JPH05150279A - 非線形光学素子 - Google Patents

非線形光学素子

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JPH05150279A
JPH05150279A JP369992A JP369992A JPH05150279A JP H05150279 A JPH05150279 A JP H05150279A JP 369992 A JP369992 A JP 369992A JP 369992 A JP369992 A JP 369992A JP H05150279 A JPH05150279 A JP H05150279A
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thin film
sno
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JP369992A
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English (en)
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Masasuke Takada
雅介 高田
Yuichi Watanabe
裕一 渡辺
Hiroshi Kawazoe
博司 川副
Hiroshi Uchikawa
浩 内川
Hirotaka Senba
裕隆 仙波
Yasuhisa Mihara
康央 三原
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Onoda Cement Co Ltd
Original Assignee
Onoda Cement Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】無機材料からなる薄膜を用いた実用的な非線形
光学素子であって、スイッチ及び光論理回路に適用でき
るものを提供する。 【構成】基板14上に金属層12、無機材料層11、金属層13
がこの順に形成されている。これによりファブリペロー
形光共振器構造の光論理回路が構成され、金属層12、13
が一対の半透明金属鏡に対応し、無機材料層11が非線形
光学素子に対応する。無機材料層11は、反転対称性を有
せずかつ光透過性を有する多結晶の薄膜で構成されてい
る。この光論理回路にレ−ザ光を入射すると、入射光強
度により無機材料層11の屈折率が変化する。出射するレ
−ザ光強度は、金属層12、13間での多重反射による光の
位相差によって変化し、この位相差が金属層12、13と無
機材料層11との間の屈折率差により決定されるため、入
射光強度によって光の透過、非透過が決定される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、三次非線形光学効果
に基づき、入射光強度に応じて材料または素子の電気感
受率が変化することを利用した非線形光学素子に関す
る。このような素子は、光スイッチ及び光論理回路等に
適用することができる。
【0002】
【従来の技術】情報処理関連技術ではシリコン系半導体
材料を用いた電気的な論理回路やスイッチ素子、記憶素
子が用いられている。しかし、取り扱う情報量の急激な
増加、及び高速大容量処理の要請により、従来の電気的
処理法では対応が困難になりつつある。このため既存の
上記機能素子よりも飛躍的に大容量、超高速で処理がで
きる新しい方法としてレーザー光を用いた光学機能素子
が注目されている。
【0003】このような光学機能素子では非線形光学効
果を利用している。すなわち入射レーザー光出力の増減
に伴い、素子を構成する母材料の光学的電気感受率が増
減する性質を利用し、母材料をファブリペロー型共振器
中に挿入することによって光論理回路を、また、母材料
を一対の偏光板で挾むことによって光スイッチ素子をそ
れぞれ構成している。
【0004】母材料としては(1)ポリジアセチレン系
有機材料、(2)半導体超格子系、(3)半導体超微粒
子含有ガラスの3種類がある。このうち(1)は、非共
鳴領域で比較的大きな非線形光学効果を有することで注
目されている。(2)は量子効果の1つである2次元電
