JPH08508877A - プロテインチロシンホスファターゼptp−s31 - Google Patents

プロテインチロシンホスファターゼptp−s31

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JPH08508877A
JPH08508877A JP6520671A JP52067194A JPH08508877A JP H08508877 A JPH08508877 A JP H08508877A JP 6520671 A JP6520671 A JP 6520671A JP 52067194 A JP52067194 A JP 52067194A JP H08508877 A JPH08508877 A JP H08508877A
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モラー,ニールズ,ピー.エイチ.
モラー,カリン,ビー
ウルリッヒ,アクセル
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マックス−プランク−ゲゼルシャフト ツール フェルデルング デル ヴィッセンシャフテン エー.ヴェー.
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Abstract

(57)【要約】 PTP−S31と命名されたプロテインチロシンホスファターゼおよびそのサブファミリーが同定され、それをコードする核酸分子も同定される。このファミリーには、既知のプロテインチロシンホスファターゼの触媒ホスファターゼドメイン中の以前に規定されたコンセンサス配列において1、2または3個のアミノ酸が変化しているPTP−S31タンパク質または糖タンパク質が含まれる。PTP−S31タンパク質または糖タンパク質は組換え手段によって生産され得る。PTP−S31タンパク質または糖タンパク質に対する抗体およびそれをコードする核酸構築物、ならびにPTP−S31タンパク質または糖タンパク質に結合してその酵素活性を阻害または刺激することができる分子のスクリーニング法が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】 プロテインチロシンホスファターゼPTP−S31 1.序論 本発明は、生化学および細胞分子生物学の分野に属し、PTP−S31と命名 された、新規なプロテインチロシンホスファターゼ(PTPアーゼまたはPTP )タンパク質または糖タンパク質、薬学的製剤における当該分子の使用、ならび にPTP−S31またはその機能性誘導体を含有する医薬組成物に関するもので ある。本発明はまた、PTP−S31タンパク質またはその機能性誘導体をコー ドする核酸分子、当該核酸分子を保有する組換え発現ベクター、当該組換え発現 ベクターを含む細胞、PTP−S31またはそれをコードするDNAの生産およ び同定方法、PTP−S31に特異的な抗体、ならびにPTP−S31のプロテ インチロシンホスファターゼ酵素活性に結合して当該活性を阻害または刺激する ことができる化合物のスクリーニング法にも向けられる。 2.発明の背景 タンパク質のリン酸化は多岐にわたる細胞プロセスを調節するための基本的な 機構である。大多数のタンパク質リン酸化はセリン残基とトレオニン残基で起こ るが、多くの癌遺伝子産物および増殖因子受容体が固有のプロテインチロシンキ ナーゼ活性を有するという発見以来、チロシン残基でのリン酸化に関心が集中し ている。増殖因子のシグナル伝達、細胞周期の進行および悪性形質 転換に際してのプロテインチロシンリン酸化の重要性は今や明確に確立されるに 至った[Hunterら,Ann.Rev.Biochem.54:987-930(1985);Ullrichら,Cell 61:203-212(1990);Nurse,Nature 344:503-508(1990);Cantleyら,Cell 64:281-302(1991)]。 生化学的研究により、種々の細胞性タンパク質のチロシン残基でのリン酸化は リン酸化反応と脱リン酸化反応が競合する動的プロセスであることが分かってい る。プロテインチロシンリン酸化の調節は、プロテインチロシンキナーゼ(PT KアーゼまたはPTK)とプロテインチロシンホスファターゼ(PTP)の相互 作用によって媒介される。チロシンリン酸化反応はPTKが触媒する。チロシン リン酸化されたタンパク質はPTPの作用によって特異的に脱リン酸化され得る 。細胞内物質のプロテインチロシンリン酸化のレベルはPTK活性とPTP活性 のバランスで決まる[Hunter,T.,Cell 58:1013-1016(1989)]。 2.1. PTK類 プロテインチロシンキナーゼ類(PTK;ATP:プロテイン−チロシンO− ホスホトランスフェラーゼ、EC 2.7.1.112)は、多くの増殖因子受容体および潜 在的癌遺伝子を含む大きなタンパク質ファミリーを構成している[Hanksら,Sci ence 241:42-52(1988)]。多数のPTKは細胞周期の誘導に必要な初期シグナ ルに結合している[Weaverら,Mol.and Cell.Biol.11(9):4415-4422(1991 )]。PTKはセリン/トレオニンに特異的なプロテインキナーゼと共通の祖先 を有するが、それらとは大きく相 違する別個の酵素ファミリーを構成している(Hanksら,前掲)。PTK活性を 変化させる作用機構は、膜貫通トポロジーを有する受容体型PTKの場合に最も よく理解されている(Ullrichら,前掲)。受容体型PTKのメンバーの細胞外 ドメインに特異的リガンドが結合すると、それらのオリゴマー化が誘導されて、 チロシンキナーゼ活性の増加とシグナル伝達経路の活性化が生じると考えられて いる[Ullrichら,(1990)前掲]。突然変異または過剰発現によるキナーゼ活 性の調節解除は、細胞形質転換の確立された機構である[Hunterら,(1985)前 掲;Ullrichら,(1990)前掲]。 2.2. PTP類 プロテインホスファターゼ類は少なくとも2つの明らかに異なるファミリー[ Hunter,T(1989)前掲]を構成しており、プロテインセリン/トレオニンホス ファターゼとプロテインチロシンホスファターゼ(PTP;プロテイン−チロシ ン−ホスフェートホスホヒドロラーゼ、EC 3.13.48)である。PTPは1つのタ ンパク質ファミリーであるが、2つのサブグループに分けられる。第一のサブグ ループは、単一の保存された触媒ホスファターゼドメインを含む低分子量の細胞 内酵素から成っている。既知の細胞内型PTPはすべて、単一の保存された触媒 ホスファターゼドメインを含むものである。第一のグループに含まれるPTPの 例として、(1)胎盤PTP 1B[Charbonneauら,Proc.Natl.Acad.Sci. USA 86:5252-5256(1989);Chernoffら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2735 -2789(1990)]、(2)T細胞PTP[ Coolら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5257-5261(1989)]、(3)ラット 脳PTP[Guanら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1501-1502(1990)]、( 4)ニューロンホスファターゼ(STEP)[Lombrosoら,Proc.Natl.Acad. Sci.USA 88:7242-7246(1991)]、および(5)細胞骨格タンパク質と相同な 領域を含む細胞質ホスファターゼ[Guetら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:58 67-5871(1991);Yangら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:5949-5953(1991) ]を挙げることができる。第二のサブグループは高分子量の受容体結合PTPか ら成っており、RPTPと称する。RPTPは(a)細胞内触媒領域、(b)単 一の膜貫通セグメントおよび(c)推定上のリガンド結合性細胞外ドメインから 構成される。RPTPの推定上のリガンド結合性細胞外「受容体」ドメインの構 造および大きさは非常に異なっている。これに対して、RPTPの細胞内触媒領 域は高度に相同である。すべてのRPTPはタンデム連結された2つの触媒ホス ファターゼ相同ドメインを有するが、例外として、HPTPβと称するRPTP はただ1つの触媒ホスファターゼドメインを有する[Tsaiら,J.Biol.Chem.2 66:10534-10543(1991)]。 RPTPの一例は白血球共通抗原(LCA)と名づけられたタンパク質ファミ リーであり[Ralph,S.J.,EMBO J.6:1251-1257(1987)]、LCAは全白血球 とその造血前駆細胞の表面に発現される高分子量の糖タンパク質である[Thomas ,Ann.Rev.Immunol.7:339-369(1989)]。数種の生物種由来のLCAの配列 には顕著な類似性が存在する[Charbonneauら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85 :7182-7186(1988)]。LCAは文献中では異 なった名称で呼ばれており、例えばT200[Trowbridgeら,Eur.J.Immunol .6:557-562(1962)]、Bリンパ球型についてはB220[Coffmanら,Nature 289:681-683(1981)]、マウス・アロタイプマーカーLy−5[Komuroら,Im munogenetics 1:452-456(1975)]、最近ではCD45[Cobboldら,Leucocyte Typing III,A.J.McMichaelら編集,pp.788-803(1987)]などである。 CD45はT細胞の活性化において非常に重要な役割を担っているようである [Weiss A.,Ann.Rev.Genet.25:487-510(1991)中で検討された]。例えば 、化学的突然変異を誘発させて、CD45を発現できないものを選択したT細胞 クローンは、T細胞受容体刺激に対する応答が損なわれていた(Weaverら,前掲 )。これらのT細胞クローンは、T細胞抗原受容体を介して伝達されるシグナル に対するその応答(標的の細胞溶解、増殖、リンホカインの生産など)が機能的 に欠損していた(Weaverら,前掲)。他の研究は、CD45のPTP活性がリン パ球特異的PTKであるpp56lckの活性化において何らかの役割を果たして いることを示す[Mustelinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6302-6306(198 9);Ostergaardら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8959-8963(1989)]。こ れらの著者らは、CD45のホスファターゼ活性がC末端チロシン残基の脱リン 酸化によりpp56lckを活性化し、これがその後のT細胞の活性化に関係する と仮定した。 RPTPのもう一つの例は、最初はLCAの相同体として同定された、白血球 共通抗原関連分子(LAR)である[Streuliら, J.Exp.Med.168:1523-1530(1988)]。LAR分子の細胞内触媒領域は2つの 触媒ホスファターゼ相同ドメイン(ドメインIとドメインII)を含んでいるが、 突然変異分析によると、ドメインIだけが触媒ホスファターゼ活性をもち、ドメ インIIは酵素的に不活性であることが示唆された[Streuliら,EMBO J.9(8):23 99-2407(1990)]。アミノ酸位置1379のチロシンをフェニルアラニンに変 えた、化学的に誘導されたLAR変異体は温度感受性であった[Tsaiら,J.Bio l.Chem.266(16):10534-10543(1991)]。 最近クローン化された、mRPTPμと称するマウスRPTPは、いくつかの 構造モチーフをLARと共有する細胞外ドメインをもつことが見いだされた[Ge bbink,M.F.B.G.ら,FEBS Lett.290:123-130(1991)]。これらの著者はRP TPμのヒト相同体もクローン化し、この遺伝子がヒト染色体18にあることを 見いだした。 DLARおよびDPTPと呼ばれる、2つのショウジョウバエPTPがcDN Aクローンの配列に基づいて予想された[Streuliら,Proc.Natl.Acad.Sci. USA 86:8698-8702(1989)]。また、DPTP 99Aと呼ばれる別のショウジ ョウバエRPTPをコードするcDNAがクローン化されて、その特性付けが行 われた[Hariharanら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:11266-11270(1991)] 。 RPTPの他の例としては、RPTP−α、β、γおよびζが含まれる[Krue gerら,EMBO J.9:3241-3252(1990);Sapら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87 :6112-6116(1990);Kaplanら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:7000-7004(1 990);Jirikら, FEBS Lett.273:239-242(1990);Mathewら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87: 4444-4448(1990);Ohagiら,Nucl.Acids Res.18:7159(1990)]。Schlessi ngerのPCT公開WO92/01050(1992年1月23日)は、ヒトRPTP−α、βおよ びγを開示し、これら3種のRPTPとこのタンパク質ファミリーの他のメンバ ーの保存ドメイン間の構造的相同性を記述した。マウスRPTP−αは794個 のアミノ酸を有し、一方、ヒトRPTP−αは802個のアミノ酸を有する。R PTP−αは他のチロシンホスファターゼの触媒ドメインに対して相同性を示す 細胞内ドメインをもっている。142個のアミノ酸から成る細胞外ドメイン(R PTP−αのシグナルペプチドを含む)はセリンとトレオニンの含量が高く(3 2%)、8つの可能なN−グリコシル化部位を有する。RPTP−αをコードす るcDNAクローンが作製され、真核細胞宿主からはRPTP−αが発現された 。種々の細胞および組織におけるRPTP−αの自然発現を同定するためにノー ザン分析が用いられた。RPTP−αの合成ペプチドを用いた免疫感作により作 られた、RPTP−αに対するポリクローナル抗体は、RPTP−αの一部をコ ードするcDNAクローンでトランスフェクションした細胞において130kD aのタンパク質を同定した。 LCAの2つのPTPドメインをコードするプローブを用いて、肝芽細胞腫細 胞系HepG2から誘導されたcDNAライブラリーをスクリーニングすること によって、別のRPTPであるHePTP[Jirikら,FASEB J.4:82082(1990 )Abstract 2253]が発見された。HePTP遺伝子はヒトおよびマウスのさま ざまな 細胞系および組織で発現されるようであった。 PTPの最初の精製、配列決定およびクローニングが行われて以来、追加の潜 在PTPが急激な速さで同定されてきている。同定された異なるPTPの数は着 実に増加しており、このファミリーがPTKファミリーと同程度に大きいもので あることを推測させる[Hunter(1989)前掲]。 既知のPTPの触媒ドメインには「共通配列」と呼ばれる保存されたアミノ酸 配列が同定された[Kruegerら,EMBO J.9:3241-3252(1990)およびYiら,Mol .Cell.Biol.12:836-846(1992);これらの文献は参考としてここに組み入れ る]。Yiらは次のPTP:つまりLCA、PTPIB、TCPTP、LAR、D LAR、およびHPTPα、HPTPβおよびHPTPγの触媒ホスファターゼ ドメイン配列のアラインメント(整列化)を行った。このアラインメントは下記 の「共通配列」を含んでいる〔Yiら,前掲、図2(A)〕: KruegerらはPTP1B、TCPTP、LAR、LCA、HPTPα、β、8 、εおよびζ、DLARおよびDPTPの触媒ホスファターゼドメイン配列のア ラインメントを行った。このアラインメントは下記の「共通配列」を含んでいる 〔Kruegerら,前掲、図7〕: チロシン残基の脱リン酸化はそれ自体で重要な調節機構として 機能しうることが明らかになりつつある。チロシンキナーゼのsrcファミリー では、C末端チロシン残基の脱リン酸化がチロシンキナーゼ活性を活性化するこ とが見いだされた[Hunter,T.Cell 49:1-4(1987)]。チロシンの脱リン酸化 は、成熟促進因子(MPF)キナーゼの有糸分裂活性化における必須段階である ことが示唆された[Morlaら,Cell 58:193-203(1989)]。これらの観察は、チ ロシンホスファターゼ活性を調節する作用機構を理解することの、当技術分野に おける必要性を指摘するものである。 シグナル伝達、細胞周期の進行および細胞増殖、そして悪性形質転換の機構を 理解するには、PTP類の構造−機能の関係の更なる分析が必要となることが明 らかである。かかる理解はこれらのプロセスを調節しかつその調節障害と関連し た疾患を治療するのに有効な薬剤を提供するだろう。 3.発明の概要 本発明者らは、PTP−S31と命名された、新規なPTPの同定をここに記 述するものである。この新規なPTPはこれまでに報告されたPTP類と構造的 にかなり相違している。さらに、このPTPの数種の変異体が同定された。従っ て、本発明は、PTPであるかまたはPTPに存在することが知られている構造 的特徴を含むPTP−S31タンパク質または糖タンパク質、ならびにその変異 体を提供する。 本発明のPTP−S31タンパク質または糖タンパク質は、それが天然に存在 するものである場合、それが自然界で結合している他のタンパク質または糖タン パク質を実質的に含まないもので ある。本発明の実質的に純粋なPTP−S31タンパク質または糖タンパク質は 、生化学的精製により、化学的手段により、または原核または真核細胞宿主によ る組換え手段により生産することができ、それが自然界で結合している他のタン パク質類を実質的に含まない状態で得られる。PTP−S31は修飾アミノ酸を 含んでいてもよい。 本発明はさらに、次のタンパク質に関する: (1)PTP−S31タンパク質または糖タンパク質の断片; (2)追加のアミノ酸を有するPTP−S31タンパク質または糖タンパク質; (3)置換アミノ酸を有するPTP−S31タンパク質または糖タンパク質;お よび (4)欠失アミノ酸、追加のアミノ酸または置換アミノ酸の任意の組合せを有す るPTP−S31タンパク質または糖タンパク質。 どのような場合にも、修飾PTP−S31タンパク質もしくは糖タンパク質ま たはその断片は所望の生物学的活性を有する。 