JPH08217488A - 波長変換ガラス材 - Google Patents

波長変換ガラス材

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JPH08217488A
JPH08217488A JP5178695A JP5178695A JPH08217488A JP H08217488 A JPH08217488 A JP H08217488A JP 5178695 A JP5178695 A JP 5178695A JP 5178695 A JP5178695 A JP 5178695A JP H08217488 A JPH08217488 A JP H08217488A
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chloride
mol
glass
glass material
wavelength
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JP5178695A
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Masaharu Ishiwatari
正治 石渡
Akira Okubo
晶 大久保
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Mitsubishi Materials Corp
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 ガラス形成剤の塩化ガドリニウム、ガラス形
成助剤のアルカリ土類塩化物および発光中心源の塩化ネ
オジムからなる波長変換ガラス材。 【効果】 従来のフッ化物系波長変換ガラス材よりも紫
外域あるいは紫色〜緑色域の光変換効率が各段に優れて
おり、しかも結晶体の波長変換材料よりも製造が容易で
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は赤外光、赤色光あるいは
黄色光をより短い波長の可視光に変換する波長変換材料
に関する。より詳しくは、変換効率および取扱性に優
れ、しかも、製造が容易であり、ディスプレイ用蛍光
体、赤外光検知体あるいはアップコンバージョンレーザ
ーの材料等として幅広い応用が可能である波長変換ガラ
ス材に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】一般に蛍光発光においては放出
光は入射光(励起光)より波長が長くなるが、希土類イ
オン含有物質の中には励起光よりも短波長の光を放出す
るアップコンバージョンによる蛍光を示すものがある。
これは、希土類イオンの電子が光子の2段階吸収などに
よって励起されることによるものである。例えば、赤外
光を励起光とし可視光を発する蛍光体が知られており、
肉眼では見えない赤外光の光路を識別する材料として用
いられているほか、ディスプレイ用蛍光体、あるいは赤
外ないし赤色域の半導体レーザーとの組合せによるコン
パクトな可視光レーザー光源としての利用が期待されて
いる。
【0003】特に、最近では、光記憶の高密度化に対応
してより短波長の光を放出するアップコンバージョン材
料が求められ、赤外光あるいは赤色光を励起光として青
色光を発する蛍光体の検討が進められている。例えば、
フッ化ランタン(LaF3 )の単結晶にネオジムイオン
(Nd3+)を含有させたアップコンバージョン蛍光体が
知られており、この蛍光体は波長788nmおよび591
nmの励起光によって紫色のレーザー光の発振が認められ
ている(Appl Phys.Lett., 52 ,16,1300-1302,1988) 。
しかし、結晶はファイバー等の任意の形態に成型するこ
とが困難であり、また単結晶は大きなものを製造するに
も困難が多い。さらに、結晶は配位子場の対称性が高い
ために発光遷移確率が低く、また、吸収幅が狭いため、
半導体レーザーのように励起光の波長が変動しやすいレ
ーザーで励起する場合には吸収効率の変動が大きいとい
う問題点がある。
【0004】このため、近年、非晶質の、すなわちガラ
ス質の蛍光体が提案されている。透明ガラス材料からな
る蛍光体は、(i) 結晶に比べて可視光発生の際の損失や
散乱が少ない材料を作製しやすい、(ii)ファイバー等の
任意の形態に成型できる、また(iii) 励起光の波長ゆら
ぎに伴う吸収効率の変動が小さいので、温度や電流等の
影響により出力波長が変動しやすい半導体レーザーを励
起光として用いた場合でも比較的安定した出力が得られ
る等の利点がある。この種のガラス蛍光体としては、フ
ッ化ジルコニウムガラスにHo3+をドープした蛍光体が
知られており、室温での緑色レーザー発振の報告例があ
る(Electron. Lett., 26, 261-263,1990) 、あるいはフ
ッ化物ガラスにHo3+をドープし、さらにYb3+を増感
剤として添加した蛍光体(特開平6-219777号)が知られ
ている。また、ZBLAN(Zr,Ba,La,Al,Naの各フッ化
物を原料とするフッ化ジルコニウムを主成分とするガラ
ス)にTm3+をドープし、あるいはさらにEu3+を増感
剤として添加した蛍光体が提案されている(例えば、S.
