JPH05282381A - 蛋白質分子立体構造解析装置 - Google Patents

蛋白質分子立体構造解析装置

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JPH05282381A
JPH05282381A JP7490192A JP7490192A JPH05282381A JP H05282381 A JPH05282381 A JP H05282381A JP 7490192 A JP7490192 A JP 7490192A JP 7490192 A JP7490192 A JP 7490192A JP H05282381 A JPH05282381 A JP H05282381A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】蛋白質分子の立体構造における局所構造間の相
互作用のあり方を示す依存度・相互依存度なる量を計算
する蛋白質分子立体構造解析装置に関し,蛋白質分子の
個々の局所構造間の相互作用が立体構造形成にどのよう
に寄与をしているかを客観的に評価することを支援する
装置を提供することを目的とする。 【構成】座標データ入力処理部12によって入力した座標
データと,局所構造定義入力処理部13によって入力した
蛋白質分子の局所構造に関する定義情報をもとに,アミ
ノ酸残基間相互作用計算部14により,アミノ酸残基間の
相互作用の大きさを計算し,その結果から, 局所構造間
相互作用計算部15により,局所構造間の相互作用の大き
さを計算する。それをもとに,依存度計算部16または相
互依存度計算部20により, 各局所構造の他の局所構造へ
の依存度または局所構造間の相互依存度を計算し,出力
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,蛋白質分子の個々の局
所構造間の相互作用が立体構造形成にどのように寄与を
しているかを評価するための蛋白質分子立体構造解析装
置に関する。
【0002】多様な生命現象は,それぞれ特定の機能を
もつ多様な蛋白質分子の働きによって営まれている。蛋
白質分子は,多数のアミノ酸がその蛋白質に特有の順番
(アミノ酸配列)で線上に重合することにより合成され
た後,エネルギー的に安定なある特定の立体構造へと折
り畳まる。蛋白質の機能は,蛋白質がこのように特定の
立体構造を形成することによって発現される。
【0003】このため,構造未知の蛋白質の機能発現の
メカニズムの解明,DNA配列解析により塩基配列が得
られた遺伝子の機能の予測,遺伝子の突然変異によりも
たらされる癌や遺伝病などの疾患の分子レベルでの理
解,ウイルスなどの病原体により引き起こされる疾患に
対するワクチンや治療薬の開発,新機能をもつ蛋白質の
設計などの重要な課題を解決するには,蛋白質分子の立
体構造をそのアミノ酸配列から予測する方法の開発が必
要とされる。
【0004】
【従来の技術】従来,α-helixやβ-strand などの局所
構造と,それらの中に現れるアミノ酸種の頻度の相関関
係を,統計的に求めることに基づく局所構造予測法が,
いくつか提供されてきた。また,予測あるいは仮定によ
って与えられた局所構造を,特定の空間的位置関係に配
置することによって,最終的な立体構造を予測する方法
がいくつか提供されてきた。
【0005】一方,あらゆる蛋白質分子の立体構造が,
α-helixやβ-strand など,比較的少数の形態パターン
の構造の組み合わせによって構成されているという事実
は,蛋白質分子の全体の立体構造は,それ自身で比較的
安定な局所構造の形成とそれら局所構造間の相互作用に
よって形成されるということを示している。また,類似
または同一のアミノ酸配列をもった局所領域が,異なる
蛋白質では異なる形態パターンの構造をとる場合がある
という事実は,ある局所構造が採用する形態パターン自
体が,やはり他の局所構造との相互作用を通じて,複数
