JPH06160459A - 送電線電流センサ故障時の電流・位相分布の復元方法 - Google Patents

送電線電流センサ故障時の電流・位相分布の復元方法

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JPH06160459A
JPH06160459A JP33980392A JP33980392A JPH06160459A JP H06160459 A JPH06160459 A JP H06160459A JP 33980392 A JP33980392 A JP 33980392A JP 33980392 A JP33980392 A JP 33980392A JP H06160459 A JPH06160459 A JP H06160459A
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啓史 堀端
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 センサの一部が故障していても事故区間を求
めることのできる装置を提供する。 【構成】 入力層、出力層のニユ−ロンを全鉄塔の電流
・位相情報に対応させる。事故時の電流・位相情報を入
力層に与えると、出力層にほぼそのままの値が現われる
ようなニュ−ラルネットワ−クを構築する。事故時にお
いて正常なセンサからその鉄塔の電流・位相情報が得ら
れるが、これはそのままニュ−ラルネットワ−クの入力
層に入れる。故障のセンサに対応する未知の電流・位相
情報は隣接値の平均値等を入れる。ニュ−ラルネットワ
−クの演算結果の内未知の電流・位相情報を入力層に戻
し、既知のものは前回と同じ値を入れ再び計算する。以
下同様の計算をして、故障センサに対応する電流・位相
を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、送電線事故区間検出
システムにおいて、地線電流センサ故障・異常時に発生
した事故時に対する、電流・位相分布を復元する方法に
関する。電流・位相分布を復元するのは事故区間を正確
に標定するためである。
【0002】
【従来の技術】送電線には、多くの電流検出センサが設
けられている。もしも送電線に事故が発生すると、電流
検出センサの電流値の分布から、事故区間を特定でき
る。ここで区間というのは隣接する電流検出センサの間
の線分を意味する。隣接する二つの電流検出センサの間
に事故区間がある場合このセンサに挟まれる区間を事故
区間というのである。事故区間を特定することを事故区
間の標定という。
【0003】もしも全ての鉄塔に電流検出センサが設け
られており、全ての電流検出センサが正常であれば、事
故区間の標定を誤り無く行うことができる。これについ
ては全鉄塔の電流検出センサの電流・位相分布から事故
区間を求める技術が存在している。しかし幾つかの電流
検出センサが故障・異常である場合は、これら電流検出
センサの値から事故区間の標定ができない。従来は、電
流検出センサが故障・異常の時に、事故区間標定ができ
るシステムは存在しなかった。従って本発明に対応する
従来技術は存在しない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来、全ての鉄塔に電
流検出センサが設けられ、あるいは標定に必要な数の鉄
塔に電流検出センサが設けられており、電流検出センサ
が全て正常である場合は、事故区間標定を正確に行うこ
とができた。しかし電流検出センサが異常であったり伝
送装置が異常であって、中央装置で事故時の正確な電流
・位相情報を収集できない場合、正確な事故区間標定が
できない。本発明は、このような問題を解決し、幾つか
の電流検出センサが異常であっても、事故区間標定を正
確に行うことができるようにした送電線の電流・位相分
布の復元方法に関する。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明では、中央装置で
収集した欠落デ−タを含む情報を、予めシミュレ−ショ
ンによって算出された、予想される全ての事故種別・事
故発生箇所での事故時の電流・位相分布を学習させたニ
ュ−ラルネットワ−クを用いることによって、欠落箇所
のデ−タを復元する。初めに、電流検出センサの出力で
ある電流・位相の値を入力層と出力層の各ユニットの値
とし、事故時における電流・位相分布を入力層のユニッ
トに入力すると、同じ電流・位相分布が出力層に出力さ
れるようなニュ−ラルネットワ−クを構築する。故障時
を条件として出力層が入力層に等しくなるようなニュ−
ラルネットワ−クである。但し出力層と入力層が等しい
といっても厳密に等しいのではなく、ある許容範囲にあ
るということである。
【0006】さらにまた電流検出センサの幾つかが故障
であるという場合、どの電流検出センサが故障であるの
かは分かるものとする。従って正常である電流検出セン
サがどれであるかということも分かるものとする。事故
時において、正常な電流検出センサからは、それが取り
付けられている鉄塔の正確な電流・位相が求められる。
そこでこれらの正常センサの電流・位相情報を、ニュ−
ラルネットワ−クの入力層に入力する。
【0007】故障であるセンサの情報が欠落している
が、これは最近接の正常センサの電流・位相の値を内挿
して仮に値を求めてこれを入力層の対応ユニットに入力
する。ニュ−ラルネットワ−クの演算を行う。これが第
1回目の計算である。出力層の出力の内正常センサに対
