【発明の詳細な説明】
化学発光ジアルキル基置換1,2−ジオキセタン化合物、その製造方法およびそ
の使用方法
技術分野
本発明は、酵素および他の化学物質を含む薬剤によってトリガーされて光を発
生することができる化学発光1,2−ジオキセタン化合物に関する。特に、本発明
は、アリール基の置換基であるトリガー可能なX−オキシ基(OX)を有する安定
なアリール基置換1,2−ジオキセタンに関し、この安定な1,2−ジオキセタンはX
の除去により不安定なジオキセタン化合物を形成し、これは分解して光と2つの
カルボニル化合物を生成する。
背景技術a.1,2 −ジオキセタンの調製
コペッキーとマンホールドはジオキセタン(相当するアルケンから順に調製さ
れたβ−ブロモハイドロパーオキサイドの塩基−触媒環化による3,3,4−トリ−
メチル−1,2ジオキセタン(K.R.Kopecky and C.Mumford,Can.J.Chem.,47
,709(1969))の最初の合成方法を報告した。しかし、この方法は種々のアルキル
及びアリール置換1,2−ジオキセタンの生成に用いられているが、ビニルエーテ
ル、ビニルサルファイド、及びエナミンから誘導されたジオキセタンの調製には
使用されていない。
1,2−ジオキセタンへの代わりの合成経路、特にビニルエーテル、ビニルサル
ファイド及びエナミンからの誘導体はハートレット及びシャープ(P.D.Bartlet
t and A.P.Schaap,J.Am.Chem.Soc.,92,3223(1970))そしてマツァー及び
フート(S.Mazur and C.S.Foote,J.Am.Chem.Soc.,92,3225(1970))によ
ってそれぞれ報告されている。光増感剤存在下での酸素分子の適当なアルケン化
合物への光化学的な付加は、高い収率で1,2−ジオキセタンを生成する。この方
法は多数のジオキセタン化合物を生成するのに使用されている。(K.R.Kopecky
in
Chemical and Biological Generation of Excited States,W.Adam and G.Cil
ento,(Eds.),Academic Press,New York,P.85,1982)。
この方法の2つの限界が報告されている。芳香族置換基を有するある種のアル
ケンは光酸素化で、エンドパーオキサイドとして知られている六員環過酸化物を
生成することがわかっている(A.P.Schaap,P.A.Burns and K.A.Zaklika,
J.Am.Chem.Soc.,99,1270(1977))。反応性に富んだアリル水素を有するアル
ケンはしばしば"エン"反応と呼ばれる他の反応を行い、ジオキセタンの代わりに
アリルハイドロパーオキサイドを生成する(A.Baumstark in Advances In Oxyge
netated Process,JAI Presses,Greenwich,CT,1988;Vol.1,pp 31-84)。b. 立体障害アルケンからの熱安定ジオキセタン
ワインバーグ(J.H.Wieringa,J.Starting,H.Wyberg andW.Adam,Tetrah
edron Lett.,169(1972))によって発見されたヒンダードアルケンアダマンチリ
デンアダマンタンから誘導されたジオキサンは、分解に対して37kcal/molの活
性化エネルギーを持ち、25℃において数年の半減期(t1/2)を持つ(N.J.Turro
,G.Schuster,H.C.Steinmetzer,G.R.Faler and A.P.Schaap,J.Am.Che
m.Soc.,97,7110(1975))ことが示された。他には、スピロ−縮合された多環基
、例えば、アダマンチル基が、アミノ置換アルケン(F.McCapra,I.Beheshti,
A.Burford,R.A.Hann and K.A.Zaklika,J.Chem.Soc.,Chem.Comm.,94
4(1977))、ビニルエーテル(W.Adam,L.A.Encarnacion and K.Zinner,Chem
.Ber.,116,839(1983))及びビニルサルファイド(G.G.Geller,C.S.Foote
and D.B.Pechman,Tetrahedron Lett.,673(1983);W.Adam,L.A.Arias and D
.Schuetzow,Tetrahedron Lett.,2835(1982))から誘導されたジオキセタンの安
定性を増加を助け、この基がない場合には不安定になることが示されている。c. ジオキセタンの化学的トリガー
文献の最初の例は、2,3−ジアリール−1,4ジオキセンから誘導された水酸基置
換ジオキセタンに関して記述されている(A.P.Schaap and S.Gagnon,J.Amer
.
Chem.Soc.,104,3504(1982))。しかしながら、水酸基置換ジオキセタンとジア
リール−1,4−ジオキセンから誘導されたジオキセタンの任意の他の例も25℃で
数時間の半減期しか持たず、相対的に不安定である。さらに、これら安定化され
ていないジオキセタンは少量のアミン(T.Wilson,Int.Rev.Sci.: Chem.,Ser
.Two,9,265(1976))及び金属イオン(T.Wilson,M.E.Landies,A.L.Baums
tark,and P.D.Bartlett,J.Amer.Chem.Soc.,95,4765(1973); P.D.Bar
tlett,A.L.Baumstark,and M.E.Landies,J.Amer.Chem.Soc.,96,5557
(1974))によって破壊されてしまうが、両成分は生化学分析の緩衝液に用いられ
ている。アダマンチル安定化ジオキセタンの化学的トリガーの例は最初に米国特
許出願(A.P.Schaap,patent application serial No.887,139,filed July
,17,1986)及び論文(A.P.Schaap,T.S.Chen,R.S.Handley,R.DeSilva
,and B.P.Giri,Tetrahedron Lett.,1155(1987))に発表された。これらのジ
オキセタンは数年の熱的半減期を示し、必要に応じて有効な化学発光を生じさせ
るためにトリガーさせることができる。弱い化学発光を生ずるトリアルキルシリ
ル及びアセチル−保護フェニル基で置換された中程度に安定なベンゾフラニルジ
オキセタンもまた報告されている(W.Adam,R.Fell,M.H.Schulz,Tetrahedr
on,49(11),2227-38(1993); W.Adam,M.H.Schulz,Chem.Ber.,125,2455-
61(1992))。他の剛直多環基の安定化効果もまた報告されている(P.D.Bartlett
and M.Ho,J.Am.Chem.Soc.,96,627(1975); P.Lechtken,Chem.Ber.,1
09,2862(1976))。国際出願(WO94/10258)には、様々な剛直多環置換基を有
するジオキセタンの化学的トリガーが開示されている。d. アダマンチルジオキセタンの酵素トリガー
酵素によって化学発光分解がトリガーされ得るジオキセタンは米国特許出願(A
.P.Schaap,patent application serial No.887,139)及び一連の論文(A.P
.Schaap,R.S.Handley,and B.P.Giri,Tetrahedron Lett.,935(1987); A
.P.Schaap,M.D.Sandison,and R.S.Handley,Tetrahedron Lett.,1159(
1987)and A.P.Schaap,Photochem.Photobiol.,47s,50S(1988))で開示され
ている。保護されたアリールオキサイド置換体を持つ非常に安定なアダマンチル
置換されたジオキセタンは緩衝液中の酵素の作用により、発光を伴う分解がトリ
ガーされ、ジオキセタンの分解速度を飛躍的に増加させる強電子供与アリールオ
キサイド陰イオンを生ずる。結果として、その化学発光は、保護された形のジオ
キセタンの穏やかな熱分解から生ずる化学発光の数オーダー高い強度で放射され
る。シャープの米国特許第 5,068,339号明細書は、蛍光を発する基を共有結合
で有し、酵素でトリガー可能なジオキセタンを開示している。これらジオキセタ
ンの分解は蛍光体への分子内エネルギー転移を通して増強及びレッドシフトされ
た化学発光を生ずる。エドワードの米国特許第 4,952,707号明細書には、アダ
マンチル基及び2,5−又は2,7−二置換されたナフチル基を有し酵素でトリガー可
能なジオキセタンを開示している。ブロンシュタインの米国特許第5,112,960
、第5,220,005号、5,326,882号明細書及び国際出願(8800695)は、塩素原
