JPH05161493A - ニューロトロフィン―3 - Google Patents

ニューロトロフィン―3

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JPH05161493A
JPH05161493A JP2229505A JP22950590A JPH05161493A JP H05161493 A JPH05161493 A JP H05161493A JP 2229505 A JP2229505 A JP 2229505A JP 22950590 A JP22950590 A JP 22950590A JP H05161493 A JPH05161493 A JP H05161493A
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Andreas Hohn
アンドレアス・ホーン
Joachim Leibrock
ヨアヒム・ライブロック
Karen Bailey
カレン・バイレイ
Yves-Alain Barde
イフェス―アライン・バルデ
Hans Friedrich Erwin Thoenen
ハンス・フリードリッヒ・エルヴィン・テーネン
Peter C Maisonpierre
ペーター・シー・マイソンピール
Mark E Furth
マーク・イー・フース
Ronald M Lindsay
ロナルド・エム・リンドセイ
George Yancopoulos
ジョージ・ヤンコプロス
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Abstract

(57)【要約】 電子出願以前の出願であるので 要約・選択図及び出願人の識別番号は存在しない。

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、BDNF/NGF遺伝子ファミリーのメンバ ーである新しく発見された神経栄養因子ニューロ トロフィン−3(NT-3)に関する。NT-3をコードす る遺伝子がクローンおよび配列され、そして組換 えNT-3が哺乳動物細胞中で発現されている。組換 えNT-3は、BDNFおよびNGFのそれとは異なる生物 活性スペクトルを有することが示されている。
本発明は、NT-3をコードする核酸配列、このも のから多量に産生される実質的に純粋なNT-3タン パク質、そのペプチドフラグメントまたは誘導体、 並びにNT-3タンパク質、またはそのペプチドに対 する抗体に関する。本発明のNT-3遺伝子産物は、 とりわけ末梢神経障害、アルツハイマー病および パーキンソン病を含む種々の神経学的疾患の診断 および治療に使用できる。
発明の背景 (1) 神経系における神経栄養因子の役割 神経系の発達および維持は神経栄養因子として 知られるタンパク質に依存する。広範なニューロ ン細胞の死は中枢および末梢神経系の正常な発達 に伴って起こり、そして所定の標的領域に突き出 るニューロンの数を調節するのに決定的な役割を 明らかに果している(Berg,D.K.,1982,Neuronal Development 297-331;Cowanら、1984,225:1258 -65)。発達期中の末梢標的組織の切除および移植 研究により、ニューロン細胞の死は、ニューロン の突き出た領域中に生成された限定量の生存因子 (「神経栄養因子」)に対するニューロン間の競 争から生ずることが示されている。これらの観察 は、断然最もよく特性決定された神経栄養分子と なっている神経成長因子(NGF)の同定につながっ た(Levi-MontalciniおよびAngeletti,P.U.,19 68,Physiol.Rev.48:534-69;Thoenen,H.およ びBarde,Y.-A.,1980,Rev.60:1284-335)。NGF の役割および作用メカニズムの理解は、運よく雄 マウス顎下線においてこのタンパク質が豊富に発 見されたことにより、中和抗体の生産のみならず NGFの精製およびクローニングが可能になって大 きく促進された(Ullrichら,1983,Nature 303: 821-5;Scottら,1983,Nature 302:538-40)。
NGFは限定されたニューロン集団セットをするだ けなので、他の神経栄養因子の存在が長い間予測 されていた。(Varon,S. およびAdler,R.1981, Adv.Cellular Neurobiol.2:115-63;Bardeら、 1987,Prog Brain Res 71:185-9;Snider,W.D. およびJohnson,E.M.,1989,Ann.Neurol.26: 489-506)。かかる因子が確かに存在することは現 在明らかであるが、それらの量が非常に少ないの で、それらの分子の特性決定が妨げられている。
それにもかかわらず、2種のかかるタンパク質、 すなわち脳由来神経栄養因子(BDNF)および毛様体 神経栄養因子(CNTF)の少量が精製されたことによ り、それらの部分的な核酸配列が最近可能となっ た(Leibrockら,1989,Nature 341:149-52; Stockliら,1989,Nature 342:21-28およびLin ら,1989,Science 246:1023-25)。別個のニュー ロン集団特異性を有するにもかかわらず、BDNFお よびNGF(しかしCNTFではない)はひとつの遺伝子 ファミリーのメンバーとみなされるに十分な構造 的相同性を示す(Leibrockら,1989,Nature 341: 149-52)。
(2) その他の神経栄養因子 ここ10年来、多種多様の組織の抽出物における および多くの異なる種類の細胞の馴化培地におけ る神経栄養活性物の報告が多数存在する。しかし ながらほとんど全ての場合において、これら活性 物が極めて少量、すなわち組織1g当たりピコグ ラムないしナノグラムの範囲でしか存在しないと いう事実によりかかる活性物の精製および特性決 定の進歩が妨げられている。
更に、適当なバイオアッセイが末梢ニューロン については確立されているが、中枢神経系ニュー ロンに関する意図する信頼でき、再現性がありか つ特異的なアッセイは問題があることが判明して いる。個々の種類の末梢神経はばらばらの、容易 に切開可能な神経節として見出されているが、中 枢神経系(CNS)ニューロンはそれらの分布におい て不変に高い異質性を有する。従って、特異的マ ーカーが特定のクラスのCNSニューロンの同定ま たは富化のいずれかに必要とされる。かかるマー カー、例えば細胞表面または細胞骨格成分に対す る抗体生成の進展、または特異的な組織学的染色 は非常に制限されている。従って、(i)NGF程豊富 でなく、(ii)アッセイが困難であり、そして(iii) 抗体産生を引き出すに十分な量で入手できない、 神経栄養因子の特性決定が甚だ困難な方法である ことは判っている。
(2.1) 脳由来成長因子と神経成長因子の比較 インビトロにおいて胚のニワトリ背根神経節ニ ューロンの生存を維持できる神経栄養活性物は、 ラットC-6神経膠腫細胞を培養した「馴化培地」 中で確認された(Bardeら,1978,Nature 274:818)。
この活性物はマウスNGFに対する抗体によって中 和されず、馴化培地における他の神経栄養因子の 存在が示唆される。次いで、NGF抗体によって遮 断され得なかった同様の活性物が正常成体ラット 脳大グリア細胞の培養物中で(Lindsay,1979, Nature 282:80-82;Lindsayら,1982,BrainRes. 243:329-343)、および発達中並びに成体ラット脳 (Bardeら,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 77:1199-1203)および発達中および成熟ニワトリ 脊髄(LindsayおよびPeters,1984,Neurosci,12: 45-51)の抽出物中で報告された。しかしながら、 全ての場合において活性因子は単離も同定もされ ておらず、そして観察された活性が同一因子によ るものかまたは異なる因子によるものかの疑問が 残っている。
ブタ脳を出発物質として使用して、Barde等 (1982,EMBO J.1:549-553)は、今や脳由来神経 栄養因子(BDNF)と命名され、そしてE10/E11ニワ トリ胚からの背根神経節ニューロンの生存を促進 するらしい因子を報告した。神経栄養活性は、ド デシル硫酸ナトリウム(SDS)ゲル電気泳動におい て12.3kD分子量のシングルバンドとして移動する 高い塩基性タンパク質(等電点,pI>10.1)にある ことが見出された。精製ファクターは、1.4×10 であると概算されたが、収量が非常に低く、1. 5kgのブタ脳から約1μgのBDNFしか精製されな かった。更に、精製工程の最終段階が調製的ゲル 電気泳動であるので、BDNFの活性は残留SDSの存 在に派生して完全には復元できなかった(Bardeお よびThoenen,1985,"Hormones and Cell Regula tion",Vol.9,Dumontら編、Elsevier Science Publishers,pp.385-390)。BDNFの高度の塩基性 および分子サイズは、NGFモノマーに非常に類似 することが注目された。しかしながら、BDNFは、 (a)ニワトリ背根神経節バイオアッセイにおいて、 NGFに対する抗体がBDNFの生物学的活性に対して 何ら明らかな作用を及ぼさず、(b)同じアッセイに おいてBDNFおよびNGFの効果が付加的でると思 われ、そして(c)NGFとは異なり、BDNFがE12ニワ トリ胚交感神経ニューロンの生存に対してなんら の作用も有していないことが判明したという点で、 NGFの既知の性質とは異なる性質を有しているこ とが明らかとなった。加えて、脳抽出物を用いる 早期の研究の際、これらの供給源からの神経栄養 活性がNGFに関連するよりも発達のより後期段階 で知覚ニューロンに対して作用するらしいことが 観察された。ポリカチオン性基質、例えばポリリ シンまたはポリオルチニン上で培養されたニワト リ胚ニューロンの解離培養物を用いると、BDNFは、 E10-11(胚日数10または11)背根神経節ニューロ ンの30パーセント以上の生存を持続させることが 見出されているが、E6における同一ニューロン の生存に対する影響はほとんどないと思われた (Bardeら,1980,Proc.Natl.Acad.
Sci.U.S.A. 77:1199-1203,前出)。同様の条件下に、NGFは、 E6 DRGニューロンの30〜40パーセントの生存を支 えた。興味深いことに、細胞外マトリックス糖タ ンパクラミニンで被覆した基質上で培養した場合 に、NGFとBDNFの両方がE6-E12令のニワトリ胚か らのDRGニューロンの約50パーセントの生存を持 続させることが後に見出された(Lindsayら,1985, Develop.Biol.112:319-328)。後者の研究にお いて、NGFおよびBDNFの効果が、両者が飽和濃度 で存在する場合に付加的であることが見出された。
NGFのニューロン特異性に関するLevi-Montalc ini(1966,The Harvey Lectures 60:217-259)に よる初期の研究では、NGFがニワトリのある種の 脳感覚性神経節のニューロン、特に第10脳神経の 節状神経節に対してなんら作用を有していないこ とが明らかになったので、NGFが感覚性ニューロ ンに関しても遍在性神経栄養因子ではないことが 示唆された。後のインビボ研究(Johnsonら,1980, Science 210:916-918;Pearsonら,1983 Develop. Biol.96:32-36)では、胚形成の際のNGF不在が ラットの大部分の脳感覚性神経節におけるニュー ロンの生存に何らの作用も及ぼさず、一方同様な 処理が神経稜由来の感覚性神経節におけるニュー ロン総数を著しく涸渇させることが示された。よ り詳細なインビトロ研究(LindsayおよびRohrer, 1985,Develop.Biol.112:30-48;Daviesおよび Lindsay,1985,Develop.Biol.111:62-72;Lin dsayら,1985,J.Cell.Sci.Suppl.3:115-129) では、NGFが大部分の神経稜由来感覚性ニューロ ンの生存を持続させるが、神経プラコードから由 来の脳感覚性ニューロンの生存に対して何ら明ら かな作用を有しないことが明示されている。
NGFのそれとは異なるBDNFのニューロン特異性 の第1の証拠は、精製BDNFがE6、E9またはE12で のニワトリ胚の神経プラコード由来節状神経節か ら解離された知覚ニューロンの40〜50%の生存を 持続させるというインビトロ例証である(Lindsay ら,1985,J.Cell.Sci.Supp.3:115-129)。
NGFは、それ自身によってもあるいはBDNFと一緒 でもこれらのニューロンに対する明らかな効果を 有していない。後に、外植培養研究において、BD NFが錐体、膝状および腹側外側三叉神経神経節を 含む他の神経プラコード由来感覚性神経節の生存 および軸索が伸び出るのを支持すると思われるこ とが示されたが(Daviesら,1986,J.Neurosci. 6:1987-1904)、これらのいずれもNGFに対して感 受性であるとは判明していない。上記の研究の全 てにおいて、NGFに対する中和抗体は、BDNFの観 察された活性に何らの作用も及ぼさなかった。末 梢神経節からの培養ニューロンに及ぼすその作用 に加えて、BDNFは、ウズラ神経稜から培養された 細胞の生存およびニユーロン分化を刺激すること が見出された(KalcheimおよびGendreau,1988, Develop.Brain Res.41:79-86)。
本発明以前には、免疫化にとって十分な量のBD NFを生産できないことが、ニュローン集団に及ぼ すこれらの作用を抗−NGF抗体と比較するための 抗−BDNF抗体の生産を妨げており、そしてBDNF/N GF交差−中和実験を妨げていた。しかしながら、 BDNFを用いる二つの最近の研究では(Kalcheimら, 1987,EMBO J.6:2871-2873;HoferおよびBarde, 1988,Nature 331:261-262)、鳥類PNS発達にお けるBDNFの生理学的役割が示されている。機械的 バリアを卵子内でE3/E4 DRG(胚日数3〜4の背根 神経節)と神経管中のそれらのCNS標的との間に 置いた場合、多くのDRGニューロンが死ぬことが 観察された(KalcheimおよびLe Douarin,1986, Develop.Biol.116:451-466)。このニューロン 死がCNS(神経管)由来神経栄養因子不在によるも のであるかも知れないと仮定された。続いて、ラ ミニン被覆シアラスティック(sialastic)膜に結 合したBDNFがこの細胞死を防止できることが観察 された(Kalcheimら,1987,EMBO J.6:2871-28 73)。BDNFの発達中のウズラ卵への注射は、節状 神経節における自然に生じる細胞死を減少させる ことが見出され、この効果はNGFでは見られない ものであった(HoflおよびBarde,1988,Nature 331:261-262)。神経稜および神経プラコード両起 源の末梢知覚ニューロンに対するその作用に加え て、BDNFは、発達中のCNSニューロンの生存を持 続させることが見出された。Johnson等は(1986, J.Neurosci.6:3031-3938)、BDNFがE17ラット 胚から培養された網膜神経節細胞の生存を持続さ せることを示すデータを提示している。これは、 馴化培地および網膜神経節細胞の標的領域から調 製された脳抽出物がこれらのニューロンの生存を 支えると思われることを示した先の研究の範囲を 拡大させた(McCafferyら,1982,Ex.Brain Res. 48:37-386;Sarthyら,1983,J.Neurosci.3: 2532-2544;Turnerら,1983,Dev.Brain Res. 6:77-83)。
培養物中における発達中のニューロンの生存に 及ぼすその作用に加えて、BDNFは培養された成体 末梢および中枢神経系ニューロンに作用を及ぼす ことが示されている。成体感覚性ニューロンは3 または4週間にわたるインビトロ維持に神経栄養 因子を必要としないと思われたが、BDNF並びにNG Fは、培養中の成体ラットDRGニューロンからの 軸索再生を刺激することが示されている(Lindsay, 1988,J.Neurosci.8:2394-2405)。更に、成体 ラット網膜の培養物において、BDNFは網膜神経節 細胞の生存およびそこからの軸索伸長の両方を促 進することが観察された(Thanosら,1989,Eur. J.Neurosci.1:19-26)。NGFとBDNFの生物学的 作用の比較を第I表に示す。
(2.2) 脳由来神経栄養因子のニューロン標的 末梢神経神経節の感覚性ニューロンが、二つの 異なった過度的な発生学的構造すなわち神経稜お よび神経プラコードのいずれかからも生ずること が見出されている。神経稜から自律神経節および 脊髄神経感覚性神経節、すなわちDRGのニューロ ンおよび付随細胞が生じると思われる。神経稜お よび神経プラコードの脳神経感覚性神経節形成へ の寄与がLe Douarinにより考案されたウズラ/ ニワトリキメラ移植系を用いて研究された(Le Douarin,1973,Develop.Biol.20:217-222; Noden,1978,Develop.Biol.67:313-329;Nara yananおよびNarayanan,1980,Anat.Rec.196: 71-82;Ayer-Le LievreおよびLe Douarin,1982, Develop.Biol.94:291−310;
D′Amico−Martelお よびNodem,1983,Am.J.Anat.166:445-468)。
Lindsayらの総説(1985,J.Cell.Sci.Supp.3: 115-129)におけるように、現在では少なくとも鳥 類に関しては、第VII、第IX、および第X脳神経の 末端の神経節(それぞれ膝状神経節、錐体神経節 および節状神経節)のニューロンおよび第VIII脳神 経の前庭聴神経複合体のニューロンがもっぱら神 経プラコード起源であると考えられている。第V 脳神経の三叉神経節は神経稜および神経プラコー ドの両方の起源のニューロンを含有する(上下顎 葉の腹側外側極では神経プラコード由来ニューロ ンが主である)が、一方すべての脳神経節の付随 細胞は、完全に神経稜起源であることが判明して いる。
脊髄および脳神経感覚性ニューロンの外植片お よび解離された、ニューロンの濃厚な培養物の両 者を用いたインビトロ実験から、神経稜起源の感 覚性ニューロンはNGFに対して応答性であり、他方 、神経プラコード由来のニューロン(三叉神経節 の腹側外側部分のニューロンおよび聴神経節、膝 状神経節、錐体神経節および節状神経節の全ニュ ーロン集団を包含する)の大部分は胚発生期間全 体を通じてNGFに対して応答性でないことが観察 された。このようなNGFに対する要求性および応 答性の相違とは対照的に、神経プラコードおよび 神経稜由来感覚性ニューロンは両方ともBDNFの生 存および神経突起−促進活性に対して応答性であ ることが見いだされている(第I表)(Lindsayら ,1985,J.Cell.Sci.Supp.3:115-129;Linds ayら,1985,Develop.Biol.112:319-328;Kalche imおよびGendreau,1988,Develop.Brain Res.41 :79-86)。TebarおよびBarde(1988,J.Neurosc i.8:3337-3342)は、放射性標識したBDNFのニワト リ胚背根神経節ニューロンに対する結合パラメー ターを研究した。その結果は、一方はBDNFに対し て高い親和性を有し、他方は低い親和性を有する 二クラスのBDNFレセプターの存在と一致する。高 親和性レセプターは交感神経ニューロンにはみら れなかった。
BDNFの既知のニューロン標的がさらにBardeら (1987,Prog.Brain Res.71:185-189)によって 総説された。本発明以前には、BDNFに特異的な核 酸または抗体プローブがないため、BDNFを合成す る細胞を同定することは不可能であった。ポリク ローナルまたはモノクローナル抗体を調製する試 みはいずれも成功していない。このような抗体生 産の失敗は、BDNFの分子クローニング、発達中の ニューロンからインビボでBDNFを除去することの 生理学的作用の測定、イムノアッセイを用いた組 織中のBDNFの定量および免疫細胞化学を用いたBD NFの位置決定を妨げてきた。
(2.3) 脳由来神経栄養因子遺伝子のクローニング BDNF遺伝子のクローニングは、最初に米国特許 出願第07/400,591号、1989年8月30日出願、に記 載のように行われ、参照としてその全文がここに とりこまれる。簡単に説明すると、微量のBDNFタ ンパク質がブタ脳から精製され、それによってア ミノ酸配列のフラグメントの決定が可能になった。
これをさらに利用して、対応するオリゴヌクレオ チドを設計することができた。次に、BDNF生産細 胞から調製したcDNA鋳型を用いるポリメラーゼ連 鎖反応(PCR)において、これらの合成オリゴヌク レオチドをプライマーとして用いた。PCR生成物 をプローブとして使用し、ヒト、ブタ、ラット、 およびマウスを包含する様々な種の完全なcDNAお よび/またはゲノムBDNF遺伝子のクローニングを 行い、そしてこれらの遺伝子の配列を決定した。
組換えBDNFの発現はCOS細胞に於て達成された。
本発明は、BDNF遺伝子ファミリーの新たに発見 されたメンバーであるニューロトロフィン−3 (NT-3)に関する。本発明は、部分的には、BDNFお よびNGFに共通の核酸配列相同性領域の同定に基 づいている(米国特許出願第07/400,591号、1989 年8月30日出願、参照としてここにとり込まれ る。)。本発明によれば、このような相同性を有 する領域を用いて、BDNF/NGF遺伝子ファミリーの 新たなメンバーを同定できる;かかる方法を用い てNT-3を同定した。本発明は、これらの方法によ って同定された新規BDNF/NGF関連神経栄養因子の 遺伝子および遺伝子産物を提供する。
本発明の一部は、NT-3をコードする組換えDNA 分子に関する。本発明の詳細な実施態様に於ては、 NT-3をコードするDNA、はヒトDNAマウスDNAま たはラットDNAに由来する。本発明はまた、実質 的に第2図(マウスNT-3)、第7図(ラットNT-3)、 または第11図(ヒトNT-3)に示される核酸配列の 少なくとも一部を含んでなる組換えDNA分子を提 供する。また本発明は、組換えNT-3タンパク質お よび関連ペプチド生産に使用しうる組換えDNA発 現ベクターも提供する。
別の実施態様に於ては、本発明はNT-3タンパク 質および関連ペプチドを提供し、さらにかかるペ プチドおよびタンパク質を生産、調製するための 方法を提供する。また、本発明はNT-3タンパク質 およびペプチドに対する抗体にも関する。
本発明によれば、神経学的障害の診断および/ または治療にNT-3を使用することができる。この ような障害は、糖尿病性神経疾患、中毒性および 栄養性神経障害、遺伝性神経障害およびAIDS関連 神経障害のような末梢神経障害、およびアルツハ イマー病およびパーキンソン病のような変性疾患 を包含するがそれらに限定されない。NT-3はドー パキン作動性ニューロンの生存を支持することが 示されたので、本発明の好ましい実施態様におい て、NT-3をパーキンソン病の治療に用いることが できる。NT-3はBDNFまたはNGFの特異性とは異な る活性スペクトルを示すことが観察されたので、 NT-3は中枢神経系において再生および修復を誘導 するための新しく、価値のある選択枝を与える。
本明細書に添付した図面について以下に説明す る。
第1図.種々の種に由来するBDNFおよびNGFの 配列の比較。BDNFをコードする遺伝子の配列分析 およびそのアミノ酸配列の推定によって、このタ ンパク質がNGFと構造的類似性を多数有すること が明らかになった。成熟BDNFの一次構造、並びに 全体構造および前駆体タンパク質からの考えられ るプロセシング様式は、NGFとBDNF遺伝子が共通 の祖先の遺伝子から進化してきた可能性があるこ とを強く示唆している。成熟ポリペプチドの領域 内で、最もよく適合させるためにNGFにわずかに 3個のギャップを導入すると、全部で51のアミノ 酸同一性が多くの種に由来する既知のNGFに共通 し、そしてブタおよびヒトBDNFに共通する。この ような同一性には、6個のシステイン残基のすべ てが包含されており、このことはNGFとBDNFが非 常によく似た二次構造を有することを示唆してい る。さらに、上記の種すべてに由来するNGFおよ びブタ由来BDNFが同一であるような、またはわず かにおよそ1個の保存されたアミノ酸置換によっ てのみ異なるような、6またはそれ以上のアミノ 酸からなる4セグメントを観察することができる。
従って、当然、NGFとBDNFは一遺伝子ファミリー の密接に関連したメンバーであると結論付けるこ とができる。
第2図.マウスNT-3のゲノム配列および推定ア ミノ酸配列。アミノ酸配列は、同一読み枠の3個 の終止コドンの後に見いだされる最初のATGコド ンから始まる。下線を付した配列はPCRの第一巡 に使用したプライマーの位置を示す。N-グリコシ ル化コンセンサス配列にのみ二重下線を付し、ま た矢印はプロセシングを受けた成熟NT-3の推定開 始箇所を示す。
第3図.成熟マウスNT-3、NGF(Scottら、1983, Nature 302:538-540)、およびBDNF(Leibrockら、 1989,Nature 341:149-152)のアミノ酸配列の比 較。ここに示す成熟マウスBDNFの配列はブラBDNF と100%同一である。太字および影付きは3種の タンパク質すべてに同一の位置で見いだされたア ミノ酸を示し、矢印はすべてのシステイン残基を 指示する。星印は、適合を最適にするために導入 されたギャップを示す。V1-V4は3個以上の連続 したアミノ酸からなる4個の可変ドメインを示す。
第4図.マウスに於けるNT-3mRNAの組織分布。
全RNAのうち20μgを各レーンに供し、32P-標識 二本鎖DNAプローブとハイブリッド形成させた。
(A)約1.4キロベースに当たる単一バンドをすべ ての組織でみることができるが、肺では最も弱い シグナルが観察され、心臓では最も強い。骨格筋 は大腿部から取った。(B)脳では、海馬および小 脳で最大のシグナルが得られる。
第5図.胚齢8日のニワトリから得た節状神経 節から単離された感覚性ニューロンの生存。5,000 細胞をポリオルニチン−ラミニン基質上に塗布し、 生存するニューロンを24時間後に計数した。ここ で用いたBDNF濃度は最大生存を得るのに必要な最 低濃度の3倍である。無添加では、または1:50 希釈で用いられたトランスフェクションされない COSを有する馴化培地、または対照DNAでトラン スフェクションされた細胞を有する馴化培地では、 ニューロンの生存はまったく見いだされなかった。
第6図.(A)縮重した1B及び2Cプライマー (RIB/2Cと称する)を用いて誘導されたPCR産物 はラットゲノムDNAのNGF及びBDNF遺伝子のみな らず新規遺伝子NT-3も検出する。(B)ラットNT-3 ゲノムクローンの制限地図。RIB/2Cと特異的にハ イブリッド形成する2種の独立のバクテオリファ ージクローンをラットゲノムライブラリーから単 離した。19.5kb挿入物を含有するこれらのクロー ンのうちの一つの制限地図の模式図的表示を示す。
太い線はNT-3の読み取り枠(ORF)を示す(第7A 図参照)。RIB/2Cプローブの位置を示す。
