JPH028121B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はスクロール機構を用いた内燃機関に関
するものである。

従来から、容積型の内燃機関としては、往復動
式或はロータリー式のものが専ら用いられている
が、此等の機関は吸気、圧縮と、着火、膨脹の作
用が同一のチヤンバー内で行われるのが特色であ
る。これは、一見、合理的に見えるが、ピストン
の行程容積が、圧縮の場合も膨張の場合も同じで
あるため、特に着火後の膨張工程において、シリ
ンダ内の高温高圧ガスが、十分に大気圧近くまで
膨張し切らないうちにピストンは下死点に達し、
そのため、まだ圧力の高いガスが機外に放出され
る事になる。これは、機関の行程容積が、一定で
ある為に生ずる現象で、本来、圧縮ガスの体積と
燃焼ガスの体積は異なるにも拘らず、同じ容積の
空間内で作動させる為に、燃焼ガスの方はまだ作
動圧力を残した時点で排気弁が開き、大気中に無
駄にエネルギを放出することになる。

この関係を機関の気筒容積と内圧の変化で表わ
したものが第１図に示す所の圧力−容積線図（ｐ
−ｖ線図又はインジケータ線図とも呼ばれてい
る）である。図は一般に用いられている電気着火
のガソリンエンジンの場合で、オツト−サイクル
と呼ばれているものの説明図である。ａの状態ま
で気筒に吸込まれた混合気はｂ点まで圧縮され、
ここで着火されて気筒内の圧力はｃ点まで急激に
上昇する。そしてピストンを押し下げ乍ら膨張し
てｄ点に達する。この点では、図の如く、まだ大
気圧よりも高い圧力状態にあるにも拘らず、ピス
トンはこれ以上後退せぬため、ｄ点から大気圧に
向つてそのまま放出される事になる。そのため前
述の如く、無駄にエネルギを放出するという欠点
を有するものであつた。

発明者らは、従来のもののこのような欠点を除
くため研究を重ね、ｄ点のガスが更に膨張し続け
る事が出来れば、そのまま図のｅ点まで達して大
気に放出されるので、面積deaの分だけ機関の行
う仕事量は増える、ということに着目し上記の研
究の折に得られた知見に基づき本発明がなされ
た。

本発明の目的は、従来の内燃機関、とくに往復
動式、ロータリー式等の容積型内燃機関の基本的
な欠点を除き、燃焼ガスのエネルギーを有効に利
用して従来よりも高効率の内燃機関を提供する事
にある。

本発明の他の目的は、従来の容積型内燃機関に
比し、相対的に軽量小型で、且つ摺動磨耗部分の
磨耗量の少い長寿命の内燃機関を提供する事にあ
る。

本発明は、相対的に並進円運動を行なう２枚の
渦巻状スクロール羽根より成るスクロール機構を
２組備え、第一のスクロール機構を圧縮作用を行
なうよう構成して圧縮部となし、第二のスクロー
ル機構を膨張作用を行なうよう構成して膨張部と
なし、前記圧縮部の圧縮比より前記膨張部の膨張
比を大きくとり、前記圧縮部と前記膨張部との作
動を連動せしめ、前記圧縮部の吐出口と前記膨張
部の吸込口とを連通し、前記圧縮部で圧縮された
燃料と空気との混合気を前記膨張部に導いて爆発
燃焼せしめ、前記膨張部より動力を取出すことを
特徴とする内燃機関である。

本発明は、圧縮部と膨張部とを分け、全く別の
行程容積を形成した事に大きな特長がある。これ
を達成する為に、所謂スクロール流体機械と呼ば
れている公知の機構を導入した。以下、図面につ
いて本発明の実施例を説明する。

第２図は、スクロール流体機械の動作原理の説
明図であつて、渦巻状の移動羽根７及び固定羽根
８が図のように噛み合つており、固定羽根８は固
定し、移動羽根７は固定羽根８と接触を保ち乍ら
相対運動を行うように形成されている。今図のａ
では、移動羽根７及び固定羽根８はＡ，Ｂ，Ｃ，
Ｄの４点で接触しており、斜線を施した空間に、
吸入ガスを閉じ込めた状態にある。ｂは移動羽根
７が、固定羽根８に対する相対姿勢を保ち乍ら反
時計方向に移動し、それにつれて、斜線空間が圧
縮された所を示す。接触点Ａ，Ｂ，Ｃ，Ｄは約
90°移動している。更にｃでは移動羽根７がａの
位置から大略180°移動した所にあり、斜線空間は
更に圧縮されている。そしてｄでは移動羽根７の
移動によつて斜線空間の吸入ガスは、紙面と直角
にあいた貫通孔１３へ圧縮ガスを送り出す。そし
て新たに渦巻状羽根の外周からガスを吸入しａの
状態に戻つて次のサイクルが始まる。ここで注意
すべき点はａの斜線部分の空間１４に対して丁度
軸対称の位置に全く同じ形状の空間１５が存在す
る事で、これも空間１４と同様の経過で中心部に
向つて圧縮され、空間１４，１５が同時に貫通孔
１３にガスを送り出すことになる。

