JPH08283645A - 筆記具用水性インキ組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】香料が液中に安定な分散状態に維持されて紙面
に裏抜けのない筆跡を与え、筆記時に芳香を発する筆記
具用水性インキ組成物を得る。 【構成】必須成分として着色剤、香料、部分スルホン化
ポリエステル樹脂及び水を含有してなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【０００２】

【従来の技術】一般に香料は油成分であり、水中に乳
化、分散させるためには保護コロイドとなる乳化剤又は
分散剤が必要である。前記保護コロイドとして水溶性樹
脂または界面活性剤等が用いられるが、殆どの水溶性樹
脂については必要充分量の香料を分散させるだけの樹脂
量を用いると液の粘度が高くなって筆記具用インキとし
ての適正を欠くことになる。一方、香料を安定状態に乳
化させるのに充分な量の界面活性剤を用いて調製される
乳化液は表面張力の大幅な低下をきたして、該乳化液に
よる筆跡は紙の裏面にまで浸透する裏抜け現象を呈す
る。この裏抜けがあると裏面が使用できなくなるばかり
でなく、著しい場合には重ねられている下の紙面まで汚
染してしまうこともある。又特開昭６３−２２３０７８
号には香料、マルトシルサイクロデキストリン、着色剤
及び水を配合した水性インキが開示されているが、この
水性インキは経時により、特に高温での経時により香料
が分離し易い傾向にある。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明は香料が水性媒
体中に安定状態に分散、維持され、マーキングペンに適
用されるのに適した低粘性を示し、紙面に裏抜け現象を
起こさない筆跡をもたらす香料入り筆記具用水性インキ
組成物を提供しようとするものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明の筆記具用水性イ
ンキ組成物は必須成分として着色剤、香料、部分スルホ
ン化ポリエステル樹脂及び水を含有してなる。前記部分
スルホン化ポリエステル樹脂はジカルボン酸成分とジオ
ール成分との重縮合体であり、前記成分の一部はスルホ
ン酸基を有しているものである。ジカルボン酸成分はマ
ロン酸、こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン
酸、フマール酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フター
ル酸、イソフタール酸、テレフタール酸、ドデカン二
酸、ナフタレンジカルボン酸及びそれらの誘導体であ
る。ジオール成分としてはエチレングリコール、プロピ
レングリコール、１，３−プロパンジオール、１，４−
ブタンジオール、１，６−ヘキサンジオール、ポリエチ
レングリコール、シクロヘキサンジオール、ジヒドロキ
シベンゼン、メチレンジフェノール、チオジフェノー
ル、ビフェノール及びそれらの誘導体があげられる。ス
ルホン酸基を有する単量体成分はスルホフタル酸、スル
ホイソフタル酸、スルホテレフタル酸及び４−スルホナ
フタレン−２，７−ジカルボン酸のナトリウム塩等であ
る。スルホン酸基を有する単量体成分の全構成成分中に
占める構成比は３乃至２５モル％、好ましくは５乃至１
５モル％である。部分スルホン化ポリエステル樹脂はイ
ンキ組成中２．５乃至２０重量％、好ましくは５乃至１
５重量％の範囲で用いられる。

【０００５】用いられる香料としては下記のものがあげ
られる。 （１）グレープフルーツ油、オレンジ油、レモン油、ラ
イム油、ナツメッグ油、カツシア油、ラベンダー油、ヒ
ノキ油、フェンネル油等の精油類。 （２）ヘキシルアルコール、フェニルエチルアルコール
（ローズＰ）、フルフリルアルコール、シクロテン、ゲ
ラニオール等のアルコール類。 （３）テトラデカナール、ヘキサデカナール、オクタデ
カナール、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデ
ヒド類。 （４）エチルアセトアセテート、プロピルアセテート、
アミルアセテート、リナリルアセテート、ベンジルアセ
テート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ベン
ジルプロピオネート等のエステル類。 （５）ヌートカトン、エチルピラジン、レモンターペン
レス、オレンジターペンレス、ワニリン、エチルワニリ
ン、フルフリルメルカプタン、ボーネオール及びヘリオ
トロープ等の芳香族化合物。 （６）α−ピネン、β−ピネン等のテルペン油類。 これら香料は部分スルホン化ポリエステル樹脂に対し重
量比で１／１０以下の量だけ添加される。従ってインキ
組成中０．０１乃至２．０重量％、好ましくは０．１乃
至１．０重量％の範囲で用いられる。

