【発明の詳細な説明】
眼内補装具関連出願の引用
本願は、1992年2月18日に出願した同時継続中の米国特許出願第07/837
483号の一部継続出願であり、該米国特許出願第07/837483号は、19
90年3月30日に出願した米国特許出願第07/502458号と、1990年3月14
日に出願した米国特許出願第07/493915号との一部継続出願であり、該
米国特許出願第07/493915号は、1989年8月9日に出願して特許された
米国特許出願第07/391887号及び米国特許第4932968号の一部継
続出願であり、該米国特許出願第07/391887号は、1987年7月7日に出
願して特許された米国特許出願第07/070783号及び米国特許第4865
601号の一部継続出願である。これら特許出願及び特許の全ては、その引用を
以て本願への記載加入とする。発明の背景
1.発明の分野
本発明は、人間の眼窩内での眼内光学レンズと、その他の眼の補装具(prosthe
sis)とに関する。より具体的には、本発明は、病原体が補装具の本体を横断して
進むこ
とを防止する物理的障壁を一部に含む補装具や、角膜に重大な損傷等を被った眼
の角膜の一部とか眼の壁(eye wall)の一部を取替える補装具や、眼の後部レンズ
(posterior lens)と代替し倍率を変化できる補装具に関する。
2.従来技術及び概括的背景
従来技術及び概括的背景についての情報に関しては、例えば、米国特許第49
32968号又は米国特許第5282851号を参照して下さい。
3.発明の概括的で簡単な説明
本発明の補装具は、エラストマー製の光学的要素を含んでおり、該光学的要素
は、その周辺部を取巻く環状のスカート体を有する。該スカート体に含まれるも
のは、環状の多孔性部分である。光学的要素は、その周辺部が該多孔性部分の小
孔内に十分浸透することによって、スカート体に取り付けられる。
光学的要素は、羅患し、又は傷ついた眼の角膜のボタン状部(corneal button)
を取替える凸状の前面及び背面を含む。環状の多孔性部分は、スカート体の周辺
部へ径方向外側に伸びており、該環状の多孔性部分は、取替えるべき角膜のボタ
ン状部を取囲む角膜支質内にて、環状に形成された薄い切込み中に配備される。
複数の(通常は6個である)多孔性の伸張部は、スカート体の周辺部から径方
向外側へ伸びており、角膜縁を通って強膜内に径方向に伸びているトンネル部に
配備さ
れる。該伸張部は、完全に埋め込まれて外気に曝されない。さらに、伸張部によ
って、流体が前眼房から強膜に伸張部の小孔を通じて前進でき、従って、強膜が
十分に栄養摂取できると同時に、残存する角膜強膜が退化することを防止する。
組織が多孔性部分の小孔内に内方成長することによって、補装具が、残存する
角膜組織に接続されて取り囲まれ、従って、水性の流体が、インプラント(impla
nt)を通って漏洩することを防止し、同時に、病原体が眼内へ進入する直接的な
感染経路をなくす。
光学的要素は、眼内の虹彩と硝子体の間にある後部レンズを取替える両凸状の
前面及び背面を含み得る。始めに、小さな切り口が形成される。2番目に、眼内
の水晶体が、水晶体切除術(lensectomy)又は凍結抽出法(cryoextraction)のよう
な任意の方法によって取り除かれる。3番目に、補装具が、切り口と虹彩の開口
部とを通って挿入され、嚢状の袋(capsular bag)内に操作される。
水晶体を取り除くことによって、眼内に水晶体嚢によって囲まれる空間が形成
され、該空間内に、補装具は、その環状スカート体が水晶体嚢(又は嚢状の袋)
の内面と接触するように配備され得る。補装具が所定位置に操作されると、直ち
に切り口は縫合密閉され、それにより、補装具は、水晶体嚢にて安定し、さらに
、線維がスカート体における多孔性部分の小孔内に内方成長することに
よって水晶体嚢に接続できる。
