JPH0734009B2 - 大型液体クロマトグラフ装置の運転方法 - Google Patents

大型液体クロマトグラフ装置の運転方法

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JPH0734009B2
JPH0734009B2 JP61181732A JP18173286A JPH0734009B2 JP H0734009 B2 JPH0734009 B2 JP H0734009B2 JP 61181732 A JP61181732 A JP 61181732A JP 18173286 A JP18173286 A JP 18173286A JP H0734009 B2 JPH0734009 B2 JP H0734009B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はクロマトカラムの分離性能を最大限にかつ安定
して発揮させるために、カラム内の温度分布を少なくす
るようにした大型液体クロマトグラフ装置の運転方法に
関するものである。詳しくは、例えば直径が40mm以上の
高性能の大型カラムを備えるクロマトグラフ装置に適用
するに好適な方法に関するものである。
[従来の技術] 内部に充填剤を充填したクロマトカラムを有する液体ク
ロマトグラフ装置が、分析機器のほか各種工業用分離精
製装置として広く用いられている。
従来、小径の分析カラムや分取カラムでは、カラムを恒
温槽に入れて温度制御を行っているが、例えば直径が40
mmを超える大型カラムでは、ほとんど行われていない。
増して、カラム内の温度分布をそのカラム性能に応じて
制御する方式を取った温度制御法は全く行われていな
い。
[発明が解決しようとする問題点] 上記のような大型カラムを備えた液内クロマトグラフ装
置において、カラム内の温度分布が大きくなると、この
クロマトグラフ装置による分離の再現性が悪くなるとい
う問題がある。この理由は次のように考えられる。
大型カラムでは、カラム壁面から中心部分までの距離が
長いため、カラムの外部温度と移送相溶媒のカラム入口
温度との温度差により、カラム内部に影響を及ぼす程度
の温度分布が生じる。即ち、充填層内に温度分布が生ず
ると、充填層が流れる移動相溶媒の粘度が変化し、粘性
抵抗が変化する。その結果、カラム内を進む試料バンド
の移動速度に差が生じるようになり、正常な分離性能を
発揮することができなくなる。
[問題点を解決するための手段] 本発明の大型液体クロマトグラフ装置の運転方法は、ク
ロマトカラム外周面をジャケットで囲んでこのジャケッ
ト内に流体を供給し、カラム壁付近とカラム中心部付近
とにおける試料バンドの移動速度差を小さくするか又は
解消するために該流体の温度とカラム内に通液される移
動相溶媒の温度とを異ならせ、且つ該流体の温度と移動
相溶媒の温度との差を目標とする理論段数に応じて所定
範囲内にすることを特徴とするものである。
[作用] 本発明においては、カラム内部の温度分布が小さくな
り、カラム内部を進む液の粘度がカラム断面において均
一化し、カラム内を進む試料バンドの移動速度等が均等
になり、分離性能が最大限にかつ安定して発揮されるよ
うになる。
[実施例] 以下図面に示す実施例を参照しながら本発明について更
に詳細に説明する。
第1図は本発明の実施例方法が採用される大型液体クロ
マトグラフ装置の系統図であり、クロマトカラム1、0
温度調整装置である恒温槽A、B、移動相溶媒槽14より
主として構成されている。本実施例においてクロマトグ
ラフ10は、第2図にも示すように、充填剤が充填された
筒状のカラム本体16と、このカラム本体16の上端を封ず
るトップフランジ18、トップフランジ18とカラム本体16
とを止め付けるクランプ20、カラム本体16の底部を支持
するベースブレート22、カラム本体16内に挿入された充
填剤押圧用のピストン24、このピストン24を押圧するた
めのシリンダ装置26、カラム本体16の外周面を囲むジャ
ケット28、ジャケット28の底部をシールするグランドパ
ッキン30、カラム本体16上部の揺れ止め32等を備えてい
る。ジャケット28は、その外面側がステンレスよりな
り、内部がグラスウールで裏打ちされた構成となってお
り、保温可能とされている(以下、保温ジャケット)。
該保温ジャケット28の内部とカラム本体16の外周面との
間、即ち、ジャケット内に流体(本実施例では水)を流
通させるための流通部34が形成されている。また保温ジ
ャケット28には、高さ方向及び周方向に複数個の温度セ
ンサ36が設けられており、該流通部34内を流れる流体の
温度を多数箇所で検出可能としてある。保温ジャケット
28の上部は容器形となっており、その底面部からはオー
バーフロー管3が立ち上げられ、このオーバーフロー管
38と恒温槽Bとが配管40によって接続されている。ま
