JPH09108948A - 帯電粒子の電気泳動現象を利用した物体の加工方法 - Google Patents

帯電粒子の電気泳動現象を利用した物体の加工方法

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JPH09108948A
JPH09108948A JP29759695A JP29759695A JPH09108948A JP H09108948 A JPH09108948 A JP H09108948A JP 29759695 A JP29759695 A JP 29759695A JP 29759695 A JP29759695 A JP 29759695A JP H09108948 A JPH09108948 A JP H09108948A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡単な方法により、物体を加工する物体の加
工方法を提供すること。 【解決手段】 帯電粒子4Aの電気泳動現象を利用した
物体の加工方法であって、陽極2A及び陰極3Aの一
方、あるいは両方に加工用物体を配置するとともに、前
記陽極2A及び陰極3A間に加工工作物の加工面に対応
して該加工面を十分網羅する数の導体粒子4Aを介在さ
せ、両電極間に電圧を印加すると、下方の陰極3Aに接
触していた前記導体粒子4Aは負に帯電される。この負
に帯電した導体粒子4Aは両電極間に印加された電圧に
より、静電力が作用し陽極2Aに向かって加速され、陽
極に衝突することにより負電荷を放出して正電荷に帯電
して陰極3Aに向かって加速され、陰極に衝突して正電
荷を放出して負の電荷に帯電して陽極に向かうという往
復運動をなし、この電気泳動によって加工用物体の加工
を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、帯電粒子の電気泳
動現象を利用した物体の加工方法、更に詳しくは帯電粒
子を両電極間に往復運動させて物体を加工することに特
徴のある帯電粒子の電気泳動現象を利用した物体の加工
方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】従来より、帯電粒子の電気泳動現象を利用
した加工方法は、精密工学会誌 Vol.60、No.
7、1994の第984頁〜第988頁に「電気泳動現
象を利用した光学カラスの超精密研磨」(先行例1)に
開示されるように、アルミナやシリカの微粒子の砥粒を
蒸留水、またはアルコール等に懸濁し、砥粒が常にマイ
ナスに帯電されることを利用して、加工面あるいはポリ
ッシャに砥粒を引き付けることによって、砥粒を集合・
固定させ、凝集した砥粒の工作物との相対運動によって
擦過除去するものである。
【0003】また、放電加工において、加工液中にシリ
コンの粉末を混入して仕上げ面荒さを向上する技術が、
電気加工学会誌Vol.25、No.49、1991の
第47頁〜第60頁に「粉末混入加工液による放電仕上
加工」(先行例2)に開示されている。これは、加工液
中にシリコンの粉末を混入して電極間にパルス電圧を印
可することにより、加工表面全域にわたって放電電流が
分散し、放電圏の局在による加工ムラが発生しない技術
を開示したものである。
【0004】また、精密機械誌43巻、3号、1977
年3月の第91頁〜第97頁に「粉末粒子ビーム銃にお
ける帯電現象」(先行例3)が開示され、この技術は、
粉末粒子ビーム銃によって微細な粉末粒子を帯電させ、
静電加速し、材料表面に高速で衝突させることにより材
料を極微小量な単位で機械的(弾性的)に破壊、除去
し、結晶学的に乱れのない超精密な加工を得ようとする
ものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
従来技術によると、先行例1の帯電粒子の電気泳動現象
を利用した加工方法は、ポリッシャに砥粒を引き付ける
ことによって、砥粒を集合・固定させ、ポリッシャとと
もに砥粒を、加工液の流れる方向に移動させ、凝集した
砥粒の工作物との相対運動によって擦過除去するもので
ある。よって、層流では砥粒と工作物との接触の頻度は
少なく、大きな加工効率は期待できない。そして、ポリ
ッシャ及び加工液を一定方向に移動させる特別な機構を
必要とし、装置が大型化するとともに方法を複雑化する
ものであった。
【0006】また、先行例2の放電加工において、加工
液中にシリコンの粉末を混入して仕上げ面荒さを向上す
る技術は、加工表面全域にわたって放電電流が分散する
ものであるが、加工単位はあくまでも加工電源から供給
されるパルス状の放電によるもので、一つのパルスに対
して1箇所でしか放電は生じていない。よって、絶縁回
復時間を有したパルス状電圧の印加が必要であり、加工
方法を複雑にする。また、一つのパルスに対して1箇所
でしか放電が生じないので、加工速度が遅い。さらに、
一般にパルス状の放電のエネルギを小さく制御すること