本発明はさらに、本発明によるPTP−S31タンパク質をコードするヌクレ オチド配列を含む核酸分子に関する。この核酸分子はcDNA、ゲノムDNAま たはRNAであり得る。また、本発明は発現ベクターの形の核酸構築物に関する 。かかる発現ベクターを保有する原核および真核宿主細胞も提供される。 本発明には本発明のPTP−S31タンパク質または糖タンパク質を調製する 方法も含まれ、当該方法は、 (a)PTP−S31タンパク質または糖タンパク質を発現する ことができる宿主を培養条件下で培養し、 (b)PTP−S31タンパク質または糖タンパク質を発現させ、そして (c)培養物からPTP−S31タンパク質または糖タンパク質を回収する、 ことを含んでいる。 さらに、本発明は、PTP−S31タンパク質または糖タンパク質に対して、 あるいはPTP−S31タンパク質または糖タンパク質のエピトープに対して特 異的なポリクローナル、モノクローナルまたはキメラ抗体に関する。 本発明はさらに、サンプル(好ましくは、被験者から得られた細胞または生物 学的サンプル)中のPTP−S31タンパク質または糖タンパク質の存在を検出 し、またはその量を測定する方法に関し、当該方法は、 (a)サンプル(例えば、細胞調製物またはその抽出物)を、PTP−S31タ ンパク質または糖タンパク質のエピトープに対して特異的な抗体と接触させ、そ して (b)サンプル物質への当該抗体の結合を検出するか、または結合した抗体の量 を測定し、 その結果として、PTP−S31タンパク質または糖タンパク質の存在を検出し 、その量を測定することを含んでいる。 本発明はまた、サンプル(好ましくは、被験者から得られた細胞または生物学 的サンプル)中の正常または変異型PTP−S31タンパク質または糖タンパク 質をコードする核酸の存在を検出する方法に関し、当該方法は、 (a)サンプル(例えば、細胞またはその抽出物)を、正常または変異型PTP −S31タンパク質または糖タンパク質の少なくとも一部をコードするオリゴヌ クレオチドプローブとハイブリダイゼーション条件下で接触させ、そして (b)細胞の核酸への当該プローブのハイブリダイゼーションを測定し、 その結果として、当該核酸の存在を検出することを含んでいる。サンプルの核酸 は、アッセイに先立って、例えばポリメラーゼ連鎖反応を用いることにより、選 択的に増幅することができる。 本発明はまた、サンプル(好ましくは、化学的または生物学的サンプル)にお いてPTP−S31タンパク質または糖タンパク質と結合することができる化合 物を同定または単離する方法に関し、当該方法は、 (a)固相マトリックスまたは担体にPTP−S31タンパク質もしくは糖タン パク質またはその化合物結合部分を結合させ、 (b)サンプルを固相マトリックスに結合させたPTP−S31と接触させて化 合物をPTP−S31に結合させ、未結合物質を洗い流し、そして (c)固相に結合した化合物の存在を検出する、 ことを含んでいる。単離を目的とする場合は、結合した化合物を次の段階(d) にかける: (d)結合した化合物を溶出し、これにより当該化合物を単離する。 本発明は、PTP−S31の酵素活性を刺激または阻害するこ とができる作用剤分子を同定する方法を包含し、当該方法は、 (a)作用剤を、純粋な形で、膜調製物としてまたは生存もしくは固定全細胞と して存在していてもよい、PTP−S31タンパク質もしくは糖タンパク質また はその断片と接触させ、 (b)段階(a)の混合物を十分な時間インキュベートし、 (c)PTP−S31の酵素活性を測定し、 (d)その酵素活性を、作用剤の不在下でインキュベートしたPTP−S31タ ンパク質または糖タンパク質の酵素活性と比較し、 その結果として、当該作用剤がPTP−S31の酵素活性を刺激するものなのか 、阻害するものなのかを判定することを含んでいる。 さらに、本発明は、(a)PTP−S31とその標的分子との、または(b) PTP−S31とその酵素活性を調節する分子との、相互作用を変調する作用剤 の能力に基づいて、PTP−S31作用のアゴニストまたはアンタゴニストを同 定する方法を提供する。かかる方法で同定された化合物は、PTP−S31機能 障害または損傷を受けたシグナル伝達と関連した疾患を治療するのに有用であり うる。 4.図面の説明 図1は、PCR断片からなるPTP−S31の部分cDNA配列〔配列番号3 〕および推定アミノ酸配列〔配列番号4〕を表す。 図2は、図1に示したPTP−S31のPCR断片の推定アミ ノ酸配列〔配列番号4〕とPTP 1Bのアミノ酸配列〔配列番号5〕(Cherno ffら,前掲)との比較を示す。GAPアラインメント法を採用した[Needleman ら,J.Mol.Biol.48:443-453(1970)]。 図3は、RD細胞cDNAライブラリー(#1)から得られたcDNAクロー ン(1.20.4)、PTP−S31CのcDNA配列〔配列番号6〕および推 定アミノ酸配列〔配列番号7〕を表す。この部分cDNA配列は図1に示したP CR断片のcDNA配列を含むものである。 図4は、図3に示したPTP−S31CのcDNAクローンの推定アミノ酸配 列とPTP 1Bのアミノ酸配列との比較を示す。GAPアラインメント法を採 用した(Needlemanら,前掲)。 図5は、オリゴヌクレオチド番号223および224を用いて得られたPCR 断片のcDNA配列〔配列番号8〕および推定アミノ酸配列〔配列番号9〕を表 す。 図6は、PTP−S31Dの結合されたcDNA配列〔配列番号10〕および 推定アミノ酸配列〔配列番号11〕を表す。このcDNA配列は図5に示したP CR断片のcDNA配列を含むものである。 図7は、PTP−S31Dのアミノ酸配列とPTP 1B、CD45の第1P TPドメイン〔配列番号12〕[Ralphら,EMBO J.6:1251-1257(1987)]およ びLAR〔配列番号13〕[Streuliら,J.Exp.Med.168:1523-1530(1988) ]のそれぞれの配列との比較を示す。CLUSTALプログラムを採用した[Hi ggins,C.ら,Multiple Sequence Alignment;CABIOS(1991)]。 図8は、基質としてp−ニトロフェニルホスフェート(pNP−P)を用いる PTP酵素アッセイの結果を示す。グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(G ST)/PTP−S31D融合タンパク質の活性と、GST/PTP−S31C 融合タンパク質およびグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(陰性対照)の活 性とを比較してある。 図9は、ヒト骨格筋mRNAから作製されたcDNAライブラリー(#2)よ り単離された最長PTP−S31DcDNAクローン(S31D−63)のcD NA配列〔配列番号14〕および推定アミノ酸配列〔配列番号15〕を表す。こ のクローンの5’末端はRD cDNAライブラリーから単離されたPTP−S 31Cクローン(図3)の5’末端と異なっている。矢印は、このクローンがP TP−S31Cと異なる位置を示す。 図10は、ヒト骨格筋cDNAライブラリー#2および#3において同定され た異なるタイプのPTP−S31クローンの模式図を表す。PTP−S31Cの cDNAクローン(図3)と異なる5’末端のみを示してある。 図11は、S31−14〔配列番号16〕、S31−2〔配列番号17〕、S 31−5〔配列番号18〕、S31−63〔配列番号19〕およびS31−II I〔配列番号20〕を含む、ヒト骨格筋において見いだされたPTP−S31変 異体の推定アミノ酸配列を表す。 図12は、RDλZAPIIcDNAライブラリー(ライブラリー#14)か ら単離されたcDNAクローン、PTPS31−RD#2の部分cDNA配列〔 配列番号21〕および推定アミノ 酸配列〔配列番号22〕を表す。推定上の膜貫通領域には下線が引いてある。 図13は、PTPS31−RD#2のアミノ酸配列の一部とインターロイキン 2受容体β鎖〔配列番号23〕とのアラインメントを示す。膜貫通領域に隣接す る細胞外ドメインの部分のみを示してある。 図14は、PTP−S31の細胞外領域のフィブロネクチンIII型様ドメイン を示す。最もC末端側のドメインはS31−FN−1で表され、最もN末端側の ドメインがS31−FN−4である。FN様ドメインをヒトフィブロネクチンの III型ドメイン(FN−IIIと記す)〔配列番号24〕[Kornblihttら,EMBO J. 4:1755-1759(1985)]に整列させてある。 図15は、PTPS31−RD#2の細胞外領域の一部のアミノ酸配列(図面 ではPTPS31と記す)とヒトインスリン受容体(IR)〔配列番号25〕、 ヒトインスリン様増殖因子1受容体(IGF1R)〔配列番号26〕およびヒト インスリン関連受容体(IRR)〔配列番号27〕とのアラインメントを表す。 5.発明の詳細な説明 組換えDNA法の使用により、本発明者らは、PTP−S31と命名された、 ヒト由来の新規な哺乳動物プロテインチロシンホスファターゼ(PTP;EC 3.1 .3.48)および数種のその誘導体を同定した。本発明者らは、この新規なタンパ ク質をコードするcDNAクローンを作製し、大腸菌および真核生物293細胞 においてこのタンパク質を発現させた。ノーザン分析により、種々 の細胞および組織における当該タンパク質の自然界での発現が確認された。さら に、PTP−S31変異体のPTP−S31Dを含む組換え融合タンパク質を用 いる免疫感作により、当該タンパク質に対するポリクローナル抗体が得られた。 5.1. PTP活性を変調する作用剤の同定 酵素活性を有するPTP−S31タンパク質もしくは糖タンパク質またはその 誘導体は、ホスファターゼ活性を増強または阻害しうる化合物を試験するために 使用することができる。ホスファターゼ活性を変更する試験化合物の能力はin v itro系で検査することができ、この系では、精製されたPTP−S31タンパク 質もしくは糖タンパク質またはその酵素活性誘導体に試験化合物が添加され、そ して酵素活性に及ぼす効果が当業者に公知の標準酵素学的手法により測定される 。 また、PTPに対する化合物の作用は、生細胞、固定細胞、または生細胞や固 定細胞から誘導された画分を用いる全細胞調製物で測定することもできる。この 方法は当該タンパク質、特に当該タンパク質の酵素部分に作用する化合物のスク リーニングに有用である。試験化合物は、トランスフェクションしたCOSまた はNIH−3T3細胞のような、本発明のPTPを多量に発現する細胞とともに 、または当該細胞から誘導される調製物とともにインキュベートされる。細胞性 ホスホチロシンの量は当技術分野で公知の方法を用いて測定される[Honeggerら ,Cell 51:199-209(1987);Margolisら,Cell 51:1101-1107(1989)]。その 結果を試験化合物の不在下で、または既知のPTP活性化剤の不在下も しくは存在下で得られた結果と比較する。こうした実験では、活性化剤チロシン キナーゼの存在下での試験化合物の作用も測定される。 PTP活性を刺激する化合物はホスホチロシン量の純減少をもたらすであろう が、PTP活性を阻害する化合物はホスホチロシン量の純増加をもたらすであろ う。 5.2. PTP機能または機能障害と関連した疾患の治療 本発明はまた、PTP−S31タンパク質もしくは糖タンパク質の異常発現と 関連した疾患または症状の治療を意図した医薬組成物中での、斯く同定されたア ンタゴニストまたはアゴニストの使用に関するものである。また、この医薬組成 物は、PTP−S31は正常であるがシグナル伝達経路の下流の1以上の欠損と 関連した疾患または症状の治療に、あるいは下流の欠損を伴わない症状の治療に さえも用いることができる。当該組成物は一般的に全身または局所の注射または 注入に適する剤形で、注射または注入用の担体を用いて製剤化される。 本発明はまた、PTP−S31の活性化を伴う疾患または症状を予防または治 療する方法に関し、当該方法は、かかる予防または治療を必要とする患者に、有 効投与量の本発明のPTP−S31タンパク質または糖タンパク質、あるいは本 発明の抗体または本発明のPTP−S31タンパク質の酵素活性を刺激または阻 害する分子を投与することを含んでなる。 上皮増殖因子(EGF)受容体および血小板由来増殖因子(PDGF)受容体 のような、チロシンキナーゼである増殖因子受容 体の場合には、チロシンのリン酸化が細胞増殖および癌形質転換に関連している 。脱リン酸化をもたらすPTPの活性化は、増殖を防止または阻止する逆の調節 機構として働き、癌に対する内因性調節機構として作用するかもしれない。従っ て、この受容体/酵素系の調節の突然変異が癌になるのを促進するのかもしれな い。 インスリン受容体もチロシンキナーゼであり、インスリン受容体を保有する細 胞でのチロシンのリン酸化はインスリンに関係した正常な生理学的機能と関連し ているだろう。インスリン受容体の細胞内側にある3個のチロシン残基は、イン スリンが細胞外ドメインに結合されるとリン酸化される。同時に、インスリン受 容体はそれ自体または他のタンパク質をチロシン残基においてリン酸化しうる活 性酵素となる。インスリン受容体の3個すべての細胞内チロシンのリン酸化は、 十分なチロシンキナーゼ活性にとって必要であるらしい。十分に活性なインスリ ン受容体は細胞内タンパク質をリン酸化することによって細胞(例えば、骨格筋 、肝臓など)にシグナルを伝達し、リン酸化によって活性化されたタンパク質は インスリンシグナル伝達経路を経てさらに下流に情報を伝える。従って、よく知 られたインスリンの生理学的作用はリン酸化現象のカスケードから生じるもので ある。 インスリンシグナル伝達は、チロシンキナーゼを脱リン酸化する(インスリン 受容体の場合には、非活性化する)ことができるPTPクラスの酵素によってし っかりと制御されている。インスリン受容体に対する活性を有するPTPの存在 は簡単に実証され得る。この情況において、PTPの活性化はインスリン作用を 打ち消し、一方、PTPの阻害はインスリン作用を模倣するはずで ある。実際、PTPを阻害するペルバナデートで骨格筋や脂肪細胞のような全細 胞を処理すると、ほぼ完全なインスリン応答が誘導される[Fantus,I.G.ら,Bi ochemistry 28:8864-8871(1989);Leighton,B.ら,Biochem.J.276:289-292 (1989)]。いったんインスリン受容体に特異的に作用するPTPが同定される と、そのPTPは、ペルバナデートのような、ホスファターゼを阻害してインス リンの作用を模倣する化合物を同定するための、高処理量スクリーニング系で、 または合理的なドラッグデザインのために使用される。 PTPの過剰活性または不適切な活性化は、細胞に対するインスリンの作用を 抑制または全体的に阻害して(インスリン抵抗性の)糖尿病を起こすことが予想 されるだろう。従って、糖尿病に罹りやすいということは、PTPの調節障害と 関連していて、PTP−S31を含むPTP活性の測定により診断できるかもし れない。 かくして、正常または変異型のPTP−S31遺伝子を同定するための、ある いは細胞または組織に関係したPTP−S31の量または活性を測定するための 本発明の方法は、癌や糖尿病、または細胞性ホスホチロシン代謝の変調と関連し た他の疾患への罹病性を確認する方法として有用でありうる。さらに、PTP− S31タンパク質、その機能性誘導体、それにPTP−S31酵素活性を変調( 活性化または阻害)する作用剤は、癌や糖尿病のような疾患の発症を処置または 予防するために使用できるかもしれない。 5.3. PTP−S31タンパク質または核酸の検出および測定 本発明は、被験者における正常または変異型のPTP−S31の存在およびレ ベルを評価するための方法を提供する。個体におけるPTP−S31の不在、よ り一般的にはPTP−S31の低レベル発現、または変異型PTP−S31の存 在は、癌形質転換を起こしやすいこと、そして癌を発症することの重要な指標と して役に立つかもしれない。また、PTP−S31の過度の発現(おそらく、負 の調節に無感応性の変異型受容体/酵素系によるか、またはあり余るほどの刺激 因子が生体中に存在することによる)は糖尿病に罹りやすいことの重要な指標と して役に立つかもしれない。 PTP−S31のさまざまな部分をコードするオリゴヌクレオチドプローブを 用いて、PTPをコードするDNAまたはRNA配列の存在について被験者由来 の細胞を試験することができる。プレプローブは本発明のPTP−S31タンパ ク質または糖タンパク質の少なくとも4個のアミノ酸残基、好ましくは少なくと も5個のアミノ酸残基をコードする核酸配列に向けられたものであるだろう。定 性または定量アッセイはこうしたプローブを用いて行うことができる。例えば、 細胞または組織調製物中のPTPmRNAの発現を測定するためには、ノーザン 分析(下記実施例を参照)を用いる。 かかる方法は、個体から得られたDNAがきわめて少量であっても、選択的な 増幅技術を採用した後で使用することができる。精製した核酸断片を増幅しうる 組換えDNA方法論はすでに久しく認められている。一般的に、こうした方法論 はDNAまたはR NAベクターへの核酸断片の導入、当該ベクターのクローン増幅、そして増幅さ れた核酸断片の回収を含むものである。こうした方法論は、例えばCohenら(米 国特許第4,237,224号)、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manua l,第2版,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1989)に提 示されており、これらの開示内容を参考としてここに組み入れる。 目的の核酸分子の濃度を高めることができるin vitro酵素的方法は「ポリメラ ーゼ連鎖反応(PCR)」と呼ばれているものである〔Mullisら,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263-273(1986);Erlichら,EP 50,424;EP 84 ,796,EP 258,017,EP 237,362;Mullis,K.,EP 201,184;Mullisら,US 4,683 ,202;Erlich,H.,US 4,582,788;およびSaikiら,US 4,683,194〕。PCRは 、特定の核酸配列が前もって精製されておらず、特定サンプル中に単一コピーで 存在しているにすぎないときでさえ、その配列の濃度を選択的に増大させる方法 を提供する。この方法は一本鎖と二本鎖のいずれのDNAを増幅するためにも使 用できる。この方法の本質は、目的とする核酸分子の鋳型依存性ポリメラーゼ媒 介複製のプライマーとして作用する2つのオリゴヌクレオチドプローブを使用す ることにある。 PCR法を成功させるためには、用いる2つのオリゴヌクレオチドプローブの 正確な本性が最も重要となる。周知であるように、DNAまたはRNAの分子は この分子のリン酸基の5’−3’結合により与えられる方向性を有する。DNA またはRNAの配列は、1つの配列の末端5’リン酸基と第2の配列の末端3’ ヒドロキシル基の間のホスホジエステル結合の形成により一緒に結合 されている。