JP7843919B2 - 異常診断装置及び異常診断方法 - Google Patents

異常診断装置及び異常診断方法

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Description

本願は、異常診断装置及び異常診断方法に関する。
プラントには電動機に動力伝達機構を介して接続された負荷設備が多数存在し、メンテナンスのために電動機、動力伝達機構及び負荷設備の異常診断が行われている。
これに対し、回転機械系の駆動源である電動機に対し、電動機の稼働時電流信号を高速フーリエ変換して得られるスペクトルパターンから回転機械系の異常に関する側帯波を抽出し、その強度から異常検知を行うことが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2017―181437号公報
しかし、特許文献1に開示の技術では、負荷トルクに応じて側帯波の強度と異常か否かとの関係は変化するため、着目する周波数と負荷トルクの選定次第では診断精度が低くなるという問題があった。
本願は、上記の課題を解決するための技術を開示するものであり、回転機械系のような電動機を含む負荷装置の異常診断を精度よく行うことが可能な、異常診断装置及び異常診断方法を提供することを目的とする。
本開示の異常診断装置は、
電動機及び前記電動機に接続された負荷設備を含む負荷装置の異常を判定する異常診断装置であって、
前記電動機の電流を検出する電流検出器と、
前記電流検出器で検出された電流をFFT解析し抽出されたスペクトルピークを用いて異常を判定する異常診断部と、を備え、
前記異常診断部は、
前記電動機の電源周波数及び前記電源周波数に対する側帯波の周波数を用いて解析し、抽出された前記スペクトルピークを周波数別に解析するピーク解析部と、
前記ピーク解析部で解析された前記スペクトルピークから前記電動機及び前記負荷設備のうちいずれの種別に起因するスペクトルピークの周波数かを判定する周波数判定部と、
前記負荷装置が正常時において、前記電動機に起因するスペクトルピークの周波数及びその信号強度と、前記負荷設備に起因するスペクトルピークの周波数及びその信号強度とを前記電動機の負荷トルク毎に格納する周波数格納部と、
異常判定部と、を有し、
前記異常判定部は、
異常診断時に前記電流検出器で電流を検出した時の負荷トルクを選定する負荷トルク選定部と、
異常診断時に検出された電流をFFT解析し、種別判定された複数の診断用スペクトルピークに対し、前記負荷トルク選定部で選定された負荷トルク及び種別判定された種別に対応した正常時のスペクトルピークの周波数及びその信号強度を前記周波数格納部から読み出すとともに、複数の前記診断用スペクトルピークに対し、周波数毎に正常時との信号強度の差分の絶対値を計算して、その和を特徴量とする特徴量計算部と、
予め設定された閾値と前記特徴量とを比較して前記負荷装置の異常を判定する特徴量判定部と、を備えたものである。
本開示の異常診断装置及び異常診断方法によれば、電動機を含む負荷装置の異常診断を精度よく行うことが可能となる。
実施の形態1に係る異常診断装置の概略構成を説明するための図である。 実施の形態1に係る電動機を駆動する制御装置の構成の一例を示す図である。 実施の形態1に係る異常診断部の構成を示すブロック図である。 無負荷時にベルト緩みが進展しているときの電流FFTによる解析結果の一例であるスペクトル波形を示す図である。 定格負荷時にベルト緩みが進展しているときの電流FFTによる解析結果の一例であるスペクトル波形を示す図である。 実施の形態1に係る異常診断装置を用いて異常診断を行う全体手順を示すフローチャートである。 特徴量を算出する手順を示すフローチャートである。 無負荷時にベルトが緩み始めたときの電流FFTによる解析結果の一例であるスペクトル波形を示す図である。 定格負荷時にベルトが緩み始めたときの電流FFTによる解析結果の一例であるスペクトル波形を示す図である。 実施の形態1に係る異常診断方法の効果を説明するための図で、図10Aは、無負荷時のベルト張力と特徴量との関係を示す図、図10Bは、比較例としてベルト張力とベルト回転周波数(-1次)の信号強度との関係を示す図である。 実施の形態1に係る異常診断方法の効果を説明するための図で、図11Aは、定格負荷時のベルト張力と特徴量との関係を示す図、図11Bは、比較例としてベルト張力とベルト回転周波数(-1次)の信号強度との関係を示す図である。 実施の形態2に係る異常診断装置の概略構成を説明するための図である。 ベルト張力と特徴量とを関数フィッティングした例を示す図である。 実施の形態1及び2に係る異常診断装置のハードウエア構成の一例を示す図である。 実施の形態1及び2に係る異常診断装置のハードウエア構成の別の一例を示す図である。
以下、本実施の形態について図を参照して説明する。なお、各図中、同一符号は、同一または相当部分を示すものとする。
実施の形態1.
以下、実施の形態1に係る回転機械系の異常診断装置について図を用いて説明する。
図1は、実施の形態1に係る異常診断装置の概略構成を説明するための図である。異常診断装置100は、負荷装置10の異常を検知し異常診断を行う。負荷装置10は電動機5、電動機5から負荷設備7に動力を伝達する動力伝達機構6、及び負荷設備7を備え、異常診断装置100は、電動機5の異常、動力伝達機構6の異常及び負荷設備7の異常を検知し異常診断を行う。図において、電動機5は、例えばプラント等で数多く使用されるものの一例で、電動機駆動用の電源2に電動機制御装置110を介して電源線に接続されている。
<異常診断装置100の構成>
異常診断装置100は、電動機制御装置110、異常診断部130、出力部140、及び電動機5に接続されている三相の電源線のいずれかに接続された電流検出器120を備えている。この異常診断装置100は、プラント等に多数配置された電動機を管理するモータコントロールセンタに搭載される、もしくはモータコントロールセンタとは別に設けられたモータ診断装置とする、などの形態がある。なお、電動機制御装置110は異常診断装置100が具備していてもよいし、異常診断装置100とは独立に設けてもよい。
電流検出器120は、例えばクランプ式のCT(Current Transformer:変流器)を用い、三相の電源線の各相に設置される場合もある。ただし、いずれかの相を計測するだけで良い。さらに、電流検出器120は、電動機5の駆動電流を計測可能な場所であれば設置場所は限定されない。これは、計測場所によって検出精度が変化しないことを示している。本実施の形態ではu相電流を検出する例で説明する。また、電流波形の取得および異常診断を連続して実施した場合、メモリの圧迫あるいは異常診断による演算処理回路の過負荷が発生する。対象設備が急激な異常を発生することが考えられない場合は、常にデータを取得せず、診断のタイミングで適宜データを取得すればよい。定常時においては、1時間に1回電流データを取得すればよい。
