JPH1048160A - 全反射蛍光x線分析用基板及びそれを用いた分析方法 - Google Patents

全反射蛍光x線分析用基板及びそれを用いた分析方法

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JPH1048160A
JPH1048160A JP8206911A JP20691196A JPH1048160A JP H1048160 A JPH1048160 A JP H1048160A JP 8206911 A JP8206911 A JP 8206911A JP 20691196 A JP20691196 A JP 20691196A JP H1048160 A JPH1048160 A JP H1048160A
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ray
total reflection
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ray fluorescence
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JP8206911A
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Ichiro Doi
一郎 土井
Takahiro Hori
隆博 堀
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
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  • Analysing Materials By The Use Of Radiation (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 全反射蛍光X線分析において、液体試料中の
不純物(被測定物質)を高感度に分析する全反射蛍光X
線分析用基板およびそれを用いた分析方法を提供する。 【解決手段】 被測定物質の特性X線ピーク近傍に特性
X線のピークを持たない材料で表面を覆った全反射蛍光
X線分析用基板、およびその上に液体試料を滴下乾燥さ
せ、その蒸発痕を全反射蛍光X線分析により分析する方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、全反射蛍光X線分
析を用いて液体試料中の被測定物質を高感度に分析する
ための全反射蛍光X線分析用基板及びそれを用いた全反
射蛍光X線分析方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液体試料を基板上に滴下後乾燥させ、そ
の蒸発痕を全反射蛍光X線分析を用いて分析することに
より、もとの液体試料中の被測定物質を分析する方法
は、超純水や高純度の薬品に含まれる極めて微量の不純
物を分析する方法として知られている。全反射蛍光X線
分析方法は、既知量の液体試料を平滑な基板上に滴下後
乾燥させ、その蒸発痕に通常0.1°以下の低角度で1
次X線を入射させ、蒸発痕中に存在する原液体試料中の
被測定物質から発生する特性X線のエネルギー位置から
定性分析を行い、その特性X線の強度から定量分析を行
う。
【0003】このとき使用する1次X線のエネルギーと
しては分析したい被測定物質元素の特性X線を励起でき
ること、すなわち分析に使用する特性X線に対応するX
線吸収端より高いエネルギーを有するX線を用いる必要
がある。一般に分析したい被測定物質は複数存在するた
め、分析に使用する特性X線も複数存在する。従ってこ
れらを同時に分析するための1次X線としては、これら
複数の特性X線に対応するX線吸収端の中で最も高いエ
ネルギーを有するX線吸収端よりさらに高エネルギーで
ある必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の方法に
は以下に述べるような問題点が存在する。すなわち、使
用する全反射蛍光X線分析用基板の表面を構成する材料
によっては、その材料の元素から発生する特性X線が、
分析したい物質の元素の特性X線の近傍に存在すること
があり、これが妨害となって所望の分析結果が得られな
いことがある。
【0005】この問題点をより具体的に説明する。一般
に全反射蛍光X線分析によって液体試料を分析するのに
好適な基板としてシリコンウェハーが挙げられる。これ
は極めて平滑な表面を有する清浄な基板が比較的安価に
得られることと共に、一般に半導体産業などで重要な不
純物である鉄や亜鉛の特性X線ピークの近傍に上述の妨
害となるような特性X線ピークを有さないことによる。
ところで近年これらの重金属不純物以外にコロイダルシ
リカなど軽元素からなる不純物も注目されるようになっ
てきているが、例えば超純水中のシリカをシリコンウェ
ハーを用いて分析するのは明らかに不可能である。この
目的のためにはシリコンウェハーの表面を他の元素で被
覆するなどの方法が必要になるが、この場合もシリコン
の特性X線ピークの近傍に特性X線ピークを有する元素
を用いたのでは目的を達成することはできない。
【0006】また従来の技術には以下に述べるように別
の問題点も存在する。分析に使用する特性X線が使用す
