JPH0691821B2 - 細胞の電気化学的制御方法 - Google Patents

細胞の電気化学的制御方法

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JPH0691821B2
JPH0691821B2 JP10210992A JP10210992A JPH0691821B2 JP H0691821 B2 JPH0691821 B2 JP H0691821B2 JP 10210992 A JP10210992 A JP 10210992A JP 10210992 A JP10210992 A JP 10210992A JP H0691821 B2 JPH0691821 B2 JP H0691821B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は各種細胞の電気化学的制
御方法に係わり、より詳しくは微生物、動植物等の、細
胞の種類の新規な制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】微生物
等の種類の分類学的識別乃至同定は、臨床検査分野を始
めとして広汎な各種産業分野等に於いて極めて重要な位
置を占めているものであるが、その実施は所謂選択培地
を使用したコロニー計数法、顕微鏡直接観察法等に依る
ものであるため、著しく煩雑且つ長時間を要するものと
ならざるを得なかった。
【0003】他方、本発明者らは、先に生細胞が電極に
直接接触すると電流が得られる現象を発見し、この現象
を利用した電気化学的菌数計数法を提案した〔アナリテ
ィカケミカ アクタ、Anal. Chim. Acta, 98, 25(197
8); アプライド アンド エンバイアンメンタル マイ
クロバイオロジー、Appl. Environ. Microbiol., 37,11
7(1979) ;及び、ヨーロピアン ジャーナル オブ ア
プライド マイクロバイオロジー アンド バイオテク
ノロジー、Eur. J. Appl. Microbiol. Biotechnol., 1
0, 125(1980) 〕ものであるが、細胞の種類、菌学的性
質等の識別更にはその機作等に関しては全然未解明であ
った。
【0004】上記に鑑み本発明者らは更に鋭意研究の結
果、細胞と作用電極との接触で得られる電流は、主とし
て、細胞の細胞壁中に存在する補酵素A乃至類似物等の
活性物質と電極間の電子の授受によるものであること、
及び、所謂サイクリックボルタメトリを始めとして、微
分パルスボルタメトリ、微分パルスポーラログラフ、位
相差弁別交流ポーラログラフ或いは矩形波ポーラログラ
フ等々の手法に準じて細胞に走査電位を印加し、生起す
る電流値又は微分電流値を測定すれば極めて高精度に細
胞の種類が識別され得ることを知見した。
【0005】更に、微分パルスボルタメトリ、微分パル
スポーラログラフ、位相差弁別交流ポーラログラフ或い
は矩形波ポーラログラフ等々の手法に準じて、細胞に漸
増走査電位とこれに重畳された適切な微小電位とを印加
し、4,4’−ビピリジンにより増強されて生起する微
分電流値を測定すれば極めて高精度に細胞の種類が識別
され得ることを知見した。
【0006】すなわち、上記方法により得られる電流−
電位曲線(ボルタモグラム、Voltammogram)又は微分電
流−電位曲線(微分パルスボルタモグラム)、乃至電流
値又は微分電流値の極値を与える電位値(ピーク電位
値)、或いは曲線パターン等は、細胞の種類に応じて相
互に相違するので、これにより各細胞(微生物)相互の
弁別、同定が極めて明瞭に達成され得るものとなる。な
お、上記のピーク電位値は、各種ポーラログラフの手法
によれば半波電位値として求められるものである。
【0007】更に、本発明者が見出したところによれ
ば、メンブラン・フィルタ等の支持体上に細胞等を高密
度に集積させ、作用電極に接触させれば、増強された電
流値又は微分電流値が観測されるので、例えば、測定対
象が細胞希薄懸濁液等の場合も、これをフィルタ処理し
て支持体(濾材)上に集積させて測定することにより、
明瞭判明な識別が可能になる。
【0008】こうして求められる細胞固有のピーク電位
値について更に研究したところ、各種細胞は、上記の固
有のピーク電位値又はその近傍の電位を外から印加され
ると、呼吸活性等の細胞活性が選択的且つ効果的に抑制
制御されるという驚くべき事実も本発明者は見出した。
従って、本発明は細胞の電気化学的制御方法を提供する
ものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)制御対
象細胞が電極に接触する条件下で前記電極に走査電位を
印加して生起する電流値または微分電流値から制御対象
細胞固有のピーク電位値を求め、(2)作用電極及び対
