JPH09268976A - メンブレンポンプおよびその運転方法 - Google Patents

メンブレンポンプおよびその運転方法

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JPH09268976A
JPH09268976A JP8081636A JP8163696A JPH09268976A JP H09268976 A JPH09268976 A JP H09268976A JP 8081636 A JP8081636 A JP 8081636A JP 8163696 A JP8163696 A JP 8163696A JP H09268976 A JPH09268976 A JP H09268976A
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membrane
hydrogen
pump according
upstream
metal
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Application number
JP8081636A
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English (en)
Inventor
Takashi Sasaki
崇 佐々木
Osayoshi Ooyabu
修義 大▲やぶ▼
Osamu Motojima
修 本島
Ribushitsutsu Arekisanda
アレキサンダ・リブシッツ
Notokin Mihairu
ミハイル・ノトキン
Samaruchiefu Andore
アンドレ・サマルチェフ
Busuniyuuku Andore
アンドレ・ブスニューク
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Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
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Publication date
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    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E30/00Energy generation of nuclear origin
    • Y02E30/10Nuclear fusion reactors

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  • Compressors, Vaccum Pumps And Other Relevant Systems (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 メンブレンポンプは極めて効率の高い水素の
排気システムの構築が期待されるものであるが、現在は
その原理を利用した開発の段階にあり、実用方法が確立
されておらず、十分な性能を発揮するには至っていない
などの課題があった。 【解決手段】 メンブレン1の材料にV族金属を使用し
て厚さを0.1mm〜1mmにし、表面にO,C,S,
Se,Te等に代表される元素のうちから選択した表面
不純物層を形成し、下流側表面より上流側表面の再結合
係数を低くし、メンブレン1をパイプ状に形成し、パイ
プ状のメンブレン10の外側の水素を内側に排気するよ
うにし、パイプ長手方向に通電してジュール加熱により
前記メンブレン1を昇温させる通電手段11を備えた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、特に核融合装置
からの水素の排気などにおいて有用な、超透過性金属膜
を利用して水素排気を行うメンブレンポンプおよびその
運転方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】希薄な気体を排気するためのポンプとし
ては、ターボモレキュラーポンプやクライオポンプなど
が従来用いられている。しかし、ターボモレキュラーポ
ンプは排気コンダクタンスの小さな場所では実効排気速
度が小さくなるという問題点があり、クライオポンプは
連続的な排気ができず、また極低温クライオパネルに対
して熱シールドが必要になるため、応用例によっては実
効排気速度が大幅に小さくなるという問題点がある。従
って、希薄な気体を効率的に排気するためのポンプが求
められており、近年、核融合等の分野においては、超透
過性金属膜(以下、メンブレンという)を利用した水素
排気ポンプであるメンブレンポンプが着目されている。
【0003】超透過性を有するメンブレンを利用する
と、入射水素原子はほぼ100%メンブレンを通過して
下流側へ水素分子として出て行くため、その逆流が防が
れ、数桁以上の圧縮比(下流水素分子密度/上流水素分
子密度)が期待でき、下流側において普通のポンプで排
気するだけでも極めて効率の高い排気システムとするこ
とが可能である。現在メンブレンポンプはその原理を利
用した開発の段階にあるため実用方法は確立されておら
ず、実用化が待たれている。
【0004】以下、メンブレンポンプに用いられるメン
ブレンの超透過性について説明する。メンブレンを構成
する金属膜の表面に非金属の表面不純物層が形成される
と、メンブレン表面にポテンシャル障壁(以下、障壁と
いう)が形成される。この障壁は低エネルギーの水素分
子の入射に対しては反射壁となるが、水素原子が入射し
た場合には運動エネルギーの如何に関わらず水素原子は
容易にこの障壁を越えて金属膜中に吸収される。
【0005】そして、吸収された水素原子は金属格子中
ですぐに冷やされるために障壁を越えて元に戻ることが
難しくなり、大部分は拡散運動により反対側(下流側)
の金属膜表面に達する。しかしながら下流側にも表面不
純物層の障壁が存在するために、水素原子は金属膜中に
一時的に閉じ込められることになる。
【0006】ここで、下流側の障壁が上流側の障壁より
も小さい場合には、閉じ込められた水素原子は最終的に
大部分が下流側の障壁を乗り越えて下流側金属膜外に出
ることになる。ここで障壁を乗り越えて金属膜より外に
出るということは、物理的には金属膜表面で水素原子が
他の水素原子と再結合して、水素分子になって表面から
離れて飛び出すということである。下流側に飛び出した
水素は、水素分子の状態で飛び出しているため、たとえ
金属膜と衝突しても障壁のために金属膜内に戻ることは
ない。より正確には10-5程度の極めて小さい確率でし
か金属膜内に戻ることはなく、以上のようにして、メン
ブレンの上流側の障壁に入射した水素原子は下流側の障
壁より水素分子として出ていき、水素の超透過が起こ
る。メンブレンポンプは、上記のような超透過性金属膜
の性質を利用して水素の排気を行うものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来のメンブレンポン
プは以上のように構成されているので、極めて効率の高
い水素の排気システムの構築が期待できるものである
が、現在はその原理を利用した開発の段階にあり、実用
方法が確立されておらず、十分な性能を発揮するには至
っていないなどの課題があった。
【0008】この発明は上記のような課題を解決するた
めになされたもので、希薄な水素気体やその同位体ガス
の排気に際して効率的な排気を行うことが可能であり、
実用化が可能なメンブレンポンプおよびその運転方法を
得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明に係
るメンブレンポンプは、メンブレンの材料として、V,
Nb,Ta,Fe,Ni,Pdのうちから選択される金
属を使用し、かつ、前記メンブレンの表面に、O,C,
S,Se,Te等に代表される元素のうちから選択され
る元素からなる表面不純物層を形成したものである。
【0010】請求項2記載の発明に係るメンブレンポン
プは、メンブレンの材料として、V,Nb,Taのうち
から選択される金属を使用したものである。
【0011】請求項3記載の発明に係るメンブレンポン
プは、メンブレンの厚さを0.1mm〜1mmの間の厚
さにしたものである。
【0012】請求項4記載の発明に係るメンブレンポン
プは、メンブレンの上流側表面の再結合係数を下流側表
面の再結合係数より低くしたものである。
【0013】請求項5記載の発明に係るメンブレンポン
プは、メンブレンの上流側と下流側に異なる金属を用い
たものである。
【0014】請求項6記載の発明に係るメンブレンポン
プは、メンブレンの上流側にTa、下流側にNbを用い
たものである。
【0015】請求項7記載の発明に係るメンブレンポン
プは、メンブレンの上流側にNb、下流側にPdを用い
たものである。
【0016】請求項8記載の発明に係るメンブレンポン
プは、メンブレンの上流側表面と下流側表面に異なる不
純物による表面不純物層を形成したものである。
【0017】請求項9記載の発明に係るメンブレンポン
プは、メンブレンの下流側表面の表面積を上流側表面の
表面積より大きくしたものである。
【0018】請求項10記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、メンブレンの下流側表面を上流側表面より粗く
形成したものである。
【0019】請求項11記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、メンブレンの上流側に、前記メンブレンに到達
する過剰の不純物吸着用のブラインド状の遮蔽部材を設
けたものである。
