JPH0631891Y2 - 鶏の飼育舎 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、鶏を飼育する装置に
関する。

【０００２】

【従来の技術】鶏の飼育において、鶏舎に堆積する糞を
除去することが極めて大切である。それは、鶏舎に堆積
する糞が細菌の温床となってこれが病気の原因となるか
らである。病気は、細菌の繁殖した糞を鶏が食べること
が原因で鶏に伝染する。細菌は、飼育舎に出入りする人
間の足に付着して侵入する。飼育舎に侵入した細菌は、
糞に付着して培養される。糞に寄生する細菌が原因で発
生する病気は、糞を堆積させずに除去することによって
防止できる。鶏から排出された糞をすぐに鶏が食べて
も、病気の原因とはならない。それは、糞に細菌が繁殖
するまでに時間がかかることが理由である。

【０００３】肉鶏は、１平方メートルに約２０羽飼育さ
れる。２０羽の肉鶏は、成育するまでに約１４０ｋｇの
餌を食べる。したがって、土間には、食べた餌に相当す
る糞が堆積する。このため、肉鶏が成長するまでに、床
には数十ｃｍにも糞が堆積する。土間に堆積した糞は、
鶏を取り出すまで除去できない。このように、土間に多
量に堆積する糞は、悪臭ガス発生と細菌の繁殖に極めて
適した環境となり、細菌感染の原因となっている。

【０００４】鶏舎から糞を除去するために、飼育室の床
下に糞の排出ベルトを設けた飼育舎が開発されている
（特開昭５８−１２９９１９号公報、特開昭５４−１３
５１６９号公報）。これ等の公報に記載される飼育舎
は、飼育室の床に搬送ベルトを配設している。搬送ベル
トは無端のベルトで、これを移動させることによって、
飼育室から糞を除去する構造となっている。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】この構造の飼育舎は、
ほとんどの糞を排出できる特長がある。しかしながら、
糞を完全に除去することができない欠点がある。それ
は、排出ベルトに落下した糞は排出できるが、格子状の
床に付着して排出ベルトに落下しない糞を除去できない
からである。このため、床に付着して除去されない糞に
繁殖する細菌が鶏の病気の原因となった。さらに困った
ことに、床に付着する糞の除去には著しく手間がかか
る。実際には、鶏を飼育する状態で、床の洗浄は不可能
である。それは、区画された飼育室の内部にある床を洗
浄するからである。このため、この構造の飼育舎は、糞
に寄生する細菌による病気の発生を極減することができ
ない欠点がある。

【０００６】さらにまた、この構造の飼育舎は、肉鶏を
飼育できない欠点がある。それは、床が格子状のため
に、鶏が足を滑らせてムナタコの原因となるからであ
る。ムナタコとは、鶏が胸部を損傷して細菌が侵入し、
水腫となって胸の肉質が低下する状態である。糞を効率
よく排出するために、格子状の床の隙間を大きくするほ
ど、いいかえると、細い金属線で格子の間隔を広くする
ほど、ムナタコによって胸肉の品質が低下する。

【０００７】さらにまた、従来の鶏の飼育舎は、成長し
た鶏の取り出しに著しく手間がかかる欠点がある。それ
は、元気に逃げ回る鶏を手で捕らえるからである。

【０００８】この考案は、これ等の欠点を解決すること
を目的に開発されたもので、この考案の重要な目的は、
鶏を別の箇所に移動させた状態で床板を清掃でき、床を
衛生的に処理することによって、病気の感染を防止でき
る鶏の飼育舎を提供するにある。 また、この考案の他の重要な目的は、ムナタコを防止し
て良質の鶏を飼育でき、しかも、成長した鶏を簡単に取
り出すことができる鶏の飼育舎を提供するにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】この考案の鶏の飼育舎
は、前述の目的を達成するために、下記の構成を備えて
いる。 （ａ） 鶏の飼育舎は、家屋１と、家屋１の内部に水平
に設けられて鶏の飼育室４となる搬送ベルト２と、搬送
ベルト２を移動させる駆動手段３とを備えている。（ｂ） 搬送ベルト２は、３無端のループ状をしてい
る。 （ｃ） 水平に張設された無端の搬送ベルト２は、互い
に逆方向に移動する上段２Ａおよび下段２Ｂの上に飼育
室４を設けている。 （ｄ） 搬送ベルト２は多段に配設されており、多段の
搬送ベルト２によって、多段に飼育室４を設けている。 （ｅ） 搬送ベルト２は、複数枚の床板５と、この床板
５を連結するチェーン７とで構成されている。（ｆ） 床板５は、端部に筒体を有する。（ｇ） 床板５の筒体には回転軸８が挿入されている。（ｈ） 回転軸８の両端はチェーン７に連結されてお
り、床板５は、回転軸８を介してチェーン７に回動自在
に連結されている。（ｉ） 搬送ベルト ２の下面には水平ガイド１０が配設
されており、床板５がこの水平ガイド１０の上面を摺動
して、水平に保持され、水平ガイド１０に保持されない
位置で垂直方向に傾動され、垂直の姿勢となった床板５
は、上で飼育していた飼育室４の鶏を下の段の搬送ベル
ト２の上に落下させ、搬送ベルト２を貫通して鶏を下の
段に移送できるように構成している。