眼の補装具は、眼内又はその外面にてインプラントとして使用されるために、
少なくとも一部が、眼内において組織への取付け及び/又は組織の内方成長を形
成する非吸収不溶性の(non-resorbable non-dissolving)多孔性高分子材料によ
って生成される。補装具本体は、眼の組織と補装具間の結合を形成するために、
組織の内方成長手段及び/又は組織への接着手段を有しており、ここで、該補装
具本体と内方成長手段は、多孔性高分子材料によって形成される部分を含む。
眼の補装具全体は、補装具本体を具えており、該補装具本体は、組織の内方成
長及び/又は眼の筋肉との接着による取付けを形成する多孔性高分子のコーティ
ング又は層を一部に含んでいる。高分子は、切ってもほどけない(not unravel)
高分子材料からなることが望ましい。
各補装具は、眼の筋肉組織への取付けができるように形成されている。ある補
装具は、筋肉への取付部位を有する眼の代替物とすることができる。
補装具は、強膜を補強する手段を含み得る。補装具は、強膜への留め具(buckl
e)の形態を取り得る。補装具は、緑内障に対する排液管の形態を取り得る。
ある実施例においては、高分子によって多孔性の層が形成されており、バクテ
リアの浸透又は流体の漏洩を防ぐ障壁を形成するように、非多孔性の層が隣接し
ている。
非多孔性層は、両側に多孔性層を有する内層とすることができる。非多孔性層は
、高分子材料からなることが望ましい。非多孔性層は、非多孔性のポリウレタン
であることが望ましい。
本発明の望ましい実施例において、患者の眼窩領域内、患者の眼内、又は、患
者の眼の外面上で、インプラントとして使用される眼の補装具は、使用中に、患
者の体の眼窩領域に配備される補装具本体を具えており、該領域は、外気に曝さ
れ、且つ患者の体外から病原体が侵入する脅威に曝されている。補装具本体は、
組織への取付手段を含んでおり、該組織への取付手段は、非吸収不溶性の多孔性
高分子部材であって、小孔の寸法が20ミクロンよりも大きい多孔性高分子部材
を含んでいる。さらに、多孔性高分子部材の小孔は、周囲の眼の組織が内方成長
できる組織への取付部位を、補装具の第1の外面上に形成する。補装具本体は、
組織への取付部位と同一の広がりをもつ中塞の又は小孔の閉じた(closed-pore)
高分子層を含んでおり、該高分子層は、流体又は病原体が、前記第1の外面に対
向する第2の外面から組織への取付部位まで略横断して進むことを防ぐ障壁を形
成している。
本発明の別の望ましい実施例において、患者の眼窩領域内、患者の眼内、又は
、患者の眼の外面上で、インプラントとして使用される眼の補装具は、補装具本
体を具えており、該補装具本体は、補装具本体の第1の外面上
に、眼の組織と補装具の間を結合する組織への接着手段を有しており、該組織へ
の接着手段は、多孔性高分子材料によって形成される部分を具えており、該多孔
性高分子材料の小孔は、周囲の眼の組織への接続を可能とし、組織への取付部位
を規定する。補装具本体は、流体が組織への取付部位にてインプラントを通って
漏洩することを妨げる手段を有する。該妨げる手段は、流体及び病原体が、第1
の外面に対向する第2の外面から、組織への取付部位まで、略横断して浸透する
ことを防ぐ障壁が形成されるように、中塞の又は小孔の閉じた高分子材料によっ
て形成され、且つ組織への取付部位と同一の広がりを有する部分を具える。
本発明の第3の望ましい実施例において、眼の補装具は、補装具本体を具えて
おり、該補装具本体は、組織への接着面を形成するために、小孔の寸法が約20
〜90ミクロンである多孔性高分子材料からなる第1の外面を含んでおり、該組
織への接着面は、周囲の眼の組織に取付ける組織への取付部位を規定する。該本
体は、流体及び病原体が、組織への取付部位にてインプラントを通って漏洩する
ことを妨げる手段を有する。該妨げる手段は、流体及び病原体が、第1の外面に
