JP7843610B2 - 人工網膜用のハニカム形状の電気神経インターフェース - Google Patents

人工網膜用のハニカム形状の電気神経インターフェース

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Description

本発明は、本発明は、神経細胞の電気刺激に関する。
従来の人工視覚デバイス用の刺激アレイは、アクティブ電極と戻り電極の平面状の構造を有する。この平面状の構造は、人工視覚デバイスを、小さく、かつ有用な視力を提供するのに十分な程度に密に詰まったピクセルを有するようにスケーリングする際に深刻な困難を生ずる。ピクセルサイズが小さくなると、2つの主な問題が生ずる。すなわち隣接するピクセル間のクロストークの増加、及びピクセル刺激しきい値(つまり、細胞応答を取得するために必要な電流密度)が高くなることである。ピクセルサイズが小さくなると刺激しきい値を増加させること、網膜インプラントとして望ましいピクセルサイズにおいて必要な電流密度が生物学的に危険になることから、特に厄介な問題となる。従って、平面状刺激アレイのこれらの限界を緩和することが当技術分野における進歩となろう。
網膜細胞の網膜下空間の空隙への移動を向上させるように設計された神経細胞刺激用の電極アレイの3次元構成を提供する。各ピクセルを囲む壁が電界を垂直に整列させ、網膜の双極細胞の方向に一致させ、それによって刺激のしきい値を下げる。またこれらの壁により、電界侵入深さに対するピクセル幅の影響が切り離され、ピクセルサイズが細胞寸法まで縮小可能となる。内側の網膜細胞はハニカムウェルに移動するため、これらの神経細胞は電極のキャビティ内に存在し、非常に効率的な刺激が可能となる。電界をキャビティに沿って1次元で整列させることにより、刺激しきい値電流密度が、ピクセルサイズの縮小に伴って大幅に増加することがなくなり、平面状アレイで見られる二次曲線的な増加は生じない。この3次元電極構成により、平面状電極アレイよりもはるかに小さいピクセルで視力を回復できる可能性が得られる。同様の3次元アレイは、他の用途における脳との電気神経インターフェースに使用することもできる。
好ましい実施形態では、ピクセルのキャビティは、10μm~100μmの間の深さ、及び5μm~100μmの間の幅を有する。アクティブ中心電極での電流密度は、好ましくは、0.01A/cm~1A/cmの間である。装置全体の幅は、好ましくは0.5mm~5mmの間であり、網膜移植に適している。アクティブ電極へのパルスあたりの注入電荷密度は、好ましくは、0.1mC/cm~10mC/cmの間である。
本発明の用途としては、網膜変性における視力回復のための人工視覚デバイス、及び一般的な高解像度の電気神経インターフェースが含まれる。本発明の実施により、電気神経インターフェースのピクセルを細胞の寸法まで縮小することが可能となるという有利な効果が得られる。
図1は、神経細胞刺激のための平面状アレイの動作を概略的に示す図である。 図2Aは、本発明の第1の実施形態を示す図である。 図2Bは、本発明の第2の実施形態を示す図である。 図3-1は、(A)及び(B)からなり、平面状刺激アレイ(A)と、非平面状刺激アレイ(B)の差異を示す図である。 図3-2は、(C)及び(D)からなり、それぞれ図3-1の(A)及び(B)のインプラントの上層をなす組織を示す図であり、網膜の解剖学的構造を示す。 図4Aは、作製されたキャビティのアレイの画像を示す図である。 図4Bは、作製されたキャビティのアレイの画像を示す図である。 図4Cは、動物の網膜の下のハニカム型インプラントの画像を示す図である。 図5は、埋め込まれたハニカム型アレイと統合(一体化)した網膜の組織学を示す図である。 図6Aは、平面状アレイ(上)及びハニカム型アレイ(下)のシミュレートされた電位を示す図である。 図6Bは、安全限界と比較され、ハニカム型アレイのシミュレートされたしきい値電流密度対ピクセルサイズと比較された、平面状アレイの実験的な及びシミュレートされたしきい値電流密度対ピクセルサイズを示す図である。
以下、(A)では本発明の実施形態に関連する一般的な原理を説明する。(B)では、実験例の詳細を説明する。
(A)一般的な原理
本発明の実施形態をよりよく理解するために、図1に示される、従来技術の平面状刺激アレイ100の動作を最初に検討することが有用である。この図は、ピクセル102、104、106の行の断面図である。「オン」ピクセル(102及び106)は、電流を生成し、その電流を中央のアクティブ電極(例えば、ピクセル102の108)を通して電解質に注入し、次に、電流は、ピクセル外部の(またはピクセル間の)離隔戻り電極110によって収集される。電流の流れは黒い矢印で示されている。電解質を流れる電流は、電位の勾配(陰影で示す)を生成する。電流はアクティブ電極からすべての方向に広がり、隣接するピクセルの細胞にも影響を与える。例えば、Xの符号を付された「オフ」ピクセル104は、隣接するピクセルから寄生刺激を受け取り、望ましくない結果であるコントラストの低下をもたらす。
