JPH0418397Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、液中にガスを供給するのに用いられ
るガス吹込み器具及び該器具を備えた培養装置に
関し、更に詳述すると液中に溶け易い非常に細か
い気泡を均一に与えることができ、少ない通気量
で有効なガスの供給を行ない得るガス吹込み機構
及び培養器具に関する。

従来の技術 微生物を利用した化学反応として代表的なもの
に発酵が挙げられ、この発酵の工業的利用として
は、各種酒類、酢、味醂、味噌、醤油などの食品
の製造から抗生物質、制癌剤などの医薬品の製造
まで多岐にわたつている。発酵工業の製品はこの
ように多種類であるが、その製法は微生物の種類
を変えることにより発酵槽（培養槽）という同じ
設備で種々のものを製造し得るという特徴があ
る。

この培養槽としては、数リツトル乃至数十リツ
トルの実験室内で用いるようなものから数十キロ
リツトル又はそれ以上の容量を持つ工業的なもの
まであるが、いずれも攪拌機及び空気吹き込み用
スパージヤーを有し、槽内の培養液に空気を吹込
みながら攪拌を行ない、培養液に空気（酸素）を
供給しながら培養を行なう通気攪拌液内培養法を
採つているのがほとんどである。

従来、この培養槽は、第５図に示したような構
成となつている。即ち、ガラス又はステンレス鋼
製の槽ａを攪拌機ｂ、空気吹込み用スパージヤー
ｃ、接種孔ｄ、試料採取管ｅ及び空気出口孔ｆな
どを備えた蓋体ｇで密閉し、下部の支持台ｈにボ
ルトｉで固定したものである。なお、図中ｊは空
気入口、ｋは攪拌羽、ｌは攪拌羽ｋを回転させる
動力用モータである。この培養槽は槽ａ内を培養
液で満たし、接種孔ｄから微生物を接種し、エア
ーコンプレツサー等を用いて空気入口ｊから空気
吹込み用スパージヤーｃを通して槽ａ内にその下
部から空気を送ると共に、攪拌機ｂにより培養液
を攪拌してスパージヤーｃから出てくる空気を培
養液中に溶かし、培養液に空気（酸素）を供給し
ながら微生物を培養し、目的生産物を製造するも
のであり、この培養法では培養液に十分かつ安定
した空気（酸素）を供給することが重要である。

この培養槽において、培養液に空気を分散する
装置であるスパージヤーｃとしては、従来単に水
平管に空気吹き出し穴を複数個あけたものや、こ
の水平管の空気吹き出し穴の周囲をガラス等から
なる多孔質板で覆い、該多孔質板を通して空気を
送り出すものなどが用いられている。

考案が解決しようとする課題 しかし、これらのスパージヤーで空気を培養液
中に吹込む場合、特に単に水平管に穴をあけたも
のを用いて培養液中に空気を吹込む場合、その空
気は非常に大きな気泡となつてしまい、培養槽内
に吹込まれた空気の大部分が培養液に溶けずに空
気出口孔ｆより培養槽外に排出されていしまう。
このため、微生物培養に必要な量の空気を吹込ま
なくてはならず、また少しでも多くの空気を培養
液中へ溶かし込むため、及び培養液中に溶かし込
まれた空気を均一に分散させるために攪拌機ｂを
高速で回転させなければならない。また、一般的
に発酵などの微生物を利用する化学反応はある程
度の時間を要するのが普通であり、このためエア
ーコンプレツサー等で長期間多量に空気を送るこ
と、及び攪拌機を長期間高速で回転させなくては
ならないということは、コスト上大きな問題とな
つている。また、上記したガラス等の多孔質板で
空気吹出し管を覆つてその多孔質体を通して空気
を吹込むようにしたスパージヤーを用いることに
より、培養液に与える気泡を幾分小さくすること
ができるが、このスパージヤーによつては気泡を
培養液全体に均一に分散させることができず、分
散を均一にするためにはやはり攪拌機を高速で回
転させなくてはならず、また気泡の大きさも満足
し得るものではなく、上記問題を解決するには至
つていない。

