JPH057598A - 歯科矯正用ブラケツト - Google Patents

歯科矯正用ブラケツト

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Publication number
JPH057598A
JPH057598A JP3187054A JP18705491A JPH057598A JP H057598 A JPH057598 A JP H057598A JP 3187054 A JP3187054 A JP 3187054A JP 18705491 A JP18705491 A JP 18705491A JP H057598 A JPH057598 A JP H057598A
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JP
Japan
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contact bearing
bracket
orthodontic bracket
bearing surfaces
archwire
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Application number
JP3187054A
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English (en)
Inventor
Fumio Yogosawa
文夫 与五沢
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MITSUBA OOSO SUPPLY KK
OOSODONTEITSUKU RAND SYST KK
Original Assignee
MITSUBA OOSO SUPPLY KK
OOSODONTEITSUKU RAND SYST KK
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Publication date
Application filed by MITSUBA OOSO SUPPLY KK, OOSODONTEITSUKU RAND SYST KK filed Critical MITSUBA OOSO SUPPLY KK
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Abstract

(57)【要約】 〔目的〕 歯科矯正用ブラケットのアーチワイヤに対す
る意図した滑りを確保すると共に、必要に際してはブラ
ケットに対しアーチワイヤをロック(不動化)して抵抗
源として利用し得るようにし、同一形状のブラケットで
多機能を発揮できるようにすること。〔構成・作用〕
所定の開き角で互いに傾斜した2つの接触支承面(2
1,21)をブラケットのベース(10)上に隆起させ
て形成し、各々の接触支承面に一対の突起体(13)を
接触支承面に対し垂直に立設し、各接触支承面はその突
起体に掛けられた結紮線(L)がアーチワイヤ(A)に
及ぼす力を直接支えるに足る長さ(L1) にわたって少
なくとも直線状をなしていて、アーチワイヤに対するブ
ラケットの滑りを確保する。突起体(13)の両方の対
を通じて結紮線を掛けた場合は、頂部(12)において
アーチワイヤが曲げられ、結紮力の及ぶ範囲(L2) に
わたってアーチワイヤが両接触支承面に押しつけられて
接触し、ロックされる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は歯科矯正用ブラケットに関
するもので、特に新規な形状と機能を有する歯科矯正用
ブラケットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に歯科矯正用ブラケットは、歯の表
面に接着されるべき2〜3ミリ角のベースの表面に一対
又は二対の突起体を突設し、各突起体の対に矯正用アー
チワイヤを挿入して突起体に結紮するような構造になっ
