JPH09158186A - 切土のり面の崩壊形態の判別方法と切土のり面の深層崩壊限界雨量の予測方法 - Google Patents

切土のり面の崩壊形態の判別方法と切土のり面の深層崩壊限界雨量の予測方法

Info

Publication number
JPH09158186A
JPH09158186A JP32539995A JP32539995A JPH09158186A JP H09158186 A JPH09158186 A JP H09158186A JP 32539995 A JP32539995 A JP 32539995A JP 32539995 A JP32539995 A JP 32539995A JP H09158186 A JPH09158186 A JP H09158186A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rainfall
collapse
cut slope
cut
slope
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP32539995A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2999702B2 (ja
Inventor
Tomoyasu Sugiyama
友康 杉山
Katsuya Okada
勝也 岡田
Tatsuo Noguchi
達雄 野口
Takashi Muraishi
尚 村石
Masahiko Samizo
昌彦 佐溝
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Railway Technical Research Institute
Original Assignee
Railway Technical Research Institute
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Railway Technical Research Institute filed Critical Railway Technical Research Institute
Priority to JP32539995A priority Critical patent/JP2999702B2/ja
Publication of JPH09158186A publication Critical patent/JPH09158186A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2999702B2 publication Critical patent/JP2999702B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Pit Excavations, Shoring, Fill Or Stabilisation Of Slopes (AREA)
  • Testing Or Calibration Of Command Recording Devices (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明の切土のり面の崩壊形態の判別方法
は、降雨によって崩壊のおそれのある切土のり面の崩壊
形態をあらかじめ判別できる切土のり面の崩壊形態の判
別方法を提供する。 【解決手段】 本発明の切土のり面の崩壊形態の判別方
法は、構造条件, 土質・地質条件, 集水条件を判別式に
代入して崩壊形態判別得点を求めてその崩壊形態判別得
点から深層崩壊, 表層崩壊または深層崩壊, 表層崩壊の
いずれが発生するかを判別することを特徴とする。 【効果】本発明の切土のり面の崩壊形態の判別方法によ
れば、降雨によって崩壊のおそれのある切土のり面を深
層崩壊が発生するか表層崩壊が発生するかを定量的に判
別できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は降雨によって崩壊の
おそれのある切土のり面の崩壊形態を判別する方法と深
層崩壊が発生する場合の限界雨量を予測する方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】鉄道沿線の切土のり面は降雨によって崩
壊することがあり、これが列車の安定・安全輸送を阻害
する。このような災害を防止するためには危険個所の抽