ある可能な形態パターンの中から決定される場合がある
ことを示している。
【0006】ところが,従来の局所構造予測において
は,ある局所領域の構造を予測する際に,アミノ酸配列
上におけるその領域近辺のアミノ酸残基間の相互作用し
か考慮されないため,不正確な予測しか与えられない場
合が多いという問題があった。また,局所構造を特定の
空間的位置関係に配置する際,どの特定の局所構造間の
相互作用がそれらの空間的位置関係の決定にとって重要
かを示す具体的な指針がないため,やはり不正確な予測
しか与えられなかった。
【0007】従って,アミノ酸配列上必ずしも近接して
いないが,立体構造形成に大きな影響を及ぼすような局
所構造間相互作用を,そのアミノ酸配列から推測するた
めの指針の構築が必要とされている。そのためには,立
体構造形成に大きな影響を及ぼす局所構造間相互作用
が,どのような特徴をもったアミノ酸配列によって引き
起こされているかを,多数の実例について物理化学的な
観点から解析し,それを通じて,一般的な指針を構築す
ることが求められる。従って,まず,立体構造形成に大
きな影響を及ぼすような局所構造間相互作用の実例を多
数特定することが必要とされる。
【0008】立体構造形成に重要な局所構造間相互作用
の解析は,実験的に行うことが技術的に困難なため,主
として,X線結晶解析により得られた立体構造座標デー
タの解析により行われてきた。従来,そのような解析
は,座標データをもとに作成された蛋白質分子の立体図
を,熟練した研究者が詳細に評価することに基づく方法
によって行われてきた。このような方法は,時間がかか
る上,研究者の主観が混じりやすいため,多数の実例に
対し組織的に適用することが困難であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,蛋白質分子
立体構造の座標データから局所構造間の相互作用のあり
方を示す尺度を計算することにより,個々の局所構造間
相互作用が立体構造形成にどのように寄与しているかを
客観的に評価することを支援する蛋白質分子立体構造解
析装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】図1は本発明の原理説明
図である。入力装置10は,外部記憶装置やキーボード
装置などのデータを入力する装置である。処理装置11
は,CPUおよびメモリなどを備え,アミノ酸配列から
なる蛋白質分子の立体構造を解析するプログラムを実行
する装置である。
【0011】座標データ入力処理部12は,蛋白質分子
の座標データを入力する処理手段である。座標データ
は,例えば蛋白質分子を構成する各原子に対して,3次
元空間内における座標,およびその原子の属するアミノ
酸残基番号等を定義したものである。
【0012】局所構造定義入力処理部13は,蛋白質分
子の局所構造に関する定義情報を入力する処理手段であ
る。局所構造とは,蛋白質分子全体の中の一部のアミノ
酸残基により構成される構造のことである。局所構造は
アミノ酸配列上必ずしも連続した領域である必要はな
い。局所構造の定義は,例えばそれに含まれるアミノ酸
残基の残基番号によって与えられる。
【0013】アミノ酸残基間相互作用計算部14は,座
標データを用いることによってアミノ酸残基間の相互作
用の大きさを計算する処理手段である。局所構造間相互
作用計算部15は,アミノ酸残基間相互作用の大きさと
局所構造の定義に基づき局所構造間の相互作用の大きさ
を計算する処理手段である。
【0014】依存度計算部16は,局所構造間相互作用
の大きさに基づき各局所構造の他の局所構造への依存度
を計算する処理手段である。この依存度の計算により,
ある局所構造に注目したときに,その局所構造が他のど
の局所構造から大きく影響を受けるかがわかる。
【0015】依存大小判定処理部17は,依存度計算部
16によって計算した依存度に基づき,各局所構造の他
の局所構造への依存度を所定の手続きを用いて評価する
ことによって,依存が大きいかどうかを判定する処理手
