JPH07239318A - 鶏肉の鮮度測定方法 - Google Patents

鶏肉の鮮度測定方法

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JPH07239318A
JPH07239318A JP6030649A JP3064994A JPH07239318A JP H07239318 A JPH07239318 A JP H07239318A JP 6030649 A JP6030649 A JP 6030649A JP 3064994 A JP3064994 A JP 3064994A JP H07239318 A JPH07239318 A JP H07239318A
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Haruo Negishi
晴夫 根岸
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Meiji Milk Products Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 鶏肉の鮮度や肉質を的確に把握することが可
能な鮮度測定方法を提供する。 【構成】 鶏肉に含まれる30000ダルトン成分を測
定し、これを鶏肉の鮮度指標とする。30000ダルト
ン成分は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に
よって分離する。分離された30000ダルトン成分の
分解フラグメントの濃度比は、画像処理システムにより
定量し、アクチンに対する割合として算出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鶏肉の鮮度測定方法に
関するものであり、特に30000ダルトン成分をマー
カーとする新規な鮮度測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鶏肉の物理化学的性質の死後変化は非常
に早く、その美味しさは処理当日の夕方から翌日までし
か維持されない。その後は、イノシン酸(IMP)含量
の低下等につながるため、できるだけ早く消費すること
が好ましい。したがって、鶏肉の鮮度を的確に測定する
ことは、鶏肉の流通取引上、非常に重要な技術となる。
【0003】K値は、ATP分解生成物総量に対するイ
ノシンとヒポキサンチン量の和の百分率で、魚肉の鮮度
の指標として提案されているものであり、魚肉のK値に
関しては、既に数多くの研究が報告されている。それに
伴い、K値の簡易測定器も開発され、水産業界では生食
の刺し身等を中心に、流通取引上の鮮度管理指標として
実用化されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって、鶏肉の場
合も、魚肉の場合と同様、K値を鮮度指標として用いる
ことが考えられる。
【0005】事実、鶏肉の死後筋肉中のATPの分解パ
ターンも魚肉と同様であることが報告され、例えば日食
工誌,30 :151-154. 1983 や、日食工誌,28 :542-547.
1981 等に、鶏肉の鮮度指標としてもK値が有効である
ことが記載されている。
【0006】しかしながら、鶏肉の場合、肉の柔らかさ
の変化のような、肉質の変化も把握する必要があり、ま
た測定精度も高める必要があることから、前述のK値の
測定のみでは不十分であり、新たな鮮度指標の開発が望
まれている。
【0007】そこで本発明は、このような従来の実情に
鑑みて提案されたものであって、鮮度や肉質の変化を的
確に把握するための指標となる新規な鶏肉の鮮度測定方
法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前述の目
的を達成するために、種々検討を重ねてきた。そして、
死後の鶏肉筋原線維に含まれる30000ダルトン成分
とK値との関係を調べたところ、何れの成分も貯蔵中の
鶏肉で増加し、互いに高い相関関係にあることを確認し
た。
【0009】さらに、この30000ダルトン成分は、
鶏肉の柔らかさや肉質の変化とも相関性が高く、従来の
K値以上に優れた鮮度判定指標となるとの結論を得るに
至った。
【0010】本発明は、これらの知見に基づいて完成さ
れたものであって、鶏肉に含まれる30000ダルトン
