【発明の詳細な説明】
血液調節ペプチド
発明の分野
本発明は、血液調節活性を有し、造血の刺激に使用でき、ウイルス、真菌なら
びに細菌感染疾患の治療に使用できる新規化合物に関する。
発明の背景
コロニー刺激因子、インターフェロン、およびさまざまなタイプのペプチドの
ごとき種々の調節伝達物質および修飾剤は、骨髄造血調節について役割を果たし
ている(メトカルフ(Metcalf),セル(Cell),第43巻:5頁(1985年)
;バセルガ,アール(Baserga,R.)、フォア,ピー(Foa,P.)、メトカルフ,ディ
ー(Metcalf,D.)、ポリ,イー・イー(Polli,EE.)(編),バイオロジカル・レ
ギュレイション・オブ・セル・プロリファレイション(Biological Regulation
of Cell Proliferation)(1986年);ニコラ(Nicola)ら,ジャーナル・オ
ブ・セル・フィジオロジー(J.Cell Physiol.),第128巻:501頁(198
6年);ゾウムボス(Zoumbos)ら,プロイル・ヘマト(Proyr.Hemat.),第1巻
:341頁および14巻:210頁(1986年);ワーナー(Werner)ら,イ
クスペリメンティア(Experimentia),第42巻:521頁(1986年))。
1982年に、合成血液調節ペプチドが、インビトロおよびインビボの両方に
おいて骨髄造血細胞に対して選択的な阻害効果を有することが報告された。その
主たる効果は骨髄造血幹細胞(CFU−gm)に対するものと思われる(パウコ
ビツ(Paukovits)ら,ツァイトシュリフト・フュア・ナトゥールフォルシュンク
(Z.Naturforsch.)第37巻:1297頁(1982年)および米国特許第4,
499,081号)。このペプチドは、骨髄抽出物中に微量見いだされる天然に
存在する顆粒球形成阻害因子のアナログであると考えられている。
1987年に、レルム(Laerum)らは、このペプチドの酸化産物はジスルフィ
ド架橋により形成される二量体(HP−5)であることを報告した。この二量体
は、インビトロにおいてヒトおよびネズミ双方のCFU−gmのコロニー形成を
刺激し、インビボにおいてネズミ・骨髄造血細胞を促進調節するというような、
その単量体とは逆の効果を有している。それが欧州特許出願第87309806
.5号に権利請求されている。
該二量体は、組織反応を抑制するための免疫抑制治療により骨髄機能が抑制さ
れている患者、すなわち、骨髄移植術を受けている患者をはじめとする、骨髄損
傷、顆粒球減少症および再生不良性貧血を含む骨髄造血活性の減少に苦しむ患者
における骨髄造血を刺激することにおいて有用である。さらにそれを用いて、新
生物およびウイルス性疾患のための細胞増殖抑制治療および放射線療法後におけ
るより迅速な骨髄再生を促進してもよい。患者が骨髄疾患後の免疫応答の欠乏に
より重大な感染症を有する場合に、それは特に価値がある。
我々は、骨髄造血細胞に対して刺激効果を有し、ウイルス、真菌および細菌性
疾患の予防および治療に有用なある種の新規化合物をついに見いだした。
発明の概要
本発明は、以下において式(I)として表される化合物であって、血液調節活
性を有し、造血の刺激に使用でき、ウイルス、真菌ならびに細菌性疾患の予防お
よび治療に使用できる化合物からなる。
これらの化合物は、外科的に誘発された骨髄抑制、AIDS、ARDS、先天
性骨髄形成異常、骨髄ならびに器官の移植のごとき種々の臨床的状況により細胞
数が減少した患者における白血球の回復において;感染による白血球減少症の患
者の防御において;重症のやけどの患者の治療において;いくつかの細胞周期特
異的抗ウイルス剤に関して観察される骨髄抑制の改善において、および骨髄移植
を受けた患者、特に、宿主疾患に対する移植物を有する患者における感染の治療
において、結核の治療において、また、ヒトおよび動物における原因不明の熱の
治療において有用である。さらに該化合物は、免疫抑制されているかまたは「正
常」な対象両方におけるウイルス、真菌および細菌および細菌感染疾患、特に、
