JPH0989890A - 犬および猫の赤血球型を認識するポリクローナル抗体 - Google Patents

犬および猫の赤血球型を認識するポリクローナル抗体

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JPH0989890A
JPH0989890A JP21588296A JP21588296A JPH0989890A JP H0989890 A JPH0989890 A JP H0989890A JP 21588296 A JP21588296 A JP 21588296A JP 21588296 A JP21588296 A JP 21588296A JP H0989890 A JPH0989890 A JP H0989890A
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dog
antibody
erythrocyte
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Hiroyasu Ejima
博康 江島
Kuninori Kinoshita
邦則 木下
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BLUE JIYUUJI KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 犬の1システム、犬のDシステム及び猫のA
Bシステムにおける血液型を簡単に判定することができ
るように、標準抗血清に代わる血液型判定用組成物を提
供する。 【構成】 血液型を認識する標準抗血清に相当する犬、
又は、猫の血清フラクションを免疫グロブリンのIgG
クラスに分画精製する。この結果得られる精製物は、血
液型を認識する、いわゆるポリクローナル抗体である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、免疫グロブリン
のIgGクラスに分画精製された犬の赤血球型を判定す
るためのポリクローナル抗体、および、猫の赤血球型を
判定するためのポリクローナル抗体に関する。
【0002】
【従来の技術】獣医療の領域に輸血療法を確立するため
には、その前提として、対象となる動物の血液型が判定
されなければならない。異型輸血において深刻な副作用
を伴うことは、獣医療領域においても従来より予想され
ていたことであり、この予想が獣医療の高度化によっ
て、さしあたり、犬および猫の赤血球型の判定の必要性
として、開業獣医等に認識されつつある。
【0003】犬の赤血球型(以下、単に「血液型」とい
う)には、その主要な分類システムとして、1システム
とDシステムとが知られている。また、猫については、
ABシステムが知られている。1システムは、犬の血液
を1・1型と、1・2型と、1(−)型とに分類するシ
ステムであり、Dシステムは、犬の血液をD1型と、D
2型と、D1D2型とに分類するシステムである。一
方、ABシステムは、猫の血液を、A型と、B型と、A
B型とに分類するシステムである。なお、いずれの分類
システムにおいても、血液型の判定は、その分類システ
ムに対応する抗血清と、判定対象である被検赤血球との
免疫化学的反応である凝集の態度を肉眼的に観察するこ
とによって行われる。
【0004】例えば、1システムにおいては、1・1型
に特異性を示す、あるいは1・1型を認識する抗血清
(以下、「抗−1・1抗血清」のように示す)、1・2
型に特異性を示す抗−1・2抗血清、1・1型と1・2
型との双方に特異性を示す抗−1・1,2抗血清が用い
られる。そして、抗−1・1抗血清と抗−1・1,2抗
血清との双方に凝集反応を示す被検赤血球は、1システ
ムにおける1・1型であると判定される。同様に、抗−
1・2抗血清と抗−1・1,2抗血清との双方に凝集反
応を示す被検赤血球は、1・2型であると判定され、い
ずれの抗血清にたいしても凝集反応を示さない被検赤血
球は、1(−)型であると判定される。なお、ここで
は、3種類の抗血清を用いたが、実際には、2種類の抗
血清によって、3種類の血液型を判定することが可能で
