JPH07140289A - 中性子輸送シミュレータ - Google Patents

中性子輸送シミュレータ

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JPH07140289A
JPH07140289A JP28816093A JP28816093A JPH07140289A JP H07140289 A JPH07140289 A JP H07140289A JP 28816093 A JP28816093 A JP 28816093A JP 28816093 A JP28816093 A JP 28816093A JP H07140289 A JPH07140289 A JP H07140289A
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JP
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neutron
neutrons
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JP28816093A
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English (en)
Inventor
Yuuji Uenohara
雄 二 植之原
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Publication date
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    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
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    • Y02E30/30Nuclear fission reactors

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  • Management, Administration, Business Operations System, And Electronic Commerce (AREA)
  • Monitoring And Testing Of Nuclear Reactors (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 比較的小さな並列計算機の能力と容量によっ
て、大規模な体系の中性子の挙動を高速かつ正確にシミ
ュレートできる中性子輸送シミュレータを提供する。 【構成】 処理すべき体系を中性子が属する空間領域と
エネルギ領域を基準に分割し、分割された領域内の中性
子のシミュレーションを並列計算機1の各実行機2a,
…,2iに割り当て、各領域の中性子のタリーデータと
核データを各実行機2a,…,2iのメモリに分散記憶
させ、各実行機2a,…,2iによってその領域内の中
性子の挙動をシミュレートするとともに、各実行機2
a,…,2iに通信手段9,10,11を備えて中性子
が他の領域へ移動したときに、その中性子の情報を移動
先の領域の実行機2a,…,2iへ送信するように構成
した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、原子力動力炉用燃料と
炉心設計の詳細化と高度化、放射線発生装置および粒子
線発生装置の遮蔽設計の詳細化と高度化、核融合炉壁設
計の詳細化と高度化等に使用する並列計算機によるモン
テカルロ法の中性子輸送シミュレータに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、原子核工学における中性子や、
光子、電荷粒子、電子など相互に作用を及ぼさない微粒
子の挙動をシミュレートする方法として、並列計算機を
用いたモンテカルロ法による個々の粒子の挙動のシミュ
レーションが知られている。
【0003】原子力の分野では、原子炉の燃料や炉心の
設計あるいは遮蔽設計において、核分裂、核融合を問わ
ず中性子の挙動を解析することが重要である。
【0004】従来、上記中性子の挙動解析は、中性子の
輸送・拡散方程式を数値的に解くといった、決定論的手
法が用いられていた。この決定論的手法による中性子の
挙動解析は、具体的には偏微分方程式の数値解法によっ
て行われていた。
【0005】ところで、中性子の挙動解析は、高い精度
の解が要求される。特に、原子炉の燃料や炉心の設計に
おいて、中性子増倍係数といった積分量の計算では0.
1%、燃料棒毎の反応率といった微分量の計算では数%
程度の誤差範囲内の解が要求される。これに対して、従
来の決定論的中性子の挙動解析では、実用的な時間で解
を得るために、多くの近似と仮定を設けて、上記要求に
対応していた。
【0006】上記近似や仮定は、問題を特殊化すること
で高精度の解を達成するものであり、当然解析のアルゴ
リズムやソフトウエアは特定の問題に特殊化する。しか
し、このような方法では、問題が特殊化された条件から
はずれたとき、解析用のプログラムを改良あるいは修正
をしなければならなかった。
【0007】また、上記決定論的解析手法では、高精度
の解を達成するための特殊化には限界があり、これを検
証するための実験もしくは汎用的な厳密理論計算が必要
となった。
【0008】これに対して、厳密論理計算による中性子
の挙動解析の方法の一つとしてモンテカルロ法がある。
モンテカルロ法は、中性子の輸送・拡散方程式を解く手
法の一つで、体系中の中性子の挙動を乱数でシミュレー
トすることにより、中性子の空間分布、エネルギー分
布、および反応率を評価する方法である。
【0009】このモンテカルロ法によれば、非常に多数
の中性子、できれば実際に発生するすべての中性子につ
いてシミュレートすることができれば、解析する体系の
如何にかかわらず、厳密な答を得ることができる。
【0010】また、このモンテカルロ法は、他の問題と
比較すると、中性子輸送の問題に非常に適用しやすい利
