JPH0739388A - ヘパリン結合性増殖因子の生産方法 - Google Patents

ヘパリン結合性増殖因子の生産方法

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JPH0739388A
JPH0739388A JP20568493A JP20568493A JPH0739388A JP H0739388 A JPH0739388 A JP H0739388A JP 20568493 A JP20568493 A JP 20568493A JP 20568493 A JP20568493 A JP 20568493A JP H0739388 A JPH0739388 A JP H0739388A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 肝実質細胞増殖因子(HGF)等のヘパリン
結合性増殖因子をコードする遺伝子を導入して形質転換
された細胞株を硫酸化多糖類またはそのアゴニストの存
在下において培養し、その培養液からヘパリン結合性増
殖因子を採取する。 【効果】 本発明の方法によれば、ヘパリン結合性増殖
因子の生産及び回収量を従来法よりも数倍高めることが
可能となり、該因子の医療分野での広範な利用が期待で
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はヘパリン結合性増殖因子
を生産する方法に関するものであり、詳しくは硫酸化多
糖類またはそのアゴニストの存在下においてヘパリン結
合性増殖因子を産生する形質転換細胞を培養することに
より、その培養上清から該増殖因子を高産生で効率よく
取得する方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】近年、
種々の細胞増殖因子がクロ−ニングされているが、それ
らの中で、ヘパリンに強い親和性を有する一群の増殖因
子が見出されている。これをヘパリン結合性増殖因子と
総称するが、この中には線維芽細胞増殖因子(FG
F)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、プレイオト
ロフィン、顆粒球/マクロファ−ジ・コロニ−形成刺激
因子(GM−CSF)、インタ−ロイキン3及び7、血
管内皮細胞増殖因子(VEGF)等、種々の既知または
未同定の増殖因子が含まれる(実験医学,(14),
1772(1991))。これらの因子は、ヘパリンや
ヘパラン硫酸に代表されるグリコサミノグリカンと結合
することが知られており、中でもFGFは、ヘパラン硫
酸プロテオグリカンとの結合により細胞表面や細胞外基
質に貯蔵されること、及びFGFの有する生物学的活性
がヘパリンによって調節され得ることが確認された(C
ell,64,841(1991))。最近、肝実質細
胞を生体内より取り出して生体外においてその増殖を促
進させうるヒト由来の蛋白性因子、即ちヒト肝細胞増殖
因子(以下「hHGF」と略す。)が劇症肝炎患者血漿
より見い出され(特開昭63−22526号公報)、さ
らにhHGF蛋白質をコ−ドするアミノ酸配列及びこれ
をコードする遺伝子(cDNA)の配列(特開平3−7
2883号公報)、さらにこのcDNAを用いたhHG
F蛋白質の生産方法及び形質転換体(特開平3−285
693号公報)が報告されている。かかる方法により生
産される組み換えhHGF蛋白質は、生体外において肝
実質細胞の増殖を促進する働きがみとめられている。ま
た、ヒトに限らずHGF蛋白は、ヘパリンに強い親和性
を有する上記ヘパリン結合性増殖因子の一種であること
が判明している。本発明者らは、標的細胞におけるHG
