JPH11318273A - 動物の疑似冬眠誘導方法 - Google Patents

動物の疑似冬眠誘導方法

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JPH11318273A
JPH11318273A JP14610298A JP14610298A JPH11318273A JP H11318273 A JPH11318273 A JP H11318273A JP 14610298 A JP14610298 A JP 14610298A JP 14610298 A JP14610298 A JP 14610298A JP H11318273 A JPH11318273 A JP H11318273A
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hibernation
pseudo
animal
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serum
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JP14610298A
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Inventor
Yoichi Kadoue
洋一 門上
Yoshinori Taniguchi
義則 谷口
Mitsuyuki Horiuchi
三津幸 堀内
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JIFAS CORP KK
Nihon Nosan Kogyo Co Ltd
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JIFAS CORP KK
Nihon Nosan Kogyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 疑似冬眠誘導された動物の血清を採取し、こ
の血清を投与することにより、他の動物を二次的に疑似
冬眠誘導する方法を提供すること。 【構成】 動物の疑似冬眠を誘導する方法において、疑
似冬眠を誘導する物質を動物に投与して、疑似冬眠を誘
導し、前記疑似冬眠を誘導された動物の血清を採取し
て、この血清を他の動物に投与することにより、前記他
の動物の疑似冬眠を誘導する動物の疑似冬眠誘導方法で
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冬眠を誘導する物
質を用いた動物の疑似冬眠の誘導、維持及び覚醒の方法
に関し、特に、冬眠誘導物質の直接投与ではなく、冬眠
誘導された疑似冬眠状態の動物の血清を他の動物に投与
することにより、前記他の動物を二次的に疑似冬眠誘導
することのできる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば、魚介類が冬眠すること
は、知られていないのが実情である。
【0003】冬眠の要因としては、環境の温度低下がシ
グナルとなって生理的変化が引き起こされ、外界の温度
低下に呼応した体温低下が結果として引き起こされて冬
眠が誘導されるのではないかと考えられている。
【0004】冬眠状態は、体温低下、極端な食欲低下、
及びそれに伴う消化活動の停止と排泄の停止、心機能低
下に伴う心拍数の低下と血圧低下、腎機能の低下に伴う
尿排泄の完全停止等が特徴的である。
【0005】また、冬眠は、正確には、1)恒温期、
2)導入期、3)深い冬眠期、及び4)覚醒期の単位サ
イクルが繰り返される複合状態であると考えられてお
り、哺乳動物は冬眠中でも定期的に自発的な覚醒が行わ
れている。
【0006】従来において、深い冬眠期にある哺乳動物
の血清を、非冬眠期にある同種の動物に導入することに
より、夏期でも冬眠が誘導されることが確認されてい
る。また、非冬眠動物であるサルに深い冬眠期にある哺
乳動物の血清中のアルブミン分画中に含まれる物質を投
与すると、冬眠に近い状態になることが確認されてい
る。