第7図.ラットNT-3の配列、およびラットNGF およびラットBDNFに対するその相同性。(A)NT-3 のヌクレオチドおよびアミノ酸配列。NT-3遺伝子 をコードするORFを含むDNA配列、DNA配列の上 にアミノ酸翻訳を示す。星印は読み取り枠の開始 および終了を示す。成熟NT-3(119アミノ酸)の最 初の残基を+1の位置としてアミノ酸に番号を付 す。成熟NT-3を放出するために用いられる切断部 位を四角で囲む。この切断部位のすぐ上流に保存 されたグリコシル化部位も四角で囲む。他の考え られる切断部位は、NGFにおける推定中間体プロ セシング部位と同様に存在するが(Darlingら、19 87,Cold Spring Harb Symp Quant Biol 1:427-34) (しかしBDNFでは保存されていない)、これを四 角で囲み、「?CLEAVE」を付す。成熟NT-3に於け る6個のシステインに下線を付す。NT-3の短い前 駆体型のメチオニン開始コドン(-139の位置)に も下線を付してあるが、これは本分中で論じられ る開始部位「B」を示す。「B」開始部位の上流の 推定スプライス受容部位/イントロン境界を図に 示す。(B)ラットNGFおよびラットBDNFと並べて 整列させたラットNT-3の配列。MacVector配列分 折ソフトウェア(International Biotechnologies, Inc.より購入)を用いて、ラットNT-3 ORGとNGF およびBDNF遺伝子のORFとのマトリックス配置図 を作成した(ウィンドウサイズ20および最小一致 20%を用いた)。このマトリックスの対角線に沿 って見られる有意な一致を、NT-3タンパク質産物 の模式的表示の下に示す;成熟NT-3の上流の二つ の相同性領域をIおよびIIと命名し、NGFおよび BDNFと比較して示した。図に示すように、領域I は、短鎖前駆体NT-3を生じるために用いられる 「B」開始部位の上流に延びており、より長い前 駆体が存在するとの主張を裏書きする。(C)相同 領域IおよびIIに於けるNT-3,NGFおよびBDNFの 配列比較。これらの領域の配列を、相同性を最大 にするように一列に重ねてならべ、列に挿入され たギャップを「−」で示す。BDNFまたはNGFのい ずれかとNT-3配列との一致を「★」で示し、一方 NGFとBDNFとの一致をNGF配列に於いて「・」で 示す。配列上部の「+」は、ラットNT-3と、調べ たすべての種に由来するNGFおよびBDNF配列との 間で、完全に保存されている残基を示す。NGFに ついて定義され、BDNFについては既に予想され、 NT-3について本文で提出される以下の部位を示 す:「B」開始部位メチオニン開始コドン;シグ ナル配列切断部位(Edwardsら、1988,Mol.Cell. Biol.8:2456-64);BDNFには存在しないがNT-3に は存在する推定NGF中間体切断部位;グリコシル 化受容部位;成熟因子を放出するタンパク質加水 分解切断部位。(D)NT-3、BDNFおよびNGFの成熟 型の配列比較。保存されたシステインをボールド フェースのひし形で下線を付す。「★」、「・」 および「−」図はCと同様。NGF配列にのみ存在 するC-末端切断部位を示す。
第8図.外植したニワトリ胚(8日)神経節で アッセイしたNGF、BDNF、およびNT-3活性の比較。
背根神経節(DRG)(図A−D)、節状神経節(NG)(図 E−H)、および交感神経系神経節(SG)(図I−L) の顕微鏡写真。これらの神経節は、まったく神経 栄養因子の存在しない条件(対照;A,E,I)、 またはNGF(B,F,J)またはBDNF(C,G,K) またはNT-3(D,H,L)を含有するCOS細胞上 清の存在する条件のいずれかのもとで、24時間 (DRGおよびNG)または48時間(SG)培養した。対照 培養に於いては神経突起の成長はほとんど見られ ない(偽似トランスフェクション細胞から得た500 μlのCOS細胞上清)。NGF(10μlのCOS細胞上 清)はDRGとSGからは大量の線維の成長を生じた がNGからは生じなかった。NGF COS細胞上清を20 μlから500μlまで増加させたが、NGには作用 をおよぼさなかった。BDNF(10μlCOS細胞上清) はDRGとNGからの線維の成長を生じたが、SGから は生じず、大量にしても(20から500μl)SGに は作用をおよぼさなかった。NT-3(DRGおよびNGに ついては20μlCOS細胞上清、SGについては200 μl)は、SGからの成長は開始が遅く、また量も 少なかったが、三種類すべての神経節から線維 の成長を生じた。神経節は外植片として、前記 Lindsayら、1985,Dev.Biol.112:319-28)のよ うに5%ウマ血清を添加したF14培地中のコラー ゲンゲル(Lindsay R.M.およびRohrer,H.,1985, Dev.Biol.112:30−48)中で培養し
た。目盛り= 200μm。
第9図.NT-3は高度に富化された培養物中にお けるDRGニューロンの生存および神経突起成長を 促進する。以下のいずれかと48時間処理した、解 離されたニワトリ胚(8日)DRGのニューロン− 富化(>95%ニューロン)培養物の顕微鏡写真: (A)偽似トランスフェクションCOS細胞から得 られた上清(500μl)または(B,C)NT-3トラ ンスフェクション細胞からの上清(50μl)。A およびBは暗視野顕微鏡写真である。A(対照培 養物)に於いては、塗布したニューロンの5%以 下が生存した。Bにおいては、処置に耐えたニュ ーロンの数は塗布したニューロンの約60%であっ た。用量応答曲線から、これがニワトリE8 DRGニ ューロンに及ぼすNT-3の最大の作用であることが 判明した。(C)Bに示したのと同様の培養物の 高倍率位相差顕微鏡写真。多数の位相の鮮明なニ ューロン細胞の像、およびニューロンでない細胞 が事実上まったく存在しないことに注目すべきで ある。培養は前記(Lindsayら、1985,Dev.Biol .112:319-28)のように行われた。目盛り=150 μl(C)。
第10図.齧歯類組織に於けるNT-3、NGF、およ びBDNF発現のノーザンブロットの比較。ラット (左図)またはマウス(右図)の指示された組織 からRNAを調製した(Auffray,C.およびRougeon, F.,1980,Eur.J.Biochem.10
7:303−14)。つぎ に、指示された起源に由来する10μgのRNAを1 %ホルムアルデヒド−アガロ−スゲル上で分画し、 10×SSC中でナイロン膜に移した。三通りのノー ザンブロットを、68℃で、32P-標識(Feinberg,A. P.およびVogelstein,B.,1984,Anal.Biochem. 137:266-7)ラットNT-3、ラットBDNF、およびラッ トNGFDNAフラグメントとハイブリッド形成させ (Mahmoudi,M.およびLin,V.K.1989,Bio techiques 7:331-3)、次に68℃で2×SSC,0.1% SDS中で洗浄した。NT-3、NGFおよびBDNFに関す るDNAフラグメントは、pCDM8にこれらの遺伝子 を含有する発現構築物に由来する。これらの構築 物中の約775bp XhoI挿入物を、放射性標識に
先立 ちゲルで精製した。臭化エチジウム染色ゲルの写 真を包含しており、それにより試料当りのRNA総 量を比較することができる。
第11図.整列させたラットおよびヒトNT-3遺伝 のDNA配列。予想翻訳開始部位を「プレプロ >>」で示し、成熟NT-3の予想開始位置を「成熟 >>」で示す。成熟ラットおよびヒトNT-3タンパク 質は同一のアミノ酸配列を有するが、プレプロ領 域は下線を付した11箇所で異なる。
第12図.代謝標識によって検出されたヒトNT-3 ポリペプチドの発現。ペトリ皿1個当り5×106 のCOS-M5細胞を60mmペトリ皿に接種し、10%ウシ 全血清(FBS)を含有する完全DMEM培地中で37℃で 一夜増殖させた。サイトメガロウイルスプロモー ターの調節のもとで、ヒトNT-3遺伝子を含有する 20μgのプラスミドpC8-hN3(P1)を用いて、そ の細胞をトランスフェクションし(Chenおよび Okayama,1987,Mol.Cell.Biol.7:2745-52に 記載されたCaPO4法を使用)、または(プラスミ ドDNA無しで)同様のトランスフェクション操作 だけを行った。48時間後、細胞を洗浄し、メチオ ニンおよびシステインを含まない1%FBS含有DM EM 1ml中で1時間インキュベートした。[35S]メ チオニンおよび[35S]システインの混合物(各100 μCi、New England Nuclearから購入)を各培養 物に加え、細胞をさらに4時間37℃でインキュベ ートし、培地を集めた。50μlの試料を25μlの ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)含有2倍濃度試料 バッファーと混合し、5分間沸騰させ、そして SDS存在下15%ポリアクリルアミドゲル上の電気 泳動にかけたLaemmli,1970,Nature 227:680- 685)。Towbinらにより1979,Proc.Natl.Acad. Sci.U.S.A.76:4350-4354に記載の緩衝液を用い て、電気泳動(3時間,100mA)により、ナイロン 膜(Immobion,Milliporeより購入)にこのタン パク質を移した。このフィルターを風乾し標識れ たタンパク質をオートラジオグラフィーによって 検出した(室温で16時間、増感スクリーン− Cronex,DupontとともにKodak X-ARフィルムを使 用)。
第13図.NT-3上精の無い場合(0)、および、 NT-3含有上精の1:300,1:100,1:50および1:25希釈 の場合の培養物あたりの生存チロシンヒドロキシ ラーゼ細胞数を示す棒グラフ。
第14図、1皿あたり900,000細胞密度である ことを除き第13図の説明に記載したのと同じ棒 グラフ、 第15図.A.NT-3、BDNFおよびNGF合成転写 物を比較した図。全ての3転写物の5’末端での 共有する配列と相同の放射性標識オリゴヌクレオ チドを用いたドットブロットハイブリダイゼーシ ョンは、予め分光光度計により定量した合成NT-3、 BDNFおよびNGF転写物の等量(2ng)を規定の標 準として使用したと示としている。B.規定の合 成RNA標準物と比較した、成体ラット脳から調製 した全RNA中のNT-3、BDNFおよびNGF mRNAレベル の決定。成体脳から単離された全RNA 10μgおよ びその各ニューロトロフィンに対応する合成転写 物の4,10および20pgをノーザンブロットし、そし て、各ニューロトロフィンに特異的な放射性標識 がなされたプローブとハイフレダイズした。
第16図.ラット胚(A)、発達中のラット脳(B) および選択された分娩時の生体組織(C)から調製 された全RNA(10μg/レーン)中で発現された NT-3、BDNF、NGFおよびNRNA遺伝子。組織:A. BR:第1B図で標準化された成体脳検体;PLAC: 胎盤;EMB:胚全体;SP.C:脊髄;THY:胸線;LIV: 肝臓;HRT:心臓;BR:脳。転写の大きさは右端に 示す(キロ塩基対(kb))。
第17図.新生(A)および成体(B)神経系の別 個の領域から調製した全RNA(10μg/レーン) 中でのNT-3、BDNF、NGFおよびNRNA遺伝子発現。
領域:A.BR:第1B図で標準化した成体脳検体; CBL:小脳;HBR:後脳;MBR:中脳;DIEN:間脳; STR:線条体;HIP:海馬;CTX:新皮質;OLF:臭神経 球;BR:小脳無しの全脳;ADR:副腎;RET:網膜; SC.N.:座骨神経;SP.C.:脊髄。
第18図.新生および成体CNS領域および末梢 組織におけるNT-3、BDNF、およびNGF転写レベル の定量。データは、第16、17、19図および Maisonpierreら(1990,Science 247:1446-1451) に示されたものを含むノーザンブロットの複数回 照射物のデンシトメトリック走査を用いて得られ た。全てのレベルを成体脳におけるニューロトロ フィンレベルとの相関で標準化される。成体脳に おけるニューロトロフィンレベルは、3つのニュ ーロトロフィンに関して類似しており(本文参照)、 各ニューロトロフィンについて1と定められる。
スケールを越えた量については破断し棒線の上部 にその値が示される。神経および非−神経検体が 図に示されている。検体:BRN:小脳を含まない脳 ;CBL:小脳;HBR:後脳;MBR:中脳;DIE:間脳; STR:線条体;HIP:海馬;CTX:新皮質;OLF:臭神経 球;SP.C.:脊髄;SC.N.:座骨神経;RET:網膜;AD R:副腎;HRT:心臓;LIV:肝臓;THY:胸線;SKN:皮 膚;MUS:骨格筋;LNG:肺;INT:腸;KID:腎臓;SP L:脾臓。
第19図.脊髄(A,B)、小脳(B,F)および海馬 (C.G)の発達中のNT-3、BDNF、NGFおよびNGFR遺 伝子発現。表示した発達時点から調製した全RNA 10μgを種々の転写物のそれの発現について比較 した。ニューロトロフィン転写レベルのデンシト メトリック定量をE,F,Gに示した。
発明の詳細な説明 本発明は、神経栄養分子のBDNF/NGFファミリー の新たなメンバーであるニューロトロフィン−3、 並びに同様の方法を用いて同定することのできる BDNF/NGFファミリーの他のメンバーに関する。限 定するためでなく、明細書を明白に説明するため に、本発明の詳細な説明を以下の小項目に分ける こととする。
(i) BDNF/NGFファミリーの他のメンバーの同定; (ii) ニューロトロフィン−3のクローニング; (iii) ニューロトロフィン−3の発現; (iv) ニューロトロフィン−3の生物学的活性の アッセイ; (v) ニューロトロフィン−3遺伝子およびタン パク質; (vi) 抗−ニューロトロフィイン−3抗体の生産; および (vii) 本発明の利用。
(1)BDNF/NGFファミリーの他のメンバー NGFおよびBDNFは、約50%のアミノ酸同一性を 共有するおよそ120アミノ酸からなる塩基性タン パク質で、活性型NGFに於いて3個のジスルフィ ド橋を形成することが示されている6個のシステ イン残基の完全な保存を包含する(Bradshow,A., 1978,Ann.Rev.Biochem.47:191-216;Leibrock ら、1989,Nature 341:149-52)。進化的に分枝し た種に由来するNGFの配列を比較することによっ て、これらのシステイン残基の側面にあるアミノ 酸は分子の中で最もよく保存された領域を含有す ることが明らかになった(Meierら、1986,EMBO J .5:1489-93;Selbyら、1987,J.Neurosci.Res .18:293-8)。顕著なことは、これが、BDNFとNG Fとの間で最も類似した領域であることである (Leibrockら、1989,Nature 341:149-52)。
NGFとBDNFの間に強い相同性を有する保存され たセグメントが存在することを利用した方法を用 いて、BDNF/NGF遺伝子ファミリーのさらに他のメ ンバーに関する合理的な探査を行うことができる。
例えば、多様な核酸配列の中からBDNFおよびNGF に相同な配列を選択し、さらに選択した配列の中 からNGFおよびBDNFと相同でない核酸配列も含有 する配列を同定することによって、BDNF遺伝子フ ァミリーの他のメンバーを同定することができる。
「相同できない」という用語は、NGFおよびBDNF配 列とは異なる少なくとも2個のヌクレオチドをそ の中に含有する少なくとも6個の連続したヌクレ オチドを含有する領域を意味すると解することが できる。
本発明はまた、BDNFおよびNT-3に対して、ある いはまたNGFおよびNT-3に対して相同であるが、 それぞれBDNFおよびNT-3に対して、またはNGFお よびNT-3に対して非相同な領域も含有する組換え DNA分子にも関する。このようなBDNF/NGF/NT-3 遺伝子ファミリーの他のメンバーを、相同性を有 する領域に対応する分子プローブを用いて同定す ることができる。さらに分析することによって、 これらのBDNF/NGF/NT-3遺伝子ファミリーのメン バーが、BDNF/NGF/NT-3遺伝子ファミリーの既知 のメンバーの配列とは異なる配列を有することが 見いだされる。
例えば、本発明の好ましい詳細な実施態様では 以下の方法が提供される。下記第III表に示される 4個の保存されたセグメント(「ボックス」)の それぞれに対応して、約10-20ヌクレオチドから なる一揃いの縮重したオリゴヌクレオチドプロー ブを合成することができる。これらは、NGFまた はBDNFのいずれかに見いだされる約3から7個の 連続したコドンに対するアミノ酸にありうるすべ てのコード配列に相当する。成熟ポリペプチドの アミノ末端について番号をつけ(その結果プレプ ロBDNFのHis134が成熟タンパク質のHis1となる)、 4枠を以下のように特徴付けることができる(ヒ と成熟タンパク質との関連に於て番号付けされる)。
第III表に示されるボックスからの各組の配列に 由来する合成オリゴヌクレオチドをプライマーと して利用し、潜在的に興味のある起源(RNAまたは DNA)の配列をPCRによって増幅することができる。
これには、BDNFまたはNGFに密接に関連のあるポ リペプチドを発現することのできる、あらゆる真 核生物種に由来するmRNAまたはcDNAまたはゲノム DNAを包含することができる。6回という少数回 のPCR反応(すなわちボックス1からのプライマ ーとボックス2からのプライマー;ボックス1と ボックス3;ボックス1とボックス4;ボックス 2とボックス3;ボックス2とボックス4;ボッ クス3とボックス4)を行うことによって、NGF とBDNFの間で保存されている配列である上記4セ グメントのうち任意の2個を共有する遺伝子、ま たは遺伝子産物を検出することができよう。もし それぞれのボックスについて、いくつかのそれぞ れ異なった縮重プライマーを合成することを選択 する場合には、合理的な少数回のPCR反応で完全 に探索することが可能であろう。PCR反応の開始 に際して用いられるハイブリッド形成条件の厳密 さを変動させて、未知遺伝子とNGFまたはBDNFと の間のヌクレオチド配列の相似度に大小の度合い があるようにすることもできる。予め知られてい ないBDNF/NGF遺伝子ファミリーのメンバーのセグ メントがうまく増幅されれば、そのセグメントを 分子的にクローン化して配列決定し、完全なcDNA またはゲノムDNAを単離するためのプローブとし て利用することができる。次にこれにより未知の 遺伝子の完全なヌクレオチド配列の決定、その発 現の分析、および機能分析のためのタンパク質産 物を生産できよう。
さらに本発明は、BDNF/NGF配列の相同性を、BD NF/NGF遺伝子ファミリーのメンバーであるが天然 には存在し得ない新規組換え分子の設計に利用す ることに関する。制限するためではなく例を挙げ ると、NGFとBDNFの両方の部分を有してなる組換 え分子を本発明にしたがって構築することができ る。かかる分子はBDNFとNGFの両方に関連した性 質を示し、アゴニスト並びにアンタゴニストを包 含する生物活性の新たな側面を示しうるであろう。
BDNFおよびNGFの一次配列を、コンピューターシ ミュレーションを用いて分子の四次構造を予測す るために利用することもできる(HoppおよびWoods, 1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:3824 -3828)。BDNF/NGFキメラ組換え遺伝子を、四次構 造と生物学的機能との相互関係の観点で設計する ことができる。同様に、BDNF/NGF遺伝子ファミリ ーの任意の一つまたはそれ以上のメンバーの一部 分を含有するキメラ遺伝子を構築することができ る。
(2)ニューロトロフィン−3のクローニング BDNFとNGFに共通の相同性領域を利用し、上記 の方法を用いてあらゆる生物に由来するNT-3を同 定することができる。本発明の二つの好ましい詳 細な実施態様に於ては、遺伝子を同定し以下のよ うにクローン化することができる。
好ましい−実施態様に於ては、(IUPAC分類を用 いた)ヌクレオチド配列GGGGATCCGC GGI TGY MGI GGI ATH GAを有するセンス(または5')プライマ ー(プライマー1、これはBamHIおよびSacIIエ ンドヌクレアーゼ切断部位を包含する)、および ヌクレオチド配列TCGAATTCTAG AT ICK IAT RAA ICK CCAを有するアンチセンス(または3')プラ イマー(プライマー2、これはEcoRIおよびXbaI 部位を包含する)を、市販のサーマルサイクラー (例、Perkin-Elmer Cetusサーマルサイクラー) およびThermus aquaticus由来の耐熱性DNAポリ メラーゼ(Taqポリメラーゼ)を用いたポリメラー ゼ連鎖反応(Saikiら、1985,Science 230:1350- 1354)に利用できる。アニーリング温度45℃で約 4回行った後、49℃のアニーリングで残りの36回 を行うことができる。増幅の結果生じたDNA産物 を、つぎにポリアクリルアミドゲル電気泳動で分 離することができる。予想サイズ(約137塩基対) に相当する産物を溶離し、再度増幅し、次に二つ の制限エンドヌクレアーゼで消化することができ る。これらのエンドヌクレアーゼのうちの一つは、 生物のNGF遺伝子配列を増幅されたセグメント内 で切断し、他の一つは生物のBDNF遺伝子配列を増 幅されたセグメント内で切断する。ポリアクリル アミドゲル電気泳動によって、切断されたDNAか ら(おそらくNGFとBDNFのどちらもコードしてい ない、エンドヌクレアーゼ切断を受けなかった) 切断されないDNAを分離し、溶出し、そして例え ばプライマー1および2を用いて非対称に増幅し (Innisら、1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 85:9436-9440)、配列決定することができる (Sangerら、1979,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S. A.72:3918-3921)。それによって得られた配列 に基づいて、新規遺伝子の配列をより正確に反映 したさらにほかのセンスおよびアンチセンスプラ イマーを設計することができる。例えば、GGGAT TGATGAC AAA(プライマー3)およびACTCTCAGTGCA AAACTTCGC(プライマー4)のようなセンスプライ マー、およびアンチセンス(5')プライマーCGGATC CGAATTCTGCAG(T)12V(プライマー5)を使用する ことができる。脳のような神経栄養活性を生じる 可能性のある組織から(Okayamaら、1987,Meth, Enzymol.154:3-28に記載されるような任意の標準 的な方法を用いて)調製されたRNAは、例えばプ ライマー5を用いて逆転写でき、このものは3'ポ リ(A)末端に適合するよう設計され、BamHI、 EcoRI、およびPstIに関する制限エンドヌクレア ーゼ切断部位を含有する(Leibrockら、1989, Nature 341:149-152)。次にその結果生じたcDNA を、プライマー3および5を用いてPCR増幅する ことができ、さらに次にプライマー4および5を 用いて再増幅することができる。次にサザンブロ ットを、最終反応の産物を用いて行い、プライマ ー3および4配列の下流の配列に相当する32P-末 端標識オリゴヌクレオチドプローブとハイブリッ ド形成させることができる。こうして同定された DNAフラグメントを、次に好適なベクターにクロ ーン化することができる。得られた最長の挿入物 を関心のある生物から作成されたゲノムライブラ リーをスクリーニングするために用いることがで きる。このようにして同定された陽性クローンを 次に標準的な制限地図作成およびヌクレオチド配 列決定技法によって分析することができる。
本発明の別の好ましい実施態様に於ては、NGF とBDNFの間で高度に保存された4個のタンパク質 配列のセグメントに相当する縮重オリゴヌクレオ チドを合成することができる。たとえば、これら のアミノ酸配列(第7D図に示す)は、(1)Gly- Glu-(Tyr/Phe)-Ser-Val-Cys-Asp-Ser;(2)Lys- Gen-Tyr-Phe-(Thr/Phe)-Glu-Thr-Lys-Cys;(3) Gly-Cys-Arg-Ile-Asp;and(4)Trp-Arg-Phe-Ile -Arg-Ile-Asp-Thr-(Ser/Ala)-Cys-Val-Cysである ことができる。一連の縮重センスおよびアンチセ ンスオリゴヌクレオチド)センスまたはアンチセ ンス方向のいずれかの上記タンパク質配列の5− 9アミノ酸に相当する15−26ヌクレオチドの長さ の縮重部分、ならびに制限酵素認識部位をコード する非縮重尾部を含有)をPCR反応に使用するこ とができる。対をなす上流センスプライマーと下 流アンチセンスプライマーの間の増幅反応を標準 条件下で行うことができ、あるいは好ましくは、 それぞれのプライマーの組合せの最適の条件を実 験的に決定することができる。例えば、センスプ ライマー(上記アミノ酸配列(1)に相当する)5' GACTCGAGTCGACATCG-GTN-TGY-GAY-WSN-RTN-WS-3' およびアンチセンスプライマー(上記アミノ酸配 列(2)に相当する)5'-CCAAGCTTCTAGAATTC-CA-YTT -NGT-YTC-RWA-RAA-RTA-YTG-3'を、鋳型として好 適な起源に由来するゲノムDNAまたはcDNAを用い た増幅反応に使用することができる。対をなす上 流センスプライマーおよび下流アンチセンスプラ イマーを用いた増幅反応の産物を、ハイブリッド 形成プローブとしてゲノムDNAのサザンブロット に用いることができ、そのプローブと非相同な領 域(例えば、非NGF、非BDNF配列)のみならず相 同な領域も含有するゲノムDNA配列とハイブリッ ド形成するPCR産物を同定することができる。新 規ゲノムDNA配列を同定するPCR産物を用いて、 ゲノムまたはcDNAライブラリーをスクリーニング することができ、それによってBDNF/NGF遺伝子フ ァミリーの新規メンバーをコードするクローンを 選択することができる。
(3)ニューロトロフィン−3の発現 NT-3タンパク質をコードするヌクレオチド配列 またはその一部分を適当な発現ベクター、すなわ ち挿入されたタンパク質コード配列の転写および 翻訳に必要なエレメントを含有するベクター、に 挿入することができる。必要な転写および翻訳シ グナルは天然型のNT-3遺伝子および/またはその 側面領域によって供給されることもできる。種々 の宿主−ベクター系を利用してタンパク質コード 配列を発現させることができる。これらの系には、 ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノ ウイルスなど)感染を受けた哺乳動物細胞系;ウ イルス(例えば、バキュロウイルス)感染を受け た昆虫細胞系;酵母ベクターを含有する酵母のよ うな微生物、またはバクテリオファージDNA、プ ラスミドDNA、またはコスミドDNAで形質転換さ れた細菌が包含されるがそれらに限定されない。
本発明の好ましい実施態様に於ては、発現ベクタ ーCMCプロモーター(StephensおよびCochett, 1989,Nucl.Acids.Res.17:7110)およびSV40複 製開始点を含有しうる。これらのベクターの発現 エレメントはその強さと特異性がそれぞれ異なる。
利用する宿主−ベクター系に応じて、多くの適当 な転写および翻訳エレメントの任意の一つを用い ることができる。
DNAフラグメントのベクターへの挿入に関して 既に記載された任意の方法を用いて、適当な転写 /翻訳制御シグナルとタンパク質コード配列から なるキメラ遺伝子を含有する発現ベクターを構築 することができる。これらの方法にはインビトロ 組換えDNAおよび合成法、およびインビボ組換え (遺伝子組換え)が包含されうる。NT-3タンパク 質またはペプチドが組換えDNA分子で形質転換さ れた宿主内で発現されるように、NT-3タンパク質 またはペプチドフラグメントをコードするヌクレ オチド配列の発現を第二のヌクレオチド配列によ って制御することができる。例えば、NT-3の発現 を当業上知られた任意のプロモーター/エンハン サーエレメントによって制御することができる。
NT-3発現を制御するのに使用できるプロモーター には、以下のものが包含されるがそれらに限定さ えない。SV40初期プロモーター領域(Bernoistお よびChambon,1981,Nature 290:304-310)、ウラ ス肉腫ウイルスの3'長い末端重複に含まれるプロ モーターYamamotoら、1980,Cell 22:787-797)、 ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner ら、1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78: 144-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列 (Brinsterら、1982,Nature 296:39-42);β− ラクタマーゼプロモーター(Villa-Kamaroffら、 1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:3727 -3731)、またはtacプロモーター(Deboerら、1983, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.