出力部140は異常診断部130による診断結果を表示する、あるいは診断結果を基に音あるいは視覚的に警報を出力し、電動機及び動力伝達機構の異常を知らせる。さらに、プラント全体の監視制御装置などで監視し、異常状態を集約する場合は、通信機能を用いて送信する。
図2は、電動機制御装置110の構成を説明するため図である。電動機制御装置110は例えばインバータ(電力変換装置)111とインバータ111を駆動するための制御部112を備えている。例えば、インバータ111が半導体スイッチング素子で構成されている場合、制御部112で生成される搬送波と矩形波とからPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)方式等で電力変換を行うようにインバータ111の半導体スイッチング素子が駆動制御される。ここで、インバータ111を駆動する基本となる搬送波の周波数が電動機の電源周波数fsである。インバータ111で変換された電力が電動機5に供給される。すなわち、電動機5はインバータ111によって駆動制御される。
動力伝達機構6は、例えば電動機5の回転軸に接続された電動機側プーリPu1と、負荷設備7の駆動軸に接続された負荷設備側プーリPu2とに、動力伝達部材である例えばベルト61を巻き掛けたもので構成される。
上述したように、負荷装置10は電動機5、動力伝達機構6及び負荷設備7から構成される場合のほか、動力伝達機構を具備しない電動機5及び負荷設備7から構成されることもある。
電動機5、動力伝達機構6及び負荷設備7はいずれも本実施の形態では特に種類を限定しない。例えば、電動機であれば、単相または三相の誘導機あるいは同期機であり、動力伝達機構であれば、ベルトの他、ギヤ、カップリングなどである。負荷設備としては、ポンプ及びファンなどが挙げられる。また、動力伝達機構を設けない場合は、電動機と負荷設備を直結させるケースもある。
<異常診断部130の構成>
次に、異常診断部130の構成について説明する。図3は、実施の形態1に係る異常診断装置100の異常診断部130の構成を示すブロック図である。図3において、異常診断部130は、負荷装置設定部131、第1格納部132、第2格納部133、演算部135、及び診断結果格納部136を備えている。
負荷装置設定部131は、電動機5の情報、動力伝達機構6の情報及び負荷設備7の情報を設定するのに使用する。
負荷装置設定部131は、電動機5に取り付けられた銘板の情報から電源周波数、極数、定格回転速度等の電動機5の諸元を取得するために使用する。この情報を用いて、電動機5の回転周波数をオンラインでリアルタイムに、高精度に特定し、電動機の機械系異常検出に用いる。
負荷装置設定部131は、動力伝達機構6がベルトである場合には、ベルトが取り付けられていることを認識させるための設定を行う。動力伝達機構6が存在しない場合には、ないことを認識させるための設定を行う。
負荷装置設定部131は、負荷設備7の種類に対応した設定を行う。例えば、ファンである場合には、ファンの回転数等の条件設定を行う。
これら電動機5の諸元情報、動力伝達機構の情報及び負荷設備7の情報は、第1格納部132に格納される。また、第1格納部132には、電流検出器120で取得した電動機5の駆動電流が格納される。本実施の形態では検出されたu相電流の値とともに、電流検出時の負荷トルクの値も併せて格納される。
第2格納部133は、判定基準格納部133a、電動機周波数格納部133b、動力伝達機構周波数格納部133c及び負荷設備周波数格納部133dを備える。
判定基準格納部133aは、電動機5の異常、動力伝達機構6の異常及び負荷設備7の異常を判定するための閾値などを保存するために使用する。
電動機周波数格納部133bは、電動機5に起因するスペクトルピークの周波数の値を格納する。周波数の値だけでなく、スペクトルピークの信号強度、電源周波数f、電源周波数のスペクトルピークの信号強度及び電動機5の負荷トルクも同様に格納するのが好ましい。いずれも後述する演算部135で解析した結果を格納する。もしくは、事前に発生周波数が判明している場合には負荷装置設定部131で取得、設定してもよい。負荷トルクは電動機5の電流データを取得する時に同時に測定する、あるいは取得した電動機5の電流波形を用いて公知の手法で算出してもよい。
動力伝達機構周波数格納部133cは、動力伝達機構6に起因するスペクトルピークの周波数の値を格納する。周波数の値だけでなく、動力伝達機構6に起因するスペクトルピークの信号強度、動力伝達機構6に起因するスペクトルピークを取得した時の電源周波数f、電源周波数のスペクトルピークの信号強度、及び電動機5の負荷トルクも同様に格納するのが好ましい。
負荷設備周波数格納部133dは、負荷設備7に起因するスペクトルピークの周波数の値を格納する。周波数の値だけでなく、負荷設備7に起因するスペクトルピークの信号強度、負荷設備7に起因するスペクトルピークを取得した時の電源周波数f、電源周波数のスペクトルピークの信号強度、及び電動機5の負荷トルクも同様に格納するのが好ましい。
演算部135は、スペクトル解析部135a、側帯波解析部135b、ピーク解析部135c、周波数判定部135d及び異常判定部135fを備える。
スペクトル解析部135aは、電流検出器120で検出された電流を用いて、電流FFT(Fast Fourier Transform)解析(周波数解析)を実行する。
側帯波解析部135bは、スペクトル解析部135aで解析されたスペクトル波形の中からスペクトルピークを全て検出する。検出する周波数範囲は0~1000Hzの間が好ましい。次に、検出されたスペクトルピークの中から側帯波の条件を満たすスペクトルピークを判定する。
ピーク解析部135cは、側帯波解析部135bで抽出された側帯波を周波数別に解析する。
周波数判定部135dは、ピーク解析部135cで解析された結果を基に側帯波が電動機起因するスペクトルピークか、動力伝達機構に起因するスペクトルピークか、あるいは負荷設備に起因するスペクトルピークかを判定する。種別が判定された周波数と判定されると、第2格納部133の各周波数格納部133b、133c、133dに、スペクトルピークの周波数の値が格納される。同時にスペクトルピークの信号強度、そのスペクトルピークを取得した時の電動機制御装置110の運転周波数、運転周波数のスペクトルピークの信号強度及び電動機5の負荷トルクも同様に格納するのが好ましい。
異常判定部135fは、負荷トルク選定部135f1、特徴量計算部135f2及び特徴量判定部135f3を備え、電動機5の異常、動力伝達機構6の異常及び負荷設備7の異常の有無を判定する。
負荷トルク選定部135f1は、運転中の電動機5の負荷トルクあるいは異常判定を行う負荷トルクを選定する。
特徴量計算部135f2は、選定された負荷トルクに対応するスペクトルピークの周波数を基に特徴量を計算する。
