JPH08504326A - 誘導性の植物プロモーターをコードするdna分子およびトマトadh2酵素 - Google Patents

誘導性の植物プロモーターをコードするdna分子およびトマトadh2酵素

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JPH08504326A JP6513580A JP51358094A JPH08504326A JP H08504326 A JPH08504326 A JP H08504326A JP 6513580 A JP6513580 A JP 6513580A JP 51358094 A JP51358094 A JP 51358094A JP H08504326 A JPH08504326 A JP H08504326A
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Abstract

(57)【要約】 誘導性の軟質果実のプロモーター、特にトマトのアルコールデヒドロゲナーゼ2のプロモーターをコードするヌクレオチド配列を含む単離されたDNA分子について記載する。アルコールデヒドロゲナーゼ2の酵素をコードする単離されたDNA分子も開示する。

Description

【発明の詳細な説明】 誘導性の植物プロモーターをコードするDNA分子およびトマトADH2酵素 本発明は、誘導性の植物プロモーターのDNA配列、トマトのアルコールデヒ ドロゲナーゼ2(ADH2)酵素をコードするDNA配列、ならびにこれらの配 列を含むハイブリッドDNA分子に関するものである。本発明の特定の用途では 、こうしたハイブリッドDNA分子を使用して植物を形質転換し、果実の状態な らびに品質の制御を可能としている。 軟質果実(例、イチゴ、モモ、アンズ、トマト)産業では、果実がやわらかい ほど、機械的損傷を受けたり、微生物の侵入を受けたりしやすく、輸送、保存、 販売の間に実質的な損失が発生している。こうした損失をくい止めるために、植 物育種業者は、なるべくやわらかくない系統を選択してきており、多くの果実で 、果実の硬い品種が、国内外の取引きを支配することになっている。残念なこと に、果実がやわらかくないことによって販売時の損失は減らせるものの、硬い系 統は商品としての魅力に欠けることがあり、風味でも劣っていることが多い。 トマト、アボガド、モモといった果実の場合、果実の後熟に関与しているシグ ナルに応答して蓄積した酵素によって細胞壁の成分が分解されることによって、 果実の軟化が生じる。果実の後熟を促すシグナルとして代表的なのはエチレンで あり、エチレンをはじめとする各種のシグナルに対する果実の応答は、温度によ って、そしてまた、酸素や二酸化炭素の濃度によって大きく影響を受けることが ある。果実が硬い品種では、大抵の場合、後熟を促すシグナルに対する応答が弱 くなっていて、したがって酵素の生成量も低く、果実の軟化も相応に遅くな り、シグナルに対する応答を増強することができないかぎり、果実のやわらかさ が許容範囲に達するころには、果実の組織は老化して、風味にも香気にも欠ける ものとなってしまっていることが多い。 高等生物では、果実の軟化ならびに風味や香気の発現に関与する遺伝子をはじ めとする各種の構造遺伝子は、プロモーターとして知られるDNA配列によって スイッチが入る。こうしたプロモーター配列は、内部シグナルを認識し、隣接し た機能性遺伝子の転写を「プロモート」する。酸素ストレスや熱ショックに応答 するプロモーターは植物でも調べられており、たとえば、アルコールデヒドロゲ ナーゼ(ADH)は、5−10時間の酸素ストレスを経ると、植物中に蓄積する し、熱ショックタンパク質は、短時間の高温を経ると、検出されるようになる。 いずれの事例でも、新たな化学物質の形成は、プロモーターによる環境のシグナ ルに対する応答を介して生じている。したがって、こうした誘導性プロモーター を用いると、たとえば果実の軟化に関与しているポリペプチドをコードする構造 遺伝子が、誘導性プロモーター配列の制御下におかれていて、プロモーターが活 性化シグナルを受けた時点で構造遺伝子が転写されるようなハイブリッドDNA 分子を構築することが可能となる。 したがって、本発明の第一の態様では、軟質果実のプロモーターあるいはその 機能性部分をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたDNA分子であって 、上記プロモーターあるいはその機能性部分が、環境物質あるいは環境条件によ って活性化されうるものであり、そして/または、上記プロモーターあるいはそ の機能性部分が、軟質果実の通常の後熟過程の後期に、活性化あるいは主たる活 性化をうけるものであることを特徴とする単離されたDNA分子を提供す る。 