【発明の詳細な説明】
自己免疫疾患および炎症性疾患の治療 発明の背景
自己免疫疾患の原因となっている自己抗原の性質については不明であり、自己
免疫応答を引き起こす作用についても知られていない。ウイルスタンパク質が自
己抗原と類似性を有しているので自己反応性T細胞やB細胞が自己抗原を認識す
るようになるという説が広く支持されている。Bリンパ球が抗体を産生するのに
対し、胸腺由来細胞、すなわち「T細胞」は細胞性免疫機能と関連がある。T細
胞は、細胞表面提示される抗原を認識し、これらの「抗原提示」細胞とともにそ
の機能を発現する。
ヒトT細胞群を判定するために様々なマーカーが使われている。たとえばCD
4は、免疫グロブリンと配列が部分的に同一の非多形性表面糖タンパク質受容体
である。CD4受容体は、明確な成熟末梢T細胞サブセットを定義づける。一般
に、ヘルパー機能や調節機能を発現するCD4T細胞は免疫応答においてB細胞
と相互作用を示すが、CD8表面抗原発現T細胞は細胞傷害性T細胞として機能
し、免疫応答を調節する作用を示す。T細胞受容体は、T細胞応答を強化または
調節する刺激の経路となっているので、免疫介入の標的となりうる。
細胞相互作用のうち、CD4+T細胞と抗原提示細胞(APC)の相互作用は
免疫応答の根源に位置するものである。自己免疫応答は多くの点で正常免疫応答
と本質的に同様であ
る。したがって、CD4+自己抗原反応性T細胞は、結合グルーブに自己抗原ペ
プチドと結合したクラスIIを発現するAPCによって再刺激される。ある種の
ヒトの疾患においてこの現象が起きることを示す証拠が示されている。たとえば
、甲状腺のグレーブズ病では、難治の場合に摘出される甲状腺にイン・ビボ活性
化T細胞が存在し、これらの細胞の多くがクローニング後に、外部からいかなる
抗原も付与されていない自己甲状腺細胞(APCとして)、あるいは甲状腺特異
抗原である甲状腺ペルオキシダーゼやサイログロブリンが付与されているAPC
を認識することを示すことができる[ロンデイら(Londei,M.et al.)、Scie nce 228:
85-89(1985);デイアンら(Dayan,C.M.et al.)、Proc.Natl.Aca d.Sci.USA 88:
7415-7419(1991)]。同様に、リウマチ様関節炎(RA)では、
3年の経過期間中の連続3回の手術においてRA患者の関節からコラーゲンII
型を認識するイン・ビボ活性化T細胞が単離されている[ロンデイら(Londei,
M.et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci. 86:636-640(1989)]。自己免疫特性
を示すその他のヒトの疾患においては、重症筋無力症におけるアセチルコリン受
容体[ホホルフェルドら(Hohlfeld,R.et al.)、Nature 310:224-246(1984
)]、多発性硬化症におけるミエリン基礎タンパク質[ハフラーら(Hafler,D.
A.et al.)、J.Immunol.139:68-72(1987)]、またはインスリン依存性糖
尿病における膵島細胞膜[デ・ベラルディニスら(De Berardinis,P.et al.)
、Lancet II:823-824(1988);コンティアイネンら(Kontiainen
,S.et al.)、Autoimmunity 8:193-197(1991)]を認識するCD4+細胞な
どの血液由来CD4+T細胞がクローン化されている。
CD4以外の因子も細胞性免疫応答に影響を及ぼす。サイトカインの1種であ
る腫瘍壊死因子−α(TNFα、カケクチンともいう)は、炎症、組織傷害、免
疫応答、および病変部への細胞侵入に多様な影響を及ぼすので、リウマチ様関節
炎をはじめとする炎症性関節疾患の発生に何らかの役割を果たしている[ブレナ
ンら(Brennan,F.M.et al.)、Lancet 11, 244-247(1989);フェルドマンら
(Feldmann,M.et al.)、Ann.Rheumatic Dis.51:480-486(1990)]。TN
Fαは、エンドトキシンやその他の刺激に反応して主に単球とマクロファージに
よって17kDのタンパク質サブユニットの可溶性ホモトリマーとして分泌され
るタンパク質である[スミスら(Smith,R.A.et al.)、J.Biol.Chem.262:6
951-6954(1987)]。膜に結合した26kDのTNF前駆体も記載されている[
クリーグラーら(Kriegler,M.et al.)、Cell 53:45-53(1988)]。TNFα
をコードする遺伝子の発現は単球/マクロファージファミリーの細胞に限定され
ない。TNFはCD4+およびCD8+の末梢血Tリンパ球や様々な培養T細胞
系およびB細胞系によっても産生される[クチュリら(Cuturi,M.C.et al.)
、J.Exp.Med.165:1581(1987);スングら(Sung,S.-S.J.et al.)、J.Exp .Med.168
:1539(1988);ターナーら(Turner,M.et al.)、Eur.J.Immun ol.17:
1807-1814(1987)]。最近の証拠
から、自己免疫病理および移植片対宿主病理におけるTNFの関与が示唆されて
いる[ピグエットら(Piguet,P.-F.et al.)、J.Exp.Med.166:1280(1987)
]。
自己免疫疾患および炎症性疾患に関する多因子の原因のため、自己免疫疾患お
よび炎症性疾患のより良い治療が大いに求められている。発明の概要
本発明は自己免疫疾患や炎症性疾患、とくにリウマチ様関節炎の治療において
、CD4+T細胞阻害剤とTNFアンタゴニストを組み合わせて使用する併用療
法が、各薬剤を単独で使用する場合よりはるかに優れた結果が得られるという発
見に関する。CD4+T細胞阻害剤は、CD4+T細胞の活性化または抗原提示
細胞(APC)とCD4+T細胞の相互作用を遮断、減少、阻害または干渉する
薬剤を含む、例えば、T細胞またはT細胞受容体に対する抗体;APCまたはA
PC受容体に対する抗体;および他の適当なペプチドまたは小型分子等である。
TNFアンタゴニストはTNF活性、TNF受容体またはTNF合成を遮断、減
少、阻害または干渉する薬剤を含む、例えば、抗TNF抗体;可溶性TNF受容
体;および他の適当なペプチドまたは小型分子等である。
本発明の第1の態様において、抗CD4抗体は抗TNF抗体と併用して(同時
または逐次的に)投与される。本発明の別の態様において、抗CD4抗体はTN
F受容体/IgG融合タンパク質のような可溶性TNF受容体と併用して投与さ
れる。本発明の第3の態様において、シクロスポリンは抗TNF抗体と併用して
投与される。併用療法は、多数のCD4+T細胞阻害剤と多数のTNFアンタゴ
ニストの併用を含むどんなCD4+T細胞阻害剤とどんなTNFアンタゴニスト