G.Grubb et al., Electron. Lett., 28, 1243, 1992)。
なお、Nd+3とYb3+とを含有する低膨脹リン酸塩レー
ザーガラス材も知られているが(特開平6-107431号)、
これは0.8μm の入力光を1.03μm の出力光に変
換するものであり、アップコンバージョン蛍光体ではな
い。
【0005】しかし、可視光レーザー発振への応用を考
えた場合、上記ガラス材料では励起光からアップコンバ
ージョン蛍光への波長変換効率が不十分である。すなわ
ち、フッ化物ガラスでは、格子振動の最大エネルギーが
上記ZBLANでも400〜500cm-1と大きいが、一
般に格子振動エネルギーが大きいと多フォノン緩和時間
が短くなるという問題が生じる(J. P. van der Ziel et
al. J. Appln. Phys.60, (1986) 4262-67) 。つまり、
発光源イオンの電子は、励起光によって直接または増感
剤を介してエネルギーを受け励起されるが、格子振動エ
ネルギーが大きい場合には励起準位での平均滞留時間が
短く、このため、さらに励起エネルギーを吸収してより
高いエネルギー準位にまで励起される2段階励起の過程
が起こり難くなりアップコンバージョン効率が低下す
る。
【0006】
【発明の解決課題】本発明は、波長変換材料として有用
なアップコンバージョンガラスにおける上記問題を解決
し、ガラス化が容易で、かつ発光強度が強く、赤外ない
し赤色波長域のレーザー光を励起光としても実用に耐え
る強度および安定性で紫外、紫青色或いは緑色光を生じ
る波長変換ガラス材の提供を目的とする。
【0007】
【課題の解決手段】本発明は従来知られているフッ化物
ガラスに代えて塩化物ガラスを母材とし、しかも単独で
はガラス化しない塩化ガドリニウム(GdCl3 :塩化
Gd)をガラス母材に用い、これに、発光中心源となる
塩化ネオジム(NdCl3 :塩化Nd)を含有させるこ
とにより紫外あるいは紫色から緑色の発光強度の強い波
長変換ガラス材を達成したものである。塩化Gdは単独
ではガラス化しないため、従来、塩化Gdを母材とする
塩化物ガラスは知られていないが、本発明者等はガラス
形成助剤としてアルカリ土類塩化物を塩化Gdに加える
ことにより塩化物ガラスが得られることを見出した(特
願平6-95477 号)。本発明は、上記知見に基づき、この
塩化Gd−アルカリ土類塩化物系ガラスに発光中心源と
なる塩化Ndを含有させることにより、赤外光ないし赤
色光あるいは黄色光を励起光として発光強度の強い紫外
域あるいは紫色から緑色の光を生じる塩化物ガラス材を
得たものである。
【0008】すなわち本発明によれば以下の構成からな
る波長変換ガラス材が提供される。 (1)塩化ガドリニウムをガラス形成剤とし、アルカリ
土類塩化物をガラス形成助剤とする塩化物ガラスに、発
光中心源の塩化ネオジムを含有させてなる波長変換ガラ
ス材。 (2)上記ガラス形成助剤が、塩化バリウム、塩化スト
ロンチウム、塩化カルシウムの1種または2種以上の組
合せである上記(1) の波長変換ガラス材。 (3)塩化ガドリニウム41〜93モル%、塩化バリウ
ム6〜49モル%、および塩化ネオジム0.01〜10
モル%からなる上記(2) の波長変換ガラス材。 (4)塩化ガドリニウム48〜83モル%、塩化ストロ
ンチウム15〜47モル%および塩化ネオジム0.01
〜10モル%からなる上記(2) の波長変換ガラス材。 (5)塩化ガドリニウム51〜82モル%、塩化カルシ
ウム16〜47モル%、および塩化ネオジム0.01〜
10モル%からなる上記(2)の波長変換ガラス材。 (6)塩化ガドリニウム41〜90モル%、塩化バリウ
ムと塩化ストロンチウムの合計量が6〜49モル%、お
よび塩化ネオジム0.01〜10モル%からなる上記
(2) の波長変換ガラス材。 (7)塩化ガドリニウム41〜90モル%、塩化バリウ
ムと塩化カルシウムの合計量が6〜49モル%、および
塩化ネオジム0.01〜10モル%からなる上記(2) の
波長変換ガラス材。 (8)塩化ガドリニウム50〜83モル%、塩化ストロ
ンチウムと塩化カルシウムの合計量が15〜47モル
%、および塩化ネオジム0.01〜10モル%からなる
上記(2) の波長変換ガラス材。 (9)塩化ガドリニウム42〜91モル%、塩化バリウ
