JPH08504958A - 被覆毛細管電気泳動カラムにおける電気浸透フローの制御方法 - Google Patents
被覆毛細管電気泳動カラムにおける電気浸透フローの制御方法Info
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- JPH08504958A JPH08504958A JP7512143A JP51214394A JPH08504958A JP H08504958 A JPH08504958 A JP H08504958A JP 7512143 A JP7512143 A JP 7512143A JP 51214394 A JP51214394 A JP 51214394A JP H08504958 A JPH08504958 A JP H08504958A
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Abstract
(57)【要約】
被覆毛細管電気泳動カラムにおける電気浸透フローを電気泳動条件下において制御しかつ変化させる方法を開示した。本文に記載の方法では、荷電有機コーティングで被覆された内面を有する毛細管カラムにおける電気浸透フローを制御するため、電気泳動緩衝液組成物中における多価緩衝液化合物の濃度を変動させることを必要とする。前記有機コーティングの電荷と反対の電荷を有する多価緩衝液化合物濃度を電気泳動緩衝液中において増加させることは、電気浸透フローの低下をもたらす。多価緩衝液化合物の濃度を低下させることは、電気浸透フローの増加をもたらす。電気浸透フローを制御する能力は、電気泳動試料の成分の増強された分離および分離最適化をもたらす。
Description
【発明の詳細な説明】
被覆毛細管電気泳動カラムにおける電気浸透フローの制御方法
発明の背景 1.発明の分野
本発明は、一般的にいって、荷電内面コーティングを有する毛細管カラムおよ
びその用途としての電気泳動分離方法に関する。さらに詳細には、本発明は、荷
電コーティングと相互作用する緩衝液化合物濃度を変化させることによって、荷
電内面コーティングを有する毛細管電気泳動カラムにおける電気浸透フローを制
御する方法に関する。2.関連技術の記載
電気泳動分離方法は、分子の実効電荷の差異および/または前記分子の分子径
の差異に従って、分子を分離するために長年にわたり利用されてきた。最近にな
るまで、電気泳動分離は、通常はポリアクリルアミドゲル材料から構成されるゲ
ルスラブまたはオープンゲルベッド中において実施されてきた。さらに最近にな
って、毛細管電気泳動技術は分光検出方法と併用され、分子の自動化および迅速
定量分析を可能としてきた。異なる実効電荷を有する分子の高分解能分離が、緩
衝液を充填したかまたはゲルを充填した細い毛細管に電気泳動原理を適用するこ
とによって、達成されてきた。
典型的には、毛細管電気泳動に使用されてきた毛細管は、25μmから200
μmのオーダーの直径と約10から200cmの長さを有する(種々の)長さの
シリカチューブから加工されている。
緩衝液およびゲル分離媒体はカラム内部に直接ポンプで組み入れられ、電気泳動
法を用いて、多種類のペプチド類、タンパク質類、およびオリゴヌクレオチド類
、核酸類およびその他の荷電分子種を分離する。さらに、この分野は、毛細管電
気泳動操作を用いて分離できかつ検出できる分子の種類および大きさに関して、
絶えず拡大している。
毛細管電気泳動と関連した利点は、極めて多い。定量的情報は極小試料サイズ
によって得ることができ、使用したゲルまたは緩衝液の量は非常に少ない。さら
に、分離に要する時間を極めて短くでき、本方法自体は、自動化および電子デー
タ保存およびデータ操作に寄与する。毛細管電気泳動が旧来のスラブゲル電気泳
動に存在しないある現象に関連していることは重要である。これらのうちのひと
つは、緩衝溶液の電極のひとつに向かってのバルクフローによって特徴づけられ
る現在よく知られている電気浸透フロー現象である。
電気浸透フローは、シリカ毛細管チューブの表面におけるシラノール官能基類
のイオン化によって発生する。このイオン化の結果、シリカチューブの表面にお
いて、電気泳動緩衝液中にプロトン層を生成する。電場の存在において、プロト
ン層は陽極に向かって移動する液体の陽電荷カラムに類似し、緩衝液媒体の全体
としてのバルク移動を引き起こす。電気浸透フローが種々の適用において利用で
キ、電気泳動分離を向上させるのは、有益である。例えば、分離される分子の電