子、臭化カルボキシ基、水酸基、メトキシ基及びメチレン基を含む様々な基で置
換されたアダマンチル基を有するトリガー可能なジオキセタンを開示している。
刊行物(M.Ryan,J.C.Huang,O.H.Griffith,J.F.Keana,J.J.Volwerk
,Anal.Biochem.,214(2),548-56(1993))は、ホスホリパーゼによってトリガ
ー可能なホスホジエステル置換されたジオキセタンを開示している。ウルデアに
よる米国特許第5,132,204号明細書は、化学発光分解をトリガーするために結
合した2つの保護基を連続的に除去するために異なった2つの酵素を必要とする
ジキセタンを開示している。ヘイスの米国特許5,248,618号明細書は、中間体
を生成する第1保護基を脱離することを酵素的もしくは化学的にトリガーするジ
オキセタンを開示している。この中間体は化学発光分解をトリガーするために、
速やかに分子内反応を行い第2保護基を脱離する。e. 界面活性剤存在下のジオキセタンの化学発光の増強
アンモニウム界面活性剤及び蛍光物質を含む水溶性物質の存在下における、安
定な1,2−ジオキセタンの酵素でトリガーされた分解による化学発光の増強も報
告されている(A.P.Schaap,H.Akhavan,and L.J.Romano,Clin.Chem.,35
(9),1863(1989))。臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)及び5−(
N−テトラデカノイル)アミノ−フルオレセインからなる蛍光ミセルは、中間の
ヒド
ロキシ置換されたジオキセタンを捕捉し、疎水性環境内の励起状態のアニオン系
エステルからミセルへのフルオレセイン化合物への効率的なエネルギー移転によ
って化学発光量子収量を400倍も増加させる。
シャープの米国特許第4,959,182号及び5,004,565号明細書は、化学的にまた
酵素でトリガーされて生ずる安定なジオキセタンの化学発光の、第4級アンモニ
ウム界面活性剤CTAB及び蛍光物質によって形成されるミセルの存在下での増
強の他の例を記載している。CTABと前述した蛍光界面活性剤もしくは1−ヘ
キサデシル−6−ヒドロキシベンゾチアザマイドとで形成された蛍光ミセルは、
ヒドロキシ及びアセトキシ置換されたジオキセタンの塩基でトリガーされた分解
により発光を増強する。CTAB自体がホスフェート置換されたジオキセタンの
発光を増強することもまた報告されている。
ヴォイタ(Voyta)の米国特許第5145772号明細書は、酵素で生じる1,2−ジオキ
セタンの化学発光の、第四級アンモニウム基のペンダントのみまたはフルオレセ
イン(fluorescein)が付加されたポリマーの存在下での増強を開示している。
化学発光を高めるものとして報告されている他の物質には、ウシのアルブミン等
の球状タンパク質や第四級アンモニウム界面活性剤などがある。他のカチオン系
ポリマー化合物は、化学発光エンハンサー(enhancer)として限界的効果を示す
。非イオン系ポリマー化合物は、通常、効果がなく、アニオン系ポリマーのみが
発光を有意に減少させる。国際出願WO94/21821は、高分子のアンモニウム塩
界面活性剤と増強添加剤の組み合わせによる増強を開示している。1993年9月22
日に発行されたアクハブン−タフティ(AKhaven−Tafti)の欧州特許出願第9
2113448.2号明細書は、蛍光エネルギー受容体が共有結合で結合されたポリビニ
ルホスホニウム塩、及びポリビニルホスホニウム塩の存在下、1,2−ジオキサン
から酵素的に生じた化学発光の増強を開示している。1993年6月24日に出願され
たアクハブン−タフティの係属中の米国特許出願No.08/082091は、二陽イオン
ホスホニウム塩の存在下、1,2−ジオキセタンから酵素的に生じた化学発光の増
強を開示している。
当業者に知られているトリガー可能な安定化されたジオキセタンは、剛直なス
ピロ−縮合された多環式置換基又は置換されたスピロアダマンチル置換基を取り
込んでいる。ジオキセタンを調製する出発物質のケトンは比較的高価で入手が困
難か、あるいは高価な前駆体から調製しなければならない。剛直なスピロ−縮合
された多環の有機基の代わりに2つのアルキル基を有する安定なトリガー可能な
ジオキセタンの例は知られていない。このようなトリガー可能な安定化ジオキセ
タンは、安価で容易に入手可能な出発物質から調製でき、それゆえ、商業化を容
易にするコスト有利性を提供するだろう。
発明の開示
本発明の目的は、長期にわたり室温で安定な、ジアルキル及びアリールOX−
置換されたトリガー可能な新規1,2−ジオキセタン化合物を提供することにある
。また、本発明の目的は化学発光を伴う分解をトリガーできる、かかる安定な1,
2−ジオキセタン化合物を提供することにある。さらに、本発明の目的は、安価
で容易に入手が可能な出発物質から調製できるかかる安定1,2−ジオキセタン化
合物を提供することにある。更にまた本発明の目的は、酵素及び他の化学物質を
含む試薬により、化学発光をトリガーできる安定なジオキセタンを含む方法及び
組成物を提供することにある。更にまた本発明の目的は、エンハンサー物質の使
用を通して化学発光を更に増大させるための方法及び組成物を提供することにあ
る。更にまた本発明は、酵素の検出、およびイムノアッセイにおける使用、並び
に当業者に一般に既知であるような、酵素に結合された核酸、抗体および抗原の
検出のための方法および組成物に関する。更にまた本発明の目的は、化学発光の
応用に対する方法及び組成物を提供することにある。
図面の簡単な説明
第1図は、メタノールとジメチルスルフオキサイドとの混合物中の水酸化カリ
ウム溶液の添加によってトリガーした際の、ジメチルスルフオキサイド(DMS
O)中のジオキセタン2c溶液から生じた化学発光のスペクトルである。スペク
トルは、スキャンしている間に生じた化学発光強度についての減衰に対して補正
してある。
第2図は、DMSO中1Mのテトラ−n−ブチルアンモニウム フルオライド
50μLで、ジオキセタン2gの10-6M溶液の10μLアリコートをトリガー
することによって発生した化学発光強度の、時間の関数としてのグラフである。
第3図は、AP1.12×10-17モルの添加によって37℃でトリガーした
本発明のジオキセタン2f又は2k(LUMIGEN PPD,Lumigen,Inc.,Southfield,MI)
を含有する溶液100μLによって生じた化学発光の強度の経時特性の比較を示
すグラフである。試薬は、1)0.2Mの2−アミノ−2−メチル−1−プロパ
ノールでpH9.6の緩衝液中に、ジオキセタン2fを0.33mM溶解する溶
液と、2)0.2Mの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールでpH9.6
の緩衝液中に、ジオキセタン2kを0.33mM溶解する溶液とで構成されてい
る。本発明のジオキセタン2fを使用することが、ジオキセタン2kに比してよ
り高い最高強度を得る上で有利である。
第4図は、AP1.12×10-17モルの添加によって37℃でトリガーした
ジオキセタン2f又は2kを含有する溶液100μLによって生じた化学発光の
強度の経時特性の比較を示すグラフである。試薬は、1)1−(トリ−n−オク
チルホスホニウムメチル)−4−(トリ−n−ブチルホスホニウムメチル)ベン
ゼンジクロリド(エンハンサーA)1.0mg/mLを含有する、0.2Mの2
−アミノ−2−メチル−1−プロパノールでpH9.6の緩衝液中に、ジオキセ
タン2fを0.33mM溶解する溶液と、2)同じエンハンサー1.0mg/m
Lを含有する、0.2Mの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールでpH9
6の緩衝液中に、ジオキセタン2kを0.33mM溶解する溶液とで構成されて
いる。本発明のジオキセタン2fを使用することが、ジオキセタン2kに比して
より全ての時点でより高い光強度を得る上で有利である。
第5図は、AP1.12×10-17モルの添加によって37℃でトリガーした
ジオキセタン2f又は2kを含有する別の一組の溶液100μLによって生じた
化学発光の強度の経時特性の比較を示すグラフである。試薬は、1)ポリビニル
ベンジルトリブチルホスホニウム クロリド(エンハンサーB)0.5mg/m
Lを含有する、0.2Mの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールでpH9
.6の緩衝液中に、ジオキセタン2fを0.33mM溶解する溶液と、2)同じ
エ
ンハンサー0.5mg/mLを含有する、0.2Mの2−アミノ−2−メチル−
1−プロパノールでpH9.6の緩衝液中に、ジオキセタン2kを0.33mM
溶解する溶液とで構成されている。エンハンサーBの調製は、1993年9月2