軟質果実のプロモーターあるいはその機能性部分は、熱、化学物質、あるいは 光によって活性化されるものとするのが好ましい。化学物質による活性化の場合 には、好適なプロモーターあるいはその機能性部分は、気体、たとえば酸素、二 酸化炭素、一酸化炭素の特定のレベルに対して応答性のものである。また、化学 物質による活性化は、有機酸に対する暴露によって行うこともできる。 軟質果実のプロモーターあるいはその機能性部分は、ブドウ、イチゴ、モモ、 アンズ、あるいはトマトから単離することができる。軟質果実のプロモーターあ るいはその機能性部分は、環境物質あるいは環境条件によって活性化されるもの とするのが好ましく、そしてさらに、軟質果実の通常の後熟過程の後期に、活性 化あるいは主たる活性化をうけることを特徴としているのが好ましい。ここで、 通常の後熟過程の後期とは、たとえば、トマトであれば、後熟期間のうち、後熟 がはじまってから5−6日後のことである。プロモーターあるいはその機能性部 分は、トマトのアルコールデヒドロゲナーゼ2(ADH2)プロモーターとする のがさらに好ましい。 第二の態様では、本発明は、トマトのADH2プロモーターあるいはその機能 性部分をコードするか、あるいはトマトのADH2プロモーターあるいはその機 能性部分と実質的に相同であるヌクレオチド配列を有する単離されたDNA分子 を提供する。 「実質的に相同」という用語は、トマトのADH2プロモーターあるいはその 機能性部分をコードするヌクレオチド配列に関して本明細書で使用する場合には 、中程度ないし高度のストリンジェンシー(緊縮)条件下で、トマトの ADH2プロモーターあるいはその機能性部分をコードするヌクレオチドとハイ ブリダイズするのに十分な相同性を有するヌクレオチド配列のことを称するもの である(Maniatis et al.in“Molecular Cloning-a laboratory manual”,Col d Sping Harbor Laboratory 1982)。こうした実質的に相同なヌクレオチド配列 は、その配列中に、単一あるいは複数のヌクレオチドの置換および/または欠失 および/または付加を有することができる。 単離されたDNA分子は、表1の残基−942から−1に示す配列と実質的に 対応するヌクレオチド配列を有するものとするのが特に好適である。 トマトのADH2プロモーターを単離するためには、まず、トマトのADH2 をコードする配列を単離することが必要であった。したがって、本発明の発明者 は、cDNA(表1)を単離し、このcDNAを使用して、ADH2をコードし 、かつADH2プロモーター配列を含んでいるゲノム断片を単離するためのハイ ブリダイゼーションプローブを作製した。 第三の態様では、本発明は、植物プロモーターをコードするヌクレオチド配列 を有する単離されたDNA分子で、上記植物プロモーターが、表1に示すcDN A配列あるいはその一部に実質的に対応するヌクレオチド配列を有する標識核酸 プローブを使用することによって単離したゲノム断片から得られたものである単 離されたDNA分子を提供する。 このプローブは、DNAあるいはRNA転写物とすることができる。 以上の態様のいずれかに記載のDNA分子は、さらに、プロモーター配列に発 現可能な形態で連結されたペプチドあるいはポリペプチドをコードするヌクレオ チド配列を有することもできる。このペプチドあるいはポリペプチドは、果実の 軟化、風味、色、あるいは香気に関与するもの、たとえば、ポリガラクツロナー ゼあるいはそのサブユニット、ペクチンメチルエステラーゼ、キシログルカナー ゼあるいは他のβ−1,4−グルカナーゼ、グリコシダーゼ、β−ガラクトシダ ーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、あるいはリポキシゲナーゼとすることがで きる。また、完熟した果実は、完熟していない果実より、菌による侵入をうけや すい。したがって、上記のペプチドあるいはポリペプチドをコードする配列は、 抗菌性物質(例、キチナーゼ、β−1,3−グルカナーゼ)、あるいは他の抗植 物病原体性物質をコードするものとすることもできる。 ペプチドあるいはポリペプチドをコードする配列、あるいはその一部(たとえ ば、ヌクレオチド20−50個の部分)は、逆向きに連結して、発現が3’から 5’に向かって生じ、アンチセンスRNAが生成されるようすることもできる。 ペプチドあるいはポリペプチドをコードするmRNAを開裂させるリボザイムも 、同様にして作製することができる。この場合、逆向きのヌクレオチド配列が、 リボザイムに特異性を付与し、さらなるヌクレオチド配列がmRNAを開裂させ る触媒領域をコードしている。適当な触媒領域としては、ハンマーヘッド、ヘア ピン、δウイルス因子、リボソームRNAのイントロン、ならびにそれらの誘導 体がある。