JPH1156824A - 生体内の酸塩基平衡測定装置 - Google Patents

生体内の酸塩基平衡測定装置

Info

Publication number
JPH1156824A
JPH1156824A JP9237678A JP23767897A JPH1156824A JP H1156824 A JPH1156824 A JP H1156824A JP 9237678 A JP9237678 A JP 9237678A JP 23767897 A JP23767897 A JP 23767897A JP H1156824 A JPH1156824 A JP H1156824A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pco
hco
blood
calculated
acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9237678A
Other languages
English (en)
Inventor
Masashi Mochizuki
政司 望月
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shimadzu Corp
Original Assignee
Shimadzu Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shimadzu Corp filed Critical Shimadzu Corp
Priority to JP9237678A priority Critical patent/JPH1156824A/ja
Publication of JPH1156824A publication Critical patent/JPH1156824A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 BEに代わる酸塩基平衡の新しい指標を見つ
けだし、それを求める。 【解決手段】 血液ガス分析装置で血漿中のPCO2
pHを測定し、[H+]算出部10a,10vでpHから
[H+]を算出し、[H+]*算出部12a,12vでPCO
2から [H+]*=5.15×PCO2 0.545 によりPCO
2に依存する[H+]*を算出する。Δ[H+]算出部14a,
14vでは、算出された[H+]と[H+]*の差としてPC
2に依存しない水素イオン濃度成分Δ[H+]を算出す
る。さらに、Δ[H+]較差算出部16は、静脈血と動脈
血の両方について求められたΔ[H+]vとΔ[H+]aとの差
としてΔ[H+]較差を求める。Δ[H+]とΔ[H+]較差は
生体内の酸塩基平衡を示す指標として医師により利用さ
れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアシドーシス、アル
カローシスなどの生体内酸塩基平衡異常を示す指標とな
る値を、血液ガス分析装置により測定した血漿中の二酸
化炭素分圧PCO2及びpHを用いて算出する酸塩基平
衡測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】生体内でPCO2が上昇し、CO2の水和
反応が起こると、水素イオンH+、重炭酸イオンHCO3
-の両イオンが同時に生成される。PCO2が下降しHC
3 -の脱水反応が起こると、H+,HCO3 -の両イオン
が同時に減少する。CO2の反応は主として赤血球内で
起こり、生成されるH+の約85%はヘモグロビンに含
まれるタンパク質イオンと結合して赤血球内に残る。一
方、重炭酸イオン濃度[HCO3 -]の約2/3は塩素イ
オンCl-と交換しながら赤血球から血漿内に移動す
る。血漿にはHCO3 -以外にH+と結合する緩衝イオン
NBB(non-bicarbonate buffer)の量(NBB)は少
なく、緩衝されるH+濃度も血漿では少ない。これに反
し、[HCO3 -]は赤血球内より血漿内の方が有意に高
い。すなわち、緩衝イオン濃度[NBB]と[HCO3 -]の