特徴量判定部135f3は、判定基準格納部133aにあらかじめ格納されている閾値に基づいて、計算された特徴量と比較し、異常の有無を判定する。
診断結果格納部136は異常判定部135fが判定した結果を格納するとともに、出力部140に出力する。
なお、実施の形態1に係る異常診断装置100では、負荷設備7にファン、動力伝達機構6は図2で示したベルト61、電動機5に三相誘導機の構成を例に詳細を説明する。異常対象としては動力伝達機構6のベルトの張力異常を例に説明する。負荷装置10において、動力伝達機構6にベルトを用いた負荷装置10において、長時間駆動させるとベルトの張力が徐々に低下していき、適切なタイミングで交換する必要がある。交換のタイミングを自動化する要求が高まっていることからこの例を選定した。従って、スペクトルピークの解析、異常判定等も動力伝達機構6におけるベルトの張力異常を例に説明する。
<演算部135におけるスペクトルピークの解析>
次に、演算部135におけるスペクトルピークの解析方法について説明する。上述したようにスペクトル解析部135aは、電流検出器120で検出された電動機5の電流を用いて、電流FFT解析を実行する。電流FFT解析に使用する電流波形のデータは十分な分解能で高周波領域まで取得できるように測定時間、サンプリング周波数を設定する。
測定時間は分解能に関係し、分解能は着目するピークが隣接するピークと分離できればよいため、1s程度以上あることが望ましい。一方、サンプリング周波数は周波数の最大値に関係している。後述する特徴量が高次成分の信号強度の和であることから使用する次数に応じて高い周波数領域が必要とされるケースもある。それを確保するため、計算で使用する最大周波数の2倍以上のサンプリング周波数が必要とされる。
スペクトル解析部135aで解析されたスペクトル波形には、負荷装置10を構成する電動機5、ベルト61、負荷設備7であるファンそれぞれに起因するスペクトルピークを含む。なお、このスペクトル波形には負荷装置10を構成する電動機5、ベルト61、負荷設備7であるファンそれぞれに起因するノイズも含むため、複数回の電流FFT解析を平均化することが望ましい。1例としては5回程度の結果を平均化すればよい。
次に、スペクトル解析部135aで解析されたスペクトル波形について説明する。まず、電動機5の回転周波数fについて考える。具体的には、まずすべりsを0としたときの仮の回転周波数fm0を計算する。回転周波数fm0は電源周波数f、極数pを用いて次の式(1)のように表される。
m0=f/p ・・・(1)
ここで、実際の回転周波数fはすべりsを用いて、次の式(2)のように表される。
=f(1-s)/p ・・・(2)
式(1)及び式(2)からすべりsは
s=1-f/fm0 ・・・(3)
となる。
ここで実際の回転周波数fは仮の回転周波数fm0の近傍かつ電源周波数fに近い周波数でピークが極大となる周波数である。そのことから周波数解析結果から実際の回転周波数fを特定することができる。この実際の回転周波数fと式(1)計算された仮の回転周波数fm0を用いることですべりの計算が可能となる。しかし、この手法ではすべりを計算するための十分な周波数分解能が必要となるため、データ取得時間をそれに応じて長時間に設定する必要がある。
側帯波解析部135bは、スペクトル解析部135aで解析されたスペクトル波形の中からスペクトルピークを全て検出する。電流FFT解析により得られたスペクトル波形について、電源周波数fを中心に側帯波の条件を満たすスペクトルピークを判定する。例えば、図4は、動力伝達機構6であるベルトに接続された電動機5の無負荷トルクにおける電動機5のu相電流の電流FFTによるスペクトル波形の一例を示す図である。電源周波数fで大きなピークが見られ、そのピークを挟んだ複数の側帯波が確認される。側帯波の周波数fは電源周波数f、各回転周波数をf、高調波の次数を自然数nとすると、次の式(4)のように表される。
f=f±nf・・・(4)
上述したように、電動機5、ベルト61、負荷設備7であるファンそれぞれに起因するスペクトルピークを含む。電動機5に起因する回転周波数fは上述の式(2)で表され、負荷設備7であるファンに起因する回転周波数f及び動力伝達機構6であるベルト61に起因する回転周波数fは、それぞれ次の式(5)、(6)のように表される。
=f(1-s)/pr・・・(5)
= 2πr/l = 2πr/l・・・(6)
ここで、r:減速比
:電動機側プーリPu1の径
:負荷設備側プーリPu2の径
:ベルトの長さ である。
このように、電動機5に起因する回転周波数f、ファンに起因する回転周波数f及びベルト61に起因する回転周波数fは、電動機5、ファン、ベルト61の形状及び駆動情報から計算することが可能である。ピーク解析部135cは、側帯波解析部135bで抽出された側帯波をそれぞれに起因する周波数別に解析する。
なお、詳細は後述するが、図4では電源周波数fを中心にベルト61に起因する回転周波数fの側帯波が1次から3次まで示されている。
周波数判定部135dにおいて、電動機5に起因する回転周波数f、ファンに起因する回転周波数f及びベルト61に起因する回転周波数fの種別に判別し、各種別に対し正常時の1次から高次までの周波数及びそれぞれの強度を、電流解析に用いた電流を取得した負荷トルクの値とともに第2格納部133に格納する。例えば、図4の解析結果によれば実線の正常時のスペクトルから、ベルト61に起因するスペクトルピークとして、f=f±nf(nは1から3)の周波数、各周波数における信号強度、負荷トルク0を取得し、動力伝達機構周波数格納部133cに格納する。
なお、例えば図5は動力伝達機構6であるベルトに接続された電動機5の定格負荷における電動機5のu相電流の電流FFTによるスペクトル波形の一例を示す図である。この図5の解析結果からの実線の正常時のスペクトルから、ベルト61に起因するスペクトルピークとして、f=f±nf(nは1から3)の周波数、各周波数における信号強度、負荷トルク値(定格負荷時)を取得し、動力伝達機構周波数格納部133cに格納する。このように、各周波数格納部133b、133c、133dには、正常時のそれぞれのスペクトルピークの周波数、その信号強度、負荷トルク値が格納されている。
異常診断時においては、異常判定部135fの負荷トルク選定部135f1において、検知されFFT解析された電流取得時の負荷トルクから、第2格納部133の各周波数格納部133b、133c、133dに格納されている正常時のデータから対応する負荷トルクに対応するスペクトルピークの周波数、各周波数の信号強度等のデータを異常判定部135fに読み出す。ここでは異常診断の対象としてベルト61の異常を例とするので、動力伝達機構周波数格納部133cからデータが読みだされる。
