JPH07280941A - 脳腫瘍の陽電子断層撮影方法 - Google Patents

脳腫瘍の陽電子断層撮影方法

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JPH07280941A
JPH07280941A JP11060194A JP11060194A JPH07280941A JP H07280941 A JPH07280941 A JP H07280941A JP 11060194 A JP11060194 A JP 11060194A JP 11060194 A JP11060194 A JP 11060194A JP H07280941 A JPH07280941 A JP H07280941A
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JP
Japan
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choline
labeled
pet
brain tumor
brain
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JP11060194A
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Toshihiko Hara
敏彦 原
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Japan Steel Works Ltd
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Japan Steel Works Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 脳腫瘍の陽電子断層撮影(PET)による画
像診断において、異常部位の輪郭を正確に描き出し、異
常部位の生物学的性質についての的確な情報を与えるよ
うな画像を提供する。 【構成】 トレーサーとして11C標識コリンを用いて
脳腫瘍の陽電子断層撮影を行う。 【効果】 腫瘍組織と正常脳組織のコントラストが著し
く明瞭になり鮮明なPET画像が得られるため、信頼性
の高い脳腫瘍の画像診断が可能になる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は脳腫瘍の陽電子断層撮影
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】陽電子断層撮影(PET)は脳腫瘍の患
者の診断に有用であることが知られている。診断時にお
いて、PETは腫瘍の部位、増殖速度、及び患者の予後
に関する情報を提供する。また治療後においても、PE
Tによって残存腫瘍の有無、増殖速度の推移、腫瘍の進
展等が判定できるし、また再発病巣と壊死病巣の鑑別が
可能である。PETの画像は、X線断層撮影(CT)や
核磁気共鳴断層撮影(MRI)の画像に比べて空間分解
能が低い(半値幅が大きい)。しかし一方PETは様々
な生物学的特性を画像化することから、PETを用いれ
ば腫瘍の増殖速度の判定や治療効果の判定等が可能にな
る。従ってPETはCTやMRIと相補的な関係にあ
る。
【0003】従来、脳腫瘍の陽電子断層撮影は11C標
識メチオニンや18F標識フルオロデオキシグルコース
等トレーサーを用いて行われている。11C標識メチオ
ニン及び18F標識フルオロデオキシグルコースを用い
て撮影された脳腫瘍のPET画像における臨床的用途に
ついては多くの研究がなされている。11C標識メチオ
ニンまたは18F標識フルオロデオキシグルコースを使
用して得た脳腫瘍画像は、正常脳組織のバックグランド
放射能によって妨害を受けるため、これらトレーサーの
脳腫瘍増殖細胞へのとりこみが正常細胞に比べて強いと
は言えず、場合によっては脳腫瘍増殖細胞へのとりこみ
の方が低いこともあり(18F標識フルオロデオキシグ
ルコースの場合)、画像における脳腫瘍組織と正常脳組
織のコントラストが充分に鮮明でないという欠点を有し
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の従来
技術に鑑みてなされたものであり、その解決すべき課題
としては脳腫瘍のPETによる画像診断において、 (1)異常部位の輪郭を正確に描きだす。 (2)異常部位の生物学的性質についての的確な情報を
あたえる。 の2つの要件を兼ね備えたPET画像を提供することで
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めの手段すなわち本発明は、トレーサーとして11C標
識コリンを用いて脳腫瘍の陽電子断層撮影を行うことに
ある。
【0006】
【作用】コリンは細胞外から細胞膜を透過して細胞内に
入る。コリンの代謝に関しては、全く別の2つの経路が
知られている。第1の経路は神経細胞に備わっていて、
コリンはアセチルコリンに変換される(アセチルコリン
合成系)。第2の経路は全ての細胞に備わっていて、コ
リンはフォスフォコリンからCDP−コリンを経てフォ
スファチジルコリン(さらにスフィンゴミエリン)へと
変換される。フォスファチジルコリンとスフィンゴミエ
リンは、細胞膜を形成するところのリン脂質の主要な構
成要素である(リン脂質合成系)。
【0007】コリンの膜透過機構として、2種類のもの
が知られている。1つは神経細胞に備わる機構であっ
