JPH0826405B2 - 表面品質と加工性の優れたCr−Ni系ステンレス鋼薄板の製造方法 - Google Patents

表面品質と加工性の優れたCr−Ni系ステンレス鋼薄板の製造方法

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JPH0826405B2
JPH0826405B2 JP3217597A JP21759791A JPH0826405B2 JP H0826405 B2 JPH0826405 B2 JP H0826405B2 JP 3217597 A JP3217597 A JP 3217597A JP 21759791 A JP21759791 A JP 21759791A JP H0826405 B2 JPH0826405 B2 JP H0826405B2
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全紀 上田
愼一 寺岡
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秀毅 岡
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋳片と鋳型内壁面間に
相対速度差のない、所謂同期式連続鋳造方法によって製
品厚さに近いサイズの鋳片を鋳造してCr−Ni系ステ
ンレス鋼薄板を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、連続鋳造法を用いてステンレス鋼
薄板を製造するには、鋳型を鋳造方向に振動させながら
厚さ100mm以下の鋳片に鋳造し、得られた鋳片の表
面手入れを行い、加熱炉において1000℃以上に加熱
した後、粗圧延機及び仕上圧延機列からなるホットスト
リップミルによって熱間圧延を施し、厚さ数mmのホッ
トストリップとしていた。
【0003】こうして得られたホットストリップを冷間
圧延するに際しては、最終製品に要求される形状(平坦
さ)、材質、表面性状を確保するために、強い熱間加工
を受けたホットストリップを軟化させるための熱延板焼
鈍を行うとともに、表面のスケール等を酸洗工程の後に
研削によって除去していた。この従来のプロセスにおい
ては、長大な熱間圧延設備で材料の加熱及び加工のため
に多大のエネルギーを必要とし、生産性の面でも優れた
製造プロセスとは言い難かった。また、最終製品は、集
合組織が発達し、ユーザーにおいてプレス加工等を加え
るときはその異方性を考慮することが必要となる等使用
上の制約も多かった。
【0004】そこで、100mm以上の厚さの鋳片をホ
ットストリップに圧延するために、長大な熱間圧延設備
と多大なエネルギー、圧延動力を必要とするという問題
点を解決すべく、最近、連続鋳造の過程でホットストリ
ップと同等か或いはそれに近い厚さの鋳片(薄帯)を得
るプロセスの研究が進められている。たとえば、「鉄と
鋼」’85、A197〜A256において特集された論
文に、ホットストリップを連続鋳造によって直接的に得
るプロセスが開示されている。このような連続鋳造プロ
セスにあっては、得ようとする鋳片のゲージが1〜10
mmの水準であるときはツインドラム方式が、また鋳片
のゲージが20〜50mmの水準であるときはツインベ
ルト方式が検討されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ツインドラム鋳造、1
回冷延プロセスで製造したSUS304薄板製品は従来
プロセスで製造した薄板製品に比べて細粒組織であり、
伸びが低くなることが知られている。たとえば、「CA
MP ISIJ」vol.1 1988、1670〜1
705で特集された論文においても報告されており、そ
の対策として鋳片を焼鈍して鋳片中に残留するδフェラ
イトを消失させることが述べられている。しかし鋳片を
再加熱し、高温で1分以上再熱、焼鈍することは工程上
不利である。
【0006】本発明者らは、ストリップ連鋳によるCr
−Ni系ステンレス鋼薄板製造プロセスを詳細に検討
し、冷延、焼鈍時の再結晶粒の成長を抑制する要因を解
明した結果、急冷された鋳片ではMnSが十分析出せ