【0020】請求項12記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、2000℃程度に温度上昇する金属フィラメン
トよりなりメンブレンの上流に配置されて前記メンブレ
ンに入射する水素を原子化するアトマイザーとして、
V,Nb,Taのうちのいずれかにより形成したアトマ
イザーを備えたものである。
【0021】請求項13記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、アトマイザーの金属フィラメントに用いる金属
とメンブレンの上流側に用いる金属とを同一の金属とし
たものである。
【0022】請求項14記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、メンブレンの下流側に用いる金属上に、これと
異なる金属により形成したアトマイザーの金属フィラメ
ントより蒸発した金属を蒸着することにより前記メンブ
レンの上流側に用いる金属を形成したものである。
【0023】請求項15記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、アトマイザーの金属フィラメントに炭素を含有
させたものである。
【0024】請求項16記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、アトマイザーの金属フィラメントを10-4To
rr程度の圧力のCH4 ガス中に1900℃程度の温度
に保って10時間程度放置して炭素を注入したものであ
る。
【0025】請求項17記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、アトマイザーの金属フィラメントを5族の金属
の炭化物により形成したものである。
【0026】請求項18記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、アトマイザーの電気抵抗率を測定することによ
りアトマイザー中に残留する炭素濃度を検知する炭素濃
度検知手段を備えたものである。
【0027】請求項19記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、RF電場,グロー放電,アーク放電等の方法に
よりプラズマを発生するプラズマ発生装置におけるプラ
ズマを利用して、メンブレンの上流における水素の原子
化を行うものである。
【0028】請求項20記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、核融合装置におけるプラズマを利用して、メン
ブレンの上流における水素の原子化を行い、前記核融合
装置からの水素排気を行うものである。
【0029】請求項21記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、ガラス,セラミック等の水素原子を再分子化さ
せにくい物質をコーティングした水素粒子反射板をメン
ブレン上流に配置して、高速水素粒子を前記水素粒子反
射板により反射させてエネルギーを減衰させた後前記メ
ンブレンに入射させるようにしたものである。
【0030】請求項22記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、水素分子をメンブレン上流において振動励起状
態にする振動励起手段を備えたものである。
【0031】請求項23記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、アトマイザーより低い温度に温度設定されメン
ブレンに入射する水素分子を振動励起状態に励起する、
前記メンブレンの上流側金属と同一の金属よりなる振動
励起用フィラメントを前記メンブレンの上流に配置した
ものである。
【0032】請求項24記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、水素の同位体よりなる水素分子のうち重い水素
分子の振動励起に必要な最小限の励起エネルギーを与え
るように振動励起手段を設定したものである。
【0033】請求項25記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、メンブレンが受ける熱負荷が0.5W/cm2
〜5W/cm2 になる位置にメンブレンを配置したもの
である。
【0034】請求項26記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、メンブレンの下流側表面を上流側表面より粗く
形成し、前記下流側表面に対面して低温に保たれる壁を
設けたものである。
【0035】請求項27記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、メンブレンの上流側表面付近に前記メンブレン
が受ける熱放射を遮蔽する熱放射遮蔽部材を設けたもの
である。
【0036】請求項28記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、メンブレンをパイプ状に形成し、該パイプ状の
メンブレンの外側の水素を内側に排気するようにしたも
のである。
【0037】請求項29記載の発明に係るメンブレンポ
ンプは、パイプ状のメンブレンのパイプ長手方向に通電
してジュール加熱により前記メンブレンを昇温させる通
電手段を備えたものである。
【0038】請求項30記載の発明に係るメンブレンポ
ンプの運転方法は、メンブレンの温度を300℃〜12
00℃に保って運転するものである。
【0039】請求項31記載の発明に係るメンブレンポ
ンプの運転方法は、運転中のメンブレンの温度を550
℃〜1200℃に保つものである。
【0040】請求項32記載の発明に係るメンブレンポ
ンプの運転方法は、メンブレンに表面不純物層を形成し
うるO2 ,H2 O,CO,C22 ,H2 S等に代表さ
れる化合物のうちから選択される化学的活性ガスを、前
記メンブレンに入射する水素により表面不純物層がスパ
ッタされて破壊されるスパッタレートに応じた圧力で前
記メンブレンの上流側に導入して前記メンブレンの上流
側表面に表面不純物層を逐次形成させることにより、運
転中の前記上流側表面の単原子層の表面不純物層を維持
するものである。
【0041】請求項33記載の発明に係るメンブレンポ
ンプの運転方法は、運転前にメンブレンの下流側表面を
超高真空下での加熱等により清浄にし、運転中は前記メ
ンブレンの下流側を10-9Torr以下の圧力に保つも
のである。
【0042】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の一形態を
説明する。 実施の形態1.メンブレンポンプは、従来の技術におい
てその概略を説明したように、水素に対して超透過性を
示す金属膜(以下、メンブレンという。)を利用した水
素排気ポンプである。現在メンブレンポンプはその原理
を利用した開発の段階にあり、実用方法を模索中の段階
であるが、発明者等は、メンブレンポンプに関する数多
くの実験を行った中で、実用化が可能な程度にメンブレ
ンポンプの構成およびその運転方法を開発することがで
きた。以下の各実施の形態においては、発明者等が開発
した具体的なメンブレンポンプの構成およびその運転方
法について、項目毎に分けて説明を行う。
【0043】この実施の形態1においては、まず、メン
ブレンの構成およびメンブレンポンプの運転の際のメン
ブレンの保持温度について説明する。
【0044】メンブレンに用いる金属膜の材料として
は、V,Nb,Ta,Fe,Pd,およびNiを用いる
ことが可能である。5族の金属であるV,Nb,Ta
は、金属中の水素原子の拡散係数および水素原子の溶解
度が特に大きく、超透過性金属膜を形成するのに最も適
している。また、メンブレンに用いる金属は後に述べる
ようにアトマイザーにも使用するが、これらの5族の金
属はアトマイザーに要求される高融点の要求を満たして
いる。Fe,Pd,Niも金属中の水素原子の拡散係数
および水素原子の溶解度が大きく、超透過性金属膜を形
成するのに適している。
【0045】また、メンブレンの温度は300℃から1
200℃の範囲に保持すると超透過性を発揮しやすく、
メンブレンポンプの運転においては、この温度範囲に保
持して運転するとよい。これは、300℃未満において
はメンブレン金属中の水素原子の拡散係数が小さくなり
水素原子が下流側の表面に到達しにくくなり、1200
℃以上においては水素原子のエネルギーが高くなり、上
流側表面から入射した水素原子が従来例において説明し
た障壁を再度超えて上流側表面から出ていくことが容易
となり、メンブレンを透過する結果とならないためであ
る。
【0046】また、メンブレンの厚さは、最大で1mm
程度まで、代表的には0.1mm程度にするのがよい。
これは、メンブレンの厚さが1mm以上になると、上流
側表面よりメンブレンに入りランダムウォーク的に拡散
する水素原子が下流側表面に到達して下流側表面から水
素分子になって出て行くより、上流側表面から再び出て
行く確率が高くなり、メンブレンポンプとして機能させ
ることが困難となるためである。
【0047】図1は、メンブレンにおける水素の透過に
関する各量を示す説明図であり、図において、Φはメン
ブレンに入射する水素原子のフラックス、Φr はメンブ
レン内から上流側に出て行く水素原子のフラックス、Φ
p はメンブレン内から下流側に出て行く水素原子のフラ
ックス、Lはメンブレンの厚さ、nはメンブレンの上流
側表面付近における水素原子密度、(1−ε)nはメン
ブレンの下流側表面付近における水素原子密度であり、
εは減少分(0≦ε≦1)である。k1 は上流側の再結
合係数、k2 は下流側の再結合係数である。再結合係数
は、原子の状態となってメンブレン内に入った水素がメ
ンブレン表面の前記障壁を乗り越えて表面に出て水素分