気泳動移動が電気浸透フローのそれと反対方向にある時、正味の効果は実効カラ
ム長の増加となる。
電気浸透フローが特定の分離に好都合であってもまたはそうでは
なくとも、該フローを制御することができることが望ましい。電気浸透フローを
最小とするかまたは制御するひとつの方法は、表面シラノール基のイオン化が起
こる程度を制御するために内部を高分子性材料で被覆されたシリカ毛細管を用意
することである。通常、これらのコーティングは、それらの目的とする用途に役
立ってきた。しかし、電気浸透フロー制御を用いて電気泳動分離に寄与するため
の改良されたコーティングおよび方法に対する要求が引き続き存在する。
被覆毛細管カラムは、電気泳動分離時における電気浸透フローを消失させるか
または実質的に減少させるために通常利用される。しかし、これらの被覆毛細管
を用いた分離が他の被覆または非被覆毛細管に比べて特徴的に高い電気浸透フロ
ーを実際に有するように、内面毛細管コーティングを設計できる。特に、多くの
応用については、特定のコーティングを有する毛細管電気泳動カラムを利用する
ことが望ましく、この特定の被覆カラムに特徴的な電気浸透フローを増加させる
かまたは減少させることが可能であろう。
被覆毛細管カラムにおける電気浸透フローを変化させる能力は、試料成分が分
離困難であるかまたは電気浸透フロー減少または増加が分解能向上をもたらす際
に、特に好都合である。正味電荷において試料成分間で有意に異なる場合、その
際には、電気浸透フローを増加させることで分析時間を短縮できる。もし試料成
分が類似の正味電荷を有すれば、その際には、電気泳動移動度におけるわずかの
差異を増強するために電気浸透フローを減少させる能力は特に好都合である。
毛細管電気泳動に関連したもうひとつの問題として、試料成分が
毛細管壁に、特にシリカチューブの壁に付着する傾向が挙げられる。このことは
、反応性シリカ官能基に容易に誘引される荷電小分子の場合に特に当てはまる。
電気泳動分離媒体中に小ペプチド類およびアミン類が存在するとき、それらは、
毛細管壁と静電的にかつ疎水性の両者で相互作用する。その結果、分離効率の低
下および望ましくないバンド拡大となり、分離について誤まったデータが得られ
る。
被覆毛細管カラムは、望ましくない毛細管壁および試料相互作用を最小とする
かまたは減少させるのに役立つ。ペプチド類およびタンパク質類の分離では、荷
電高分子性コーティングを利用することが提案されている。しかし、これらの被
覆毛細管カラムを用いて電気浸透フローを変化させる能力はきわめて低い。
したがって、本発明の目的は、被覆毛細管カラムにおける電気浸透フローを制
御する方法を提供することである。
さらに、本発明の目的は、被覆毛細管電気泳動カラムにおける電気浸透フロー
を制御する方法を提供することおよび同時に試料成分と内部毛細管壁との相互作
用を低下させるかまたは消失させることである。
さらに、本発明の目的は、さまざまな荷電分子の分離(separa-tion)および
分離(resolution)のための毛細管電気泳動的な分離方法を提供することである
。
発明の要約
本発明は、電気泳動緩衝液の濃度を変化させることによって、荷電内面コーテ
ィングを有する毛細管カラムにおいて電気浸透フロー
を変化させるための方法を提供することによって上述の目的を満たす。好都合に
は、本発明は、試料の成分と毛細管カラムの内面の相互作用の量を減少させるこ
とに寄与する被覆毛細管カラムの用途を提供する一方、同時に、被覆カラムの電
気浸透フローを変化する方法を提供する。さらに、本発明は、試料成分の分離分
解能の程度並びに有効な電気泳動分離および分析に必要な時間に及ぼす使用者制
御を増強させることに寄与する。本発明の方法を実用化することで、アミン類、
ペプチド類およびタンパク質類を含む多数の化合物の分析分離の向上がもたらさ
れる。
したがって、本発明の方法は、電気泳動時における試料中の成分の電気泳動分
離を増強させるために毛細管電気泳動カラムにおいて電気浸透フローを制御する
ことを含む。例示的方法として、まず最初に、有機多価イオン化合物で被覆され
た内面を有する所定長さの管から加工された毛細管カラムを用意することを含む
。被覆されたカラムは、第1の分離緩衝液濃度を有する多価電気泳動緩衝液組成
物を用いる電気泳動的な分離条件下において特徴的な電気浸透フローを有してい
る。次の段階は、多価化合物を含む緩衝液組成物を被覆毛細管カラムに導入する
ことを含む。前記特徴的電気浸透フローを増加させるために第2の多価緩衝液化