成分の変化を測定し、これを鶏肉の鮮度判定指標とする
ことを特徴とするものである。
【0011】本発明においては、前述の通り鶏肉に含ま
れる30000ダルトン成分の変化を測定しこれを鶏肉
の鮮度判定指標とするが、この30000ダルトン成分
は、SDS(硫酸ドデシルナトリウム)−ポリアクリル
アミドゲル電気泳動によって分解フラグメントとして分
離することができる。
【0012】SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
は、常法に従って実施すればよいが、中でもタンパク質
の分離がシャープなLAEMMLI法(Nature, 227 :
680-685, 1970)によるのがよい。これにより分離され
た各分解フラグメントは、任意の方法で定量すればよい
が、例えば画像処理システムで濃度比を測定し、アクチ
ンに対する割合(%)として算出する。
【0013】
【作用】鶏肉に含まれる30000ダルトン成分は、貯
蔵中の鶏肉で増加し、それ故、鶏肉の消費期間に相当す
る死後4日位までは、鶏肉の死後日数を反映する。死後
の軟化機構に対する30000ダルトン成分発生の関与
については、明らかではないが、30000ダルトン成
分は肉質の変化と密接に関連しており、従来のK値以上
に優れた鮮度指標となる。
【0014】
【実施例】以下、本発明を適用した実施例について、具
体的な実験結果をもとに詳細に説明する。
【0015】1.試料 埼玉県のA社工場で、下記の工程に従って屠殺解体処理
をした55〜60日齢のブロイラー種の鶏肉を使用し
た。なお、下記の工程で括弧内の数字は、死後の経過時
間を示す。 懸鳥(0分)→屠殺→中抜き(18分後)→チラー水に
よる屠体冷却(48分後)→正肉解体(1〜2時間後)
→包装→出荷(3〜4時間後)
【0016】試料は、屠殺当日の鶏肉41羽(チラー冷
却後の中抜き屠体27羽、正肉解体後の鶏肉14羽)と
1〜4日間冷蔵した鶏肉15羽の合計56羽分の試料を
工場で任意に採取した。採取部位は胸肉とし、左右を区
別せずに工場で採取後、直ちにドライアイス−エタノー
ルで冷凍し、使用時まで−35℃で保存した。胸肉の分
析試料は皮、脂肪を除去後、均一に細切し、分析時まで
−35℃に保存した。貯蔵試験用の鶏肉試料は、供試試
料の中からK値の低い3個体の鶏肉を解凍後、PVDC
(ポリ塩化ビニリデン)製フィルム(厚さ80μm)の
袋で真空包装した。このようにして調製した試料を5℃
に7日間貯蔵し、貯蔵中の鶏肉のK値と30000ダル
トン成分(以下、30kDaとする。)の変化を、貯蔵
開始当日(死後当日に相当)、1、2、3、4、5およ
び7日目に測定した。データは3個体の分析値の平均と
標準偏差を求めた。
【0017】2.筋原線維の調製 筋原線維(Mf)は次のように調製した。すなわち、予
め細切した鶏肉に10倍量の100mM KCl,20
mM KH2PO4,5mM EDTA・2Na,1mM
MgCl2,1mM NaN3緩衝液(pH7.0)を
加え、ホモジナイズ後の懸濁液を遠心分離後、沈澱部に
同緩衝液を同量加え、洗浄する操作を2回繰り返した。
最終的に、沈澱部に同緩衝液を20ml加えて懸濁し、
ステンレスフィルターで濾過し調製した。
【0018】3.SDS−ポリアクリルアミドゲル電気
泳動と30kDa成分 筋原線維(Mf)のSDS−ポリアクリルアミドゲル電
気泳動(SDS−PAGE)はLAEMMLI法に従い
実施した。すなわち、前記第2項で得た筋原線維に、8
M 尿素、2.5%SDS、1mM DTT、10mM
Tris−HCl緩衝液(pH8.0)を等量添加
し、沸騰水中で2分間の変性処理を行った。ゲルは、濃
縮ゲル濃度5.0%、分離ゲル濃度12.5%とし、タ
ンパク質等量30μgをゲルに挿入した。泳動は、最初
10mAで約1時間、次に40mAで約3時間行った。
染色はブリリアントブルー(Coomassie Brilliant Blue
-R250)を用いて行った。染色終了後のゲルを10%酢
酸と8%メタノールの混合溶液で十分に脱色した。
【0019】30kDa成分量は、脱色後のゲルの各バ
ンドの濃度比を、ACI画像処理システム(ACIジャ
パン社製、商品名ModelTIAS−2000)で測
定し、アクチンに対する割合(%)として算出した。
【0020】4.ATP関連化合物とK値 予め細切した鶏肉から1N−HClO4 抽出液を調製
し、逆相系カラムを用い、高速液体クロマトグラフ(H