ている。従来、このような歯科矯正用ブラケットには種
々のタイプのものが開発され現に使用されているが、矯
正治療上必ずしもすべて満足し得るものではない。
【0003】従来の典型的なブラケットの1例を図13
に斜視図として示す。このブラケットはベース1を有
し、この上に2対の突起体2,2′が立設されている。
各突起体の対は、所定間隔でベースから立ち上がる2個
の主体部3,3と、主体部3,3間でベースから隆起し
た底部4とを有し、主体部3,3間の間隔は矯正用アー
チワイヤを挿通するワイヤ溝5を形成している。主体部
3の上端から外方へ向けてウィング6が延設され、ウィ
ングの下には結紮線を通す凹溝7が形成されている。ワ
イヤ溝5に挿通されるアーチワイヤは、それ自体がブラ
ケットを通じて特定の歯に矯正力を伝達する手段として
使用されることもあるが、矯正治療の諸段階の大半を通
じアーチワイヤは適宜力源からの力を受ける特定の歯を
目的の方向へ移動させるためのガイドとして利用される
ことが多い。その場合、アーチワイヤはそれに沿ってブ
ラケットをなるべく小さい抵抗で滑らせることができる
形でなければならない。しかし、上記のような構造の従
来のブラケットではこれに結紮線でアーチワイヤを強く
結紮すると、アーチワイヤが曲げられ、底部4に引っ掛
かって意図したように滑らなくなるという不具合があ
る。
【0004】この点を図14を参照して少し詳しく説明
すると、ワイヤ溝5に挿入されたアーチワイヤAは図1
4の右側に鎖線で示したように結紮線Lによって主体部
3に結紮された時、理想的には直線状に保たれることが
望ましい。しかし現実には、図14の左側に実線で示す
ように、結紮線Lを強く締めるとアーチワイヤAは底部
4の両脇へ曲げられてしまい、この曲がり部が底部4の
角4′に引っ掛かるので、アーチワイヤに対しブラケッ
トを滑らせることができなくなり、所期の治療目的を達
せられないという不都合を生じる。これは、結紮線Lの
圧下力が突起体底部4より外側で作用し、この力を支え
るには突起体底部4の上平面が小さすぎるからである。
【0005】他方、上記のようにアーチワイヤを滑りの
ガイドとして特定の歯を移動させる治療においては、ア
ーチワイヤを固定する固定源(抵抗源)が必要である。
従来抵抗源としては、外部の適宜補助手段を使ったりす
るほか、奥にある遠くの大きな根の歯を抵抗源とした
り、あるいは抵抗源として使う歯の数を増やしたりする
ことが臨床上試みられている。これら他の歯を抵抗源と
する場合は、それらの歯に固着したブラケットとアーチ
ワイヤとが互いに滑らないように一体的に固定(ロッ
ク)されなければならない。ところが、従来の構造のブ
ラケットは、前記のように強く結紮すればアーチワイヤ
が曲げられ意図した滑りが妨げられるという不具合を有
するものの、これを逆に利用してアーチワイヤをブラケ
ットにロックするにはきわめて不完全である。それは、
図14から認められるように、結紮線Lの締めつける力
が主に突起体底部4の上平面の外側で作用していて、固
定(ロック)力としてはロスがあり、弱いからである。
【0006】そもそも従来のブラケットは、元来がアー
チワイヤの力を歯に伝達するための部品として考えられ
ていたものであるから、アーチワイヤとブラケットを一
体化してアーチワイヤをロックするための手段としてブ
ラケットを用いるという着想は従来の技術思想の中には
全く見られなかったところである。まして、同一形状の
ブラケットを、或る時はアーチワイヤに対し意図したよ
うに滑らせることができ、また或る時はアーチワイヤを
ロックするためにも使用することができるようにすると
いうアイデアは、本発明者の知る限り、これまで全く試
みられたことがなかった。
【0007】さらに、一連の矯正治療で歯のねじれを治
すべき頻度はきわめて高い。その際ブラケットベースが
比較的長い場合は比較的コントロールしやすいものの、
下顎前歯のような小さい歯に対してベースの短いブラケ
ットを用いるような場合には細かい歯のねじれのコント
ロールは極めて困難で、治療の最後の段階まで細かい不
