JPH08255197A - 分散ライン生産管理システム - Google Patents

分散ライン生産管理システム

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JPH08255197A
JPH08255197A JP5760195A JP5760195A JPH08255197A JP H08255197 A JPH08255197 A JP H08255197A JP 5760195 A JP5760195 A JP 5760195A JP 5760195 A JP5760195 A JP 5760195A JP H08255197 A JPH08255197 A JP H08255197A
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JP
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production
production line
payout
gene
line
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Application number
JP5760195A
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English (en)
Inventor
Kazuhiko Maeda
和彦 前田
Masakatsu Ishii
正克 石井
Takemasa Iwasaki
武正 岩崎
Tsutomu Okabe
勉 岡部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Publication date
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    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P90/00Enabling technologies with a potential contribution to greenhouse gas [GHG] emissions mitigation
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  • General Factory Administration (AREA)
  • Management, Administration, Business Operations System, And Electronic Commerce (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】国内外の分散した生産ラインを複数経て製品と
して完成し、しかも歩留り変動の大きな製品を対象とし
ている生産ラインで、製作期間を短縮し、しかも設備稼
働率の向上を図る。 【構成】分散した生産ライン間の生産管理・調整を行う
ために、各ラインの日別払出し数量の予測案を、払出し
予測処理部18により複数案作成し、払出し予測値交換
処理部19により相互に通信し合う。負荷平準化処理部
20により、他ラインの払出し案を適切に組合せ、組み
合わせたライン負荷とラインの能力を遺伝子的にモデル
化し、このモデルに対してランダムに交叉と突然変異等
で修正することで、負荷の平準化を高速に行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、地理的に分散している
ような複数の生産ラインが存在する生産ライン群におい
て、複数の生産ラインで加工が施されて完成品となって
いく製品が、複数個同時に生産されているときに、各生
産ラインの生産を管理し、各生産ラインが持っている最
大の生産能力(1日に生産できる最大の総加工時間)に
対して実際の作業量(1つの製品を加工するのに必要と
なる標準的な加工時間の総和)を平準化する(各生産ラ
イン毎に日々の作業量と生産能力を同じにする)方法に
係わり、特に歩留り(製品を加工した時に良品の作れる
割合)の変動や受注数量の変動があり、しかも多量の製
品が複数の生産ラインで加工が施されて完成品となるた
めに、複数の生産ライン間の調整が困難な生産ライン群
の管理に好適な分散ライン生産管理方式に関するもので
ある。
【0002】さらに、本発明は、当該管理方式を備えた
分散ライン管理装置に関するものである。つまり、半導
体の生産のように国内の生産ラインも多く、さらに海外
にも生産ラインがあり、なおかつ数千品種、数千万個の
製品を生産している生産ライン群の管理に適している。
特に、半導体の生産のように歩留りが存在し、歩留りが
日々変動するような生産の管理に適している。
【0003】
【従来の技術】従来分散した生産ラインの管理方式とし
ては、以下の2つがある。
【0004】(1)センタ集中管理方法 分散した生産ラインの管理方法としては、例えば特開平
4−69139号公報に記載されているように、複数の
生産ラインの全ての生産データ(生産ラインの能力と製
品の進捗度)をどこかのセンタ(大きな計算機を設置し
全生産ラインの生産を統括するところ)に一度集約し、
当該センタで生産ライン間の生産の同期(ある生産ライ
ンで生産した製品が、他の生産ラインに運搬された後、
停滞することなく生産されることを生産が同期している
という)を図っていた。
【0005】(2)生産同期化手法 分散した生産ラインの生産を同期化させるためには、運
搬された先の生産ラインで製品が停滞しないように、運
搬された先の生産ラインの生産能力に比べて、当該生産
ラインから払い出される製品の作業量が少ない必要があ
る。逆に、生産能力に比べて払い出される作業量が多い
と、当該生産ラインでは生産能力をオーバーした作業量
に該当する製品が生産ラインの前で生産待ちとなる。そ
れゆえ、分散生産ライン間で同期を図るためには、生産
能力と作業量とを合わせる必要がある。
【0006】例えば、1日に1台の装置で8時間稼働し
て製品を加工する生産ラインの場合の生産能力は、60
分×8時間=480分/日と表現できる。この生産ライ
ンでは、1日に480分相当の作業しかできない。その
ため、当該生産ラインで1日に処理する製品の作業量の
合計が480分を越えると、生産能力をオーバーした生
産を要求されたことになる。例えば、560分の作業量
の生産を要求された場合には、オーバー分に相当にあた
る80分相当分の加工ができず、生産ラインの前で製品
が停滞してしまい、製品の製作期間の増大につながる。
また、逆に480分以下の作業量しかない場合には、生
産ラインで加工する製品が不足して生産ラインを構成す
る装置が休止(遊び)してしまい、装置の稼働率が低下
する。
【0007】このことから、生産ライン間の生産を同期
化させることにより、装置の稼働率の向上、つまりは装
置1台あたりの生産数が向上し、結果として生産ライン
全体の生産数を増加することができることがわかる。さ
らに、生産ライン間の生産を同期化させると、生産ライ
ンの前で製品が停滞しなくなり、製品の製作期間をも短
縮することができる。
【0008】さらに、分散した生産ラインにおいて、歩
留りや受注数量の増減等の生産変動がある場合の生産管
理方法については、従来考慮されていなかった。
【0009】次に、生産の同期を図る方法としては、様
々な方法があるが、各生産ラインの毎日の生産能力と作
業量とを合わせるように、当該生産ラインに製品を供給
する上流の生産ラインの生産をコントロールする方法が
一般的である。具体的には、ある生産ラインの毎日の生
産能力と作業量とが合うように、当該生産ラインに製品
を供給する生産ライン(この生産ラインを前生産ライン
と呼ぶ)から送られてくる製品を日々指示してやり(指
定された日を当該製品の払出し指示日と呼ぶ)、この当
該製品の払出し指示日にあうように前生産ラインでの生
産の順序、製品の投入の順序、製品の優先順位等を制御
する。
【0010】ただし、実際には複数の生産ラインで複数
の製品を生産しているために、容易に全生産ラインの毎
日の作業負荷(作業量を生産能力で割ったものを作業負
荷と定義する)を平準にすることはできない。例えば、
全ての製品が4つの生産ラインで生産されている場合を
考えると、ある1つの製品をどの生産ラインで生産する
かという組み合わせは4通りある。つまり、製品がn種
類あると、4つの生産ラインで生産する場合の組み合わ
せは、nの4乗通りの組み合わせになる。製品が数千種
類もある実際の生産ラインでは、全ての組み合わせを考
えることは、不可能である。
【0011】そこで、容易に多くの組み合わせの中から
最適な組み合わせ探索する手法が数多く考えられてい
る。例えば単に作業量と生産能力とのマッチングを図る
方法としては、ナップサック問題として、作業量と生産
能力とのバランスを取る方法が一般に用いられてきた。
このナップサック問題の解法としては、産業図書株式会
社発行の北野宏明著「遺伝的アルゴリズム」初版の13
5ページから140ページに記載のように、遺伝的アル
ゴリズムを用いる方法が知られている。以下に、ナップ
サック問題、遺伝的アルゴリズム、および遺伝的アルゴ
リズムを用いたナップサック問題の解法について説明す
る。
【0012】<ナップサック問題>ナップサック問題と
は、複数のもの(ナップサック問題の場合にはものとは
荷物を指す)の中からいくつかのもの(荷物)を選択し
てある条件(一般に制約条件という)を一番満足する組
み合わせを探すという組み合わせ最適化問題の一種であ
る。
【0013】具体的には、いま複数個の荷物が存在す
る。これらの荷物それぞれに対して、重量(荷物1つ当
りの重さ)と値段(荷物1つ当りの価値を表す)が決ま
っている。この複数個の荷物の中からいくつかの荷物を
選択し、ナップサックに詰め込む。しかし、ナップサッ
クには詰め込める荷物の総重量(各荷物の重量の合計)
に制限がある。つまり、ナップサック問題では、ナップ
サックに詰め込んだ荷物の重量の合計が制限重量以下で
あり、なおかつナップサックに詰め込んだ荷物の値段の
合計が最大になるような荷物の組み合わせ(値段が最大
の組み合わせを最適な組み合わせという)を決める問題
である。
【0014】図23に示してある前提条件を利用してナ
ップサック問題を説明する。まず、この例では、荷物番
号1から荷物番号8までの8個の荷物がある。各荷物の
重量と値段(価値)は図23の表の通りである。例え
ば、荷物番号8の荷物は重量が13であり、価値が25
である。この問題におけるナップサックの制限重量は、
30であるとする。つまり、8個の荷物のうちから、い
くつかの荷物を選択して、それら荷物の重量の合計が3
0以下であって、さらに評価(価値の合計)が最大にな
るように、8個の荷物の中からどの荷物を選択(言い換
えると荷物の組み合わせを探す)すべきかという問題で
ある。
【0015】例えば、荷物番号1、4、6、7の4つの
荷物を選択した場合には、それぞれの荷物の重量の合計
は、 1+5+9+11=26 となり、制限重量の30以下になる。また、それぞれの
荷物の価値の合計は、 1+10+15+22=48 となる(図24参照)。
【0016】このように8個の荷物の中からいくつかの
荷物を選択すると、選択した荷物の重量の合計と、価値
の合計は簡単に求まる。しかし、どの荷物を選択するか
の組み合わせが膨大になり、簡単に最適な組み合わせを
求めることはできない。例えば、この8個の荷物の場合
には、組み合わせは2の8乗の256通りになる。しか
し、荷物数が増えると、選択できる荷物の組み合わせは
指数的に増える。
【0017】<生産ラインの同期化問題>先に述べた生
産ラインの同期化問題は、このナップサック問題の応用
問題になる。つまり、1つの生産ラインの生産能力が、
ナップサック問題におけるナップサックの制限重量にな
る。また、その生産ラインで生産される製品の作業量が
ナップサックの中に詰める荷物の重量になる。それゆえ
に、各生産ラインにおいては、生産能力というナップサ
ックの制限重量を越えない範囲で、しかもできるだけ多
くの作業をこなすという価値の合計の最大化を図るとい
うナップサック問題に帰着する。
【0018】しかも、複数の生産ラインの同期化問題で
は、複数の生産ラインの生産能力内での最大の作業量を
同時に満足するような組み合わせの解を求めなければな
らない。つまり、各生産ラインのナップサック問題を同
時に解いて、それぞれのナップサック問題の解を最適に
する問題になる。さらに、各生産ラインの生産能力と作
業量を合わせるために、単に生産能力内での最大の作業
量となる製品の組み合わせを求めるだけでなく、日別の
作業量を平準化するということで、時間軸も考慮して解
く必要がある。そのため、組み合わせの数が普通のナッ
プサック問題に比べ非常に多くなり、解くのに膨大な時
間がかかり、実際問題としては解くことが不可能であ
る。
【0019】そこで、最適な解を求めるのではなくて、
最適解にそれなりに近い近似解を求める方法が、数々考
案されている。その1つとして遺伝的アルゴリズムがあ
る。この遺伝的アルゴリズムの説明を以下に示す。
【0020】<遺伝的アルゴリズム>遺伝的アルゴリズ
ム(Genetic Algorithm)とは、自然
界における生物の進化の法則をモデルとした組み合わせ
最適化手法である。遺伝的アルゴリズムをわかり易く説
明するために、先のナップサック問題を例にとって説明
する。
【0021】遺伝的アルゴリズムは大きく以下のGA1
からGA7の7つのステップからなっている(図25参
照)。
【0022】 Step−GA1:問題定式化(問題のマッピング) Step−GA2:遺伝子生成 Step−GA3:遺伝子評価(適応度関数による遺伝
子評価) Step−GA4:遺伝子選択(淘汰) Step−GA5:遺伝子交叉 Step−GA6:突然変異 Step−GA7:終了判定 そこで、それぞれのステップについて詳しく説明する。
【0023】<Step−GA1> 問題定式化(問題
のマッピング) 解きたい組み合わせ問題を遺伝的アルゴリズムで解ける
ように、問題を0、1の文字列(ビット列)からなる遺
伝子に置き換える(いわゆる問題を遺伝子へ写像する)
ことが、問題定式化のステップである。つまり、図23
に示した8個の荷物のうちから、どの荷物を選択するか
といった処理を遺伝子の表現に置き換える。先の例に使
用した荷物番号1、4、6、7の4つの荷物を選択する
場合は、図24に示すように [1,0,0,1,0,1,1,0] という表現になる(ただし、カギ括弧は遺伝の開始、終
了を表す)。この遺伝子表現は、遺伝子の第i番目のビ