分布は血球と血漿では不均等となる。しかし、CO2
反応以外の反応が無視できる場合(基準状態)には、赤
血球と血漿を含めた全血では[NBB]と[HCO3 -
の変化高の総和は常に一定となる。そのため、密閉容器
内の全血中では[NBB]と[HCO3 -]の和、すなわ
ち緩衝イオン濃度(buffer base)[BB]は、PCO2
に無関係に定値をとる。
【0003】しかし、代謝障害に伴って酸又は塩基が混
入すると、[BB]は定値から外れてくる。そのため、
正常な血液での[BB]値を基準にとり、血中に混入し
た酸又は塩基量を推定することが行われたこともあっ
た。全血の[BB]の基準値は代謝障害以外の要因の影
響も受け、誤差も大きくなる。そこで、最近は血液サン
プルの[HCO3 -]をPCO2=40mmHg、pH=
7.4の基準状態の[HCO3 -]値に変換するに要する
滴定酸又は塩基量(base excess:BE)を測定又は推
定し、それをもって酸塩基平衡の異常の指標としてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、後述す
るように、BEは酸塩基平衡の最適な指標とはいえない
ことがわかった。そこで、本発明は、BEに代わる酸塩
基平衡の新しい指標を見つけだし、それを求める装置を
提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】生体血漿内のH+濃度
[H+]は、PCO2に依存する成分[H+]*と依存しない
成分Δ[H+]より成り立っている。静脈血のPCO2が変
化して動脈血となっても、Δ[H+]は変わらない筈であ
る。すなわち、静脈血のΔ[H+]であるΔ[H+]vと動脈
血のΔ[H+]であるΔ[H+]aの較差は、PCO2に無関
係に0となる。[H+]*としてPCO2のある関数を代入
し、実測の[H+]からその[H+]*を引いてΔ[H+]を計算
し、さらに、静動脈血間のΔ[H+]較差がPCO2較差に
無関係に0となる時には、その特定のPCO2の関数
は、[H+]のPCO2に依存する成分[H+]*と見做され得
る。
【0006】老齢患者の静動脈血のPCO2及び[H+]の
関係を解析した結果、[H+]*=5.15×PCO2 0.545
が導かれた。Δ[H+]=0の状態は、従来通り、酸塩基
平衡の保たれている状態と見做され、Δ[H+]の値は酸
塩基平衡障害の程度を定量するのに用いられることが明
らかになった。
【0007】すなわち、本発明は、図1に主要部が示さ
れるように、静脈血と動脈血の少なくとも一方につい
て、血漿中の二酸化炭素分圧PCO2及びpHを測定す
る血液ガス分析装置(ここでは図示略)と、pHから水
素イオン濃度[H+]を算出する[H+]算出部(10a又
は10v)と、PCO2から次の式 [H+]*=5.15×PCO2 0.545 によりPCO2に依存する水素イオン濃度[H+]*を算出
する[H+]*算出部(12a又は12v)と、算出された
[H+]と[H+]*の差としてPCO2に依存しない水素イオ
ン濃度成分Δ[H+]を算出するΔ[H+]算出部(14a又
は14v)と、Δ[H+]算出結果を出力する出力部(図
示略)を備えている。
【0008】さらに、他の指標も得るための態様では、
本発明は静脈血と動脈血の両方についてそれぞれΔ
[H+]を算出し、静脈血でのΔ[H+]vと動脈血でのΔ[H
+]aとの差であるΔ[H+]較差を次の式 Δ[H+]較差=Δ[H+]v−Δ[H+]a として算出するΔ[H+]較差算出部(16)を更に備
え、出力部はそのΔ[H+]較差算出結果も出力するよう
になっている。
【0009】70−98才の老齢患者115名の動脈血
のPCO2とHCO3 -イオン濃度[HCO3 -]の平均値を
求めた。図2はPCO2の平均値に対する[HCO3 -]の
平均値の分布である。破線はその分布の回歸曲線を示
す。CO2の水和、脱水反応の平衡後の[H+](nmol/
l)、[HCO3 -](mmol/l)、PCO2(mmHg)の関係は、
K'を解離恒数、sをCO2の溶解度とすると、下記のHe
ndersonの式で表現される。
【0010】しかし、[HCO3 -]の平均値とH+濃度