以上はガス圧縮に対する説明であるが、このス
クロール機構を、逆に膨張機関として使用する事
が出来る。即ち、同じ第５図でｄの斜線部分のガ
スが、圧力を持つた燃焼ガスであるとすれば、図
のｄ→ｃ→ｂ→ａの経過を経てガスは膨張しなが
ら移動羽根７を動かし、外周部分から大気へ放出
される。この間に移動羽根７の動きによつて動力
を発生することが出来る。

このように、スクロール流体機械は、２枚の固
定及び可動の渦巻羽根を組み合せる事により、圧
縮作用又は膨張作用を行わせる事が出来るが、そ
の圧縮比即ちガスを取り込んだ時の容積と、これ
を吐出するときの容積の割合は、渦巻きの巻き数
によつて変る。これは、その逆の膨張比について
も全く同様である。第５図の場合は、移動羽根７
及び固定羽根８は、説明の便のため夫々約1.5巻
きで描かれているが、計算によれば、巻数３の場
合、圧縮比は約4.3、巻数を4.5にふやすと圧縮比
は約6.5となる。このように巻き数により、圧縮
又は膨張時の容積比を変える事が出来る特長を生
かして、以下に説明する内燃機関を構成すること
が出来る。

第３図は、本発明の実施例の機関の回転する主
軸１を含む断面図で、主軸１には大歯車２が取り
付けられており、小歯車３とかみ合つている。小
歯車３は偏心軸４に取りつけられているので、主
軸１の回転数よりも速い速度で偏心軸４が回転す
る。この偏心軸４には偏心カム５′が設けられて
いて、移動羽根鏡板５が接し、鏡板５は主軸１の
軸心ｃのまわりを並進円運動による移動運動する
ようになつている。６′は偏心カム５′のバランス
対策として設けた逆偏心カムで、バランスウエイ
ト６を偏心回転させるようにして、偏心軸４の高
速回転における動的釣り合いを保つている。

鏡板５の片面には、スクロール式圧縮用移動羽
根７が取り付けられ、固定羽根８とかみ合つてお
り、反対面には同じく膨張用移動羽根９が取り付
けられ、固定羽根１０とかみ合つている。両方の
固定羽根８，１０はケーシング１１に取りつけら
れており、移動及び固定羽根７，９の運動により
前述したスクロール流体機械の原理により移動及
び固定羽根７，８側は圧縮作用を行なう圧縮部、
移動及び固定羽根９，１０側は膨張作用を行う膨
張部となつている。これを軸方向から見るために
第１図のＡ−Ａ及びＢ−Ｂの面で切断した断面図
を夫々第４図、第５図に示す。即ち第４図は圧縮
機のスクロール羽根を表わし、第５図は膨張機の
スクロール羽根を表わす。又、第４図では、鏡板
５と、これとかみ合う偏心カム５′を有する偏心
軸４の状態をも示している。

第４図において、移動羽根７は鏡板５に取りつ
けられており、鏡板５には上下２ケ所に偏心カム
５′と滑合する案内５″が一体に設けられていて偏
心軸４の回転と共に偏心カム５′が振れ廻り、そ
の結果、案内５″を介して鏡板５が上下の方向を
保つたまま、中心軸ｃのまわりを旋回移動する。
第４図では、羽根７，８の巻き数はほぼ３となつ
ている。

第５図においては、移動羽根９が鏡板５に取り
つけられているので、５の旋回移動と共に移動羽
根９は固定羽根１０に対して相対運動を行い、ス
クロール機械を形成する。第５図では羽根９，１
０の巻き数はほぼ４ 1/4に描かれており、第４図
の移動及び固定羽根７，８の巻き数よりも多い点
と、渦巻き方向が反対になつている点が特長であ
る。