出と危険個所の防災対策を適切に実施することが必要で
あり、これとともに鉄道沿線の崩壊の実態に見合った適
切な運転規制が必要となる。このため、鉄道の構造物を
保守する技術者にとっては降雨による切土のり面の崩壊
の危険性を精度よく予知でき、現場の技術者でも容易に
崩壊形態と、これに見合った危険度評価ができる予測方
法が必要である。従来より、鉄道における切土のり面の
崩壊に関する危険度評価は判別解析によって得た結果で
その耐雨量を24時間雨量で示すようになっている。す
なわち、危険個所の切土のり面の評価はのり面の採点表
を用いて、表層土の土質, 高さ,勾配, 集水条件により
採点を行い、これを耐雨量として日雨量(24時間雨
量)でもって評価するようにしている。一方、降雨時の
列車の徐行や停止を行う運転規制では、過去の降雨災害
を受けた雨量から1時間当たりの雨量と降り始めからの
総雨量を経験的に決める方法が使用されている。
【0003】しかしながら、前記した従来の鉄道におけ
る切土のり面の崩壊に関する危険度評価方法では、崩壊
形態に見合った危険度評価ができないこと、外観的な素
因で決定されること、地域の特性を考慮しない全国一律
な基準であることから評価精度に問題があった。また、
危険度評価の雨量と運転規制の雨量とが直接関連つけら
れていないため、危険度評価の雨量と運転規制の雨量と
が別の指標となっているといった欠点があった。このよ
うな状況に鑑みて、降雨によって崩壊のおそれのある切
土のり面の崩壊形態を判別する方法と崩壊形態別に崩壊
限界雨量を高い精度で予測する方法の開発が要請されて
いる。
【0004】以前、盛土の崩壊限界雨量を求める方法に
ついては特開平5−323043号に示されているよう
な盛土の崩壊限界雨量の予測方法が開発されている。し
かし、盛土の崩壊限界雨量は予測の対象となる盛土が存
在する地域における24時間以内の単位時間当たりの最
大降雨量である時間雨量と降雨開始から累積された降雨
量である連続雨量とが同じ重みを持つ指標の積で求めら
れるが、切土のり面の崩壊限界雨量は深層崩壊する場合
には連続雨量に大きく左右され,表層崩壊する場合には
時間雨量に大きく左右される。したがって、切土のり面
の崩壊限界雨量を求めるには、盛土の崩壊限界雨量を求
める方法とは異なり崩壊形態別に崩壊限界雨量を求める
方法が必要である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術によれば、
降雨によって崩壊のおそれのある切土のり面の崩壊形態
が判別できないという問題点があった。また、切土のり
面の崩壊限界雨量を精度よく予測できないという問題点
があった。本発明は前記のような問題点を解決するため
になされた発明で、降雨によって崩壊のおそれのある切
土のり面の崩壊形態をあらかじめ判別できる切土のり面
の崩壊形態の判別方法を提供する。また、切土のり面の
崩壊形態別に崩壊限界雨量を精度よく予測できる切土の
り面の深層崩壊限界雨量の予測方法を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1におけ
る切土のり面の崩壊形態の判別方法は、構造条件, 土質
・地質条件, 集水条件を判別式に代入して崩壊形態判別
得点を求めてその崩壊形態判別得点から深層崩壊, 表層
崩壊または深層崩壊, 表層崩壊のいずれが発生するかを
判別することを特徴とする。本発明の請求項2における
切土のり面の崩壊形態の判別方法は、請求項1におい
て、構造条件として切土高さを用いて, 土質・地質条件
として表層土厚さを用いて, 集水条件として切土のり面
上部の地形を用いたことを特徴とする。本発明の請求項
3における切土のり面の崩壊形態の判別方法は、請求項
1または請求項2において、判別式が(崩壊形態判別得
点)=(切土高さに対する係数)×(切土高さ)+(表
層土厚さに対する係数)×(表層土厚さ)+(切土のり
面上部の地形に対する係数)×(切土のり面上部の地
形)+(定数項)であることを特徴とする。本発明の請
求項4における切土のり面の崩壊形態の判別方法は、請
求項1または請求項2または請求項3において、崩壊形
態判別得点が−1未満のときは深層崩壊が発生すると判
別し、崩壊形態判別得点が−1以上1以下のときは深層
崩壊または表層崩壊が発生すると判別し、崩壊形態判別
得点が1を超えるときは表層崩壊が発生すると判別する
ことを特徴とする。
【0007】本発明の請求項5における切土のり面の深
層崩壊限界雨量の予測方法は、切土のり面の深層崩壊に
対する基本点と切土のり面勾配の評価点, 切土高さの評