点がある。これは、中性子は、中性子間の相互作用が無
視できるほど小さく、本質的には、標的となる原子核
と、各中性子との相互作用のみを考慮すればよいこと
と、中性子を気体と考えると、非常に稀薄な気体である
ことによるからである。
【0011】例えば、地上で最も中性子密度の高い環境
である動力炉ですら中性子束で1014[1/cm2 ・sec
]程度であるから、中性子が全て熱中性子と仮定して
も、密度に換算すると108 から109 [1/cm3 ]程
度でしかない。
【0012】この中性子の密度が稀薄な点は、中性子間
の相互作用の無視できるという仮定を自明にするばかり
ではなく、短時間ならば中性子と媒質の相互作用による
体系の変化も無視できるという自明な仮定をもたらす。
【0013】上記仮定から、モンテカルロ法による中性
子の輸送の問題に対する解析は、単に中性子と媒質を構
成する原子核との二体問題の解の集合によって、体系内
の中性子の位相空間分布(空間分布とエネルギ分布)を
決定できることが導ける。
【0014】このことから、高密度、高相互作用の問
題、例えば流体や高密度のイオン入射の問題と比較する
と、中性子の輸送の問題は、モンテカルロ法の適用が容
易であることがわかる。
【0015】また、モンテカルロ法による中性子の輸送
のシミュレーションは、中性子間の相互作用が無視でき
るほど小さいので、並列計算機による高速化が非常には
かりやすい利点がある。すなわち、各中性子のシミュレ
ーションを全く独立に行えるので、並列計算機の各CP
U間の通信が原則的には不要となり、並列計算機の問題
点であるCPU間の通信数の増加にともなう処理速度の
低下を回避できるからである。
【0016】もっとも、この利点は、中性子のみなら
ず、電荷を持たない中性粒子や光子や電子の挙動解析に
もあてはまる。この意味で、モンテカルロ法による粒子
の挙動解析は、中性子工学の分野ばかりではなく、微小
な半導体デバイスへの電子注入のエネルギー付与のシミ
ュレーションにも適用できる。したがって、本発明の並
列化モンテカルロ法をこれら粒子の挙動解析に適用する
ことも可能である。
【0017】以下に図9と図10を用いて、従来の並列
計算機によるモンテカルロ法の中性子輸送シミュレーシ
ョンについて説明する。
【0018】図9は、従来のモンテカルロ法による中性
子輸送シミュレータのハードウェアを構成する並列計算
機の構成を示している。この中性子輸送シミュレータに
よる中性子のシミュレーションは逐次処理型モンテカル
ロ法と呼ばれているものである。
【0019】逐次処理型モンテカルロ法は、特定数の中
性子を発生させそれらの挙動を模擬して中性子束や反応
率を評価させる。この一回ごとの処理を通常バッチと呼
ぶ。バッチを複数回繰り返し、各バッチで評価した中性
子束や反応率を統計学的に処理して、最も確からしい値
を推定する。
【0020】図9において、符号41は並列計算機を示
しており、この並列計算機41は、9個の実行機42を
有し、これら実行機42は、通信線43を介して格子状
またはトーラス状に結合されている。符号44は実行機
間の通信用ルータを示しており、実行機42間の通信は
この通信用ルータ44を経由して行われる。各実行機4
2は、実行機間の通信処理ルーティン45を備え、この
実行機間の通信処理ルーティン45は通信線43に接続
されている。
【0021】従来の並列化モンテカルロ法は、各実行機
42が扱う問題が同一であるので、実行機間のデータの
流れは、実行機間の通信処理ルーティン45のみを介し
て行われる。この実行機間の通信処理ルーティン45を
介して、バッチ終了後にタリーデータ(中性子の反応率
と、中性子束のエネルギ分布と、中性子束の空間分布を
示すデータ)の内容をホストコンピュータまたは集計用
の実行機に送信し、あるいは次のバッチ処理用のデータ
を受信する。
【0022】図10は、各実行機42の内部の構成とそ
の処理の流れを示している。図10に示すように、実行
機42は、中性子源設定部46と、断面積更新部47
と、中性子発生部48と、反応同定部49の4つのブロ
ックからなる。
【0023】最初に、中性子源設定部46において、中
性子源とタリーデータを初期化する(ステップ30
0)。次に、処理すべき全バッチが終了したか否かを判
断する(ステップ310)。
【0024】全バッチが終了していれば、この実行機で
処理が終了したことを、実行機間通信処理ルーティン4
5を介して、ホストコンピュータ等に知らせる。全バッ
チが終了していなければ、断面積更新部47の処理に移
行する。
【0025】断面積更新部47では、中性子断面積ライ
ブラリの一部を読み込む。このとき、実行機42のメモ
リが十分であれば、ライブラリのデータを全部読み込む
(ステップ320)。
【0026】次に、中性子発生部48において、中性子
源データを基に、中性子を発生させる(ステップ33
0)。具体的には、乱数を用いて中性子の発生位置
(x,y,z)と、中性子の運動エネルギーと、運動方
向とを決める。
【0027】続いて、各バッチのすべての中性子につい
て処理が終了したか否か、および中性子の運動エネルギ
ーが上記読み込んだライブラリデータのエネルギ範囲内
にあるか否かを判定する(ステップ340)。
【0028】バッチが終了している場合、すなわち1バ
ッチあたり追跡する中性子の個数が0になったならば、
本シミュレーションで行うバッチ数を1減らし、ステッ
プ300の中性子源設定に戻る。
【0029】中性子の運動エネルギがライブラリデータ
のエネルギー範囲内になければ、現在の中性子の位置と
エネルギーと飛行方向を中性子源に戻し、断面積更新部
47に戻る。この部分では、先に全エネルギー領域の断
面積データを読み込んでいれば、実行しない。
【0030】バッチ終了、エネルギー範囲外のいずれで
もなければ、次の反応同定部49において、中性子が存
在する位置の巨視的全断面積を計算する(ステップ35
0)。続いて、ステップ350で求めた全断面積を基に
中性子の飛行距離を乱数で決める(ステップ360)。
【0031】次に飛行先の領域が中性子の飛行前の領域
と同じかどうか、すなわち組成が変化するかどうかを判
定する(ステップ370)。領域が変化したならば、ス
テップ350の断面積計算に戻る。また、飛行中に反射