正が残りやすい。これを解決するためには、従来では個
々の細かいねじれを治す方向に矯正用アーチワイヤに個
々の細かい曲げ加工をすることが必要であったが、この
ような小さな曲げ加工をアーチワイヤに何度も施すこと
はきわめて煩瑣な作業であり、矯正治療の進捗を阻害す
るものであった。こうして、歯のねじれのコントロール
に際しアーチワイヤに対する煩瑣な曲げ加工を要さず、
ブラケットに対するアーチワイヤの結紮の仕方を選択す
るなどして容易迅速にねじれのコントロールに対応で
き、治療の能率を上げることができるブラケットが望ま
れているが、これも今日まで果たされていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の背景
に鑑み、本発明は、結紮線がアーチワイヤを押える力を
曲げモーメントとして作用させることがなく、結紮線の
力を直接的に受ける面(支承面)を備えた歯科矯正用ブ
ラケットを提供することを基本的な課題とするものであ
る。
【0009】上記基本的課題に則り、本発明は意図的に
アーチワイヤを曲げるに適した独特な形状に前記支承面
を配し、結紮の仕方によって意図的にアーチワイヤとブ
ラケットを一体的にロックすることができる歯科矯正用
ブラケットを提供することを第2の課題とする。
【0010】以上を総合して本発明は、同一形状のブラ
ケットで、ルース(歯を移動させる際のブラケットと矯
正用アーチワイヤとの滑り抵抗を減らすこと)も、ロッ
ク(矯正用アーチワイヤとブラケットとの近遠心的相対
移動を禁止すること)もできると共に、ローテーション
(ねじれ)のコントロールにも容易に対応することがで
きるような、形状が新規であって、1つの形状で多くの
機能を発揮する歯科矯正用ブラケットを提供することを
具体的な課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明は、アーチワイヤと直接的に接触してこれを支持
し、且つアーチワイヤを押える結紮線の力を直接的に受
ける(支承する)一対の接触支承面をブラケットベース
上に所定の開き角で互いに傾斜させて設け、それぞれの
接触支承面のほゞ中央の両横に接触支承面とほゞ垂直に
突起体の対を立設するものである。
【0012】1つの接触支承面は、1つの突起体対に掛
けられる結紮線が通常アーチワイヤに及ぼす力の範囲に
わたって少なくとも直線状であるべきである。2つの接
触支承面が互いになす開き角は、100°から180°
以下まで、より好適には120°から160°まで、さ
らに好適には130°から150°までの範囲の角度と
なし得る。
【0013】本発明のブラケットにおいて、接触支承面
のいずれか一方のみにアーチワイヤを接触させるように
その支承面の両横にある突起体を介して結紮すれば、強
く結紮してもアーチワイヤは比較的長い直線状の支承面
に接触して支持され、結紮線の力は直接支承面に受けら
れ、曲げモーメントを生じないから、従来のブラケット
におけるように突起体の両脇で意に反してアーチワイヤ
が変形されるようなことがなく、直線状に維持されたま
ゝであるから、この区間ではアーチワイヤとブラケット
との間の滑り抵抗は比較的小さく保たれ、アーチワイヤ
に対しブラケットを意図した通り軽易に滑らせることが
できる。
【0014】これと異なり、同一形状の本発明のブラケ
ットを固定源として使用すべき時には、2対の突起体を
通じて掛けたアーチワイヤを強く結紮すれば、アーチワ
イヤは所定の開き角に応じて意図的に曲げられて2つの
接触支承面にそれぞれ接触させられ、結紮線の力は直接
的に強く支承面に作用してアーチワイヤを押えつけるか
ら、アーチワイヤはブラケットに対し機械的に固定さ
れ、アーチワイヤとブラケットは一体的にロック(不動
化)される。
【0015】このように本発明の歯科矯正用ブラケット
は、突起体対のいずれか一方又は両方を選択的に使用し
て結紮することにより、また結紮の仕方を強弱加減する
ことにより、同一形状のブラケットで、滑りのコントロ
ール、ロックのコントロール、及びねじれのコントロー
ル等々、種々多様な機能を発揮し、多様な使い方が可能