合物濃度が第1の緩衝液濃度よりも低くなるように、また、前記特徴的電気浸透
フローを低下させるために第2の多価緩衝液化合物濃度が第1の緩衝液濃度より
も大きくなるように、前記緩衝液組成物は第2の多価緩衝液化合物濃度を有して
いる。次に試料組成物を前記所定長さの管の末端に導入し、前記管の一端に配置
された陰極貯留槽および前記管の他端に配置された陽極貯留槽に電場を適用する
ことで、前記電気浸透フロ
ーを前記被覆カラムに特徴的な電気浸透フローから変化させる。
本発明の実施において有用な例示的被覆毛細管カラムは、その4級アンモニウ
ム誘導体の形態の多官能アミン化合物のような多価陽電荷化合物のコーティング
を有するシリカ毛細管カラムを含む。このような4級アンモニウム化合物として
、一般式
(式中、0≦n≦20;0≦y≦20;p≧1;Xは、式Cl、BrおよびIを
有する官能基からなる群から選択される。)
を有するものが挙げられる。
適切な緩衝液組成物として、有機コーティング上の電荷と反対の多価電荷を有
する多価の無機または有機緩衝塩の液体溶液が挙げられる。これらの多価緩衝液
として、リン酸塩緩衝液、ほう酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液、ジカルボン酸緩衝液
およびトリカルボン酸緩衝液が挙げられる。好適な緩衝液組成物は、1塩基性リ
ン酸塩および2塩基性リン酸塩の併用物のようなリン酸塩pH緩衝液の水溶液を
含む。
本発明の方法は、特に、アミノおよびアミノ誘導体官能基を有する被検体の電
気泳動分離における用途を有している。例示的分析化合物として、アミン類、ア
ミノ酸類、ペプチド類およびアミン塩酸塩のようなそれらの誘導体が挙げられる
。本文の教示に従って電気浸透フローを変化させることによって、これらの被検
体の電気泳動分離および分解能が増強できる。
本発明に関連するこれらおよびその他の利点は、本発明の詳細な説明に記載の
発明を下記の図面を参照して理解すれば、当業者には明らかであろう。
図面の簡単な説明
第1図は、中性マーカー化合物、ベンジルアルコールの移動度を緩衝液化合物
濃度に対してプロットしたものである。移動度データは、内面が荷電ポリアミン
で被覆された毛細管カラムを利用して得られた。
第2図は、荷電ポリアミン被覆毛細管カラムにおいてpH7.0の50mM
Hepes緩衝液を用いて分離したタンパク質混合物の電気泳動図である。
第3図は、荷電ポリアミンで内面を被覆した毛細管カラムにおいて25mM
リン酸塩緩衝液(等モルの2塩基性リン酸塩と1塩基性リン酸塩)を用いて第2
図に示したように分離したものと同一のタンパク質混合物の電気泳動図である。
第4図は、荷電ポリアミンでその内面が被覆された毛細管カラムにおいて50
mM リン酸塩緩衝液(等モルの2塩基性リン酸塩及び1塩基性リン酸塩)を用
いて、第2図および第3図に示したように分離したものと同一のタンパク質混合
物の電気泳動図である。
第5図は、荷電ポリアミンで内面が被覆された毛細管カラムにおいて100m
M リン酸塩緩衝液(2塩基性リン酸塩および1塩基性リン酸塩の等モル)を用
いて、第2図、第3図および第4図に示したように分離したものと同一のタンパ
ク質混合物の電気泳動図である。
発明の詳細な説明
本発明は、それらの内面上にイオン的に荷電したコーティングを有する毛細管
電気泳動カラムにおける電気浸透フローを変化させる方法を提供する。本発明の
実施は、特に、Beckman Instruments社、Fullerton、Californiaが製造販売して
いるP/ACEシリーズ毛細管電気泳動システムのような電気泳動分離系におい
て有用である。
本発明の電気浸透フローを変化させる方法は、それらの電気泳動移動度に基づ
きさまざまの分子種の分離において有用な手段である。これらの分子種はタンパ
ク質およびポリヌクレオチドのような巨大分子および塩基性薬剤および核酸のよ
うな小化合物を含む。
本文に説明した本発明は電気浸透フローの使用者制御を提供し、特定の電気泳
動カラムのために電気浸透フローを操作すなわち変化させる能力が増強されるか
または分析分離を改良する際に、好適に実施される。被覆毛細管電気泳動カラム
は電気浸透フローを増加させるかまたは低下させる能力と併用され利用されるの
で、本発明は、被覆カラムおよび非被覆カラムの利点を予想を上回りかつ好都合
に提供する。
本文に説明した方法は、電気泳動時において試料中の成分の電気泳動分離を増