2日発行の欧州特許第561,033号公報に記載されている。本発明のジオキ
セタン2fを使用することが、ジオキセタン2kに比して全ての時点でより高い
光強度を得る上で有利である。
第6図は、AP1.12×10-17モルの添加によって37℃でトリガーした
ジオキセタン2f又は2kを含有する別の一組の溶液100μLによって生じた
化学発光の強度の経時特性の比較を示すグラフである。試薬は、1)ポリビニル
ベンジルトリブチルホスホニウム クロリドとポリビニルベンジルトリオクチル
ホスホニウム クロリドとのコポリマー(トリブチル基:トリオクチル基は3:
1の比で含有)(エンハンサーC)0.5mg/mLを含有する、0.2Mの2
−アミノ−2−メチル−1−プロパノールでpH9.6の緩衝液中に、ジオキセ
タン2fを0.33mM溶解する溶液と、2)同じエンハンサー0.5mg/m
Lを含有する、0.2Mの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールでpH9
.6の緩衝液中に、ジオキセタン2kを0.33mM溶解する溶液とで構成され
ている。エンハンサーCの調製は欧州特許第561,033号公報に記載されて
いる。本発明のジオキセタン2fを使用することが、ジオキセタン2kに比して
全ての時点でより高い光強度を得る上で有利である。
第7図は、APの量に対する、37℃でトリガーしたジオキセタン2fを含有
する試薬100μLによって発せられた最大の化学発光強度の関係を示すグラフ
である。化学発光は、1.0mg/mLのエンハンサーAを含有する0.2Mの
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールの緩衝液(pH9.6)中にジオキ
セタン2fを0.33mM溶解する溶液100μLに対して、3.36×10-1 6
モル〜3.36×10-22モルの酵素を含有するAP溶液3μLを添加すること
によって37℃で引き起こされた。用語のS−Bとは、APの存在下での相対光
度単位(RLU)における化学発光シグナル(S)を、AP不存在下でのバック
グランドの化学発光(B)に対して補正したものである。グラフは、アルカリホ
スファターゼの直線的な検出について示している。計算した検出限界(バックグ
ラ
ンドの標準偏差の2倍)は、この条件ではアルカリホスファターゼ1.4×10-22
モル、即ち100分子以下であった。
第8図は、化学発光を用いて膜上でアルカリホスファターゼを検出した実験か
ら得た、X線フィルムのデジタルスキャン画像である。1.1×10-15から1
.1×10-18モルまでを含有する、アルカリホスファターゼの水溶液を同一の
ナイロン膜(Micron Separations Inc.,Westboro,MA)に適用した。膜を5分間風
乾し、0.88mMのMgClと0.33mMのジオキセタン2fか又は0.3
3mMのジオキセタン2kかのいずれかとを含有する、0.2Mの2−アミノ−
2−メチル−1−プロパノールのpH9.6の緩衝液中に1mg/mLのエンハ
ンサーAを含有する試薬に、短時間浸漬した。膜を透明なプラスチックのシート
の間に置き、X線フィルム(Kodak X-OMAT AR,Rochester,NY)に暴露した。両試薬
の比較において、本発明のジオキセタン2fを用いた発光は、同等の画像と検出
感度であった。これらの結果は、ジオキセタン2fがウエスタンブロッテイング
、サザンブロッテイング、DNAフィンガープリンテイングや他のブロッテイン
グへの応用に期待されるべき性能を有することを示している。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、酵素及び他の化学物質を含む試薬によってトリガーされて化学発光
を生ずることができる安定な1,2−ジオキサンを有する組成物に関する。本発明
を実施するのに有用な安定なジオキセタンは化学式、
(式中R3とR4はスピロ−縮合されていない有機基で、R1はR2と結合できる有
機基であり、R2はX−オキシ基で置換されたアリール基を示し、X−オキシ基
は、酵素及び他の化学物質を含む試薬によってトリガーされ化学的に不安定な基
Xが除去されると、不安定な酸化物中間体ジオキセタン化合物を形成する。)で
表わすことができる。不安定な酸化物中間体ジオキセタンは分解して電気的エネ
ルギーを放出し、光及び化学式、
で表される2つのカルボニル基を含有する化合物を生成する。本発明を実施する
のに望ましい方法は化学式、
(式中、R1は1〜12の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基及びアリ
ール基から選択され、更にヘテロ原子を有してもよい基であり、R3及びR4は3
〜8の炭素原子を有する分枝状鎖のアルキル基及びシクロアルキル基から選択さ
れる基で、更にヘテロ原子を有していてもよく、熱安定性を付与する基であり、
R2は置換または無置換のアリール基、ビアリール基、ヘテロアリール基、縮合
環の多環アリール基およびヘテロアリール基から選択される基であり、OXは、
酵素及び他の化学物質を含む試薬によって化学的に不安定な基Xの除去がトリガ
ーされると、不安定な酸化物中間体ジオキセタン化合物を生成するX−オキシ基
である)で表される安定ジオキセタンを用いる。
安定な1,2−ジオキセタン化合物は化学試薬によってトリガー可能であるが、
室温(20〜30℃)で比較的長い半減期を持つ。安定でトリガー可能な1,2−ジオ
キセタンの従来の例は全て、熱安定性を与えるためにアダマンチル基や置換され
たアダマンチル基のような剛直なスピロ−縮合された多環アルキル基を使用して
いた。今回、上記構造におけるR3及びR4に対応する、より広い範囲の置換基を
持つ1,2−ジオキセタンが、室温で実質的な熱安定性をも示すことが見出された
。わずか3つの炭素原子を含むアルキル基で置換された(上記構造における置換
基R3及びR4として)ジオキセタン化合物でさえ、室温で約1年の半減期をもち
、4℃で数年の半減期を持つ。ジオキセタン環の炭素原子に結合した炭素原子が
0又は1つの水素原子で置換されているR3及びR4(例えば、イソプロピル、sec
−ブチル、t−ブチル、シクロアルキル)はジオキセタン化合物に十分な熱安定
性を与え実際の用途に対して有用なものにする。R3及びR4はCH2基を介して
ジオキセタン環
に結合しているが、嵩高い基、例えば、ネオ−ペンチル基も本発明の範囲内にあ
ると考えられる。さらに、これらジオキセタンはX基の除去によりトリガーされ
、光の発生を伴って分解する。トリガーによる速度増加の度合いはX基の不安定
性、トリガー試薬の量、溶剤の選択、pH及び温度のような要因に依存する。適
当な条件を選択することにより、106の倍(factor)又はより大きい速度増加が
達成される。
本発明は、化学式、
(式中、R3及びR4は、スピロ−縮合されていない有機基であり、R1は有機基
で、R2と結合できる有機基であり、R2は適当なアルケンに酸素を付加すること
によりX−オキシ基で置換されたアリール基を示す)で表される安定な1,2−ジ
オキセタンの調製に対して容易に入手でき、あるいは安価な出発物質を使用する
方法に関する。本発明の予期できなかった発見は、ここで報告されているアルケ
ンが容易に酸素分子(1重項酸素1O2として)の光化学的付加を起こし、相当す
る1,2−ジオキセタンを生成することである。アリル水素原子を有するアルケン
が異なった反応経路により1重項酸素の付加を優先的に行いアリルハイドロパー
オキサイドを生成し、ジオキセタンの形成はほとんどの場合マイナー過程である
ことが文献でよく知られている。
所要のアルケン化合物は、ハロゲン化遷移金属塩、好ましくは塩化チタニウム
化合物及び第三アミン塩基とともにリチウムアルミニウム水素化物、他の金属水
素化物、極性非プロトン性有機溶媒、好ましくはテトラヒドロフラン中の亜鉛金
属又は亜鉛−銅カップル存在下、X−オキシ基で置換されたアリルカルボキシレ
ートエステルと化学式、
で表されるジアリルケトンとのカップリングを通じて合成される。反応は一般に
還流しているテトラヒドロフラン中で行われ、普通2から24時間で終了する。こ
の方法の有意な点は、ケトン出発物質を大量に入手可能なために、反応を大規模
に行うことができることである。商業的に使用されているトリガー可能なジオキ
セタンはアダマンタノンもしくは置換されたアダマンタノン化合物から調製され
る。アダマンタノンは比較的高価である。置換されたアダマンタノンですら高価
で入手が困難である。危険な酸化物を大量に伴う実験室的操作を含むアダマンタ
ノンの調製と比較して、アルキル及びシクロアルキルケトンは、容易に一般的な
方法でしかも大量に調製できる。他の利点は、ある種のケトン出発物質のコスト
削減である。例えばジイソプロピルケトンはモル当たりアダマンタノンより15か
ら20倍安価である。
トリガー試薬は、1当量(F-)を必要とする化学物質、または少量しか使用