段である。
【0016】依存関係表示処理部18は,依存の大小の
判定に基づいて局所構造間の依存関係を示す有向グラフ
による依存関係グラフ19を作成し,ディスプレイなど
の出力装置24に出力する処理手段である。
【0017】また,相互依存度計算部20は,局所構造
間相互作用の大きさに基づき局所構造間の相互依存度を
計算する処理手段である。この相互依存度の計算によ
り,ある2つの局所構造に注目したときに,それらと他
のすべての局所構造との相互作用全体の内で,その2つ
の間の相互作用がどの程度の比率であるかがわかり,互
いに及ぼす影響の度合いがわかる。
【0018】相互依存大小判定処理部21は,相互依存
度計算部20によって計算した相互依存度に基づき,各
局所構造間の相互依存度を所定の手続きを用いて評価
し,相互依存が大きいかどうかを判定する処理手段であ
る。
【0019】相互依存関係表示処理部22は,相互依存
の大小の判定に基づいて局所構造間の相互依存関係を示
す相互依存関係表示グラフ23を作成し,ディスプレイ
などの出力装置24に出力する処理手段である。
【0020】
【作用】図2は,本発明の作用説明図である。図中,r
i はアミノ酸残基,Si は通常複数のアミノ酸残基によ
って定義される局所構造を表す。
【0021】蛋白質分子は,図2の(イ)に示すよう
に,多数のアミノ酸がその蛋白質に特有の順番で線上に
重合することにより合成されたものであり,例えば図2
の(ロ)に示すように,エネルギー的に安定なある特定
の立体構造へと折り畳まる。蛋白質の機能は,蛋白質が
このように特定の立体構造を形成することによって発現
されるため,立体構造を形成するメカニズムを解明し,
例えば,あるアミノ酸配列から蛋白質分子の立体構造を
予測できるようにすることが望まれる。
【0022】そのため本発明は,ある局所構造の他の局
所構造への依存度,またはある局所構造間の相互依存度
という,アミノ酸配列上で任意に定めた局所構造間の相
互作用のあり方を示す新しい尺度を用いて,図2の
(ロ)に示すような蛋白質分子の個々の局所構造S1,
S2,…間の相互作用が立体構造形成にどのように寄与
しているかを評価する情報を得ることができるようにし
たものである。
【0023】座標データ入力処理部12により,仮定ま
たは実験により求めた解析対象の蛋白質分子を構成する
各原子の座標データを入力する。また,局所構造定義入
力処理部13により,アミノ酸配列におけるどの部分を
局所構造S1,S2,…とするかの定義情報を入力す
る。
【0024】アミノ酸残基間相互作用計算部14は,例
えば図2の(ハ)に示すように,各局所構造SP , q
間の相互作用の大きさE(p,q)を,SP に属するア
ミノ酸残基rpiとSq に属するアミノ酸残基rqjとの間
の相互作用の大きさをすべて足し合わせることにより計
算する。
【0025】局所構造間相互作用計算部15は,図2の
(ニ)に示すように,ある局所構造SP に注目したとき
に,他のすべての局所構造との相互作用の大きさの総和
T(p)を計算するものである。
【0026】この相互作用の大きさの総和ET (p)を
基に,後に実施例により詳しく説明するように,依存度
または相互依存度を計算し,蛋白質分子の立体構造形成
のメカニズムをシスティマティックに解明できるように
する。
【0027】
【実施例】図3および図4は,本発明の実施例の処理説
明図である。以下,図3および図4に示す処理(a) 〜
(j) に従って説明する。
【0028】(a) 座標データ入力処理部12により,蛋
白質分子を構成する各原子に対して,3次元空間内にお
ける座標,およびその原子の属するアミノ酸残基番号を
定義したものを入力する。さらに,後述するアミノ酸残
基間相互作用の大きさを計算する際に必要であれば,そ
の原子の種類,およびそれが属するアミノ酸残基種の定
義情報もあわせて入力する。
【0029】(b) 次に,局所構造定義入力処理部13に
より,局所構造の定義を入力する。局所構造とは,ここ