80:21−25)の ような原核生物発現ベクター、また Scientific American,1980,242:74-94の「組み換え細菌か らの有用タンパク質」も参照されたい;ノパリン シンセターゼプロモーター領域(Herrera-Estrella ら、Nature 303:209-213)またはカリフラワーモ ザイクウイルス35S RNAプロモーター(Gardnerら、 1981,Nucl.Acids Res.9:2871)、および光合成 酵素リブロース二リン酸カルボキシラーゼのため のプロモーター(Herrera-Estrellaら、1984, Nature310:115-120)を含んでなる植物発現ベクタ ー;Gal4プロモーター、ADC(アルコールデヒド ロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロ ールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファ ターゼプリモーターのような酵母または他の真菌 由来のプロモーターエレメント、および組織特異 性を示しそしてトランスジェニック動物で利用さ れている以下の動物転写制御領域すなわち膵臓腺 房細胞に於て活性なエラスターゼI遺伝子制御領 域(Swiftら、1984,Cell.38:639-646;Ornitzら、 1986,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol. 50:399-409;Macdonald,1987,Hepetology 7:42 5-515);膵脾臓ベータ細胞に於て活性なインスリン 遺伝子制御領域(Hanahan,1985,Nature 315:115 -122)、リンパ系細胞に於て活性な免疫グロブリ ン遺伝子制御領域(Grosschedlら、1984.Cell 38: 647-658;Adamsら、1985,Nature 318:533-538; Alexanderら、1987,Mol.Cell.Biol.7:1436- 1444)、精巣、乳房、リンパ系およびマスト細胞 に於て活性なマウス乳房腫瘍ウイルス制御領域 (Lederら、1986,Cell 45:485-495)、肝臓に於て 活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertら、19 87,Genes and Devel.1:268-276)、肝臓に於て 活性なアルファーフェトプロテイン遺伝子制御領 域(Krumlaufら、1985,Mol.Cell.Biol.5:1639 -1648;Hammerら、1987,Science 235:53-58)、 肝臓に於て活性なアルファ1−アンチトリピシン 遺伝子制御領域(Kelseyら、1987,Genes and Devel.1:161-171)、骨髄細胞に於て活性なベーター グロビン遺伝子制御領域(Mogramら、1985,Nature 315:338-340;Kolliasら、1986,Cell 46:89-94)、 脳の寡突起神経膠細胞に於て活性なミエリン塩基 性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら、1987, Cell 48:703-712);骨格筋に於て活性なミオシン 軽鎖−2遺伝子制御領域(Sani,1985,Nature 31 4:283-286)、および視床下部に於て活性な性腺刺 激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonら、 1986,Science 234:1372-1378)。
NT-3遺伝子挿入物を含有する発現ベクターを三 つの一般的な方法により同定することができる: (a)DNA-DNAハイブリッド形成、(b)「マーカー」遺 伝子機能の有無、および(c)挿入配列の発現。第一 の方法に於ては、発現ベクターに挿入された外来 遺伝子の存在は、挿入されたNT-3遺伝子に相同な 配列を含有するプローブを用いるDNA-DNAハイブ リッド形成によって検出することができる。第二 の方法に於ては、外来遺伝子のベクターへの挿入 によって引き起こされる特定の「マーカー」遺伝 子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物 質耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスによ る封入体形成、など)の有無に基づいて、組換え ベクター/宿主系を同定し、選択することができ る。たとえば、もしNT-3遺伝子がベクターのマー カー遺伝子配列内に挿入されるならば、NT-3挿入 物を含有する組換え体はマーカー遺伝子機能の欠 如によって同定できる。第三の方法に於ては、組 換え体によって発現される外来遺伝子産物をアッ セイすることによって、組換え発現ベクターを同 定することができる。かかるアッセイは、例えば バイオアッセイ系に於けるNT-3遺伝子産物の物理 的または機能的性能に基づくことができる。
一たび特定の組換えDNA分子が同定および単離 されると、当業上知られたいくつかの方法により それを増殖させることができる。好適な宿主系お よび増殖条件が確立されると、組換えベクターを 増殖させそして大量に調製することができる。既 に説明したように、使用可能な発現ベクターには 以下のベクターまたはその誘導体が包含されるが それに限定されない。少数例をあげればワクシニ アウイルスまたはアデノウイルスのようなヒトま たは動物ウイルス;バキュロウイルスのような昆 虫ウイルス;酵母ベクター;バクテリオファージ ベクター(例えばラムダ)、およびプラスミドお よびコスミドDNAベクターなど。
さらに、挿入された配列の発現を調節し、また は特定の所望する様式で遺伝子産物を修飾しプロ セシングするような宿主細胞株を選択することが できる。ある種のプロモーターからの発現を、あ る種のインデューサーの存在によって高めること ができ、このようにして遺伝子工学的に作成され たNT-3タンパク質の発現を制御することができる。
さらに、それぞれ異なる宿主細胞はタンパク質の 翻訳時および翻訳後のプロセシングおよび修飾の ための特徴的で特異的なメカニズム(例えばグリ コシル化、切断)を有する。発現される外来タン パク質の所望される修飾およびプロセシングを確 実にするために、適当な細胞系または宿主系を選 択することができる。例えば、細菌系に於ける発 現をグリコシル化されないコアタンパク質産物の 生産に用いることができる。酵母での発現はグリ コシル化された産物を生じる。非相同NT-3タンパ ク質の天然型のグリコシ化を保証するために、 哺乳動物細胞に於ける発現を用いることができる。
さらに、様々なベクター/宿主発現系はタンパク 質加水分解的切断のようなプロセシング反応を種 々の程度に行うことができる。
本発明の詳細な実施態様に於いては、プレプロ NT-3をコードするDNAをpCMVプラスミドにクロー ン化し、増幅し、次いでリン酸カルシウム法によ るCOS細胞のトランスフェクションに使用するこ とができる(ChenおよびOkayama,1987,Mol. Cell.Biol.7:2745-2752)。次にNT-3活性を細胞 培養培地から収集することができる(下記実施例 1および2参照)。
NGFは二つの異なった前駆体形、すなわち長鎖 形および短鎖形、から合成されると理解されてい る(Darlingら、1983,Cold Spring Harbor Symp. Quant.Biol.48:427-483)。短鎖形はBDNFおよび NT-3のプレプロ型と実質的に類似している。本発 明によれば、BDNFまたはNT-3の同様の長鎖形をコ ードするDNAを含有する発現系を利用することが 望ましい。このような長い前駆体形をコードする DNAは、成熟BDNFまたはNT-3ペプチドコード領域 の上流のcDNAまたはゲノムDNA領域を配列決定し そして翻訳読みとり枠の位置決定することにより 同定できる。NGFおよびBDNFの配列とNT-3の配列 を重ねてならべてみると、NT-3タンパク質の長鎖 および短鎖前駆体を予測することができる(第7 B図)。長鎖または短鎖前駆体からの成熟BDNFま たはNT-3発現の有効性は、使用した発現系の如何 によるものであって、細胞系統の種類に応じて変 化することがある。
(3.1)発現した遺伝子産物の同定および精製 NT-3遺伝子を発現する組換え体が同定されると、 その遺伝子産物を分析することができる。これは 産物の物理的または機能的性質に基づくアッセイ によって行うことができ、産物の放射性標識化お よびそれに続くゲル電気泳動での分析が包含され る。
NT-3タンパク質が同定されると、クロマトグラ フィー(例えば、イオン交換、アフィニティーお よびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠 心分離、溶解度の差を包含する標準的な方法によ って、またはタンパク質精製のための他の任意の 標準的な技法によって、それを単離し、精製する ことができる。ニワトリ背根神経節、神経プラコ ード由来または交感神経節ニューロンを包含する がそれらに限定されない任意の適当なアッセイを 用いて機能的性質を評価することができる。
(4)ニューロトロフィン−3の生物活性のアッセイ 定性的または定量的にNT-3活性を示す任意の系 を本発明にしたがって用いることができる。NT-3 はBDNFやNGFとは対照的に、神経プラコード由来 節状神経節および交感神経節の両方からの神経突 起の成長を促進するので、背根神経節(DRG)培養 系に加えて、これらの両方をNT-3バイオアッセ イとして用いることができる。DRGアッセイは、 Bardeら(1980,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 77:1199-1203)の記載のように行うころができる。
節状神経節アッセイ系は、Lindsayら(1985,Dev. Biol.112:319-328)の記載のように行うことがで きる。交感神経節アッセイ系はBardeら(1982, EMBO J.,1:549-553)の記載のように行うことが できる。
(5)ニューロトロフィン−3遺伝子およびタンパ 質 上記、および下記実施例1および2に詳述した 方法を用いて、以下の核酸配列を決定し、それに 対応するアミノ酸配列を推定した。マウスゲノム NT-3配列を決定し、第2図に示す。ラットNT-3の 配列を第7図に示す。ヒトゲノムDNA NT-3配列を 決定し、第11図に示す。ここにはラット由来の DNA配列も示す。これらの各々の配列、またはそ れと機能的に同等なものを、本発明は従って用い ることができる。さらに本発明は、ブタ、ウシ、 ネコ、トリ、ウマまたはイヌ、並びに霊長目の動 物起源、およびNT-3活性が存在する他のすべての 種から単離されたNT-3遺伝子およびタンパク質に 関する。本発明はさらに、少なくとも10個のヌク レオチドを含有するNT-3核酸サブ配列にも関する。
かかるサブ配列は、例えば核酸ハイブリッド形成 アッセイ、サザンおよびノーザンブロット分析な どに使用できるNT-3配列のハイブリッド形成可能 な部分を含有する。本発明はまた、第2、7、お よび11図に示すアミノ酸配列またはそれらと機能 的に同等な配列に従って、NT-3タンパク質、およ びそのフラグメントや誘導体を提供する。本発明 はまた、抗原決定基を含有するか、または機能的 に活性な、NT-3タンパク質のフラグメントまたは 誘導体を提供する。ここで用いられる「機能的に 活性な」とは既知のNT-3の機能に関するアッセイ 例えば、ニワトリ胚DRG、節状神経節および交感 神経節アッセイに於いて陽性の活性を有すること を意味するものとする。
例えば、第2、7、および11図に示す核酸配列 を、機能的に同等な分子を生じる置換、付加、ま たは欠失によって変化させることができる。ヌク レオチドコード配列の縮重によって、第2、7、 および11図に示すアミノ酸配列と事実上同一のア ミノ酸配列をコードする別のヌクレオチド配列を、 本発明の実施に際し用いることができる。これら は、機能的に等しいアミノ酸残基をコードする異 なるコドンの置換による変化をその配列内に有し、 従ってサイレントな変化を生じた第2、7、およ び11図に示すNT-3遺伝子配列の全体または部分を 含んでなるヌクレオチド配列を包含するがそれに 限定されない。同様に、本発明のNT-3タンパク質 またはそのフラグメントまたは誘導体は、配列内 の残基が機能的に同等なアミノ酸残基で置換され、 サイレントな変化を生じるような配列の変化を包 含する実質的に第2、7、および11図に示すよう なアミノ酸配列の全体または部分を、一次アミノ 酸配列として含有するタンパク質を包含するがそ れに限定されない。例えば、配列内の一またはそ れ以上のアミノ酸残基を、機能的に同等に作用す る同様の極性を有する別のアミノ酸で置換するこ とができ、結果的にサイレントな変化を生じる。
配列内でのアミノ酸の代替物は、そのアミノ酸が 属するクラスの他のアミノ酸から選ばれる。例え ば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、 ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フ ェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニ ンが包含される。極性中性アミノ酸にはグリシン、 セリン、トレオニン、システイン、チロシン、ア スパラギンおよびグルタミンが包含される。正に 荷電した(塩基性)にアミノ酸にはアルギニン、 リジンおよびヒスチジンが包含される。負に荷電 した(酸性)アミノ酸にはアスパラギン酸および グルタミン酸が包含される。また、本発明の範囲 内には、例えばグリコシル化、タンパク質加水分 解的切断、抗体分子や他の細胞性リガンドとの結 合などによって、翻訳中または翻訳後に種々に修 飾されたNT-3タンパク質またはそのフラグメント または誘導体も含まれる。
さらに、特定のNT-3のインビトロまたはインビ ボで突然変異させて、翻訳、開始、および/また は終止配列を作成および/または破壊するか、ま たはコード領域に変異を生じさせそして/または 新たな制限エンドヌクレアーゼ部位を形成させる か、あるいは既にあるかかる部位を破壊すること ができ、こうしてインビトロ修飾をさらに促進す ることができる。当業上知られた任意の突然変異 誘発法を使用することができ、それにはインビト ロ特定部位の突然変異誘発(Hutchinsonら、1987, J.Biol.Chem.253:6551)、TAB(商標)リンカー (Pharmacia)の使用などが包含されるがそれらに 限定されない。
(6)抗−ニューロトロフィン−3抗体の生成 本発明によれば、NT-3タンパク質またはそのフ ラグメントまたは誘導体を、抗-NT-3抗体生成の ための免疫原として使用できる。
抗-NT-3免疫応答を生じる可能性をさらに向上 させるために、免疫原性の増大と関連する可能性 のある分子の部分を同定することを目的として、 NT-3のアミノ酸配列を分析することができる。例 えば、アミノ酸配列をコンピューター分析にかけ て、HoppおよびWoods(1981,Proc.Natl.Acad. Sci.U.S.A.78:3824-3828)の方法(この方法を 利用して、すでにB型肝炎表面抗原の抗原性ペプ チドが成功裡に同定されている)にしたがって、 表面エピトープを同定することができる。あるい はまた、種々の種に由来するNT-3の推定アミノ酸 配列を比較し、これらの非相同領域を同定するこ とができよう。これらの非相同領域は種々の種に わたって免疫原性である可能性がより高いと思わ れる。
NT-3に対するモノクローナル抗体を調製するた めには、培養中の連続細胞系統により、抗体分子 を生成させる任意の技法を使用することができる。
例えば、KohlerおよびMilstein(1975,Nature 256:495-497)によって開発されたハイブリドー マ法、ならびにトリオーマ法、ヒトB細胞ハイブ リドーマ法(Kozborら、1983,Immunology Today 4:72)、およびヒトモノクローナル抗体を生産 するEBV-ハイブリドーマ法(Coleら、1985,in "Monoclonal Antibodies and Cancer The rapy", Alan R.Liss,Inc.pp77-96)などが本発明の 範囲に含まれる。
治療用のモノクローナル抗体は、ヒトモノクロ ーナル抗体またはキメラヒト−マウス(または他 種)モノクローナル抗体であることができる。当 業上知られた多数の技法のいずれによっても、ヒ トモノクローナル抗体を作成することができる (例えば、Tengら、1983,Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A.80:7308-7312;Kozborら、1983,Imm umo logy Today 4:72-79;Olssonら、1982,Met h. Enzymol.92:3-16)。マウス抗原−結合ドメイン とヒト定常領域を含有するキメラ抗体分子を調製 できる(Morrisonら、1984,Proc.Natl.Acad. Sci.U.S.A.81:6581,Takedaら、1985,Nat ure 314:452)。
NT-3のエピトープに対するポリクローナル抗体 を生成させるには、当業上知られた種々の方法を 用いることができる。抗体を生成させるには、NT -3タンパク質またはそのフラグメントまたは誘導 体を注射することによって、種々の宿主動物を免 疫することができる。これらの動物には、ウサギ、 マウス、ラットなどが包含されるがそれらに限定 されない。免疫応答を増加させるために、宿主の 種に応じて、種々きアジュバントを使用すること ができる。このようなアジュバントには、フロイ ント(完全および不完全)、水酸化アルミニウム のような鉱物ゲル、界面活性剤例えばリゾレシチ ン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペ プチド、オイルエマルジョン、カサガイヘモシア ニン、ジチオスレイトール、およびBCG(Bacille Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム・パ ルブム(Corynebacterium Parvum)のような有用で ある可能性のあるヒトアジュバントが包含される がそれらに限定されない。
NT-3エピトープに対する抗体の分子クローンは 既知の技法によつて調製できる。組換えDNA技 法(例えばManiatis,T.ら、1982,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spri ng Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor, New York参照)を用いて、モノクローナル抗体分子ま たはその抗原結合領域をコードする核酸配列を作 製することができる。
抗体分子は、知られた技法、例えば免疫吸着ク ロマトグラフィーまたはイムノアフィニティーク ロマトグラフィー、HPLC(高性能液体クロマトグ ラフィー)の様なクロマトグラフィー法、または それらの組合せなどによって精製することができる。
分子のイディオタイプを含有する抗体フラグメ ントを既知技法により生成させることができる。
例えば、かかるフラグメントには、抗体分子のペ プシン消化によって生成させうるF(ab′)フラグ メント、F(ab′)フラグメントのジスルフィド橋 の還元によって生成されうるFab′フラグメント、 および抗体分子をパパイン還元剤で処理すること によって生成されうる2FabまたはFabフラグメン トが包含されるが、それらに限定されない。
(7)発明の有用性 本発明は、NT-3核酸配列、およびそれから産生 される実質的に純粋なタンパク質、そのペプチド フラグメントまたは誘導体に関する。NT-3は診断 および治療用途に十分な量で生産され得る。同様 に抗−BDNF抗体、およびNT-3核酸プローブを診断 および治療に使用することができる。本発明の詳 細な実施態様ではNT-3の交雑種利用も有用である が、大部分の目的には同一の種からのNT-3遺伝子 または遺伝子産物を診断および治療の目的に使用 することが好ましい。
(7.1)診断用途 NT-3をコードする核酸および、それから産生さ れたタンパク質、そのペプチドフラグメントまた は誘導体、並びにNT-3タンパク質、ペプチドまた は誘導体に対する抗体に関する本発明は、NT-3発 現パターンの変更に関連し得る神経系の疾患およ び障害の診断に利用できる。
本発明の種々の実施態様においては、NT-3遺伝 子および関連核酸配列並びにサブ配列、例えば相 補性配列は、診断用ハイブリダイゼーションアッ セイに使用できる。NT-3核酸配列または約15個の ヌクレオチドを含有するそのサブ配列は、ハイブ リダイゼーションプローブとして使用できる。ハ イブリダイゼーションアッセイを用いて、特に感 覚性ニューロン損傷をもたらす状態を含む、NT-3 発現の変化に関連する状態、障害または疾患状態 を検出し、予知し、診断しあるいは監視し得る。
かかる疾患および状態には、これに限定されない がアルツハイマー病、ハンチントン舞踏病および パーキンソン病を含むCNS外傷、梗塞、感染、変 性性神経疾患、悪性腫瘍または手術後変化が包含 される。例えば、患者からの組織サンプル中の総 RNAを、NT-3 mRNAの量の変化がニューロン変性 の指標であるNT-3 mRNAの存在に関してアッセイ できる。
本発明の別の実施態様においては、NT-3タンパ ク質、ペプチドフラグメントまたは誘導体に対す る抗体を使用して神経系の疾患および障害、特に 感覚性障害および網膜の変性性疾患並びに上記し た障害および疾患を診断することができる。本発 明の抗体は、例えばかかる評価を必要とする患者 から得られた組織サンプルを用いる原位置ハイブ リダイゼーション法に使用することができる。更 に別の例においては、本発明の抗体は組織または 液体サンプルに依存するNT-3の量を検出および/ または測定するためのELISA法に使用できる。同 様に、本発明の抗体は組織または液体サンプルに 存在するNT-3を検出および/または測定するため のウエスタンブロット分析に使用できる。
本発明の更に別の実施態様においては、NT-3タ ンパク質、ペプチドフラグメントまたは誘導体を 神経系の疾患および障害の診断に使用できる。こ れに限定されるつもりはないが特定の実施態様に おいては、標識化NT-3タンパク質またはペプチド フラグメントは、NT-3レセプター発現の変種およ び従ってNT-3に対する組織または細胞性応答にお けるありうる異常を確認するために、NT-3レセプ ターを発現する組織または細胞の同定に使用でき る。
(7.2)治療用途 NT-3をコードする核酸および、このものから産 生されるタンパク質、そのペプチドフラグメント または誘導体、並びにNT-3タンパク質、ペプチド フラグメントまたは誘導体に対する抗体に関する 本発明は、NT-3発現パターンの変更に関連し得る かあるいはNT-3または抗-NT-3抗体への曝露によ って利益を得ることができる神経系の疾患および 障害の治療に用いることができる。
本発明の種々の実施態様においては、NT-3タン パク質、ペプチドフラグメントまたは誘導体は、 神経系が外傷、外科手術、虚血、感染、代謝疾患、 栄養不全、悪性腫瘍または有毒薬剤によって損傷 された患者に投与することができる。本発明の種 々の詳細な実施態様においては、NT-3は、これに 限定されないが背根神経節または以下の組織;す なわち、膝状、錐体および節状神経節;第VIII脳神 経の前庭聴覚複合体;三叉神経神経節の上下顎骨 葉の腹側外側極、中脳三叉神経核および交感神経 神経節のいずれかにおけるニューロンを含む切断 された感覚性ニューロンに局所投与することがで きる。NT-3−関連ペプチドまたはNT-3タンパク質 を、切断神経の近傍に移植することができる膜、 例えばシラスティック膜に吸着させることにより 投与するのが望ましい。本発明はまた、例えば糖 尿病性神経障害および糖尿病末梢神経障害、例え ば多重単発神経障害に罹患している患者の回復を 早めるのにも使用できる。