[H+]の平均値とは必ずしもHendersonの式を満足しな
い。そこで、[HCO3 -]の平均値をPCO2の平均値と
ともにHendersonの式に代入して[H+]を算出して、その
値を[H+]の平均値と見做した。図3はその算出された
[H+]平均値のPCO2に対する分布を示したものであ
る。図3の破線の[H+]は、図2の回帰線の[HCO3 -]
とPCO2を同時にHendersonの式に代入し、計算により
求めたものである。
【0011】次に、個々の[HCO3 -]、[H+]につい
て、それぞれの回帰線よりの偏差Δ[HCO3 -]、Δ
[H+]を図2及び図3より求め、その相関を図4に示し
た。Δ[H+]、Δ[HCO3 -]の原点周囲の例数は一部省
略してあるが、Δ[HCO3 -]/Δ[H+]の勾配はほぼ一
定であった。
【0012】[H+]−[HCO3 -]面上の、PCO2が一
定となる点の軌跡は双曲線を描く。図5に、異なった3
つのPCO2における[HCO3 -]と[H+]の関係を示
す。同じPCO2の双曲線上にA,Bの2点をとる。A
点の座標を([H+]*,[HCO3 -]*)、B点の座標を
([H+]*+Δ[H+],[HCO3 -]*+Δ[HCO3 -])とす
ると、二つの座標間にはHendersonの式から次の(1)
式の平衡関係が成立する。 [H+]*・[HCO3 -]* =([H+]*+Δ[H+])([HCO3 -]*+Δ[HCO3 -]) (1)
【0013】A点とB点が接近して、Δ[H+]が0に近
くなると、[HCO3 -]*/[H+]*の比は、(2)式に示
すように、Δ[HCO3 -]/Δ[H+]の勾配と正負対称的
な値となる。 [HCO3 -]*/[H+]*=−Δ[HCO3 -]/Δ[H+] (2) 図4に示されるように、正常な血液ではΔ[HCO3 -]/
Δ[H+]の勾配はほぼ一定であるので、[HCO3 -]*
[H+]*も正常な血液では一定になると考得られた。[H
CO3 -]*/[H+]*比が一定となるときには、[H+]*
[HCO3 -]*、は共にHendersonの式により、PCO2
平方根に比例する式で与えられる。また、図6に示され
るように、正常静脈血の[H+]*/[HCO3 -]*は、30
−60mmHgのPCO2の範囲で、1.53×10-6を中心
とした狭い範囲に分布していた。
【0014】その結果より、 [H+]*=6.11・PCO2 0.5(neq/liter) (3) [HCO3 -]*=4.0・PCO2 0.5(neq/liter) (4) と仮定し、Δ[H+]、Δ[HCO3 -]の解析を始めた。5
7名の老齢患者の動静脈血を同時に採血し、PCO2
pHを測定して[H+]、[HCO3 -]を計算した。89例
の測定値を用いて、(3),(4)式より[H+]*、[HCO
3 -]*を算出し、それぞれの実測値より[H+]*、[HCO
3 -]*を差し引き、Δ[H+]、Δ[HCO3 -]を求め、動静
脈血間での相関を検討した。[H+]*、[HCO3 -]*に代
入すべきPCO2の関数の指数、及び、回帰線の傾斜等
は有意な変化を示さず、[H+]*の近似度を高めることは
出来なかった。しかし、静脈血のΔ[H+]であるΔ[H+]
vから動脈血のΔ[H+]であるΔ[H+]aを差し引き、更
に、PCO2の静動脈血間較差に対して図示したとこ
ろ、回帰線の傾斜は、[H+]*を示すPCO2の関数の指
数、及び、係数の値によって敏感に影響されることが分
かった。
【0015】図7(A)は、図中の[H+]*の式((3)
式)を用いて求めた(Δ[H+]v−Δ[H+]a)の値を
(PvCO2−PaCO2)に対して示したもので、回帰
線の傾斜は右方向に向かって上昇している。図7(B)
は、in vitroで求めた[H+]*の関数を用いて、同様の分
布を示したもので、回帰線の傾斜は逆に下降している。
点線は、回帰線を中心にした偏差SDを示しており、共
に0.57meq/literであった。この結果、(Δ[H+]v
−Δ[H+]a)の回帰線が、(PvCO2−PaCO2
に無関係に0になる条件は、PCO2の関数の冪数が0.