リボザイムの設計についての情報は、Haseloff,J.& Gerlach,W.L .(1988)Nature,334: 585、およびKruger,K.et al.(1982)Cell,31: 14 7、国際特許出願WO88/04300、米国特許第4,987,071号およ び5、254、678号に、さらに見いだすことができる。これらの各文献の開 示内容を、本発明に参考として組み込むものである。 本発明のDNA分子は、さらにエンハンサー因子(たとえば、アグロバクテリ ウム・テュメファキエンスのオクタピンシンターゼ遺伝子由来のもの(Ellis,J .G.et al.,(1987)EMBO J.6:11-16)、あるいは嫌気性応答因子(ARE) の複数のコピー(Olive,M.R.et al.,(1990)Plant Mol.Biol.15: 593-604 )、あるいはイントロン配列を有することもできる。 トマトのADH2酵素は、果実の重要な揮発性風味成分であるヘキサノール/ ヘキサナールおよびメトキシブトナール/メトキシブタナールを代謝することに よって、果実の後熟に関与していると考えられている。揮発性風味成分の生成に 関与する酵素の活性および/または量を、後熟しつつある果実中で改変すること によって、果実の軟化速度とは独立に、果実の揮発性風味成分の産生を増大させ 、果実の風味の発現を増強することができる。したがって、ADH2のレベルが 改変されたトランスジェニック植物は、直接の商業価値を有しているであろうし 、育種プログラムの価値ある親株となるであろう。 したがって、第四の態様では、本発明は、トマトのADH2、あるいはそのう ちの果実の後熟および/または香気/風味に影響を及ぼす部分をコードするヌク レオチド配列を含む単離されたDNA分子を提供する。 単離されたDNA分子は、表1に示すcDNA配列、または表1に示す残基1 −2175のゲノム配列に実質的に対応するヌクレオチド配列を有するのが好ま しい。 「実質的に対応する」という用語は、トマトのADH2、あるいはそのうちの 果実の後熟および/または香気/風味に影響を及ぼす部分をコードするヌクレオ チド配列に関して本明細書で使用する場合には、DNA暗号の縮重によって生じ たもので、コードされるタンパク質に有意な変化が生じることのないよう な、DNA配列のわずかな変化をも包含するものである。さらに、この用語は、 特定の系での発現を増強するうえでは必要とされるものの、その変化が生じた結 果としてコードされたタンパク質の生物学的活性が低減したりすることのないよ うな、配列のもっと別のわずかな変化をも包含するものである。 第四の態様の単離されたDNA分子は、通常、天然の果実の後熟の間に発現さ れるADH2、あるいはそのうちの果実の後熟および/または香気/風味に影響 を及ぼす部分をコードするものであるのが好ましく、さらに、ADH2コード配 列に発現可能な形態で連結された適当な構成性プロモーター(たとえば、CaM V 35Sプロモーター)あるい誘導性プロモーター(たとえば、本発明の第一 から第三の態様のいずれかに記載されたプロモーター、またはエンドポリガラク ツロナーゼプロモーター、1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸オキシダ ーゼプロモーター、あるいはE8プロモーター)を含むものとするのが好ましい 。 ADH2コード配列あるいはその一部(たとえばヌクレオチド20−50個の 部分)は、プロモーター配列に逆向きに連結して、発現が3’から5’に向かっ て生じ、アンチセンスRNAが生成するようすることもできる。さらに、触媒領 域をコードするヌクレオチド配列を含むようにすることによって、ADH2のm RNAにターゲッティングされたリボザイムを生成させることもできる。また、 本発明の第四の態様のDNA分子は、エンハンサー因子または嫌気性応答因子( ARE)の複数のコピーを含むものとすることもできる。 さらに別の態様では、本発明は、第一、第二、第三、あるいは第四の態様のい ずれかの少なくとも1種のDNA分子で形質転換された植物を提供する。 用途によっては、植物を、第一、第二、第三、あるいは第四の態様のいずれか のDNA分子の複数のコピーで形質転換するのが好適なこともある。 を提供する。 DNA分子は、植物のゲノムに安定的に挿入するのが好ましく、安定的に挿入 されたDNA分子は、種子あるいはクローン性増殖によって次世代へと受け継が れることになる。形質転換は、たとえば、アグロバクテリウム・テュメファキエ ンス(Agrobacterium tumefaciens)媒介トランスファー(転移)によって、あ るいはDNA粒子銃を用いた方法によって行うことができる。 