ットが、第i番目の荷物番号と対応しており、さらに各
々のビットが1であるか0であるかによって、それぞれ
の荷物を選択する(1で表現する)、および選択しない
(0で表現する)ことを表現している。つまり、1番始
め(第1ビット目、一番左端の数字)の1が荷物番号1
の荷物を選択したことを表し、2番目(第2ビット目)
にある0が荷物番号2の荷物を選択しないということを
表している。そのため、遺伝子[1,0,0,1,0,
1,1,0]は、荷物番号1、4、6、7の4つの荷物
を選択していることになる。このようにして、ナップサ
ック問題における荷物の選択、非選択を1と0との文字
列の表現に置き換える。
【0024】また、遺伝的アルゴリズムにおいて必要と
なる以下に示す定数の初期値を与える。この定数の初期
値については、過去の経験に基づいて定義する。
【0025】(1)遺伝子数:Step−GA2で生成
する遺伝子の数。
【0026】(2)突然変異確率:Step−GA6で
の突然変異の確率。
【0027】(3)収束判定世代数:Step−GA7
での本アルゴリズムの収束を判定する世代数。
【0028】<Step−GA2> 遺伝子生成 一様乱数を利用して、様々な遺伝子を生成する。これに
より、いま解こうとする組み合わせ問題における全ての
組み合わせの内から、いくつかの組み合わせをランダム
に選択し、この選択した解を出発点として、さらに良い
解を見つけ出していくのである。そのための出発点にあ
たる最初の遺伝子(第1世代という)を生成するのが、
この遺伝子生成のステップである。例えば、0から1ま
での一様乱数(0から1までの間に一様に分布する乱
数)を用いて、1つの値を決める。この乱数で生成した
値が、0.5より小さければ、第1番目のビットは0に
し、逆に0.5以上であれば、第1番目のビットは1に
する。このように乱数を8回生成して、第1番目から第
8番目までのビットを決めることで、1つの遺伝子を発
生させる。
【0029】同様な処理を繰り返して、Step−GA
1で定義した遺伝子数分だけの遺伝子を作成する。例え
ば、図26に示す例では、遺伝子1−1、遺伝子1−
2、遺伝子1−3、遺伝子1−4の4つの8ビット遺伝
子を生成させている。
【0030】<Step−GA3> 遺伝子評価(適応
度関数による遺伝子評価) 遺伝的アルゴリズムでは、生成した遺伝子を評価し、評
価結果の良い遺伝子のみが次の世代へと引き継がれる。
これによって、世代を繰り返すことで評価結果が次第に
良いものになっていく。そのために、各遺伝子を評価す
るのが、この評価のステップである。遺伝子を評価する
ための関数は、適応度関数といわれる。例えば、ナップ
サック問題における適応度関数としては、次の2つの条
件からなる関数が考えられる。
【0031】(条件1)遺伝子のビット列の情報に従っ
て荷物を選択した際に、荷物の重量の合計が制限重量以
下であれば、選択した荷物の価値の合計を当該遺伝子の
評価とする。
【0032】(条件2)遺伝子のビット列の情報に従っ
て荷物を選択した際に、荷物の重量の合計が制限重量を
越えれば、当該遺伝子は制約条件を満足しないので評価
を−1とする。
【0033】これにより、制限重量を越えた場合には、
悪い評価(評価値の小さな評価)が得られるようにな
る。特に、制限重量を越えた時は、解として意味のない
ものなので、ペナルティーとして非常に悪い評価(−
1)を与える。
【0034】<Step−GA4> 遺伝子選択(淘
汰) Step−GA3の遺伝子評価において評価された結果
に基づいて、より優れた遺伝子を確率的に多く次の世代
に引き継ぐ操作が、この遺伝子選択のステップである。
「確率的に多く」というのは、一番優れた遺伝子のみを
次の世代にすると、次の世代における遺伝子の種類が少
なくなってしまい、解の探索空間が狭まってしまう。こ
のことにより、最適解を探せずに特定の局所最適解(最
適解ほど良くない解)に収束してしまう可能性が高くな
る。そのため、最適な解を探索することができなくなる
可能性がある。つまり、一番優れた遺伝子以外の遺伝子
をも次の世代に引き継ぐことで、様々な種類の遺伝子を
持った子孫を作り、何世代か後に最適解を見つけだすこ
とができる可能性がある。言い換えると、この遺伝子淘
汰ステップは、評価結果の優れない遺伝子を淘汰して、
評価結果の優れた遺伝子だけを残していく処理でもあ
る。この遺伝子淘汰のステップと次の遺伝子交叉のステ
ップとを繰り返すことにより、次第に評価結果の優れた
遺伝子を作り出していき、最終的に最適な解を探し出す
というのが遺伝的アルゴリズムの基本的な考え方であ
る。つまり、遺伝的アルゴリズムを実現するためには、
先に述べた問題定式化と遺伝子淘汰と遺伝子交叉が行え
るようにモデルを作くり、淘汰と交叉を繰り返し行えば
よい。
【0035】遺伝子を選択する方法としては、様々な方
法があるが、ここでは、評価結果の数値に比例して確率
的に遺伝子を選択するルーレット戦略と呼ばれる方法を
用いる。
【0036】「確率的に遺伝子を選択する」とは、必ず
しも一番優れた遺伝子だけを次の世代に引き継ぐのでは
なく、適当に良くない遺伝子をも次の世代に引き継ぐこ
とを意味している。しかし、何の選択もせずに世代交代
を繰り返していたのでは、良い解に近づいていかない。
そこで、優れた遺伝子を多く次の世代に引き継ぎ、しか
も良くない遺伝子をも少しは次の世代に引き継ぐため
に、優れた遺伝子ほど次の世代に引き継がれる確率を高
くし、優れていない遺伝子ほど次の世代に引き継がれる
確率を低く設定し、乱数を用いて次の世代に引き継ぐ遺
伝子を選択する。
【0037】このルーレット戦略では、各遺伝子の評価
結果(第i遺伝子の評価結果をViとする)から、次の
数式1を用いて、各遺伝子の選択比率(第i遺伝子の選
択比率をSiとする)を計算する。
【0038】
【数1】
【0039】ここで、minは各遺伝子の評価結果V1
からVnのうち、制約条件を満たさないことを表す−1
の評価結果を除いた評価結果の中で、最小の評価結果を
指す。また、1を加えるのは、最小の評価結果を持った
遺伝子でも選択される可能性を残すためである。これに
より、各遺伝子をどれくらいの比率で選択すべきかが、
わかったので、この選択比率を元に乱数で遺伝子を選択
する。
【0040】例えば、遺伝子1、遺伝子2、遺伝子3の
それぞれの評価結果V1、V2、V3が10、7、5と
すると、遺伝子1の選択比率S1は、
【0041】
【数2】
【0042】となる。同様に、遺伝子2の選択比率S2
は0.3、S3は0.1となる。各遺伝子の選択比率S
1、S2、S3である0.6、0.3、0.1に応じ
て、後述するように、乱数で遺伝子を選択する。これに
より、評価結果の良い遺伝子ほど乱数で確率的に選択さ
れる割合が大きくなるようになる。
【0043】例えば、先の3つの遺伝子の選択比率を例
に遺伝子選択を考える。2つの遺伝子を選択する際に
は、2つの乱数を発生させる。ここでは、乱数が0.5
19と0.728であったとする。0.519では、
0.519<0.6なので、遺伝子1が選択される。乱
数が0.728の場合は、0.728>0.6なので、
遺伝子1は選択されない。遺伝子1の選択比率が0.6
なので、 0.728−0.6=0.128 が遺伝子2を選択するか否かを判断する値となる。0.
128<0.3なので、遺伝子2が選択される。
【0044】<Step−GA5> 遺伝子交叉 Step−GA4の遺伝子選択で選んだ遺伝子を親とし
て(第i世代を仮に親と呼ぶ)、次の世代(第(i+
1)世代となる、子と呼ぶ)の遺伝子を生成し、親より
優れた解が得られるようにするのが、この遺伝子交叉の
ステップである。
【0045】具体的には、Step−GA4の遺伝子選
択で選択された遺伝子の中から2つの遺伝子を選び出
し、この2つの遺伝子の一部分をお互いに交換する。こ
れにより、2つの親の遺伝子が持っている優れた部分を
子の遺伝に継承でき、2つの親よりも優れた子の遺伝子
が生成できる可能性がある。しかし、必ず子の遺伝子が
親の遺伝子より優れるという保証はないが、時として親
より良い子の遺伝子ができれば、徐々に最適な組み合わ
せを探索できる。この遺伝子の交叉を繰り返すことで、
そのうち優れた遺伝子を生成できるというのが、遺伝的
アルゴリズムの基本的な考え方である。
【0046】そこで、遺伝子の交換の方法としては、遺
伝子上のある位置(交叉位置)を乱数で決め、この交叉
位置を境に2つの親の遺伝子をそれぞれ同じ交差位置で
分割する。ここでは、遺伝子の長さが8なので、一様乱
数で0から8のうちの1つの数を選択し、その数を交叉
位置にする。同様にもう1つの交叉位置を決め、2つの
交叉位置で遺伝子を交叉させる。分割した2つの親の遺
伝子の一部分を各々の子の遺伝子に分け与える。その際
に、交叉位置を境に分け与える子を換える。
【0047】具体的には、選択された遺伝子を親1、親
2とするし、親1の遺伝子が、[0,1,0,1,0,
1,0,1]、親2の遺伝子が、[0,0,1,1,
0,0,1,0]とする。また交叉位置を遺伝子の第3
ビットと第4ビットの間と、第6ビットと第7ビットの
間とすると、親1の遺伝子は、0,1,0と1,0,1
と0,1の3つに分割される。親2の遺伝子は、0,
0,1と1,0,0と1,0の3つに分割される。この
親1と親2の遺伝子を交叉させて、新しい2つの遺伝子
として子1、子2を生成する。子1の遺伝子は、親1の
遺伝子から[0,1,0, , , ,0,1]と、親
2の遺伝子から[ , , ,1,0,0, , ]を
引継ぎ、[0,1,0,1,0,0,0,1]となる。
【0048】子2の遺伝子は、親1の遺伝子から[ ,
, ,1,0,1, , ]と、親2の遺伝子から
[0,0,1, , , ,1,0]を引継ぎ、[0,
0,1,1,0,1,1,0]となる。
【0049】これにより、1つの親の遺伝子は、交叉位
置を境に別々の子の遺伝子に分けられたようになる。
【0050】<Step−GA6> 突然変異 親の遺伝子から子の遺伝子を作成する際に、親とは少し
違った遺伝子を作ることで、さらに親よりも良い評価結
果を得ようというのが、この突然変異のステップであ
る。つまり、最始に作成した遺伝子を先のStep−G
A5の遺伝子交叉で組換えて子の遺伝子を作成して、次
々と世代を重ねていっても、そのうち評価結果がある値
以上良くならなくなる可能性がある。これは、いくら遺
伝子交叉を行っても最始に作成した遺伝子が持っている
遺伝子内部の各々のビットのパターンでしか、荷物の組
み合わせを考えないためである。
【0051】具体的には、最始の遺伝子が、[0,0,
0,1,0,0,1,1]と、[0,1,1,1,1,
1,0,0]の場合には、両方の遺伝子とも第1ビット
(遺伝子の一番左端のビット)が0であるため、いくら
遺伝子交叉を行っても、第1ビットは1になることはな
い。つまり、荷物番号1の荷物を選択する解は、絶対に
発生しない。逆に、両方の遺伝とも第4ビット(遺伝子
の左側から4番目のビット)が1であるために、どんな
遺伝子交叉を行っても、第4ビットが0になることはな
い。つまり、荷物番号4の荷物は、常に選択されてしま
う。
【0052】そこで、たまに親とは少し違った遺伝子、
つまり2つの親の遺伝子が持っているビットのパターン
とは違ったビットのパターンを作り出すことで、親より
良い評価結果を持った子の遺伝子を作り出そうという考
え方である。
【0053】具体的には、乱数を用いてある確率で子の
遺伝子のあるビットを0から1に、または1から0に変
更する。例えば、ある遺伝子の第1ビットの突然変異を
考える。突然変異の発生確率(この確率はStep−G
A1で定義してある突然変異確率である)を0.001
とする。そこで、このビットについて突然変異を起こす
か否かを0から1までの一様乱数を発生させて判断す
る。乱数の値がR1とすると、以下の条件で突然変異の
発生を行う。
【0054】(1)R1<0.001:突然変異を起こ
す。元のビットが0なら1に、1なら0に変更する。
【0055】(2)R1≧0.001:突然変異を起こ
さない。
【0056】このようにして、遺伝子に突然変異を起こ
すことで、より評価結果の良い解を探索していく。
【0057】<Step−GA7> 終了判定 以上のStep−GA3の遺伝子評価からStep−G
A6の突然変異までを行うことで、1回に生成した親の
遺伝子を評価し、次の子の遺伝子を生成できる(これを
1世代という)。この1世代分の処理を数多く繰り返す
ことにより、最終的なに良い評価結果を持った組み合わ
せ(遺伝子)を探索できる。そこで、1世代分の処理を
何回繰り返したら良いかは、最初にはわからないので、
この終了判定のステップで探索の終了を判定する。判定
の方法は、Step−GA1で決めた収束判定世代数だ
け続いて、最良の評価結果が変わらない場合に、この探
索は終了したものと判断する。
【0058】<ナップサック問題の遺伝的アルゴリズム
による解法>次に、先に説明したナップサック問題を遺
伝的アルゴリズムで解く方法について、図26の第1世
代の説明図から図31の第6世代の説明図までを利用し
て説明する。
【0059】Step−GA1の問題定式化ステップの
うち、問題の定式化については、先の<遺伝的アルゴリ
ズム>の中で説明してあるので、省略する。また、遺伝
的アルゴリズムの初期値については、遺伝子数を4、突
然変異確率を0.01、収束判定世代数を5とする。
【0060】Step−GA2の遺伝子生成ステップで
生成した結果が、図26の上部の遺伝子1−1、1−
2、1−3、1−4である。例えば、遺伝子1−1は、 [1,0,0,1,0,1,1,0] である。つまり、荷物番号1、4、6、7を選択したこ
とになる。
【0061】<第1世代>Step−GA3の遺伝子評
価ステップで評価した結果が、図26の上部の遺伝子1
−1、1−2、1−3、1−4の重量と価値である。ち
なみに遺伝子1−1は、荷物番号1、4、6、7を選択
しているので、遺伝子1−1の重量は、荷物番号1、
4、6、7の荷物の重量の合計となり、 1+5+9+11=26 となる。また、遺伝子1−1の価値は、荷物番号1、
4、6、7の荷物の価値の合計となり、 1+10+15+22=48 となる。
【0062】Step−GA4の遺伝子選択ステップ
は、図26の中部の遺伝子選択に示してある。ここで
は、遺伝子1−1、1−2、1−3、1−4の評価結果
(価値)をもとに、遺伝子の選択比率を決めている。こ
の例では、4つの遺伝子の最小の値は、遺伝子1−3の
43である。そのため、数式1を用いて、遺伝子1−1
の選択比率S1−1は、
【0063】
【数3】
【0064】となる。同様に計算すると、遺伝子1−
2、1−3、1−4のそれぞれに対して選択比率は0.