核酸分子の3’ヒドロキシル末端への5’ヌクレオチド三リン酸の ポリメラーゼ依存性増幅。従って、ポリメラーゼの作用は核酸分子の3’末端を 伸長する。PCRのオリゴヌクレオチドプローブを選択する際には、これらの固 有の性質が利用される。PCRのプローブのオリゴヌクレオチド配列は、それら が増幅しようとする特定の核酸配列の両末端に隣接する配列と同一のまたは相補 的な配列を含むように選択される。 より詳細には、「第1」プローブのオリゴヌクレオチド配列は、それが目的の 配列の3’側にあるオリゴヌクレオチド配列とハイブリダイズできるように選ば れ、一方、「第2」プローブのオリゴヌクレオチド配列は、それが目的の領域の 5’側に存在する配列と同一のオリゴヌクレオチド配列を含むように選ばれる。 両プローブとも3’ヒドロキシ基を有し、それゆえに核酸合成のプライマーとし て働くことができる。 PCRでは、ハイブリダイゼーションおよび核酸重合へ導く反応条件と、二本 鎖分子を変性させる反応条件とが周期的に繰り返し用いられる。第1の反応段階 において、存在しうる二本鎖分子を変性させるために、サンプルの核酸を一時的 に加熱し、その後冷却する。続いて、「第1」および「第2」のプローブを、目 的の核酸分子の濃度をはるかに超える濃度でサンプルに加える。このサンプルを ハイブリダイゼーションおよび重合へ導く条件下でインキュベートすると、「第 1」プローブは増幅しようとする配列の3’側の位置でサンプルの核酸分子にハ イブリダイズするだろう。サンプルの核酸分子が初めに二本鎖であったならば、 「第2」プローブが増幅しようとする配列の相補鎖である配列の3’ 側の位置で核酸分子の相補鎖にハイブリダイズするだろう。ポリメラーゼを添加 すると、「第1」および(核酸分子が二本鎖である場合には)「第2」のプロー ブの3’末端が伸長されるだろう。「第1」プローブの伸長は目的の核酸の正確 な配列を有するオリゴヌクレオチドの合成をもたらすこととなり、「第2」プロ ーブの伸長は目的の核酸の相補鎖の正確な配列を有するオリゴヌクレオチドの合 成をもたらすこととなる。 PCR反応は特定の核酸配列の指数的増幅を可能とするものである。なぜなら ば、「第1」プローブの伸長産物は必然的に「第2」プローブの配列に相補的な 配列を含み、従って、「第2」プローブの伸長産物を作るための鋳型として働く ことができるからである。同様に、「第2」プローブの伸長産物は必然的に「第 1」プローブの配列に相補的な配列を含み、従って、「第1」プローブの伸長産 物を作るための鋳型として働くことができる。こうして、ハイブリダイゼーショ ン、重合および変性のサイクルを実施することにより、目的の核酸分子の濃度の 幾何学的増加が達成される。PCRの総説については、Mullisら,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263-273(1986);Saikiら,Bio/Technology 3: 1008-1012(1985);およびMullisら,Meth.Enzymol.155:335-350(1987)を 参照されたい。 5.4. PTP−S31タンパク質および機能性誘導体 ある実施態様において、本発明は、天然に存在する哺乳動物PTP−S31タ ンパク質または糖タンパク質に関する。別の実施態様において、本発明は、組換 え体の哺乳動物PTP−S31タ ンパク質または糖タンパク質に関する。本発明の好ましいPTP−S31タンパ ク質または糖タンパク質はヒトに由来するものである。本発明は、自然界で結合 している他のタンパク質を実質的に含まない天然に存在する分子を提供する。「 他のタンパク質を実質的に含まない」とは、そのタンパク質が、自然界で結合し ている他のタンパク質および糖タンパク質の少なくとも90%(重量基準)、そ れどころか、少なくとも99%を失って精製されており、それゆえ、実質的にそ れらを含まないことを指す。これは、RPTPを含む細胞、組織または体液を標 準的なタンパク質精製技術、例えば当該タンパク質と反応性のモノクローナル抗 体を担持する免疫吸着カラムにかけることによって達成される。アフィニティー 精製の他の形態は、PTPドメインと結合しうる固相支持体、または受容体ドメ インに結合しうるリガンドを利用することができる。また、硫酸アンモニウム沈 殿、分子ふるいクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーといった標 準的方法を組み合わせても精製することができる。 他の実施態様において、本発明は、PTP−S31またはその少なくとも9連 続アミノ酸、好ましくは少なくとも10、15、20または30連続アミノ酸に 相当するアミノ酸配列を有するペプチドに関する。 本発明の哺乳動物PTP−S31はさまざまな細胞または組織の供給源から生 化学的に精製し得ることが理解されよう。天然に存在するPTP−S31の調製 のためには、哺乳動物の骨格筋、特にヒト由来のものが好適である。 また、PTP−S31をコードする核酸分子は単離または合成 することが可能であるので、所望であれば、原核生物または哺乳動物以外の真核 生物において、自然界で結合している他のタンパク質または糖タンパク質を実質 的に含まないポリペプチドを合成することができる。本発明が意図するところの 、哺乳動物細胞(例えば、トランスフェクションしたCOS、NIH−3T3、 CHO、293細胞など)内で産生される組換えPTP−S31分子は天然に存 在するタンパク質配列またはその機能性誘導体である。天然に存在するタンパク 質が組換え手段によって産生される場合、それは、それが自然界で結合している 他のタンパク質および糖タンパク質を実質的に含まない形態で提供される。 また、固相支持体上で目的の配列のポリペプチドを合成し、その後それを支持 体から分離する方法も公知である。 更なる実施態様において、本発明はPTP−S31の「機能性誘導体」を提供 する。「機能性誘導体」とは、PTP−S31の「断片」、「変異体」、「類似 体」または「化学的誘導体」を指し、これらの用語は以下で定義することにする 。機能性誘導体はPTP−S31の機能の少なくとも一部、例えば特異的抗体へ の結合またはホスファターゼ酵素活性、を保持する。 PTP−S31の「断片」は当該分子の任意のサブセット、すなわち、より短 いペプチドを指す。「断片」という用語は、PTP−S31タンパク質をコード するDNA配列を適切に修飾して当該天然配列のC末端、N末端または内部の1 以上の部位で1個以上のアミノ酸の欠失を生じさせることにより、天然に存在す るタンパク質配列を有するPTP−S31タンパク質から誘導されたポリペプチ ドを示すために使用される。PTP−S31タンパ ク質または糖タンパク質の断片は、アンタゴニストやアゴニスト(以下で定義す る)の化合物をスクリーニングするのに有用である。PTP−S31タンパク質 または糖タンパク質のこのような断片は天然PTP−S31の特徴的な部分を保 持しうることが理解されよう。特に、こうした断片は無傷のPTP−S31タン パク質または糖タンパク質に特徴的な生物学的活性または機能を1以上保持すべ きである。PTP−S31断片の例として、a)触媒ドメイン、b)無傷の細胞 において他の分子と相互作用するPTP−S31タンパク質または糖タンパク質 の領域、c)PTP−S31の調節部分が挙げられるが、これらの例は本発明の 範囲をいかなる場合も限定するものではない。 PTP−S31の「変異体」は、完全なペプチドまたはその断片に実質的に類 似している分子を指す。変異型ペプチドは、当技術分野で公知の方法を用いて、 変異型ペプチドの直接化学合成を行うことにより有利に製造することができる。 別法として、ペプチドのアミノ酸配列変異体は、合成ペプチドをコードするD NAの突然変異によっても製造することができる。こうした変異体は例えばアミ ノ酸配列内の残基の欠失、挿入または置換を含む。最終構築物が所望の活性を保 有するという前提で、最終構築物に至るまでに欠失、挿入、置換を任意に組み合 わせてもよい。明らかなことであるが、変異型ペプチドをコードするDNAに対 して行われる突然変異はリーディングフレームを変更するものであってはならず 、また、二次mRNA構造を形成しうる相補領域が生じないようにすることが好 ましい(欧州特許公開EP 75,444を参照のこと)。 更なる態様において、本発明は、PTP−S31タンパク質をコードするDN A配列を適切に修飾して当該天然配列のC末端、N末端または内部の1以上の部 位で1個以上のアミノ酸の付加を生じさせることにより、天然に存在するPTP −S31タンパク質または糖タンパク質から誘導された、追加のアミノ酸を有す るPTP−S31タンパク質または糖タンパク質を提供する。追加のアミノ酸を 有するPTP−S31タンパク質または糖タンパク質は、天然のPTP−S31 タンパク質または糖タンパク質の特徴的な部分を保持しうることが理解されよう 。特に、このような追加のアミノ酸を有するPTP−S31タンパク質または糖 タンパク質は、PTP−S31タンパク質または糖タンパク質に特徴的な生物学 的活性または機能を1以上保持すべきであり、その例として、(a)触媒活性、 (b)基質特異性、(c)無傷の細胞中の他の分子との相互作用、(d)調節機 能を挙げることができる。これらの例は本発明の範囲をいかなる場合も限定する ものではない。 更なる態様において、本発明は、PTP−S31タンパク質をコードするDN A配列を適切に修飾するかまたは変異を起こさせて天然アミノ酸配列のC末端、 N末端または内部の1以上の部位で1個以上のアミノ酸の置換を生じさせること により、天然に存在するPTP−S31タンパク質または糖タンパク質から誘導 された、置換アミノ酸を有するPTP−S31タンパク質または糖タンパク質を 提供する。このような置換アミノ酸を有するPTP−S31タンパク質または糖 タンパク質はPTP−S31の特徴的な部分を保持し、好ましくは、無傷のPT P−S31タンパク 質または糖タンパク質に特徴的な生物学的活性または機能を1以上保持すべきで あることが理解されよう。例えば、(a)触媒活性、(b)基質特異性、(c) 無傷の細胞中の他の分子との相互作用、(d)調節機能などが挙げられるが、こ れらの例は本発明の範囲をいかなる場合も限定するものではない。 PTP−S31機能性誘導体の最終構築物が無傷のPTP−S31タンパク質 または糖タンパク質に存在する所望の活性または機能、例えば(a)触媒活性、 (b)基質特異性、(c)in vitroおよびin vivoでの他の分子との相互作用、 (d)調節機能、を保有するという前提で、最終構築物に至るまでに欠失、挿入 、置換を任意に組み合わせることができる。欠失、挿入、置換を任意に組み合わ せた後では、このような活性または機能のただ1つを保持する必要がある。これ らの例は本発明の範囲をいかなる場合も限定するものではない。明らかなことで あるが、PTP−S31タンパク質をコードするDNAに対して行われる修飾ま たは突然変異はリーディングフレームを変更するものであってはならず、また、 二次mRNA構造を形成しうる相補領域が生じないようにすることが好ましい( 欧州特許公開EP 75,444を参照のこと)。通常、これらの変異体は、遺伝子レベ ルで、ペプチド分子をコードするDNA中のヌクレオチドに〔Adelmanら,DNA 2 :183(1983)に例示される〕部位特異的突然変異を誘起させて変異体をコードす るDNAを作製し、その後、組換え細胞培養物において当該DNAを発現させる ことにより得られる(下記参照)。変異体は一般的には非変異型ペプチドと定性 的に同じ生物学的活性を示す。 PTP−S31の「類似体」は完全な分子またはその断片に実質的に類似した 非天然分子を指す。 PTP−S31の「化学的誘導体」は、普通はそのペプチドの一部ではない追 加の化学成分を含むものである。本発明の範囲にはペプチドの共有結合修飾が含 まれる。このような修飾は、ペプチドの標的アミノ酸残基を、所定の側鎖または 末端残基と反応し得る有機誘導体化剤と反応させることにより、当該分子に導入 することができる。 最も一般的には、システイニル残基をクロロ酢酸やクロロアセトアミドのよう なα−ハロアセテート(または対応アミン)と反応させると、カルボキシメチル またはカルボキシアミドメチル誘導体が得られる。また、システイニル残基はブ ロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミダゾイル)プロピオン 酸、クロロアセチルホスフェート、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2− ピリジルジスルフィド、メチル2−ピリジルジスルフィド、p−クロロメルクリ ベンゾエート、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール、またはクロロ−7 −ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応により誘導体化され る。 ヒスチジル残基はジエチルピロカルボネートとpH5.5〜7.0で反応させ ることにより誘導体化される。この試薬はヒスチジル側鎖に対して割合に特異的 である。p−ブロモフェナシルブロミドも有用である。この反応は0.1Mのカ コジル酸ナトリウム中でpH6.0で行うことが好ましい。 リシニル残基およびアミノ末端残基はコハク酸または他のカルボン酸の無水物 と反応しうる。これらの試薬による誘導体化はリ シニル残基の電荷を反対にする効果を有する。α−アミノ含有残基を誘導体化す るのに適した他の試薬として、メチルピコリンイミデートのようなイミドエステ ル類、ピリドキサルリン酸、ピリドキサール、クロロボロハイドライド、トリニ トロベンゼンスルホン酸、O−メチルイソ尿素、2,4−ペンタンジオン、およ びグリオキシル酸とのトランスアミナーゼ触媒反応を挙げることができる。 アルギニル残基は1種以上の慣用試薬、中でも、フェニルグリオキサール、2 ,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオンおよびニンヒドリンとの反 応により誘導体化される。アルギニン残基の誘導体化は、グアニジン官能基の高 いpKaのために反応をアルカリ性条件下で行う必要がある。さらに、これらの 試薬はアルギニンのε−アミノ基だけでなくリシンのアミノ基とも反応しうる。 チロシル残基は化学的修飾のための、特に、芳香族ジアゾニウム化合物または テトラニトロメタンとの反応によりチロシル残基へ分光標識を導入するための、 公知の部位である。最も一般的には、O−アセチルチロシル種および3−ニトロ 誘導体を形成させるために、それぞれ、N−アセチルイミダゾールおよびテトラ ニトロメタンが用いられる。 カルボキシル側基(アスパルチルまたはグルタミル)はカルボジイミド類(R ’−N−C−N−R’)、例えば1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル −4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4 −ジメチルペンチル)カルボジイミドとの反応により選択的に修飾される。さら に、 アスパルチルおよびグルタミル残基はアンモニウムイオンとの反応によりアスパ ラギニルおよびグルタミニル残基に変換される。 グルタミニルおよびアスパラギニル残基はしばしば対応するグルタミルおよび アスパルチル残基に脱アミド化される。また、これらの残基は弱酸性条件下でも 脱アミド化される。これらの残基のいずれの形態も本発明の範囲に含まれる。 二官能性試薬による誘導体化はペプチドを水不溶性の支持体マトリックスまた は他の巨大分子担体へ架橋させるのに有用である。慣用の架橋剤としては、例え ば1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン;グルタルアルデヒド ;N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4−アジドサリチル酸とのエ ステル;ホモ二官能性イミドエステル、例えば3,3’−ジチオビス(スクシン イミジル−プロピオネート)のようなジスクシンイミジルエステル;および二官 能性マレイミド、例えばビス−N−マレイミド−1,8−オクタンなどがある。 メチル−3−〔(p−アジドフェニル)ジチオ〕プロピオイミデート中間体のよ うな誘導体化剤は光線の存在下で架橋を形成することが可能である。また、臭化 シアン活性化炭水化物のような水不溶性の反応性マトリックスおよび米国特許第 3,969,287号、第3,691,016号、第4,195,128号、第4,247,642号、第4,229,537号 、および第4,330,440号に記載される反応性支持体はタンパク質の固定化に使用 される。 その他の修飾には、プロリンまたはリシンのヒドロキシル化、セリルまたはト レオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニンおよびヒスチジ ン側鎖のα−アミノ基のメチル化 [T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecule Properties,W.H.Free man & Co.,Francisco,pp.79-86(1983)]、N末端のアセチル化、そして、 ある場合には、C末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。 このような誘導体化成分は溶解性、吸着、生物学的半減期などを改善しうる。 また、これらの成分はタンパク質などの望ましくない副作用をなくしたり、弱め たりすることができる。こうした効果を仲介し得る成分は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences,16th ed.,Hack Publishing Co.,Easton,PA(1980 )に記載されている。 5.5. キメラPTP−S31分子 更なる態様において、本発明は、他のPTPから構成された、いわゆるキメラ 分子を提供し、キメラ分子は1以上の特定アミノ酸配列が他のPTPタンパク質 または糖タンパク質由来の相同配列で置き換えられたものである。キメラ分子は 、例えば、PTP−S31タンパク質または糖タンパク質の一部にグラフトされ たリガンド結合性細胞外ドメインを有する受容体型PTP(RPTP)タンパク 質または糖タンパク質を含むことができる。本発明の範囲に含まれる他のキメラ 分子には、触媒ホスファターゼドメインがPTP−S31由来のホスファターゼ ドメインで置き換えられたPTPが含まれる。この場合、好ましいアミノ酸の数 は220〜260である。 「相同配列」とは、一次配列において同様に位置づけられた、配列相同性を示 しうる、2以上のPTP中の配列と定義される。 「相同配列」は高い相同度を有する場合に限るべきでないことが強調されるべき である。キメラ分子は構造と機能の関係を解明しかつ特定の化合物(薬剤)を確 認するための重要な道具である。かくして、最も有用なキメラはしばしば、しか し常にそうとは限らないが、ある分子のある部分が、他の点では相同な別の配列 に由来する同様に位置づけられた異なる配列で置き換えられた分子である。