糖尿病性神経障害に加えて、NT-3またはNT-3関 連ペプチドは下記を包含するがそれらに限定され ない他の末梢神経障害を治療するのにも使用でき る。すなわち後天性免疫不全症候群関連の神経障 害、多発性神経炎を有する伝染性単核症、多発性 神経炎を有するウイルス肝炎を含むウイルス関連 神経障害;ギラン−バレ症候群;ボツリヌス中毒 関連神経障害;鉛およびアルコール関連神経障害 を含む中毒性多発性神経障害;亜急性連合性変性 症を含む栄養性神経障害;全身性紅斑性狼瘡に関 連する神経障害を含む脈管障害性神経障害;類肉 腫関連神経障害;癌腫様の神経障害;圧迫性神経 障害(例えば手根骨トンネル症候群)および遺伝 性神経障害。NT-3またはNT-3関連タンパク質を使 用して治療できる遺伝性神経障害には腓骨筋萎縮、 家族性自律神経異常症および進行性肥大性神経障 害が包含される。
本発明の更に別の実施態様においては、NT-3タ ンパク質、またはこのものから誘導されるペプチ ドフラグメントあるいは誘導体は先天的状態また は神経変性性障害、例えばこれに限定されないが アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキ ンソン病、多発性硬化症および筋萎縮性側嚢硬化 症の治療に使用できる。
本発明の詳細な実施態様においては、NT-3タン パク質またはこれから誘導されるペプチドフラグ メントあるいは誘導体の投与は、アルツハイマー 病および/またはパーキンソン病の治療において 組織の外科的移植と組み合わせて用いることがで きる。後記の第11節に示すように、NT-3はドー パミン作動性ニューロンの生存を促進する。ドー パミン作動性ニューロンがパーキンソン病におい て破壊されることから、NT-3はかかる治療が必要 な患者に有効量のNT-3を投与することからなるパ ーキンソン病の治療方法に使用することができる。
パーキンソン病を有する患者の約35パーセントが アルツハイマー型痴呆にかかっていることが示さ れている。本発明に従って生産されるNT-3は、こ の複合疾患に有効な単一剤療法であることが判明 しよう。同様に、本発明により生産されるNT-3は、 ダウン症候群と合併したアルツハイマー病の治療 に使用できる。加えて、後記の第12節に示すよ うに、NT-3は神経系の発達および分化の過程にお いて高レベルで発現される。従って、NT-3はダウ ン症候群のような発達中の神経系障害の治療に、 そして悪性腫瘍のような細胞の脱分化による疾患 の治療も、あるいは神経系にから利益を得るであ ろう障害の治療に用いることができる。本発明に 従って生産されるNT-3は、1種々の痴呆並びに先 天性学習障害の治療に使用できる。
本発明の更に別の実施態様においては、NT-3タ ンパク質、フラグメントまたは誘導体は、所望の 神経栄養効果を達成するのに他のサイトカインと 一緒に使用できる。例えば、限定するつもりはな いが、本発明によればニューロンの成長および/ または生存の維持および/または機能の復活また は増強におよぼす相乗的刺激作用を達成するため に、NT-3を第2の作用物質たとえばNGFまたはBD NFと一緒に使用することができる。ここで相乗効 果とはNT-3タンパク質、ペプチドフラグメントま たは誘導体と第2薬剤との組合せ物の作用が個々 に使用される同量の各物質より高い効果を達成す ることを意味すると解釈される。NT-3が中枢神経 系における広い系列のニューロンサブ集団の成長、 発達、分化した機能の維持および生存においてま だ十分に特徴付けられていない他のCNS-由来ペプ チド因子と相乗的に作用しうることが想像される。
あるいはまた、NT-3および第2の神経栄養因子作 用物質の作用は相加的であることもできる。
更に、NT-3分子の十分な特徴付けに基づいて、 NT-3のいくつかまたは全ての生物学的機能の拮抗 体として作用しうるNT-3の新規ペプチドフラグメ ント、誘導体または突然変異体が開発され得ると 想定される。かかるNT-3拮抗体は、感覚性ニュー ロンの選択的除去、例えば慢性痛み症候群の治療 に有効であり得る。
本発明の更に別の実施態様においては、NT-3タ ンパク質、またはそのペプチドフラグメントある いは誘導体に対する抗体は、種々の神経学的障害 および疾患にかかっている患者およびかかる治療 を必要とする患者に投与できる。例えば、NT-3の 過剰産生に悩む患者は、かかる治療を必要としよ う。抗-NT-3抗体は、感覚性ニューロンの異常再 生(例えば手術後)の防止に、あるいは上述の通 り慢性痛み症候群の治療に使用できる。
下記実施例1および2で記載されるように、NT -3の組織分布では、NT-3 mRNAは他の組織に比べ 脳、腎臓、心臓および膵臓組織中で高レベルに発現 されることが示される。非神経組織中で生成され るNT-3は脳中に発現されるNT-3と同一であるかも 知れないしまたはないかもしれない。NT-3の1種 類が神経および非神経組織の両方で機能するかも 知れない。NT-3発現における障害が他の器官系の みならず神経系に影響する疾患の原因をなすかも しれない。またNT-3分子と密接に関連するファミ リーは、神経および非神経組織における異なるサ ブ機能に役だつかもしれない。したがって本発明 のNT-3分子は、とりわけ心臓、造血、腎臓および細 網内皮系を含む非神経組織のみならず神経組織の 神経調節にも影響する疾患の治療に有用であろう。
さらに下記実施例1に例示するように、NT-3発 現は成体動物に比較して未成熟動物で高い。本発 明によればNT-3は発育期の障害、あるいはまた CNS傷害の後の神経系の再生の誘導にとりわけ有用であ
る。
(8)医薬組成物 NT-3タンパク質、このものから誘導されるペプ チドフラグメントまたは誘導体、あるいはNT-3タ ンパク質、そのペプチドフラグメントもしくは誘 導体に対する抗体(または抗体フラグメント)、 あるいはNT-3とNGFまたはBDNFのような他の薬剤 の少なくとも1種との組合せを含むNT-3遺伝子産 物の全部または一部分を含有しうる本発明の活性 組成物は、任意の滅菌生体適合性製剤担体、例え ばこれに限定されないが食塩水、緩衝食塩水、デ キストロースおよび水中で投与され得る。
NT-3タンパク質、ペプチドフラグメントまたは 誘導体は、第2,7または11図に実質的に示され るアミノ酸配列またはそのサブ配列を含んでなる ことができる。すなわち特に第2図に示されるア ミノ酸約140から約258まで、第7図のアミノ酸 約1から約119までまたは第11図の「成熟」と標 識した第1アミノ酸からその図に示されるペプチ ド配列の終りまでのアミノ酸配列の全部または一 部分または機能的に等しい配列を含有するNT-3タ ンパク質を使用するのが、これらサブ配列がNT-3 分子の機能的部分を含有すると信じられているので好 ましい。NT-3は、限定するものではないがヒト、 ブタ、ラット、ニワトリ、ウシ、イヌ、ヒツジ、 ヤギ、ネコ、ウサギ等を含む任意の適当な種のNT -3遺伝子に相当する配列から誘導できる。
特定の疾患または状態の治療に有効であろうNT -3タンパク質、ペプチドフラグメント、誘導体ま たは抗体の量は、障害または状態の性質の如何に 依り、そして標準的臨床技術によって決定するこ とができる。可能な場合、用量−応答曲線および 本発明の医薬組成物を先ずインビトロで、例えば 上述のNT-3バイオアッセイ系で測定し、次いでヒ トにおいて試験するに先立ち有効な動物モデル系 で測定するのが望ましい。インビトロデータに基 づいて、本発明の詳細な実施態様においては、感 覚性ニューロンの生存を促進するのに有効な医薬 組成物は、約0.1〜10μg/mlの局所的NT-3タンパ ク質濃度を提供できる。
導入方法には、これに限定されないが皮内、筋 肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口および鼻腔内 が挙げられる。加えて、本発明の医薬組成物を心 室内および鞘内注射を含む任意の好適な経路によ り中枢神経系に導入するのが望ましく、心室内注 射は、心室内カテーテル、例えばOmmaya貯留器の ような貯留器に結合されたカテーテルによって促 進され得る。
更に、本発明の医薬組成物を治療の必要な領域 に局所的に投与するのが望ましい。これは、例え ばこれに限定されないが外科手術中の局所的注入 によるか、注射によるか、カテーテルによるかあ るいはインプラントにより達成でき、該インプラ ントはシアラスティック膜または繊維のような膜 を含む多孔性、非多孔性またはゼラチン状物質で ある。
本発明はまた、リポソーム、微粒子またはマイ クロカプセルを介して投与されるNT-3タンパク質、 ペプチドフラグメントまたは誘導体を含有する医 薬組成物も提供する。本発明の種々の実施態様に おいては、かかる組成物を使用してNT-3およびNT -3関連産物の持続的放出を達成するのが有用であ りうる。
NT-3、NT-3関連物質、NT-3拮抗体または抗-NT -3抗体を活性に産生する細胞を、高められたかま たは低減された濃度のNT-3を必要とする領域に導 入することができると想定される。
実施例1:クローニングおよびマウスニューロト ロフィン−3 遺伝子の特性決定 (1)材料および方法 (1.1)ポリメラーザ連鎖反応 2本のオリゴヌクレオチドプライマーをBDNFお よび全ての知られたNGFに保存されている2個の アミノ酸配列に基づいて合成した(Leibrockら、 1989,Nature 341:149-152)。センス(または5′ 側)プライマーの配列は、GGGGATCCGC GGI TGY MGI GGI ATH GA(プライマー1,IUPAC命名,I =イノシン)でありそしてBamHIおよびSaCII部 位を含有する。アンチセンス(または3′側)プラ イマーの配列は、TCGAATTCTAG AT ICK IAT RAA ICK CCAでありそしてEcoRIおよびXbaI部位を含 有する(プライマー2)。Perkin-Elmer Cetus サーマルサイクラーおよびTaqポリメラーゼ(Gene AmpTM)を使用し、1μgのマウスゲノムDNAを用 いてPCR(Saikiら、1985,Science 230:1350-13 54)を行った。アニーリング温度45℃で4サイク ルした後、残りの36サイクルは49℃でアニーリン グを行った。予想したサイズ(137塩基対)に相当 する増幅したDNA産物をアクリルアミドゲルから 溶出させ、再び増幅し、そしてHindIIおよびApaI で消化した。前者はマウスNGFを、後者はマウス BDNFを切断した。切断されなかったDNAを溶出し、 非対照的に増幅(Innisら、1988,Proc.Natl. Acad.Sci.U.S.A.85:9436−94
40)させ、そして プライマー1および2を使用して配列(Sangerら、 1979,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.72:3918 -3921)した。このようにして得られた配列に基づ いて、ヌクレオチド808−822(プライマー3)お
よ び824-844(プライマー4)に相当し、SaIIおよび PstI部位が加えてある2本のセンスプライマーを さらに合成した。成人マウスの脳,肝臓および筋 肉からRNAを抽出し(Okayamaら、1987,Meth. Enzymology 154:3-28)そしてアンチセンス(5′)プ ライマーを使用して逆転写した。このアンチセン スプライマーはCGGATCCGAATTCTGCAG(T)12V(プラ イマー5)であって3′側ポリ(A)尾部に適合する うに設計してあり、そしてBamHI,EcoRIおよび PatIのクローニング部位を含有する(Leibrockら、 1989,Nature 341:149-152)。これらcDNAは、は じめプライマー3および5を使用してPCRで増幅 し、次にプライマー4および5を使用して再び増 幅した。この最後の反応から得られる生成物を用 いてサザンブロットを行い、そしてヌクレオチド 879-893に相当する32P末端標識オリゴヌクレオ チドとハイブリッド形成させた。このようにして ベクター(Stratagene)中にクローンしそして得ら れた最長の挿入物(460塩基対)をEMBL3マウスゲ ノムライブラリー(Clontech)を選抜するのに使用 した。2個の陽性クローンが見出され、そして1 個のクローンのDNAを種々の制限酵素で消化した。
制限フラグメントを460塩基対挿入物で探査した。
770塩基対HindIIIおよび4,000塩基対PstIフラグ PstIフラグメントを使用して3′および5′に伸ばし た完全なHindIII配列を示す。
(1.2)ノーザンブロッティング 全RNAを成人女性の組織から抽出し(Okayamaら 、1987,Meth.Enzym.154:3-28)、そして1.3 %ホルムアルデヒド含有アガロースゲルで電気泳 動した(Hehrachら、1977,Biochem.16:4743-4 7 51)。RANをナイロン膜(Hybond-N,Amersham)に 移し、そして40%ホルムアミド、5×デンハード 液(Denhardt's solution)および200μg.ml−1変 性サケ精子DNAを含有する200mMリン酸ナトリウ ム(pH7.2)1ml中42℃にて一夜ハイブリツッド形成 させた。使用したプローブは、ヌクレオチド319- 1093 (第2図)に相当するランダムプライマーの ついた二本鎖プローブ(Feinbergら、1979,Anal. Biochem.137:266-267を32P標識したものであ る。比活性は1.3 ×108cpm×μg−1でありそして 10をハイブリダイゼーション緩衝液に加えた。
0.5%SDSを含有する0.1×SSC中60℃で60分間 洗浄した。増感スクリーンを用い−70℃にて5日 間フィルターを露出させた。
(1.3)ニューロトロフィン−3の発現 第2図に示される読み取り枠の初めの19ヌクレ オチド(およびEcoRI部位)および最後の19ヌク レオチド(およびBamHI部位)に相当するオリゴ ヌクレオチドプライマーを合成した。第2図に示 されるPstIゲノムフラグメントを鋳型として使用 しPCR増幅した後、生ずる産物を発現ベクターpCMV (Andersonら、1989,J,Biol.Chem.246:8222- 8229)のEcoRI-BamHI部位にクローンした。pCMV 中のNT-3挿入物のヌクレオチド配列を決定した。
リン酸カルシウム法(ChenおよびOkayama,1987, Mol.Cell.Biol.7:2745-2752)を使用し、COS- 1細胞をトランスフェクションし、そして培地は 以前に記載(Leibrockら、1989,Nature 341:149 -152)されたようにして集収した。使用した対照、 培地はリン酸カルシウムを用いてまたはNT-3の終 止コドンが欠失したpCMV/NT-3構築物を用いてCOS -1細胞を処理した後得た。両培地は希釈度1:50で 生物的活性を失った。節状神経節を解離し、そし てニューロンを24−ウェルプレート中で培養し (Lidsayら、1985,Dev,Biol.112:319-328)、 そしてBDNFをブタの脳から精製した(Hoferおよび Barde,1988,Nature 331:261-262) 。
(2)結果および論考 神経栄養因子を特性決定するうえでの大きな問 題は非常にそれらの量が少ないということである。
NGFおよびBDNFはそれらの活性を監視するために、 生物学的アッセイに基づいたタンパク質精製技術 を使用して特性決定した(Cohenら、1960,Proc. Natl.Acad.Sci.U.S.A.46:302-311;Bardeら、 1982,EMBO J.1:549-553)。成体雄マウスの顎下 腺中にはこのタンパク質が非常に豊富なので、 NGFではこの方法が可能であり、そして豚の脳組 織は事実上無限に取得可能なのでBDNFについては この方法が最高に可能である。NGFおよびBDNF中 に検出される配列の同一性により、遺伝子ファミ リーであると決定された他のメンバーを特性決定 するのに異なる方法が使えることを示唆している (Leibrockら、1989,Nature 341:149-152)。マ ウスNGFおよびBDNFアミノ酸(a.a.)配列の詳細な 比較から、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において オリゴヌクレオチドプライマーを使用する方法に 特に好適と思われる6個のアミノ酸からなる2本 (第2図において下線部)の存在が明らかとなっ た(Saikiら、1985,Science 230:1350-1354)。
NGFおよびBDNF遺伝子においては生物学的に活性 なタンパク質をコードするエクソンを何らイント ロンが中断しないので、マウスゲノム鋳型を使用 した。この方法によりNGFおよびBDNF配列の予想 された増幅が生じ、そして次にその配列は適切な 制限酵素を使用して消化した。完全のまま残った DNAフラグメントを配列し、そしてその配列がBD NFにもNGFにも一致しないことが判明した。マウ スの脳、筋肉、および肝臓から抽出したRNAの逆 転写によって調製した相補的DNAを鋳型として使 用して2本の特異的センス(または5')プライマ ーおよびポリA配列(第2図)に適合するよう設 計した1本の3'プライマーを、さらにPCRに用い るために合成した。これら三組織から同様のサイ ズの増幅産物が得られ、それらをクローンしそし てマウスゲノムライブラリーを選抜するのに使用 した。このようにして見出されたゲノムクローン のひとつを配列した(第2図)。読み取り枠から 258アミノ酸からなるタンパク質が予測され(読 み取り枠3個の終止コドンの後に見出される第1 番目のメチオニンで始まる)、このものをニュー ロトロフィン−3(NT-3)と命名した。あらゆる点 で、予測されたタンパク質の全体的構造はNGFお よびBDNFに確立されたそれと似ている。すなわち 18アミノ酸の推定シグナル配列(BDNFおよびNGF とそれぞれ5アミノ酸および9アミノ酸が同一で あることを示す)のあとに121アミノ酸のプロ配 列が続いている。かかるプロ配列は恐らくはこれ らタンパク質の折り重なりおよびジスルフィド橋 の正しい形成にかかわっており(Edwardsら、J. Biol.Chem.263:6810-6815)、マウスNGF(103ア ミノ酸)そしてマウスBDNF(112アミノ酸)中にも 見出されている。1個のありうるN−グリコシル化 部位は我々が切断部位であると提案する部位の9 アミノ酸前(BDNFおよびNGFの8アミノ酸と比較 して)に位置しており、塩基性残基のクラスター により特色づけられ、成熟NT-3(第2図、矢印) を生じる。成熟NT-3は119アミノ酸(相対的分子 量13625およびpI9.3)からなると予測される。
成熟マウスNGF,BDNFおよびNT-3の比較により、 54アミノ酸が同一であることが示される。NGFお よびBDNF中でジスルフィド橋の形成にかかわって いると知られる(Leibrockら、1989,Nature
341: 149−152;Argeletti,1973,Bi
ochemistry 12:100 -115)6個のシステイン残基全てが保存残基内に ある(第3図、矢印)。注目すべきことに、NGF およびBDNFの配列にNT-3配列を加えるとたった7 個のアミノ酸同一性しか失われないことがわかっ た(マウスNGFおよびBDNFを比較すると61個のア ミノ酸が同一である)。したがって約50%の第一 次構造が保存されており、そしてこのものは3種 のタンパク質全てに共通する塩基性三次元形状の 形成に必要でありそうである。さらに、3種の配 列を比較すると、4つの可変ドメインが示され、 これはそれぞれ7-11アミノ酸の長さであり(第 3図のV1からV4)、そしてこれらのタンパク質が 行うニューロン特異性に関与しているのであろう。
NT-3遺伝子の発現を検べるには、種々のマウス 組織からRNAを抽出し、NT-3特異的プローブで分 析した(第4図)。検査した全ての組織中に約1.4 キロベースの1本のバンドが見出された(第4A 図)。しかしながら、このmRNAの発現レベルはか なり異なる。脳においては(第4B図)、著しい 領域的差異が見られ、最高のmRNAレベルは小脳お よび海馬において観察される(第4B図)。これ らの結果は成体マウス組織におけるNT-3 mRNAの 分布がBDNFおよびNGF mRNAのそれとは非常に異な ることを示している。事実、BDNF mRNAは脳の中 に優勢に見出され、そしてNGF mRNAは肝臓または 骨格筋のような組織にはほとんど検出されない (Heumannら、1984,EMBO J.3:3183−
3189)。しか しながら、NGF mRNAを発現することが知られる海 馬が(Korschingら、1985,EMBO J. 4:1
389−1393) BDNFおよびNT-3 mRNAも発現し、しかも他の大部 分の脳領域よりもはるかに多量であることに注目 することは興味深い(第4B図)。
NT-3が生物学的に活性でタンパク質を分泌する か否かを検査するために、全タンパク質コード配列 を、COS細胞(サルの腎臓)をトランフェクショ ンするのに使用される発現ベクター(pCMV)にクロ ーンした(第5図)。NT-3 mRNAが末梢組織中に 見出されるという事実が与えられたので、我々は これらの組織中に突き出ておりそして生存のため に栄養因子を必要とすることが知られる種々のニ ワトリ胚ニューロンを培養した。6日令の胚(E6) の脊髄から精製した運動ニューロン(Dohrmannら、 1986,Dev.Biol.118:209-221)、毛様体ニュー ロン(E8)および解離した交換神経ニューロン(E11) はNT-3の存在下での生存が観察されなかった。し かしながら、E8第一次感覚神経節から単離した感 覚性ニューロンは応答することが見出された。こ こで示すように(第5図)、NT-3は節状神経節か ら単離されたニューロンの約30%の生存を維持す る。さらにこの作用は、BDNFは中央突起領域で合 成されそして結節性ニューロンのサブ集団に作用 することが知られているBDNF作用と相加的であり (Lindsayら、1985,Dev.Biol.112:3
19−328)、 そして協同した両因子はほとんどのニューロンを 守る(90%)(第5図)。NT-3 mRNAは心臓,腸, 肝臓および肺を含めたこの神経節の内蔵標的中に 見出されることに注目することは重要である(第 4A図)。NT-3応答性感覚性ニューロンの集団は E8解離背根および三叉神経神経節中およびE8交換 神経神経節の外植片中にも見出された。したがっ てNT-3は、肝臓(LindsayおよびTarbit,1979, Neuro Sci.Lett.12:195-200)および骨格筋(Davies, 1986,Dev.Biol.115:56-67)を含むいくつかの 末梢組織に存在するこれまで特性決定されていな い生物学的活性物であることが明らかとなり、そ してNGFには応答しない内蔵および自己刺激受容 性の感覚性ニューロンの生存を維持することが知 られる(概説としてDavies,1987,Development 101:185-208)。
総合すればこれらの所見は、NT-3がはじめの2 つのニューロトロフィンであるNGFおよびBDNFに 構造上および機能上関連している神経栄養因子で あることを示している。この種のタンパク質を呼 ぶのに、ニューロトロフィン(NT)という名前と、 そしてインターロイキンと同様にそれらの発見順 に番号をつけることを我々は提案する。
実施例2:ラットニューロトロフィン−3遺伝子 のクローニングおよび特色決定 NGFおよびBDNFの間の相同性を、この遺伝子ファ ミリーの他のメンバーを探索するためのクローニ ング法を設計するのに用いた。我々がニューロト ロフィン−3(NT-3)と表示するBDNF/NGFファミリ ーの三番目のメンバーをコードする遺伝子のクロ ーニングを報告する。NGFおよびBDNFと比較する とこの新しい因子は別個の生物的活性および時空 に関する発現を示す。
(1)材料および方法 (1.1)ポリメラーゼ連鎖反応 NGFおよびBDNF間で高度に保存された4つのタ ンパク質配列のセグメントに相当する縮重オリゴ ヌクレオチドを合成した。すなわちタンパク質配 列(第7D図に示されるNGF/BDNF配列内に見出さ れる)は(1)Gly-Glu-(Tyr-Phr)-Ser-Val-Cys-Asp -Ser,(2)Lys-Gln-Try-Phe-(Tyr/Phe)-Glu-Thr- Lys-Cys,(3)Gly-Cys-Arg-Ile-Asp,および(4) Trp-Arg-Phe-Ile-Arg-Ile-Asp-Thr-(Ser/Ala)- Cys−Val−Cysである。一連の縮重センスおよ