318、0.045、0.364となる。
【0065】そこで、0から1までの一様乱数を発生さ
せ、遺伝子を選択する。例えば、乱数R1が0.519
とすると、まず、遺伝子1−1の選択比率0.273を
R1から引いて、残りがマイナスになれば、遺伝子1−
1が選択されることになる。ここでは、0.519−
0.273=0.246になるので、遺伝子1−1は選
択されないことになる。この0.246を新たなR1と
して、次の遺伝子1−2を評価する。そこで、0.24
6−0.318=−0.072となり、遺伝子1−2が
選択されることになる。このように、1つの乱数を発生
させて1つの遺伝子を選択する手順を4回繰り返して、
遺伝子選択をした結果、遺伝子1−4、1−2、1−
4、1−1が選択されたとする。
【0066】Step−GA5の遺伝子交叉ステップで
先に選択された遺伝子1−4と1−2、1−4と1−1
を交叉させる。交叉位置は、乱数を用いて決めるが、こ
の例では、遺伝子1−4と1−2の場合には、第1ビッ
トと第2ビットの間、第5ビットと第6ビットの間とす
る。また、遺伝子1−4と1−1の場合には、第4ビッ
トと第5ビットの間と第8ビットの後ろとする。この際
には、第8ビットの後ろの交叉位置は、実際の交叉には
関係ない。
【0067】Step−GA6の遺伝子突然変異ステッ
プでは、乱数で遺伝子のあるビットを変更する。この例
では、遺伝子2−1の第1ビットを1→0へ、遺伝子2
−3の第5ビットを0→1へ変更した。これにより、次
の世代の遺伝子は、以下のようになる。
【0068】遺伝子1−4から、[1, , , ,
,0,1,1]と、遺伝子1−2から、[ ,1,
1,0,0, , , ]を受け継いだ遺伝子2−1が
[1,1,1,0,0,0,1,1]となる。
【0069】また、遺伝子1−4から、[ ,1,0,
0,0, , , ]と、遺伝子1−2から、[1,
, , , ,1,0,1]を受け継いだ遺伝子2−
2が [1,1,0,0,0,1,0,1]となる
が、突然変異により、 [0,1,0,0,0,1,
0,1]となる。
【0070】同様に、遺伝子2−3が [1,1,
0,0,0,1,1,0]となるが、突然変異により、
[1,1,0,0,1,1,1,0]となる。
【0071】遺伝子2−4が [0,0,0,1,
0,0,1,1]となる。
【0072】Step−GA7の終了判定ステップで
は、第1代であるので判定しない。
【0073】<第2世代>第2世代の内容を図27に示
す。第1世代で作成した遺伝子2−1、2−2、2−
3、2−4を図27の上部に示す。
【0074】Step−GA3の遺伝子評価ステップで
各遺伝子を評価した結果を、図27の上部に示す。第1
世代では、価値が43〜50であったが、第2世代で
は、価値が42〜58となった。このことは、遺伝子交
叉と突然変異により、第1世代より優れた価値の遺伝が
できているが、逆に悪い方の遺伝子もできてしまったこ
とを示している。
【0075】Step−GA4の遺伝子選択ステップを
図27の中部の遺伝子選択に示す。このステップでは、
遺伝子の評価結果(価値)を元に、遺伝子の選択比率を
決める。この世代では、4つの遺伝子の価値の最小値が
遺伝子2−2の42である。そこで、数式1を用いて各
遺伝子の選択比率を計算する。その結果、各遺伝子の選
択比率は、0.349、0.023、0.233、0.
395となる。遺伝子の価値が第1世代よりバラついて
いるので、価値の一番小さな遺伝子の選択比率が、0.
045から0.023に小さくなっている。これによっ
て、価値の小さな遺伝を選択する確率が小さくなり、次
第に価値が大きい遺伝子だけが生き残っていく。この遺
伝子選択比率に従って、乱数で遺伝子2−4、2−1、
2−3、2−4が選択されたとする。
【0076】Step−GA5の遺伝子交叉ステップで
先に選択された遺伝子2−4と2−1、2−3と2−4
を交叉させる。
【0077】Step−GA6の遺伝子突然変異ステッ
プでは、遺伝子2−1の第2ビットを1→0へ変更し
た。
【0078】Step−GA7の終了判定ステップで
は、最大の価値の値が収束した否かを判定する。第1代
における4つの遺伝子のうちの最大の価値は50であっ
たのに対し、第2世代では58になったので、まだ収束
していないと判断する。
【0079】<第3世代>第3世代の内容を図28に示
す。第2世代で作成した遺伝子3−1、3−2、3−
3、3−4を図28の上部に示す。
【0080】Step−GA3の遺伝子評価ステップで
各遺伝子を評価した結果を、図28の上部に示す。第3
世代の遺伝子のうち遺伝子3−4は重量が32となり、
制約条件である30を越えているので、評価結果(価
値)が−1となっている。
【0081】Step−GA4の遺伝子選択ステップを
図28の中部の遺伝子選択に示す。遺伝子3−4の価値
が−1であるので、3つの遺伝子の価値の最小値は遺伝
子3−3の50となる。そこで、数式1を用いて各遺伝
子の選択比率を計算する。遺伝子3−4を除いた3つの
遺伝子の選択比率は、0.333、0.600、0.0
67となる。この遺伝子選択比率に従って、乱数で遺伝
子3−2、3−1、3−2、3−1が選択されたとす
る。
【0082】Step−GA5の遺伝子交叉ステップで
先に選択された遺伝子3−2と3−1、3−2と3−1
を交叉させる。
【0083】Step−GA6の遺伝子突然変異ステッ
プでは、始めの方の遺伝子3−1の第3ビットを1→0
へ変更した。
【0084】Step−GA7の終了判定ステップで
は、2回続いて最大の価値が58であったが収束判定世
代数を越えていないので、次の世代の計算を行う。
【0085】<第4世代>第4世代の内容を図29に示
す。第3世代で作成した遺伝子4−1、4−2、4−
3、4−4を図29の上部に示す。このうち、遺伝子4
−2、4−4は同一な遺伝子になっている。
【0086】Step−GA3の遺伝子評価ステップで
各遺伝子を評価した結果を、図29の上部に示す。
【0087】Step−GA4の遺伝子選択ステップを
図29の中部の遺伝子選択に示す。図29に示す遺伝子
選択比率に従って、乱数で遺伝子4−2、4−4、4−
3、4−4が選択されたとする。
【0088】Step−GA5の遺伝子交叉ステップで
先に選択された遺伝子4−2と4−4、4−3と4−4
を交叉させる。
【0089】Step−GA6の遺伝子突然変異ステッ
プでは、この第4世代において突然変異がなかったもの
とする。
【0090】Step−GA7の終了判定ステップで
は、3回続いて最大の価値が58であったが収束判定世
代数を越えていないので、次の世代の計算を行う。
【0091】<第5世代>第5世代の内容を図30に示
す。第4世代で作成した遺伝子5−1、5−2、5−
3、5−4を図30の上部に示す。このうち、遺伝子5
−1、5−2、5−3は同一な遺伝子になっている。
【0092】Step−GA3の遺伝子評価ステップで
各遺伝子を評価した結果を、図30の上部に示す。
【0093】Step−GA4の遺伝子選択ステップを
図30の中部の遺伝子選択に示す。図30に示す遺伝子
選択比率に従って、乱数で遺伝子5−1、5−2、5−
1、5−3が選択されたとする。
【0094】Step−GA5の遺伝子交叉ステップで
先に選択された遺伝子5−1と5−2、5−1と5−3
を交叉させる。
【0095】Step−GA6の遺伝子突然変異ステッ
プでは、この第5世代において突然変異がなかったもの
とする。
【0096】Step−GA7の終了判定ステップで
は、4回続いて最大の価値が58であったが収束判定世
代数を越えていないので、次の世代の計算を行う。
【0097】<第6世代>第6世代の内容を図31に示
す。第5世代で作成した遺伝子6−1、6−2、6−
3、6−4を図31の上部に示す。この結果全部の遺伝
子が全て同一になっている。つまり、世代を繰り返した
淘汰と交叉を行って行くと最終的には、突然変異がなけ
れば同一の遺伝子になってしまう。
【0098】Step−GA3の遺伝子評価ステップで
各遺伝子を評価した結果を、図31の上部に示す。
【0099】Step−GA4の遺伝子選択ステップを
図31の中部の遺伝子選択に示す。図31に示す遺伝子
選択比率に従って、乱数で遺伝子6−1、6−2、6−
1、6−3が選択されたとする。
【0100】Step−GA5の遺伝子交叉ステップで
先に選択された遺伝子6−1と6−2、6−1と6−3
を交叉させる。
【0101】Step−GA6の遺伝子突然変異ステッ
プでは、この第6世代において突然変異がなかったもの
とする。
【0102】Step−GA7の終了判定ステップで
は、5回続いて最大の価値が58であり、収束判定世代
数を超えたので、次の世代の計算を行わない。
【0103】<結果>このナップサック問題の最良解は
遺伝子6−1、6−2、6−3、6−4が示すように、 [1,0,0,1,0,0,1,1] である。つまり、荷物番号1、4、7、8の荷物を選ん
だ場合に、重量が制限重量30と同じになり、価値が5
8になることがわかった。この解は、第2世代の時点で
生成されているが、次第に最良解と同じ遺伝子が増えて
きている。このことは、遺伝的アルゴリズムを用いるこ
とにより、ある最良解へ遺伝子が近づいて行くことを示
している。
【0104】以上のことより、簡単なナップサック問題
に対しては、遺伝的アルゴリズムが有効であることがわ
かった。
【0105】
【発明が解決しようとする課題】上記の従来技術には、
以下の4つの大きな課題が考慮されていなかった。
【0106】(1)センタに膨大な生産情報を集めて管
理するセンタ集中管理の課題 (2)生産ライン能力に対して作業量のバランスをとる
課題 (3)生産ライン能力と作業量のバランスをとるための
組み合せを求める課題 (4)事前に予測できない生産の変動に対する課題 そこで、上記の大きな課題に対して従来技術で考慮して
いない点について以下に説明する。
【0107】(1)センタに膨大な生産情報を集めて管
理するセンタ集中管理の課題 センタとは、全生産ラインを集中管理する計算機がある
ところを指す。各生産ラインの製品の仕掛りデータと各
生産ラインの生産能力データをセンタに集め、センタで
まとめ各生産ラインへの作業の配分を計算する場合に
は、以下の課題がある。
【0108】(課題1a)お互いに離れた生産ラインか
らセンタに大量な生産データ(特に全生産ラインで生産
している製品の進捗情報)を転送するために、高速な通
信手段が必要。
【0109】(課題1b)センタでは膨大な生産データ
を集中して記憶するために、センタに大容量のディスク
装置が必要。
【0110】(課題1c)センタで集中して記憶してい
る大量な生産データをセンタの1台の計算機でまとめて
計算するためには、大量な生産データを扱わなければな
らず膨大な計算が必要。そのため、計算時間がかかる。
【0111】(課題1d)(課題1c)における膨大な
計算を行うためには、センタに処理能力の高い計算機が
必要。
【0112】(課題1e)集中処理のため、各生産ライ
ンの作業量に応じて各生産ラインの生産能力を各生産ラ
インの管理者が対話的に調整することが困難。
【0113】(2)生産ライン能力に対して作業量のバ
ランスをとる課題 各生産ライン間で生産の同期(生産ラインの生産能力に
合わせて作業量を配分すること)を取らずに生産した場
合には、以下の課題がある。
【0114】(課題2a)前の生産ライン(当該生産ラ
インへ製品を送って来る生産ラインを指す)から当該生
産ラインの能力以上に製品が送られてくると、当該生産
ラインの前に多くの仕掛りがたまる。
【0115】(課題2b)逆に、前の生産ラインから当
該生産ラインの能力以下の製品しか送られてこないと、
生産すべき製品がなくなり当該生産ラインの各工程の生
産設備は遊んでしまう。その結果当該生産ラインの生産
量が低下する。
【0116】(課題2c)生産が同期していない各生産
ラインを有効に稼働させるための1つの方法としては、
各生産ラインの前に多くの仕掛りを持つ方法がある。こ
の方法では、前の生産ラインから生産能力以下の製品し
か送られて来なくても、当該生産ラインの前の仕掛りを
利用して生産を続行できるので、生産ラインを遊ばせず
に生産できる。しかし、この方法では、やはり当該生産
ラインの前に多くの仕掛りがあるため、生産ラインの前
での製品の停滞時間が長くなり、製品の製作期間の短縮
が困難になる。
【0117】(課題2d)生産ラインの能力に対して作
業量のバランスをとるためには、2つの対策が考えられ
る。1つは、当該生産ラインのライン能力を残業等行っ
て上げる対策がある。これは、自力改善であって、分散
形のシステムで実現するのが容易である。もう1つの対
策が、他の生産ラインからの作業量を当該生産ラインの
生産能力に合わせて調整する方法である。このやりかた
は、他力改善であって、当該生産ラインの作業量を調整
するために、他の生産ラインを管理するシステムが当該
生産ラインへの作業量を調整する方法が必要となる。つ
まり、集中形でなく、分散形で作業量を調整するために