したがって、本発明を用いると、「ゆっくりと後熟する」、すなわち「ゆっく りと軟化する」適当な軟質果実の品種を、ハイブリッドDNA分子を用いて形質 転換して、細胞壁をゆるめ、色に影響を及ぼし、そして/または香気/風味を増 強する酵素を生成しうるようにすることが可能となる。誘導性のプロモーターを 使用する場合には、たとえば、果実の流通販売機構の後段で、所定の温度あるい は気体で処理を行うことによって、酵素の生成を制御可能なかたちで調節するこ ともできる。 特定の事例としては、ゆっくりと後熟するトマトの品種の改変を、トマト由来 のADH2プロモーター、適当なエンハンサー、ならびにトマトのポリガラクツ ロナーゼ遺伝子あるいはADH2遺伝子を含むハイブリッドDNA分子を導入す ることによって行うことにより、数々の利点がもたらされる場合もある。すなわ ち、収穫後、流通の早い段階では、その品種がもともと有している物理的損傷に 対する抵抗性という利点を生かすことができ、販売が近づいた時点でプロモータ ーを活性化して、早く後熟する品種の風味に似通った風味を引き出すこと が可能となる。 2種のトマトの品種の後熟しつつある果実をノーザン分析したところ、ADH 2のmRNAは、成熟はしているもののまだ緑色の果実では少量しか存在せず、 後熟によって量が増え、特に後熟の後期に量が増えることが示された。果実の果 皮組織を酸素が3%(v/v)の雰囲気にさらすと、ADH2のmRNAのレベ ルは、8−16時間以内に最大値に達し、大気中に戻すと、16時間以内に基底 レベルまで戻る。mRNAのレベルは雰囲気の酸素レベルに対して感受性であり 、酸素が12%(v/v)であると20倍増大し、酸素が3%(v/v)である と100倍増大した。こうした酸素レベルは、トランスジェニック植物から収穫 した商業的な量の植物で、本発明の誘導性プロモーターのいくつかを誘導するに 際しての適切な酸素レベルを反映している可能性がある。別の誘導方法としては 、紫外線、低温(0゜−10゜C)、ならびにある種の有機酸(気体CO2を含 む)への暴露を挙げることができる。 本発明で考えている誘導性のプロモーターについては、軟質果実での発現に関 して特に説明を行ったが、これらのプロモーターは、他の組織でも、環境物質な らびに環境条件によって活性化されうると理解されたい。 次に、添付の図面を参照しつつ、以下の実施例に言及することによって、本発 明をさらに説明する。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではな い。図面の簡単な説明 図1は、ゲノムクローンのλ2A3の図であり、ADH2遺伝子のエキソン1 −9の位置、EcoRI断片の相対的な位置、そしてプロモーターを含む5’領 域を示してある。破線で示す領域は、配列を決定していない。実施例1: トマトADH2をコードするcDNAの単離 最初に色づきはじめてから9日後に(Breaker+9)、トマト(cv.de Ruiter 83G38)の果実のの果皮組織から、ポリA+RNAを単離した。ポリA+RNAか らcDNAライブラリーを構築し、プロメガ社(Promega Ltd.)のプロトコール を使用することにより、λGem11にクローニングした。このライブラリーを 、エンドウ(Llewellyn et al.,J.Mol.Bio.195: 115-123,1987)、ジャガ イモ(Matton et al.,Plant Mol.Biol.14: 775-783,1990)、ならびにトウ モロコシ(Dennis et al.,Nucleic Acids Res.13: 727-743,1985)のADH 遺伝子と配列相同性を有するトマトのゲノムDNAの32Pで標識された断片との ハイブリダイゼーションによってスクリーニングしたところ、4つの陽性のコロ ニーが単離された。ファージDNAを精製し、cDNA挿入断片を、ファージベ クターからプラスミドベクターpGem11(Promega)に移して、配列決定を を行った。配列決定は、二本鎖DNAについて、既知の配列の伸長に際してpU C汎用プライマーおよび逆プライマー、ならびにオリゴヌクレオチドプライマー を使用し、Sanger et al.,PNAS,USA 74: 5463-5467(1977)のジデオキシ法に よって行った。4つのcDNAは、同一の5’配列、ならびにアミノ酸364個 のタンパク質をコードする同一のオープンリーディングフレームを有していた。 このcDNAは、完熟したトマト果実から得たRNAの1.6kbのRNAと は強固にハイブリダイズしたものの、完熟していないトマト果実から得たRNA とはハイブリダイズしなかった。同様に、このcDNAは、一晩嫌気性条件下に 置いたトマトの苗の根から得たRNAとはハイブリダイズしたものの、好気性条 件下に置いた苗の根から得たRNAとはハイブリダイズしなかった。