価点と表層土厚さの評価点, 切土のり面の貫入強度の評
価点, 基盤硬度の評価点と切土のり面上部の地形の評価
点と年平均雨量の評価点とを加算して総合評価点を求め
て、その総合評価点から予測の対象となる切土のり面が
存在する地域における12時間以内の単位時間当たりの
最大降雨量である時間雨量と降雨開始から累積された降
雨量である連続雨量とを求めて、その時間雨量とその連
続雨量とから切土のり面の深層崩壊限界雨量を予測する
ことを特徴とする。
【0008】本発明の切土のり面の崩壊形態の判別方法
によれば、降雨によって崩壊のおそれのある切土のり面
について、その切土のり面の構造条件, 土質・地質条
件, 集水条件を用いて崩壊形態判別得点を求めてその崩
壊形態判別得点から崩壊形態を判別しているので、深層
崩壊が発生するか表層崩壊が発生するかを定量的に判別
できる。本発明の切土のり面の深層崩壊限界雨量の予測
方法によれば、切土のり面の崩壊形態を判別したうえで
崩壊限界雨量を予測しているので、崩壊形態に見合った
崩壊限界雨量を高い精度で予測できる。また、崩壊形態
に見合った崩壊限界雨量を精度よく予測できるので、崩
壊限界雨量を運転規制の雨量の指標として適用できる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明における切土のり面の崩壊
形態の判別方法について説明する。降雨によって崩壊の
おそれのある切土のり面において、構造条件として用い
る切土高さをH, 土質・地質条件として用いる表層土厚
さをDS , 集水条件として用いる切土のり面上部の地形
をWG , 判別の基準となる崩壊形態判別得点をZとする
と、判別式は式(1)になる。ただし、切土高さと表層
土厚さはメートル単位とし、切土のり面上部の地形は図
1のように集水地形を1, 等価流入地形を2, 平坦地形
を3, 非集水地形を4とする。 Z=−0.115H−2.992DS +0.666WG +4.001…(1) この結果から、Z<−1の範囲のときは深層崩壊, −1
≦Z≦1の範囲のときは深層崩壊または表層崩壊, 1<
Zの範囲のときは表層崩壊が発生すると判別する。
【0010】本発明における切土のり面の深層崩壊限界
雨量の予測方法について説明する。深層崩壊が発生する
と判別された切土のり面において、表1により切土のり
面の深層崩壊に対する基本点と切土のり面勾配の評価
点, 切土高さの評価点と表層土厚さの評価点, 切土のり
面の貫入強度の評価点, 基盤硬度の評価点と切土のり面
上部の地形の評価点と年平均雨量の評価点とを加算して
総合評価点を求める。切土のり面が存在する地域におけ
る12時間以内の単位時間当たりの最大降雨量である時
間雨量をr, 降雨開始から累積された降雨量である連続
雨量をR, 総合評価点をSとすると、rn ・Rm =Sに
なる。ここで、切土のり面の深層崩壊限界雨量はn=
0.2, m=0.4として、式(2)で求められる。 r0.2 ・R0.4 =S …(2) このとき、図2のように時間雨量を縦軸,連続雨量を横
軸としてグラフを描くと、深層崩壊限界雨量は非線型の
曲線(深層崩壊限界雨量曲線)で示される。降雨が観測
された場合には、このグラフ上に、連続雨量に対応する
時間雨量をプロットする。その結果から、このプロット
した点の軌跡が深層崩壊限界雨量曲線に達する場合には
切土のり面の深層崩壊が発生すると予測できる。そし
て、降雨によって崩壊のおそれのある切土のり面が崩壊
すると予測された場合には、該当する区間の列車の運転
規制を行う。
【0011】
【表1】
【0012】同様に、切土のり面の表層崩壊限界雨量の
予測方法について説明する。表層崩壊が発生すると判別
された切土のり面において、表2により切土のり面の表
層崩壊に対する基本点と切土のり面勾配の評価点と表層
土の土質の評価点,切土のり面の貫入強度の評価点, 基
盤の岩種の評価点と切土のり面上部の地形の評価点と年
平均雨量の評価点とを加算して総合評価点を求める。切
土のり面が存在する地域における12時間以内の単位時
間当たりの最大降雨量である時間雨量をr, 降雨開始か
ら累積された降雨量である連続雨量をR, 総合評価点を
Sとすると、rn ・Rm =Sになる。ここで、切土のり
面の表層崩壊限界雨量はn=0.9, m=0.2とし
て、式(3)で求められる。 r0.9 ・R0.2 =S …(3) このとき、図3のように時間雨量を縦軸,連続雨量を横
軸としてグラフを描くと、表層崩壊限界雨量は非線型の
曲線(表層崩壊限界雨量曲線)で示される。降雨が観測
