JPH024684Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案はカフ付気管内挿入チユーブに関するも
のである。より詳しくは全身麻酔時笑気のカフ内
への拡散によるカフ内圧の上昇を低く抑える形状
のカフを設けたカフ付気管内挿入チユーブに関す
るものである。

（従来の技術） 一般にカフ付気管内チユーブやカフ付気管切開
チユーブは、全身麻酔や気管切開孔をもつ患者の
人工呼吸において、麻酔ガスや酸素あるいは空気
の外部への漏れを防止し、又食道からの嘔吐物の
気管への誤飲を防止するために用いられるもの
で、気管内チユーブや気管切開チユーブの外壁に
カフを設けたものである。

周知のように気管内チユーブは口腔より気管内
へ導入するチユーブであり、気管切開チユーブは
口腔を経ず気管壁の切開した部位より気管内へ導
入するチユーブである。これらいずれのチユーブ
においても、気管壁とチユーブの間隙をカフの膨
張により封止して、肺と外気とを遮断する。本考
案はこれらの気管内チユーブに共通して用いられ
るカフの構造に関するものであり、本考案におい
ては上記気管内チユーブと気管切開チユーブをあ
わせ気管内挿入チユーブと云う。

気管内壁は微細な毛細血管が無数に存在する粘
膜であるため、カフの気管内壁への接触圧力が高
すぎると毛細血管を圧迫して、毛細血管中の血液
の流れを止め、圧迫部が壊死に陥ち入ることがあ
る。また、この圧力が低すぎると麻酔ガスや酸素
あるいは空気が漏れるのみならず、食道からの嘔
吐物が肺まで流入することがある。それ故、カフ
の気管内壁への接触圧力は気管の毛細血管の血流
を止めるほどには高くなく、かつ麻酔器から肺に
送り込まれた気体が漏れる程低くはなく、その圧
状態が維持されることが望まれる。

（考案が解決しようとする問題点） 全身麻酔は、気管内挿入チユーブを気管に挿管
し、これと麻酔器を接続し、麻酔器より患者に酸
素と麻酔ガスの混合ガスを送り込んで行なわれ
る。この混合ガスはおおよそ酸素30〜40％、笑気
60〜70％、通常一般に用いられるフローセンおよ
びエトレンなどの気化性麻酔ガス0.2〜２％であ
り、笑気を全く含まないカフ内の空気に比較すれ
ば笑気の分圧が著しく高い事が特徴的である。そ
れ故、笑気の拡散係数が酸素や窒素などの他の気
体に比較して著しく高い事も関係し、笑気はカフ
内に拡散しやすく、カフ内圧は麻酔時間の経過と
共に上昇し、したがつて気管壁も麻酔時間の経過
と共により高い圧で圧迫されるようになる。

本考案者らはこの笑気拡散によるカフ内圧の上
昇を低く抑えるカフ構造について鋭意検討した結
果本考案に到達したものである。

（問題点を解決するための手段） すなわち、本考案は気管内挿入チユーブの外壁
に、頭部側チユーブ結着部から気管シール部にい
たる漸進的膨張部と、気管シール部から肺側チユ
ーブ結着部にいたり、かつ該漸進的膨張部の表面
積よりも表面積の小さい非漸進的膨張部を有する
カフを設けたことを特徴とするカフ付気管内挿入
チユーブである。

第１図は本考案によるカフ付気管内挿入チユー
ブの一例を示す断面図であり、以下これに準じて
本考案を説明する。挿入チユーブ１はその肺側挿
入端部２の近くに膨張収縮可能なカフ３を設け
る。カフ３は頭部側チユーブ結着部４と肺側チユ
ーブ結着部５において挿入チユーブと気密に連結
されており、又頭部側より挿入チユーブ１の表層
に設けられる空気送入溝６と連通しており、空気
送入溝６と連絡する注射器等（図示せず）によ
り、カフの膨張収縮がなされる。気管内挿入チユ
ーブは第２図に示す如く、肺側挿入端部２を先端
として気管内に挿入される。挿入後カフ３に空気
を送り膨張させて気管との間隙を封止する。この
際気管壁を封止するカフの部分を気管シール部７
とする。気管シール部はカフが膨張して最も径が
大となる付近である。