応する出力は収束性の判定に用いる。出力層の内故障セ
ンサに対応するものは、入力層に戻して対応するユニッ
トに入力する。正常センサに対応する入力層のユニット
は、正常センサの計測値を再び入力する。こうして第2
回目の計算をする。ついで3回目、4回目というように
ニュ−ラルネットワ−クの計算を繰り返す。このとき、
正常センサの電流・位相情報はそのまま用いる。何回計
算してもこれは同じ値を用いる。計測値であるからこれ
は真の値なのである。
【0008】これに反して、故障センサについては、計
算ごとに修正して行く。前回の出力層の出力結果を次回
の入力層の対応入力ユニットに戻して計算を進める。こ
のように、故障センサの電流・位相分布を演算により漸
近的に求めてゆくのが本発明の手法である。何回か繰り
返すと、出力層のユニットの値が一定値に収束するの
で、繰り返し計算を打ち切る。これで全センサに対応す
る電流・位相分布が得られたことになる。これをもとに
事故区間を標定することができる。
【0009】以上が本発明の概要である。次により詳し
く、ニュ−ラルネットワ−クというものから説明する。
図5、図6、図7に示すように、ニュ−ラルネットワ−
クは複数の入力層、中間層、出力層をもちこれらを重み
係数で結合したものである。入力層というのは、n個の
ユニットを持ちこれは一つの値を取ることができる。出
力層もn個のユニットを持つ。これもひとつの値を持
つ。中間層にも幾つかのユニットがある。これはn個以
下であることが多い。中間層が多いと、パラメ−タが多
くなるので計算に時間が係るが、しかしその反面多くの
事故情報を内包することができる。
【0010】ユニットは計算の単位となるものでありニ
ユ−ロンと呼ばれることもある。これは一つ前の層のユ
ニットからの出力に重み係数を掛けたものの総和を入力
として受け、2値化して一つの出力値を出力する。ひと
つの出力といってもこれが次の層の幾つものニユ−ロン
の入力になっている。単に重み係数を掛けたものを出力
するのでは線形結合を作っているのに過ぎない。しかし
ニユ−ロンではこれをさらに2値化して、非線形化して
出力するのである。
【0011】情報は錯綜しながら伝搬するが、情報の伝
搬が一方向的で層状に行われるニュ−ラルネットワ−ク
を多層型という。この他にも形式の異なるニュ−ラルネ
ットワ−クが存在する。前段の幾つかの入力層の値の線
形結合が中間層のユニットに入る。また中間層の幾つか
のユニットの線形結合が出力層に入る。中間層、出力層
のユニットはひとつのニユ−ロンであるから、この入力
をニユ−ロンがおこなうように0と1に二値化する。し
かしここでいうニュ−ラルネットワ−クでは、初期のニ
ユ−ロンという意味から踏み出しており、必ずしも2値
化せず、0〜1の中間値もとれるような変換関数を用い
る。これをシグモイド関数という。シグモイド関数によ
って入力情報を非線形化する。これについては後に述べ
る。
【0012】送電線の系統において、事故区間標定に必
要な数Nの電流検出センサが鉄塔に取り付けてあるもの
とする。本発明で用いるニュ−ラルネットワ−クは、事
故区間標定に必要な全鉄塔の電流検出センサの電流・位
相情報を入力層、出力層とする。中間層はこれより数が
少なくても良いし、同数であっても良い。ひとつの電流
検出センサは電流と位相という2つのパラメ−タを持つ
ので、事故区間標定に必要な電流・位相分布を与える鉄
塔の数がN個とすると、これらの鉄塔での観測可能なパ
ラメ−タは2Nということになる。
【0013】まず本発明のニュ−ラルネットワ−クを構
築する。例えば、ニュ−ラルネットワ−クの入力層の数
を2N、出力層の数も2Nとする(n=2N)。これは
すべての鉄塔の電流検出センサの電流と、位相値に対応
するものである。つまりJ番目の鉄塔のセンサSj の電
流Ij 、位相Pj との集合{Ij ,Pj }によって、送
電線の情報を表すことができるが、これらの全てを入力
層、出力層にふりあてる。そして、全ての事故の様相
(事故の種類と場所)に対して、入力層と出力層がほぼ
同一値になるように、中間層と入力層、出力層との重み
係数を試行錯誤的に決定する。重み係数を決定すること
がニュ−ラルネットワ−クを構築するということであ
る。
【0014】以上に述べたものは、電流も位相も一緒に
した混合型のニュ−ラルネットワ−クである。これはひ
とつのニュ−ラルネットワ−クを構築しこれを用いる方
法である。そうではなくて、他の方法も有りうる。一つ
の電流検出センサは、電流・位相というふたつの計測値
(両者を纏めてパラメ−タという)を与えるが、電流と
位相の間には相関関係が殆どないということがある。こ
のような場合は、電流と位相の情報について別々のニュ
−ラルネットワ−クを構築することができる。この場合
は、電流検出センサの数をNとし、ニュ−ラルネットワ
−クの入力層、出力層のユニット数をN(n=N)とす
ることができる。
【0015】入力層のパラメ−タをQi とし、出力層の
パラメ−タをRi とすると、事故時には、パラメ−タ群
{Qi }がある値を取る。これに対して出力層のパラメ
−タ群{Ri }が同じ値を取るように重み係数を決定す
る。何回もの計算をして、全ての事故の態様Ok (種
類、場所)についてこれが成り立つようにする。重み係
数は計算の度に変更されて適当な値に近付けて行く。最
終的に、任意の事故に対して、
【0016】 {Qi }≒ {Ri } (任意のOk ) (1)
【0017】が成り立つ。注意すべきことは、この等号
は、事故の時のみ成り立つようにするのである。そうで