負荷トルクは、電流データを検出する際に、負荷トルクを測定し、その測定結果に応じて格納してもよいが、電流波形を用いて負荷トルク選定部で負荷トルクを選定することも可能である。電流波形を用いることで負荷トルクの測定をする必要がなくなり負荷トルク測定用の機器が不要のため、コスト低減となる。また、負荷トルクの状態をメモリに格納する必要がなく、メモリ容量を低減できるメリットがある。
電流波形を用いた負荷トルクの選定方法としては、負荷トルクが大きくなるにつれて電流振幅は増加するので、電流振幅ごとで負荷トルクを選定する。電流振幅以外にも電流の実効値など電流値の大きさが分かるものであればいずれの方法を用いて負荷トルクを選定してもよい。他には上述したすべりsの変化に伴う回転周波数の変化に着目する方法もある。すべりsは負荷トルクが増加することで増加する。式(2)から回転周波数fはsを変数にしているため、負荷トルクが増加すると回転周波数fも変化し、ピークの発生箇所が変化する。
特徴量計算部135f2は、ピーク解析部135cで解析され、周波数判定部135dにおいて判定された診断用のスペクトルピークの周波数、その信号強度に対し、動力伝達機構周波数格納部133cから読みだされた、選定された負荷トルクに対応する正常時のスペクトルピークの周波数、その信号強度を比較し、各周波数における信号強度の差分を計算する。例えば、図4において、実線が正常時のスペクトル波形であり、破線(異常時)が異常診断時のスペクトル波形とすると、1次から順次高次のスペクトルピークの周波数まで(図4では3次まで)、各周波数における信号強度の差分を計算し、差分の絶対値の和を特徴量Cとして計算する。異常診断時も正常の実線のスペクトル波形が得られた場合は、特徴量Cは0である。
特徴量判定部135f3は、特徴量計算部135f2で計算されたベルト異常診断時の特徴量Cが判定基準格納部133aに格納されているベルト異常診断時の閾値Bthを超えているか否か判定し、超えている場合は異常であると判定する。
特徴量判定部135f3での判定結果は、診断結果格納部136に格納されるとともに、出力部140に出力する。
<異常診断装置100を用いた異常診断の手順>
次に、異常診断装置100の動作について図6及び図7を用いて説明する。図6は、実施の形態1に係る異常診断装置100を用いて異常診断を行う全体工程を示すフローチャート、図7は特徴量を算出する手順を示すフローチャートである。
まず、異常診断の全体工程について説明する。
ステップS101において、診断対象が正常時のデータを負荷トルク毎に取得する。具体的にはベルト61の張力が正常時のデータを電動機5のu相の電流を電流検出器120で検出し、合わせて負荷トルクを測定あるいは計算により取得する。検出された電流を上述したようにスペクトル解析部135aで電流FFT解析し、解析されたスペクトル波形の中からスペクトルピークを側帯波解析部135bにおいて、検出する。検出された側帯波をピーク解析部135cにおいて周波数別に解析し、周波数判定部135dにおいて判定された動力伝達機構に起因するスペクトルピークを動力伝達機構周波数格納部133cに、スペクトルピークの周波数の値、その信号強度、負荷トルクを格納する。
なお、この工程は図7のステップS1021からステップS1025と同様である。
正常時のデータの取得方法は、ベルト張力を張り替えた直後の電流を取得し、それに基づいて解析されたものを正常とする方法がある。他には以前測定した同じ条件の正常時のデータを格納する手法もある。なお、異常診断は負荷トルク毎に実施するため、これらの正常時のデータも負荷トルク毎に格納する必要がある。
正常時のデータを既に取得している場合は、ステップS101は省略してもよい。
ステップS102以降は、異常診断を行う工程である。
ステップS102において、ステップS101と同様に、を電動機5のu相の電流を電流検出器120で検出し、電流FFT解析し、特徴量を算出する。
ステップS103において、算出された特徴量が予め設定された閾値を超えているか、すなわち異常であるか判定する。
ステップS103で異常と判定された場合、ステップS104で診断結果を出力する。ステップS103で異常無と判定された場合、別の負荷トルク条件等で繰り返し異常診断を行うようにしてもよい。
次に、ステップS102の工程の詳細について図7を用いて説明する。
まず、ステップS1021において、異常診断用に電動機5のu相の電流を電流検出器120で検出し、合わせて負荷トルクを測定あるいは計算により取得する。定期診断時には、予め負荷トルクを選定しておき、所定の負荷トルクで電動機5を動作させたときの電流を検出するようにしてもよい。
ステップS1022において、検出された電流を上述したようにスペクトル解析部135aで電流FFT解析を行う。
ステップS1023において、解析されたスペクトル波形の中からスペクトルピークを側帯波解析部135bにおいて、検出する。
ステップS1024において、検出された側帯波をピーク解析部135cにおいて周波数別に解析する。
ステップS1025において、周波数判定部135dにおいて、動力伝達機構に起因するスペクトルピークの周波数の値、その信号強度を計算する。この時、予め設定されたn次までのスペクトルピークについてその信号強度を計算する。ここで計算されるのは、診断用のスペクトルピークに関するものである。
ステップS1026において、ステップS1021における電流検出時の負荷トルクを負荷トルク選定部135f1で選定し、選定された負荷トルクに対応する正常時のスペクトルピークの周波数の値、その信号強度を動力伝達機構周波数格納部133cから読みだす。この時、ステップS1025で信号強度を計算したn次までの診断用のスペクトルピークについてその周波数の値、その信号強度を読み出す。
ステップS1027において、特徴量計算部135f2はステップS1025で計算された異常診断対象である診断用のスペクトルピークのそれぞれについて、その信号強度とステップS1026で読みだされた正常時のスペクトルピークの信号強度との差分を計算する。次いで、ステップS1028において、計算された診断時と正常時との信号強度の差分を絶対値をn次まで加算し、その和を特徴量Cとして算出する。
<異常判定の方法>
次に、本実施の形態に係る異常判定の方法及びその効果について説明する。上述した図4及び図5の破線で示した異常時のスペクトル波形は、いずれもベルト緩みが進展している状態の例である。図8及び図9の破線で示した異常時のスペクトル波形は、いずれもベルトが緩み始めた状態の例である。
図4及び図5のようにベルトの緩みが進展している状態において、図4の無負荷時(負荷トルク0)では正常時からベルト61に起因する回転周波数fの2次成分の信号強度が減少しているが、3次成分では増加している。また、図5のように定格負荷時(負荷トルクは定格)では2次成分はほとんど変化していないのに対して3次成分のみ増加を示している。以上のことから張力の緩みが進展している時はベルト61に起因する回転周波数fの3次成分が異常診断に有効なパラメータと考えられる。