【００１０】

【作用】この考案の鶏の飼育舎は、無端ベルトである搬
送ベルト２を水平に張設して、上段２Ａと下段２Ｂの両
方を飼育室４の床として使用する。したがって、１段の
搬送ベルト２を、２段の飼育室の床に使用できる。この
ことは、搬送ベルト２を有効に利用できることに加え
て、狭い飼育舎内のスペースを極めて有効に利用して多
くの鶏を飼育できる特長がある。搬送ベルトを床に配設
した従来の飼育舎は、１段の搬送ベルトを１段の飼育室
の床に配設する。搬送ベルトは、無端ベルトであるため
に、飼育室の床に配設される上段と、逆に移動する下段
とがある。このため、従来の飼育舎は、飼育室の床で搬
送ベルトを往復させる必要があり、床の部分が高くな
る。すなわち、飼育室の床の部分が厚くなり、鶏を飼育
する実質的な容積が小さくなる欠点がある。この考案の
鶏の飼育舎は、搬送ベルト２の上段２Ａと下段２Ｂの両
方、すなわち、往復する搬送ベルト２の両方を飼育室４
の床として使用する。このため、搬送ベルト２を極めて
有効に利用して、狭い飼育舎で多くの鶏を飼育できる特
長がある。

【００１１】さらに、この考案の鶏の飼育舎は、搬送ベ
ルト２の床板５を傾動して、飼育室４の鶏を、順番に下
段に落下できる。飼育室４の鶏は、搬送ベルト２の上段
２Ａから下段２Ｂに、また、上に配設された搬送ベルト
２の下段２Ｂから、下に配設された搬送ベルト２の上段
２Ａに鶏を落下させる。このように、床板５を傾動して
鶏を下段に移送できるこの考案の鶏の飼育舎は、飼育舎
の鶏を、次第に下段に移送して簡単に集めることができ
る。

【００１２】従来の鶏の飼育舎は、夜中の夜が明ける前
の鶏が静かなときに捕まえて集める必要がある。鶏が暴
れると傷ものが多くなり、打ち身、関節が外れる等の弊
害があるからである。このため、鶏の捕獲に手間がかか
る。とくに、多段式の飼育舎は、高い段で飼育する鶏を
捕獲するのに極めて手間がかかる。ちなみに、１段に２
５００匹の鶏を４段で飼育し、全体で１００００羽の鶏
を飼育する飼育舎は、鶏を集めて籠に入れる費用が約７
円と計算されている。この考案の鶏の飼育舎は、搬送ベ
ルト２を移動して、鶏を次第に下の段に移送して集める
ことができるので、鶏を捕獲を著しく簡素化して、その
費用を従来の１／４に極減できる。また、死んだ鶏の取
り出しも簡単にできる。

【００１３】

【実施例】以下、この考案の実施例を図面に基づいて説
明する。但し、以下に示す実施例は、この考案の技術思
想を具体化する為の飼育舎を例示すものであって、この
考案の飼育舎は、構成部品の構造、材質、形状、配置等
を下記のものに特定するものでない。この考案の飼育舎
は、実用新案登録請求の範囲に於て、種々の変更を加え
ることができる。

【００１４】更に、この明細書は、実用新案登録請求の
範囲を理解し易いように、実施例に示される部材に対応
する番号を、「実用新案登録請求の範囲」、および「課
題を解決する為の手段の欄」に示される部材に付記して
いる。ただ、実用新案登録請求の範囲に示される部材
を、実施例の部材に特定するものでは決してない。

【００１５】図１に示す鶏の飼育舎は、家屋１と、家屋
１の内部に設けられた搬送ベルト２と、この搬送ベルト
２を駆動する駆動手段３とを備えている。

【００１６】搬送ベルト２は、この上で鶏を飼育できる
ように、水平に設けられている。搬送ベルト２は、効率
よく鶏を飼育するために、上段と下段の両方のベルト上
面を鶏の飼育室４としている。図１に示す飼育舎は、上
下４段に搬送ベルト２を配設して、鶏の飼育段数を８段
としている。