は困難が伴うので、得られる仕上げ面あらさには限界が
あった。
【0007】また、先行例3の技術は、粉末粒子ビーム
銃によって微細な粉末粒子を帯電させ、静電加速し、材
料表面に高速で衝突させることにより材料を極微小量な
単位で機械的(弾性的)に破壊、除去しようとするもの
であり、粉末粒子ビーム銃を必要とし、装置が大型化す
るとともに方法が複雑になる。
【0008】このように、従来の技術においては、装置
が大型化するとともに方法が複雑になるという問題を有
していた。上述の事情に鑑み、本発明は、簡単な方法に
より、物体を加工する物体の加工方法を提供することを
目的としたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、帯電粒子の電気泳動現象を利用した物体
の加工方法である。そして、陽極及び陰極の一方、ある
いは両方に加工用物体を配置するとともに、前記陽極及
び陰極間に帯電した粒子を介在させ、前記粒子を両電極
間に電気泳動によって往復運動させることにより前記加
工用物体の加工を行うことを特徴とする。
【0010】陽極及び陰極の一方、あるいは両方に加工
用物体を配置するとともに、前記陽極及び陰極間に加工
工作物の加工面に対応して該加工面を十分網羅する数の
鋼球もしくはアルミナ球で形成される導体粒子を介在さ
せ、両電極間に電圧を印加すると、下方の陰極に接触し
ていた前記導体粒子は負に帯電される。この負に帯電し
た導体粒子は両電極間に印加された電圧により、静電力
が作用し陽極に向かって加速され、陽極に衝突すること
により負電荷を放出して正電荷に帯電して陰極に向かっ
て加速され、陰極に衝突して正電荷を放出して負の電荷
に帯電して陽極に向かうという往復運動をなし、加工用
物体の加工を行う。
【0011】この導体粒子4Aの電極表面除去加工のメ
カニズムは機械的な砥粒加工的作用と、放電加工的作用
及び化学反応による化学的作用の三つが考えられる。図
6(a)に示すものは、静電力により得た導体粒子4A
の運動エネルギが電極表面との衝突の際に、該表面に凹
所を形成するとともに、その凹所の縁が若干盛り上が
り、新しい面の生成に費やされる機械的作用である。
【0012】また、(b)に示すものは、導体粒子4A
の帯電電荷が、導体粒子4Aが電極に当接する直前に、
該粒子4Aと電極面との間の微小ギャップで絶縁破壊が
生じて、導体粒子4Aの電荷が放電される。この放電は
電子流、イオン流として加工物の一点に衝突して、そこ
を高温にする熱的作用(1)をなすとともに、加工液を
急激に気化膨張させ、それによって加工物の高温によっ
て溶解した部分が吹き飛ばされる。
【0013】また、(c)に示すものは導体粒子が電界
に沿って柱状に積み重なり、極間を狭くすることによっ
て放電を生じさせるもう一つの、熱的作用(2)であ
る。この場合は、放電の発生とともに除去が生じると同
時に柱状の粒子が飛散し、放電は消滅する。これらが熱
的加工が行われる熱的作用である。
【0014】そして、前記導体粒子が電極に衝突して運
動エネルギが開放するか、あるいは放電が生じるなどに
より、衝突が生じた箇所の温度が上昇し、または、内部
応力が増大するなどして電極が局部的に活性化する。こ
れを活性化エネルギとして砥粒と工作物、あるいは極間
の加工液と工作物との間で化学反応が生じ、加工物表面
が除去され易い物質に変化して離脱する。これが化学反
応による化学的作用である。したがって、前記機械的作
用と熱的作用に、化学反応による化学的作用が加工に寄
与され、加工物の表面は、これらの三つの作用により加
工される。
【0015】そして、電気泳動によって1個の砥粒が1
秒間に1千回近く工作物に衝突するので、加工能率を格
段に向上させる。そして、前記熱的作用(1)の導体粒
子の放電は、複数の導体粒子が電極間に介在しているの
で、加工電源をパルス的に印加する必要はなく、両電極
間に一定の電圧を印加した状態で、同時に複数箇所で生
じ、導体粒子1個の帯電量が加工単位を決定する。ま
た、導体粒子1個の帯電量から極間に流れる電流量を計
算でき、このことから加工中の電流を測定することによ
り極間に往復運動する導体粒子の個数を測定でき、電流
で加工速度をモニタできる。
【0016】また、前記熱的作用(2)の導体粒子の放
電においても、放電は粒子の飛散によって消滅するの
で、加工電源をパルス的に印加する必要はない。したが
って、加工液、ポリッシャ等の移動機構、パルス状加工
電源、粉末粒子ビーム銃等は必要なく、簡単な方法で加
工物を加工することができる。
【0017】また、前記導体粒子が介在する前記両極間
は、電気的絶縁状態の液体で満たされるように構成する
と好ましい。このように構成すると、前記導体粒子が電
極に接近すると、図6(b),(c)に示すように放電
を起こす。この放電は電子流、イオン流となって加工物
の一点に衝突して、そこを高温にするとともに、前記電
気的絶縁状態の液体を急激に気化膨張させ、それによっ