びア ンチセンスオリゴヌクレオチド(センスまたはア ンチセンス方向の指示されるタンパク質配列の5 -9アミノ酸に相当する縮重部分15-26ヌクレオチ ド長、ならびに制限酵素認識部位コードする非縮 重「尾部」を含有する)をPCR反応に使用した。ア ニーリング温度、Mg++濃度、および伸張時間を各 プライマー対の最適条件に合わせて決めたこと以 外は、上流のセンスおよび下流のアンチセンスプ ライマーの一対間の増幅反応はPerkin-Elmer/Ce tusにより推奨された条件に従って実施した。1 Bセンスプライマー(前記タンパク質配列「1」 の一部分をコード)の正確な配列は、5'-GACTCG AGTCGACATCG-GTN-TGY-GAY-WSN-RTN-WS-3'であり そして2Cアンチセンスプライマー(前記タンパ ク質配列「2」の一部分のアンチセンスコドンに 相当)は、5'-CCAAGCTTCTAGAATTC-CA-YTT-NGT-YT C-RWA-RAA-RTA-YTG-3'(IUPACコードにおけるヌク レオチドの略語)であった。続く配列分析では、1 BオリゴヌクレオチドはNT-3配列と2ヌクレオチ ドのミスマッチを有するが2Cオリゴヌクレオチ ドはNT-3配列と1ヌクレオチドのミスマッチを有 することが示された。PCRによる放射性標識はPe rkin-Elmer/Cetusにより推奨される遺伝子増幅反 応に下記変更を加えて行った。すなわち低融点ア ガロース中の1〜10μgDNA鋳型を、最終濃度50 μMの未標識dATP,dGTP,およびdTTPを含有する 反応混合物に加えた。50μlの反応物につき50μ Ciのα-32P-dCTP(3000Ci/ミリモル)を加え、そ して反応物を7回増幅サイクルにかけた。増幅プ ライマーはもとのPCR反応で使用した縮重プライ マーと同一であった。
(1.2)NT-3プローブを使用したラットゲノムDNA のサザンブロット 上記(1.1)項記載の縮重1Bおよび2Cプライ マーを使用するラットゲノムDNA鋳型からの増幅 により、RIB/2C PCR生成物を得た。縮重1Bおよ び2Cプライマー(RIB/2Cと表示)の使用により 誘導されたPCR生成物により、新規遺伝子NT-3、 ならびにラットゲノムDNA中のNGFおよびBDNF遺 伝子が検出された。フィッシャーラットの肝臓か らDNAを調製し(Maniatisら、1982,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor)、EcoRI で消化し、そして10μgを1%アガロースゲルで 分別した。DNAを10×SSCを使用してニトロセル ロースに移し(Maniatisら、1982,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor)、32P 標識RIB/2C PCR生成物と60℃でハイブリッド形成 させ(MahmoudiおよびLin,1989,Biotechniques 7:331-3)そして65℃にて2×SSC/0.1%SDS中で 洗浄した。NT-3,NGFおよびBDNFバンドが示され る。NGFおよびBDNFバンドの位置は特異的プロー ブを使用して以前に決定した。左側にサイズをキ ロベース(kb)で示した。
(1.3)ニューロトロフィン−3の発現 ラットNT-3発現構築物は、NT-3遺伝子を含有す る3.2kb SstIラットゲノムフラグメント(第6 B図)を含有するプラスミドからNT-3の想定され る短い前駆体のコード領域を増幅するのにPCRを 使用して作成した。すなわちPCR反応に使用する オリゴヌクレオチドは、増幅したコード領域をpC DM8発現ベクターのポリリンカー中のXhol部位に 挿入しうるように、それらの末端に合成Xhol認識 部位を含有する(Seed,1987,Nature 329:840-42)。
ラットNT-3遺伝子コード領域を増幅するのに使用 した正確なオリゴヌクレオチドは上流センスプラ イマー5'-CGG TAC CCT CGA GCC ACC ATG TCC ATC TTG TTT TAT GTG-3'(下線を引いたATGが「B」 の開始部位開始コドンに相当し、ATGの下流の配 列はNT-3配列に正確に一致し、またATGの上流で このプライマーは合成XhoI部位を含有)、および 下流アンチセンスプライマー5'CGG TAC CCT CGA GAT GCC AAT TCA TGT TCT TCC G-3'(下線を引い たトリプレットはNT-3遺伝子の終止コドンに相補 的である。すなわちこのトリプレットは正確なア ンチセンスNT-3配列にはさまれており、そしてこ のプライマーの5'末端にはXhol部位がある)であ った。生成するラットNT-3の発現プラスミドは pC8-rN3(P1)で示される。ラットNGFおよびBDNF のコード領域を同じpCDM8ベクターのXhol部位に 挿入するために同じような方法が以前使用された。
OKayamaおよびBerg(1982,Mol.Cell Biol.5: 1136-42)に記載されるようにして、NT-3,NGFお よびBDNF発現構築物を60mmプレート当り細胞5× 10個の密度で播いたCOS-M5細胞中にトランスフ ェクションさせ、多量のグルコース(4500mg/ml) および10%ウシ胎児血清を含有するダルベッコ改 変イーグル培地2.5ml中で培養した。トランスフ ェクション72時間後に上清を収集した。
(2)結 果 (2.1)ニューロトロフィン−3遺伝子のクローニ ング 予測したサイズの増幅生成物(NGFおよびBDNF配 列から予測)は異なる対の縮重オリゴヌクレオチ ドを使用して得た。NGF,BDNFまたは新規な配列 の相対的な含量を決定するために、これらの生成 物をはじめに制限酵素分析にかけた。全ての場合 において、NGFおよびBDNF配列のみに相当する制 限フラグメントは臭化エチジウムでの染色により 検出できた。しかしながら、ラットゲノムDNAの サザンブロットにハイブリダイゼーションプロー ブとして同じPCR生成物を使用すると、ひとつの 生成物(RIB/2C表示、第6A図参照)によりNGF およびBDNFに加えて新規ゲノムDNA配列が同定さ れることが明らかになった(第6A図)。従って サザンブロットによりPCR生成物をスクリーニン グすると他の方法では検出できないまれな増幅配 列の同定が可能となった。このRIB/2Cプローブは また進化上分岐した種(ヒト,マウス,ニワトリ およびアフリカツメガエルを含む)のゲノムDNA 中における新規な配列をも検出し、このことはこ のプローブが機能的な遺伝子を同定することを示 唆している。
この遺伝子を単離するためには、NGFおよび BDNFに特異的なプローブだけでなくRIB/2Cプロー ブも、Sprague-DawleyラットDNA(Sau 3A制限エン ドヌクレアーゼで部分消化しそしてEMBL3/SP6/T7 バクテオリファージベクター中にクローンした) から調製されたラットゲノムDNAライブラリー (Clontech Laboratories,Inc.,Palo Alto,CA より購入)を選抜するのに使用した(Maniatisら、 1982,Molecular Cloning:A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor))。RIB/2Cプローブにはハイブリッド形成 するが他の2本のプローブにはしない2個の別個 のバクテオリファージクローンが見出された。こ れらクローン中のラットゲノム挿入物の制限地図 分析では、それらが同じ遺伝子に相当することが 示された(第6B図)。最長の挿入物を有するバ クテリオファージクローンをφrN3(G1)と表示し た。RIB/2Cにより同定された遺伝子が NGF/BDNF ファミリー(第7図参照)の新しいメンバーをコ ードすることを配列分析は示しており、これをニ ューロトロフィン−3と名付けた。
(2.2)成熟ニューロトロフィン−3の配列分析 米国Biochemical Corporationより供給された SEQUENASE Version2.0キットを使用し、製造業 者より推奨されたプロトコルを用いてジデオキシ ヌクレオチドチェインターミネーター法(Sanger ら、1977,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.74: 5463-7)によりDNA配列を行った。
NGFはそのN末端配列の長さが異なる「長い」 (開始部位「A」から開始)および「短い」(開 始部位「B」から開始)前駆体と呼ばれる2本の 別個の前駆体形態を有する(Darlingら、1987 Cold Spring Harb.Symp.Quant.Biol.1:427-34; Selbyら、1987,Mol.Cell Biol.7:3057-64; Edwardsら、1987,Mol.Cell Biol.8:2456-64)。
長い方および短い方の前駆体は両方ともタンパク 分解的に切断されてNGFの成熟形を生成でき、こ のものは実質的に各前駆体のカルボキシ末端120 アミノ酸を構成する。BDNFも同様の長い前駆体形 および短い前駆体形を有するであろう。
いくつかの種からのNGF遺伝子の配列により、 短い(「B」開始部位)前駆体全体をコードする エクソンの5'末端に含まれる4個のコドン(Val- His-Ser-Val)を除いては、この付加的なN末端配 列の大部分が別のエクソン上に見られることが明 らかになっている。これら4個のコドン(Val-X- X-Val)のうち2個、ならびにこれらより先にある RNAスプライス受容部位がいくつかの種から単離 されたBDNF遺伝子の保存された「B」開始部位の すぐ上流に保存されていることを我々は以前示し ている。この所見から、長い方および短い方の前 駆体両形態のBDNFが存在することを我々は提案し た。ラットNT-3遺伝子中には、スプライス受容部 位だけでなく、(Val-X-X-Val)コドンも保存され ている。このスプライス受容部位および提案した イントロン境界を第7A図に示す。これらの配列 を考察して、我々は長い前駆体形態をコードする であろうNT-3遺伝子の上流コードエクソンの存在 を予測した。推定上のNT-3「A」開始部位の上流 にある保存された配列の発見により、長いBDNF前 駆体が存在するという我々の予測がさらに強まり、 そしてNGFファミリーの全てのメンバーにとって のこの長い前駆体の重要で進化上保存された役割 が示唆される。
成熟NT-3の予測されるN末端はNGFおよびBDNF で見られると非常に類似した標準的プロテアーゼ 切断配列(Arg-Arg-Lys-Arg)に続いている(第7 A,C図)。いくつかの種では、NGFの2個のC 末端アミノ酸もまたタンパク分解的に除去される。
NGFと異なり、ラットNT-3はそのC末端にはっき りと切断部位となりうる部位はなく(第7A,C 図)、そして今日までに検査したすべての種から のBDNFと同様に、NT-3のC末端にはタンパク分解 的修飾はないと推量する。
これらの考察に基づき、成熟NT-3ポリペプチド の予測されるサイズは119アミノ酸で、計算した pIは約9.5である。従ってサイズおよび電荷では、 NT-3はNGFおよびBDNFと非常に似ている。成熟NT -3のN末端の7個のアミノ酸はNGFおよびBDNFと は完全に異なる。成熟NT-3のアミノ酸8から開始 すると、BDNFに対しては2個のアミノ酸からなる 1個のギャップが最適な整列にとって必要であり、 NGFに対しては1個のアミノ酸の1個の挿入が必 要である(第7D図)。成熟ラットNT-3はラット NGFと57%のアミノ酸相同性を示し、ラットBDNF とは58%のアミノ酸相同性を示す。すなわち120 残基中57残基(48%)が全3種のタンパク質で共 通である(第2D図)。NGFおよびBDNF中に見ら れる6個のシステイン残基はNT-3中に完全に保存 されており、そしてこの3種のタンパク質間の最も も相同性の高い領域には主にこれらシステイン残基 のまわりに集まっている。
(2.3)ニューロトロフィン−3前駆体の分析 成熟NT-3を放出する推定上の切断部位のすぐ上 流にはNGFおよびBDNFでも同じ位置で見出される (Ullrichら、1983,Nature 303:821-5:Leibrock ら、1989,Nature 341:149-52)普遍的なグリコシ ル化受容部位(Asn-X-Thr/Ser、第7A,C図参照) が存在する。このグリコシル化部位がNT-3,NGF, またはBDNF前駆体のプロセシングに役割を果たし ているかどうかは不明のままである。
NT-3配列をNGFおよびBDNF前駆体とさらに比較 すると、成熟NT-3配列の上流にアミノ酸相同性を 有する2つの領域が示される(第7B,C図の領 域IおよびII)。領域Iの相同性に基づき、NGF (241アミノ酸)およびBDNF(249アミノ酸)の短い 前駆体とサイズが類似する258アミノ酸の短い前 駆体を生じるであろう「B」開始部位(上記NGF で定義)がラットNT-3に存在することが予測され る。すなわち3種の因子全ての短い前駆体に関し、 明らかなメチオニン開始コドン、分泌シグナル配 列およびシグナル配列切断部位が保存されている (第7C図)。領域Iの相同性は「B」開始部位 の上流まで伸びているので「A」開始部位から 開始するであろうNT-3の長い前駆体の存在もまた 我々は予測する(第7A,B,C図参照)。NGF で見られ(Ullrichら、1983,Nature 303:821-5; Selbyら、1987,Mol.Cell Biol.7:3057-64)、 そしてBDNFに関して提案されたように、かかる開 始部位は短い前駆体全体をコードする1個のエク ソンの上流にある付加的なエクソンに恐らくコー ドされているのであろう。
領域IおよびIIのアミノ酸相同性に加えて、 NT-3,NGFおよびBDNFの親水性プロットを比較す ると、成熟生成物の上流にある前駆体の構造上の 類似性が明らかとなる。
(2.4)ニューロトロフィン−3は神経栄養活性を 有する NT-3,NGFおよびBDNF間のきわだった相同性に より、NT-3が神経栄養活性を有する可能性が強く 示唆された。NGFおよびBDNFはインビボおよびイ ンビトロにおいて末梢および中枢神経系ニューロ ンの選択された集団の生存を促進できる(概説と してWhittemoreおよびSeiger,1987,Brain Res. Rev.12:439-64;Lindsay,1988,in“The Making of the Nervous System,”pp.149-65;Davies, 1988,Trends Genet.4:139-43参照)。例えば、 発達中の鳥の胚にどちらかの因子を投与しても特異 的な末梢神経節(例えばHofferおよびBarde,1988, Nature 331:261-2)で自然におこるニューロン死 が阻止される。外植神経節に加えた場合、NGFお よびBDNFは、神経突起の成長を誘導する(Davies ら、1986,J.Neurosci.6:1897-904)。すなわち 解離した神経節ニューロンの培養物に加えると、 これらの因子はニューロンの生存と分化を促進す る(Lindsayら、1985.Dev.Biol.112:319-28)。
いくつかの種類のニワトリ末梢神経節を用いるか かるインビトロアッセイがNGFとBDNF間の神経栄 養活性を区別するのに用いられている。両因子は 神経稜由来の背根神経節(DRG)に見られる感覚性 ニューロンの集団に作用するが、BDNFだけが神経 プラコード由来の節状神経節(NG)の感覚性ニュー ロンを維持する(Lindsayら、1985,Dev.Biol. 112:319-28)。対照的に、BDNFでなくNGFは、脊 椎傍の鎖交感神経神経節(SG)のニューロンの生存 と成長を維持できる(Bardeら、1982,EMBO J.1: 549-53)。
NT-3のありうる生物学的活性を評価するために、 我々はラットNT-3遺伝子をベクターpCDM8(Seed, 1987,Nature 329:840-42)に挿入した。pCDM8は 哺乳動物細胞中でBDNFおよびNGFを一時的に発現 させるために以前使用された。この構築物はNT-3 の短い前駆体を発現させるよう設計された。すな わちNGFおよびBDNFの短い前駆体形の発現により 生物学的に活性な物質が生成している(Edwardsら、 1988,Mol.Cell Biol.8:2456-64;Leibrockら、 1989,Nature 341:149-52)。NT-3,NGFおよびBD NF構築物を、COS細胞にトランスフェクションさせ た。培養上清を収集し、そしてDRG外植片からの 神経突起の伸びを誘導する能力について種々の濃 度で初めにアッセイした。予想されたとおり、こ のアッセイにおいてNGFおよびBDNFは神経突起の 伸びを促進した(第8図)。NT-3遺伝子はDRG外 植片から豊富な神経突起の伸びを誘導する神経栄 養活性のある産物を実際にコードするという第一 の実例である(第8図)。
NT-3が直接ニューロンに作用することを確立す るために、解離されたDRGニューロンが高度に富 化された培養物中でこの因子をアッセイした(第 9図)。シュワン細胞および繊維芽細胞の実質的 非存在下で、NT-3はこれらDRGニューロンの約60 %の生存および神経突起の伸びを促進した。NGF およびBDNFが共同して培養中のDRGニューロン の事実上100%を維持することが判明したので (Lindsayら、1985,Dev.Biol.112:3
19−28)、 NT -3は他の2因子のうち少なくとも1方にも応答する細胞
の生存を促進すると想定しなければならない。
(2.5)NT-3の神経栄養活性はNGFおよびBDNFとは 別個である。
NT-3のニューロン特異性をさらに調査するため に、NGおよびSG外植片でこの因子をアッセイした。
予想したとおり、NGFはE8ニワトリ胚からのSG外 植片からの神経突起の伸びを誘導するが、NG外植 片からは誘導せず、一方BDNFはNG外植片からの神 経突起の伸びを誘導するがSG外植片からは誘導し ないことが対照実験により実証された。おもしろ いことに、NT-3はNGおよびSG両外植片からの神経 突起の伸びを促進し(第8図)、このことはNGF またはBDNFのいずれよりも幅広い特異性を示唆し ている。しかしながら、NT-3はNGFおよびBDNFと 同様にニワトリ毛様体神経節の外植片の生存を促 進せずまたは解離されたニューロン富化培養物か らの神経突起の伸びを促進しなかった。以前にさ れているように、神経節を含有する副交感神経ニ ューロンはラットCNTF(NGF/BDNF/NT-3ファミ リーに関連しない神経栄養因子)に応答しなか った(Manthorpeら、1986,Brain Res 367:282-6; Stockliら、1989,Nature 342:21-28)。対照ベ クターでトランスフェクションしたCOS細胞から の上清を使用したアッセイのどれにおいても全然 応答は見られなかった(第8図)。
外植された胚日令8日(E8)のニワトリ背根神経 節(DRG)、節状神経節(NG)、および脊椎傍交感神 経神経節(SG)の漸増量のNT-3に対する応答を測定 する代表的実験の結果を第IV表に示す。Lindsay およびRohrer(1985,Dev,Biol.112:30-48)に記 載のようにして神経節を外植片として1mlのコラ ーゲンゲル中で指示される時間培養した。繊維の 伸びを0から5の尺度で採点し、5は神経成長因 子(NGF)(1−10ng/ml)の飽和量に応答して背根 神経節で観察される最大の繊維の伸びである。ラ ットNT-3は上記のようにして、プラスミドpC8- rN3(P1)でトランスフェクションしたCOS-M5細胞 からの馴化培地として得られた。偽似トランスフ ェクションしたCOM-M5細胞からの馴化培地を対照 として使用した。50倍の範囲にわたる検査した全 ての用量で、NT-3は全3種類の外植神経節から検 出可能な繊維の伸びを促進したが、低い用量では 交感神経神経節に及ぼす応答は弱かった。NT-3に 対する背根神経節の最大繊維の伸び応答はNGFま たはBDNFで見られたそれと匹敵した。NT-3に対す る節状神経節の最大の応答はBDNFに対して見られ た最大の応答よりも高かった。節状神経節はNGF に対しては繊維伸び応答を示さない。NT-3に対す る交感神経神経節の最大応答はNGFに対するこれ ら神経節の最大応答よりも低く、そして背根または 節状神経節培養物中におけるNT-3に対する最大 応答に必要とされるよりも高い濃度で観察された。
結果は各場合における4から6個の神経節から の繊維の伸び得点の範囲である。
*NT-3の過飽和レベルでは、DRG外植片に対する 繊維の長さによりおよびNG外植片に対する繊維 の数により測定した場合繊維の伸びは低下する。
(2.6)ラットニューロトロフィン−3は哺乳動物 のニューロンに対して活性である ラットNT-3が哺乳動物のニューロンに対して活 性を示すか否か決定するために14日令ラット胚か ら切開してとった背根神経節を使用して外植片ア ッセイを反復した(第V表)。精製したNGFを対 照として使用した。実質的にニワトリ神経節で記 載されるようにして(第8図、第VI表)、E14ラ ット背根神経節外植片(1ml培養物当り4個の神 経節)を、神経栄養因子を添加しないもの(対照)、 マウス顎下腺神経成長因子(NGF) 、または組換え ラットNT-3(上記のように、プラスミドpC8-rN3 (P1)でトランスフェクションしたCOS-M5細胞から の馴化培地)と24時間培養した。記載されるよう に(第VI表参照)、各神経節を繊維の伸びについ て採点した。その結果は、NGFと同様NT-3がラッ ト背根神経節外植片からの繊維の伸びを促進する のに高度に活性であることを示している。
DRG,NGおよびSG外植片各々は、3種の関連す る神経栄養因子のうち少なくとも2種に応答した が、特定の神経節により示される最大の応答は使 用した因子の如何によるものであった。DRGの場 合、NGF,BDNFおよびNT-3の飽和レベルに対する 応答は比較的同等であった。しかしながら、NGで はNT-3に対する最大応答はBDNFに対するよりも高 かったが、一方SGではNT-3に対する最大応答は NGFと比較すると相当低くそしてやや遅れていた。
(2.7)ニューロトロフィン−3合成部位調査 発達期間中はニューロンの生存は標的由来の神 経栄養分子に依存することが確立されている。成 体においてさえ継続的生存には神経栄養的影響 の存続が必要であろう(Thoenenら、1987,Ciba Found.Symp.126:82-95)。他の場合においては、 成熟ニューロンの生存はもはや神経栄養因子には 依存しないであろう。それにもかかわらずかかる 因子がニューロンの分化した表現型に多大に影響 することが示されている(LindsayおよびHarmar、 1989,Nature 337:362-4)。それゆえ神経栄養分 子の合成部位を決定することはその生理学的役割 を解明するのに役立つであろう。
NT-3合成部位を調査するためそしてNT-3発現を NGFおよびBDNFのそれと比較するために、種々の 成体ラット組織から調製したRNA試料の三通りの ノーザンブロットを、これらの遺伝子のそれぞれ に特異的なプローブとハイブリッド形成させた (第10図)。以前に示されたように(Heumannら、19 84,EMBO J.3:3183-9;SheltonおよびReichardt, 1984,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:7951 -5)、NGF mRNAの発現は脳,心臓および脾臓にお いて最高であった。少なくとも痕跡レベルは検査 した他の全ての組織で検出できた。BDNFはもっと 限定された発現パターンを示した。すなわち最高 レベルは脳で見られ、(Leibrockら、1989,Nature 341:149-52)、そして有意なレベルが心臓,肺, および筋肉で見られた。NGFでそうであるように、 NT-3転写物(1.4kb)は検査した全ての成体組織中 で検出された。しかし検査した全ての末梢組織に おいては、NT-3 mRNAの発現レベルは成体脳でみ られるそれと少なくとも同等であり、そしていく つかの場合(例えば腎臓,脾臓)においてはかな り高かった。
我々はまた新生マウスおよび成体マウスの脳に おけるNGF,BDNFおよびNT-3転写物の相対的な量 を比較した。NGFおよびBDNFの両方と比較して、 新生児脳におけるNT-3 mRNAのレベルは成体の脳 におけるよりも高かった(第8図)。さらに詳細 な分析により、中枢神経系におけるNT-3 mRNAレ ベルは胎児の発育期間中は劇的に高くそしてその 後は成体レベルまで減少することか明らかになっ た。