ある。また、1システムにおける凝集反応は、必ずしも
明確であるとは限らず、このため、1システムにおける
血液型の最終判定には、通常、クームス抗血清が併用さ
れる。クームス抗血清は、被検赤血球が、特定の抗血清
によって、感作されたことを認識する抗血清であり、特
定の抗血清による被検赤血球の凝集反応を強めることが
できるのである。
【0005】このような判定操作は、犬のDシステムに
おいても、猫のABシステムにおいても同様である。す
なわち、それぞれのシステムに対応する抗血清を用いて
の血液型の判定である。ただし、猫のABシステムにお
けるB型の判定については、1991年に、小麦胚芽か
ら精製された抽出物が、猫B型赤血球と親和性を示すこ
とが発見されて以来、猫の抗−B抗血清に代えて、抗−
B凝集素が用いられるようになっている。従って、学問
的にはともかく、産業的に抗−B抗血清を量産する意義
はないと言える。
【0006】なお、犬の1システムに対応する標準抗血
清ならびに標準抗原は、現在、アメリカ、ミシガン州立
大学のBullおよび、この発明の発明者でもある
(株)ブルー十字の江島によって維持されている。ま
た、犬のDシステムに対応するものは、(株)ブルー十
字の江島によって維持されている。さらに、猫のABシ
ステムに対応するものは、オーストラリア、クイーンズ
ランド大学のBell、アメリカ、ペンシルベニア大学
のGiger、並びに、(株)ブルー十字の江島によっ
て維持されている。
【0007】ところで、犬のDシステムは、日本におい
て、1940年に法医学者であった井関、寺島によって
発見されたが、当時、標準抗血清ならびに標準抗原が保
存された形跡はない。また、欧米において、Dシステム
が発見されなかったのは、欧来では、同種免疫法を主体
として抗血清を作成しているが、Dシステムに対応する
抗血清は、兎を免疫動物とする異種免疫法によって作成
するものであること、欧米における犬の種が、ほぼ10
0%D2型に偏在していることにより、同種免疫によっ
ては、抗−D2抗血清を得ることができなかったためで
あると推定される。つまり、Dシステムに対応する標準
抗血清ならびに標準抗原は、この発明の前提物質とし
て、(株)ブルー十字の江島、木下によって初めて確保
されたのである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このように、可能か不
可能かということに関しては、犬、猫の血液型は、抗血
清を用いることによって判定することができるというこ
とができる。それでは、自己の所有する犬の血液型判定
を市中の動物病院に依頼して、可能か不可能かというこ
とに関しては、一般に不可能である。血液型を判定する
ための抗血清が準備されていないのである。
【0009】すなわち、抗血清なるものの組成は、血液
から血球部分を除去した残余部分と同等であり、一般に
普及するには、その流通、保存の面において極めて不便
であり、また、物質としての均一性、安定性を欠くた
め、血液型の判定操作および最終判断に相当の熟練を要
するという問題があった。
【0010】この発明は、抗血清に代わる血液型判定の
ための保存性、均一性、安定性にすぐれた物質を得るこ
とを目的とするものであり、以て、容易な判定操作と、
確実な最終判断を可能とし、一般市中に広く普及させる
ことのできるポリクローナル抗体を提供することであ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めにこの発明が採用する手段は、抗血清相当の組成物か
ら、主に、血液型を認識する機能を担当している物質を
できるだけ純粋な状態で抽出することによって、不安定
要素を排除することである。具体的には、
【0012】赤血球型が1システムの1・1型であるこ
とが判明している犬血液の赤血球部分を免疫原とし、該
免疫原を赤血球型が1システムの1(−)型であること
が判明している犬に免疫付けし、該犬の血液の血清フラ
クションを免疫グロブリンのIgGクラスに分画精製す
ることである。このような操作術式によれば、1・1型
の免疫原によって1(−)型の犬の体内において産生さ