向電極を設けた液体中において、前記の細胞固有のピー
ク電位値又はその近傍の電位を前記作用電極に与えるこ
とにより、前記作用電極に接触させた支持体上に担持さ
れた細胞又は前記液体中の細胞の増殖を制御することを
特徴とする細胞の電気化学的制御方法に関する。
【0010】制御対象細胞に固有のピーク電位値を測定
し、同時にその制御対象細胞を識別する方法は種々考え
られるが、それらの方法において本発明者が見出した特
に好ましい測定・識別方法を最初に説明し、続いてその
ピーク電位値を利用する本発明の制御方法について以下
に説明する。測定乃至制御対象 細菌類、放線菌、カビ類、微細藻類、酵母類等の各種微
生物、赤血球、白血球、腫瘍細胞及び培養動植物細胞等
々の各種動植物細胞など、殆ど全ての細胞が識別乃至制
御対象となり得る。又、細胞を識別する場合において
は、生細胞をそのまま用いるのみでなく、例えば、生細
胞を超音波破壊処理して得られる溶出液を放出した細
胞、主に細胞壁を用いてもよい。
【0011】細胞の識別乃至判定 ボルタメトリ等によって、作用電極に走査電位を印加
し、走査電位の印加により生起する電流値又は微分電流
値を測定することにより得られる、細胞−電極間のピー
ク電位値或いは電流−電位曲線又は微分電流−電位曲線
の形状は、測定に用いられる細胞の細胞壁或いは細胞膜
の特性に起因するものである。
【0012】例えば後記各参考例に示す通り、バチルス
・スブチリス(Bacillus subtilis)、ラクトバチリス
・ファーメンタム(Lactobachillus fermentum)、スト
レプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis
及びスタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylo
coccus epidermidis)のようなグラム陽性菌に於けるピ
ーク電位値、電流−電位曲線又は微分電流−電位曲線
と、上記グラム陽性菌よりも複雑な細胞壁構造を有する
大腸菌(Escherichia coli)及びサルモネラ・チィフィ
ムリウム(Salmonella typhymurium)のようなグラム陰
性菌に於けるピーク電位値、電流−電位曲線又は微分電
流−電位曲線との間には明確な差異が見られる。従っ
て、前記方法に依れば、多種多様の細胞の識別、例え
ば、各種細胞の菌学的弁別、同定、具体的には、グラム
陰陽性菌の分別、所謂エイムズ(Ames)テストに於ける変
異復帰又は非復帰菌株の弁別等々、適切な測定条件を設
定すれば極めて広範囲に亘る識別が可能となるものであ
る。
【0013】測定諸条件及び適用分野 装置としては通常の各種ボルタメトリ用装置が使用され
得るものであるが、サイクリックボルタメトリ用装置の
1例につき模式説明図を示せば図1の通りである。
【0014】すなわち、例示の装置は作用電極1、対向
電極2及び飽和塩化ナトリウム甘汞電極(以下SSCE
という)、飽和塩化カリウム甘汞電極(以下SCEとい
う)等の参照極3を具備する電解セル4、ポテンシオス
タット5、線型走査乃至掃引電源6及びXY記録計乃至
シンクロスコープ7より構成されている。
【0015】ここに於いて、作用電極1、対向電極2と
しては通常の白金、金、銀、水銀、炭素等々の電極及び
これらを電導性高分子等で被覆等の各種修飾電極が使用
され得、又、対向電極2の電位が安定不変である場合は
参照電極3を欠く通常のポーラログラフと同等の回路構
成で足りる。電圧制御装置としては、ポテンシオスタッ
ト及び線型走査乃至掃引電源が必要である。ただし、定
電位電解により細胞の制御を行う際には、ポテンシオス
タットがあればよい。
【0016】尚、電解セルの具体例としては、図3に示
すとおり、測定対象である細胞(107)を保持する支
持体乃至フィルタ(108)を接触させた作用電極(1
05)、これを支えるプラスチック等のケース(10
9)、対向電極(104)及びガラスチューブで仕切ら
れた参照電極(106)をリン酸緩衝液中に浸して成る
電極システムが例示される。
【0017】上記細胞保持用の支持体乃至フィルタとし
ては、各種合成樹脂多孔質膜、例えば、東洋メンブラン
フィルタ(東洋濾紙株式会社製)又はミリポアフィルタ
(日本ミリポアリミテッド製)、或いは寒天、アルギン
酸等のゲル化剤或いは活性炭等の多孔質基材等を適宜選
択使用し得る。
【0018】測定は、支持体にメンブランフィルタを使
用する場合は、細胞の懸濁液をメンブランフィルタによ
りろ過し、細胞をフィルタ上に保持させ、そのメンブラ
ンフィルタを作用電極1に接触し、又は、支持体に寒天
を使用する場合は、寒天入り水溶液に細胞を懸濁してゲ
ル化したものを作用電極1に接触させ、電極間に周期的
走査(掃引)電位を印加して生起する電流を測定するこ
とによりなされるが、通常、その電位走査としては時間