また、図8及び図9のベルトが緩み始めた状態においては、図8の無負荷時(負荷トルク0)では正常時からベルト61に起因する回転周波数fの2次成分の信号強度が減少しているが、3次成分では変化が見られない。そのため、ベルト61に起因する回転周波数fの2次成分が異常診断に有効なパラメータと考えられる。しかし、図9のように定格負荷時(負荷トルクは定格)では1、2,3次のいずれの成分も大きな変化は見られない。
このように、ベルトの緩み状態である張力及び負荷トルクに応じて、異常診断に有効な指標は異なることがわかる。これは、電動機5、動力伝達機構6であるベルト61、及び負荷設備7であるファンの各機器から発生するノイズ及びそれらの共振の影響によるものである。そのため、異常診断に有効な特徴周波数を一つに選定する場合はこれらのことを踏まえて最適な次数の周波数を選定しなければ、高い精度で異常診断を行うことはできない。換言すれば、特徴周波数を一つに絞って異常診断を行った場合、高精度の診断は期待できない虞がある。
図10は、実施の形態1に係る異常診断方法の効果を説明するための図で、図10Aは、無負荷時のベルト張力と特徴量との関係を示す図、図10Bは、比較例としてベルト張力と-1次のベルト回転周波数の信号強度(電流値)との関係を示す図である。なお、各図中の「緩み始め」のベルト張力位置は図8に対応し、「緩み進展」のベルト張力位置は図4の状態に対応する。
図10Aにおいて、本実施の形態1に係る異常診断装置100において算出された無負荷時(負荷トルク0)の特徴量C1は適正張力から離れると増加する。すなわち、緩み始めると特徴量C1は増加し始め、緩みの進展に伴い増大する。適正張力は正常時であり、この時の特徴量C1は0またはほぼ0である。特徴量C1が増加すると適正張力からずれ始め、予め設定された閾値Bth1aを超えると緩み始めと判定される。閾値Bth1bを超えると、例えば「要点検」と判定される。さらに、閾値Bth1cを超えると緩みが進展し、異常と判定するようにしておけば、異常診断をベルトの緩み、すなわち張力に応じて判定することができる。また、定期的に特徴量C1を算出することで、算出した時のベルト張力を把握し、異常発生を予測することができ、ベルト切れ等により負荷装置10が停止する前に、メンテナンスを行うことができる。
図10Bは、比較例として異常診断に-1次のベルト回転周波数を指標として用いた場合のベルト張力と-1次のベルト回転周波数の信号強度との関係を示す図である。信号強度が適正張力時より大きく変化するのは、楕円で示した領域であり、閾値Bth0を超え、ベルトの緩みが大きく進展した状態である。比較例ではこの楕円で示した領域に至って異常の判定となる。すなわち、本実施の形態と異なり、緩みの推移を検出することはできない。なお、閾値Bth0は図10Aの閾値Bth1aに相当し、例えば5dBである。
同様に、図11は、実施の形態1に係る異常診断方法の効果を説明するための図で、図11Aは、定格負荷時のベルト張力と特徴量との関係を示す図、図11Bは、比較例としてベルト張力と-1次のベルト回転周波数の信号強度(電流値)との関係を示す図である。なお、各図中の緩み始めのベルト張力位置は図9に対応し、緩み進展のベルト張力位置は図5の状態に対応する。
図11Aにおいても、本実施の形態1に係る異常診断装置100において算出された定格負荷時(負荷トルクは定格)の特徴量C2は適正張力から離れると増加する。すなわち、緩み始めると特徴量C2は増加し始め、緩みの進展に伴い増大する。適正張力は正常時であり、この時の特徴量C2は0またはほぼ0である。特徴量C2が増加すると適正張力からずれ始め、予め設定された閾値Bth2aを超えると緩み始めと判定される。閾値Bth2bを超えると、例えば「要点検」と判定される。さらに、閾値Bth2cを超えると緩みが進展し、異常と判定するようにしておけば、異常診断をベルトの緩み、すなわち張力に応じて判定することができる。また、定期的に特徴量C2を算出することで、算出した時のベルト張力を把握し、異常発生を予測することができ、ベルト切れ等により負荷装置10が停止する前に、メンテナンスを行うことができる。
図11Bは、比較例として異常診断に-1次のベルト回転周波数を指標として用いた場合のベルト張力と-1次のベルト回転周波数の信号強度との関係を示す図である。図10Bに場合と同様に、信号強度が適正張力時より大きく変化するのは、楕円で示した領域であり、閾値Bth0を超え、ベルトの緩みが大きく進展した状態である。比較例ではこの楕円で示した領域に至って異常の判定となる。すなわち、本実施の形態と異なり、緩みの推移を検出することはできない。なお、閾値Bth0は図11Aの閾値Bth2aに相当し、例えば20dBである。
以上のように、診断時の回転周波数の信号強度と正常時の回転周波数の信号高度との差分の絶対値の和である特徴量を用いて異常診断を行うと単一の回転周波数の強度の変化を追う比較例と比して診断精度が高いことがわかる。
異常時に回転周波数の信号強度が変化するのは電動機5のロータが振動した時に、ロータとステータとの間のギャップが周期的に変化することでロータとステータとの間の磁束密度の変化が生じるためである。磁束密度が変化することで電流に変化が生じ、この変化が側帯波に反映される。ベルト61が緩んだ時は、緩みによりこの振動が激しく増加する場合、あるいは緩みによりトルクの伝達効率が低下し、振動が減少するケースもある。これらのことから回転周波数の信号強度が異常により増加あるいは減少するかは両方のケースが想定される。しかし、異常が発生した、あるいは異常状態に進んでいく場合は、正常状態の信号強度から変化が生じることから、変化分である差分の絶対値を高次までの複数の和を取れば、異常の進展に伴い、大きくなる。従って、本実施の形態に係る特徴量を用いれば、高精度で異常診断を行うことが可能となる。
なお、特徴量の算出において、上述では、1から3次までの回転周波数の信号強度について正常時と異常時の差分を算出したが、これに限るものではない。より高次の成分までを計算対象とする、あるいは低次成分を選択せず高次成分のみを選択してもよい、対象とする回転周波数に係るスペクトルピークは電源周波数fに対称に高周波側、低周波側それぞれ発生する。今回は両方のピークの信号強度の差分を合計したが、高周波側、低周波側どちらか一方側のみの信号強度の差分を用いて特徴量を算出してもよい。
また、特徴量の算出において、回転周波数の信号強度について正常時と異常時の差分の絶対値の和を用いたが、回転周波数の信号強度について正常時と異常時の差分の和を用いてもよい。この場合、精度が劣ることが予想されるものの、複数の特定のピークを用いるなど、条件を吟味すれば、単一の回転周波数の強度の変化を追う比較例よりも診断精度を高めることも可能である。
<異常判定に用いる閾値の設定>