されない酵素のような触媒であり得る。電子供与体、有機及び無機塩基、求核性
試薬及び還元試薬はXを除去するのに使用することができる。トリガー試薬は、
ホスファターゼ酵素、エステラーゼ酵素、コリンエステラーゼ酵素、加水分解酵
素、例えばα−及びβ−ガラクトシターゼ、α−及びβ−グルコシターゼ、グル
クロニターゼ、トリプシン及びキモトリプシンから選択される酵素であるが、こ
れらに制限されない。
OX基には、水酸基、OOCR6基(ここでR6はヘテロ原子を含んでいてもよ
い2〜20の炭素原子を含むアルキル基又はアリール基)、トリアルキルシリルオ
キシ基、トリアリールシリルオキシ基、アリールジアルキルシリルオキシ基、O
PO3 -2塩、OSO3 -塩、β−D−ガラクトシドオキシ基及びβ−D−グルクロ
ニディル
オキシ基が含まれるが、これらに制限されない。
本発明は、化学試薬及び化学式、
(式中、R3及びR4は3〜8の炭素原子を含む低級アルキル基及びシクロアルキ
ル基から選択され、熱安定性を付与する有機基であり、R1はR2と結合できる有
機基であり、R2は、酵素及び他の化学物質を含む試薬により化学的に不安定な
基Xの除去がトリガーされる際、不安定な酸化物中間体ジオキセタン化合物を形
成するX−オキシ基で置換されたアリール基を示す)で表される安定な1,2−ジオ
キセタンの提供を含む発光方法に関する。ここで、不安定な酸化物中間体ジオキ
セタンは分解し、電気的エネルギーを放出し、光及び化学式、
で表される化合物を含む2つのカルボニルを形成する。
本発明はまた、酵素を含む化学試薬から選択されるトリガー試薬の検出方法に関
する。この場合、ジオキセタンが試薬として使用される。
さらに、本発明はイムノアッセイにおける酵素の検出、例えば、酵素免疫検定
法、及び酵素が結合したDNA又はRNAプローブの検出の方法及び組成物に関
する。発光の検出は、ルミノメーター、X線フィルム又はカメラと光学フィルム
を用いて容易に行える。
実施例
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、GE QE300もしくはバリアンジェミニ
300を用い、内部標準物質としてテトラメチルシランを用いたCDCl3溶液、も
しくはCD3ODもしくはD2O溶液で得られた。マススペクトルはAEI MS
−90TMスペクトロメーターを用いて得られた。
実施例1
1−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシ−フェニル)−2,2−ジイソプロピ
ル−1−メトキシエテン(19)の合成
三口フラスコがアルゴンで置換され100mlの無水テトラヒドロフラン(THF)
が投入された。実施例
核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、内部標準としてテトラメチルシランを
用い、CDCl3中の溶液として、又はCD3OD若しくはD2O中の溶液として、GEQE
300か、或はVarian Gemini 300 スペクトロメーターで得
た。マススペクトルはAEI MS−90TMスペクトルメーターで得た。
実施例1.1−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシフェニル)−2,2− ジイソプロピル−1−メトキシエテン(1a)の合成
.
三頸フラスコをアルゴンでパージし、無水のテトラヒドロフラン(THF)
100mLを仕込んだ。フラスコを氷浴で冷却し、3塩化チタン(18g)を攪
拌しながら加えた。水素化リチウムアルミニウム(2.2g)を少量ずつ加えた
ところ、短時間の発熱反応を生じた。水素化リチウムアルミニウムを全部添加し
た後冷却浴を取り外し、トリエチルアミン(16g)を添加した。黒色の混合物
を、アルゴン気流下で1時間還流した。2,4−ジメチル−3−プロパノン(3
.86g)と、メチル3−t−ブチル−ジメチルシリルオキシベンゾエート(3
.00g)との、乾燥THF10mL中溶液を2時間に亘って滴下した。4
%の酢酸エチル/ヘキサンで溶離しながら、シリカプレート上TLCで反応の進
行をモニターした。粗製の反応混合物を室温に冷却し、ヘキサンで希釈し、デカ
ントした。残渣を、総量約700mLのヘキサンを用いて数回洗浄した。ヘキサ
ン溶液の合量を濾過し、蒸発して、残ったオイルをシリカゲル上ヘキサンで溶離
しながら、カラムクロマトグラフィで情製し、2.12g(収率54%)の1a
を得た。1H NMR(CDCl3)δ 7.3-6.7(m,4H),3.18(s,3H),2.45(sept,1H,J=7.2 Hz),
2.31(sept,1H,J=7.2 Hz),1.24(d,6H,J=7.2 Hz),0.99(s,3H),0.91(d,6H,J=7.2 Hz
),0.19(s,3H);13C NMR(CDCl3)δ128.76,122.84,121.46,119.28,56.06,30.3
2,26.54,25.56,21.91,20.86,-4.58;Mass spectrum(m z):348,333,306;exa
ct mass,calc'd.348.2484,found348.2479.実施例2.2,2−ジイソプロピル−1−(3−ヒドロキシフェニル)−1−メ トキシエテン(1b)の合成
.
乾燥THF30ml中アルケン1a、0.97g(2.78mmol)の溶液
に、テトラ−n−ブチル−アンモニウム フルオライド0.81g(1,1eq
.)を加えた。1時間攪拌した後、TLC(シリカで、20%酢酸エチル/ヘキ
サン使用)は、出発物質が新しい化合物に完全に転化したことを示した。THF
を蒸発し、残渣を酢酸エチルに溶解した。酢酸エチル溶液を4回水で抽出し、乾
燥した。シリカゲル(2g)を加え、溶剤を蒸発した。物質を、シリカゲル上1
0〜20%酢酸エチル/ヘキサンで溶離するカラムクロマトグラフィで精製し、
1b、0.568g(収率87%)を得た。1H NMR(CDCl3)δ 7.5-6.5(m,4H),4.
91(s,1H),3.20(s,3H),2.47(sept,1H),2.33(sept,1H),1.25(d,6H),0.92(d,6H);13
C NMR(CDCl3)δ 129.25,124.98,124.98,122.60,116.54,114.98,114.56,5
6.38,30.52,26.80,22.11,21.08;Mass spectrum(m z):234,219,191;exact
mass,calc'd.234.1620,found 234.1620.実施例3.1−(3−アセトキシフェニル)−2,2−ジイソプロピル−1−メ トキシエテン(1c)の合成
.
アルケン1b(200mg,0.85mmol)を、無水ピリジン0.31
mLと、乾燥メチレンクロライド20mLに溶解した。フラスコをアルゴンでパ
ージし、氷浴で冷却した。乾燥メチレンクロライド5mL中のアセチルクロライ
ド(0.115g,1.47mmol)を1時間に渡って滴下した。TLC分析
(シリカで、20%酢酸エチル/ヘキサン使用)は、0℃で攪拌2.5時間後に
反応が完結したことを示した。溶剤を蒸発し、残渣を酢酸エチルに溶解した。溶
液を4回水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、蒸発した。残渣をシリカゲル上10
〜20%酢酸エチル/ヘキサンで溶離するカラムクロマトグラフィで精製し、1
c、220mg(収率93%)を得た。1H NMR(CDCl3)δ 7.37-6.99(m,4H),3.19
(s,3H),2.47(sept,1H,J=6.9 Hz),2.33(sept,1H,J=6.9 Hz),2.29(s,3H),1.24(d,6
H,J=6.9 Hz),0.93(d,6H,J=6.9 Hz);13C NMR(CDCl3)δ 169.46,150.62,149.03
,139.02,133.64,128.95,127.24,122.89,120.72,56.50,30.49,26.98,2
2 06,21.25,21.05.
実施例4.1−(3−ベンゾイルオキシフェニル)−2,2−ジイソプロピル −1−メトキシエテン(1d)の合成
.
アルケン1b(4.5g,1.9mmol)を、無水トリエチルアミン5.
3mLと、乾燥したCH2Cl250mLに溶解した。フラスコをアルゴンでパー
ジし、氷浴で冷却した。ベンゾイルクロリド(4.05g,2.9mmol)を
滴下した。冷却浴を取り外し、室温で1時間攪拌を続けた。混合物を濾過し、溶
液を水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、蒸発した。残渣をヘキサンに懸濁し、固
形分を濾別して溶液を蒸発した。残渣をシリカゲル上でヘキサン中1%の酢酸エ
チルで溶離しながらカラムクロマトグラフィで精製し、ジオキセタン1d、3.