境界(無限体系を模擬する時に用いられる条件)を横切
るときは、方向変換の操作を行い(ステップ380)、
ステップ370の領域判定に戻る。
【0032】飛行後も自領域にあれば、乱数を用いて反
応を同定する(ステップ390)。反応が散乱であれ
ば、散乱角と散乱後の運動エネルギーを乱数と核データ
を用いて決定する。
【0033】次に、反応の結果によって処理を振り分け
る(ステップ400)。反応が散乱であり、かつ、散乱
後の運動エネルギーが現在のエネルギー領域内にあれ
ば、ステップ350の断面積計算に戻る。また、反応が
散乱であって、散乱後の運動エネルギーが現在のエネル
ギー範囲外にあれば、中性子の位置とエネルギーと飛行
方向を中性子源に戻し、ステップ330の中性子発生に
戻る。また、反応が核分裂や放射捕獲反応等の消滅反応
であれば、バッチあたりで追跡する中性子の個数を1減
らし、ステップ330の中性子発生に戻る。
【0034】従来の並列計算機41は、すべての実行機
42が図10で説明した流れで同一の問題を処理する。
この方式は、以下に示す3つの理由から、モンテカルロ
法の並列化としては原理的に最も優れている。
【0035】(1) 計算時間が処理時間の大部分を占め、
中性子追跡中には実行機間の通信が全く生じない。従っ
て、実行機間通信のオーバーヘッドが無い。
【0036】(2) 全ての実行機が同一の問題を扱うの
で、実行機の状態を詳細に監視する必要がなく、実行機
間の負荷を分散する必要もない。
【0037】(3) プログラム変更が少ない。
【0038】従って、従来の並列化モンテカルロ法によ
れば、原理的には100%の並列化効率を達成できる可
能性がある。しかし、実際には、同一の問題を扱って
も、発生する乱数が異なるために、バッチあたりに要す
る計算時間は確率的に変動し、各実行機の計算時間は異
なる。これにより、最も長い計算時間は要した実行機の
計算時間Tmで全体の計算時間が決定される。この場
合、並列化効率ηは、下式のようになる。
【0039】η=Ta/Tm ここで、Taは、各実行機の処理に要する計算時間の平
均である。
【0040】平均計算時間Taは、解くべき問題と追跡
する粒子数によって決まり、追跡する粒子数にほぼ比例
する。最長計算時間Tmは、追跡する粒子数と並列度す
なわち使用した実行機の数で決まる。このTaとTmの
比は、追跡する粒子の数の平方根に反比例し、並列度の
対数にほぼ比例する。従って、追跡する粒子の数と並列
度が増えると、ηは1に近づく。
【0041】このように、モンテカルロ法が並列計算機
に適していることは、早くから認識され、過去に少なか
らぬ研究事例があり、決定論的手法には及ばずとも広く
用いられていた。
【0042】
【発明が解決しようとする課題】しなしながら、上記従
来の並列化モンテカルロ法による中性子のシミュレーシ
ョンは、各実行機が同一の問題(一中性子の挙動)を処
理し、実行機の台数によって処理速度を速くする方法に
基づくので、膨大な計算機資源を必要とする問題があっ
た。
【0043】すなわち、従来の並列化モンテカルロ法で
は、体系データ、核データ、タリーデータのいずれも、
一つの実行機のメモリー中に収納できる程度の量に限ら
れるため、比較的単純化した問題へしか適用することが
できなかった。
【0044】モンテカルロ法の長所である厳密性を生か
すためには、複雑な体系に対して、共鳴のような中性子
エネルギーによる急激な変化を示す中性子吸収断面積を
忠実に評価でき、さらに放出中性子のエネルギー角度分
布も忠実に再現できるシミュレーションが要求される。
【0045】このような高精度のシミュレーションで
は、中性子断面積は、入射中性子エネルギー、放出中性
子エネルギーと角度の連続関数であり、その形状は複雑
である。また、中性子断面積データは、実験データを基
にした、評価済みの断面積ファイルを用いるので、その
要求精度に従ってデータも大容量化する。
【0046】このような場合、全てのデータを一つの実
行機のメモリーに収納することは困難になる。したがっ
て、メモリに格納されたデータを入れ替えるために、各
実行機と外部記憶との通信数が著しく増加し、通信につ
いやされる時間のために、並列計算機の処理速度が低下
する問題があった。
【0047】モンテカルロ法による中性子の挙動シミュ
レーションでは、高速化されるに従って、各空間での反
応率や中性子束の推定値は統計精度があがるので、タリ
ーデータも詳細に設定されるようになる。評価の対象が
増えると、必然的に、体系データや核データも詳細なも
のが要求され、扱うデータは増える。このように、モン
テカルロ法の高速化とデータの増加は不可分である。
【0048】以下に、沸騰水形炉の3次元全炉心詳細モ
ンテカルロシミュレーションに必要なメモリーを見積も
ってみる。1000[MW]級沸騰水形炉の1/4炉心
の場合では、タリーデータに必要とするメモリは、 1燃料集合体:約60本の燃料棒 :半径方向に約10分割、 燃料棒の内部:方位角方向に約8分割、 :軸方向に約20分割、 対象とする核:U、Pu同位体、Gd、FP核種等、最
低10種類 エネルギー群:約200群、 1/4炉心 :約200燃料集合体 と仮定すると、全体で
【0049】
【数1】 必要となる。8バイト/1ワードとすれば、約320ギ
ガバイト必要となる。
【0050】現在の計算機のメモリは最大で1ギガバイ
トのオーダーなので膨大なメモリと言わざるをえない。
編集するエネルギー群数を減らすこと、この値は一桁か
ら二桁小さくなるが、それでもギガバイトのオーダを越
える。この値は、大体の目安なので、問題に応じて必要
なメモリを減らすことは可能であるが、沸騰水型原子炉
の全炉心詳細シミュレーションは、テラバイトのメモリ
を必要とする規模の問題であることがわかる。
【0051】このような問題を、従来のモンテカルロ法
の並列処理で扱うためには、各実行機がテラバイト程度
のメモリを必要とすることになる。
【0052】現在の超並列計算機は、例えば、世界最大
の超並列計算機CM−5は、全体でテラバイト程度のメ
モリを実装できるが、一実行機あたりのメモリは35メ
ガバイト程度である。一実行機あたりテラバイトの超並
列計算機の実現は、技術的な問題や経済性の問題からほ