(3)論 考 NGF,BDNFおよびこの遺伝子ファミリーの最新 のメンバーであるNT-3の間での構造的比較により いくつかの保存領域が強調されそしてこれらのタ ンパク質間の機能的差異がこれら保存領域の外に ある配列により決定されることが示唆される。3 種の全てのタンパク質に長いおよび短い前駆体形 態の存在が予測されることは、インビボにおける 両前駆体形態の関連性について興味深い疑問を生じ る。長い形態は短い形態より効率的にプロセシン グされよう。それにもかかわらず、これら因子の 短い前駆体形態を発現するベクターはCOS細胞に おいて生物学的に活性な物質を生ずる。
これら3種の神経栄養因子が別個の段階特異的 かつ組織特異的発現パターンを示すという我々の 知見により、神経の発達は別個の神経栄養活性の 時間的および空間的に別々の発現に依存するとい う概念が支持される。NT-3発現の発達プロフィー ルは、この因子が神経系の発達初期にとりわけ重 要な役割を果たしうることを示唆している。イン ビトロにおけるNT-3の神経栄養活性に関する我々 の当初の特性決定は、成体脳および成体末梢組織 両方におけるNT-3 mRNAの普遍的行き渡りと一緒 になって、NT-3が成体のニューロン機能および/ または生存に広範な影響を及ぼしうることをさら に示唆している。NT-3のもっと全体的な発現もま た、NGFについて提案されたようにこの因子が神 経系外で細胞に作用する可能性をもたらすもので ある(Ottenら、1989,Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A.86:10059-10063)。
ニューロンは1個以上の神経栄養因子に同時に 応答しうるということは、まだはっきりと示され てはいないが、NGF及びBDNFが重複するニューロ ン集団に作用しうることを示唆する証拠はある。
例えば、NGFまたはBDNFのいずれかの投与により、 正常な鳥類の発達期間中にそうでなければ死んだ であろうDRGニューロンの大部分を救うことがで きる(HoferおよびBarde,1988,Nature 331:261- 2)。ニワトリ末梢神経節に及ぼすNT-3の作用に関 する我々の観察により、個々のニューロンが多数 の関連した恩恵に応答できるという興味深い可能 性が強く裏書きされる。もしこれが本当ならば、 同時応答性の仲介および生理学的関連性の両方が 魅力的な問題を提起するであろう。例えば、3種 の構造的に関連する神経栄養因子のためのレセプ ターおよび/またはシグナルトランスダクション メカニズムの構成分は共通であるかもしれない。
原則として、同時応答性ニューロンは特定の神経 栄養因子に各々特異的である多数のレセプターを 有するか、または多数の神経栄養因子に対する応 答を仲介する1個のレセプターを有することがで きよう。インビボにおいて、これら種々の因子は 応答性ニューロン全てに同時に提示されうる。個 々の因子の相対的利用可能性は時空的差異があり そうである(例えばDavirsら、1987,Nature 326: 353-8)。異なる因子が同じニューロンの異なる部 位で利用可能であるという可能性さえあるだろう (例えば感覚性ニューロンはその末梢および中央 末端から別個の因子を受けうる)(Kalcheimら、19 87,Le Douarin,ENBO J.6:2871-3)。もし多数 の因子がいくつかのニューロンで同時利用可能な らば、それらの作用は余分であるかまたは相補的 であるかであろう。
NGF,BDNFおよびNT-3の個々のおよびありうる 相補的役割を解明することは、神経系の正常な発 達および維持を理解するための決定的な情報を提 供することになろう。動物研究では、NGFは変性 性神経学的状態を治療するのに価値があろうこと が示唆された(SniderおよびJohnson,1989,Ann. Neurol.26:489−506;Fischer
ら、1989,Nature 429:65-8;Phelpsら、1989,Neurobiol.Aging 10:205-7)。NGF/BDNF遺伝子ファミリーの新しい メンバーのクローニング、およびファミリーの他 のメンバーとのありうる相互作用は、神経変性性 疾患においてこれらタンパク質が治療上応用可能 かどうかに関する新しい考察を提起するものであ る。
実施例3:ヒトニューロトロフィン−3遺伝子の クローニングおよび特性決定 (1)結果 ラットNT-3遺伝子の同定に使用されたプローブ (RIB/2C)の調製は上記実施例2に記載されるよう にして行った。そこに記載されるようにして、 NGFおよびBDNFにより共有されるアミノ酸配列相 同性の「ボックス」のうち2個に相当する縮重オ リゴヌクレオチドプライマーを使用し、ラットゲ ノムDNAからポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により プローブを調製した。新規遺伝子を表わすDNA分 子の集団がRIB/2Cプローブ内に存在することは、 EcoRI制限エンドヌクレアーゼ消化ラットゲノム DNAのサザンブロットハイブリダイゼーションに より最初に明らかにされた。すなわちNGFおよび BDNF遺伝子に相当することが知られる予測された フラグメントに加えて、プローブが新規DNAフラ グメントも検出した。
ラットDNAの場合のように、種々の制限エンド ヌクレアーゼで消化したヒトゲノムDNAのサザン ブロットを分析するために32P標識したRIB/2Cを プローブとして使用した場合、NGFおよびBDNF遺 伝子に相当するバンドだけでなく新規なバンドへ のハイブリダイゼーションも観察された。例えば、 HindIII制限エンドヌクレアーゼでは約1.8kbの新 規(すなわち非NGF,非BDNF)バンドが観察され た。BamHIで約15kbの新規バンドが観察された。
そしてEcoRIで8および12kbの新規バンドが観察 された(2つのバンドの存在はヒトゲノムDNA中 のEcoRI制限部位の多型現象から生じたものかも 知れない)。これらのデータにより、ヒトDNAが ラットおよびヒトの間でよく保存されているNT-3 遺伝子を含有することが示された。
ラットNT-3遺伝子の単離に関して記載されたよ うに(実施例2参照)、ヒトNT-3遺伝子をゲノム ライブラリーのスクリーニングにより単離した。
簡単に言えば、ヒト胎盤ゲノムDNAのSau 3A部分 消化生成物をバクテリオファージベクターλEMBL 3/SP6/T7(Clontech Laboratories,Inc.から購入) にクローンしたライブラリーをRIB/2Cプローブ、 およびラットNGFおよびラットBDNFプローブで選 抜した。ヒトNT-3クローンはRIB/2Cとハイブリッ ド形成するが、NGFともBDNFともしないことが予 測されよう。かかるファージクローンの1個が、 選抜された約8×105個のプラーク中で同定され た。φhN3(G1)で示されるこのクローンは約16kb のヒトDNA挿入物を含有することが見出された。
このクローンを通常の方法により制限地図作成し そして選択した制限フラグメントをDNA配列分析 するためにプラスミドpBluescriptII(Seratagene) にサブクローンした。ヒトNT-3遺伝子の配列およ びそのタンパク質産物の推定アミノ酸配列をラッ トNT-3配列と並べて第11図に示す。
(2)論 考 配列分析の結果は、ラットとヒトNT-3の間で核 酸およびアミノ酸配列に著しく高度の保存がある ことを示している。成熟ポリペプチド(119アミノ 酸)をコードする領域内で、ヒトおよびラット遺 伝子はDNA配列が約92%相同である。しかしなが ら、この領域におけるヒトとラットの間のヌクレ オチド配列の相違はどれひとつとしてアミノ酸置 換に至るものはない。すなわち成熟ラットおよび ヒトNT-3(および成熟マウスNT-3、上記実施例1 参照)の推定アミノ酸配列は完全に同一である。
これはラット,マウス,ヒトおよびブタの間での 成熟ポリペプチドのアミノ酸配列の完全な同一性 を示すBDNFの高度の保存の名残りである。これと 対照的に、成熟ヒトNGFおよびゲッ歯類動物NGF (マウスまたはラット)のアミノ酸配列は約10% 異なる。さらに、推定ヒトおよびラットNT-3前駆 体のアミノ酸配列もほとんど違いがない(第11図 の下線部)。成熟NT-3ポリペプチドを生成するで あろうと予測されるプロテアーゼ切断部位(Arg- Arg-Lys-Arg)のすぐ上流で、ヒトの配列はラット 配列に存在する1個のコドン(Proのための)が欠 けている。4個のアミノ酸からなる1区画はヒト およびラットプレプロNT-3の間で異なり、そして 1個のアミノ酸からなるさらに6ヶ所の置換が、 その区画および予測されるプロテアーゼ切断部位 の間に散在している。
ヒトNT-3の生物学的活性 成熟ヒトNT-3の推定アミノ酸配列は成熟ラット NT-3のそれと同一なので、ヒトおよびラットNT-3 タンパク質が区別をつけられない様な生物学的活 性を示すであろうことが強く予測された。ヒトNT -3の神経栄養活性は、クローン化したヒト遺伝子 をプラスミド発現ベクターpCDM8に挿入し、生じ たプラスミドpC8-hN3(P1)をCOS-M5細胞にトラン スフェクションし、(ChenおよびOkayama,1987, Mol.Cell Biol.7:2745-52に記載)、そしてト ランスフェクションされた細胞からの馴化培地中 における神経栄養活性をアッセイすることにより 確認された。ラットNT-3遺伝子(実施例2)で記 載されるように、ヒトNT-3遺伝子をバクテリオフ ァージφhN3(G1)からPCRによって増幅させ、そ してプラスミド発現ベクターpCDM8に挿入した。
その結果生じたプラスミドをpC8-hN3(P1)で表わ した。PCR増幅およびクローニング操作中に突然 変異が導入されなかったことを確認するために、 NT-3挿入物全体のヌクレオチド配列を決定し、そ して上記のようにして決定されたゲノム配列と比 較した。トランスフェクシヨンおよびアッセイ法 はラットNT-3の生物学的活性のアッセイに使用し た方法と実質的に同一であった。
予測されるように、胚日令9日(E9)のニワトリ 背根神経節および節状神経節の外植片に対してア ッセイを行った場合、ヒトNT-3は神経栄養活性を 有することが見出された(第VI表)。偽似トラン スフェクションしたCOS-M5細胞からの、または組 換えヒトBDNFまたは組換えラットNT-3[rNT-3;プ ラスミドpC8-rN3(P1)]または組換えヒトNT-3[hNT -3;プラスミドpC8-hN3(P1)]をコードするプラス ミド(すべてpCDM8発現ベクターに由来)でトラ ンスフェクションしたCOS-M5細胞からの馴化培地 (上清)の存在下に神経節を24時間培養した(第 8図,第IV表参照)。BDNFプラスミドを陽性対照 として選択した。なせならBDNFは背根神経節およ び節状神経節の両方に神経栄養活性を有すること が知られているからである。第VI表に示されるよ うに、適度の用量において、(第IV表と比較)、ラ ットおよびヒトの組換えNT-3は、背根神経節に対 してBDNFとほぼ同じレベルの活性を示し、そして 節状神経節に対してBDNFよりかなり高い活性を示 した。ヒトNT-3活性対ラットNT-3活性には何らの 相違も観察されなかった。
得点は培養中24時間目での1個から5個の個々 の神経節で見られる繊維の伸び(尺度0−5)の 測定である。各個々の神経節の得点を示す。
代謝標識によるヒトNT-3遺伝子産物の同定 成熟NT-3ポリペプチド(ラットまたはヒト)の 予測されるサイズは13.6ダルトンの分子量を有す る119アミノ酸である。成熟ヒトNT-3ポリペプチ ドのおよそのサイズを実験的に決定するために、 ヒトNT-3発現プラスミドでトランスフェクション した細胞を代謝的に標識し、そして馴化培地を新 規ポリペプチドの存在について分析した。第12図 に示される実験において、COS-M5細胞をプラスミ ドpC8-hN3(P1)でトランスフェクションし(前記)、 細胞を[35S]メチオニンおよび[35S]システイン の混合物で標識し、成長培地を収集しそして15% ポリアクリルアミドゲル上で変性条件下に電気泳 動することにより分別し、タンパク質を膜フィル ターに移し(実質的にTowbinら、1979,Proc. Natl.Acad.Sci.U.S.A.76:4350-4354に記載) そして標識したポリペプチドをオートラジオグラ フィーにより検出した。偽似トランスフェクショ ンした細胞を対照として使用した(「偽似」と標 識したレーン)。第12図に示されるように、発現 プラスミドpC8-hN3(P1)は対照では見られない約 14kDa(図面中の標識NT-3)の1本のポリペプチド の合成を指示した。技術上分析できる範囲内で、 このものは成熟NT-3の予測されるサイズとよく一 致する。
実施例6:ニューロトロフィン−3は胚性ラット 腹側中脳の培養ドーパミン作動性ニュ ーロンの生存を支持する E14ラット胚腹側中脳の培養物を1988年8月30 日出願の米国特許出願07/400591号明細書(これ はその全体が参考としてここに組込まれる)に記 載されたようにして樹立した。培養物を密度50,0 00細胞/cm2(第13図)または100,000細胞/ cm (第14図)で播きそして神経栄養因子の非存在下 対照または漸増量の組み換えヒトニューロトロフ ィン−3(NT-3)含有COS細胞上清の存在下で成長 させた。培養8日後に細胞を固定し、チロシンヒ ドロキシラーゼ(TH)に対する抗体、ドーパミン作 動性ニューロンのマーカーで染色した。第13図お よび第14図に示すように、漸増量のNT-3は8日後 に生存しているTH陽性細胞数を増大させることが 見出され、NT-3 COS細胞上清の1:25希釈での対 照値よりも最高で2.5倍増であった。精製した神 経成長因子は効果がないと思われたが、NT-3の作 用はBDNFについて観察されたのと類似していた。
実施例7:発達中のラット神経系中のNT-3、BDNF およびNGF:発現の平行ならびに相反 するパターン (1)方法 (1.1)材料および切開 Harlan Sprague Dawley Inc.から得られたSpra gue-Dawleyラットをすべての切開に用いた。成体 脳の切開は慣用の肉眼的解剖標認点に従った。皮 質サンプルには新皮質および嗅覚皮質の背側部分 が包含された。間脳サンプルはそれぞれ背側およ び腹側標認点としての線条骨髄および視交差を用 いて取り出した。中脳サンプルは上丘および下丘 のレベルで背側に取り出し、脳の腹側表面に脳橋 の大部分の吻側単部まで伸ばした。後脳サンプル は小脳を欠いていたが脳橋および骨髄を含んでい た。視床組織による汚染を避けるため線条体の吻 側部分だけをサンプリングしたことに注目すべき である。海馬サンプルはふさ/脳弓のレベルから ほぼ尾側極まで集めた。新生脳の切開には、線条 骨髄を除いて同様の標認点を用いた。胚組織を得 るために時期を定めて妊娠させたラットを用いた。
精子を与えた日は日令E1と陽性表示し、誕生の日 はP0と表示した。成体ラットは150〜275gに平均 させた。(6〜8週令)。
(1.2)RNAの調製およびノーザンブロット 選ばれた組織をSprague Dawleyラットから切開 し、直ちに液体窒素中で凍結させた。記載された ようにして(Bothwellら、1990,Methods of Clon- ing and Analysis of Eukarotic Genes,Jones and Bartlett,Boston,MA)組織を3M LiC1/6M 尿素中でホモジナイズすることによりRNAを単離し た。RNA(10μg)を4通りの1%アガロース/ホル ムアルデヒドゲル(Bothwellら、上記)を通して 電気泳動し、続いて標準塩水シトレート(SSC)、 pH7を用いてナイロン膜(MagnaGraph,Micron Separations Inc.)にキャピラリーで移すことに Stratagene,Inc.)によりRNAを膜に架橋させ、 そして0.5M NaH2P04(pH7)、1%ウシ血清アル ブミン(フラクシションV、Sigma.Inc.)、7% SDS、1mM EDTA(MahmoudiおよびLin,1989, Biotechniques 7:31-33)および100μg/mlの音波 処理変性サケ精子DNAの存在下に放射性標識プ ローブと68℃でハイブリダイゼーションさせた。
フィルターを68℃で2×SSC、0.1%SDSで洗浄 DuPont)およびX-線フィルム(XAR-5,Kodak)を用 いて−70℃で1日ないし2週間オートラジオグラ フィーを行った。これら4通りのゲルの臭化エチ ジウム染色は、同等のレベルの全RNAが異なるサ ンプルについてアッセイされたこと(Maisonpierre ら、1990,Science 247:1446-1451)を示しおり、 このことはブロットのいくつかを28S rRNAに特異 的なプローブを用いてプロービングすることによ り確認された。
(1.3)NT-3、BDNF、NGFおよびNGFRプローブの調 製 ラットNT-3、BDNFおよびNGFのコード領域を pCDM8発現ベクター(AruffoおよびSeed,1987, Proc.Natl,Acad.Sci.USA.84:8573-8577)中 に分子クローニングすることは以前に記載されて いる(Maisonpierreら、上記)。これらプラスミ ドの800塩基対(bp)XhoI挿入物をアクリルアミド ゲルで分離し、電気泳動による溶離(Bothwellら、 1990)によって回収し、続いてランダム6量体ラ ベリング(Bothwellら、上記)による32P-標識し た。合成NT-3、BDNFおよびNGF転写物への各プロ ーブのハイブリダイゼーションは一つのニューロ トロフィンに特異的なプローブが関連ニューロト ロフィンからの転写物にハイブリダイズしなかっ たことを示した。ラットNGFRプローブはラットNG FRタンパク質をコードする領域にを包含する1.6 kb NcoI cDNAフラグメントであった(Radekeら、 1987,Nature 325:593-597)。
(1.4)合成転写物の調製および定量 上記のpCDM8/ニューロトロフィン発現構築物 中に存在するT7ファージプロモーターを、NT-3、 BDNFおよびNGFをコードする領域のセンス方向に 対応する合成RNA転写物の作製に用いた。これら の合成転写物の量をまず分光測光法により定量 した。3つの転写物の共通5'末端(T7プロモー ターのすぐ下流)にハイブリダイズした末端標識 (Bothwellら、上記)30量体オリゴヌクレオチド を用いて転写物をさらにアッセイした。オリゴヌ クレオチドプローブにハイブリダイズした(ハイ ブリダイゼーションおよび洗浄は55℃でその他は 上記と同様に行った)合成転写物ドットブロット およびノーザンブロットをデンシトメトリー走査 することにより、同等のレベルの合成転写物が特 定の標準物として用いられたことが確認された (代表的なデータを第15A図に示す)。
(1.5)ニューロトフィン転写物レベルのデシン トメトリー定量 種々のサンプル中での転写物レベル標準化成体 ラット脳サンプル(上記参照)に下記のようにし て正常化した。成体脳RNAサンプルの同等の割合 を各ノーザンブロットに含ませた。アッセイした 各サンプルに関するシグナル強度を測定するため に各ノーザンブロットについての種々のオートラ ジオグラフー照射物のデンシトメトリー走査を用 いた。走査した各照射物について、その照射物に おける成体脳サンプル中のシグナル強度に関して 得られた値で各サンプルのシグナル強度を割った。
このことにより、すべての値を標準化成体脳サン プルに関して正常化された。第18図において、異 なるサンプルの転写物レベルは成体脳サンプルの レベルに比較して示されており、成体脳サンプル のレベルを自由裁量で1.0に設定した。成体脳サ ンプル中の全RNA1マイクログラム当りのニュー ロトロフィン転写物のフェムトグラムを測定する と、成体脳サンプルに関して正常化されたサンプ ルにおける実際の転写物レベル(fg/μg)を測定す ることができた。
(2)結 果 (2.1)成体ラット脳中のNT-3、BDNF、およびNGF mRNAレベルの定量および比較 種々の組織由来サンプル中でのNT-3、BDNFおよ びNGF転写物の発現を定量して比較するために、 ノーザンブロットアッセイを用いた。異なるサン プル中の各ニューロトロフィン転写物の量を特定 の合成標準物に関して定量した。その量を精密に 測定した合成NT-3、BDNFおよびNGF RNA転写物(第 15A図およびその説明参照)を、成体ラット脳か ら単離した全RNA10μgをも含有するノーザンブ ロットに含ませた。ブロットを各ニューロトロフ ィンに特異的な放射性標識プローブにハイブリダ イズさせ、次いでオートラジオグラフィーを行っ た(第15B図)。次いで成体脳サンプルおよび合 成標準物から得られたハイブリダイゼーションシ グナル強度を比較するために走査デンシトメトリ ーを用いた。この定量により、成体ラット脳中の 3つのすべてのニューロトロフィンについてほぼ 等しいmRNAレベル(全RNA1μg当りNT-3転写物 40fg、BDNF転写物45fgおよびNGF転写物30fgと推 定される)が存在することが明らかにされた。こ の標準化成体脳サンプルの一部分を続くすべての ノーザンブロットに包含させ、従って新しいRNA サンプル中のニューロトロフィン発現レベルを比 較して定量することが可能になった。(後記参照)。
異なるサンプルの間での3つのニューロトロフィ ン転写物の可視的比較を助けるため、後続の図面 に記載される照射物は、標準化成体脳サンプルの シグナク強度が3つの全ニューロトロフィンに関 して類似しており、これにより他の組織サンプル のシグナルが特定の標準物に対して正常化される ように選ばれた。
(2.2)NT-3、BDNFおよびNGF遺伝子発現は共通の ならびに特有の発達特徴を示す ラット胚中でのニューロトロフィン遺伝子発現 の調査により、3種の全ニューロトロフィンは胚 日令11と12(E11-E12)の間でそれらの発現レベル の劇的な増加を示すことが明らかにされた(第16 A図)。3種の全ニューロトロフィン転写物はE12 およびE13胚に広く分布している。ニューロトロ フィン遺伝子発現の協調した上昇のタイミングは、 神経組織発生(末梢および中枢の両方)が本格的 に始まる期間と、およびこれらの新たに形成され たニューロンによる軸索の初期の伸びと一致する (例えばAltmanおよびBayer,1982,Adv.Anet. Embryol.Cell.Biol.Vol.74;AltmanおよびBayer, 1984,同上、Vol.85)。
胚組織発生中のニューロトロフィン遺伝子発現 がこのように協調して開始するにもかかわらず、 標準化成体脳サンプルと比較すると、NT-3 mRNA は早期胚中に極端に多く存在するが(180fg/μg 全RNA)、BDNF mRNAはわずかに多く(5〜10fg/ μg全RNA)、NGF mRNAは中程度のレベル(30fg/μ g全RNA)で存在することが示された(第16A図)。
NT-3およびBDNFは発現レベルは発達中の脳(第16 B図)または密に神経支配された心臓(第16C図) で追跡すると相反する関係を示し続け、同様のレ ベルまで最初は高いNT-3発現が低下する一方、最 初は低いBDNF発現が上昇することは、成体におい て最終的に達成され、それとは対照的にNGF発現 はむしろ一定のままであった。興味深いことには、 NT-3発現は密に神経支配されず認めうるBDNF mRNA を発現しない臓器である肝および胸腺の発達中に 増加する。
NGFR転写物の胚発現はニューロトロフィン遺伝 子発現の上昇にみかけ上は先行し、初期脊髄中で 著しく高く、脳の出生前発達中および心臓の出生 後発達中に低下する(第16A、B、C図)。