となるものである。
【0016】
【実施例】図面を参照して本発明の歯科矯正用ブラケッ
トの実施例数例について詳細に説明する。図1から図3
は、本発明の基本的な実施例に係るブラケットのそれぞ
れ平面図、正面図及び右側面図である。これらの図にお
いて、ブラケットのベース10は、従来のブラケットと
同様に裏面にメッシュ、刻条等の粗面を有し、表面には
本発明に係る互いに傾斜した2つの接触支承面11,1
1が隆起して形成されている。両接触支承面11は頂部
12において接合し、頂部の開き角θ(図2参照)は広
くは100<θ<180の範囲内、好適には120<θ
<160、さらにより好適には130<θ<150の範
囲内の角度とする。図2に示す例においてはθ≒135
°である。両接触支承面11,11は、図2から認めら
れるように、ほゞ直線状をなす平面であり、頂部12は
尖った稜線をなしている。
【0017】各接触支承面の両横部に突起体13の対が
各接触支承面に対しほゞ垂直をなして立設されている。
図示の例では2対の突起体13がそれぞれの接触支承面
に垂直をなし、正面(図2)から見て上方へ互いに拡開
して形成されている。突起体13が接触支承面11に対
しほゞ垂直であることは、アーチワイヤの結紮操作を容
易ならしめるためと、結紮されたアーチワイヤが接触支
承面に対しほゞ垂直な圧下力を及ぼすようにするために
重要である。もし、突起体が接触支承面に対し垂直でな
く、ベースに対し垂直であるような場合は、突起体の2
つの対の間が狭くなって結紮操作がきわめてしにくくな
るだけでなく、結紮によりアーチワイヤにかかる力が支
承面に対し垂直でなく左右いずれかに片寄るような事態
を生じるので好ましくない。
【0018】各突起体13の頂部からはウィング14が
通常の如く外方へ張り出して形成されている。各対の突
起体13,13間の間隔はアーチワイヤを挿通する溝1
5を構成している。各ウィング14の下には結紮線を掛
け通す凹溝16が形成されている。
【0019】接触支承面11,11の頂部と反対側の端
は、ベースから隆起した端壁17として形成される。隆
起の程度(端壁の高さ)はアーチワイヤの挿通や結紮線
の操作に便ならしめる程度のものとすればよい。端壁1
7は接触支承面11に対しほゞ垂直をなしてベース10
の端縁近くまで降下している。接触支承面の両側は、図
2で見て屋根型の側面18に形成されている。
【0020】2つの接触支承面11,11は図2におい
て頂部12を通る仮想垂線Vに関し左右対称に形成され
ている。しかし、2つの接触支承面は必ずしも対称に限
るものではなく、場合により両接触支承面を互いに非対
称に形成してもよい。
【0021】次に、図4及び図5は、より好適な実施例
の構成とその作用を示すもので、図4は図1におけるA
−A′線に相当する線で縦断した図である。この実施例
の前例と異なるところは、ベース10上に形成される傾
斜した接触支承面21の端壁27がベース10と同延
に、すなわちベース10の長さ一杯に延設されているこ
とである。この端壁27も接触支承面21に対しほゞ垂
直をなしている。さらに、接触支承面の端壁は後に詳述
する図11,図12の例のようにベース端縁より突出さ
せることもできる。これらの構成により接触支承面21
はより長い直線部をもつことができる。その他の点につ
いては前例と同様であるから前例と同じ符号で指示し、
また以下作用について説明するところは前例にも等しく
当てはまるものである。図4においてアーチワイヤAは
片方の突起体13の対だけに結紮線Lによって結紮され
る。結紮線LがアーチワイヤAを押え込む力FはほゞL
1 の範囲に及んでいて、少なくともこの範囲一杯では接
触支承面21が直線状をなして延びていて、結紮線Lの
力Fをこの支承面が直接受けている。従って結紮力Fに
よって従来のブラケットにおけるような曲げモーメント
を生じることがなく、アーチワイヤは直線的に保持され
ているから、その直線区間に沿ってブラケットは意図さ
れた通りなめらかに滑って移動することができる。
【0022】本発明のブラケットは、以上と異なり、必