の併用をも利用することができる。併用療法は、CD4+T細胞阻害剤を、TN
Fアンタゴニスト以外の炎症メディエーターと併用して利用することもできる。
CD4+T細胞阻害剤とTNFアンタゴニストは薬学的に許容されるビーイク
ルとともに投与することができ、投与は単回投与でもよいし、数日ないし数週の
間隔をおいて連続的に投与してもよい。
CD4+T細胞阻害剤とTNFアンタゴニストの併用療法の利点としては、各
治療薬を別々に使用する治療の効果より優れた結果が得られることなどが挙げら
れる。また、同程度の免疫応答および炎症応答の低下をもたらすのに用量が少な
くて済むので、治療ウィンドウ(therapeutic window)が広がる。用量が少なくて
済むということは、患者の出費を減らし、副作用の発現も減る可能性がある。図面の簡単な説明
図1は、それぞれ図1Aおよび図1Bとした1組のグラフであり、50μgの
抗TNF(ハムスターTN3.19.2)および200μgの抗CD4をDBA
/1雄性マウスに投与後の臨床スコア(図1A)および足蹠腫大測定値(図1B
)によって関節炎抑制を評価した実験結果を示す。白抜き四
角=対照;ダイアモンド=抗CD4;三角=抗TNF;黒塗り四角=抗CD4/
抗TNF。
図2は、それぞれ図2A、図2B、図2C、および図2Dとした一連のグラフ
であり、臨床スコアおよび足蹠腫大測定値に対する低用量(50μg)抗TNF
または高用量(300μg)抗TNFによる抗CD4の作用の強化を評価した第
2の実験結果を示す。図2Aは低用量抗TNFの場合の臨床スコアであり、図2
Bは高用量抗TNFの場合の臨床スコア、図2Cは低用量抗TNFの場合の足蹠
腫大測定値、図2Dは高用量抗TNFの場合の足蹠腫大測定値である。白抜き四
角=対照;ダイアモンド=抗CD4;三角=抗TNF;黒塗り四角=抗CD4/
抗TNF。
図3は、DBA/1マウスに250μgのシクロスポリンA投与、50μgの
抗TNF抗体投与、および250μgのシクロスポリンAと50μgの抗TNF
抗体の併用投与の後の足蹠腫大測定によって評価された関節炎抑制を示すグラフ
である。白抜き四角=対照;ダイアモンド=シクロスポリンA;三角=抗TNF
;黒塗り四角=シクロスポリンA/抗TNF。発明の詳細な説明
本発明は、CD4+T細胞阻害剤をTNFアンタゴニストと併用投与すること
によるリウマチ様関節炎などの自己免疫疾患または炎症性疾患の治療に関する。
本発明は、多数のCD4+T細胞阻害剤を多数のTNFアンタゴニストと併用す
ることをも含む。ここで用いられる「CD4+T細胞阻害剤」という用語は、C
D4+T細胞の活性化または抗原提示細胞(APC)とCD4+T細胞の相互作
用を遮断、減少、阻害または干渉する薬剤を指す。CD4+T細胞阻害剤として
は、抗CD4、抗CD28、抗CD52(たとえばCAMPATH−1H)、抗
IL−2RなどT細胞またはそれらの受容体に対する抗体;抗クラスII、抗I
CAM−1、抗LFA−3、抗LFA−1などAPCまたはそれらの受容体に対
する抗体;シクロスポリン、特にシクロスポリンAやFK−506などHLAク
ラスIIグルーブをブロックするかT細胞活性化におけるシグナル伝達をブロッ
クするものをはじめとするT細胞/APC相互作用をブロックするペプチドおよ
び小型分子;およびCD19、20、21、23、およびBB/7またはB1、
CD28リガンドなどのCD5+B細胞などのB細胞に対する抗体が挙げられる
。CD5+B細胞などのB細胞は、疾患進行において重要なタイプのAPCであ
ると考えられている[プラター−ザイベルクら(Plater-Zyberk,C.et al.)、Ann.N.Y.Acad.Sci.
651:540-555(1992)]。したがって、本発明においては
抗B細胞抗体がとくに有用である。
ここで用いられる「TNFアンタゴニスト」という用語は、TNF活性、TN
F合成またはTNF受容体を遮断、減少、阻害または干渉する薬剤を指す、例え
ば、抗TNF抗体;可溶性TNF受容体(モノマー性受容体および/または受容
体を含む融合タンパク質、例えば受容体/IgG融合タンパ
ク質など);ペントキシフィリンまたは他のフォスフォジエステラーゼ阻害剤や
サリドマイドなどの他の適当なペプチドまたは小型分子である。
本発明におけるTNFアンタゴニスト以外の炎症メディエーターは、TNFア
ンタゴニストの代わりにまたはTNFアンタゴニストに付加して用いることもで
きる。培養リウマチ性関節細胞において、ブレナンら(Brennan et al.)[Lancet 11:
244-247(1989)]は、TNFの遮断がIL−1産生の低レベル調節(down-regul
ation)をもたらし、、前炎症性サイトカインであるGM−CSFの低レベル調節
をもたらしたことを示した。[ハワースら(Haworth et al.)、E.J.I. 21:2575-25
79(1991)];ブレナンら(Brennan et al.)、準備中]。未発表のデータは、抗T
NFはIL−6産生も遮断することを示す。これらのサイトカインの「ネットワ
ーク」すなわち「ヒエラルキー(hierarchies)」はインビボでも作用する;抗T
NF抗体で処置したリウマチ性関節炎の患者は、処置後数週間以内に、血清IL
−6のレベルばかりでなく、C反応性タンパク質のようなIL−6依存性の急性
相タンパク質のレベルまでも低下した[エリオットら(Elliott,M.J.et al.)、Ar thritis & Rheumatism
36:1681-1690(1993)]。前炎症メディエーターであるTN
F、IL−1、GM−CSF、IL−6およびIL−8は同じネットワークすな
わち同じヒエラルキーの一部であるので、これらのいずれを遮断しても同等の効
果が得られるであろう、従って、本発明の炎症メディエーターとして使用できる
。炎症メディエーターの代表とし
てはIL−1の活性、合成または受容体のシグナル化を遮断、減少、阻害または
干渉する薬剤を含み、例えば抗IL−1抗体、可溶性IL−1R、IL−1受容
体アンタゴニスト、または他の適当なペプチドおよび小型分子;IL−6の活性
、合成または受容体のシグナル化を遮断、減少、阻害または干渉する薬剤を含み
、例えば抗IL−6抗体、抗gp130、または他の適当なペプチドおよび小型
分子;他の炎症メディエーターの活性、合成または受容体のシグナル化を遮断、
減少、阻害または干渉する物質を含み、例えばGM−CSFおよびヘモカイン(
IL−8)ファミリーのメンバー;およびIL−4、IL−10、TGFβなど
抗炎症性を有するサイトカインなどが挙げられる。さらに、抗リウマチ剤である
メソトレキセートのような他の抗炎症剤もCD4+T細胞阻害剤および/または
TNFアンタゴニストと併用して投与できる。
本発明の1つの態様において、抗CD4抗体は抗TNF抗体と併用して用いる
。抗体という用語は、ポリクローナルおよびモノクローナル両抗体を包含するも
のである。抗体という用語は、CD4またはTNFと反応する2つ以上の抗体の