れる抗体は、1・1型または1・2型の血液型を認識す
る抗−1・1,2抗体である。つまり、1・1型と表記
される血液型の赤血球には、2種類の抗原成分が含まれ
ているのである。従って、その犬の血液の血清フラクシ
ョンは、実質的に抗−1・1,2抗血清である。そし
て、その血清フラクションを免疫グロブリンのIgGク
ラスに分画精製してなる物質は、1・1型または1・2
型の血液型を認識する、いわゆるポリクローナル抗体で
ある。そして、このポリクローナル抗体は、1・1型ま
たは1・2型の赤血球を視認可能に凝集することができ
る。以下、同様に、
【0013】赤血球型が1システムの1・1型であるこ
とが判明している犬血液の赤血球部分を免疫原とし、該
免疫原を赤血球型が1システムの1・2型であることが
判明している犬に免疫付けし、該犬の血液の血清フラク
ションを免疫グロブリンのIgGクラスに分画精製する
ことである。この操作術式によれば、1・1型の免疫原
によって1・2型の犬の体内において産生される抗体
は、1・1型の血液型を認識する抗−1・1抗体であ
る。1・1型と表記される血液型の赤血球には、2種類
の抗原成分が含まれているのであるが、そのうち、1・
2型の抗原成分に対しては、同型である1・2型の犬の
体内において抗体が産生されることはないのである。従
って、その犬の血液の血清フラクションは、実質的に抗
−1・1抗血清であるそして、その血清フラクションを
免疫グロブリンのIgGクラスに分画精製してなる物質
は、1・1型の血液型を認識するポリクローナル抗体で
ある。そして、このポリクローナル抗体は、1・1型の
赤血球を視認可能に凝集することができる。
【0014】赤血球型が1システムの1・2型であるこ
とが判明している犬血液の赤血球部分を免疫原とし、該
免疫原を赤血球型が1システムの1(−)型であること
が判明している犬に免疫付けし、該犬の血液の血清フラ
クションを免疫グロブリンのIgGクラスに分画精製す
ることである。この操作術式によれば、1・2型の免疫
原によって1(−)型の犬の体内において産生される抗
体は、1・2型の血液型を認識する抗−1・2抗体であ
る。従って、その犬の血液の血清フラクションは、実質
的に抗−1・2抗血清である。そして、その血清フラク
ションを免疫グロブリンのIgGクラスに分画精製して
なる物質は、1・2型の血液型を認識するポリクローナ
ル抗体である。そして、このポリクローナル抗体は、1
・2型の赤血球を視認可能に凝集することができる。
【0015】赤血球型がDシステムのD1型であること
が判明している犬血液の赤血球部分を免疫原とし、該免
疫原を兎に免疫付けし、該兎の血液の血清フラクション
を免疫グロブリンのIgGクラスに分画精製することで
ある。この操作術式によれば、D1型の免疫原によって
兎の体内において産生される抗体は、D1型の血液型を
認識する抗−D1抗体である。従って、その兎の血液の
血清フラクションは、実質的に抗−D1抗血清である。
そして、その血清フラクションを免疫グロブリンのIg
Gクラスに分画精製してなる物質は、D1型の血液型を
認識するポリクローナル抗体である。そして、このポリ
クローナル抗体は、D1型の赤血球を視認可能に凝集す
ることができる。
【0016】赤血球型がDシステムのD2型であること
が判明している犬血液の赤血球部分を免疫原とし、該免
疫原を兎に免疫付けし、該兎の血液の血清フラクション
を免疫グロブリンのIgGクラスに分画精製することで
ある。この操作術式によれば、D2型の免疫原によって
兎の体内において産生される抗体は、D2型の血液型を
認識する抗−D2抗体である。従って、その兎の血液の
血清フラクションは、実質的に抗−D2抗血清である。
そして、その血清フラクションを免疫グロブリンのIg
Gクラスに分画精製してなる物質は、D2型の血液型を
認識するポリクローナル抗体である。そして、このポリ
クローナル抗体は、D2型の赤血球を視認可能に凝集す
ることができる。
【0017】赤血球型がABシステムのA型であること
が判明している猫血液の赤血球部分を免疫原とし、該免
疫原を兎に免疫付けし、該兎の血液の血清フラクション