ムと塩化ストロンチウムと塩化カルシウムの合計量が7
〜49モル%および塩化ネオジム0.01〜10モル%
からなる上記(2) の波長変換ガラス材。
【0009】
【具体的な説明】本発明のガラス材では、塩化Gdおよ
び塩化Ndをガラス形成剤とする。塩化Gdはガラス母
材の主成分としての量が必要であり、その合計量がガラ
ス材の全組成中、少なくとも約41モル%、通常は50
モル%以上の割合を占める。塩化物ガラスはフッ化物ガ
ラスよりも多フォノン緩和速度が小さいので、可視光変
換において高い変換効率が実現される。なお従来知られ
ている塩化物ガラスの代表例は塩化亜鉛(ZnCl2 )をガ
ラス母材とするものであるが、塩化亜鉛を母材とするガ
ラスは潮解性が著しいという実用上の難点がある。本発
明の塩化Gdを母材とするガラス材はこのような欠点を
有しない。
【0010】すでに述べたように塩化Gdは単独ではガ
ラス化しないが、本発明者等が特願平6-95477 号で明ら
かにしたように、塩化Gdと共に一定量のアルカリ土類
塩化物をガラス形成助剤として併用することにより塩化
Gdをガラス化することができる。併用されるアルカリ
土類塩化物としては、塩化Ba、塩化Sr、塩化Caが
好適である。これらは2種以上併用しても良い。これら
を2種以上用いたものはさらに安定なガラス材を得るこ
とができる。塩化Baは塩化亜鉛系ガラスなどにおいて
ガラス形成助剤として常用されているが、塩化Ba自体
はガラス化せず、塩化Gdとの併用例も従来は知られて
いない。塩化Gdと塩化Baとからなるガラス材は本発
明者等により初めて提案された(上記特願平6-95477
号)。塩化Srはガラス形成助剤として従来使用されて
いるが、塩化Gdと併用した例は知られていない。塩化
Caについても同様である。これらのガラス形成助剤の
中では、ガラス転移点の最も高く安定なガラス材料が得
られる塩化Baが最も好ましい。
【0011】Ndイオンは発光中心である。Ndイオン
は赤外波長域の励起光(励起波長 770〜820 nm)によっ
て緑色光(波長約 510〜545 nm)を生じる発光中心とな
る。また赤色励起光(波長 680〜 695nmまたは 625〜 6
40nm)あるいは黄色励起光(波長580 〜 600nm)により
約360nm、約390nm、約420nmの紫外光から青色
光の蛍光を発生させる。Ndイオンの含有量が過少であ
ると発光強度が微弱となるため塩化Nd換算で0.01
モル%以上が好ましく、0.05モル%以上がより好ま
しい。一方、Ndイオンの量が過剰であるとイオン間の
エネルギー伝達が支配的となって濃度消光により発光効
率が低下するので好ましくない。塩化Ndの含有量とし
ては、10モル%以下、好ましくは5モル%以下であ
る。
【0012】本発明に係る青紫あるいは緑色発光ガラス
材のガラス化組成範囲の一例を図1に示す。図1はGd
Cl3 −BaCl2 −NdCl3 からなるガラス化範囲
を示す3元系グラフであり、本発明のガラス材は図1の
斜線部の組成範囲において得られる。斜線部の組成範囲
から外れると、Nd3+イオン過剰となるため濃度消光を
生じ、あるいは結晶化速度が非常に大きくなるため、原
料を加熱溶融後に急冷してもガラス化が困難となり、失
透(結晶化)する。斜線部における各成分の上限・下限
値は、GdCl3 :41〜93モル%、BaCl2 :6
〜49モル%、NdCl3 :0.01〜10モル%であ
る。好ましくは塩化Gd55〜85モル%、塩化Ba1
4〜40モル%、塩化Nd0.05〜5モル%である。
【0013】なお、本明細書および添付図面においてガ
ラス組成をGdCl3 、BaCl2およびNdCl3
の塩化物により表記しているが、これはガラス中の陽イ
オン(Gdイオン、BaイオンおよびNdイオン)およ
び陰イオン(塩化物イオン)の含有比を塩化物換算で示
したものであり、ガラス形成成分は通常のガラス構造と
同様に相互に結合した網目構造を形成している。
【0014】本発明のガラス材について、塩化Baに代
えて塩化Srおよび塩化Caをガラス形成助剤として用
いた場合の好適な組成範囲を以下に示す。(1)GdCl3 −SrCl2 −NdCl3 塩化Gd:48〜83モル%、好ましくは60〜80モ
