JPH094468A - 遊星歯車減速機におけるリングギヤの支持構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 大きな回転トルクを支持することができ、半
径方向に撓みやすく、摩耗が少なく、かつ軽量な遊星歯
車減速機におけるリングギヤの支持構造を提供する。 【構成】 サンギヤ、プラネットギヤ、及びリングギヤ
からなる遊星歯車減速機におけるリングギヤの支持構
造。半径方向剛性の低いリングギヤ１を間隔を隔てて囲
みかつ固定部分４に固定されたリング状の固定部材１２
と、固定部材とリングギヤを連結する複数の細長い連結
部材１４とからなる。各連結部材の内端１４ａは、リン
グギヤに周方向に同一の間隔を隔てて枢着され、かつ各
連結部材は内端の枢着点から接線方向に鋭角に延び、そ
の外端１４ｂが固定部材に枢着されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、航空エンジン用の遊星
歯車減速機に係わり、更に詳しくは、遊星歯車減速機に
おけるリングギヤの支持構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】ターボプロップエンジンやターボファン
エンジンでは、数万ｒｐｍで回転するタービンの回転数
を減速して数千ｒｐｍで回転するプロペラやファンに伝
達するために遊星歯車減速機が用いられる。特に、航空
エンジンの高出力化、小型化に伴い、タービンの回転数
は更に高速化し、伝達動力、減速比、等の点で苛酷な条
件で使用させるようになってきている。

【０００３】かかる航空エンジン用遊星歯車減速機は、
タービンに連結されたサンギヤ（太陽歯車）、プロペラ
又はファンに連結されたプラネットギヤ（遊星歯車）、
及びエンジンの固定部分に連結されたリングギヤ（大太
陽歯車）から構成され、サンギヤの回転を減速してプラ
ネットギヤに伝達するようになっている。また、図３
（Ａ）に模式的に示すように、複数のプラネットギヤを
リングギヤで均等に支持するために、リングギヤ１の半
径方向剛性を低くし、リングギヤの周囲をスプライン・
カップリング２で支持し、スプライン歯面間の滑りによ
り、リングギヤ１の半径方向の撓みと、周方向の大荷重
の支持を可能にしたリングギヤの支持構造が従来採用さ
れていた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、図３（Ａ）に
示した従来のリングギヤの支持構造では、スプライン２
の歯面が大荷重を支持しながら激しく振動するため、ス
プライン歯面にいわゆるフレッチング摩耗が発生しやす
く、長時間の安定使用ができない問題点があった。

【０００５】更に、図３（Ａ）の支持構造を改良して、
図３（Ｂ）に示すように、リングギヤ１を複数（図では
３つ）のスプライン・カップリング２を介して支持する
ことにより、各スプライン歯面における滑りや振動を低
減してフレッチング摩耗をすくなくする構造も検討され
ているが、重量が大きくなりやすいリング状部材が増え
るために減速機の重量が過大となる問題点がある。な
お、図３の各図において、４は、リングギヤを支持する
ために設けられた固定部である。

【０００６】本発明はかかる問題点を解決するために創
案されたものである。すなわち、本発明の目的は、大き
な回転トルクを支持することができ、半径方向に撓みや
すく、摩耗が少なく、かつ軽量な遊星歯車減速機におけ
るリングギヤの支持構造を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明によれば、サンギ
ヤ、プラネットギヤ、及びリングギヤからなる遊星歯車
減速機におけるリングギヤの支持構造において、半径方
向剛性の低いリングギヤを間隔を隔てて囲み、かつ固定
部分に固定されたリング状の固定部材と、該固定部材と
リングギヤを連結する複数の細長い連結部材とからな
り、各連結部材の内端は、リングギヤに周方向に同一の
間隔を隔てて枢着され、かつ各連結部材は前記枢着点か
ら接線方向に鋭角に延び、その外端が固定部材に枢着さ
れている、ことを特徴とする遊星歯車減速機におけるリ
ングギヤの支持構造が提供される。

【０００８】本発明の好ましい実施例によれば、前記内
端及び外端の枢着点には、それぞれ隙間の少ない軸受が
取付けられている。また、前記連結部材は、圧縮力を受
けるようにリングギヤに作用する周方向力に対して鋭角
に延びる、ことが好ましい。

【０００９】

【作用】上記本発明の構成によれば、内端がリングギヤ
に枢着され外端が固定部材に枢着された複数の連結部材
が内端の枢着点から接線方向に鋭角に延びているので、
この連結部材の圧縮（又は引張）によりリングギヤに作
用する大きな回転トルクを固定部材に伝達して支持する
ことができ、かつ枢着点における回転（揺動）によりリ
ングギヤを半径方向に撓みやすく支持することができ
る。従って、運転時に発生する半径方向荷重によって、
リングギヤが半径方向に非円形に変形することができ、
これにより歯車の製造誤差が噛み合い荷重に及ぼす影響
を緩和してプラネットギヤ間の荷重等配分を達成するこ
とができる。

【００１０】また、各枢着点はほとんど隙間なく支持さ
れるので、摩耗が少なくでき、かつ固定部材と細長い連
結部材だけで全体を構成できるので軽量にすることがで
きる。

【００１１】

【実施例】以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照
して説明する。なお、各図において共通する部分には同
一の符号を付して使用する。図１は、本発明による遊星
歯車減速機におけるリングギヤの支持構造の全体構成図
である。この図において、遊星歯車減速機は、タービン
（図示せず）に連結されたサンギヤ５（太陽歯車）、プ
ロペラ又はファン（図示せず）に連結されたプラネット
ギヤ６（遊星歯車）、及び固定部分に連結されたリング
ギヤ１（大太陽歯車）から構成され、サンギヤ５の回転
を減速してプラネットギヤ６に伝達するようになってい
る。この図において、プラネットギヤ６は５つ設けられ
ているが、本発明はかかる構成に限定されず、プラネッ
トギヤ６を４つ以下、或いは６つ以上設けてもよい。