を免疫グロブリンのIgGクラスに分画精製することで
ある。この操作術式によれば、A型の免疫原によって兎
の体内において産生される抗体は、A型の血液型を認識
する抗−A抗体である。従って、その兎の血液の血清フ
ラクションは、実質的に抗−A抗血清である。そして、
その血清フラクションを免疫グロブリンのIgGクラス
に分画精製してなる物質は、A型の血液型を認識するポ
リクローナル抗体である。そして、このポリクローナル
抗体は、A型の赤血球を視認可能に凝集することができ
る。
【0018】
【発明の実施の形態】1システムのポリクローナル抗体
は、同種免疫法によって作成する。抗体の産生は、異物
を認識した免疫機能の結果であるから、同種免疫に際し
ては、不適合な血液の組み合わせが選択される。供血犬
と受血犬と、産生される抗体の特異性との関係は、表1
のようになる。ただし、1システムの判定に併用するク
ームス抗体は、兎を免疫動物とする異種免疫法によって
作成される。
【0019】
【表1】
【0020】また、表1は、抗−1・1,2抗体の特異
性の一部を、1・1型の赤血球による吸収操作によって
消滅させることによって、抗−1・2抗体を得ることが
でき、さらに、1・2型の赤血球による吸収操作によっ
て抗−1・1抗体を得ることができることを示唆してい
る。次に、3種類の抗体と、その抗体によって判定され
る血液型との関係を表2に示す。なお、この判定には、
クームス試験が併用されている。
【0021】
【表2】 表2において、+の記号は、特定の抗体との関係におい
て凝集反応が認められる陽性型であることを示してい
る。一方、逆に、−の記号は、特定の抗体との関係にお
いて凝集反応が認められない陰性型であることを示して
いる。また、同表は、3種類の抗体中いずれか任意の2
種類の抗体を用いることで3種類の血液型を判定できる
ことを示唆している。その場合の判定例を表3に示す。
【0022】
【表3】
【0023】ここで、判定された血液型に基づく輸血可
能な組み合わせを図1に示す。なお、輸血可能な方向
は、同図に矢印で示す。これによると、同型の血液間で
は、供血、受血ともに可能である。1(−)型の血液
は、いずれの型の血液にも輸血可能であり、1・2型の
血液は、1・1型の血液に対しても輸血することができ
る。これは、前述したように、1・1型と表記される血
液型の赤血球には、2種類の抗原成分が含まれているた
めである。
【0024】次に、Dシステムのポリクローナル抗体
は、免疫動物として兎を用いる異種免疫法によって作成
する。Dシステム発見当時に兎が選択された理由は不明
であるが、追試の結果では、犬赤血球を兎に免疫する
と、同種免疫に比較して、非常に高い確立で抗−D1抗
体、抗−D2抗体が産生されることが確認できる。ただ
し、異種免疫の場合、目的とする抗体の他に、動物種が
異なることによる種族特異性抗体が同時に産生される
が、この種族特異性抗体は、目的とする抗体によって認
識されない型の犬赤血球による吸収操作によって除去す
ることができる。例えば、抗−D1抗体とともに産生さ
れた種族特異性抗体は、D2型の犬赤血球による吸収操
作によって除去することができるのである。作成された
2種類の抗体を用いての3種類血液型判定例を表4に示
す。
【0025】
【表4】
【0026】判定された血液型に基づく輸血可能な組み
合わせを図2に示す。これによると、同型の血液間で
は、供血、受血ともに可能である。また、D1型は、D
1D2型に輸血可能であり、D2型も、D1D2型に輸
血可能である。
【0027】猫ABシステムのポリクローナル抗体は、
免疫動物として兎を用いる異種免疫法によって作成す
る。抗−A抗体は、自然抗体としてB型の猫赤血球中に
も存在するが、量産することを前提すれば、異種免疫法
による方が高力価のものが得られて有利である。産生さ
れた抗−A抗体と、小麦胚芽由来の抗−B凝集素とを用
いた猫の血液型の判定例を表5に示す。また、輸血可能
な組み合せを図3に示す。
【0028】
【表5】
【0029】次に、この発明に係るポリクローナル抗体
を得るための製造方法の実施例について具体的に説明す
る。
【0030】(実施例1) 1システムの抗−1.1,