(2.3)新生および成体神経内でのNT-3、BDNF、 NGFおよびNGFRの発現の比較 ラット神経系内でのニューロトロフィン遺伝子 発現の空間的分布を特定し、かつ脳全体内での明 確な発達プロフィールが別個の脳領域内での発達 の変化とどのように関係しているかを理解するた めに、新生および成体脳内でのニューロトロフィ ン遺伝子の発現を調べた。3つの全因子はその発 現パターンにおいて明確な空間的および時間的違 いを示した(第17図)。末梢組織中での転写レベル を含む転写レベルの定量を第4図にグラフの形で 示す。3個の全因子に共通の主要な類似点は、成 体の海馬におけるそれらの一様に高いレベルの発 現である。NT-3およびNGFの発現がそれらの広い 分布においてより類似している(前記Maisonpierre ら)成体末梢組織での状況とは対照的に、成体脳 内でNT-3およびBDNFは成体脳内でのそれらの全体 的な発現パターンにおいて明らかに平行であるこ とを示した(第17B、18B図)。興味深いことに、 両因子は線条体には目立って存在していない。し かし、発現を新生および成体脳との間で比較した ときに、NT-3およびBDNFは、最も興味深くかつ明 らかに相反する違いをも示す(第17A、B図およ び第18A、B図)。新生物中でのNT-3の発現は最 も高く、成体におけるよりも脳のより未成熟な領 域(例えば小脳、海馬および新皮質)においては るかに高い。BDNF発現はこれらの領域で最も低く、 そしてより初期に成熟するより尾側の脳領域(即 ち、後脳、中脳および間脳)において成体レベル と同様に最も高い。成体脳におけるように、新生 線条体においてNT-3およびBDNFの転写物は検出で きない。
NT-3およびBDNFと比較して、NGF mRNAレベルは 新生対成体脳の比較においてあまり劇的でない相 違を示す(第17図、18図)。臭神経NGFレベルは 新生体においてより高いが、海馬および新皮質 NGFレベルは成体においてより高い。NGFR mRNA レベルは成体脳とは反対に新成体内で一般により 高く、新生小脳および後脳において例外的に高か った(第17A、B図)。
(2.4)解離CNS領域の発達中のNT-3、NGFおよび BDNF発現の調査 NT-3は個々のCNF領域の発達中に最も顕著に初 期に発現される一方、BDNFは同じ領域の発達中に 後で優勢に発現されることをさらに追跡するため に、3つのCNS(その成熟は極めて異なる時間的経 過に従う)の発達中のニューロトロフィン遺伝子 発現を分析した。自然に起こる細胞死に迅速に従 う神経組織発生は骨髄内で極めて初期に始まり (E12-E13)、誕生前の数日に完成する(Aetmanお よびBayer,1984,上記)。これと対照的に、 小脳および海馬中の大部分のニューロン(それら の小粒細胞集団により占められる)は誕生前に発 生する(例えばAltman,1966,J.Comp.Neur. 128:431-474;Schlessingerら、1975,J.Comp. Neurol.159:149-176)。後で発達する小脳にお いては生涯の最初の3週間に広範囲な神経組織発 生、神経芽細胞の移動およびニューロンの分化が ある(例えばAltman,1966,上記)。海馬中のNGF mRNAレベルは誕生後約2週間までは容易に検出で きるようにならないことが報告されており(Large ら、1986,Science 234:352-355)、この増加は 広範囲の顆粒の細胞の増殖の周産期開始(例えば Altman,1966,上記)および基底前脳のコリン作 動性ニューロンからの線維の侵入(KonおよびLoy, 1989,J.Neurosci.9:2999-3018)ののち長時間 たってから起こるが、これらのニューロンのさら なる分化と一致する(Largeら、上記)。
発達中の骨髄の我々の研究(第5図A、E図)に より、誕生により減少し成体中ではほとんど検出 できないE12-E13でのNT-3発現レベル(150〜280fg /μg全RNA)が高いことが示された。E12-E13でか ろうじて検出できるBDNF mRNAは誕生時にピーク であり(10-20fg/μg全RNA)、次いで成体中で減 少する。NGF mRNAはE12-E13骨髄中で高レベルで 発現されるが(15-25fg/μg全RNA)、同じ段階で のNT-3 mRNAレベルよりも10倍低いレベルにある。
興味深いことにNGFRは初期骨髄中で最高レベルで 発現され、この発現は以前に初期骨髄中で新たに 形成されたモーターニューロンの自然に起こる細 胞死の時期と関係づけられた(Ernforsら、1989, Neuron 2:1605-1613)。
後で発達する小脳において(第19B、F図)著 しく高レベルのNT-3 mRNA(500-820fg/μg全RNA) は誕生後の最初の3週間にわたって持続されるが、 BDNFはこの期間中に遅れて増加し始めるにすぎず、 極めて低レベルのNGF発現は小脳発達の初期段階 においてのみ検出できる。NGFRは小脳発達の初期 に高レベルで発現され、次いで観察されたNT-3発 現の低下に先立って低下する。
海馬において(第19C、G図)BDNFおよびNGF mRNAレベルの両方はE17での低レベルから誕生時 の中レベルに上昇し、成体において最高レベルに 達する。3つの全ニューロトロフィン転写物は成 体海馬中で同様のレベルで発現されるが、NT-3発 現はE17および新生海馬中のBDNFおよびNGFより も著しく高く、新生海馬中のNT-3発現レベルは周 産期小脳中で認められたレベル(820fg/μg全RNA) と同じく高い。ニューロトロフィンとは対照的に、 NGFR発現は海馬の発達中に低下する。
上記で検討した3つの全CNS領域においてNT-3 発現はそれらの発達中に著しく高く次いで成体レ ベルに低下するが、最初は低いBDNF mRNAレベル は上昇してNT-3の場合と同様に成体レベルに達す る。NT-3およびBDNFの相反するプロフィールと対 照的にNGF発現は一定のパターンを示さず、骨髄 および小脳の発達中に初期に、しかし海馬の発達 中に後で(低レベルではあるが)優先的に発現さ れる。
(3)論 考 我々の分析は、3つのニューロトロフィン転写 物の空間−時間的分布における類似性および相異 の両方を示した。NT-3、BDNFおよびNGF転写物は 全て、ラット胚形成の第11日目と第12日目の間に それらの発現の同時増大を示し、12日および13日 令の胚に広く分布している。発現のこの共通して 突発するタイミングは神経組織形成の発達開始と ほぼ同時に起こる(例えばAltmanおよびBayer, 1982,上記;AltmanおよびBayer,1984,上記)。
この関連は、3つのニューロトロフィンが神経系 に対して特に重要な発達期の役割を果し、そして すべてのニューロトロフィンが有糸核分裂後のニ ューロンの生存を維持するために一般的に必要と されるものに初めてなる時期を示すという概念を 支持する。しかしながら、それらの発現のタイミ ングは、発達中の神経系におけるニューロトロフ ィンの他の役割をも示しうるであろう(下記参照)。
遺伝子発現の開始は3つのニューロトロフィン に関して同時に起るが、それらが初期の胚におい て達するレベルはおおいに異なる。NT-3 mRNAは 胚において断然最とも豊富である。一方、BDNF mRNAは、最も低いレベルで発現される。NT-3とBD NF発現とのこの対照性は検査したほとんどすべて の例において持続する。発達中には、NT-3発現は ニューロンおよびその前駆体の増殖、移動および 分化が進行しているCNS領域においてもっとも顕 著であり、それらが成熟するにしたがいCNS領域 内で一般に劇的に減少する。それとは対照的に新 生児におけるBDNF発現は神経組織形成がすでに起 こっているCNS領域においてもっとも顕著であり、 それらが成熟するにしたがい、CNS領域内で一般に 増大する。興味深いことに、NT-3およびBDNF転写 物が種々の成体CNS領域において最終的に達する レベルは全く同様である。発達中のNT-3およびBD NF発現間の相反する関係は、成体CNSにおけるそ れらの比較的類似するプロフィールと一緒になっ て、NT-3およびBDNFはある場合においてCNSにお ける同じニューロン集団に作用するであろうこと を示す。もしそうならば、我々のデータは、NT-3 がこれらのニューロン発達中(たぶん標的神経支 配の確立中)に重要な役割を果す一方、BDNFは同 じニューロンの生涯における後期に(すなわち、 成熟または維持因子として)圧倒的に作用するか もしれないということを示唆するであろう。発達 中のNGF発現は領域によって変化するが、これら の変化はNT-3およびBDNFのそれが行うような一貫 したパターンに従わない。NGFR mRNAレベルは3 つのニューロトロフィン遺伝子のいずれの発現を も特異的に反映しないが、それが個々のニューロ トロフィンレセプターの共通成分として働らくか もしれないという可能性と一致する(Rodriguez- Tebarら、1990,Neuron 4:487-492)。NGFR発現 はCNS領域の発達期の初期に最高になるという傾 向を確かに有し、我々の研究は発達により調節さ れたNGFR発現の興味ある変化を明らかにし、それ はさらに調査する課題である。
成体CNS内のそれらの同様な分布と対照的に、 NT-3およびBDNFは成体末梢組織内で顕著に異なる パターンの発現を有する。すなわちNT-3転写物の より広い末梢分布はBDNFよりも末梢におけるより 広い(および異なる)範囲の(ニューロンならび に非ニューロン)細胞への作用を反映するであろ う(Maisonpierreら、上記)。
NGFおよびBDNFの両方は神経系の発達期におい て重要な初期の役割を果すことを示唆するかなり の証拠があるが、我々の分析は著しく高いNT-3発 現と初期のニューロンの発達との間によりいっそ う一貫した印象的な相互関係を明らかにする。発 達中の小脳および新生の海馬におけるNT-3 mRNA レベルは、任意の他の組織または脳の領域におけ るどのニューロトロフィンのレベルよりも数倍高 く、そして成体脳のどのニューロトロフィンのレ ベルよりも20倍以上高い。少なくともいくつかの BDNF-およびNGF-依存性のニューロンを支持する ことができ(Maisonpierreら、上記)、その時間 的発現がニューロン発達の重要な時期と最も明確 に平行する新規なNGF関連タンパク質としてNT-3 が発見されたことは、NT-3が、以前はBDNFまたは NGFに帰された発達上重要な機能のいくつかに通 常原因がある生理的作用物質であるという可能性 を生じる。これらの関連因子に対する抗体は交叉 反応をする可能性があるので(Whittemoreおよび Seiger,1987,Brain Res.Rev.12:439-464)、 このファミリーの全メンバーの真の発達上の役割 の再調査がさらに強調される。
我々は、NT-3は古典的ニューロン生存分子とし て作用することができ(Maisonpierreら、上記)、 NT-3の作用は標的由来因子の限定された発現がニ ューロン選択および取り除きという結果を生じる その因子と考えられることを以前に示したが、こ のことはNT-3(ならびに他のニューロトロフィン) にとって他の発達上重要な役割を決して除外する ものではない。発達中の神経系内のNT-3発現のパ ターンはネスティン(nestin)(新規な中間体フィ ラメントタンパク質であってその発現は神経組織 形成を行うCNS領域に特徴的である)(Lendahlら、 1999)およびSNAP(初期神経突起伸長の抗原性マ ーカーYamamotoら、1986,J.Neurosci.6:357 6-3594)のパターンとの顕著な類似性を共有する。
NGFの場合と異なり(Cleggら、1989,Devel. Biol.134:30-37)、高レベルのNT-3発現は心臓へ の交感神経繊維の到達に先んじる。したがって、 NT-3はニューロン生存以外の発達過程に特に結び ついているかもしれない。これには例えばニュー ロン前駆体の増殖/分化および/または移動する 細胞まはそれらの軸索の案内が包含される。NT-3 がかかるありうる生理的役割を果すことのさらな る示唆は、ニューロトロフィンの1つ(すなわち NGF)はインビトロでニューロン前駆体増殖におい て役割を果しうるという最近の発見から来る。逆 にBDNFは、発達期の初期に存在するが、ニューロ ンの死および選択の開始時期のずっと後に一般に さらに重要な役割を有するであろう。
成体における全3種のニューロトロフィンの発 現プロフィルは劇的な類似性を共有する。全3種 のニューロトロフィンは成体海馬中で比較的高レ ベルで発現される。基底前脳コリン作動性ニュー ロンの海馬への突出を破壊すると、萎縮およびこ れらニューロンによる伝達体合成の低下を生ずる (総説としてSniderおよびJohnson,1989,Ann. Neruol.16:489-506)。同様の萎縮は加令ラット およびアルツハイマー病のヒトの記憶特異的作業 における低い性能と関連している。基底前脳コリ ン作動性ニューロンの萎縮はNGFの投与によりラ ットモデルで逆転できる。ここに示されるデータ は、成体海馬が通常は全3種のニューロトロフィ ンを基底前脳に供給しうる可能性と一致しており、 このことは培養コリン作動性ニューロンに及ぼす NGFおよびBDNFの相補的作用に関する最近の証拠 がこれら分子の真正の生理学的役割を反映するも のであることを示唆している。しかしながら、NT -3発現は海馬の発達の非常に初期では顕著に高く、 次にNGFおよびBDNFのそれらと類似した成体レベ ルまで低下する。この初期の高い発現も、基底前 脳または他の海馬求心部からの初期連結の案内ま たは確立において、または菌状顆粒細胞前駆体の 増殖において特有の役割を果している可能性を示 唆している。海馬発達初期のNGFレベルが比較的 低いことはNGFに関するかかる役割にさからって 論議されている(Largeら、前出)。
微生物の寄託 下記のものを米国、メリーランド州20852、ロ ックビルRockville パークローン ドライブ12301 のAmerican Type Culture Collection 1990,2月 28日に寄託した。
本発明は本明細書に記載された詳細な態様によ り範囲を限定されるべきでない。事実、本明細書 に記載されているものに加えて、本発明の種々の 変更態様が明細書並びに添付図面から当業者には 明らかであろう。かかる変更態様は本発明の特許 請求の範囲に包含される。種々の刊行物が本明細 書に引用されており、その開示はすべて参考文献 として本明細書に取り込まれている。
【図面の簡単な説明】
第1図は種々の種に由来するBDNFおよびNGFの 配列を比較して示す。 第2図はマウスNT-3のゲノム配列および推定ア ミノ酸配列を示す。 第3図は成熟マウスNT-3、NGFおよびBDNFのア ミノ酸配列を比較して示す。 第4図はマウスにおけるNT-3 mRNAの組織分布 を示す。 第5図はニワトリ胚の節状神経節から単離され た感覚性ニューロンの生存を示す。 第6図はラットNT-3の検出及びそのゲノムクロ ーンの制限地図を示す。 (A)新規遺伝子NT-3の検出; (B)ラットNT-3ゲノムクローンの制限地図。 第7図はラットNT-3の配列、およびラットNGF とラットBDNFに対するその相同性を示す。 (A)はNT-3のヌクレオチドおよびアミノ酸配列; (B)ラットNGFおよびラットBDNFとラットNT-3と の配列比較; (C)相同領域IおよびIIに於けるNT-3、NGFおよ びBDNFの配列比較。 第8図は外植したニワトリ胚(8日)の神経節で アッセイしたNGF、BDNF、およびNT-3活性の比較。 第9図はDGRニューロンの生存および神経突起 成長に対するNT-3の効果を示す。 第10図は齧歯類組織に於けるNT-3、NGF、およ びBDNF発現のノーザンブロットによる比較を示す。 第11図はラットおよびヒトNT-3遺伝子のDNA配 列を比較して示す。 第12図は代謝標識によって検出されたヒトNT-3 ポリペプチドの発現を示す。 第13図.NT-3上精の無い場合(0)、および、 NT-3含有上精の1:300,1:100,1:50および1:25希釈 の場合の培養物あたりの生存チロシンヒドロキシ ラーゼ細胞数を示す棒グラフ、 第14図、1皿あたり900,000細胞密度であるこ とを除き第13図の説明に記載したのと同じ棒グ ラフ、 第15図AはNT-3、BDNFおよびNGF合成転写物を 比較した図、Bは規定の合成RNA標準物と比較し た、成体ラット脳から調製した全RNA中のNT-3、 BDNFおよびNGF mRNAレベルの決定した図、 第16図はラット胚(A)、発達中のラット脳(B) および選択された分娩時の生体組織(C)から調製 された全RNA(10μg/レーン)中で発現された NT-3、BDNF、NGFおよびNRNA遺伝子を示す図、 第17図は新生(A)および成体(B)神経系の別個 の領域から調製した全RNA(10μg/レーン)中 でのNT-3、BDNF、NGFおよびNRNA遺伝子発現を 示す図、 第18図は新生および成体CNS領域および末梢組 織におけるNT-3、BDNF、およびNGF転写レベルの 定量を示す図、 第19図は脊髄(A,B)、小脳(B,F)および海馬 (C,G)の発達中のNT-3、BDNF、NGFおよびNGFR遺伝
子発現を示す図、である。
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【手続補正書】
【提出日】平4.9.7 (1)別紙の通り (2)別紙の通り (3)別紙の通り(図面の浄書につき実体的内容に変更
なし) (4)明細書第181頁下から第2行目「を示す。」を
「を示す電気泳動写真である。」と補正する。 明細書第182頁第2行目「第6図はラットNTの
検出及び……」を「第6図はラットNTの検出を表す電
気泳動写真及び……」と補正する。 同頁第4行目「(A)新規遺伝子NT−3の検出;」
を「(A)新規遺伝子NT−3の検出を表す電気泳動写
真;」と補正する。 同頁第14行目「……NT−3活性の比較。」を
「……NT−3活性の比較を示す生物の形態写真であ
る。」と補正する。 同頁第16行目「成長に対するNT−3の効果を示
す。」を「成長に対するNT−3の効果を示す生物の形
態写真である。」と補正する。 同頁下から3行目「……による比較を示す。」を
「……による比較を示す電気泳動写真である。」と補正
する。 明細書第183頁第2行目「ポリペプチドの発現を
示す。」を「ポリペプチドの発現を示す電気泳動写真で
ある。」と補正する。 同頁第11行目「比較した図、……」を「比較した
電気泳動写真、……」と補正する。 同頁第13行目「……決定した図、」を「……決定
した電気泳動写真、」と補正する。 同頁下から4行目「……NRNA遺伝子を示す
図、」を「……NRNA遺伝子を示す電気泳動写真であ
る。」と補正する。 明細書第184頁第1行目「定量を示す図、」を
「定量を示す電気泳動写真である。」と補正する。 同頁末行「伝子発現を示す図、である。」を「伝子
発現を示す電気泳動写真である。」と補正する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 37/02 AAM 8314−4C 39/395 D 8413−4C C07K 13/00 8619−4H C12N 1/19 1/21 5/10 C12P 21/02 H 8214−4B C12Q 1/68 A 8114−4B //(C12P 21/02 C12R 1:91) (71)出願人 999999999 リジェネロン・ファーマシューティカル ズ・インコーポレーテッド アメリカ合衆国 ニューヨーク州 10591・タリイタウン・オールド・ソー・ ミル・リヴァー・ロード 777 (72)発明者 アンドレアス・ホーン ドイツ連邦共和国 8000ミュンヘン70・ム ルナウエルシュトラーセ 252 (72)発明者 ヨアヒム・ライブロック ドイツ連邦共和国 8035ガウチング・ハン グシュトラーセ 32アー (72)発明者 カレン・バイレイ ドイツ連邦共和国 8000ミュンヘン70・レ ナウシュトラーセ 10 (72)発明者 イフェス―アライン・バルデ ドイツ連邦共和国 8000ミュンヘン70・ス ティフツボーゲン 18 (72)発明者 ハンス・フリードリッヒ・エルヴィン・テ ーネン ドイツ連邦共和国 8000ミュンヘン40・ク レペリンシュトラーセ 4アー (72)発明者 ペーター・シー・マイソンピール アメリカ合衆国 ニューヨーク州 10566・ピークスキル・ホロウブルック・ レーン 19 (72)発明者 マーク・イー・フース アメリカ合衆国 ニューヨーク州 10803・ペルハム・ハイブルック・アベニ ュー 54 (72)発明者 ロナルド・エム・リンドセイ アメリカ合衆国 ニューヨーク州 10510・ニューヨーク・ブライアークリ フ・チャッパクア・ロード 479 (72)発明者 ジョージ・ヤンコプロス アメリカ合衆国 ニューヨーク州 10032・ニューヨーク・アパートメント 4エー・ヘヴン・アベニュー 100

Claims (140)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ニューロトロフィン−3(NT−3)を
    コー ドする核酸配列または少なくとも約10ヌクレ オチドを含有するそのサブ配列を含んでなる、 組み換えDNA分子。
  2. 【請求項2】 ニューロトロフィン−3をコードする核
    酸配 列またはサブ配列が実質的に第2図に示される ヌクレオチド約598から約954までである 、請求項1記載の組み換えDNA分子。
  3. 【請求項3】 ニューロトロフィン−3をコードする核
    酸配 列またはサブ配列が実質的に第7図に示される ヌクレオチド約508から約864までである、 請求項1記載の組み換えDNA分子。
  4. 【請求項4】 ニューロトロフィン−3をコードする核
    酸配 列またはサブ配列が実質的に第11図に示され るヌクレオチド約530から約886までであ る、請求項1記載の組み換えDNA分子。
  5. 【請求項5】 cDNA配列を含んでなる、請求項1、
    2、 3、または4記載の組み換えDNA分子。
  6. 【請求項6】 ゲノムDNA配列を含んでなる、請求項
    1、 2、3、または4記載の組み換えDNA分子。
  7. 【請求項7】 実質的に第11図に示されるヒトDNA
    配列 またはサブ配列を含んでなる請求項1記載の組 み換えDNA分子。
  8. 【請求項8】 ATCCに寄託され、受託番号40765号を有
    する プラスミドpC8-rN3(P1)に含有される、請求項 3記載の組み換えDNA分子。
  9. 【請求項9】 ATCCに寄託され、受託番号40765号を有
    する プラスミドpC8-hN3(P1)に含有される、請求項 4記載の組み換えDNA分子。
  10. 【請求項10】 ATCCに寄託され、受託番号40763号を
    有する バクテリオファージφrN3(G1)に含有される、 請求項4記載の組み換えDNA分子。
  11. 【請求項11】 請求項1、2、3、または4記載の組
    み換え DNA分子に相補的な組み換えリボ核酸分子。
  12. 【請求項12】 第2図に示されるアミノ酸配列と実質
    的に相 同のタンパク質をコードする配列を含有する核 酸配列またはその一部分。
  13. 【請求項13】 第11図に示されるアミノ酸配列と実
    質的に 相同のタンパク質をコードする配列を含有する 核酸配列またはその一部分。
  14. 【請求項14】 第11図に示される核酸配列と実質的
    に相同 の配列を含有する核酸配列またはそのハイブリ ッド形成可能な部分。
  15. 【請求項15】 ニューロトロフィン−3タンパク質ま
    たはそ のペプチドフラグメントをコードする核酸配列 の発現が、組み換えDNA分子で形質転換され た宿主中においてニューロトロフィン−3タン パク質またはペプチドが発現されるように第2 の核酸配列により調節されるものである、請求 項1または4記載の組み換えDNA分子。
  16. 【請求項16】 ATCCに寄託され、受託番号40765号を
    有する プラスミドpC8-hN3(P1)に含有される、請求項 15記載の組み換えDNA分子。
  17. 【請求項17】 請求項1記載のDNA分子を含んでな
    る核酸 ベクター。
  18. 【請求項18】 請求項1、2、3、または4記載のD
    NA分 子を含有する組み換え微生物。
  19. 【請求項19】 細菌である請求項18記載の組み換え
    微生物。
  20. 【請求項20】 酵母である請求項18記載の組み換え
    微生物。
  21. 【請求項21】 請求項15記載の組み換えDNA分子
    を含有す る細胞。
  22. 【請求項22】 請求項16記載の組み換えDNA分子
    を含有す る細胞。
  23. 【請求項23】 実質的に第2図に示されるアミノ酸配
    列をコ ードする配列、または抗原決定基を含有するそ のサブ配列を含んでなる核酸配列。