混合物(たとえば異なるタイプのCD4またはTNF反応性モノクローナル抗体
の混合物)をも包含するものである。さらに、抗体という用語は、抗体全体、そ
れらの生物学的機能を持つ断片、二重機能性抗体および2つ以上の種の一部分を
含んでなるキメラ抗体を包含する。使用可能な生物学的機能を持つ抗体断片とは
、CD4またはTNFへの抗体断片の結
合に十分な断片である。
キメラ抗体は、2つの異なる種(たとえばヒトの定常領域とネズミの可変また
は結合領域)に由来する部分からなるものであってよい。2つの異なる種に由来
する部分は、従来の方法によって化学的に結合させてもよいし、遺伝子操作技術
を用いて単一の連続タンパク質として調製してもよい。キメラ抗体の軽鎖と重鎖
の両部分のタンパク質をコードするDNAを連続タンパク質として発現させるこ
とができる。
体細胞ハイブリダイゼーション技術[ケーラーとミルスタイン(Kohler and M
ilstein)、Nature 256:495-497(1975)]やその他の技術により、CD4また
はTNFと反応するモノクローナル抗体を製造することができる。代表的なハイ
ブリダイゼーション法では、少なくともCD4またはTNFの一部分からなる粗
製または精製タンパク質またはペプチドを免疫原として使うことができる。動物
に免疫原を接種して、抗CD4抗体または抗TNF抗体産生脾臓細胞を得る。免
疫される動物の種は、目的のモノクローナル抗体の種によって異なる。抗体産生
細胞を不滅化細胞(たとえば黒色腫細胞)と融合させて、抗CD4抗体または抗
TNF抗体を分泌する能力を有するハイブリドーマを作成する。融合しなかった
残りの抗体産生細胞と不滅化細胞は除去される。目的の抗体を産生するハイブリ
ドーマを従来の方法を用いて選択し、選んだハイブリドーマをクローン化し、培
養する。
動物に少なくともCD4またはTNFの一部分からなる粗製または精製タンパ
ク質またはペプチドを免疫投与すること
によって、ポリクローナル抗体を製造することができる。動物は、CD4または
TNFと反応する抗体が産生される条件下で飼育される。目標の抗体値に達した
ら、動物から採血する。ポリクローナル抗体含有血清(抗血清)を他の血液成分
から分離する。ポリクローナル抗体含有血清をさらに分離して、特定タイプの抗
体(たとえばIgG、IgM)の画分に分けることができる。
CD4特異的抗体は、実験的に誘導された自己免疫疾患および自然発生的な自
己免疫疾患の両方に対し広いレンジにわたる処置に使用されてきた。抗CD4抗
体およびそれらの疾患治療用途に関するさらに詳細な説明が下記文献に記載され
ており、それらの記載内容は引例として本発明に含まれるものとする。[米国特
許出願第07/867,100号、1992年6月25日出願;グレイヘブら(G
rayheb,J.et al.)、J.of Autoimmunity 2:627-642(1989);ランゲスら(Ra
nges,G.E.et al.)、J.Exp.Med.162:1105-1110(1985);ホムら(Hom,J
.T.et al.)、Eur.J.Immunol.18:881-888(1988);ウーリーら(Wooley,P
.H.et al.)、J.Immunol.134:2366-2374(1985);クーパーら(Cooper,S.
M.et al.)、J.Immunol.141:1958-1962(1988);バン・デン・ブロエクら
(Van den Broek,M.F.et al.)、Eur.J.Immunol.22:57-61(1992);ウォ
フシーら(Wofsy,D.et al.)、J.Immunol.134:852-857(1985);ウォフシ
ーら(Wofsy,D.et al.)、J.Immunol.136:4554-4560(1986);エルマーク
ら(Ermak,T.J.et al.)、Laboratory Investi
gation 61:
447-456(1989);レイテルら(Reiter,C.et al.)、34:525-532
(1991);ヘルゾーグら(Herzog,C.et al.)、J.Autoimmun.2:627(1989
);オウヤンら(Ouyang,Q.et al.)、Dig.Dis.Sci.33:1528-1536(1988
);ヘルゾーグら(Herzog,C.et al.)、Lancet,p.1461(December 19,19
87);エムリッヒら(Emmrich,J.et al.)、Lancet 338:570-571(August 31,
1991)]。
抗TNF抗体およびそれらの疾患治療用途に関するさらに詳細な説明が下記文
献に記載されており、それらの記載内容は引例として本発明に含まれるものとす
る。[米国特許出願第07/943,852号、1992年9月11日出願;ル
ビンら(Rubin et al.)、EPO特許公開第0218868号、1987年4月
22日公開;ヨネら(Yone et al.)、EPO特許公開第0288088号、1
988年10月26日公開;リアングら(Liang,C.-M.et al.)、Biochem.B iophys.Res.Comm.
137:847-854(1986);ミーガーら(Meager,A.et al.)
、Hybridoma 6:305-311(1987);フェンドリーら(Fendly et al.)、Hybrido ma
6:359-369(1987);ブリングマンら(Bringman,T.S.et al.)、Hybridom a
6:489-507(1987);ブリングマンら(Bringman T.S.et al.)、Hybridoma
6:489-507(1987);ヒライら(Hirai,M.et al.)、J.Immunol.Meth.96:57-6
2(1987);モラーら(Moller,A.et al.)、Cytokine 2:162-169(1990);
マティソンら(Mathison,J.C.et al.)、J.Clin.Invest. 81:1925-1937(1
988);ベウトラーら(Beutler,B.et al.)
、Science 229:869-871(1985);トレーシーら(Tracey,K.J.et al.)、Nat ure
330:662-664(1987);シマモトら(Shimamoto,Y.et al.)、Immunol.Le tt.
17:311-318(1988);シルバら(Silva,A.T.et al.)、J.Infect.Dis.
162:421-427(1990);オパールら(Opal,S.M.et al.)、J.Infect.Dis.1
61:1148-1152(1990);ヒンショーら(Hinshaw,L.B.et al.)、Circ.Shock
30:279-292(1990);Lancet 342:173-174(1993);ウイリアムスら(Williams,R.
