JPH0841688A - 複合めっき材料の製造方法 - Google Patents

複合めっき材料の製造方法

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JPH0841688A
JPH0841688A JP19367494A JP19367494A JPH0841688A JP H0841688 A JPH0841688 A JP H0841688A JP 19367494 A JP19367494 A JP 19367494A JP 19367494 A JP19367494 A JP 19367494A JP H0841688 A JPH0841688 A JP H0841688A
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plating
composite
plating bath
plating film
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JP19367494A
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English (en)
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Ryosuke Kawagoe
亮助 川越
Kazuyoshi Kurosawa
一吉 黒澤
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Nihon Parkerizing Co Ltd
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Nihon Parkerizing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 界面活性剤を使用しない複合めっき材料の製
造方法の提供。 【構成】 清浄な基体表面上にニッケル及びコバルトか
らなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を含むめっ
き浴によるめっきを施すに際し、前記めっき浴中に有機
物微粒子表面にセラミック微粒子が埋設又は固着してい
る複合微粒子を分散懸濁させ、このめっき浴により基体
表面上に、めっき金属と前記有機物微粒子表面にセラミ
ック微粒子が埋設又は固着している複合微粒子を分散共
析させ、それによって、基体表面上に、めっき金属と前
記有機物微粒子表面にセラミック微粒子が埋設又は固着
している複合微粒子が分散共析している複合めっき皮膜
を形成することを特徴とする、複合めっき材料の製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複合めっき材料の製造
方法に関するものである。更に詳しく述べるならば、本
発明は各種材料から選ばれる清浄な基体表面上にニッケ
ル及び/又はコバルトを含有する金属のめっき皮膜を形
成するに際し、このめっき皮膜中に有機物微粒子表面に
セラミック微粒子が埋設又は固着している複合微粒子を
分散共析させる方法であるが、その際、複合微粒子を浴
に懸濁させたり、めっき皮膜中に分散共析させるための
界面活性剤を別段必要としないことを特徴とするもので
ニッケル及び/又はコバルトを含有する金属のめっき皮
膜中に前記複合微粒子が共析していることを特徴とする
複合めっき材料の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】従来の有機物微粒子を共析させた複合めっ
きには、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(以下;
PTFEに略称する)複合めっきであれば、上村工業
(株)製ニムフロン(特公平2−54775)や米国
Enthrone−OMI社のエンループが挙げられ
る。ニムフロンはPTFE含有ニッケル無電解複合めっ
きである。無電解ニッケルめっき法は還元剤を使用し金
属ニッケルを基体表面上に析出させる方法であるが、一
般的にPTFEの水濡れ性の向上や共析助剤に各種界面
活性剤がめっき浴中に添加されている。
【0003】PTFEは炭素(C)−ふっ素(F)の構
造を有し、その結合距離は短く、そのため化学的にも不
活性で極めて安定な物質である。また、PTFEは高い
融点(327℃)をもち、結合距離が短いことにより非
常にち密で、分極を受けにくく自由エネルギーが低い。