は、各生産ラインを管理しているシステムが相互に連絡
を取りながら調整を行う必要がある。
【0118】(3)生産ライン能力と作業量のバランス
をとるための組み合せを求める課題 生産能力に対して作業量のバランスをとることを生産の
同期化という。この生産の同期化の問題は、先に述べた
ナップサック問題と同じものと考えられる。つまり、ナ
ップサックに詰め込める荷物の最大重量である制限重量
が各生産ラインの生産能力にあたり、個々の荷物の重量
が製品の作業量にあたる。
【0119】ところが、ナップサック問題は組み合せ問
題であるため、計算の対象となる製品数をnとすると、
nの階乗通りの組み合わせを計算しなければならない。
そのため、nの階乗に比例した計算時間がかかってしま
う。そのため、最適化すべき製品の数、生産ラインの
数、および期間(日数)が多いと、膨大な計算時間がか
かる。
【0120】そこで、ナップサック問題を高速に解く方
法の1つとして遺伝的アルゴリズムがあるが、この遺伝
的アルゴリズムには、以下の課題がある。
【0121】(課題3a)全生産ラインの全製品を対象
にすると、組み合せの数が多くなり、最適解を求めるの
がやはり遅くなる。
【0122】(課題3b)単純に遺伝的アルゴリズムで
各拠点の生産能力と作業量のバランスを取ろうとする
と、1台の計算機で集中処理しなければならない。つま
り、遺伝的アルゴリズムは、1つの計算機で処理するよ
うに考えられており、分散した計算機で並列処理するよ
うに考慮されてない。
【0123】(課題3c)各生産ラインの生産能力と作
業量のバランスは、最終的には日別(ある期間単位)に
バランスをとる必要がある。そのため、単純にナップサ
ック問題を解く以上に、日別のバランスも考慮しなけれ
ばならず、計算時間がかかるとともに、日別の負荷の平
準化方法についても考慮する必要がある。
【0124】(4)事前に予測できない生産の変動に対
する課題 本発明が対象としている製品には、歩留りの変動があ
る。そのため、1つの生産ラインで生産される製品の数
量が不確定である。さらに、1つの生産ライン内での製
品の製作期間も、変動している。このように、事前に予
測できない生産変動がある場合には、以下の課題があ
る。
【0125】(課題4a)歩留り変動により1つの生産
ラインから払い出される製品の数量が変動し、製品が次
に送られる生産ラインの作業量が変動する。
【0126】(課題4b)製品の製作期間も変動するた
め、ある製品が生産ラインから払い出される日付けが前
に倒れたり、後ろにずれたりし、日別の作業量も変動す
る。
【0127】そこで、本発明では、各生産ラインで分散
して同期化の計算ができ、さらに短時間で計算できる手
法を提供する。
【0128】そこで、本発明の目的は、上記の4つの大
きな課題を解消し、各生産ラインの生産データを各生産
ラインに置いたまま、遺伝的アルゴリズムを改良して生
産ラインの能力と作業量との最適な組み合せを、各生産
ラインで自立して分散して高速に求めるとともに、歩留
りと製作期間の変動を考慮し、多くの生産ライン間の生
産の同期を高速に取ることを目的とする。
【0129】(目的1)分散処理による生産同期化 センタに膨大な生産データを集めて管理するセンタ集中
管理をやめ、各生産ライン毎で生産の同期がとれるよう
に、分散処理によって生産の同期化が可能な手法を用い
る。特に各生産ラインで独自に負荷の平準化を行って
も、最終的には全生産ラインの負荷の平準化が行える方
式を提供する。
【0130】(目的2)自力調整機能と他力調整機能と
を持った組み合せ探索 生産ラインの生産能力に対して作業量のバランスをとる
には、以下の2つの対策を同時に評価できる方法の開発
が必要となる。
【0131】自力調整:他の生産ラインからの払出し数
量(作業量)に合わせて当該生産ラインの生産能力を調
整できる機能。
【0132】他力調整:当該生産ラインで対応できない
作業量の過剰があった場合には、他の生産ラインの払出
し数量を調整できる機能。
【0133】この2つの機能を有することで、全生産拠
点の負荷の平準化を分散したシステムで実現することが
できる。
【0134】(目的3)グループ化組み合せ探索 生産ラインの生産能力と作業量のバランスをとるための
製品の組み合せを求める方法としては、遺伝的アルゴリ
ズムをベースにする。さらに、製品毎に組み合せを求め
たのでは、組み合せの数が多くなり、最適な組み合せを
求めるのに計算時間がかかってしまう。そこで、個々の
製品毎に負荷の平準化をするのではなく、製品の特徴
(外形、用途等)を利用して製品をグループ化する(以
下製品グループと呼ぶ)ことで、組み合せ計算の対象と
なる製品グループの数を減すことができる。これによ
り、組み合わせ計算の対象となる数が減ることで、高速
に最適解を探索できるようにする。
【0135】その上、グループ化することで、扱うデー
タ量も減り、各生産ライン間でやり取りするデータの量
をも減らすことができる。
【0136】(目的4)確率的変動予測 事前に予測できない生産の変動に対しても、過去の実績
をもとに変動を確率的にとらえることで、発生しそうな
変動を多くのケースについて検討しておくことで、変動
に対応できる解を求める。
【0137】さらに、以下の同期化阻害要因がある場合
でも機能する方法にする。
【0138】(阻害要因1)各拠点が離れており、生産
ライン間で製品を運搬するための時間がかかる。
【0139】(阻害要因2)同一の製品が複数の生産ラ
イン間で生産される。
【0140】例えば、同一の製品が、生産ラインA1ま
たはA2で加工されて半製品となり、次に生産ラインB
1またはB2で加工されて製品となる。この場合、生産
ラインA1で加工された半製品は、生産ラインB1にも
送ることができるし、B2にも送ることができる。同様
に、生産ラインA2で加工された同じ半製品は、生産ラ
インB1にも送ることができるし、B2にも送ることが
できる。そのため、生産ラインB1には、半製品を生産
ラインA1から送るか、生産ラインA2から送るかとい
った問題がある。
【0141】以上のような状況をも踏まえて、どこの生
産ラインのどの製品を次にどこの生産ラインに払い出す
と、払出し先の生産ラインにとって作業の負荷(作業量
/生産能力)が平準になるかを、分散した生産ラインの
分散した計算機で自動的に求める。
【0142】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明によれば、複数の生産拠点を設け、各生産拠
点ごとに、製品を加工する生産ラインを少なくとも1つ
配置し、複数種類の製品に複数の生産拠点の生産ライン
において順次加工を施す分散ライン生産管理システムに
おいて、前記複数の生産拠点毎に、それぞれ管理計算機
を設け、前記各管理計算機は、当該管理計算機が備えら
れた生産拠点に配置された各生産ライン毎に対応して設
けられた生産管理部を有し、前記生産管理部は、前記製
品の種類毎に、対応する生産ラインについて、当該生産
ラインから払い出される製品の、払出し先の生産ライン
と払出し日と払出し数量の組み合わせの案である払出し
案を複数生成する払出し予測手段と、生成された複数の
払出し案で特定される、各払出し先の生産ラインへの払
出し日および払出し数量の複数の案の集合である生産ラ
イン別払出案組を、当該払い出し先の生産ラインへ通知
する払出し予測値交換手段と、他の複数の生産ラインに
対応する複数の生産管理部より通知された、対応する生
産ラインを払出し先とする複数の生産ライン別払出案組
のそれぞれから一つづつの案を選択して組み合わせた組
み合わせのうち、当該生産ラインの負荷を平準化するこ
とができる案の組み合わせを、当該生産ラインにおいて
製品を加工することができる能力に基づいて選択して、
負荷平準化案とする負荷平準化手段と、該負荷平準化手
段により生成された負荷平準化案で特定される、当該生
産ラインへの製品の払出し元の各生産ラインから当該生
産ラインへの払出し日および払出し数量を払出希望案と
して、当該払出し元の生産ラインに対応する生産管理部
へ通知する払出し指示値交換手段と、他の生産ラインに
対応する生産管理部より通知された払出希望案に適合す
るように、当該生産ライン内の製品の払出し日および払
出し数量および払出し先の生産ラインを決定するロット
引当て手段と、を有することができる。
【0143】以下に各手段について説明する。
【0144】(1)払出し予測手段 各生産ラインの負荷を平準化するために、各生産ライン
の払出し数量と払出し日を求め、この払い出される製品
をどの生産ラインに配分するかを遺伝的アルゴリズムを
ベースに計算する。そこで、まず先に述べた(目的4)
にあたる生産変動(払出し数量、払出し日)に対して
は、変動を確率的にとらえて精度良く変動を予測する払
出し予測手段について説明する。
【0145】従来は、生産ライン内に存在するロット
(ロットとは製品が一定個数以下集まってできている生
産・搬送の単位。以下ロットを生産管理の対象とする)
毎に払出し日と払出し数量を1つづつ求めていた。しか
し、払出し日や払出し数量については変動があるため、
1ロットについて1組の払出し予測だけでは、精度良く
予測できない。そこで、1つのロットについて複数の払
出し予測を行い、複数の払出し予測をまとめて払出し予
測の分布として表現する方法を用いる。
【0146】また、この払出し予測手段では、1つのロ
ットの1つの払出し日を求めるために、生産ライン内の
各工程で生じる製品の停滞時間の分布(例えば、ある工
程での停滞時間は2時間が20%、3時間が50%、4
時間が30%と表現できる)を考慮して、当該生産ライ
ンにおけるロットの払出し予定日と数量を求める。つま
り、あるロットが現在仕掛っている工程から次の工程に
到着するまでには、過去において当該工程を通過したロ
ット毎の停滞時間の実績分布に従った停滞時間が生じる
ものと考える。先の停滞時間の分布を例にとると、当該
工程での平均待ち時間は、 2×0.2+3×0.5+4×0.3=3.1時間 となる。しかし、あるロットが当該工程を通過するまで
の停滞時間は、0から1までの一様乱数を使って求め
る。当該工程における停滞時間は、一様乱数を用いて、
一様乱数の値が 0.0以上で0.2未満:2時間(2時間の発生確率が
20%のため) 0.3以上で0.7未満:3時間(先の20%に50%
を加えた値までが3時間の停滞時間の発生確率になる) 0.7以上で1.0未満:4時間(残りが4時間にな
る) となる。これは、津田孝夫著の「モンテカルロ法とシミ
ュレーション −電子計算機の確率論的な応用−」に記
載の任意分布の乱数の発生の中の直接法を利用した。こ
れにより、一様乱数からある確率分布に従った停滞時間
をランダムに発生できる。
【0147】例えば、一様乱数の値が0.89だとする
と、当該工程における停滞時間は4時間となる。単純に
平均値で停滞時間を求めると3.1時間となるが、この
例では停滞時間は4時間となる。また、発生させた一様
乱数の値によっては停滞時間は2時間だったり3時間だ
ったりする。その発生の確率は、過去の停滞時間の分布
と同じになる。
【0148】同様に歩留り分布に従ったある確率で不良
が発生し、ロットの数量が減ると考える。
【0149】こうして、以上述べた方法で乱数を使い、
1つのロットに対して1つの払出し日と払出し数量を求
め、1つの払出し予測案(払出し予測数量と払出し予測
日)を求める。さらに、この払出し予測の案を複数案求
める。これは、1つの予測案では、分布を持ったものを
正確に予測できないからである。
【0150】次に、求まった払出し案毎に払出し先の生
産ラインも同様な方法で乱数を用いて確率的に決める。
【0151】最後に求めた各ロットの払出し予測案のデ
ータ(払出し予定日、払出し予定数量、払出し先)を案
別に集計する。集計の仕方としては、払出し先別、払出
し先の生産ラインにおける製品の特徴別(例えば、製品
の外形によって生産設備の段取り替えが必要になったり
する生産ラインでは、製品の外形を特徴として考慮する
必要がある)、払出し日別に数量の合計を求める。
【0152】(2)払出し予測値交換手段 ある生産ラインの管理用計算機上の払出し予測手段で求
めた払出し予測データを他の生産ラインを管理している
計算機との間で交換して、負荷平準化のために利用す
る。
【0153】当該生産ラインの払出し予測手段で求めた
払出し先別の払出し予測データを、払出し先の生産ライ
ンへ転送する。また逆に、他の生産ラインを管理してい
る計算機で持っている払出し予測データを受取る。つま
り、当該計算機内でクローズしている払出し予測データ
と、他の生産ラインで計算されて送られてきた払出し予
測データをまとめて当該生産ラインの受け入れデータと
する。これにより、分散したシステムで負荷の平準化を
行うことができる。
【0154】(3)負荷平準化手段 負荷平準化手段では、まず他の生産ラインからの払出し
予測データ(受け入れデータ)を、払出し元の生産ライ
ンとの製品の移動(運搬)時間を考慮して、受け入れ日
を修正する。
【0155】そして、当該生産ラインの日別、製品特徴