O.et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9784-9788(1992)]。
CD4+T細胞阻害剤およびTNFアンタゴニストは、従来の無毒の薬学的に
許容される担体、アジュバント、およびビーイクルを含む処方として、皮下投与
、静脈内投与、筋肉内投与、局所投与、経口投与、直腸内投与、経鼻的投与、経
頬的投与、経膣的投与、吸入噴霧投与、または留置片(implanted reservoir)投
与などを含む種々の経路で投与することができる。薬剤が投与される剤形(たと
えばカプセル、錠剤、溶液、乳剤)は、少なくとも部分的には投与経路によって
決まる。
抗CD4薬剤と抗TNF薬剤を組み合わせたものの治療有効量とは、ある自己
免疫疾患または炎症性疾患に伴う症状を有意に抑制または除去するのに要する量
をいう。治療有効量は個体ベースで決定され、少なくとも一部は使用薬剤の特殊
性、その個体のサイズ、治療しようとする症状の程度、目標とする効果などを考
慮して決められる。例えば1つの態様に
おいて、抗CD4抗体と抗TNF抗体の併用投与の好ましい治療有効量とは、各
抗体について投与1回あたり0.1〜10mg/kgである。したがって、治療
有効量は、通常の技術を有する者であれば上記因子を用いて常法による実験を行
なうことによって決定することができる。
治療有効量は、単回投与または数日ないし数週の間隔を置いて連続投与するこ
とができる。治療有効量を投与したら、維持量の抗CD4薬剤、抗TNF薬剤ま
たは抗CD4薬剤と抗TNF薬剤を組み合わせた物を投与することができる。維
持量とは、治療有効量によって達成された症状の抑制または除去を維持するのに
要する抗CD4薬剤、抗TNF薬剤、または抗CD4薬剤と抗TNF薬剤を組み
合わせた物の量をいう。この維持量は、単回投与または数日ないし数週の間隔を
置いて連続投与することができる。治療有効量と同様に、維持量も個体ベースで
決定される。
したがって、本発明の併用療法はヒトおよび動物の多くの自己免疫疾患や炎症
性疾患の治療に有用である。ヒトにおいては、本療法が適している疾患としては
、リウマチ様関節炎(RA)および若年性慢性関節炎(JCA)などが挙げられ
る。併用療法に適したその他の疾患としては、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、炎
症性腹症関連関節炎などの脊椎関節症;結節性多発性動脈炎、ベーゲナー肉芽腫
症、巨細胞性動脈炎、ヘーノホーシェーンライン紫斑病、腎臓の顕微脈管炎など
の脈管障害;シェーグレン症候群;全身性狼瘡;クローン病および潰瘍性大腸炎
などの炎症性腹症;慢性活動性肝炎;原
発性胆汁性肝硬変;原因不明繊維形成肺胞炎およびその他の繊維形成肺疾患;ブ
ドウ膜炎;多発性硬化症;重症筋無力症;溶血性貧血;強皮症;移植片対宿主疾
患(graft versus host disease);アレルギー;および腎臓、肝臓、心臓、肺、
骨髄、皮膚、その他器官の移植などが挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細かつ具体的に説明する。実施例1
抗CD4抗体および抗TNF抗体を使用したネズミモデルにおける誘 導関節炎の治療
コラーゲンII型誘導関節炎のネズミモデルは、顕著なMHCクラスII素因
、ならびに組織学的特徴、免疫組織学的特徴、および軟骨と骨の侵食の点でリウ
マチ性関節炎(RA)と類似性がある。さらに、治療上の応答とヒトのリウマチ
性関節炎とは良い相関がある。例えば、両疾患において、抗TNF抗体は有益な
効果があり[ウイリアムスら(Williams,R.O.et al.)、PNAS 89:9784-9788(1992)
;エリオットら(Elliott,M.J.et al.)、Arthritis & Rheumatism 36:1681-90(
1993)]、抗CD4抗体は最小の効果がある[ウイリアムスら(Williams,R.O.et a
l.)、PNAS(投稿中)(1994)およびホーネフら(Horneff,G.et al.)、Arthritis & Rheumatism
1991:34-129(1992)]。したがって、この動物モデルはヒトの疾患に
よく近似したモデルとして使用することができる。
本実施例で使用したリウマチ様関節炎モデルは、ウイリアムスら[(Williams
,R.O.et al.)、PNAS 89:9784-9788
(1992)]によって記載されているDBA/1マウスのコラーゲンII型誘導関節
炎である。II型コラーゲンは、ミラーが述べるように[Miller、Biochemistry
11:4903-4909(1972)]、限定的ペプシン可溶化と塩分画法によってウシ関節軟
骨から精製した。A.
試験1
8〜12週齢の雄性DBA/1マウスに、フロインドの完全アジュバント(Dif
co Laboratories,East Molsey,UK)に乳化した100μgのウシII型コラーゲ
ンを皮内免疫投与し、21日後に100μgのコラーゲンを腹腔内(i.p.)
に免疫投与した。最初の注射から約35日目に臨床的に明白な関節炎症状(1肢
以上に赤変と腫脹の両方または一方が見られる)が発現した直後に、マウスに抗
CD4、抗TNF、抗CD4と抗TNFの両方、またはイソタイプ対照をi.p.注
射した。関節炎の臨床スコアと足蹠腫大測定値を10日間モニターした。抗体投
与は1日目(発症時)、4日目、および7日目に行なった。
臨床スコアと足蹠腫大
2つの実験を行ない、臨床スコアと足蹠腫大を評価した。各実験では、注射1
回あたり200μgの抗CD4(ラットYTS191およびYTA3.1)を使
用した。臨床スコアは以下の基準で評価した。0=正常、1=軽度の腫大と紅斑
の両方または一方、2=顕著な水腫、3=関節硬直。各肢に
ついて等級評価し、マウス1匹あたり最高12点のスコアを与えた。足蹠腫脹は
、障害を有する後足蹠の厚みをキャリパーで測定することによってモニターした
。結果は、関節炎発症前の足蹠幅に対する足蹠幅の増大率で示した。
第1の実験では、注射1回あたり50μgの抗TNF(ハムスターTN3.1
9.2)を1群あたり5匹のマウスそれぞれに単回投与した。抗CD4または抗
TNF(TN3.19を50μg/マウスの用量で3回投与)の有意な作用はみ
られなかった。臨床スコアと足蹠腫脹のいずれについても併用療法の利点が明白
に認められる(図1Aと図1B参照)。
第2の実験では、50μgまたは300μgの抗TNFを1群あたり7匹のマ
ウスそれぞれに投与した。抗CD4と低濃度(50μg)の抗TNFはいずれも
いくらかの作用を示し、この2つの濃度の併用療法の利点は、足蹠腫脹について
は認められたが、臨床スコアでは認められなかった。しかし、抗TNFを300
μg/マウスの用量で投与したところ、抗CD4との併用療法の利点が臨床スコ
アと足蹠腫脹の両方で見られ、足蹠腫脹でより明白であった(図2A、図2B、
図2C、図2D参照)。
上記実験の結果は、抗TNF抗体と抗CD4抗体を組み合わせて用いる併用療
法は臨床スコアと足蹠腫脹で評価できる明白な利点があることを示すものである
。B.