このため、PTFEの摩擦係数は低く、自己潤滑性を有
し、さらに非粘着性、撥水撥油性、優れた摺動性をも有
している。しかし、溌水撥油性を有しているため、めっ
き浴中に分散懸濁させる際には、各種界面活性剤を使用
しPTFEの表面改質を行う必要があった。
【0004】しかし、めっき浴に界面活性剤を使用する
と、生成するめっき皮膜の内部応力が変化し、一般的プ
ラス側(引張応力側)に移行する場合が多い。この内部
応力の変化は界面活性剤の種類や量により異なるがその
影響は、特にめっき量が多くめっき膜が厚い場合、しば
しばめっき皮膜層の密着不良、剥離という、基体の製品
にとって致命的欠陥となって表れる。そのため、界面活
性剤の分析などが当然に必要であり、非常に厳密な管理
が必要であった。また、界面活性剤を添加し過ぎると発
泡し、消泡剤の選定や添加、撹拌速度の調製も必要とな
り作業性が低下する場合が生じかねない。従って、PT
FEを懸濁させためっき浴の安定性、めっきの作業性も
良好で、且つ、基体表面に均一なめっき皮膜を形成させ
る方法は、現状では無いのである。
【0005】他の例では、有機蛍光顔料、有機顔料及び
無機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を分散
粒子に用いためっき浴から製造する着色めっき皮膜及び
その製造方法が知られている。例えば有機蛍光顔料をめ
っき皮膜中に共析させる方法に関する特許としては、特
開昭63−290291号に開示されているようなカラ
ーめっき法がある。このめっき法は蛍光顔料とプラスの
電荷を持つ界面活性剤とを添加しためっき浴でめっき処
理を行うものである。しかし、この発明では、後処理と
して静電塗装法により被めっき物表面にクリアー塗膜を
形成させているが、このクリアー塗膜が無い場合、素地
との付着性が不良の為容易にめっき皮膜中から有機蛍光
顔料が脱落してしまう欠点があり、有機蛍光顔料が共析
した複合めっき皮膜では高度な密着性が必要である。
【0006】有機系顔料には、アゾ顔料や多環顔料があ
る。アゾ顔料には、βナフトール系顔料、アセト酢酸ア
リリト系顔料及びベンツイミダゾロン系顔料等があり、
多環顔料には、アントラピリミジン、フタロシアニン及
びイソインドリノン等がある。これらに限らず、有機系
の構造を示す顔料は、無機系顔料よりも発色性、耐薬品
性等に優れるが、有機系顔料自体の硬度は著しく劣ると
いう欠点がある。
【0007】従って、有機系顔料を用いた着色めっき皮
膜を形成する場合には、後処理として静電クリアー塗装
を施さなくては、めっき皮膜表面において、めっき皮膜
と有機系顔料間の付着性が保てないのである。以上のよ
うに、現状では、めっき皮膜と有機系顔料間の付着性が
良好な又は意匠性に優れた複合めっき皮膜は得られてい
ないのである。
【0008】いずれの従来技術においても各種界面活性
剤のめっき浴への添加を行うことにより、例えばノニオ
ン系界面活性剤によりめっき浴への有機物微粒子の分散
性を向上させ、また、カチオン系界面活性剤の使用によ
りめっき皮膜中への共析補助とする電気泳動性を付与さ
せている。
【0009】めっき浴中に各種界面活性剤を添加するこ
とは、めっき浴中の各種界面活性剤の分析方法の確立が
必要であり、且つ、それに準じて随時めっき浴中の界面
活性剤の分析を行わなければならない。しかし、めっき
浴成分として多々添加される光沢剤のあるめっき浴中の
各種界面活性剤の分析は、光沢剤が妨害物質として寄与
すると考えられ、非常に困難である。
【0010】更に、界面活性剤の種類によっては、めっ
き浴の発泡を促すものもあり、非常にめっき処理作業の
妨げになる場合や、気泡にめっき浴中の分散微粒子が巻
き込まれてめっき浴中の分散微粒子濃度が低下しうる。
【0011】また、界面活性剤の種類によりめっき皮膜
の内部応力を変化させるものもある。めっき皮膜中の内
部応力の変化は均一な製品を作製することに対して非常
に悪影響を及ぼしかねず、例えばめっき皮膜の層間剥離
や密着不良、更には皮膜硬度のばらつきが生じ易くな
る。
【0012】一般にめっき皮膜の内部応力は引張応力
(プラス側)と圧縮応力(マイナス側)の2種類があり、本
来どちらの応力が生じても、特に引張応力は層間剥離の
原因となりうるのでめっき皮膜の内部応力は0からマイ
ナス側の近傍が最も好ましい。めっき皮膜の膜厚が薄い
場合には、めっき皮膜の内部応力が引張応力を呈した場
合にあっても層間剥離に及ぼす影響は減少する。しか
し、現実にはめっき皮膜の内部応力が圧縮側の場合、内
部応力は余り大きくならず問題となりにくく、引張側の
方が問題が大きい。