に比例して電位を変化させる所謂線型走査(Linear Swe
ep)が好適に採用される。
【0019】このようにして得られる電流−電位曲線
は、後に詳述する通り細胞濃度に比例する極大電流値
(ピーク電流値)を与えるのみならず、細胞の種類によ
り相違するピーク電位値やその曲線形状等の特異性によ
り、細菌等の微生物の同定に充分な情報をも与えるもの
となる。すなわち、前記方法によれば、細胞の識別に際
し、応答時間ひいては測定時間の著しい短縮が計られ
る。さらに、測定が走査電位によるため、電極反応に於
ける攪乱的諸要因が排除され得るので、より精密且つ正
確な測定が可能となり、並びに、細胞濃度(数)のみな
らずその種類の同定も同時になされ得る等々の実用上多
大の利点が得られるものである。従って、前記の方法
は、醗酵プロセスのリアル・タイム制御用センサ、水質
の微生物汚染度の測定、赤血球や白血球数の測定等々、
広汎な各分野に於けるセンサ手段として極めて有用なも
のと云い得る。
【0020】他方、細胞識別に特に有用な微分パルスボ
ルタメトリ用装置の1例につき模式説明図を示せば図2
の通りである。すなわち、例示の装置は平面熱分解黒鉛
(以下BPGという)、高純度分光分析用カーボン(以
下HPGという)等の黒鉛、炭素、白金、金、銀、水銀
等々より成る作用電極11及び対向電極12とSSC
E、SCE等の参照電極13を具備するセル14、パル
スシーケンサ15、ポテンシャルプログラマ16、ポテ
ンシオスタット17、ドロップノッカ18、電流−電圧
コンバータ19、サンプル/ホルド(τ)110及び同
(τ’)111、ディファレンシャルアンプリファイア
112及びレコーダ113より構成され、公知のシステ
ムで微分パルス電位を印加し記録するものである。電圧
制御装置としては、ポテンシオスタット、パルスシーケ
ンサ、及びポテンシャルプログラマが必要である。ただ
し、定電位電解により細胞の制御を行う際には、ポテン
シオスタットがあればよい。
【0021】測定は、支持体にメンブランフィルタを使
用する場合は、細胞の懸濁液をメンブランフィルタによ
りろ過し、細胞をフィルタ上に保持させ、そのメンブラ
ンフィルタをセル14中の作用電極11に接触させ、又
は、支持体に寒天を使用する場合は、寒天入り水溶液に
細胞を懸濁してゲル化したものをセル14中の作用電極
11に接触させ、電極間に微小電位の重畳された漸増走
査(掃引)電位を印加して、生起する微分電流を測定す
ることによりなされるが、通常、その電位走査としては
時間に比例して電位を変化させる所謂線型走査(Linear
Sweep)が好適に採用される。走査電位に重畳される微
小電位としては、前述の通り、微分電流値を与え得る適
切な波形及び周期を有するものが適宜選択使用され得
る。
【0022】このようにして得られる微分電流−電位曲
線は、細胞の種類によって相違する明瞭なピーク電位値
を与え、これによりそれらの識別を可能とするのみなら
ず、そのピーク波形の解析により細菌等の微生物の電気
化学的活性に関する情報をも与えるものとなる。すなわ
ち、前記方法に依れば、各種細菌等の識別、同定が極め
て短時間且つ容易に達成されるものである。
【0023】ここで、前記方法においては、細胞−電極
間の電子伝達の重要な賦活剤である4,4’−ビピリジ
ン(以下BPという)を使用してもよく、その使用条件
について要約して示せば次の通りである。すなわち、B
Pは、緩衝液中に直接添加されるか、或いはニトロセル
ロース膜等に固定されて電極に接触されることにより細
胞−電極間反応に関与するものとなる。尚、緩衝液中に
於けるBPの濃度は、対象細胞の種類によって変動する
ものであるが、一般には数mM〜100mM程度が好ま
しい。後記参考例にも示す通り、BP共存下で走査電位
を印加し、走査電位の印加により生起する電流値又は微
分電流値を測定することにより、各種細胞のピーク電流
値の1.5〜2.5倍程度の増強及び波形の鮮明化、微
分電流値のピークの先鋭化がもたらされるものとなる。
尚、高精度の測定が必要でないときは、賦活剤は省略で
きる。
【0024】電流生成のメカニズム 細胞−電極間の電子授受は補酵素Aの存在と密接な関係
を持つと考えられる。したがって、ピーク電流値は代謝
経路と関係していることが推定される。そこでサッカロ
ミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の懸
濁液(2.4×108 個/ml)に代謝阻害剤であるロテ
ノン(7.6mM)、アンティマイシン(5.7m
M)、青酸塩(10.8mM)、亜ヒ酸塩(10.0m
M)を各々添加し、走査電位を印加して生起する電流値
を測定した。
【0025】その結果、ロテノン、アンティマイシン及
び青酸塩の添加によってはピーク電流値は減少しなかっ
た。一方、亜ヒ酸塩の添加によって4.8μAから3.