では蛋白質分子全体の中の一部のアミノ酸残基により構
成される構造を意味する。この局所構造は,アミノ酸配
列上必ずしも連続した領域である必要はない。局所構造
の定義は,それに含まれるアミノ酸残基の残基番号によ
って与えられる。
【0030】(c) アミノ酸残基間相互作用計算部14に
より,2つのアミノ酸残基間の相互作用の大きさe
(i,j)を,処理(a) で入力したアミノ酸残基の座標
データをもとに計算する。アミノ酸残基間の相互作用の
大きさは,数値により与えられる。
【0031】(d) 局所構造間相互作用計算部15によ
り,2つの局所構造間の相互作用の大きさを計算する。
局所構造Sp ,Sq 間の相互作用の大きさをE(p,
q)とすると,E(p,q)は,Sp に属するアミノ酸
残基ri とSq に属するアミノ酸残基rj との間の相互
作用の大きさe(i,j)をすべて足し合わせたもので
ある。
【0032】(e) 次に,依存度または相互依存度の計算
に用いるために,それぞれの局所構造Sp に対し,他の
すべての局所構造との相互作用の大きさの総和E
T (p)を計算する。以下,依存度を計算する場合に
は,図4の(イ)に示す処理(f) へ進み,相互依存度を
計算する場合には,図4の(ロ)に示す処理(i) へ進
む。
【0033】(f) 局所構造Sp の局所構造Sq への依存
度D(p;q)は,ET (p)に対するE(p,q)の
割合によって与えられる。依存度計算部16により,こ
の依存度D(p;q)を計算する。
【0034】(g) 依存大小判定処理部17により,局所
構造Sp の局所構造Sq への依存度D(p;q)を一定
の手続きを用いて評価することによって,Sp のSq
の依存が大きいかどうかを判定する。
【0035】(h) 依存関係表示処理部18は,処理(f)
で計算された依存度と処理(g) での判定に基づき,局所
構造間の依存関係を有向グラフの図形によって表示す
る。(i) 局所構造Sp と局所構造Sq の間の相互依存度
M (p,q)は,ET (p)とET (q)を足し合わ
せたものに対するE(p,q)を2倍したものの割合に
よって与えられる。相互依存度計算部20により,この
相互依存度DM (p,q)を計算する。
【0036】(j) 相互依存大小判定処理部21により,
局所構造Sp と局所構造Sq の間の相互依存度D
M (p,q)を一定の手続きを用いて評価することによ
って,SpとSq の間の相互依存度が大きいかどうかを
判定する。
【0037】(k) 相互依存関係表示処理部22により,
処理(i) で計算された相互依存度と処理(j) での判定に
基づき,局所構造間の相互依存関係を図形によって表示
する。
【0038】依存度D(p;q)は,ある局所構造Sp
に注目したとき,それと他のすべての局所構造との相互
作用全体の内で,Sq との相互作用がどの程度の比率を
占めているかを示している。従って,D(p;q)が大
きいほど,Sq は他の局所構造に比べてより大きな影響
をSq から受けていることになる。例えば,Sp がS q
のみと相互作用しているとき(ET (p)=E(p,
q)のとき),D(p;q)=1となる。
【0039】相互依存度DM (p,q)は,2つの局所
構造Sp とSq に注目したとき,それらと他のすべての
局所構造との相互作用全体の内で,Sp とSq の間の相
互作用がどの程度の比率を占めているかを示している。
従って,DM (p,q)が大きいほど,Sp とSq の互
いに及ぼす影響の度合いが相対的に大きくなる。言い換
えれば,Sp とSq に及ぼす他の局所構造からの相互作
用が小さくなり,SpとSq の対の構造形成が他の部分
の構造形成から独立したものとなる。
【0040】例えば,Sp がSq のみと相互作用し,か
つSq がSp のみと相互作用しているとき(ET (p)
=E(p,q),ET (q)=E(q,p)のとき),
M(p,q)=1となる。しかし,例えば,Sp はS