て、アセチルコリン合成系と密接に関係している。培養
神経細胞での膜透過半最大速度濃度Km(この数値が大
きいほど膜を透過しにくい)は5μM以下であって、こ
の機構は高親和性機構と呼ばれている。もう1つは全て
の細胞に備わっている機構であって、リン脂質合成系と
関係している。そのKmは30μM以上であり、低親和
性機構と呼ばれている。これらはコリンの細胞膜におけ
る透過機構、即ち膜透過の関門に関する事項であるが、
血液内のコリンは、細胞膜を通過するに先立って、毛細
管壁を通過しなければならない。全身組織の毛細管壁に
は多数の比較的大きな孔が開いているから、一般には毛
細管壁が物質透過の関門とはなり得ないのであるが、正
常の脳組織のみは例外であって、細胞膜と同様、物質ご
とに険しい関門が存在する(脳血液関門)。コリンに対
する脳血液関門のKmは細胞膜のKmを遥かに越える非
常に大きな値であって、血液中のコリンが細胞膜を通過
するには、この脳血液関門が妨げとなって、コリンは容
易に神経細胞内に入って行けない。それに反して、他の
一般の細胞内へのコリンの透過は、毛細管壁が妨げにな
らないから、むしろ容易である。
【0008】コリンのリン脂質合成系の最初の酵素反応
はコリンキナーゼによるコリンのリン酸化反応であっ
て、コリンはフォスフォコリンになる。この化合物は細
胞膜を通過しないから、放射能で標識したコリンがひと
たびリン酸化されると、これは細胞内に留まって失われ
ることがない。この現象は、化学的捕捉現象と呼ばれ、
放射能のとりこみ速度がリン酸化反応の反応速度を表し
ており、数学的解析が容易であり、トレーサーを用いる
測定系に適している。
【0009】フォスフォコリン以下の中間代謝物も細胞
膜を透過しないから、放射能で標識されたそれら代謝産
物は、全て細胞内に捕捉される。一方神経細胞において
アセチルコリン合成系に入ったコリンは、アセチルコリ
ンになって細胞内に捕捉されるけれども、これはコリン
エステラーゼの反応により再びコリンに戻り、細胞外に
再放出される可能性がある。さらに神経細胞において
は、コリンとアセチルコリンとが繰り返し相互変換しな
がら再利用されているので、アセチルコリン合成のため
に必要なコリンは細胞内に常備されており、細胞外から
のコリンの追加補給を殆ど必要としない。従って、放射
能で標識したコリンをトレーサーとして用いた場合、こ
れの細胞内へのとりこみは、それがどのような細胞であ
れ、アセチルコリン合成系よりもリン脂質合成系の活性
を強く反映したものとなるであろうと推測される。
【0010】腫瘍細胞は、増殖速度が速く、かつ細胞膜
の合成も盛んである。これら腫瘍細胞の培養細胞浮遊液
に放射性コリン(H標識コリン)を加えて37℃に加
温すると、放射能はもっぱらリン脂質合成系に入り、そ
の代謝産物が放射能で標識される。さらにアセチルコリ
ン合成系とリン脂質合成系を合わせ持つ培養細胞に放射
性コリンを加えると、放射能は速やかにリン脂質合成系
に入るが、アセチルコリンへは殆ど入らない。
【0011】アルガー等、フラム等は脳腫瘍患者の脳腫
瘍内コリン含量(これにはコリン残基を持つ全ての化合
物が含まれる)を陽子核磁気共鳴スペクトル分析によっ
て測定している。それによると、脳腫瘍ではコリン含量
が増加している傾向があり、この傾向は悪性度の高い脳
腫瘍で顕著である。
【0012】さらに、臨床経過中に悪性度が高まった例
ではコリン含量も増加する傾向にある。また、放射線治
療又は化学療法によって癌の進行が抑えられた例は、コ
リン含量も減少する傾向がある。これらの場合、コリン
として検知されている物質は大部分リン脂質のコリン残
基であるが、細胞内コリン残基の含量に変化をもたらす
生化学反応、即ちリン脂質合成系の活性の強さが、脳腫
瘍の増殖速度を反映していることを、以上の事実が示し
ている。
【0013】11C標識コリンがヒト脳腫瘍に強くとり
こまれ、かつ捕捉される現象、および11C標識コリン
が正常脳組織には極めて僅かにしかとりこまれないとい
う事実は、正常脳組織中でのアセチルコリン合成系より
も脳腫瘍内でのリン脂質合成系の方が反応速度が速いこ
とを意味している。
【0014】フリードランド等は11C標識コリンを最
初に合成した。彼等はPETを用い、赤毛ザルでこの化
合物の脳へのとりこみを研究した。彼らの関心はアセチ
ルコリン合成系に限られ、アセチルコリン合成系への
11C標識コリンのとりこみが極めて低いことを確認し
ている。
【0015】以上の知見に基づいて本発明はなされたも
ので、ヒト脳腫瘍のPET画像撮影のためのトレーサー
として11C標識コリンの用途を始めて明らかにしたも
のである。
【0016】
【実施例】肺癌(分化型腺癌)の患者が動眼神経麻痺等
の神経症状を呈し、脳CT及びMRI検査の結果、脳内
に数箇所異常病巣(腫瘍)のあることが認められた。こ
れらの腫瘍は肺癌の脳転移と考えられ、入院6日目より
40日目まで週5回、1回2グレイ(Gy)の放射線全
脳照射を行った。この放射線治療の結果、脳の腫瘍は顕
著に縮小したが、照射終了2ケ月後より再増殖が始まっ
た。
【0017】入院して数日後にこの患者のPET検査を
以下のような過程で行った。本発明と比較するため最初
11C標識メチオニンを使用したPETを行った。従
来の11C(半減期20分)が患者からほぼ消失したの
を確認した後、20mCiの11C標識コリンを用いた
PETを続いて行った(本発明法)。PETカメラは、
ヘッドトームIV(島津製)を使用した。PET画像の