カンジダ、ヘルペスならびに肝炎の治療および予防に有用である。
これらの化合物を、同時係属の米国特許第07/799,465号および米国
特許第4,499,081号(参照により本明細書に取り入れる)の単量体と組み
合わせて用いて骨髄細胞に高活性および低活性の交互のピークを提供して、かく
して、通常の24時間リズムの造血を促進してもよい。このようにして、低い骨
髄活性の時期に細胞増殖抑制療法を行うことができ、かくして、骨髄損傷の危険
性を減少させることができ、一方では、活性の連続的なピークにより再生が促進
されるであろう。さらに本発明は、式(I)の化合物および医薬上許容される担
体からなる医薬組成物である。
さらに本発明は、ヒトを含む動物における骨髄造血系を刺激するための方法で
あって、かかる刺激を必要とする動物に有効量の式(I)の化合物を投与するこ
とからなる方法を構成する。
また本発明は、免疫抑制されているかまたは正常な動物におけるウイルス、真
菌および細菌感染の予防および治療方法であって、かかる予防および治療を必要
とする動物に有効量の式(I)の化合物を投与することからなる方法を構成する
。
発明の詳細な説明
1.下式:
[式中:
Y1およびY2は独立してCH2またはS;
xは0、1、2、3、または4;
mは0または2;
nは0または2;
Aはピログルタミン酸、プロリン、グルタミン、チロシン、グルタミン酸、2
−チオフェンカルボン酸、ピコリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、テトラヒド
ロ−2−フロ酸、テトラヒドロ−3−フロ酸、2−オキソ−4−チアゾリジンカ
ルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、3−チオフェンカルボン酸、(S)−(+)
−5−オキソ−2−テトラヒドロフランカルボン酸、ピペコリン酸、ピロールカ
ルボン酸、イソピロールカルボン酸、ピラゾールカルボン酸、イソイミダゾール
カルボン酸、トリアゾールカルボン酸、ジチオールカルボン酸、オキサチオール
カルボン酸、イソオキサゾールカルボン酸、オキサゾールカルボン酸、チアゾー
ルカルボン酸、イソチアゾールカルボン酸、オキサジアゾールカルボン酸、オキ
サトリアゾールカルボン酸、オキサチオレンカルボン酸、オキサジンカルボン酸
、オキサチアゾールカルボン酸、ジオキサゾールカルボン酸、ピランカルボン酸
、ピリミジンカルボン酸、ピリジンカルボン酸、ピリダジンカルボン酸、ピラジ
ンカルボン酸、ピペラジンカルボン酸、トリアジンカルボン酸、イソオキサジン
カルボン酸、オキサチアゼンカルボン酸、モルホリンカルボン酸、インドールカ
ルボン酸、インドレネンカルボン酸、2−イソベンザゾールカルボン酸、ニコチ
ン酸、イソニコチン酸、ピラゾロ[3,4−b]ピロールカルボン酸、ピラゾロ[3
,4−b]ピロールカルボン酸、イソインダゾールカルボン酸、インドキサジンカ
ルボン酸、ベンゾオキサゾールカルボン酸、アントラニルカルボン酸、キノリン
カルボン酸、イソキノリンカルボン酸、シノリンカルボン酸、キナゾレンカルボ
ン酸、ナフチリジンカルボン酸、ピリド[3,4−b]−ピリジンカルボン酸、ピ
リド[3,2−b]−ピリジンカルボン酸、ピリド[4,3−b]ピリジンカルボン酸
、1,3,2−ベンゾオキサジンカルボン酸、1,4,2−ベンゾオキサジンカルボ
ン酸、2,3,1−ベンゾオキサジンカルボン酸、3,1,4−ベンゾオキサジンカ
ル
ボン酸、1,2−ベンゾイソオキサジンカルボン酸、1,4−ベンゾイソオキサジ
ンカルボン酸、カルバゾールカルボン酸、アクリジンカルボン酸、またはプリン
カルボン酸;
Bはセリン、スレオニン、グルタミン酸、チロシン、システインまたはアスパ
ラギン酸、
Gはグルタミン酸、チロシン、アスパラギン酸、セリン、アラニン、フェニル
アラニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、スレオニン、ト
リプトファン、ノルロイシン、アロスレオニン、グルタミン、アスパラギン、バ
リン、プロリン、グリシン、リジン、β−アラニンまたはサルコシン;