【0007】そこで、本出願人は先に提案した出願特許
「冬眠誘導物質を用いた魚介類の疑似冬眠誘導による活
魚の輸送法」(特願平9ー93857号)において、深
い冬眠期にある哺乳動物の血清もしくはその血清中のア
ルブミン分画に存在する物質、Hibernation Inducing T
rigger(HIT)の投与、また、内因性オピオイドペプ
チド及びオピオイドペプチド受容体のリガンドを魚介類
に投与することにより、魚介類を生理的に冬眠に近い状
態(以下、疑似冬眠と称する。)に誘導、維持すること
ができることを確認した。
【0008】また、疑似冬眠状態に誘導された魚介類
は、疑似冬眠を覚醒させる物質を投与することにより、
疑似冬眠状態から覚醒することが確認されている。
【0009】このように、例えば、魚介類を疑似冬眠に
誘導、維持することが可能であると、保存状態において
生物代謝による酸素消費、排泄物等を低減することがで
き、煩雑な水質管理・温度管理等をすることなく、比較
的高密度な状態で、効率的且つ経済的に活魚の保存・輸
送ができるという利点を有する。
【0010】
【発明が解決しようとした課題】先の出願特許(特願平
9ー93857号)に記載された方法は、直接動物に、
HIT、デルタオピオイドペプチド又はデルタオピオイ
ドペプチド受容体のリガンド等を投与して、疑似冬眠を
誘導している。
【0011】しかし、HITは、深い冬眠期にある哺乳
動物の血液を採取し、HITとして調製するため、その
調製が煩雑であり、その調製量に限界があった。また、
市販のデルタオピオイドペプチド又はデルタオピオイド
ペプチド受容体のリガンド、例えば、メチオエンケファ
リン等は高価であり、大多数の個体にこれらの冬眠誘導
物質を投与する場合、コストの高騰が生じるおそれがあ
った。
【0012】また、冬眠状態にない地リスと冬眠状態に
ある地リスの血清アルブミン分画に存在する、肝プロテ
アーゼ抑制物質の一つであるα2マクログロブリンは異
った制御によって遺伝子が発現されており、冬眠の機構
は系統発生、すなわち、進化の段階で徐々に形成された
ものではないことが想定される。
【0013】例えば、オピオイドペプチドのうちメチオ
ニンエンケファリンは脳内アヘンとして知られており、
動物一般の痛みの緩和に重要であることから、本来冬眠
しない魚介類も、冬眠を引き起こす要素(要因)がすで
に存在していたと考えられ、HIT等の投与により、一
般には冬眠しない動物の冬眠の機構の要素が再編成され
て発現しているものと考えられる。
【0014】そこで、本発明は、冬眠誘導物質が投与さ
れ、疑似冬眠誘導されている動物の血清を採取し、この
血清を用いて他の動物を二次的に疑似冬眠に誘導する動
物の疑似冬眠誘導方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本願第1請求項に記載し
た発明は、動物の疑似冬眠を誘導する方法において、疑
似冬眠を誘導する物質を動物に投与して、疑似冬眠を誘
導し、前記疑似冬眠を誘導された動物の血清を採取し
て、この血清を他の動物に投与することにより、前記他
の動物の疑似冬眠を誘導する動物の疑似冬眠誘導方法で
ある。
【0016】冬眠のメカニズムは未だ未知の部分が多
く、冬眠中の動物の血清中に冬眠誘導物質が含まれてい
ることは確実であるが、その実体が明確となっていな
い。
【0017】この冬眠誘導物質が脳内アヘン様物質の受
容体に働きかけ、若干の温度低下、肝腎の機能低下、食
欲のきわだった低下等の一連の防御反応を引き起こして
いると考えられる。
【0018】変温脊椎動物である魚は冬眠することは知
られていないが、冬眠誘導物質を投与すると、酸素消費
量が低下し、肝腎機能の低下が観測され、恒温動物と同
様に、生理的に冬眠に近い状態(以下、疑似冬眠と称す
る)に制御されることが確認されている。
【0019】冬眠誘導物質の投与により疑似冬眠に誘導
された動物は、既に存在している冬眠の機構が起動され
た状態であり、この動物の情報を他の動物に投与するこ
とにより、前記他の動物も冬眠の機構が作用することが
想定された。
【0020】そこで、本発明は、冬眠誘導物質が投与さ