F結合・消費に硫酸化多糖類が及ぼす影響について調べ
たところ、HGFと種々の硫酸化多糖類とを混合するこ
とにより、HGFの標的細胞への結合および標的細胞に
よるhHGFの消費が強く抑制され、結果としてHGF
の作用が持続かつ安定化することを見出した(欧州公開
特許公報第517182号)。
【0003】一方、一般に増殖因子の生産手段として、
大腸菌などの微生物や哺乳動物由来細胞に該増殖因子の
cDNAを導入する方法が広く利用されている(Mol
ecular Cloning,2nd ed.,1
6.3−17.40,ColdSpring Harb
or Laboratory Press(198
9))。hHGFに代表されるような、糖鎖を持ち且つ
分子内に多くのジスルフィド結合を有する複雑な構造の
蛋白質の場合、専ら動物細胞がその生産に利用される。
その中でも特に汎用されているのがチャイニ−ズ・ハム
スタ−卵巣由来の上皮系細胞株CHOである。
【0004】他方、ヘパリン結合性増殖因子の標的細胞
上のレセプタ−分子も明らかになりつつあり、例えばH
GFのレセプタ−分子は癌原遺伝子c−met産物(C
−Met蛋白質)であることが判明しており(Scie
nce,251,802(1991))、また酸性型及
びアルカリ型FGFやKGFのレセプターとして既に数
種類のFGFレセプターファミリーが明らかにされてい
る(実験医学,10,25(1992))。さらにそれ
以外のレセプターとして、細胞表層のヘパラン硫酸プロ
テオグリカン(HSPG)も、分子内グリコサミノグリ
カンを介してヘパリン結合性増殖因子を捕捉することが
知られている(蛋白質・核酸・酵素,34,853(1
989))。HSPGは、極めて多くの細胞上に大量に
発現する。 さらに、一般に増殖因子が細胞上の特異的
レセプタ−に結合してその生理活性を惹起する際には、
増殖因子自身が速やかに細胞内に取り込まれ、消費され
ることが広く認められている。HGFにおいても、本発
明者らは、既に上皮系細胞株を用いた解析から、hHG
Fがレセプタ−に結合後極めて速く細胞内に取り込まれ
(インタ−ナリゼ−ション)(t1/2 :5−10分)、
分解を受けて培養上清中に放出される(デグラデ−ショ
ン)(t1/2 :30−60分)ことを明らかにしている
(J.Cell.Biochem.suppl 0(1
6partB),184(1992))。
【0005】従来の技術では、ヘパリン結合性増殖因子
のcDNAを有する発現ベクタ−を適当な宿主細胞に導
入して該増殖因子を生産した場合、発現した該増殖因子
の一部が産生細胞自身の増殖因子レセプタ−及びHSP
G分子を介して分解・消費されることを防げなかったた
め、産生細胞培養上清中から回収される該増殖因子の量
は比較的低値であった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、該増殖因
子産生細胞(形質転換体)の培養系に各種硫酸化多糖類
を添加し、該増殖因子産生量を比較検討した。例えば、
hHGFcDNAを導入したHGF産生CHO細胞(特
開平3−285693号公報)の培養液中に硫酸化多糖
類を1〜1000μg/mlの濃度で添加し、経時的に
培養上清を回収してHGF含量を定量した。その結果、
興味深いことに、硫酸化多糖類の添加によって約1.5
〜5倍のHGF産生増強が認められた。
【0007】一方、本発明者らは、HGF発現に用いた
宿主CHO細胞のHGF応答性を検討したところ、該宿
主細胞がC−Met蛋白質を持ち実際にHGF添加によ
ってDNA合成が促進されること、及び宿主細胞がHG
Fを消費・分解することを見出した。さらに、本発明者
らは、宿主細胞のHGF結合・分解に及ぼす硫酸化多糖