Dはリジン、アルギニン、チロシン、N−メチルアルギニン、アルギニン、ア
スパラギン酸、オルニチン、セリン、アラニン、フェニルアラニン、ヒスチジン
、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、ノルロ
イシン、アロスレオニン、グルタミン、アスパラギン、バリン、プロリン、グリ
シン、リジン、β−アラニン、サルコシン、またはジアミノヘキシン酸;または
そのカルボキサミドもしくはヒドロキシメチルもしくはN−メチル誘導体;
Fはチロシンまたはペプチド結合;
R1およびR2は独立して水素、C1〜3アルキル、C2〜4アルケニル、C2〜4ア
ルキニル、(CH2)nArまたは(CH2)xR3;
R3はOH、SH、NH2、−NHC(NH2)NH、CO2HまたはCONH2;
Arはフェニル、ピリジル、フリル、ナフチル、チオフェニル、ピロリル、イ
ミダゾリル、インドリルまたはヒドロキシフェニル;
ただし:
Y1およびY2がSである場合、xは0、2、3または4でありmおよびnは2
;または
Y1およびY2がCH2である場合、xは0、1、2、3または4でありmおよ
びnは0;または
Y1がSでありY2がCH2である場合、xは0でありmおよびnは2である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩。
すべてのアルキル、アルケニル、アルキニル、およびアルコキシ基は直鎖また
は分枝であってよい。
本発明化合物は1個またはそれ以上の不斉炭素原子を含んでいてもよく、ラセ
ミ体および光学的に活性な形態として存在してもよい。これらの化合物およびジ
アステレオマー異性体のすべては本発明の範囲内であると考えられる。
本発明化合物の医薬上許容される塩複合体も本発明に包含される。式(I)に
おいて、Aが末端アミノ基を含むことに注意すべきである。同様に、Dは末端カ
ルボキシル基、またはそのカルボキサミドもしくはヒドロキシメチル誘導体を含
む。
当該分野において常用される略号および記号を本明細書に用いてペプチドを記
載する:
Ala=アラニン
pGlu=ピログルタミン酸
Pro=プロリン
Glu=グルタミン酸
Asp=アスパラギン酸
Tyr=チロシン
Pic=ピコリン酸
Ppc=ピペコリン酸
Gly=グリシン
Orn=オルニチン
Lys=リジン
Cys=システイン
Ser=セリン
慣用的表記法によれば、アミノ末端は左、カルボキシ末端は右である。すべて
のキラルなアミノ酸はDまたはL絶対配置であってよい。すべての光学異性体が
考えられる。
アミノ末端をアシル化により保護してもよい。かかる保護基の例は、t−ブト
キシカルボニル(t−Boc)、CH3COおよびAr−CO(Ar=ベンジル
、またはフェニル)である。
C−末端は、天然のアミノ酸の場合のようにカルボキシルであってもよく、あ
るいはカルボキサミド(−(O)NH2)またはヒドロキシメチル(−CH2−OH
)誘導体であってもよい。
好ましい化合物は:
Aがピログルタミン酸、ピコリン酸、プロリン、チロシン、またはピペコリン
酸;
Bがグルタミン酸、セリン、アスパラギン酸またはチロシン;
Gがアスパラギン酸、グルタミン酸、チロシンまたはリジン;
Dがリジンまたはそのカルボキサミド誘導体、アルギニン、N−メチルアルギ
ニン、2,6−ジアミノ−4−ヘキシン酸、アスパラギン酸またはオルニチン;
Y1およびY2がCH2;
xが0または2;
mおよびnが0である化合物である。
Aがピログルタミン酸、プロリンおよびピコリン酸;
Bがグルタミン酸、アスパラギン酸またはセリン;
Gがアスパラギン酸またはグルタミン酸;
Dがリジンまたはそのカルボキサミド誘導体
Fが結合;
Y1およびY2がCH2;
xが0または2であって、
キラルなアミノ酸がL絶対配置となっている化合物がより好ましい。
本発明は、以下の(a)、(b)からなる工程により製造することのできる式
(I):
で示される化合物を提供する:
(a)xが1、2、3または4であり;Y1、Y2、m、n、R1およびR2が式
(I)における定義に同じである場合には;式(II):