ル% 塩化Sr:15〜47モル%、好ましくは19〜35モ
ル% 塩化Nd:0.01〜10モル%、好ましくは0.05
〜5モル%
【0015】(2)GdCl3 −CaCl2 −NdCl
3 塩化Gd:51〜82モル%、好ましくは60〜80モ
ル% 塩化Ca:16〜47モル%、好ましくは19〜35モ
ル% 塩化Nd:0.01〜10モル%、好ましくは0.05
〜5モル%
【0016】ガラス形成助剤を2種以上用いることによ
りさらに安定なガラス材を得ることができる。但し、ガ
ラス形成助剤の合計量は50モル%未満である。このよ
うなガラス材としては、Gd−Ba−Sr−Nd、Gd
−Ba−Ca−NdもしくはGd−Sr−Ca−Ndの
各塩化物からなる4元系ガラス、あるいはGd−Ba−
Sr−Ca−Ndの各塩化物からなる5元系ガラスが挙
げられる。
【0017】本発明のガラス材について、これら2種以
上のガラス形成助剤を有する場合の好適な組成範囲を以
下に示す。(3)GdCl3 −BaCl2 −SrCl2 −NdCl
3 塩化Gd:41〜90モル%、好ましくは55〜85モ
ル% 塩化Nd:0.01〜10モル%、好ましくは0.05
〜5モル% 塩化Baと塩化Srの合計量:6〜49モル%、好まし
くは14〜40モル%
【0018】(4)GdCl3 −BaCl2 −CaCl
2 −NdCl3 塩化Gd:41〜90モル%、好ましくは55〜85モ
ル% 塩化Nd:0.01〜10モル%、好ましくは0.05
〜5モル% 塩化Baと塩化Caの合計量:6〜49モル%、好まし
くは14〜40モル%
【0019】(5)GdCl3 −SrCl2 −CaCl
2 −NdCl3 塩化Gd:50〜83モル%、好ましくは60〜80モ
ル% 塩化Nd:0.01〜10モル%、好ましくは0.05
〜5モル% 塩化Srと塩化Caの合計量:15〜47モル%、好ま
しくは19〜35モル%
【0020】(6)GdCl3 −BaCl2 −SrCl
2 −CaCl2 −NdCl3 塩化Gd:42〜93モル%、好ましくは55〜85モ
ル% 塩化Nd:0.01〜10モル%、好ましくは0.05
〜5モル% 塩化Ba、塩化Srおよび塩化Caの合計量:7〜49
モル%、好ましくは14〜40モル%
【0021】上記ガラス形成助剤(BaCl2 、SrCl2 、Ca
Cl2 )と共にLiCl、NaCl、KCl、RbCl、
CsCl、PbCl2 およびTlClを併用すればさら
に安定なガラス材を得ることができる。これらの添加量
は約40モル%以下である。上記ガラス形成助剤(BaCl
2 、SrCl2 、CaCl2 )と共にこれらLiCl、NaC
l、KCl、RbCl、CsCl、PbCl2 およびT
lClをガラス組成内に導入するとガラス転移点が低く
なる。
【0022】本発明の塩化物ガラス材は、精製乾燥した
原料の塩化物粉末を所定量調合した混合粉末を塩素ガス
雰囲気または真空下で加熱溶融し、ガラス転移点以下に
急冷して得られる。冷却速度は、60 K/s以上である。
冷却速度が上記値未満だと一部に結晶が生じるなどして
失透する場合がある。得られた急冷体のX線回折曲線
は、図2に例示するように、結晶体に見られるような特
定のピークが認められず、ガラス質であることがわか
る。また各原料塩の組成に対応するピークも認められ
ず、これらの単なる混合物ではないことが確認できる。
さらに図3の示差熱分析曲線に例示されるようにガラス
転移点が認められ、これによってもガラス質であること
がわかる。なお、本発明のガラスは、上記のような融液
の冷却過程による他、例えば気相成長法等の既知の非晶
質形成方法によっても製造することができる。
【0023】
【実施例および比較例】以下に本発明の実施例を比較例
と共に示す。なお本実施例は例示であり、本発明の範囲
を限定するものではない。
【0024】実施例1 ガラス母材のGdCl3 と発光源物質のNdCl3 粉末
は、それぞれ市販のGd2 3 またはNd2 3 から常
法により合成した後に加熱溶融して塩素ガスを吹き込み
完全に脱水精製したものを用いた。またガラス形成助剤
のBaCl2 は320℃の乾燥容器中で2日間乾燥した
高純度の無水結晶を用いた。これらの原料粉末をGdC
3 74.8モル%、BaCl2 24.2モル%、Nd
Cl3 1.0モル%の割合に調合した混合粉末を透明石