次に、閾値の設定方法について説明する。
上述したように、特徴量はベルトの緩みが進展するにつれて増加していくため、閾値を設定し、その閾値を超えたときを異常と判定することで、異常診断が可能となる。図10A及び図11Aに示されるように、閾値は特徴量とベルト張力の関係が判明していれば、それから決定することができる。しかし、特徴量は様々な条件で一義的に決定しない。負荷装置の各機器のサイズ、例えば各プーリの大きさ、ベルト長さ、及びファンの大きさ等が同一とは限らないこと、駆動条件が変わること、さらに回転周波数においいて高次成分を何次までとるかなどの条件においても異なる。そのため、新たな設定が必要となるケースも多い。以下では、各条件に依存しない閾値の設定方法について記載する。
閾値の設定方法として、正常状態の信号強度を複数回取得し、その標準偏差を用いる方法がある。まず、複数回(q回)の正常状態の信号強度を計算する。信号強度を計算する周波数範囲は、特徴量を算出する周波数範囲であり、特徴量を算出する周波数のスペクトルピークについて信号強度を算出する。ここでは、上述のように、ベルトの緩みに対応する周波数である。複数回の信号強度データについて、1回目に取得した信号強度及び2回目に取得した信号強度をベルト緩みについての周波数において両者の差分の絶対値の和を算出する。同様にして2からq回目までの各信号強度との差分の絶対値の和をそれぞれ求める。すなわち、q-1回分の信号強度の差分の絶対値の和のデータを取得する。このq-1回分の信号強度の差分の絶対値の和のデータの標準偏差σを求め、その標準偏差σに定数aを乗じたものを閾値aσとする。従って、特徴量は正常状態の信号強度のばらつき程度の大きさの場合、異常とは判定されない。また、定数aを複数a1,a2、・・・と順次大きくなるように複数設定することで、複数の閾値a1σ,a2σ・・・を設定することもできる。異常が進展するにつれて特徴量は大きくなるため、閾値a1σで異常レベル1、閾値a2σで異常レベル2と言ったように、超えた閾値の値に応じて異常レベルを出力する。
上述の標準偏差σを算出する周波数範囲、すなわち何次の回転周波数まで用いるかは、後の特徴量の算出に整合するように予め決めておき、対応する範囲で標準偏差を算出すればよい。また、複数の範囲で算出しておいてもよい。
なお、複数回の正常状態の信号強度を取得した場合は、標準偏差σ及び閾値a1σ,a2σ・・・とともに、複数回の正常状態の信号強度を判定基準格納部133aに格納していてもよいし、1回目のスペクトルの信号強度のみを格納しておいてもよい。診断用のスペクトルの信号強度との差分を計算する際には、1回目のスペクトルの信号強度を用いても他の回のスペクトルの信号強度を用いてもよい。
以上の手法で特徴量の計算および異常判定を行う。異常と診断した場合、診断結果を出力部140に表示する。表示内容は閾値を超えたときに異常のみを示す場合、複数の閾値を設定したときはその閾値に応じて異常レベルを表示する方法もある。また、異常レベルが深刻な場合は、装置を停止させることも行う。
<他の回転周波数を用いる例>
上述では、負荷設備7にファン、動力伝達機構6にベルト61、電動機5に三相誘導機とした構成において、異常対象としては動力伝達機構6のベルト61の張力異常を例に説明したが、異常診断対象はベルト61でなくてもよい。
ベルト61はベルト接続により電動機5に加わるラジアル荷重が大きいため、高周波成分含めた回転周波数の信号強度が大きく、差分絶対値の和による特徴量を指標にした異常診断に好適である。一方、電動機5及び負荷設備7に関してもそれぞれ回転周波数の高調波成分が発生することから、同様に異常診断を行うことができる。
例えば、電動機5の回転周波数fを用いてf=f±nfの側帯波のスペクトルピークと信号強度に基づいて、電動機5の正常時と異常時のn次までの高調波の信号強度の差分の絶対値の和を特徴量として異常判定を行えばよい。
負荷設備7の場合も、ファンに限らず、負荷設備7の回転周波数fを用いてf=f±nfの側帯波のスペクトルピークと信号強度に基づいて、負荷設備7の正常時と異常時のn次までの高調波の信号強度の差分の絶対値の和を特徴量として異常判定を行えばよい。

また、ベルト61のような動力伝達機構6を用いない、電動機5と負荷設備7とが直結した負荷装置10の構成であっても同様に、電動機5、負荷設備7のそれぞれの異常診断を行うことが可能である。
さらに、異常診断対象をベルト61の例で説明したが、異常診断時に電動機5,動力伝達機構6及び負荷設備7のそれぞれに起因するスペクトルピークを判別して、同時に異常診断を行うことができることは言うまでもない。
以上のように実施の形態1によれば、負荷装置10の異常を判定する異常診断装置100であって、電動機5の電流を検出する電流検出器120と、検出された電流をFFT解析し抽出されたスペクトルピークを用いて異常を判定する異常診断部130と、を備え、異常診断部130は、電動機5の電源周波数及び電源周波数に対する側帯波の周波数を用いて解析し、抽出された複数のスペクトルピークを周波数別に解析するピーク解析部135cと、周波数別に解析されたスペクトルピークから負荷装置10の電動機5、動力伝達機構6及び負荷設備7のうちいずれの種別に起因するスペクトルピークの周波数かを判定する周波数判定部135dと、負荷装置10が正常時において、負荷装置10に具備するいずれかの種別に起因するスペクトルピークの周波数及びその信号強度を、それぞれ格納する電動機周波数格納部133b、動力伝達機構周波数格納部133c、負荷設備周波数格納部133dと、異常判定部135fと、を有している。そして異常判定部135fは、異常診断時に電流検出器120で電流を検出した時の負荷トルクを選定する負荷トルク選定部135f1と、異常診断時に検出された電流をFFT解析し、種別判定された複数の診断用スペクトルピークに対し、負荷トルク選定部で選定された負荷トルク及び種別判定された種別に対応した正常時のスペクトルピークの周波数及びその信号強度を周波数格納部から読み出すともに、複数の診断用スペクトルピークに対し、周波数毎に正常時との信号強度の差分の絶対値を計算して、その和を特徴量とする特徴量計算部135f2と、予め設定された閾値と特徴量とを比較して負荷装置10の異常を判定する特徴量判定部135f3と、を備えた。この構成により、1つのスペクトルピークの信号強度変化で判断することなく、複数のスペクトルピークにおける正常時との差分の絶対値の和から異常を判断するので、高精度な異常診断が可能となる。
また、異常診断装置100において、検出する電流及び解析結果の時系列データをすべて格納する場合、大容量のメモリが必要となる。本実施の形態では電源周波数、電動機の回転周波数、動力伝達機構の回転周波数、及び負荷設備の回転周波数の信号強度のみを使用して診断を行うため、特定周波数の信号強度のみを格納することで必要メモリを縮小することが可能となる。
実施の形態2.