ず、冷延後の最終焼鈍時にMnSが微細に析出し、粒成
長を阻害し、伸びを低下させていることをはじめて解明
した。従って、鋳片段階でMnSを十分に粗大析出させ
て無害化することが必要である。しかし、鋳片を再加熱
焼鈍する方法では、高温で長時間の熱処理が必要であ
り、これらの高温長時間熱処理を効率よく行い、粒成長
を容易にする方法が望まれている。
【0007】ツインドラム鋳造、1回冷延プロセスで製
造したSUS304薄板製品のもう一つの課題として表
面問題(ローピング)がある。ローピングは鋳片γ粒径
が粗大なために起こる現象であり、鋳片γ粒を微細化
し、ローピングを抑制するためには鋳造直後から鋳片を
急冷することが効果的である。しかし、急冷された鋳片
にはδフェライトが多量に残存するとともにMnSの鋳
片中への析出も抑制され、前述のように材質を劣化させ
る原因となる。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、薄板の加
工性(伸び)と表面品質(ローピング)を両立させる条
件を検討して来た結果、鋳造、凝固雰囲気の制御によっ
て鋳片γ粒が微細化されること、さらに主成分の調整に
よって鋳片γ粒径がより微細になることを明らかにし、
該鋳片を高温保持することで薄板の加工性(伸び)と表
面品質(ローピング)を両立することができることを見
出した。
【0009】すなわち、本発明の要旨とするところは下
記のとおりである。 (1)18%Cr−8%Ni鋼に代表されるCr−Ni
系ステンレス鋼から板厚6mm以下の薄鋳片を鋳造し、
熱間圧延を省略して冷間圧延薄板製品を製造する方法に
おいて、前記Cr−Ni系ステンレス鋼成分のδ−Fe
cal(%)を0〜10%に制御した溶鋼をN2 また
はHeを主成分とする雰囲気中で鋳造し、次いで該鋳造
によって得られた薄鋳片を1250℃まで冷却し、12
50℃から900℃の温度域で5秒以上2分以下保持
し、900℃未満に冷却して巻取り、焼鈍、酸洗、冷延
して常法通り製品とすることを特徴とする表面品質と加
工性の優れたCr−Ni系ステンレス鋼薄板の製造方
法。
【0010】但し、δ−Fe cal(%)=3(Cr
+1.5Si+Mo+Nb+Ti)−2.8(Ni+
0.5Mn+0.5Cu)−84(C+N)−19.8
(%) (2)900℃未満の冷却が、900〜600℃間の温
度域を10℃/sec以上の平均冷却速度で冷却して、
600℃以下で巻取り、焼鈍を省略して、酸洗、冷延し
て常法通り製品とすることを特徴とする前項1記載の表
面品質と加工性の優れたCr−Ni系ステンレス鋼薄板
の製造方法。
【0011】
【作用】ストリップ連鋳法によるSUS304薄板製造
プロセスでは製品の表面品質と材質を確保するために、
鋳片のγ粒を微細化する方法と、鋳片に残留するδフェ
ライトを減少させ、MnSを十分に粗大析出させるため
の効率のよい熱処理方法の開発が必要であった。
【0012】本発明者らはMnSを粗大析出させる熱処
理条件を調査してきた結果、鋳造直後の鋳片を1250
〜900℃の温度域で5秒以上、2分間以下の保定を行
うことによって短時間で、しかも効率よくMnSが粗大
析出することを明らかにした。なお、900〜1250
℃で保持した後は、900〜600℃間の温度域を10
℃/sec以上の平均冷却速度で冷却することによって
炭化物の析出を防止し、鋳片の焼鈍工程を省略する。
【0013】また鋳片のγ粒径を微細化するためには鋳
造、凝固雰囲気をN2 またはHeを主成分とする雰囲気
とすることによって鋳片の表層に微細なチル晶が残存す
るとともに鋳片全厚にわたってAr雰囲気中で鋳造した
鋳片に比べて、鋳片γ粒径がより微細になることを見出
した。図1(a)は成分δ−Fe cal=3.1%の
溶鋼をN2 雰囲気のもとで鋳造した鋳片の顕微鏡金属組
織写真であり、同図(b)は成分δ−Fe cal=
3.5%の溶鋼をAr雰囲気中で鋳造した鋳片の顕微鏡
金属組織写真であるが、この両組織を比較すると明らか
に同図(a)の組織が微細になっている。
【0014】さらに主成分を制御してδ−Fe cal
=3(Cr+1.5Si+Mo)−2.8(Ni+0.