PLC)でATP関連化合物を分析した。この分析値か
ら次式によりK値を算出した:K値(K−value)
(%)=(HxR+Hx)×100/(ATP+ADP
+AMP+IMP+HxR+Hx)。また、ATP関連
化合物の略号は次の通りとした。アデノシン三リン酸;
ATP、アデノシン二リン酸;ADP、アデノシン一リ
ン酸;AMP、イノシン酸;IMP、イノシン;Hx
R、ヒポキサンチン;Hx
【0021】5.鶏肉貯蔵中のSDS−PAGEパター
ンの変化 K値の低い鶏肉(K値10%以下)を5℃で7日間貯蔵
し、鶏肉MfのSDS−PAGEパターンの変化を分析
し、結果を図1に示した。貯蔵中の鶏肉から30kDa
と32kDaの2成分が得られた。これら2成分の貯蔵
中の変化をみると、何れの貯蔵日数の場合も30kDa
の方が濃度が高かった。しかも、30kDaが貯蔵日数
の進行に伴ってその濃度が増す傾向があるのに対して、
32kDaは貯蔵2〜3日目までは徐々に濃度を増すも
のの、4日目にはバンド濃度が薄くなり、5日目以降に
はほとんど消滅してしまった。
【0022】以上から、死後の経過日数を表す指標とし
ては、32kDaよりも30kDa成分の方が好ましい
と判断されたため、以下の検討では30kDa成分のみ
を取り上げ、検討を行った。
【0023】6.生鳥処理工程中の鶏肉のK値と30k
Da成分の変化 生鳥処理工程中の鶏肉のATP関連化合物とMfのSD
S−PAGEパターンの変化の分析結果から、K値と3
0kDaを定量化し図2に示した。死後鶏肉のK値は死
後18分の中抜きから死後1〜2時間の正肉解体工程ま
では、約20%とほぼ一定であった。その後の工程で、
K値は徐々に上昇し、処理翌日には約36%にまで上昇
した。
【0024】一方、30kDaは死後3〜4時間で約
2.5%が検出され、翌日にはその含量は6.6%に増
した。このように鶏肉の30kDa発生とK値の上昇時
期は、何れも死後3〜4時間の正肉解体後で一致した。
さらに24時間後には何れの測定値も上昇し、死後の鶏
肉の30kDaの生成はK値の上昇と対応するようであ
った。
【0025】鶏肉は死後3〜4時間で十分な柔らかさに
達するため、牛肉のように熟成不足による柔らかさの欠
如の問題が発生することは少ないと思われる。しかも、
死後3〜4時間にIMP含量も最大となるため、早い時
期に食味性も適期に至っていると考えられた。さらに日
数が経過すると、鶏肉の場合は品質の向上よりも、細菌
の増殖による鮮度低下の危険性の方が高くなると思われ
た。
【0026】したがって、鶏肉の品質は鮮度で左右され
る場合が大半で、30kDa検出の意味も牛肉と異なり
熟度管理ではなく、鮮度管理が目的となる。すなわち、
30kDa濃度が死後の経過時間と共に増すならば、K
値同様に、鮮度指標になり得ると考えられた。そこで、
先の鶏肉貯蔵中のSDS−PAGEの結果から、30k
Daを定量してK値との関係を調べた。
【0027】7.鶏肉貯蔵中のK値と30kDa成分の
変化 SDS−PAGEで得られた30kDaバンド(図1)
をデンシトメーターで定量し、K値の変化と併せて図3
に示した。貯蔵4日目(死後4日相当)までその濃度は
増したが、5日目でやや減少しその後は横這となった。
一方、K値は貯蔵7日まで貯蔵日数の進行と共に増加を
続けた。
【0028】以上から、少なくとも、貯蔵4日目までの
30kDaの変化はK値と対応することが分かった。鶏
肉の市場での流通期間は4日間程度であるので、30k
Daの量的変化は鶏肉の死後日数を十分に反映し、従来
のK値を代用できる可能性が得られた。すなわち、30
kDaの検出によって、鶏肉の鮮度管理の可能性が示唆
された。
【0029】そこで、さらに、このことを確認するため
に、各種処理工程を経た鶏肉のATP関連化合物、K値
と30kDaとの間の相関性について統計的に検討し
た。
【0030】8.死後鶏肉のATP関連化合物、K値と
30kDa成分との関係 処理工程毎に採取した鶏肉(n=81)の各成分の分析
結果を表1に示した。工程No.I、II、IIIの順に死後
時間が経過するに伴い、ATP,ADP,AMPおよび
IMPはやや減少し、それと共にHxRとHxの増加が
みられた。これらATP関連化合物の変化は当然、K値
の変化に対応し、工程の進行に伴いK値の増加があっ
た。
【0031】
【表1】
【0032】一方、30kDa成分も徐々に増加した。
