JPH0143077Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は外科医療などに用いられる外科医療副
資材、さらに詳しくは、骨折用ギプス、四肢ある
いは指などの矯正用ギプス、副木などとして用い
ることのできる外科医療副資材に関するものであ
る。

従来、外科用、特に整形外科において、骨折の
治療や肢体の矯正などに用いられる外科医療副資
材材料としては、主に焼石膏ギプスが用いられて
いる。

焼石膏ギプスは焼石膏とメラミン・ホルムアル
デヒド樹脂の混合物に水を混合し、この半流動物
を包帯を巻いた四肢などに塗布し、硬化させるも
のである。

このような焼石膏ギプスにおいては、焼石膏を
水で混練するわけであるが、この状態は極めて汚
ならしい感じを与え、さらには前記焼石膏を混練
する手間を要するとともに、水の添加量の制御な
どの若干の伎倆を必要とするという欠点がある。
また、皮膚に塗布されたとき、包帯を巻いている
にかかわらず、皮膚に不快感を与えるとともに、
硬化に時間が掛り、この間患者は静粛にしている
ことを強いられ、さらには脱型の際に粉塵が発生
し、時間と手間を要する。

加えて皮膚への塗布にあつたては、衣服を汚ご
す、皮膚を刺激するなどの欠点を有し、硬化後に
あつては、重い、Ｘ線を透過しない、さらには入
浴中に湯に接触させてはならないなどの種々の欠
点があつた。

さらに重要なことは、前記焼石膏ギプスにおい
ては通気性がないため、蒸れたり、患部に悪影響
を与えたりする欠点もあつた。

本考案は上述の点に鑑みなされたものであり、
何等伎倆を要さずに、簡便に手間が掛からず患部
に装着でき、また見た目にも良好で皮膚に装着し
たとき皮膚に刺激を与えることがなく、脱型も容
易に可能なギプス、包帯などとして用いられる外
科医療副資材を提供すること、さらには外科治療
副資材に複数の通気孔を形成し、装着しても蒸れ
ることのない外科医療副資材を提供することを目
的とする。

従つて、本考案による外科医療副資材は、布体
の片面に、合成トランス１，４ポリイソプレン
100重量部に対し、エチレン酢酸ビニル共重合体
に塩化ビニルをグラフト重合させた重合体または
ポリエステル樹脂を５〜70重量部添加した配合物
層を設けると共に、前記配合物層に通気孔を形成
したことを特徴とするものである。

以下、本考案の一実施例を図面に基づき説明す
る。

第１図は本考案による外科治療副資材を示す断
面図であり、図中、１は合成トランス１，４ポリ
イソプレン100重量部に対し、エチレン酢酸ビニ
ル共重合体に塩化ビニルをグラフト重合させた重
合体またはポリエステル樹脂を５〜70重量部を含
む配合物層、２は通気孔を示すものである。

この第１図より明らかなように、本考案による
外科治療副資材は、合成トランス１，４ポリイソ
プレン100重量部に対し、エチレン酢酸ビニル共
重合体に塩化ビニルをグラフト重合させた重合体
またはポリエステル樹脂を５〜70重量部を含む配
合物層１にこの配合物層１を貫通して通気孔２を
複数形成してなるものである。

このような配合物層２は、前述のように合成ト
ランス１，４ポリイソプレン100重量部に対しエ
チレン酢酸ビニル共重合体に塩化ビニルをグラフ
ト重合させた重合体またはポリエステル樹脂を５
〜70重量部を含む配合物よりなるものであるが、
この配合物は60〜100℃の温度において塑性変形
し、60℃未満の温度においては硬化状態になる配
合物であり、短時間に硬化し、かつ皮膚を刺激す
ることがないという利点を有している。さらに、
Ｘ線を透過し、外科医療副資材の上からレントゲ
ンを撮影し、患部の骨の状態などを知ることがで
きる利点も有している。また、皮膚に直接触れて
も不快感を生じることはない。

この合成トランス１，４ポリイソプレンはほと
んど結晶性であり、その軟化点は55℃付近であつ
るが、そのままでは前述のような外科医療副資材
として用いることができない。

したがつて、このような合成トランス１，４ポ
リイソプレンに対しエチレン−酢酸ビニル共重合
体に塩化ビニルをグラフト重合させた重合体ある
いはポリエステル樹脂を添加することにより、組
成物の軟化点を外科医療副資材用組成物に適した
ものとし、さらに常温における剛性を低下させる
ことなく、加熱軟化させたとき、手にべとつか
ず、作業性を良好とし、自由に成形ができるよう
にしたものである。

このようなエチレン−酢酸ビニル共重合体に塩
化ビニルをグラフト重合させた重合体またはポリ
エステル樹脂の添加量は合成トランス１，４ポリ
イソプレン100重量部に対し５〜70重量部である。

特にエチレン−酢酸ビニル共重合体に塩化ビニ
ルをグラフト重合させた重合体を用いるときには
５〜50重量部添加するのが好ましく、またポリエ
ステル樹脂を添加するときには、20〜70重量部添
加するのがよい。エチレン−酢酸ビニル共重合体
に塩化ビニルをグラフト重合させた重合体を添加
する場合において、エチレン−酢酸ビニル共重合
体に塩化ビニルをグラフト重合させた重合体の添
加量が５重量部未満であると、軟化させたのち、
常温において硬化する時間が長くなり、自己粘着
性がありすぎて作業性が著しく低下し、一方、50
重量部を超えて添加すると硬化時間が速く成りす
ぎて実用的でなくなる。