従っ て、交換される部分はしばしば、それらが最大限度相違している分子の部分に相 当するだろう。 5.6.PTP−S31に特異的な抗体、およびPTP−S31の検出または測 定におけるそれらの使用 本発明はまた、PTP−S31タンパク質または糖タンパク質の(最も好まし くはヒトPTP−S31の)エピトープに特異的な抗体、ならびに、細胞、細胞 あるいは組織抽出物、または生物学的流体中におけるPTP−S31タンパク質 または糖タンパク質の存在の検出、または量あるいは濃度の測定のためのそのよ うな抗体の使用に向けられている。 「抗体」という用語はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、 キメラ抗体および抗イディオタイプ(抗-Id)抗体を含むものである。 ポリクローナル抗体は、抗原によって免疫感作された動物の血清から誘導され た抗体分子の異種集団である。 モノクローナル抗体は、特定の抗原に対する抗体の実質的に同種の集団である 。mAbは当業者に公知の方法で得ることができる。例えば、KohlerおよびMils tein,Nature 256:495-497(1975)および米国特許第4,376,110号を参照された い。このような抗体は、IgG,IgM,IgE,IgAおよびIgDを含む任意のイムノグロ ブリンクラスおよびその任意のサブクラスのものでありうる。本発明のmAbを 産生するハイブリドーマは、in vitroまたはin vivoで培養できる。in vivoでの 高力価なmAbの産生は、この方法を現在における好ましい産生方法としている 。簡単に述べると、個々のハイブリドーマ由来の細胞をプリスタンを投与したBA LB/cマウスの腹腔内に注入し、所望のmAbを高濃度で含む腹水を生成させる。 イソタイプIgMまたはIg GのmAbは、このような腹水から、または培養上清から、当業者に周知のカラ ムクロマトグラフィー法によって精製することができる。 キメラ抗体は、その異なる部分が異なる動物種に由来する分子である。例えば 、マウスmAb由来の可変部とヒトイムノグロブリン定常部を有する分子である 。キメラ抗体およびその作製方法は当分野では公知である[Cabillyら,Proc.N atl.Acad.Sci.USA 81:3273-3277(1984);Morrisonら,Proc.Natl.Acad. Sci.USA 81:6851-6855(1984);Boulianneら,Nature 312:643-646(1984); Neubergerら,Nature 314:268-270(1985);Taniguchiら,ヨーロッパ特許出願 第171496号(1985年2月19日);Morrisonら,ヨーロッパ特許出願第173494号( 1986年3月5日);Neubergerら,PCT出願WO86/01533(1986年3月13日);Kudo ら,ヨーロッパ特許出願第184187号(1986年6月11日公開);Sahaganら,J.Imm unol.137:1066-1074(1986);Robinsonら,国際特許広報#PCT/US86/02269(1 987年5月7日公開);Liuら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439-3443(198 7);Sunら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214-218(1987);Betterら,Sci ence 240:1041-1043(1988)]。これらの文献は参考としてここに組み入れる。 抗イディオタイプ(抗-Id)抗体は、一般に抗体の抗原結合部位と関係した特 異な決定基を認識する抗体である。抗-Id抗体は、mAbの供給源としての同一 種で同一遺伝子型の動物(例えばマウス系統)を、mAb(これに対して抗-Id 抗体が調製される)で免疫感作して調製することができる。免疫感作され た動物は免疫感作抗体のイディオタイプ決定基を認識し、これらイディオタイプ 決定基に対する抗体(抗-Id抗体)を産生することによって応答する。 抗-Id抗体は、別の動物中に免疫応答を誘導し、いわゆる抗-抗-Id抗体を産生 させるための「免疫原」としても使用できる。この抗-抗-Id抗体は、抗-Id抗体 を誘導した最初のmAbとエピトープ的に同一でありうる。したがって、mAb のイディオタイプ決定基に対する抗体を使用することによって、同一の特異性を 有する抗体を発現する他のクローンを同定することが可能である。 したがって、PTP−S31に対して作製されたmAbは、適切な動物(例え ばBALB/cマウス)中に抗-Id抗体を誘導するために使用できる。このような免疫 感作マウス由来の脾細胞は、抗-Id mAbを分泌する抗-Idハイブリドーマを作 製するのに使用される。さらに、抗-Id mAbをキーホールリンペットヘモシア ニン(KLH)等の担体に結合させ、さらなるBALB/cマウスを免疫感作するのに使 用することができる。これらのマウス由来の血清は、PTP−S31エピトープ に特異的な最終mAbの結合特性を有する抗-抗-Id抗体を含有する。 したがって抗-Id mAbはそれ自身のイディオタイプエピトープ、または本明 細書によって評価されるエピトープ、例えばPTP−S31エピトープと構造的 に類似した「イディオトープ」を有する。 「抗体」という用語はまた、完全な分子およびその断片の両方を含むものであ る。断片の例としては、抗原と結合可能なFa bおよびF(ab')2があげられる。FabおよびF(ab')2断片は、完全な抗体のFc断片を 欠き、循環系からより迅速に消失する;また、完全な抗体に較べ、非特異的組織 結合が少ない場合がある[Wahlら,J.Nucl.Med.24:316-325(1983)]。 本発明において有用なFab、F(ab')2およびその他の断片は、本明細書に開示す る完全な抗体分子に対する検出・定量方法にしたがって、PTP−S31の検出 および定量に使用できることが理解されるであろう。このような断片は典型的に はパパイン(Fab断片を作製のため)またはペプシン(F(ab')2断片作製のため) 等の酵素を用いるタンパク質分解開裂により作製される。 抗体は、ある分子と特異的反応が可能で、それによってその分子を抗体に結合 させるならば、その分子と「結合可能」であるといわれる。「エピトープ」とい う用語は、任意の分子における抗体によって結合されうる部分で、その抗体によ って認識されうる部分を指すものである。エピトープまたは抗原決定基は通常ア ミノ酸または糖側鎖等の化学的に活性な表面グルーピング(groupings)からな り、特定の3次元構造および特定の電荷に特徴を有する。 「抗原」とは抗体によって結合されうる分子または分子の一部であり、これは さらに動物のうちに該抗原のエピトープと結合可能な抗体の産生を誘導すること が可能である。抗原は1つまたはそれ以上のエピトープを有する。上記に言及し た特異的反応は、抗原は高度に選択的な方法で対応する抗体と反応するが、他の 抗原によって引き出される多数の他の抗体とは反応し ないことを示すものである。 本発明において有用な抗体または抗体断片は、PTP−S31を発現する細胞 の存在を定量的に検出するために使用できる。この検出は、蛍光標識抗体(下記 参照)を用いる免疫蛍光技法と光学顕微鏡、フローサイトメトリーまたは蛍光定 量法による検出を組み合わせることによって実施できる。 本発明において有用な抗体(またはその断片)は免疫電子顕微鏡法の免疫蛍光 に用いるなど、PTP−S31のin situ検出のために組織学的に使用すること ができる。in situ検出は、患者から組織学的標本を採取し、その標本に本発明 の標識化抗体を給供することにより実施することができる。抗体(またはその断 片)は、好ましくは生物学的試料に標識化抗体(またはその断片)をアプライま たは重層させることにより供される。このような手順を用いることにより、PT Pの存在のみならず検査組織におけるその分布も測定可能である。当業者は、こ のようなin situ検出を実施するために本発明を用いて多様な組織学的方法の任 意のもの(例えば染色法)を改変しうることが容易に分かるであろう。PTP− S31のこのようなアッセイは、生物学的試料(例えば生物学的流体)、組織抽 出物、新たに回収した細胞(例えばリンパ球または白血球)、または組織培養で 培養された細胞を、PTP−S31を同定することのできる検出可能に標識され た抗体の存在下でインキュベートし、当分野で周知の多数の技法のうち任意の技 法により上記抗体を検出することからなる。 生物学的試料は、ニトロセルロース等の固相支持体、または 細胞、細胞微粒子あるいは可溶性タンパク質を固定化できる他の固相支持体で処 理することができる。次に、支持体を適切な緩衝液で洗浄し、その後、検出可能 に標識されたPTP−S31特異的抗体で処理することができる。次に緩衝液を 用いて固相支持体に2度目の洗浄をほどこし未結合抗体を除去することができる 。次に、該固相支持体上の結合標識の量を従来の手段により検出できる。 「固相支持体」という用語は、抗原または抗体と結合可能な任意の支持体を意 味する。周知の支持体または担体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン 、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および変性セルロ ース、ポリアクリルアミド、斑糲岩および磁鉄鉱が含まれる。本発明の目的のた めには、担体の性質はある程度可溶性でも、または不溶性でもよい。支持体材料 は、そこに結合される分子が抗原または抗体と結合可能でありさえすれば、事実 上取りうる任意の構造的配置を取ってよい。したがって支持体の配置はビーズに おけるように球状でも、試験管の内側表面または棒の外側表面におけるように円 柱状でもよい。または、支持体の表面はシートまたは試験片等のように平坦であ ってもよい。好ましい支持体にはポリスチレンビーズが含まれる。当業者は抗体 または抗原を結合させるための他の適切な担体を多数知っているか、または通常 の実験を行なうことによってそれらを知ることができるであろう。 所定のロットの抗PTP−S31抗体の結合活性は、周知の方法により測定す ることができる。当業者は、通常の実験を行 なうことによって各測定に対する具体的および最適アッセイ条件を決定すること が可能であろう。 上記アッセイに、通例のように、または特定の状況に応じて、洗浄、攪拌、振 とう、濾過等の他の工程を加えることができる。PTP−S31特異的抗体を検 出可能に標識する方法の1つは、該抗体を酵素に連結し、エンザイムイムノアッ セイ(EIA)に使用するものである。この酵素は後に適切な基質に暴露された とき、分光測光的、蛍光定量法的、または視覚的手段により検出されうる化学的 成分を生ずるような方法で基質と反応する。抗体を検出可能に標識するために使 用できる酵素は以下のものを含むがそれらだけに限定されない。すなわち、リン ゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソ メラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロリン酸デヒドロゲナ ーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ ホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシ ダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸 デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼである 。検出は該酵素に対する色原体基質を用いる比色法によって実施できる。検出は また、同様に調製された標準品と較べての基質の酵素反応の度合いを視覚的に比 較することによっても実施できる。 検出は、他の種々のイムノアッセイの任意のものを用いて実施できる。たとえ ば、抗体または抗体断片を放射性標識することにより、ラジオイムノアッセイ( RIA)を用いてRPTP を検出することが可能である(例えば、Work,T.S.ら,Laboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology,North Holland Publishing Company ,New York,1978参照。これは参考としてここに組み入れる)。放射性同位体は ガンマカウンターまたはシンチレーションカウンターの使用等の手段により、ま たはオートラジオグラフィーにより検出できる。 また、抗体を蛍光化合物で標識することも可能である。蛍光標識された抗体が 適切な波長の光に暴露されると、蛍光のためにその存在が検出できる。最もよく 使用される蛍光化合物には、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、 フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、ο-フタルアルデヒ ドおよびフルオレサミンがあげられる。 抗体は、152Euまたはランタニド系列の他の金属等の蛍光発光金属を用いて も検出可能に標識することができる。これらの金属は、ジエチレントリアミン5 酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン4酢酸(EDTA)等の金属キレート 化剤を用いて抗体に結合させることができる。 抗体は、化学発光化合物と結合させることによっても検出可能に標識すること ができる。化学発光化合物を付けられた抗体の存在は、化学反応の進行中に生ず る発光の存在を検出することにより確認される。特に有用な化学発光標識化合物 の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティック(theromatic)アクリジ ニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルであ る。 同様に、生物発光化合物も本発明の抗体を標識するのに使用 できる。生物発光は生物学的系に見いだされる一種の化学発光で、そこでは触媒 となるタンパク質が化学発光反応の効率を増大させる。生物発光タンパク質の存 在は、発光の存在を検出することにより確認される。標識の目的にとって重要な 生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。 本発明の抗体分子は、「2部位」または「サンドイッチ」アッセイとして知ら れている免疫測定アッセイに使用するために適合させることが可能である。典型 的な免疫測定アッセイにおいては、ある量の非標識抗体(または抗体断片)を固 相支持体に結合させ、ある量の検出可能に標識された可溶性抗体を添加して、固 相抗体、抗原および標識化抗体の間で形成される3成分複合体の検出および/ま たは定量を可能とする。 典型的で、かつ好ましい免疫測定アッセイには、固相支持体に結合した抗体を まず試験すべき試料に接触させて、2成分の固相抗原−抗体複合体の形成により 試料から抗原を抽出する「前進(forward)」アッセイが含まれる。適切なイン キュベーション期間の後、固相支持体を洗浄し、もしあれば未反応抗原を含む流 体試料の残留物を除去し、次に未知の量の標識化抗体(これは「リポーター分子 」として機能する)を含有する溶液に接触させる。標識化抗体が非標識抗体を介 して固相支持体に結合した抗原に結合するのを可能とする第2のインキュベーシ ョン期間の後、固相支持体に2回目の洗浄をほどこし、未反応の標識化抗体を除 去する。 本発明の抗原にとって有用でありうる別のタイプの「サンド イッチ」アッセイにおいては、所謂「同時」および「逆(reverse)」アッセイ が用いられる。同時アッセイは、固相支持体に結合した抗体と標識化抗体の両方 を試験すべき試料に同時に加えるので、インキュベーション工程を1回のみ含む 。インキュベーションの完了後、固相支持体を洗浄して流体試料の残留物および 未結合の標識化抗体を除去する。次に、固相支持体と結び付いた標識化抗体の存 在を従来の「前進」サンドイッチアッセイの場合と同様に検出する。 「逆」アッセイにおいては、まず標識化抗体の溶液を流体試料に添加し、次に 適切なインキュベーション期間の後に固相支持体に結合した非標識抗体を添加す るという段階的添加が使用される。第2のインキュベーション後、固相支持体を 従来の方法で洗浄して、それから試験すべき試料の残留物および未反応標識化抗 体の溶液を除去する。次に、固相支持体に結合された標識化抗体の測定が、「同 時」および「前進」アッセイの場合と同様に実施される。 被験者における正常に機能するPTP−S31の存在もまた直接酵素アッセイ 、好ましくはチロシンホスファターゼ活性のアッセイを用いて試験することがで きる。このような生化学的測定は、精製した酵素を用いて、酵素活性の正確な測 定を可能にして、または正味ホスホチロシンレベルを測定する際には膜調製物あ るいは全細胞を用いてin vitroで実施することができる。 5.7.PTP−S31をコードする核酸分子 本発明のさらなる態様において、PTP−S31分子をコードするDNA配列 および該DNA配列の発現方法が提供される。当業者は、本発明の遺伝子配列お よびオリゴヌクレオチドを用いることにより、過度の実験をすることなく、いか にしてヒトまたは他の哺乳動物種の、本明細書に記述されるPTP−S31タン パク質およびその機能的誘導体に対し配列相同性を有するさらなるPTP分子を 同定し、クローン化すべきかを知るであろう。 1つの態様において、本発明はPTP−S31のアミノ酸配列を有する、また はそのうちの少なくとも9個、好ましくは少なくとも10、15、20または3 0個の連続するアミノ酸を有する、ポリペプチドをコードする単離された核酸分 子に向けられている。好ましい態様において、この単離された核酸は配列番号4 のアミノ酸配列を有するポリペプチド、またはその突然変異体もしくは種変異体 をコードする。別の好ましい態様においては、単離された核酸配列は配列番号3 、またはそのうちの少なくとも27個、好ましくは少なくとも30、35、40 または50個の連続するヌクレオチドからなる。 本発明の遺伝子構築物の操作は、RPTPの特定のリガンド結合受容体ドメイ ンおよび膜貫通ドメインをPTP−S31の触媒部位へグラフトすることを可能 とし、これはキメラ分子をもたらす。このようなキメラ分子の非制限的例は、受 容体が上皮増殖因子受容体、線維芽細胞増殖因子受容体、などであるPTPを含 む。例えばPTP−S31とPTPαまたはPTPεの間のPTP−PTPキメ ラもまた意図される。遺伝子工学的 に作製されたキメラ受容体は当分野で公知である(例えば、Riedel,H.ら,Natu re 324:628-670(1986)参照)。 PTP−S31をコードする遺伝子構築物、その機能的誘導体、および上記の ようなキメラ分子は遺伝子治療に使用できる。病気に帰着する異常な、または機 能障害のPTP−S31は、正常なPTP−S31をコードするDNAでトラン スフェクトした所望の系列の細胞(例えば造血細胞)の注入によって置き換える ことができる。