された場合には、このグラフ上に、連続雨量に対応する
時間雨量をプロットする。その結果から、このプロット
した点の軌跡が表層崩壊限界雨量曲線に達する場合には
切土のり面の表層崩壊が発生すると予測できる。そし
て、降雨によって崩壊のおそれのある切土のり面が崩壊
すると予測された場合には、該当する区間の列車の運転
規制を行う。
【0013】
【表2】
【0014】次に、切土のり面の崩壊形態の予測方法と
切土のり面深層崩壊の崩壊限界雨量の予測方法について
具体的に説明する。 (A)崩壊形態に関する要因の抽出 崩壊形態の判別には、地盤工学的な要因と降雨パターン
が関係する。しかし、切土のり面のリアルタイムの限界
雨量を予測するためには、降雨のパターンをあらかじめ
予測することは不可能であるので、切土のり面の地盤工
学的な側面から崩壊形態の判別を行う。切土のり面の構
造条件として切土勾配βと切土高さHを採用する。土質
条件としては、斜面安定に関連するパラメータとして粘
着力c、内部摩擦角φ、単位体積重量γ、間隙水圧uW
が関連する。したがって、崩壊形態判別得点Zは、降雨
パターンに関連する雨量条件を除き、εをその他の要因
とすれば、Z=f(β,H,c,φ,γ,uW ,ε)
…(4) で表される。前記の式(4)に示す土質条件のうち、
c,φ,γは、粘性土、砂質土、礫質土の土質分類SE
と切土のり面の貫入強度NC によって代表させる。間隙
水圧u W の上昇については、間隙水圧上昇に土の粒度特
性が関連するものとして細粒分含有率Gと雨水の集中度
合いを表す切土のり面上部の地形条件WG と表層土厚さ
S で代表させる。したがって、前記の式(4)は、 Z=f(β,H,SE ,NC ,G,WG ,DS ) …(5) で表されることになる。したがって、解析では前記の式
(5)の右辺に示す7個の変数で解析を実行することに
した。
【0015】(B)崩壊形態に関する判別解析の実行 降雨による切土のり面の崩壊形態を判別するために、前
記の式(5)に基づいて線形判別解析を実行した。判別
解析により得られた各要因の係数とF0 値は表3のよう
になる。
【0016】
【表3】
【0017】この結果についてF値検定を行い、解析で
有意でない要因を削除することによって、有意な線形判
別関数として、式(6)が得られる。 Z=−0.115H−2.992DS +0.666WG +4.001…(6) この崩壊形態判別得点Zが、Z<0なら深層崩壊、0<
Zなら表層崩壊に分類されることになる。このときの崩
壊形態判別得点Zの分布は図4のようになり、切土のり
面の崩壊形態判別における正答率は表4のようになる。
【0018】
【表4】 しかし、切土のり面の崩壊形態を実務とし実施する場合
には、Z<−1なら深層崩壊、−1≦Z≦1なら深層崩
壊または表層崩壊、1<Zなら表層崩壊が発生するとす
る区分のほうが、崩壊限界雨量を予測するためには煩雑
になるが、誤判別の確率は低くなる。したがって、判別
得点Zの範囲は前記の範囲とする崩壊形態判別方法を提
案する。
【0019】(C)切土のり面の崩壊限界雨量を予測す
るための要因の抽出 切土のり面の崩壊限界雨量を予測するための要因を抽出
するにあたり、降雨時の斜面安定に関する地盤工学的な
理論を背景にして、鉄道沿線で発生する切土のり面の崩
壊の実態と現場技術者が容易に判定できる要因とするこ
とを考慮して、降雨時の切土のり面の安定性に関するポ
テンシャルSは、式(7)に示すように9要因で示され
るものとした。 S=f(β,H,DS ,NC ,SE ,Rh ,RC ,WG ,RE ) …(7) ここに、切土のり面の構造条件として、βは切土のり面
勾配、Hは切土高さ、また土質・地質条件として、DS
は表層土厚さ、NC は切土のり面の貫入強度、SE は土
質、Rh は基盤硬度、RC は基盤の岩種であり、また、
集水条件として、WG は切土のり面上部の地形であり、
経験雨量条件として、RE は一年間の平均雨量である。
切土のり面の土質・地質条件のうち、基盤の硬度R
h は、硬岩、軟岩、脆弱岩・土砂の3つに分類にし、基
盤の岩種RC は、堆積岩、火成岩、変成岩の3つに分類
した。また、集水条件である切土のり面上部の地形は、
図1に示すように、集水地形をタイプ1、等価流入地形
をタイプ2、平坦地形をタイプ3、非集水地形をタイプ
4とする4つに分類する。
【0020】(D)切土のり面崩壊に関与する外的基準
の抽出 切土のり面崩壊に関与する外的基準として降雨量を考え
るが、本解析では従来から鉄道の運転規制に用いられて