子閉じ込めを利用し、共鳴領域で最大の非線形光学効果
を示すことで注目されている。(3)についても(2)
と同様に、量子効果の1つである0次元電子閉じ込めを
利用し、非晶質材料で比較的高効率な非線形光学効果を
示す。これらの材料を母体として前述のような素子を構
成することにより、光機能素子を実用化するための研究
開発が現在盛んに行なわれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
材料を用いて非線形光学素子を構成し、実用に供しよう
とする場合、以下に挙げる問題点が生ずる。まず、
(1)に挙げたポリマー系材料は、有機物であるため耐
熱性に劣ること、および表面仕上げの段階で光学グレー
ドの研磨技術が確立されていないことが問題となってい
る。(2)の半導体超格子材料は、その大きな非線形光
学効果を共鳴波長領域での分散効果によっている。した
がって、共鳴波長領域であるために必ず発生する熱によ
る繰り返し特性の劣化や応答時間の遅延化に問題があ
る。さらに作製法が複雑で、素子あたりの単価が高価な
点も憂慮される。(3)についても(2)と同様、共鳴
波長領域での使用に関して耐熱性、信頼性が問題とな
る。また、作製法、特に粒径の揃った半導体超微粒子を
均質にガラスマトリックス中に如何にして析出させるか
という点も基本的な問題となっている。
【0006】よって、非共鳴波長領域、すなわち熱発生
が起こらない波長領域において、高効率な非線形光学効
果を示し、しかも物理的及び化学的に安定な新材料の開
発が望まれるが、材料設計の指針が未確立であるため、
このような材料がほとんど開発されていないのが現状で
ある。
【0007】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
であって、無機材料からなる薄膜を用いた実用的な非線
形光学素子を提供することを目的とする。
【0008】
【問題点を解決するための手段および作用】この発明に
係る非線形光学素子は、反転対称性を有しない無機材料
で構成され、かつ光透過性を有する多結晶薄膜からなる
ことを特徴とする。
【0009】このような素子は、反転対称性を有しない
から三次非線形光学効果が顕著に現れ、また多結晶であ
るから単結晶のような製造上の困難性を伴わず、かつガ
ラスよりも非線形性が大きい。さらに、無機材料で構成
されているから耐熱性が良好であると共に非線形光学効
果発現の波長領域を非光吸収領域に設定することができ
る。そして、光論理回路及び光スイッチへの適用を考慮
すると光透過性を有する薄膜であることが必須となる。
【0010】本願発明者らは、ファブリペロー型共振器
中又は一対の偏光板の間に挿入され、光論理回路及び光
スイッチに適用可能な非線形光学素子の材料選択を、以
下に述べる材料設計指針に基づいて行った。
【0011】従来の高効率非線形光学材料の選択におい
ては、n次非線形光学効果が線形光学効果の大きさのn
乗に比例して増大するという見地から、線形光学効果の
大きい材料が対象となっていた。理論的見地から線形光
学効果の大きい条件として、(1)光学バンドギャップ
が小さいこと、及び(2)光学遷移に伴う双極子モーメ
ントが大きいことが挙げられる。このうち、(1)の視
点は従来より注目されていたものであるが、前述したよ
うにバンドギャップを挟小化すると光吸収に伴う熱発生
を避けることができない。そこで、バンドギャップが比
較的大きいもののうち、(2)の条件に適合し、非線形
光学効果が顕著になるものを以下に述べる理論的視点か
ら探索した。
【0012】光学遷移に伴う双極子モーメントの大きさ
は、物質の電子構造に強く依存する。特に価電子帯また
は伝導帯における自由キャリアの移動度が大きいほど、
光学遷移に伴う双極子モーメントが大きくなると考えら
れる。これは量子論における光学遷移に伴う双極子モー
メントの理論的記述と電気伝導度に対する同様な記述に
一致が見い出されたためである。さらに物質の電子構造
に対する発明者らの知識の蓄積から、以下に列挙する物
質群が、大きな光学遷移に伴う双極子モーメントを有す
ることになる。
【0013】(1) 価電子帯及び伝導帯のいずれかが
カチオンのs軌道を含む結合性軌道からなるもの。
【0014】(2) 価電子帯及び伝導帯がいずれもカ