要な場合はアーチワイヤを一体的に固定するロック機能
を発揮させることもできる。図5はこのような意図にお
ける結紮方法を例示するもので、アーチワイヤAは2つ
の接触支承面21,21の両方に接触支持されるように
両方の突起体13の対を通じて強く結紮されて、頂部1
2の開き角(図2のθ)に沿って意図的に曲げられてい
る。これにより、アーチワイヤとブラケットは一体的に
ロックされ、従来のブラケットでは予定されていなかっ
た機械的ロック手段としての用法がブラケットについて
新たに開かれたのである。
【0023】本発明のブラケットの作用を図6に総合的
にまとめて示す。2本の歯T1とT2にそれぞれ本発明の
ブラケットが装着され、それにアーチワイヤAが挿通さ
れている。いま、歯T1 はアーチワイヤに沿って右方向
へ移動させたい歯で、歯T2 は抵抗源の1つであるとす
る。歯T1 に対しては力源としてスプリングSが矢印の
方向に押圧力を作用させている。被移動歯T1 のブラケ
ットに対しては片側(遠心側)の突起体13だけにアー
チワイヤAを結紮する。結紮線Lがアーチワイヤを押え
る力の範囲はL1 にわたっていて、その範囲内でブラケ
ットの接触支承面21はアーチワイヤを直線状に支えて
いるからアーチワイヤはブラケットを滑らせるなめらか
なガイドとして良好に機能している。他方、抵抗源たる
歯T2 のブラケットは、その両側の突起体13を通じて
結紮線Lが掛けられ、L2 の範囲にわたって強く結紮さ
れている。このためアーチワイヤAは頂部12を境に曲
げられ、両方の接触支承面21に押しつけられている。
こうして歯T2 については本発明のブラケットがアーチ
ワイヤの固定(ロック)手段として機能しているのであ
る。
【0024】実際に本発明のブラケットを抵抗源として
使う時は、1個の歯だけでなく、できるだけ多くの歯、
例えば被移動歯T1 以外のすべての歯に本発明のブラケ
ットを装着し、それらに図6の歯T2について示したの
と同様に両側結紮法によってアーチワイヤをロックす
る。こうして本発明によれば、従来のブラケットによっ
ては着想できなかった巧妙で効果的な抵抗源が実現さ
れ、矯正治療の改良的進歩に大いに貢献することができ
る。
【0025】本発明のブラケットによる片側結紮法の利
点についてさらに説明すると、図6の歯T1 について示
したような片側結紮は従来のブラケットによっても一応
できないことはない。しかし、前述したように従来のブ
ラケットでは強く結紮すると突起体13の両脇でアーチ
ワイヤAが曲げられ、滑りガイドとしての機能を果たさ
なくなってしまう。そこでアーチワイヤを曲げない程度
に軽く結紮すると、アーチワイヤとブラケットとの接触
面積は、図14に関し前述したところから認められるよ
うに、きわめて小さく、アーチワイヤによるブラケット
への拘束力が小さいから、力源Sの押圧力に対し歯T1
は破線矢印Rで示すように意図せざる方向へ回転してし
まう弊がある。これに対し、本発明のブラケットでは、
アーチワイヤが接触支承面21と十分な長さ(L1)にわ
たり接触していて、破線矢印Rの方向へ回転しようとす
る傾向をよく抑制している。しかも実際上アーチワイヤ
は前段で述べたように被移動歯T1 の両側のほとんどの
歯にT2 と同様にロックされ、事実上不動となってい
る。従って本発明のブラケットによれば力源Sの押圧力
は、回転力として作用することなく、不動のアーチワイ
ヤにガイドされて意図した通りの滑りを起こさせること
ができるのである。
【0026】このほか、図示してないが、本発明の歯科
矯正用ブラケットは片方の突起体の対に強く、もう片方
の突起体の対に軽く結紮するとか、両方とも軽く結紮す
るとか、隣接する2個のブラケットの同じ側(例えば、
各ブラケットの右側だけ)の突起体だけを片側結紮する
とか、或いは近接する(右と左の)片側突起体だけを結
紮するとか、種々の使用法を治療目的に応じて行なうこ
とができる。
【0027】さらに本発明のブラケットは2つの突起体
対のいずれかを選択して結紮することによって、前述し
たねじれのコントロールに際しアーチワイヤを細かく修