別の生産能力を能力遺伝子として表現する。
【0156】次に、受け入れデータに含まれる払出し生
産ライン別の複数の払出し案(修正された受け入れ日、
特徴別の払出し数量)を払出し生産ライン別に適当に組
み合わせて、負荷遺伝子を作成する。この負荷遺伝子が
示す製品の作業量と、能力遺伝子が示す生産能力とのバ
ランスが一番よい払出し案を見つける。
【0157】この処理を行う際に、遺伝的アルゴリズム
を改良した手法を用いる。つまり、生産ラインAからの
払出し案A1、A2、A3、…と、生産ラインBからの
払出し案B1、B2、B3、…を組み合わせて、例えば
案A1と案B2、案A3と案B1といった具合に、各生
産ライン毎の払出し案を1つづつ選択する。選択した案
を修正受け入れ日別に特徴別に集計し、それぞれの日
別、製品特徴別の負荷ができるだけ生産能力と合ってい
る組み合わせを求める。この際に最適な組み合わせを求
める方法として遺伝的アルゴリズムを利用する。
【0158】また、単なる組み合わせで良い解が見つか
らないときには、当該生産ラインの生産能力を調整(自
力調整)したり、他の生産ラインの払出し予測案を改良
(他力調整)して適切な解を見つけだす。この自力調整
と他力調整とを同時に評価できることで、各生産ライン
の生産管理計算機で独自に自立して負荷の平準化を図る
ことができる。
【0159】最終的に、負荷を平準化することができる
最適な払出し案の組み合わせを求める。この払出し案の
組み合わせに含まれる各払出し案を、当該生産ラインへ
の払出し元の生産ラインへ、払出し指示とみなして送り
返す。
【0160】(4)払出し指示値交換手段 先に(2)で述べた払出し予測値交換手段と同様に、払
出し指示を各計算機間で交換する。
【0161】(5)ロット引当て手段 他の生産ラインから集まった払出し指示をまとめて、当
該工程の払出し計画とする。この払出し計画に一番合う
ように、生産ライン内の仕掛りロットの払出し日と払出
し数量と払出し先を求める。これをロット引当てとい
う。
【0162】つまり、(1)の払出し予測手段で求めた
払出し予測と同じ払出し指示が他の生産ラインから来れ
ば問題は生じない。しかし、他の生産ラインで当該工程
の払出し日や払出し数量を修正していると、必ずしも払
出し予測手段で求めた払出し予測と払出し計画とが一致
しない。そのため、再度払出し計画に一番適した各ロッ
トの払出し日と数量と払出し先を求める。
【0163】この処理は、払出し予測手段で用いた方法
を利用し、当該生産ラインに存在するロット毎に、払出
し日と数量と払出し先を求める。この処理を各ロットに
ついて複数回繰り返し、複数の案を作成する。次に、他
の生産ラインからの払出し指示にあうように、各ロット
の払出し案の組み合わせを遺伝的アルゴリズムで求め
る。
【0164】これにより、他の生産ラインの払出し指示
案に最も適したロット引き当てが可能となる。
【0165】
【作用】
(Step−1)払出し予測 まず、1つの生産ラインにおける払出し予測について考
える。
【0166】当該生産ラインにおけるロットの仕掛り状
態をもとに、払出し予測手段を用いて各ロットの当該生
産ライン払出し日、払出し数量、払出し先を予測する。
この予測結果を払出し先別、払出し日別、製品特徴別に
集計し、払出し先別、払出し日別、製品特徴別の払出し
合計数量のみを払出し先の生産ラインへ送る。
【0167】そのため、各生産ラインにおいて、各生産
ラインの払出し予測手段を用いることで、当該生産ライ
ンの全仕掛りロットの情報を他の生産ラインに全部送ら
ずにすむ。それゆえ、転送すべきデータ量が少なくてす
む。
【0168】さらに、払出し予測値交換手段も払出し指
示値交換手段も負荷平準化手段も、取り扱う情報量が少
なくて良いことになる。
【0169】また、払出し予測手段では、各生産ライン
間で錯綜するロットの移動、製品の歩留り変化、製品の
完成日のバラつきについても、複数の案を同時に作成す
ることで、複数の案がまとまって1つの生産状況を表現
している。つまり、1つ1つの払出し案は、1つの生産
状況の予測を表しているが、これらの払出し予測が複数
個集まることで、生産ラインにある確率で発生する生産
状況の変化を表現することができる。
【0170】(Step−2)払出し予測値交換 各生産ラインにある払出し予測手段で求めた払出し予測
の結果を、払出し先にあたる生産ラインへ払出し予測値
交換手段で転送する。また逆に、払出し予測値交換手段
で、別の生産ラインから当該生産ラインに払い出されて
くる来る払出し予測を受取る。
【0171】このように、各生産ラインで独立に行われ
た払出し予測の結果を相互の生産ライン間で転送するこ
とにより、分散処理を可能とする。
【0172】(Step−3)負荷平準化 負荷平準化手段では、個々のロットの情報を扱うのでは
なく、個々のロットの払出し予測値の合計を扱うこと
で、計算量を抑え、高速に負荷の平準化ができるように
なった。
【0173】また、単なる組み合せにより良い解が見つ
からないときには、他の生産ラインの払出し数量や払出
し日を変更したり、当該生産ラインの生産能力を向上さ
せて、従来の組み合せの解だけでは見つけられなかった
最適な負荷の平準化の解を探索できるようにした。
【0174】負荷平準化手段では、最終的に最適な負荷
平準化の解を求め、その時の各生産ラインの払出し日
別、製品特徴別の払出し数量を各生産ラインに対する払
出しの指示と考え、払出し指示値交換手段で各生産ライ
ンに指示通り払出すように指示する。
【0175】(Step−4)払出し指示値交換 払出し指示値交換手段で、先に負荷平準化手段で求めた
払出し指示を生産ライン間で交換する。この処理は、S
tep−2の払出し予測値交換手段と同様の処理にな
る。このように、各生産ラインで独立に行われた負荷平
準化の結果を相互の生産ライン間で転送することによ
り、分散処理を可能とする。
【0176】(Step−5)ロット引き当て 最終的に、各生産ラインで決定された負荷の平準化案が
当該生産ラインに払出し指示値交換手段で送り返されて
くる。この各生産ラインの払出し指示値をできるだけ遵
守できるように、当該生産ライン内のロット毎に払出し
日、払出し数量、払出し先を決める作業がロット引き当
てである。
【0177】ロット引当て手段では、他の生産ラインか
ら集まった払出し指示をまとめて、現在の仕掛りロット
と各払出し指示とを突き合わせて、最も各生産ラインが
満足するようにロットを指示に引き当てる。
【0178】これにより、分散した生産ライン間の生産
を同期化することができる。
【0179】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明
する。
【0180】まず、本発明では、分散した生産ラインの
生産を同期化させることを目的としている。そのため、
分散した生産ラインを定義する。
【0181】本発明で対象としている生産ラインと、1
つ以上の生産ラインがある生産拠点との関係の一実施例
を図3に示す。図3では、生産拠点30が5つある。生
産拠点とは、1つ以上の生産ラインが存在する地理的な
場所を指している。また、生産拠点は、国内にとどまら
ず、海外にある場合もある。
【0182】生産拠点1には、生産ライン31が5つあ
る。具体的には、生産ライン#1−1、#2−1、#2
−2、#3−1、#3−2の5つの生産ラインがある。
生産拠点2と生産拠点3は、おのおの1つづつ生産ライ
ンを持っている。生産拠点4は同様に4つの生産ライン
を、生産拠点5は同様に2つの生産ラインを持ってい
る。
【0183】この図3は、半導体の生産拠点を模式的に
表している。図3の左側に配置されているライン#1−
1からライン#1−4はウェハ・プロセスライン(シリ
コンの単結晶であるウェハ上に微細プロセス加工でLS
Iを形成するライン)を表している。図3の中央にある
ライン#2−1からライン#2−4は中間特性検査ライ
ン(ウェハ・プロセスラインで作成したウェハ上のLS
Iの動作・特性を測定するライン)を表している。図3
の右側のライン#3−1からライン#3−5は組立・最
終特性検査ライン(中間特性検査ラインで測定した測定
結果に基づき正しく動作するLSIだけをパッケージに
組立て、最終的なLSIの特性を測定するライン)を表
している。つまり、左側のどこかの生産ラインで処理さ
れ、次に中央のどこかの生産ラインで検査され、最後に
右側のどこかの生産ラインで加工されて製品として完成
するのである。
【0184】ここで、製品である半導体は、ある個数で
ロットを構成しており、ロットは1つのウェハ・プロセ
スラインで処理が終わると、次にどこかの中間特性検査
ラインに送られる。しかし、どこの中間特性検査ライン
に送られるかは、製品毎に概ね決められているが、中間
特性検査ラインの混み具合で送り先(払出し先)が変更
される可能性はある。払出し先は、各拠点に1台以上設
置されている生産拠点管理計算機32で管理されてい
る。また、各生産拠点管理計算機32は、電話回線等を
用いた広域ネットワーク2を介してお互いにデータの授
受を行うことができる。さらに、各拠点の生産拠点管理
計算機32は、各拠点のロットの進度管理をも行ってい
る。
【0185】次に、分散した生産ライン間で生産管理と
して生産ラインの払出しを制御することが、本当に有意
義であるかを計算機シミュレーションで評価した結果に
ついて述べる。
【0186】まず、計算機シミュレーションで用いた生
産管理評価モデルを図4に示す。図4の(b)は評価モ
デルを示しており、生産ライン1と生産ライン2からな
る2つの生産ラインに工程AからDまでの4つの工程が
存在する。生産ライン1の工程Aであるロットの作業が
完了したとき、次に生産ライン1の工程Bに行くのか、
生産ライン2の工程Bに行くのかをルールで制御して、
製品の完成までにかかった時間を比較・評価した。ま
た、図4の(a)のグラフは生産ライン1と2への製品
の投入量の変動を示す。この投入量の変動は、歩留り変
動、受注の変動等をモデル的に表現した。
【0187】図4に示した評価モデルを利用し、計算機
シミュレーションで求めた評価結果を図5に示す。この
図において各グラフの中の黒い点1つ1つが、各ロット
の停滞時間を表す。それぞれの評価結果を以下に示す。
【0188】(1)配分固定 生産ライン間で製品を移動させない配分固定では、最大
20時間近い停滞が発生する。また、各ロットの停滞時
間のバラツキが大きいことがわかる。停滞時間がほとん
どないロットが少ないことがわかる。
【0189】(2)日単位の配分変更 毎日払出し先工程の比率を変更したモデルでは、最大の
停滞が半分に抑え込まれる。かなりのロットが停滞時間
数時間以内に入る。
【0190】(3)時間単位の配分変更 ダイナミックに配分を変更すると、長期に停滞するロッ
トはなくなる。ほとんどのロットが停滞時間数時間以内
に入る。
【0191】図4に示す評価モデルの各工程を生産ライ
ンに置き換えても同様なことがいえる(ただし、生産ラ
イン間では運搬時間が必要となる)。この評価結果か
ら、配分、つまり、払出し先を常時コントロールするこ
とで、製品の製作期間短縮に効果があることがわかる。
【0192】次に生産拠点管理計算機32で行われてい
る分散ライン生産管理方式について説明する。
【0193】分散ライン生産管理方式は、分散ライン生
産管理装置1によって実現される。この生産管理装置
は、生産拠点管理計算機32で実現されており、各生産
ライン毎に存在し、各種データファイルは生産ライン毎
に管理される。この分散ライン生産管理方式を実現する
ためのシステム構成の1実施例を図1に示す。まず図1
に出てくるファイルの仕様について以下に述べる。
【0194】(1)投入計画ファイル 投入計画ファイル3(図6参照)は、新規に生産ライン
に投入する(図3のライン#1−1からライン#1−4
のウェハ・プロセスラインにロットを入れることを指
す)ロットについて、そのロットのロットNo、品名、
投入日時、数量を定義してある。
【0195】(2)ロット進度実績/予定ファイル ロット進度実績/予定ファイル4(図7参照)は、当該
生産ラインにおいて生産中または生産予定(投入予定)
のロットについて、品名、ロットNo、数量、当該ロッ
トの進度である現在の仕掛り工程を記憶している。ま
た、仕掛り工程以降の工程については、今後の進行予定
を工程別の日時として格納する。進行予定は、分散ライ
ン生産管理装置1のロット引き当て処理部22で最終的
に決定したロットの払出し予定の算出結果から求められ
る。
【0196】(3)停滞時間分布ファイル 停滞時間分布ファイル5(図8参照)は、当該生産ライ
ンにおける各工程での滞在時間の分布を0.5時間おき
の出現確率の累計で定義してある。つまり、図8の例で
は、工程#1で30分以下でロットが完成する確率は
0.1(10%)である。また、30分以上1時間以下
でロットが完成する確率は、1時間以下でロットが完成
する確率0.3から、30分以下でロットが完成する確
率0.1を引いた値である 0.3−0.1=0.2 になる。また、2時間以下でロットが完成する確率が、