【００１２】図１において、本発明のリングギヤの支持
構造１０は、固定部分４（例えばエンジンフレーム）に
固定されたリング状の固定部材１２と、固定部材１２と
リングギヤ１を連結する複数の細長い連結部材１４とか
らなる。固定部材１２は、リングギヤ１を適当な間隔を
隔てて囲んでいる。この間隔は均一であるのがよい。ま
たリングギヤ１は半径方向に撓みやすいように半径方向
剛性が低く構成されている。

【００１３】連結部材１４は、プラネットギヤ６の個数
に対応してその整数倍を設けるのが好ましく、図１の例
では倍の１０個が設けられている。また、各連結部材１
４の内端１４ａは、リングギヤ１に周方向に同一の間隔
を隔てて枢着されている。この枢着点には、隙間の少な
い軸受（図示せず）が取付けられており、これにより、
リングギヤの軸心に平行な軸を中心に隙間なく回転でき
るようになっている。更に、各連結部材１４の外端１４
ｂも、固定部材１２に枢着され、内端と同様に隙間の少
ない軸受（図示せず）により、リングギヤ１の軸心に平
行な軸を中心に隙間なく回転できるようになっている。
なお、軸受の使用は不可欠ではなく、伝達トルクが比較
的小さく、フレッチング摩耗のおそれが少ない場合に
は、耐摩耗性の高いピンを用いたピン結合としてもよ
い。

【００１４】また各連結部材１４は、内端１４ａ（枢着
点）から接線方向に鋭角に延びている。この鋭角の角度
は小さいほどよく、完全に接線方向であってもよい。更
に、図１に示すように、本実施例では、連結部材１４は
リングギヤ１に作用する図で右回りの周方向力に対して
時計回り方向に接線に対してに鋭角に延びており、これ
により連結部材１４が圧縮力を受けるようになってい
る。なお、本発明はかかる構成に限定されず、逆に連結
部材１４が引張力を受けるように構成してもよい。

【００１５】図２は、図１に示したリングギヤ支持構造
の作動状態を模式的に示す図である。この図に矢印で示
すように、遊星歯車減速機の作動時にはリングギヤ１に
周方向力と半径方向力が作用する。周方向力は、タービ
ンの回転をプロペラ又はファンに伝達する際の反作用と
して発生し、半径方向力は、歯車の製造誤差が噛み合い
荷重に及ぼす影響により発生する。

【００１６】図２において、上述した本発明の構成によ
れば、内端１４ａがリングギヤ１に枢着され外端１４ｂ
が固定部材１２に枢着された複数の連結部材１４が内端
１４ａの枢着点から接線方向に鋭角に延びているので、
この連結部材１４の圧縮（又は引張）によりリングギヤ
１に作用する大きな回転トルクを固定部材１２に伝達し
て支持することができ、かつ枢着点における回転（揺
動）によりリングギヤ１を半径方向に撓みやすく支持す
ることができる。従って、運転時に発生する半径方向荷
重によって、リングギヤ１が図２に示すように半径方向
に非円形に変形することができ、これにより歯車の製造
誤差が噛み合い荷重に及ぼす影響を緩和してプラネット
ギヤ間の荷重等配分を達成することができる。

【００１７】また、各枢着点は軸受によりほとんど隙間
なく支持されるので、摩耗を大幅に低減することができ
る。更に、固定部材１２と細長い連結部材１４だけで全
体が構成されるので支持構造を従来のリング状部材に比
較して更に軽量にすることができる。なお、本発明は上
述した実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない
範囲で種々に変更できることは勿論である。

【００１８】

【発明の効果】上述したように、本発明の遊星歯車減速
機におけるリングギヤの支持構造は、大きな回転トルク
を支持することができ、半径方向に撓みやすく、摩耗が
少なく、かつ軽量化できる、等の優れた効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による遊星歯車減速機におけるリングギ
ヤの支持構造の全体構成図である。

【図２】図１に示した支持構造の作動状態を模式的に示
す図である。

【図３】従来のリングギヤの支持構造を示す部分構成図
である。

【符号の説明】

１ リングギヤ ２ スプライン・カップリング ３ 薄肉ハウジング ４ 固定部 ５ サンギヤ（太陽歯車） ６ プラネットギヤ（遊星歯車） １０ リングギヤ支持構造 １２ 固定部材 １４ 連結部材 １４ａ 内端（枢着点） １４ｂ 外端（枢着点）

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 サンギヤ、プラネットギヤ、及びリング
   ギヤからなる遊星歯車減速機におけるリングギヤの支持
   構造において、 半径方向剛性の低いリングギヤを間隔を隔てて囲み、か
   つ固定部分に固定されたリング状の固定部材と、該固定
   部材とリングギヤを連結する複数の細長い連結部材とか
   らなり、 各連結部材の内端は、リングギヤに周方向に同一の間隔
   を隔てて枢着され、かつ各連結部材は前記枢着点から接
   線方向に鋭角に延び、その外端が固定部材に枢着されて
   いる、ことを特徴とする遊星歯車減速機におけるリング
   ギヤの支持構造。
2. 【請求項２】 前記内端及び外端の枢着点には、それぞ
   れ隙間の少ない軸受が取付けられている、ことを特徴と
   する請求項１に記載の遊星歯車減速機におけるリングギ
   ヤの支持構造。
3. 【請求項３】 前記連結部材は、圧縮力を受けるように
   リングギヤに作用する周方向力に対して鋭角に延びる、
   ことを特徴とする請求項１に記載の遊星歯車減速機にお
   けるリングギヤの支持構造。