対向する第2の外面から、組織への取付部位まで、略横断して浸透することを防
ぐ障壁が形成されるように、中塞の又は小孔の閉じた高分子材料によって形成さ
れ、且つ組織への取付部位と
同一の広がりを有する部分を具える。
上記3つの望ましい実施例の何れにおいても、高分子は、切ってもほどけない
材料であることが望ましい。さらに、高分子によって多孔性の層が形成されてお
り、バクテリアの浸透又は流体の漏洩を防ぐ障壁を形成するように、非多孔性の
層が隣接していることが望ましい。この場合、非多孔性層は、非多孔性のポリウ
レタンであることが望ましい。
望ましい実施例の何れにおいても、補装具は、以下の高分子集団の中の任意の
高分子から形成されることが望ましい:ポリエーテルポリウレタン、ポリシロキ
サン、ポリアクリロニトリル、(飽和)ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチ
レンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリ
レート、ポリテトラフルオロエチレン、又は、これらの中の任意の共重合体。
望ましい実施例の何れにおいても、多孔性高分子材料は、ポリウレタン、ポリ
エチレン、ポリプロピレン−ポリブチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレ
ン、及びアクリレートをベースとする重合体によって構成される集団からの材料
を含むことが望ましい。
多孔性高分子部材は、膨張した高分子の泡、織物又は網とすることができ、中
塞の高分子層は、流体に対して実質的に非浸透性であることが望ましい。
本発明は、患者の眼窩領域内、患者の眼内、又は患者の眼の外面上で、インプ
ラントとして使用される眼の補装具を含んでおり、該補装具は、使用中に、患者
の体の眼窩領域に配備される補装具本体を具えることが望ましく、該領域は、外
気に曝され、且つ患者の体外から病原体が侵入する脅威に曝されている。補装具
本体は、非吸収不溶性の多孔性高分子部材を含む組織への取付手段を含むことが
望ましく、ここで、高分子の小孔は、周囲の眼の組織に対する取付けと組織の内
方成長を形成し、組織への取付部位を規定する。
また、本発明は、患者の眼窩領域内、患者の眼内、又は、患者の眼の外面上で
、インプラントとして使用される眼の補装具を含んでおり、該補装具は、補装具
本体を具えており、該補装具本体は、眼の組織と補装具の間を結合するために、
組織の内方成長部及び/又は組織への接着手段を有しており、ここで、組織内方
成長部又は組織接着手段は、多孔性高分子材料によって形成される部分を一部に
具えており、該多孔性高分子材料の小孔は、周囲の眼の組織への接続を可能とし
、組織への取付部位を規定する。そして、補装具本体と周囲の取付けた組織との
結合によって、流体が組織への取付部位にてインプラントを通って漏洩すること
を妨げる手段が形成される。
本発明は、補装具本体を具える眼の補装具を含んでおり、該補装具本体は、組
織の内方成長、又は周囲の眼の
組織との接着取付けを形成するために、小孔の寸法が約20〜90ミクロンであ
る多孔性高分子材料の外層を含んでおり、該本体及び取付けた組織によって、流
体及び/又は病原体が、組織への取付部位にてインプラントを通って漏洩するこ
とを妨げる手段が形成される。
高分子は、切ってもほどけない材料からなることが望ましい。高分子によって
多孔性の層が形成されており、バクテリアの浸透又は流体の漏洩を防ぐ障壁を形
成するように、非多孔性の層が隣接していることが望ましい。この場合、非多孔
性層は、非多孔性のポリウレタンであることが望ましい。
小孔の寸法は、約20〜90ミクロンであることが望ましく、多孔性高分子材
料は、ポリウレタン、ポリプロピレン−ポリブチレン共重合体、ポリテトラフル
オロエチレン、及びアクリレートをベースとする重合体によって構成される集団