て加工物の高温によって溶解した部分が吹き飛ばされ
る。したがって、前記機械的作用に、放電による熱的作
用が加工に寄与される。また、加工物と液体とが化学反
応を生じ易い組み合わせであると、衝突に起因した発熱
や内部応力を活性化エネルギとして化学反応が生じる。
こうして化学的作用が加工に寄与される。
【0018】また、前記導体粒子が介在する前記両極間
は、電気的絶縁状態の気体で満たされるように構成する
と好ましい。何故ならば、気体は液体よりも粘性抵抗が
小さく、粒子の往復運動の速度が大きくなり、加工速度
が増大するからである。さらに、このように構成するこ
とにより、前記導体粒子が電極に接近して放電を起こ
す。この放電は電子流やイオン流となり、この電子流や
イオン流と電極との衝突により電極が加熱され、加工物
の表面は、この熱的作用と前述した機械的作用とにより
加工される。また、加工物と気体とが化学反応を生じ易
い組み合わせであると、衝突に起因した活性化によって
化学反応が生じる。こうして化学的作用が加わる。
【0019】また、少なくとも、前記導体粒子が介在す
る前記両極間は、真空状態で形成されるように構成する
と好ましい。このように構成すると、前記導体粒子と衝
突する気体は極端に減少しているので、前記導体粒子は
エネルギを減じないで、加工物の表面に衝突し、また、
放電電子流やイオン流は加工物表面にほとんどすべてが
衝突するので、効率が良く前記熱的作用と前述した機械
的作用とにより加工される。さらに、真空中では他の汚
染源となる元素が存在しないので、シリコンの加工など
の汚染を嫌う場合に適している。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図に示した実施例
を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載され
る構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特
に特定的な記載が無い限り、この発明の範囲をそれのみ
に限定する趣旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0021】図1は、本発明に係る帯電粒子の電気泳動
現象を利用した物体の加工方法の第1実施例を示す図、
図2は、その第2実施例を示す図、図3は、その第3実
施例を示す図、図4は、その第4実施例を示す図、図5
は、導体粒子が陰極に接触している状態の平行平板電極
間の電位分布を示す図、図6は、加工メカニズムの説明
図、図7は、電圧印加後の極間粒子の挙動を示す図、図
8は、実験装置の概略図であり、(a)は全体の概略
図、(b)は電極の設置図、図9は、鋼球を導体粒子と
しての加工形状測定結果を示す図、図10は、アルミナ
を粒子としての加工痕を示す図、図11は、導体粒子が
鋼球の場合の導体粒子による加工痕を示す図である。
【0022】本発明に係る第1実施例の加工装置1A
は、図1に示すように、灯油からなる加工液5内に、上
方に銅材で形成された陽極2Aと該陽極2Aに対面して
下方に加工物鋼材からなる陰極3Aが配置され、該陰極
3Aの表面に加工する面積を網羅して鋼鉄製の導体粒子
4Aが載置され、前記両電極間には図示しないスイッチ
機構を介して100Vの直流電圧源に接続されている。
【0023】このように構成された第1実施例は、図示
しないスイッチ機構をONにすると、両電極間に100
Vの電圧が印加され、下方の陰極3Aに接触していた導
体粒子4Aは負に帯電される(図5)。この負に帯電し
た導体粒子4Aは両電極間に印加された100Vの電圧
により、静電力が作用し陽極2Aに向かって加速され、
陽極2Aに衝突することにより負電荷を放出して正電荷
に帯電する。この正に帯電した導体粒子4Aは両電極間
に印加された100Vの電圧により、静電力が作用し、
今度は陰極3Aに向かって加速され、陰極3Aに衝突す
ることにより正電荷を放出して負に帯電する。そして、
負に帯電した導体粒子4Aは再度陽極に向い、爾後はこ
の往復運動をなし、加工用物体の加工を行う。
【0024】ここで重要なことは、帯電した導体粒子の
電荷量は、電極を離れたあと、他方の電極に接触するま
では保存されることである。これを利用して極間を移動
する導体粒子について、両極間の中心0を基準として、
縦軸に、−45、−30、−15、0、15、30μm
の位置でのモデルを作り、各位置で電位分布と、それか
ら求まる静電力を数値計算し、加工液から受ける粘性抵
抗と重力を考慮にいれて運動方程式を解いた結果が図7
に示されている。この結果によると、極間隙120μ
m、印加電圧100V、粒径30μmの導体粒子の場合
は、初速度ゼロで陰極を離れた導体粒子の運動は3ms
後に定常状態となる。また、陰極に接していた導体粒子
1個の電荷帯電量は−5.63×10 -14C、定常状態
における片道の運動の平均速度は0.136m/sであ
るために、導体粒子1個の往復運動により極間には8.