強するために毛細管電気泳動カラムにおける電気浸透フローを制御することがで
きる。例示的方法として、まず最初に、有機イオン化合物で被覆した内面を有す
る所定長さの管から加工された毛細管カラムを用意することが挙げられる。前記
被覆されたカラムは、第1の多価緩衝液濃度を有する電気泳動緩衝液組成物を用
いる電気泳動分離条件下において特徴的な電気浸透フローを有している。次の段
階は、多価化合物を含む緩衝液組成物を被覆毛細管カラムに導入することを含む
。前記電気浸透フローを増加させるために第2の多価緩衝液化合物濃度を第1の
多価緩衝液濃度よりも低くなるように、また、前記電気浸透フローを低下させる
ために第2の多価緩衝液化合物濃度を第1の多価緩衝液濃度よりも大きくなるよ
うに、前記緩衝液組成物は第2の多価緩衝液化合物濃度を有している。次に試料
組成物を前記所定長さの管の末端に導入し、前記管の一端に配置された陰極貯留
槽および前記管の他端に配置された陽極貯留槽に電場を適用して、前記電気浸透
フローを前記被覆カラムに特徴的な電気浸透フローから変化させる。
毛細管は、毛細管に適した物理的および化学的性質を有しておりかつその表面
に荷電化学官能基を有しているいかなる材料からも調製できる。本発明の好適な
態様において、毛細管はシリカ含有ガラスから調製され、荷電化学種はシラノー
ル官能基SiO-1類であり、それらは、溶融シリカの表面をさらに極めて低塩基
性の溶液に暴露させることによって、容易に形成される。毛細管分離系の技術に
おいて公知であるように、毛細管は、長さおよび径を変化させることができ、そ
れぞれが特定の分析アプリケーションに依存している。通常、カラムは、長さが
約10cm〜200cmであり内径が25〜200μmである。
本発明によれば、毛細管内壁は、毛細管カラムの内面壁によって所有されてい
る電荷と反対の電荷を有する化学種を含む有機イオン化合物のコーティングを有
している。好適なカラムは陰電荷を有するので、好適な有機イオン化合物は、そ
れらの4級アミン誘導体の
形態のアミン類およびポリアミン類のような陽電荷化合物である。ポリアミンの
ような多価イオン化合物は好適である。これらの化合物は一般に、式
(式中、0≦n≦20;0≦y≦20;p≧1;Xは、式Cl、BrおよびIを
有する官能基からなる群から選択される。)
によって表される。
特に好適な有機多価イオン化合物は、前記多価イオン化合物に存在する官能基
と反応性の少なくとも2個の官能基を有する架橋剤で架橋される。このような化
合物およびそれらの調製ならびに被覆毛細管カラムの調製方法は、同時係属米国
特許出願第 号に記載されている。物理的一体性が増強されかつ内
部カラム壁−コーティングの相互作用を与える例示的な架橋された多価有機化合
物は、式
{式中、0≦n≦20;0≦y≦20;p≧1;
Xは、式Cl、BrおよびIを有する官能基からなる群から選択され;
Zは、式:
C1−C20アルキル、−C=0−R1−C=0−および−HCOH−R2−O−R3−H
OCH
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれC1−C20アルキルである。)
を有する官能基からなる群から選択される有機ラジカルである。}を有するもの
が挙げられる。
好適な架橋4級アンモニウム化合物は、分子量約1000〜約100,000
を有する高分子性アミン化合物から好適には調製される。
当業者は、4級アンモニウム化合物の陽電荷がシリカカラム表面上のイオン化
シラノール官能基の陰電荷と相互作用し、毛細管カラムの内面にイオン的に結合
することを理解するであろう。前記多価荷電化合物が架橋されると、前記多価イ
オン化合物の分子量増加および高分子性鎖のより緊密に結合したネットワークが
コーティングの物理的一体性を増強し、かつ、通常、毛細管表面に対する結合容
易性を増強する。有機イオン化合物の電荷密度およびコーティングの量は、毛細
管内面の荷電をマスクし毛細管壁の表面の荷電化学種と相互作用してイオン的に
結合したコーティングを形成させるほど、十分に高くすべきである。
本発明によれば、適切な多価の緩衝液化合物として、pH緩衝作用を有する多
価イオン性化合物の液体溶液が挙げられる。このよう
な化合物は当技術で知られており、その制限として、前記pH緩衝液が多価であ
ることおよび多価電荷が毛細管カラムの内面の荷電コーティングの反対であるこ
とが挙げられる。それらの内面に荷電アミンコーティングを有する毛細管カラム
について、適切な多価緩衝液化合物は多価陰イオン性の特徴を有している。当業