子に再結合して出ていく度合を示す係数であり、図中に
山型で示した障壁とは逆数的な関係にある。なおここ
で、Φ,k1 ,k2 ,Lはメンブレンの条件により決ま
る決定量、n,εは水素原子に関する未知量である。
【0048】メンブレン内から下流側に出る水素原子
は、メンブレン表面において水素分子となって出て行く
が、これらが再度障壁を超えてメンブレン内に戻る確率
は前述のように10-5程度と極めて低いため、下流側に
水素原子の発生源がない状況における定常状態では、メ
ンブレンに入射する水素原子のフラックスは、上流側に
出て行く水素原子のフラックスと下流側に出て行く水素
原子のフラックスとの和に等しく、 Φ = Φr + Φp =k1 2 +k2 (1−ε)2 2 ・・・(1) が成り立つ。下流側に出て行く水素原子のフラックスに
ついて、拡散係数をDとすれば、 −D▽n=Dεn/L=k2 (1−ε)2 2 ・・・(2) が成り立つ。
【0049】ここで、メンブレンにおける超透過の条件
をΦr /Φp 《1とすれば、これより、 k1 /k2 《(1−ε)2 ・・・(3) が要求される。式(3)は、ε《1であれば容易に成立
させることができるが、εが1に近い場合は、k1 /k
2 《(1−ε)2 《1となり、k1 /k2 《1を前提と
しても、それ以上にk1 /k2 が極めて小さいこと(上
流側障壁高さ/下流側障壁高さが極めて大きいこと)が
要求され、これを満たす障壁の非対称性を作り出すこと
は困難となる。従って、εは0に近い必要があり、以
下、ε《1を前提とすると、式(2)より、 ε〜k2 nL/D ・・・(4) が成り立ち、k1 /k2 《1,ε《1が前提であるた
め、式(1)より、 Φ〜Φp 〜k2 2 ・・・(5) が成り立つ。従って、ΦおよびΦp を大きくしてポンプ
排気量を大きくするためにはnが大きくなければならな
い。しかし、式(4)のεを小さく保つためにはLが小
さいことが必要となる。
【0050】ここで、ε=0.1を超透過の限界として
ε<0.1とし、メンブレンに用いるNb膜の拡散係数
Dを1×10-4cm2-1、k2 を代表的測定値の1×
10-24cm4-1とすると、式(4)より、n〜1×1
19/Lとなり、これより、 L=1mmで n<1×1020cm-3 Φ<1×1016cm-2-1 L=0.3mmで n<3.3×1020cm-3 Φ<1×1017cm-2-1 L=0.1mmで n<1×1021cm-3 Φ<1×1018cm-2-1と なる。以上のように、メンブレンの厚さが厚くなるにつ
れて、可能な水素原子密度nおよびポンプ排気量に関す
るΦが小さくなる。
【0051】なお、Nbのメンブレンにおいて最大可能
なΦは、nをNb原子密度の5%の2.75×1021
-3として式(5)より、7.6×1018cm-2-1
なり、これが可能なLは、超透過の条件(ε<0.1)
下で、0.036mmとなる。しかし、メンブレンの厚
さを0.1mm未満に薄くすると、構造上および強度上
の問題が発生しやすく、また、メンブレンの溶接が困難
となるため、代表的には0.1mm程度にするとよい。
【0052】また、NbのメンブレンにおいてnをNb
の原子密度の1%程度の5.5×1020cm-3程度とし
て十分な量(Φ〜Φp 〜3.0×1017cm-2-1)の
排気を行おうとした場合、式(4)においてL=1mm
の場合にはε〜0.55となり、ε<0.1より大きく
ずれ、超透過の前提条件が成立しなくなる。従って以上
に示したように、メンブレンポンプにより十分な排気を
行うためには、メンブレンの厚さを0.1mm〜1mm
の間の厚さ、代表的には0.1mm程度にするとよい。
【0053】実施の形態2.メンブレンが超透過性を発
揮するためには、メンブレン表面に障壁を形成する適切
な表面不純物層が形成されている必要がある。発明者等
が行った実験によれば、メンブレンに用いる金属と表面
不純物層の組合せは以下の組み合わせが好適である。金
属膜がV,Nb,Taのうちのいずれかである場合は、
表面不純物層にはO,C,S,Se,Teのうちのいず
れかを用いるのがよく、金属膜がPdである場合は、表
面不純物層にはS,Se,Teのうちのいずれかを用い
るのがよい。
【0054】実施の形態3.メンブレン表面の表面不純
物層の形成方法としては、以下の方法が適切である。
【0055】O,C,S,Se,Te等に代表される元
素のうちから選択される元素を含んだ圧力10-5Tor
r程度以下の化学的活性ガスにメンブレンをさらすと、
メンブレン表面に多原子層の表面不純物層ができる。こ
の状態からメンブレンの温度を550℃以上にすると、
過剰な不純物が金属中に溶けて単原子層の表面不純物層
が形成される。
【0056】高速でメンブレン表面に入射した粒子によ
りスパッタリングを受けるなどして、不純物が外部に失
われた場合には、金属中に溶けていた不純物がそれを補
って単原子層を維持するように作用する。従って、表面
不純物層として酸素を使用する場合、メンブレン温度を
550℃以上に保持すると、自動的に単原子層の表面不
純物層が維持される。
【0057】但し、金属中の不純物濃度が一定レベル以
上になると金属が脆くなり寿命が低下するため一定レベ
ル以下に保つことが必要であり、例えばNbのメンブレ
ンの表面不純物層にOを用いる場合には2%が限界であ
る。
【0058】実施の形態4.メンブレンに入射する粒子
が低エネルギーの熱的水素原子の場合には、表面不純物
層がスパッタリングされることがないので、単原子層の
表面不純物層が破壊されることはないが、入射粒子が高
エネルギー(10eV以上)の場合には、水素原子のス
パッタリングにより上流側の表面不純物層が破壊される
ため、以下の方法で修復させて表面不純物層の維持を行
う方がよい。
【0059】(a)メンブレン上流側に不純物ガスを導
入して厚い表面不純物層を形成する 例えば入射水素原子フラックスが、1015/cm2 s程
度の場合には、O2 ,H2 O,CO,C22 ,H2
等の化学的活性ガスを10-6〜10-5Torr程度に導
入するとよい。なお、このような環境は真空容器の中で
容易に形成することができるものである。
【0060】図2は、この発明の実施の形態4によるメ
ンブレンポンプの概略構成を示す説明図であり、図にお
いて1は厚さ0.1mmのNb膜によるメンブレン、2
は気体をメンブレン1上流に供給するバルブ、3はメン
ブレン1の上流側において排気を行う真空ポンプ、4は
メンブレン1の下流側において排気を行う真空ポンプ、
5はメンブレン1の上流側に設けられた真空計、6はメ
ンブレン1の下流側に設けられた真空計である。
【0061】メンブレン1に対しては67eV(水素イ
オン換算)の速度のH3 +粒子が、2.5×1015/cm
2 sのフラックス量(水素イオン換算)で入射してい
る。バルブ2からの供給と真空ポンプ3の排気により、
メンブレン1上流側は所定の圧力の気体雰囲気に置かれ
る。
【0062】図3は、この発明の実施の形態4によるメ
ンブレンポンプの一運転例を示すグラフ図であり、横軸
は時間を、縦軸は図3(a)において再放出率R(=Φ
r /Φ)を、図3(b)において透過率χ(=Φp
Φ)を示している。この再放出率R(=Φr /Φ)およ
び透過率χ(=Φp /Φ)は、バルブ2の供給量、真空
ポンプ3,4の効率、および真空計5,6の指示値を基
に各々計算される。なお、この例においては、560℃
に保たれたNbメンブレンの上流側にO2 を一定期間
(H3 +粒子入射開始から40分後〜75分の間)1.2
×10-6Torrで供給し、その後供給を遮断してい
る。
【0063】図3において、O2 を供給する前の期間に
おいては、再放出分が多く透過率χがほぼ0のままであ
るが、O2 の供給が始まると再放出率Rは急減して透過
率χが上昇している。O2 の供給を遮断すると、再放出
率Rは上昇して透過率χが急減している。
【0064】また、図4は、この発明の実施の形態4に
よるメンブレンポンプの他の運転例を示すグラフ図であ
り、この例においては、620℃に保たれたNbメンブ
レンの上流側にC22(アセチレン)を一定期間1×1
-6Torrで供給し、その後一定期間9×10-6To
rrで供給し、その後供給を遮断している。
【0065】図4において、C22を供給する前の期間
においては、再放出分が多く透過率χがほぼ0のままで
あるが、1×10-6TorrのC22の供給を始めると
再放出率Rは急減して透過率χが上昇し、9×10-6
orrのC22の供給を始めると再放出率Rはさらに減
少して透過率χがさらに上昇し、C22の供給を遮断す
ると、再放出率Rは上昇して透過率χが急減している。
なお、発明者等は、H2 O,H2 S,CO等を供給して
同様の運転を行い、同様の結果が得られた。
【0066】以上のように、上述の入射水素粒子のエネ
ルギーおよびフラックス量の場合は、O2 ,H2 O,C
22 ,H2 S,CO等を10-6〜10-5Torr程度
に上流側に導入することにより、高エネルギー粒子のス
パッタリングにより破壊される上流側の表面不純物層を
修復させ、表面不純物層の維持を行うことができる。な
お、導入する圧力は、入射水素粒子のフラックス量等が
増せば表面不純物層のスパッタレートが増すため、これ
に応じて適宜増加させればよい。
【0067】(b)下流側の金属面を上流側よりもクリ
ーンにする メンブレン上流側表面にスパッタのために完全な単原子
層の表面不純物層が形成されていない場合、下流側表面
を上流側表面よりクリーンにすることにより、後述する
ように障壁に非対称性が生じ、超透過性を維持すること
が可能である。このためには、下流側の表面を例えば超
高真空下で加熱を行うなどして定期的にクリーニング
し、また下流側の表面に対する化学的活性ガス(O2
2 O,CO,C22 ,H2 S)の圧力を10-9To
rr以下に保つようにするとよい。