2型抗体を産生するための免疫動物には、体重が10K
g前後の健康な犬で、血液型が1システムの1(−)型
であることが判明しているものを用いる。この際の血液
型は、標準抗血清を用いて判定する。同様の判定方法に
より、血液型が1.1型であることが判明している犬か
ら採血した血液を、遠心分離して赤血球を採取し、これ
をリン酸緩衝食塩液(以下「PBS」という)を用いて
5回以上洗浄し、洗浄したものをPBSで10%浮遊液
としたものを免疫原とする。得られた免疫原を免疫動物
として選択した犬の前腕静脈に、一週間に一度の度数
で、所定の抗体価に達するまで反復注射し、免疫付けを
行う。この操作によって、犬の血液中に1.1型の赤血
球を認識する抗−1・1,2抗体が産生される。次い
で、この犬から採血し、採血した血液を遠心分離し、そ
の血清フラクションを採取する。採取した血清フラクシ
ョンは、60°Cで30分加熱処理し、非動化する。こ
の血清フラクションは、実質的に抗血清であり、保存す
る場合には、−80°C以下で保存することを要する。
【0031】なお、上記の抗血清たる血清フラクション
について必要とする抗体価は、つぎのように測定する。
先ず、主たる試験用の被検赤血球浮遊液と、クームス試
験用の被検赤血球浮遊液とを準備する。前者は、血液型
が1・1型、1・2型、および1(−)型であることが
判明している犬の血液を、それぞれ、抗凝固処理した後
赤血球を採取し、それに、赤血球濃度が2〜4%になる
ようにPBSを加えたものとする。また、後者は、この
ようにして得られた被検赤血球浮遊液に測定対象である
血清フラクションを感作させた上、PBSで洗浄し、洗
浄した赤血球に赤血球濃度が2〜4%になるようにPB
Sを加えたものとする。
【0032】主たる試験では、それぞれの血清フラクシ
ョンと被検赤血球浮遊液との一定の量を同一の試験管に
入れ、5〜10秒間遠心し、凝集反応の有無を肉眼的に
観察する。一方、クームス試験においては、感作させた
それぞれの被検赤血球浮遊液に対し、犬クームス抗体を
一定量ずつ加え、凝集反応の有無を肉眼的に観察する。
この際、クームス試験を含め、血清フラクションに含有
される抗体に特異性を有する被検赤血球浮遊液に対して
は、凝集反応を認めなければならず、特異性を有しない
被検赤血球浮遊液に対しては、凝集反応を認めてはなら
ない。ここで、凝集反応を認め得た抗血清、すなわち、
血清フラクションの最終希釈倍数の逆数をもって抗体価
とする。1システムにおける必要抗体価は、最終製品段
階にもとめられる抗体価から逆算して決定する。この方
式によって、この実施例においては、1,024倍を基
準とした。
【0033】所定の抗体価であることを確認した血清フ
ラクションについて、吸収処理を行う。この処理は、特
異性を担保するための処理である。血液型が1(−)型
であることが判明している犬血液の赤血球をPBSで洗
浄したものを吸収用赤血球とする。血清フラクションと
等量の吸収用赤血球を静かに混和し、4゜C及び37゜
Cの環境下に、それぞれ1時間放置した後、4゜Cに冷
却、これを1,200gで15分間遠心した上清を原液
とする。
【0034】原液を免疫グロブリンのIgGに精製する
には、血清フラクションを10,000gで約15分間
遠心し、その上清をプロテインA−セファロースカラム
で精製する方式による。プロテインAは、IgGを二分
子結合できる分子量42,000の蛋白質である。この
蛋白質が、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー用樹脂で
あるセファロース4FFにカップリングされたものがプ
ロテインA−セファロースである。これをガラスカラム
に充填して、プロテインA−セファロースカラムとす
る。IgGの精製様式としては、弱アルカリ性緩衝液で
結合し、弱酸性緩衝液で解離させる仕組みである。この
ようにして得られたカラム溶出画分が実質上、1システ
ムの1・1型および1・2型とを認識する抗−1.1,
2型のIgGたるポリクローナル抗体である。
【0035】ただし、このままでは、不安定であり、保
存に適さないため、さらにこれを、安定剤として塩化ナ