これとは対 照的に、トマトADH1アイソザイムをコードする領域を含み、ADH1のmR NAとは強固にハイブリダイズするものの、ADH2のmRNAとは弱いハイブ リダイゼーションを示す(Wisman et al.,Mol.& Gen.Genet.226: 120-128, 1991)トマトのゲノムcDNAのBg111断片は、完熟果実から得たRNAと も、嫌気性条件下に置いた根の組織から得たRNAともハイブリダイズしなかっ た。かくして、後熟しつつある果実のライブラリーから単離したcDNAが、ト マトのADH2酵素をコードしているとの結論に達した。 ADH2のmRNAをコードするcDNAのヌクレオチド配列を、表1に示す 。 後熟に関連したADH2酵素の250個のアミノ酸をコードする配列を含んで いる、cDNAの5’の843個のヌクレオチドは、ゲノム配列でプロモーター に隣接して位置しているので、特に有用である。実施例2: トマトのADH2プロモーターの単離 トマトの葉のDNAの単離 トマト(cv.de Ruiter 83G38)の茎から若い葉を収穫し、液体窒素中でパリ パリに凍結した。液体窒素中で葉を微粉となるまで粉砕し、DNAを、Thomas e t al.,Theor.Appl.Genetics 86: 173-180(1993)の方法によって単離した。 ゲノムライブラリーの構築 高分子量のトマトのゲノムDNAの一部を、各種の量のMbol制限エンドヌ クレアーゼを用いて37゜Cで1時間にわたって消化し、試料を75°Cに10 分間加熱することによって消化を停止させた。0.5%のアガロースゲル上で試 料を分画し、消化したDNAの平均サイズと広がりを測定した。20μgのゲノ ムDNAをMbol酵素を用いて設定条件下で消化したところ、断片のサイズは 、10kbから20kbの範囲となり、反応は上述のようにして停止させた。消 化断片は、dATPおよびdGTPで部分的に末端を充填し、λGEM11 X ho1ハーフサイトアーム(Promega Corp.)に、プロメガ社のプロトコールに したがってライゲーションした。ライゲーションを3回行ったところ、アーム: 断片の比は、0.5μg:0.25μg、0.5μg:0.5μg、0.5μg :0.75μgであった。 ライゲーションを行ったDNA試料を、Hohn,Methods in Enzymology 68: 29 9-309(1979)にしたがってパッケージングし、力価を測定したことろ、平均力 価は、1.8×105pfu/アーム1μgであった。3つのライブラリーをプ ールした。 ライブラリーのスクリーニング 大腸菌のKW251系統の細胞を2×105個のファージで感染させ、6枚の 10cm×10cmのルリア寒天平板培地上に広げ(33,000/平板培地1 枚)、37゜Cで6時間インキュベートしたところ、小さなファージプラークが 認められるようになった。平板培養を、バイオトレースNT(Biotrace NT)ニ トロセルロース膜(ゲルマンサイエンス(Gelman Sciences))に移し、ゲ ルマン社のプロトコールにしたがって、膜のプレハイブリダイゼーション、ハイ ブリダイゼーション、ならびに洗浄を行った。乾燥した膜で、増強用スクリーン (デュポン−クロネックス(Du Pont-Cronex)、ライトニング−プラス(Lightn ing-Plus))を用いて、X線フィルム(フジ(Fuji)、RX)を−70゜Cで露 光させた。ハイブリダイゼーションのプローブは、オリゴプライミングによって 、32PのdATPで標識した(Feinberg and Voglestein,Anal.Biochem 132: 6-13,1983)。 サブクローニングと配列決定 λクローン2A3のゲノムDNA挿入物をEcoRI制限酵素で消化し、得ら れたフラグメントを、標準的な方法で、プラスミドベクターpUC18(Yanish -Peron et al.,Gene 33: 103-119,1985)にライゲーションすることによって サブクローニングした。 決定された配列にもとづく汎用プライマーならびに逆M13プライマーを使用 し、Sanger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74: 5463-5467(1977)の酵 素チェーンターミネーター法によって、二本鎖配列決定を行った。 下記に示すAHD2のcDNAの領域に対するオリゴヌクレオチドプライマー を使用し、トマトのゲノムDNAテンプレート(鋳型)上で、ADH2遺伝子の 5’領域をPCRで増幅した。 