜法の4倍の海水取水量が必要であるとすると、従来の蒸発法による海水淡水化装置では6000t/時の海水取水量となり、このうち多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として使用される海水は4500t/時、造水に必要な海水量は1500t/時となる。ここで、多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として、配管66から供給されるプラント循環冷却水を用いると、配管60から取水する海水の量Q1は1500t/時と逆浸透法による海水淡水化装置のそれと同等となる。近年要求される最も厳しい部類の海水冷却水温度差制限2℃が適用された場合、従来の蒸発法による海水淡水化装置では、海水取水量は24000t/時(=4500x10/2+1500)の大容量となるが、多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として、配管66から供給されるプラント循環冷却水を用いる場合海水取水量は海水冷却水温度差制限の影響は受けず、1500t/時のままである。冷却塔34の冷却能力にもよるが、配管66を流れる冷却水と配管63からの戻り冷却水の温度差ΔT2を10℃とすることは一般的であり、この場合、温度差が5倍となると、冷却効率も5倍となるので、配管66から多段フラッシュ式造水装置放熱部38に供給する冷却水量Q2は、4500t/時{=(24000−1500)t/時×1/5}となる。排熱利用部200に対して、冷却塔34から配管59を介して供給する冷却水量Q3は、例えば、33600t/時程度であるため、この冷却水量に比べて、配管66から多段フラッシュ式造水装置放熱部38に供給する冷却水量Q2は13%程度となる。
以上のように、本実施形態では、多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として、配管66から供給されるプラント循環冷却水を用いることにより、海水の取水量は、逆浸透膜法による海水淡水化装置と同等の海水取水量とすることができる。また、本実施形態によれば、多段フラッシュ式造水装置の放熱部38の管材質として、海水の塩分に対する腐食性を考慮しないでよいため、安価な材質のものを用いることができる。
また、本実施形態の第2の特徴としては、海水淡水化の造水系統に、多段フラッシュ法や多重効用法からなる蒸発法を適用することにより、多額の膜交換が不要となるため造水装置のメンテナンスコストが下がり、また、一般に、逆浸透膜法と蒸発法を比較した場合、逆浸透法に比べて蒸発法の方が、製造された淡水中の残留塩分濃度を低くすることが可能となるため冷却水系統のメンテナンスコストも安くなる。
次に、本実施形態の第3の特徴として、ブラインヒーター40での低圧蒸気使用量を賄うため、プロセスガス圧縮機駆動用蒸気タービン18として背圧タービンを用いることが上げられる。これによって、低圧蒸気の供給量を増加することができる。また、背圧タービンを用いることにより、復水タービンで使用する復水器が不要となるため、その分循環冷却水が減少する。上述したように、多段フラッシュ式造水装置放熱部38での循環冷却水量Q2が4500t/時増加するとしても、復水器を使用しないことにより、1500t/時程度循環冷却水量を少なくすることができる。
次に、本実施形態の第4の特徴として、プラントの電力供給源として、ガスタービン発電機36を設け、またガスタービン排熱ボイラ37を設けて中圧蒸気を発生させたことがある。プラントの電力供給源としては、図中の符号Xで示す位置に、蒸気タービン12と同様に、蒸気タービン発電機を備えることも可能である。しかし、プラントの電力供給源として、蒸気タービンを用いた場合には、駆動用蒸気タービン12,復水器13,復水移送ポンプ14と同様の構成とする必要があるため、復水器が必要となる。ガスタービンを使用することにより、復水器が不要であるため、その分循環冷却水が減少する。上述したように、多段フラッシュ式造水装置放熱部38での循環冷却水量Q2が例えば、4500t/時増加するとしても、復水器を使用しないことにより、3100t/時程度循環冷却水量を少なくすることができる。
結果として、蒸気タービン18に背圧タービンを使用し、また、蒸気タービン発電機の代わりにガスタービン発電機36を用いて、ガスタービン排熱ボイラ37を備えることにより、2つの復水器にて使用する冷却水量4600t/時(=1500t/時+3100t/時)の分だけ、循環冷却水量を少なくすることができる。上述したように、本実施形態では、多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として、配管66から供給されるプラント循環冷却水を用いた場合、配管66から供給する冷却水量Q2として4500t/時が増加したとしても、2つの復水器にて使用する冷却水量4600t/時の分だけ、循環冷却水量を少なくすることにより、全体としての循環冷却水量は、100t/時だけ低減できる。この数値は一例であるが、多段フラッシュ式造水装置放熱部38の淡水凝縮用冷却媒体として、配管66から供給されるプラント循環冷却水を用いることにより、冷却水量が増加したとしても、他の構成を変更することにより、全体としての循環冷却水量は同等若しくは低減することができる。