類の影響について調べたところ、HGFと硫酸化多糖類
とを混合することにより、HGFの宿主細胞への結合お
よび宿主細胞によるHGFの消費が強く抑制されること
を見出した。
【0008】以上の結果から、HGF産生細胞培養系に
おいて、硫酸化多糖類を培養系に添加することで産生細
胞自身によるHGF結合・消費・分解が回避され、培養
上清からのHGF回収量が大幅に増強することが判明
し、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明の
要旨は、ヘパリン結合性増殖因子をコードする遺伝子を
導入して形質転換された細胞株を硫酸化多糖類またはそ
のアゴニストの存在下において培養し、その培養液から
ヘパリン結合性増殖因子を採取することを特徴とするヘ
パリン結合性増殖因子の生産方法、及びヘパリン結合性
増殖因子をコードする遺伝子を導入して形質転換された
細胞株の培養液中に硫酸化多糖類またはそのアゴニスト
を共存させることを特徴とするヘパリン結合性増殖因子
の分解抑制方法に存する。
【0009】以下、本発明につき詳細に説明する。本発
明で定義されるヘパリン結合性増殖因子とは、硫酸化多
糖類に親和性を有する全てのヘパリン結合性増殖因子が
該当する。具体的には、全アミノ酸配列が明らかとなっ
ている酸性型FGF、アルカリ型FGF(Method
s inEnzymology,147,120(19
87))、KGF(Science,245,752
(1989))、HGF等の蛋白性因子等が挙げられ
る。
【0010】本発明で使用する該増殖因子産生細胞は、
その表層にHSPGに代表される硫酸化多糖構造を有す
る細胞で、かつ組換え法により上記のような増殖因子c
DNAを導入されたものである。具体的には、特開平3
−285693号公報に記載された方法に従いhHGF
をコ−ドするcDNAを含む発現ベクタ−を構築し、そ
の発現ベクタ−をCHO細胞等の宿主に導入した産生株
などが挙げられる。かかるHGF産生細胞系では、硫酸
化多糖類添加によって約1.5〜5倍以上のHGF回収
増大が認められる。かかる細胞株の培養は、常法により
浮遊培養または付着培養で行うことができる。培地とし
ては、MEM、RPMI−1640等が使用され、5−
10%血清の存在下、もしくは適当量のインスリン、デ
キサメサゾン、トランスフェリン等の存在下において培
養する。
【0011】本発明において、上記ヘパリン結合性増殖
因子を産生する形質転換細胞培養系に添加する硫酸化多
糖類としては、天然グリコサミノグリカンを含むプロテ
オグリカン、グリコサミノグリカン、グルカン、それら
の誘導体が挙げられる。硫酸化多糖類は、糖がグリコシ
ド結合によって脱水縮合して生じる炭水化物、すなわち
グリカンに硫酸基が付加したものであり、かかる多糖類
とは、グリコサミノグリカンのごとく二糖類単位が繰り
返してできた構造を有し、その二糖類の1つがグルコサ
ミンまたはガラクトサミンから成るもの(生命の科学,
39(4),306(1988))や、グルカンのよう
に多糖類が硫酸エステル化されたもの、さらにはこれら
の誘導体が含まれる。具体的には、例えばコンドロイチ
ン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫
酸、ヘパリン、デキストラン硫酸等が挙げられる。また
これら硫酸化多糖類のアゴニストも、本発明の培養系に
添加することができる。
【0012】上記硫酸化多糖類またはそのアゴニスト
は、ヘパリン結合性増殖因子を産生する細胞培養液中に
少なくとも1種類添加される。添加量としては、産生細
胞の増殖に強い影響を与えない範囲であるならば特に制
限はされないが、通常1〜1000μg/ml、より好