代わりに、または付加的に、選択したリガンド(例えばEGF) の受容体を有するキメラRPTPを担持する細胞を上記のような遺伝子治療に使 用できる。 本発明の組換えDNA分子は、種々の手段のうち任意のものを用いて作製でき る。例えば、DNAあるいはRNA合成、またはより好ましくは組換えDNA技 法の適用によって作製できる。このような分子の合成技法は、例えばWu,R.ら( Prog.Nucl.Acid.Res.Molec.Biol.21:101-141(1978)によって開示されて いる。上記の方法にしたがって組換え分子を構築する手順はSambrookら(前掲) によって開示されている。 本発明の組換え分子の3’末端は、重合に不適となるように処理されているこ とが好ましい。このような処理は、該末端を化学的手段でブロックすることによ り、または末端部分の塩基をそれらがポリメラーゼ作用を立体的に妨害するよう に修飾することにより実施される。好ましい態様においては、このような処理は 3’末端を固相支持体(例えば、ガラス、プラスチック、ラテックス等)に結合 させる等により固定化する事によって実施される。支持体の形状はいかなるもの であってもよい( すなわち、シート、棒、球、卵形、等である)。このような固定化の手順は当業 者には周知である。最も好ましい態様においては、組換え分子の3’末端を固相 支持体に共有結合させる。スペーサー領域は、(1)それが組換え分子のいかな る機能または特徴をも立体的に妨げない限り、また(2)スペーサー領域の配列 がアッセイのハイブリダイゼーション反応または重合反応に参加しない限り、プ ローブを固相支持体から外へ伸ばすのに使用できる。一般的には、数個の、好ま しくは多数のこのような組換え分子を支持体に固定することが望ましい。 PTP−S31の一部を表すオリゴヌクレオチドは、このようなタンパク質を コードする遺伝子の存在をスクリーニングするのに、およびPTP−S31遺伝 子のクローン化のために有用である。このようなオリゴヌクレオチドを合成する ための技法は、例えばWu,R.ら(Prog.Nucl.Acid.Res.Molec.Biol.21:101 -141(1978)によって開示されている。 タンパク質分子は臭化シアン、またはパパイン、キモトリプシン、トリプシン 等のプロテアーゼを用いて断片化される[Oike,Y.ら,J.Biol.Chem.257:975 1-9758(1982);Liu,C.ら,Int.J.Pept.Protein Res.21:209-215(1983) ]。遺伝暗号の縮重により、ある特定のアミノ酸をコードするのに1つ以上のコ ドンが使用されうる[Watson,J.D.,Molecular Biology of the Gene,第4版 ,Benjamin/Cummings Publishing Co.,Inc.,Menlo Park,CA(1987)]。その 遺伝暗号を用いて、1つまたはそれ以上の異なるオリゴヌクレオチドが同定され うる。そして、その各々が上記のアミノ酸をコードする可能性があ る。ある特定のオリゴヌクレオチドが事実、XXXをコードする実際の配列を構 成する確率は、異常な塩基対関係および特定のコドンが(特定のアミノ酸をコー ドするために)真核細胞中で実際に使用される頻度を考慮することによって推定 できる。このような「コドン使用ルール」は、Lethe,R.ら,J.Molec.Biol.1 83:1-12(1985)によって開示されている。Latheの「コドン使用ルール」を用い て、PTP−S31配列をコード可能な、理論的に「最も確からしい」ヌクレオ チド配列を含有する1個の、または1組のオリゴヌクレオチドが同定される。あ るアミノ酸配列がただ1つのオリゴヌクレオチドによってコードされることもあ るが、しばしばアミノ酸配列は1組の類似したオリゴヌクレオチドの任意のもの によってコードされる。重要なことは、この組のすべてのメンバーがペプチド断 片をコードしうるオリゴヌクレオチドを含有し、そしてその結果、可能性として ペプチド断片をコードする遺伝子と同一のオリゴヌクレオチドを含みうるのに対 し、この組のただ1つのメンバーだけが遺伝子のヌクレオチド配列と同一のヌク レオチド配列を含有することである。このメンバーが組内に存在するために、そ して組の他のメンバーの存在下でもDNAとハイブリダイズできるため、ペプチ ドをコードする遺伝子をクローン化するのに1つのオリゴヌクレオチドを使用す るのと同じ方法で、1組の分画化していないオリゴヌクレオチドを使用すること が可能となる。 PTP−S31断片をコード可能な、理論的に「最も確からしい」ヌクレオチ ド配列を含有する1つまたは1組のオリゴヌ クレオチドは、「最も確からしい」配列または1組の配列にハイブリダイズ可能 な1つまたは1組の相補的オリゴヌクレオチドの配列を同定するために使用され る。このような相補的配列を含有するオリゴヌクレオチドは、PTP−S31遺 伝子を同定し単離するためのプローブとして使用しうる(Sambrookら,前掲)。 PTP−S31遺伝子の断片をコード可能な適切な1つまたは1組のオリゴヌ クレオチド、(またはそれに相補的な1つまたは1組のオリゴヌクレオチド)は 、(上記の手順を用いて)同定され、合成され、そして当分野で周知の手段によ りPTP−S31遺伝子を発現可能な細胞から誘導したDNA、またはより好ま しくはcDNA調製物とハイブリダイズされる。「最も確からしい」PTP−S 31ペプチドをコードする配列に相補的な1本鎖オリゴヌクレオチド分子は、当 業者に周知の手順を用いて合成することができる[Belagajeら,J.Biol.Chem .in the Control of Gene Expression;Nierlichら,編,Acad.Press,NY(19 76);Wuら,Prog.Nucl.Acid.Res.Molec.Biol.21:101-141(1978);Khor ana,R.G.,Science 203:614-625(1974)]。さらに、DNA合成は自動合成機 を用いて行なうことができる。核酸ハイブリダイゼーションの技法は、Sambrook ら(前掲)およびHaymesら[Nucleic Acid Hybridization,A Practical Approa ch,IRL Press,Washington,DC(1985)]により開示されている。これらの文 献は参考としてここに組み入れる。これらに記述されているような技法またはそ れに類似した技法は、ヒトアルデヒドデヒドロゲナーゼの遺伝子[Hsu ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 833771-3775(1985)]、フィブロネクチン[ Suzukiら,EMBO J.4:2519-2524(1985)]、ヒトエストロゲン受容体遺伝子[W alterら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:7889-7893(1985)]、組織プラスミ ノーゲンアクチベーター[Pennicaら,Nature 301:214-221(1983)]、および ヒト妊娠末期胎盤アルカリホスファターゼ相補的DNA[Damら,Proc.Natl.A cad.Sci.U.S.A.82:715-8719(1985)]のクローン化を成功裏に成し遂げた。 PTP−S31遺伝子をクローン化する別の方法においては、DNA、または より好ましくはcDNA(PTP−S31を発現可能な細胞由来のもの)を発現 ベクター中にクローン化することにより、発現ベクターのライブラリーが作製さ れる。次に、抗PTP−S31抗体に結合し、かつPTP−S31と同一のアミ ノ酸配列またはその断片を有するポリペプチドをコード可能なヌクレオチド配列 を持つタンパク質を発現可能なメンバーについて、上記のライブラリーをスクリ ーニングする。この態様において、DNA、またはより好ましくはcDNAは、 PTP−S31タンパク質を発現可能な細胞から抽出し、精製される。精製され たcDNAは、DNAまたはcDNA断片のプールを作製するために断片化され る(剪断、エンドヌクレアーゼ消化、等による)。次に、クローン化されたユニ ークDNAまたはcDNA断片を含有する発現ベクターのゲノムライブラリーを 作製するため、このプール由来のDNAまたはcDNA断片は発現ベクター中に クローン化される。 「発現ベクター」とは、(適切な転写および/または翻訳制 御配列の存在ゆえに)ベクター中にクローン化されたDNA(またはcDNA) 分子を発現することができ、そしてそれによってポリペプチドまたはタンパク質 を産生できるベクターである。クローン化された配列の発現は、発現ベクターが 適切な宿主細胞に導入されると起こる。原核生物用発現ベクターを使用する場合 は、適切な宿主細胞はクローン化配列を発現可能な原核細胞となろう。同様に、 真核生物用発現ベクターを使用する場合は、適切な宿主細胞はクローン化配列を 発現可能な真核細胞となろう。重要なことは、真核生物のDNAは介在配列を含 むことがあるので、またそのような配列は原核細胞では正しくプロセシングする ことができないので、原核生物ゲノム発現ベクターライブラリーを作製するため には、PTP−S31を発現可能な細胞由来のcDNAを使用することである。 cDNAの調製およびゲノムライブラリーの作製のための手順はSambrookら(前 掲)によって開示されている。 PTP−S31またはその機能性誘導体をコードするDNA配列は、ベクター DNAを用いて従来の技法にしたがって組み換えることが可能である。この技法 には、連結のための平滑末端および互い違いの末端、適切な末端を提供するため の制限酵素による切断、付着末端の適切な修復、望ましくない結合を防ぐための アルカリホスファターゼ処理、および適切なリガーゼによる連結が含まれる。こ のような操作技法は、Sambrookら(前掲)によって開示されており、当分野で周 知である。 DNAのような核酸分子は、それが転写および翻訳制御情報を含有するヌクレ オチド配列を含有し、かつこのような配列が ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に「機能しうる形で」連結されてい るならば、ポリペプチドを「発現可能」であるといえる。機能しうる連結とは、 制御DNA配列および発現されるべきDNA配列が遺伝子発現を可能とするよう な方法で連結されているものである。遺伝子発現に必要とされる制御領域の正確 な性質は生物ごとに変わるかもしれないが、一般的にはプロモーター領域を含む 。この領域は、原核生物では、プロモーター(これはRNA転写の開始を指示す る)と、RNAに転写された時にタンパク質合成の開始を信号で知らせるDNA 配列の両方を含有する。このような領域は普通、TATAボックス、キャッピン グ配列、CAAT配列等の転写および翻訳の開始に関与する5’非コード配列を 含む。 所望であれば、前述の方法によりタンパク質をコードする遺伝子配列の3’側 の非コード領域を得ることができる。この領域は、終結およびポリアデニル化等 の転写終結制御配列のゆえに保持することができる。したがって、天然ではタン パク質をコードするDNA配列に隣接する3’領域を保持することにより、転写 終結シグナルを提供することができる。発現宿主細胞において転写終結シグナル が十分に機能しない場合は、宿主細胞において機能的な3’領域と取り換えるこ とができる。 2つのDNA配列(例えば、プロモーター領域配列とPTP−S31をコード する配列)は、これら2つのDNA配列の間の連結の性質が(1)フレームシフ ト突然変異の導入に帰着せず、(2)R−PTP遺伝子配列の転写を引き出すプ ロモーター領域配列の能力を妨害せず、また(3)プロモーター領域配 列によって転写されるR−PTP遺伝子配列の能力を妨害しないものであれば、 機能しうる形で連結されているといえる。プロモーターがDNA配列の転写をも たらすことが可能であれば、プロモーター領域は機能しうる形でDNA配列に連 結しているであろう。したがって、タンパク質を発現するためには、適切な宿主 によって認識される転写および翻訳シグナルが必要である。 プロモーターは、RNAポリメラーゼと結合可能で、「機能しうる形で連結さ れた」核酸配列の転写を促進することができる2本鎖DNAまたはRNA配列で ある。本明細書で用いている「プロモーター配列」とは、RNAポリメラーゼに よって転写される方のDNAまたはRNAの鎖上に見いだされるプロモーターの 配列である。「プロモーター配列相補体」とは、その配列が「プロモーター配列 」の相補体である核酸分子である。よって、1本鎖「プロモーター配列相補体」 または「プロモーター配列」に隣接するプライマーDNAまたはRNAの伸長の 結果、もしその伸長が「プロモーター配列」または「プロモーター配列相補体」 に向かって進行するならば、機能性プロモーターを含有する2本鎖分子が作製さ れる。この機能性プロモーターは、2本鎖分子の「プロモーター配列」を含有す る方の鎖に機能しうる形で連結されている核酸配列の転写を引き出す。 ある種のRNAポリメラーゼはこのようなプロモーターに対し高い特異性を示 す。バクテリオファージT7、T3およびSP−6のRNAポリメラーゼは特に 良く特徴付けられており、高いプロモーター特異性を示す。これらRNAポリメ ラーゼの それぞれに特異的なプロモーター配列もまた、二重鎖DNA鋳型である2本鎖の うち1本のみを転写するようポリメラーゼに指示する。どちらの鎖が転写される かの選択は、プロモーター配列の向きによって決定される。この選択は転写の方 向を決定する。なぜならRNAは3’末端水酸基へのヌクレオチド5’−リン酸 の付加によってのみ酵素的に重合されるからである。 核酸分子の2つの配列は、両方の配列が同一のRNA転写物に転写されること を可能とする方法、または片方の配列で始まったRNA転写物が第2の配列に伸 長していくことを可能とする方法で相互に連結されているとき、「機能しうる形 で連結されている」という。したがって、DNAまたはRNAの2つの配列(例 えば、プロモーター配列および他の任意の「第2」配列)は、もしプロモーター 配列で始まる転写が機能しうる形で連結されている第2配列のRNA転写物をも たらすならば、機能しうる形で連結されている。「機能しうる形で連結される」 ためには、2つの配列が相互に直接接している必要はない。 本発明のプロモーター配列は真核生物のものでも、原核生物のものでも、ウイ ルスのものでもよい。適切なプロモーターは抑制可能で、または、より好ましく は構成性(constitutive)である。適切な真核生物プロモーターの例には、T4 ポリメラーゼを認識できるプロモーター[Malik,S.ら,J.Biol.Chem.263:11 74-1181(1984);Roserberg,A.H.ら,Gene 59:191-200(1987);Shinedling ,S.ら,J.Molec.Biol.195:471-480(1987);Hu,M.ら,Gene 42:21-30(19 86)]、T3、Sp6およびT7ポリメラーゼを認識できるプロモーター[Cham berl in,M.ら,Nature 228:227-231(1970);Bailey,J.N.ら,Proc.Natl.Acad. Sci.U.S.A.80:2814-2818(1983);Davanloo,P.ら,Proc.Natl.Acad.Sci .U.S.A.81:2035-2039(1984)];バクテリオファージラムダのPRおよびPL プロモーター[The Bacteriophag O Lambda,Harshey,A.D.,編,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1973);Lambda II,Hendrix,R.W., 編,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1980)];大腸菌の trp、recA、熱ショックおよびlacZプロモーター;枯草菌のα−アミ ラーゼ[Ulmanen,I.ら,J.Bacteriol.162:176-182(1985)]およびσ-28-特 異的プロモーター〔Gilman,M.Z.ら,Gene 32:11-20(1984)];バシラス属細 菌のバクテリオファージのプロモーター[Gryczan,T.J.,The Molecular Biolo gy of the Bacilli,Academic Press,Inc.,NY(1982)];ストレプトミセス 属細菌のプロモーター[Ward,J.M.ら,Mol.Gen.Genet.203:468-478(1986) ];バクテリオファージラムダのintプロモーター;pBR322のβ−ラク タマーゼ遺伝子のblaプロモーター、およびpPR325のクロラムフェニコ ールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子のCATプロモーター、等がある。原核 生物のプロモーターは、Glick,B.R.[J.Ind.Microbiol.1:277-282(1987) ];Cenatiempo,Y.[Biochimie 68:505-516(1986)];Watson,J.D.ら[Mol ecular Biology of the Gene,第4版,Benjamin Cummins,Menlo Park,CA(19 87)];およびGottesman,S.[Ann.Rev.Genet.18:415-442(1984)]によ って総説されている。好ましい真核生物プロモーターには、マウ スメタロチオネインI遺伝子のプロモーター[Hamer,D.ら,J.Mol.Appl.Gen .1:273-288(1982)];ヘルペスウイルスのTKプロモター[McKnight,S.,C ell 31-355-365(1982)];SV40初期プロモーター[Benoist,C.ら,Natur e(London)290:304-310(1981)];および酵母ga14遺伝子プロモーター[ Johnston,S.A.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.79:6971-6975(1982);Si lver,P.A.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:5951-5955(1984)]が含ま れる。上に掲げたすべての文献は参考としてここに組み入れる。 強力なプロモーターが好ましい。そのようなプロモーターの例は、T3、SP 6およびT7ポリメラーゼを認識するプロモーター、PL プロモーターおよびマ ウスメタロチオネインI遺伝子のプロモーターである。PTP−S31の真核細 胞による発現に最も好ましいプロモーターは、pLSVベクター中で転写を推進 するようなSV40プロモーターである[Livneh,E.ら,J.Biol.Chem.261:1 2490-12497(1986)]。このようなポリメラーゼ認識部位の配列はWatson,J.D. ら[Molecular Biology of the Gene,第4版,Benjamin/Cummings Publishing Co.,Inc.,Menlo Park,CA(1987)]によって開示されている。 