ないときは成り立たない。もし非事故の時も成り立つな
らば、単に個々の成分が常に等しいという関係(Qi
i )になってしまう。線形変換の行列が単位行列にな
るものである。これではニュ−ラルネットワ−クなど全
く必要ない。また等号も厳密に等しいということを要求
するのではない。ほぼ等しければ良いのである。
【0018】
【作用】送電線の複数箇所に設置した電流検出センサの
内、数個のセンサが故障した場合、中央装置には、事故
時の正確な電流・位相情報が伝達されない。ために、収
集された不完全な情報から事故区間の標定を行わなけれ
ばならなかった。しかし本発明では、分かっている電流
・位相から、ニュ−ラルネットワ−クを用いて、欠落お
よび異常デ−タを正常なデ−タへと復元する。このた
め、電流検出センサの異常・故障時に発生した事故につ
いても、センサ正常時と同様の精度で、事故区間標定を
行うことができる。以下により詳しく説明する。
【0019】電流検出センサ(CT)は鉄塔に設けられ
て、電線を流れる電流の電流値Iと位相Pを常時計測し
ている。しかし正常時にはこれらの値は不必要である。
事故が発生した時の瞬間的な電流、位相の値が必要であ
る。これは電流に関して一つの値、位相に関しても一つ
の値である。交流電流であるから、電流値というのはピ
−クからピ−クまでの電流、または実効値を採用する。
事故が起きた場合は遮断機が働くので送電が中断され
る。つまり、事故発生から遮断機が働くまでの短い時間
に、各鉄塔において電流検出センサが前記の事故電流、
位相を測定する。
【0020】電流、位相の変化は事故の種類による。例
えば、地絡事故の場合、事故区間の直前での電流が増加
する。事故区間より先では電流が減少する。また位相は
事故区間の前後で、180°近く変わる。このような事
故Ok において、全鉄塔の全センサの電流・位相情報I
j 、Pj を求める。これをニュ−ラルネットワ−クの入
力層のパラメ−タQi として入力する。そして、中間層
を経て出力層Ri に値が出るのであるが、このRi がQ
i に近い値になるようにする。
【0021】これが本発明の特異な点である。全ての事
故の態様{Ok }について、Ri →Qi になるようにす
るのである。全ての状態において入力層=出力層とする
のではなく、事故時においてのみこうなるようにする。
【0022】しかし出力と入力とが単に一次変換によっ
て結合されているならば、事故の様相が多かろうと少な
かろうと、出力と入力を関係付ける行列は単に単位行列
になってしまう。事故態様が少ないと単位行列以外の可
能性も有りうるが、しかしその場合でも、どれが良いの
かという選択ができない。つまり単に一次変換のように
線形性のある変換では、出力層=入力層という制限を課
すると、関係行列は単位行列になり役に立たない。個々
の出力の値に他の入力パラメ−タの影響を取り込むこと
ができないからである。したがって、単に線形変換で入
力と出力を結合するのではいけない。
【0023】本発明でニュ−ラルネットワ−クを用いる
のは、ひとつはその非線形性である。入力と出力の関係
が非線形であると、前述の様に事故時に入力=出力とい
う限定を課しても、これらを結び付ける関係は単位行列
のように他のパラメ−タの影響をうけないようなものに
はならない。たとえ事故の態様がパラメ−タの数よりも
大きい場合でも、非線形関係であれば、一つの出力に多
くの入力の影響を盛り込むことができる。
【0024】入力層、中間層、出力層を用いる多層型ネ
ットワ−クについて説明する。これらの層の構成要素
は、ユニットということもありニユ−ロンということも
ある。図8にニユ−ロンの概念図を示す。ニユ−ロン
は、相互に接続されて、信号をやり取りしている。本発
明では多層型を用いる。これは既に述べたように、信号
の流れが層状に行われ一方的であるものである。入力層
から中間層へ、中間層から出力層へと流れる。
【0025】ひとつのニユ−ロンNj は、複数の入力X
1 ・・Xn を受けて、これに重み係数Wijを掛けて和Y
j を求める。これをこのまま次の層へ出力するのでは線
形結合と変わらない。そうではなくて、和Yj をシグモ
イド関数F(Y)を通して非線形にする。つまり、ニユ
−ロンのすることは、
【0026】 Yj =ΣXiij (2) F(Yj )=(1+e-Yj-1 (3)
【0027】という演算である。前者の線形結合の式
は、ニユ−ロンがいくつもの前段のニユ−ロンの影響を
受けるということを表している。ニュ−ラルネットワ−
クを構築するということは、線形結合の係数Wijを決め
ることである。本発明では、1層の中間層をもちいるか
ら、入力層と中間層の間の係数と、中間層と出力層の係
数とを決めると、ニュ−ラルネットワ−クをつくること
ができる。このように係数の決定が、ニュ−ラルネット
ワ−クを作るということに等しいのであるが、線形結合
段を幾ら重ねても線形変換である。これでは非線形の効
果を入れることができない。非線形化のための2値化関
数がシグモイド関数である。
【0028】図9に、シグモイド関数の概略の形を示
す。シグモイド関数は、入力を0と1の間の値に非線形
関係によって対応付けるもので、原初的な意味でのニユ
−ロンということでいえば、単純な2値化関数であっ
た。しかし、単なる2値化関数では中間の値が出てこな
いので不便であるから、2値化関数が0と1の近傍で裾
を引いたような対称な関数としている。図9に示したも
の以外にいくつも考えられる。重み係数Wijの選び方に
より、入力に対する2値化関数の値を変化させることが