ましくは10〜100μg/mlの範囲で好適に利用さ
れる。また添加する時期は、通常培養の当初から加え、
培地を交換する毎に新たに添加する方法が採用される
が、培養の途中で加えても差し支えない。
【0013】かかる培養により、ヘパリン結合性増殖因
子はその形質転換細胞培養系の培養上清中に産生され、
従ってこの培養上清から目的とするヘパリン結合性増殖
因子を常法に従って分離・精製することができる。具体
的には、培養上清を各種のクロマトグラフィー、例えば
S−セファロース、硫酸化セルロファイン等の使用によ
り容易に単離・精製することができる。
【0014】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、その要旨を越えない限り、以下の実施例に
限定されるものではない。 実施例1 CHO細胞上のHGFレセプタ−の検出 精製された組換えhHGF標品(特開平3−72883
号公報に記載の方法に従って調製)を、クロラミンT法
(Nature,194,495(1962))にてヨ
−ド標識した。すなわち、100μlの0.5M 塩化
ナトリウム、0.5M リン酸緩衝液(pH7.4)に
溶解したhHGF 20μgに1mg/ml クロラミ
ンT 100μlを添加して反応を進行させ、次いで
2.5mg/ml ピロ亜硫酸ナトリウム 100μl
を加えて反応を停止した。反応液を0.25% ゼラチ
ン、5mM ヨウ化カリウム含有PBS(−)にて平衡
化したセファデックスG−25(ファルマシア社)カラ
ムに添加し、標識されなかったヨ−ドを除いた。 125
標識hHGF(以下、「標識hHGF」と略す)は、
0.2μmフィルタ−を通過させて無菌化し、分注して
使用時まで−20℃にて保存した。
【0015】底面積78.5cm2 のプラスチックディ
ッシュ(コ−ニング社)にCHO細胞を培養し、ほぼ飽
和密度に達した(セミコンフレント)ものを実験に使用
した。細胞をディッシュに付着させた状態で、0.25
% ゼラチン、25mM ヘペス含有DMEM培地(ギ
ブコ社)pH7.4(以下、「結合培地」と略す)にて
3回洗浄し、次いで0−200pM標識hHGFを含む
結合培地10mlと共に4℃にて4時間ゆるやかに振と
う培養した。対照として、200pM標識hHGFにさ
らに2nM非標識hHGFを加えたディッシュも用意し
た。上清を除去し、氷冷結合培地、次いで氷冷PBS
(−)にて各4回洗浄後、5mlの架橋緩衝液(100
μg/ml ビススベレ−ト含有140mM 塩化ナト
リウム、1mM 塩化マグネシウム、10mMリン酸ナ
トリウム(pH8.3))中で4℃にて30分間反応さ
せて、標識hHGFと細胞表面のhHGF結合蛋白とを
化学架橋した。5mlの25mM トリス−塩酸緩衝液
(pH7.4)、140mM塩化ナトリウム、1mM
EDTAを添加して反応を停止させた後、細胞をスクレ
−パ−にて剥離し、400μlの可溶化液(50mM
トリス−塩酸(pH7.4)、140mM 塩化ナトリ
ウム、1% ノニデットP−40、1mMEDTA、2
mM フェニルメチルスルフォン酸フルオライド)を加
え、氷上で1時間反応させて細胞を可溶化した。細胞可
溶化液から、12000×g,4℃、30分間の遠心分
離にて上清を得て、その一部を免疫沈降法、電気泳動及
びオ−トラジオグラフィーに供した。
【0016】上記細胞可溶化画分から、HGFの機能的
レセプタ−分子の一つとして知られるc−Met蛋白質
を分離する目的で、免疫沈降を行った。すなわち、細胞
可溶化液に5μlの抗マウスc−Met抗血清(Eu
r.J.Biochem.,204,857(199
2))と20μlのプロテイン−A セファロ−ス(フ