以下、実施の形態2に係る異常診断装置100について図を用いて説明する。
図12は、実施の形態2に係る異常診断装置100の異常診断部130の構成を示すブロック図である。実施の形態1の図3と相違する点は、異常判定部135fに関数情報格納部135f4及び異常度計算部135f5を備え、異常度計算部135f5で計算された異常度を格納し、出力する異常度格納部137を有することである。本実施の形態2では算出した特徴量から異常度を定量的に評価する。実施の形態1と同様にベルトの張力異常を対象とする。図10A及び図11Aで示したように、ベルトの緩みが進展するにしたがって、特徴量は増加する傾向にあった。特徴量と異常度の関係に関数フィッティングをすることで、特徴量とベルト緩みの関係を作成し、定量評価を可能とする。なお、以下の説明は相違点を中心に説明し、実施の形態1と同様の点は説明を省略する。ここで異常度とは、正常から異常への進行の程度を定量的に示すことができるものである。
図12において、関数情報格納部135f4には異常度と特徴量にフィッティングした関数情報が格納され、異常度計算部135f5はフィッティングされた関数に基づいて異常度を計算する。
この関数情報は事前に作成する必要があり、またベルト長さ及びプーリ径といった回転機械系の各機器の種類により変化するため、各設備で取得する必要がある。同様の機器の試験設備を設置して予めデータを取得する手法もあるが、電動機の駆動時に蓄積されたデータを取得する方法がある。
たとえば、特徴量が増加し、ベルトを張り替えるタイミングで張力を測定し、特徴量と張力の関係をメモリに格納する。このデータを基にフィッティング関数を作成する。工場などで同種の回転機械系を複数稼働させている場合、ある一台のデータを測定すれば、他の設備にも使用可能なため、この手法は有効な手法である。
フィッティングの際は、特定の範囲のデータのみを選択することでフィッティングの精度を向上することができる。例えば、ベルト張力では、適正張力に対してベルトの緩み側と張り側で正常から特徴量が増加している。そのため、どちらか一方のみの範囲のデータのみを抽出することで、単調増加の関数でフィッティングすることが可能となる。本実施の形態においてはベルトの緩みを対象として、適正張力以下のデータのみを抽出してフィッティングした。
次に、関数フィッティングの方法を記載する。関数フィッティングで関数の種類及び作成方法は指定しない。今回は1次関数を用いて最小二乗法によりフィッティングをする。関数情報格納部135f4にはフィッティングした式を格納する。フィッティングした一次関数を式(7)とする。
y=kx+m・・・(7)
k、mはフィッティングの係数、yは特徴量、xは異常度であり、k、mを関数情報格納部135f4に格納する。
格納した式を用いた異常度の定量評価について説明する。実施の形態1と同様に、駆動時の電流データから、特徴量Cが計算される。計算された特徴量Cをここでは特徴量yとする。特徴量yの時の異常度xは式(7)から
x=(y-m)/k・・・(8)
で計算される。一次関数のフィッティングの状態を図13に示している。図13において、異常度はベルトの張力である。
フィッティングさせる関数例として1次関数を今回は選定したが、精度を向上させるためには、他の関数を選定する方法、絶対値合計を取得するときに各成分に重みを付ける手法がある。各成分に重みを付けて、1次関数でフィッティングする場合、関数フィッティングの計算量が小さくなるメリットがある。
計算された異常度は、異常度格納部137に格納されるとともに、出力部140に出力される。実施の形態1では異常と診断した場合のみ異常判定を出力しており、実施の形態2でも同様に、特定の閾値に達して以降で異常度を出力してもよい。すなわち、実施の形態1の異常判定部135fにおいて、さらに関数情報格納部135f4及び異常度計算部135f5を設けて、異常判定及び異常度の両方を出力するようにしてもよい。また、正常及び異常を問わずに異常度を出力してもよい。
上述では、ベルト張力の異常診断に関し、異常度の算出方法について説明したが、他の異常判定においても同様に異常度を算出することができる。例えば、電動機5の異常診断において偏心率の異常度を算出するようにしてもよい。
なお、上述の実施の形態1及び2において、異常診断装置100は、ハードウエアの一例を図14に示すように、プロセッサ1000と記憶装置2000から構成される。記憶装置は図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ1000は、記憶装置2000から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ1000にプログラムが入力される。また、プロセッサ1000は、演算結果等のデータを記憶装置2000の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
図15に示すように、さらに、通信装置3000を備えていてもよい。例えば負荷装置10の配設されたプラント内に負荷装置10をまとめて監視するプラント監視装置がある場合、異常診断装置100で判定された異常診断結果あるいは異常度を出力部140からプラント監視装置に送信することが可能となる。
なお、異常診断装置100が図14または図15に示されるハードウエアの構成であると説明したが、電動機制御装置110及び異常診断部130が個別に図14または図15に示されるハードウエアの構成を有していてもよい。
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
2:電源、 5:電動機、 6:動力伝達機構、 61:ベルト、 7:負荷設備、 10:負荷装置、 100:異常診断装置、 110:電動機制御装置、111:インバータ、 112:制御部、 120:電流検出器、 130:異常診断部、 131:負荷装置設定部、 132:第1格納部、 133:第2格納部、 133a:判定基準格納部、 133b:電動機周波数格納部、 133c:動力伝達機構周波数格納部、 133d:負荷設備周波数格納部、 135:演算部、 135a:スペクトル解析部、 135b:側帯波解析部、 135c:ピーク解析部、 135d:周波数判定部、 135f:異常判定部、 135f1:負荷トルク選定部、 135f2:特徴量計算部、 135f3:特徴量判定部、 135f4:関数情報格納部、 135f5:異常度計算部、 136:診断結果格納部、 137:異常度格納部、 140:出力部、 1000:プロセッサ、 2000:記憶装置、 3000:通信装置。

Claims (19)

  1. 電動機及び前記電動機に接続された負荷設備を含む負荷装置の異常を判定する異常診断装置であって、
    前記電動機の電流を検出する電流検出器と、
    前記電流検出器で検出された電流をFFT解析し抽出されたスペクトルピークを用いて異常を判定する異常診断部と、を備え、
    前記異常診断部は、
    前記電動機の電源周波数及び前記電源周波数に対する側帯波の周波数を用いて解析し、抽出された前記スペクトルピークを周波数別に解析するピーク解析部と、
    前記ピーク解析部で解析された前記スペクトルピークから前記電動機及び前記負荷設備のうちいずれの種別に起因するスペクトルピークの周波数かを判定する周波数判定部と、
    前記負荷装置が正常時において、前記電動機に起因するスペクトルピークの周波数及びその信号強度と、前記負荷設備に起因するスペクトルピークの周波数及びその信号強度とを前記電動機の負荷トルク毎に格納する周波数格納部と、
    異常判定部と、を有し、
    前記異常判定部は、
    異常診断時に前記電流検出器で電流を検出した時の負荷トルクを選定する負荷トルク選定部と、
    異常診断時に検出された電流をFFT解析し、種別判定された複数の診断用スペクトルピークに対し、前記負荷トルク選定部で選定された負荷トルク及び種別判定された種別に対応した正常時のスペクトルピークの周波数及びその信号強度を前記周波数格納部から読み出すとともに、複数の前記診断用スペクトルピークに対し、周波数毎に正常時との信号強度の差分の絶対値を計算して、その和を特徴量とする特徴量計算部と、