【0068】なお上記の(a)および(b)の場合、メ
ンブレンの保持温度は、300℃<T<1200℃での
運転が可能である。
【0069】(c)金属中の不純物の偏析による上流側
の表面不純物層の維持 550℃<T<1200℃の温度範囲にメンブレンを保
持すると、不純物はメンブレン表面から金属中に溶け込
むことができ、水素原子によるスパッタリング等により
メンブレン表面から不純物が失われた場合には、不純物
が上流側の表面に達して偏析し、スパッタリングで失わ
れた表面不純物層が修復される。この場合酸素を下流側
からも供給できる。従って表面不純物層として酸素を使
用する場合、550℃<T<1200℃の温度範囲にメ
ンブレンを保持することにより、表面不純物層の自然修
復による維持を行うことができる。
【0070】実施の形態5.メンブレン上流から入射し
た水素原子はメンブレン中に入った後、一時的に上流側
表面の障壁と下流側表面の障壁との間に閉じ込められる
が、最終的には下流側に水素分子として飛び出すように
させる必要がある。そのためにはメンブレン表面の不純
物層による障壁に、上流側が下流側よりも高い非対称性
を維持する必要がある。換言すれば、上流側表面の再結
合係数が下流側表面の再結合係数より低い非対称性を維
持する必要があり、以下の方法で非対称性を維持するの
がよい。
【0071】a)異なる金属を上流側と下流側に使用す
る 超透過の性質を有する異なる金属をメンブレンの上流側
と下流側に使用すると、メンブレンの上流側表面の障壁
と下流側表面の障壁に非対称性が発生する。例えば、発
明者等は上流側にTa,下流側にNb、上流側にNb,
下流側にPd等を用いることにより、上流側表面の障壁
を下流側表面の障壁より高くして超透過性を持たせてい
る。なお、二層のメンブレンを形成するには、単一金属
膜に他の金属を蒸着する方法を用いることが可能であ
り、単一金属膜に対して後述のアトマイザーを作動さ
せ、アトマイザーの金属フィラメントから蒸発した金属
を前記単一金属膜の上流側表面に蒸着する方法も可能で
ある。
【0072】b)下流側の表面積を上流側の表面積より
も大きくする メンブレンに単一金属を使用した場合には、下流側の表
面積を上流側の表面積よりも大きくすれば、メンブレン
中に閉じ込められた水素は表面積比に応じて上流側また
は下流側からH2 になって飛び出すため、下流側表面よ
り多くのH2 が出て行くようにすることができる。表面
積を変える方法としては、例えば、下流側表面を粗く
し、上流側表面を平滑にするなどの方法を用いることが
できる。
【0073】c)上流側表面と下流側表面に異なった不
純物の表面不純物層を形成する メンブレン表面の不純物層の不純物の種類を上流側表面
と下流側表面とで変えることにより、障壁の非対称性を
設けることができる。発明者等は、Nb,Pd,および
Feによるメンブレンにおいて、不純物としてのO,
S,Se,Cが異なる再結合係数および障壁を形成し、
上記方法が可能であることを確認した。
【0074】実施の形態6.メンブレンポンプにおい
て、水素がメンブレン上流よりメンブレンに入るように
して排気を行うためには、まず、メンブレン上流に存在
する水素分子を水素原子に原子化する必要があり、以下
の方法でアトマイゼーション(原子化)を行うのがよ
い。一般的には、2000℃程度に白熱した金属フィラ
メントをアトマイザーとしてメンブレン上流に配置す
る。
【0075】(a)アトマイザーの金属フィラメントに
超透過を示す金属を用いる アトマイザーの金属フィラメントにV,Nb,Taとい
った超透過を示す金属を用いるのがよい。これは、高温
に白熱したアトマイザーから蒸発した金属はメンブレン
上流側表面に蒸着されるため、他の金属を用いると超透
過性を失うことになるためである。この場合、メンブレ
ン上流側表面の障壁が下流側表面の障壁より大きくなる
ようにアトマイザーの金属の種類を選択することも重要
である。また、メンブレンの上流側表面に、超透過性で
あっても異なる金属が蒸着されると障壁の高さに変化を
生じるため、フィラメントの金属とメンブレンの上流側
に配置される金属とを同一の金属とするのが好ましい。
前述のように、下流側の金属としての単一金属膜に対し
てアトマイザーを作動させ、アトマイザーの金属フィラ
メントから蒸発した金属を前記単一金属膜の上流側表面
に蒸着して、これを上流側金属とすれば、自動的に上記
条件は満たされる。なお、V,Nb,Taの各金属は高
融点でありアトマイザーとしての使用が可能であるが、
Vは融点が若干低いため温度を余り高く上げずに使用す
るのがよい。
【0076】(b)アトマイザーの金属フィラメントに
予めC(炭素)を注入しておく アトマイザーとして5族の金属を用いる場合には、H2
O等により金属にOが多く溶解されると、アトマイザー
としての性能が失われる。従って、Cを予めアトマイザ
ーに注入しておくと、金属中のOは炭化されCOになっ
て金属中から取り除くことができる。NbやTaにCを
注入する方法としては、例えば10-4TorrのCH4
ガス中に約1900℃の金属を10時間入れる方法が可
能である。また、アトマイザーにTaC(タンタルカー
バイド)等の炭化物を用いれば、多量のCが含まれてい
るためCを補給する必要はほとんどない。
【0077】(c)アトマイザーの金属フィラメントの
抵抗率を測定 アトマイザーの金属フィラメント中のCの濃度によって
金属フィラメントの電気抵抗率が変化する。従って、メ
ンブレンポンプの運転中に金属フィラメントの電気抵抗
率を測定して炭素濃度をモニタする炭素濃度検知手段を
設け、特定の電気抵抗率をもって炭素濃度の限界値到達
を判定するようにすれば、酸素除去効果を有する炭素の
濃度低下を容易に検知することができ、(b)に記載の
炭素を含有したアトマイザーの性能低下を容易に予測し
て対処することが可能となる。
【0078】実施の形態7.核融合装置中のダイバータ
板やリミタ板の近くの領域では、水素プラズマイオンが
ダイバータ板、リミタ板で衝突して中性化するため、中
性水素原子が多量に発生する。従って、これらの水素原
子をプラズマ真空容器近傍に設置したメンブレンにより
直接排気することが可能であり、メンブレンポンプを核
融合装置の水素排気に有効に適用することが可能であ
る。この場合には、周辺プラズマの運転状態によってメ
ンブレンの設置場所、設計を適宜調節して用いる。以下
に、核融合装置へのメンブレンポンプの適用についての
説明を行う。
【0079】(a)核融合装置中のプラズマによる大量
の水素原子の発生状況 ダイバータ板やリミタ板がタングステン,モリブデン等
の金属製の場合には、プラズマ水素イオンは中性水素原
子となってダイバータ板やリミタ板から反射する可能性
が高い。また、ダイバータ板やリミタ板がカーボン材に
よりできている場合、カーボン材の表面が約1000℃
以上になると大部分が熱的水素原子となって飛び出すよ
うになる。
【0080】このようにしてダイバータ板やリミタ板よ
り飛び出した中性水素原子は、プラズマ中に入るとプラ
ズマ中の運動エネルギーを持った水素イオンと荷電交換
を起こし、水素イオンは高い運動エネルギーを持ったま
ま中性水素原子となり、プラズマ中よりランダムな方向
に飛び出す。このようにして、中性水素原子の存在領域
は、ダイバータ板やリミタ板付近からプラズマ真空容器
の壁に沿って広がる。
【0081】また、荷電交換により発生した高い運動エ
ネルギーを持った中性水素原子により、壁に存在する水
素も水素分子や中性水素原子として叩き出され、叩き出
された水素分子がプラズマ中に入り、中性水素原子が生
成される反応が起こる。
【0082】中性水素原子はプラズマ中の電子によりイ
オン化されてプラズマ粒子にもなるが、荷電交換の確率
はイオン化の確率より高く、大量の中性水素原子が生成
されることとなる。これはプラズマ温度が10eV以下
になるとイオン化の確率が下がるため特に顕著になる。
【0083】(b)発生した水素原子が低エネルギーの
場合 例えば、ダイバータにおいて多量のプラズマ水素イオン
をリサイクルさせる低温高リサイクルダイバータ運転に
おいては、個々のプラズマ水素イオンのエネルギーは低
くなり、ダイバータ板近くの領域のプラズマ温度は10
eV以下と低い。中性水素原子のエネルギーも同様に1
0eV以下であるので、メンブレンポンプを配置した場
合にメンブレン表面の不純物層をスパッタされる心配は
ない。
【0084】(c)発生した水素原子のエネルギーが大
きい場合(10eV以上) 発生した水素原子のエネルギーが10eV以上に大きい
場合には、スパッタリングによりメンブレン表面の不純
物層が破壊されるため、実施の形態4で述べたような表
面不純物層の維持を行うとよい。あるいは、ガラス,セ
ラミック等、水素原子の再結合を防ぐ物質をコーティン
グした例えばブラインド状の水素粒子反射板をメンブレ
ンの上流側に配置し、この水素粒子反射板に何度か衝突
させることにより水素原子のエネルギーを減衰させた後
にメンブレンに入射させるようにする方法も可能であ
る。
【0085】(d)メンブレンの温度維持 プラズマからの放射熱等によるメンブレンヘの熱負荷が
大きくなるとメンブレンの温度が過剰に上昇する問題が
発生する。メンブレンの運転に適した550℃〜120
0℃程度の温度は高温でありかつメンブレンの膜厚は薄
いため熱伝導分は無視できる程度に少なく、メンブレン
の温度は外部からの熱負荷とメンブレン自身からの熱放
射量により決まる。
【0086】従って、メンブレンが受ける熱負荷が5W
/cm2 以下であれば問題ないが、それ以上では適正運
転温度を保つために冷却が必要となる。また、この熱負
荷が小さすぎると、例えば0.5W/cm2 以下である
とメンブレンに要求される最低温度の維持が困難になる
ため、熱絶縁に工夫をしたり、ヒータで加熱したりする
必要がある。従って、メンブレンが受ける熱負荷が0.