る1次X線によってどれだけ効率的に励起されるか、す
なわち蛍光収率は1次X線のエネルギーに依存し、一般
に励起される特性X線に対応するX線吸収端近傍で極大
となり、以下これより高いエネルギーになるに従って漸
次減少する。よって高い蛍光収率で特性X線を励起する
にはそれに対応するX線吸収端近傍のX線を1次X線と
して用いればよい。しかしながら、先に述べた通り、一
般には分析したい元素は複数存在し、これらを同時に分
析するにはこれらのうち最も高いエネルギーを有する特
性X線に対応するX線吸収端より高いX線を1次X線と
して用いざるを得ないため、低いエネルギーを有する特
性X線を用いて分析する元素に対しては必然的に低い蛍
光収率しか得られなくなってしまう。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の発明をなすに
至った。すなわち、液体試料の被測定物質を分析する際
に用いる全反射蛍光X線分析用基板において、該全反射
蛍光X線分析用基板の表面が特定の材料で覆われ、該特
定の材料が前記液体試料中の被測定物質の特性X線のピ
ークエネルギーをE、分析に使用するX線検出装置のエ
ネルギー分解能をRとしたときE±Rの範囲に特性X線
のピークエネルギーを有さない材料あることを特徴とす
る全反射蛍光X線分析用基板である。
【0008】また、液体試料の被測定物質を分析する全
反射蛍光X線分析方法において、該全反射蛍光X線分析
方法に用いる全反射蛍光X線分析用基板の表面が特定の
材料で覆われ、該特定の材料が前記液体試料中の被測定
物質の特性X線のピークエネルギーをE、分析に使用す
るX線検出装置のエネルギー分解能をRとしたときE±
Rの範囲に特性X線のピークエネルギーを有さない材料
である全反射蛍光X線分析基板を用いて、該全反射蛍光
X線分析用基板上に前記液体試料を滴下後乾燥させ、乾
燥後の蒸発痕を全反射蛍光X線分析することにより前記
液体試料中の被測定物質を分析することを特徴とする全
反射蛍光X線分析方法である。
【0009】また、液体試料の被測定物質を分析する際
に用いる全反射蛍光X線分析用基板において、該全反射
蛍光X線分析用基板の表面が特定の材料で覆われ、該特
定の材料が前記液体試料中の被測定物質の特性X線に対
応するX線吸収端から4kev高いエネルギーの範囲に
特性X線のピークを有する材料であることを特徴とする
全反射蛍光X線分析用基板である。
【0010】また、液体試料の被測定物質を分析する全
反射蛍光X線分析方法において、該全反射蛍光X線分析
方法に用いる全反射蛍光X線分析用基板の表面が特定の
材料で覆われ、該特定の材料が前記液体試料中の被測定
物質の特性X線に対応するX線吸収端から4kev高い
エネルギーの範囲に特性X線のピークを有する材料であ
る全反射蛍光X線分析用基板を用いて、該全反射蛍光X
線分析用基板上に前記液体試料を滴下後乾燥させ、乾燥
後の蒸発痕を全反射蛍光X線分析することにより前記液
体試料中の被測定物質を分析することを特徴とする全反
射蛍光X線分析方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に本発明をより詳細に説明す
る。一般に全反射蛍光X線分析で使用する1次X線の基
板への侵入深さは、基板を構成する材料の元素にもよる
が、一般に3〜5nmとされている。従って基板表面か
らの特性X線の妨害が発生するのはこの深さの範囲内で
あるということができる。このことは、分析したい物質
の元素の特性X線の近傍に特性X線のピークを持たない
元素で構成された層が上記の侵入深さ以上の厚さで基板
上に存在していれば、基板そのものがどんな元素で構成
されていても基板からの特性X線の妨害を受けることな
く所望の分析結果が得られることを意味する。
【0012】ここで「分析したい物質の元素の特性X線
の近傍」が具体的にどの程度のエネルギーの範囲を意味
するかが問題となるが、これは全反射蛍光X線分析に使
用するX線検出装置のエネルギー分解能で決定される。
すなわち、使用するX線検出装置の分解能が高いほど、
分析したい特性X線と基板からの特性X線とを分離して
検出することが可能になり、分析に使用する特性X線に
より近いエネルギーに基板表面からの特性X線が存在し
ていたとしても分析が可能になる。より具体的には、少
なくともその表面が、特性X線のピークエネルギーを
E、分析に使用するX線検出装置のエネルギー分解能を
RとしたときE±Rの範囲に特性X線のピークを有さな
い成分元素のみで構成された全反射蛍光X線分析用基板
を用いればよい。ここでX線検出装置のエネルギー分解
能とは、通常分析したい元素の特性X線をこのX線検出
装置で検出したときのピークの半値半幅で表される。
【0013】以下液体試料中のシリコンを分析する場合
を例に取って本発明をより詳細に説明する。シリコンを
全反射蛍光X線分析により分析する場合、強度の強いK
α線を用いるのが有利である。シリコンKα線のエネル
ギーは1.74keVであるので、この場合に用いる全
反射蛍光X線分析用基板としては1.74keV近傍に
特性X線のピークを有さない元素で少なくともその表面
を構成する必要がある。ここで全反射蛍光X線分析に使
用するX線検出装置のエネルギー分解能を0.3keV
とすると、そのエネルギー範囲は1.44keV(1.