とんど不可能と言える。
【0053】また、たとえ各実行機がテラバイトのメモ
リを装備しても、現在のCPUの能力からテラバイトの
メモリを持て余し、このような膨大なメモリを管理する
ためにも並列処理は必要不可欠となる。
【0054】結局、各実行機が同一の問題(一中性子の
挙動)を処理し、実行機の台数を増やすことによって処
理速度を速くする従来の並列化モンテカルロ法では、大
規模な体系の詳細なシミュレーションを処理することが
できない。
【0055】そこで、本発明の目的は、従来の並列化モ
ンテカルロ法の課題を解決し、現在の並列計算機の能力
と容量によって、大規模な体系の中性子の挙動を高速か
つ正確にシミュレートできる中性子輸送シミュレータを
提供することにある。
【0056】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の中性子輸送シミュレータは、並列計算機を
用いて中性子個々の動きをシミュレートするモンテカル
ロ法の中性子輸送シミュレータにおいて、処理すべき体
系を中性子が属する空間領域とエネルギ領域を基準に分
割し、分割された領域内の中性子のシミュレーションを
前記並列計算機の各実行機に割り当て、各領域の中性子
のタリーデータと核データを各実行機のメモリに分散記
憶させ、前記各実行機によってその領域内の中性子の挙
動をシミュレートするとともに、各実行機に通信手段を
備えて中性子が他の領域へ移動したときに、その中性子
の情報を移動先の領域の実行機へ送信するようにしたこ
とを特徴とするものである。
【0057】
【作用】本発明の中性子輸送シミュレータは、処理すべ
き体系を中性子が属する空間領域とエネルギ領域を基準
に分割し、並列計算機の実行機を分割された各領域に割
り当て、各領域の中性子のタリーデータと核データを各
実行機のメモリに分散記憶させているので、各実行機
は、その担当領域のタリーデータと核データを記憶すれ
ばよく、現在の並列計算機のメモリ容量で十分シミュレ
ーションを行うことができる。
【0058】また、各実行機は通信手段を備え、中性子
が拡散して他の領域へ移動した場合は、その移動先の領
域を担当する実行機へ中性子の情報を送り、その移動先
の実行機によって継続して中性子の挙動をシミュレート
することができる。前記中性子情報の通信は、全メモリ
の入替えと比較して短時間で行うことができる。
【0059】これにより、各実行機は、十分詳細なタリ
ーデータ等に基づいて正確かつ高速な中性子輸送シミュ
レーションを行うことができる。
【0060】
【実施例】以下に添付の図面を用いて本発明の一実施例
について説明する。
【0061】図1は、処理すべき体系を中性子が属する
空間領域とエネルギ領域を基準に分割して並列計算機の
各実行機を割り当てる概念と、本発明の中性子輸送シミ
ュレータの構成を示している。
【0062】図1において、符号1は、本発明の中性子
輸送シミュレータのハードウェアを構成する並列計算機
を示しており、この並列計算機1は、9個の実行機2
(2aないし2i)を有し、これら実行機2は、格子状
またはトーラス状の結合網を構成している。本発明の領
域分割は、流体計算の並列化でよく用いられる領域分割
(Domain Decomposition)の手法を用いて、タリヘデー
タと核データを各実行機のメモリに分散させることで大
規模な体系の詳細なシミュレーションを可能にしてい
る。
【0063】実際には中性子は3次元の幾何学的な空間
と各次元方向の速度で表される速度空間(これら幾何空
間と速度空間を合わせて位相空間という)の計6次元の
位相空間を有しているが、図1においては、簡略化のた
めに、幾何空間を1次元、速度空間を速度の絶対値また
は運動エネルギーで表される1次元の計2次元の位相空
間を示している。
【0064】図1の矢印3と4はそれぞれ、速度空間軸
と幾何空間軸を示している。この実施例では、速度空間
軸3は、矢印の方向に中性子の運動エネルギーによって
高速群、熱外中性子群、熱中性子群の3つのエネルギ領
域に分割している。一方、幾何空間軸4は、矢印の方向
に炉心をZ軸方向に上、中、下の3つの空間領域に分割
している。
【0065】実行機2aは、炉心の上領域のうち高速群
のみをシミュレーションを行う。同様に、実行機2dは
炉心の中領域のうち高速群、実行機2gは炉心の下領域
のうち高速群、実行機2bは炉心の上領域のうち熱外中
性子群のシミュレーションを割り当てられている。
【0066】このように領域分割と実行機の割当てを行
うと、各実行機が保持するデータは、核データおよびタ
リーデータともに全体の3分の1になり、全データをメ
モリに格納することができる。
【0067】図2は、各実行機2での処理の流れを示し
ている。この処理方法は、代表的な事象駆動型モンテカ
ルロコードの一つであるVIMを利用したものであり、
中性子源設定部5と、断面積更新部6と、中性子発生部
7と、反応同定部8の4つのブロックからなる。
【0068】最初に、中性子源設定部5において、中性
子源とタリーデータを初期化する(ステップ100)。
次に、処理すべき全バッチが終了したか否かを判断する
(ステップ110)。ここで、バッチと上述した通り、
特定数の中性子を発生させ、それらの挙動をシミュレー
トして中性子束や反応率を評価する一回の処理をいう。
【0069】全バッチが終了していれば、この実行機で
処理が終了したことを、実行機間通信処理ルーティン9
を介して、ホストコンピュータ等に知らせる。全バッチ
が終了していなければ、断面積更新部6の処理に移行す
る。
【0070】断面積更新部6では、中性子断面積ライブ
ラリの一部を読み込む。このとき、各実行機は、その担
当する領域のタリーデータと核データを好ましくは全部
読み込む(ステップ120)。
【0071】次に、中性子発生部7において、中性子源
データを基に、中性子を発生させる(ステップ13
0)。具体的には、乱数を用いて中性子の発生位置
(x,y,z)と、中性子の運動エネルギーと、運動方
向とを決める。
【0072】次に、各バッチのすべての中性子について
処理が終了したか否か、および中性子の運動エネルギー
が担当するエネルギ領域の範囲内にあるか否かを判定す