1.0(100%)になるので、工程#1においては2
時間以内に全ロットが完成する。
【0197】(4)歩留り分布ファイル 歩留り分布ファイル6(図9参照)は、生産ラインでの
歩留り(1−不良発生率)分布を定義する。表の見方
は、滞在時間分布ファイルと同様である。
【0198】(5)基本能力ファイル 基本能力ファイル11(図10参照)は、当該生産ライ
ンを構成している各工程の生産設備の能力を定義してい
る。
【0199】例えば、図10の表では、工程#1には、
設備#1と設備#2があり、各々2台と3台存在する。
設備#1は、製品の外形が外形#1のものと外形#2の
ものを取り扱え、各々それだけを生産すると100個/
日・台、50個/日・台の能力がある。また、設備#2
では、外形#2の製品は取り扱えない。
【0200】最後の日別能力は、その日の能力を表して
いる。1.0倍であれば、その日には先に述べた設備能
力がある。また、1.5倍の時には、残業等で設備の能
力が1.5倍に増強されることを表す。0.0倍の時
は、休日等で生産を行わないことがわかる。つまり、定
常能力と日別能力の積が、その日の設備の能力となるの
である。
【0201】(6)ライン配分ファイル ライン配分ファイル7(図11参照)は、予め各製品を
次にどこの生産ラインへ払い出すかの目安を入れておく
ファイルである。各製品が全ての生産ラインで生産でき
るのなら問題ないが、特定の製品は、特定の生産ライン
でしか生産できなといった限定がある時に定義する。こ
の例では、品名#1の製品は、配分先が2であるので、
2つの生産ラインで生産可能である。2つのラインと
は、ライン#2−1とライン#2−3であり、各々70
%と30%の比率で製品を配分する予定になっている。
【0202】(7)修正能力ファイル 修正能力ファイル14(図12参照)は、図10の基本
能力ファイルと作業量から計算して、作業の平準化を図
った時に求まった設備の利用計画を記憶する。具体的に
は、図10に示すように設備#1では外形#1と外形#
2の製品を生産できるが、今回の計画では、外形#1の
製品のみを生産すれば良いことがわかる。
【0203】(8)ロット配分ファイル ロット配分ファイル9(図13参照)は、最終的に決定
した当該生産ラインの仕掛りロットの払出し先をロット
単位に記憶するファイルである。例えば、図13におい
ては、具体的には、ロット#2は、ライン#2−1へ4
月19日の1時に払い出す。また、このロットの払出し
予定数量は20個である。
【0204】(9)品名別特徴ファイル 品名別特徴ファイル8(図14参照)は、各製品がどん
な特徴(特徴とは、製品を作る際に考慮しなければなら
ない製品の要因を表す)を備えているかを定義しておく
ファイルである。この例では、品名#1は、製品の外形
が外形#1であることを表している。プロセス名とは、
製品を加工する際の加工手順につけた名前であり、製品
が異なっても加工手順が同じならば同じプロセス名がつ
く。
【0205】(10)ライン間移動時間ファイル ライン間移動時間ファイル13(図15参照)は、各生
産ライン間でロットが運搬される際に必要となる移動時
間を定義している。この例では、ライン#1−1からラ
イン#2−3への製品の移動は、1日かかる。
【0206】(11)自ライン払出し予測ファイル 自ライン払出し予測ファイル10(図16参照)は、払
出し予測処理部18による処理を行った後にわかる当該
生産ラインの仕掛りロットの払出し日時を、製品の特徴
別、日別に集計した結果である。日付(3/20、3/
21、…)の下は、製品の個数である。また、払出し予
測処理18は、複数の案を作成するので案別(案Noで
表現されている)に記憶されている。図16において、
評価点の欄は、払出し指示の時に負荷平準化の結果であ
る評価点を書き込む。
【0207】(12)全生産ライン払出し予測ファイル 全生産ライン払出し予測ファイル12(図16参照)
は、払出し予測値交換処理部19による処理で得られた
全生産ラインからの払出し予測結果を集計した表であ
る。表の中身は、自ライン払出し予測ファイル10と同
様である。
【0208】(13)全生産ライン払出し指示ファイル 全生産ライン払出し指示ファイル15(図16参照)
は、負荷平準化処理部20による処理で求まった適切な
払出しの指示を全ライン分まとめて記憶するファイルで
ある。表の中身は、自ライン払出し予測ファイル10と
同様である。
【0209】(14)自生産ライン払出し指示ファイル 自生産ライン払出し指示ファイル16(図16参照)
は、全生産ライン払出し指示ファイルを生産ライン別に
分割し、払出し指示値交換処理部21による処理で当該
生産ラインの分だけを回収した結果を保存するファイル
である。表の中身は、自ライン払出し予測ファイル10
と同様である。
【0210】次に分散ライン生産管理の方法について、
説明する。
【0211】(Step−1)払出し予測 払出し予測処理部18による処理において、各工程での
停滞時間分布ファイル5と製品の歩留り分布ファイル6
を考慮して、ロットの払出し予定日と数量を求める処理
である。
【0212】(Step1−1)処理開始 現在当該生産ラインに仕掛っている全てのロットについ
て以下の処理を行う。
【0213】(Step1−2)払出し日予測 あるロットが現在仕掛っている第i工程から、当該生産
ラインでの当該ロットに対する処理が完了するまでの工
程数分以下のStep1−3とStep1−4を繰り返
す。
【0214】(Step1−3)工程停滞時間算出 第i工程での停滞時間を求める。そのためには、0.0
〜1.0までの乱数を発生させ、それをrとする。この
rが停滞時間分布ファイル5(図8参照)のどの部分に
含まれるかにより、当該工程の停滞時間が決まる。例え
ば、第i工程が工程#1だとして、r=0.145だと
すると、0.1<r<0.3なので、当該工程における
停滞時間は1時間となる。これにより、停滞時間の分布
に従ったある確率で停滞時間を発生することができる。
【0215】(Step1−4)工程完了日時算出 Step1−3の工程停滞時間算出で求まった停滞時間
をロット進度実績/予定ファイル4(図7参照)の第i
−1工程目の作業完了日時に加え、第i工程の作業完了
予定日時とする。始めの工程(i=1の工程)は、製品
が現在仕掛っている工程であるので、i−1工程の作業
完了時刻は、払出しを予測している現在の時刻となる。
当該生産ラインで施される全ての作業が終了するまで、
Step1−3とStep1−4を繰り返す。
【0216】(Step1−5)払出し数量予測 Step1−2〜Step1−4の処理を繰り返すこと
により、当該ロットの当該生産ラインからの払出し予定
日時が求まる。次に、Step1−3の工程停滞時間算
出と同様に当該ロットの歩留りを計算する。この例で
は、生産ラインの1番最後で(1−歩留り)分の製品が
不良品として失われるというモデルにした。各工程別歩
留りを考えても問題はない。
【0217】そのためには、0.0〜1.0までの乱数
を発生させ、それをrとする。このrが歩留り分布ファ
イル6(図9)のどの部分に含まれるかにより、当該製
品の歩留りが確定する。例えばr=0.145だとする
と、0.1<r<0.4なので、当該生産ラインにおけ
る歩留りは40%となる。このように、歩留り分布を用
いて歩留りを発生することができる。この求まった歩留
りを製品の数量に掛けた値がこのロットの払出し数量に
なる。
【0218】(Step1−6)払出し先予測 次に、ライン配分ファイル7を用いて、Step1−3
の停滞時間算出と同様に当該ロットの払出し先を計算す
る。すなわち、ロットの払出し先を求める。そのために
は、0.0から1.0までの乱数を発生させ、それをr
とする。このrがライン配分ファイル7(図11)のど
の部分に含まれるかにより、当該ロットの払出し先が決
まる。例えば、ロット#1が品名#1だとして、r=
0.145だとすると、0.0≦r<0.7なので、当
該ロットはライン#2−1に払いだされる。これによ
り、ライン配分の分布に従ったある確率でロットの払出
し先を決定することができる。
【0219】これにより、配分の比率に従ったある確率
で払出し先を決定できる。この求まった払出し先をこの
ロットの払出し先とする。
【0220】(Step1−7)全ロット予測 Step1−2〜Step1−6の処理で1つのロット
の払出し予定日と払出し予定数量、払出し先が求まっ
た。次に同様の処理を当該生産ラインに仕掛っている全
ロットに対して行う。
【0221】(Step1−8)予測値集計 以上の処理で当該生産ラインの仕掛りロット全部につい
て、払出し予定日と払出し予定数、払出し先が求まった
ので、これを払出し先の生産ラインの特徴に合わせて特
徴の要因別に集計する。つまり、次の生産ラインの特徴
が外形ならば、外形別、日別に払出し予定数量を加え
る。その結果を自ライン払出し予測ファイル10(図1
6)に格納する。同時にロット配分ファイル9(図1
3)にもロット単位の情報を格納する。
【0222】(Step1−9)複数案作成 以上のStep1−1〜Step1−8の処理で、1つ
の案の払出し予測が求まる。この案を複数個作成するこ
とにより、いくつかの状態(例えば、歩留りの悪い製品
が発生した場合、各ロットの払出し日が少々前後した場
合等)を想定できる。これは、1つの予測案では分布を
持ったものを正確に予測できないからである。
【0223】以上の9つのステップで払出し予測の処理
が行える。
【0224】(Step−2)払出し予測値交換 払出し予測値交換処理部19で、払出し予測処理部18
で求めた自ライン払出し予測ファイル10を払出し先の
生産ライン別に分割し、払出し先の生産ラインへ転送す
る。
【0225】また逆に、本計算機が管理している生産ラ
インとは別の生産ラインから当該生産ラインに払い出さ
れて来る払出し予測を受取り、全ライン払出し予測ファ
イル12に格納する。
【0226】(Step−3)負荷平準化 負荷平準化処理20で、当該生産ラインの負荷の平準化
を行う。
【0227】図2に示す負荷平準化処理フローを以下に
説明する。ただし、説明を簡単にするために、1つの製
品外形を例に説明する。そのため、外形について今後説
明しない。しかし、外形を踏まえて考えても、なんら方
法論に矛盾は生じない。
【0228】また、負荷平準化の処理は、遺伝的アルゴ
リズムをベースに構築されている。そこで、遺伝的アル
ゴリズムの<Step−GA1>に該当する問題の定式
化について、図20の負荷平準化処理の遺伝子概要で説
明する。ただし、本実施例では、生産ラインAと生産ラ
インBから払い出されてくる製品の5日分の負荷の平準
化について説明する。実際には、製品が払い出されてく
る生産ラインが、10本近くあり、製品の特徴である製
品の外形についても考慮して負荷の平準化を行う必要が
ある。すなわち、各設備毎に加工できる製品の外形が基
本能力ファイル11(図10参照)に定義されており、
この能力を超えて製品の加工をすることはできない。そ
のために、製品の外形についても考慮して、各設備毎の
負荷の平準化を行う必要がある。
【0229】遺伝的アルゴリズムにおいて、従来、遺伝
子は、0または1で表現されており、ナップサック問題
においては1がナップサックに当該荷物を詰め込むこと
を表していた。そのため、遺伝子の1ビット(1つ1つ
の0または1)が1つの荷物をナップサックに詰め込む
か否かを表していた。
【0230】しかし、負荷の平準化では、各生産ライン
から払い出されてくる作業量の合計である負荷を表すた
めの負荷遺伝子と、当該生産ラインのライン能力を表す
能力遺伝子の2種類の遺伝子を利用する。この2種類の
遺伝子とも図20に示すように複数のビット(この例で
は4ビット)で、1つの情報を表現する。負荷遺伝子で
は、4ビットを使って各生産ラインから当該生産ライン
への払出し案の番号を表す。また、能力遺伝子では、4
ビットを使って当該生産ラインの日別の処理能力を表
す。
【0231】そのため、従来の遺伝子では1ビット単位
に交叉を行えたが、負荷平準化の負荷遺伝子と能力遺伝
子では、4ビットをひと塊として交叉を行う。
【0232】(Step3−1)移動時間補正 当該生産ラインの受け入れデータである全ライン払出し
予測ファイル12を元に、ライン間移動時間ファイル1
3から払出し元と当該生産ライン間の移動(運搬)時間
を考慮して、受け入れ日を修正する。
【0233】具体的には、Aラインの払出し予測ファイ
ル10’とBラインの払出し予測ファイル10’’から
払出し予測を読み込む。例えば、図16の全ライン払出
し予測ファイルのライン#1−1からライン#2−3へ
払い出される外形#1の3月20日の予定数2個の場
合、ライン#1−1からライン#2−3への移動時間
は、図15のライン間移動時間ファイル13で1日であ
るので、3月20日の払出しは翌日の3月21日の受け
入れになる。
【0234】(Step3−2)受け入れ案合成 Step3−2の受け入れ案合成と次のStep3−3