れて一次的に疑似冬眠が誘導された動物の血清を他の動
物に投与することにより、前記他の動物を二次的に疑似
冬眠に誘導することを可能としている。
【0021】このように、疑似冬眠が誘導された動物の
血清から他の動物の疑似冬眠を誘導することができる
と、冬眠哺乳動物の血清から採取されるHIT、デルタ
オピオイドペプチド等の冬眠誘導物質を各個体ごとに使
用する必要がなくなるため、疑似冬眠誘導を低コストで
行うことが可能となる。
【0022】従って、本発明の疑似冬眠誘導方法によれ
ば、動物に冬眠誘導物質を投与して疑似冬眠に誘導し、
前記疑似冬眠誘導された動物の血清から段階的に他の動
物の疑似冬眠を誘導することができ、動物(例えば、魚
介類)の保存・輸送等を、低コストで効率よく行うこと
が可能となる。
【0023】本願第2請求項に記載した発明は、動物の
疑似冬眠を誘導する方法において、疑似冬眠を誘導する
物質を哺乳動物に投与して、疑似冬眠を誘導し、前記疑
似冬眠を誘導された哺乳動物の血清を採取して、この血
清を他の動物に投与することにより、前記他の動物の疑
似冬眠を誘導する動物の疑似冬眠誘導方法である。
【0024】本発明によれば、例えば、冬眠誘導物質
(オピオイドペプチド等)を投与された哺乳動物(マウ
ス、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ等)の血
清を採取し、この血清を他の動物(魚介類等)に投与す
ることにより、前記血清を投与された魚等を疑似冬眠に
誘導することが可能となる。
【0025】本願第3請求項に記載した発明は、前記請
求項1又は2記載の発明において、冬眠を誘導する物質
が、冬眠中にある動物の血清、Hibernation Inducing T
rigger(HIT)、デルタオピオイドペプチド及びデル
タオピオイドペプチド受容体のリガンドから選択される
1又は2以上の物質である構成の動物の疑似冬眠誘導方
法である。
【0026】冬眠中の哺乳動物の血清中、アルブミン分
画に存在するHibernation InducingTrigger(HIT)、
モルヒネ様効果を示すデルタオピオイドペプチド及びデ
ルタオピオイドペプチド受容体のリガンドを投与するこ
とにより、動物の疑似冬眠を誘導することができる。
【0027】本願第4請求項に記載した発明は、前記請
求項1乃至3いずれか記載の発明において、前記HIT
が冬眠中の冬眠哺乳動物の血清由来のものを使用した動
物の疑似冬眠誘導方法である。
【0028】例えば、深い冬眠期にある哺乳動物血清に
含まれるアルブミン分画をアフィニティクロマトグラフ
ィー法によって単離・精製して得ることができる。得ら
れたアルブミン分画は、凍結乾燥により使用時まで保存
することが可能である。
【0029】本願第5請求項に記載した発明は、前記請
求項1乃至4いずれか記載の発明において、前記デルタ
オピオイドペプチドが、メチオニンエンケファリンであ
る構成の動物の疑似冬眠誘導方法である。
【0030】冬眠を誘導する物質として用いたデルタオ
ピオイドペプチドは、具体的にはメチオニンエンケファ
リン、ロイシンエンケファリン、βーエンドルフィン等
が挙げられる。これは、深い冬眠期になる動物の脳内に
は覚醒期に比べて10倍のメチオニンエンケファリンが
見出されることが確認されているため、メチオニエンケ
ファリン(Tyr-Gly-Gly-Phe-Met)、或は、前記メチオ
ニンエンケファリンと同様の活性を有するペプチド受容
体のリガンドであるDADLE(Tyr-D-Ala-Gly-Phe-D-
Leu)等が好適であることが予測される。
【0031】本願第6請求項に記載した発明は、前記請
求項1乃至5いずれか記載の発明において、冬眠を誘導
する物質が投与されて疑似冬眠状態となっている魚介
類、又は、疑似冬眠状態の魚介類の血清が投与されて疑
似冬眠状態となっている魚介類に、冬眠から覚醒させる
物質を投与し、任意に疑似冬眠から覚醒させる方法を備
えた動物の疑似冬眠誘導方法である。
【0032】このように疑似冬眠状態に誘導された魚介
類を、任意に覚醒させることができると、目的に応じて
活魚等の保存・輸送の利便性を向上させることができ