【0013】また、めっき皮膜の内部応力が発生する原
因は、水素吸蔵、めっき浴温度、めっき浴のpHにより
様々に変化しうる。この他の原因で界面活性剤のめっき
浴中の添加濃度にも影響を受ける。
【0014】このように、有機物を水系分散させる場合
やめっき処理において、未だに界面活性剤を使用してお
り、別段界面活性剤を使用せずに有機物微粒子をめっき
浴中に分散させたり、めっき皮膜への共析補助効果を付
与させためっき処理方法は存在しなかったのである。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は従来方
法で起こりえる上記問題点を解消した複合めっき材料の
製造方法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記問題
点を解決するために鋭意検討した結果、界面活性剤をめ
っき浴中に全く添加せずとも、有機物微粒子表面にセラ
ミック微粒子が埋設又は固着している複合微粒子を、ニ
ッケルめっき浴、コバルトめっき浴、ニッケル合金めっ
き浴またはコバルト合金めっき浴などのニッケル及び/
又はコバルト含有めっき浴中に均一に分散懸濁させ、該
めっき浴より、めっき処理を行うことにより、前記複合
微粒子がめっき皮膜中に分散共析した複合めっき皮膜が
作製されることを新たに見いだして本発明を完成するに
至った。
【0017】すなわち本発明は、清浄な基体表面上にニ
ッケル及びコバルトからなる群から選ばれた少なくとも
1種の金属を含むめっき浴によるめっきを施すに際し、
前記めっき浴中に有機物微粒子にセラミック微粒子が埋
設又は固着している複合微粒子を分散懸濁させ、このめ
っき浴により基体表面上に、めっき金属と前記有機物微
粒子表面にセラミック微粒子が埋設又は固着している複
合微粒子を分散共析させ、それによって、基体表面上
に、めっき金属と前記有機物微粒子表面にセラミック微
粒子が埋設又は固着している複合微粒子が含有されてい
る複合めっき皮膜を形成することを特徴とする、複合め
っき材料の製造方法を提供する。
【0018】また、本発明は前記めっき浴に分散懸濁さ
せる複合微粒子が有機物微粒子表面に、前記めっき浴の
pHを超える等電点を有する少なくとも1種のセラミッ
ク微粒子が埋設又は固着している複合微粒子であること
を特徴とする。
【0019】本発明において、使用される複合微粒子
は、有機物微粒子を核とし、有機物微粒子表面にセラミ
ック微粒子が埋設又は固着されている形状を呈する。
【0020】本発明において使用される複合微粒子の有
機物微粒子表面に固着又は埋設されるセラミック微粒子
としては、例えば、WC、WO3、SiC、Al23
TiO2、ZrO2、MgO、Y23、Cr23及びTi
C等があげられる。より好ましくは、前期めっき浴のp
Hを超える等電点を有するものを少なくとも1種含有す
ることである。 従って、使用するめっき浴のpHに応
じて特定の等電点を有するセラミック微粒子を選択する
ことが可能である。なお、長期間のめっき浴中の懸濁ま
たはめっき処理において変化しない安定なセラミック微
粒子であれば、前記以外のセラミック微粒子でも使用可
能である。
【0021】本発明において使用される有機物微粒子と
しては、例えばPTFEやテトラフルオロエチレン等の
フッ素系樹脂やポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエ
チレン等の有機物微粒子や、βナフトール系顔料、アセ
ト酢酸アリリト系顔料及びベンツイミダゾロン系顔料の
アゾ顔料、又は、アントラピリミジン、フタロシアニン
及びイソインドリノン等の多環顔料、更にはメラミン樹
脂系の有機蛍光顔料等があげられるが、上記記載の有機
物以外にその表面上にセラミックス微粒子を固着又は埋
設でき、かつ、複合めっきの目的に適するものであれば
特に限定するものではない。
【0022】本発明において使用される複合微粒子の核
材となる有機物微粒子の平均粒子径は、1μmから10
μm程度が好ましい。また、前記セラミック微粒子の平
均粒子径は有機物微粒子の1/10以下の粒子径が好ま
しく、細かければ細かいほど好ましい。このような平均
粒子径を有する有機物微粒子及びセラミック微粒子から
なる複合微粒子の平均粒子径は、1μmから10μm付
近が好ましいが、めっき皮膜中に共析し易い平均粒子径
であれば良い。
【0023】本発明において使用される複合微粒子の製
造方法は、特に限定されるものではなく、現在、粉体の
表面改質に用いられている方法であればいずれの方法で
も良い。例えば、メカノケミカル法、トポケミカル法を