  24. 【請求項24】 実質的に第2図に示されるアミノ酸配
    列また は抗原決定基を含有するそのサブ配列を有する 精製タンパク質。
  25. 【請求項25】 実質的に第7図に示されるアミノ酸配
    列また は抗原決定基を含有するそのサブ配列を含有す る精製タンパク質。
  26. 【請求項26】 実質的に第11図に示されるアミノ酸
    配列ま たは抗原決定基を含有するそのサブ配列を有す る精製タンパク質。
  27. 【請求項27】 実質的に第2図に示されるアミノ酸約
    140 から約258までを含有するアミノ酸配列また は抗原決定基を含有するそのサブ配列を有する 精製タンパク質。
  28. 【請求項28】 実質的に第7図に示されるアミノ酸約
    1から 約119までを含有するアミノ酸配列または抗 原決定基を含有するそのサブ配列を有する精製 タンパク質。
  29. 【請求項29】 実質的に第11図に示される成熟タン
    パク質 配列のアミノ酸約1から約119までを含有す るアミノ酸配列または抗原決定基を含有するそ のサブ配列を有する精製タンパク質。
  30. 【請求項30】 実質的に第2図に示されるマウスニュ
    ーロト ロフィン−3に関する核酸配列によりコードさ れるアミノ酸配列または機能的に活性なペプチ ドを含有するそのサブ配列を有する精製タンパ ク質。
  31. 【請求項31】 実質的に第7図に示されるラットニュ
    ーロト ロフィン−3に関する核酸配列によりコードさ れるアミノ酸配列または機能的に活性なペプチ ドを含有するそのサブ配列を有する精製タンパ ク質。
  32. 【請求項32】 実質的に第11図に示されるヒトニュ
    ーロト ロフィン−3に関する核酸配列によりコードさ れるアミノ酸配列または機能的に活性なペプチ ドを含有するそのサブ配列を有する精製タンパ ク質。
  33. 【請求項33】 実質的に第11図に示される成熟タン
    パク質 配列のアミノ酸約1から約119までを含有す るアミノ酸配列または機能的に活性なペプチド を含有するそのサブ配列を有する精製タンパク 質。
  34. 【請求項34】 請求項1記載のDNA分子を含有する
    組み換 え微生物を該DNA分子が微生物による発現さ れるように増殖させ;そして発現されたニュー ロトロフィン−3タンパク質またはそのフラグ メントを単離することからなる、ニューロトロ フィン−3タンパク質またはそのフラグメント の製法。
  35. 【請求項35】 請求項1または4記載のDNA分子を
    含有す る組み換え宿主を該DNA分子が微生物によっ て発現されるように増殖させ;そして発現され たニューロトロフィン−3タンパク質またはそ のフラグメントを単離することからなる、ニュ ーロトロフィン−3タンパク質またはそのフラ グメント製法。
  36. 【請求項36】 (a) 請求項15記載のDNA分子を
    含有する 組み換え宿主を該DNA分子がかかる微生 物により発現されるような条件の下に増殖 させ、そして、 (b) 発現されたニューロトロフィン−3タン パク質またはそのフラグメントを単離する ことからなる、ニューロトロフィン−3タ ンパク質またはそのフラグメントの製法。
  37. 【請求項37】 (a) 請求項16記載のDNA分子を
    含有する 組み換え宿主を該DNA分子が微生物によ り発現されるような条件下に増殖させ、そ して、 (b) 発現されたニューロトロフィン−3タン パク質またはそのフラグメントを単離する ことからなる、ニューロトロフィン−3タ ンパク質またはそのフラグメントの製法。
  38. 【請求項38】 宿主が真核生物細胞である請求項36
    記載の 方法。
  39. 【請求項39】 宿主がヒト以外のトランスジェニック
    動物で ある請求項36記載の方法。
  40. 【請求項40】 宿主が微生物である請求項36記載の
    方法。
  41. 【請求項41】 宿主が細菌である請求項40記載の方
    法。
  42. 【請求項42】 宿主が酵母である請求項40記載の方
    法。
  43. 【請求項43】 請求項35記載の方法による生産物。
  44. 【請求項44】 請求項36記載の方法による生産物。
  45. 【請求項45】 請求項37記載の方法による生産物。
  46. 【請求項46】 請求項38記載の方法による生産物。
  47. 【請求項47】 請求項39記載の方法による生産物。
  48. 【請求項48】 請求項40記載の方法による生産物。
  49. 【請求項49】 請求項41記載の方法による生産物。
  50. 【請求項50】 請求項42記載の方法による生産物。
  51. 【請求項51】 グリコシル化されていない請求項35
    記載の 生産物。
  52. 【請求項52】 グリコシル化されていない請求項36
    記載の 生産物。
  53. 【請求項53】 グリコシル化されていない請求項37
    記載の 生産物。
  54. 【請求項54】 グリコシル化されていない請求項38
    記載の 生産物。
  55. 【請求項55】 グリコシル化されていない請求項39
    記載の 生産物。
  56. 【請求項56】 グリコシル化されていない請求項40
    記載の 生産物。
  57. 【請求項57】 グリコシル化されていない請求項41
    記載の 生産物。
  58. 【請求項58】 グリコシル化されていない請求項42
    記載の 生産物。
  59. 【請求項59】 グリコシル化されている請求項35記
    載の生 産物。
  60. 【請求項60】 グリコシル化されている請求項36記
    載の生 産物。
  61. 【請求項61】 グリコシル化されている請求項37記
    載の生 産物。
  62. 【請求項62】 グリコシル化されている請求項38記
    載の生 産物。
  63. 【請求項63】 グリコシル化されている請求項39記
    載の生 産物。
  64. 【請求項64】 グリコシル化されている請求項40記
    載の生 産物。
  65. 【請求項65】 グリコシル化されている請求項41記
    載の生 産物。
  66. 【請求項66】 グリコシル化されている請求項42記
    載の生 産物。
  67. 【請求項67】 ニューロトロフィン−3タンパク質、
    そのペ プチドフラグメントまたは誘導体を認識する抗 体、抗体フラグメントまたはその誘導体。
  68. 【請求項68】 ニューロトロフィン−3タンパク質、
    そのフ ラグメント、または誘導体をコードする組み換 え核酸ベクターを発現する組み換え生物を増殖 させることにより生産されるニューロトロフィ ン−3タンパク質、そのペプチドフラグメント または誘導体を用いて宿主動物を免疫化するこ とからなる方法により生成されるものである請 求項67記載の抗体、抗体フラグメントまたは 誘導体。
  69. 【請求項69】 核酸ベクターが実質的に第2図に示さ
    れる核 酸配列またはそのサブ配列を含有する、請求項 68記載の抗体、抗体フラグメントまたは誘導 体。
  70. 【請求項70】 核酸ベクターが実質的に第7図に示さ
    れる核 酸配列またはそのサブ配列を含有する、請求項 68記載の抗体、抗体フラグメントまたは誘導 体。
  71. 【請求項71】 核酸ベクターが実質的に第11図に示
    される 核酸配列またはそのサブ配列を含有する、請求 項68記載の抗体、抗体フラグメントまたは誘 導体。
  72. 【請求項72】 (a)BDNF/NGF遺伝子ファミリ
    ーの二 つの異なった既知メンバーと相同の第1のアミ ノ酸配列、及び(b)(a)のBDNF/NGF遺 伝子ファミリーの二つの異なったメンバーと相 同でない第2のアミノ酸配列、を含有するタン パク質またはペプチドをコードする組み換えD NA分子。
  73. 【請求項73】 既知メンバーの一つがBDNFである
    請求項 72記載の組み換えDNA分子。
  74. 【請求項74】 既知メンバーの一つがNGFである請
    求項7 2記載の組み換えDNA分子。
  75. 【請求項75】 既知メンバーの一つがニューロトロフ
    ィン− 3である請求項72記載の組み換えDNA分子。
  76. 【請求項76】 (a)多様な核酸配列の中から、BDN
    F及び NGFの双方と相同な配列を選択し、そし て、 (b)(a)で選択された核酸配列の中からNG F及びBDNFと相同でない少なくとも約 6の連続したヌクレオチドからなる配列を 含有する配列を同定する、 ことからなる方法により単離される、請求項7 2記載の組み換えDNA分子。
  77. 【請求項77】 (a)の工程が、センス鎖プライマーが
    BDN F及びNGFの第1の相同DNA配列とハイブ リッド形成できそしてアンチセンス鎖オリゴヌ クレオチドプライマーがBDNF及びNGFの 第2の相同DNA配列とハイブリッド形成でき るように、BDNF及びNGF双方のDNAの 相同区域とハイブリッド形成し得る一対のオリ ゴヌクレオチドプライマーを使用するポリメラ ーゼ連鎖反応技術を用いるものである、請求項 76記載の組み換えDNA分子。
  78. 【請求項78】 (a)多様な核酸配列の中から、BDN
    F及び ニューロトロフィン−3の双方と相同な配 列を選択し、そして、 (b)(a)において選択された核酸配列の中か らBDNF及びニューロトロフィン−3と 相同でない少なくとも約6の連続したヌク レオチドの配列を含有する配列を同定する、 ことからなる方法により単離される、請求項7 2記載の組み換えDNA分子。
  79. 【請求項79】 (a)の工程が、センス鎖プライマーが
    BDNF 及びニューロトロフィン−3の第1の相同DN A配列とハイブリッド形成できそしてアンチセ ンス鎖オリゴヌクレオチドプライマーがBDN F及びニューロトロフィン−3の第2の相同D NA配列とハイブリッド形成し得るように、B DNF及びニューロトロフィン−3双方のDN Aの相同領域とハイブリッド形成し得る一対の オリゴヌクレオチドプライマーを使用するポリ メラーゼ連鎖反応技術を用いるものである、請 求項76記載の組み換えDNA分子。
  80. 【請求項80】 (a) 多様な核酸配列の中から、NG
    F及びニ ューロトロフィン−3の双方と相同な配列 を選択するし、そして、 (b) (a)において選択された核酸配列の中か らNGF及びニューロトロフィン−3と相 同でない少なくとも約6の連続したヌクレ オチドの配列を含有する配列を同定する、 ことからなる方法により単離される、請求項7 2記載の組み換えDNA分子。
  81. 【請求項81】 (a)の工程が、センス鎖プライマーが
    NGF及 びニューロトロフィン−3の第1の相同DNA 配列とハイブリッド形成できそしてアンチセン ス鎖オリゴヌクレオチドプライマーがNGF及 びニューロトロフィン−3の第2の相同DNA 配列とハイブリッド形成し得るように、NGF 及びニューロトロフィン−3双方のDNAの相 同領域とハイブリッド形成し得る一対のオリゴ ヌクレオチドプライマーを使用するポリメラー ゼ連鎖反応技術を用いるものである、請求項7 6記載の組み換えDNA分子。
  82. 【請求項82】 製剤上適する担体中の実質的に純粋な
    ニュー ロトロフィン−3タンパク質の有効量を含有す る医薬組成物。
  83. 【請求項83】 製剤上適する担体中の実質的に純粋
    な、機能 的に活性なニューロトロフィン−3ペプチドフ ラグメントまたは誘導体の有効量を含有する医 薬組成物。
  84. 【請求項84】 製剤上適する担体中の抗原決定基を担
    持する 実質的に純粋なニューロトロフィン−3ペプチ ドフラグメントまたは誘導体の有効量を含有す る医薬組成物。
  85. 【請求項85】 ニューロトロフィン−3ペプチドフラ
    グメン トまたは誘導体が、実質的に第2図に示される アミノ酸配列の少なくとも一部分を含有する、 請求項82、83または84記載の医薬組成物。
  86. 【請求項86】 ニューロトロフィン−3ペプチドフラ
    グメン トまたは誘導体が、実質的に第7図に示される アミノ酸配列の少なくとも一部分を含有する、 請求項82、83または84記載の医薬組成物。
  87. 【請求項87】 ニューロトロフィン−3ペプチドフラ
    グメン トまたは誘導体が、実質的に第11図に示され るアミノ酸配列の少なくとも一部分を含有する、 請求項82、83または84記載の医薬組成物。
  88. 【請求項88】 ニューロンの生存を高め得る、請求項
    87記 載の医薬組成物。
  89. 【請求項89】 ニューロンの成長を増進し得る、請求
    項87 記載の医薬組成物。
  90. 【請求項90】 分化した細胞機能を支援し得る、請求
    項87 記載の医薬組成物。
  91. 【請求項91】 タンパク質、ペプチドまたは誘導体が
    グリコ シル化されている、請求項87記載の医薬組成 物。
  92. 【請求項92】 タンパク質、ペプチドまたは誘導体が
    グリコ シル化されていない、請求項87記載の医薬組 成物。
  93. 【請求項93】 ニューロトロフィン−3タンパク質、
    そのペ プチドフラグメントまたは誘導体を認識する抗 体の有効量を含有する医薬組成物。
  94. 【請求項94】 実質的に純粋なニューロトロフィン−
    3タン パク質またはそのペプチドフラグメントまたは 誘導体と第2の薬剤との組合せ物の有効量を含 有する医薬組成物。
  95. 【請求項95】 第2の薬剤が神経成長因子である、請
    求項9 4記載の医薬組成物。
  96. 【請求項96】 第2の薬剤が脳由来神経栄養因子であ
    る、請 求項94記載の医薬組成物。
  97. 【請求項97】 第2の薬剤がBDNF/NGFファミ
    リーの 他のメンバーである、請求項94記載の医薬組 成物。
  98. 【請求項98】 請求項72、76、78または80記
    載の組 み換えDNA分子。によりコードされるタンパ ク質またはそのペプチドまたは誘導体の有効量 を含有する医薬組成物。
  99. 【請求項99】 (a) ハイブリダイゼーションが生じ
    得る条件 下で、実質的に第11図に示される少なく とも10個のヌクレオチドを含有する検出 可能に標識された核酸分子に組織を接触さ せ、そして、 (b) 生じたすべてのハイブリダイゼーション を検出する、 ことからなる神経系の疾患または障害の診断法。
  100. 【請求項100】 (a) ハイブリダイゼーションが生
    じ得る条件 下で、実質的に第11図に示される少なく とも10個のヌクレオチドを含有する検出 可能に標識された核酸分子に、組織から収 集したRNAを接触させ、そして、 (b) 生じたすべてのハイブリダイゼーション を検出する、 ことからなる神経系の疾患または障害の診断法。
  101. 【請求項101】 (a) ハイブリダイゼーションが生
    じ得る条件 下で、実質的に第11図に示される少なく とも10個のヌクレオチドを含有する検出 可能に標識された核酸分子に、組織から収 集したRNAから生成されたcDNAを接 触させ、そして、 (b) 生じたすべてのハイブリダイゼーション を検出する、 ことからなる神経系の疾患または障害の診断法。
  102. 【請求項102】 神経系の疾患または障害が腫瘍、変
    性性疾患 および感覚性ニューロン疾患からなる群から選 択される請求項99、100または101いず れかに記載の方法。
  103. 【請求項103】 (a) 結合が生じ得る条件下で、ニ
    ューロトロ フィン−3タンパク質またはそのペプチド フラグメントまたは誘導体を結合し得る検 出可能に標識された抗体分子に組成を露出 させ、そして、 (b) 生じたすべての結合を検出する、 ことからなる神経系の疾患または障害の診断法。
  104. 【請求項104】 インビボで実施される請求項103
    記載の方 法。
  105. 【請求項105】 インビトロで実施される請求項10
    3記載の 方法。
  106. 【請求項106】 神経系の疾患または障害が腫瘍、変
    性性疾患 および感覚性ニューロン疾患からなる群から選 択される請求項103記載の方法。
  107. 【請求項107】 有効量のニューロトロフィン−3タ
    ンパク質、 または機能的に活性なそのペプチドフラグメン トまたは誘導体を患者に投与することからなる、 神経系の疾患または障害の治療法。
  108. 【請求項108】 神経系の疾患または障害が変性性疾
    患である、 請求項107記載の方法。
  109. 【請求項109】 変性性疾患がアルツハイマー病、ハ
    ンチント ン舞踏病、多発性硬化症、および筋萎縮性側索 硬化症からなる群から選択される、請求項107 記載の方法。
  110. 【請求項110】 神経系の疾患または障害が神経系に
    対する損 傷からなる、請求項107記載の方法。
  111. 【請求項111】 損傷が抹消神経障害からなる、請求
    項110記 載の方法。
  112. 【請求項112】 損傷が糖尿病性神経障害からなる、
    請求項110 記載の方法。
  113. 【請求項113】 損傷がアルコール性神経障害からな
    る、請求 項110記載の方法。
  114. 【請求項114】 損傷が後天性免疫不全症候群関連神
    経障害か らなる、請求項110記載の方法。
  115. 【請求項115】 損傷が外傷、手術、梗塞、感染およ
    び悪性腫 瘍からなる群から選ばれる事象によって引き起 こされたものである、請求項110記載の方法。
  116. 【請求項116】 疾患または障害が有毒導剤への露出
    により惹 起されたものである、請求項110記載の方法。
  117. 【請求項117】 疾患または障害が栄養不全により惹
    起された ものである、請求項110記載の方法。
  118. 【請求項118】 障害が先天性障害により惹起された
    ものであ る、請求項107記載の方法。
  119. 【請求項119】 ニューロトロフィン−3タンパク
    質、または 機能的に活性なそのペプチドフラグメントまた は誘導体と第2の薬剤との組み合せ物の有効量 を投与することからなる、神経系の疾患または 障害の治療法。
  120. 【請求項120】 第2の薬剤が神経成長因子である、
    請求項1 19記載の方法。
  121. 【請求項121】 第2の薬剤が脳由来神経栄養因子で
    ある、請 求項119記載の方法。
  122. 【請求項122】 第2の薬剤がBDNF/NGFファ
    ミリーの 他のメンバーである、請求項119記載の方法。
  123. 【請求項123】 疾患または障害が変性性疾患であ
    る、請求項 119記載の方法。
  124. 【請求項124】 変性性疾患がアルツハイマー病、ハ
    ンチント ン舞踏病、およびパーキンソン病からなる群か ら選択される、請求項123記載の方法。
  125. 【請求項125】 疾患または障害が神経系への損傷か
    らなる、 請求項119記載の方法。
  126. 【請求項126】 障害が外傷、手術、梗塞、感染およ
    び悪性腫 瘍からなる群から選択される事象によって引き 起こされた損傷である、請求項125記載の方 法。
  127. 【請求項127】 疾患または障害が末梢神経障害から
    なる、請 求項119記載の方法。
  128. 【請求項128】 疾患または障害が先天性障害からな
    る、請求 項119記載の方法。
  129. 【請求項129】 (a) 多様な核酸配列の中から、B
    DNF及び NGFの双方と相同な配列を選択し、 (b) (a)において選択された核酸配列の中から NGF及びBDNFと相同でない少なくと も約6の連続したヌクレオチドの配列を含 有する配列を同定し、そして、 (c) (b)で同定された配列を単離する、 ことからなる、脳由来神経栄養因子/神経成長 因子遺伝子ファミリーのメンバーではあるが神 経成長因子も脳由来神経栄養因子もコードしな い遺伝子を単離する方法。
  130. 【請求項130】 (a)の工程が、センス鎖オリゴヌク
    レオチドプ ライマーがBDNF及びNGFの第1の相同D NA配列とハイブリッド形成できそしてアンチ センス鎖オリゴヌクレオチドプライマーがBD NF及びNGFの第2の相同DNA配列とハイ ブリッド形成し得るように、BDNFおよびN GFのDNAの同相領域とハイブリッド形成し 得る一対のオリゴヌクレオチドプライマーを使 用するポリメラーゼ連鎖反応技術を用いるもの である、請求項129記載の方法。
  131. 【請求項131】 (a) 多様な核酸配列の中から、B
    DNF及び ニューロトロフィン−3の双方と相同な配 列を選択し、 (b) (a)において選択された核酸配列の中から BDNF及びニューロトロフィン−3と相 同でない少なくとも約6の連続したヌクレ オチドの配列を含有する配列を同定し、 そして、 (c) (b)で同定された配列を単離する、 ことからなる脳由来神経栄養因子/神経成長因 子遺伝子ファミリーのメンバーではあるが神経 成長因子も脳由来神経栄養因子もコードしない 遺伝子を単離する方法。
  132. 【請求項132】 (a)の工程が、センス鎖オリゴヌク
    レオチドプ ライマーがBDNF及びニューロトロフィン− 3の第1の相同DNA配列とハイブリッド形成 できそしてアンチセンス鎖オリゴヌクレオチド プライマーがBDNF及びニューロトロフィン −3の第2の相同DNA配列とハイブリッド形 成し得るように、BDNF及びニューロトロフ ィン−3のDNAの相同領域とハイブリッド形 成し得る一対のオリゴヌクレオチドプライマー を使用するポリメラーゼ連鎖反応技術を用いる ものである、請求項131記載の方法。
  133. 【請求項133】 (a) 多様な核酸配列の中から、N
    GF及びニ ューロトロフィン−3の双方と相同な配列 を選択し、 (b) (a)で選択された核酸配列の中からNGF 及びニューロトロフィン−3と相同でない 少なくとも約6の連続したヌクレオチドの 配列を含有する配列を同定し、そして、 (c) (b)で同定された配列を単離する、 ことからなる、脳由来神経栄養因子/神経成長 因子遺伝子ファミリーのメンバーではあるが神 経成長因子も脳由来神経栄養因子もコードしな い遺伝子を単離する方法。
  134. 【請求項134】 (a)の工程が、センス鎖オリゴヌク
    レオチドプ ライマーがBDNF及びニューロトロフィン− 3の第1の相同DNA配列とハイブリッド形成 できそしてアンチセンス鎖オリゴヌクレオチド プライマーがBDNF及びニューロトロフィン −3の第2の相同DNA配列とハイブリッド形 成し得るように、NGF及びニューロトロフィ ン−3のDNAの相同領域とハイブリッド形成 し得る一対のオリゴヌクレオチドプライマーを 使用するポリメラーゼ連鎖反応技術を用いるも のである、請求項133記載の方法。
  135. 【請求項135】 ニューロトロフィン−3の長い前駆
    体形をコ ードするヌクレオチド配列を含んでなる、請求 項15記載の組み換えDNA分子。
  136. 【請求項136】 ニューロトロフィン−3の長い前駆
    体形をコ ードするヌクレオチド配列を含んでなる、請求 項16記載の組み換えDNA分子。
  137. 【請求項137】 疾患または障害がパーキンソン病で
    ある、請 求項107記載の方法。
  138. 【請求項138】 ドパーミン作動性ニューロンを有効
    濃度のニ ューロトロフィン−3に暴露することを包含す る、ドパーミン作動性ニューロンの生存を促進 する方法。
  139. 【請求項139】 有効量のNT-3をかかる治療を必要と
    する患者 に投与することを含有する、神経系発達の障害 を治療する方法。
  140. 【請求項140】 有効量のNT-3をかかる治療を必要と
    する患者 に投与することを包含する、神経系の悪性障害 を治療する方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06319549A (ja) * 1990-04-06 1994-11-22 Synergen Inc Ngf/bdnf群の神経栄養性タンパク質の生物学的 に活性な組み換え体の生産
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