る。
【0033】本願第7請求項に記載した発明は、前記請
求項6記載の発明において、前記疑似冬眠から覚醒させ
る物質は、カッパオピオイドペプチド、ミューオピオイ
ドペプチド、カッパオピオイドペプチド受容体のリガン
ド、ミューオピオイドペプチド受容体のリガンドから選
択される1又は2以上の物質である動物の疑似冬眠誘導
方法である。
【0034】オピオイドペプチド受容体は、ミュー
(μ)、デルタ(δ)、カッパ(κ)ー受容体等が知ら
れている。このうち、冬眠誘導はデルタオピオイドペプ
チドによって誘導することが確認されている。恒温動物
の冬眠は、覚醒期を含む複数のサイクルが繰り返し行わ
れている状態と考えられ、オピオイドペプチド受容体の
うちミュー及びカッパオピオイドペプチド受容体は覚醒
に関与すると考えられる。
【0035】本願第8請求項に記載した発明は、前記請
求項1乃至7の発明において、前記疑似冬眠を誘導する
物質又は前記疑似冬眠から覚醒させる物質は、所定濃度
を、血管内、腹腔内又は脳髄液内への注射によって投与
する動物の疑似冬眠誘導方法である。
【0036】注射器を用いて、例えば、魚介類に前記疑
似冬眠を誘導する物質又は疑似冬眠から覚醒させる物質
を投与する場合、例えば、血管内投与であれば、尾ビレ
若しくはエラの動脈から投与する。また、腹腔内投与で
あれば、肛門と胸ビレの間の挿入し易い位置で投与す
る。また、脳髄液内投与であれば、頭蓋骨のすぐ後方の
やわらかい部分にそれぞれ投与する。このような投与方
法を用いる場合は、前記疑似冬眠を誘導する物質は、生
理食塩水等のように魚体に影響のない緩衝液を用いて濃
度を調整する。
【0037】注射による投与方法は、成魚又は中型魚、
大型魚に適しており、漁場又は養殖場から市場への輸送
に効果的である。
【0038】本願第9請求項に記載した発明は、前記請
求項1乃至8いずれか記載の発明において、前記疑似冬
眠状態の魚介類又は疑似冬眠から覚醒された状態の魚介
類の血清中のグルタミン酸ーオキザロ酢酸トランスアミ
ナーゼ(GOT)、グルタミン酸ーピルビン酸トランス
アミナーゼ(GPT)、血清尿素窒素(BUN)及び血
清尿酸(UA)からなる群より選択される物質量の測定
により疑似冬眠状態の魚介類及び覚醒された状態の魚介
類の評価を行う動物の疑似冬眠誘導方法である。
【0039】グルタミン酸ーオキザロ酢酸トランスアミ
ナーゼ(GOT)、グルタミン酸ーピルビン酸トランス
アミナーゼ(GPT)、血清尿素窒素(BUN)あるい
は血清尿酸(UA)の測定は、通常、ヒトの血清検査に
おいて用いられる方法が利用できる。これらの測定試薬
等は、キットとしても市販されており、入手が容易であ
るため、これらのキットを用いることにより簡便にこれ
らの要素を測定することができ、前記物質を定量的に測
定することにより疑似冬眠状態の生理活性(特に肝腎機
能)を簡便に把握することができる。
【0040】試料となる魚介類の血清の採取方法は、各
検査に必要な量の試料が魚単体から得られることが望ま
しいが、血清を少量しか採取できない場合は、対象魚等
の数を増やし、これらの血清を採取・混合して試験に供
することができる。血清の採取は、血管に注射器を挿入
して採血するか、あるいは、魚体を開腹し、動脈を切断
して注射器で採取する方法を用いる。
【0041】本願第10請求項に記載した発明は、前記
請求項1乃至8いずれか記載の発明において、前記疑似
冬眠状態の魚介類又は疑似冬眠から覚醒された状態の魚
介類の呼吸量を測定することにより、疑似冬眠状態の魚
介類及び覚醒された状態の魚介類の評価を行う動物の疑
似冬眠誘導方法である。
【0042】呼吸量の測定は、ウィンクラー法、又は、
溶存酸素計(DOメータ)等の測定器機を用いて行う。
呼吸量は、代謝活性の総合的表出であると考えられてい
るので、その増減は全体的な代謝活性の増減を正確に反
映すると考えられている。
【0043】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
【0044】具体的には、疑似冬眠を誘導する物質をニ
ジマスに投与して、疑似冬眠状態に導入し(一次的に誘