英ガラス管(内径1.5mm,肉厚0.6mm,長さ200mm )に真空
封入してアンプルを作成し、これを加熱炉にて600℃
で15分間溶融させた。得られた融液をアンプルごと直
ちに250℃まで冷却し(冷却速度80 K/s)2時間の
アルニール後、そのまま1K/min で徐冷を行なってうす
水色の透明体を得た。得られた透明体を肉眼で確認した
ところ、内部および表面に結晶の析出は認められなかっ
た。また、この透明体をX線回折により測定したとこ
ろ、その散乱強度のグラフは図2に示すように、結晶体
に見られるような鋭いピークが認められず、ガラス質で
あることが確認された。さらに、この透明体の示差熱分
析曲線には図3に示すように250℃付近でガラス転移
点(Tg)が認められ、この測定からもガラス質であること
が確認された。
【0025】実施例2〜38 実施例1と同一のGdCl3 およびNdCl3 粉末を用
い、実施例1と同様に処理したSrCl2 及びCaCl
2 粉末を表1に示すモル比に調合し、この混合粉末を実
施例1と同様にして処理して以下のガラス材を得た。 GdCl3 −BaCl2 −NdCl3 GdCl3 −SrCl2 −NdCl3 GdCl3 −CaCl2 −NdCl3 GdCl3 −BaCl2 −SrCl2 −NdCl3 GdCl3 −SrCl2 −CaCl2 −NdCl3 GdCl3 −CaCl2 −BaCl2 −NdCl3 得られたガラス材は透明であり、肉眼で観察したとこ
ろ、内部にも表面にも結晶の析出は認められなかった。
実施例1と同様にして透明体がガラス体であることを確
認した。
【0026】
【表1】
【0027】発光スペクトルの測定 実施例1で得られたガラス材を石英アンプルから取り出
して長さ約5mmの円柱状に切断し、切断部を面研磨した
試料に波長590nmのチュナブルレーザ(20mW)を照射し
たところ、ガラス材内部で紫色に発光することが確認さ
れた。この発光スペクトルを図4に実線で示す。また、
同様に波長810nmの半導体レーザ(30mW)を照射したと
ころ、ガラス材内部で黄緑色に発光することが確認され
た。この発光スペクトルを図5に実線で示す。また、常
法に従って製造したフッ化物ガラス(52ZrF 4 ・20BaF
4 ・4LaF3 ・3AlF3 ・20NaF ・1NdF3 )を同一形状に作
製し、切断して面研磨して得た比較試料についても同様
に測定した。この結果を図4および図5の破線に示し
た。
【0028】図4および図5に示すように、実施例1で
得たガラス材は、810nmの励起光により530nm付近
(緑色域)および590nm付近(橙色域)の波長を有す
る蛍光を生じ、両波長域における発光強度はほぼ同程度
であり、従って、このガラス材は両色調が混合した黄緑
色に発光する。また、このガラス材は580〜600nm
の励起光によって360nm付近(紫外域)、390nm付
近および420nm付近(紫色域)の波長を有する蛍光を
生じ、紫色に発光する。なお、680〜695nm、62
5〜640nmの励起光によっても同様の蛍光波長が生じ
る。
【0029】一方、従来の上記フッ化物ガラスは、59
0nmの励起光による発光強度は全波長域に亘って極めて
低く、さらに810nmの励起光によっても緑色域(530n
m 付近)の発光強度は低く、むしろ緑色域よりも橙色〜
赤色域の発光が優勢である。因みに、実施例1のガラス
材の390nm付近の発光強度(励起波長590nm )は上記
フッ化物ガラスの約20倍、530nm付近の発光強度
(励起波長810nm )は上記フッ化物ガラスの約18倍で
ある。他の実施例の試料についても同様の発光スペルト
ルを測定し、この結果を表1に纏めて示した。いずれの
場合も緑色〜紫色の発光を有し、その強度は従来のフッ
化物ガラスの数倍〜20倍であった。
【0030】比較例1〜7 実施例で用いたものと全く同じ原料を表2に示すモル比
に調合して得た混合粉末を実施例1と全く同様の条件で
加熱溶融し、急冷して透明なガラス材を得た。得られた
透明体を肉眼で観察したところ、内部および表面に結晶
の析出は認められなかった。また、実施例1と同様にし
て透明体がガラス質であることを確認した。しかし、得
られたガラスを実施例1と同一の形状に切断して、同様