正曲げ加工する必要なしに、ねじれに対する矯正力を適
正に作用させることができるようになる。これにより、
従来のようにアーチワイヤを取外したり、そのアーチワ
イヤに対して曲げ加工をし、また挿入するといった煩瑣
で時間のかかる操作を省くことができ、矯正治療の効率
を高めることができる。
【0028】次に、図7から図10には本発明のブラケ
ットの他の種々な実施例を示す。これら実施例において
は、前記した2つの実施例と相違する部分にのみ異なる
符号を付し、同じ部分は同じ符号で指示する。まず、図
7の実施例は2つの傾斜した接触支承面21,21の接
合する頂部32が丸みをもった形状になっている。この
ため、前に図5又は図6に示したような両側結紮を行な
う場合、アーチワイヤが頂部32に沿って無理なく曲げ
られ、その分よく支承面21の全長に沿って密着するこ
とができるのでロック機能を高めることができるように
なる。また、図6に示したような片側結紮の場合も、丸
みをもった頂部32がアーチワイヤに対し滑りやすくな
るため被移動歯の移動を促進する効果が認められる。こ
の実施例において、頂部32の丸みは、突起体13に対
する結紮線の力の及ぶ範囲(図4又は図6のL1 の範
囲)にまで入り込むべきでないことはいうまでもない。
【0029】図8の実施例は、2つの接触支承面21,
21の接合する頂部42が平らな短い直線区間に形成さ
れている。この平らな頂部42は、前例の丸みをもった
頂部32と同様に両側結紮において抵抗源たる歯のブラ
ケットにアーチワイヤを無理なく頂部沿いに曲げて沿わ
せる働きをすると共に、頂部42の広い面とアーチワイ
ヤの接触によって歯牙を一定の位置に保っておくことが
できる作用をするものである。
【0030】さらに図9の実施例は図8の実施例を発展
させた形態を示している。ベース10上には、まず三角
台50が固着され、この上に2つの直方体状の接触支承
面51,51が固着されている。突起体13は各接触支
承面51と一体に形成されている。2つの接触支承面5
1,51の頂部は隙間52を形成する。この頂部隙間5
2は、アーチワイヤを無理なく曲げる働きにおいて丸み
頂部32又は平らな頂部42と同等な作用をし、アーチ
ワイヤにガイドされる時の滑りをよくする点において平
らな頂部42と同等な作用をするものである。また、図
9の実施例は実際製作上で比較的容易であることが認め
られる。
【0031】図10は、図9の実施例をさらに発展させ
た形態の実施例である。この例で、ベース10上には三
角台60が固着されるが、この三角台60には突起体6
3が一体に形成されている。突起体63の各対の間には
直方体形の接触支承面61が固定されている。これまで
の例と異なり、接触支承面61の幅Wは、最大で突起体
対の間隔分だけしかない。突起体対の間に挿通されるべ
きアーチワイヤは種々な太さのものがあるから、突起体
対の間隔は使用が見込まれるアーチワイヤの最大太さに
見合った幅でなければならないが、接触支承面61の幅
は必ずしも突起体対の間隔一杯でなくても、それより小
幅でもよい。要は、接触支承面61の長さが前記したよ
うに結紮線の力の及ぶ範囲L1 に少なくとも等しいもの
であればよく、幅Wはアーチワイヤを実質的に支えるに
足りるだけあればワイヤ太さより小さくても構わない。
両支承面61,61の頂部には、図9の実施例と同様に
隙間62が形成されている。支承面61の端壁67はベ
ース10の端縁一杯に延長されている。
【0032】図11は、接触支承面の端壁をベース端縁
より突出させた実施例を示す。すなわち、ベース10上
に三角状の基台70が設けられ、その両側に突設された
突起体73の対の間に図10の例と同様な細幅の接触支
承面71が設けられているがこの接触支承面71の両端
壁77(図では片側しか見えない)はベース端縁より長
さtだけ突出している。このような構成により、ベース
長さが比較的短い、例えば下顎前歯用のブラケットの場
合でも接触支承面71の長さを十分長くとることができ
る。なお、基台70の端74はベース端縁とほゞ同長に
切られているが、これと異なりベース端縁より引込め、