【０００６】着色剤は以下のものが用いられる。 （１）酸性染料及び直接染料 タートラジン（Ｃ．Ｉ．アシッドイエロー２３）、サン
セットイエロー（Ｃ．Ｉ．フードイエロー３）、アシッ
ドローダミン（Ｃ．Ｉ．アシッドレッド５２）、エオシ
ン（Ｃ．Ｉ．アシッドレッド８７）、アシッドフロキシ
ン（Ｃ．Ｉ．アシッドレッド９２）、ブリリアントブル
ーＦＣＦ（Ｃ．Ｉ．アシッドブルー９）等。 （２）塩基性染料 ブリリアントフラビン（Ｃ．Ｉ．ベイシックイエロー４
０）、ローダミンＢ（Ｃ．Ｉ．ベーシックバイオレット
１０）、ローダミン６ＧＣＰ（Ｃ．Ｉ．ベーシックレッ
ド１）等。 （３）無機顔料及び有機顔料 カーボンブラック、酸化チタン、レーキレッドＣ（Ｃ．
Ｉ．ピグメントレッド５３）等。 これら着色剤はインキ組成中０．０５乃至１５重量％、
好ましくは０．２乃至１０重量％の範囲で用いられる。
その他エチレングリコール、プロピレングリコール、ジ
エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセ
リン、２−ピロリドン、Ｎ−メチルピロリドン等の湿潤
剤、エタノール、プロパノール等の水溶性有機溶剤、及
び界面活性剤、防腐剤、防黴剤、ｐＨ調整剤等の添加剤
が必要に応じて添加される。

【０００７】

【作 用】部分スルホン化ポリエステル樹脂の水性溶液
は高い濃度の香料を安定な分散状態に維持できるので、
比較的少量の前記樹脂を用いてマーキングペン用インキ
として適当な低い粘度範囲で香料入りの水性インキの調
製が可能である。また前記水性溶液の表面張力は約４０
ｍＮ／ｍより低下することなく、それにより該樹脂を用
いた水性インキによる筆跡は裏抜け現象を起こすことは
ない。前記水性溶液中での香料の保持作用の機構は定か
でないが、樹脂のポリエステル骨格と香料油との親和性
によりゆるやかな結合の複合体が形成されて、安定な分
散状態が維持されるのではないかと考えられる。

【０００８】

【実施例】表１に実施例インキ及び比較例インキの組成
を示す。

【表１】

【０００９】表１中の原料の内容を注番号に沿って説明
する。 （１）アシッドフロキシン（Ｃ．Ｉ．アシッドレッド９
２） （２）アシッドローダミン（Ｃ．Ｉ．アシッドレッド５
２） （３）ブリリアントブルーＦＣＦ（Ｃ．Ｉ．アシッドブ
ルー９） （４）タートラジン（Ｃ．Ｉ．アシッドイエロー２３） （５）ブリリアントフラビン（Ｃ．Ｉ．ベーシックイエ
ロー４０） （６）ローダミン６ＧＣＰ（Ｃ．Ｉ．ベーシックレッド
１） （７）２０重量部のカーボンブラック、５０重量部の部
分スルホン化ポリエステル樹脂（下記（13）の樹脂）及
び３０重量部の水の混合物をサンドミル処理して得られ
る水性分散ペースト。 （８）商品名 ＧＲＡＰＥ ＨＤ Ｎ６０（ Haarmann
& Reimer社） （９）商品名 Ｎｅｗ Ｐｅａｃｈｆｌｏｒ Ｎ６０
（ Haarmann & Reimer社） （10）商品名 Ｌｅｍｏｎ ＰＣ Ｎ６０ ７３１Ｂ
（ Haarmann & Reimer社） （11）商品名 フェンネルオイル Ｎ−３７０７（高砂
香料株式会社） （12）構成 フタル酸４５モル％，スルホイソフタル酸
５モル％，エチレングリコール３０モル％，１，４−ブ
タンジオール２０モル％ 分子量 約１１，０００ （13）構成 フタル酸４２．５モル％，スルホイソフタ
ル酸７．５モル％，エチレングリコール５０モル％ 分子量 約１１，０００ （14）７５％マルトシルサイクロデキストリン水溶液
（商品名イソエリートＬ，日研化学株式会社） （15）２５％ポリオキシエチレンアルキルエーテル水溶
液（商品名ノイゲンＰ，第一工業製薬株式会社） （16）商品名 ホクサイドＲ−１５０（北興化学株式会
社） （17）商品名 プロキセルＸＬ−２（ゼネカ株式会社）