7gを得た:1H NMR(CDCl3)δ 8.25-7.05(m,9H),3.25(s,1H),2.54(sept,1H,J=6.
9 Hz),2.40(sept,1H,J=6.9 Hz),2.29(s,3H),1.26(d,6H,J=6.9 Hz),0.95(d,6H,J=
6.9 Hz).
実施例5.1−(3−ピバロイルオキシフェニル)−2,2−ジイソプロピル −1−メトキシエテン(1e)の合成
.
アルケン1b(2g,8.6mmol)を、無水トリエチルアミン2.4m
Lと、乾燥したCH2Cl250mLに溶解した。フラスコをアルゴンでパージし
、氷浴で冷却した。ピバロイルクロリド(1.6g,2eq.)を1時間に渡っ
て滴下した。冷却浴を取り外し、室温で3時間攪拌を続けた。溶液をK2CO3の
水溶液で、次いで水で洗浄し、MgSO4で乾燥し蒸発した。残渣をシリカゲル
上で、ヘキサン中5%トリエチルアミンで溶離しながら、カラムクロマトグラフ
ィで精製し、ジオキセタン1e、1.95gを得た。1H NMR(CDCl3)δ 7.34-6.9
8(m,4H),3.198(s,3H),2.47(sept,1H),2.33(sept,1H),1.36(s,9H),1.24(d,6H,J=6
.9Hz),0.92(d,6H,J=6.9 Hz).
実施例6.2,2−ジイソプロピル−1−メトキシ−1−(3−ホスホリルオ キシフェニル)エテン ジナトリウム塩(1f)の合成
.
(a)乾燥したCH2Cl2 9mLと、無水ピリジン0.7mL(8.7mm
ol)との溶液をアルゴンでパージし、氷浴で冷却した。ホスホラスオキシクロ
ライド(0.40g,2.6mmol)を加え、5分後に、ピリジン0.4mL
中アルケン1b(209mg,0.87mmol)を加えた。溶液を室温で1時
間攪拌した。TLC分析(シリカで、30%酢酸エチル/ヘキサン使用)は、反
応が完結したことを示した。溶剤を蒸発し、残渣を次工程に利用した。
(b)工程(a)からの生成物をCH2Cl2に溶解し、ピリジン0.7mL
を加えた。溶液を氷浴で冷却し、2−シアノエタノール618mg(8.7mm
ol)で処理した。氷浴を取り外し、2時間室温で攪拌を続けた。次に混合物を
濃縮し、残渣をシリカゲル上でヘキサン中50%の酢酸エチルから100%の酢
酸エチルまで、なだらかに変えながら溶離して、カラムクロマトグラフィで精製
しビス(シアノエチルホスフェート)を得た:1H NMR(CDCl3)δ0.934(d,6H,J=9
Hz),1.235(d,6H,J=9 Hz),2.38-2.45(m,2H),2.76-2.82(m,4H),3.18(s,1H),4.31-4
.47(m,4H),7.11-7.38(m,4H).
(c)ビス(シアノエチルホスフェート)アルケン(420mg)をアセト
ン4mLに溶解した。水酸化ナトリウム(65mg)を水1mLに溶解し、アセ
トン溶液に加え、次いで夜通し攪拌した。沈殿を集め、乾燥して白色粉末とした
。1H NMR(D2O)δ 0.907(s,3H),0.929(s,3H)1.20(s,3H),1.22(s,3H),2.35 2.46(m
,2H),3.23(s,1H),6.96-7.37(m,4H);13C NMR(D2O)δ 155.15(d),149,56,137.84,
136.08,129.71,124.55,122.33(d),120.48,57.16,31.27,27.21,22.49,2
1.10;31P NMR(D2O)(rel.To ext.H3PO4)δ 0.345
実施例7.1−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシフェニル)−2,2− ジシクロプロピル−1−メトキシエテン(1g)の合成
.
三頸フラスコをアルゴンでパージし、無水THF50mLを仕込んだ。フラ
スコを氷浴で冷却し、3塩化チタン(11.6g)を攪拌しながら加えた。水素
化リチウムアルミニウム(1.4g)を少量ずつ加えて、短時間の発熱反応を生
じさせた。水素化リチウムアルミニウムを添加する間、攪拌を助ける為、無水T
HF20mL分を追加した。添加し終わった後冷却浴を取り外し、黒色の混合物
を還流するようにした。トリエチルアミン(10.5mL)を加え、黒色の混合
物をアルゴン雰囲気下1時間還流した。ジシクロプロピルケトン(2.61g)
と、メチル 3−t−ブチル−ジメチルシリルオキシベンゾエート(2.00g
)との、乾燥THF20mL中溶液を75分間に渡って滴下した。反応は、5%
の酢酸エチル/ヘキサンで溶離しながら、シリカプレート上TLCでモニターし
て、更に1時間の還流後に、完結したと判断された。粗製の反応混合物を室温に
冷却し、ヘキサン400mLずつで4回抽出した。ヘキサン溶液の合量を濾過し
蒸発して、残った黄色オイル1.42gを、生成物アルケン1aを溶離するため
、先ずヘキサンで、次いで20%酢酸エチル/ヘキサンで溶離しながら、シリカ
ゲル上カラムクロマトグラフィで精製した。シリカ上で5%酢酸エチル/ヘキサ
ンで溶離しながら用意したTLCで更に精製した。1HMR(CDCl3)δ 7.3-6.7(m,4H
),3.36(s,3H),1.80(m,1H),1.13(m,1H),0.988(s,9H),0.78-0.67(m,4H),0.43-0.37
(m,2H),0.19(s,6H),0.11-0.05(m,2H).実施例8.1−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシフェニル)−2,2−ジ シクロヘキシル−1−メトキシエテン(1h)の合成
.
乾燥したTHF中メチル3−t−ブチルジメチルシリルオキシベンゾエート
4.3gと、ジシクロヘキシルケトン9.5gとの混合物を、乾燥したTHF1
50mL中TiCl3 25g、LiAlH4 3.0g及びトリエチルアミン16
.4gで作ったチタン試薬を用い、実施例5の操作に従って結合させ
た。ヘキサン抽出後得た粗製生成混合物(10g)を、先ずヘキサンで次いで1
%の酢酸エチル/ヘキサンで溶離しながらシリカゲル上でカラムクロマトグラフ
ィで精製した。アルケン1eの収量は3.5g(収率51%)であった。1H NMR
(CDCl3)δ 7.22-7.16(m,1H),6.85-6.72(m,3H),3.155(s,3H),2.05-0.86(m,22H),0
.995(s,9H),0.21(s,6H).実施例9.2,2−ジシクロヘキシル−1−(3−ヒドロキシフェニル)−1− メトキシエテン(1i)の合成
.
アルケン1f0.7gの乾燥THF溶液に、テトラ−n−ブチルアンモニウ
ム フルオライド0.62g(1.2eq.)を滴下した。1時間攪拌の後、T
LC(シリカで20%酢酸エチル/ヘキサン使用)により出発物質が完全に新化
合物に転化したことが示された。THFを蒸発し、残渣を酢酸エチルに溶解した
。酢酸エチル溶液を水で抽出し、MgSO4で乾燥した。該物質をヘキサン中0
〜10%の酢酸エチルで溶離しながらシリカゲル上でカラムクロマトグラフィで
精製し、1f、0.46g(収率92%)を得た。アルケンをベンゼン/ヘキサ
ン(1:6)中で4℃にて結晶化により、更に精製した。1H NMR(CDCl3)δ 7.20
-6.72(m,4H),4.72(s,1H),3.174(s,3H),2.06-1.04(m,22H);13C NMR(CDCl3)δ 155
.19,138,20,131.97,129.05,122.50,116.36,114.39,56.48,41.51,39.34
,31.40,30.92,27.50,26.37,26.25,25.99;Mass spectrum(m z):314,231,12
1;exact mass,calc'd.314.2246,found314.2246.
実施例10.1,2−ジオキセタンの合成.