きた経緯を考慮して、連続雨量Rと時間雨量rの積値よ
るものとするが、それぞれの雨量のべき数(定数m,
n)の積とし、切土のり面の耐降雨ポテンシャルとし
て、 S=Rm ・rn …(8) で表されるものとした。従って、前記の式(7)と式
(8)から Rm ・rn =f(β,H,DS ,NC ,SE ,Rh ,RC ,WG ,RE )(9) となる。なお、時間雨量は災害発生時のものとせず、発
生からさかのぼること12時間以内の最大値とした。こ
れは、深層崩壊に影響する間隙水圧の上昇を考えた場
合、最大時間雨量を記録してからしばらくして間隙水圧
のピークとなる事例を考慮したものである。
【0021】(E)数量化Ι類による限界雨量の予測 (a)一次解析の実行 降雨による切土のり面の深層崩壊限界雨量を求めるにあ
たり、前記の式(9)の右辺を一次展開した形で、前記
9要因を考慮し、数量化Ι類による多変量解析を実行し
た。この際、前記の式(9)の左辺に示すべき数m、n
を一次近似としてそれぞれ1.0として多変量解析を行
った。その結果、前記の式(9)の右辺の9要因のう
ち、土質分類SE の寄与率は低く、偏相関係数は0.2
5であった。また、基盤の岩種RC は堆積岩のデータが
80%を占めていたとともに、その偏相関係数も0.2
9と比較的小さかった。したがって、これらの変数を削
除して解析を新ためて実行した。 (b)二次解析の実行 前記の式(9)の右辺に示す9要因のうち、土質分類S
E と基盤の岩種RC を除いた7要因について、改めて数
量化Ι類による多変量解析を実行した。その時、前記の
式(9)の左辺に示すべき数m、nを0.1のピッチで
1.0まで順次変えて解析を行い、得られた重相関係数
0 の等高線を描くと図5のようになる。図5によれば
m=0.4,n=0.2で等高線のピークとなり、この
ときの重相関係数はr0 =0.83である。解析によっ
て得た切土のり面の深層崩壊限界雨量Rm ・rn (m=
0.4,n=0.2)に対する予測値と実測値の関係は
図6のようであり、的中率は高い。
【0022】(F)切土のり面の深層崩壊に対する危険
度評価基準 数量化Ι類による解析の実行で得た要因のウェイトに対
して、鉄道の切土のり面の崩壊の実態に即した経験的、
工学的な配慮を行い表1に示す切土のり面の深層崩壊危
険度評価基準を提案する。この評価基準は、基本点であ
る15.56に切取の構造条件、土質・地質条件、集水
条件、経験雨量条件の該当する評価点の合計を加えて、
連続雨量と時間雨量の積Rm ・rn (ただしm=0.
4、n=0.2)を求めるものである。個々の切土のり
面については前記の式(7)の右辺は定数となるので、
Rとrを軸としたグラフでは非線形の曲線で示される。
ただし、切取の条件によっては限界雨量が非常に小さく
なる場合があるが、この場合は、解析に使用した崩壊事
例の最低値であるR0.4 ・r0.2 =7.27を下限値と
する。
【0023】(G)典型的な崩壊事例に対する検証 前項で示した崩壊形態の判別方法と切土のり面の深層崩
壊評価基準を鉄道で発生した切土のり面の崩壊事例に適
用し、その精度の検証を試みた。 (a)崩壊事例1 1989年7月29日の東海地方を襲った集中豪雨は、
時間雨量50mm/hを記録したため、運転中止基準に
より、列車の運転を中止した。その約40分後、連続雨
量は160mm、時間雨量65mm/hに達したとき、
線路右側の高さH=14mの切土斜面が図7のように延
長40mに渡って崩壊し、線路の上下線を支障した。当
崩壊地付近は、火山噴出物からなる丘陵地の末端部に位
置し、線路の両側が切土構造となっている。斜面は軽微
な沢地形となっており、これに沿って縦下水および斜面
に平行した排水工が施工されてい。崩壊箇所の簡易動的
コーン貫入試験によるサウンディングによれば、表面か
ら2〜3.5mはNC =10以下のロームが堆積し、そ
の下にはNC =10〜20の風化層が30〜80cmあ
り、それ以深ではNC >20の基盤層が確認された。前
記の式(4)によって、当該切土のり面が表層崩壊パタ
ーンか深層崩壊パターンかの判別を行う。切土高さはH
=14m、表層土厚さはDS =2〜3.5mであり、降
雨の集中の度合いを示す図1の地形条件はWG =1であ
るので、判別得点はZ=−2.9〜−7.4となる。こ
の値はZ<−1であるから、当該切土のり面は深層崩壊
のパターンであると判別される。当該切土のり面は深層
崩壊パターンであると判定されたので、限界雨量R0.4
・r0.2 は、表1の深層崩壊の危険度評価基準によって