H2N−(CH2)m−Y1−(CH2)x−Y2−(CH2)n−NH2 (II)
で示される化合物を、CH2Cl2のごとき適当な溶媒中で2当量の式(III):
Br−CR1R2−CO2Et (III)
で示される化合物と反応させて式(IV):
で示される化合物を得る。CH2Cl2のごとき適当な溶媒中で化合物(VI)を過
剰のジ−t−ブチルジカルボネートと反応させて式(V):
で示される化合物を得る。THFのごとき適当な溶媒中で化合物(V)を水酸化
ナトリウムのごとき水性塩基と反応させてエチルエステルを加水分解する。次い
で、N,N−ジメチルホルムアミドのごとき適当な溶媒中でEDC/HOBtの
ごとき標準的なカップリング試薬を用いてこの化合物を適当に誘導体化された式
(VI)で示されるペプチド:
F−D (VI)
とカップリングさせて式(VII):
で示される化合物を得る。次いで、CH2Cl2のごとき適当な溶媒中でトリフル
オロ酢酸のごとき適当な試薬を用いて、化合物(VII)のBOC保護基を除去す
る。次いで、得られたジアミンを、エム・ボダンスキ(M.Bodanski)ら,「ペプ
チド・シンセシス(Peptide Synthesis)」,ジョン・ウィリー・アンド・サンズ
,インク,ニューヨーク,NY(John Wiley and Sons,Inc.,New York,NY)(19
76年)(参照により本明細書に取り入れる)において見いだされるような標準
的な液相アミノ酸合成法を用いて、適当に保護されたBOC−アミノ酸G、Bそ
してAと順次カップリングさせる。無水フッ化水素での保護基の除去により式(
I)の化合物を得る。
(b)xが0あり;Y1、Y2、m、n、R1およびR2が式(I)における定義
に同じである場合には;式(VIII):
PY1−(CH2)n−NH2 (VIII)
で示される化合物を、CH2Cl2のごとき適当な溶媒中で1当量の式(III)で
示される化合物と反応させて式(IX):
PY1−(CH2)n−NH−CR1R2−CO2Et (IX)
で示される化合物を得る。CH2Cl2のごとき適当な溶媒中で化合物(IX)を過
剰のジ−t−ブチルジカルボネートと反応させて式(X):
で示される化合物を得る。次いで、CH2Cl2のごとき適当な溶媒中でトリフル
オロ酢酸のごとき適当な試薬を用いて化合物(X)のBOC保護基を除去する。
標準的な溶液相アミノ酸合成法を用いて、得られたアミノ酸を適当に保護された
BOC−アミノ酸G、BそしてAと順次カップリングさせて式(XI):
で示される化合物を得る。Y1がSである化合物に関しては、無水フッ化水素で
の保護基の除去を行い、TRIS緩衝化pH8.5のごとき適当な媒体中でグル
タチオンのごとき酸化剤を用いて、生じた化合物を処理すると式(I)の化合物
が得られる。
一般的には、刺激効果を発揮させるためには、1日当たり体重70kgにつき
0.5ngないし1mg、好ましくは、5〜500ngの用量範囲で注射するこ
とにより、あるいは1日当たり体重70kgにつき50ngないし5mg、例え
ば、0.01mgないし1mgの用量範囲で経口的に、本発明ペプチドをヒト患
者に投与することができる。輸液または同様の方法により投与する場合には、用
量は体重70kgあたり0.005ngないし1mg、例えば、6日間にわたり
約0.03ngであってよい。理論上は、患者の細胞外体液中約10-15Mないし
10-5Mのペプチド濃度とすることが望ましい。
本発明のさらなる特徴によれば、医薬用担体または賦形剤と混合された、1種
またはそれ以上の上記定義の式(I)の化合物またはその生理学的に適合する塩
を活性成分としてなる医薬組成物が提供される。
本発明組成物を、例えば、経口、鼻腔内または直腸投与に適した形態で提供し
てもよい。
本明細書の用語「医薬上」は、本発明の獣医学への適用を包含する。これらの
ペプチドを、カプセル封入、錠剤化してもよく、あるいは経口投与用エマルジョ
ンまたはシロップとして製造してもよい。医薬上許容される固体または液体担体
を添加して組成物を増強または安定化してもよく、あるいは組成物の製造を容易