者には、これらの特徴を有する多価pH緩衝液が、リン酸塩緩衝液、ほう酸塩緩
衝液、炭酸塩緩衝液、マレイン酸塩およびコハク酸塩のようなジカルボン酸緩衝
液、並びにクエン酸のようなトリカルボン酸緩衝液を含むことが理解されるであ
ろう。好適な緩衝液組成物として、1塩基性リン酸塩および2塩基性リン酸塩の
併用物のようなリン酸塩pH緩衝液の水溶液が挙げられる。
基本的に、本発明の実施は、所望の試料分離を達成するために必要な最小の試
料分析総時間を保ちつつ試料成分の分離を増強する形態で電気泳動分析を改良す
ることを含む。さらに、本発明は、特殊な設備を全く必要とせず、通常の電気泳
動機器および技術が利用される。したがって、いったん試料組成物が電気泳動分
離条件に供されると、それらの条件の電気浸透フロー特性が変化させられる。さ
らに詳細には、最初に荷電コーティングを有する毛細管カラムおよびいかなる選
択した種類および濃度のランニング緩衝液をも用いて電気泳動図を得ることによ
って、それらの条件の電気浸透フロー特性が、同一カラムおよび多価ランニング
緩衝液の異なる種類および/または濃度を用いてその後の電気泳動分析で変化さ
せることができる。前記多価緩衝液濃度は、電気浸透フローを増加させるかまた
は減少させるように選択でき、その結果、分析試料(タンパク質類、塩基性薬物
、ペプチド類、オリゴヌクレオチド類、核酸類等)
の分解能、移動時間、および同定成分数を最適化する。
たとえば、分析するタンパク質混合物が荷電ポリアミンで被覆された毛細管カ
ラムおよびHepes緩衝液のような1価の緩衝液化合物の緩衝液組成物を用い
て最初にその成分タンパク質に分離されると、電気浸透フローは実質的に高く、
かつ、各成分の移動時間は実質的に速くなる。多くの場合、高電気浸透フローは
、試料成分の有効電気泳動移動および分離を不可能とする。もし同一試料がその
際多価緩衝液から調製された緩衝液組成物を用いて電気泳動条件に供されると、
予測外にも電気浸透フローが低下し、分解能が向上する。緩衝液組成物中におけ
る多価緩衝液濃度を増加させると、さらに電気浸透フローが低下し、試料成分の
分解能が向上する。
同様に、もし分析用タンパク質混合物が荷電ポリアミンで被覆された毛細管カ
ラムおよび適切なpHの5−10mMリン酸塩緩衝液のような多価の緩衝液化合
物の実質的に低濃度を有する緩衝液組成物を用いて最初にその成分タンパク質に
分離されると、電気浸透フローは実質的に高く、かつ、各成分の移動時間は実質
的に速くなる。もし同一試料をその後高濃度の多価緩衝液を有する緩衝液組成物
を用いて電気泳動条件に供すると、予測外にも電気浸透フローが低下し、分解能
が向上する。
多価化合物はカラムの内壁の有機コーティングの荷電官能基と相互作用するか
またはイオン的に複合体を形成することが可能で、それによって、コーティング
電荷をマスクすると考えられている。被覆電荷は荷電陽イオンコーティングと関
連する実質的に高い電気浸透フローに主に関与しているので、このようにコーテ
ィングをマスクすることは、電気泳動条件下において電気浸透フロー低下をもた
らすことになる。ランニング緩衝液組成物中における多価緩衝液化合物濃度を引
き続く分析において増加させることは、対応して、電気浸透フローを低下させる
ことになる。これは、おそらく、コーティングの電荷のマスキングの程度が極め
て高いことにより、1価の緩衝液化合物がランニング緩衝液である際には起こら
ない現象である。
したがって、本発明は、荷電コーティングを有する毛細管カラムにおいて電気
浸透フローを変化させる方法を提供する。被覆毛細管カラム中における多価緩衝
液化合物の特定濃度を有する緩衝液組成物を用いて得られた電気浸透フローを高
めるため、緩衝液組成物中における多価緩衝液化合物の濃度を低下させることだ
けが必要である。同様に、電気浸透フローを低下させるため、多価緩衝液化合物
の濃度を増加させることだけが必要である。最後に、多価緩衝液化合物の緩衝液
組成物を使用すると、高すぎる電気浸透フローを有する電気泳動条件となり、多
価緩衝液化合物のランニング緩衝液を使用すると、電気浸透フローが低下する。
既に述べたように、本文に記載した電気泳動方法は、公知の電気泳動方法およ
び機器を利用している。したがって、緩衝液組成物を電気泳動毛細管に導入する
こと、試料組成物を被覆カラムの内部にその一端で導入すること、および陽極貯
留槽および陰極貯留槽に電場をかけることの段階は、十分に当業者の能力の範囲