【００１７】図２と図３とは搬送ベルト２の平面と側面
とを示している。これ等の図に示す搬送ベルト２は、床
板５と、この床板５をベルト状に連結して駆動するチェ
ーン７とを備えている。

【００１８】床板５は、片側（図において左側）を中心
として水平の姿勢から垂直に傾動する。図４は床板５の
断面形状を示している。この図に示すように、床板５
は、両端を筒状に折曲して補強リブとしている。この形
状の床板５は、両端のリブに補強されて、充分な折曲強
度を実現する。床板５の左端の筒には回転軸８を挿入し
ている。回転軸８は、両端をチェーン７の連結片９の内
側に固定している。この構造の床板５は、回転軸８に回
転自在に挿入されている。ただ、図示しないが、回転軸
８を床板５に固定し、これを回転自在にチェーン７の連
結片９に連結することも可能である。

【００１９】図１に示す飼育舎は、成長した鶏を上段か
ら下段に移動させて飼育舎の外部に排出する。各段の飼
育室４で生育された鶏は、成長すると最下段から排出さ
れる。上段から下段に鶏を移送するために、搬送ベルト
２は、端部で鶏を落下させる構造となっている。すなわ
ち、搬送ベルト２が鶏を端部に移動すると、床板５が開
口される構造をしている。

【００２０】搬送ベルト２は、床板５の下面を支持して
水平の姿勢に保持している。床板５の下面を支持しない
と、自重で垂直に傾動する。床板５の下面を支持するた
めに、搬送ベルト２の下方には水平ガイド１０を配設し
ている。

【００２１】水平ガイド１０は、この上に床板５を載せ
て摺動させることによって、床板５を水平の姿勢に保持
する。水平ガイド１０は、床板５を水平に保持する部分
に設けられている。図４に示すように、床板５が水平ガ
イド１０の降下部分を移動すると、床板５は自重で垂直
に垂れ下がり、上に載せた鶏を下段に落下させる。飼育
舎の両端部分であって、鶏を下段に落下させる部分は、
光を透過させない隔壁６で区画されて暗室となってい
る。それは、落下する鶏が暴れないようにするためであ
る。

【００２２】搬送ベルト２の駆動手段３は、搬送ベルト
２のチェーン７をかけたスプロケット１１を駆動する。
したがって、スプロケット１１の軸には、チェーン７を
介して減速モーター１２を連結している。駆動手段３は
搬送ベルト２を極めてゆっくりと移動させる。

【００２３】図１の飼育舎は、家屋１の左端に洗浄室１
３を設けている。洗浄室１３は床板５に付着する糞を除
去した後、洗浄液並びに熱風を噴射して、奇麗に洗浄、
消毒、乾燥する。

【００２４】最下段の無端ベルトの下方には、飼育舎か
ら鶏を運び出すために、搬送システム１４を連結してい
る。搬送システム１４は、飼育舎から次の工程に成長し
た鶏を生かして移送する。搬送システム１４は、ベルト
コンベアを使用し、コンベアの外周を非透光カバーで覆
って移送路を暗室とする。理想的な搬送システム１４
は、地中にトンネルを設けて、ここにコンベアを配設し
たものである。

【００２５】図１に示す鶏の飼育舎は、隔壁６を家屋１
に取り付けている。搬送ベルト２の上面を複数の飼育室
４に区画する隔壁６は、垂直面内で回動できる。この隔
壁６は、垂直の姿勢で搬送ベルト２を複数の飼育室４に
区画する。搬送ベルト２に載せて鶏を移送するときは、
隔壁６を水平に回動する。水平に回動した隔壁６は、搬
送ベルト２を区画せず、鶏を搬送ベルト２と一緒に移動
できる状熊とする。

【００２６】この隔壁６は、上端縁に沿って回動軸（図
示せず）を固定している。回動軸の両端は、軸受けを介
して家屋に取り付けられている。さらに、図示しない
が、回動軸には隔壁を９０度回動させるシリンダー（図
示せず）を連結している。

【００２７】隔壁は、チェーン７の連結片９に固定する
こともできる。この隔壁６は、両側のチェーン７の連結
片９に橋架状態に固定される。

【００２８】隔壁６の間隔を調整して、飼育室４の大き
さを調整できる。この隔壁６の間隔を広くすると、ひと
つの飼育室４を大きくできる。隔壁６の間隔は、チェー
ン７の連結片９に固定する位置を変更して調整する。隔
壁６は、例えば、間隔を５０ｃｍ〜数ｍとする。