る(ステップ140)。バッチ内の処理が終了したと
き、すなわち1バッチあたり追跡する中性子の個数が0
となったときは、バッチ数を1減らし、ステップ100
の中性子源設定に戻る。
【0073】一方、中性子の運動エネルギが現在メモリ
に格納しているデータで処理不能であれば、現在の中性
子の位置とエネルギーと飛行方向を中性子源設定部5に
戻し、断面積更新部6に戻る。このとき、中性子の運動
エネルギが、担当のエネルギ領域の範囲内になければ、
その中性子情報をエネルギ領域移動用通信手段10を介
して他の実行機へ送る。
【0074】バッチ終了、エネルギー範囲外のいずれで
もなければ、次の反応同定部8において、中性子が存在
する位置の巨視的全断面積を計算する(ステップ15
0)。また続いて、ステップ150で求めた全断面積を
基に中性子の飛行距離を乱数で決める(ステップ16
0)。
【0075】次に、中性子の飛行後の空間領域が中性子
の飛行前の空間領域と同じかどうか、同一領域内で反射
境界を横切るか否かを判定する(ステップ170)。中
性子飛行後の空間領域が変化していれば、その中性子の
情報を空間領域移動用通信手段11を介して、飛行先の
空間領域を担当する実行機へ送る。
【0076】また、飛行中に反射境界(無限体系をシミ
ュレートする時に用いられる条件)を横切る時は、方向
変換の操作を行って(ステップ180)、領域判定用ス
テップ170に戻る。
【0077】中性子が飛行後にも自領域に位置すれば、
乱数を用いて反応を決定する(ステップ190)。この
ときの反応が散乱であれば、核データと乱数を用いてそ
の散乱角と散乱後の運動エネルギーを決定する。
【0078】次に、反応の結果が現在のエネルギ領域内
への散乱か、他のエネルギ領域への散乱か、消滅かを判
定する(ステップ200)。
【0079】反応が散乱であり、かつ、散乱後の運動エ
ネルギーが現在のエネルギー領域内にあれば、ステップ
150の断面積計算に戻る。また、反応が散乱であり、
かつ、エネルギー範囲外に散乱するならば、中性子の位
置とエネルギーと飛行方向を中性子源に戻し、ステップ
130の中性子発生に戻る。また、反応が核分裂や放射
捕獲反応等の消滅反応であれば、バッチあたりの追跡す
る中性子の個数を1減らして、ステップ130の中性子
発生に戻る。
【0080】各実行機2は、上記図2で説明したような
処理を行い、全体として図1に示すような並列計算機1
を構成している。図1において、符号12は各実行機2
間を結ぶ信号線、符号13は通信用ルータを示してい
る。各実行機2は、実行機間通信処理ルーティン9とエ
ネルギ領域移動用通信手段10と空間領域移動用通信手
段11を介して信号線12に接続され、互いに情報をや
り取り可能に構成されている。
【0081】図1に示す並列計算機1は、3個×3個の
実行機2を二次元的に配置したものであるが、さらに並
列計算機の実行機を三次元的に配置することも可能であ
る。
【0082】図3は、3個×3個×3個の27個の実行
機を有する並列計算機の領域割当ての例を示している。
図3において、軸14は同一領域を処理する実行機を示
しており、たとえば、実行機2aと実行機2a’と実行
機2a''は、ともに炉心の上領域の高速群の中性子のシ
ミュレーションを行う。軸14の方向の実行機の層数が
増えると、同一領域を担当する実行機の数が増え、各実
行機が処理する中性子の数が少なくなり、処理時間の短
縮化を図ることができる。通常の超並列計算機は、1万
台程度の実行機が実装されるので、図3のマトリックス
はもっと大規模になるしかし、上記のように位相空間を
領域分割すると、従来の並列化モンテカルロ法では問題
にならなかった二つの新たな問題が生じる。第一に、領
域間を移動する中性子があるので、実行機間通信によっ
て移動する中性子の情報を移動先の実行機に通信しなけ
ればならず、そのために、実行中のシミュレーションを
中止しなければならない。これは、並列計算機の並列化
効率を低下させる問題を生じる。第二に、各実行機で扱
う問題が異なるので、実行機の状態を監視する必要があ
り、さらに各実行機の負荷を分散する必要も生じる。以
下にこれらの問題の解決方法について説明する。
【0083】位相空間の領域を中性子が抜け出す時の通
信様式は、通信のタイミングによって以下に示す3つの
通信様式が考えられる。 (1) 一括通信 中性子が他の領域に移動するときに、中性子の情報を一
時的に通信用バッファに貯める。担当する領域内の中性
子が全て消滅したとき、あるいは全ての中性子が他領域
に移動したとき、あるいは通信用バッファが飽和状態に
なった時に、移動先領域を担当する実行機へ中性子の情
報を送信する。 (2) 逐次通信 中性子が他の領域に移動するときに、移動先領域の実行
機へ中性子情報を送信し、送信された実行機の通信用バ
ッファにその中性子情報を格納する。 (3) 一括通信と逐次通信の折衷 移動する中性子が所定個数になったときに、移動先の実
行機に送信する。
【0084】これら3つの通信様式は使用状況によって
適・不適がある。一般に、Nワードのデータを通信する
時間Tは、下式のように表わせる。
【0085】T=Tc+N×t ここで、Tc は、通信の前後の処理に要する時間であ
り、tは1ワードのデータを転送するのに要する時間で
ある。通常Tc はtよりかなり大きい。
【0086】1回の通信で大量のデータを転送するとき
は、(1) の一括通信によれば、Tcが無視でき、通信時
間はほぼN×tと等しくなる。これに対して、(2) の逐
次通信によれば、N(Tc +t)の通信時間を要する。
つまり、(1) の一括通信では、1ワードあたりの通信時
間はtとなり、(2) の逐次通信では、1ワードあたりの
通信時間は、ほぼTc となるので、大量のデータを一回
の通信で転送する場合は、通信時間の面で(1) の一括通
信が圧倒的に優れていることが判る。
【0087】しかし、(1) の一括通信では、データを転
送する間隔が長くなるために、通信用バッファにデータ
を蓄積している間に、送信先の領域を担当する実行機が
処理を終了すると、その実行機はデータ受信待ちの態勢
で休止してしまう。これは、PEの稼働率を下げ、並列
化効率の低下の原因となる。
【0088】これに対して、逐次通信では、データを転