7μAの減少が観察された。ロテノンは、NADHデヒ
ドロゲナーゼに於ける電子授受を特異的に阻害し、アン
ティマイシンはチトクロムb、チトクロムc間の電子の
移動を阻害し、青酸塩はチトクロムオキシダーゼとO2
との間の電子の移動を阻害する。一方、亜ヒ酸塩はピル
ビン酸デヒドロゲナーゼを阻害することが知られてい
る。従って、ピーク電流の生成は、ピルビン酸デヒドロ
ゲナーゼとクエン酸回路に関係していることが推定され
た。
【0026】また後記参考例に示すように、細胞壁に存
在する化合物を超音波処理することにより得られた、超
音波処理細胞乃至細胞壁及びその溶出液のピーク電流値
を測定した。その結果、該細胞乃至細胞壁からのピーク
電流値(ピーク電位値:0.74V vs. SSC
E)は減少したが、溶出液のピーク電流値(ピーク電位
値:0.65V vs. SSCE)は次第に増加し
た。超音波処理によって細胞の数が影響されることはな
いので、上記の結果は、細胞壁中の電気化学的に活性な
物質が超音波処理によって溶出し、電気化学的に検出さ
れたことを示す。
【0027】溶出液の波長260nmに於ける吸収はア
デニン環と関連を有し、細胞懸濁液を超音波処理すると
ピーク電流値と共に増大する。アデニン環を持つ補酵素
であるNADH、NADPH、FMNH2 、FAD
2 、及び補酵素Aは電気化学的に酸化され得るが、N
ADHとNADPHに相当する波長340nmに於ける
吸収及びFMNH2 、FADH2 に相当する波長445
〜450nmに於ける吸収は、溶出液より得られなかっ
た。
【0028】さらに、炭素電極における、NADHとN
ADPHの半波電位値(本発明のピーク電位値)は、
0.35〜0.75V vs. SCEの範囲であっ
た。FMNH2 とFADH2 は、−0.4V vs.S
CEに於いて電気化学的に酸化されることが報告されて
いる。又、BPG電極を用いてNADH及び補酵素Aの
電流−電位曲線を得たところ、NADHのピーク電流値
は0.35V vs.SSCEであったのに対し、補酵
素Aのピーク電流値は0.65V vs.SSCEに於
いて各々観察された。以上から、補酵素Aのピーク電位
値は、超音波処理した細胞からのそれと類似しているこ
とがわかった。
【0029】次に、溶出液中の補酵素Aをスタッドマン
等による方法〔E. R. Stadtman etal.,ジャーナル オ
ブ バイオロジカル ケミストリー、 J. Biol. Chem.,
191367(1951)〕で酵素学的に定量したところ、3.6
mMの補酵素Aが検出された。細胞を超音波処理すると
補酵素Aの濃度は、溶出液のピーク電流値の増大と共に
増大するので、溶出液から得られるピーク電流値の増大
は、緩衝液中の補酵素Aの濃度の増大に因ることが推定
される。換言すれば、細胞中の電極活性物質である補酵
素Aが電極と接触し、酸化されて電流が流れやすくな
り、酸化波(陽極波 anodic wave)のピーク電流値が現
れるものと考えられる。一方、細胞壁に存在する補酵素
Aは、緩衝液中に溶出するので、細胞乃至細胞壁より得
られるピーク電流値は減少した。
【0030】上記の結果は、細胞壁中に存在する補酵素
Aは、細胞−炭素電極間の電子授受を仲介することを示
す。溶出液より得られるピーク電位値は、補酵素Aのピ
ーク電位値と類似しており、細胞全体より得られるそれ
とは相違している。ピーク電位値は、pHにより決ま
り、したがって上記の現象は、緩衝液と細胞壁に於ける
補酵素Aを取り巻く環境との間でのpHの差異に基づく
ものであると推定される。
【0031】細胞活性の電気化学的制御 後記実施例に示す通り、呼吸活性等の細胞活性は、その
細胞に固有のピーク電位値又はその近傍の電位値を印加
することにより選択的に制御され得るものであるが、そ
の実施に当っては、フィルタなどの支持体上に集積され
た細胞又は液体中の細胞(細胞懸濁液)を作用電極に接
触させて、これに所定ピーク電位を基準とした周期的走
査電位や定電位を所定時間印加すれば足りるものであ
る。故にこの制御方法は、微生物の選択的活性制御とい
う点で醗酵工学、遺伝子工学等々の各分野に於いて有力
手段として使用できる。
【0032】試験例 (1)グルコース4g、ポリペプトン1g、KH2 PO
4 0.5g、MgSO4 ・7H2 O 0.2gを含有
する培地100ml(pH7.0)にサッカロミセス・セ
レビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を、30℃で1
8時間好気的条件下で培養した後、5℃、8000×g
で遠心分離に付し菌体を採集した。採集した菌体を、
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で2度洗浄し、こ
れを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)10mlに懸濁
し(細胞濃度:9×108 個/ml)通気した。次に、上
記培養菌体を30分間超音波処理し、5℃、8000×
gで遠心分離に付し、溶出液を得、超音波処理細胞壁は
集めて緩衝液に再度懸濁させた。この細胞壁及びその溶
出液を試料として用いた。電解セル(容量約25ml)、
ポテンシオスタット(北斗電工株式会社製 Model
HA301)、線型走査電源(北斗電工株式会社製
Model HB104)、及びXY記録計(理研電子
F35)を図1の通りに回路構成し、これをサイクリ
ックボルタメトリ用装置として使用した。尚、電解セル
を構成する作用電極はBPG電極であり、対向電極とし
て白金線電極、参照電極としてはSSCEを用いた。上
記サイクリックボルタメトリ用装置の電解セルに前記各
試料を注入し、25±2℃の条件下サイクリックボルタ
モグラムを得、各試料のピーク電流値を経時的に測定し
た。