53×10 -11Aの電流が流れることになる。
【0025】さて、前記導体粒子4Aの電極表面除去加
工のメカニズムは機械的な砥粒加工的作用と、放電加工
的作用及び化学反応による化学的作用の三つが考えられ
る。図6(a)に示すものは、静電力により得た導体粒
子4Aの運動エネルギが電極表面との衝突の際に、該表
面に凹所を形成するとともに、その凹所の縁が若干盛り
上がり、新しい面の生成に費やされる機械的作用であ
り、(b)や(c)に示すものは、導体粒子4Aが電極
に当接する直前に、該粒子4Aと電極面との間の微小ギ
ャップで絶縁破壊が生じて、放電による熱的加工が行わ
れる熱的作用である。
【0026】そして、前記導体粒子が電極に衝突すると
運動エネルギが熱エネルギやひずみエネルギに変化す
る。また、粒子が電極に接近すると、図6(b)や
(c)に示すように放電を起こす。この放電は電子流や
イオン流となって加工物の一点に衝突して、そこを高温
にする。このようにして、局部的に温度が上昇したり内
部応力が増大したりして、化学的に活性化し、化学反応
が生じる。これが化学反応による化学的作用である。し
たがって、前記機械的作用と熱的作用に、化学反応によ
る化学的作用が加工に寄与され、加工物の表面は、これ
らの三つの作用により加工される。
【0027】そして、前記熱的作用の導体粒子の放電
は、図1に示すように複数の導体粒子4Aが電極間に介
在しているので、加工電源をパルス的に印加する必要は
なく、両電極間に一定の電圧を印加した状態で、同時に
複数箇所で生じ、図6(b)の場合は導体粒子4A1個
の帯電量が加工単位を決定する。また、図6(c)の場
合は、柱状の粒子が飛散するまでの時間が加工単位を決
定する。したがって、加工液、ポリッシャ等の移動機
構、パルス状加工電源、粉末粒子ビーム銃等の必要はな
く、簡単な方法で加工物を加工することができる。
【0028】図2は、本発明に係る第2実施例図であ
り、陽極及び陰極ともに加工物により形成されている。
この第2実施例の加工装置1Bは、図2に示すように、
灯油からなる加工液5内に、上方に加工物鋼材で形成さ
れた陽極6Aと該陽極6Aに対面して下方に加工物鋼材
からなる陰極3Aが配置され、該陰極3Aの表面に加工
する面積を網羅して鋼鉄製の導体粒子4Aが載置され、
前記両電極間には図示しないスイッチ機構を介して10
0Vの直流電圧源に接続されている。
【0029】このように構成された第2実施例は、図示
しないスイッチ機構をONにすると、両電極間に100
Vの電圧が印加され、下方の陰極3Aに接触していた導
体粒子4Aは負に帯電される(図5)。この負に帯電し
た導体粒子4Aは両電極間に印加された100Vの電圧
により、静電力が作用し陽極6Aに向かって加速され、
陽極6Aに衝突することにより負電荷を放出して正電荷
に帯電する。この正に帯電した導体粒子4Aは両電極間
に印加された100Vの電圧により、静電力が作用し、
今度は陰極3Aに向かって加速され、陰極3Aに衝突す
ることにより正電荷を放出して負に帯電する。そして、
負に帯電した導体粒子4Aは再度陽極に向い、爾後はこ
の往復運動をなし、加工用物体の加工を行う。
【0030】図3は、本発明に係る第3実施例図であ
り、陽極に加工物が配置されている。この第3実施例の
加工装置1Cは、図3に示すように、灯油からなる加工
液5内に、上方に加工範囲を規制するマスク配置した加
工物鋼材で形成された陽極6Bと該陽極6Bに対面して
下方に鋼材からなる陰極7が配置され、該陰極7の表面
に加工する面積を網羅して鋼鉄製の導体粒子4Aが載置
され、前記両電極間には図示しないスイッチ機構を介し
て100Vの直流電圧源に接続されている。
【0031】このように構成された第3実施例は、図示
しないスイッチ機構をONにすると、両電極間に100
Vの電圧が印加され、下方の陰極7に接触していた導体
粒子4Aは負に帯電される(図5)。この負に帯電した
導体粒子4Aは両電極間に印加された100Vの電圧に
より、静電力が作用し陽極6Bに向かって加速され、陽