q のみと相互作用しているが,Sq はSp 以外の局所構
造とも相互作用しているときには,DM (p,q)<1
となる。
【0041】図5は,本発明の実施例に係るアミノ酸残
基間相互作用の例を説明する図である。蛋白質分子の立
体構造形成は,互いに親和性をもったアミノ酸残基の側
鎖同士が凝集し,接触しようとする力を主要な原動力と
していると考えられる。従って,側鎖同士が接触してい
るか否かをもって,アミノ酸残基間の相互作用の指標と
することは合理的である。
【0042】そこでここでは,アミノ酸残基ri ,rj
間の相互作用の大きさe(i,j)を次のように定めて
いる。アミノ酸残基ri の側鎖中の原子と,rj の側鎖
中の原子とのすべての対の中に,接触しているものが存
在すれば,ri の側鎖とrjの側鎖は接触しているとみ
なし,e(i,j)=1とする。ri の側鎖とrj の側
鎖が接触していなければ,e(i,j)=0とする。
【0043】なお,2つの原子が接触しているか否か
は,次のように定める。すなわち,各原子をそれぞれに
固有のファンデルワールス半径をもった球とみなし,水
分子を酸素原子のファンデルワールス半径を持った球と
みなしたとき,2原子の間を水分子が素通りできないほ
ど,それら原子が近接しているときに,それら2つの原
子は接触していると判定する。具体的には,以下のとお
りである。
【0044】VDW(a)を原子aのファンデルワール
ス半径とするとき,その値を例えば次のように定義す
る。 VDW(芳香環中の炭素)=1.76 VDW(carboxyl, carbonil基中の炭素) =1.55 VDW(それ以外の炭素)=2.00 VDW(窒素)=1.55 VDW(酸素)=1.40 VDW(硫黄)=2.00 また,水分子の半径に相当するVDW(H2 O)は,こ
こでは,1.40とした。以上において,原子の半径の
単位はすべて,オングストロームである。
【0045】図5の(イ)に示すように,ri に属する
側鎖原子をal ,またrj に属する側鎖原子am の対を
考える。図5の(ロ)および(ハ)に示すように,これ
らの原子間を水分子が通ることができるか否かによっ
て,接触しているか否かを定める。従って,al ,am
間の距離をLとしたとき, L≦VDW(al )+VDW(am )+2VDW(H2 O) を満たすものがあれば,e(i,j)=1,そのような
対が存在しなければ,e(i,j)=0である。
【0046】図6は,図1に示す依存大小判定処理部1
7において局所構造Sp の局所構造Sq への依存が大き
いかどうかを判定する処理の例を示している。各局所構
造Sp について,ある一定の値mを定め,Sq への依存
度D(p;q)がmに等しいかまたはmを越えるとき,
p のSq への依存は大きいと判定する。ここでは,各
局所構造Sp について,mを次のように定めた。すなわ
ち,局所構造Sp の他の局所構造への依存度の最大値を
もってmとした。
【0047】図7は,図1に示す依存関係表示処理部1
8による依存関係表示処理の例を示している。局所構造
間の依存関係を有向グラフを表す図形によって表示する
場合,各局所構造に対応する「点」をもつ有向グラフを
考える。図6に示す手続きによって局所構造Sp の局所
構造Sq への依存が大きいと判定されていれば,有向グ
ラフはSp に対応する点からSq に対応する点へと向か
う向きをもった「枝」をもつものとする。
【0048】このように定められた有向グラフの「点」
を,それに対応する局所構造が何であるかを識別できる
「印」によって表示し(図7の処理(a) ),「枝」を,
「印」と「印」を結ぶ矢印として表示する(図7の処理
(b) )。
【0049】図8の(イ)は,図1に示す相互依存大小
判定処理部21において相互依存が大きいかどうかを判
定する手続きを示している。各局所構造に対応する
「点」をもち,Sp に対応する点とSq に対応する点の
間に,M−DM (p,q)の重みが付いた向きのない
「枝」をもつグラフを考え,このグラフの最小木を求め