にしてもよい。液体担体は、糖蜜、ピーナッツ油、オリーブ油、グリセリン、セ
イラインまたは水を包含する。固体担体は、澱粉、ラクトース、硫酸カルシウム
二水和物、白陶土、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸、タルク、
ペクチン、アラビアゴム、寒天またはゼラチンを包含する。担体が、モノステア
リン酸グルセリルもしくはジステアリン酸ステアリルのみ、あるいはそれらとロ
ウとの混合物のごとき除放性物質を含有していてもよい。固体担体量は変更され
るが、好ましくは、投与単位あたり約20mgないし約1gの間であろう。錠剤
が必要な場合には、粉砕、混合、顆粒化、そして打錠のごとき製薬分野の慣用的
方法に従って医薬調製物を製造してもよく、あるいは硬ゼラチンカプセルの製造
には、粉砕、混合し、そして充填を行ってもよい。例えば、活性成分をラクトー
スまたはソルビトールのごとき不活性担体と混合し、混合物をゼラチンカプセル
中に充填することにより、1種またはいくつかの活性成分を含有するカプセルを
製造してもよい。液体担体を用いる場合、調製物はシロップ、エリキシル、エマ
ルジョンまたは水性もしくは非水性懸濁液の形態であろう。かかる液体処方を直
接経口的に投与してもよく、あるいは軟ゼラチンカプセル中に充填してもよい。
器官特異的担体系を用いてもよい。
別法として、本発明医薬組成物、またはその誘導体を非経口投与用の凍結乾燥
粉末の溶液として処方してもよい。使用前に、適当な希釈剤または他の医薬上許
容される担体を添加することにより粉末を復元してもよい。適当な希釈剤の例は
、通常の等張セイライン溶液、標準の水中5%デキストロースまたは緩衝化酢酸
ナトリウムもしくは酢酸アンモニウム溶液である。かかる処方は特に非経口投与
に適するが、経口投与に使用してもよく、計量吸入器または吸入用噴霧器中に入
れてもよい。ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アラビ
アゴム、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウムまたはクエン
酸ナトリウムのごとき賦形剤を添加するのが望ましい。
直腸投与には、本発明ペプチドの細粉化粉末をカカオ脂、グリセリン、ゼラチ
ンまたはポリエチレングリコールのごとき賦形剤と混合し、坐薬に成型してもよ
い。また、細粉化粉末を、緩衝化して、あるいは緩衝化せずに、油性調製物、ゲ
ル、クリームまたはエマルジョンに配合してもよく、経皮パッチを通して投与し
てもよい。
水溶液と同様にして鼻用スプレーを処方し、エアロゾル推進剤または手動圧縮
手段のいずれかを伴ったスプレー容器中に詰めてもよい。
本発明化合物を含有する投与単位は、好ましくは、0.1〜100mg、例え
ば、1〜50mgの式(I)のペプチドまたはその塩を含有する。
本発明のさらなる特徴によれば、有効量の上記定義の医薬組成物を対象に投与
することからなる、骨髄造血の阻害方法が提供される。
本発明化合物を本発明にしたがって投与する場合、許容されない毒物学的効果
は考えられない。
式(I)の化合物の生物学的活性を以下の試験により示す。基質細胞によるコロニー刺激活性の誘導
ネズミ・骨髄基質細胞系C6を、プラスチック組織培養用デイッシュにおいて
でRPMI−1640培地および5%FBS中で集密になるまで増殖させる。実
験前日に、この培地を血清無添加DMEMに交換する。これらの培養物に化合物
を1時間添加し、次いで、培養物から洗浄除去する。培地を新鮮なDMEMと交
換し、5%CO2、37℃で24時間細胞をインキュベーションする。24時間
後、C6細胞培養物の上清を集め、滅菌濾過し、次いで、下記のように造血性コ
ロニー刺激活性(CSA)の存在についてアッセイできるまで凍結する。軟寒天アッセイ
ルイス(Lewis)ラットから骨髄細胞を得る。それらを、血清無添加DMEM
中106個/mlとする。以下のものを用いる単層寒天系を使用する:栄養素(
NaHCO3、ピルベート、アミノ酸、ビタミン、およびHEPESバッファー