チオン及びアニオンのp軌道からなり、価電子帯はアニ
オンの非結合性軌道から、伝導帯は反結合性軌道からな
るもの。
【0015】(3) 価電子帯及び伝導帯がいずれもカ
チオンのd軌道及びアニオンのp軌道で構成され、d−
pπ結合および反結合性軌道からなるもの。
【0016】具体的には、(1)に属する物質群の例と
してSnO2 及びSnOが、(2)に属する例としてT
eO2 が、(3)に属する例としてTiO2 が、それぞ
れ挙げられる。これらの物質群はSnOを除いて可視光
から近赤外光領域にかけて光吸収を示さないため、これ
らを用いて非線形光学素子を構成した場合、熱的耐久性
の向上や高速応答性を実現することが可能である。
【0017】このような素子を構成する無機材料として
は、上述のSnO2、SnO、TeO2 、TiO2
他、CaF2 、SiO2 、Al2 3 、MgO、Y2
3 、In2 3 、ZrO2 、ZnO、Ta2 5 、Sb
2 3 、Bi2 3 、CeO2 、PbO、ZnS、Cd
S、ZnSe、Sb2 3 等が挙げられる。
【0018】また、本願発明者らの研究によれば、Sn
2 −TiO2 固溶体系、SnO2 −SnO固溶体系、
SnO2 −SnO混合体系も、上記材料と同様、反転対
称性を有しない無機材料で構成され、かつ光透過性を有
するという条件を満たし、大きな三次非線形性を示すこ
とを見出した。従って、これらの材料についても本発明
の非線形光学素子として適用することが可能である。こ
こで、SnO2 とTiO2 との固溶体はSnx Ti1-x
2 で表わすことができ、xの値は0<x<1である。
また、SnO2 とSnOとの固溶体はSnOy で表わす
ことができ、1.0<y<2.0である。さらに、Sn
2 とSnOとの混合体は、これらがいかなる割合で混
合されていてもよい。これらの材料も可視光から近赤外
光領域にかけて光吸収を示さないため、熱的耐久性の向
上や高速応答性を実現することが可能である。
【0019】さらに、伝導帯がカチオンのs軌道を含む
結合性軌道からなり、かつ、価電子帯がアニオンのp軌
道からなるものも、大きな光学遷移に伴う双極子モーメ
ントを有し、上記条件に合致する。この場合に、伝導帯
を形成するカチオンのs軌道が非極在化しているもので
あってもよい。このような物質としてはスピネル構造を
有するものが挙げられ、具体的にはMgAl2 4、L
4/3 Ti5/3 4 等が挙げられる。これらも可視光か
ら近赤外光領域にかけて光吸収を示さないため、熱的耐
久性の向上や高速応答性を実現することが可能である。
【0020】なお、この発明に係る非線形光学素子はス
パッタリング又は蒸着法で形成されることが好ましい。
【0021】次に、本発明に係る非線形光学素子を利用
した光論理回路及び光スイッチの原理についてそれぞれ
図1及び図2を参照しながら説明する。
【0022】図1は、前述の物質群に属する材料の両面
に半透明鏡を設けたファブリ−ペロ−型共振器構造を有
する光論理回路を示す模式図である。半透明金属鏡2,
3のいずれかの側からレ−ザ−光を入射させ、本発明に
係る非線形光学素子1を通過させて他の金属鏡の面から
出射する光をフオトダイオ−ド等で検出する。このと
き、入射レーザー光の強度により、金属鏡間に挿入され
た素子の屈折率が変化する。出射するレーザ光の強度
は、金属鏡間での多重反射による光の位相差によって変
化し、この位相差が2つの金属鏡間に挿入された材料の
屈折率差により決定されるため、入射レーザ光強度の多
寡により光が透過する場合と透過しない場合が生じ、一
種の論理回路を形成する。
【0023】図2は、本発明に係る非線形光学素子1の
両側に偏光板4,5を配置した構造を有する光スイッチ
を示す模式図である。2つの偏光板4,5は直交配置を
とり、この状態では検出光は本素子を透過しない。この
状態でスイッチ光6を入射すると素子1の非線形光学特
性によって、複屈折が誘起され、検出光の一部が素子を
透過する。すなわち、スイッチ光のオンオフによって検
出光が透過、不透過の状態をとる一種のスイッチ回路を
形成する。
【0024】このように本発明では、非線形光学素子の
材料として、物理的化学的に安定な無機非単結晶材料を
用い、さらに非線形光学効果発現の波長領域を非光吸収