5と0.637の間にあることと推測される。更に、試
行錯誤の操作を続けた結果、図8(A)に示すように、 [H+]*=5.15・PCO2 0.545 (5) と置いたとき、横軸と一致する回帰線が得られた。次に
この[H+]*をHendersonの式に代入すると、 [HCO3 -]*=4.75・PCO2 0.455 (6) が得られる。この[HCO3 -]*を用いて得られるΔ[H
CO3 -]は、図8(B)の回帰線の示すように、PCO2
の影響を受ける。すなわちΔ[H+]と[HCO3 -]*とは同
時にPCO2に依存しない成分と成ることはできない。
【0016】静脈血と動脈血のΔ[H+]が等しい時に
は、実測の[H+]の静動脈血間較差、([H+]v−[H+]
a)は、当然([H+]*v−[H+]*a)と等しく成る筈で
ある。この関係を示したものが図9である。相関係数は
0.978、回帰線の傾斜は0.958で、恒等線(iden
titiy line、実線)の傾斜より低い。各測定点の回帰線
よりの偏差(SD)は0.55neq/literであり、回帰線
と恒等線の間の差異は有意義ではなかった。図10は、
Δ[H+]aをΔ[H+]vに対して図示したもので、相関係
数は0.978、回帰線の傾斜は0.956、又、各分布
点の回帰線よりの偏差(SD)は0.53neq/literで、
Δ[H+]vとΔ[H+]aの間には有意差は認められていな
い。図11は、Δ[HCO3 -]aをΔ[HCO3 -]vに対し
て図示したものである。相関係数は0.993、回帰線
の傾斜は0.981、又、回帰線周囲の分布巾はSDで
0.41meq/literで、静動脈血間のΔ[HCO3 -]にも有
意差は認められていない。
【0017】(分析結果の検討)正常血漿のpHがlog
PCO2に対して直線的な関係にあることは周知の事実
である。[H+]*=5.15・PCO2 0.545の対数を求
め、正負の符号を逆にすると、直ちにpH=8.288
−0.545・logPCO2、が得られる。図12は、こ
の関係に添えて、in vitroに於ける酸素化血、及び、脱
酸素化血のpHとlogPCO2の関係を示している。PC
2=40mmHg近傍ではin vivoのpHはin vitroの二本
の線の中間に位置し、傾斜は緩くなっている。図8に示
したように[H+]*、[HCO3 -]*共に、PCO2の指数
関数で与えられるので、 [HCO3 -]*/[H+]*=0.922・PCO2 -0.09×106 (7) [H+]*/[HCO3 -]*=1.05PCO2 0.09×10-6 (8) となる。図13はそれらの比のPCO2に対する関係を
示したもので、後者の値は、30mmHg−60mmH
gのPCO2の範囲内では、1.5×10-6の周囲に位置
し、正常静脈血での測定値とよく符号している(Oxygen
Transport to Tissue XVIII, 55-64, 1995参照)。
【0018】[H+]*とPCO2をHendersonの式に代入す
れば、[HCO3 -]*は容易に算出される。図14はin v
ivoの[HCO3 -]*に対する関係(緩衝線)をin vitro
の酸素化血、及び、脱酸素化血の緩衝線と共に図示した
ものである(Jpn. J. Physiol. 33, 601-618, 1983 参
照)。in vivoでの緩衝線の勾配は、in vitro
の緩衝線の勾配の約1.5倍になっている。PCO2の上
昇に伴い、pHが減少すると、in vivoの[HCO3 -]は
in vitroの[HCO3 -]より高くなり、PCO2が降下、
pHが増大すると、in vivoの[HCO3 -]はin vitroの
[HCO3 -]の値より低くなる。緩衝線の傾斜を緩衝価
(buffer value、β)と呼んでいる。計算される緩衝線
は直線ではなく、β値はPCO2の関数となる。図15
は、任意のpHと7.4のpHの間に於ける[HCO3 -]
*の勾配(β)をPCO2に対して図示したもので、in v
ivitroの値は、酸素化血で約30meq/l/pHであるのに、
in vivoでは約50meq/l/pHと大きくなっている。
【0019】(Base Excess(BE)の評価)[HCO3
-]の実測値よりpH=7.4の時の[HCO3 -]*を引
き、更に、(pH−7.4)にβを掛けた値を差し引い
た値は血漿のBase Excessであり、酸塩基平衡異常の評
価に用いられてきた。pH=7.4の時in vivoの[HC
3 -]*は26.2meq/literとなるので、BEは、図16
の上部に示した式で計算される。β値の計算式からも推
察されるように、[HCO3 -]が[HCO3 -]*となり、
Δ[HCO3 -]が0となる状態では、BEも0になる。
又、[HCO3 -]の変化とpHの変化は正負逆向きにな
るので、BEの方がΔ[HCO3 -]よりも大きくなる。図
16は、動脈血のBEであるBEaを静脈血のBEであ
るBEaに対して図示したもので、相関係数は0.99
3、回帰線は恒等線と重なっており、回帰線周囲の分布
巾はSDで0.73meq/literであった。
【0020】酸素化血のin vitroでの[HCO3 -]*は、
pH=7.4の時、25.05meq/literとなり、酸素化
血の緩衝価を用いると、BEは図16と同様に計算され
る。この時のBEは、in vivoの緩衝価を用いたときよ
り平均して0.68meq高く、又、静脈血のBEは動脈血
のBEより平均して、0.55meq高くなっている。静動
脈血間のBEの相関係数は0.991で、緩衝価の差異