からの材料を含むことが望ましい。
補装具本体(多孔性及び非多孔性の層と共に、組織への取付部位を含む)は、
高分子材料の射出成形又は圧縮成形、溶剤鋳造(solvent casting)、若しくは静
電堆積(electrostatic deposition)によって形成され得る。
多孔性高分子材料は、膨張した高分子の泡、織物、又は網にすると、都合がよ
い。
非多孔性高分子層は、浸透率(permeability)が1.00ミクロンよりも小さいこと
が望ましい。
多孔性高分子層及び非多孔性高分子層は、同種の重合体又は共重合体であって
物理的な構造が異なるものにすると好都合である。光学的部分及び多孔性高分子
層は、同種の重合体又は共重合体であって物理的な特性又は構造が異なるものに
することができる。さらに、光学的部分、多孔性高分子層及び非多孔性高分子層
は、全て同種の高分子又は共重合体であって物理的な特性又は構造が異なるもの
にすることができる。
本発明の補装具がレンズ体とスカート体を含むとき、レンズ体とスカート体の
間を互いに浸透する結合が存在でき、レンズ体とスカート体の間を互いに浸透す
る結合は、補装具を一体物として射出成形すること、溶剤の蒸発によって高分子
を鋳造すること、又は直に重合することによって形成され得る。
レンズ体とスカート体がその間を互いに浸透する結合を伴うとき、レンズ体と
スカート体の間を互いに浸透する結合は、事実上、化学的又は物理的な結合の何
れかであり得る。
補装具は、レンズ体を含むことが望ましく、多孔性高分子部材は、スカート体
を形成することが望ましい。多孔性高分子部材は、小孔内への細胞の浸潤/癒合
が完成する前に、開いている小孔を通じて、流体が漏れることと病原体が眼内に
入ることとを防ぐために、スカート体における前部アスペクト(aspect)と後部ア
スペクトの間
に、小孔の閉じた障壁を有することが望ましい。この場合、小孔の閉じた障壁は
、多孔性部分と同じ高分子からなることが望ましく、多孔性部分の射出成形、重
合化プロセス、又は静電堆積の間に形成されることが望ましい。
非多孔性層は、非生物分解性のポリエーテルウレタン、ポリアクリレート、ポ
リメタクリレート、ポリシロキサン、生体高分子、ポリエチレン、(飽和)ポリ
エステル、又はこれらの高分子集団の共重合体であることが望ましい。
多孔性高分子部材は、ポリエーテルウレタン、ポリプロピレン/ポリブチレン
、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオトエステル(polyothoester)、(飽和)
ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリエチレン
、ポリシロキサン、及び、シリコン−ポリウレタン共重合体によって構成される
高分子の集団からの材料を含むことが望ましい。
組織への取付部位は、中央の非多孔性高分子材料層に密着して取付けられる2
層の多孔性高分子材料層によって形成される。この場合、中央の非多孔性高分子
材料層の各側面上の多孔性高分子材料層は、平均多孔度(average porosities)が
、共に20ミクロンよりも大きいが、夫々異なることが望ましい。図面の簡単な説明
本発明の特徴及び目的をさらに理解するために、添付
の図面に関連して理解され、同じ部分が同じ参照番号で与えられる以下の詳細な
説明が参照されるだろう。
図1は、眼の一部を除去した側面図である。
図2は、眼の一部を除去した側面図の詳細である。
図3及び図3Aは、夫々、本発明の補装具における第1の望ましい模範的な実
施例の正面図及び側断面図である。
図4及び図4Aは、夫々、本発明の補装具における第2の望ましい模範的な実
施例の正面図及び側断面図である。
図5は、第1実施例(図3及び図3A)が装着された眼の一部を除去した側面
図である。
図6は、第2実施例(図4及び図4A)が装着された眼の一部を除去した側面