このような構造の流体機械に内燃機関の働きを
させるために、第３図に示すように鏡板５の中心
部に貫通孔１３を設け、又膨張機側固定鏡板１７
の中心部近辺に点火栓１２を設ける。この機構の
作用は次の通りである。

燃料と空気の混合気は、圧縮機側固定鏡板１６
の外周部にケーシング１１と共に形成された吸気
口から圧縮機吸込空間に吸引され、鏡板５が
第４図中心部に描いた矢印の方向に旋回運動を行
うと、移動及び固定羽根７，８の働きにより中心
部に向つて圧縮され、圧縮室に送り込まれる。
圧縮室は貫通孔１３を介して膨張側圧縮室′
とつながつているので、圧縮された混合気は膨張
側移動羽根９の偏心旋回に伴つて、移動羽根９と
固定羽根１０の接触により形成される閉込室に供
給される。その最内端部の閉込室が閉鎖された
直後の位相で点火栓１２に通電し、圧縮混合気に
点火し、これを爆発燃焼させる。これにより、燃
焼ガスは膨張機外周に向つて膨張し乍ら移動羽根
９を旋回させ、従つて鏡板５が偏心旋回し新たな
混合気を圧縮すると同時に偏心軸４、歯車３，２
を経て主軸１を回転せしめる。燃焼後の排気ガス
は、膨張機側外周室である排気空間を通つて固
定羽根鏡板１７に設けられた排気口から、機外
へ排出される。

尚、偏心軸４とケーシング１１の外周部に形成
される仕切室及び、歯車２，３を格納する歯車
室は、上述の混合気或は排気とは隔離されてお
り、若干の潤滑油を封入しておく事により、各部
の潤滑をはかる事が可能である。

このように、本発明の内燃機関においては、混
合気の圧縮機構と爆発燃焼ガスの膨張機構とが、
同一の鏡板の両面に背中合せに別々に設けられて
おり、気体の圧縮比と膨張比に合せて、夫々の機
構の寸法を任意に定める事が出来る。この事は、
前に述べた第１図のサイクル図で、圧縮機側は、
ａ→ｂまでの行程容積で設計し、膨張機側はｃ→
ｅの行程容積で設計する事が出来、従来のピスト
ン式などにみられるような圧縮、膨張が同一容積
比で作動するものに比べて、図の斜線を施した面
積の分だけ、燃焼ガスに余分の仕事を行わせる事
が出来、内燃機関の効率向上に寄与する所大であ
る。

本発明により、燃料を全く増加することなく仕
事量を増やし、仕事量当たりの燃料消費量を減少
し、高効率であり、軽量小型の内燃機関を提供す
ることができ、実用上極めて大なる効果を奏する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は内燃機関のｐ−ｖ線図、第２図はスク
ロール機構の説明図、第３図は本発明の実施例の
縦断面図、第４図及び第５図は第３図のそれぞれ
Ａ−Ａ線及びＢ−Ｂ線横断面図である。 １……主軸、２……大歯車、３……小歯車、４
……偏心軸、５……鏡板、５′……偏心カム、
５″……案内、６……バランスウエイト、６′……
逆偏心カム、７……移動羽根、８……固定羽根、
９……移動羽根、１０……固定羽根、１１……ケ
ーシング、１２……点火栓、１３……貫通孔、１
４……空間、１５……空間、１６……固定羽根鏡
板、１７……固定羽根鏡板、……吸入口、…
…吸入空間、……圧縮室、……閉込室、…
…排気空間、……排気口、……仕切室、…
…歯車室。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 相対的に並進円運動を行なう２枚の渦巻状ス
   クロール羽根より成るスクロール機構を２組備
   え、第一のスクロール機構を圧縮作用を行なうよ
   う構成して圧縮部となし、第二のスクロール機構
   を膨張作用を行なうよう構成して膨張部となし、
   前記圧縮部の圧縮比より前記膨張部の膨張比を大
   きくとり、前記圧縮部と前記膨張部との作動を連
   動せしめ、前記圧縮部の吐出口と前記膨張部の吸
   込口とを連通し、前記圧縮部で圧縮された燃料と
   空気との混合気を前記膨張部に導いて爆発燃焼せ
   しめ、前記膨張部より動力を取出すことを特徴と
   する内燃機関。 ２ 前記第一及び第二スクロール機構がそれぞれ
   固定スクロール羽根と移動スクロール羽根を備
   え、第一及び第二スクロール機構の移動スクロー
   ル羽根が一枚の鏡板の表裏に設けられている特許
   請求の範囲第１項記載の内燃機関。