利用した方法があげられる。
【0024】また、セラミック微粒子が有機物微粒子表
面に固着又は埋設される割合は、30%以上が好まし
く、セラミック微粒子の平均粒子径にも依存するが、有
機物表面全体に60%以上の割合で固着又は埋設されて
いる複合微粒子がより好ましい。
【0025】本発明のめっき浴としてはニッケルめっ
き、コバルトめっき、ニッケル合金めっき又はコバルト
合金めっきを使用する。例えば、ニッケル合金めっきで
は、ニッケル−りん合金、ニッケル−鉄合金めっき等が
あげられ、コバルト合金めっきでは、コバルト−ニッケ
ル合金、コバルト−ボロン合金めっき等があげられる。
また、このめっき浴の組成は特に限定するものではな
い。
【0026】本発明において、基体表面上にめっきする
手段としては、電気めっき、パルスめっき、無電解めっ
き及び化学めっきのいずれの方法を用いても良い。
【0027】本発明において、基体として使用される材
料はめっき処理方法により異なってくる。例えば、めっ
き方法が電気めっきの場合、使用する基体は、炭素鋼、
ステンレス鋼及びクロムモリブデン鋼等から選ばれる鉄
系金属材料、又はアルミニウム、アルミニウム合金、
銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム及びマ
グネシウム合金等から選ばれる非鉄金属材料等から選ば
れる材料が使用できる。
【0028】一方、めっき方法が無電解めっきの場合、
使用する基体は、ABS樹脂、ポリカーボネイト、ポリ
カーボネイトABSアロイ、ナイロン、ポリエステル及
びアクリル等の非電導物質及び炭素鋼、ステンレス鋼及
びクロムモリブデン鋼等から選ばれる鉄系金属材料、又
はアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタ
ン、チタン合金、マグネシウム及びマグネシウム合金等
から選ばれる非鉄金属材料等から選ばれる材料が使用で
きる。
【0029】前記基体の前処理方法については、特に限
定はしないが、各々の基体に適切な前処理方法を行う必
要がある。なぜなら、前処理方法の優劣により、めっき
皮膜と基体間の密着性が大きく変化するからである。
【0030】本発明において、複合微粒子のめっき浴中
への懸濁量は、特に限定するものではなく、電気めっき
法を用いて複合めっき皮膜を作製する場合は、20g/
L以上の懸濁量が好ましいが、無電解めっき法では20
g/L以下のめっき浴中懸濁量でも、めっき浴の撹拌を
調節することにより、十分にめっき皮膜中に複合微粒子
が共析する。
【0031】
【作用】本発明において使用される該複合微粒子は、有
機物微粒子表面に固着又は埋設しているセラミック微粒
子により表面改質され、以下のような作用を有する。第
1に水濡れ性の向上が挙げられる。水濡れ性の向上はめ
っき浴への懸濁性又は分散性が向上することに相違な
く、非常に重要な事柄である。この水濡れ性の向上によ
り、ノニオン系界面活性剤のめっき浴への添加又は有機
物微粒子の表面を親水性化する必要が省かれる。第2に
本発明に使用する複合微粒子表面に固着又は埋設される
セラミック微粒子は、めっき浴のpHを超える等電点を
有するために、めっき浴中では正電荷を示す。従って、
めっき皮膜を形成させる被処理物方向に電気泳動し易く
なる。その結果、めっき皮膜中への共析補助効果を向上
させる。第3に有機物微粒子の表面はセラミック微粒子
で固着又は埋設されているため、微粒子同士の合一を無
くす効果も具有する。第4に複合微粒子同士の合一のみ
ならず、温度調節器、エアレーションパイプ又は陽極等
のめっき浴中に存在する物質への吸着が妨げられ、めっ
き浴中の実効濃度が安定に保たれる。第5に温度調節器
付近はめっき浴温度が高くなり得るが、本発明のように
複合微粒子を用いれば懸濁微粒子に及ぼす温度影響から
の回避、及び酸等の様々な有機系顔料微粒子の劣化原因
を極めて回避させ得る。
【0032】なお、本発明においてはめっき皮膜中に含
有される前記複合微粒子の共析量は、電気めっきの場合
は電流密度、めっき浴中の複合微粒子懸濁濃度等により
調節でき、無電解めっきの場合はめっき浴中の複合微粒
子懸濁濃度で操作できる。
【0033】更に、電気めっきの場合、めっき処理にお
ける電流密度を操作することにより、例えば、めっき皮
膜表面近傍に有機物微粒子を多量に共析させ、マトリッ
クス方向に向かい該複合微粒子の共析量が減じる傾斜機
能を付与させためっき皮膜が1つのめっき浴から作製で
きる。また、無電解めっきの場合には、撹拌方法等の操
作により、電気めっきと同様な傾斜機能を付与させた複