図である。
図7〜図9は、本発明の補装具で使用される材料からなる多孔性層と非多孔性
層を積み重ねた概要図である。望ましい模範的な実施例の詳細な説明
−眼の概括的背景−
図1と図2に於て、眼における内部の構成要素の位置及び配置が参照され得る
ように、人間の眼の断面図が示されている。
概括的な背景としては、眼は、半球形の角膜(10)を有しており、該角膜(10)は
、角膜上皮(12)から角膜内皮(14)まで側方に伸びている。角膜内皮(14)の前面中
を側方
に伸びているものは、デスメー膜(16)として知られる半球形の膜であり、該膜(1
6)は、角膜(10)の本体即ち基質(17)を角膜内皮(14)から分けている。
角膜(10)の周辺部を取り囲むものは、角膜縁(18)と呼ばれる環状部である。角
膜(10)は、強膜(20)の組織が角膜縁(18)と相互に接続するように、角膜縁(18)と
共に強膜(20)の開口部に配備される。
角膜の背面の後方に、後部の水晶体(22)が存在する。該水晶体(22)は、眼の虹
彩(24)と硝子体(26)の間にある嚢状腔に配備される。虹彩(24)と硝子体(26)の間
には、毛様体(28)として知られる環状部が見つかる。毛様体(28)は、毛様体筋(1
01)、毛様体突起(ciliary prosthesis)及び小帯線維(29)を含んでおり、該小帯
線維(29)は、水晶体の形状が毛様体(28)の収縮に応じて変化し得るように、水晶
体嚢(122)の円形周辺部と相互に接続している。
また、図1及び図2には、外側直筋(102)、網膜(104)、前眼房(106)、中心窩(
107)、脈絡膜(108)、硬膜鞘(109)、視神経(113)、眼球結膜(114)、篩板(115)、
鋸状縁(117)、内側直筋(118)、瞳孔括約筋(121)、水晶体嚢(即ち嚢状の袋)(12
2)、水晶体上皮(125)、色素層(127)、ボーマン膜(128)、毛様体突起(129)、角膜
強膜部小柱(corneoscleral trabeculum)(133)、シュレム管(134)、及び強膜距(s
cleral spur)(135)が示されている。
通常、補装具は、環状空間部に充填されることができ、
該空間部は、大体、眼における角膜(10)の前面と水晶体嚢(122)の背面との間に
ある眼の組織内に径方向に伸びている。補装具は、例えば、病気にかかった眼内
部分の取替えを考慮に入れており、病気にかかった眼内部分は、後述のように眼
から取り外される
補装具は、エラストマー製であり、望ましくは透明である円形の透明な眼用の
構成要素を含む。該構成要素は、例えば、高分子のような、任意の適当な材料か
ら形成されることができ、適当な種類の高分子とは、親水性のウレタン、強いヒ
ドロゲル/親水性のウレタン共重合体又は相互浸透性の網状重合体、強いヒドロ
ゲル又は親水性のシリコン、フルオロポリマー(afluoropolymer)、酢酸酪酸セル
ロース、その他、鋳造又は成形可能な同様の材料である。
図7、図8及び図9は、多孔性層と非多孔性層を積み重ねた実施例を概略的に
示している。図7における(10A)及び図8における(10B)として夫々示される補装
具は、非多孔性層(L2)を含んでおり、該非多孔性層(L2)は、その両側に多孔性高
分子層(L1)(L3)が配備されることによって、内層を形成する。図9における補装
具(10C)は、多孔性高分子層(L3)が非多孔性層(L2)の片側に隣接している。層(L1
)(L2)(L3)は、発明の概要にて説明した材料及び方法によって形成され得る。
眼における多数の補装具用デバイスは、隣接する組織
内に取り付けられて、時が経つにつれて補装具を適所に固定し、且つ押し出され
ることを防ぐ必要がある。最もよい結果を得るためには、デバイスにおける取付
部の適応性(compliance)が組織のそれに近くなければならないことから、取付け
が困難なことがある。金属の適応性は、組織のそれとは著しく異なり、従って、