5Cu+0.5Mn)−84(C+N)−19.8で表
されるδ−Fe Calを0〜10%とすることによっ
て鋳片γ粒径がより微細になることを明らかにした。す
なわち、図1(c)は成分δ−Fe cal=−2.1
%の溶鋼をN2 雰囲気中で鋳造した鋳片の顕微鏡金属組
織写真であるが、同一雰囲気で鋳造した同図(a)の鋳
片に比べ、鋳片γ粒径が大きくなっていることがわか
る。
【0015】図2、図3はツインドラム方式の連続鋳造
機によってN2 雰囲気中で鋳造したJISのSUS30
4(δ−Fe cal=4.1%)ステンレス鋼鋳片
(厚さ3mm)について鋳造直後1300〜700℃間
における保持条件と、冷延、焼鈍後の最終製品の伸び、
ローピングの関係を示す図である。鋳片を高温、短時間
保持することによってMnSが析出するため冷延、焼鈍
時の粒は成長し、良好な伸びを示す。しかし、1250
℃を超える温度で保持すると短時間でも鋳片のγ粒が成
長するため、冷延時にローピングが発生する。従って、
表面品質と材質がともに優れた薄板製品を製造するため
には1250〜900℃の温度域で2分以下鋳片を保持
することが必要である。2分を超えると効果が飽和し、
短時間側は5秒で効果がある。
【0016】
【実施例】表1に示す18%Cr−8%Ni鋼を基本と
する種々の成分のオーステナイト系ステンレス鋼を溶製
し、内部水冷式の双ドラム鋳造機によって種々の雰囲気
中で、厚さ2mmの鋳片に鋳造し、900〜1250℃
の温度で保持した。該鋳片は900℃未満から水冷し、
600℃以下で巻取った。その後、酸洗、冷間圧延し、
焼鈍したのち調質圧延を行って薄板製品とし、表面品質
と材質評価を行った。
【0017】また比較例として鋳造直後の熱処理条件、
δ−Fe cal、鋳造雰囲気が本発明範囲外の条件で
鋳造した鋳片からも同様に薄板製品を製造し、表面品質
と材質評価を行った。これら評価を表2に示した。この
表によれば、本発明法(No.1〜9)で製造した薄板
は材質に優れ、表面品質も良好であったが、比較法(N
o.10〜12)で製造した薄板は材質(伸び)または
表面品質(ローピング)が劣るものであった。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【発明の効果】本発明により製品厚さに近い厚さの薄帯
状鋳片を連続鋳造し、直接冷延で製品化する簡素なプロ
セスによって、表面性状が優れ、かつ加工性の優れたオ
ーステナイト系ステンレス鋼薄板を得ることができる。
従って、経済性や製造目的の点でその技術的効果は極め
て大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続鋳造法によって得られた薄鋳片の顕微鏡金
属組織写真であり、図中(a)は本発明法による薄鋳片
の金属組織写真、(b)及び(c)は比較法による薄鋳
片の金属組織写真である。
【図2】本発明法で鋳造した薄鋳片を鋳造直後700〜
1300℃の温度範囲で5秒〜2分間保持したときのL
方向の伸びの状態を示す図である。
【図3】本発明法で鋳造した薄鋳片を図2と同様の条件
で保持したときのローピングの状態を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡 秀毅 山口県光市大字島田3434番地 新日本製鐵 株式会社光製鐵所内 (72)発明者 吉村 裕二 山口県光市大字島田3434番地 新日本製鐵 株式会社光製鐵所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 18%Cr−8%Ni鋼に代表されるC
    r−Ni系ステンレス鋼から板厚6mm以下の薄鋳片を
    鋳造し、熱間圧延を省略して冷間圧延薄板製品を製造す
    る方法において、前記Cr−Ni系ステンレス鋼成分の
    δ−Fe cal(%)を0〜10%に制御した溶鋼を
    2 またはHeを主成分とする雰囲気中で鋳造し、次い
    で該鋳造によって得られた薄鋳片を1250℃まで冷却
    し、1250℃から900℃の温度域で5秒以上2分以
    下保持し、900℃未満に冷却して巻取り、焼鈍、酸
    洗、冷延して常法通り製品とすることを特徴とする表面
    品質と加工性の優れたCr−Ni系ステンレス鋼薄板の
    製造方法。 但し、δ−Fe cal(%)=3(Cr+1.5Si
    +Mo+Nb+Ti)−2.8(Ni+0.5Mn+
    0.5Cu)−84(C+N)−19.8(%)
  2. 【請求項2】 900℃未満の冷却が、900〜600
    ℃間の温度域を10℃/sec以上の平均冷却速度で冷
    却して、600℃以下で巻取り、焼鈍を省略して、酸
    洗、冷延して常法通り製品とすることを特徴とする請求
    項1記載の表面品質と加工性の優れたCr−Ni系ステ
    ンレス鋼薄板の製造方法。
JP3217597A 1991-08-28 1991-08-28 表面品質と加工性の優れたCr−Ni系ステンレス鋼薄板の製造方法 Expired - Lifetime JPH0826405B2 (ja)

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DE69228580T DE69228580T2 (de) 1991-08-28 1992-08-27 Verfahren zum Herstellen von dünnen Blechern aus rostfreiem Stahl auf Cr-Ni-Basis mit ausgezeichneter Oberflächenqualität und Verformbarkeit
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KR1019920015612A KR950005320B1 (ko) 1991-08-28 1992-08-28 표면품질과 가공성이 우수한 크롬-니켈계 스텐레스강 박판의 제조방법

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