5W/cm2 以上5W/cm2 以下となる位置にメンブ
レンを配置するようにすると特段の温度維持のための手
段を講ずる必要なく運転に適したメンブレン温度に維持
することができる。
【0087】(e)メンブレン表面への多量の不純物堆
積の防止 メンブレン表面の表面不純物層は単原子層で形成される
のがよく、メンブレン表面に多量の不要な不純物が堆積
することを防止するために、例えば図5に示すようなブ
ラインド状の遮蔽部材をメンブレン上流側に配置しても
よい。図において、7はブラインド状の遮蔽部材であ
り、前出のものと同様の部分については同一符号を付し
て重複説明を省略する。図5において、ブラインド状の
遮蔽部材7に過剰なCが付着することにより過剰なCの
メンブレン1表面への堆積が有効に防止されている。
【0088】実施の形態8.磁場閉じ込め核融合装置は
最も大規模なプラズマ発生装置であり、大量な水素原子
が生成され、メンブレンポンプによる排気に適している
が、メンブレンポンプによる水素排気のために水素原子
を生成するためには、他の種々のプラズマ発生装置やプ
ラズマ発生方法を利用することが可能であり、例えば、
マイクロ波によるプラズマ発生,RF(AC)プラズマ
発生,グロー放電,電子エミッションを利用したアーク
放電等により水素原子を生成して、メンブレンポンプを
用いて排気することが可能である。なお、メンブレンポ
ンプによる排気を行うためには、発生したプラズマのエ
ネルギーが10eV程度であることが表面不純物層の維
持の観点から望ましい。
【0089】実施の形態9.これまでは水素分子は表面
不純物層に反射されるため、メンブレンの上流側におい
て水素原子化すること(アトマイゼーション)が必要と
してきたが、分子の状態を保ったままでも、分子を振動
励起分子にすれば、分子が高いエネルギー状態であるた
め、単原子層の障壁を乗り越えさせてメンブレンに入射
させることが可能である。
【0090】水素分子を振動励起状態にする振動励起手
段としては、アトマイザーと類似の金属フィラメントや
レーザー等が利用可能であり、アトマイザーと類似の金
属フィラメントをアトマイザーより低温の状態に保って
振動励起用フィラメントとしてメンブレンの上流側に配
置する方法や、レーザーにより共鳴吸収させる方法等が
可能である。これによれば、以下のような利点が得られ
る。
【0091】(a)メンブレンポンプの省電力化 水素分子を振動励起状態にすることは容易であり、分子
を振動励起状態にするために必要なエネルギーは低いた
め、アトマイゼーションと比較して、より低いエネルギ
ー供給により水素を超透過させることができ、ポンプに
必要な電力を減少させることができる。
【0092】(b)H2 ,D2 ,T2 の分離への利用 水素の分子振動の振動数およびエネルギーは、質量数の
平方根に反比例するため、重い水素の方がより容易に振
動励起することができる。従って、H2 ,D2,T2
うち重い分子のみが振動励起される最小限の励起エネル
ギーを与えるように振動励起手段を設定すれば、重い水
素分子を選択的に振動励起状態に励起して、重い水素分
子の選択的排気および分離を行うことが可能である。
【0093】実施の形態10.例えばメンブレンポンプ
を核融合装置に設置する場合には、プラズマからの放射
熱、高温ダイバータ板からの放射熱、アトマイザーを使
用した時のアトマイザーからの放射熱、また排気する粒
子のフラックスが十分に大きい場合の加熱等の自然熱源
が存在する。メンブレンポンプを設置する場所により、
メンブレンの置かれる熱的状況は異なる。
【0094】メンブレンが受ける熱フラックスが適切な
場合は、メンブレンを550℃<T<1200℃の適温
に保つための加熱冷却が不要であるが、適切でない場合
には、以下のようにして対応することが可能である。
【0095】(a)熱負荷が大きすぎる場合 熱負荷が大きすぎる場合には、例えば図6に示すよう
に、メンブレン1の下流側の表面を粗く形成し面積を大
きくして熱放射量を多くし、これに壁8を対面させてこ
の壁8を低温に保つようにすれば、下流側より熱を放散
してメンブレン1を適温に保つことができる。
【0096】また、図7は、メンブレン1を扁平な円環
状に設けて円環状のメンブレン1の円環内周部から円環
内に排気するようにした例を示す断面図であるが、円環
状のメンブレン1の内周部に、例えば図示のようなブラ
インド形状の熱シールド9(熱放射遮蔽部材)を配置す
る構成が有効である。またこの熱シールド9自体を冷却
するようにするとより有効になる。また、円環状のメン
ブレン1の対向面の一部をオープンにして放射を外に出
すようにするとさらに有効になる。
【0097】(b)熱負荷が不充分または存在しない場
合 熱負荷が少し足りない場合はメンブレンの熱絶縁を良く
して温度を高めればよい。
【0098】加熱が必要となる場合には、例えば図8に
示すように、メンブレン1をパイプ状に形成してメンブ
レンパイプ10(パイプ状のメンブレン)とし、このメ
ンブレンパイプ10の外部から内部に排気するようにす
る構成が有効である。図8においては、メンブレン1に
より排気された水素をメンブレンパイプ10の両端から
真空ポンプ4により排出しており、また、直流電源11
(通電手段)によりメンブレンパイプ10に長手方向の
通電を行っている。これにより、メンブレンパイプ10
はジュール加熱され、温度低下が防止される。この場
合、メンブレンパイプ10におけるメンブレン1の厚み
は0.1mm〜1mm程度であるので充分に強度があ
り、しかも電気抵抗の大きなものとなるので、有効に加
熱が行われ、メンブレン1の温度を適温に上昇させて維
持することができる。また、メンブレンパイプ10は任
意な形状にして取り回すことが容易であり、メンブレン
ポンプ設置の際の自由度を大きく取ることが可能であ
る。なお、通電手段としては温度を検知して通電のON
・OFFを行うものを設置することもでき、また、電流
は直流に限らず、交流で通電させるものとしてもよい。
【0099】
【発明の効果】以上のように、請求項1記載の発明によ
れば、メンブレンの材料として、V,Nb,Ta,F
e,Ni,Pdのうちから選択される金属を使用し、か
つ、前記メンブレンの表面に、O,C,S,Se,Te
等に代表される元素のうちから選択される元素からなる
表面不純物層を形成するように構成したので、メンブレ
ン中の水素原子の拡散係数および溶解度を大きくして水
素原子を容易に下流側に到達させることができるととも
に、メンブレン表面に適度な障壁を良好に形成すること
ができ、これらを組み合わせた結果良好な超透過性を発
揮させることが可能となり、希薄な水素気体やその同位
体ガスの排気に際して効率的な排気を行うことが可能な
メンブレンポンプを得ることができ、金属の基本的な性
質を利用した安価な排気システムを構築することが可能
となる効果がある。
【0100】請求項2記載の発明によれば、メンブレン
の材料として、V,Nb,Taのうちから選択される金
属を使用するように構成したので、メンブレン中の水素
原子の拡散係数および溶解度を特に大きくして特に良好
な超透過性を発揮させることが可能となる効果がある。
また、これらの金属は高融点であるため同一金属をアト
マイザーとしても使用することができ、この場合アトマ
イザーの金属がメンブレン上流側表面に蒸着しても上流
側表面の障壁を変化させず安定して超透過性を持続する
ことができる効果がある。
【0101】請求項3記載の発明によれば、メンブレン
の厚さを0.1mm〜1mmの間の厚さにするように構
成したので、メンブレン中の水素原子密度を大きくして
十分な排気量の水素排気を行うことができる効果があ
る。
【0102】請求項4記載の発明によれば、メンブレン
の上流側表面の再結合係数を下流側表面の再結合係数よ
り低くするように構成したので、メンブレン上流から入
射してメンブレン中に閉じ込められた水素原子が最終的
に下流側より水素分子として飛び出す確率を上流側より
水素分子として飛び出す確率より高くして、メンブレン
に超透過性を持たせることができる効果がある。
【0103】請求項5記載の発明によれば、メンブレン
の上流側と下流側に異なる金属を用いるように構成した
ので、メンブレンの上流側表面と下流側表面との障壁お
よび再結合係数の非対称性を持たせることができ、メン
ブレンに超透過性を持たせることが可能となる効果があ