【００１０】試料インキ（実施例及び比較例インキ）は
次のとおり調製された。 （１）実施例１〜４インキ 水及び水溶性有機溶剤からなる水性媒体中に樹脂を溶解
し、７０℃に加温しつつ染料を徐々に投入し、攪拌、溶
解した後、室温に戻し、攪拌しつつ防腐剤、香料を添加
し、均質になるまで攪拌してインキを得た。 （２）実施例５インキ 水及び水溶性有機溶剤からなる水性媒体中に樹脂を溶解
し、別に調製した水性顔料ペーストを投入し、均質にな
るまで攪拌してインキを得た。 （３）比較例１インキ ７５％マルトシルサイクロデキストリン水溶液中に香料
を投入し、充分攪拌した後、残余の成分を加えて均質に
なるまで攪拌してインキを得た。 （４）比較例２及び３インキ 全成分を混合し、均質になるまで攪拌してインキを得
た。

【００１１】次に各試料インキについて２０±３℃の恒
温室にて粘度及び表面張力を測定した後、繊維束樹脂加
工体からなるペン体及び繊維束からなるインキ吸蔵体を
備えたマーキングペンに所定量充填して試料ペンＡとし
た。更に各試料インキの一部を容器に密閉して５０℃の
恒温器中に入れ、７日後に取り出して放冷後、液の状態
を観察した。次に容器の底部のインキの所定量を前記構
成のマーキングペンに充填し、試料ペンＢとした。各試
料ペンにより紙面に所定文字を筆記して筆記性、裏抜け
の有無、筆記時の香りの有無をしらべた。試験結果を表
２に示す。

【表２】 表２中の記号の内容は以下のとおり。 筆記性 ○：所定の色調の筆跡が得られる 裏抜け ○：認められない ×：あり 筆記時の香り ○：あり ×：ほとんど感じられない 経時後の液の状態 ○：試験前と変化なし ×：香料が上層に分離

【００１２】

【発明の効果】本発明により、香料が安定な分散状態で
液中に存在し、紙面に対して裏抜けのない筆跡をもたら
す、マーキングペンや水性ボールペン等の筆記具に適用
できる低粘性の水性インキが得られる。そして、本発明
の水性インキを適用した筆記具が使用に供されると、筆
記により芳香が発せられて使用者に快感を与えるという
効果を奏する。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 必須成分として着色剤、香料、部分スル
   ホン化ポリエステル樹脂及び水を含有してなる筆記具用
   水性インキ組成物。
2. 【請求項２】 インキ組成中、０．０５乃至１５重量％
   の着色剤、０．０１乃至２．０重量％の香料、２．５乃
   至２０重量％の部分スルホン化ポリエステル樹脂を含
   み、香料と部分スルホン化ポリエステル樹脂の重量比が
   １／１０以下である請求項１記載の筆記具用水性インキ
   組成物。
3. 【請求項３】 前記部分スルホン化ポリエステル樹脂は
   ジカルボン酸成分とジオール成分の重縮合体であり、前
   記成分のうちスルホン酸基を有する単量体成分の構成比
   は全構成成分中３乃至２５モル％の範囲である請求項１
   又は２記載の筆記具用水性インキ組成物。