ァルマシア社)を加えて、c−Met蛋白質/HGF複
合体を免疫沈降させた。沈降物は、SDS−サンプル緩
衝液(0.1M トリス−塩酸(pH6.8)、10%
グリセロ−ル、1% ドデシル硫酸ナトリウム(SD
S))中で煮沸後、6% ポリアクリルアミド濃度の非
還元条件でのSDS−ポリアクリルアミド電気泳動に供
し、ゲルを固定・乾燥後、オ−トラジオグラフィにて標
識hHGFの結合する蛋白質を検出した。
【0017】図1に結果を示す。図1においてレ−ン
1、2、3、4はそれぞれ標識hHGF添加量50p
M、100pM、200pM、200pM+非標識hH
GF2nMのサンプルの結果を表す。左側の数字は、分
子量マ−カ−の移動度をキロダルトン(kDa)で示し
てある。非還元下では70kDa付近に標識hHGF単
独のバンドを認め、さらに250kDa付近に特異的バ
ンドを検出した。このバンドは抗c−Met抗体で特異
的に沈降すること、hHGFの分子量を差し引くと約1
80kDaの大きさであることから、hHGFとc−M
et蛋白質の複合体であると結論される。
【0018】以上の結果から、hHGF産生細胞株の親
株であるCHO細胞上には、既にHGFの機能的レセプ
タ−の構成分子として知られるC−Met蛋白質が存在
し、実際にhHGFがCHO細胞表面のc−Met蛋白
質に特異的に結合することが判明した。
【0019】実施例2 CHO細胞培養系における添加
hHGF分子の残存量の測定 次にCHO細胞におけるhHGFの分解速度を調べる目
的で、以下の実験を行った。すなわち、培養上清中に一
定量のhHGFを添加し、経時的に上清中の残存HGF
量をエンザイムイムノアッセイ(ELISA)法にて測
定し、硫酸化多糖類の有無によるHGF分解速度の違い
を比較検討した。
【0020】CHO細胞を0.02%トリプシン−ED
TA(エチレンジアミン四酢酸)含有の10mM リン
酸緩衝液−生理食塩水 pH7.4(PBS(−))に
て剥離し、低速遠心にて3回洗浄後、細胞濃度5×10
5 個/mlとなるよう10%ウシ胎児血清(FBS)含
有eRDF培地(極東製薬社)にて懸濁した。この細胞
液を、1mlずつ12ウェルマイクロプレ−ト(コスタ
−社)に添加して、5%炭酸ガス含有空気気相下、37
℃で1昼夜培養した。16時間後、培養ウェルの培養液
を除き、PBS(−)にて2回洗浄後、2μg/mlの
ヒトリコンビナントHGFを含む新鮮な培地を1mlず
つ添加した。この時、一部のウェルには最終濃度100
μg/mlとなるようヘパリン(分子量4000−60
00、シグマ社)を加えた。5%炭酸ガス含有空気気相
下、37℃で培養を続け、1、2、5、24、68時間
後に50μlずつ上清を採取して、ELISA法にて上
清中の残存HGF量を測定した。上清は、測定直前まで
−80℃にて凍結保存した。 上記被検培養上清中の残
存HGF量を、hHGF特異的サンドイッチELISA
法にて測定した。すなわち、被検上清を0.1% CH
APS、0.4M塩化ナトリウム、0.1% ウシ血清
アルブミン(BSA)(シグマ社、RIAグレ−ド)、
0.05% Tween20含有10mM リン酸緩衝
液(pH7.4)にて50、100、200倍に希釈し
た。ELISA用プレ−トとして、96ウェルマルチプ
レ−ト(ヌンク社、ELISA用)に予め抗hHGFモ
ノクロ−ナル抗体を吸着させ(0.5μg/50μl−
50mM 炭酸緩衝液(pH9.6)/ウェル)、次い
で1% BSA、0.05% アジ化ナトリウム含有P
BS(−)を1昼夜以上反応させてウェル壁をブロッキ
ングしたものを用いた。
【0021】被検希釈液をELISAプレ−トウェルに
50μlずつ加え、4℃で1昼夜静置した。翌日、0.