図2Aは、本発明の第1の実施形態の断面を示す。図2Aの実施形態では、刺激アレイ200は、ピクセル202、204、206を含む。「オン」ピクセル202及び206は、電流を生成し、その電流を中央のアクティブ電極(例えば、ピクセル202の214)を通して電解質に注入する。電流は電解質(組織)を通って上向きに流れ、壁218の上部にある戻り電極、すなわち戻り電極216によって収集されて、回路を完成させる。電解質を通る電流は、主に「オン」ピクセルの前に電位の勾配(陰影で示す)を生成し、これにより網膜の局所的な刺激が可能となる。図2Aのピクセル204の上の図1のピクセル104と比較して薄くなった陰影に留意されたい。導電性ハニカム壁218の上部に堆積された大容量材料(戻り電極216)により、電解質を通る電流の大部分が壁の上部に集められ、電流が導電性壁の側面を通して収集される電流は金属と電解質の間の界面の静電容量が小さいため無視できるレベルになることが確実となる。このような構成により、側壁の不動態化または絶縁を必要とせずに、ハニカム構造を有する戻りの高い電極を作製することが可能となる。
より正確には、本発明の第1の実施形態は、キャビティ内の神経細胞の移動を可能にするように構成されたキャビティのアレイを含む神経細胞の電気刺激のための装置である。各キャビティは、床(例えば、図2Aの212)及び導電性の壁(例えば、図2Aの218)を有する。各キャビティは、その床に配置された第1の電極(例えば、図2Aの214)を有し、前記壁の上部に配置され、対応する床電極から垂直に離隔された第2の電極(例えば、図2Aの216)を有する。装置の動作中、イオン電流がキャビティの内容物を通って流れる。第2の電極のキャビティ1つあたりの静電容量は、導電性の壁のキャビティ1つあたりの静電容量よりも大きく、それにより、第2の電極は、導電性の壁の側面より優先的にイオン電流を収集する。好ましくは、第2の電極の単位面積あたりの静電容量は、導電性壁の単位面積あたりの静電容量よりも少なくとも100倍大きい。
図2Bは、本発明の第2の実施形態の断面図を示す。ここで、刺激アレイ250は、ピクセル252、254、256を含む。「オン」ピクセル252及び256は、電流を生成し、中央のアクティブ電極(例えば、ピクセル252の214)を通して電解質に注入する。電流は、電気絶縁性の壁262に囲まれたハニカムウェルを通って上向きに流れ、次に、ピクセルの外側の離隔戻り電極264によって収集される。電解質を通る電流は、主に「オン」ピクセルの前に電位の勾配(陰影)を生成し、垂直壁がない場合よりもはるかに優れた網膜の局所刺激を可能にする。図1のピクセル104と比較して、図2Bのピクセル254の上の陰影が薄くなっていることに留意されたい。
より正確には、本発明の第2の実施形態は、キャビティ内の神経細胞の移動を可能にするように構成されたキャビティのアレイを含む神経細胞の電気刺激のための装置である。各キャビティは、床(例えば、図2Bの212)及び電気絶縁性の壁(例えば、図2Bの262)を有する。各キャビティは、その床に配置された第1の電極(例えば、図2B上の214)を有する。この装置は、キャビティのアレイの外側に配置された共通の戻り電極(例えば、図2B上の264)を含む。装置の動作中、イオン電流がキャビティの内容物を通って流れる。電気絶縁性の壁は、イオン電流をキャビティ内を垂直に移動させることにより、刺激効率を改善し、装置の隣接するキャビティ間のクロストークを低減する。
図2A~図2Bの実施形態の好ましい構成は以下の通りである。キャビティの深さは、好ましくは10μm~100μmの間である。キャビティの幅は、好ましくは5μm~100μmの間である。キャビティの深さは、好ましくは、キャビティの幅よりも大きい。キャビティのアレイは、好ましくは周期的であり、この場合、キャビティは六角形であることが好ましい。好ましい実施形態では、神経細胞は網膜細胞である。好ましくは、キャビティの第1の電極に注入された電荷密度は、動作中、0.1mC/cm~10mC/cmの間である。
前述の説明では、キャビティのそれぞれが壁を有するキャビティであると称することが便利であった。しかし、ほとんどの場合、アレイ構造(例えば、図4Aのように)では、壁が隣接するキャビティ間で共有されていることは明らかである。共有壁の場合、壁の部分が2つの隣接するキャビティのそれぞれに任意に割り当てられる。本発明の実施に際しては、この理論上の分割がどのように行われると考えられるかには何ら影響を受けない。同様に、局所的な戻り電極(例えば、図2Aの216)は、ほとんどの場合、隣接するキャビティ間で同様に共有される。共有戻り電極の場合、戻り電極の部分が2つの隣接するキャビティのそれぞれに任意に割り当てられる。本発明の実施に際しては、この理論上の分割がどのように行われると考えられるかには何ら影響を受けない。