空間分解能は、軸方向、横断軸方向に6mmであった。
断層面間隔13mmで同時に5断層面の両像を作成し
た。患者を撮影用ベッドに仰向けに寝かせ、最下位の断
層面を眼窩−外耳道(OM)面に合わせた。11C標識
メチオニンはサイクロトロン生産物である11CO
用いて、コマール等の方法で合成した。11C標識コリ
ンも又同様に11COを使用し、フリードランド等の
方法で合成した。
【0018】11C標識メチオニンの画像は11C標識
メチオニン10mCi(370 MBq)の静脈注射の
後、15−20分で測定したPETデータより作成し
た。一連の11C標識コリン画像は、11C標識コリン
20mCi(740 MBq)のボーラス静脈注射の
後、注射直後より開始して、1分毎のPETデータより
作成した。放射能の組織分布は、以下に示す相対的とり
こみ率(DUR)で正規化した後、CRTスクリーン上
に濃淡表示した。
【0019】
【0020】全てのPET画像は、PETデータに陽電
子放出標準線源による体内放射線の吸収補正と、11
の核崩壊による減衰に対する補正を施した後、コンピュ
ータにより作成した。両者の11C標識化合物の画像に
おいては、濃淡表示の最高輝度が最高の放射能濃度に当
たり、11C標識メチオニンの場合には最高輝度がDU
Rの値で3、11C標識コリンの場合には最高輝度のD
URの値で2に相当するように表示した。
【0021】図1は、上から順にCTフィルム、11
標識メチオニン画像、及び連続して撮影した11C標識
コリンの画像を示している。左側のカラムは、OM平面
上方13mmの断層面における画像を示し、また右側の
カラムは、OM平面上方52mmの断層面における画像
を示している。11C標識メチオニン画像は注射後15
−20分に収集したデータから作成した。連続した11
C標識コリン画像は、上から順に注射後0−1分、1−
2分、4−5分、及び9−10分にそれぞれ対応してい
る。11C標識コリン投与直後は、高い放射能が血中に
見られたが、投与5分後には放射能は血中から殆ど消失
し、頭蓋内では脳腫瘍に限局して存在するのみであっ
た。腫瘍の放射能濃度は、11C標識コリン投与10分
後まで変化しなかった。11C標識メチオニン画像で
は、正常脳組織の放射能が高く、部位によっては腫瘍の
放射能と同程度にまで達していた。11C標識コリン画
像では、正常脳組織の放射能が低く、殆ど無視できる程
度にしか過ぎなかった。そのため11C標識コリンによ
る脳腫瘍の画像は、周囲組織から区切られた輪郭明瞭な
ものとなった。
【0022】図2は11C標識コリン投与後PETで観
察された頭蓋内各部位、すなわち脳腫瘍、正常脳組織及
び血管内の放射能濃度が時間とともに変化する様子を示
したグラフである。放射能濃度はDURで表示した。図
2から明らかなように、横静脈洞(血管が最も太くかつ
画面を垂直に横切っていて断層面において最大の血液プ
ールを形成している)の放射能を血液(静脈血)放射能
と見なした。血液放射能濃度は、時間経過とともに急速
に減少し、そして大脳灰白質及び大脳白質の放射能濃度
は終始一貫して極めて低濃度である。これに対し脳腫瘍
の放射能濃度は、投与後1−2分において顕著となり、
そして10分後においてもその濃度は殆ど変化しないこ
とを示している。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、脳腫瘍の陽電子断
層撮影において、トレーサーとして11C標識コリンを
用いることにより、腫瘍組織と正常脳組織とのコントラ
ストが著しく明瞭になり鮮明なPET画像が得られるた
め、異常部位の輪郭を正確に描き出し異常部位の生物学
的性質についての的確な情報が与えられるので、信頼性
の高い脳腫瘍のPET画像診断が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は脳腫瘍患者の脳のX線断層撮影画像(C
T)と陽電子断層撮影画像(PET)であって、上から
下の順にCT画像、11C標識メチオニンによるPET
画像、及び連続して撮影した11C標識コリンによるP
ET画像を示している。
【図2】図2は11C標識コリン投与後PETで観察さ
れた頭蓋内各部位、すなわち脳腫瘍、正常脳組織及び血
管内における放射能濃度の経時変化を示すグラフであ
る。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 脳腫瘍の陽電子断層撮影において、トレ
    ーサーとして、11C標識コリンを用いて撮影すること
    を特徴とする脳腫瘍の陽電子断層撮影方法。
JP11060194A 1994-04-14 1994-04-14 脳腫瘍の陽電子断層撮影方法 Pending JPH07280941A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006087540A (ja) * 2004-09-22 2006-04-06 Shimadzu Corp 医用画像診断装置

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006087540A (ja) * 2004-09-22 2006-04-06 Shimadzu Corp 医用画像診断装置
JP4586473B2 (ja) * 2004-09-22 2010-11-24 株式会社島津製作所 医用画像診断装置

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