74−0.3)から2.04keV(1.74+0.
3)の範囲となる。すなわち全反射蛍光X線分析用基板
の表面を構成する元素としてこのエネルギー範囲に特性
X線のピークを有さない元素を選択する必要がある。図
1、図2、及び図3はその条件を満たす元素を選択する
際に好適に用いられる図であって、いずれも横軸は原子
番号、縦軸は特性X線のエネルギーを表している。図1
はKα線及びKβ線、図2はLα線及びLβ線、図3は
Mα線を表す図である。図1より、Kα線またはKβ線
が1.44keVから2.04keVの範囲にある元素
は原子番号が13から15までの元素、すなわちアルミ
ニウム、シリコン自身、及びリンであることがわかる。
同様にして図2よりLα線またはLβ線が上記の範囲内
にある元素は臭素、クリプトン、ルビジウム、ストロン
チウム及びイットリウムであり、図3よりMα線が上記
の範囲にある元素はツリウム、イッテルビウム、ルテシ
ウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウ
ム、オスミウム、イリジウムである。以上より、全反射
蛍光X線分析用基板として少なくともその表面が上記の
各元素以外の元素のみから構成されたものを用いれば、
シリコンの分析を好適に行うことができる。具体的に目
的に適した元素として一例を挙げれば、金や白金を蒸着
したシリコンウェハーやガリウム砒素ウェハーなどを用
いることができる。
【0014】全反射蛍光X線分析で使用する1次X線が
基板表面で全反射する最大の角度、すなわち全反射臨界
角は、一般に基板の表面を構成する材料の密度が低いほ
ど浅くなる。従って基板の表面が一般に全反射蛍光X線
分析で想定されているシリコンウェハーより低密度の材
料で構成されていると、より低い入射角度で1次X線を
基板に入射させる必要が生じ、全反射蛍光X線分析装置
の入射角度調整機構に多大な負担を強いることになる。
このような事態を避けるには、全反射蛍光X線分析用基
板の表面を構成する元素として、シリコンより原子番号
の大きいものを選択するのがよい。
【0015】次に本発明により高い蛍光収率で全反射蛍
光X線分析を行う方法について説明する。一般に全反射
蛍光X線分析の利点の1つとして、1次X線で励起され
たある元素の特性X線が他の元素の特性X線を励起する
現象、いわゆる2次励起がほとんど無視できることが挙
げられる。これは1次X線が基板表面で全反射するた
め、基板内部に侵入する深さがごく浅く、基板内部でX
線が散乱されないためである。ところで、2次励起がほ
とんど無視できるとはいっても、基板の最表面からはそ
の構成元素からの特性X線が大量に発生する。従って最
表面の元素からの特性X線により高い蛍光収率で励起さ
れる元素は1次X線による励起以外に2次励起も受け
る。このことは、液体試料を全反射蛍光X線分析で分析
する場合に積極的に利用することができる。すなわち、
液体試料中の分析したい被測定物質を高い蛍光収率で励
起する特性X線を発生する元素のみで、全反射蛍光X線
分析用基板の表面を構成することにより、一般には全反
射蛍光X線分析で発生しないとされている2次励起を意
図的に発生させることが可能になり、実効的な分析の感
度を向上させることができる。この時、高い蛍光収率を
得るには被測定物質の特定X線に対応するX線吸収端か
ら4kev高いエネルギーの範囲内に特性X線ピークを
有する場合で、上記以外では2次励起が効率良く発生し
ない。
【0016】以下具体的な分析例に即して本発明をより
詳細に説明する。例えば、液体試料中の亜鉛及び鉛を、
それぞれKα線及びLα線を用いて分析する場合を考え
る。この場合、前者に対応するX線吸収端は9.659
keV、後者に対応するX線吸収端は15.852ke
Vに存在する。従って両者を同時に分析するには後者以
上のエネルギーを有する1次X線、例えばモリブデンの
Kα線(17.41keV)等を用いる必要がある。こ
の場合、1次X線のエネルギーに比べて著しく低いX線
吸収端を有する亜鉛に対しては従来の全反射蛍光X線分
析では十分な感度が得られない。そこで本発明では全反
射蛍光X線分析用基板として、亜鉛のKα線(9.65