試験2
8〜12週齢の雄性DBA/1マウスに、フロインドの完
全アジュバント(Difco Laboratories,East Molsey,UK)に乳化した100μgの
II型コラーゲンを皮内免疫投与した。1肢以上で紅斑と腫脹の両方または一方
が初めて見られた日を関節炎発症1日目とした。関節炎は、II型コラーゲン免
疫後30日目ごろに臨床的に明白となった。各マウスにつき、関節炎が初めて見
られた日に処理を開始し、10日にわたり処理を続け、その後マウスを屠殺し、
関節を組織検査用に処理した。1日目、4日目、および7日目にモノクローナル
抗体(mAb)処理を行なった。抗TNF抗体として、中和性のハムスターIg
G1抗TNFα/βモノクローナル抗体(mAb)であるTN3−19.12を
使用した[シーハンら(Seehan,K.C.et al.)、J.Immunology 142:3884-3893(198
9)]。イソタイプ対照はL2であった。抗TNF抗体とイソタイプ対照はセルテ
ック社(Celltech,Slough,UK)と共同で、ワシントン大学医学部(St.Louis,MO,U
SA)のシュライバー(R.Schreiber)より供与された。YTS191.1.2とYT
A3.1.2の1:1混合物よりなる細胞を除去した抗CD4モノクローナル抗
体(ラットIgG2b)は、ウォルトマン(H.Waldmann)(University of Cambrid
ge,UK)により供与された[ガルフレら(Galfre,G.et al.)、Nature 277:131-133(
1979);コッブボルドら(Cobbold,S.P.et al.)、Nature 312:548-551(1984);キ
ンら(Qin,S.et al.)、European J.Immunology 17:1159-1165(1987)]。
足蹠腫大
まず、50μgという最適用量以下(sub-optimal dose)の抗TNFを単独で投
与した場合を、同用量で200μgの抗CD4と併用投与した場合と比較した。
結果を確認するために、上記と同一内容の2つの実験を別に行なった(それぞれ
マウス11〜12匹/群および7〜8匹/群)。抗CD4単独でも最適用量以下
の抗TNF単独でも、足蹠腫大を有意に低下させることはできなかった(データ
は示さない)。しかし、抗TNFと抗CD4の併用処理は、対照mAbを投与さ
れた群と比べて、足蹠腫大が一貫して統計的に有意な低下を引き起こした(P<
0.001)。さらに、いずれの実験においても、抗TNF/抗CD4併用処理
(本明細書では抗CD4/抗TNF処理ともいう)は、抗CD4単独および抗T
NF単独と比べて足蹠腫大を有意に低下させた(P<0.05)。
次に、最適用量の抗TNF(300μg)を単独投与した場合と、同用量で抗
CD4と併用投与した場合を、同一内容の別の2つの実験(それぞれマウス7〜
7匹/群およびマウス6〜7匹/群)と比較した。前記試験同様、抗TNF/抗
CD4併用処理は、対照mAbを投与された群と比べて足蹠腫大を有意に低下さ
せた(P<0.005、データは示さない)。第1の実験では、抗CD4単独ま
たは抗TNF単独を投与された群と比べても、足蹠腫大は抗CD4/抗TNF併
用処理群で有意に低下した(P<0.05)。有意差はなかったが、抗TNF単
独または抗CD4単独の投与を受けたマウスで足蹠腫大がある程度低下したが、
これはおそらく群サ
イズが小さいことによるものであろう(1群あたり6匹)。第2の実験では、抗
CD4/抗TNF併用投与は抗CD4単独投与と比べて足蹠腫大を有意に低下さ
せたが(P<0.05)、抗TNF単独と比べると有意な低下はなかった。これ
は、過去の研究[ウイリアムスら(Williams,R.O.et al.)、PNAS 89:9784-97
88(1992)]から予想されたように、抗TNF自体が足蹠腫大の有意な低下を引き
起こしたからである。実験では、抗TNF単独に起因する足蹠腫大低下率はそれ
ぞれ23%と33%であった。したがって、抗TNF処理による足蹠腫脹低下は
、TN3−119.12(300μg/マウス)による処理が処理期間を通じて
対照と比べて平均約34%の足蹠腫大測定値の低下をもたらした既報の知見にほ
ぼ匹敵するものである[ウイリアムスら(Williams,R.O.et al.)、PNAS 89:
9784-9788(1992)]。
四肢での併発
コラーゲン誘導関節炎では、RAの場合と同様に、臨床疾患が最初に発現した
後に新たに別の四肢に併発するのが普通であり、新たな四肢での併発はこの疾患
の進行の重要な指標である。新たな四肢での併発に及ぼす抗CD4/抗TNF処
理の影響を調べるために、10日間の処理期間の最終日に臨床的に検出可能な関節
炎を有する四肢の数を処理前の関節炎四肢数と比較した。対照mAbを投与され
たマウスでは、症状を有する肢が10日間に約50%増加した。上記2つの実験
の結果をまとめて表1に示す。
抗CD4単独および最適用量以下の抗TNF単独の投与を受けた群において四
肢への新たな影響が減ったが、その差は有意でなかった。最適用量の抗TNFを
投与された群では、四肢への影響の増加率は10%未満であった(P<0.05
)。しかし、さらに注目すべき点は、抗CD4/抗TNFの併用投与を受けた群
で四肢への新たな影響がほとんどなかっ
たことである。新たな四肢への影響の増加は、抗CD4と最適用量以下の抗TN
Fの投与を受けたマウスではわずか3%であり(P<0.05)、抗CD4と最
適用量の抗TNFの投与を受けたマウスでは0%(P<0.005)であった。
組織学的特徴
10日後、マウスを屠殺し、最初に関節炎の臨床症状を示した四肢を各マウス
から切除し、ホルマリン固定し、脱カルシウム化し、ワックス埋入した後、切片
を作成し、ヘマトキシリンとエオジンで染色した。中指近位指節間(PIP)関
節の矢状切片について、軟骨と骨のいずれかに侵食があるかどうかを盲検的に調
べた(炎症組織が充満した軟骨または骨の分界欠損(demarcated defects)として
判定)。比較は同一関節についてのみ行ない、関節炎は同一継続期間のものとし
た。侵食は対照群のPIP関節のほぼ100%で見られ、抗CD4単独または最
適用量以下の抗TNF単独の投与を受けた関節の約70〜80%で見られた。上
記2つの実験の結果をまとめ、表2に示す。
最適用量の抗TNF単独を投与した場合、既報[ウイリアムスら(Williams,
R.O.et al.)、PNAS 89:9784-9788(1992)]の通り病変が有意に低下した。
したがって、最適用量の抗TNF単独の投与を受けたマウスでは、侵食変化を示
した関節の割合は54%に低下し(P<0.001)、抗CD4と最適用量以下
または最適用量の抗TNFを投与された群ではそれぞれ関節の22%(P<0.