組織は、応力が働くと、金属からちぎれる。本発明の眼の補装具は、取囲む組織
が該補装具に内方成長して取付けられる多孔性の高分子部材を有する。高分子部
材の適応性は、組織と同様であるから、該部材は、内方成長して取付けられた組
織から容易にはちぎれない。高分子部材における小孔の平均寸法は、20〜90
ミクロンの範囲に及び得る。高分子部材における小孔の形状は、様々な補装具へ
の適用によって異なり得る。その形状は、製造技術によって操作されることがで
きる。多孔性高分子部材は、補装具の残りに取り付けられることもできるし、補
装具全てを構成することもできる。
図9にて示される形状から層(L2)を除いた形状は、完全な多孔性高分子部材の
形状である。これにより、細胞の内方成長と取付けが、多孔性高分子層(L3)中で
、完全に一致することができる。細胞の導入は、補装具の残りに取り付けられる
部分を除いて、高分子材料層(L3)の両側全てを通じて起こり得る。この材料は、
組織への取付けが望まれる眼内の補装具に関して有用である。
図7及び図8にて示される第2の形状は、非多孔性の内層(L2)を有する(層(L
1)(L3)における)多孔性高分子部材の形状であり、従って、内方成長が高分子の
前側及び後側から起こり得る一方で、小孔は、その前側と後側の間では直接繋が
らない。非多孔性層(L2)は、組織が内方成長する間、及び、補装具の寿命までず
っと、バクテリアの浸透又は流体の漏洩を防ぐ障壁として作用する。この形状は
、強膜の増強、眼球が開いた状態のときに完全な安全性が望まれる結膜及び角膜
へ適用して有用である。
図9にて示される第3の形状は、非多孔性側面(層(L2))を有する(層(L3)に
おける)多孔性高分子部材の形状である。小孔は、平均寸法を有するか、又は、
非多孔性側面(L2)に近づくにつれて小さくなることが望ましい。非多孔性層(L2)
は、親水性を変えるために合体した表面であり得るか、又は、部材の多孔性部分
(L3)よりも親水性が大きい高分子によって構成され得る。該部材は、シート状に
生成されるか、或いは、直径の小さなチューブとして生成され得る。チューブ形
状の場合、該チューブは、非多孔性の内面と多孔性の外面を有し、一体で、内方
成長して取付けできるチューブであり、緑内障の排液管又は涙管のような流体排
液への適用に使用され得る。
多孔性高分子材料を生成するために使用される主な製造技術は、静電スピニン
グ(electrostatic spinning)及
びウォン−ライトナー(Wong-Lightner)技術のような公知技術である。多孔性部
材を生成するために使用される高分子は、ポリウレタン、ポリプロピレン−ポリ
ブチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、又はアクリレートに基づく重
合体であり得る。多孔性部材は、高分子を酸化作用から保護するために、合体し
或いはコーティングされることができ、また、細胞の浸潤を促し且つ細胞への取
付けを強化するために、フィブロネクチン、コラーゲン又は複合物のような蛋白
質で合体し(graft)或いはコーティングされることができる。
上述の、且つ図7、図8及び図9にて示される部材(図9にて示される部材か
ら層(L2)を除いた部材も含む)は、図3及び図4にて示される補装具を屈曲可能
に取付ける手段として使用されることができる。
−第1の角膜補装具の実施例−
(図3、図3A及び図5)
図3及び図3Aを参照すると、角膜補装具として適当な補装具(30)の実施例が
示されている。該補装具(30)は、略半球形であり、直径が約8ミリメートルであ
るエラストマー製の構成要素を含む。
半球形の構成要素(32)は、凸面状の前面(34)と凹面状の背面(36)を含んでおり
、該前面(34)は、涙が適切に流れること、及び瞼がきちんと閉じることを保証す