できるので、シグモイド関数として何を選らんでも良
い。
【0029】このF(Yj )が、このニユ−ロンNj
出力として次の階層のニユ−ロンへ送られ、これらに対
する入力Xj =F(Yj )となる。
【0030】ただしシグモイド関数が(3)のような形
をしているのは、平均値が0である入力を受けて、0〜
1の範囲の出力を生ずる場合である。平均値が0でない
場合は、(3)のeの肩に入る関数は、(Yj −av)
となる。ただしavは平均値である。
【0031】出力の範囲を0〜1以外にするには、
(3)に係数を掛けて定数を加えればよい。入力の範囲
は限定されない。これは係数の選び方で入力範囲を実効
的に限定できるからである。平均値を差し引くのは、こ
こで出力を0.5にするためである。
【0032】本発明で用いるニュ−ラルネットワ−ク
は、事故区間標定に必要な全鉄塔の数Nの2倍(一つの
センサが電流と位相を求めるから)のパラメ−タを扱
う。そこでニュ−ラルネットワ−クは電流と位相を含め
たものとし(2N=nとし)入力層、出力層の数を全観
測値数nに等しくする。あるいは、電流のニュ−ラルネ
ットワ−クと、位相のニュ−ラルネットワ−クを別々に
構築しn=Nとしてもよい。 入力や出力の値は、範囲
を定めて正規化した方が扱い易いので、0〜1[0,
1]とか、−1〜+1[−1,1]というようにするこ
とが多い。
【0033】例えば位相は−180°〜180°である
から、これを180で割って、変域を[−1,1]にす
るとか、360でわって0.5を加え変域を[0,1]
にする。電流の場合も例えば1000Vが最大値である
と、実際の電流値を1000で割って、変域を[0,
1]にしたりする。これらは取り扱いを容易にするため
の手続に過ぎない。
【0034】入力層のi番目のニユ−ロンの出力をxi
(i=1,・・n)で表す。中間層の数をsとする。中
間層のh番目のニユ−ロンの入力をYh 、出力をyh
表す。ここでは中間層を1層として説明するが、これは
2層以上あっても良い。出力層のj番目のニユ−ロンの
入力をZj 、出力をzj で示す。これらの間には次の関
係がある。
【0035】 Yh =Σi=1 niih (h=1,2,・・s) (4)
【0036】 yh =(1+e-Yh-1 (5)
【0037】 Zj =Σh=1 shhj (j=1,2,・・n) (6)
【0038】 zj =(1+e-Zj-1 (7)
【0039】ここでΣの添え字i=1とnは、i=1か
らnまで加えるということである。JISでは、上下に
添え字を付けることができないので、後ろに付ける。
【0040】このような関係があるが、重み係数Wih
hjは定数であるが、所望の結果をもたらすように決め
るのである。本発明では、全ての事故において、事故電
流、位相の全パラメ−タが、入力層に与えられたとき
に、出力層にほぼ同一の値が出力されるようにこれらの
重み係数Wih、Uhjを決める。
【0041】これは方程式を解いて得られるというもの
ではない。つまり一義的に求まるものでないし、また入
力=出力といっても正確に等しくならない。計算機を用
いて繰り返し計算をする。そして、望ましい出力結果と
ネットワークからの出力との二重誤差が、満足すべき範
囲に入った時に学習を中止する。学習とは、最適な重み
係数を獲得することである。
【0042】上の(4)〜(7)において、シグモイド
関数(5)、(7)を使わずに、各ニユ−ロンの入力と
出力を等しいと置くと、中間層があっても、たんなる一
次変換にすぎず、出力=入力という限定を付すと、方程
式を解くことにより重み係数が正確に求まるが、これ
は、多くの場合、単位行列式になり無意味である。
【0043】[1.重み係数の決定]まずニュ−ラルネ
ットワ−クを構築する。全ての事故時において、入力=
出力となるように重み係数を決める。たとえば、これは
重み係数を様々に仮定してひとつの事故時のパラメ−タ
について、上記の計算をして、出力を入力に戻し、さら
に計算をして、出力を求めるという風にしてもよい。こ
のような繰り返しをして出力解が収束するように重み係
数を修正して行く。これを全ての事故時のパラメ−タ入
力について行うのであるから膨大な計算量である。
【0044】物理的考察や経験によってある程度の重み
係数の大小関係が推測できるので、これから出発すると
いうことも可能である。これから計算を初め、出力と入
力の違いを見て、重み係数を修正して、出力を徐々に入
力に近付けてゆく。
【0045】全事故の様相に対する、i番目の電流検出
センサの事故電流Ii 、位相Pj を入力層に入れたと
き、出力層にはこれらとほぼ同じ電流や位相が現れるよ
うにする。このようにして重み係数Wih、Uhjを確定す
る。以上が本発明のニュ−ラルネットワ−クの作製段階
である。
【0046】ここまでは、必要な全鉄塔にセンサが一つ
ずつ付いているとしての話である。しかし、もしも全鉄
塔にセンサがあれば、以上のようなニュ−ラルネットワ
−クは勿論不必要なのである。一部のセンサが故障して
おり、正常なセンサが足りないので、以上に説明したニ
ュ−ラルネットワ−クが必要になる。
【0047】以上の説明では、鉄塔に付けたセンサは、
電流と位相の二つの情報を計測するので、鉄塔の数がN
とすると、入力層のニユ−ロンの数nは2Nになる。と
ころが、実際にはセンサの電流と位相情報には互いに相
関がない。すると重み係数で電流と位相のニユ−ロンを
結ぶものは先験的に0とすることができる。だとすれ
ば、電流と位相については初めから別々のニュ−ラルネ
ットワ−クで扱うことができる。勿論、電流と位相を混