)でエンリッチされたDMEM;0.3%バクトアガー(Bacto agar)、および
20%ルイスラット血清。上で得られたC6細胞系上清の希釈物(10〜2.5
%)をラット・骨髄細胞(最終濃度=105個/ml)とともに、これに添加す
る。寒天プレートを5%CO2、37℃で7〜8日間インキュベーションする。
増殖している骨髄細胞(CFU−C)のコロニーを顕微鏡を用いて計数する。
計数した寒天のコロニー数はC6骨髄基質細胞系上清中に存在するCSA量に比
例する。単純ヘルペスマウスモデル
感染7日前に、用量10および1ng/kgの化合物を体積0.2mlとして
1日1回Balb/cマウスに腹腔内注射する。対照マウスには0.1mlの希
釈用緩衝液DPBSおよび0.5%熱不活性化正常マウス血清の混合物を注射す
る。
0.05mlのPBS中5.0x105/pfuを後ろ足のそれぞれの甲に注射
することにより、単純ヘルペスウイルス(MS株)をマウスに感染させる。マウ
スに対し、瀕死状態(餌またはH2Oを摂取できない)になるまで化合物または
対照注射を継続する。通常には、感染約8日後に後ろ足のマヒが起こる。脳炎が
起こるまでマヒが進行する。
別法として、膣経路によりウイルスを接種する。5.0x105/pfuのMS
−NAP株を含有する綿栓をマウスの膣に挿入する。
ウィルコキシン(Wilcoxin)試験を用いて、処理群において対照群に対する有
意な生存率の増加が見いだされるかどうかを調べる。カンジダ攻撃
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)B311a株を用いる。この株
はマウスを経て、次いで、−70℃に凍結される。B311aは、免疫抑制され
たマウスに対しては5.0ないし8.0x104cfu/マウスの範囲で毒性があ
り、正常マウスに対しては1.0ないし2.0x105cfu/マウスの範囲で毒
性がある。カンジダの凍結ストックからの試料をサブロー(Sabouroud)デキス
トローススラント上で増殖させ、次いで、サブローブロスの50mlの振盪培養
に移して18時間培養した。細胞を3回洗浄し、次いで、ヘモサイトメーター(
hemocytometer)で計数し、メチレン染料排除法により生存率を確認した。計数
値を確実にするために接種量に基づいて生存率の計数を行った。
カンジダ感染させるすべてのマウス(Balb/c)を、0.2mlのセイラ
インに懸濁した細胞を静脈注射して感染させた。何匹かのマウスを、300ra
dの放射線を用いて亜致死まで骨髄抑制させる。照射2時間後から、正の対照と
して化合物CSFを、あるいは賦形剤を毎日動物に注射する。照射および処理開
始から7日後、静脈内投与によりカンジダ・アルビカンスをマウスに与える。こ
の投与は正常マウスに対してほぼLD75であることに留意すること。他の研究
においては、マウスを免疫抑制しない。これらの研究においては、照射されたマ
ウスと同じ方法で感染後から7日後にマウスの治療を開始する。両モデルにおい
て、瀕死状態までマウスを追跡研究し、ウィルコキシン試験(Wilcoxin test)
を用いて生存率の変化を比較する。
以下の実施例は本発明の説明に役立つ。実施例は本発明の範囲を何ら限定する
ものではないが、本発明化合物をいかにして製造し使用するのかを示すために提
供される。
実施例において、すべての温度はセ氏である。高速原子衝撃を用いるVG Z
AB質量スペクトル計によりFAB質量スペクトルを行った。
実施例1
a)N,N'−ビス(メチルカルボキシエトキシ)−1,4−ジアミノブタン
CH2Cl2(40mL)中のブロモ酢酸(2.40mL,21.6mmol)、
Et3N(4.20mL,30.1mmol)および1,4−ジアミノブタン(1.0
0mL,9.95mmol)の混合物を室温で撹拌した。2時間後、反応混合物を
ブライン(100mL)中に注ぎ、CH2Cl2(3x100mL)で抽出した。
合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、濃縮して白色油状物質(1.53g)を