内にある。例えばUV視可能な検出器または蛍光検出器のような適切な検出器を
被覆カラムの少なくとも一端に適当に配置すると、分離された試料の成分が検出
され、電気泳動図が得られる。
下記の例は、本発明の例示的態様を例示するものとして示されて
いる。これらの例は限定的ではなく、例示のためのみに示されている。
例1
下記の例は、本発明の方法における用途に適しかつ有している架橋高分子性ア
ルキルアミンまたはポリエミン(PEI)の調製を例示したものである。
種々の異なる分子量のPEIは約160〜約1,000,000で入手可能で
ありかつ一般式:
を有している。
下記に説明した操作は、架橋されたPEI 1800、PEI 1200およ
びPEI 600ならびに同様の分子量特性を有する種々の多価アミンの調製に
適用できる。
PEI 1800の10gをメタノール20mLおよびテトラヒドロフラン3
00mLの溶液に添加した。PEIを完全に溶解させた後、ブタジエンジエポキ
シドの1.0gを前記PEI溶液に添加した。PEIおよびブタジエンジエポキ
シドの生成溶液を16時間還流させ、次に室温まで冷却した。その後、水100
mLを冷却した溶液に添加し、メタノールおよびテトラヒドロフラン溶媒をロー
タリエバポレータ中で減圧下で前記溶液から蒸発させた。架橋PEIの残りの水
溶液は、その後のアルキル化操作における使用に適している。
例2
下記の例は、低分子量多価アミン類の架橋操作を例示したものである。記載の
操作を用いて、それぞれアミン官能基6個および4個を有するペンタエチレンヘ
キサミンおよびトリエチレンテトラミンを交互に架橋した。
ペンタエチレンヘキサミンおよびトリエチレンテトラミンのいずれか10gを
テトラヒドロフラン200mLに添加した。アミンを完全に溶解させた後、ブタ
ジエンジエポキシド1gを前記テトラヒドロフラン溶液に添加し、生成したジエ
ポキシドおよびアミン溶液を16時間還流させた。還流溶液を室温まで冷却させ
、その後、水100mLを冷却した溶液に添加した。前記溶媒のテトラヒドロフ
ラン部分を減圧下でロータリエバポレータ中で蒸発させ生成した架橋アミンの水
溶液は、アルキル化反応における用途に適していた。
例3
下記の例は、架橋PEI類および上述の架橋ペンタエチレンヘキサミンおよび
トリエチレンテトラミンを含む架橋高分子性アミン類およびより小さい架橋アミ
ン化合物のアルキル化に適した典型的方法を例示している。ヨードメタンがこの
例において使用したアルキル化剤であるが、クロロおよびブロモアルキル化合物
を含む多数のアルキル化剤がヨードメタンと交換可能である。
メタノール200mL容量、炭酸ナトリウム30g、水100mL、およびヨ
ードメタン50mLを、例1または例2において記載したように架橋させた多価
アミン化合物10グラムを含む水溶液に添加した。反応混合物を16時間還流さ
せ、メタノールを減圧下
でロータリエバポレータを用い除去した。生成した4級アンモニウム化合物水溶
液を総量1000mLに希釈し、その後、0.45μm孔サイズフィルターによ
ってろ過した。このろ過溶液は、イオン性相互作用コーティングの形成のために
毛細管内面に適用するのに適している。
例4
下記の例は、毛細管調製に適した方法および最終被覆毛細管カラムを提供する
ために管内面にコーティングを形成するための方法を例示したものである。
Polymicro of Phoenix、Arizonaから購入した所
定長さの直径50μmの毛細管の内面を、1NHCl溶液で15分間、洗浄した
。このHCl溶液を除去し、管内面をNaOH 1N溶液で15分間洗浄し、そ
の後、清浄水で15分間洗浄した。その後、調製した長さの毛細管カラムを約1
重量%の架橋4級アンモニウム化合物を含有する水溶液によって15分間、洗浄
した。この洗浄工程の後、被覆された毛細管カラムは、標準的毛細管電気泳動操
作における使用に適していた。
例5
下記の例は、多価緩衝液化合物から調製したランニング緩衝液の濃度を変化さ
せることによって得られた電気浸透フローの劇的かつ予測外の変化を示したもの
である。
ポリアミン被覆毛細管電気泳動カラムを用いて多価緩衝液化合物の濃度を変化
させる効果を明らかにするため、中性マーカー化合物
の移動を調べた。中性マーカー化合物は電荷を有していないので、それらは電気
泳動的には移動しない。したがって、電気泳動条件下において、これらの中性マ
ーカー化合物のカラムを介した移動は、被覆毛細管電気泳動カラム内部における
電気浸透フローのみによる。
10μL/mL ベンジルアルコール水溶液、中性マーカーを調製し、そして