による影響は相関係数には殆ど見られない。図17は、
静動脈血のBE較差(BEv−BEa)をPCO2較差
(PvCO2−PaCO2)に対して図示したものであ
る。図17(A)のBEは、in vivoの緩衝価を用いて
計算し、また図17(B)のBEはin vitroでの酸素化
血の緩衝価を用いて計算してある。Aの場合には、回帰
線の勾配はPCO2較差の増大に伴って、減少している
のに、Bの場合には、上昇しており、in vitroの緩衝価
の低すぎることを示唆している。
【0021】BEとΔ[HCO3 -]の間には高い相関があ
り、相関係数は0.998、回帰線は図18の双曲線で
示された。一方、図19で示すように、Δ[HCO3 -]は
Δ[H+]に対して双曲線的な関係を持っており、その
上、PCO2に無関係ではない。従って、Δ[HC
3 -]、又は、BEは、Δ[H+]と比較して考えると、酸
塩基平衡異常の最適の指標とは言えない。
【0022】([H+]*の応用)従来、酸塩基平衡状態の
正常範囲は曖昧であった。併し、[H+]*が特定のPCO
2の指数関数で示されるようになった結果、[H+]*周囲
の偏差巾(Δ[H+])を決めれば、正常領域は規定され
る。図20は、Δ[H+]が±1meq/literの範囲内にある
正常血漿での、Strong Ion Difference(SID=[Na
+]+[K+]−[Cl-])と[HCO3 -]のPCO2に対する
関係を図示したものである。SIDの分散はかなり大き
いが、SIDのPCO2に対する分布が[HCO3 -]のそ
れとほぼ平行関係にあることが分かる。以前は、正常被
験者を規定するのに複雑な操作を必要とし、簡単に比較
はできなかった。図21は、SIDから[HCO3 -]*
差し引いた値、即ち、Anion Gap(AG)に対する関係
を示している。回帰線は、右下の実験式で示すように、
[H+]*に対し減少傾向を示している。右辺括弧内第2項
の分母の値、160nM/literは血漿蛋白のイオン化活性
アミノ酸の解離恒数に相当し、Tanford, C.(1955)によ
って報告されている値とよく一致している。この結果を
勘案すると、[HCO3 -]*がin vivoとin vitroで異な
ること(図12参照)の原因は、in vivoでは毛細管壁
を通してイオンの移動が起こり、血漿内での電解質の平
行過程に関与するからであると思われる。
【0023】
【実施例】図22に実施例を示す。血液ガス分析装置2
は血漿中の二酸化炭素分圧PCO2とpHを少なくとも
測定できるものであり、例えばコーニング188(チバ
・コーニング・ダイヤグノスチックス社)を用いること
ができる。その血液ガス分析装置は、他にもナトリウム
イオン濃度[Na+]、カリウムイオン濃度[K+]及び塩素
イオン濃度[Cl-]も測定することができる。血液ガス
分析装置2による測定データを処理するためのデータ処
理装置として例えばパーソナルコンピュータ30を利用
することができる。図1における[H+]算出部10a,
10v、[H+]*算出部12a,12v、Δ[H+]算出部
14a,14v及びΔ[H+]較差算出部16、さらには
Δ[H+]やΔ[H+]較差の算出結果を出力する出力部はパ
ーソナルコンピュータ30により実現されたものであ
る。
【0024】
【発明の効果】本発明では血液ガス分析装置によりpH
とPCO2を測定し、pHから水素イオン濃度[H+]を
算出し、PCO2からPCO2に依存する水素イオン濃度
[H+]*を算出し、算出された[H+]と[H+]*の差として
PCO2に依存しない水素イオン濃度成分Δ[H+]を算出
して出力するようにしたので、医師はその出力されたΔ
[H+]を指標として生体内の酸塩基平衡異常を容易に判
定することができるようになる。本発明でさらに、静脈
血と動脈血の両方についてそれぞれΔ[H+]を算出し、
その差としてΔ[H+]較差を算出して出力するようにす
れば、Δ[H+]較差も指標として生体内の酸塩基平衡異
常を容易に判定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を示すブロック図である。
【図2】115名の老齢患者の動脈血のPCO2と[H
CO3 -]の各平均値の関係を示す図である。
【図3】図1のPCO2と[HCO3 -]の値をHenderson
の式に代入して求めた[H+]のPCO2に対する分布を示
す図である。
【図4】PCO2に対する[HCO3 -]と[H+]の分布点
のそれぞれの回帰線よりの偏差Δ[HCO3 -]及びΔ
[H+]の関係を示す図である。
【図5】異なった3つのPCO2における[HCO3 -]と
[H+]の関係を示す図である。
【図6】正常静脈血のPCO2に対する[H+]/[HCO
3 -]を示す図である。
【図7】(A)は[H+]*=6.11・PCO2 0.5と置い
たときのΔ[H+]の静動脈較差のPCO2較差に対する関
係を示す図、(B)はin vitroの[H+]*を用いて求めた
(Δ[H+]v−Δ[H+]a)と(PvCO2−PaCO2
の関係を示す図である。
【図8】(A)は[H+]*=5.15PCO2 0.545と置い
たときの(Δ[H+]v−Δ[H+]a)と(PvCO2−P
aCO2)の関係を示す図、(B)は[HCO3 -]*=4.
75PCO2 0.455に於ける(Δ[HCO3 -]v−Δ[HC
3 -]a)とPCO2格差の関係を示す図である。
【図9】[H+]*=5.15PCO2・0.545と置いたとき
の([H+]*v−[H+]*a)と([H+]v−[H+]a)の関