送する間隔が短くなるために、実行機の稼働率低下は
(1) の一括通信より緩和できる。
【0089】以上でのべた一括通信と逐次通信の長短
は、位相空間全般に成立することであるが、幾何空間と
速度空間では、これらの長短の効果が多少異なって現れ
る。
【0090】幾何空間の領域移動の場合には、中性子の
移動は順方向と逆方向の2種類があるために、実行機は
中性子の情報を送信するとともに受信して相互に独立に
処理を実行できる。従って、原理的には、一括通信でも
逐次通信のいづれにも並列性がある。
【0091】並列化効率を低下させる原因には、移動す
る中性子の情報の通信時間と、通信しあう実行機の処理
時間のばらつきの2つがある。このうち、移動する中性
子の情報の通信時間は最も重要であり、この通信時間と
中性子追跡に要する時間の比が大きければ、通信オーバ
ーヘッドが大きくなり、本発明の有効性自体が成立しな
くなる。以下に本発明によれば、通常の核分裂炉の問題
に関しては、通信オーバーヘッドがほとんど問題になら
ないことを示す。
【0092】図4と図5は、典型的な沸騰水型原子炉の
燃料集合体を1体1領域として、領域分割した時の並列
化効率と処理時間の内訳を示している。図4および図5
において、通信様式は一括通信、想定している並列計算
機の実行機台数は約64000台、実行機の処理速度は
約100MIPS、通信の前後処理時間は約10μ秒、
ボーレイトを約200Mビット毎秒と仮定している。上
記仕様は、超並列計算機の実用機に近いと思われるが、
通信オーバーヘッドを保守的に評価するために、演算速
度は多少過大に、通信速度は多少過少に仮定した。
【0093】図4は、並列化効率(縦軸)を実行機がシ
ミュレートする中性子数を横軸にして示している。図
中、符号+で示す折れ線15は実行機間の通信時間を無
視した場合の並列化効率の上限を示しており、符号白ぬ
き四角形の符号で示す折れ線16は通信時間を考慮した
場合の並列化効率の上限を示している。
【0094】通信時間を無視した折れ線15が通信時間
を考慮した折れ線16より、中性子数の増加とともに大
きく増加するのは、中性子数が増えると実行機の処理時
間のばらつきが小さくなるからである。
【0095】図5は、実行機あたりの中性子数横軸、処
理時間の対数を縦軸に、実行機の処理時間の内訳を示し
ている。符号+で示す折れ線17は中性子情報の通信時
間、符号白ぬき四角形の符号で示す折れ線18は640
00台の実行機の監視に要する時間、符号×で示す折れ
線19は計算時間を含めた全処理時間を示している。
【0096】図5に示すように、中性子情報の通信時間
と計算時間は追跡する中性子数に比例して増加し、実行
機の監視に要する時間は追跡する中性子数に関してきわ
めて緩やかに増加する。このことから、沸騰水型原子炉
の燃料集合体単位では、本発明のような事象駆動型モン
テカルロ法の場合には、中性子追跡に要する時間が中性
子情報の通信時間よりも桁違いに大きいために、中性子
情報の通信のオーバーヘッドは無視できることがわか
る。
【0097】上記幾何空間の中性子の移動が順方向と逆
方向の二方向があるのに対して、速度空間の中性子の移
動は、大部分が高エネルギーから低エネルギーへの移動
である。したがって、核分裂炉のような初期中性子が高
エネルギーにしか存在しない場合には、一括通信様式に
よると、高エネルギ領域を担当する実行機から低エネル
ギ領域を担当する実行機へと処理が継続されることにな
るので、完全な逐次処理となる。これは、並列化効率を
大巾に低下させる。
【0098】図6は、上記核分裂炉における一括通信様
式の逐次処理の様子を示している。図6の縦軸は時間
軸、横軸は処理すべき実行機を示している。図中、矢印
20は実行機2aの処理時間、点線20’は実行機2a
の休止時間、矢印21は実行機2aから実行機2bへの
通信時間、矢印22は実行機2bの処理時間、点線2
2’は実行機2bの休止時間、矢印23は実行機2bか
ら実行機2cへの通信時間、矢印24は実行機2cの処
理時間、点線24’は実行機2cの休止時間、矢印25
は実行機2cから次の実行機への通信時間を示してい
る。このような場合、並列計算機1は完全な逐次処理に
なり、各実行機の休止時間によって並列化効率が低下す
る。
【0099】このような場合、通信様式は逐次通信か一
括通信と逐次通信の折衷様式を採らなければならない。
そのような通信様式を採る場合の処理の様子を図7に示
す。
【0100】図7において、縦軸は時間軸、横軸は処理
すべき実行機を示している。この場合逐次通信を採用し
ているので、実行機2aは、第一の中性子を時間26で
処理した後に、その中性子情報を矢印27で示すように
実行機2bへ送り、続けて第二と第三の中性子を矢印2
6’,26''で示す時間でシミュレートする。この第二
と第三の中性子情報はやはり逐次実行機2bへ送られ
る。実行機2bは、実行機2aからの第一と第二の中性
子情報を受け取り、矢印28,28’で示す時間で逐次
処理する。この実行機2bによる中性子情報は、矢印2
9で示すように実行機2cへ送られる。同様に、実行機
2cは、矢印30,30’で示す時間で逐次処理を行
う。
【0101】このように、中性子情報を逐次移動先の実
行機へ送って、移動先の実行機も並列的に処理を行うこ
とにより、各実行機の休止時間が減り、全体として並列
化効率が向上する。
【0102】上述したことから、本発明の中性子輸送シ
ミュレータは、各通信手段の通信様式として一括通信を
主とし、必要に応じて逐次通信を採用するのが好適であ
ることがわかる。
【0103】次に、並列化による処理時間短縮のため
に、一つの領域を複数の実行機が担当する場合の通信方
法について説明する。1領域の複数のPEが担当する場
合には、領域を移動する中性子の情報を送信する先の実
行機は複数になる。この場合、可能な限り休止状態にあ
る実行機を探して、そこへ送信することが、並列計算機
1の稼働率を上げることになる。
【0104】図8は、図3の軸4と軸14で構成される
面を眺めたものである。図中、符号白ぬき四角形の符号
は休止中の実行機、符号黒い四角形の符号は実行中の実
行機を示している。
【0105】今仮に実行機2aから中性子情報を送信す