5’プライマー #1078 5’CCACTGCCTCAACTGAG 3’プライマー #1057 3’CGACCATTCGGTAATCA 5’ PCR反応は、16.6mMの(NH)4SO4、67mMのトリス−HCl( pH8.8)、6.7mMのEDTA、2mMのMgCl2、0.15%のト リトンX−100、200μMのdNTP、200μgのゼラチンを含有し、2 2pmol/μlの各プライマー、100ngのトマトのゲノムDNA、ならび に2.5単位のタックポリメラーゼが添加された50μlの反応溶液中で行った 。反応は以下のようにして行った。 1回目のサイクル: 94゜C 5分 45゜C 1分 72゜C 1分 をまず行い、以降、下記のサイクル: 94゜C 1分 45゜C 1分 72°C 1.5分 を38回行った。 このPCR生成物を、pBluescript KS+ベクター(ストラタジ ーン(Stratagene))にライゲーションし、Marchuk et al.,Nucleic Acids Re srearch 19: 1154(1990)の方法にしたがって、EcoRV部位で線状化し、T テイル化した。 結果 合計で2×105pfuのトマトのゲノムDNAのファージライブラリーを含 有する6枚の平板培養のそれぞれを、2枚の膜に移し、膜に移したものを、2種 のプローブを用いたハイブリダイゼーションによってスクリーニングした。第一 のプローブであるpADHCR1は、トマトの後熟しつつある果実で発現される AHD2遺伝子の5’末端に対して特異性を有するように設計したものである。 pADHCR1は、ADH2のcDNAの配列によって決められたプライマー# 1078と#1057によって区切られるゲノム配列をPCRによって増幅する ことによって生成され、ADH2遺伝子のエキソン1、イントロン1、ならびに エキソン2の34個のヌクレオチドにまたがっている。第二のプローブであるp ADH2−3’は、ADH2のcDNAの、cDNAのヌクレオチド290(ゲ ノムDNAのヌクレオチド382−表1)に位置するEcoRI部位の3’側の 全体を構成する。 5’特異性のプローブであるpADHCR1を用いたスクリーニングでは、2 8の陽性のプラークが得られ、3’特異性のプローブであるpADH2−3’を 用いたスクリーニングでは、20の陽性のプラークが得られた。双方のプローブ とハイブリダイズしたのは、1つのλファージプラーク(2A3)のみであり、 このプラークを単離、精製して、さらに調べた。 λゲノムクローン2A3から得られたDNAをEcoRIで消化したところ、 λベクターの左アームおよび右アームを含む数個の断片と、サイズが7.8kb 、1.4kb、1.2kbである挿入DNAの断片3つが生成した。その後のサ ブクローニングによって、さらにサイズが63bpの挿入断片が示された。これ らのEcoRI断片を、pUC18にサブクローニングし、配列決定したところ 、これらの断片の配置を決定することができた(図1)。1.4kbのサブクロ ンーンpADH2−1.4は、cDNAのヌクレオチド290のEcoRI部位 からイントロン1および2を含む、ADH2遺伝子の5’末端を含んでいること がわかった。このクローンは、転写開始部位を含み、さらに、800bp上流側 に延在していて、遺伝子プロモーターを包含している。 ADH2プロモーターとタンパク質コード領域(イントロンを含む)を含むク ローン2A3の配列を表1に示す。ADH2遺伝子の、転写部位からポリA付加 部位までの全長は、2334bpである。 コア配列、5’−AAACAA−3’を有しており、他の双子葉植物で見いだ される嫌気性応答因子との相同性を示す2つの領域が、−313と−240の位 置の間の想定転写開始部位の上流側の近接した位置に、直列に並んでいる。した がって、ADH2プロモーターの一つの誘導性プロモーター部分は、これらの領 域、たとえば、表1の残基−350から−1までとすることができる。実施例3: ADH2を発現する形質転換トマト植物の作製 実施例1に記載したトマトのADH2のcDNAは、通常の向きで、構成性の 植物プロモーターであるCaMV 35Sプロモーターと組み合わせることがで きる。次に、このキメラ遺伝子を、適当な発現ベクターに組み込み、さらにこの 発現ベクターを使用して、当業界で一般的に使用されている任意の方法によって トマトの細胞を形質転換することができる。 形質転換した植物は、導入したADH2構築物が存在しているかどうか、また ADH2構築物が発現されるかどうかについて、分析を行うことができる。AD H2酵素が正しく合成されているかどうかについては、この構築物で形質転換し た細菌細胞中での発現によってチェックを行う。 陽性の植物(T0)は自家受粉し、ホモ接合の形質転換体(T1)を選択する ことになる。ADH2のmRNAのレベルとADH2の酵素活性は、T1植物で 得られた果実で分析することになる。 最後に、果実の揮発性成分を分析し、果実についての官能試験を行う。 同様の方法で、後熟しつつある果実でのADH2の発現が低減した形質転換ト マト植物を作製することもできる。 