本考案は、上記事情に鑑みなされたもので、液
中に溶け易い非常に細かい気泡を均一に与えるこ
とができ、少ない通気量で有効にガスを供給する
ことができるガス吹き込み器具及び該機構を備え
た培養装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段及び作用 本考案は、上記目的を達成するための、液槽中
の液体にガスを分散、供給するガス吹込み器具で
あつて、平板状多孔質板の下面に中央部に透孔を
有するパツキンを介して中央部にガス注入孔を有
する当て板を上記透孔と注入孔とを互に連通させ
た状態で重ね合わせたガス分散体を具備してな
り、上記ガス分散体のガス注入孔及び透孔を順次
通して上記多孔質板内にガスを注入し、このガス
を多孔質板上面から噴出させるように構成したこ
とを特徴とするガス吹込み器具、並びに培養槽の
下部に上記ガス吹込み器具を配設してない、この
ガス吹込み器具により培養槽中の培養液にガスを
分散供給するようにしたことを特徴とする培養装
置を提供するものである。

即ち、本考案者は、細かい気泡を均一に液中に
供給することを目的として、アルミナ焼結体やス
テンレス焼結体等からなる平板状多孔質板の下面
からこの多孔質板内にガスを注入し、多孔質板上
面からガスを噴出させることを試みたが、単に平
板状の多孔質板の下面からガスを注入し、上面か
ら噴出させた場合、上面全面から均一にガスを噴
出させることができず、下面前面から注入された
ガスは多孔質板の上面周縁部近傍付近から集中し
て噴出され、液体中に噴出させた場合、気泡自体
も大きなものとなつてしまう。これに対し、本考
案者は鋭意検討を行なつた結果、平板状の多孔質
板の下面に中央部に孔を有する当て板を中央部に
孔が形成されたパツキンを介して重ね合わせ、当
て板及びパツキンの孔を通してガスを多孔質板の
中央部から注入することにより上面全面より均一
にガスを噴出させることができると共に、多孔質
板下面中央部より注入されたガスは多孔質板中に
均一に分散されるため、上面より噴出されるガス
は液体中に噴出させた場合非常に細かい気泡とな
ることを見い出し、本考案を完成するに至つたも
のである。

以下、本考案につき更に詳しく説明する。

本考案のガス吹込み器具は、第１図に示すよう
に平板状多孔質板１の下面に中央部に透孔２を有
するパツキン３を介して中央部にガス注入孔４を
有する当て板５を上記透孔２と注入孔４とを互に
連通させた状態で重ね合わせてなるガス分散体６
を具備するものであり、この分散体６のガス注入
孔４を通して多孔質板１にその下面１ａ中央部か
らガスを注入し、該多孔質板の上面１ｂ全面から
ガスを均一に噴出させるものである。

ここで、多孔質板としては、特に制限されるも
のではなく、種々のものを使用し得るが、好適な
ものとしてはガラス、ステンレス鋼及びアルミナ
の焼結体などを挙げることができ、中でもアルミ
ナの焼結体が特に好ましく、アルミナの焼結体か
らなる多孔質板を用いることにより、より細かい
気泡を与えることができる。この場合、アルミナ
焼結体としては内部連通空間の孔径が0.01〜0.5μ
ｍ、特に0.1μｍ程度のものが好ましい。

また、パツキンとしてはゴム等からなるもの、
当て板としてはステンレス鋼等からなるものが好
ましく使用される。なお、上記多孔質板とパツキ
ン、及びパツキンと当て板とは互に気密に圧接さ
せることが好ましい。

上記ガス分散体の形状、寸法に制限はなく、使
用目的等に応じて適宜の形状、寸法に設定するこ
とができるが、多孔質板、パツキン及び当て板を
互に同径の円形にし、透孔及びガス注入孔も円形
とすることが気泡を均一に発生させる点で望まし
い。この場合、当て板の注入孔の径は多孔質板の
径の１／100〜10／100、特に３／100〜５／100程
度、パツキンの透孔の径は多孔質板の径の１／
100〜10／100、特に３／100〜５／100程度とする
ことが好ましい。なお、当て板の注入孔とパツキ
ンの透孔とは同径に、或いは当て板の注入孔をパ
ツキンの透孔よりやや小径に形成することが望ま
しい。

また、本考案ガス吹込み器具を構成する上記ガ
ス分散体の多孔質板に注入孔を通してガスを注入
し、その上方から噴出させる手段に限定はない
が、例えば後述する第２図に示すようにロート上
容器の上端開口部を上記ガス分散体で閉塞すると
共に、上記容器内にエアコンプレツサー等で加圧
ガスを導入する方法等が好適に採用される。