01)と31%(P>0.01)のみが侵食された。このように、300μgの
抗TNF単独投与により関節侵食からある程度保護されたが、抗CD4/抗TN
Fを併用投与すると保護の程度が有意に高くなった。
CD4+T細胞の減少
抗CD4処理がどの程度まで末梢CD4+T細胞を減少させるかをフローサイ
トメトリー法によって測定した。解離脾臓細胞または末梢血におけるCD4+リ
ンパ球の比率を計算するために、細胞をフィコエリスリン−コンジュゲート化抗
CD4(Becton Dickinson,Oxford,UK)とともにインキュベーションした後、
リンパ球画分上にスキャッターゲートを設定するフローサイトメトリー法(FACS
can,Becton Dickinson)によって分析した。抗CD4処理によって、脾臓のC
D4+細胞は98%(±1%)減少し、血液中のCD4+T細胞は96%(±3
%)減少した。
免疫組織化学
次に、末梢CD4+T細胞が実質的に全て除去されても関節内にCD4+T細
胞が残存している可能性があるかどうか、処理済み関節炎マウスから採取した切
片の免疫組織化学的分析によって調べた。ワックス埋入切片を脱ワックス処理し
、トリプシン消化した後、抗CD4mAb(YTS191.1.2/YTA3.
1.2)とともにインキュベーションした。CD4+T細胞のT細胞同一性(T c
ell identity)を確認するために、一連の切片を抗Thy−1mAb(YTS1
54.7)で染色した[コッブボルドら(Cobbold,S.P.et al.)、Nature 312
:548-551(1984)]。対照切片は、HRPN11/12aとともにインキュベー
ションした。結合抗体の検出は、既報[デレウランら(Deleuran,B.W.et al.
)、Arthritis & Rheumatism 34:1125-1132(1991)]に従い、アルカリホスファ
ターゼ/ラット抗アルカリホスファターゼ複合体(APAAP、Dako,High Wyc
ombe,UK)および高速赤色基質(fast red substrate)によつておこなった。対照
mAb投与マウスだけでなく、抗CD4処理マウスの関節からも少数のCD4+
T細胞が検出された(データは示さない)。さらに、調べた少数のマウス(1処
理群あたり4匹)の範囲内では、抗CD4単独投与または抗CD4と抗TNFの
併用投与を受けた群にCD4+T細胞数の有意な減少は見られなかった(データ
は示さない)。したがって、抗CD4処理は関節からCD4+T細胞を除去しな
かったことになる。
抗コラーゲンIgG値
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって血清抗コラーゲンIgG値を
測定した。マイクロタイタープレートにウシII型コラーゲン(2μg/ml)
を被覆し、ブロックした後、段階的に希釈した一連の試験血清とともにインキュ
ベーションした。結合IgGの検出は、アルカリホスファターゼ−コンジュゲー
ト化ヤギ抗マウスIgGとともにインキュベーションし、次いで基質(ジニトロ
フェニルホスフェー
ト)を加えることによって行なった。405nmで光学密度を読み取った。アフ
ィニティー精製マウス抗II型コラーゲン抗体からなる参照試料を各プレートに
加えた。結果を表3に示す。
抗CD4単独、抗TNF単独、あるいは抗CD4と抗TNFを組み合わせたもの
を投与しても、10日間の処理期間中に抗II型コラーゲンIgGの血清値は有
意な変化を示さなかった。
抗グロブリン応答
抗CD4処理が抗TNFmAbに対する中和性抗グロブリン応答を防止するか
どうかを調べるために、ELISAで測定した10日目のIgM抗TN4−19
.12値を比較した。この時点では、IgG抗TN3−19.12応答は検出さ
れなかった。マイクロタイタープレートにTN3−19.12(5μg/ml)
を被覆し、ブロックした後、一連の希釈試験血清とともにインキュベーションし
た。ヤギ抗マウスIgMアルカリホスファターゼコンジュゲートを加え、次いで
基質を加えることによって、結合IgMを検出した。その結果、抗CD4は、抗
TN3−19.12抗体応答の発現の防止に非常に有効であることがわかった(
表4)。次に、抗CD4処理が循環抗TNF−α値の上昇をもたらす(ハムスタ
ー抗TNFに対する抗体応答を低下させることによって)かどうかを調べるため
に、実験10日目に組換えネズミTNF−αを用いて、マウス血清中遊離TN3
−19.12を検出するELISAを行なった。マイクロタイタープレートに組
換えネズミTNF−αを被覆し、ブロックした後、試験血清とともにインキュベ
ーションした。次いで、ヤギ抗ハムスターIgGアルカリホスファターゼコンジ
ュゲート(ネズミIgGに吸着させたもの)を加え、次いで基質を加えた。既知
濃度のTN3−19.12試料と比較することで定量を行なった。結果を表4に
示す。
TN3−19.12値は、抗TNF単独投与の場合と比べて、抗CD4と抗TN
Fを併用投与した群でやや上昇したが、その差は統計的に有意ではなかった。実施例2
TNF受容体/IgG融合タンパク質と抗CD4抗体を併用したネズ ミモデルにおける誘導関節炎の治療
コラーゲン誘導関節炎における関節疾患の重症度を調節する可能性について、
抗CD4モノクローナル抗体(mAb)とヒトp55TNF受容体/IgG融合
タンパク質の併用の有効性を調べるため、上述のようなコラーゲンII型誘導関
節炎のネズミモデルを使用した。第1に、TNF受容体/IgG融合タンパク質
処置、抗TNFmAb処置および高用量のコルチコステロイド療法間の有効性を
比較した。続いて、
抗CD4抗体とTNF受容体/IgG融合タンパク質の併用療法を調べた。A.
実験手順
雄性DBA/1マウスに、フロインドの完全アジュバント(Difco Laboratorie
s,East Molsey,UK)に乳化した100μgのウシII型コラーゲンを皮内投与し
て免疫した。関節炎発症日の平均は、免疫後約1カ月であった。臨床的に明白な
関節炎症状(紅斑と腫脹の両方または一方)が発現した後に、マウスに治療剤を
腹腔内注射した。関節炎の臨床スコアと足蹠腫大(キャリパーで測定)を10日
間モニターし、その後マウスを屠殺し、関節を組織検査用に処置した。血清は分
析のため10日目に採取した。1日目(発症時)、4日目および7日目に治療剤
を投与した。治療剤は、TNF受容体/IgG融合タンパク質(p55−sf2
)、抗TNF抗体、抗CD4抗体およびメチルプレドニソロンアセテートなどで
あった。B.