05% Tween20含有PBS(−)(PBST)
にてウェルを4回洗浄後、二次抗体としてペルオキシダ
−ゼ共役化抗hHGFポリクロ−ナル抗体を添加し、室
温にて2時間以上反応させた。二次抗体は、ヒトリコン
ビナントHGFを免疫したウサギ血清よりプロテインA
カラムにてアフィニティ−精製し、過ヨウ素酸法にてペ
ルオキシダ−ゼを共役化して(J.Histoche
m.Cytochem.,22,1084(197
4))作製した。
【0022】インキュベ−ト後、ウェルをPBSTにて
6回洗浄し、発色液(0.04%オルソフェニレンジア
ミン、0.02% 過酸化水素水含有リン酸クエン酸緩
衝液(pH5.0))を50μl/ウェル添加して、室
温で数分−数十分放置した。適度な発色の得られた時点
で4.5N硫酸を加えて(50μl/ウェル)反応を停
止し、イムノリ−ダ−(日本インタ−メッド社)にて4
90nmの吸光を測定した。検量線作成のために、予め
濃度を吸光係数から算出しておいたhHGF標準品を0
−40ng/mlの範囲で段階希釈して使用した。な
お、ここで使用したELISA法がHGF分解産物を全
く検出しないことを、酵素消化後hHGFの電気泳動の
バンドとの対応から確認した。
【0023】図2に結果を示す。横軸は培養開始後の時
間を、縦軸は培養上清中のhHGF(μg/ml)を表
している。培養上清中にヘパリン無添加群(●)では速
やかにhHGF量が減少したのに対し、添加群(■)で
はhHGFの減少速度が極めて遅延することが確かめら
れた。グラフの傾きから、上清中hHGFの減少速度t
1/2 は、ヘパリン無添加群で約12時間、添加群で約1
35時間と算出された。 以上の結果から、酸化多糖類
の一種であるヘパリンを培養液に添加することによっ
て、hHGFのCHO細胞における分解が著しく抑制さ
れることが判明した。
【0024】実施例3 hHGF産生CHO細胞株のh
HGF産生に及ぼすヘパリンの影響 実際のhHGF産生株において培養液中に硫酸化多糖類
を加え、hHGFの回収量を検討した。特開平3−28
5693号公報に記載の方法に従って、CHO細胞にh
HGFcDNAを含む発現ベクタ−を導入し、hHGF
を恒常的かつ安定して産生する形質転換hHGF生産株
KBE、KT4−3およびGE43−19を得た。hH
GF生産株を細胞濃度4×104 個/mlで5%FBS
含有eRDF培地に懸濁し、1mlずつ12ウェルマイ
クロプレ−トに播種した。ここに最終濃度0−1000
μg/mlになるようヘパリン(シグマ社)を加えて培
養を開始し、一定時間後に上清の一部を採取してhHG
F特異的ELISA法(実施例2参照)にてhHGF含
量を測定した。
【0025】図3及び図4に結果を示す。図3は、KB
E細胞培養開始後2−3日毎に培地交換して上清を採取
し、培養11日目まで経時的にhHGF量を追跡したも
のである。横軸に培養日数を、縦軸に培養上清中のhH
GF累積量をELISAユニット(U;OD490 ×希釈
倍率)で示してある。本条件下では、培養4日目に細胞
はほぼ飽和密度に達し、以降徐々に細胞数を減じて培養
13日目には細胞生存率は30%以下であった。ヘパリ
ン添加群において1μg/mlという低濃度の添加から
顕著なhHGF量の上昇が認められ、10−100μg
/mlヘパリン存在下でいずれの培養期間においても2
−3倍のHGF量の増加が明らかとなった。図4は、K
BE細胞が飽和密度に達した直後に培地交換をし、2日
後の上清を採取してhHGF含量を測定したものであ
る。横軸はヘパリン濃度を、縦軸はhHGF含量をヘパ
リン無添加群を1.0としたときの相対値で表す。ヘパ
リン添加群では、無添加群に比べて10μg/mlの添
加で既に2倍以上のhHGF量の上昇が認められ、10
00μg/mlまでの添加において2−2.5倍のhH
GF量上昇が示された。
【0026】次に、3種類のhHGF生産株において、
ヘパリン添加による上清中hHGF量の変化を測定した
結果を表1に示す。被検上清は、細胞飽和直後に培地交
換して2日後のものを測定した。ヘパリン無添加群のh
HGF含量を1.00として、ヘパリン10μg/ml
添加群のhHGF含量を相対値として示した。いずれの
株においても、2−5倍のhHGF回収量の増大が認め
られた。
【0027】
【表1】
【0028】以上の結果、hHGF産生細胞株の培養液
中にヘパリンを添加することにより、回収されるhHG
F量が数倍に増大することが判明した。
【0029】実施例4 hHGF産生CHO細胞株のh