又は突出させてもよい。また、図11の例で接触支承面
の頂部72は稜線をなしているが、図7の丸い頂部3
2、或いは図8の平らな頂部42、さらには図9の隙間
頂部52と同様な種々の形状に変形実施してもよい。
【0033】さらに図12は、ベース端縁より突出
(t)させた接触支承面の幅を広げた実施例を示してい
る。すなわち、ベース10上の基台80の上に設けた接
触支承面81は、突起体83の対の間では当然その対の
間隔と同幅であるが、突起体の両脇では広く拡大した幅
に形成されている。これにより接触支承面は長さと幅が
十分なものとなるから、アーチワイヤを支える確実性を
増し、治療中のアーチワイヤのズレや脱落など不慮の事
故を未然に防止することができる。頂部82は図11の
頂部72と同様に種々の変形実施が可能である。
【0034】以上、本発明の歯科矯正用ブラケットは
“接触支承面”をもつことを特徴として説明してきた
が、ここでいう“接触支承面”は必ずしも厳密な意味で
の“面”に限定されるものではない。本発明にとって重
要なことは、“接触支承面”が通常結紮線の及ぼす力の
範囲(図4のL1又は図6のL2の範囲)内においてアー
チワイヤに対し曲げモーメントを生じさせることなく結
紮力を支承するに足りる諸点でアーチワイヤと接触して
いることである。従って“接触支承面”はその長さ方向
及び幅方向に端から端まで全部連続した幾何学的意味で
の“面”である必要はなく、むしろ上記特定範囲内の特
定諸点で実質的にアーチワイヤを支えることができるも
のであれば、線又は点の集合、或いは多数小面積部分の
集合でも実質的に“接触支承面”ということができ、こ
れらも本発明の技術的範囲に含まれるものである。この
ような線又は点或いは小面積部分の集合は、いわゆる全
面においてアーチワイヤと接触するものではないから、
アーチワイヤを滑らせる必要がある場合には却って摩擦
抵抗を減少させ、好都合である。
【0035】
【発明の効果】以上詳説した通り、本発明の歯科矯正用
ブラケットは互いに所定の開き角で傾斜する2つの接触
支承面をベース上に隆起させて形成し、各支承面のほゞ
中央両横に支承面に垂直な関係で突起体の対を設けたか
ら、片方の突起体対に掛けた結紮線のアーチワイヤに及
ぼす力が突起体両脇に展開する接触支承面によって支え
られ、アーチワイヤに対し曲げモーメントを作用させる
ことがなく、従ってアーチワイヤを変形させてブラケッ
トの滑りを妨げる弊を解消する効果がある。また、両方
の突起体対を通じて結紮することにより開き角に沿って
意図的にアーチワイヤを曲げて両支承面に押しつけるか
ら、ブラケットとアーチワイヤを一体にロックしてこれ
を抵抗源として利用することができるという、従来例を
見ないブラケットの用法を開発し、歯科矯正治療に新技
法を導入する効果が奏せられる。
【0036】また、本発明のブラケットによれば突起体
対に対する結紮の仕方を選択することで、細かい歯のね
じれに対する治療もアーチワイヤに対する細かい修正作
業を要することなく簡易迅速に能率よく行なうことがで
きる効果もある。
【0037】こうして本発明によれば、同一形状のブラ
ケットで幾通りかの結紮方法が可能であり、従って幾通
りもの機能乃至治療効果を挙げることができ、歯科矯正
治療の進歩と普及を図れる多大な効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係る歯科矯正用ブラケットの基
本的な実施例を示す平面図である。
【図2】図2は同基本的実施例の正面図である。
【図3】図3は同基本的実施例の右側面図である。
【図4】図4は本発明の歯科矯正用ブラケットのより好
適な実施例におけるアーチワイヤの結紮方法(片側結紮
法)の一例を示す図1のA−A′線に相当する断面図で
ある。
【図5】図5は、図4の実施例における他の結紮方法
(両側結紮法)を示す正面図である。
【図6】図6は本発明の歯科矯正用ブラケットの好適実
施例の1つの用法における作用をまとめて示す説明図で
ある。
【図7】図7は本発明の歯科矯正用ブラケットの第3の
実施例を示す正面図である。