(B)実験例の詳細
(B1)序論
視力回復への電子的アプローチは急速に進歩しており、遺伝性網膜変性症(網膜色素変性症、RP)によって盲検化された患者での臨床使用が承認されたシステムも存在すれば、臨床試験中のシステムも存在する。RPの影響を受け、網膜上プロテーゼArgus(商標)II(Second Sight Medical Products Inc.米国カリフォルニア州シルマー)または網膜下Alpha IMS/AMS(商標)(Retina Implant AG 独国ロイトリンゲン)が移植された患者は、歩行と視覚探索のパフォーマンスの向上を示し、最もよく報告されている視力はそれぞれ20/1260と20/546であった。好ましい結果と言えるが、これらの有利な効果は、網膜変性の最も一般的な形態である加齢性黄斑変性症(AMD)を補助するのに十分ではなく、この場合、患者は通常20/400以上の視力で周辺視野を保持するが、高解像度の中心視力を失うことになる。
米国の法定失明の限度である20/200の視力は、幾何学的に約50μmのピクセルピッチに対応する。電極と電解質の界面を横断する電荷注入の安全を確保するために、電極の最小サイズに制限が加わる。さらに、隣接する電極間のクロストークは、ピクセルサイズが小さくなると増加する。後者の問題は、各ピクセルに円周方向の戻り電極を設けることで対処できるが、この手法により、組織への電界の侵入深さがさらに減少する。
網膜下腔での電極と組織の分離は、ピラー電極を使用して低減することができる。内顆粒層(INL)の網膜細胞が移動して、このような3Dインプラントの空隙を埋めると、標的ニューロンが刺激電極に近づき、刺激しきい値が低下する。しかし、そのようなピラー電極は、刺激しきい値を2分の1だけしか減少させず、55μm未満のピクセルサイズでは有意な減少を達成できなかった。電極のサイズを制限している根本的な問題は、小さな電極から広がって標的細胞の下の別の電極に戻る電界の形状にある。
ここでは、これらの制限を克服し、ピクセルを細胞の寸法に縮小できるようにするために、網膜下プロテーゼの新しい3Dジオメトリを提示する。これをハニカム型構成と呼ぶ。このアプローチでは、戻り電極は、各ピクセルを囲む垂直の絶縁性壁で持ち上げられ、電界を垂直に整列させ、網膜の双極細胞の方向に一致させ、それによって刺激のしきい値を下げる。図3-1(B)の持ち上げ戻り電極306を、図3-1(A)の平面状構成と比較する。ここで、302は刺激電極であり、304は刺激電極302が配置される基板である。
図3-2(C)は、周方向の戻りを有する平面状ピクセルが、垂直方向への延びが短い局所的に閉じ込められた電界を生成することを示している。電界内の細胞は、それらの長さ全体にわたる電位差によって分極する。双極細胞体細胞と軸索終末は、それぞれINL(内顆粒層)とIPL(内網状層)に存在する。従って、電位はIPLの途中の電位に対する電位として表される。図3-2(D)は、絶縁壁の上部にある戻り電極が、局所的なピクセル体積に限定された垂直ダイポールを生成し、それによって、標的細胞層全体の垂直方向の電位降下を最大化することを示している。電流の大きさ(矢印の長さ)は対数目盛で表示されている。IPLの中央(57μm)に関する電位差は、68nAの電流に対してグレースケールで示されている。
これらの壁により、電界の延びの深さがピクセル幅から切り離され、ピクセルサイズを細胞のサイズまで縮小が可能となる。まず、20、30、40μmピクセルのインプラントを使用して、このような3D構造と網膜の解剖学的統合を調べ、次に、実験測定によって検証されたネットワーク媒介網膜刺激モデルを使用して電気刺激能力を定量化する。この実験の結果は、この技術が20/100よりも優れた視力で人工視力への扉を開くことを示しており、このことは、RPによって完全に盲目になっている患者だけでなく、AMDのはるかに多くの患者の中心視力の回復にも非常に有益である。
網膜下腔に埋め込まれた膜の開口部への網膜細胞の移動と、網膜下プロテーゼへの影響について以前に説明した。しかし、その膜の構成では、インプラントの底部には、電流がインプラントの下を伝播することを可能にする開口部があった。しかし実際には、人工網膜インプラントは通常、中実である。すなわち、電流はそれらを貫通せず、従って、ここで図3-2(C)及び図3-2(D)に示されるように、それは上向きにのみ流れることができる。従って、ここでは、このような刺激アレイを使用した電界の最適な成形に適した戻り電極のさまざまな形状と材料について説明する。
(B2)結果
(B2a)解剖学的統合
図4A~図4Cは、網膜下ハニカム型インプラントを示す。図4Aは、40μm(*)、30μm(**)、及び20μm(***)ピクセルピッチの25μmの深さのハニカム構造を備えた1mm幅のデバイスの画像を示している。第4象限には10μmピッチの構造が含まれていたが、これは処理限界を超えていたため、作製しなかった。壁がないため、これを「平面状」領域と呼ぶ。図4Bは、30μmピッチのハニカムの高倍率の像である。図4Cは、術後6週間のRCSラットにおける網膜下インプラントのOCT画像である。スケールバーは、図4Aでは200μm、図4Bでは50μm、図4Cでは100μmである。