合めっき皮膜が作製できる。
【0034】また、めっき皮膜中に該複合微粒子が共析
するために、作製された複合めっき皮膜は様々な機能を
兼ね備える。例えば、有機物微粒子としてPTFEが用
いられた場合、作製された本発明の複合めっき皮膜は、
PTFE微粒子の効果により優れた摺動性を保有する。
PTFE表面に固着又は埋設されているセラミック微粒
子による悪影響もなく、むしろ境界潤滑においては、良
好な摺動性を示す。セラミック微粒子は圧力を受けると
PTFE中に埋設され、同時にPTFEは球状形態から
膜状形態に変化する。それにより、セラミック微粒子と
PTFEが合一し、微細な凹凸を有するPTFE−セラ
ミック微粒子の複合皮膜が形成され、摺動性が良好な表
面及び表面形態になるのである。更に、摺動性だけでな
く耐薬品、耐酸、耐アルカリ、耐熱、撥水撥油性等の様
々な効果も同時に併発されうることにより、様々な分野
において使用できる。
【0035】図1は、従来の有機物複合めっきの断面説
明図であり、被めっき物(基体)3表面上のめっき皮膜
においてマトリックス金属1中に有機物微粒子2が分散
しているが、有機物微粒子2の表面に存在する界面活性
剤もめっき皮膜中に有機物微粒子2と同時に共析し、図
1のめっき皮膜のマトリックス金属1の分散微粒子(有
機物微粒子)2の硬度を変化させる場合があるので好ま
しくない。図2は本発明の方法で作製される複合微粒子
共析複合めっき皮膜の断面説明図であるが、界面活性剤
を含まないのでめっき皮膜断面の硬度が変化しにくい。
また図2の複合めっき皮膜中の複合微粒子4は、微細な
凹凸を有する表面形態を呈するため、めっき皮膜を構成
するマトリックス金属1と複合微粒子4間に、部分的な
アンカー効果を誘発させ、粒子の脱落を防止する。図3
は、本発明の複合微粒子模式図で、有機物微粒子6表面
にセラミック微粒子5が埋設又は固着している状態を示
す。
【0036】
〔複合めっき皮膜作製条件〕
(1)めっきを施す基材:(A)アルミニウム合金:J
IS・A5052 (B)ステンレス鋼:JIS・SUS304 (C)ABS樹脂
【0037】 (2)めっき浴組成: (1)Niめっき浴(Ni浴) スルファミン酸ニッケル(60wt.%):800g/L 塩化ニッケル(6水和物) : 15g/L ほう酸 : 45g/L サッカリンソーダ : 5g/L pH :4.0〜5.0 めっき浴温度 :55〜60℃ 電流密度 :10〜20A/dm2 めっき処理時間 :10〜20分
【0038】 (2)Co‐Pめっき浴(Co‐P浴) スルファミン酸コバルト(60wt.%):800g/L 塩化コバルト(6水和物) : 15g/L 次亜リン酸 :0.5g/L ほう酸 : 45g/L サッカリンソーダ : 5g/L pH :4.0〜5.0 めっき浴温度 :55〜60℃ 電流密度 :10〜20A/dm2 めっき処理時間 :10〜20分
【0039】(3)無電解めっき浴 塩化ニッケル :16g/L 次亜リン酸ナトリウム :24g/L コハク酸ナトリウム :16g/L リンゴ酸 :18g/L ジエチルアミン :10g/L pH :5.5 めっき浴温度 :93℃
【0040】〔複合微粒子の調製〕 (1)有機物微粒子の例としてはPTFE微粒子(ダイ
キン工業製:ルブロンL−2(平均粒子径:5μm))
を用い、PTFE表面に埋設又は固着させるセラミック
微粒子の例としては、日本エアロジル製:Alumin
ium Oxide C(分子式:Al23、平均粒子
径:13nm)を用いた。これらの微粒子を用い、PT
FE微粒子の表面にセラミック微粒子(Al23)を埋
設又は固着させる方法は、奈良機械製作所製のハイブリ
ダイザーを使用し、図3に示したような複合微粒子を調
製した。 (2)PTFE微粒子の替りに、有機蛍光顔料微粒子
〔シンロイヒ製:FR−53(色:ピンク、平均粒子
径:5μm)〕を用いて上記と全く同様の方法で複合微
粒子を調製した。
【0041】〔供試界面活性剤〕比較例において次の界
面活性剤を用いた。 (めっき浴中に添加) ・ノニオン界面活性剤:ニッサンノニオンHS−206
(日本油脂(株)製) ・カチオン界面活性剤:エマルミンRP−102(商
標)(固形分30%) (無電解浴中に添加) ・カチオン界面活性剤:フルオロカーボン系FC−13
5(商標)(住友3M(株)製)
【0042】表1と表2はめっき浴の種類とめっき処理
条件を記した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】(複合めっき皮膜中の複合微粒子共析量の
定量)めっき皮膜を溶解剥離した後に分離し、複合微粒