る場合、通信距離が最短の実行機2bへ通信系路31で
送信するのが通信時間は短い。しかし、現在実行機2b
は実行中であるので、その原処理を終了しなければ送信
した情報に基づく処理はできない。
【0106】従って、送信先の実行機としては、休止中
の実行機2b''を選択し、そこへ通信系路32を介して
送信するのが理想的である。
【0107】ここで特に注意しなければならないのは、
並列計算機の種類と扱う問題によっては、休止状態の実
行機を探してそこへ送信するのが必ずしも最良でない場
合があることである。
【0108】高並列計算機のように並列度が比較的低い
計算機の場合には、計算機の絶対的な演算能力(実行機
数×1実行機のFLOPS値)が低いので、実行機の稼
働率を上げる必要がある。また、探索する実行機が少な
いので、探索に要する時間も少ない。このような場合
は、休止状態にある実行機を探して、そこへ送信する方
式が有効である。探索方法としては、並列計算機のオペ
レーティングシステムによる方法と、通常のソフトウエ
アポーリングによる方法とがある。
【0109】しかし、超並列計算機の場合には、高並列
計算機とは反対に、軸14方向の実行機数が多くなるた
め、探索に要する絶対的な時間が長くなり、通信距離も
長くなるので通信の衝突が生じ易い。このような計算機
では、休止状態にある実行機を探して実行機の稼働率を
上げても、探索に要する処理がオーバーヘッドとなって
並列化効率を低下させてしまう。
【0110】このような場合には、通信する実行機の対
を予め固定する方法がある。この方法によれば、完全に
休止状態にある実行機へ送信することができないが、探
索時間を省くことによって並列化効率の向上を図ること
ができる。
【0111】本発明のように領域分割する場合には、割
り当てられた実行機の演算量が等しくなるように領域分
割しなければ、特定の実行機のみが長時間の演算を行
い、他の実行機は休止状態となって、並列化効率が低下
する問題がある。
【0112】このような各実行機の処理時間のばらつき
を避けるためには、各実行機の演算量が等しくなるよう
に領域分割して各領域を担当する実行機の数を変える工
夫が必要となる(これを負荷分散という)。
【0113】負荷分散の方法には、シミュレーションを
開始する前に各領域を担当する実行機数を設定してしま
う静的負荷分散の方法と、シミュレーション中に随時各
実行機の負荷を変える動的負荷分散の方法とがある。
【0114】静的負荷分散は、問題依存性が少なく一般
性のある方法であるが、超並列計算機のような多数の実
行機を有する計算機でも、一領域を担当する実行機が少
なくなるので、柔軟な負荷分散は望めない問題がある。
また、静的負荷分散は、並列計算機の通信網等のアーキ
テクチャに有効性が依存しているので、汎用的な方法と
はなりにくい。
【0115】一方、動的負荷分散の場合には、領域を担
当する実行機数を変えることは、変えられた実行機のデ
ータを全て取り替えなければならないので、これに要す
る通信時間が大きくなり、動的負荷分散を適用するのが
困難な場合が多い。
【0116】上記負荷分散の問題に対して、本発明の中
性子輸送シミュレータは、中性子輸送におけるモンテカ
ルロ法の特性を利用した負荷分散の方法をとる。
【0117】静的負荷分散のための指標は領域の大きさ
にある。分割した領域の処理時間が等しくなるように分
割する領域の大きさの指標として平均自由行程、中性子
束、領域内の境界面の数、の3つがある。
【0118】つまり、各領域内で発生する事象の数は、
平均自由行程に反比例し、境界面数と中性子束に比例す
る。図2のフローチャートで説明すると、平均自由行程
が大きければ、原領域内で反応をおこす確率は小さく、
他領域に移動することが多くなる。従って、図2の処理
の流れでステップ190の反応同定を通過する回数が減
り、演算回数も減少する。
【0119】領域内の境界面が増えると、ステップ17
0の領域判定の通過回数と領域判定そのものに演算を要
するので、演算回数が増える。
【0120】中性子束の増加は、シミュレートする中性
子数が増えることを意味し、演算ループの反復回数が増
え、演算回数が増える。
【0121】上記平均自由行程と中性子束と領域内の境
界面の数の3つの要素は、シミュレーション前に予測す
ることができる。中性子束はそれ自身評価の対象である
ので、単純化してモデル計算等でおおまかなことしか判
らないが、負荷分散のための指標になりうる。
【0122】シミュレーションを実行する前に、分割す
る領域の平均自由行程と領域内の境界面数と中性子束が
等しくなるように領域分割すると、各領域を担当する実
行機の演算回数が等しくなり、並列化効率が高い静的負
荷分散を得られる。
【0123】この静的負荷分散の欠点としては、平均自
由行程と領域内の境界面数と中性子束が等しくなるよう
な領域分割が必ずしも可能ではないことがあげられる。
また、時間依存のモンテカルロ法のように、シミュレー
ションが進行するに従って、領域内の中性子束や組成が
変化するような場合には適用しにくい。従って、上記3
つの要素による静的負荷分散のみでは、負荷分散に限界
がある。
【0124】これに対して、一般に中性子輸送モンテカ
ルロシミュレーションでは、中性子の吸収断面積が大き
い領域で、見かけ上中性子数を増やす技法が使用されて
いる。これを重み付き標本化法(Weighted Sampling Me
thod)と呼ぶ。この重み付き標本化法は、反応事象が少
ない中性子吸収断面積が大きい領域に対して、サンプリ
ング数に重みを乗じてシミュレートする中性子数を制御
する。
【0125】この重み付き標本化法を用いると、各領域
でシミュレートする中性子数を任意に制御することがで
きる。従って、平均自由行程と領域内の境界面数と中性
子束が等しくなるような分割ができない場合には、領域
内の中性子の重みを演算回数が等しくなるように調整す
ることで、各実行機の負荷を均等にするできる。
【0126】また、シミュレーション実行中に中性子束
と平均自由行程が変化してしまう場合にも、中性子の重
みを変えることで動的に負荷分散することができる。
【0127】
【発明の効果】上記説明から明らかなように、本発明の