合して扱うニュ−ラルネットワ−クを構築しても良い。
本発明はいずれの手法によっても実現できる。
【0048】[2.事故時の計算]上に求めたニュ−ラ
ルネットワ−クは、事故時の電流・位相情報を入力層の
対応するニユ−ロンに与えると、出力層の対応するニユ
−ロンには同じ事故時の電流・位相情報が現れるという
性質がある。このようなものが役に立つのかどうか疑問
があるが、これは事故時のパラメ−タの傾向を内包して
いるので意味がある。これは単に入力を出力にそのまま
出しているのではなく、事故時においてのみ出力が入力
に等しくなるのである。
【0049】さて標定に必要な全鉄塔の数をNとし、こ
れらの鉄塔に電流検出センサを設置する。しかし、(N
−M)個のセンサが故障、異常であるとする。センサの
故障異常は,他の手段で既に分かっているとする。これ
は、中央装置においてセンサ信号を監視することにより
分かることである。正常なセンサの数がMとする。送電
線の電流・位相情報を電流検出センサが測定しており、
これを一定時間メモリに蓄積する。しかし正常時の電流
・位相情報は不要であるから、先に蓄積したものは捨て
る。事故時には、メモリに電流・位相情報が残るように
する。メモリの蓄積を先入れ先出しにすればこれは自動
的に行える。
【0050】事故が起こると、直ぐに遮断機が働くの
で、送電線に電流が流れなくなる。事故発生から遮断機
が働くまでの短い時間の電流、位相を事故時電流、事故
時位相ということにする。これはセンサ毎に与えられた
明確な値I、Pである。メモリの中に残っている。これ
を取り出して、ニュ−ラルネットワ−クの入力値として
用いる。纏めて{Kh }と書く。これらのセンサから直
接に得られる値は、入力層{Xi }の対応するニユ−ロ
ンにそのまま入れる。
【0051】しかしセンサが故障している鉄塔の電流・
位相情報が得られない。これをどうするかが問題であ
る。故障のためセンサによって測定されていない鉄塔の
電流位相情報をHg で表現する。これも入力層の入力
{Xi }に属するパラメ−タである。つまり
【0052】 {Xi }={Kh }+{Hg } (8)
【0053】と書くことができる。ここで前者はセンサ
で測定されるもので既知のパラメ−タである。後者は故
障のため測定されないもので未知パラメ−タである。事
故時に電流検出センサから電流・位相情報が与えられる
が、これは前者の{Kh }に対応するデ−タのみであ
る。後者の{Hg }はデ−タがない。全ての入力層につ
いて入力が与えられなければニュ−ラルネットワ−クを
演算できない。そこで、故障時のニュ−ラルネットワ−
クの計算において第1回目だけは、{Hg }は適当な数
から出発する。ある初期値をこれら{Hg }に対応させ
て、全ての入力層の入力パラメ−タ{Xi }を得る。こ
れをニュ−ラルネットワ−クに入れる。コンピュ−タに
より自動的に演算され、中間層、出力層のパラメ−タが
求められ、出力層に出力{zi }が得られる。これで第
1回目の計算が終わる。
【0054】直ぐに第2回目の計算をするが、入力層の
パラメ−タは、第1回目と少し違う。既知のパラメ−タ
{Kh }については前回と同じ測定値を用いる。これは
不変である。しかし、計測できなかったパラメ−タ{H
g }に関しては、出力層の対応する順番の出力を代入す
る。つまり{zg }→{Hg }とするのである。こうし
て2回目のニュ−ラルネットワ−クの計算をする。
【0055】第2回目の計算をして2回目の出力層の出
力{zi }を得る。つぎに第3回目の計算をするが、既
知の入力層入力{Kh }は前回と同じく測定値を代入す
る。しかし未知の入力{Hg }は、第2回目の出力層の
対応出力{zg }とする。つまり{zg }→{Hg }と
する。以下同様に、未知のパラメ−タは前回の出力層の
計算結果を代入することにする。既知パラメ−タは常に
測定値をそのまま用いる。つまり既知パラメ−タの出力
層出力は、収束性の判定以外には不要なものである。
【0056】こうして数回の演算をする。出力層の各パ
ラメ−タは次第にある値に収束して行く。事故時にこれ
だけの計算をするのであるが、ニュ−ラルネットワ−ク
の選び方により計算回数を少なくし、あまり時間のかか
らないようにすることができる。
【0057】どこで計算を中止するかということである
が、これは出力層の出力がそれぞれある有限確定値に収
束するので、前回と次回での出力層の出力パラメ−タの
違いがある範囲内に収まれば繰り返し演算を中止すると
いうふうにしてもよい。また計算の回数を決めておい
て、この回数に達したときに計算を止めるというふうに
してもよい。出力層の解が一様収束する場合は計算回数
を決めておくのが簡単であろう。一様収束の判定は容易
でないことが多いので、正常センサの出力値が入力値
(計測値で一定値)に収束することで、計算の妥当性を
知り、一定範囲内に収束した時に計算を中止する。
【0058】当然であるが、収束の速さは、初期値の選
び方による。未知の入力層パラメ−タを全て0や1から
出発しても良いのはもちろんであるが、これは必ずしも
最適の選択ではない。より望ましいのは、未知パラメ−
タの第1回目の値(初期値)は、隣接する既知パラメ−
タ(計測値)の内挿値を取るのが良いであろう。たとえ
ば未知パラメ−タHi が、となりに既知パラメ−タK
i-1 、Ki+1 を持つときは、これの単純平均として、
【0059】 Hi =(Ki-1 +Ki+1 )/2 (9)
【0060】とする。あるいはセンサの数がもっと少な
くて、隣接既知パラメ−タがない時は、両側の直近の既