子の秤量により定量した。
【0046】(複合めっき浴への懸濁性又は分散性の評
価)めっき浴の採取後、メートル管にて分散粒子の懸濁
量を計測した。また、めっき浴の分散材の投入量(A)
とメートル管内の分散材の量(B)によりめっき浴中の
実効濃度割合を求め、以下の評価基準にて評価した。 ◎:(B/A)×100=90%以上 ○:(B/A)×100=50%以上90%未満 △:(B/A)×100=20%以上50%未満 ×:(B/A)×100=20%未満
【0047】(めっき皮膜の内部応力測定方法)内部応
力測定器は(株)山本鍍金試験器製のスパイラル応力計
を用い、試験片には同社製のめっき処理面が18−8ス
テンレス、裏面はテフロンコートされているスパイラル
応力測定用試験片を使用した。めっき皮膜の内部応力測
定方法は、この試験片にニッケルストライク処理を施し
た後に、本発明及び比較例のめっき浴を用い、時間経時
により試験片の圧縮又は引張変形に伴うスパイラル応力
計のメーター角度を測定し、下記の式に代入して内部応
力を求めた。
【0048】δE=K・α/d=k・2α/bSd K=k・2/bS
【0049】この式におけるδEは内部応力、Kは計器
定数であり、bはスパイラル板の幅、Sはスパイラル板
の厚さ、αは捻れ角(メーター角度)、dはスパイラル
試験片上に析出しためっき皮膜の膜厚を示している。ま
た、めっき皮膜の膜厚は試験前のスパイラル試験片の重
量とめっき処理後のスパイラル試験片の重量差からめっ
き皮膜の膜厚を求めた。なお、内部応力の測定結果は、
N=3の測定値の平均値である。また、測定値の+は引
張応力を、また、−は圧縮圧力を示す。
【0050】(めっき皮膜と複合微粒子間の密着性評価
試験)複合めっき皮膜表面を#1000のサンドペーパ
ーで研磨し、その表面にセロハンテープを貼り付け、そ
の後剥し、セロハンテープ面に付いた有機物微粒子の面
積比を付着率として測定し、以下の基準で評価した。 ◎:顔料の付着率が20%未満 ○:顔料の付着率が20%以上50%未満 ×:顔料の付着率が50%以上
【0051】(着色めっき皮膜の意匠性評価試験)複合
めっき皮膜表面を#1000のサンドペーパーで研磨
し、その表面はカラーコンピューター(SM−3型)
(スガ試験機社製)を用いて、JIS Z 8701に
基づいて明暗を示すL値、色度赤を示す色差a値及び色
度黄を示す色差b値を測定した。
【0052】実施例1〜5 有機物微粒子としてPTFE微粒子を用い、PTFE表
面にセラミック微粒子を埋設又は固着させて、複合微粒
子を調製し、表1に示す条件にて表1に示す被めっき物
に複合微粒子を分散共析させて複合めっき皮膜を形成
し、めっき皮膜厚、懸濁性、めっき皮膜の内部応力及び
複合微粒子の共析量を測定又は評価した。その結果を表
3に示した。
【0053】比較例1〜4 有機物微粒子としてPTFE微粒子を用い、PTFE表
面にセラミック微粒子を全く埋設又は固着させることな
く、表1に示す条件にて表1に示す被めっき物に微粒子
を分散共析させて、めっき皮膜厚、懸濁性、めっき皮膜
の内部応力及び微粒子の共析量を測定又は評価した。そ
の結果を表3に示した。
【0054】実施例6〜10 有機物微粒子として有機蛍光顔料微粒子を用い、有機蛍
光顔料微粒子表面にセラミック微粒子を埋設又は固着さ
せ、複合微粒子を調整し、表2に示す条件にて、表2に
示す被めっき物に複合微粒子を分散共析させて複合めっ
き皮膜を形成し、めっき皮膜厚、懸濁性、複合微粒子の
共析量、テープ密着性及び意匠性を評価又は測定した。
その結果を表4に示した。
【0055】比較例5〜8 有機物微粒子として、有機蛍光顔料微粒子を用い、有機
蛍光顔料微粒子表面にセラミックの微粒子を埋設又は固
着させず表2に示す条件にて表2に示す被めっき物に微
粒子を分散共析させて複合めっき皮膜を形成し、めっき
皮膜厚、懸濁性、微粒子の共析量、テープ密着性及び意
匠性を評価又は測定した。その結果を表4に示した。
【0056】実施例1〜10、比較例1〜8から次のこ
とが言える。 (1)実施例1〜3はPTFE微粒子表面にアルミナ微
粒子を埋設又は固着させることにより調整した複合微粒
子をめっき浴中に各種界面活性剤を添加せずに懸濁し、
電気めっき法により複合めっき皮膜を作製した条件であ
る。この条件では前記複合微粒子は、ノニオン系界面活
性剤を添加せずともめっき浴へ良好な懸濁性を示し、カ
チオン系界面活性剤をめっき浴に添加せずともめっき皮
膜中に10〜20wt.%共析した。また、複合めっき
皮膜の内部応力は、何れも−5.0kg/mm3付近の