の複数受け入れ案作成が、遺伝的アルゴリズムの<St
ep−GA2>の遺伝子生成に対応する。つまり、乱数
を用いて各生産ラインの払出し案を選択し、払出し案の
番号を4ビットで表現し、1つの遺伝子を作る。
【0235】Step3−1で補正した全ラインの払出
し予測データに含まれる複数の払出し案から、払出し元
別に乱数で適当な案を選択する。つまり、各生産ライン
の案が10個ある場合には、1〜10までの乱数を発生
させ、その乱数と同じ案をその払出し元生産ラインの案
とする。
【0236】この処理を各生産ラインの数だけ行い、全
払出し元から案を1つづつ乱数で選択して、当該生産ラ
インの受け入れ案の1つに合成する。
【0237】実際には、図21に示すように、遺伝子#
1では、生産ラインAの払出し案A−1と、生産ライン
Bの払出し案B−1を選択した。同様に、遺伝子#2で
は、案A−1と案B−2を、遺伝子#3では案A−2と
案B−2を選択した。
【0238】例えば、遺伝子#2(案A−1と案B−2
の組み合せ)の場合の当該生産ラインの負荷は、案A−
1の日別の負荷(2,1,3,1,2)(始めの数字が
第1日目の負荷量が2であることを表し、2番目の数字
が第2日目の負荷量が1であることを表す)と案B−2
の日別の負荷(1,2,1,1,2)を加え、(3,
3,4,2,4)となる。
【0239】この遺伝子#2を遺伝子の表現を利用して
表現すると、[0001,0010]と表せる。つま
り、生産ラインAの払出し案A−1(これを10進数の
1を2進数で表した0001と表現する)と、生産ライ
ンBの払出し案B−2(同様にこれを0010と表現す
る)を組み合わせた場合には、遺伝子が[0001,0
010]となる。
【0240】(Step3−3)複数受け入れ案作成 Step3−2の受け入れ案合成を適当な回数繰り返し
て、様々な受け入れ案を合成する。具体的には、生産ラ
インからの受け入れ案が10個の場合には、10個の数
倍(経験的に多く作れば作るほど良い解が見つかるが、
計算時間がかかる)の案を生成する。この実施例では、
ラインAとラインBからそれぞれ送られてきた案は2つ
である。これらの案を図18の上段に示す。これらの案
を3つの案に合成する。例えば、その結果は、図18の
中段のようになり、3つの負荷山積みになる。
【0241】また、この結果がライン負荷/能力ファイ
ル23になる(ライン負荷/能力ファイルには払出し案
別の負荷が記憶される。このファイル23は中間的なワ
ークファイルであるので、図1に示さない。)。この実
施例では、以下の内容をライン負荷/能力ファイル23
に格納する。
【0242】(1)遺伝子No:負荷遺伝子の番号、例
えば負荷遺伝子#1と記憶する。
【0243】(2)払出し元:払出し元の生産ラインを
記憶する。
【0244】(3)案No:払出し案の番号を記憶す
る。
【0245】(4)日別負荷:平準化すべき期間分の負
荷を1日当たりの生産枚数として記憶する。
【0246】(5)評価点:この遺伝子と能力遺伝子間
の日別負荷と能力の差を取って、能力オーバー分を負の
評価点として記憶する。能力をオーバーしない時は、0
とする。つまり、評価点が0の案を選択すれば、当該生
産ラインにおいては、能力の範囲内であるので、必ず生
産することができる。つまり、評価点が大きいほど能力
に対して適合していると考える。
【0247】(Step3−4)能力遺伝子作成 基本能力ファイル11から能力遺伝子を生成し、ライン
負荷と同様にライン負荷/能力ファイル23(図17参
照)に格納する。例えば、図18に示す第1日から第5
日までのライン能力は、3個/日であり、これは、
(3,3,3,3,3)と表現することができる。この
能力を遺伝子にすると、[0011,0011,001
1,0011,0011]となる。この実施例では、能
力遺伝子を1つ生成し、以下の内容をライン負荷/能力
ファイルに格納する。つまり、この実施例では、ライン
能力に関して様々なケースについて検討しない。しか
し、能力遺伝子を複数を生成すれば、ライン能力につい
ても様々な場合(例えば、不意の設備故障が発生したケ
ース等)について検討できる。
【0248】(1)遺伝子No:能力遺伝子の番号、例
えば能力遺伝子#1と記憶する。
【0249】(2)払出し元:払出し元がないため、当
該生産ラインを記憶する。
【0250】(3)案No:払出し案の番号がないた
め、何も記憶しない。
【0251】(4)日別能力:平準化すべき期間分の能
力を1日当たりの生産枚数として記憶する。
【0252】また、能力遺伝子は基本能力ファイル11
から当該外形の能力を乱数で生成する。つまり、複数の
外形に対して生産が可能な設備を乱数を用いて適当な割
合で配分し、日別の能力として遺伝子に記憶させる。よ
り具体的には、当初の製品外形別のライン能力を決定す
る方法としては、様々な方法があるが、ここでは、乱数
を用いてライン能力を分割する。例えば、ライン能力が
3個/日で、製品外形が外形#1と外形#2との2種類
がある場合、乱数で0から3の間の値を1つ決定する。
それが、0.45であるとすると、外形#1用の能力を
0.45個/日に、外形#2の能力を3−0.45の
2.55個/日にする。
【0253】(Step3−5)遺伝子評価 遺伝的アルゴリズムの<Step−GA3>の遺伝子評
価に対応するものとして、負荷遺伝子と能力遺伝子とを
組み合わせて評価する。Step3−3(複数受け入れ
案作成)とStep3−4(能力遺伝子作成)で生成し
た負荷遺伝子と能力遺伝子とを評価する。実施例では、
図18の下段の1つのライン能力を表す能力遺伝子が持
っているライン能力と、3つの負荷遺伝子が示している
負荷を日別に比較し、能力から負荷を減算し、減算結果
がマイナスになった時に、その値を合計していき評価点
とする。その結果、各々の負荷遺伝子の評価点は−1、
−2、−1となる。
【0254】(Step3−6)遺伝子選択 遺伝的アルゴリズムの<Step−GA4>の遺伝子選
択に対応するものとして、Step3−5で求まった負
荷遺伝子の評価点をもとに、優秀な負荷遺伝子(評価点
の高い遺伝子)を選択する。負荷遺伝子の選択方法は、
従来の遺伝的アルゴリズムの遺伝子選択と同様に、評価
点に応じて乱数を用いて選択する。ただし、従来の遺伝
的アルゴリズムにおいては、評価点が基本的にはプラス
の値になり(値が大きいほど良い結果であると判断す
る)、制約条件をオーバーした時のみマイナスの値とな
っていた。しかし、この実施例においては、能力をオー
バーした負荷がある時には、評価点が常にマイナスにな
る(従来と同様に値が大きいほど良い結果であると判断
する)。しかし、従来も本実施例も評価点が大きいほど
良い結果を示している点では同じである。この実施例で
は、評価点が−1である2つの負荷遺伝子#1と#3を
乱数を用いて選択したとする(図19参照)。
【0255】(Step3−7)遺伝子交叉/突然変異 遺伝的アルゴリズムの<Step−GA5>の遺伝子交
叉と、<Step−GA6>の突然変異に対応するもの
として、Step3−6で選択された優秀な遺伝子に交
叉と突然変異の遺伝子操作を加えて、新しい世代の遺伝
子として生成する。新しい遺伝子の生成方法としてこの
実施例では、以下の方法がある。
【0256】(1)能力遺伝子の突然変異(図19のケ
ース1) 生産ラインの能力を増やしたり、減らしたりする。つま
り、残業による能力向上や他の外形との能力の配分を修
正することを評価する。図19のケース1では第3日に
残業等による日別能力向上で生産能力を1枚/日増加さ
せた。この例では、この能力増強が行われると、結果と
しては負荷遺伝子#1で生産が行えることになる。
【0257】また、この能力増強に関しては、計算機で
自動的に行わず、生産ラインの管理者の対話的な判断で
行う方法も考えられる。
【0258】(2)負荷遺伝子の交叉(図19のケース
2) 優秀な負荷遺伝子同士を交叉させ、新しい負荷遺伝子を
生成する。掛け合わせの方法としては、元々の案の番号
を交換して新しい遺伝子を作成する。つまり、この実施
例では、遺伝子#1と遺伝子#3から、それぞれ案A−
2と案B−1を選択し、新しい遺伝子#2を生成する。
これにより、図19に示す通り評価点が0になる案が生
成できる。
【0259】(3)負荷遺伝子の突然変異(図19のケ
ース3) (1)の能力遺伝子の突然変異と(2)の負荷遺伝子の
交叉だけでは、必ずしも良い解が見つかるとは限らな
い。そこで、与えられている案別の日別の負荷を移動さ
せたり、削除させたりすることで、評価点の良い負荷遺
伝子を生成しようというのが、この負荷遺伝子の突然変
異である。この突然変異の方法としては、以下の3つが
ある。
【0260】(a)負荷の前倒し:ある日の負荷を1日
前へ倒す。つまり、ある日の負荷から例えば1だけ前へ
移動する。
【0261】(b)負荷の後倒し:前倒しとは逆に、負
荷を1日後ろへ移動する。
【0262】(c)負荷の消滅:ある日の負荷を例えば
1だけ減少させる。
【0263】それぞれの突然変異がある確率で発生する
ように設定しておく。また、負荷の消滅が度々発生する
と負荷が減っていくので、負荷の消滅の発生確率は低め
に設定する。また、必要以上に負荷が減っても困るの
で、能力オーバー分以下を消滅させる。
【0264】この実施例のケース3では、第3日目の1
枚の負荷を後倒しした突然変異が発生して負荷がちょう
ど適合している。
【0265】(Step3−8)最適解探索 遺伝的アルゴリズムの<Step−GA7>の終了判定
に対応して、Step3−5〜Step3−7の操作を
繰り返し、優秀な遺伝子を作り出していく。その過程
で、全部の遺伝子の評価値が0に収束してしまった場合
には、繰り返しをやめる。また、始めに決めておいた適
当な繰り返し回数分繰り返してしまった場合には、その
時点の最適解を解とする。
【0266】最終的に求まったライン能力とライン負荷
をそれぞれ修正能力ファイル14と修正負荷ファイル2
4(図17参照)に格納する。
【0267】(Step3−9)払出し指示作成 修正負荷ファイル24の中の負荷をラインAとラインB
別に分割する。分割の方法としては、最適解の負荷をラ
インAとラインBの2つの作業量に分割する。
【0268】この作業量分割は、図17の修正負荷ファ
イル24の中に格納されている案の中から、最終的に選
択された案(遺伝子)を、払出し元の生産ライン毎に分
割する。
【0269】これで求まった結果を元の払出し予測に対
する払出し指示(当該生産ライン側で最適と考える払出
し)として、Aライン払出し指示ファイル16’とBラ
イン払出し指示ファイル16’’に書き込む。Aライン
払出し指示ファイル16’とBライン払出し指示ファイ
ル16’’とをまとめて、全ライン払出し指示ファイル
15とする。
【0270】以上のStep3−1〜Step3−9の
処理を行うことで、遺伝的アルゴリズムを改良した手法
により、生産ラインの負荷の平準化を分散して行うこと
ができる。さらに、単なる組み合わせで良い解が見つか
らないときには、当該生産ラインの生産能力を自力で調
整したり、他の生産ラインの払出し予測案を改良して他
力で負荷を調整することで、適切な解を見つけだすこと
ができる。
【0271】(Step−4)払出し指示値交換 払出し指示値交換処理部21で、払出し予測値交換処理
と同様に、全ライン払出し指示ファイル15を各計算機
間で広域ネットワーク2を経由して交換する。その結果
として交換された払出し指示は、自ライン払出し指示フ
ァイル16に格納される。
【0272】(Step−5)ロット引当て ロット引当て処理部22では、他の生産ラインから集ま
った払出し指示は自ライン払出し指示ファイル16に格
納されているので、この払出し指示を満足するように、
現在の仕掛りロットを払出し指示に突き合わせる。
【0273】このためには、従来技術で引用したナップ
サック問題を応用することで解決できる。つまり、払出
し指示をナップサックの容量とし、自ラインの仕掛りロ
ットを先の払出し予測処理同様に乱数で払出し予測し、
予測された払出し日と払出し数量をナップサックに最大
限詰め込むことを考える。
【0274】つまり、当初ラインAの当該案とラインB
の当該案と作業量を組み合わせて、遺伝的アルゴリズム
で最適解の負荷を求めた。しかし、最適解を求める過程
で、作業量を移動させたり、削減したりしたため、当初
の作業量と必ずしも一致しなくなっている。そこで、各
生産ライン毎の負荷量に合うように払出し計画を修正す
る。
【0275】払出し予測処理部18においては、当該ラ
イン内の仕掛りロットの払出し日を乱数を用いて求めて
いる。この払出し予測結果が、図16の自ライン払出し
予測ファイル10の中に格納されている。しかし、負荷
平準化により当初の予測が修正されており、この修正さ
れた払出し計画に合うように、仕掛りロットの払出し日
を再検討する。
【0276】この方法としては、払出し予測処理部18
と同様に1つの仕掛りロットについて、複数の払出し案
を作成する。当該生産ラインに仕掛っている全部のロッ