る。Sp に対応する点とSq に対応する点の間の枝が,
得られた最小木の中に含まれていれば,Sp とSq の間
の相互依存は大きいと判定する。
【0050】図8の(ロ)は,最小木を用いないで相互
依存が大きいかどうかを判定する手続きの例を示してい
る。図8の(ロ)に示すように,例えば,ある閾値mを
定め,DM (p,q)がmより大きいかどうかによっ
て,SP ,Sq 間の相互依存が大きいかどうかを定め
る。ここでは,m=0.5としている。
【0051】図9は,図1に示す相互依存関係表示処理
部22において局所構造間の相互依存関係を最小木を表
す図形によって表示するための手続きを示している。例
えば,図8の(イ)に示す手続きによって定められた最
小木の「点」を,それに対応する局所構造が何であるか
を識別できる「印」によって表示し,「枝」を,「印」
と「印」を結ぶ線分として表示する。これによって,局
所構造間の相互依存関係の中で重要なものが一目で把握
できるようになる。
【0052】次に,蛋白質分子の例として乳酸脱水素酵
素を取り上げ,本発明の具体的な適用例を説明する。図
10は,図1に示す座標データ入力処理部12において
入力される座標データの例であって,特に,乳酸脱水素
酵素という蛋白質分子の座標データのうち,第21残基
のα炭素原子の座標データを定めた部分を示している。
分子中の全原子または相互依存関係に特に大きく影響す
る原子について,このような座標データを入力する。こ
のような座標データは,例えばX線結晶解析によって求
めることができる。また,ある立体構造を仮定して定義
してもよい。
【0053】図11は,図1に示す局所構造定義入力処
理部13において入力される局所構造の定義の例を示し
ている。ここでは,KabshとSander によるDSSPプ
ログラムを用いて定義された乳酸脱水素酵素分子のα-h
elixとβ-strand を局所構造として入力している。この
例の場合,各局所構造は,開始残基番号から終了残基番
号までのすべてのアミノ酸残基を含んだ,アミノ酸配列
上連続した領域によって定義されている。例えば,局所
構造S1は,α-helixの2次構造を持つ第3番目から第
9番目のアミノ酸残基として定義されている。この局所
構造は,任意に定めることができる。
【0054】図12は,乳酸脱水素酵素分子に対して計
算された局所構造間の相互作用の大きさ,各局所構造の
他の局所構造との相互作用の大きさの総和,各局所構造
の他の局所構造への依存度,局所構造間の相互依存度の
値の例を示している。図中, p,q :局所構造の番号 E(p,q) :局所構造SP と局所構造Sq 間の相互
作用の大きさ D(p;q) :局所構造SP の局所構造Sq への依存
度 DM(p,q):局所構造SP と局所構造Sq 間の相互
依存度 ET(p) :局所構造SP の他の局所構造への相互
作用の大きさの総和 である。これらのデータを,例えば外部記憶装置にファ
イルとして保存することにより,立体構造に関する解析
のための統計的情報として利用することができる。な
お,図12では,相互作用の大きさが0となる局所構造
の対については省いてある。
【0055】図13は,乳酸脱水素酵素分子に対して,
依存大小判定処理部17の処理によって依存が大きいと
判定された局所構造の対と,対応する依存度の値を示し
たものである。
【0056】図13に示す値をもとに,依存関係表示処
理部18の処理により,乳酸脱水素酵素分子の局所構造
間の依存関係を有向グラフによって表示した結果を,図
14に示す。
【0057】図15は,乳酸脱水素酵素分子に対して,
相互依存大小判定処理部21の処理によって相互依存が
大きいと判定された局所構造の対と,対応する相互依存
度の値を示したものである。
【0058】図15に示す値をもとに,相互依存関係表
示処理部22の処理により,乳酸脱水素酵素分子の局所
構造間の相互依存関係を最小木によって表示した結果
を,図16に示す。ここでは,さらに相互依存度が0.