前記水溶液を4級アミン化合物の形態のボリアミンで被覆した毛細管を用いて数
回の電気泳動実験に供して、実験を行った。実験は、254nm検出を用いてP
/ACE電気泳動機器(Beckman Instruments,Fulle
rton,California)で行った。カラムは、全長27cmで有効長
さは20cmであった。かけた電場は、8.10kVであった。ベンジルアルコ
ール溶液試料は2秒圧注入を用いてカラム中に導入した。最初の電気泳動実験は
1価の緩衝液であるHEPESを利用し、最初の特徴的移動時間を確定した。以
後の電気泳動実験では、等モル濃度の多価1塩基性リン酸塩緩衝液および2塩基
性リン酸塩を総リン酸塩濃度を変化させ使用した(pH7.0)。ベンジルアル
コールの移動時間は各分析について測定し、移動度対多価緩衝濃度を各電気泳動
実験について求めた。
各実験のランニング緩衝液および濃度は下記のようであった:
第1図は、この実験の結果を示したものである。陽イオン的に荷電したポリア
ミンコーティングのそれと反対の多価電荷を有する多価緩衝液化合物(リン酸塩
緩衝液)の濃度を高めることによって、中性マーカーの移動度は低下する。実質
的に高濃度の1価の緩衝液を用いると、電気浸透フローおよび中性マーカーの移
動度は影響を受けない。
例6
下記は、荷電ポリアミン類で被覆された内壁を有する毛細管カラムを用いて電
気浸透フローを増加させるかまたは減少させる例示的方法を示したものである。
4級アンモニウム化合物の形態の架橋ポリアミンを有する全長30cmの毛細管
カラムを、P/ACE毛細管電気泳動機器(Beckman Instrume
nts,Fullerton California)に配置した。1mg/m
Lの、炭酸アンヒドラーゼ、ミオグロビン、リボヌクレアーゼA、チトクローム
Cおよびリゾチームを含有する試料を調製した。試料のアリコートを、濃度の異
なるランニング緩衝液を用いて4回、毛細管電気泳動に供した。各電気泳動実験
について、3秒圧注入、貯留槽にかけた14.8kVの電圧および214nm紫
外検出を用いて、試料を注入した。第2〜5図は、各実験で得られた電気泳動図
を示している。第2図は、50mM HEPES緩衝液を
pH7.0で用いた分離のそれである。第3図は、pH7.0の25mM リン
酸塩緩衝液を用いて得られた。第4図は、50mMリン酸塩緩衝液を用いて得ら
れ、および第5図は、100mM リン酸塩緩衝液を用いて得られた。電気泳動
図すべてにおいて、左から右へのタンパク質移動順序は、炭酸アンヒドラーゼ、
ミオグロビン、リボヌクレアーゼA、チトクロームCおよびリゾチームである。
前記電気泳動図は、多価緩衝液濃度を変化させる劇的かつ予測外の効果を示し
ている。第2図において、総移動時間は、相対的に高電気浸透フローを維持する
1価の緩衝液HEPESを用いて3分である。多価リン酸塩緩衝液を用いると(
第3図)、より低い濃度でも、電気浸透フローは低下し移動時間は10分まで増
加する。第4図および第5図は、同様に、リン酸塩緩衝液の濃度増大とともに、
電気浸透フローの劇的低下と移動時間の増加を示している。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.毛細管電気泳動カラムにおける電気浸透フローを制御する方法であって、 有機多価イオン化合物で被覆された内面を有する所定長さの管を含む毛細管カ ラムを用意し、前記被覆されたカラムは、第1の多価緩衝液濃度を有する電気泳 動緩衝液組成物を用いる電気泳動分離条件下において特徴的な電気浸透フローを 有しており、 前記毛細管カラムの一端部を陽極貯留槽中に浸漬し、かつ前記毛細管カラムの 第2の端部を陰極貯留槽に浸漬し、 多価緩衝液化合物を含む組成物を前記毛細管に導入し、前記組成物は、前記電 気浸透フローを増加させるために第2の多価緩衝液化合物濃度が第1の多価緩衝 液濃度よりも低くなるように、また、前記電気浸透フローを低下させるために第 2の多価緩衝液化合物濃度が第1の多価緩衝液濃度よりも大きくなるように、第 2の多価緩衝液化合物濃度を有しており、 少なくとも1つの荷電被検体を有する試料組成物を前記所定長さの管に前記第 1の端部または第2の端部において導入し、そして 前記貯留槽に電場を適用し、前記電場は前記毛細管内部において前記試料の成 分を移動させることができ、ここで前記電気浸透フローは、前記第2の多価緩衝 液濃度とともに変動する 各工程を含んでなる方法。 2.