知パラメ−タの値を内挿して、未知パラメ−タの初期値
とする。これはあくまで第1回目の初期値の話である。
第2回目以降では、未知パラメ−タは、前回の出力層の
出力をそのまま利用する({zg }→{Hg })ので、
このような問題はない。
【0061】このようなニュ−ラルネットワ−クの計算
を数回も繰り返した結果、出力層の出力が得られる。こ
れは、すべての鉄塔の事故時の電流・位相情報を与える
ものである。既知のパラメ−タについてはセンサで測定
されたままの値が出ている。センサの故障した鉄塔の電
流・位相に関する未知パラメ−タがこの演算によって得
られる。本発明の目的はここにある。こうして、事故区
間標定に必要な全鉄塔の電流・位相情報が得られる。
【0062】標定に必要な全鉄塔の電流・位相情報が分
かれば、事故区間標定を正確に行う技術は既に確立して
いる。これは初めに述べた。本発明により未知パラメ−
タを求めることができるので、全パラメ−タがわかり、
事故区間標定を行うことができる。事故区間標定は短時
間で行う必要があるが、本発明のニュ−ラルネットワ−
クの繰り返し計算は、コンピュ−タにより瞬時に行える
から、十分目的に沿うものである。
【0063】本発明のニュ−ラルネットワ−クは、事故
時の電流・位相情報を全て取り込んで、事故時の入力層
入力と出力層出力が合致するように重み係数を選んでい
る。重み係数に事故時情報が入っているということがで
きる。線形変換であれば、出力と入力を等しくするとい
う条件を置いてしまうと、どうしても変換行列が単位行
列になってしまうが、ここでは非線形変換を用いるの
で、事故時情報を重み係数に取り込むことができるので
ある。
【0064】
【実施例】図1に本発明の実施例に係るシステムの基本
構成を示す。システムは、送電線の複数箇所に設置した
電流検出センサと、その信号を変電所に設置した中央装
置まで伝送するセンサ信号伝送装置、および集められた
センサ信号から事故区間を判定する中央装置とから構成
される。電流検出センサは、事故区間標定に必要なだけ
鉄塔に設置される。必要であれば、全鉄塔に設置するこ
ともある。電流検出センサはN個あるが、この内幾つか
は故障しており、どれが故障であるかということは分か
っているものとする。正常な電流検出センサはM個しか
ない。M個のセンサ信号では事故区間標定ができないも
のとする。
【0065】正常な電流検出センサは、常時動作してお
り、検出した電流情報を中央装置に伝送している。中央
装置では、事故の発生していない時は、それらのセンサ
信号は使用していないが、一定時間(例えば1秒:50
サイクルまたは60サイクル相当)メモリに蓄えなが
ら、古いものから捨ててゆく。送電線に事故が発生(即
ち遮断器が動作)した場合、中央装置は波形の急激な変
化を、一定の閾値を設けて検出するなどの方法で事故発
生を知り、一定時間(例えば、10サイクル相当とす
る)経過後にメモリ書き込みを停止する。
【0066】よってメモリ内には、図2のように事故発
生10サイクル前から事故発生まで、事故発生から遮断
までの数サイクル(図では3サイクル)、遮断後数10
サイクルの合計50サイクルの全センサ情報が残ってい
ることになる。事故発生までの信号と、遮断器が働いた
後の信号は不要であるから捨てる。残りの事故時の3サ
イクルの信号から、電流・位相情報を得る。メモリに蓄
積された事故時の信号は交流信号であるが、実効値を取
るとか、ピ−ク値を取るなどして電流値を求める。交流
信号であるから位相を特定できるが、基準交流信号の位
相と比較してこのセンサの位相を求めることができる。
センサ一つ当たり、電流と位相の二つのパラメ−タが求
められる。
【0067】全センサが正常である場合は、中央装置
が、これらのメモリ内に蓄えられたセンサ情報から、送
電線全体の電流値や、位相の分布を抽出して、最も事故
発生である可能性が高い区間を見いだすことができる。
しかし、送電線全体の電流・位相分布のうち、幾つかの
センサが故障しており、そのデ−タが異常な値を示して
いたり、欠落していた場合には、正確に事故発生区間を
標定することができない。このような場合に本発明の方
法を適用すれば、未知の電流・位相分布を求めることが
でき、全電流・位相分布を再現できる。これにより正確
に事故区間を標定することができる。
【0068】以下、電流・位相分布復元のネットワ−ク
について説明する。仮に、対象とする送電線にn個の電
流検出センサを設置したとする。この内幾つかは故障し
ているものとする。どれが故障しているかということ
は、正常時の電流・位相信号分布から予め分かっている
ものとする。事故時には前述のように、遮断器が働いて
送電が中止される。これから遡ってメモリに残された信
号から、事故時の電流・位相分布信号を得ることができ
る。こうして送電線に設置されたn個の電流検出センサ
における、事故時の電流分布と位相分布とを算出するこ
とができる。図3は電流分布図である。横軸が電流検出
センサの番号で縦軸が電流値である。m番目のあたりで
電流が大きくなっている。この近傍で事故が有ったとい
う可能性が大きい。図4は事故時の位相分布である。横
軸はセンサの番号である。縦軸は位相である。位相であ
るから−180〜180°あるいは0〜360°の範囲
である。幾つかのセンサが故障しておりこれらからの信
号が無い。電流検出センサで求めた電流・位相分布情報
を、前記のニュ−ラルネットワ−クの入力として用い
る。
【0069】ここで、図3に示された電流分布を[−
1,1]若しくは[0,1]の区間に正規化する。既に