る。
【0104】請求項6記載の発明によれば、メンブレン
の上流側にTa、下流側にNbを用いるように構成した
ので、メンブレンの上流側表面を下流側表面と比較して
高障壁,低再結合係数とすることができ、メンブレンに
超透過性を持たせることができる効果がある。
【0105】請求項7記載の発明によれば、メンブレン
の上流側にNb、下流側にPdを用いるように構成した
ので、メンブレンの上流側表面を下流側表面と比較して
高障壁,低再結合係数とすることができ、メンブレンに
超透過性を持たせることができる効果がある。
【0106】請求項8記載の発明によれば、メンブレン
の上流側表面と下流側表面に異なる不純物による表面不
純物層を形成するように構成したので、メンブレンの上
流側表面と下流側表面との障壁および再結合係数の非対
称性を持たせることができ、メンブレンに超透過性を持
たせることが可能となる効果がある。
【0107】請求項9記載の発明によれば、メンブレン
の下流側表面の表面積が上流側表面の表面積より大きく
なるように構成したので、メンブレン中に閉じ込められ
た水素を表面積の大きい下流側から放出されやすくし
て、メンブレンに超透過性を持たせることができる効果
がある。
【0108】請求項10記載の発明によれば、メンブレ
ンの下流側表面を上流側表面より粗く形成するように構
成したので、メンブレンの下流側表面の表面積を上流側
表面の表面積よりも大きくすることができ、メンブレン
中に閉じ込められた水素を表面積の大きい下流側から放
出されやすくしてメンブレンに超透過性を持たせること
ができる効果がある。
【0109】請求項11記載の発明によれば、メンブレ
ンの上流側に、前記メンブレンに到達する過剰の不純物
吸着用のブラインド状の遮蔽部材を設けるように構成し
たので、メンブレンの上流側表面の過剰な不純物堆積に
よる上流側表面における障壁の異常や水素入射の阻害等
を防止して、超透過を有効に維持することができる効果
がある。
【0110】請求項12記載の発明によれば、2000
℃程度に温度上昇する金属フィラメントよりなりメンブ
レンの上流に配置されて前記メンブレンに入射する水素
を原子化するアトマイザーとして、V,Nb,Taのう
ちのいずれかにより形成したアトマイザーを備えるよう
に構成したので、融点の高いV,Nb,Taのうちのい
ずれかにより形成したアトマイザーによりメンブレン上
流において水素を原子化してメンブレンに入射させて超
透過による排気を行うことができるとともに、高温のア
トマイザーから蒸発した金属がメンブレン表面に蒸着さ
れた場合にメンブレンが超透過性を失わないようにする
ことができる効果がある。
【0111】請求項13記載の発明によれば、アトマイ
ザーの金属フィラメントに用いる金属とメンブレンの上
流側に用いる金属とを同一の金属とするように構成した
ので、高温のアトマイザーから蒸発した金属がメンブレ
ン表面に蒸着された場合に、メンブレンが超透過性を失
わないようにすることができるとともに、上流側表面の
障壁を変化させずほぼ一定に保つことができる効果があ
る。
【0112】請求項14記載の発明によれば、メンブレ
ンの下流側に用いる金属上に、これと異なる金属により
形成したアトマイザーの金属フィラメントより蒸発した
金属を蒸着することにより前記メンブレンの上流側に用
いる金属を形成するように構成したので、容易に二層の
メンブレンを形成してメンブレンの上流側表面と下流側
表面との障壁および再結合係数の非対称性を持たせるこ
とができ、メンブレンに超透過性を持たせることが可能
となるとともに、自動的にアトマイザーの金属とメンブ
レン上流側の金属とが同一の金属となるため、運転中に
高温のアトマイザーから蒸発した金属がメンブレン表面
に蒸着されても上流側表面の障壁を変化させずほぼ一定
に保つことができる効果がある。
【0113】請求項15記載の発明によれば、アトマイ
ザーの金属フィラメントに炭素を含有させるように構成
したので、メンブレンの表面不純物層として酸素を使用
した場合等に、金属フィラメントに大量に溶け込むとア
トマイザーとしての性能を低下させる酸素を炭化してC
Oとして放出させて金属中から取り除き、アトマイザー
を長寿命化することができる効果がある。
【0114】請求項16記載の発明によれば、アトマイ
ザーの金属フィラメントを10-4Torr程度の圧力の
CH4 ガス中に1900℃程度の温度に保って10時間
程度放置して炭素を注入するように構成したので、アト
マイザーの金属フィラメントに炭素を十分な量含有させ
ることができ、酸素の蓄積を防止してアトマイザーを長
寿命化することができる効果がある。
【0115】請求項17記載の発明によれば、アトマイ
ザーの金属フィラメントを5族の金属の炭化物により形
成するように構成したので、特に金属フィラメントに炭
素を注入する処理を必要とせずに金属フィラメント中に
十分に含まれる炭素により酸素の蓄積を防止してアトマ
イザーを長寿命化することができる効果がある。
【0116】請求項18記載の発明によれば、アトマイ
ザーの電気抵抗率を測定することによりアトマイザー中
に残留する炭素濃度を検知する炭素濃度検知手段を備え
るように構成したので、電気抵抗率の測定により酸素除
去効果を有する炭素の濃度低下を容易に検知して、アト
マイザーの性能低下を容易に予測して対処することが可
能となる効果がある。
【0117】請求項19記載の発明によれば、RF電
場,グロー放電,アーク放電等の方法によりプラズマを
発生するプラズマ発生装置におけるプラズマを利用し
て、メンブレンの上流における水素の原子化を行うよう
に構成したので、特にアトマイザーを必要とせずにプラ
ズマの存在により原子化された水素を、メンブレンに入
射させて超透過による排気を行うことができる効果があ
る。
【0118】請求項20記載の発明によれば、核融合装
置におけるプラズマを利用して、メンブレンの上流にお
ける水素の原子化を行い、前記核融合装置からの水素排
気を行うように構成したので、核融合装置中のプラズマ
により原子化された水素を、特にアトマイザーを必要と
せずにそのままメンブレンに入射させることができ、核
融合装置中の水素を超透過により有効に排気することが
できる効果がある。
【0119】請求項21記載の発明によれば、ガラス,
セラミック等の水素原子を再分子化させにくい物質をコ
ーティングした水素粒子反射板をメンブレン上流に配置
して、高速水素粒子を前記水素粒子反射板により反射さ
せてエネルギーを減衰させた後前記メンブレンに入射さ
せるように構成したので、高速水素粒子のスパッタリン
グによるメンブレンの表面不純物層の破壊を抑えて表面
不純物層を維持し、超透過を長期間継続させることがで
きる効果がある。
【0120】請求項22記載の発明によれば、水素分子
をメンブレン上流において振動励起状態にする振動励起
手段を備えるように構成したので、水素を分子状態のま
ま、高いエネルギー状態の振動励起分子としてメンブレ
ン表面の障壁を乗り越えさせてメンブレンに入射させる
ことが可能となり、アトマイゼーションと比較してより
低エネルギーの供給により水素を超透過させることがで
き、ポンプに必要な電力を減少させることができる効果
がある。また、水素の分子振動の振動数およびエネルギ
ーは質量数の平方根に反比例し、重い水素分子の方がよ
り容易に振動励起することができるため、水素同位体の
分子の中から重い分子を選択的に振動励起状態に励起し
て重い水素分子の選択的排気を行うことができる効果が
ある。
【0121】請求項23記載の発明によれば、アトマイ
ザーより低い温度に温度設定されメンブレンに入射する
水素分子を振動励起状態に励起する、前記メンブレンの
上流側金属と同一の金属よりなる振動励起用フィラメン
トを前記メンブレンの上流に配置するように構成したの
で、振動励起用フィラメントを設置する単純な構成によ
り水素分子を振動励起状態に励起して超透過による排気
を行うことが可能となるとともに、振動励起用フィラメ
ントからの蒸発物によるメンブレンの超透過性の低下や
障壁の変化を防止することができる効果がある。
【0122】請求項24記載の発明によれば、水素の同
位体よりなる水素分子のうち重い水素分子の振動励起に
必要な最小限の励起エネルギーを与えるように振動励起
手段を設定するように構成したので、水素の同位体より