ここまで本発明を全般的に記述してきたが、以下の実施例を参照することによ り本発明はより容易に理解されるであろう。これらの実施例は説明のために提供 されているもので、特にそうと明記しない限り本発明を制限することを意図する ものではない。 6.実施例:ポリメラーゼ連鎖反応を用いた新規PTPの同定 インスリン感受性組織中の新規PTPを同定するため、本発明者らはPCR技 法を使用した。骨格筋由来の第1鎖cDNAを鋳型として用い、高度に保存され た領域に対応する縮重オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いた。多数のす でに特徴付けられているPTP(RPTPα、RPTPβ、RPTPγ、PTP 1B、T細胞PTP、MEG1、等)が以下に記述するアプローチを用いて同定 された。更に、PTP−S31と名付けられた新規なPTPが見いだされた。 グアニジニウムチオシアネート/CsCl法によりヒト骨格筋から全RNAを 単離した[Chirgwinら,Biochem.18:5293-5299(1979)]。オリゴ(dT)セル ロースカラムを用いてポリ(A)+RNAを単離した[Avivら,Proc.Natl.Aca d.Sci.U.S.A.58:1408-1412(1972)]。オリゴ(dT)プライマーおよびGIBCO BRL(Gaithersburg,MD,USA)製のモロニーマウス白血病ウイルスRNアーゼ H-逆転写酵素を用いて、製造者の指示にしたがって、2μgのポリ(A)+RN Aから第1鎖cDNAを合成した。 骨格筋中に発現されるPTPに対応するcDNAをPCRの後で単離した〔Sa ikiら,Science 239:487-491(1988)]。上記のように取得したヒト骨格筋第1 鎖cDNA(約50ngに相当)を、以下に記述する1組の混合縮重オリゴヌクレオ チドプライマーを使用し、Gene Ampキット(Perkin Elmer Cetus,Norwalk,CT ,USA)を用いて増幅した。 センスプライマー(オリゴヌクレオチド番号58): これはPTPアミノ酸共通配列:F W X M X Wに対応する。 アンチセンスプライマー(オリゴヌクレオチド番号57): これはPTPアミノ酸共通配列:H C S A G (S / I / V) Gに対応する。 各PCRサイクルは、94℃で1分間の変性工程、37℃で2分間のアニーリ ング工程、および72℃で2分間の伸長工程よりなった。30〜40サイクルが 実施された。反応産物をアガロースゲル電気泳動にかけた。予想された大きさ( すでに記述されているPTPの構造に基づく)の断片を単離し、TAクローニン グシステム(Invitrogen,San Diego,California)を用いてサブクローン化し 、Sangerら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.74:5463-5467(1977)]に記述さ れている酵素チェーンターミネーション法により(Sequenase,U.S.Biochemica ls)、標準的技法(Ausubelら,編,Current Protocols in Molecular Biology ,John Wiley & Son,New York,1988)を用いて配列決定した。 PTP−S31と名付けられたPCR断片のDNA部分配列および推定される アミノ酸配列を図1に示す。 図2においては、GAPアラインメント法(Needlemanら、前掲)を用いてP TP−S31の推定アミノ酸配列がPTP 1B(Chernoffら、前掲)と比較さ れている。 PTP−S31は明らかに他の公知のPTPと相同的であるが、驚くべきこと に、このクラスの酵素についていまだ記述されていない特徴を有する。この特徴 はウイスコンシン大学のGenetic Computer Groupプログラムにより分析された。 PTP−S31のこのユニークな特徴を、以前に記述された公知PTPの共通配 列と比較して以下に示す(相違に下線を付してある)。 7.実施例:PTP−S31サブファミリーのメンバーの cDNAクローニング 上記第6節に述べた方法で横紋筋肉腫細胞系RD(ATCC #CCL 136)よりmR NAを調製した。OkayamaおよびBerg[Mol.Cell.Biol.2:161-170(1982);M ol.Cell.Biol.3:280-289(1983)]により記述された方法を用いて、cDN Aライブラリー(ライブラリー#1)を構築した。 プライマー断片を調製するため、pCDVI-PLベクターを使用した[Nomaら,Natu re 319:640-646(1986)]。第2鎖プライマーとして、短い合成アダプターを使 用した[Boelら,BioTechniques 11:26-28(1991)]。大腸菌DH5α(Gibco BRL,Gaithersburg,MD,USA)を形質転換用に使用した[Inoue,H.ら,Gene 96 :23-28(1990)]。形質転換の後、細胞をLBプレート(ミリリットルあたり5 0μgのアンピシリンを含有)に濃度が15,000〜20,000コ ロニー/プレートとなるようにまいた。 ニトロセルロースレプリカフィルター(Schleicher & Schuell,BA85)を標準 的コロニーハイブリダイゼーション技法によりスクリーニングした[Sambrook, J.ら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1989)]。下記のオリゴヌクレオチド(#18 5)を合成し、T4ポリヌクレオチドキナーゼおよび〔γ−32P〕ATP(Amersh am)を用いて5’末端に標識し、cDNAライブラリーのスクリーニングに使用 した: このオリゴヌクレオチドは、第6節に記述したPTP−S31PCR断片のア ミノ酸配列His−Gln−Tyr−Trp−Pro−Gluに対応する。50 mlのハイブリダイゼーション溶液(6 x SSC,5x Denhardt液,0.05% SDS)(A usubelら、前掲)に入れた10pmolの標識化オリゴヌクレオチドをレプリカニト ロセルロースフィルターに加え、42℃で3時間ハイブリダイズさせた。次にフ ィルターを6 x SSC,0.05% SDSを用いて室温で3回、42℃で1回、最後に48 ℃で1回洗浄した。オートラジオグラフィーにより1個の陽性コロニー(クロー ン1.20.4)が同定され、単離され、標準的技法により配列決定された(Sambrook ら、前掲)。 PTP−S31Cと名付けられたこのクローンのヌクレオチド配列〔配列番号 6〕および推定されるアミノ酸配列〔配列番号7〕を図3に示す。この配列は、 上記のPCR断片の配列を含み、 したがってこの単離されたcDNAクローンの同一性を確証する。このクローン PTP−S31Cの大きさは約2300bpである。このクローンは約39kDaの タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを従えた2個の推定上の 同一フレーム内メチオニン開始コドンを有する。最初のATGは共通翻訳開始配 列[Kozak,M.Nucleic Acids Research 15:8125-8148(1984)]と一致する。 さらに、PTPドメインの5’末端(N(K/R)XXXNR)から開始コドン までの距離は他のPTP、例えばPTP 1B(Chernoffら、前掲)およびPE P(Matthewsら、前掲)における距離と類似している。しかし、このクローンに は最初のATGの5’側に同一フレーム内終止コドンがない。したがって、PT P−S31Cは全長クローンではない可能性がある。 PTP−S31Cは他のPTPに見いだされる保存されたアミノ酸の殆どを含 有する。アミノ酸配列は以前に記述されたPTPに約45%一致する。PTP− S31はシグナルペプチドおよび膜貫通領域を欠いており、それゆえ小型の細胞 内PTPのクラスに属しているかもしれない。しかし、予期せぬことに、触媒的 に必須であるシステイン残基の周囲の推定アミノ酸配列は共通配列HSXGX GXG〔配列番号32〕と著しく相違していた。特に注目すべきことは、他の PTPにおける活性部位システインから6番目のC末端側のアルギニンが、PT P−S31Cではフェニルアラニンに置換されていることである。このアルギニ ン残基は、殆どのPTPに共通の他の多くの特徴を欠くPTP〔例えばcdc2 5(Sahduら、前掲)およびワクシニアウイルスによってコードされるチロシン /セリンホスファターゼ(Guanら、前 掲)]を含む以前に記述されたすべてのPTPにおいて保存されていることが判 明している。 さらに、C末端の残りの部分は公知のPTPとごくわずかしか一致しない。P TP 1B(Chernoffら、前掲)およびPTP−S31Cのアラインメントを図 4に示す。 8.実施例:新規PTPの別な形であるPTP−S31Dの同定 第7節に開示した所見(これらは最初本発明者らを幾分当惑させるものであっ た)を、活性部位システイン周囲の配列を注意深く分析することにより検討した 。この分析は、異なるリーディングフレームでは、PTPドメインのC末端部分 に共通に見られるモチーフ:QYIFXXXXXXD[Kruegerら,EMBO J.9:3 241-3252(1990)]を示した。 これがクローン化による人為的結果なのか、または代替スプライシングによる 非常に稀な形なのかを分析するため、下記のように2組のPCRプライマー(活 性部位システインの各側につき2個)を設計した。プライマーセット#1 センスプライマー(オリゴヌクレオチド番号223) アンチセンスプライマー(オリゴヌクレオチド番号224) プライマーセット#2 センスプライマー(オリゴヌクレオチド番号185) アンチセンスプライマー(オリゴヌクレオチド番号225) PTP−S31C cDNAを用いたPCRは、プライマーセット#1を使用 すると450bp周辺に、またプライマーセット#2を使用すると430bp周辺に バンドを生じた。もし欠失または代替スプライシングという現象が起こったのな らば、RD細胞系および/または骨格筋由来の第1鎖cDNAを直接用いるPC Rによって付加的バンドを検出することができるであろう。このバンドの予想さ れる大きさは430/450bpプラスPTPにおいて活性部位システインとQY IFモチーフの間に普通見られる距離(すなわち約130bp)である。 横紋筋肉腫細胞系RD(American Tissue Type Collection CCL 136)および ヒト骨格筋より第6節に記述する方法によりmRNAおよび第1鎖cDNAを調 製した。約50ngの第1鎖cDNAを上記のプライマーと共に使用した。各P CRサイクルは、94℃で1分間の変性工程、37℃で2分間のアニーリング工 程、および72℃で2分間の伸長工程よりなった。30〜40サイクルが実施さ れた。PCR断片を標準的アガロースゲル電気泳動により分析した(Ausubelら 、前掲)。プライマーセット#1は、RD細胞系由来のcDNAを鋳型として用 いて、予想された大きさの2本のバンドをもたらした。プライマーセット#2は 、RD細胞系のcDNAを用いた時も骨格筋cDNAを用いた時も、予想された 大きさの2本のバンドをもたらした。 プライマーセット#1を用いて取得したRD細胞系由来のバンドを両方ともク ローン化し、配列決定した。予想されたように、下方のバンドはPTP−S31 C配列に対応することが判明した。上方のバンドもPTP−S31C配列と同一 の配列を有するが、133bpの挿入配列を伴っている(図5参照)。プライマー セット#2と骨格筋cDNAを用いて取得した上方のバンドを、アンチセンスプ ライマーオリゴヌクレオチド番号225を使用して直接配列決定した。同一の配 列がRD細胞系および骨格筋に見いだされた。この領域の推定されるアミノ酸配 列は、HCSXGXGR配列を含むPTPの通常の特徴を示し、またPTP−S 31Cの5’末端と同じフレームにある。PTPのこの新規な形はPTP−S3 1Dと名付けられた。PTP−S31CとPTP−S31Dの組み合わせ配列を 図6に示す。 図7はPTP−S31Dと、CD45(Ralphら、前掲)およびLAR(Streu liら、前掲)の最初のPTPドメインとの、またPTP 1B(Chernoffら、前 掲)のPTPドメインとのアラインメントを示す。CLUSTALプログラム(Higgins ら、前掲)を使用した。 9.実施例:S31D断片のPTP−S31Cへの挿入 以下の3つの基本的工程を採用した。 1.PTP−S31Cの最初のATGの位置にBspHI部位を導入した。 2.PTP−S31Cのコード領域をベクターpSP72(Promega)中に移入 するために、このBspHI部位を使用した。3. S31D配列をPTP−S31配列に導入した。工程1 異なるクローニングベクターへのPTP−S31配列の導入を容易にするため 、BamHIおよびBspHI部位を(PCRを用いて)PTP−S31C配列 の最初のMetの上流に導入した。センスプライマー(オリゴヌクレオチド番号 202:BamHI/BspHI): アンチセンスプライマー(オリゴヌクレオチド番号203:XbaI): PTP−S31C(クローン1.20.4)由来のプラスミドDNA約100ngを 鋳型として使用した。各PCRサイクルは、94℃で1分間の変性工程、50℃ で2分間のアニーリング工程、および72℃で2分間の伸長工程よりなる。10 サイクルが実施された。PCR断片を標準的アガロースゲル電気泳動により分析 し、BamHIおよびAlwNIで切断し、標準的技法を用いて470bp断片を単離した( Ausubelら、前掲)。この断片はPTP−S31Cの5’末端に対応し、最初の メチオニンから始まるPTP−S31のコード領域を含有する。工程2 標準的技法を用いて、AlwNIおよびEcoRVで切断することにより、最初のPTP −S31Cクローン(1.20.4)から940bp断片を単離した。この断片を工程1 で単離したPCR断片と組み合わせて、BamHIおよびEcoRVで切断したpSP72 ベクター(Promega)に連結する。得られたプラスミドをpSP−S31Cと称 する。工程3 第8節に記述するPCR(プライマーセット#1)で得られた上方バンド(S 31D配列を含んで約580bp)を、プライマー(それぞれオリゴヌクレオチド 番号223および224に含まれる)に含まれる好都合な制限部位(BamHI/XbaI )を用いてpBluescript KS+ベクター(Stratagene,La Jolla,CA)中にクロー ン化した。得られたプラスミドは次にDraIIIおよびNcoIで切断され、S31D配 列にまたがる330bp断片をもたらした。この断片を、同じ酵素(DraIII/NcoI )で切断したプラスミドpSP−S31C(工程2)に挿入した。得られたプラ スミドをpSP−S31Dと称する。 10.実施例:PTP−S31DのPTP酵素活性の分析 10.1.原核生物用発現ベクターpGEXの改変 PTP−S31D由来のcDNA断片(下記参照)を入れるため、標準的技法 を用いてpGEX2Tベクター(Pharmacia,Uppsala,Sweden)のクローニング 部位を改変した(Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubelら、 編、John Willey & Sons,New York,1988)。pGEX2Tベクターを制限酵素BamHIおよびEcoRI で切断し、単離した。以下のオリゴヌクレオチドを切断したpGEX2Tベクタ ーに連結した。 それによって以下のクローニング部位を有するベクターpGEX−AK2を作製 した: 5’EcoRI,NcoI,BamHI,StuI,XbaI,HindIII 3’ 10.2.PTP−S31Dコード領域のpGEX−AK2への導入 プラスミドpSP−S31D(第9節参照)をBamHIおよびEcoRVで切断し、同 じ酵素で切断したpcDNA Iベクター(Invitrogen)に導入した。得られた プラスミドpc−S31Dを次にBspHIおよびXbaIで切断し、約1500bpの断 片をもたらした。次にPTP−S31D断片をpGEX−AK2(NcoIおよびXb aIで切断されている)に連結した。得られたプラスミドをp16(pGEX−A K2/PTP−S31D)と名付け、以下に記述する発現試験に使用した。p1 6はグルタチオン−S−トランスフェラーゼとPTP−S31D(最初のメチオ ニンから始まる)の融合タンパク質をコードし、さらに約500bpのPTP− S31C(およびPTP−S31D)の3’非翻訳領域を含有する。 PTP−S31CをpGEX−AK2に導入するために同じ戦略を使用した。 ただし、pcDNA Iに基づくプラスミドpc−S31Cを作製するためにp SP−31Cを用いた。出来上がったプラスミドをp17(pGEX−AK2/ PTP−S31C)と名付けた。 10.3.大腸菌におけるGST−PTP S31融合タンパク質の発現 グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)とPTP−S31Dまたは PTP−S31Cとの融合タンパク質をそれぞれコードするpGEX−AK2/ PTP−S31Dベクター構築物(p16)およびpGEX−AK2/PTP− S31Cベクター構築物(p17)を[Smithら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S. A.83:87-3-8707(1988)]、大腸菌DH5α株(カタログ番号8263SA,Bethesd a Research Laboratories,Gaithersburg,MD)およびSURETM株(カタログ 番号200294,Stratagene,La Jolla,CA 92037)に導入した。形質転換した大腸 菌を一晩培養した培養物をLB培地で増殖させ、新鮮な培地で1:10に希釈し(4 5mlの一晩培養物プラス405mlのアンピシリン含有LB培地)、37℃で1時間増殖さ せた。イソプロピル-1-チオ-β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度が 0.2mM(DH5α)および5mM(SURE)となるように添加し、培養物をさらに4時間 インキュベートした。各培養物から400mlを取り、Sorvall GS3ローターを用いて 4℃で10分間、5000rpmで遠心した。ペレットを液体窒素中で凍結させ、次に3m lの溶菌緩衝液[0.03 M Tris HCl,pH8. 0,2.5mM EDTA,10μg/mlアプロチニン(aprotinin),1mMフェニルメチルスル ホニルフルオリド(PMSF),1%(v/v)2-メルカプトエタノール]中で融解させ 、氷上で超音波処理した[M.S.E.超音波ジスインテグレーター100 W型(カタロ グ番号7100):30秒3サイクル、最大設定]。超音波処理の後、溶解物を遠心に かけ、上清を0.45μmのフィルター(Millipore)で濾過した。対照は、(1)IP TGを添加した、および添加しないpGEX−AK2;ならびに(2)IPTGを添加 しないp16およびp17であった。GST−PTP−S31DおよびGST− PTP−S31C融合タンパク質、ならびにGSTを可溶性タンパク質として単 離した。