トリウム、塩化カリウム、リン酸水素二ナトリウム・1
2水塩、リン酸二水素カリウム、牛血清アルブミンを含
む溶剤に対して透析し、これに、保存剤としてアジ化ナ
トリウムの適量を加えたものを最終精製物とし、これを
滅菌容器に小分けしたものが最終製品である。
【0036】この最終製品には、原則として、前述した
抗血清たる血清フラクションに求められる全ての特性が
求められる。すなわち、この発明は、従来使用されてい
た抗血清に代わる純粋な物質を追及するものであるから
である。ただし、抗体価については、これ以上希釈する
ことのない最終製品としては、8倍でもって足りる。ま
た、純粋物質としては、無色透明でなければならず、異
物又は異臭を認めてはならない。小分容器ごとの性状は
均一でなければならない。この最終製品を試験した結果
は、抗体価、特異性、外観等の諸要求を十分に満たすも
のであった。
【0037】(実施例2) 1システムの抗−1・1型
抗体を作成するには、免疫動物として血液型が1システ
ムの1・2型である犬を用いる。また、免疫原には、血
液型が1システムの1・1型である犬の赤血球部分のP
BSによる10%浮遊液を用いる。この免疫原を、免疫
動物に免疫付けすることによって、犬の血液中に1・1
型の赤血球を認識する抗−1・1型抗体が産生される。
すなわち、免疫原としての1・1型赤血球は、1・1型
と1・2型との二種類の抗原成分を有するのであるが、
免疫動物の血液型に適合する1・2型の抗原成分に対す
る抗−1・2型抗体は産生されず、抗−1・1型抗体の
みが産生されるのである。
【0038】犬の血液中に産生された抗体の抗体価が所
定の値に達したところで、この犬の血液を採取し、この
血液から遠心上清である血清フラクションを分画する。
これを熱非動化した後、吸収処理を経て、IgGに精製
する。精製様式は、実施例1と同様であり、また、以
後、最終製品にいたる過程も同様である。ただし、吸収
処理には、1・2型の赤血球を用いる。このようにして
得られた最終製品についても、抗体価試験及び特異性試
験を行った。試験方法は、血清フラクションに対する試
験様式と同様である。結果は、いずれも満足できるもの
であった。
【0039】(実施例3) 1システムの抗−1・2型
抗体を作成するには、免疫動物として血液型が1システ
ムの1(−)型である犬を用いる。また、免疫原には、
血液型が1システムの1・2型である犬の赤血球部分の
PBSによる10%浮遊液を用いる。この免疫原を、免
疫動物に免疫付けすることによって、犬の血液中に1・
2型の赤血球を認識する抗−1・2型抗体が産生され
る。犬の血液中に産生された抗体の抗体価が所定の値に
達したところで、この犬の血液を採取し、この血液から
遠心上清である血清フラクションを分画する。この血清
フラクションに対して1(−)型の赤血球を用いて吸収
処理をする。これをIgGに精製し、最終製品に加工す
る。また、最終製品について、所定の試験を行う。
【0040】(実施例4) なお、1システムの抗−1
・1型抗体は、抗−1・1,2抗体から直接作成するこ
ともできる。この場合、吸収処理の工程において、1
(−)型の赤血球を用いるのに代えて1・2型の吸収用
赤血球を用いる。これによって、抗−1・1,2抗体か
ら1・2型の抗原を認識する抗体活性が消滅し、抗−1
・1型抗体が作成される。製造の実際としては、この方
法によるのが便利である。
【0041】ここで、1システムの血液型判定に併用す
るクームス抗体の作成方法について説明する。免疫動物
には、体重3Kg前後の健康な兎を用いる。また、免疫
原には、任意の血液型の犬の血液の血清部分を用いる。
免疫原を兎の耳静脈に、一週間に一度の度数で、所定の
抗体価に達するまで反復注射する。この兎血液の血清フ
ラクションを非動化処理し、これを任意の血液型の犬の
赤血球を用いて吸収処理する。以後は、同様に、これを
精製してクームス抗体を得る。
【0042】また、凝集反応の比較対象として用いる陰
性コントロール液について説明する。陰性コントロール
液は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸水素二ナ