なる水素分子のうち、重い水素分子のみを選択的に振動
励起状態に励起して排気・分離することができ、例え
ば、核融合装置からの排気において、核融合装置内から
除去したいT2 のみを排気して除去する等のことが可能
となる効果がある。
【0123】請求項25記載の発明によれば、メンブレ
ンが受ける熱負荷が0.5W/cm2 〜5W/cm2
なる位置にメンブレンを配置するように構成したので、
特段の温度維持のための手段を講ずる必要なく運転に適
した温度にメンブレンを維持することができる効果があ
る。
【0124】請求項26記載の発明によれば、メンブレ
ンの下流側表面を上流側表面より粗く形成し、前記下流
側表面に対面して低温に保たれる壁を設けるように構成
したので、メンブレンが受ける熱負荷が大きい場合にメ
ンブレンの下流側表面からの熱放射を多くしてメンブレ
ンの過剰な温度上昇を防止し、運転に適した温度にメン
ブレンを維持することができる効果がある。
【0125】請求項27記載の発明によれば、メンブレ
ンの上流側表面付近に前記メンブレンが受ける熱放射を
遮蔽する熱放射遮蔽部材を設けるように構成したので、
メンブレンが吸収する熱放射を熱放射遮蔽部材により制
限してメンブレンの過剰な温度上昇を防止し、運転に適
した温度にメンブレンを維持することができる効果があ
る。
【0126】請求項28記載の発明によれば、メンブレ
ンをパイプ状に形成し、該パイプ状のメンブレンの外側
の水素を内側に排気するように構成したので、パイプ状
のメンブレンの末端に通常の真空ポンプを接続して水素
を排出するような簡単な構成により水素を有効に排気す
ることができるとともに、メンブレンポンプの設置場所
の状況に応じてパイプ状のメンブレンを容易に任意な形
状にして取り回すことが可能であり、メンブレンポンプ
設置の際の自由度を大きく取ることができる効果があ
る。
【0127】請求項29記載の発明によれば、パイプ状
のメンブレンのパイプ長手方向に通電してジュール加熱
により前記メンブレンを昇温させる通電手段を備えるよ
うに構成したので、メンブレンが受ける熱負荷が小さい
場合にメンブレンの温度を通電手段による通電により適
宜上昇させることができ、メンブレンを容易に運転に適
した温度に維持することができる効果がある。
【0128】請求項30記載の発明によれば、メンブレ
ンの温度を300℃〜1200℃に保って運転するよう
に構成したので、メンブレン中の水素原子の拡散係数を
大きく保って水素原子の下流側表面への到達を容易に
し、かつ、上流側表面から入射した水素原子の上流側表
面からの再放出を抑制することができ、これによりメン
ブレンに良好な超透過性を発揮させ、メンブレンポンプ
による有効な排気を行うことができる効果がある。
【0129】請求項31記載の発明によれば、表面不純
物層として酸素を使用する場合、運転中のメンブレンの
温度を550℃〜1200℃に保つように構成したの
で、メンブレン表面の過剰な不純物をメンブレン金属中
に溶解させてメンブレン表面を単原子層の表面不純物層
が形成された状態にすることができ、高速粒子によるス
パッタリング等により単原子層の表面不純物層が破壊さ
れた場合も溶解不純物の表面偏析により自動的に補修が
行われるようにして単原子層の表面不純物層を維持する
ことができる。これによりメンブレン表面に適切な障壁
を維持してメンブレンに良好な超透過性を発揮させ、メ
ンブレンポンプによる有効な排気を行うことができる効
果がある。
【0130】請求項32記載の発明によれば、メンブレ
ンに表面不純物層を形成しうるO2,H2 O,CO,C2
2 ,H2 S等に代表される化合物のうちから選択さ
れる化学的活性ガスを、前記メンブレンに入射する水素
により表面不純物層がスパッタされて破壊されるスパッ
タレートに応じた圧力で前記メンブレンの上流側に導入
して前記メンブレンの上流側表面に表面不純物層を逐次
形成させることにより、運転中の前記上流側表面の単原
子層の表面不純物層を維持するように構成したので、高
エネルギー水素粒子が高いフラックス量で入射する場所
に設置されるメンブレンポンプの場合においてもメンブ
レン表面に適切な障壁を維持することができ、メンブレ
ンに良好な超透過性を持続的に発揮させ、メンブレンポ
ンプによる有効な排気を連続して行うことができる効果
がある。
【0131】請求項33記載の発明によれば、運転前に
メンブレンの下流側表面を超高真空下での加熱等により
清浄にし、運転中は前記メンブレンの下流側を10-9
orr以下の圧力に保つように構成したので、メンブレ
ン下流側表面の障壁が上流側表面の障壁より低い非対称
性を維持することができ、例えば、高速水素粒子のスパ
ッタリング等により上流側の不純物層による障壁の高さ
の維持が困難な場合においても超透過を維持することが
できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 メンブレンにおける水素の透過に関する各量
を示す説明図である。
【図2】 この発明の実施の形態4によるメンブレンポ
ンプの概略構成を示す説明図である。
【図3】 この発明の実施の形態4によるメンブレンポ
ンプの一運転例を示すグラフ図である。
【図4】 この発明の実施の形態4によるメンブレンポ
ンプの他の運転例を示すグラフ図である。
【図5】 この発明の実施の形態7によるメンブレンポ
ンプの概略構成を示す説明図である。
【図6】 この発明の実施の形態10によるメンブレン
ポンプの概略構成を示す説明図である。
【図7】 この発明の実施の形態10による熱放射遮蔽
部材を備えたメンブレンポンプの概略構成を示す説明図
である。
【図8】 この発明の実施の形態10による通電手段を
備えたメンブレンポンプの概略構成を示す説明図であ
る。
【符号の説明】
1 メンブレン、7 遮蔽部材、8 壁、9 熱シール
ド(熱放射遮蔽部材)、10 メンブレンパイプ(パイ
プ状のメンブレン)、11 直流電源(通電手段)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 本島 修 岐阜県多治見市広小路3−58−1 カーネ ギー多治見1001 (72)発明者 アレキサンダ・リブシッツ ロシア連邦共和国 サンクトペテルスブル グ 195426 アパートメント 391 ブロ ック1・8・カザンスカヤ (72)発明者 ミハイル・ノトキン ロシア連邦共和国 サンクトペテルスブル グ 196142 アパートメント 86 レンソ ヴェタ・ストリート 20 (72)発明者 アンドレ・サマルチェフ ロシア連邦共和国 サンクトペテルスブル グ 199053 アパートメント 37 シィヤ ドブスカヤ・ライン 7 (72)発明者 アンドレ・ブスニューク ロシア連邦共和国 サンクトペテルスブル グ 193131 アパートメント 25 クラス ヌク・ゾリ・ブルバード 11

Claims (33)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 超透過性金属膜よりなるメンブレンを用
    いて前記メンブレン上流の水素の前記メンブレン下流へ
    の排気を行うメンブレンポンプにおいて、前記メンブレ
    ンの材料として、V,Nb,Ta,Fe,Ni,Pdの
    うちから選択される金属を使用し、かつ、前記メンブレ
    ンの表面に、O,C,S,Se,Te等に代表される元
    素のうちから選択される元素からなる表面不純物層を形
    成したことを特徴とするメンブレンポンプ。
  2. 【請求項2】 メンブレンの材料として、V,Nb,T
    aのうちから選択される金属を使用したことを特徴とす
    る請求項1記載のメンブレンポンプ。
  3. 【請求項3】 メンブレンの厚さを0.1mm〜1mm
    の間の厚さにしたことを特徴とする請求項1または請求
    項2記載のメンブレンポンプ。
  4. 【請求項4】 メンブレンの上流側表面の再結合係数を
    下流側表面の再結合係数より低くしたことを特徴とする
    請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のメン
    ブレンポンプ。
  5. 【請求項5】 メンブレンの上流側と下流側に異なる金
    属を用いたことを特徴とする請求項4記載のメンブレン
    ポンプ。