延べたように、正規化はニュ−ラルネットワ−クの入力
に対して、一般に行われることである。例えば入力デ−
タ中の最大値を1(位相の場合は正負の値なので各々を
+1,−1とする)としたり、また予め定めた値(例え
ば、1000[A]を1とするとか、位相の±180°
を±1とする)を用いて、入力値を0〜1若しくは−1
〜1の値に正規化する。正規化された各情報をもとに以
下の構成および手順で、構築されたネットワ−クに入力
し繰り返し演算することによって、電流検出センサが故
障している鉄塔での事故時の電流・位相情報を推定す
る。
【0070】[ネットワ−クの構成]ここでは、多層パ
−セプトロン型のネットワ−クを用いた(図5)。入力
層、中間層、出力層よりなり、演算の流れが一方的であ
る。それぞれは幾つかのユニットをもっている。入力層
および出力層のユニットの数は同数で(n個)で、送電
線に設置した電流検出センサの数と一致させた。つまり
これは電流のニュ−ラルネットワ−クと位相のニュ−ラ
ルネットワ−クを別々に構築するのである。入力層のユ
ニットが複数の中間層のユニットに繋がる。中間層の複
数のユニットが出力層の複数のユニットに繋がってい
る。細線はこれらの出力と入力の間の重み係数と考えて
良い。ニユ−ロンである各ユニットでは、これらの前段
からのパラメ−タの線形結合を計算し、シグモイド関数
を通して2値化する。これを出力として次段のユニット
に送る。出力層でも線形結合してこれをシグモイド関数
に通している。中間層のユニット数については、適宜、
ネットワ−クの学習がスム−ズに進行する程度に設定し
た。
【0071】[学習による重み係数の獲得]予め予想さ
れるできれば全ての事故種別、事故発生箇所についてシ
ミュレ−ションを行い、標定に必要なn個の鉄塔での各
事故ケ−スにおける電流・位相分布を求める。これらの
情報を用いて、事故時において、入力された分布を忠実
に出力層から出力するようなネットワ−クを構築する。
このネットワ−クは事故時において、出力≒入力となる
ようなものである。
【0072】即ち、ネットワ−ク学習時に用いる、教師
デ−タ(入力(入力デ−タ)とそれが与えられた場合の
望ましい出力結果(出力デ−タ)のペアから構成され
る)は、入力デ−タと出力デ−タが全く同一であるよう
なデ−タとした。図6はこれを示す。これは繰り返し重
み係数を調整し、各事故区間での電流・位相分布を入力
層に入れると、事故時の電流・位相分布の場合は、その
まま出力層の対応出力に現れるのである。これは重み係
数Wij、Ujkを決めることである。重み係数の獲得に
は、例えばバックプロパゲーショナルゴリズムを用いて
行う。
【0073】[電流検出センサ故障(異常)時の事故時
の電流情報の推定方法]センサのいくつかが故障してい
る場合、事故時には、既知の電流・位相分布から未知の
電流・位相をも推定する必要がある。そこで本発明のニ
ュ−ラルネットワ−クを利用する。事故時においては正
常センサからの電流・位相分布を入力層に入力する。一
部のセンサが故障しているので、電流・位相のうちこれ
に対応するデ−タは欠落していたり、異常値である。故
障している電流検出センサに対応するユニットへの入力
は、例えば、故障している電流検出センサを挟む、両隣
のセンサからのデ−タの平均値を用いる。図7にこれを
示す。○が正常なセンサを示し、●が故障センサを示
す。故障センサに対する電流、位相は隣接センサの電流
・位相値の平均値などで代用して、ネットワ−クの入力
層にへ入力する。
【0074】ニュ−ラルネットワ−クの第1回目の演算
をする。出力層から個々のセンサに対応する出力が取ら
れる。正常センサに対応する出力は大体が入力値に等し
い。これは入力層と出力層とが等しくなるようにニュ−
ラルネットワ−クを構築しているから当然のことであ
る。しかし故障センサに対する入力が正しくないから、
正常センサの入力と出力が予め定めた範囲内に入らな
い。正常センサの出力は、演算結果の収束性を判定する
ためには用いられるが、繰り返し入力層に戻すというこ
とはない。つまり正常センサに対する出力層の出力は捨
てる。2回目以降の計算において、故障センサに対応す
るユニットからの出力値は、同じセンサの同じパラメ−
タに対応する入力層に戻す。正常センサの電流、位相情
報の値は、前回と同じように、対応するユニットにその
まま入力する。このような計算を何回も繰り返す。
【0075】つまり、正常センサの入力は実際の計測値
を入力層の対応ユニットに入れ、故障センサに対応する
入力は前回の出力層に出力された結果を戻してきて入力
する。このような繰り返しの計算をしてゆくと、図7に
示すように、故障センサの電流・位相の値に対応する出
力値がが徐々に変化して行く。図7で●の出力値が破線
で示してあるが、1,2,3回目と計算が進むにつれ
て、事故時の電流、位相値に近づいて行く。
【0076】ここで注意しなければならないことは、正
常センサに対する出力層の値である。初めからこのニュ
−ラルネットワ−クは事故時において電流・位相値を入
力層に入れると、ほぼ同じ値が出力層に現れるようにな
っている。従って、故障センサに対する入力値が、実際
の値とかけ離れているときは、正常センサの出力値と入
力値が大きく食い違う筈である。そして故障センサに対
する出力値が真の値に接近するに従って、正常センサの
出力値と入力値が接近してくる。正常センサの出力値は
単に捨てられるだけではなく、これが入力値(計測され
た値)に収束してゆけば、故障センサに対する出力の値