光酸素添加工程。方法A。標準的には、アルケンのサンプル100mgを、
光酸素添加チューブ中でメタノールとメチレンクロリドとの1:1混合物20m
Lに、溶解した。ポリスチレンに結合したローズベンガル(Rose Bengal)約20
0mgを加え、酸素バブラーに接続した。ドライアイス/2−プロパノール又は
氷水を含有する、半銀メッキしたデュアーびんに浸漬しながら、該装置を通して
ゆっくりと酸素を通気した。連続的に酸素をバブルしながら、紫外線防止フィル
ターとして5ミル(mil)のカプトン(Kapton)(DuPont,Wilmington,DE)のフィルム
を通して、サンプルに400Wのナトリウムランプ(GE Lucalox)を照射した。反
応の進行をTLC又は1H NMRでモニターした。ポリマーと結合した増感剤を濾
別し、溶剤を室温で蒸発することにより、ジオキセタン化合物を単離した。更な
る精製は、シリカゲル上カラムクロマトグラフィか又は必要ならば適当な溶剤か
らの結晶化によって行うことができた。
方法B。上記と異なり、多くの場合、光増感剤として、メチレンブルーを使
用した。約100mgを反応溶剤10mL中に溶解し、上記の如く照射を行った
。この方法で調製したジオキセタンを、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィ
によって精製した。
実施例11.4−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシフェニル)−3,3−ジイ ソプロピル−4−メトキシ−1,2−ジオキセタン(2a)の合成
.
アルケンのサンプル102.8mgを、−78℃で方法Bにより合計9時間光酸素
添加した。溶剤を蒸発し、プレートを溶離するのに4%酢酸エチル/ヘキサンを
用いて、分散TLCにより混合物を精製した。ジオキセタン2aの収量は55.9mg
(収率50%)であった。1H NMR(CDCl3)δ 7.6-6.7(m,4H),3.14(s,3H),2.61(sept
,1H),2.46(sept,1H),1.30(d,1H),1.18(d,1H),1.00(s,3H),0.92(d,1H),0.46(d,1H
),0.20(s,3H);13C NMR(CDCl3)δ 155.88,137.07,129.41,114.526,98.57,49
.46,33.51,29.24,25.79,19.43,18.51,17.29,16.69,-4.32.
実施例12.3,3−ジイソプロピル−4−(3−ヒドロキシフェニル)−4 −メトキシ−1,2−ジオキセタン(2b)の合成
.
アルケン1b(83.2mg)を、−78℃で方法Bにより合計3時間光酸素添加し
た。溶剤を蒸発し、残渣を酢酸エチルに溶解し、プレートを溶離するのに20%酢
酸エチル/ヘキサンを用いて、分散TLCにより混合物を精製した。ジオキセタ
ン2bの収量は79mg(収率84%)であった。1H NMR(CDCl3)δ 7.4-6.8(m,4H),3.
2(s,3H),2.62(sept,1H),2.48(sept,1H),2.08(s,1H),1.30(d,3H),1.17(d,3H),0.9
0(d,3H),0.47(d,3H);13C NMR(CDCl3)δ 156.00,137.21,129.70,116.41,114.
61,98.97,49.58,33.55,29.35,19.46,18.56,17.31,16.65.
実施例13.4−(3−アセトキシフェニル)−3,3−ジイソプロピル−4− メトキシ−1,2−ジオキセタン(2c)の合成
.
アルケンのサンプル63mgを、−78℃で方法Bにより合計6.5時間光酸素添
加した。溶剤を蒸発し、残渣を酢酸エチルに溶解し、プレートを溶離するのに20
%酢酸エチル/ヘキサンを用いて、分散TLCにより混合物を精製した。ジオキ
セタン2cの収量は56mg(収率80%)であった。1H NMR(CDCl3)δ 7.37-6.99(m,
4H),3.14(s,3H),2.59-2.42(m,2H),2.32(s,3H),1.30(d,3H,J=7.2 Hz),1.17(d,3H,
J=7.2 Hz),0.91(d,3H,J=7.2 Hz),0.46(d,3H,J=7.2 Hz);13C NMR(CDCl3)δ150.89
,137.34,129.39,122.73,114.07,98.34,49.60,33.54,29.31,21.22,19.
44,18.53,17.17,16.59.
実施例14.4−(3−ベンゾイルオキシフェニル)−3,3−ジイソプロピル −4−メトキシ−1,2−ジオキセタン(2d)の合成
.
アルケンのサンプル3.7gを、アセトンとCH2Cl2との1:1混合物500mL
と、メチレンブルー100mgとを用いて、−78℃で方法Bにより合計19時間光酸
素添加した。反応の進行を1H NMRでモニターした。溶剤を蒸発し、残渣を酢酸エ
チルに溶解し、溶離剤としてヘキサンを用い、カラムクロマトグラフィにより混
合物を精製した。1H NMR(CDCl3)δ8.22-7.0(m,9H),3.184(s,3H),2.62-2.46(m,2H
),1.30(d,3H,J=7.2 Hz),1.20(d,3H,J=7.2 Hz),0.94(d,3H,J=7.2 Hz),0.52(d,3H,
J=7.2 Hz);13C NMR(CDCl3)δ151.09,137.32,133.72,130.18,129.33,128.61
,122.66,98.24,49.48,33.44,29.22,19.32,18.42,17.11,16.48.
実施例15.4−(3−ピバロイルオキシフェニル)−3,3−ジイソプロピル −4−メトキシ−1,2−ジオキセタン(2e)の合成
.
アルケンのサンプル1.95gを、アセトンとCH2Cl2との1:1混合物300m
Lを用いて、4℃で方法Bにより合計2.5時間光酸素添加した。反応の進行を1H
NMRでモニターした。溶剤を蒸発し、残渣を酢酸エチルに溶解し、溶離剤として
ヘキサンを用い、カラムクロマトグラフィにより混合物を精製した。1H NMR(CDC
l3)δ 7.43-7.07(m,4H),3.14(s,3H),2.59-2.42(m,2H),1.37(s,9H),1.31(d,3H,J=
6.9 Hz),1.17(d,3H,J=6.9 Hz),0.92(d,3H,J=6.9 Hz),0.47(d,3H,J=6.9 Hz).
実施例16.4−(3−ホスホリルオキシフェニル)−3,3−ジイソプロピ ル−4−メトキシ−1,2−ジオキセタン,ジナトリウム塩(2f)の合成
.
アルケンのサンプル64mgを、方法Bに従い、0℃でD2Oの3mL中に
て合計1.5時間光酸素添加した。結晶化を誘導するため、溶液を4℃にて貯蔵
した。白色結晶を濾過し、アセトンで洗浄し、乾燥した。1H NMR(D2O)δ 7.43-7
.14(m,4H),3.132(s,3H),2.63-2.53(m,2H),1.225(d,3H,J=7.5 Hz),1.123(d,3H,J=
7.5 Hz),0.892(d,3H,J=6.6 Hz),0.475(d,3H,J=6.6 Hz);31P NMR(D2O)(rel.To ex
t.H3PO4)δ 0.248.
D2O/p−ジオキサン、メタノール、メタノール/CH2Cl2を含め、用い
られる全ての他の溶剤系は数時間の反応時間を要し、かなりの量の分解生成物を
生じることは、注目すべきことである。実施例17.4−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシフェニル)−3,3− ジシクロプロピル−4−メトキシ−1,2−ジオキセタン(2g)の合成
.
アルケンのサンプル25mgを、−78℃で方法Aにより、合計1時間光酸
素添加した。1H NMRは、溶液がジオキセタン対アルケン3:1の混合物と、エス
テル分解生成物少量を含有することを示した。照射をこの時点で止め、増感剤を
濾別した。溶剤を蒸発し、混合物をキシレン溶液として速度論的測定に用いた。1
H NMR(CDCl3)ジオキセタンによるピーク:δ 7.6-6.7(m,4H),3.14(s,3H),1.80(
m,1H),1.2-1.0(m,9H),0.991(s,9H),0.221(s,6H).
実施例18.4−(3−t−ブチルジメチルシリルオキシフェニル)−3,3− ジ シクロヘキシル−4−メトキシ−1,2−ジオキセタン(2h)の合成
.
アルケン1fのサンプル2.0gを、−78℃で方法Bにより合計8.5時間光酸素添
加した。溶剤を蒸発し、残渣をヘキサンに溶解し濾過した。有機溶液を蒸発し、
固体残渣をカラムクロマトグラフィにより精製した。生成物の収量は2.0g(収
率93%)であった。1H NMR(CDCl3)δ 7.26-6.85(m,4H),3.143(s,3H),2.3-0.5(m,
22H),0.995(s,9H),0.205(s,6H);13C NMR(CDCl3)δ155.57,136.82,129.10,122
-121(several unresolved),114.56,104.39,97.31,49.49,45.18,41.79,28
.71,28.07,27.80,27.17,26.95,26.83,26.74,26.30,25.68,18.24,-4.3
8.