圧縮応力を呈した。 (2)実施例4及び5はPTFE微粒子表面にアルミナ
微粒子を埋設又は固着させることにより調整した複合微
粒子を無電解めっき浴中に各種界面活性剤を添加せずに
懸濁し、無電解めっき法により複合めっき皮膜を作製し
た条件である。前記複合微粒子はノニオン系界面活性剤
を添加せずともめっき浴へ良好な懸濁性を示し、カチオ
ン系界面活性剤をめっき浴に添加せずともめっき皮膜中
に10〜20wt.%共析した。また、複合めっき皮膜
の内部応力は、何れも+20.0kg/mm3付近の引
張応力を呈した。無電解めっき法によりめっき皮膜の内
部応力が引張応力を呈した原因は、無電解めっき浴中に
含まれる各種有機物であり、本発明で使用した前記複合
微粒子による悪影響ではない。 (3)比較例1は、PTFE微粒子表面にアルミナ微粒
子を埋設又は固着させないものを分散微粒子とし、ノニ
オン系界面活性剤によりPTFE表面を親水性化せし
め、めっき浴中に添加して電気めっき法により複合めっ
き皮膜の作製を試みた条件である。ノニオン系界面活性
剤のめっき浴への添加により、PTFEはめっき浴へ良
好な懸濁性を示した。しかし、カチオン系界面活性剤を
添加していないためにめっき皮膜中のPTFE共析量は
少量であり、実施例1〜5の1/3または1/4程度で
あった。更に、めっき皮膜の内部応力は+5.0kg/
mm3であり、実施例1〜3と比較すると実施例1〜3
よりも高い引張応力値を示した。電気めっき法により複
合めっき皮膜を作製する場合は厚めっき皮膜の作製が多
く、この条件においては、めっき皮膜厚が30μmなの
で層間剥離等の問題が顕著に現れなかったが、100μ
m程の厚めっきの場合には十分に層間剥離が生じかね
ず、更に、PTFEの共析量も少量であり目的とする性
能が得られないので本発明においては好ましくない。 (4)比較例2はPTFE微粒子表面にアルミナ微粒子
を埋設又は固着させないものを分散微粒子とし、ノニオ
ン、カチオン系界面活性剤と一緒にめっき浴中に懸濁
し、電気めっき法により複合めっき皮膜の作製を試みた
条件である。ノニオン系界面活性剤の効果でPTFEの
めっき浴への縣濁性は非常に良好で、且つ、カチオン系
界面活性剤の効果によりPTFEのめっき皮膜中の共析
量は実施例と同等であった。しかし、この条件は実施例
1〜3と比較してめっき皮膜の内部応力が+10.0k
g/mm3の高い引張応力値を呈し、比較例1と同様に
本発明においては好ましくない。 (5)比較例3はPTFE微粒子表面にアルミナ微粒子
を埋設又は固着させないものを分散微粒子とし、ノニオ
ン、カチオン系界面活性剤をめっき浴中に添加せずにP
TFEをめっき浴中に懸濁し、無電解めっき法により複
合めっき皮膜の作製を試みた条件である。PTFEは界
面活性剤の添加を行わないためにめっき浴への懸濁性が
悪く、且つめっき皮膜中に共析しなかった。一方、めっ
き皮膜の内部応力は+20.0kg/mm3の引張応力
を呈した。これは、実施例4及び5の内部応力値と同等
である。この条件は、実施例4及び5と同等のめっき皮
膜内部応力値を示したが、PTFEがめっき皮膜中に共
析しなかった為に本発明においては好ましくない。 (6)比較例4はPTFE微粒子表面にアルミナ微粒子
を埋設又は固着させないものを分散微粒子とし、ノニオ
ン、カチオン系界面活性剤をめっき浴中に添加し、無電
解めっき法により複合めっき皮膜の作製を試みた条件で
ある。界面活性剤をめっき浴中に添加することにより、
PTFEはめっき浴中で良好な懸濁性を示し、且つ、め
っき皮膜中に実施例4及び5と同等に15wt.%共析
した。しかし、めっき皮膜中の内部応力は実施例4及び
5と同等に+20kg/mm3の引張応力を示したが、
めっき処理後のめっき面にクラックが確認されたので本
発明では好ましくない。
【0057】(7)比較例5は有機蛍光顔料微粒子表面
にセラミック微粒子を埋設又は固着させずに微粒子を調
整し、Niめっき浴中に界面活性剤を添加した条件であ
るが、複合微粒子はめっき皮膜に共析し、かつ、めっき
浴中への懸濁性及び意匠性も良好であったが、テープ密
着性が劣り、、めっき皮膜表面から容易に有機蛍光顔料
が離脱してしまった。 (8)比較例6は、有機蛍光顔料微粒子表面にセラミッ
ク微粒子を埋設又は固着させずに微粒子を調整し、かつ
めっき浴に界面活性剤を用いなかったケースであるが、
有機蛍光顔料微粒子がめっき浴にも懸濁又は分散できな
いことからめっき皮膜中に共析しなかった。
【0058】(9)比較例7は、有機蛍光顔料微粒子表
面にセラミック微粒子を埋設又は固着させない有機物微
粒子を用い、所定量の各種界面活性剤を無電解めっき浴