係を示す図である。
【図10】図9と同じ[H+]*を用いたときのΔ[H+]a
のΔ[H+]vに対する分布を示す図である。
【図11】[HCO3 -]*=4.75PCO2 0.455と置い
たときのΔ[HCO3 -]aのΔ[HCO3 -]vに対する分布
を示す図である。
【図12】生体内血漿及びin vitroの酸素化血、脱酸素
化血のpH*とlogPCO2の関係を示す図である。
【図13】[HCO3 -]*/[H+]*及びその逆数のPCO
2に対する関係を示す図である。
【図14】生体内血漿、酸素化血、脱酸素化血のpH*
に対する[HCO3 -]*の関係を示す図である。
【図15】生体内血漿、酸素化血、脱酸素化血の緩衝価
のPCO2に対する関係を示す図である。
【図16】動脈血内Base Excess(BEa)の静脈血内B
Evに対する分布を示す図である。
【図17】(A)はin vivoの緩衝価を用いて計算した静
動脈血間BE較差のPCO2較差に対する関係を示す
図、(B)は酸素化血の緩衝価を用いて計算した静動脈
血間BE較差のPCO2較差に対する関係を示す図であ
る。
【図18】生体内血漿の緩衝価を用いて求めたBEのΔ
[HCO3 -]に対する回帰線を示す図である。
【図19】[H+]*=5.15PCO2 0.545と置いたとき
のΔ[HCO3 -]とΔ[H+]の関係を示す図である。
【図20】正常血漿に於けるSID(=[Na+]+[K+]
−[Cl-])と[HCO3 -]のPCO2に対する分布を示
す図である。
【図21】図20のSIDから[HCO3 -]*を差し引い
て求めたAnion Gap(AG)の[H+]*に対する分布を示
す図である。
【図22】一実施例を示す概略正面図である。
【符号の説明】
2 血液ガス分析装置 10a,10v [H+]算出部 12a,12v [H+]*算出部 14a,14v Δ[H+]算出部 16 Δ[H+]較差算出部

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 静脈血と動脈血の少なくとも一方につい
    て、血漿中の二酸化炭素分圧PCO2及びpHを測定す
    る血液ガス分析装置と、 pHから水素イオン濃度[H+]を算出する[H+]算出部
    と、 PCO2から次の式 [H+]*=5.15×PCO2 0.545 によりPCO2に依存する水素イオン濃度[H+]*を算出
    する[H+]*算出部と、 算出された[H+]と[H+]*の差としてPCO2に依存しな
    い水素イオン濃度成分Δ[H+]を算出するΔ[H+]算出部
    と、 Δ[H+]算出結果を出力する出力部とを備えたことを特
    徴とする生体内の酸塩基平衡測定装置。
  2. 【請求項2】 静脈血と動脈血の両方についてそれぞれ
    Δ[H+]を算出し、静脈血でのΔ[H+]vと動脈血でのΔ
    [H+]aとの差であるΔ[H+]較差を次の式 Δ[H+]較差=Δ[H+]v−Δ[H+]a として算出するΔ[H+]較差算出部を更に備え、前記出
    力部はΔ[H+]較差算出結果も出力するようにした請求
    項1に記載の生体内の酸塩基平衡測定装置。
JP9237678A 1997-08-18 1997-08-18 生体内の酸塩基平衡測定装置 Pending JPH1156824A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9237678A JPH1156824A (ja) 1997-08-18 1997-08-18 生体内の酸塩基平衡測定装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9237678A JPH1156824A (ja) 1997-08-18 1997-08-18 生体内の酸塩基平衡測定装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH1156824A true JPH1156824A (ja) 1999-03-02

Family

ID=17018892

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP9237678A Pending JPH1156824A (ja) 1997-08-18 1997-08-18 生体内の酸塩基平衡測定装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH1156824A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7291502B2 (en) 2006-03-15 2007-11-06 Franco Wayne P Method for performing a non-invasive blood gas test
JP2016194852A (ja) * 2015-04-01 2016-11-17 愛郎 梅枝 診断支援プログラム

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7291502B2 (en) 2006-03-15 2007-11-06 Franco Wayne P Method for performing a non-invasive blood gas test
US7662632B2 (en) 2006-03-15 2010-02-16 Franco Wayne P Method for performing a non-invasive blood gas test