【0033】結果を図4〔縦軸:ピーク電流値(μ
A);横軸:時間(分)〕に示す。図中、曲線aは溶出
液の、曲線bは細胞壁の、各値である。図から明らかな
ように、電気化学的活性物質は細胞内に存在し、超音波
処理により容易に溶出可能なものと認められる。尚、ピ
ーク電位は破壊されていない細胞(Whole Cell)では
0.74V vs.SSCEであり、溶出液では0.6
5V vs.SSCEである。
【0034】(2)次にスタッドマン等の方法により溶
出液中の活性物質を検定したところ、補酵素A乃至その
類似物質であることが確認されたので、別途準備した
3.7mMの補酵素Aを用いて前記と同様にサイクリッ
クボルタメトリを行ったところ、そのピーク電位として
は前記の溶出液と同じ値である0.65V vs. S
SCEの値が得られた。これらのことから、菌体中の補
酵素Aがピーク電流に影響していることがわかる。
【0035】
【実施例】以下、参考例及び実施例によって本発明を更
に具体的に説明するが、これらは本発明を限定するもの
ではない。参考例1 図3は、細胞識別に用いる電極システムの一例を示すも
のである。この電極システムは、測定対象である細胞
(107)を支持する為の支持体であるメンブランフィ
ルタ(108)を装着した表面積0.17cm2 のBPG
製作用電極(105)、白金線よりなる対向電極(10
4)、SCE参照電極(106)、ポテンシオスタット
(北斗電工株式会社製 Model HA301)(1
02)、線型走査電源(北斗電工株式会社製 Mode
l HB104)(101)、及びXY記録計(理研電
子 F35)(103)より成る。特に指定されている
場合を除き、電極はアルミナの水懸濁液を浸み込ませた
つや出し布で磨いた。上記3電極を有し、隔膜(11
0)で隔てたガラス製の電解セルを用い、参照電極は、
先端が電解液の通過できるポーラスな焼結ガラスのフリ
ット(106a)で主要部と結合されたガラスチューブ
に浸すことによってセルの主要部から隔離されている。
【0036】大腸菌(Escherichia coli)を寒天培地で
37℃で12時間培養した後、0.1Mリン酸緩衝液
(pH7.0)に懸濁させた。メンブランフィルタ(東
洋メンブランフィルタ TM−2タイプ、ニトロセルロ
ース、孔径0.45μm、径25mm)の上に上述の培
養細胞の懸濁液5mlをわずかに吸引しながら落とした。
次に、このメンブランフィルタの細胞付着側を炭素電極
表面に接触させ培養細胞が炭素電極と接触するようにし
た。電極システムをリン酸緩衝液中に挿入し25±2℃
でサイクリックボルタモグラムを得た。
【0037】図5は0〜1.0V vs.SCEの電位
に於けるサイクリックボルタモグラムを示す〔縦軸:電
流値(μA);横軸:電位(V vs.SCE)〕。プ
ラス方向への最初の走査に於いて0.72V vs.S
CEで陽極波のピーク電流値が現れた。逆の走査の際、
それに対応するような減少ピークは見られなかった。従
って、細胞の電極反応は不可逆的なものである。この参
考例の場合は、0.1〜1.9×109 個/mlの範囲で
のピーク電流値は、メンブランフィルタ上の細胞数に比
例していた。この結果は、メンブランフィルタ上の大腸
菌(Escherichia coli)の細胞数が、サイクリックボル
タメトリのピーク電流値から求められることを意味す
る。検出可能な最小限度の大腸菌(Escherichia coli
の細胞数は5×107 個/ml(懸濁液換算)である。
【0038】参考例2 参考例1と同様の電極システムを用い、バチルス・スブ
チリス(Bacillus subtilis ;グラム陽性)、ラクトバ
チリス・ファーメンタム(Lactobachillus fermentum
グラム陽性)、ストレプトコッカス・サンギス(Strept
ococcus sanguis ;グラム陽性)、スタフィロコッカス
・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis;グ
ラム陽性)、大腸菌(Escherichia coli;グラム陰
性)、サルモネラ・チィフィムリウム(Salmonella typ
hymurium;グラム陰性)各々を前例と同様のメンブラン
フィルタ上に6×108 個保持し、それぞれのサイクリ
ックボルタメトリによるピーク電流値の現れる電位を測
定した。結果は下記表1に示す通りである。
【0039】
【表1】
【0040】バチルス・スブチリス(Bacillus subtili
s )、ラクトバチリス・ファーメンタム(Lactobachill
us fermentum)、ストレプトコッカス・サンギス(Stre
ptococcus sanguis )、スタフィロコッカス・エピデル
ミディス(Staphylococcus epidermidis)の様なグラム
陽性菌の細胞膜は、ペプチドグリカン及びティコイル酸
より成る細胞壁(代表的なもので、厚さ約250Å)に
囲まれている。大腸菌(Escherichia coli)及びサルモ
ネラ・チィフィムリウム(Salmonella typhymurium)の
様なグラム陰性菌の細胞壁及び細胞膜の構造はより複雑
であり、細胞膜は厚さ約30Åのペプチドグリカンの壁
に取り囲まれ、その壁はさらにその外側が厚さ約80Å
のタンパク質、脂質及びリポポリサッカライドのモザイ
クの膜で覆われている。上記の結果は、サイクリックボ
ルタメトリのピーク電位値には細胞壁の構造が影響する
ことを示している。すなわち、より複雑な膜で被覆され
ているグラム陰性菌のピーク電流は、グラム陽性菌のそ
れよりもプラス側の電位に於いて現れた。
【0041】参考例3 グラム陽性菌であるバチルス・スブチリス(Bacillus s
ubtilis )IFO3009を栄養培地(Nutrient Brot
h、牛肉エキス1%、ペプトン1%)中で培養し、対数