崩壊限界雨量を算定することができる。その結果、R
0.4 ・r0.2 =16.99が得られた。この限界雨量を
連続雨量Rと時間雨量rの関係として描くと図8の実線
のようになる。この崩壊は連続雨量Rが約165mm,
時間雨量rが約65mmの時に発生していることから、
予測値はこの災害時の雨量観測値と良く一致している。
また、図8には過去に比較的多い降雨量を記録した降雨
履歴11例についても示したが、これらは崩壊を起こさ
なかったものであるが、ほぼ限界雨量曲線の下の領域に
ある。したがって、推定値は実測値を十分満足する。 (b)崩壊事例2 瀬戸内海地方では、1993年7月26日夜から降り始
めた梅雨末期の豪雨が28日18時まで降り続き、最大
時雨量34mm/h,連続雨量287mmに達した。2
9日早朝の6時30分、図9に示す切土のり面上部に巡
回中の保線区員が滑落崖高さ約0.5mの亀裂を発見し
た。同日17時より、犬走り下の土塊が移動し始め、崩
壊土量10m3 は線路まで及んだ。当崩壊地の線路は尾
根状の斜面を切り取って建設され、左側の切土高さは約
3〜5mであるのに対して、崩壊した右側切土のり面の
それは15〜20mと高い。基盤の地質は花崗閃緑岩で
あるが、基盤は非常に深く、崩壊部は斜面末端の風化花
崗岩の二次堆積物(崖錐,まさ土)となっている。簡易
動的コーン貫入試験機によるサウンディング結果によれ
ば、表土層の厚さは約2.1m,NC 値の平均は9.6
であった。当該のり面の切取高さはH=18.5m,表
層厚さはDS =2.1m,地形条件はWG =4であるの
で、前記の式(6)から判別値はZ=−1.75とな
り、当該斜面の崩壊は深層崩壊と判別される。深層崩壊
パターンの限界雨量を表1にしたがって算定すると、R
0.4 ・r0.2=17.20となる。これを連続雨量Rと
時間雨量rの関係として描くと図10の実線の曲線のよ
うになる。一方、崩壊時の降雨の履歴を描けば実線のジ
グザク線のようになり、明らかに限界雨量曲線を越えた
ところで崩壊が発生したことを示している。図10に
は、崩壊以前の主要な降雨すなわち斜面崩壊を起こさな
かった降雨を破線のジグザク線で示しているが、ほとん
どの降雨履歴は限界雨量曲線の下領域にある。これらか
ら、推定値である限界雨量はほぼ実測値を満足する。こ
のように、切土のり面の降雨による崩壊事例をもとに、
判別解析による崩壊形態の判別方法を提案したものであ
る。また、切土のり面の深層崩壊事例を基に数量化Ι類
によって深層崩壊に至る限界雨量を、連続雨量Rの0.
4乗と時間雨量rの0.2乗の積によって予測する手法
を提案したものである。この深層崩壊の危険度評価手法
を、最近発生した典型的な鉄道切土のり面の崩壊事例に
適用したところ、予測値と実測値とは良く一致した。こ
こで提案した手法は統計的に求めたものではあるが、崩
壊を事前に予測する一つの手法として適用でき、この予
測に基づいた降雨時の列車の運転規制を行うことによ
り、安全運行を確保することができる。
【0024】
【発明の効果】詳細に説明したように、本発明の切土の
り面の崩壊形態の判別方法によれば、降雨によって崩壊
のおそれのある切土のり面について、崩壊形態判別得点
を求めて崩壊形態を判別しているので、深層崩壊が発生
するか表層崩壊が発生するかを定量的に判別できる。ま
た、判別した切土のり面の崩壊形態を切土のり面の深層
崩壊限界雨量の予測方法および切土のり面の表層崩壊限
界雨量の予測方法に利用できる。本発明の切土のり面の
深層崩壊限界雨量の予測方法によれば、崩壊形態に見合
った崩壊限界雨量を高い精度で予測できる。また、崩壊
限界雨量を運転規制の雨量の指標として適用でき、高い
精度で列車の運行管理を行うことができる。本発明によ
り、現場調査で得られた切土のり面の条件を得ることに
よって、切土のり面の崩壊形態を判別し、時間雨量と連
続雨量のそれぞれのべき乗で得られる切土のり面深層崩
壊の限界雨量を求め、降雨時の列車の運転規制を確実に
行い、安全運行と安全対策を迅速かつ的確に講じること
ができ、その実用的効果は著大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】切土のり面上部の地形を示す図である。
【図2】切土のり面の深層崩壊限界雨量曲線を示す図で
ある。
【図3】切土のり面の表層崩壊限界雨量曲線を示す図で
ある。
【図4】崩壊形態判別得点の分布を示す図である。
【図5】式(9)における重相関係数の等高線を示す図
である。
【図6】切土のり面の深層崩壊限界雨量の予測値と実測