TNF受容体/IgG融合タンパク質、抗TNF抗体、またはメチルプレ ドニソロンアセテートによる治療の比較
上記の実験手順を用いて、TNF受容体/IgGタンパク質(2μg)(18
匹)、TNF受容体/IgGタンパク質(20μg)(18匹)、TNF受容体
/IgGタンパク質(100μg)(12匹)、抗TNFモノクローナル抗体(
mAb)(300μg)(17匹)、メチルプレドニソロンアセテート(6匹)
、無関係なヒトIgG1モノクローナル抗体(mAb)(6匹)または生理食塩
水(対照)でマウス群を処置した。TNF受容体/IgG融合タンパク質を、本
明細書ではp55−sf2と称する[バトラーら(Butler et al.)、Cytokine(投
稿中):(1994)]、セントコール社(Centocor Inc.、Malvern PA)より購入した
;それは2量体であり、J配列の一部と融合したヒトp55TNF受容体(細胞
外領域)からなる。そしてこのJ配列にはそれ自身κ軽鎖の定常領域と会合して
いるヒトIgG重鎖の定常領域全体が結合している。抗TNF抗体はTN3−1
9.12、すなわち、中和するハムスターIgG1抗TNFα/βモノクローナ
ル抗体[シーハンら(Sheehan,K.C.et al.)、J.Immunology 142:3884-3893(1989)
]であり、セルテック社(Celltech,Slough,UK)と共同で研究しているワシント
ン大学メディカルスクール(St.Louis,MO,USA)のシュライバー(R.Schreiber)より
供与された。中和価は、3量体の組換えネズミTNFαによるWEHI164細
胞の死滅を50%阻害させるのに必要なTNFα中和剤の濃度として表した;6
0pg/mlのマウスTNFαを使用しての、p55−sf2の中和価は、抗T
NFmAb(TN3−19.12)に対する62.0ng/mlと比較して0.
6ng/mlであった。上記の方法を用いて、コルチコステロイドであるメチル
プレドニソロンアセテート(Upjohn,Crawley,UK)を、2mg/kg体重の用量レ
ベルで水溶性懸濁物として腹腔内注射により投与した
。この用量は4.2mg/kg/週と同等であり、ヒトの難治性RAを治療する
ときに用いられる典型的な用量(1−2mg/kg/週)よりも高い量である。
足蹠腫大
p55−sf2での処置は、処置期間にわたって足蹠腫大において用量依存性
の低下という結果となり、20μgおよび100μgの用量を用いた場合、生理
食塩水を与えたマウスと比較して統計的に有意な低下を示した(P<0.05)
。対照として無関係なヒトIgG1mAbを与えたマウス群は、生理食塩水処置
群と何の偏差も示さなかった(データは示さない)。このことは、p55−sf
2の治療上の効果はヒトIgG1定常領域よりもTNF受容体に帰因させうるこ
とを示した。足蹠腫大の阻害において、抗TNFmAbは限界的投与ではp55
−sf2よりも効果的であったけれども、300μgの抗TNFmAbを与えた
マウスは、100μgのp55−sf2を与えたマウスと同程度の足蹠腫大低下
が見られた。メチルプレドニソロンアセテート治療群においては、100μgの
p55−sf2または300μgの抗TNFmAbが示した低下に匹敵する大き
さの足蹠腫大低下が観察された。
四肢での併発
10日間の処置期間にわたって、関節炎の四肢の数の変化を観察した。結果を
表5に示す。
p55−sf2、抗TNFmAbまたはメチルプレドニソロンアセテートを与え
たマウス群において、四肢の回復への強い傾向が見られたが、抗TNFmAb処
置群においてのみ、統計的に有意な回復に到達した(P<0.05)。
組織学的特徴
10日後、マウスを屠殺し、最初に関節炎の臨床症状を示した四肢を各マウス
から切除し、固定し、脱カルシウム化し
、ワックス埋入し、切片を作成し、ヘマトキシリンとエオジンで染色した。各マ
ウスの中指近位指節間(PIP)関節の矢状切片について、軟骨と骨のいずれか
に侵食があるかどうかを上述のように盲検的に調べ、エオジンの有無によって分
類した。従って、比較は同一関節について行ない、関節炎は同一継続期間のもの
とした。結果を表6に示す。
生理食塩水処置群、対照ヒトIgG1処置群において、PIP関節の侵食がそれ
ぞれ92%および100%存在した。しかし、p55−sf2(100μg)で
処置されたマウスの関節では僅か50%(P<0.05)しかおよび抗TNFm
Ab処置マウスでは僅か41%(P<0.01)しか侵食変
化を示さなかった。2μgまたは20μgのp55−sf2処置マウスにおいて
、侵食された関節の比率の多少の低下が観察されたが、それらは統計的に有意で
はなかった。同様に、メチルプレドニソロンアセテート処置も関節侵食を有意に
低下させなかった。
抗コラーゲン抗体値
既知のELISA法[ウイリアムスら(Williams,R.O.et al.)、PNAS 89:
9784-9788(1992)]により、10日目における抗コラーゲンIgG値を測定し
たマイクロタイタープレートをII型コラーゲンで増感し、それから、段階的に
希釈した一連の試験血清とともにインキュベートした。結合IgGの検出は、ア
ルカリホスファターゼ−コンジュゲート化ヤギ抗マウスIgG、続いて基質(ジ
ニトロフェニルホスフェート)を用いて行なった。405nmで光学密度を読み
取った。どんな処置群間の差異も検出しなかった(データは示さない)。このこ
とより、p55−sf2の治療効果は一般的な免疫抑制効果に依るものではない
ことが示唆される。C.