上述したように、本考案のガス吹込み器具は、
液体に溶け易い非常に細かい気泡を均一に与える
ことができるものであり、この器具を培養槽のガ
ス吹込み器具として採用することにより、培養液
への効率の良いガス供給が達成され、上述した従
来の培養槽が持つような問題点を解決することが
できる。この場合、本器具は培養槽のなるべく下
部に設けることが好ましく、特に培養槽の底壁と
して又は底壁の一部として上記多孔質板を用いて
本器具及び装置を構成することにより、培養液の
最下層からガスを分散させることができ、より一
層効果的にガスの供給を行ない得る。

次に、実施例を示し、本考案を具体的に説明す
るが、本考案は下記実施例に限定されるものでは
ない。

〔実施例〕

第２図乃至第４図は、本考案培養装置の一実施
例を示すもので、この培養装置は発酵等の微生物
を利用した化学反応を進行させるのに好適に用い
られる。

第２〜４図中７は培養槽で、この培養槽７は蓋
体８、培養筒９、下部フラスコ１０からなり、培
養筒９を下部フラスコ１０と蓋体８とで上下から
密閉し、８本の締付ボルト１１で締付ることによ
り、下部フラスコ１０と蓋体８との間に培養筒９
を液密に固定してなるものである。

上記蓋体８は接種口１２、攪拌棒１３が軸支さ
れた攪拌軸受１４、電極口１５，１５及び空気出
口孔１６を有し、その周縁部にはそれぞれ等間隔
離間して締付ボルト１１が挿通される８個のボル
ト挿通孔１６が周方向に沿つて穿設されている。
なお、攪拌棒１３の回転軸には攪拌羽１７，１７
が固定されている。また、接種口１２は蓋体１８
で閉塞され電極口１５，１５はウレタンゴム製の
キヤツプ１９，１９で閉塞されている。

下部フラスコ１０は、深皿状基体２０の開口部
にリング状鍔部２１を一体に突設すると共に、基
体２０の底壁２２の中央部に略ロート状凹部２３
を設けたもので、更に底壁２２には４本の脚体２
４，２４，２４，２４（２本は図示せず）が固定
されている。なお、上記リング状鍔部２１には周
方向に沿つて互に等間隔離間して締付ボルト１１
が挿通される８個のボルト挿通孔２５が穿設され
ている。

上記略ロート状凹部２３は、その上部開口部
を、アルミナの焼結体よりなる円板状の孔質板１
の下面に中央部にガス注入孔４を有する当て板５
を中央部に上記ガス注入孔４と同径の透孔２を有
するパツキン３を介して重ね合わせた本考案ガス
分散体６で閉塞されている。また、この凹部２３
の底壁２６中央部にはガス吹入孔２７が穿設さ
れ、この吹込孔２７にはガス吹入ノズル２８が連
結されている。

更に、下部フラスコ４には、センサー取付け口
２９，２９，２９，２９が形成されており、この
センサー取付け口２９，２９，２９，２９はそれ
ぞれウレタンゴム製のキヤツプ３０，３０，３
０，３０で閉塞されている。

培養筒９は、上記下部フラスコ１０の深皿状基
体２０と同径に構成されている。この培養筒９
は、上記蓋体８と下部フラスコ１０との間に同径
のリング状パツキン３１，３１を、介して挟持さ
れ、蓋体８のボルト挿通孔１６と下部フラスコ１
０のボルト挿通孔２５との間に８本のボルト１１
を配置し、ナツト３２で締付けて固定することに
より、培養筒９と下部フラスコ１０とからなる培
養槽７が形成されている。

次に、上記培養槽７を用いて微生物を培養する
方法につき説明すると、まず攪拌棒１３にモータ
ーなどの動力源を、及びガス吹入ノズル２８にエ
アコンプレツサー等のエアー供給機をそれぞれ連
結し、更に必要により電極口１５，１５に消泡用
電極等の電極を、またセンサー取付け口２９，２
９，２９，２９にpHセンサー、温度センサー、
溶存酸素センサー等の各種センサーを装着する。
ここで、使用しない電極口１５及びセンサー取付
け口２９はそれぞれキヤツプ１９，３０によつて
閉塞しておく。