値の相関を示す図である。
【図7】崩壊事例1の切土のり面断面図である。
【図8】崩壊事例1の限界雨量曲線を示す図である。
【図9】崩壊事例2の切土のり面断面図である。
【図10】崩壊事例2の限界雨量曲線を示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 村石 尚 東京都国分寺市光町二丁目8番地38 財団 法人鉄道総合技術研究所内 (72)発明者 佐溝 昌彦 東京都国分寺市光町二丁目8番地38 財団 法人鉄道総合技術研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 切土のり面が崩壊する場合の崩壊形態を
    判別する方法であって、 構造条件, 土質・地質条件, 集水条件を判別式に代入し
    て崩壊形態判別得点を求め、 該崩壊形態判別得点から深層崩壊, 表層崩壊または深層
    崩壊, 表層崩壊のいずれが発生するかを判別することを
    特徴とする切土のり面の崩壊形態の判別方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、 前記構造条件として切土高さを用いて, 前記土質・地質
    条件として表層土厚さを用いて, 前記集水条件として切
    土のり面上部の地形を用いたことを特徴とする請求項1
    記載の切土のり面の崩壊形態の判別方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2において、 前記判別式が (崩壊形態判別得点)=(切土高さに対する係数)×
    (切土高さ)+(表層土厚さに対する係数)×(表層土
    厚さ)+(切土のり面上部の地形に対する係数)×(切
    土のり面上部の地形)+(定数項) であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の
    切土のり面の崩壊形態の判別方法。
  4. 【請求項4】 請求項1または請求項2または請求項3
    において、 前記崩壊形態判別得点が−1未満のときは深層崩壊が発
    生すると判別し、前記崩壊形態判別得点が−1以上1以
    下のときは深層崩壊または表層崩壊が発生すると判別
    し、前記崩壊形態判別得点が1を超えるときは表層崩壊
    が発生すると判別することを特徴とする請求項1または
    請求項2または請求項3記載の切土のり面の崩壊形態の
    判別方法。
  5. 【請求項5】 切土のり面の崩壊形態の判別方法の結果
    により深層崩壊が発生する場合の限界雨量を予測する方
    法であって、 切土のり面の深層崩壊に対する基本点と、切土のり面勾
    配の評価点, 切土高さの評価点と、表層土厚さの評価
    点, 切土のり面の貫入強度の評価点, 基盤硬度の評価点
    と、切土のり面上部の地形の評価点と、年平均雨量の評
    価点とを加算して総合評価点を求め、 該総合評価点から予測の対象となる切土のり面が存在す
    る地域における12時間以内の単位時間当たりの最大降
    雨量である時間雨量と降雨開始から累積された降雨量で
    ある連続雨量とを求め、 該時間雨量と該連続雨量とから切土のり面の深層崩壊限
    界雨量を予測することを特徴とする切土のり面の深層崩
    壊限界雨量の予測方法。
JP32539995A 1995-12-14 1995-12-14 切土のり面の崩壊形態の判別方法と切土のり面の深層崩壊限界雨量の予測方法 Expired - Lifetime JP2999702B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32539995A JP2999702B2 (ja) 1995-12-14 1995-12-14 切土のり面の崩壊形態の判別方法と切土のり面の深層崩壊限界雨量の予測方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32539995A JP2999702B2 (ja) 1995-12-14 1995-12-14 切土のり面の崩壊形態の判別方法と切土のり面の深層崩壊限界雨量の予測方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH09158186A true JPH09158186A (ja) 1997-06-17
JP2999702B2 JP2999702B2 (ja) 2000-01-17