しかし、その場合には、ADH2のcDNAをプロモーターと逆向きに連結し 、アンチセンスRNAが生成されるようにする必要がある。実施例4: ADH2プロモーターを使用した、ポリペプチドをコードするDN A配列を発現する形質転換植物の作製 実施例2に記載したトマトのADH2プロモーターは、ポリペプチド、たとえ ばトマトのポリガラクツロナーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列と組み合わ せることもできる。このキメラ遺伝子を、適当な発現ベクターに組み込み、さら にこの発現ベクターを使用して、トマト細胞を形質転換することができる。 導入した遺伝子の形質転換植物中での発現は、果実が完熟する際に天然に生じ るようにすることも、また、植物組織を、たとえば酸素含量の少ない雰囲気に暴 露することによって誘導することもできる。 当業者であれば、広義で記載した本発明の精神あるいは範囲から逸脱すること なく、具体的実施態様に示された本発明に数多くの変更および/または改変を加 えることができることがわかるはずである。したがって、いずれにしても、本発 明の実施態様は、本発明を例示するものであって、本発明がこれらによって限定 されることはない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 PM0712 (32)優先日 1993年8月19日 (33)優先権主張国 オーストラリア(AU) (31)優先権主張番号 PM0713 (32)優先日 1993年8月19日 (33)優先権主張国 オーストラリア(AU) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG ,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN, TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,BY, CA,CH,CZ,DE,DK,ES,FI,GB,H U,JP,KP,KR,KZ,LK,LU,LV,MG ,MN,MW,NL,NO,NZ,PL,PT,RO, RU,SD,SE,SK,UA,US,UZ,VN (72)発明者 ブラッディ コリン ジョン オーストラリア国 2138 エヌ エス ダ ブリュー コンコード コンセット スト リート 78 (72)発明者 リー エリザベス オーストラリア国 2122 エヌ エス ダ ブリュー マースフィールド ビバリー クレッセント 12 (72)発明者 ハインド リチャード オーストラリア国 2120 エヌ エス ダ ブリュー ソーンレイ ダートフォード ロード 98 (72)発明者 ロングハースト テレンス ジェームズ オーストラリア国 2079 エヌ エス ダ ブリュー マウント コラー ドンリー ウェイ 7

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. 軟質果実のプロモーターあるいはその機能性部分をコードするヌクレオチ ド配列を含む単離されたDNA分子であって、上記プロモーターあるいはその機 能性部分が、環境物質あるいは環境条件によって活性化されうるものであり、そ して/または、上記プロモーターあるいはその機能性部分が、軟質果実の通常の 後熟過程の後期に活性化あるいは主としてこの過程で活性化をうけるものである ことを特徴とする単離されたDNA分子。 2. 活性化を行う環境物質あるいは環境条件が、低温、紫外線、または特定レ ベルの酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、あるいは有機酸への暴露よりなる群から 選ばれるものである請求項1に記載の単離されたDNA分子。 3. 活性化を行う環境物質あるいは環境条件が、低温である請求項2に記載の 単離されたDNA分子。 4. 活性化を行う環境物質あるいは環境条件が、紫外線への暴露である請求項 2に記載の単離されたDNA分子。 5. 活性化を行う環境物質あるいは環境条件が、特定レベルの酸素、二酸化炭 素、あるいは一酸化炭素への暴露である請求項2に記載の単離されたDNA分子 。 6. 軟質果実のプロモーターあるいはその機能性部分が、ブドウ、イチゴ、モ モ、アンズ、あるいはトマトに由来するものである上記の請求項のいずれかに記 載の単離されたDNA分子。 7. さらに、上記プロモーターあるいはその機能性部分が、環境物質あるいは 環境条件によって活性化されるものであり、上記プロモーターあるいはその機能 性部分が、通常の軟質果実の後熟過程の後期に活性化あるいは主としてこの過程 で活性化を受けるものであることを特徴とする上記の請求項のいずれかに記載の 単離されたDNA分子。 