期に集菌し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で洗
浄後、同緩衝液に懸濁し細胞懸濁液(1.2×109
/ml)を調製した。同様にして、グラム陽性菌であるサ
ッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisia
e、YRD培地:酵母エキス1%、ポリペプトン2%、
グルコース2%)、グラム陽性菌であるラクトバチリス
・ファーメンタム(Lactobachillus fermentum)IFO
3071(栄養培地)、グラム陽性菌であるロイコノス
トック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroide
s )IFO3832(トマトジュース培地:トリプトン
1%、酵母エキス1%、トマトジュース20%)及びグ
ラム陰性菌である大腸菌(Escherichia coli、栄養培
地)をそれぞれ培養し、対数期に集菌し、前記緩衝液に
懸濁して生菌数濃度1.03×109 、5.0×1
8 、1.3×109 及び1.0×1010個/mlの各懸
濁液を調製した。
【0042】次にこれら細胞各懸濁液を、前例と同様の
メンブランフィルタ上に各5mlわずかに吸引しながら落
とし、その表面にこのメンブランフィルタを取りつけた
作用電極BPG、対向電極白金線及び参照電極SSCE
を用いて、走査電位0〜1.0V vs.SSCE、サ
ンプリング・タイム20ミリ秒、変調電圧50mV及び
100mV、電位単掃引0.5mV/秒、測定温度25
℃の条件下、微分パルスボルタメトリを実施した。尚、
装置は扶桑製作所製「ポーラログラフ312型」を使用
した。図6はバチルス・スブチリス(Bacillus subtili
s )の微分パルスボルタモグラムであり、0.68V
vs SSCEに極めて明瞭なピーク電位が認められる
〔図中、符号(a)及び(b)は変調電圧100mV、
50mVにそれぞれ対応する〕。 各細菌のピーク電位
値を下記表2に要約して示す。同表からも明らかなよう
に、前記方法に依れば細菌相互の識別が微分パルスボル
タメトリで極めて明瞭且つ容易になされ得るものであ
り、特にグラム陰性菌である大腸菌(Escherichia col
i)とその余の各グラム陽性菌とが明瞭に区別され得る
ことは注目に値するものである。
【0043】
【表2】
【0044】参考例4 (1)微生物 サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisi
ae)は、グルコース4g、ポリペプトン1g、KH2
4 0.5g、MgSO4 ・7H2 O 0.2gを含
む100mlの培地(pH7.0)に好気的に30℃12
時間培養した。サルモネラ・チィフィムリウム(Salmon
ella typhymurium)TA100は、1gのポリペプトン
及び肉エキスを含む100mlの培地で好気的に30℃1
5時間培養した。大腸菌(Escherichia coli)K12
は、グルコース0.1g、バクトートリプトン1g、酵
母エキス0.5g、及びNaClの5gを含む100ml
の培地(pH7.0)に好気的に30℃12時間培養し
た。ラクトバチリス・ファーメンタム (Lactobachill
us fermentum)ATCC9338は、トリプチケース1
g、トリプトース0.3g、酵母エキス0.5g、KH
2 PO4 0.3g、K2 HPO4 0.3g、クエン
酸アンモニウム0.2g、グルコース2g、ツィーン8
0(登録商標)0.1g、システイン塩酸塩0.02
g、及び0.5mlの溶液(MgSO4 ・7H2 O 1
1.5%、FeSO4 ・7H2 O 0.68%、MnS
4 ・2H2 O 2.4%含有)を含む100mlの培地
(pH6.8)で嫌気的に37℃16時間培養した。バ
チルス・スブチリス(Bacillus subtilis )MI112
は、K2 HPO41.4g、KH2 PO4 0.6g、
(NH4 2 SO4 0.2g、クエン酸ナトリウム
0.1g、カザミノ酸0.5g、グルコース0.5g、
及びMgSO4 ・7H2 O 0.02gを含む100ml
の培地(pH7.0)で好気的に30℃15時間培養し
た。
【0045】(2)4,4’−ビピリジン修飾電極 4,4’−ビピリジン1.56gを100mlのメタノー
ルに溶かし、溶液の濃度を100mMとした。0.3μ
mの粒径のアルミナ水懸濁液を浸み込ませたつや出し布
であらかじめ磨いておいたBPG電極(0.17cm2
を上記溶液に浸し、1分間ゆっくりと揺り動かした。上
記の様にしてBPG電極を操作前に毎回磨き、その都度
4,4’−ビピリジンによる修飾も行った。
【0046】(3)測定方法 ポテンシオスタット(北斗電工株式会社製 Model
HA301)、線型走査電源(北斗電工株式会社製
Model HB104)、及びXY記録計(理研電子
F35)を用い4,4’−ビピリジン修飾炭素電極を
用いてサイクリックボルタメトリを実施した。サイクリ
ックボルタメトリの電解セルは、容積25ml程度のガラ
ス製セルであり、対向電極は白金線、参照電極はSCE
である。参照電極は先端が焼結ガラスのフリットで主要
部と結合しているガラスチューブに浸すことによって電
解セルの主要部から隔離されている。メンブランフィル
タ(東洋メンブランフィルタTM−2タイプ、ニトロセ
ルロース、孔径0.45μm、径25mm)上に測定対
象である各種細胞を1.1×109 個保持し、このメン
ブランフィルタを前記4,4’−ビピリジン修飾炭素電
極に取り付け、菌体を電極に接触させた。さらに、測定
は、扶桑製作所製「ポーラログラフ312型」及びXY
記録計を用い、サイクリックボルタモグラムと同様の条
件で、微分パルスボルタメトリについても行い、微分パ