るために、曲率半径が例えば約7.9ミリメートルである。凹面
状背面(36)の曲率半径は、光学的倍率を如何に決定するかを制御し、且つ各患者
の眼によって決まる。手術の前に、背面の曲率半径は、例えば、超音波スキャン
を実行し、且つ/又は、患者の屈折力を評価してから、適当な光学的倍率を臨床
的に見積もって、眼の適当な屈折力を決定することによって決められる。
環状のスカート体(38)は、眼用の構成要素(32)の周縁部(40)から径方向に伸び
ており、該構成要素(32)を取り囲んでいる。環状の多孔性部分(42)は、スカート
体(38)に含まれ、構成要素(32)を取り巻いている。スカート体(38)は、円形であ
り、中央に開口部(43)を有しており、該開口部(43)に、光学的構成要素(32)が配
備される。
光学的構成要素(32)は、眼内構成要素(30)を構成している間、スカート体(38)
に永久に接続される。
スカート体(38)の望ましい実施例は、任意の適当な手段によって圧縮され、且
つスカート体(38)の周囲に伸びている環状部(44)を有する。該環状部(44)は、ス
カート体(38)の内周部(46)から径方向外側で、且つスカート体(38)の外周部(48)
から径方向内側に配備される。
スカート体(38)の一部を圧縮することによって、径方向の厚さが1ミリメート
ルである小孔の閉じた障壁(44)が形成され、該障壁(44)は、スカート体(38)の内
周部(46)と外周部(48)の間に伸びている。従って、圧縮後におけるスカート体(
38)の適当で模範的な寸法は、例えば、
スカート体(38)の外周部(46)から径方向内側に伸びている小孔の開いた内方成長
する環状空間(50)における径方向の厚さが2ミリメートルであり、小孔の閉じた
環状障壁(44)における径方向の厚さが1ミリメートルであり、そして、スカート
体(38)の内周部(46)から径方向外側に伸びており且つレンズ要素をスカート体(3
8)に相互に浸透して結合するための開口部(43)を取り巻いている小孔の開いた環
状結合部(52)における径方向の厚さが1ミリメートルである。
等間隔に離れた複数のスポーク状伸張部、即ちハプティック(haptic)(54)が、
スカート体(38)の外周部(48)から径方向外側に伸び得る。該伸張部(54)も、同様
に内方成長空間(50)としての小孔を有し、寸法が例えば25〜60ミクロンである同
様の小孔を有する。スカート体(38)から径方向外側に等間隔に離れているスポー
ク状伸張部(54)は、6本であることが望ましい。
−第2の遠近調節可能な眼内レンズの実施例−
(図4、図4A及び図6)
図4及び図4Aを参照すると、眼の後部の水晶体に代る代替レンズとして適当
な補装具の第2実施例が示されている。
補装具(56)は、少なくとも一方が凸面状の前面(60)と背面(62)を有する光学的
要素(57)を含む。該光学的要素(57)は、接近した或いは遠く離れた物体の焦点が
変わる
ように、エラストマー製であり、上述の親水性光学的ポリウレタンのような適当
な材料からなる。
環状のスカート体(64)は、光学的要素(57)の周縁部(66)から径方向に伸びてお
り、光学的要素(57)を取り囲んでいる。スカート体(64)は、例えば、直径が13ミ
リメートルであり、厚さが0.5ミリメートルであることが望ましい。
例示のために本願で詳細に説明した実施例及び関連する方法が、構造、デザイ
ン、方法及び応用において、多数の異なる変化に従うことは勿論である。多数の
変化する実施例及び異なる実施例が、ここで説明した本発明の概念の視野内でな
されることと、多数の修正が、法が記載する要求に従って、ここで詳細に説明し
た実施例においてなされることとから、本願の細部は、例示として解すべきであ
り、限定的な意味に解すべきでないことが理解されるにちがいない。
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