8. トマトのADH2プロモーターあるいはその機能性部分をコードするか、 あるいはトマトのADH2プロモーターあるいはその機能性部分と実質的に相同 であるヌクレオチド配列を有する単離されたDNA分子。 9. 表1の残基−942から−1に示す配列と実質的に対応するヌクレオチド 配列を有する単離されたDNA分子。 10. 植物プロモーターをコードするヌクレオチド配列を有する単離されたD NA分子で、上記植物プロモーターが、表1に示すcDNA配列あるいはその一 部に実質的に対応するヌクレオチド配列を有する標識核酸プローブを使用するこ とによって単離したゲノム断片から得られたものである単離されたDNA分子。 11. さらに、上記のプロモーター配列に発現可能な形態で連結されたペプチ ドあるいはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する上記の請求項の いずれかに記載の単離されたDNA分子。 12. 上記ペプチドあるいはポリペプチドが、果実の軟化、風味、色、あるい は香気に関与するものである請求項11に記載の単離されたDNA分子。 13. 上記ペプチドあるいはポリペプチドが、ポリガラクツロナーゼあるいは そのサブユニット、ペクチンメチルエステラーゼ、キシログルカナーゼあるいは 他のβ−1,4−グルカナーゼ、グリコシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アル コールデヒドロゲナーゼ、およびリポキシゲナーゼよりなる群から選ばれるもの である請求項12に記載の単離されたDNA分子。 14. 上記ペプチドあるいはポリペプチドが、抗菌性物質、あるいは他の抗植 物病原体性物質である請求項11に記載の単離されたDNA分子。 15. 上記ペプチドあるいはポリペプチドが、キチナーゼ、あるいはβ−1, 3−グルカナーゼである請求項14に記載の単離されたDNA分子。 16. ペプチドあるいはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のヌクレ オチド20個以上の部分を含んでおり、そのヌクレオチド20個以上の部分が、 請求項1−10のいずれかに記載されたDNA分子によってもたらされるプロモ ーター配列に、3’から5’に向かう発現に逆向きに連結されてアンチセンスR NAが生成される単離されたDNA分子。 17. さらに、触媒領域をコードするヌクレオチド配列を有しており、発現の 結果、ペプチドあるいはポリペプチドをコードするmRNAを開裂させるリボザ イムが生成される請求項16に記載の単離されたDNA分子。 18. トマトのADH2、あるいはそのうちの果実の後熟および/または香気 /風味に影響を及ぼす部分をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたDN A分子。 19. 表1に示すcDNA配列、または表1に示す残基1−2175のゲノム 配列に実質的に対応するヌクレオチド配列を有する請求項18に記載の単離され たDNA分子。 20. 上記のADH2、あるいはそのうちの果実の後熟および/または香気/ 風味に影響を及ぼす部分が、通常、天然の果実の後熟の期間に発現されるもので ある請求項19に記載の単離されたDNA分子。 21. さらに、作用可能な形態で連結された構成性プロモーターあるい誘導性 プロモーターを含む請求項18−20のいずれかに記載の単離されたDNA分子 。 22. 上記の作用可能な形態で連結されたプロモーター配列が、請求項1−1 0のいずれかに記載の単離されたDNA分子によってコードされているか、Ca MV 35Sプロモーター、エンドポリガラクツロナーゼプロモーター、1−ア ミノシクロプロパン−1−カルボン酸オキシダーゼプロモーター、あるいはE8 プロモーターよりなる群から選ばれるものである請求項21に記載の単離された DNA分子。 23. 請求項18−20のいずれかに記載のDNA分子によってもたらされる ADH2コード配列のヌクレオチド20個以上の部分を含んでおり、そのヌクレ オチド20個以上の部分が、構成性あるいは誘導性プロモーター配列に、3’か ら5’に向かっての発現に逆向きに連結されていて、アンチセンスRNAが生成 される単離されたDNA分子。 24. 発現の結果、ADH2をコードするmRNAを解裂させるリボザイムが 生成されるように、さらに、触媒領域をコードするヌクレオチド配列を有してい る、請求項23に記載の単離されたDNA分子。 25. 上記の請求項のいずれかに記載の1種以上のDNA分子で形質転換され た植物。 26. 植物が、上記の請求項のいずれかに記載の1種以上のDNA分子の複数 のコピーで形質転換されている請求項25に記載の植物。
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