JP2016194852A (ja) * 2015-04-01 2016-11-17 愛郎 梅枝 診断支援プログラム

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Piccoli et al. A new method for monitoring body fluid variation by bioimpedance analysis: the RXc graph
Rackoff et al. Pulse oximetry and factors associated with hemoglobin oxygen desaturation in children with sickle cell disease
Munkholm et al. Reference equations for pulmonary diffusing capacity of carbon monoxide and nitric oxide in adult Caucasians
Inoue et al. A newer conversion equation for the correlation between HbA1c and glycated albumin
Malon et al. Ionized magnesium in erythrocytes—the best magnesium parameter to observe hypo-or hypermagnesemia
Reddi Acid-Base Disorders
JPH1156824A (ja) 生体内の酸塩基平衡測定装置
Torres Validation of oxygen electrode for blood
Durward et al. Understanding acid–base balance
Chen et al. Factors associated with Brachial-Ankle pulse wave velocity in an apparently healthy Chinese population
Holland Kinetics of combination of O2 and CO with human hemoglobin F in cells and in solution
Keber et al. Assessment of volume status with bioimpendance prior to hemodialysis and its importance for predicting survival in hemodialysis patients
Trinkmann et al. A comparative evaluation of electrical velocimetry and inert gas rebreathing for the non-invasive assessment of cardiac output
Astrup et al. Micromethods for measuring acid-base values of blood
JP7281633B2 (ja) 平均赤血球年齢を決定する方法
CN108169155B (zh) 一种血液样本分析测试系统
CN107941722B (zh) 血液样本分析测试系统
Kellum Making strong ion difference the" Euro" for bedside acid-base analysis
Taş et al. Automated fructosamine assay with improved accuracy used to quantify nonenzymatic glycation of serum proteins in diabetes mellitus and chronic renal failure
US20070208515A1 (en) Accuracy improvement in strong ion difference for blood gas testing
Gaiter et al. Relation between blood pH and ionized calcium during acute metabolic alteration of the acid-base balance in vivo
JPH09127104A (ja) 生体内の酸塩基平衡測定装置
Mustafa et al. Correlation of Hemoglobin, Hematocrit and Electrolyte Values with Venous Blood Gas Analyzer and Laboratory Auto Analyzers in Patients with Indications for Emergency Hemodialysis
Brans et al. Antipyrine interferes with chemical determination of bromide in simultaneous estimation of total body water and extracellular water.
Anstey A new model for the oxyhaemoglobin dissociation curve