    予め設定された閾値と前記特徴量とを比較して前記負荷装置の異常を判定する特徴量判定部と、を備えた異常診断装置。
  2. 前記負荷装置は、前記電動機と前記負荷設備との間に動力伝達機構をさらに備え、
    前記周波数判定部は、
    前記ピーク解析部で解析された前記スペクトルピークから前記電動機、前記動力伝達機構及び前記負荷設備のうちいずれの種別に起因するスペクトルピークの周波数かを判定し、
    前記周波数格納部は、
    前記負荷装置が正常時において、前記電動機に起因するスペクトルピークの周波数及びその信号強度と、前記負荷設備に起因するスペクトルピークの周波数及びその信号強度と、前記動力伝達機構に起因するスペクトルピーク及びその信号強度と、を前記電動機の負荷トルク毎に格納する、請求項1に記載の異常診断装置。
  3. 前記動力伝達機構はベルトであり、
    前記異常判定部において、前記ベルトの張力異常を判定する、請求項2に記載の異常診断装置。
  4. 前記特徴量計算部は、複数の前記診断用スペクトルピークとして異なる次数のスペクトルピークを有し、複数の前記診断用スペクトルピークの周波数毎に正常時との信号強度の差分の絶対値を計算して、その和を特徴量とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の異常診断装置。
  5. 前記異常判定部は、関数情報格納部及び正常から異常への進行の程度を示す異常度を計算する異常度計算部をさらに備え、前記特徴量計算部で計算された前記特徴量と前記異常度との相関関係を前記関数情報格納部に格納された関数でフィッティングし、前記異常度計算部はフィッティングされた前記関数に基づいて前記特徴量に対応する前記異常度を計算する、請求項1からのいずれか1項に記載の異常診断装置。
  6. 前記関数情報格納部に格納された関数は1次関数である、請求項5に記載の異常診断装置。
  7. 前記電動機の負荷トルクは、前記電流検出器で検出された電流に基づいて計算する、請求項1からのいずれか1項に記載の異常診断装置。
  8. 電動機及び前記電動機に接続された負荷設備を含む負荷装置の異常を判定する異常診断装置であって、
    前記電動機の電流を検出する電流検出器と、
    前記電流検出器で検出された電流をFFT解析し抽出されたスペクトルピークを用いて異常を判定する異常診断部と、を備え、
    前記異常診断部は、
    前記電動機の電源周波数及び前記電源周波数に対する側帯波の周波数を用いて解析し、抽出された前記スペクトルピークを周波数別に解析するピーク解析部と、
    前記ピーク解析部で解析された前記スペクトルピークから前記電動機及び前記負荷設備のうちいずれの種別に起因するスペクトルピークの周波数かを判定する周波数判定部と、
    前記負荷装置が正常時において、前記電動機に起因するスペクトルピークの周波数及びその信号強度と、前記負荷設備に起因するスペクトルピークの周波数及びその信号強度とを前記電動機の負荷トルク毎に格納する周波数格納部と、
    異常判定部と、を有し、
    前記異常判定部は、
    異常診断時に前記電流検出器で電流を検出した時の負荷トルクを選定する負荷トルク選定部と、
    異常診断時に検出された電流をFFT解析し、種別判定された複数の診断用スペクトルピークに対し、前記負荷トルク選定部で選定された負荷トルク及び種別判定された種別に対応した正常時のスペクトルピークの周波数及びその信号強度を前記周波数格納部から読み出すとともに、複数の前記診断用スペクトルピークに対し、周波数毎に正常時との信号強度の差分の絶対値を計算して、その和を特徴量とする特徴量計算部と、
    関数情報格納部と、
    正常から異常への進行の程度を示す異常度を計算する異常度計算部と、を備え、
    前記特徴量計算部で計算された前記特徴量と前記異常度との相関関係を前記関数情報格納部に格納された関数でフィッティングし、前記異常度計算部はフィッティングされた前記関数に基づいて前記特徴量に対応する前記異常度を計算する、異常診断装置。
  9. 前記負荷装置は、前記電動機と前記負荷設備との間に動力伝達機構をさらに備え、
    前記周波数判定部は、
    前記ピーク解析部で解析された前記スペクトルピークから前記電動機、前記動力伝達機構及び前記負荷設備のうちいずれの種別に起因するスペクトルピークの周波数かを判定し、
    前記周波数格納部は、
    前記負荷装置が正常時において、前記電動機に起因するスペクトルピークの周波数及びその信号強度と、前記負荷設備に起因するスペクトルピークの周波数及びその信号強度と、前記動力伝達機構に起因するスペクトルピーク及びその信号強度と、を前記電動機の負荷トルク毎に格納する、請求項8に記載の異常診断装置。
  10. 前記動力伝達機構はベルトであり、
    前記異常判定部において、前記ベルトの張力異常を判定する、請求項9に記載の異常診断装置。
  11. 前記特徴量計算部は、複数の前記診断用スペクトルピークとして異なる次数のスペクトルピークを有し、複数の前記診断用スペクトルピークの周波数毎に正常時との信号強度の差分の絶対値を計算して、その和を特徴量とする、請求項8から10のいずれか1項に記載の異常診断装置。
  12. 前記関数情報格納部に格納された関数は1次関数である、請求項8から10のいずれか1項に記載の異常診断装置。
  13. 電動機及び前記電動機に接続された負荷設備を含む負荷装置の異常を判定する異常診断方法であって、
    前記電動機の電流を検出する第1ステップと、
    検出された前記電流をFFT解析しスペクトルピークを検出する第2ステップと、
    前記第2ステップで検出された前記スペクトルピークから、前記電動機の電源周波数に対する側帯波の周波数を抽出する第3ステップと、
    前記電源周波数と抽出された前記側帯波の周波数とを用いて、前記スペクトルピークが前記電動機及び前記負荷設備のうちいずれの種別に起因するスペクトルピークの周波数かを判定する第4ステップと、
    前記第1ステップで電流を検出した時の前記電動機の負荷トルクを選定する第5ステップと、
    前記第4ステップで種別ごとに判定された複数のスペクトルピークの周波数毎の信号強度に対し、前記第4ステップで判定された種別に対応するとともに前記第5ステップで選定された負荷トルクに対応する、正常時の前記種別に起因するスペクトルピークの周波数の信号強度との差分の絶対値の和を特徴量として計算する第6ステップと、
    前記第6ステップで計算された前記特徴量を予め設定された閾値と比較し、前記負荷装置の異常を判定する第7ステップと、を備えた異常診断方法。
  14. 前記負荷装置は、前記電動機と前記負荷設備との間に動力伝達機構をさらに備え、
    前記第4ステップにおいて、前記電源周波数と抽出された前記側帯波の周波数とを用いて、前記スペクトルピークが前記電動機、前記動力伝達機構及び前記負荷設備のうちいずれの種別に起因するスペクトルピークの周波数かを判定する、請求項13に記載の異常診断方法。
  15. 前記動力伝達機構はベルトであり、
    前記第7ステップにおいて、前記ベルトの張力異常を判定する、請求項14に記載の異常診断方法。
  16. 前記第6ステップにおいて、複数の前記スペクトルピークとして異なる次数のスペクトルピークを有し、複数の前記スペクトルピークの周波数毎に正常時との信号強度の差分の絶対値を計算して、その和を特徴量とする、請求項13から15のいずれか1項に記載の異常診断方法。
  17. 前記第6ステップの後に、前記特徴量と異常度との関係を予め設定された関数でフィッティングし、正常から異常への進行の程度を示す前記異常度を計算するステップを備えた請求項13から15のいずれか1項に記載の異常診断方法。
  18. 前記異常度を計算するステップに用いられる関数は1次関数である、請求項17に記載の異常診断方法。
  19. 前記第6ステップで用いられる、正常時の前記種別に起因するスペクトルピークの周波数とその信号強度及び前記負荷トルクを前記第1ステップから前記第5ステップで取得し、予め格納しておく、請求項13から15のいずれか1項に記載の異常診断方法。
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