実施例19.3,3−ジシクロヘキシル−4−(3−ヒドロキシフェニル)−4− メトキシ−1,2−ジオキセタン(2i)の合成
.
アルケン1gのサンプル150mgを、−78℃で方法Bにより合計1.5時間光酸
素添加した。溶剤を蒸発し、残渣をヘキサンに溶解し、濾過した。沈澱を20%酢
酸エチル/ヘキサン10mLで洗浄し、有機溶液を蒸発した。プレートを溶離する
のに20%酢酸エチル/ヘキサンを用いて、分散TLCにより固体残渣を精製した
。生成物の収量は120mg(収率72%)であった。1H NMR(CDCl3)δ 7.34-6.93(m
,4H),5.30(s,1H),3.163(s,3H),2.23-0.56(m,22H);13C NMR(CDCl3)δ155.55,137
.
02,129.42,116.23,116.12,114.62,104.36,97.88,49.60,45.28,41.78,
28.70,28.09,27.75,27.14,26.90,26.86,26.72,26.37.
実施例20.1−(トリ−n−オクチルホスホニウムメチル)−4−(トリ− n−ブチルホスホニウムメチル)ベンゼン ジクロリドの合成
.
エンハンサーA.
(a)トルエン(50mL)中、トリ−n−ブチルホスフィン(7g,34
.6mmol)の混合物を、アルゴン気流下トルエン(200mL)中、α,α
’−ジクロロ−p−キシレン(12.1g,69.2mmol,2eq.)の混
合物に滴下した。反応混合物をアルゴン気流下室温で12時間攪拌した後、4−
(クロロメチル)ベンジル−トリ−n−ブチルホスホニウムクロリドが溶液から
晶出した。結晶を濾過し、トルエンとヘキサンで洗浄し風乾した。1H NMR(CDCl3
)δ 0.92(t,9H),1.44(m,12H),2.39(m,6H),4.35-4.40(d,2H),4.56(s,2H),7.36-7.
39(d,2H),7.47-7.51(dd,2H).
(b)室温でDMF中、4−(クロロメチル)ベンジル−トリ−n−ブチル
−ホスホニウムクロリド(3g,7.9mmol)の混合物に、アルゴン気流下
でトリ−n−オクチルホスフィン(4.39g,12mmol)を加えた。反応
混合物を数日間攪拌しておき、その後TLC測定で、反応が完結していることが
判った。DMFを減圧下に除去し、残渣をヘキサンとトルエンとで数回洗浄し、
次いで乾燥して、1−(トリ−n−オクチルホスホニウムメチル)−4−(トリ
−n−ブチルホスホニウムメチル)ベンゼン ジクロリドを白色結晶として得た
。1H NMR(CDCl3)δ 0.84(t,9H),0.89(t,9H),1.22(br s,24H),1.41(m,24H),2.34(
m,12H),4.35-4.40(d,4H),7.58(s,4H);13C NMR(CDCl3)δ 13.34,13.94,18.33,
18.62,18.92,19.21,21.76,21.81,23.58,23.64,23.78,23.98,26.10,26
.65,28.86,30.68,30.88,31.53,129.22,131.22;31P NMR(D2O)δ 31.10,31
.94.
実施例21.化学発光速度(Kinetics)の測定.
化学発光の強さと速度(rate)の測定は、ターナー デザインズ(Turner Desi
gns)(Sunyvale,CA)型TD−20eルミノメーターか、又は光子計数の光電子増
倍管を用いた屋内固定式のルミノメーター(Black Box)を使用して行った。ルミ
ノメーターで分析したサンプルの温度調節は、装置に接続した循環浴によって行
った。ターナー ルミノメーターでの光強度の定量的測定は、濃度フィルターに
よって検出器の104の直線領域を超えて拡張された。データの収集はルミソフ
ト・データリダクションプログラム(LUMISOFT data reduction program)(Lumige
n,Inc.,Southfield,MI)を用いて、アップルマッキントッシュSE/30コンピ
ューターでコントロールした。
ジオキセタン2c、h及びiの熱分解活性化エネルギーを、幾通りかの温度
でキシレンの希釈溶液の化学発光の減衰についての1次速度定数kを測定するこ
とにより決定した。
実施例22.化学発光及び蛍光発光のスペクトル.
化学発光及び蛍光発光のスペクトルを、1cmの石英製キュベットでフルオ
ロログ(Fluorolog)II蛍光計(Spex Ind.,Edison,NJ)を用いて測定した。全測定は
周囲温度で行った。スペクトルは、光強度が恒常的水準に達した時にスキャンす
るか、又はスキャンの間光強度の減衰に対して補正をした。第1図は、1:1の
メタノール/DMSO中のKOHの溶液少量の添加によってトリガーされた、D
MSO中のジオキセタン2cの分解からの典型的な化学発光スペクトルを示して
いる。発光は、メチル3−ヒドロキシベンゾエートの陰イオンの励起状態から
生じている。DMSO中の本発明の各ジオキセタンの、トリガーされた分解がこ
の励起状態を発生させる。
実施例23.ジオキセタン2c、g、iの化学発光的分解の化学的トリガー.
ジオキセタン2c、2e、2gと、比較例として4−(3−t−ブチルジメチ
ルシリルオキシフェニル)−4−メトキシ−スピロ[1,2−ジオキセタン−3
,2’−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン](2j)、(調製は米国特
許第4,962,192号明細書に記載)とを、DMSO中10-6Mの濃度にし
た。必要に応じて、DMSOでの一連の希釈を行った。10μLのアリコートを
、ターナー デザインズのTD−20eルミノメーターの中の7×50mmのポ
リプロピレン・チューブで、適当な溶剤、代表的にはDMSO中で、テトラ−n
−ブチルアンモニウム・フルオライド(TBAF)のDMSO溶液(1M〜10-4
M)50μLの注入によってトリガーした。全ての実験は周囲温度で行った。
ピークの光強度と減衰率はフルオライド濃度が減少するに従って減少した。フル
オライドの最小濃度では、減衰速度は明確な一次ではなかった。DMSO又はD
MF中のジオキセタン2a−e及び2g−iから化学発光を生じることが見いだ
された他のトリガー試薬には、ヒドラジン、水酸化カリウムとテトラアルキルア
ンモニウム・ヒドロキサイド、アルカリ金属のアルコキサイトとテトラアルキル
アンモニウム・アルコキサイド、及びアジ化ナトリウムがある。少量の(<5%
)プロトン共通溶媒、例えばメタノール、エタノール又は水をDMSO中のトリ
ガー試薬を溶解するのに用いることができる。
化学発光の持続時間と強度は、溶剤の選択、トリガー試薬及びジオキセタン
とトリガー試薬との比によって変えることができる。本発明を実施するために適
する溶媒には、反応物が溶解する任意非プロトン溶媒があり、特に極性溶媒、例
えばDMSO、ジメチルフォルムアミド、アセトニトリル、p−ジオキサン等が
好ましい。反応は、反応物の1つだけが溶解し、他は媒体中に未溶解で供給され
るような、例えば炭化水素溶媒中で処理することもできる。この場合には、発光
は未溶解の反応物の表面から起こる。
実施例24.ジオキセタン2c、h、iのトリガーされた分解の速度.
第2図は、DMSO中1MのTBAF・50μLで、ジオキセタン2hの1
0-6M溶液の10μLアリコートをトリガーする際の、代表的な化学発光強度の
特性を示す。ジオキセタン溶液の、10倍希釈系によるトリガーによって、10-9
M溶液が、バックグランドの1.5倍のシグナルを示すことが判った。化学発
光の減衰曲線は全て、擬似1次の反応速度を示した。減衰に関する半減期は、ジ
オキセタンの濃度と本質的に無関係である。
ジオキセタン2c、h、i及びjの、フルオライドでトリガーした分解の速度
を、DMSO中で同一条件の下、即ちDMSO中1MのTBAF50μLととも
にジオキセタン10-6M溶液の10μLアリコートで、比較をした。この条件で
は、4種のジオキセタンは全て本質的に同一の速度で反応することが判った。
実施例25.相対的化学発光の量子収率の測定.