5以上のものの枝を太線で表示することにより,特に強
い相互依存度があるものを容易に認識できるようにして
いる。
【0059】上述の実施例では,図5に示す例のよう
に,アミノ酸残基間の相互作用の大きさe(i,j)を
側鎖同士が接触しているか否かによって計算したが,e
(i,j)は側鎖に限らず,アミノ酸残基に含まれる任
意の原子同士が接触しているか否かによって定めてもよ
い。また,エネルギー最小化法や分子動力学などにおい
て標準的に使用されているポテンシャルエネルギー関数
を用いて計算してもよい。一般に,e(i,j)は,ア
ミノ酸残基間の相互作用の大きさを求めるために妥当で
あるとユーザーによって判断され,定義された特定の手
続きによって計算されればよい。
【0060】依存大小判定処理部17において,局所構
造Sp の局所構造Sq への依存が大きいかどうかを判定
する手続きとしては,上述の実施例で示したものに限ら
ず,すべてのD(p;q)に1か0のどちらかの値を対
応させる任意の関数と等価な任意の手続きであれば,ユ
ーザーによって任意に定義されてよい。ただし,そのよ
うな手続きが,依存の大小の判定にとって有意義かどう
かの判断は,ユーザーに委ねられる。このような依存の
大小を定める基準として,いくつかの標準的な手続きを
容易しておき,メニュー等により選択できるようにして
もよい。
【0061】同様に,相互依存大小判定処理部21にお
いて,局所構造Sp と局所構造Sqの間の相互依存が大
きいかどうかを判定する手続きとしては,上述の実施例
で示したものに限らず,すべてのDM (p,q)に1か
0のどちらかの値を対応させる任意の関数と等価な任意
の手続きであれば,ユーザーによって任意に定義されて
よい。ただし,そのような手続きが,相互依存の大小の
判定にとって有意義かどうかの判断は,ユーザーに委ね
られる。前述した図8(ロ)に示す例は,そのような手
続きの一例である。図16において,相互依存関係が太
い線分で示されているものは,図8の(ロ)に示す手続
きによって大きいと判定されたものである。
【0062】
【発明の効果】以上説明したように,本発明によれば,
蛋白質分子を構成する局所構造間の相互作用に関する情
報が,新しい概念による各局所構造の他の局所構造に対
する「依存度」または各局所構造間の「相互依存度」と
いう明確な数値として得られるため,蛋白質分子の全体
の立体構造の形成にとってどのような局所構造間相互作
用が重要であるかを客観的に評価することが可能にな
り,蛋白質分子立体構造形成のメカニズムの解明に寄与
するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理説明図である。
【図2】本発明の作用説明図である。
【図3】本発明の実施例の処理説明図である。
【図4】本発明の実施例の処理説明図である。
【図5】本発明の実施例に係るアミノ酸残基間相互作用
の例を説明するための図である。
【図6】本発明の実施例による依存大小判定処理の例を
示す図である。
【図7】本発明の実施例よる依存関係表示処理の例を示
す図である。
【図8】本発明の実施例による相互依存大小判定処理の
例を示す図である。
【図9】本発明の実施例よる相互依存関係表示処理の例
を示す図である。
【図10】本発明の実施例を説明するための乳酸脱水素
酵素の座標データの例を示す図である。
【図11】本発明の実施例を説明するための乳酸脱水素
酵素の局所構造の定義の例を示す図である。
【図12】本発明の実施例による計算結果の例を示す図
である。
【図13】本発明の実施例における依存が大きいと判定
された局所構造の対の例を示す図である。
【図14】本発明の実施例による局所構造の他の局所構
造への依存関係の図による表示の例を示す図である。
【図15】本発明の実施例における相互依存が大きいと
判定された局所構造の対の例を示す図である。
【図16】本発明の実施例による局所構造間の相互依存
関係の図による表示の例を示す図である。
【符号の説明】
10 入力装置 11 処理装置 12 座標データ入力処理部 13 局所構造定義入力処理部 14 アミノ酸残基間相互作用計算部 15 局所構造間相互作用計算部 16 依存度計算部 17 依存大小判定処理部 18 依存関係表示処理部 19 依存関係グラフ 20 相互依存度計算部 21 相互依存大小判定処理部 22 相互依存関係表示処理部 23 相互依存関係表示グラフ 24 出力装置