得た。フラッシュクロマトグラフィー(10% MeOH/CHCl3+1%E
t3N,シリカゲル)により所望化合物を黄色油状物質(0.57g,22%)とし
て得た。1H NMR(90MHz,CDCl3)δ4.25(q,J=6.8Hz,
4H),3.40(s,4H),2.65(m,4H),1.65(m,6H),1.30
(t,J=6.8Hz,6H)。
b)N,N',N,N'−ビス(t−ブトキシカルボニル)ビス(メチルカルボキシ
エトキシ)−1,4−ジアミノブタン
CH2Cl2(20mL)中の(a)(0.57g,2.19mmol)およびE
t3N(1.25mL,8.97mmol)の溶液に、ジ−t−ブチルジカルボネー
ト(1.44g,6.60mmol)を添加した。18時間後、反応物をブライン
(50mL)中に注ぎ、CH2Cl2(3x75ml)で抽出した。合わせた有機
抽出物をNa2SO4で乾燥し、濃縮してわずかに灰色がかった白色の残渣(1.
50g)を得た。フラッシュクロマトグラフィー(30%EtOAc/ヘキサン
,シリカゲル)により所望生成物を透明油状物質(0.89g,88%)として得
た。MS(ES+)m/e461.2[M+H]+
c)
THF(5mL)中の(b)(0.37g,0.80mmol)および1N N
aOH(5mL,5mmol)の混合物を室温で撹拌した。18時間後、反応物
をCHCl3(20mL)で希釈し、1N HClで酸性にした。CHCl3(2
x20mL)で水層をさらに抽出した。合わせた有機層をブライン(25mL)
で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮して透明油状物質(0.29g)を得た。
この物質は放置すると固化し、さらに精製せずに次の工程において使用した。
−10℃のDMF(3mL)中のLys(CBZ)OBzl.HCl(0.72
g,1.77mmol)に、EtNiPr2(0.31mL,1.76mmol)およ
びHOBt(0.25g,1.82mmol)を添加した。得られた溶液に、DM
F(3mL)中の上記工程で得たジ酸(0.29g,0.80mmol)の溶液、
次いで、EDC(0.34g,1.77mmol)を添加した。反応物を室温まで
暖めた。18時間後、反応物をブライン(200mL)中5%Na2CO3に注ぎ
、CHCl3(4x50mL)で抽出した。合わせた有機部分をH2O(50mL
)、1N HCl(2x50mL)、ブライン(2x50mL)で洗浄し、Mg
SO4で乾燥し、濃縮してオレンジ色油状物質を得た。フラッシュクロマトグラ
フィー(2.5%MeOH,CHCl3,シリカゲル)により所望化合物を白色固体
(0.67g,75%)を得た。MS(ES+)m/e1109.6
[M+H]+
d)
CH2Cl2(2mL)中の(c)(0.11g,0.10mmol)の溶液に、
TFA(2mL)を添加した。室温で1時間後、溶媒を減圧除去した。得られた
オレンジ色油状物質をトルエンと共沸させ、DMF(0.5mL)中に溶解し、
生のBoc−Asp(OcHex)(0.14g,0.44mmol)およびHO
Bt(0.06g,0.44mmol)に添加した。得られた溶液に、EtNiP
r2(0.8mL,0.44mmol)およびEDC(0.08g,0.43mmol
)を添加した。18時間後、反応物をブライン(200mL)中5%Na2CO3
に注ぎ、CHCl3(4x50mL)で抽出した。合わせた有機部分をH2O(5
0mL)、1N HCl(2x50mL)、ブライン(2x50mL)で洗浄し
、MgSO4で乾燥し、濃縮してロウ状固体を得た。フラッシュクロマトグラフ
ィー(1%MeOH/CHCl3,シリカゲル)により所望化合物(0.08g,5
1%)を得た。MS(ES+)m/e1503.8[M+H]+
e)
CH2Cl2(5mL)中の(d)(0.08g,50.0μmol)の溶液にT
FA(5mL)を添加した。室温で1時間後、溶媒を減圧除去した。得られた油
状物質をトルエンと共沸させ、DMF(0.5mL)中に溶解し、生のBoc−
Glu(OcHex)(76.3mg,0.22mmol)およびHOBt(31.