た、この保温ジャケット28の上部容器形状部には保温ジ
ャケット上蓋42が被せられている。
更に、保温ジャケット28の底部には流入口44が設けら
れ、上部には流出口46が設けられている。流入口44は、
配管48を介して恒温槽Bに設けられた流体供給装置であ
るポンプ68aに接続されており、流出口46はバルブ50及
び配管52及び前記配管40を介して恒温槽Bの水受入側に
接続され水が循環可能とされている。
なお、本実施例では循環可能としているが、一過式ある
いは流通部に流体を保持する等、カラムを保温できれば
良い。
符号54はトップフランジ18に接続された溶離液の出口配
管である。
前記ピストン24には、カラム本体16内外を連通するため
の移動相溶媒入口56が設けられており、配管58が接続さ
れている。配管58は、移動相溶媒槽14にその先端が浸漬
されており、その途中はループ部58aとなって恒温槽A
内に浸漬されると共に、恒温槽Aと移動相溶媒槽14との
間の部分では試料ループ60及び移動相溶媒供給装置であ
るポンプ62が設けられている。
なお、符号64は恒温槽A内の熱を移動相溶媒槽14に伝達
させるための伝熱管であり、その移動相溶媒槽14内に浸
漬された部分がループ状となっており、ポンプ66によっ
て恒温槽A内の水を循環させ、この循環水の保有熱エネ
ルギを移動相溶媒槽14内の移動相溶媒槽14内の移動相溶
媒に伝達するように構成されている。
また符号68、69、70、72、74、76はそれぞれ温度センサ
であり、配管40、54、58、恒温槽A、配管64、移動相溶
媒槽14内を流れる流体の温度を検出可能としている。
このように構成された大型液体クロマトグラフ装置にお
いて、カラム本体16内に充填された充填剤に展開してい
る被分離物質は、移動相溶媒槽14から配管58を経て供給
される移動相溶媒(なおこの移動相溶媒はその途中にて
恒温槽Aで所定温度に加温される)により溶離され、配
管54からカラム本体16外に抜き出される。
なお第1、2図の装置では、カラム本体16の頂部をも保
温ジャケットで覆う構成としているが、第3図に示す如
く、保温ジャケット28がカラム本体16の側面のみを覆う
構成としてもよい。第3図で符号78はカラムヘッドの取
外しの作業性を高めるためのクランプ受、80はシール用
をOリングを示す。
次に、上記第1図の大型液体クロマトグラフ装置を用い
た分離操作例について説明する。
まず、主な試験条件を次の如く設定して、装置及び操作
の準備を行った。なお、本明細書において、MeOHはメタ
ノールを示す。
カラム 110mmφ×850mml 充填剤 ODS 10〜25μm 充填料 4.8kg 試 料 ナフタレン 1%溶液10ml 移動相溶媒 MeOH/H2O 80/20 移動相溶媒流量 190ml/min 検 出 UV検出器 254nm 移動相溶媒液温 26〜27℃ カラムジャケット水温 19〜32℃ 次いで、下記の手順に従って分離操作を行った。
恒温槽Aによって制御される移動相溶媒の温度は26℃〜
27℃の間でほぼ一定に保つ。恒温槽Bによって制御され
るカラムジャケット内の水温を19℃〜32℃の間で変化さ
せ、カラムの外側の温度と移動相溶媒のカラム入口温度
に差をつけた。(なお、カラムジャケット内の水温を変
化させているが、移動相溶媒の温度を変化させても良
い。ただし、移動相溶媒の温度を変化させると粘性変化
等あるため、ジャケット内水温変化させるのが好まし
い。) この様にして、カラム性能に与える影響を測定した。カ
ラム性能は理論段数(段/m)で表わされるが、温度分布
の値の表示が難しいため、この代替として次のΔTの値
を用いた。
ΔT=(入口の移動相溶媒温度) −(カラムジャケット平均水温) 移動相溶媒槽にMeOH/H2O(体積比)が80/20のものを用
い、線流速を約2cm/minに設定し、カラムジャケット水
温を変化させて性能測定を行った。その結果を第4図に
示す。
第4図より、ΔTの変化に対して理論段数が大幅に変化
することがわかる。理論段数が15,000を超えるように高
くなり、かつ安定な領域はΔTが0℃〜+2℃の範囲に
あり、ΔTの幅がかなり狭くなっている。ΔTが+2℃
より大きくなると試料バンドの一部が遅れる様になり、
得られるクロマトグラフは、ピークの後半部分にショル
ダーが発生したり、イーク割れが起こったりする。一
方、ΔTが0℃以下になると、バンドの一部が早く溶出
する様になり、ピークの前半部分にショルダーやピーク
割れが発生する。
この実験例より、カラム外周囲に通液する水温と移動相
溶媒液の液温とに所定範囲内の温度差をつけることによ
り、高性能な分離を安定して行えることが認められる。
なお、第4図で注目すべき点は、ΔTが+1℃を対称軸
として、グラフが左右対称になっている点である。理想
的に考えると、カラムの外部温度と内部温度の温度差が
全くない状態、即ち、ΔT=0が対称軸となるはずであ
る。この+側へのずれはカラム充填槽の特性によるもの