中性子輸送シミュレータは、処理すべき体系を中性子が
属する空間領域とエネルギ領域を基準に分割し、分割さ
れた領域に対して並列計算機の各実行機に割り当てて、
シミュレーションを行うようにしているので、各領域の
中性子のタリーデータと核データを各実行機のメモリに
分散記憶させることができる。これにより、各実行機が
少ないメモリ容量によって、その担当領域の中性子のタ
リーデータと核データを記憶し、シミュレーションを行
うことができる。
【0128】この場合、中性子が他の領域へ移動するこ
とがあるが、本発明の中性子輸送シミュレータでは、並
列計算機の各実行機が通信手段を備え、移動する中性子
の情報を移動先領域を担当する実行機へ送信することが
できる。
【0129】これにより、本発明によれば、少ない計算
機資源によって複雑な体系の中性子輸送シミュレーショ
ンを行える中性子輸送シミュレータを提供することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の中性子輸送シミュレータのハードウェ
アを構成する並列計算機の構成と領域分割の概念を示し
た図。
【図2】並列計算機の実行機の構成とその処理の流れを
示した図。
【図3】同一領域を複数の実行機で処理する場合の実行
機の割当ての概念を説明した図。
【図4】通信時間を無視した場合と、通信時間を考慮し
た場合の並列化効率を比較して示したグラフ。
【図5】シミュレートする粒子数に対する並列化モンテ
カルロ法による処理時間の内訳を示したグラフ。
【図6】一括通信様式をとる並列化モンテカルロ法の核
分裂炉における逐次処理の様子を示した図。
【図7】逐次通信様式あるいは一括通信と逐次通信の折
衷様式をとる並列化モンテカルロ法の核分裂炉における
並列処理の様子を示した図。
【図8】同一領域を担当する実行機が複数ある場合に、
休止状態の実行機を探索して送信する様子を説明した
図。
【図9】従来の並列化モンテカルロ法の並列計算機の構
成を示した図。
【図10】従来の並列化モンテカルロ法の並列計算機の
各実行機の構成と処理の流れを示した図。
【符号の説明】
1 並列計算機 2 実行機 3 速度空間軸 4 幾何空間軸 9 実行機間通信処理ルーティン 10 エネルギ領域移動用通信手段 11 空間領域移動用通信手段

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】並列計算機を用いて中性子個々の動きをシ
    ミュレートするモンテカルロ法の中性子輸送シミュレー
    タにおいて、 処理すべき体系を中性子が属する空間領域とエネルギ領
    域を基準に分割し、分割された領域内の中性子のシミュ
    レーションを前記並列計算機の各実行機に割り当て、各
    領域の中性子のタリーデータと核データを各実行機のメ
    モリに分散記憶させ、前記各実行機によってその領域内
    の中性子の挙動をシミュレートするとともに、各実行機
    に通信手段を備えて中性子が他の領域へ移動したとき
    に、その中性子の情報を移動先の領域の実行機へ送信す
    るようにしたことを特徴とする中性子輸送シミュレー
    タ。
  2. 【請求項2】前記通信手段は、中性子の飛行後の空間領
    域が飛行前の空間領域と異なるときに、その中性子の情
    報を飛行後の空間領域を担当する実行機へ送信する空間
    領域移動用通信手段と、中性子の飛行後のエネルギ領域
    が飛行前のエネルギ領域と異なるときに、その中性子の
    情報を飛行後のエネルギ領域を担当する実行機へ送信す
    るエネルギ領域移動用通信手段とを有していることを特
    徴とする請求項1に記載の中性子輸送シミュレータ。
  3. 【請求項3】前記通信手段は、 中性子が他の領域へ移動するときに、その中性子の情報
    を通信用バッファに貯め、シミュレート中の領域内の中
    性子が全て消滅したとき、あるいは他領域への移動によ
    ってその領域内の中性子が無くなったとき、あるいは前
    記通信用バッファが飽和状態になったときに、移動後の
    領域を担当する実行機へ中性子情報を送信する一括通信
    様式と、 中性子が他の領域へ移動するときに、逐次移動後の領域
    を担当する実行機へその中性子の情報を送信する逐次通
    信様式と、 他の領域へ移動する中性子が所定個数になったときに、
    移動後の領域を担当する実行機へ中性子情報を送信する
    一括通信と逐次通信の折衷様式のいずれか一つの通信様
    式を有していることを特徴とする請求項1に記載の中性
    子輸送シミュレータ。
  4. 【請求項4】前記並列計算機は、同一の空間・エネルギ
    領域内の中性子をシミュレートする複数の実行機を有
    し、その領域に中性子が移動するときに、並列計算機の
    オペレーティングシステムあるいはソフトウエアポーリ
    ングによって休止状態にある実行機を探し、その休止中
    の実行機へ前記中性子の情報を送信するように構成した
    ことを特徴とする請求項1に記載の中性子輸送シミュレ
    ータ。
  5. 【請求項5】前記並列計算機は、同一の空間・エネルギ
    領域内の中性子をシミュレートする複数の実行機を有
    し、各実行機は、中性子が他の空間・エネルギ領域に移
    動したときに中性子情報を送信する実行機を予め定めて
    いることを特徴とする請求項1に記載の中性子輸送シミ
    ュレータ。
  6. 【請求項6】前記中性子の空間領域とエネルギ領域に関
    する分割は、中性子の平均自由行程と、中性子束と、領
    域内の境界面の数が等しくなるように領域分割されてい
    ることを特徴とする請求項1に記載の中性子輸送シミュ
    レータ。
  7. 【請求項7】中性子のサンプリングの重みを変化させて
    各空間・エネルギ領域を担当する実行機の演算量を調整
    可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の中性
    子輸送シミュレータ。
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