ハニカムと変性網膜との統合を評価するために、直径1mmのシリコンアレイをRCSラット(P180-300、n=6)の網膜下腔に6週間移植した。各アレイを、40μm、30μm、及び20μmピッチのハニカム領域と平面状領域を含む象限に分割した(図4A)。アレイは、25μmの深さのハニカムチャンバを画定するためにボッシュエッチングプロセスを用いてシリコンで製造した(図4B)。網膜とのインプラントの統合は、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)によって生体内でモニタリングした(図4C)。移植の6週間後、INLはハニカム領域の上のOCTではほとんど検出できなかったが(図4C、右)、平面状の象限の上(図4C、左)とインプラントの外側にみられ、これはINLがキャビティに移動していることを示している。
図5に示すように、組織学的検査によりINL細胞の遊走が確認され、線維症や外傷の目に見える兆候は見られなかった。網膜構造は保存されたままであり、明確にINL、内網状層(IPL)、及び神経節細胞層(GCL)が存在する。一部のINL細胞はハニカム壁の上に残ったが、キャビティはアレイの基部まで密集した細胞で完全に満たされている。黒い矢印は、元の壁の位置を指している。壁は、サンプルの埋め込み後に除去され、セクショニングのためにエポキシが再充填された。図5のスケールバーは40μmである。
網膜統合と免疫応答の包括的な評価は、インプラントを使用した網膜全体の3D共焦点イメージングを使用して行った。3D再構成により、観察されたハニカムキャビティのほとんどにINL(DAPI)が密に詰まっていることがわかる。単一のハニカム列の側面図は、アレイの基部までの完全な移行を示している。
縮退したRCS制御網膜内では、IPL内の拡張ミクログリアプロセスはミクログリアの休止状態を示し、INLの下のミクログリアは縮退した外網状層(OPL)を介してプロセスを拡張する。網膜下インプラントでは、IPLのミクログリアは対照網膜のミクログリアと同様にみられ、拡張プロセスはミクログリアの休止状態を示す。平面状インプラントでは、ミクログリアはデバイス表面の近くに存在する。これらのアクティブなインプラントによる皮質反応の存在は、網膜下プロテーゼ上のミクログリアが電気刺激を妨げないことを示している。ハニカム型インプラントを使用すると、ミクログリアプロセスは主に壁の上部に沿って広がり、ウェルへの広がりは最小限に抑えられる。
網膜統合の程度は、各サイズのキャビティの基部からの高さの関数として細胞密度を分析することによって評価した。INL細胞の平均50%、45%、54%が、それぞれ40、30、20μmのハニカムピッチのキャビティ内で見つかった。電場は壁の上に広がることができるので(図6A)、より多くの細胞を刺激することができる。
(B2b)生体内での網膜反応のモデル化
図6Aは、0.5A/cmのアクティブ電極電流密度の場合について計算された、IPLの中央(z=57μm)に対する平面状アレイ(上)及びハニカム型アレイ(下)の電位を示す。図6Bは、アクティブ電極上の電流密度に関して、平面状デバイス(破線)及びハニカム型デバイス(点線)デバイスの実験的しきい値(データポイント)及び計算されたしきい値を示す。平面モデル(以下で説明するように、バイナリと線形の両方)は、実験測定で観察された傾向を再現する。ハニカム型アレイは刺激しきい値(点線)を大幅に低減し、これにより40μm未満のピクセルを有するデバイスの安全な操作が可能となる。SIROFによる最大電荷注入(10msパルスで3mC/cm)は一点鎖線で示されている。ここで、SIROFはスパッタイリジウム酸化物フィルムの略である。種々の手段(電気めっき、化学蒸着など)で蒸着されたIrOx、多孔質Pt、PEDOT、カーボンナノチューブなどの他の生体適合性のある大容量材料も高容量電極に使用できる。
ハニカム形状のアレイの利点を評価するために、ネットワークを介した網膜刺激のモデルを使用した。このモデルを検証するために、まずモデリング結果を、さまざまなピクセルサイズの平面状網膜下光起電インプラントを使用したラットで測定された生体内刺激しきい値と比較し、次にさまざまなサイズのハニカム型アレイの刺激しきい値を計算した。