このような傾向を示した工程毎の成分の測定値を統計的
に解析し、各成分間の単相関係数を求め表2に示した。
この表から、30kDaと他成分間との相関は、HxR
>K値>ADP>IMP>AMP>ATP>Hxの順に
大きかった。特に相関係数が大きいのは、HxR(p<
0.01,r=0.663)とK値(p<0.01,r
=0.642)であった。
【0033】
【表2】
【0034】HxRはIMPの分解物 であり、鶏肉貯
蔵中のIMPの減少に対応してHxRが増加する変化は
直接K値に反映する。それ故、30kDaがこれら2成
分と高相関関係にあることは、30kDaの鮮度指標と
しての有効性を裏付けている。これら2成分と30kD
aとの関係を散布図に表すと図4、図5のようになっ
た。30kDaが10%以下の試料でややバラツキが大
きいことから、さらに、死後の経過日数の短い試料のみ
を抽出し、同様な解析を試みた。
【0035】すなわち、全試料の中から屠殺処理当日か
ら翌日までの屠殺後の経過日数の短い試料(N=25)
を抽出し、同様にATP関連化合物、K値と30kDa
との関係について相関分析を行った。表3に各成分間の
単相関係数を示した。
【0036】
【表3】
【0037】前述同様、30kDaはK値およびHxR
と高い相関関係にあった。30kDaとHxRとの相関
(p<0.01,r=0.550)は前述と比べやや低
下したが、K値との相関係数(p<0.01,r=0.
645)は同程度であった。このように、死後の経過日
数が1日目までの短い試料を対象にしても、30kDa
はK値と比較的高い相関関係にあることから、従来のK
値同様、鶏肉の鮮度判定指標として有効な特性になると
考えらた。
【0038】
【発明の効果】以上の説明からも明かなように、本発明
においては、30000ダルトン成分を鮮度判定指標と
しており、鶏肉の鮮度や肉質の変化を的確に把握するこ
とが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】鶏肉筋原線維のSDS−PAGEパターンを示
す模式図である。
【図2】鶏肉解体時のK値と30kDaの変化を示す特
性図である。
【図3】死後経過日数によるK値と30kDaの変化を
示す特性図である。
【図4】30kDaとイノシン(HxR)の相関を示す
特性図である。
【図5】30kDaとK値の相関を示す特性図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鶏肉に含まれる30000ダルトン成分
    の変化を測定し、これを鶏肉の鮮度判定指標とすること
    を特徴とする鶏肉の鮮度測定方法。
  2. 【請求項2】 SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳
    動により30000ダルトン成分の分解フラグメントを
    分離することを特徴とする請求項1記載の鶏肉の鮮度測
    定方法。
  3. 【請求項3】 SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳
    動をLAEMMLI法に準じて行うことを特徴とする請
    求項2記載の鶏肉の鮮度測定方法。
  4. 【請求項4】 分離された各分解フラグメントの濃度比
    を画像処理システムにより測定し、アクチンに対する割
    合として30000ダルトン成分の含有量を算出するこ
    とを特徴とする請求項2記載の鶏肉の鮮度測定方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2020530286A (ja) * 2017-07-12 2020-10-22 エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド 産業プロセス内において細菌胞子を迅速に検出するための方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020530286A (ja) * 2017-07-12 2020-10-22 エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド 産業プロセス内において細菌胞子を迅速に検出するための方法
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