9keV)に対応するX線吸収端よりやや高いエネルギ
ーを有する特性X線を発生する元素、例えば9.671
keVのLβ線を発生するタングステンでその表面を構
成したものを用いれば、鉛、亜鉛ともに十分な感度を得
ることができる。
【0017】同様に、液体試料中のニッケル及びカリウ
ムを、いずれもKα線を用いて分析する場合であれば、
前者に対応するX線吸収端は8.330keV、後者に
対応するX線吸収端は3.607keVに存在するの
で、両者を同時に分析するには例えばタングステンのL
β線(9.671keV)を用いる。この場合、全反射
蛍光X線分析用基板の表面をカリウムのKα線に対応す
るX線吸収端よりわずかに高いエネルギーを有する特性
X線を発生する元素、例えばチタンを含む材料で構成す
ればカリウムに対しても高い感度を得ることができる。
【0018】本発明の全反射蛍光X線分析用基板の表面
を所定の元素を含む材料で構成するには、基板自体をそ
のような材料で作成してもよいし、その平滑な支持体上
にそのような材料からなる薄膜を蒸着やスパッタリン
グ、化学的気相成長法(CVD)など公知の手段で形成
してもよい。なお、一般にこれらの手段で形成した薄膜
の表面は完全に平滑ではなく、凹凸を有することが多い
ため、1次X線の侵入深さは前述の3〜5nmより深く
なることもある。その場合は、形成する薄膜の膜厚を必
要に応じて厚くするのが望ましい。
【0019】
【実施例1】以下、実施例を用いて本発明をより詳細に
説明するが、本発明は本実施例によって何ら限定される
ものではない。本実施例は本発明の全反射蛍光X線分析
用基板及びそれを用いた全反射蛍光X線分析方法によっ
て既知濃度のシリカを含む標準液を分析することによ
り、検出限界を算出したものである。
【0020】まず標準液として、市販の1000ppm
シリコン検量液を1ppbまで希釈したものを作成し
た。あらかじめこの標準液の濃度を誘導結合プラズマ質
量分析計(ICP−MS)で検定したところ、0.96
ppbであった。 次に全反射蛍光X線分析用基板とし
て直径150mmのシリコンウェハー上に下記の薄膜を
形成したものを作成した。
【0021】基板1:金を約100nmスパッタリング
法で形成した 基板2:白金を約100nmスパッタリング法で形成し
た 基板3:タングステンをCVD法で約100nm形成し
た 上記3種の基板で使用されている各元素(金、白金、タ
ングステン)から発生する特性X線のうち、シリコンを
全反射蛍光X線分析で分析する際に用いるシリコンKα
線のエネルギー(1.74kev)に最も近いのはいず
れもMα線であり、それぞれ2.12keV、2.04
keV、及び1.77keVである。
【0022】これら3種の基板をクリーンドラフト内に
設置したホットプレート上で加熱し、それぞれの基板に
前記の標準液を1.000mlずつ滴下・乾燥させて分
析用試料とした。これらの分析用試料を全反射蛍光X線
分析装置で分析した。装置は株式会社テクノス製のTR
EX−610Tを用いた。1次X線としてはタングステ
ンのLβ線を用いた。各基板の全反射臨界角はいずれも
0.20゜であり、ほぼ等しいとみなすことができたた
め、1次X線の入射角はどの基板に対しても0.05゜
とした。この装置で使用されているX線検出装置のエネ
ルギー分解能は半値半幅で約0.2keVである。
【0023】測定結果を用いて、下式により検出限界L
LDを求めた。LLD=3kσここでkは検量線の勾配
であって、標準液の濃度を全反射蛍光X線スペクトルに
現れたシリコンKα線の単位秒数あたりのピーク強度で
除したものである。またσはバックグラウンド変動であ
って、本測定では全反射蛍光X線分スペクトルのシリコ
ンKα線ピーク近傍のバックグラウンド強度の平方根を
測定秒数で除したものをバックグラウンド変動とみなし
た。
【0024】この方法により算出した検出限界は基板1
では50ppt、基板2では53pptであったのに対
し、基板3では95pptであった。これは基板3では
表面に形成した薄膜から発生する特性X線のピークが、
分析に使用するシリコンKα線(1.74kev)のご
く近傍である1.77keVに存在するため、バックグ