このシステムの完全なモデル化には、デバイスによって生成されたシミュレートされた電界(図6A)を網膜内ニューロンの応答に変換し、その後のネットワークを介した処理を網膜神経節細胞(RGC)活性に適用し、最後に網膜出力を視覚誘発皮質電位(VEP)に変換する必要があり、これは複数の未知数を伴う非常に複雑なモデリングタスクである。このタスクは、次の2つの仮定、(1)ネットワークを介した刺激は、シグモイド曲線に従うRGC活性を誘発し、(2)皮質反応は、網膜信号の合計によって駆動され、シグモイド曲線に従う、という仮定で簡略化できる。本発明者は、ネットワークを介した網膜応答の電界へのシグモイド依存性を、従前に行われた実験から、(1)刺激しきい値を横断するバイナリ遷移をモデル化するステップ関数と、(2)刺激の増加に応じた神経出力の漸次的増加をモデル化する線形関数、という2つの極端な方式のモデル化で近似した。その結果、総網膜応答は、INLのボリューム全体の細胞応答を、(1)バイナリ係数(つまり刺激しきい値を超えるINLボリュームの一部のみを計算する)、または(2)その分極に比例する細胞応答のいずれかと統合することによって計算される。従って、2つのモデルをそれぞれ「バイナリ」及び「線形」と呼ぶ。
網膜の電界は、定常状態の電流を想定し、COMSOL Multiphysics(商標)5.0のアレイ全体の有限要素モデルを使用して計算し、静電モジュールを使用してマクスウェルの電位方程式を解いた。次に、計算した電界を、バイナリモデルと線形モデルの両方を使用して網膜応答に変換した。各モデルには、網膜出力を皮質反応の振幅に関連付けるためのフィッティングパラメータは1つしかない。バイナリモデルの場合、皮質応答を引き出すためにアクティブ化する必要があるのはINL細胞の割合であったが、線形モデルの場合、線形フィッティングの傾きであった。放射照度は、ピクセルの形状と2ダイオードピクセルの光から電流への変換効率に基づいて電流密度に変換される。従って、バイナリモデルをフィッティングさせるために、電場と放射照度を計算し、全てのピクセルサイズで刺激しきい値(10ミリ秒の陽極パルスで4.8mV、「方法」の項を参照)を超えるINLの割合を計算する。以前に記録された140μm、70μm、55μm、及び40μmピクセルの実験しきい値を使用すると、VEP応答を引き出すには、INLボリュームの8.27±1.42%が刺激しきい値を超えている必要があることがわかる。バイナリモデルと線形モデルはいずれも、刺激しきい値とピクセルサイズの非常に類似したスケーリングを生成し、このことは、非常に重要な要素が、シグモイド応答曲線の細部ではなく電界の形状であることを示している。
(B2c)ハニカム型アレイによる刺激しきい値
平面状インプラントで得られた生体内刺激しきい値との比較によって検証されたバイナリモデルパラメータを使用して、ハニカム型アレイの刺激しきい値を計算した(「方法」の項の詳細を参照)。これらのしきい値は、10msパルスのアクティブ電極上の電流密度に関して同じサイズの平面状ピクセルの場合よりも大幅に低く、ピクセルサイズの減少に伴ってあまり増加していない(図6B)。円周方向の戻りを伴う平面状アレイは、(a)アクティブ電極からの電界の半径方向の広がり、及び(b)同一平面上の戻り電極(図3-2(C))のために、垂直軸に沿った電位の急激な低下の問題が生ずる。その結果、40μm未満の平面状ピクセルには、10msパルス(>30mA/cm、または電荷密度が>3mC/cm)に対してSIROFの安全な電荷注入限界よりも大きい電流密度が必要となる。ピクセルを取り囲む絶縁ハニカム壁の上に戻り電極を配置すると、電流が主にアクティブ電極から上向きに流れるようになり(図3-2(D))、それによって電位が刺激しきい値を超える深さが大幅に増加する。さらに、ハニカム型アレイでは、組織への電界の侵入深さは、壁の高さによって設定されるため、ピクセル幅から切り離される。従って、電流密度に関する刺激しきい値は、ピクセル幅に依存せず(図6B)、ピクセルサイズを、網膜の移動によってのみ、すなわち細胞の寸法によってのみ制限されるサイズまで縮小できる。刺激しきい値の向上は表1に要約して示されている。
[表1]種々のピクセルサイズで計算された刺激しきい値電流密度
アスタリスク(*)は、SIROF電荷注入制限を超える10msパルスの電流密度を示す。
刺激のしきい値に加えて、ハニカム電極は、高い視力に不可欠な電気刺激の空間選択性(つまり、隣接するピクセル間のコントラスト)を大幅に改善する。視力の生体内評価に使用される格子パターンを複製するために、ONピクセルとOFFピクセルの交互の行を使用してアレイからの電界分布をシミュレートする。両方の構成の電極のいずれの場合も、電流密度を上げると、ONピクセルより上の正の電位と、OFFピクセルより上の負の電位が増加する。ハニカム形状の絶縁性壁は、電界の横方向の広がりを防止し、それによって、ONピクセルの選択的アクティブ化のダイナミックレンジを広げる。さらに、電界はハニカム形状の壁の上に広がり、安全な電荷注入限界内でキャビティの基部から最大40μmの細胞を刺激し、クロストークなしで網膜全体の最大99%のアクティブ化が可能となる。
(B3)検討