導する疑似冬眠)、疑似冬眠誘導物質が投与されたニジ
マスから血清を取り出し、他の動物(トラフグ)に投与
して、前記トラフグを疑似冬眠状態に導入した(二次的
に誘導する疑似冬眠)。
【0045】一次的に疑似冬眠を誘導する物質は、デル
タオピオイドペプチド受容体のリガンドであるDADL
E(大阪ペプチド社製)を用いた。
【0046】一次的な疑似冬眠を誘導される試験対象と
して、ニジマス(学名 Salmo gairdneri)、体重約2
50g、体長25cm〜35cmのものを用いた。
【0047】本例は、冬眠誘導物質を、ニジマスの腹腔
内に注射により投与した。注射による方法を用いたの
は、より一般的な形で、実験上の偏りなく、定量的に冬
眠誘導物質を魚介類に投与するためであるすなわち、ニ
ジマスの肛門から5cm上部の腹に24Gの針を用いた
注射器で、DADLEを投与した。DADLEの投与量
は、対象魚の体重1g当たり5μgとした。
【0048】また、雌雄取り混ぜた10匹のニジマス
に、DADLEを投与した。ニジマスは、生理的誤差を
少なくするため、試験前24時間えさを与えず、また生
理的ストレスを与えないため、地下水がゆっくり通流す
る飼育水槽で飼育されたものを用いた。
【0049】前記ニジマスを前記飼育水槽から取り出
し、DADLEを注射器で腹腔内に投与した後、別の水
槽に放流した。
【0050】その後、冬眠誘導物質投与後20分後の疑
似冬眠状態にあるニジマスの血清を採取した。
【0051】すなわち、疑似冬眠状態にあるニジマスの
尾ビレ近くの血管から注射器で血液1mL〜2mLを採
取した。採取した血液を遠心チューブ内に回収し、遠心
(12,000×g、5分間)し、この上清を血清試料として
得た。
【0052】その後、この血清試料を、他の動物(トラ
フグ)の腹腔内に注射器で投与した。
【0053】本例の二次的な疑似冬眠に誘導される試験
対象は、トラフグ(学名 Fugu rubripes)、10か
月、体重約120g、体長15cm〜20cmのものを
用いた。
【0054】このトラフグの肛門から5cm上部の腹に
24Gの針を用いた注射器でニジマス血清を、対象魚の
体重1g当たり0.2μL投与した。
【0055】また、比較試験として、生理的食塩水を同
方法でトラフグに投与した。
【0056】尚、一次的に冬眠誘導されたニジマスの血
清及び生理的食塩水の投与は、雌雄取り混ぜた10匹の
トラフグに対して各々行った。
【0057】その後、ウィンクラー法(岡宗次郎他、
「実験化学講座」15(分析化学)348頁(195
8))により酸素溶存量(DO)を測定し、単位時間で
の酸素溶存量(DO)の変化から呼吸量を求め、疑似冬
眠誘導効果の評価を行った。
【0058】すなわち、大気中の酸素の影響を減らすた
め、水採取用チューブを取り付けたプラスチック製の密
閉容器中に対象魚であるトラフグを入れ、同密閉容器を
10個用意し、各々について酸素溶存量(DO)を測定
した。
【0059】前記トラフグを入れた密閉容器はフタをし
て、大気を通気し、海水を通流している大型水槽中に入
れた。この状態の密閉容器内の海水を第1試料とした。
また、容器を密閉後20分後の海水を採取し、これを第
2試料とした。この第1試料と第2試料の酸素溶存量
(DO)を各々測定し、その差を魚の体重1g当たり、
密閉容器の体積(5.7L)当たりに換算し、魚の絶対
酸素消費量を1時間当たりの呼吸量として表した(mg
2/gr/hr)。
【0060】この結果を図1に示す。なお、図中グラフ
上のTバーは標準誤差を示す。
【0061】図中1は、比較試験として生理的食塩水を
投与した魚(n=10)の平均の呼吸量であり、、図中
2は、本実施例のDADLEで疑似冬眠誘導されたニジ
マスの血清を投与し、二次的に疑似冬眠誘導された魚
(n=10)の平均の呼吸量を示す。
【0062】図1の結果に示すように、DADLEで一
次的に疑似冬眠誘導されたニジマスの血清が投与され、
二次的に疑似冬眠誘導された魚の呼吸量(図中2)は、
生理的食塩水が投与された魚の呼吸量(図中1)と比較
し、呼吸量が大きく低下しており、呼吸量は、約30%
〜50%低下していることが確認できた。
【0063】すなわち、DADLEで一次的に疑似冬眠