ラウンド強度が増大したためである。他方、基板1ある
いは基板2においても表面に形成した薄膜から発生する
特性X線のピークが存在するが、シリコンKα線のエネ
ルギーよりX線検出装置のエネルギー分解能以上離れた
もの(1.74±0.2=1.54〜1.94以外)で
あるため、検出限界への影響は事実上無視できることが
わかる。
【0025】
【実施例2】本実施例では本発明の全反射蛍光X線分析
用基板及びそれを用いた全反射蛍光X線分析方法によっ
て、半導体産業などで用いられている超純水製造ライン
で製造される超純水中のシリカ濃度を測定した例を示
す。実験装置のフローを図4に示す。一般に使用されて
いる超純水製造ラインに対応する。アニオンポリッシャ
ー及び混床ポリッシャーは、非再生型の樹脂を充填した
ボンベを新規に設置し、1週間の運転を行い、TOC濃
度(ANTEL社製TOCメーターで測定)が1.1p
pb程度に安定した後、実験に用いた。サブシステム末
端にアニオン吸着膜を充填したモジュールを設置した。
このアニオン吸着膜は特開平7−41574号公報に記
載の実施例1と同様な手法で合成したもので、放射線グ
ラフト重合法によりポリエチレン製の中空意図状多孔性
膜にアニオン性交換基を導入したものである。このアニ
オン吸着膜は、内径0.78mm、外径1.57mmの
ものであり、内径4cm、長さ30cmのモジュール内
に充填した。
【0026】アニオン吸着膜の前後より試料水を採取し
た。全反射蛍光X線分析用基板は直径150mmのシリ
コンウェハー上に金を約100nmスパッタリング法で
形成したものを用いた。各試料水は実施例1と同様にク
リーンドラフト内に設置したホットプレート上で加熱し
た上記基板上に1.000ml滴下し、分析用試料とし
た。また標準液は実施例1で作成・検定したものを用い
た。
【0027】測定は各分析用基板について、試料水又は
標準液を蒸発させた後、全反射蛍光X線分析装置で分析
した。装置及び分析条件はすべて実施例1と同一であ
る。試料水中のシリカ濃度は、標準試料におけるピーク
面積によって作成した検量線により定量した。測定を1
週間に一度行った結果を図5に示す。3週間目で既にア
ニオン吸着処理前のシリカ濃度に上昇が認められる。
【0028】
【参考例1】本参考例は、本発明の全反射蛍光X線分析
用基板を用いた全反射蛍光X線分析によらずに、従来の
分析方法であるICP−MSによって実施例2のアニオ
ン吸着膜通水前後のシリカ濃度を測定した結果を示すも
のである。実施例2と同一の超純水製造ラインに置い
て、アニオン吸着膜の前後より採取した試料水を直接I
CP−MSにより分析した。結果を図6に示す。測定期
間2ヶ月の間、アニオン吸着膜通水前後いずれにおいて
もシリカ濃度は検出限界の0.5ppb以下だった。
【0029】上記の実施例2と参考例1を比較すると、
本発明の全反射蛍光X線分析用基板を用いた全反射蛍光
X線分析により、極めて低濃度のシリカの変化を検出す
ることができ、優れた超純水製造ラインの管理方法を構
築することができることがわかる。
【0030】
【実施例3】本実施例は本発明の全反射蛍光X線分析用
基板及びそれを用いた全反射蛍光X線分析方法により、
超純水中の複数の不純物をともに高感度で分析した例を
示すものである。全反射蛍光X線分析用基板として直径
150nmのシリコンウェハー上にCVD法によりタン
グステン薄膜を約500nm形成した。市販の原子吸光
分析用標準液を希釈して鉛と亜鉛をいずれも10ppb
含む標準液を作成し、これをマイクロピペットで0.1
00ml採取して前記の基板上に滴下し、実施例1及び
実施例2と同様にクリーンドラフト内に設置したホット
プレート上で蒸発させて分析用試料を作成した。比較例
として、直径150nmのシリコンウェハー上にタング
ステンの薄膜を形成せずそのまま用いて上記の操作を行
ったものを比較用試料とした。
【0031】上記分析用試料と比較用試料を全反射蛍光
X線分析装置により分析した。分析装置は株式会社テク
ノス製TREX−610Tを使用した。1次X線は実施
例1及び実施例2と異なりモリブデンのKα線(17.
41kev)を使用したが、これは鉛のLα線(15.