本発明者らによる研究は、現在のシステムの限界をはるかに超えた人工網膜の空間分解能の改善への道を提供する。最近まで、臨床試験で達成された人工視力の最高の視力は20/546であり、Alpha IMS/AMS網膜下インプラントを使用した2人の患者で観察された[2,20]。70μmピクセルの場合、この人工視覚デバイスはサンプリング限界に対して2倍性能が低下しており、ピクセルサイズを継続的に縮小しても視力は改善されないと結論付ける人もいる。しかし、これらのデバイスのボトルネックは、生物学的ではなく電気的である可能性がある。すなわち各ピクセルのアクティブ電極が共通の離隔戻り電極を共有するこのインプラントの単極構成では、隣接する電極間で強いクロストークが発生し、空間コントラストが大幅に低下する。各ピクセルにアクティブ電極と戻り電極を設ける代替的な設計により、電界の局在化と関連する空間分解能が向上する。実際、局所的戻り電極を備えた100μmピクセルの光起電性網膜下インプラントを使用した最近の臨床試験では、最大20/460の視力が示された。これは、このピクセルサイズ(20/400)のサンプリング限界をわずか15%しか下回っていない。さらに、ラットでは、70μm及び55μmピクセルの同様のインプラントが、サンプリング限界に一致する格子視力を提供した。これは、視力が各ピクセルの電界を適切に制限すると、刺激アレイのサンプリング密度の限界に達する可能性があることを示している。しかし、ピクセルサイズのさらなる減少は、刺激しきい値の急速な増大によって制限され、これは、40μm幅の平面状ピクセルで安全限界近くまで上昇する(図6B)。
本発明の実施で説明されている刺激アレイの根本的に異なる形状(ハニカム構成)は、この基本的な制限の問題に対処している。キャビティの底にあるアクティブ電極からの電流は、絶縁性壁によるピクセルの閉じ込めのために上向きに流れる(図3-1(B)及び図3-2(D))。電界の形状のこの変化は、刺激のしきい値を劇的に低下させる。さらに、電流の一方向の流れは、ピクセルサイズに応じて刺激しきい値のスケーリングを根本的に変える。この場合、必要な電流は電極のサイズによって変化しないため、電流密度は電極の面積に反比例して増加、つまり、半径の二乗に比例する。電極サイズとピクセル幅の比率が一定に維持されている場合、ピクセルが小さいほど高い電流密度が必要になるが、これは材料特性によって制限される。ただし、一次元の電流の流れでは状況が異なる。すなわち特定の電位降下に必要な電流密度はピクセル幅によって変わらないため、電極上で同じ電流密度を維持しながら、ピクセルをはるかに小さくすることができる。このことは、光起電性ピクセルの場合、ピクセル幅に対する電極の相対的な寸法が変化しない限り、しきい値放射照度はすべてのピクセルサイズでほぼ同じままである必要があることを意味する。
ハニカム設計は、網膜下空間の空隙に移動する網膜内神経細胞の能力により、網膜下配置に独自に適している。本発明者らの研究から、内側の網膜ニューロンが幅18μm(ピクセルピッチ20μm)の小さなウェルに容易に移動することが分かった。6週間後の組織の生存率は、インプラントの上にある網膜血管系からの酸素と栄養素の拡散が、25μmの高さの壁内での細胞の生存に十分であることを示している。本発明者らの研究では統合の下限が観察されなかったため、ピクセル幅は縮小し続ける可能性があるが、約10μmの細胞サイズを下回ってはいないのは確実である。この範囲内の正確な最小値を決定するには、さらに実験が必要である。ピクセルサイズをさらに小さくしなくても、20μmピクセルのアレイは、ラットの自然な視力に一致する空間分解能の達成を可能にするが、これはヒトの視力の20/100よりも優れているはずである。
INLの大部分がキャビティに移動しても、網膜構造の残部には影響を与えないとみられ、INL、IPL、及びGCLが明確に表示されている。INL細胞のRGCへの接続の全ては、IPLのハニカム壁の上にあるため、網膜信号処理はこの移行の影響を受けないと予想される。外網状層(OPL)の光受容体の末端に接続された水平細胞を介した双極細胞間の横方向の接続性は、光受容体がないために変性網膜で失われている可能性がある。ハニカム壁のミクログリアの数は平面状デバイスの場合と同様であることがわかり、後者は動物の生涯を通じてVEPを誘発するため、両方のインプラントによる免疫応答は許容範囲だとみられる。興味深いことに、ハニカム形状を使用すると、ミクログリアは壁の上部に局在し、神経細胞が刺激電極の近くに移動できるようになる。
離隔した戻り電極を備えた既存の網膜下人工視覚デバイスに、ピクセルの周りに垂直壁を組み込むこともできる。そのような単極構成では、ウェルに移動する双極細胞の分極は、電場の垂直方向の整列のためにより効率的になるはずであり、従って、刺激しきい値ならびに隣接するピクセル間のクロストークは、図2Bに示されるように減少するはずである。ただし、局所的な戻り電極がない場合、暗いピクセル内の電位は、光が入った隣接ピクセルの影響を受ける。そのため、このようなアレイに表示されるパターンのダイナミックレンジは、図2Aに示す双極電極構成の場合よりも低くなる。