この単離は、グルタチオン-Sepharose 4Bアフィニティークロマトグラ フィー(カタログ番号17-0756-01,Pharmacia,Uppsala,Sweden)により、製造 者の指示に従って、超音波処理し無菌濾過した溶解物1ミリリットルあたり150 μlのグルタチオン-Sepharose 4Bを使用し、ゆっくり回転させながら4℃で1 時間インキュベートすることにより実施した。Sepharoseビーズをリン酸緩衝化 生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、最後に250μlの溶菌緩衝液(上記参照) に再懸濁した。GST−PTP−S31DおよびGST−PTP−S31C融合 タンパク質のそれぞれの発現、ならびにグルタチオン−S−トランスフェラーゼ の発現をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動( PAGE)により標準的技法を用いて確認した(Ausubelら、前掲)。GST− PTP−S31D、GST−PTP−S31CおよびGST(対照)を含有する 様々な量のグルタチオン-Sepharoseビーズ懸濁液を酵素活性について以下に記述 するように分析し た。 10.4.GST−PTP−S31D融合タンパク質の酵素活性の分析 基質p−ニトロフェニルホスフェート(pNP−P)に対するPTP−S31 Dの活性を、Tonksら[J.Biol.Chem.263:6731-6737(1988)]が記述する方 法に本質的にしたがって測定した。GST/PTP−S31D、GST/PTP −S31CおよびGSTをそれぞれ含有するグルタチオン-Sepharoseビーズを、 その量を徐々に増やしながらpNP−Pと共に室温で反応混合物〔50mM 2-(N- モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)pH5.5,10mMジチオトレイトールおよび5 mMエチレンジアミン4酢酸(EDTA)を含有]中でインキュベートした。反応は同 じ容量の0.4M NaOHを添加することにより停止させた。遠心にかけた後、上清を マイクロタイタープレートに移し、405nmでの吸光度をDynatech MR5000リーダー を用いて読んだ。 このホスファターゼアッセイにおいて、GST/PTP−S31Dのみが活性 を示した(図8参照)。 11.実施例:PTP−S31のノーザンブロット分析 数個のヒト組織(脾臓、胎盤、肺、腎臓、結腸、肝臓、および正常な骨格筋な らびに糖尿病患者骨格筋の2つの供給源由来)および細胞系[KGl(ATCC CCL 24 6);MOLT-4(ATCC CRL 1582);Raji(ATCC CCL 86);K-562(ATCC CCL 243) ;MEG01;Hep G2(HB8065);Ea.hy(Dr.Cora-Jean S.Edgell,University of North Carolina,Chapel Hill,NCより入手);A673(ATCC CRL 1598);RD(ATCC CCL 136)]より、Puissantら[BioTechniques 8:148-149(1990)]により記述さ れている酸グアニジニウムチオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出手順 により全RNAを単離した。 オリゴ(dT)カラムを用いてポリ(A)+RNAを単離した[Avivら,Proc .Natl.Acad.Sci.U.S.A.69:1408-1412(1972)]。標準的技法を用いて(Au subelら、前掲)、2μgのポリ(A)+RNAをレーンに適用し、アガロース− ホルムアルデヒドゲル中で分離し、ナイロンフィルター(Stratagene,La Jolla )にブロットした。フィルターを〔α32P〕dATPで標識したPTP−S31 PCR断片(第6節に記述されている)とハイブリダイズさせた。32Pによる 標識はランダムプライマーDNA標識システム(カタログ番号8187SA,Bethesda Research Laboratories,Gaithersburg,MD 20877,USA)を使用して製造者の 指示にしたがって実施した。次に、フィルターをストリンジェント条件下で洗浄 し、X線フィルムに適用した。 ノーザンブロット分析は、骨格筋ポリ(A)+RNAのうちの1つにおいて広 範囲のPTP−S31転写物(約2.1から2.8kb)を示したが、他の正常な骨格筋 試料においては発現は殆ど検出できなかった。このノーザンブロットにおける広 範なバンドは、同一の遺伝子から誘導されたmRNAに数個の形(例えば代替ス プライシング)が存在することを示しているのかもしれない。PTP−S31の 発現は、II型糖尿病患者の骨格筋においても実証された。 驚くべきことに、RD細胞系における主要転写物の大きさは約4.4kbである。さ らに、比較的広いがより弱いバンド(2.1〜2.4kb)、および約6kbの弱いバンド がRD細胞系において見いだされる。骨格筋RNAを用いたノーザンブロットの長 時間暴露は、RD細胞系におけるのと同様に約4.4kbのマイナーな転写物が存在す ることを示す。肺組織においては、約8kbに弱いシグナルが見いだされる。ノー ザンブロット分析を用いると、他のいかなる組織または細胞系も、測定可能なレ ベルのPTP−S31発現を示さなかった。しかし、感度の高いPCR技法を用 いると、PTP−S31は以下の組織および細胞系において発現されることが判 明した。すなわち、肝臓(妊娠中の);胎盤;骨格筋;腎臓;末梢血リンパ球; HepG2細胞(ATCC CCL 86)(殆ど専らPTP−S31Cの形で);RD細胞(ATCC CCL 136);A673細胞(ATCC CRL 1598);IM9細胞(ATCC CCL 159);CEM細胞 (ATCC CCL 119);U937細胞(ATCC CRL 1593);A549細胞(ATCC CCL 185); およびKLE細胞(ATCC CRL 1622)である。 12.実施例:PTP−S31の付加的サブタイプのクローニング RD細胞系および骨格筋における主要なPTP−S31転写物の間に認められ る大きさの差異ゆえに、さらなる実験を実施した。この実験は、それぞれ低いお よび高い発現レベル(第11節に記述するノーザンブロット分析に基づく)を示 す正常な骨格筋の2つの供給源由来のPTP−S31のcDNAクローニングを 含んでいた。 上記第11節に記述するように、ポリ(A)+RNAをヒト骨格筋の2つの供 給源より単離した。これらポリ(A)+RNA調製物の5μgを用いて、製造者 の指示にしたがって(Stratagene,La Jolla,CA)2つのλ ZAP II cDNAラ イブラリーを作製した。PTP−S31の発現レベルが低いRNAから構築され たライブラリーをライブラリー#2と名付けた。PTP−S31の発現レベルが 高いRNAから構築されたライブラリーをライブラリー#3と名付けた。標準的 フィルターハイブリダイゼーション技法(Ausubelら、前掲)を用いて、合計2 x106個のプラークを各ライブラリーからスクリーニングした。2通りのHybon d N+フィルター(Amersham)を、上記第11節で使用したのと同じ32P標識化PC R断片とハイブリダイゼさせた。 32Pによる標識はランダムプライマーDNA標識システム(カタログ番号8187 SA,Bethesda Research Laboratories,Gaithersburg,MD 20877,USA)を使用 して製造者の指示にしたがって実施した。フィルターを高ストリンジェンシー( 0.1 x SSC,0.05% SDS)で洗浄し、次にX線フィルムに適用した。 ライブラリー#2から3個の陽性クローンが同定され、単離され、製造者の指 示にしたがってin vivo切り出しに付され、配列決定によって分析された。ライ ブラリー#3から合計9個の陽性クローンが単離され、分析された。 最長のクローン(S31D−63)はcDNAライブラリー#2から単離され た。このクローンのヌクレオチド配列および予測されるアミノ酸配列を図9に示 す。驚くべきことに、このクローンも分析された他のいずれのクローンも、RD cDNAライブ ラリー(ライブラリー#1)から単離されたPTP−S31Cクローン(クロー ン1.20.4)の5’末端を含有していなかった。その代わり、骨格筋cDNAライ ブラリー由来のすべてのクローンは公知のいかなる配列にも似ていない5’末端 を含有していた。クローンはいずれも全長クローンではないように思われた。な ぜなら、そこでこれらのクローンがクローン1.20.4と異なるというヌクレオチド から上流には同一フレーム内ATGコドンが存在しなかったからである。同定さ れた種々の形を図10に模式的に示す。 ライブラリー#3からの付加的、部分的クローンの単離は、代替スプライシン グに起因するものと思われるPTP−S31のさらなる変異体を示した。これら 変異体の推定されるアミノ酸配列を図11に示す。 λ ZAP II cDNAクローニング手順(Stratagene,La Jolla,CA)を用いて 先に記述した方法で、RD細胞系由来のポリ(A)+RNAから新たなcDNA ライブラリー(ライブラリー#14)を構築した。合計1 x 106個のプラークを 標準的フィルターハイブリダイゼーション技法を用いてスクリーニングした(Au subelら、前掲)。2通りのHybond Nフィルター(Amersham)を、上記第11節で 使用したのと同じ32P標識化PCR断片とハイブリダイズさせた。32Pによる標 識はランダムプライマーDNA標識システム(カタログ番号8187SA,Bethesda R esearch Laboratories,Gaithersburg,MD)を使用して製造者の指示にしたがっ て実施した。フィルターを高ストリンジェンシー(0.1 x SSC,0.05% SDS)で洗 浄し、次にX線フィルムに適用した。 ライブラリー#14から合計7個の陽性クローンが同定され、単離され、製造 者の指示にしたがってin vivo切り出しに付され、分析された。 ライブラリー#14由来のクローンのうち2個は、5’末端において塩基2〜 3個分短い点を除いて、クローン1.20.4と同一である(すなわち、両方ともPT P−S31Cである)。上記のうち5個のクローンがS31D−63に類似して いることが判明したが、それらは5’末端で相違していた。これらのクローンの うち最長の2個を配列決定により特徴付けた。クローンS31−RD#2はPT P−S31のD形に対応する。他方、S31−RD#2より5’末端で約250 塩基対短いクローンS31−RD#6はC形に対応する。PTP−S31 RD #2の部分ヌクレオチド(配列番号21)および推定されるアミノ酸配列(配列 番号22)を図12に示す。驚くべきことに、PTP−S31のこの形は、膜貫 通ドメインを含有していた。それゆえ、PTP−S31は細胞内型PTPと受容 体型PTPの両方として存在しうる。 現在までだだ1つの哺乳動物膜貫通PTP、すなわちRPTPβのみしか1つ のPTPアーゼドメインを含有することが判明していなかったことは注目するに 足る(Kruegerら、前掲)。RPTPβと同様に、PTPS31−RD#2はだ だ1つのPTPアーゼドメインを持つ。 さらに、推定上の膜貫通領域に隣接するPTPS31−RD#2のアミノ酸配 列はインターロイキン2受容体β鎖および他のサイトカイン受容体と類似性を有 する[Miyajamaら,Annu.Rev.Immunol.10:295-3331(1992)]。この領域は またIII型フィブロネ クチン(FN-III)ドメインと若干の相同性を有する[Patthy,L.,Cell 61:13-1 4(1990)]。 III型フィブロネクチンに似たドメインに共通する構造的特徴の幾つかがPT PS31−RD#2の細胞外ドメインに見いだしうる。図2に示すアミノ酸配列 (配列番号22)において、合計4個のFN-IIIに似たドメインを同定できる(図 14参照)。これらのドメインはS31−FN−1(最もC末端寄りで、したが って膜貫通領域に隣接している)からS31−FN−4(最もN末端寄り)と称 される。これらのFN-IIIに似たドメインは、比較的多数のシステイン残基を含有 する。これはLAR(Streuliら、前掲)およびサイトカイン受容体(patthy, 前掲)のFN-IIIに似たドメインと対照的である。また、S31−FN−2におい ては、他では高度に保存されているトリプトファン残基がフェニルアラニン残基 と置換されている。さらに、各FN-IIIドメインの間の境界は、RPTPβにおけ るようによく保存されているとは言えない。 PTP−S31の細胞外ドメインには潜在的なN結合グリコシル化部位が数個 ある。 驚くべきことに、PTPS31−RD#2のアミノ酸約100個にわたる部分 が、インスリン受容体のαサブユニットの一部分と比較的高い配列類似性を示し ている(図15参照)。PTPS31−RD#2のインスリン受容体ならびにサ イトカイン受容体との類似性は、膜貫通形態のPTP−S31がホルモンまたは サイトカインによって制御されている可能性を示している。または、FN-IIIに似 たドメインはPTP−S31が細胞−細胞相互作用 に関与していることを示しているのかもしれない。 13.実施例:細胞におけるPTP−S3lタンパク質の検出および測定 13.1.PTP−S31Dに特異的な抗体の作製 標準的技法によりPTP−S31Dに特異的な抗血清を作製した[Hudsonら, Practical Immunology,第3版,Blackwell,Oxford,(1989)]。簡単に述べ ると、200μlのリン酸緩衝化生理食塩水に溶解した200μgのGST-PTP S31D融合 タンパク質(第10節参照)を等容量の完全フロイントアジュバント(Sigma,カ タログ番号F5881)と混合し、2匹のニュージーランドウサギの皮膚内に注射し た。各ウサギは100μgの融合タンパク質を投与された。1回目の注射の2週間 後に、フロイントアジュバントを使用せずにブースター注射を行なった。その2 週間後に、各ウサギから20mlの血液を採血し、室温で約1時間、試験管内で凝固 させた。試験管から取り出した血餅を遠心にかけ、血清を新しい試験管に分注し 、使用時まで−20℃で保存した。 グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)に特異的な抗体を除去する ため、第10節に記述した手順を用いて、血清をグルタチオン−S−トランスフェ ラーゼで飽和させたグルタチオン-Sepharose 4Bカラムに通した。GSTタンパ ク質を作製するためにpGEX−AK2構築物を使用した。抗−GST抗体の完 全な除去を確かにするため、血清を上記カラムに3回通した。除去の効率を後述 のようにウエスタンブロット法により評価した。 13.2.細胞系におけるPTP−S31Dの検出および測定 抗−PTP−S31D抗体は哺乳動物細胞におけるPTP−S31の発現を検 出するのに使用できる。標準的免疫蛍光技法は、特定細胞系および組織における このタンパク質の発現に関する情報を与えてくれる。より重要なことに、この抗 体調製物は細胞系および組織における上記タンパク質の量を測定するのに使用で きる。抗−PTP−S31抗体の後者の使用法の例として、RD細胞系(ATCC C CL 136)におけるPTP−S31の検出が以下に記述される。この実施例は、こ の抗体の使用に関して何ら制限するものではないことを強調しなければならない 。この抗体は他の細胞および組織におけるPTP−S31の検出にも使用できる のである。同様に、この抗体調製物は天然に存在するPTP−S31または組換 えPTP−S31の精製、および他の種類の検出アッセイの確立のために使用で きる。 標準的技法を用いて、アミノ酸およびビタミン類の濃度を通常の2倍にし、か つハンクス均衡塩溶液および10%ウシ胎児血清(FCS)(GIBCO-BRL)を補充した イーグルの最小必須培地(カタログ番号041-022570,GIBCO Life Technologies Ltd.,Paisley,Scotland)を使用してRD細胞系を培養する。 細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、上清を除去する。1個 の組織培養プレート(直径10cm)より得られる細胞を800μlのTriton X-100溶 菌緩衝液[20mM HEPES pH7.5,50mM NaCl,10%グリセリン,1.0%Triton X-100 ,1.5mM MgCl2,4mMエチレングリコール-ビス-(β-アミノエチルエチルエーテ ル)N,N,N',N'-4酢酸(EGTA;Sigma ED2SS),10μg/mlアプロチニン,1mMフェ ニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)]中 で溶菌する。溶解物を遠心にかけ、上清を新しい試験管に分注し、使用時まで− 80℃で保存する。 試験のために、標準的技法を使用して、この溶解物の1〜50μlを25μlのSD Sサンプル緩衝液[62.5mM Tris HCl,pH7.0,3.0%(v/v)SDS,10%(v/v)グリ セリン,10% 2-メルカプトエタノール、および0.05%(w/v)ブロモフェノールブ ルー]と混合し、5分間煮沸し、7.5% SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に より分離し、ニトロセルロース上にブロットする[Burnette,W.N.,Anal.Bioc hem.112:195-201(1981)]。 PTP−S31D定量用の標準曲線は、規定量の、精製された、大腸菌によっ て産生されたGST-PTP-S31D融合タンパク質をRD細胞溶解物と平行して用いて作成 する。 非特異的結合をブロックするため、ニトロセルロースフィルターをPBS1リッ トルあたり2gの粉ミルク(Carnation無脂粉乳,Carnation,Los Angeles,CA )と共に30分間インキュベートし、0.02%(v/v)Tween-20(Sigma,P1379)(PB S-Tween)および0.2%(w/v)ゼラチン(BioRadカタログ番号170-6537,Richmond ,California)を含有するPBSで1回洗浄し、PBS-Tweenで3回洗浄し、最後に上 記の抗PTP-S31D抗血清調製物の1:200希釈物(PBS-Tween中)と共に4時間インキ ュベートする。PBS-Tweenで3回洗浄した後、フィルターを西洋ワサビペルオキ シダーゼ結合ヒツジ抗ウサギIgG(カタログ番号170-6525,BioRad)と共にイン キュベートする。フィルターをPBS-Tweenで3回洗浄し、結合したウサギ抗体の 量(これはPTP−S31Dの量を示す)を増強化学発光(ECL)技法により製 造者の指示(カタログ番号RPN 2106,Amersh am,UK)にしたがって測定する。RD細胞系より得られたシグナルと、大腸菌によ って産生されたGST-PTP S31D融合タンパク質を用いて得られた標準曲線の比較は 、RD細胞系によって産生されたPTP−S31Dの量の測定を可能とする。 14.