領域に設定することにより、熱的耐久性が大きく、応答
速度もより高速な光論理回路および光スイッチを提供す
ることができる。
【0025】
【実施例】以下、本発明の実施例について詳細に説明す
る。
【0026】図3は、本発明の実施例に係る非線形光学
素子を適用した光論理回路素子を示す断面図である。こ
の光論理回路素子は、一対の半透明金属鏡に対応する金
属層12、13が、本発明の非線形光学素子としての無
機材料層11を挾んだ、いわゆるファブリペロー形光共
振器構造をもっている。これらの層は、シリカガラス等
で構成された基板14上に、一般的な薄膜形成技術、好
ましくはスパッタリングにより形成される。
【0027】各層の厚みは、例えば、無機材料層11が
1μm 、金属層12、13が0.1μm であり、全体の
厚みは1.2μm 程度となる。
【0028】無機材料層11を構成する母材としては、
前述の材料設計指針に基づき、SnO2 、SnO、Ti
2 、TeO2 等を主体としたものが好適である。ま
た、SnO2 −TiO2 固溶体系、SnO2 −SnO固
溶体系、SnO2 −SnO混合体系の材料も好適であ
る。さらに、MgAl2 4 、Li4/3 Ti5/3 4
のスピネル構造を有する材料も好適である。金属層1
2、13を構成する材料としては、金、銀、アルミニウ
ム等が好適である。
【0029】この構造を持つ素子にレーザー光を照射す
ると、次式にしたがって非線形光学材料層の屈折率が、
レーザー光強度と共に変化する。
【0030】 n=n0 +n2 |E|2 2 =0.5×χ(3) ×{1+χ(1) -1/2 (1) ここで、|E|2 はレーザー光の電場強度、χ(1) は一
次非線形電気感受率、χ(3) は三次非線形電気感受率で
ある。共振器内部での多重反射を考慮すると、透過光は
次式で与えられる位相差δを持つことになる。
【0031】 δ=4πl/λ×(n0 +n2 ×|E|2 ) ここでlは非線形光学材料層の厚さ、λはレーザー光の
波長である。これを用いると透過光強度It は入射光強
度Ii と次の(2)式で結ばれる。
【0032】
【数1】 ここでTおよびRは非線形光学材料の振幅透過率および
振幅反射率である。この式におけるδと全透過率It
i との関係を図4に示す。図4より明らかなように、
全透過率は位相差δ、すなわち入射光強度に応じて増減
することがわかる。さらに(2)式を書き換えると、以
下の(3)式に示すようになる。
【0033】
【数2】 ただし δ0 =4πn0 l/λ γ =4πn2 l/λT この関係を図4に対応させて図示すると透過光強度It
が入射光強度Ii の関数として履歴現像を示すことが図
5より理解できる。すなわち、図4において(3)式の
関係を示す直線は、入力Ii が増すと共に勾配を減じ、
求める透過光出力It は図5のABCと漸増し、入力I
i がIcrに達すると出力It はCよりDに急増してその
後はDEと漸増する。逆に、入力Ii を減じてゆくとき
は、EDFと出力は漸増し、入力Ii がIs になると出
力It はFよりBに急激に減少し、その後はBAと漸減
する。このように透過光出力It が入力Ii の変化に対
して履歴現象を示すため、これを利用して一種の論理回
路を組むことができる。
【0034】次に、本発明に係る非線形光学素子を用い
た光論理回路を実際に作製して、履歴特性等を試験した
結果について説明する。
【0035】先ず、前述の指針に基づいて、SnO2
SnO、TiO2 、TeO2 、SnO2 −TiO2 固溶
体系、SnO2 −SnO固溶体系、SnO2 −SnO混
合体系、MgAl2 4 及びLi4/3 Ti5/3 4 の三
次非線形電気感受率を第三高調波発生法で評価した。r
fマグネトロンスパッタ装置を用いてシリカガラス上に
上記材料を厚さ1μm 程度堆積させ、評価に供した。結
果を表1に示す。
【0036】
【表1】 従来報告されている非単結晶の無機材料のχ(3) は、酸
化物ガラスで10-13 〜10-14 esu 、最大でもカルコ
ゲナイドガラスAs2 3 の2×10-12 esuである。
一方、表1の結果からこれらの材料は、可視光領域で透
明であるにもかかわらず、10-11 esu オ−ダ−と現時
点で最大のχ(3) を有していることになり、前述の材料