【００２９】

【考案の効果】この考案の鶏の飼育舎は、狭い飼育舎の
スペースを有効に利用して、鶏の飼育数を多くできる。
それは、搬送ベルトの上段と下段の両方を、飼育室の床
に配設することによって、１段の搬送ベルトを２段の飼
育室の床に配設するからである。床に搬送ベルトを設け
た従来の鶏の飼育舎は、１段の飼育室に１段の搬送ベル
トを配設する。この構造の飼育舎は、飼育室の床の部分
で搬送ベルトを往復させる必要がある。このため、床部
分を厚くなって、搬送ベルトの取付部分のスペースが大
きくなる。この考案の鶏の飼育舎は、搬送ベルトの上段
と下段の両方を飼育室に床に張設するので、このような
欠点がなく、実質的に飼育スペースを大きくできる特長
がある。

【００３０】さらに、この構造の鶏の飼育舎は、１段の
搬送ベルトで２段の飼育室から糞を排出できるので、飼
育室の段数に比較して、搬送ベルトの段数を半減でき
る。このため、設備コストを低減できる特長もある。

【００３１】さらにまた、この考案の鶏の飼育舎は、成
長した鶏を簡単かつ容易に、しかも迅速に能率よく集め
ることができる特長もある。このことは、鶏の飼育舎に
とって極めて大切なことである。従来の飼育舎が、多数
の鶏の捕獲に極めて手間がかかっているからである。さ
らに、鶏の捕獲は、鶏が静になる夜中の夜が明ける前の
作業であるから、この作業を簡素化することは切望され
ている。この考案の鶏の飼育舎は、移動する搬送ベルト
の床板を傾動すると、上の段の飼育室から下の段の飼育
室に鶏を落下できるようになっている。このようにし
て、飼育室で飼育する鶏は、次第に下の段に落下されて
１カ所に集めることができる。このため、この考案の鶏
の飼育舎は、成長した鶏の集荷作業を著しく簡素化でき
る特長がある。また、鶏を下の段に落下できるので、死
んだ鶏も簡単に取り出しできる特長がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の一実施例を示す鶏の飼育舎の概略断
面図

【図２】搬送ベルトの一例を示す平面図

【図３】搬送ベルトの一例を示す側面図

【図４】搬送ベルトの一例を示す断面図

【符号の説明】

１…家屋 ２…搬送ベルト ２Ａ
…上段 ２Ｂ…下段 ３…駆動手段 ４…飼育室 ５…床板 ６
…隔壁 ７…チェーン ８…回転軸 ９
…連結片 １０…水平ガイド １１…スプロケット １
２…減速モーター １３…洗浄室 １４…搬送システム

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 下記の全ての構成を有する鶏の飼育舎。 （ａ） 鶏の飼育舎は、家屋（１）と、家屋（１）の内
   部に水平に設けられた搬送ベルト（２）と、搬送ベルト
   （２）の駆動手段（３）とを備えている。（ｂ） 搬送ベルト（２）は、無端のループ状をしてい
   る。 （ｃ） 水平に張設された無端の搬送ベルト（２）は、
   互いに逆方向に移動する上段（２Ａ）および下段（２
   Ｂ）の上に飼育室（４）を設けている。 （ｄ） 搬送ベルト（２）は多段に配設されており、多
   段の搬送ベルト（２）によって、多段に飼育室（４）を
   設けている。 （ｅ） 搬送ベルト（２）は、床板（５）と、この床板
   （５）を連結するチェーン（７）とで構成されている。（ｆ） 床板（５）は、端部を筒状としている。（ｇ） 床板（５）の筒部には回転軸（８）を挿入して
   いる。（ｈ） 回転軸（８）の両端はチェーン（７）に連結さ
   れており、床板（５）は、回転軸（８）を介してチェー
   ン（７）に回動自在に連結されている。（ｉ） 搬送ベルト（２）の下面には水平ガイド（１
   ０）が配設されており、床板（５）がこの水平ガイド
   （１０）の上面を摺動して、水平に保持され、水平ガイ
   ド（１０）に保持されない位置で垂直方向に傾動され、
   垂直の姿勢となった床板（５）は飼育室（４）の鶏を下
   の段の搬送ベルト（２）の上に落下させ、搬送ベルト
   （２）を貫通して鶏を下の段に移送できるように構成さ
   れている。