さらにまた、ポリエステル樹脂を添加する場合
において、ポリエステル樹脂が20重量部未満であ
ると、速く硬化しすぎて作業性を損ない、一方、
70重量部を超えて添加すると、硬化時間が遅くな
りすぎて実用的でなくなるからである。

上述の記載より明らかなように、エチレン−酢
酸ビニル共重合体に塩化ビニルをグラフト重合さ
せた重合体を添加する場合においては、特にギプ
スのように比較的肉厚の大きい外科医療副資材と
して用いられる場合に使用して前記組成物の硬化
時間を早めるようにし、一方、ポリエステル樹脂
を添加するときには、比較的肉厚の薄い外科医療
副資材、たとえば包帯の代わりとして使用する場
合に用い、硬化時間を遅延させるようにし、作業
性を考慮し、所定の硬化時間において硬化するよ
うにしてある。

前述のポリエステル樹脂としては、分子内エス
テルであるラクトン（たとえばε−カプロラクト
ン）モノマーを開環重合させてポリエステルとし
た樹脂を用いるのが好ましい。この理由は融点が
60℃以下の熱可塑性樹脂であり、比較的結晶化速
度が遅い樹脂であるからである。

このようなポリエステル樹脂の分子量は１万か
ら10万であるのが好ましい。分子量が１万未満で
あると、熱、温度に対して敏感でありすぎ、急激
に結晶部が溶融し、樹脂が軟化するので、粘度低
下が急激に起こり作業性が悪くなるからである。
また分子量が10万を超えると、結晶化速度が非常
に遅く硬化するのに時間がかかりすぎ、作業性が
悪くなるからである。

前述の配合物層１に形成される通気孔２の寸法
は、本考案において基本的に限定されるものでは
ないが、好ましくは２〜５mm程度であるのがよ
い。２mm未満であると、外科治療副資材を加熱
し、可塑化したとき、配合物によつて通気孔２が
埋まつてしまう虞を生じ、一方５mmを超えると、
配合物層が厚さによつては強度的に弱くなる場合
を生じ、また通気孔がさまざまな形に変形しやす
いので、外観上好ましくなくなるからである。

本考案による外科医療副資材によれば前記配合
物層１を布体３に設けてある。

このような布体３としては、本考案において特
に限定されるものではなく、たとえば不織布、織
布、編織布などを有効に用いることができる。ま
た、前記布体の材料も特に限定されるものではな
い。たとえば、綿布、純毛布などの天然繊維より
なる布体、ナイロンなどの合成繊維よりなる布体
を用いることができる。

このような布体３は本考案による外科治療副資
材を四肢などに装着するとき、感触を良好にする
ためのものであり、焼石膏ギプスの場合の装着時
の包帯の代わりをするものである。前記布体３は
充分な通気性を有するため、布体を配合物層１の
片面に形成しても充分な通気性がえられる。

前記のような外科医療副資材を使用するにあた
つては、まず、前述のような本考案による外科医
療副資材を患部の大きさなどに応じ、鋏、カツタ
ーなどを用いて切断するとともに、60〜100℃の
湯あるいはヘヤードライヤなどで加熱し、前記配
合物層１が塑性変形するような温度とする。この
ように配合物層１が塑性変形するような温度にお
いて、巻回などにより装着し、硬化せしめる。こ
の時、布体３が皮膚側になるように装着し、硬化
せしめる。

脱型に際しては、この配合物層１を加熱して塑
性変形状態にし、前述の装着の場合と反対に外科
医療副資材を外せばよい。

以上説明したように、本考案による外科医療副
資材によれば、配合物層に通気孔を設けているの
で、外科医療副資材を装着後においても、蒸れる
ことはない。さらに、配合物層の片面に布体層を
設けているので、従来のように混練、塗布あるい
は患部への包帯の巻回などの手間および伎倆を要
することなく、加熱塑性化し、患部に装着するの
みで簡便に外科医療副資材を装着しえる利点があ
り、外科医療上極めて有利となる。また患部の装
着状態を矯正するに際しても、前記矯正部を加熱
塑性化し、整形すればよいだけであるので、従来
不可能であつた矯正も容易に可能になるという利
点もある。

さらに本考案による外科医療副資材は、塑性変
形温度が60〜100℃であるために入浴に際しても、
装着したまま湯船（約40℃）に浸漬することがで
きるとともに、前記配合物層はＸ線を透過するの
で、外科医療副資材を装着したままレントゲンを
撮ることができるという利点もある。

加えて本考案による外科医療副資材は、脱型も
配合物層の加熱塑性変形化により、簡便に脱型で
き、粉塵などを生じるおそれもないばかりでな
く、皮膚を刺激することもなく、装着に際し不快
感を与えることもないなどという実用上種々の利
点を有している。

また、本考案による外科医療副資材によれば、
使用後のものも再度使用可能であり、経済的でも
ある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案による外科医療副資材の一実施
例の断面図である。 １……配合物層、２……通気孔、３……布体。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 布体の片面に、合成トランス１，４ポリイソプ
   レン100重量部に対し、エチレン酢酸ビニル共重
   合体に塩化ビニルをグラフト重合させた重合体ま
   たはポリエステル樹脂を５〜70重量部添加した配
   合物層を設けると共に、前記配合物層に通気孔を
   形成したことを特徴とする外科医療副資材。