設計指針が実証的に確立されたといえる。
【0037】次に、上記材料の中からSnO2 、SnO
y (y=1.4)、及びMgAl2 4 を選択し、図3
に示す構造の光論理回路素子を作製して諸特性を評価し
た。
【0038】図6に評価測定系の配置を示す。ここでは
光論理回路素子20は、予め半透明鏡としてのAl層を
シリカガラス基板上に0.1μmの厚みで蒸着してお
き、その上にrfマグネトロンスパッタ装置を用いて本
発明に係る非線形光学素子としてのSnO2 層を1.0
μm 堆積させ、さらにその上に第二の半透明鏡としての
Al層を0.1μm の厚みで蒸着して3層構造に形成し
た。非線形光学素子としてSnOy (y=1.4)を用
いたもの、及びMgAl2 4 を用いたものも同様にし
て3層構造に形成した。このようにして得た光論理回路
素子20を図6の測定系の試料位置にセットした。Qス
イッチNd:YAGレ−ザ−21から発振された光をミ
ラ−22で反射させ、ビームスプリッターとしてのハ−
フミラ−23により2光路に分岐させ、その一方をさら
にミラ−24で反射させて測定光束として光論理回路素
子20に照射した。光論理回路素子20を透過した光の
強度はサーモパイル25によって測定した。一方、入射
光強度はハ−フミラ−23で分岐した他方の光の強度を
サーモパイル26で測定することによって得た。
【0039】このようにして得た素子の履歴特性を図7
に示す。入射光強度Ii の増加にともない、透過光強度
t は漸増し、Icrで急激にその強度を増す。逆にこの
状態から入射光強度を徐々に減じると、透過光強度は漸
減し、Is で急激にその強度を減ずる。IcrおよびIs
はそれぞれ2.1MW/cm2 、1.0MW/cm2 であり、応
答時間は数psecであった。この特性は、SnO2 、Sn
y (y=1.4)及びMgAl2 4 いずれもほぼ同
様であった。
【0040】この結果をふまえ、この発明に係る非線形
光学素子の論理回路への応用の一例として、メモリ−特
性を評価した。すなわち、図7に示された透過履歴を利
用し、情報の一時記憶を試みた。先ず初めに、保持又は
バイアス用の光照射によって、素子の透過率を双安定ル
−プの下枝にあるレベルAに置く。これに2.1MW/
cm2 以上の一時的な強いスイッチ光を照射することに
より透過率をレベルAからBに増大させた。スイッチ光
を取り除くと透過率はわずかに減少し、レベルCになっ
た。つまり、一連の操作により素子は双安定ル−プの下
枝から上枝へラッチされたことが確認された。また、こ
の高透過率状態から保持光を一時的に1.0MW/cm
2 以下に減ずると、透過率はDを経由した後Aに戻り、
ラッチはリセットされる。
【0041】以上の結果によって、本発明に係る非線形
光学素子が光論理回路として利用できることが確認され
た。
【0042】次に、本発明に係る非線形光学素子を使用
した光論理回路と他材料で同様な光論理回路を形成した
場合の諸特性を比較して表2にまとめて記す。
【0043】
【表2】 表2より明らかなように、本発明に係る非線形光学素子
を形成する材料は既存の材料と比較して、パワー密度の
点で一部の材料よりも不利ではあるが、総合的に評価し
た場合、すなわち性能指数では優れた特性を有すること
が確認された。
【0044】
【発明の効果】この発明によれば、無機材料からなる薄
膜を用いた実用的な非線形光学素子が提供される。この
非線形光学素子を用いることにより以下に列挙した特徴
を有する光論理回路及び光スイッチを提供することがで
きる。
【0045】1.物理的化学的に安定な無機非単結晶材
料であるため、熱的耐久性等が従来材料に比べて格段に
高い。
【0046】2.蒸着法、もしくはスパッタリング法に
よる一括連続作製が可能で、従来材料のような複雑かつ
高価な素子作製装置または技術を必要としない。
【0047】3.動作波長領域が、光吸収端より十分離
れた非共鳴領域であるため、繰り返し特性または素子と
しての信頼性が従来材料に比べて格段に高い。
【0048】4.3.に述べた理由により、応答時間が
psecオーダーと非常に速い。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る非線形光学素子を用いた光論理