852kev)を励起するためである。これに伴い全反
射臨界角の大きさも変わるため、1次X線の入射角は
0.03゜とした。
【0032】実施例1と同じ式で検出限界を算出した。
分析用試料では鉛に対する検出限界が3.7ppt、亜
鉛に対する検出限界が0.9pptであった。これに対
し、比較用試料では鉛に対する検出限界は4.0ppt
であり分析用試料とほぼ同じ値を示したが、亜鉛に対す
る検出限界は8.7pptで、分析用試料より約1桁悪
化した。これは分析用試料では亜鉛は1次励起以外にタ
ングステンから発生するLβ線による2次励起も受ける
のに対し、比較用試料では1次励起のみが起きるためで
ある。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば従来の技術では不可能で
あった液体試料中の数十ppt以下の軽元素や数ppt
もしくはそれ以下の重金属元素からなる不純物(被測定
物質)を分析することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】原子番号11から18までの特性X線のエネル
ギーを表す図である。
【図2】原子番号33から43までの特性X線のエネル
ギーを表す図である。
【図3】原子番号68から78までの特性X線のエネル
ギーを表す図である。
【図4】実施例2の実験装置のフローを示した図であ
る。
【図5】本発明の全反射蛍光X線分析方法によるシリカ
濃度の測定結果を示す図。
【図6】従来のICP−MSによるシリカ濃度の測定結
果を示す図。
【符号の説明】
1 低圧UVポリッシャー 2 アニオンポリッシャー 3 混床ポリッシャー 4 限外濾過膜 5 アニオン吸着膜モジュール 6 サンプリングポイント1 7 サンプリングポイント2

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液体試料の被測定物質を分析する際に用い
    る全反射蛍光X線分析用基板において、該全反射蛍光X
    線分析用基板の表面が特定の材料で覆われ、該特定の材
    料が前記液体試料中の被測定物質の特性X線のピークエ
    ネルギーをE、分析に使用するX線検出装置のエネルギ
    ー分解能をRとしたときE±Rの範囲に特性X線のピー
    クエネルギーを有さない材料であることを特徴とする全
    反射蛍光X線分析用基板。
  2. 【請求項2】液体試料の被測定物質を分析する全反射蛍
    光X線分析方法において、該全反射蛍光X線分析方法に
    用いる全反射蛍光X線分析用基板の少なくとも表面が特
    定の材料を有し、該特定の材料は前記液体試料中の被測
    定物質の特性X線のピークエネルギーをE、分析に使用
    するX線検出装置のエネルギー分解能をRとしたときE
    ±Rの範囲に特性X線のピークエネルギーを有さない材
    料である全反射蛍光X線分析基板を用いて、該全反射蛍
    光X線分析用基板上に前記液体試料を滴下後乾燥させ、
    乾燥後の蒸発痕を全反射蛍光X線分析することにより前
    記液体試料中の被測定物質を分析することを特徴とする
    全反射蛍光X線分析方法。
  3. 【請求項3】液体試料の被測定物質を分析する際に用い
    る全反射蛍光X線分析用基板において、該全反射蛍光X
    線分析用基板の表面が特定の材料で覆われ、該特定の材
    料が前記液体試料中の被測定物質の特性X線に対応する
    X線吸収端から4kev高いエネルギーの範囲に特性X
    線のピークを有する材料であることを特徴とする全反射
    蛍光X線分析用基板。
  4. 【請求項4】液体試料の被測定物質を分析する全反射蛍
    光X線分析方法において、該全反射蛍光X線分析方法に
    用いる全反射蛍光X線分析用基板の表面が特定の材料で
    覆われ、該特定の材料は前記液体試料中の被測定物質の
    特性X線に対応するX線吸収端から4kev高いエネル
    ギーの範囲に特性X線のピークを有する材料である全反
    射蛍光X線分析用基板を用いて、該全反射蛍光X線分析
    用基板上に前記液体試料を滴下後乾燥させ、乾燥後の蒸
    発痕を全反射蛍光X線分析することにより前記液体試料
    中の被測定物質を分析することを特徴とする全反射蛍光
    X線分析方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001318064A (ja) * 2000-05-09 2001-11-16 Agere Systems Guardian Corp 元素の定量分析のための校正方法
JP2015215222A (ja) * 2014-05-09 2015-12-03 住友ゴム工業株式会社 硫黄の化学状態を調べる方法
JP2016090529A (ja) * 2014-11-11 2016-05-23 住友金属鉱山株式会社 不純物分析方法、サファイア基板の洗浄方法
CN106248710A (zh) * 2016-09-09 2016-12-21 广州市怡文环境科技股份有限公司 基于全反射x射线荧光分析的元素检测方法

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