定常状態では、電極表面の電流密度は、単位面積あたりの静電容量に比例する。従って、電極が静電容量の非常に異なる2つの材料で構成されている場合、電流は主に静電容量の大きい方に流れる。この現象のため、静電容量が戻り電極のために壁の上に堆積された材料の静電容量よりもはるかに低い場合に限り、導電性材料からの3D電極の垂直壁の作製が可能となる。壁は導電性材料で作製されているが、電解質に流れる電流が非常に少なく、単位面積あたりの静電容量が非常に小さいため、液体中では壁が絶縁体からなるかのように作動する。例えば、壁は生理食塩水中で0.01mF/cmのオーダーの静電容量を有する金で電気めっきできるが、壁の上部の戻り電極は1~10mF/cmの静電容量を持つ酸化イリジウムから作製される。金属製の壁は導電性であるため、このような壁の上部にあるIrOxを電気めっきすることができる。あるいは、IrOxはスパッタリングによって堆積することができるが、この場合には導電性の壁がこのコーティングをデバイスの表面の電気回路に接続する。壁は、プラチナ、アルミニウム、モリブデンなどの他の金属で作製することもできる。
電解質と側壁の間で電流が流れるのを防止するために、側壁を非導電性材料でコーティングすることもできる。例えば、アルミニウムやモリブデンの酸化により、その表面は非導電性になる。壁はまた、限定しないが、原子層堆積または非導電性材料のフォトリソグラフィーを含む付加的なプロセスによって絶縁処理され得る。あるいは、壁は絶縁体で作製することができる。この場合、そのような壁の上に堆積された戻り電極は、この目的のために壁の上に堆積された導電性トラックを介して電気回路に接続されることになる。
インプラント内のピクセルは光起電性、つまり、アクティブ電極と戻り電極の間に接続されたフォトダイオードを使用して、ピクセルに当たる光を電流に変換する構成であり得る。あるいは、電流を有線接続を介して電極に供給することができる。
ハニカム型キャビティへの細胞の移動を可能にするために、それらの幅は細胞サイズを超えている、すなわち5μmより大きい幅である必要がある。キャビティの幅が深さを大幅に超えると、キャビティの有利な効果は無視できる程度になってしまう。図6Bに示されるように、網膜刺激については、100μmより大きいピクセルでは無視できる程度になる。網膜下移植に使用するために、すなわち、剛性を有するアレイの便利なタイリングがヒトの目の曲面に追従できるようにするために、アレイのサイズは、0.5~5mmの範囲、より一般的には1~3mmでなければならない。これらの寸法では、アレイは前述のように柔軟な材料を使用する必要はないが、より大きなアレイの場合、目に適合させるために柔軟な基板を組み込むことができる。キャビティの深さは、内顆粒層からの細胞の移動を可能にするものでなければならない。つまり、内顆粒層と網膜下破片層の厚さ、つまり20~70μmの範囲である。生体内での6週間の移植後の組織生存率から、ウェルの底部の穿孔は、追加の栄養素の流れ及び組織の生存のために必要でないことが分かる。
側壁は、インプラントの外植を可能にすると同時に、網膜下腔内の機械的安定性を向上させるように設計できる。この研究で示されているように、完全に滑らかな垂直壁は、デバイスが組織から取り外されたときに組織に大きな機械的力を及ぼさない。しかし、キャビティに移動する組織が、デバイスを網膜に対して横方向に固定する手段となる。壁の上部に追加の張り出し部は、電気めっき手順をガイドするトレンチの上に電気めっきすることによって導入できる。この場合、キャビティ開口部do<dcはその幅よりも小さくなるため、z軸に沿ったインプラントの安定性をさらに向上させることができる。ただし、これによりデバイスの外植がより外傷を与えやすくなる可能性があるため、正しい構成は患者の年齢と外植の可能性に基づいて決定され得る。
表1に示すように、刺激しきい値は0.01~1A/cmの範囲で、パルス幅は10msである。従って、電極材料は、0.1~10mC/cmの範囲の電荷密度を注入できるように選択する必要がある。
インプラントが入射光に対して傾斜している場合、ハニカム形状の反射側壁は、ウェルの底にあるインプラントの感光領域に放射を向けるのに役立つ。この目的のために、電気めっきを使用して金属で壁を作ると、可視光及び赤外光に対する金属の高い反射性のために有利になる。反射率の高い他の材料やコーティングもこの目的、特に概ねかすめ角で壁に入射する光のために使用できる。
(B4)方法
(B4a)パッシブハニカム型インプラント