回路の構造を示す模式図。
【図2】この発明に係る非線形光学素子を用いた光スイ
ッチの構造を示す模式図。
【図3】この発明の実施例に係る非線形光学素子を適用
した光論理回路の構造を示す断面図。
【図4】位相差と透過率との関係を示す図。
【図5】位相差と透過光強度との関係を示す図。
【図6】この発明の実施例に係る非線形光学素子を用い
た光論理回路素子の特性を把握するための測定系を示す
図。
【図7】この発明の実施例に係る非線形光学素子を用い
た光論理回路素子の特性を示す図。
【符号の説明】
1;非線形光学素子、2,3;半透明金属鏡、4,5;
偏光板、6;スイッチ光、11;無機材料層(非線形光
学素子)、12,13;金属層、14;基板。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 内川 浩 千葉県船橋市習志野台6の12の22 (72)発明者 仙波 裕隆 新潟県長岡市宮関2の6の3 ジユネパレ ス良102号室 (72)発明者 三原 康央 千葉県市川市原木3の1の6の503

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 反転対称性を有しない無機材料で構成さ
    れ、かつ光透過性を有する多結晶薄膜からなることを特
    徴とする非線形光学素子。
  2. 【請求項2】 前記薄膜を構成する無機材料は、価電子
    帯及び伝導帯のいずれかがカチオンのs軌道を含む結合
    性軌道からなる金属酸化物であることを特徴とする請求
    項1に記載の非線形光学素子。
  3. 【請求項3】 前記薄膜を構成する無機材料は、その価
    電子帯及び伝導帯のいずれもがカチオン及びアニオンの
    p軌道からなり、かつ、価電子帯がアニオンの非結合性
    軌道からなり、伝導帯が反結合性軌道からなることを特
    徴とする請求項1に記載の非線形光学素子。
  4. 【請求項4】 前記薄膜を構成する無機材料は、その価
    電子帯及び伝導帯のいずれもがカチオンのd軌道及びア
    ニオンのp軌道からなり、d−pπ結合及び反結合軌道
    からなる金属酸化物であることを特徴とする請求項1に
    記載の非線形光学素子。
  5. 【請求項5】 前記薄膜を構成する無機材料がSnO2
    又はSnOを主体とすることを特徴とする請求項1又は
    2に記載の非線形光学素子。
  6. 【請求項6】 前記薄膜を構成する無機材料がTeO2
    を主体とすることを特徴とする請求項1又は3に記載の
    非線形光学素子。
  7. 【請求項7】 前記薄膜を構成する無機材料がTiO2
    を主体とすることを特徴とする請求項1又は4に記載の
    非線形光学素子。
  8. 【請求項8】 前記薄膜を構成する無機材料がSnx
    1-x2 (ただし、0<x<1)で表わされるSnO
    2 とTiO2 との固溶体を主体とすることを特徴とする
    請求項1に記載の非線形光学素子。
  9. 【請求項9】 前記薄膜を構成する無機材料がSnOy
    (ただし、1.0<y<2.0)で表わされるSnO2
    とSnOとの固溶体を主体とすることを特徴とする請求
    項1に記載の非線形光学素子。
  10. 【請求項10】 前記薄膜を構成する無機材料がSnO
    2 とSnOとの混合体を主体とすることを特徴とする請
    求項1に記載の非線形光学素子。
  11. 【請求項11】 前記薄膜を構成する無機材料は、伝導
    帯がカチオンのs軌道を含む結合性軌道からなり、か
    つ、価電子帯がアニオンのp軌道からなる金属酸化物で
    あることを特徴とする請求項1に記載の非線形光学素
    子。
  12. 【請求項12】 前記薄膜を構成する無機材料におい
    て、伝導帯を形成するカチオンのs軌道が非極在化して
    いることを特徴とする請求項11に記載の非線形光学素
    子。
  13. 【請求項13】 前記薄膜を構成する無機材料がスピネ
    ル構造を有することを特徴とする請求項1、11及び1
    2いずれか1項に記載の非線形光学素子。
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