Family

ID=18176417

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP32539995A Expired - Lifetime JP2999702B2 (ja) 1995-12-14 1995-12-14 切土のり面の崩壊形態の判別方法と切土のり面の深層崩壊限界雨量の予測方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2999702B2 (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005200972A (ja) * 2004-01-16 2005-07-28 Kokusai Kogyo Co Ltd 災害情報サービスシステム
JP2005231392A (ja) * 2004-02-17 2005-09-02 East Japan Railway Co 運行規制判定方法
JP2009080852A (ja) * 2002-09-17 2009-04-16 Toshiba Corp 水防支援装置及びプログラム並びに水防支援方法
JP2013032624A (ja) * 2011-08-01 2013-02-14 Railway Technical Research Institute 地盤変位の予測方法および予測装置
JP2023003518A (ja) * 2021-06-24 2023-01-17 九州電力送配電株式会社 表層崩壊リスク評価装置、表層崩壊リスク評価方法及びプログラム

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009080852A (ja) * 2002-09-17 2009-04-16 Toshiba Corp 水防支援装置及びプログラム並びに水防支援方法
JP2005200972A (ja) * 2004-01-16 2005-07-28 Kokusai Kogyo Co Ltd 災害情報サービスシステム
JP2005231392A (ja) * 2004-02-17 2005-09-02 East Japan Railway Co 運行規制判定方法
JP2013032624A (ja) * 2011-08-01 2013-02-14 Railway Technical Research Institute 地盤変位の予測方法および予測装置
JP2023003518A (ja) * 2021-06-24 2023-01-17 九州電力送配電株式会社 表層崩壊リスク評価装置、表層崩壊リスク評価方法及びプログラム

Also Published As

Publication number Publication date
JP2999702B2 (ja) 2000-01-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Ferrari et al. Qualitative rockfall hazard assessment: a comprehensive review of current practices
Chleborad et al. Rainfall thresholds for forecasting landslides in the Seattle, Washington, area: Exceedance and probability
Moses et al. Chalk coast dynamics: Implications for understanding rock coast evolution
Sugiyama et al. Statistical rainfall risk estimating method for a deep collapse of a cut slope
JP6033635B2 (ja) 振動計測に基づく斜面上転石の落石危険度評価方法
Nettleton et al. Debris flow types and mechanisms
CN113505977A (zh) 一种地质灾害对既有桥梁安全性影响的评价体系设计方法和装置
JPH09158186A (ja) 切土のり面の崩壊形態の判別方法と切土のり面の深層崩壊限界雨量の予測方法
JP6450129B2 (ja) 斜面崩壊予測方法及び斜面崩壊予測装置
Iovine et al. The March 7th 2005 Cavallerizzo (Cerzeto) landslide in Calabria—Southern Italy
Kienholz et al. Assessment of geomorphic hazards and priorities for forest management on the Rigi north face, Switzerland
Okada et al. A risk estimation method of railway embankment collapse due to heavy rainfall
Ansary et al. Generation of liquefaction potential map for Dhaka, Bangladesh
Paolella et al. A generalised severity number to predict liquefaction damage with lateral spreading
Hadzima-Nyarko et al. Seismic vulnerability assessment for residential buildings in Osijek, Croatia
JP2595412B2 (ja) 鉄道盛土の崩壊限界雨量の予測方法及びそれを用いた列車の運転管理システム
Moore et al. Climate change, so what? Implications for ground movement and landslide event frequency in the Ventnor Undercliff, Isle of Wight
Rice et al. Evaluating forest management effects on erosion, sediment, and runoff: Caspar Creek and northwestern California
Nowak Earthworks design principles
Lefebvre et al. Slope Stability Evaluation: More observation and less calculation
CN116029176B (zh) 一种高边坡条件下桥梁结构运维安全评估方法
Guo et al. Risk Assessment Index System for Soil-Similar Slopes and Application in Highway Engineering
Yang et al. Safety risk assessment of arch bridge skewback front slope construction based on fault tree and AHP
Fort et al. Lyme Regis phase II coast protection and slope stabilisation scheme, Dorset, UK-the influence of climate change on design
Arnalds et al. Hazard zoning for Siglufjörður

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20071105

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081105

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091105

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101105

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111105

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111105

Year of fee payment: 12

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111105

Year of fee payment: 12

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111105

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121105

Year of fee payment: 13

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121105

Year of fee payment: 13

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131105

Year of fee payment: 14

EXPY Cancellation because of completion of term