実施例:PTP−S31の酵素活性を刺激または阻害する作用剤の同定 酵素活性の潜在的モジュレーターを評価するため、PTP−S31タンパク質 の2つの異なる供給源が使用される: 1.第10節に記述されているGST-PTP-S31D(およびC)融合タンパク質 2.以下に記述する293細胞において一過性に発現されるPTP−S3 1。 PTP−S31(CまたはD)の全コード領域またはその機能的部分を含有す るcDNAを、標準的技法(Ausubelら、前掲)を用いて哺乳動物用発現ベクタ ー pcDNA I(カタログ番号V490-20,Invitrogen,San Diego)に挿入する。酵素 的に活性なPTP−S31を産生させるため、Gormanら,Virology 171:377-385 (1989)によって記述されている293細胞一過性発現系を使用する。標準的技法 を用いて、10%FCSを補充したダルベッコ改良イーグル培地(カタログ番号a041- 02430,GIBCO,Life Technologies Ltd.,Paisley,Scotland)を使用し、5% C O2雰囲気下で37℃で293細胞を培養する。 Chenら,Mol.CellBiol.7:2745-2752(1987)に記述されてい る方法にしたがって、10μgのプラスミド構築物PTP-S31D/pcDNA I(またはPTP- S31C/pcDNA I)を0.5mlの0.25mM CaCl2および0.5mlの2xBBS[50mM N,N-ビス(2- ヒドロキシエチル)-2-アミノエタン-スルホン酸(BES),280mM NaCl,1.5mM Na2HPO4]と混合して、10cmのペトリ皿を使用する1.5x106個の293細胞のトラン スフェクションに使用する。リン酸カルシウム−DNA沈降物を添加した後、細 胞を37℃で3%CO2のもとで24時間インキュベートし、次に10%FCSを補充したDMEM で1回洗浄し、新鮮な培地中でさらに24時間、37℃で5%CO2のもとでインキュベー トする。培地を除去し、細胞を1.0mlの溶菌緩衝液(20mM HEPES pH 7.5,150 mM NaCl,10%グリセリン,1.0%Triton X-100,1.5mM MgCl2,4mM EGTA,10μg/ml アプロチニン,1mMPMSF)中で溶菌する。細胞溶解物を2500xgで2分間4℃で 遠心する。上清を除去し、100 μlアリコートを液体窒素中で急速凍結させ、使 用時まで-70℃で保存する。 溶解物中のPTP−S31は、アニオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾 過等の従来のクロマトグラフィー技法を用いて部分精製することができる。 PTP−S31ホスファターゼ活性の潜在的モジュレーターを評価するため、 3つの異なる基質を使用する: (1)p-ニトロフェニルホスフェート(pNP-P;Sigma 104-0); (2)32P標識化 Raytide(Oncogene Science社,Manhasset,NY);および (3)32P標識化ウシミエリン塩基性タンパク質(MBP)。 これらの基質の1つまたはそれ以上に対するPTP−S31の 活性を減少または増大させる物質をさらに分析する。 14.1.Raytideおよびミエリン塩基性タンパク質の32Pによる標識 GST-PTP-S31D(およびC)融合タンパク質(第10節参照)、ならびに完全な 、かつ好ましくは半精製されたPTP−S31Dタンパク質または糖タンパク質 、もしくは293細胞に発現されるその機能性部分の、32P標識化RaytideTMに対す る活性を、Kruegerら[EMBO J.9:3241-3252(1990)]の記述する方法に本質的 に従って測定する。チロシンキナーゼp60c-srcを用いて製造者の指示(Oncog ene Science)にマイナーな修正を加えたものに従って、合成ペプチドRaytideTM 32Pで標識する。簡単に述べると、2μlのp60c-srcを20μlのRaytide(1 mg/ml)および108μlのキナーゼ緩衝液[10 mM MgCl2,0.2%(v/v)β-メルカ プトエタノール,30μM ATPおよび50pCi[γ-32P]ATPを含有する50mM HEPES, pH 7.5]と混合する。混合物を37℃で16時間インキュベートし、20 mM NaH2PO4 に溶解した500μlの20%(w/v)トリクロロ酢酸(TCA)および100μlの5mg/ml アセチル化ウシ血清アルブミンを添加することにより反応を停止させる。混合物 を遠心にかけ、沈降物を20% TCA/20 mM NaH2PO4を用いて3回洗浄し、最後に0.2 M Tris-HCl,pH 8.0に再溶解する。 Raytideに使用したのと類似の手順を用いて、ミエリン塩基性タンパク質(Sig ma)を標識する[Guanら,Nature 350:359-362(1991)]。30μgのMBPを以下 の成分を含む60μlの反応溶液中で 標識する。すなわち、50 mM HEPES緩衝液、pH 7.5,10 mM MgCl2,0.067%β-メ ルカプトエタノール,150 μCi[γ-32P]ATPを ience)である。この混合物を30℃で60分間インキュベートし、氷冷 TCAを最終 濃度20%まで添加することにより反応を停止させる。30分間氷上に置き、沈降物 を20% TCAで3回洗浄し、100μlの水に再溶解する。 14.2.基質pNP−Pを用いたPTP活性の評価 pNP−Pに対するGST/PTP-S31D融合タンパク質の活性を上記10節に記述す るように測定する。ホスファターゼ活性を刺激または阻害する能力を分析すべき 物質を、pNP−P添加の5分前にGST/PTP-S31D融合タンパク質に加える。293 細胞において発現されるPTP−S31Dに対しても同様の手順を使用するが、 ここではPTP-S31D/293細胞溶解物を直接使用する。 下に掲げる表Iは、第10節に記述されるようにグルタチオン-Sepharoseビーズ に結合したGST/PTP-S31融合タンパク質のPTP活性に及ぼす幾つかの作用剤の 効果を示す。表示された作用剤の濃度は、基質pNP−Pを添加した後の反応混 合物中での最終濃度である。ホスファターゼアッセイ混合物は、50 mM 2-(モル ホリノ)エタンスルホン酸(MES)pH 5.5、10 mMジチオトレイトール、25 nM pN P-Pおよび2μlのGST/PTP-S31-Sepharose懸濁液を含有していた。オルトバナデ ート酸塩、ポリ(Glu/Tyr)4:1およびポリ-L-リシンを試験する際は、5mM EDTA を反応混合物に含有させた。反応は室温で実施され、30分後に等容量の0.4m M NaOHを添加することにより停止させた。遠心にかけた後、上清をマイクロタイ タープレートに移し、405 nmにおける吸光度をDynatech MR5000プレートリーダ ーを用いて読んだ。比較のため、表Iは基質としてRaytideを使用した時のPTPβ およびLARの活性に関する発表されたデータを含んでいる[Itoh ら,J.Biol.C hem.267:12356-12363(1992)]。 上記の実施例は本発明の範囲を制限することを意図するものでは全くないこと を強調しなければならない。 14.3.基質RaytideまたはMBPを用いたPTP活性の評価 5μlの10xPTP緩衝液(250 mM HEPES,pH 7.3,50 mM EDTA,100 mMジチオト レイトール)を(a)5μlの32P標識化RaytideまたはMBP(10〜20X104cpmに相 当)、(b)それぞれ5,10および25μlのPTP-S31D/293細胞溶解物、または0.5, 1および5μlのグルタチオン-Sepharoseビーズに結合したGST-PTPS31D融合タ ンパク質の懸濁液(第10節参照)、および(c)最終容量を50μlとする水と 混合する。反応は30分後に37℃で停止させる。Raytideを用いる時は、反応は0.7 5 mlの酸性木炭混合物[Kreugerら,EMBO J.9:3241-3252(1990)][0.9 M HC l,90 mMピロリン酸ナトリウム,2mM NaH2PO4,4%(v/v)Norit A(Sigma)] を添加することにより停止させる。混合し、遠心にかけた後、400μlの上清を 取り出し、放射能の量を測定する。MBPを使用する時は、20%TCA(最終量)を用 いて反応を停止させる。次に上清中の32Pの量を測定する。 モジュレーター活性について分析すべき物質を、アッセイ開始の5分前にPTP- S31/293細胞溶解物に加える。 上に引用した文献は、具体的に組み入れたものもそうでないものもすべて参考 としてここに組み入れてある。 本発明を十分に記述したので、当業者は広範な等価のパラメーター、濃度、お よび条件の範囲内で発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、また過度の実 験なしで本発明を実施できること が分かるであろう。 本発明を特定の態様と結び付けて記述してきたが、さらなる変更が可能である ことが理解されよう。本願は、全般に本発明の原理に従い、また当分野で公知ま たは習慣的な実践の範囲内にあるような、および添付の請求の範囲に記載される 本質的特徴に適用可能であるような本開示からの逸脱を含む、本発明の任意の変 更、使用、または適応をカバーするものとする。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI C12N 9/18 9358−4B C12P 21/08 C12P 21/08 9284−4C A61K 39/395 E // A61K 39/395 9284−4C T 6807−4B C12Q 1/42 C12Q 1/42 9453−4B 1/68 A 1/68 8310−2J G01N 33/53 D G01N 33/53 8310−2J Y 8310−2J 33/573 A 33/573 9455−4C A61K 37/54 AED (C12N 1/21 C12R 1:19) (C12N 9/18 C12R 1:19) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),AU,BG,BR,BY,C A,CN,CZ,FI,GE,HU,JP,KG,KR ,KZ,LV,MD,NO,NZ,PL,RO,RU, SI,SK,TJ,UA,UZ (72)発明者 モラー,カリン,ビー ドイツ連邦共和国 ディー―81373 ミュ ンヘン 5,ハイテルヴァンガー シュト ラーセ 32番地 (72)発明者 ウルリッヒ,アクセル ドイツ連邦共和国 ディー―8033 マーチ ンスリート,アム クロプファーピッツ 18 エイ

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.ヒト・プロテインチロシンホスファターゼPTP−S31タンパク質または 糖タンパク質、その機能性誘導体、またはヒト以外の哺乳動物におけるその相同 体からなる分子であって、当該分子が天然に存在するものであるとき、それが自 然界で結合している他のタンパク質または糖タンパク質を実質的に含まない、上 記の分子。 2.天然に存在しない、請求項1に記載の分子。 3.天然に存在し、それが自然界で結合している他のタンパク質または糖タンパ ク質を実質的に含まない、請求項1に記載の分子。 4.配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の分子。 5.PTP−S31の変異体である、請求項1に記載の分子。 6.PTP−S31D(配列番号11)、PTPS31−14(配列番号16) 、PTPS31−2(配列番号17)、PTPS31−5(配列番号18)、P TPS31−63(配列番号19)、PTPS31−III(配列番号20)およ びPTPS31−RD#2(配列番号22)より成る群から選ばれる、請求項5 に記載の分子。 7.請求項1に記載のPTP−S31タンパク質、またはその機能性誘導体もし くは相同体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、当該タンパ ク質またはその機能性誘導体もしくは相同体が天然に存在するものであるとき、 当該タンパク質またはその機能性誘導体もしくは相同体が自然界で結合している タンパク質をコードするヌクレオチド配列を実質的に含まない、上記 の核酸分子。 8.cDNA配列である、請求項7に記載の核酸分子。 9.ゲノムDNA配列である、請求項7に記載の核酸分子。 10.配列番号3のヌクレオチド配列を含むDNA分子である、請求項7に記載の 核酸分子。 11.前記の機能性誘導体がPTP−S31D(配列番号11)、PTPS31− 14(配列番号16)、PTPS31−2(配列番号17)、PTPS31−5 (配列番号18)、PTPS31−63(配列番号19)、PTPS31−III (配列番号20)およびPTPS31−RD#2(配列番号22)より成る群か ら選ばれる、請求項7に記載の核酸分子。 12.発現ベクターである、請求項7に記載の核酸分子。 13.前記の発現ベクターがプラスミドである、請求項12に記載の核酸分子。 14.請求項12に記載の核酸分子で形質転換またはトランスフェクションされた宿 主細胞。 15.原核細胞である、請求項14に記載の宿主細胞。 16.真核細胞である、請求項14に記載の宿主細胞。 17.請求項1に記載のPTP−S31タンパク質または糖タンパク質を調製する 方法であって、 (a)PTP−S31タンパク質または糖タンパク質分子を発現することがで きる宿主を培養条件下で培養し、 (b)PTP−S31タンパク質または糖タンパク質分子を発現させ、そして (c)培養物からPTP−S31タンパク質または糖タンパク質 分子を回収する、 ことを含む、上記の方法。 18.請求項1のPTP−S31タンパク質または糖タンパク質分子に特異的な抗 体。 19.モノクローナルである、請求項18に記載の抗体。 20.サンプル中のPTP−S31タンパク質または糖タンパク質の存在を検出し 、またはその量を測定する方法であって、 (a)サンプルをPTP−S31タンパク質または糖タンパク質に特異的な抗 体と接触させ、そして (b)サンプル物質への当該抗体の結合を検出するか、または結合した抗体の 量を測定し、 その結果として、PTP−S31タンパク質または糖タンパク質の存在を検出 し、その量を測定することを含む、上記の方法。 21.核酸含有サンプル中の正常または変異型PTP−S31タンパク質をコード する核酸の存在を検出する方法であって、 (a)サンプルを、正常または変異型PTP−S31タンパク質の少なくとも 一部をコードするオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイゼーション条件下 で接触させ、そして (b)サンプルの核酸への当該プローブのハイブリダイゼーションを測定し、 その結果として、当該核酸の存在を検出することを含む、上記の方法。 22.段階(a)の前に、 (c)PTP−S31タンパク質をコードするDNAの量を選択的に増幅させ る、 ことをさらに含む、請求項21に記載の方法。 23.サンプル中のPTP−S31タンパク質または糖タンパク質と結合すること ができる化合物を検出する方法であって、 (a)固相マトリックスまたは担体にPTP−S31タンパク質もしくは糖タ ンパク質またはその化合物結合性部分を結合させて、固定化されたPTP−S3 1タンパク質もしくは糖タンパク質を形成し、 (b)サンプルを固定化PTP−S31と接触させて化合物を固定化PTP− S31に結合させ、かつ未結合物質を洗い流し、それにより固定化された化合物 を形成し、そして (c)固定化された化合物の存在を検出する、 ことを含む、上記の方法。 24.請求項1に記載のPTP−S31タンパク質、糖タンパク質または機能性誘 導体と結合することができる化合物を複雑な混合物から単離する方法であって、 (a)固相マトリックスまたは担体にPTP−S31タンパク質もしくは糖タ ンパク質またはその化合物結合性部分を結合させて、固定化されたPTP−S3 1タンパク質もしくは糖タンパク質を形成し、 (b)複雑な混合物を固定化PTP−S31と接触させて化合物を固定化PT P−S31に結合させ、かつ未結合物質を洗い流し、それにより固定化された化 合物を形成し、そして (c)固定化PTP−S31から固定化化合物を溶出し、 その結果として、当該化合物を単離することを含む、上記の方法。 25.PTP−S31の酵素活性を刺激または阻害することができる 作用剤を同定する方法であって、 (a)作用剤をPTP−S31タンパク質もしくは糖タンパク質またはその断 片(PTP−S31は純化された形態であっても、膜調製物または生存もしくは 固定全細胞中に存在していてもよい)と接触させて混合物を形成し、 (b)段階(a)の混合物を十分な時間インキュベートし、 (c)PTP−S31の酵素活性を測定し、 (d)その酵素活性を、作用剤の不在下でインキュベートしたPTP−S31 タンパク質または糖タンパク質の酵素活性と比較して、その作用剤がPTP−S 31の酵素活性を刺激するものなのか、阻害するものなのかを判定し、 その結果として、作用剤を同定することを含む、上記の方法。 26.PTP−S31タンパク質もしくは糖タンパク質またはその機能性誘導体と 他の細胞性タンパク質との結合を阻止または増強することができる化合物を複雑 な混合物中で同定する方法であって、 (a)当該化合物を含むと想定される複雑な混合物を、純化された形態の、ま たは膜調製物もしくは全細胞中のPTP−S31タンパク質、糖タンパク質また は機能性誘導体と接触させ、 (b)段階(a)で形成された混合物を十分な時間インキュベートし、 (c)PTP−S31タンパク質、糖タンパク質または機能性誘導体と細胞性 タンパク質との結合を測定し、そして (d)段階(c)の結合を、当該化合物の不在下で測定したPTP−S31タ ンパク質、糖タンパク質または機能性誘導体 と細胞性タンパク質との結合と比較して、PTP−S31タンパク質、糖タンパ ク質または機能性誘導体が当該結合を増強するものなのか、阻止するものなのか を判定し、 その結果として、当該化合物を同定することを含む、上記の方法。 27.異常なPTP−S31タンパク質または糖タンパク質と関連した疾患を治療 または予防するのに有用な医薬組成物であって、 (a)有効量のPTP−S31タンパク質もしくは糖タンパク質またはその機 能性誘導体、および (b)製剤学的に許容される担体、 を含有する、上記の医薬組成物。 28.異常なPTP−S31タンパク質または糖タンパク質と関連した疾患を治療 または予防するのに有用な医薬組成物であって、 (a)PTP−S31タンパク質または糖タンパク質の酵素活性を刺激または 阻害する、有効量の作用剤、および (b)製剤学的に許容される担体、 を含有する、上記の医薬組成物。 29.異常なPTP−S31タンパク質または糖タンパク質と関連した疾患を治療 または予防するのに有用な医薬組成物であって、 (a)標的細胞性タンパク質へのPTP−S31タンパク質または糖タンパク 質の結合を刺激または阻害する、有効量の作用剤、および (b)製剤学的に許容される担体、 を含有する、上記の医薬組成物。
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