前記試料の成分がペプチド類、タンパク質類およびアミン類からなる群から 選択される請求項1記載の方法。 3.前記多価緩衝液化合物が前記荷電有機コーティングと反対の多価電荷を有し ている請求項1記載の方法。 4.前記多価緩衝液化合物がリン酸塩緩衝液、ほう酸塩緩衝液、ジカルボン酸緩 衝液、トリカルボン酸緩衝液からなる群から選択される請求項1記載の方法。 5.前記第1のおよび第2の多価緩衝液濃度が0〜約500mMである請求項1 記載の方法。 6.前記有機多価イオン化合物がポリアミンの高分子性4級アンモニウム化合物 誘導体を含む請求項1記載の方法。 7.前記4級アンモニウム化合物が少なくとも3個の4級アンモニウム官能基を 有する化合物を含む請求項6記載の方法。 8.前記4級アンモニウム化合物が、式 (式中、0≦n≦20;0≦y≦20;p≧1; Xは、式Cl、BrおよびIを有する官能基からなる群から選択される。) を有する化合物からなる群から選択される請求項3記載の方法。 9.毛細管電気泳動カラムにおける電気浸透フローを低下させる方法であって、 有機多価イオン化合物で被覆された内面を有する所定長さの管を含む毛細管カ ラムを用意し、前記被覆された毛細管カラムは、1価の緩衝液化合物を含む電気 泳動緩衝液組成物を用いる電気泳動条件下において特徴的な電気浸透フローを有 しており、 前記毛細管カラムの第1の端部を陽極貯留槽中に浸漬し、かつ前記毛細管カラ ムの第2の端部を陰極貯留槽に浸漬し、 多価緩衝液化合物を含む組成物を前記毛細管に導入し、 前記第1の端部または第2の端部において前記所定長さの毛細管に試料組成物 を導入し、そして 前記貯留槽に電場を適用し、それによって、多価緩衝液化合物の前記組成物が 前記特徴的な電気浸透フロー未満の第2の多価緩衝液電気浸透フローを用意する 各工程を含んでなる方法。 10.前記多価緩衝液化合物が前記荷電有機コーティングと反対の多価電荷を有 している請求項9記載の方法。 11.前記多価緩衝液化合物がリン酸塩緩衝液、ほう酸塩緩衝液、ジカルボン酸 緩衝液、トリカルボン酸緩衝液からなる群から選択される請求項9記載の方法。 12.前記第1のおよび第2の多価緩衝液濃度が0〜約500mMである請求項 9記載の方法。 13.前記有機多価イオン化合物がポリアミンの高分子性4級アンモニウム化合 物誘導体を含む請求項9記載の方法。 14.毛細管電気泳動による試料の成分のための試料組成物の分析を増強する方 法であって、 下記の 内面、第1の端部および第2の端部を有する所定長さの毛細管を含んでなり 、前記内面は前記内面上のコーティングである荷電化学官能基を有しており、前 記コーティングは、前記内面の前記荷電化学官能基とイオン的相互作用が可能な 架橋有機多価イオン化合物を含んでなる 毛細管電気泳動カラムを用意し、 前記毛細管にランニング緩衝液組成物を導入し、前記ランニング緩衝液組成物 は第1の緩衝液濃度を有する多価緩衝液化合物を含み、前記ランニング緩衝液組 成物は、前記カラムに対して第1の電気浸透フローを用意し、 少なくとも1つの荷電した試料の成分を有する前記試料組成物を前記第1の端 部または第2の端部において前記所定長さの毛細管に導入し、そして、 前記貯留槽に電場をかけ、 前記試料組成物の試料の成分が十分に分離されているか測定し、 多価緩衝液化合物および第2の多価緩衝液化合物濃度を有する第 2の緩衝液組成物を導入し、該第2の多価緩衝液化合物濃度は電気浸透フローを 増大させるためおよび試料の成分の移動時間を短縮させるために前記第2の多価 緩衝液濃度が前記第1の緩衝液濃度未満となるように選択され、また、電気浸透 フローを低下させるためおよび試料の成分の移動時間を増加させるために前記第 2の多価緩衝液濃度が前記第1の緩衝液濃度より大きくなるように選択され、そ して 前記貯留槽に電場を適用して増強された試料の成分の分析を得る各工程を含ん でなる方法。 15.前記多価緩衝液化合物が前記荷電有機コーティングと反対の多価電荷を有 している請求項14記載の方法。 16.前記多価緩衝液化合物がリン酸塩緩衝液、ほう酸塩緩衝液、ジカルボン酸 緩衝液、トリカルボン酸緩衝液からなる群から選択される請求項14記載の方法 。 17.前記第1のおよび第2の多価緩衝液濃度が0〜約500mMである請求項 14記載の方法。 18.前記有機多価イオン化合物がポリアミンの高分子性4級アンモニウム化合 物誘導体を含む請求項14記載の方法。
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