  6. 【請求項6】 上流側にTa、下流側にNbを用いたこ
    とを特徴とする請求項5記載のメンブレンポンプ。
  7. 【請求項7】 上流側にNb、下流側にPdを用いたこ
    とを特徴とする請求項6記載のメンブレンポンプ。
  8. 【請求項8】 メンブレンの上流側表面と下流側表面に
    異なる不純物による表面不純物層を形成したことを特徴
    とする請求項4記載のメンブレンポンプ。
  9. 【請求項9】 メンブレンの下流側表面の表面積を上流
    側表面の表面積より大きくしたことを特徴とする請求項
    1から請求項8のうちのいずれか1項記載のメンブレン
    ポンプ。
  10. 【請求項10】 メンブレンの下流側表面を上流側表面
    より粗く形成したことを特徴とする請求項9記載のメン
    ブレンポンプ。
  11. 【請求項11】 メンブレンの上流側に、前記メンブレ
    ンに到達する過剰の不純物を吸着するブラインド状の遮
    蔽部材を設けたことを特徴とする請求項1から請求項1
    0のうちのいずれか1項記載のメンブレンポンプ。
  12. 【請求項12】 2000℃程度に温度上昇する金属フ
    ィラメントよりなりメンブレンの上流に配置されて前記
    メンブレンに入射する水素を原子化するアトマイザーと
    して、V,Nb,Taのうちのいずれかにより形成した
    アトマイザーを備えたことを特徴とする請求項1から請
    求項11のうちのいずれか1項記載のメンブレンポン
    プ。
  13. 【請求項13】 アトマイザーの金属フィラメントに用
    いる金属とメンブレンの上流側に用いる金属とを同一の
    金属としたことを特徴とする請求項12記載のメンブレ
    ンポンプ。
  14. 【請求項14】 メンブレンの下流側に用いる金属上
    に、これと異なる金属により形成したアトマイザーの金
    属フィラメントより蒸発した金属を蒸着することにより
    前記メンブレンの上流側に用いる金属を形成したことを
    特徴とする請求項13記載のメンブレンポンプ。
  15. 【請求項15】 アトマイザーの金属フィラメントに炭
    素を含有させたことを特徴とする請求項12から請求項
    14のうちのいずれか1項記載のメンブレンポンプ。
  16. 【請求項16】 アトマイザーの金属フィラメントを1
    -4Torr程度の圧力のCH4 ガス中に1900℃程
    度の温度に保って10時間程度放置して炭素を注入した
    ことを特徴とする請求項15記載のメンブレンポンプ。
  17. 【請求項17】 アトマイザーの金属フィラメントを5
    族の金属の炭化物により形成したことを特徴とする請求
    項15記載のメンブレンポンプ。
  18. 【請求項18】 アトマイザーの電気抵抗率を測定する
    ことによりアトマイザー中に残留する炭素濃度を検知す
    る炭素濃度検知手段を備えたことを特徴とする請求項1
    5または請求項16記載のメンブレンポンプ。
  19. 【請求項19】 RF電場,グロー放電,アーク放電等
    の方法によりプラズマを発生するプラズマ発生装置にお
    けるプラズマを利用して、メンブレンの上流における水
    素の原子化を行うことを特徴とする請求項1から請求項
    11のうちのいずれか1項記載のメンブレンポンプ。
  20. 【請求項20】 核融合装置におけるプラズマを利用し
    て、メンブレンの上流における水素の原子化を行い、前
    記核融合装置からの水素排気を行うことを特徴とする請
    求項19記載のメンブレンポンプ。
  21. 【請求項21】 ガラス,セラミック等の水素原子を再
    分子化させにくい物質をコーティングした水素粒子反射
    板をメンブレン上流に配置して、高速水素粒子を前記水
    素粒子反射板により反射させてエネルギーを減衰させた
    後前記メンブレンに入射させるようにしたことを特徴と
    する請求項19記載のメンブレンポンプ。
  22. 【請求項22】 水素分子をメンブレン上流において振
    動励起状態にする振動励起手段を備えたことを特徴とす
    る請求項1から請求項11のうちのいずれか1項記載の
    メンブレンポンプ。
  23. 【請求項23】 アトマイザーより低い温度に温度設定
    されメンブレンに入射する水素分子を振動励起状態に励
    起する、前記メンブレンの上流側金属と同一の金属より
    なる振動励起用フィラメントを前記メンブレンの上流に
    配置したことを特徴とする請求項22記載のメンブレン
    ポンプ。
  24. 【請求項24】 水素の同位体よりなる水素分子のうち
    重い水素分子の振動励起に必要な最小限の励起エネルギ
    ーを与えるように振動励起手段を設定したことを特徴と
    する請求項22または請求項23記載のメンブレンポン
    プ。
  25. 【請求項25】 メンブレンが受ける熱負荷が0.5W
    /cm2 〜5W/cm2 になる位置にメンブレンを配置
    したことを特徴とする請求項1から請求項24のうちの
    いずれか1項記載のメンブレンポンプ。
  26. 【請求項26】 メンブレンの下流側表面を上流側表面
    より粗く形成し、前記下流側表面に対面して低温に保た
    れる壁を設けたことを特徴とする請求項1から請求項2
    4のうちのいずれか1項記載のメンブレンポンプ。
  27. 【請求項27】 メンブレンの上流側表面付近に前記メ
    ンブレンが受ける熱放射を遮蔽する熱放射遮蔽部材を設
    けたことを特徴とする請求項1から請求項24または請
    求項26のうちのいずれか1項記載のメンブレンポン
    プ。
  28. 【請求項28】 メンブレンをパイプ状に形成し、該パ
    イプ状のメンブレンの外側の水素を内側に排気するよう
    にしたことを特徴とする請求項1から請求項25または
    請求項27のうちのいずれか1項記載のメンブレンポン
    プ。
  29. 【請求項29】 パイプ状のメンブレンのパイプ長手方
    向に通電してジュール加熱により前記メンブレンを昇温
    させる通電手段を備えたことを特徴とする請求項28記
    載のメンブレンポンプ。
  30. 【請求項30】 超透過性金属膜よりなるメンブレンを
    用いて前記メンブレン上流の水素の前記メンブレン下流
    への排気を行うメンブレンポンプの運転方法において、
    メンブレンの温度を300℃〜1200℃に保って運転
    することを特徴とするメンブレンポンプの運転方法。
  31. 【請求項31】 表面不純物層として酸素を使用する場
    合、運転中のメンブレンの温度を550℃〜1200℃
    に保つことを特徴とする請求項30記載のメンブレンポ
    ンプの運転方法。
  32. 【請求項32】 メンブレンに表面不純物層を形成しう
    るO2 ,H2 O,CO,C22 ,H2 S等に代表され
    る化合物のうちから選択される化学的活性ガスを、前記
    メンブレンに入射する水素により表面不純物層がスパッ
    タされて破壊されるスパッタレートに応じた圧力で前記
    メンブレンの上流側に導入して前記メンブレンの上流側
    表面に表面不純物層を逐次形成させることにより、運転
    中の前記上流側表面の単原子層の表面不純物層を維持す
    ることを特徴とする請求項31記載のメンブレンポンプ
    の運転方法。
  33. 【請求項33】 運転前にメンブレンの下流側表面を超
    高真空下での加熱等により清浄にし、運転中は前記メン
    ブレンの下流側を10-9Torr以下の圧力に保つこと
    を特徴とする請求項31記載のメンブレンポンプの運転
    方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20180131673A (ko) * 2017-05-30 2018-12-11 현대건설주식회사 교대교차 운전제어 방식의 막결합형 유기성 폐기물 처리장치 및 운전방법

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