1mg,0.23mmol)に添加した。得られた溶液に、EtNiPr2(38.
0μL,0.22mmol)およびEDC(45.6mg,0.24mmol)を添
加した。18時間後、反応物をブライン(200mL)中5%Na2CO3に注ぎ
、CHCl3(4x50mL)で抽出した。合わせた有機部分をH2O(50mL
)、1N HCl(2x50mL)、ブライン(2x50mL)で洗浄し、Mg
SO4で乾燥し、濃縮して白色固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(5
%MeOH/CHCl3,シリカゲル)により所望化合物(31.0mg,30%)
を得た。MS(ES+)m/e963.6[M+H]2+
f)
CH2Cl2(2mL)中の(e)(30mg,15.6μmol)の溶液にTF
A(52mL)を添加した。室温で1時間後、溶媒を減圧除去した。得られた油
状物質をトルエンとともに共沸させ、DMF(0.5mL)に溶解し、生のpG
lu(12.8mg,99.1μmol)およびHOBt(10.1mg,74.5μ
mol)に添加した。得られた溶液に、EtNiPr2(12.0μL,68.9μ
mol)およびEDC(13.8mg,72.1μmol)を添加した。18時間
後、反応物を1:1の氷/水(100mL)中に注いだ。生じた沈殿を集め、減
圧乾燥して白色固体(15.9mg,52%)を得た。MS(ES+)m/e97
5.0[M+2H]2+
g)化合物1
−78℃のHF容器中に(f)(14.9mg,7.6μmol)、無水HF(
5mL)およびp−クレゾール(0.5mL)を入れた。反応物を0℃に暖めた
。0℃で1.5時間後、HFを減圧除去し、残渣を4%酢酸水溶液に溶解した。
この物質を凍結乾燥した。調製用HPLC(VydacTMC−18、60分かけて2.
5%から50%アセトニトリル/水+0.1%TFA)により標記化合物を白色
固体として得た。MS(FAB)m/e1171.4[M+H]+
実施例2
本発明化合物を含有する医薬用途の処方を、多数の賦形剤を伴った種々の形態
にして製造することができる。かかる処方の実施例を以下に示す。錠剤/成分
1錠あたり
1. 活性成分 0.5mg
(式Iの化合物)
2. コーンスターチ 20mg
3. アルギン酸 20mg
4. アルギン酸ナトリウム 20mg
5. ステアリン酸マグネシウム 1.3mg錠剤製造工程:
工程1 成分1、成分2、成分3および成分4を適当なミキサー/ブレンダー中
で混合する。
工程2 工程1で各成分を添加後得られた混合物に十分な水を注意深く混合しな
がら少しずつ添加する。混合物が湿顆粒への変化が可能となる濃度になるまでか
かる水の添加および混合を行う。
工程3 8番(2.38mm)のふるいを用いるオシレーティンググラニュレー
ター(oscillating granulator)に該湿混合物を通すことにより顆粒に変化させ
る。
工程4 次いで、湿顆粒を140°F(60℃)のオーブンで乾燥させる。
工程5 成分5を用いて乾燥顆粒を潤滑化する。
工程6 潤滑化した顆粒を適当な打錠機で打錠する。非経口処方
適当量の式Iの化合物をポリエチレングリコール中に加熱しながら溶解するこ
とにより非経口投与用医薬組成物を製造する。次いで、この溶液を欧州局方注射
用水で希釈する(100mlとする)。次いで、0.22ミクロンのメンブラン
フィルターで該溶液を滅菌し、滅菌済み容器中に密封する。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
A61K 38/00 ADY A61K 37/02 ADY
ADZ ADZ
AED ACS
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),JP,US