極6Bに衝突することにより負電荷を放出して正電荷に
帯電する。この正に帯電した導体粒子4Aは両電極間に
印加された100Vの電圧により、静電力が作用し、今
度は陰極7に向かって加速され、陰極7に衝突すること
により正電荷を放出して負に帯電する。そして、負に帯
電した導体粒子4Aは再度陽極に向い、爾後はこの往復
運動をなし、加工用物体の加工を行う。
【0032】また、前記導体粒子が介在する前記両極間
は、電気的絶縁状態の気体で満たされるように構成する
ことができる。このように構成すると、気体は液体より
も粘性抵抗が小さく、粒子の往復運動の速度が大きくな
り、加工速度を増大することができる。粒子の往復運動
の速度が大きくなった前記導体粒子は、電極に接近して
放電を起こす。この放電は電子流やイオン流となり、こ
の電子流やイオン流との衝突により電極が加熱され、加
工物の表面は、この熱的作用と前述した機械的作用とに
より加工される。また、加工物と気体とが化学反応を生
じ易い組み合わせであると、衝突に起因した活性化によ
って化学反応が生じる。こうして化学的作用が加わる。
【0033】図4は、本発明に係る第4実施例図であ
り、真空容器内に両極を配置したものである。この第4
実施例の加工装置1Dは、図4に示すように、真空ポン
プ8により配管9を介して真空にされる真空容器16内
に銅材で形成された陽極2Bと該陽極2Bに対面して下
方に鋼材からなる陰極3Bが配置され、該陰極3Bの表
面に加工する面積を網羅して鋼鉄製の導体粒子4Aが載
置され、前記両電極間には図示しないスイッチ機構を介
して100Vの直流電圧源に接続されている。
【0034】このように構成された第4実施例は、図示
しないスイッチ機構をONにすると、両電極間に100
Vの電圧が印加され、下方の陰極7に接触していた導体
粒子4Aは負に帯電される(図5)。この負に帯電した
導体粒子4Aは両電極間に印加された100Vの電圧に
より、静電力が作用し陽極2Bに向かって加速され、陽
極2Bに衝突することにより負電荷を放出して正電荷に
帯電する。この正に帯電した導体粒子4Aは両電極間に
印加された100Vの電圧により、静電力が作用し、今
度は陰極3Bに向かって加速され、陰極3Bに衝突する
ことにより正電荷を放出して負に帯電する。そして、負
に帯電した導体粒子4Aは再度陽極に向い、爾後はこの
往復運動をなし、加工用物体の加工を行う。
【0035】このように構成すると、前記導体粒子4A
と衝突する気体は極端に減少しているので、前記導体粒
子4Aはエネルギを減じないで、加工物3Bの表面に衝
突し、また、放電電子流やイオン流は加工物表面にほと
んどすべてが衝突するので、前記熱的作用と前述した機
械的作用とにより効率が良く加工される。さらに、真空
中では他の汚染源となる元素が存在しないので、他の元
素による汚染の問題などが解決される。
【0036】以下に本実施例の効果を説明する。従来の
フロートポリッシングは、流体中に懸濁した砥粒が対流
に乗って工作物に接触するので、大きな加工効率は期待
できない、また、ポリシャとともに砥粒を移動させる機
構を設ける装置は大型化するとともに、方法が複雑にな
る。上述した本実施例によると、フロートポリッシング
に見られるような遊離砥粒による機械的加工も行ってい
るが、導体粒子の電気泳動により1個の砥粒(導体粒
子)が1秒間に1千回近くも工作物に衝突するので、加
工能率を格段に向上することができる。
【0037】また,本実施例は、機械的な作用だけでな
く、熱的な作用、化学的反応の促進も考えられ、粒子材
料、加工雰囲気、工作物材料、の組み合わせにより様々
な複合的な加工作用が期待される。
【0038】また、従来の放電加工においては、パルス
電源を印加し、1パルスにおいて放電が発生する場所は
1箇所であったが、本実施例においては至るところ粒子
が衝突するところで放電が発生する。よって、従来の放
電加工は特に仕上加工の領域で加工速度が非常に低下す
るという問題があったが、本実施例においては高い加工