にスペクトル測定を行なったところ、390nm付近の発
光強度(励起波長590nm )は上記フッ化物ガラスの約1
/10であり、また530nm付近の発光強度(励起波長
810nm )は上記フッ化物ガラスの約1/10であった。
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】本発明の波長変換材はガラス材であるの
で、結晶体の波長変換材料よりも製造が容易であり、フ
ァイバー等の種々の形状の製品に加工することが可能で
ある。また、結晶体よりも希土類イオンの吸収がブロー
ドであるために、励起光の波長ゆらぎがあっても吸収効
率の変動が小さく、よって発光効率の変動が少ない。従
って、温度や電流等の影響により出力波長が変動しやす
い半導体レ−ザーを励起光として用いた場合でも、比較
的安定した出力が得られる。また、本発明ではガラス母
材として塩化Gdおよびアルカリ土類金属の塩化物を用
いており、ガラス転移点が200℃以上であるため、従
来の塩化物ガラス(ガラス転移点が175 ℃程度)に比べ
てガラス転移点が格段に高く、安定である。さらに本発
明の波長変換ガラス材は、最大の特長として、従来のフ
ッ化物系波長変換ガラス材よりも紫外域あるいは紫色〜
緑色域の光変換効率が各段に優れている。このためにデ
ィスプレイやアップコンバージョン方式による紫色〜緑
色レーザー等、幅広い分野への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る塩化Gd−塩化Ba−塩化Ndの
3元系ガラス化範囲を示すグラフ。
【図2】実施例1のガラス材のX線回折チャート。
【図3】実施例1のガラス材の示差熱分析曲線を示すグ
ラフ。
【図4】実施例1のガラス材と従来のフッ化物ガラスの
波長590nm の励起光に対する発光強度を示すスペクトル
図。
【図5】実施例1のガラス材と従来のフッ化物ガラスの
波長810nm の励起光に対する発光強度を示すスペクトル
図。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】塩化ガドリニウムをガラス形成剤とし、ア
    ルカリ土類塩化物をガラス形成助剤とする塩化物ガラス
    に、発光中心源の塩化ネオジムを含有させてなる波長変
    換ガラス材。
  2. 【請求項2】上記ガラス形成助剤が、塩化バリウム、塩
    化ストロンチウム、塩化カルシウムの1種または2種以
    上の組合せである請求項1の波長変換ガラス材。
  3. 【請求項3】塩化ガドリニウム41〜93モル%、塩化
    バリウム6〜49モル%、および塩化ネオジム0.01
    〜10モル%からなる請求項2の波長変換ガラス材。
  4. 【請求項4】塩化ガドリニウム48〜83モル%、塩化
    ストロンチウム15〜47モル%および塩化ネオジム
    0.01〜10モル%からなる請求項2の波長変換ガラ
    ス材。
  5. 【請求項5】塩化ガドリニウム51〜82モル%、塩化
    カルシウム16〜47モル%および塩化ネオジム0.0
    1〜10モル%からなる請求項2の波長変換ガラス材。
  6. 【請求項6】塩化ガドリニウム41〜90モル%、塩化
    バリウムと塩化ストロンチウムの合計量が6〜49モル
    %、および塩化ネオジム0.01〜10モル%からなる
    請求項2の波長変換ガラス材。
  7. 【請求項7】塩化ガドリニウム41〜90モル%、塩化
    バリウムと塩化カルシウムの合計量が6〜49モル%、
    および塩化ネオジム0.01〜10モル%からなる請求
    項2の波長変換ガラス材。
  8. 【請求項8】塩化ガドリニウム50〜83モル%、塩化
    ストロンチウムと塩化カルシウムの合計量が15〜47
    モル%、および塩化ネオジム0.01〜10モル%から
    なる請求項2の波長変換ガラス材。
  9. 【請求項9】塩化ガドリニウム42〜91モル%、塩化
    バリウムと塩化ストロンチウムと塩化カルシウムの合計
    量が7〜49モル%および塩化ネオジム0.01〜10
    モル%からなる請求項2の波長変換ガラス材。
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