が真の値に近いということを意味するのである。正常セ
ンサから得られた既知入力パラメ−タ{Kh }の計測値
をKhsとする。ニュ−ラルネットワ−ク計算において、
n回目の入力をKh in 、n回目の出力をKh on とする。
正常センサに対しては、回数に拘らず、
【0077】 Kh in =Khs (10)
【0078】とする。これの出力は次回に用いないが、
収束性Sn の判定に使う。
【0079】 Sn =Σh=1 m(Kh on −Khs2 (11)
【0080】ここで、積算は全ての正常センサ(h=
1,2,・・・m)について行う。これは2乗の和を取
っているが、絶対値の和としても良い。
【0081】 Sn =Σh=1 m|Kh on −Khs| (12)
【0082】このように定義された誤差が、計算を繰り
返すことによって(nが増える)減少するので、ある適
当な正数εを定めて、
【0083】 Sn <ε (13)
【0084】となる時に計算を中止する。故障センサに
対するパラメ−タ{Hg }については、第1回目の入力
値が、(9)式のように、隣接正常センサの平均値とす
る(他の値でも良いのは勿論である)が、第2回目から
は、前回の出力値を用いる。n回目の入力値をHg in
出力値をHg on とすると、
【0085】 Hg i1 =適当な定数 (14) Hg in+1 =Hg on (15)
【0086】とする。これが一様収束するというのは、
適当なNを選べば、任意の正の数εに対して、
【0087】 n,q>Nの時、|Hg on −Hg oq |<ε (16)
【0088】が常に成り立つということである。これに
よって解の収束性を判定できるように見える。これによ
っても収束性を判定できるが容易ではない。(11)、
(12)の既知パラメ−タに関する収束性の方が計算し
易い。また既知パラメ−タが収束すると、未知パラメ−
タも収束するはずである。つまり既知パラメ−タに関し
て、(11)、(12)が言えれば、未知パラメ−タも
真の値に近いということである。反対に、正常センサの
出力値が、入力値からかけ離れている場合は、故障セン
サの出力値が未だ正しくないということである。このよ
うに正常センサの入力層、出力層の値は、近似の正さの
尺度になるので重要である。
【0089】つまりここで言いたいのは収束性を正常セ
ンサのデ−タについて判定するのか、あるいは故障セン
サのデ−タについて判断するのかということである。求
めたいのは故障センサに対するパラメ−タであるから、
これが一定値に収束すればそれで良いように思うがこれ
は簡単ではない。正常センサの値は真の値が予め分かっ
ているから、出力との違いを直ぐに計算できる。これが
入力値と食い違うということは、ニュ−ラルネットワ−
クの計算によって故障センサに対する正しい値が未だ得
られていないという事を意味する。このようなふたつの
異なるデ−タの間の誤差の相補性はニュ−ラルネットワ
−クに独自のものである。
【0090】繰り返しニュ−ラルネットワ−クの演算を
して、正常センサの出力が入力に収束した時に計算を中
止する。この時の故障センサに対する電流・位相がニュ
−ラルネットワ−クの対応出力層に現れる。これらを合
わせると、事故区間標定に必要な全センサの電流・位相
分布が得られる。これから事故区間標定を正確に行うこ
とができる。
【0091】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように、送電線
に取り付けた地線電流センサ異常・故障時に発生した事
故に対しても、異常センサの情報を復元することが可能
なため、電流検出センサが正常な場合とほば同じ精度で
送電線の事故区間標定が行える。送電線事故区間標定シ
ステムとしの信頼性を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】送電線事故区間標定システムの概略図。
【図2】事故時の全センサ情報の概略図.
【図3】中央装置で抽出される事故時の電流分布を示し
た図。
【図4】中央装置で抽出される事故時の位相分布を示し
た図。
【図5】本発明で用いたニュ−ラルネットワ−クの構成
図。
【図6】ニュ−ラルネットワ−ク構築の概念図。
【図7】正常なセンサ情報を用いて欠落したデ−タを推
定し、事故時の電流分布を復元する過程をしめした図。
【図8】ニユ−ロンの動作を簡単に示す概念図。
【図9】シグモイド関数の概略図。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 送電線に流れる電流分布を、送電線の複
    数箇所に取り付けた複数個の電流検出センサによって検
    出し、検出されたデ−タを伝送装置に渡し、中央装置ま
    で伝送する電流分布計測手段を持ち、中央装置では収集
    した電流分布から、事故の区間を求める方式の事故区間
    検出システムにおいて、電流検出センサの故障や伝送装
    置の異常により中央装置に伝達されたデ−タの幾つかが
    欠落していたり、異常があった場合、予め予想されてい
    るできれば全ての事故種別、事故発生箇所についてシミ
    ュレ−ションによって求めた電流・位相分布を学習させ
    たニュ−ラルネットワ−クを使用する事により、欠落デ
    −タ、異常デ−タを推定し、送電線事故時の電流・位相
    分布を復元する事を特徴とする送電線電流センサ故障時
    の電流・位相分布の復元方法。
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