HGF産生に及ぼす各種硫酸化多糖類の影響 次に、ヘパリン以外の硫酸化多糖類についても同様の検
討を行った。KBE株を4×105 個/ml/ウェルで
12ウェルマイクロプレ−トに播種し、培養5日後の上
清を採取して、上述のELISA法にて培養上清中のh
HGF量を測定した。添加多糖類として、ヘパリン、ヘ
パラン硫酸、デキストラン(以上シグマ社)、デキスト
ラン硫酸及びコンドロイチン硫酸(以上生化学工業社)
を用いた。
【0030】表2に結果を示す。ヘパリン、ヘパラン硫
酸、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸のいずれに
おいてもhHGF含量の増大が認められた。ヘパリン、
ヘパラン硫酸、デキストラン硫酸では10−100μg
/mlの添加範囲で最大効果が得られ、2倍ないしそれ
以上の上昇が示された。一方、コンドロイチン硫酸では
効果は認められるものの、その増大効果はやや低く、有
効必要用量も高用量側にシフトしていた。硫酸基を持た
ないデキストランでは、全く効果が認められなかった。
【0031】
【表2】
【0032】KBE株は、マイクロキャリア−(ファル
マシア社)を用いた浮遊培養法によって数カ月以上HG
F産生を維持させることが可能であるが、その場合も、
硫酸化多糖類は同様の効果を数カ月間維持した。種々の
培養形態・培養スケ−ルの検討においても、硫酸化多糖
類の作用は付着培養(Tフラスコ、ディッシュ、ロ−ラ
−ボトルなど)・浮遊培養(マイクロキャリア−を用い
た、あるいは用いないスピナ−培養)に関わりなく、ま
た96ウェルプレ−トのマイクロウェル培養から数リッ
トル以上の培養規模において、同様に認められた。
【0033】以上の結果から、HGF生産細胞の培養系
に種々の硫酸化多糖類を加えることにより、回収される
HGF量が2倍ないし数倍に増大することが判明した。
この効果は低用量の硫酸化多糖類添加で生じ、培養の方
法や硫酸化多糖類の種類に関わりなく、培養数時間から
数カ月間の長期に渡って維持され、HGF生産株で広く
認められた。この効果の原理は、硫酸化多糖類がその硫
酸基を介してHGFを結合し、HGF産生細胞上のレセ
プタ−(c−Met蛋白質及びヘパラン硫酸プロテオグ
リカンなど)へのHGF結合・消費・分解を著しく遅延
させるためと理解された。
【0034】
【発明の効果】本発明の生産方法によれば、ヘパリン結
合性増殖因子の生産及び回収量を数倍に高めることが可
能であり、その結果、該増殖因子の生産におけるコスト
を著しく軽減できるようになった。本発明を基にヘパリ
ン結合性増殖因子を生産することにより、医療分野での
広範な利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】CHO細胞におけるhHGF/c−Met蛋白
質複合体の形成についてSDS−ポリアクリルアミド電
気泳動の結果を示す、電子顕微鏡写真で表した図面であ
る。
【図2】CHO細胞におけるhHGFの消費速度につい
て、ヘパリン存在下及び非存在下での比較を示した図面
である。
【図3】hHGF生産株における培養上清中のhHGF
量について、ヘパリン存在下及び非存在下での比較を経
時的に示した図面である。
【図4】hHGF生産株における培養上清中のhHGF
量について、ヘパリン添加用量の影響を示した図面であ
る。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヘパリン結合性増殖因子をコードする遺
    伝子を導入して形質転換された細胞株を硫酸化多糖類ま
    たはそのアゴニストの存在下において培養し、その培養
    液からヘパリン結合性増殖因子を採取することを特徴と
    するヘパリン結合性増殖因子の生産方法。
  2. 【請求項2】 硫酸化多糖類またはそのアゴニストが、
    硫酸基を含むプロテオグリカン、グリコサミノグリカ
    ン、グルカン、それらの誘導体またはそれらのアゴニス
    トから選ばれることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 ヘパリン結合性増殖因子をコードする遺
    伝子を導入して形質転換された細胞株の培養液中に硫酸
    化多糖類またはそのアゴニストを共存させることを特徴
    とするヘパリン結合性増殖因子の分解抑制方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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