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 命令を実行するプロセッサ(11)と,デー
    タを入力する入力装置(10)と,データを出力する出力装
    置(24)とを備え,アミノ酸配列からなる蛋白質分子の立
    体構造を解析する蛋白質分子立体構造解析装置であっ
    て,蛋白質分子の座標データを入力する座標データ入力
    処理手段(12)と,蛋白質分子の局所構造に関する定義情
    報を入力する局所構造定義入力処理手段(13)と,座標デ
    ータを用いることによってアミノ酸残基間の相互作用の
    大きさを計算するアミノ酸残基間相互作用計算手段(14)
    と,アミノ酸残基間相互作用の大きさと局所構造の定義
    に基づき局所構造間の相互作用の大きさを計算する局所
    構造間相互作用計算手段(15)と,局所構造間相互作用の
    大きさに基づき各局所構造の他の局所構造への依存度を
    計算する依存度計算手段(16)とを備えたことを特徴とす
    る蛋白質分子立体構造解析装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の蛋白質分子立体構造解析
    装置において,前記依存度計算手段(16)によって計算し
    た依存度に基づき各局所構造の他の局所構造への依存
    が,ある基準よりも大きいかどうかを判定する依存大小
    判定処理手段(17)と,依存の大小の判定に基づいて局所
    構造間の依存関係を有向グラフによって表示する依存関
    係表示処理手段(18)とを備えたことを特徴とする蛋白質
    分子立体構造解析装置。
  3. 【請求項3】 命令を実行するプロセッサ(11)と,デー
    タを入力する入力装置(10)と,データを出力する出力装
    置(24)とを備え,アミノ酸配列からなる蛋白質分子の立
    体構造を解析する蛋白質分子立体構造解析装置であっ
    て,蛋白質分子の座標データを入力する座標データ入力
    処理手段(12)と,蛋白質分子の局所構造に関する定義情
    報を入力する局所構造定義入力処理手段(13)と,座標デ
    ータを用いることによってアミノ酸残基間の相互作用の
    大きさを計算するアミノ酸残基間相互作用計算手段(14)
    と,アミノ酸残基間相互作用の大きさと局所構造の定義
    に基づき局所構造間の相互作用の大きさを計算する局所
    構造間相互作用計算手段(15)と,局所構造間相互作用の
    大きさに基づき局所構造間の相互依存度を計算する相互
    依存度計算手段(20)とを備えたことを特徴とする蛋白質
    分子立体構造解析装置。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の蛋白質分子立体構造解析
    装置において,前記相互依存度計算手段(20)によって計
    算した相互依存度に基づき各局所構造間の相互依存が,
    ある基準よりも大きいかどうかを判定する相互依存大小
    判定処理手段(21)と,相互依存の大小の判定に基づいて
    局所構造間の相互依存関係をグラフによって表示する相
    互依存関係表示処理手段(22)とを備えたことを特徴とす
    る蛋白質分子立体構造解析装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003056462A1 (fr) * 2001-12-27 2003-07-10 Celestar Lexico-Sciences, Inc. Appareil de prediction d'un site d'interaction, procede de prediction d'un site d'interaction, programme et support d'enregistrement associes
WO2003107218A1 (ja) * 2002-05-31 2003-12-24 セレスター・レキシコ・サイエンシズ株式会社 相互作用予測装置
WO2004006149A1 (ja) * 2002-07-05 2004-01-15 Fujitsu Limited 糖鎖の立体構造を解析する方法及び装置

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