誘導された動物(ニジマス)の血清を投与することによ
り、他の動物(トラフグ)が二次的に疑似冬眠誘導され
ることが確認できる。
【0064】このことから、体温調節機構を持たない変
温動物である魚においても、生理代謝機構が低下するい
わゆる疑似冬眠機構が独立して存在していることが確認
された。しかし、この疑似冬眠の誘導には、哺乳冬眠動
物と共通の疑似冬眠誘導物質が必要であり、自然条件下
では、疑似冬眠に必要な十分量の誘導物質の生産が行わ
れていないものと考えられる。従って、十分量の誘導物
質を与えると、その後の疑似冬眠誘導のための連鎖反応
が起動され、同時に、疑似冬眠を誘導する物質の継続的
な生産も促されて、短時間のうちに、血清中に現れるも
のと考えられる。
【0065】疑似冬眠は、疑似冬眠誘導された魚の血清
又はオピオイドペプチド受容体のリガンド(特にデルタ
オピオイドペプチド受容体のリガンド)により誘導され
るため、冬眠誘導物質は、デルタオピオイドペプチドで
あるか、又は、冬眠誘導機構のフロー中のオピオイドペ
プチドが作用する隣接物質であることが想定できる。
【0066】すなわち、冬眠しない動物には潜在的に冬
眠機構が存在しているが、デルタオピオイドペプチド受
容体のリガンドのような冬眠プロセスをリンクさせるた
めの物質が環境によって誘導されないため、冬眠しない
のではないかと考えられる。
【0067】以上のように、冬眠誘導物質により疑似冬
眠誘導され動物の血清を採取し、他の動物に投与するこ
とにより、前記他の動物を二次的に疑似冬眠誘導するこ
とができると、常に既存の冬眠誘導物質を用いずとも、
動物を疑似冬眠に誘導することができ、疑似冬眠誘導作
用のコスト低減が図れる。また、同種個体の血清投与に
よって疑似冬眠を誘導することが可能であるため、安全
性の点でも優れている。
【0068】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、疑似冬
眠を誘導する物質を動物に投与して、一次的に疑似冬眠
を誘導し、前記疑似冬眠を誘導された動物の血清を採取
して、この血清を他の動物に投与することにより、前記
他の動物の疑似冬眠を二次的に誘導する方法である。
【0069】このように、冬眠誘導物質の直接投与によ
らず、疑似冬眠誘導された動物の血清を利用することに
より、他の動物を疑似冬眠誘導することができるため、
常に冬眠誘導物質に頼ることなく、疑似冬眠を誘導する
ことができ、コストの低減が図れる。
【0070】また、薬物とは異なり、動物が生存のため
に自然状態で産生する物質を含む血清を用いて疑似冬眠
誘導することができるため、安全性の点でも優れてい
る。
【0071】このような疑似冬眠誘導方法を用いること
により、例えば、多量の魚介類を低コストで安全に疑似
冬眠誘導することができ、保存・輸送方法等の改善に大
きく役立つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の具体例に係り、トラフグ各々10匹を
検体として、この検体に対し、比較試験として生理的食
塩水、及び、冬眠誘導物質(DADLE)によって一次
的に疑似冬眠誘導されたニジマスの血清を投与したトラ
フグの呼吸量を示す図である。
【符号の説明】
1 対象試験として生理的食塩水を投与したトラフグ
10匹の呼吸量の平均及び標準誤差 2 DADLE投与により疑似冬眠誘導されたニジマ
スの血清を各々投与したトラフグ10匹の呼吸量の平均
及び標準誤差
フロントページの続き (72)発明者 堀内 三津幸 静岡県磐田郡竜洋町小中瀬776−4 日本 農産工業株式会社中央研究所浜松水産試験 場内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 動物の疑似冬眠を誘導する方法におい
    て、 疑似冬眠を誘導する物質を動物に投与して、疑似冬眠を
    誘導し、 前記疑似冬眠を誘導された動物の血清を採取して、この
    血清を他の動物に投与することにより、前記他の動物の
    疑似冬眠を誘導することを特徴とする動物の疑似冬眠誘
    導方法。