次に、培養槽７を培養液で満たし、接種口１２
から微生物を接種し、蓋体１８で接種口１２を閉
塞したのち上記エアー供給機からガス吹入ノズル
２８、ロート状凹部２３、ガス注入孔４を順次通
して多孔質板１へ、その下面中央部より空気を注
入し、該多孔質板１の上面全面より空気を噴出さ
せ、培養槽７内に収容された培養液中に空気を分
散、供給すると共に、モーター等により攪拌棒１
３を回転させ、その攪拌棒１３に備えられた攪拌
羽１７，１７によつて培養液を攪拌しながら微生
物の培養を行なう。この際、培養液の温度、pH
及び溶存酸素濃度は上記センサーによつてチエツ
クされ、それによつて空気吹込量を調節する。ま
た、空気の供給及び攪拌操作などのために培養液
が発泡して培養の進行が妨げられるような場合に
は、上記消泡用電極により消泡させることができ
る。

本例の培養槽は、上述したように空気吹込み装
置が培養槽の底壁（下部フラスコ１０の底壁２
２）に配設された円板状のアルミナの焼結体から
なる多孔質板１の下面中央部より空気を注入し
て、該多孔質板の上面全面から空気を噴出させる
ように構成されているため、培養液に溶け易い非
常に細かい気泡を培養槽７の底壁（底壁２２）よ
り、即ち培養液の最下層から均一に与えることが
でき、このため効率よく培養液に空気の供給を行
なうことができる。従つて、従来の空気吹込み装
置を用いた培養槽により微生物を培養する場合の
ように多量の空気を吹込んだり、攪拌羽を高速で
回転させる必要がなく、特に培養の進行が遅く、
長期間空気の供給を必要とする場合は、そのコス
ト上のメリツトは大である。

なお、本実施例は微生物培養槽として構成した
が、本考案のガス吹込み器具はこれに限定され
ず、液体にガスを吹き込む装置であればいかなる
ものにも使用し得る。また、本実施例では空気を
吹込む機構としたが、本器具を用いて窒素ガス、
酸素ガスまたは有機ガスなどを吹き込むこともで
き、更にガス分散体の形状、ガス分散体へのガス
の注入方法等も上記実施例に制限されず、本考案
の要旨の範囲内で種々変更しても差支えない。な
おまた、培養装置の構成も上記実施例に限定され
ず、使用目的等に応じて種々の構成とすることが
できる。

考案の効果 以上説明したように、本考案のガス吹込み器具
によれば、液体に溶け易い非常に細かい気泡を均
一に与えることができ、少ない通気量で液体中に
有効なガスの供給を行なうことができる。

従つて、上記ガス吹込み器具を備えた本考案培
養装置は、従来の培養装置のように多量のガスを
吹込んだり培養液を激しく攪拌する必要がなく、
効率良く培養液にガスを供給し得るので、攪拌用
モーターや空気供給用エアーコンプレツサー等の
動力を著しく低減することができ、従つて特に培
養の進行に時間がかかるような場合には、そのコ
スト上のメリツトは大である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案のガス吹込み器具を構成するガ
ス分散体の一例を示す断面図、第２図及び第３図
は、本考案の一実施例に係る培養槽を示し、第２
図は断面図、第３図は上面図、第４図は同培養槽
を構成する下部フラスコ部分を示す上面図、第５
図は従来の培養槽を示す概略断面図である。 １……多孔質板、２……透孔、３……パツキ
ン、４……ガス注入孔、５……当て板、６……ガ
ス分散体、７……培養槽。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 液槽中の液体にガスを分散、供給するガス吹
   き込み器具であつて、平板状多孔質板の下面に
   中央部に透孔を有するパツキンを介して中央部
   にガス注入孔を有する当て板を上記透孔と注入
   孔とを互いに連通させた状態で重ね合わせたガ
   ス分散体を具備してなり、上記ガス分散体のガ
   ス注入孔及び透孔を順次通して上記多孔質板内
   にガスを注入し、このガスを多孔質板上面から
   噴出させるように構成したことを特徴とするガ
   ス吹込み器具。 ２ 培養槽の下部に請求項第１記載のガス吹き込
   み器具を配設してなり、このガス吹込み器具に
   より培養槽中の培養液にガスを分散、供給する
   ようにしたことを特徴とする培養装置。