さらに、プラントの電力供給源としてガスタービン発電機を用いることにより、本実施形態による新燃料製造プラントの自立起動が可能となり、プラントの運用性が向上する。また、造水方式として蒸発法を用いることにより、逆浸透膜方式で必要であった大電力を消費する高圧海水ポンプ29が不要となるため、発電機の出力を約15%程度低減することができる。 また、発電機駆動機をガスタービンとすることにより、高圧蒸気必要量が減少するため、高圧ボイラの運転容量が減少する。
また、本実施形態では、第5の特徴として、排熱利用部200で発生する低圧蒸気は、多段フラッシュ式造水装置のブラインヒータ40に供給して利用される。ここで、低圧蒸気に余剰があるときは、造水装置の造水倍率を変えることにより消費可能であり、蒸気バランスを最適化して余剰蒸気をなくすことができる。なお、造水倍率の調整の場合、低圧蒸気が余って造水倍率を低い方に調整できる場合は、造水装置の段数,缶数を減らして設備費を低減することも可能となる。
また、本実施形態では、第6の特徴として、蒸発式の造水装置から放流されるブライン61と同造水装置への供給海水63を海水/ブライン熱交換器41で熱交換することにより、熱回収を計るとともに環境対策として取放水の温度差が規定された場合に放流温度を規定温度以下とすることを可能とする。
以上のようにして、一部の蒸気タービン駆動機をガスタービン駆動機に変更すること、一部の復水タービンを背圧タービンに変更すること、放流されるブラインから熱回収を計ること、蒸発法による造水装置の造水倍率を調整することにより、プラントの蒸気バランスを最適化し、プラント余剰蒸気を無くし、プラント総合熱効率を向上できる。
なお、本実施形態における海水淡水化装置は、蒸発法を用いて海水を淡水化して、冷却水の補給用に淡水を供給するものであり、この海水淡水化装置で製造される淡水の凝縮に開放循環式冷却水供給部から供給される冷却水を用いる点に特徴がある。かかる海水淡水化装置は、新燃料製造プラントにおける冷却水の供給用だけでなく、例えば、精油所,ケミカルプラント,蒸気タービン発電プラント等における淡水供給源としても用いることができる。
本発明によれば、海水使用に制限のある地域に設置される新燃料製造プラント及びこれに用いられる海水淡水化装置において、逆浸透膜方式と同等の海水取水量で蒸発法による造水装置の適用を可能にするとともに、逆浸透膜法式に比べメンテナンスコストが安い等蒸発法による造水装置の利点をも享受できる。
Claims (7)
- 原料から合成ガスを製造し、製造された合成ガスから新燃料を合成するとともに、これらの過程から出る余剰熱を回収して蒸気を発生する排熱回収ボイラを有する新燃料製造プラントにおいて、
前記排熱回収ボイラで発生する蒸気で駆動する蒸気タービンを含む排熱利用部と、
この蒸気タービンの排気用を含むプラントの冷却水を供給する開放循環式冷却水供給部とこの開放循環式冷却水の補給用に淡水を供給する蒸発法を用いた海水淡水化装置とを備え、
この海水淡水化装置で製造される淡水の凝縮に前記開放循環式冷却水供給部から供給される冷却水を用いることを特徴とする新燃料製造プラント。 - 請求項1記載の新燃料製造プラントにおいて、
前記海水淡水化装置の蒸発法は、多段フラッシュ法又は多重効用法若しくはこれらの組み合わせであることを特徴とする新燃料製造プラント。 - 請求項1記載の新燃料製造プラントにおいて、
ガスタービンを用いて被駆動機を駆動することを特徴とする新燃料製造プラント。 - 請求項3記載の新燃料製造プラントにおいて、
このガスタービンの排熱によって蒸気を発生するガスタービン排熱ボイラを備え、
このガスタービン排熱ボイラで発生した蒸気を前記排熱利用部に供給することを特徴とする新燃料製造プラント。 - 請求項1記載の新燃料製造プラントにおいて、
前記海水淡水化装置から放流されるブラインと前記海水淡水化装置に供給される原料海水を熱交換する熱交換器を備えることを特徴とする新燃料製造プラント。 - 請求項1記載の新燃料製造プラントにおいて、
プラントからの余剰蒸気を前記海水淡水化装置の熱源として消費するように、前記海水淡水化設備の造水倍率を変更することを特徴とする新燃料製造プラント。 - 蒸発法を用いて海水を淡水化して、淡水を供給する海水淡水化装置において、
この海水淡水化装置で製造される淡水の凝縮に開放循環式冷却水供給部から供給される冷却水を用いることを特徴とする海水淡水化装置。
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