トリウム・12水塩、リン酸二水素カリウム、牛血清ア
ルブミン、アジ化ナトリウムの所定量を精製水に溶解し
たものである。
【0043】(実施例5) Dシステムの抗−D1抗体
は、兎を免疫動物として作成する。免疫原には、血液型
がDシステムのD1型であることが判明している犬血液
の赤血球を用いる。以下の各工程及び精製様式は、1シ
ステムにおけると同様である。なお、原液の段階におい
て、必要とされる抗体価は、それぞれの抗体ごとに異な
っており、Dシステムにおいては、128万倍以上が適
当である。
【0044】(実施例6) Dシステムの抗−D2抗体
の作成方法は、血液型がDシステムのD2型であること
が判明している犬血液の赤血球を免疫原として用いる点
において実施例5と異なるのみである。
【0045】(実施例7) 猫のABシステムの抗−A
抗体を産生するための免疫動物には、兎を用いる。ま
た、免疫原には、標準抗血清によって血液型がAがたで
あることが判明している兎血液の赤血球をPBSを用い
て十分に洗浄し、これをPBSの10%浮遊液としたも
のを用いる。この免疫原を兎の耳静脈に所定の抗体価に
達するまで反復注射する。ついで、血液を採取し、遠心
分離によって血清フラクションを分画する。分画した血
清フラクションを、血液型がB型であることが判明して
いる猫血液の赤血球を用いて吸収処理する。吸収処理
は、血清フラクションと等量の吸収用赤血球を静かに混
和し、4゜Cおよび37゜Cの環境下に、それぞれ1時
間放置し、これを4゜Cに冷却、この後、1,200g
で15分間遠心した上精を原液とする。原液を10,0
00gで15分間遠心し、その上精をプロテインA−セ
ファロースカラムで精製する。精製IgGを含むカラム
溶出液を、安定剤を規定の濃度になるように溶かした溶
剤に対して透析する。それに定量の保存剤を加えたもの
を最終精製物とする。これを滅菌容器に小分けして最終
製品とする。最終製品について抗体価試験、特異性試
験、外観等の特性試験をおこなう。これらの試験に要求
される事項は、1システムにおけると同様である。
【0046】ここで、抗−B凝集素について説明する。
抗−B凝集素は、小麦胚芽レクチンを、安定剤を含む精
製水に溶解し、定量の安定剤を加えたものである。な
お、ABシステムについても凝集反応の比較対象とし
て、1システムにおけると同様の陰性コントロール液を
用いる。
【0047】次に、この発明に係る1システム及びDシ
ステムのポリクローナル抗体の使用方法を説明する。透
明丸底の極小型のマイクロチューブと、小型の遠心分離
器とを用いる。 (1) 血液型を判定しようとする血液にPBSを加
え、赤血球濃度が2〜4%になるように希釈したものを
被検赤血球浮遊液とする。 (2) 1システムでは、3本のマイクロチューブに、
それぞれ抗−1・1,2抗体、抗−1・1抗体、陰性コ
ントロール液を50μlずつ取り分ける。なお、Dシス
テムでは、抗−D1抗体、抗−D2抗体、陰性コントロ
ール液を50μlずつ取り分ける。 (3) 各マイクロチューブに被検赤血球浮遊液を50
μlずつ加える。 (4) 1システムにおいては、抗−1・1,2抗体又
は、抗−1・1抗体を感作させた赤血球浮遊液をPBS
で2回洗浄後、上精を取り除き、クームス抗体を50μ
lずつ加える。Dシステムでは、クームス試験は行わな
い。 (5) 室温で静かに混和し、ただちに軽く遠心する。 (6) 各、抗体が入っているマイクロチューブを軽く
振り動かせて、陰性コントロールが入ったマイクロチュ
ーブと比較しながら、凝集の有無を肉眼で判定する。こ
の際、凹面鏡を用いてマイクロチューブの底部分を拡大
することによって、観察が容易になる。 (7) 被検血液に、1システムにおいても、Dシステ
ムにおいても抗体に対して特異性を有する抗原があれ
ば、肉眼的に凝集を認めることができる。凝集反応の強
さは、個体によって異なるが、+(ワンプラス)から+
+++(フォープラス)のどの段階であっても、陽性型
と判定する。一方、±(プラスマイナス、疑陽性)と−
(マイナス)は、陰性型と判定する。なお、このような
判定操作は、猫のABシステムにおいても同様である。