  2. 【請求項2】 動物の疑似冬眠を誘導する方法におい
    て、 疑似冬眠を誘導する物質を哺乳動物に投与して、疑似冬
    眠を誘導し、 前記疑似冬眠を誘導された哺乳動物の血清を採取して、
    この血清を他の動物に投与することにより、前記他の動
    物の疑似冬眠を誘導することを特徴とする動物の疑似冬
    眠誘導方法。
  3. 【請求項3】 冬眠を誘導する物質が、冬眠中にある哺
    乳冬眠動物の血清 Hibernation Inducing Trigger(HI
    T)、デルタオピオイドペプチド及びデルタオピオイド
    ペプチド受容体のリガンドから選択される1又は2以上
    の物質である前記請求項1又は2いずれか記載の動物の
    疑似冬眠誘導方法。
  4. 【請求項4】 前記HITが冬眠中の冬眠哺乳動物の血
    清由来であることを特徴とする前記請求項1又は2いず
    れか記載の動物の疑似冬眠誘導方法。
  5. 【請求項5】 前記デルタオピオイドペプチドがメチオ
    ニンエンケファリンであることを特徴とする前記請求項
    1又は2いずれか記載の動物の疑似冬眠誘導方法。
  6. 【請求項6】 冬眠を誘導する物質が投与されて疑似冬
    眠状態となっている魚介類、又は、疑似冬眠状態の動物
    の血清が投与されて疑似冬眠状態となっている魚介類
    に、冬眠から覚醒させる物質を投与し、任意に疑似冬眠
    から覚醒させる方法を備えたことを特徴とする前記請求
    項1乃至5いずれか記載の動物の疑似冬眠誘導方法。
  7. 【請求項7】 前記疑似冬眠から覚醒させる物質は、カ
    ッパオピオイドペプチド、ミューオピオイドペプチド、
    カッパオピオイドペプチド受容体のリガンド、ミューオ
    ピオイドペプチド受容体のリガンドから選択される1又
    は2以上の物質であることを特徴とする前記請求項6記
    載の動物の疑似冬眠誘導方法。
  8. 【請求項8】 前記疑似冬眠を誘導する物質又は前記疑
    似冬眠から覚醒させる物質は、所定濃度を、血管内、腹
    腔内又は脳髄液内への注射によって投与することを特徴
    とする前記請求項1乃至7いずれか記載の動物の疑似冬
    眠誘導方法。
  9. 【請求項9】 前記疑似冬眠状態の魚介類又は疑似冬眠
    から覚醒された状態の魚介類の血清中のグルタミン酸ー
    オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミ
    ン酸ーピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)、血清
    尿素窒素(BUN)及び血清尿酸(UA)からなる群よ
    り選択される物質量の測定により疑似冬眠状態の魚介類
    及び覚醒された状態の魚介類の評価を行うことを特徴と
    する前記請求項1乃至8いずれか記載の動物の疑似冬眠
    誘導方法。
  10. 【請求項10】 前記疑似冬眠状態の魚介類又は疑似冬
    眠から覚醒された状態の魚介類の呼吸量を測定すること
    により、疑似冬眠状態の魚介類及び覚醒された状態の魚
    介類の評価を行うことを特徴とする前記請求項1乃至8
    いずれか記載の動物の疑似冬眠誘導方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006055501A (ja) * 2004-08-23 2006-03-02 Denso Corp 眠気検出装置及び方法
KR101181868B1 (ko) 2011-01-20 2012-09-11 연세대학교 원주산학협력단 비동면성 동물의 가동면 유도방법
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CN114223607A (zh) * 2021-12-22 2022-03-25 湖南省河洲生态甲鱼养殖有限公司 一种甲鱼运输装置及运输方法

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