本考案による気管内挿入チユーブのカフ３は、
頭部側チユーブ結着部４から気管シール部７にい
たる漸進的膨張部８を有する。漸進的膨張とは後
述する非漸進的膨張に比して膨張する形状がゆる
やかに増加することを意味し、その部分の表面積
を大とするものである。従つて漸進的膨張部の形
状は具体的には各種のものが使用でき、それらの
例は第３図のａ〜ｅに示される。特に第３図ｄや
ｅの形状のものが好ましい。第１図において、肺
側チユーブ結着部５より気管シール部７にいたる
部分は非漸進的膨張部９をなすもので、膨張する
形状が急激に増加することを意味する。本考案に
おいて漸進的と非漸進的とは比較の問題であり、
両者に差のあることが肝要である。

膨張部分の形状を上述のとおりにすることによ
り、非漸進的膨張部９の表面積を小とし、漸進的
膨張部８の表面積を大とする。

（作用） かゝるカフを設けた気管内挿入チユーブでの麻
酔を説明する。挿入チユーブを経て笑気を含む麻
酔ガスを肺へ送り込むと、カフの気管シール部に
より気管は外界と遮断されるので、該気管シール
部を境として肺側は笑気の分圧が高くなり、笑気
がカフの非漸進的膨張部の膜を通してカフ内に透
過してくる。一方頭部側即ち外界側の空気は笑気
を全く含まないから、カフ内の笑気は、カフの漸
進的膨張部の膜を通つて頭部側空気に拡散してい
く。この笑気のカフ内への透過が大きくなるとカ
フの不要な膨張が生じ、気管粘膜を圧迫すること
になる。これを防ぐためカフの肺側の面を非漸進
的膨張部とし、その表面積を小としてカフ内への
透過を極力小とする。さらにカフの頭部側の面を
漸進的膨張部としその表面積を大とし、カフ内か
ら外界側への笑気の拡散を極力大とし、カフ内に
笑気が滞留しないようにする。かゝる考案は従来
全くなされていない。例えば本考案と全く逆の形
状のカフを有した気管内挿入チユーブがある。こ
の気管内挿入チユーブは気管内への挿入を抵抗な
くスムーズに行う目的から、肺側のカフの形状を
ゆるやかに増加するものにしたと思われるが、
かゝる形状では、本考案の目的であるカフ内圧の
上昇抑止を達することはできない。

（考案の効果） 本考案者らは、本考案の気管内挿入チユーブの
効果を確認するため、in vitro試験を行なつた。

内径8.0mmの気管導入チユーブに本考案による
カフを設けた気管内チユーブと、同内径をもつ本
考案とは逆の形状のカフをもつ気管内チユーブ
に、同条件で笑気含有麻酔ガスを供給し、カフ内
の圧力の変化を測定した。その結果を第４図に示
す。第４図において線Ａは本考案と逆の形状のカ
フを有する気管内チユーブであり、線Ｂは本考案
による気管内挿入チユーブであり、カフ内圧力の
増加が本考案により極めて低くおさえられること
がみられる。

カフ付気管挿入チユーブのカフには低容量高圧
カフと該カフを改良した高容量低圧カフがある。
低容量高圧カフは大気圧に平衡させて脹らませた
ときのカフ容量が小さく、更に圧を加えてカフを
脹らませ気管をシールするものである。高容量低
圧カフは大気圧に平衡させて脹らませた時のカフ
容量が大きく、カフは該圧だけで患者の気管の形
状に関係なく気管壁に達し後シールに必要な10〜
25cmH₂Oの圧を加えるだけで気管をシールでき
るものであり、気管壁には低圧で均等な圧がかか
る。高容量低圧カフと低容量高圧カフは目的に応
じ使われており、本考案のカフの形状はそれらに
共通して使用することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案によるカフ付気管内挿入チユー
ブの一例を示す断面図、第２図は本考案品の使用
態様を示す説明図、第３図は本考案の他の例を示
す断面図、第４図は本考案の効果を示すグラフで
ある。 １：挿入チユーブ、２：肺側導入端部、３：カ
フ、４：頭部側チユーブ結着部、５：肺側チユー
ブ結着部、６：空気送入溝、７：気管シール部、
８：漸進的膨張部、９：非漸進的膨張部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 気管内挿入チユーブの外壁に、頭部側チユーブ
   結着部から気管シール部にいたる漸進的膨張部
   と、気管シール部から肺側チユーブ結着部にいた
   り、かつ該漸進的膨張部の表面積よりも表面積の
   小さい非漸進的膨張部を有するカフを設けたこと
   を特徴とするカフ付気管内挿入チユーブ。