ルスボルタモグラムを得た。
【0047】図7はpH7.0に於けるサッカロミセス
・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に関するサ
イクリックボルタモグラム及び微分パルスボルタモグラ
ムを示す。図中(A)はサイクリックボルタモグラム、
(B)は微分パルスボルタモグラムを示し、(a)は
4,4’−ビピリジン修飾電極に関し、(b)は4,
4’−ビピリジン修飾をしていない電極に関するもので
ある。また、電流値の大きさを矢印の幅とその幅に相当
する電流値によって示す。測定は25±2℃で行った。
サイクリックボルタモグラムは、走査速度10mV/秒
に於いて、微分パルスボルタモグラムは、走査速度10
mV/秒、波高100mV及びパルス幅20m秒で得ら
れた。プラス方向への最初の走査に際し、修飾電極、非
修飾電極共0.74V vs. SCEに於いて陽極波
が観察された。サイクリックボルタモグラムのピーク電
位値と微分パルスボルタモグラムのそれは一致してい
る。4,4’−ビピリジン修飾電極より得られたピーク
電流値は、非修飾電極より得られたピーク電流値よりも
高かった。細胞が不在の場合、ピーク電流は生成しなか
った。従って、4,4’−ビピリジン修飾によって電極
が賦活されることがわかる。前記各種微生物試料につい
てピーク電位を測定したところ、大腸菌(Escherichia
coli)0.72V vs.SCE、サルモネラ・チィフ
ィムリウム(Salmonella typhymurium)0.70V v
s.SCE、バチルス・スブチリス(Bacillus subtili
s )0.68V vs.SCE、ラクトバチリス・ファ
ーメンタム(Lactobachillus fermentum)0.68V
vs.SCEであった。
【0048】参考例5 バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis )MI11
2(Arg−15、leu B8 thi5 r- -
rec E4、以下本参考例ではプラスミド無しとい
う)は、スピッツェン培地(Spizizen Medium) 100ml
に、又、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis
MI112(プラスミドPTL12含有、以下本参考例
ではプラスミド有りという)は、1μg/mlのトリメト
プリム(trimethoprim)を含んだスピッツェン培地(Spizi
zen Medium) 100mlに、各々植菌し、37℃、12時
間好気的に培養した。集菌後、0.1Mリン酸緩衝液
(pH7.0)で洗浄し、懸濁させて菌体をBPG電極
表面にメンブランフィルタを用いて接触させた。測定
は、電解セルに20mlH型セルを用い、作用極にはBP
G(0.17cm2 )、対向電極には白金線、参照電極に
はSCEを用いサイクリックボルタメトリにより電気化
学的挙動を測定し、サイクリックボルタモグラムを求め
た。電位走査速度は10mV/秒に設定し、測定は25
℃で行った。プラスミド無しとプラスミド有りのサイク
リックボルタモグラムを求めた結果、下記表3のように
各細胞においてピーク電流の発生するピーク電位が得ら
れた。このことは、プラスミド有りの細胞も同様に測定
出来ることを示している。
【0049】
【表3】
【0050】参考例6 ラクトバチリス・ファーメンタム(Lactobachillus fer
mentum)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(St
aphylococcus epidermidis)、ストレプトコッカス・サ
ンギス(Streptococcus sanguis )、大腸菌(Escheric
hia coli)、サルモネラ・チィフィムリウム(Salmonel
la typhymurium)、プロテウス・ブルガリス(Proteus
vulgaris)をロゴサ(Rogosa)培地で37℃、16時間、
好気的に静置培養した。各々のコロニーを適量かき取
り、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁させ、
これをメンブランフィルタ上に滴下し、菌体をフィルタ
上に集菌し、BPG電極表面(0.17cm2 )に接触さ
せて作用極とした。対向電極には白金線、参照電極には
SCEを用い、電解セルに0.1Mリン酸緩衝液(pH
7.0)10mlの入ったH型セルを用い、サイクリック
ボルタメトリにより電気化学的挙動を測定し、サイクリ
ックボルタモグラムを求めた。各試料についてのピーク
電位の測定結果を下記表4に示す。この結果より、細胞
数が同一でなくても、一定の範囲であれば固有のピーク
電位を示すことがわかる。
【0051】
【表4】
【0052】参考例7 バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis )IFO3
009、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces
cerevisiae)、ラクトバチリス・ファーメンタム(Lact
obachillus fermentum)IFO3071、ロイコノスト
ック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides
)IFO3832、及び、大腸菌(Escherichia col
i)を夫々前記参考例2と同様の条件で培養し、対数期
に集菌し、生菌数1.3×109 個/フィルタの各試料
を調製した。次に、フィルタ上に保持したこれらの各試
料につき、前記参考例4で用いた4,4’−ビピリジン
修飾BPG電極を使用し、参考例3と同様の条件下、微
分パルスボルタメトリを実施した。各試料のピーク電位