【0048】なお、この判定結果について、標準抗血清
を用いての追試を行った。その結果、いずれの判定結果
についても、標準抗血清を用いての判定結果と完全に一
致することが確認された。また、判定に要する時間は、
標準抗血清を用いる場合の1/5〜1/10に短縮でき
ることが判明した。
【0049】
【発明の効果】以上に説明したように、この発明は、
犬、猫の血液型を認識する抗血清たる血清フラクション
を、免疫グロブリンのIgGクラスに分画精製すること
によって、抗血清に較べて、物質としての組成を格段に
単純化し、十分な均一性、保存性、安定性、流通性を確
保することができるので、広く一般に普及させて利用す
ることが可能であり、獣医療の領域に安全な輸血療法を
確立することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】犬の1システムにおける輸血可能な組み合せを
示す図。
【図2】犬のDシステムにおける輸血可能な組み合せを
示す図。
【図3】猫のABシステムにおける輸血可能な組み合せ
を示す図。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 赤血球型が1システムの1・1型である
    ことが判明している犬血液の赤血球部分を免疫原とし、
    該免疫原を赤血球型が1システムの1(−)型であるこ
    とが判明している犬に免疫付けし、該犬の血液の血清フ
    ラクションを免疫グロブリンのIgGクラスに分画精製
    してなる犬の赤血球型を認識するポリクローナル抗体。
  2. 【請求項2】 赤血球型が1システムの1・1型である
    ことが判明している犬血液の赤血球部分を免疫原とし、
    該免疫原を赤血球型が1システムの1・2型であること
    が判明している犬に免疫付けし、該犬の血液の血清フラ
    クションを免疫グロブリンのIgGクラスに分画精製し
    てなる犬の赤血球型を認識するポリクローナル抗体。
  3. 【請求項3】 赤血球型が1システムの1・2型である
    ことが判明している犬血液の赤血球部分を免疫原とし、
    該免疫原を赤血球型が1システムの1(−)型であるこ
    とが判明している犬に免疫付けし、該犬の血液の血清フ
    ラクションを免疫グロブリンのIgGクラスに分画精製
    してなる犬の赤血球型を認識するポリクローナル抗体。
  4. 【請求項4】 赤血球型がDシステムのD1型であるこ
    とが判明している犬血液の赤血球部分を免疫原とし、該
    免疫原を兎に免疫付けし、該兎の血液の血清フラクショ
    ンを免疫グロブリンのIgGクラスに分画精製してなる
    犬の赤血球型を認識するポリクローナル抗体。
  5. 【請求項5】 赤血球型がDシステムのD2型であるこ
    とが判明している犬血液の赤血球部分を免疫原とし、該
    免疫原を兎に免疫付けし、該兎の血液の血清フラクショ
    ンを免疫グロブリンのIgGクラスに分画精製してなる
    犬の赤血球型を認識するポリクローナル抗体。
  6. 【請求項6】 赤血球型がABシステムのA型であるこ
    とが判明している猫血液の赤血球部分を免疫原とし、該
    免疫原を兎に免疫付けし、該兎の血液の血清フラクショ
    ンを免疫グロブリンのIgGクラスに分画精製してなる
    猫の赤血球型を認識するポリクローナル抗体
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WO2019194360A1 (ko) * 2018-04-06 2019-10-10 김희영 개의 수혈 적합성 판별 방법, 및 이를 위한 키트, 단일클론항체 및 하이브리도마 세포주
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CN115598356A (zh) * 2022-09-30 2023-01-13 杭州瑞测生物技术有限公司(Cn) 一种猫血型快速检测卡及其检测方法

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