効率を得ることができる。
【0039】また、本実施例において、電極間の電圧
は、粒子の帯電量、粒子に働く静電力に影響を及ぼし、
加工単位や加工速度を決定する。また、粒子直径の2乗
すなわち表面積に比例して帯電量が決まるので、粒子の
直径が加工単位に大きな影響があり、仕上げ面あらさを
決定する。粒径30μmの導体粒子の帯電量は、100
%帯電していると仮定した場合、5.63×10 -14
であり、片道の移動時間を660μsとすると、1個の
導体粒子の往復運動により、極間には8.53×10 -
11Aの電流が流れることになる。したがって、加工中の
電流の想定により極間を往復運動する導体粒子の個数を
測定でき、電流で加工速度をモニタすることができる。
【0040】上記実施例においては、導体粒子に鋼球を
用いて説明してきたが、これに限定されるものではな
く、金属粉末、シリコン、SiO2、SiC、酸化クロ
ム、アルミナ等一般的に絶縁体として扱われている材料
も使用可能である。これは、どんな材料でも程度の差こ
そあれ電気伝導性があるからである。もっとも、電気伝
導率は帯電量に大きな影響を及ぼし、加工単位、運動速
度、加工能率は粒子の種類で大きく異なる。そして、工
作物や加工雰囲気と考え合わせ反応のしやすい組み合わ
せを選び、メカノケミカル的作用を期待することができ
る。
【0041】また、本実施例においては、加工に要する
電流はわずかであるので、シリコン、SiCなどの高抵
抗材料も加工可能である。
【0042】
【実施例】図8は、実験装置の概略図であり、(a)は
全体の概略図、(b)は電極の設置図である。これらの
図において、陽極6B及び陰極3Bはトランジスタ1
2、抵抗11を介して直流電源13と直列に接続され、
図示しない制御回路によりトランジスタ12は符号14
に示すようにパルス状に両極に直流電圧を印加するよう
に構成されている。陽極である工作物電極6Bにはマス
ク15で縁取りされ、陰極3Bの表面には工作物6Bの
加工面を十分カバーするだけの粒子4Bが載置され、両
極は加工液5で満たされている。
【0043】実験に際しての一番の問題点は、導体粒子
4Bが互いに集積しあって柱状化し、極間が短絡状態と
なることである。短絡を防止するには、極間を大とす
る、放電開始電圧を大とする等の方法が考えられるが、
実験段階であり、直流電圧13を数秒毎にパルス状に印
加して、ある一定の休止時間を設けて実験した。
【0044】また、重力の影響で、下側の電極3B表面
は導体粒子4Bの密度が高くなり、導体粒子相互間の衝
突が生じて運動粒子のエネルギが直接工作物6B表面に
作用され難いと考えられ、図8(b)に示すように工作
物電極6Bは上側に設け、工作物表面の両側は基準面と
するためにマスク15を施している。
【0045】実験に際して、導体粒子は完全導体とみな
せる鋼球(粒径:30〜50μm)と、体積抵抗率が非
常に大きく金属と比べて絶縁体とみなせるAl 2
3(粒径:30〜40μm)を用い、工作物としては鋼
製ブロックゲージとアルミ合金板を使用し、印加電圧5
00V、極間隙300〜400μmに設定した。
【0046】「実験結果」 (A)導体粒子が鋼球、工作物がブロックゲージの場合 図9は、導体粒子が鋼球、工作物がブロックゲージの場
合の表面あらさ計での加工形状測定結果をプロットした
図であり、図11は、導体粒子が鋼球の場合の走査型電
子顕微鏡で観察した加工痕の顕微鏡写真であり、図9の
測定位置の一部を示す。図9から、導体粒子が鋼球、工
作物がブロックゲージの場合、基準面0から略0.4μ
mを最大として除去加工されていることがわかる。図1
1から、加工痕は放電痕と見受けられるために、鋼球を
用いた場合の加工メカニズムは主に放電によるものと考
えられる。 (B)尚、鋼球の場合は、アルミ合金板においても加工
が可能であった。
【0047】(C)混入粒子がAl 23球、工作物が
ブロックゲージの場合は、加工痕らしきものは認められ
なかった。 (D)混入粒子がAl 23球、工作物がアルミ合金板