と推察される。特性の中では、充填密度が挙げられる。
カラム壁付近の充填槽の充填密度がカラム中心部よりも
低い密度になっているとすると、温度差のない状態(Δ
T=0)で、試料バンドの一部が中心部より早く移動す
ることになる。この早む進む分のバンドがΔT=+1℃
の温度差を付けることによって正常な状態に引き戻され
るものと推察される。
なお、このような充填密度による対称軸の変化は+側に
限られるものではなく、−側になることもある。
例えば、カラム内径より液の分散板、集水板の径が小さ
いカラムを用いる場合、分散板に接する充填層へは試料
は同時に拡散されるが、カラム壁近傍の充填層は、分散
板に直接接していないので、試料の拡散に遅れが生じ
る。
従って、その分、カラム壁近傍の試料バンドは中心部に
比べ移動速度が小さくなる。このようにしてカラム中心
付近のバンドが早く進み、カラム壁近傍が遅れる場合に
は、対称軸は−側に変化することになる。
このように対称軸が−側に変動する場合にはΔTを−
(マイナス)とする。即ち、カラムジャケット平均水温
を移動相溶媒温度よりも高くすることにより、試料バン
ドがカラム壁付近で中心部よりも遅く移動することが解
消され、カラム壁付近と中心部付近とで試料バンドの移
動速度が同等になり、この結果、高性能な分離を安定し
て行なえることになる。
以上の通り、移動相溶媒温度とジャケット内の水温に所
定範囲内の温度差をつけることにより、良好な分離操作
が行えるのであるが、作成されたカラムの本来の分離性
能を得るために収めるべき温度範囲は、第4図の如き実
験結果に基いて、種々の理論段数のカラムに対して、そ
れらの本来の理論段数と収めるべき温度範囲との関係を
示す実験式を求めておくのが好適である。
このような実験式を、第4図の実験結果に基いて求めた
例を以下に説明する。
移動相溶媒の粘度をη(c.p.)、温度による移動相溶媒
の粘度変をdη/dt(c.p./℃)とする(この値は移動相
溶媒の種類、組成比により変化する)。またカラムの特
性により影響をAとすると、温度制御範囲の設定は
(1)式の様になる。
但し、通常Aは−2.0≦A≦2.0の範囲で単位は℃であ
る。Bはカラム性能により変化する定数で、単位はc.p.
である。流速は、そのカラムの最適流速とする。
Bの値をカラム性能により変化させた理由は、第4図の
関係からである。つまり、第4図で理論段数が低い状
態、例えば、N=2000段/mのところで、ΔToptの幅を見
ると、かなり広いが、N=15000段/mでは狭くなってい
る。更に、N=30000段/mの高理論段数のカラムを考え
ると、ΔToptの幅がより狭くなると予想される。従っ
て、Bの値を第1表の様に決めた。
これに基いて、異なるカラム性能(理論段数)に対応す
るΔToptの範囲を、(1)式から求めた結果を第2表に
示す。
なお、第2表は移動相溶媒をMeOH/H2Oを80/20としたと
きの値であり、A=1.0(℃)、dη/dt=0.0(c.p./
℃)とした。
従って、第1図の装置で、理論段数が15,000を超えるよ
うな例えば20,000段/m〜30,000段/mの高性能分離を行な
う場合には、0<ΔT<2とするのが好適であることが
分る。
第5図は、第1図の装置において、上記温度差が+1℃
となるように分離操作を行った場合の理論段数を示すも
のであり、同一試験を繰り返し行っても、ほぼ同じ理論
段数となり、極めて再現性が良い。
第6図は、ジャケット内の通水温度の制御を行わなかっ
た例であり、理論段数は著しくばらついていることが認
められる。なお、第5、6図のその他の実験条件は、第
4図の実験条件と同様である。
[発明の効果] 以上の通り、本発明によれば、高性能の大型カラムの性
能再現性が改善され、高理論段数を安定に保つことが可
能とされる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例方法が適用される大型液体クロ
マトグラフ装置の構成を示す系統図、第2図は同要部拡
大断面図、第3図は異なる実施例に用いられるカラム断
面図、第4図、第5図及び第6図は実験結果を示すグラ
フである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】クロマトカラム外周面をジャケットで囲ん
    でこのジャケット内に流体を供給し、カラム壁付近とカ
    ラム中心部付近とにおける試料バンドの移動速度差を小
    さくするか又は解消するために該流体の温度とカラム内
    に通液される移動相溶媒の温度とを異ならせ、且つ該流
    体の温度と移動相溶媒の温度との差を目標とする理論段
    数に応じて所定範囲内にすることを特徴とする大型液体
    クロマトグラフ装置の運転方法。
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