に添加した条件である。該めっき浴からの無電解複合め
っき処理では、有機蛍光顔料が無電解複合めっき皮膜中
に共析し得たが、めっき浴の発泡が激しく、且つ該複合
めっき皮膜表面でのテープ密着性が不良であった。 (10)比較例8は、有機蛍光顔料微粒子表面にセラミ
ック微粒子を埋設又は固着させない有機物微粒子を用
い、ノニオン系界面活性剤とカチオン系界面活性剤を共
に添加しない無電解めっき浴の条件である。該めっき浴
からの無電解複合めっき処理では、有機蛍光顔料が無電
解めっき浴に分散できなかったことから、めっき皮膜中
に有機蛍光顔料が共析しなかった。
【0059】
【発明の効果】本発明の複合めっき材料の製造方法にお
いては、複合微粒子を界面活性剤を使用せずにめっき浴
に懸濁又は分散でき、かつ該複合微粒子をめっき皮膜中
に共析できる。その結果、めっき処理の作業性等の環境対
策となり、時間の短縮化、更には、発泡等の問題点を解決
できる。また有機系顔料微粒子を用いる場合の本発明の
方法においては、意匠性に関しては従来の着色複合めっ
きと同等以上のものであり、かつ複合微粒子とめっき皮
膜間の密着性に優れている。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の有機物微粒子複合めっき皮膜の断面説明
図である。
【図2】本発明の複合微粒子共析複合めっき皮膜の断面
説明図である。
【図3】本発明の複合微粒子模式図である。
【符号の説明】 1 マトリックス金属 2 分散微粒子(有機物微粒子) 3 被めっき物(基体) 4 複合微粒子 5 セラミック微粒子 6 有機物微粒子

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 清浄な基体表面上にニッケル及びコバル
    トからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を含む
    めっき浴によるめっきを施すに際し、前記めっき浴中に
    有機物微粒子表面にセラミック微粒子が埋設又は固着し
    ている複合微粒子を分散懸濁させ、このめっき浴により
    基体表面上に、めっき金属と前記有機物微粒子表面にセ
    ラミック微粒子が埋設又は固着している複合微粒子を分
    散共析させ、それによって、基体表面上に、めっき金属
    と前記有機物微粒子表面にセラミック微粒子が埋設又は
    固着している複合微粒子が分散共析している複合めっき
    皮膜を形成することを特徴とする、複合めっき材料の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 前記めっき浴に分散懸濁させる複合微粒
    子が、有機物微粒子に、前記めっき浴のpHを超える等
    電点を有する少なくとも1種のセラミック微粒子が埋設
    又は固着している複合微粒子であることを特徴とする、
    請求項1に記載の複合めっき材料の製造方法。
JP19367494A 1994-07-26 1994-07-26 複合めっき材料の製造方法 Pending JPH0841688A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1999011843A1 (fr) * 1997-09-03 1999-03-11 Isuzu Motors Limited Particules composites pour placage de composite par dispersion et procede de placage correspondant

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1999011843A1 (fr) * 1997-09-03 1999-03-11 Isuzu Motors Limited Particules composites pour placage de composite par dispersion et procede de placage correspondant
US6372345B1 (en) 1997-09-03 2002-04-16 Nihon Parkerizing Co., Ltd. Composite particles for composite dispersion plating and method of plating therewith

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