トについて、複数の払出し案の中から1つを任意に選択
し、この選択された案の合計が、先の修正払出し計画に
最も合う選択を探す。この方法は、修正払出し計画がナ
ップサック問題の制限重量になり、各ロットの複数の払
出し案がナップサックに詰め込む荷物になる。そのた
め、従来のナップサック問題の解法を応用して解くこと
ができる。
【0277】これで求まった結果がロット進度実績/予
定ファイル4に払出しの予定として格納される。また、
ロット配分ファイル9にもロット別の払出し先が上書き
される。
【0278】以上の大きく5つの処理で分散生産ライン
間の作業負荷を平準化できる。この平準化できたロット
毎の進行予定をベースに生産ラインの進捗管理を行え
ば、各生産ラインの負荷が平準になる。進捗管理方法と
しては、様々な方法が知られているので、ここでは具体
的に示さない。ただし、進捗管理に必要な工程別の日程
や払出し予定日、払出し予定数量は、ロット進度実績/
予定ファイル4とロット配分ファイル9に格納されてい
る。
【0279】本発明によれば、遺伝的アルゴリズムをベ
ースにしており、短時間で最適解を探索できる。そのた
め、高速に負荷の平準化を行うことができる。当該の負
荷平準化方法により、各生産ライン間の仕掛りが抑えら
れ、製作期間の短縮を図ることができる。また、負荷の
平準化により、設備とラインの稼働率を向上することが
できる。
【0280】
【発明の効果】以上記述されたように、本発明の分散ラ
イン生産管理方式およびその装置により、分散した生産
ラインの管理を効率よく行える。その結果、以下のよう
な効果が顕著に表れる。
【0281】(1)センタに膨大な生産データを集めて
管理するセンタ集中管理をやめ、各生産ライン毎で生産
の同期がとれるように、分散処理によって生産の同期化
が可能となる。このとき、分散した生産ライン間で仕掛
りロットの全データをやりとりせずに、各生産ラインの
日別払出し数量だけを伝えれば良いため、少ない計算機
資源で負荷の平準化を計算することができる。
【0282】(2)生産ラインの生産能力に対して作業
量のバランスをとるために、他の生産ラインからの払出
し数量(作業量)に合わせて当該生産ラインの生産能力
を調整することができる。また、生産ラインの生産能力
に対して作業量のバランスをとるために、当該生産ライ
ンで対応することができない作業量の過剰があった場合
には、他の生産ラインの払出し数量を調整することがで
きる。すなわち、自力調整機能と他力調整機能とを持っ
た組み合わせ探索を行うことができる。
【0283】(3)製品の特徴(外形、用途等)を利用
して製品をグループ化することにより、組み合わせ計算
の対象となる数を減らすことができる。これにより、高
速に最適解を探索することができる。
【0284】(4)歩留りの変動や製作期間の変動に対
して乱数で様々なケースを想定してモデル化できるの
で、大きな探索空間を確保でき、平準化の効率の良い解
を探索できる可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分散ライン生産管理装置の実施例のシ
ステム構成図である。
【図2】本発明の負荷平準化処理フローチャートであ
る。
【図3】本発明の分散拠点の生産の模式図である。
【図4】本発明の生産管理評価モデルの説明図である。
【図5】本発明の生産管理方式の評価結果の説明図であ
る。
【図6】本発明の投入計画ファイルの説明図である。
【図7】本発明のロット進度実績/予定ファイルの説明
図である。
【図8】本発明の滞在時間分布ファイルの説明図であ
る。
【図9】本発明の歩留り分布ファイルの説明図である。
【図10】本発明の基本能力ファイルの説明図である。
【図11】本発明のライン配分ファイルの説明図であ
る。
【図12】本発明の修正能力ファイルの説明図である。
【図13】本発明のロット配分ファイルの説明図であ
る。
【図14】本発明の品名別特徴ファイルの説明図であ
る。
【図15】本発明のライン間移動時間ファイルの説明図
である。
【図16】本発明の自ライン払出し予測、全ライン払出
し予測、自ライン払出し指示、全ライン払出し指示ファ
イルの説明図である。
【図17】本発明のライン負荷/能力、修正ライン負荷
/能力ファイルの説明図である。
【図18】本発明の負荷平準化処理概要(1)の説明図
である。
【図19】本発明の負荷平準化処理概要(2)の説明図
である。
【図20】本発明の負荷平準化処理用の遺伝子概要を示
した説明図である。
【図21】本発明の負荷平準化処理用の遺伝子作成を示
した説明図である。
【図22】本発明の負荷平準化処理用の遺伝子交叉を示
した説明図である。
【図23】ナップサック問題の前提条件を示した説明図
である。
【図24】遺伝子の概要の説明図である。
【図25】遺伝的アルゴリズムの処理フローチャートで
ある。
【図26】遺伝的アルゴリズムを用いたナップサック問
題の解法(1)の説明図である。
【図27】遺伝的アルゴリズムを用いたナップサック問
題の解法(2)の説明図である。
【図28】遺伝的アルゴリズムを用いたナップサック問
題の解法(3)の説明図である。
【図29】遺伝的アルゴリズムを用いたナップサック問
題の解法(4)の説明図である。
【図30】遺伝的アルゴリズムを用いたナップサック問
題の解法(5)の説明図である。
【図31】遺伝的アルゴリズムを用いたナップサック問
題の解法(6)の説明図である。
【符号の説明】
1…分散ライン生産管理装置 2…広域ネットワーク 3…投入計画ファイル 4…ロット進度実績/予定ファイル 5…滞在時間分布ファイル 6…歩留り分布ファイル 7…ライン配分ファイル 8…品名別特徴ファイル 9…ロット配分ファイル 10…自ライン払出し予測ファイル 10’ …Aライン払出し予測ファイル 10’’…Bライン払出し予測ファイル 11…基本能力ファイル 12…全ライン払出し予測ファイル 13…ライン間移動時間ファイル 14…修正能力ファイル 15…全ライン払出し指示ファイル 16…自ライン払出し指示ファイル 16’ …Aライン払出し指示ファイル 16’’…Bライン払出し指示ファイル 18…払出し予測処理部 19…払出し予測値交換処理部 20…負荷平準化処理部 21…払出し指示値交換処理部 22…ロット引き当て処理部 23…ライン負荷/能力ファイル 24…修正ライン負荷/能力ファイル 25…移動時間補正/合成処理 26…評価・修正処理 27…払出し指示分割処理 30…生産拠点 31…生産ライン 32…生産拠点管理計算機
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡部 勉 東京都小平市上水本町五丁目20番1号 株 式会社日立製作所半導体事業部内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数の生産拠点を設け、各生産拠点ごと
    に、製品を加工する生産ラインを少なくとも1つ配置
    し、複数種類の製品に複数の生産拠点の生産ラインにお
    いて順次加工を施す分散ライン生産管理システムにおい
    て、 前記複数の生産拠点毎に、それぞれ管理計算機を設け、 前記各管理計算機は、当該管理計算機が備えられた生産
    拠点に配置された各生産ライン毎に対応して設けられた
    生産管理部を有し、 前記生産管理部は、 前記製品の種類毎に、対応する生産ラインについて、当
    該生産ラインから払い出される製品の、払出し先の生産
    ラインと払出し日と払出し数量の組み合わせの案である
    払出し案を複数生成する払出し予測手段と、 生成された複数の払出し案で特定される、各払出し先の
    生産ラインへの払出し日および払出し数量の複数の案の
    集合である生産ライン別払出案組を、当該払い出し先の
    生産ラインへ通知する払出し予測値交換手段と、 他の複数の生産ラインに対応する複数の生産管理部より
    通知された、対応する生産ラインを払出し先とする複数
    の生産ライン別払出案組のそれぞれから一つづつの案を
    選択して組み合わせた組み合わせのうち、当該生産ライ
    ンの負荷を平準化することができる案の組み合わせを、
    当該生産ラインにおいて製品を加工することができる能
    力に基づいて選択して、負荷平準化案とする負荷平準化
    手段と、 該負荷平準化手段により生成された負荷平準化案で特定
    される、当該生産ラインへの製品の払出し元の各生産ラ
    インから当該生産ラインへの払出し日および払出し数量
    を払出希望案として、当該払出し元の生産ラインに対応
    する生産管理部へ通知する払出し指示値交換手段と、 他の生産ラインに対応する生産管理部より通知された払
    出希望案に適合するように、当該生産ライン内の製品の
    払出し日および払出し数量および払出し先の生産ライン
    を決定するロット引当て手段と、 を有することを特徴とする分散ライン生産管理システ
    ム。
  2. 【請求項2】請求項1記載の分散ライン生産管理システ
    ムにおいて、 前記払出し予測手段は、 対応する生産ラインに対して経験的に算出された、製品
    の停滞時間の分布と一様乱数とに基づいて、対応する生
    産ラインにおける製品の停滞時間を算出する停滞時間算
    出手段と、 該停滞時間算出手段の算出結果に基づいて、製品の払出
    し日を決定する払出し日決定手段と、 対応する生産ラインに対して経験的に算出された、製品
    の歩留りの分布と一様乱数とに基づいて、対応する生産
    ラインにおける製品の歩留りを算出する歩留り算出手段
    と、 該歩留り算出手段の算出結果に基づいて、製品の払出し
    数量を決定する払出し数量決定手段と、 対応する生産ラインに対して予め定められた、製品の払
    出し先の生産ラインの比率と一様乱数とに基づいて、対
    応する生産ラインにおける製品の払出し先の生産ライン
    を決定する払出し先決定手段と、 製品の種類毎に、前記停滞時間算出手段による算出、前
    記払出し日決定手段による決定、前記歩留り算出手段に
    よる算出、前記払出し数量決定手段による決定、前記払
    出し先決定手段による決定を、前記各一様乱数を変化さ
    せながら複数回繰り返し、対応する生産ラインについ
    て、当該生産ラインから払い出される製品の、払出し先
    の生産ラインと払出し日と払出し数量の組み合わせの案
    である払出し案を複数生成する複数案生成手段と、 を有することを特徴とする分散ライン生産管理システ
    ム。
  3. 【請求項3】請求項1記載の分散ライン生産管理システ
    ムにおいて、 前記負荷平準化手段は、 他の複数の生産ラインに対応する複数の生産管理部より
    通知された、対応する生産ラインを払出し先とする複数
    の生産ライン別払出案組のそれぞれから一つづつの案を
    選択して組み合わせた組み合わせを複数生成して複数の
    負荷遺伝子とする負荷遺伝子生成手段と、 当該生産ラインにおいて製品を加工することができる日
    別の量を示す数値の組を生成して能力遺伝子とする能力
    遺伝子生成手段と、 前記負荷遺伝子として選択された組み合わせが表す当該
    生産ラインにおける日別の負荷と前記能力遺伝子の表す
    日別の量とを比較して、前記負荷遺伝子の各々を評価す
    る評価手段と、 該評価手段による評価に応じて、乱数を用いて前記複数
    の負荷遺伝子のうちのいくつかを選択する選択手段と、 前記能力遺伝子を、当該能力遺伝子が表す日別の量の数
    値が変更するように変化させる能力遺伝子の突然変異手
    段と、 2つの負荷遺伝子の一部分を互いに取り替える負荷遺伝
    子の交叉手段と、 前記負荷遺伝子として選択された組み合わせの表す当該
    生産ラインにおける日別の負荷を変更する負荷遺伝子の
    突然変異手段と、 前記能力遺伝子の突然変異手段による変更、負荷遺伝子
    の交叉手段による取り替え、または負荷遺伝子の突然変
    異手段による変更を行う度に、前記評価手段による評価
    を行い、前記選択手段による選択を行い、前記評価のう
    ちの最も良い値が所定の回数を超えた場合に、その時点
    における最も良い評価の値を有する負荷遺伝子を、当該
    生産ラインの負荷を平準化することができる案の組み合
    わせとする最適解探索手段と、 を有することを特徴とする分散ライン生産管理システ
    ム。
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JP5760195A Pending JPH08255197A (ja) 1995-03-16 1995-03-16 分散ライン生産管理システム

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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