ジオキセタン2c、g、h及びiの、フルオライドでのトリガーによって発
生した全化学発光強度を、DMSO中で同一条件の下、即ちDMSO中1MのT
BAF50μLでのジオキセタン10-6M溶液の10μLアリコートについての
条件の下で、比較をした。正確な値を再現するのは、困難であった。しかし、全
ての4種のジオキセタンはこれらの条件の下で、2つのファクターの範囲内で同
じ化学発光の出力を出すことが見いだされた。ジオキセタン2hに対して化学発
光効率25%という報告(A.P.Schaap,T.-S.Chen,R.S.Handley,R.DeSilva and B.
P.Giri,Tetrahedron Lett.,1155(1987))に基づき、本発明のジオキセタンは、D
MSO中でのトリガーに際して、高効率で化学発光を生じることが見いだされた
。
実施例26.ジオキセタン2f、又は2kを含有する溶液の化学発光強度−反 応速度特性の比較
.
本発明のホスフェート・ジオキセタン2fの予期せぬ利点を示す為に、市場
で購入し得るジオキセタン、4−メトキシ−4−(3−ホスホリルオキシフェニ
ル)スピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−トリシクロ[3.3.1.13, 7
]デカン],ジナトリウム塩,(LUMIGENPPD,Lumigen,Inc.,Southfield,MI)、ジ
オキセタン2kに対して、アルカリ緩衝溶液中でアルカリホスファターゼ(AP
)によって誘発される、ジオキセタン2fからの化学発光の経時的過程につき比
較した。第3図は、1つは本発明のジオキセタン2dを0.33mM含有し、他
は同じ緩衝液にジオキセタン2kを0.33mM含有する、2種の組成物からの
、37℃における経時特性と相対的化学発光強度とを示す。ジオキセタン溶液1
00μLに対して1.12×10-17モルのAPの添加によって、発光を起こさ
せた。本発明のジオキセタン2fを含有する試薬は、有意に高い最高強度に到達
した。実施例27.ジオキセタン2f、又は2kを含有する溶液の化学発光強度−反応 速度特性の比較
.
第4図は、一つは本発明のジオキセタン2fを0.33mMと1−(トリ−n
−オクチルホスホニウムメチル)−4−(トリ−n−ブチルホスホニウムメチ
ル)ベンゼンジクロリド(エンハンサーA)1.0mg/mLとを含有し、他は
ジオキセタン2kを0.33mMと同じエンハンサー1.0mg/mLとを含有
する、2種の組成物からの、37℃における経時特性と相対的化学発光強度とを
示す。ジオキセタン溶液100μLに対して1.12×10-17モルのAPの添
加によって、発光を起こさせた。本発明のジオキセタン2fを含有する試薬は、
全ての時点でより高い光強度を達成した。実施例28.ジオキセタン2f、又は2kを含有する溶液の化学発光強度−反応 速度特性の比較
.
第5図は、一つは本発明のジオキセタン2fを0.33mMとポリビニルベン
ジルトリブチルホスホニウム クロリド(エンハンサーB)0.5mg/mLと
を含有し、他はジオキセタン2kを0.33mMと同じエンハンサー1.0mg
/mLとを含有する、2種の組成物からの、37℃における経時特性と相対的化
学発光強度とを示す。ジオキセタン溶液100μLに対して1.12×10-17
モルのAPの添加によって、発光を起こさせた。本発明のジオキセタン2fを含
有する試薬は、全ての時点でより高い光強度を達成した。実施例29.ジオキセタン2f、又は2kを含有する溶液の化学発光強度−反応 速度特性の比較
.
第6図は、一つは本発明のジオキセタン2fを0.33mMと、ポリビニル
ベンジルトリブチルホスホニウム クロリドとポリビニルベンジルトリオクチル
ホスホニウム クロリドとのコポリマー(トリブチル基:トリオクチル基は3:
1の比で含有)(エンハンサーC)0.5mg/mLとを含有し、他はジオキセ
タン2kを0.33mMと同じエンハンサー0.5mg/mLとを含有する、2
種の組成物からの、37℃における経時特性と相対的化学発光強度とを示す。ジ
オキセタン溶液の100μLに対して1.12×10-17モルのAPの添加によ
って、発光を起こさせた。本発明のジオキセタン2fを含有する試薬は、全ての
時点でより高い光強度を達成した。実施例30.ジオキセタン2fでのアルカリホスファターゼ検出の直線性と感度
.
ジオキセタン2fを含有する、本発明の試薬組成物を用いたAP検出の直線性
を測定した。96ウエルのミクロプレートにおける48ウエルの夫々に、0.8
8mMのMg+2と1.0mg/mLのエンハンサーAとを含有する、0.2Mの
2−メチル−2−アミノ−1−プロパノールのpH9.6の緩衝液中に0.33
mMの2fを溶解する溶液100μLを添加した。プレートを37℃でインキュ
ベートし、化学発光を、3.36×10-16モル〜3.36×10-22モルの酵素
を含有するAP溶液3μLを添加することによって引き起こした。光強度を10
分で測定した。第7図は、アルカリホスファターゼの直線的な検出を示すもので
ある。用語のS−Bは、アルカリホスファターゼ(AP)の存在下でのRLUに
おける化学発光シグナル(S)を、AP不存在下でのバックグランドの化学発光
(B)に対して補正したものである。計算した検出限界(バックグランドの標準
偏差の2倍)は、この条件ではAP2.0×10-22モル、即ち120分子であ
った。実施例31.化学発光の量子収量の比較
0.88mMのMg+2と表4に記載した如き、選ばれたエンハンサーとを含有
する、0.2Mの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールのpH9.6の緩
衝液中に、1mg/mLのエンハンサーCを含有する溶液において、ジオキセタ
ン2fと2kとの相対的な化学発光の量子収量を測定した。各試薬の100μL
アリコートを、アルカリホスファターゼ3.36×10-13モルの添加によって
完全に脱りん酸化した。相対光度単位(RLU)で、発する光の合計量を発光が
終わるまで積算した。更に、0.88mMのMg+2を含有する0.2M又は0.
75Mいずれかの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールのpH9.6緩衝
液を使用し、如何なるエンハンサーをも用いない処方500μLで、同じ比較を
行った。ジオキセタン2fは、緩衝液だけでも、またエンハンサーA及びCの存
在下でもジオキセタン2kより多量の発光を生じた。
実施例32.水溶液中のジオキセタン2fの安定性.
0.2Mの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールのpH9.6の緩衝液
中1mg/mLのエンハンサーAと0.88mM Mg+2とを含有するジオキセ
タン2fの0.33mM溶液の、熱的及び加水分解的安定性を37℃で測定した
。このジオキセタン溶液を5日間、室温及び37℃に保持した。96ウエルのミ
クロプレート中12ウエル各々に、各溶液100μLを加えた。プレートを37
℃でインキュベートし、1.1×10-15モルのAPを含有する溶液10μLを
加えることによって、化学発光を開始させた。光強度を2.5時間積算した。ジ
オキセタンの安定性を、37℃でインキュベートしたサンプルの平均の光の収量
を室温に保持した溶液と比較することによって、評価した。発光量の減少は、イ
ンキュベーションの間のジオキセタンの分解を示す。37℃に保持した溶液は、
室温の溶液と同一であって、この条件ではジオキセタンは安定であることを示し
た。実施例33.膜でのアルカリホスファターゼの化学発光検出
.
ブロッテイング膜表面での酵素の化学発光検出に、本発明の組成物が有用であ
ることを、次の実施例に示す。1.1fmolから1.1amolまでを含有す
る、アルカリホスファターゼの水溶液を同一のナイロン膜(Micron Separations
Inc.,Westboro,MA)に適用した。膜を5分間風乾し、0.88mMのMgClと
0.33mMのジオキセタン2fか又は0.33mMのジオキセタン2kかのい
ずれかとを含有する、0.2Mの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールの
pH9.6の緩衝液中に1mg/mLのエンハンサーAを含有する試薬に、短時
間浸漬した。この膜を透明シートの間に置き、X線フィルム(Kodak X-OMAT AR,R
ochester,NY)に暴露した。第8図は、両ジオキセタンを用いた発光により、同等
の画像と検出感度が得られることを示している。これらの結果は、ジオキセタン
2fの性能がウエスタンブロッテイング、サザンブロッテイング、DNAフィン
ガープリント法や他のブロッテイング用途に期待されることを示している。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C07F 7/18 C07F 7/18
9/655 9/655
C09K 11/07 C09K 11/07
G01N 21/78 G01N 21/78 C