の場合 混入粒子がAl 23球の場合、高抵抗ではあるが極間
を往復運動することが実体顕微鏡を用いた観察により確
認された。これは、Al 23球といえども完全な絶縁
体ではないので、わずかながら帯電し静電力により運動
しているものと考えられる。図10は、アルミナ(Al
23)を粒子としての加工痕の顕微鏡写真を示す図で
ある。この図から、わずかながら加工痕が見いだされ
る。この加工痕は放電痕とも見られるが、前記ブロック
ゲージの場合には見いだされず、工作物の材質の違いに
より加工の可否があることを考慮すると、機械的な加工
メカニズも作用していると考えられる。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、陽極及
び陰極の一方、あるいは両方に加工用物体を配置すると
ともに、前記陽極及び陰極間に帯電した粒子を介在さ
せ、前記粒子を両電極間に電気泳動によって往復運動さ
せることにより前記加工用物体の加工を行っているの
で、直流電源を印加するだけで、至るところで粒子が電
極と衝突し、そこで放電が発生する。よって、本発明に
おいては高い加工効率を得ることができるとともに、簡
単な方法により、物体を加工する物体の加工方法を提供
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る帯電粒子の電気泳動現象を利用し
た物体の加工方法の第1実施例を示す図である。
【図2】その第2実施例を示す図である。
【図3】その第3実施例を示す図である。
【図4】その第4実施例を示す図である。
【図5】導体粒子が陰極に接触している状態の平行平板
電極間の電位分布を示す図である。
【図6】加工メカニズムの説明図である。
【図7】電圧印加後の極間粒子の挙動を示す図である。
【図8】実験装置の概略図であり、(a)は全体の概略
図、(b)は電極の設置図である。
【図9】鋼球を導体粒子としての加工形状測定結果を示
す図である。
【図10】アルミナを粒子としての加工痕の顕微鏡写真
を示す図である。
【図11】導体粒子が鋼球の場合の導体粒子による加工
痕を示す図である。
【符号の説明】
1 加工装置(1A〜1D) 2 陽極(2A,2B) 3 陰極 4 粒子(導体粒子、混入粒子) 5 加工液 6 陽極(6A,6B) 7 陰極 8 真空ポンプ 10 実験装置 11 抵抗 12 トランジスタ 13 直流電源 14 パルス波形 15 マスク 16 真空容器

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陽極及び陰極の一方、あるいは両方に加
    工用物体を配置するとともに、前記陽極及び陰極間に帯
    電した粒子を介在させ、前記粒子を両電極間に電気泳動
    によって往復運動させることにより前記加工用物体の加
    工を行うことを特徴とする帯電粒子の電気泳動現象を利
    用した物体の加工方法。
  2. 【請求項2】 前記粒子が介在する前記両極間は、電気
    的絶縁状態の液体で満たされていることを特徴とする請
    求項1記載の帯電粒子の電気泳動現象を利用した物体の
    加工方法。
  3. 【請求項3】 前記粒子が介在する前記両極間は、電気
    的絶縁状態の気体で満たされていることを特徴とする請
    求項1記載の帯電粒子の電気泳動現象を利用した物体の
    加工方法。
  4. 【請求項4】 少なくとも、前記粒子が介在する前記両
    極間は、真空状態で形成されていることを特徴とする請
    求項1記載の帯電粒子の電気泳動現象を利用した物体の
    加工方法。
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CN113319732A (zh) * 2021-08-02 2021-08-31 江苏中科云控智能工业装备有限公司 一种异型压铸件表面缺陷清除装置

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