【図8】図8は本発明の歯科矯正用ブラケットの第4の
実施例を示す正面図である。
【図9】図9は本発明の歯科矯正用ブラケットの第5の
実施例を示す正面図である。
【図10】図10は本発明の歯科矯正用ブラケットの第
6の実施例を示す斜視図である。
【図11】図11は本発明の歯科矯正用ブラケットの第
7の実施例を示す斜視図である。
【図12】図12は本発明の歯科矯正用ブラケットの第
8の実施例を示す斜視図である。
【図13】図13は従来のブラケットの典型的な一例を
示す斜視図である。
【図14】図14は従来のブラケットの使用上の問題点
を説明する略示断面図である。
【符号の説明】
10…ベース11,21,51,61,71,81…傾
斜した接触支承面 12,32,42,72,82…頂部 θ…頂
部の開き角 52,62…頂部隙間 13,63,73,83…突起体 15…アーチワイヤ挿通溝 17,27,67,77,87…隆起端壁 50,60,70,80…基台 A…アーチワイヤ L…結紮線 W…接触支承面の幅

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 頂部において所定の開き角で互いに傾斜
    する2つの接触支承面をブラケットのベース上に隆起さ
    せて形成し、この接触支承面の各々のほゞ中央の両横に
    一対の突起体を接触支承面に対しほゞ垂直に立設し、接
    触支承面の各々はその面に形成されている突起体を介し
    て結紮された結紮線がアーチワイヤに及ぼす力の範囲内
    で少なくとも直線状をなしていることを特徴とする歯科
    矯正用ブラケット。
  2. 【請求項2】 前記接触支承面の両方が頂部において尖
    った稜線をなして接合している請求項1に記載の歯科矯
    正用ブラケット。
  3. 【請求項3】 前記接触支承面の両方が丸みをもった頂
    部で互いに接合している請求項1に記載の歯科矯正用ブ
    ラケット。
  4. 【請求項4】 前記接触支承面の両方が平らな短い直線
    区間をなす頂部において互いに接合している請求項1に
    記載の歯科矯正用ブラケット。
  5. 【請求項5】 前記接触支承面の両方は、直接接合せず
    に頂部に隙間を形成している請求項1に記載の歯科矯正
    用ブラケット。
  6. 【請求項6】 前記頂部の開き角が100°以上180
    °以下である請求項1乃至5のいずれかに記載の歯科矯
    正用ブラケット。
  7. 【請求項7】 前記頂部の開き角が120°以上160
    °以下である請求項1乃至5のいずれかに記載の歯科矯
    正用ブラケット。
  8. 【請求項8】 前記頂部の開き角が130°以上150
    °以下である請求項1乃至5のいずれかに記載の歯科矯
    正用ブラケット。
  9. 【請求項9】 前記接触支承面の端壁はベースより隆起
    し且つベースの端縁と同延に設けられている請求項2乃
    至5のいずれかに記載の歯科矯正用ブラケット。
  10. 【請求項10】 前記接触支承面の端壁はベースより隆
    起し且つベースの端縁より引込んで設けられている請求
    項2乃至5のいずれかに記載の歯科矯正用ブラケット。
  11. 【請求項11】 前記接触支承面の端壁はベースより隆
    起し且つベースの端縁より突出してもうられている請求
    項2乃至5のいずれかに記載の歯科矯正用ブラケット。
  12. 【請求項12】 前記接触支承面の幅は対をなす突起体
    間の間隔より大である請求項2乃至5のいずれかに記載
    の歯科矯正用ブラケット。
  13. 【請求項13】 前記接触支承面の幅は対をなす突起体
    間の間隔とほゞ等しい大きさである請求項2乃至5に記
    載の歯科矯正用ブラケット。
  14. 【請求項14】 前記接触支承面の幅は対をなす突起体
    間の間隔より小さい大きさである請求項2乃至5に記載
    の歯科矯正用ブラケット。
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