抗CD4抗体とp55−sf2の併用処置の効果
融合タンパク質で処置したマウスにおいて検出されたp55−sf2に対する
抗体の力価が高いという観点に立って1つの実験を行い、抗CD4モノクローナ
ル抗体(mAb)の同時投与がp55−sf2の治療効果を高めるかどうかを決
定した。上述の実験手順を用いて、3つの異なる処置法を比
較した:抗CD4mAb単独(200μg)、p55−sf2単独(100μg
)または抗CD4mAb(200μg)+p55−sf2(100μg)。4番
目の群は未処置の対照マウスよりなるものであった。YTS191.1.2とY
TA3.1.2の1:1混合物よりなる細胞を除去した抗CD4mAb(ラット
IgG2b)は、ウォルトマン(H.Waldmann)(University of Cambridge,UK)より
供与された[ガルフレら(Galfre,G.et al.)、Nature 277:131-133(1979);コッ
ブボルドら(Cobbold,S.P.et al.)、Nature 312:548-551(1984);キンら(Qin,S
.et al.)、European J.Immunology 17:1159-1165(1987)]。p55−sf2に
ついては前記記載の通りである。
足蹠腫大
p55−sf2単独での処置は、足蹠腫大を著しく阻害したが、p55−sf
2と抗CD4mAbの併用による相乗阻害効果は顕著であった。それに反し、抗
CD4mAb単独での処置は、足蹠腫大に対しほとんど効果を示さなかった。
四肢での併発
前述のように、関節炎が最初に発現した後の別の四肢での進行的併発を研究し
た。結果を表7に示す。
対照群では、四肢での併発が平均71%増加し、抗CD4mAb単独投与群では
56%に低下し、そして、p55−sf2投与群ではわずか19%に低下した。
しかし、抗CD4mAb+p55−sf2投与群では、四肢での併発の増加は0
%で統計上有意な差異であった。
組織学的特徴
上記のように、処置したマウスのPIP関節の組織学的分析を行った。結果を
表8に示す。
対照群と抗CD4mAb単独投与群は同じ結果を示し、両群で有意な侵食を示す
PIP関節は6/6(100%)であった。しかし、p55−sf2単独投与群
ではPIP関節の2/6(33%)だけが侵食を示した。抗CD4プラスp55
−sf2投与群では、関節の1/6(17%)だけが侵食を示した。
p55−sf2に対する抗体応答
処置期間の終わりに(10日目)、注射したp55−sf2に対するIgM/
IgG応答をELISA法で測定した。マイクロタイタープレートをp55−s
f2(5μg/ml)で被覆し、ブロックした後、段階的に希釈した一連の試験
血清とともにインキュベートした。生理食塩水で処置したマウス由来の血清を負
の対照とした。結合IgMまたはIgGは、適切なアルカリホスファターゼ−コ
ンジュゲート化ヤギ抗マウスIg続いて基質、により検出した。結果を表9に示
す。
p55−sf2に対するIgMとIgGの両抗体の高力価が処置マウスに検出さ
れ、100μgの用量を投与したマウスに最高の力価が見られた。これらの結果
は、ヒトのタンパク質由来のp55−sf2がマウスにおいて高い免疫原性を持
つことを示す。このことは、インビトロでの融合タンパク質のより高い中和価に
もかかわらず、上記Bのセクションで述
べたように、インビボでは抗TNFmAbの方が若干大きな効果があるという説
明となり得る。抗CD4mAb処置は、p55−sf2に対するIgMおよびI
gG両抗体の形成をほぼ完全に阻害することがわかった。
遊離のp55−sf2の血清中濃度
マイクロタイタープレートを組換えネズミTNF−α(Genentech Inc.,San
Francisco,CA)で被覆し、ブロックした後、試験血清とともにインキュベートし
た。次いで、ヤギ抗ヒトIgGアルカリホスファターゼコンジュゲートを加え、
次いで基質を加えた。既知濃度のp55−sf2試料と比較することで定量を行
なった。
抗体応答の阻害は、処置マウスにおけるp55−sf2の循環系における濃度
の明白な差異に関連する。すなわち、融合タンパク質単独投与マウスでは遊離の
p55−sf2は検出できなかったが、抗CD4mAb+p55−sf2投与マ
ウスでは、p55−sf2の血清濃度の平均は12.3μg/mlであった。実施例3
シクロスポリンAおよび抗TNF抗体を併用したネズミモデルにおけ る誘導関節炎の処置
上述のように、コラーゲンII型誘導関節炎のネズミモデルを使用して、コラ
ーゲン誘導関節炎において、関節の疾患の重症度を調節する可能性に対する、C
D4+T細胞阻害剤であるシクロスポリンAと抗TNFモノクローナル抗体(m
Ab)の併用の有効性を調べた。シクロスポリンA(CsA)処置、抗TNF抗
体処置およびCsAと抗TNF抗体の併用処置間の有効性を比較した。A.
実験手順
雄性DBA/1マウスを、フロインドの完全アジュバント(Difco Laboratorie
s,East Molsey,UK)中に乳化した100μgのウシII型コラーゲンを皮内投与
し免疫した。関節炎開始日の平均は、免疫後約1カ月であった。臨床的に明白な
関節炎症状(紅斑と腫脹の両方または一方)が発現した後に、マウス群(各11
匹)に次の治療法を1つ施した:50μg(2mg/kg)のL2(抗TNF抗
体のイソタイプ対照)、3日毎に1回腹腔内(1、4および7日);250μg
(10mg/kg)のシクロスポリンAを毎日腹腔内;50μg(2mg/kg
)の抗TNFmAbであるTN3−19.12、3日毎に1回腹腔内(1、4お
よび7日)または3日毎に1回50μgの抗TNFmAb腹腔内と併用して25
0μgのシクロスポリンAを毎日腹腔内。関節炎は足蹠腫大(キャリパーで測定
)で10日間モニターし、その後マウスを屠殺し、関節を組織検査用に処理した
。
足蹠腫大
対照抗体で処置したマウスと比較して、シクロスポリンAと抗TNFmAbの
併用処置により、治療期間にわたって足蹠腫大の低下がもたらされた。結果を図
3に示す。
四肢での併発
前述のように、関節炎が最初に発現した後の別の四肢での進行的併発を研究し
た。結果を表10に示す。
対照モノクローナル抗体と比較して、シクロスポリンAと抗TNFmAbの併用
療法により、四肢での併発の統計的に有意な低下がみられた(P=0.03)。均等物
当業者であれば、単に常識的実験手法を用いて、ここに述べた発明の具体的態
様に対する多くの均等物を認識しまた確認し得るであろう。そのような均等物は
、下記のクレームの範疇に含まれるものである。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1995年10月10日
【補正内容】
15.哺乳動物における自己免疫疾患または炎症性疾患の治療のための方法であ
って、該哺乳動物にCD4+T細胞阻害剤およびサイトカインを低レベルに調節
する(down-regulate)炎症メディエーターの治療上有効用量を併用投与する方
法。
16.炎症メディエーターがTNFの活性または合成を妨害する薬剤である、請
求項15記載の方法。
17.炎症メディエーターがIL−1の活性または合成を妨害する薬剤である、
請求項15記載の方法。
18.炎症メディエーターがIL−6の活性または合成を妨害する薬剤である、
請求項15記載の方法。
19.炎症メディエーターが抗炎症性を有するサイトカインである、請求項15
記載の方法。
20.哺乳動物における自己免疫疾患または炎症性疾患の治療のための方法であ
って、該哺乳動物に抗CD4抗体および抗TNF抗体の治療上有効用量を併用投
与する方法。
21.哺乳動物における自己免疫疾患または炎症性疾患の治
療のための方法であって、該哺乳動物に抗CD4抗体および可溶性TNF受容体
の治療上有効用量を併用投与する方法。
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(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,BY,
CA,CH,CN,CZ,DE,DK,ES,FI,G
B,GE,HU,JP,KG,KP,KR,KZ,LK
,LU,LV,MD,MG,MN,MW,NL,NO,
NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SI,S
K,TJ,TT,UA,US,UZ,VN
(72)発明者 ウィリアムス,リチャード オーエン
英国,ロンドン イー2 9ビーエヌ プ
リチャーズ ロード,シェベレル ハウス
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