値を表5に要約して示す。同表からも明らかなように、
前記方法に依れば、細胞相互の識別が極めて明瞭かつ容
易になされ得るものである。
【0053】
【表5】
【0054】実施例1 12時間好気的に培養したサッカロミセス・セレビシエ
Saccharomyces cerevisiae)を集菌後、0.1Mリン
酸緩衝溶液(pH7.0)に懸濁させ、菌体を単層にな
るように、メンブランフィルタ上に固定化した後、この
菌体をBPG電極表面に接触させた。電解セル(25ml
H型)に0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を入れ、
作用極にはBPG、対向電極には白金線、参照電極には
SCEを用いて、サイクリックボルタメトリにより電位
走査を行ったところ、0.74Vvs.SCE付近に特
異的な電流のピークが得られた。
【0055】そこで、細胞表面についている電極活性物
質である補酵素Aを反応させるため、0〜1.0V v
s.SCEで電位走査を繰り返したところ、1回の電位
走査で約40%、2回で約60%、3〜10回で約70
%の呼吸活性が阻害された。次に、走査電位を種々に変
え、電位走査を3回ずつ行ったところ、0〜0.7V又
は0〜0.8Vまで電位走査したときに、著しく呼吸活
性が阻害され、約40%まで活性が低下した。以上の結
果より、サッカロミセス・セレビシエは、サイクリック
ボルタメトリにより得られたピーク電位(0.74V
vs.SCE)付近の電位を印加することにより、その
呼吸活性が阻害されることが示唆された。
【0056】又、上記のサイクリックボルタメトリによ
り得られたピーク電位(0.74Vvs.SCE)にお
ける定電位電解の、電解時間と呼吸活性の阻害の関係を
調べたところ、時間とともに活性が阻害され、10分で
75%まで活性が減少した。そこで、様々な電位で10
分間の定電位電解を行い、電位と活性阻害の関係を調べ
たところ、0.7〜0.75V vs.SCEの範囲内
においては、いずれの電位を印加しても、最も効率よく
呼吸活性を阻害することができた。このときの電極表面
のpHを測定したところ、ほぼ中性であり、このことか
らこの呼吸活性の阻害は、電極表面のpHの変化による
ものではないことがわかった。さらに、電極表面を透析
膜で覆ったり、細胞をプロトプラスト化して細胞表面に
電極活性物質がついていない状態にした場合、呼吸活性
の阻害はほとんどみられなかった。以上から、この呼吸
活性の阻害は、細胞の表面についている電極活性物質
が、電極表面へ泳動することによってのみ起こるのでは
なく、電極活性物質が電極で反応することにより呼吸活
性に影響を与えていることが明らかになった。又、バチ
ルス・スブチリス(Bacillus subtilis グラム陽性)、
大腸菌(Escherichia coliグラム陰性)についても、上
記と同様の方法で定電位電解させたところ、それぞれの
サイクリックボルタメトリにより得られたピーク電位付
近で最も効率よく呼吸活性が阻害された。従って、特定
の電位において特定の細胞種のみ選択的に制御すること
もまた、可能である。
【0057】
【発明の効果】本発明によれば、化学物質などを使用せ
ずに、電極から特定の電位を与えるだけで、特定の細胞
を選択的に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用するサイクリックボルタメトリ用
装置の模式的説明図である。
【図2】本発明で使用する微分パルスボルタメトリ用装
置の模式的説明図である。
【図3】細胞識別に用いる電極システムの一例の模式的
説明図である。
【図4】ピーク電位値の経時変化を示すグラフである。
【図5】大腸菌(Escherichia coli)のサイクリックボ
ルタモグラムである。
【図6】バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis
の微分パルスボルタモグラムである。
【図7】サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces
cerevisiae)のサイクリックボルタモグラム(A)及び
微分パルスボルタモグラムである。
【符号の説明】
4・・・電解セル、 5・・・ポテンシオスタット、 6・・・リニア・スイーブ電源、 7・・・XY記録計乃至シンクロスコーブ、 11・・・作用電極、 12・・・対向電極、 14・・・電解セル、 15・・・パルスシーケンサ、 17・・・ポテンシオスタット、 112・・・ディファレンスアンプリフィア 113・・・レコーダ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 5/00 8412−4B G01N 27/48 Z 7363−2J 33/483 F 7055−2J

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)制御対象細胞が電極に接触する条
    件下で前記電極に走査電位を印加して生起する電流値ま
    たは微分電流値から制御対象細胞固有のピーク電位値を
    求め、(2)作用電極及び対向電極を設けた液体中にお
    いて、前記の細胞固有のピーク電位値又はその近傍の電
    位を前記作用電極に与えることにより、前記作用電極に
    接触させた支持体上に担持された細胞又は前記液体中の
    細胞の増殖を制御することを特徴とする細胞の電気化学
    的制御方法。
  2. 【請求項2】 液体が水であり、細胞が、微生物、赤血
    球、白血球、腫瘍細胞及び培養動植物細胞である請求項
    1記載の細胞の電気化学的制御方法。
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