パッシブハニカム型インプラントは、深いシリコンエッチング用のパターンを生成するための2つのマスク層を使用して結晶シリコンウェーハから作製した。ヘキサメチルジシラザン(HMDS)でプライミングされたウェーハを、2μmのネガティブフォトレジスト(AZ5214-IR)でスピンコーティングし、ハニカム壁を画定するべくプロセシングした。このレジストをさらに15分間UVで処理して、後続のエッチング中の選択性を高めた。ボッシュのエッチングプロセスを使用して、露出したシリコン領域に25μmの深さのキャビティを形成した。ハニカム画定用のレジストを除去した後、フォトレジスト(7.5%SPR220-7、68%MEK、及び24.5%PGMEA)をウェーハ上に14μmの厚さにスプレーコーティングし、プロセシングして幅約1mmのアレイの周囲にリリーストレンチを画定した。第2のボッシュプロセスが適用してこれらのリリーストレンチを作成し、その後フォトレジストを除去した。ウェーハに厚さ60μmの保護フォトレジストをスプレーコーティングし、続いてハニカムの基部から厚さ500~50μmの裏面研削(Grinding and Dicing Services、Inc.米国カリフォルニア州サンノゼ)を実施した。その後、XeF2ガスに残っている余分なシリコンをエッチングして、インプラントのリリースを完了した。得られた構造を図4A及び図4Bに示す。キャビティは、40μm、30μm、及び20μmピッチの六角形のハニカムパターンに配置され、10μmの厚さの基部上に、それぞれ厚さ4μm、3μm、及び2μm、高さ25μmの高さの壁が存在している。第4象限は10μmピッチのハニカム用に設計されたが、これらは本出願人が利用できるリソグラフィシステムの処理限界を超えており、作製しなかった。本明細書では、この領域を「平面状」象限と称する。生体内での溶解を防止するために、シリコンインプラントの表面に50nmの厚さの酸化物を成長させた。
(B4b)動物及び外科的処置
すべての実験手順は、施設のガイドライン及び眼科及び視覚研究における動物の使用に関するARVO声明に従って実施した。動物の世話とその後の移植は、スタンフォード動物施設で維持されている王立外科医師会(RCS)コロニーから得られた網膜変性を有するラットを使用して実施した。N=6の動物にハニカム型アレイを移植し、光受容体の完全な変性を確実にするためにP180とP300の間に移植を行った。ケタミン(75mg/kg)とキシラジン(5mg/kg)の混合物を筋肉内注射して動物を麻酔した。角膜輪部の1.5mm後方の強膜と脈絡膜を通して1.5mmの切開を行った。生理食塩水を注射して網膜を持ち上げ、インプラントを網膜下腔に挿入した。結膜をナイロン10-0で縫合し、術後に局所抗生物質(バシトラシン/ポリミキシンB)を眼に塗布した。手術の成功と網膜の再付着は、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)(HRA2-Spectralis;Heidelberg Engineering、独国ハイデルベルク)を使用して検証した。移植後6週間で動物を安楽死させた。対照群の追加の動物は、平面状のアクティブインプラントを有しており、約6ヶ月の長い生体内実験の後に犠牲にした。
(B4c)ホールマウント網膜イメージング
動物をBeuthanesiaの心臓内注射で安楽死させ、眼を除核し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Gibco;Thermo Fisher Scientific、米国カリフォルニア州サニーベール)でリンスした。前眼部と水晶体を取り除き、実体顕微鏡下でインプラントの位置を確認し、アイカップをインプラントの中心で3mm×3mmの正方形にカットし、4%パラホルムアルデヒド(PFA;EMS、米国ペンシルベニア州)で4oCで12時間固定した。インプラントは、除去による組織の損傷や再編成を防ぐために所定の位置に保持した。サンプルを、PBS中の1%Triton X-100(Sigma-Aldrich、米国カリフォルニア州)で、室温で3時間透過処理した。サンプルを10%ウシ血清アルブミン(BSA)ブロッキングバッファーに入れ、続いて2つの一次抗体とともに室温で12時間インキュベートした。具体的には、この処置は、0.5%Triton X-100、5%BSAを含むPBS中のウサギ抗IBA1抗体(1:200;Wako Chemicals、米国バージニア州)及びマウス抗グルタミンシンテターゼ(GS、1:100;Novus Biologicals、米国コロラド州)とともに行った。サンプルをPBS中の0.1%Triton X-100(PBS-T)で室温で6時間洗浄し、2つの二次抗体とともに室温で12時間インキュベートした。具体的には、この処置は、ロバ抗ウサギAlexaFluor 488(1:200;Thermo Fisher Scientific、米国カリフォルニア州サニーベール)及びロバ抗マウスCY3(1:200;Jackson ImmunoResearch Inc.、米国ペンシルベニア州)とともに行い、PBS中の4',6-ジアミジン-2-フェニルインドール(DAPI)で対比染色した。PBSTで6時間洗浄した後、サンプルを封入剤Vectashield(H-1000;Vector Laboratories、米国カリフォルニア州バーリンガム)を用いてマウントした。
Zeiss ZENBlackソフトウェアを備えたZeissLSM880共焦点倒立顕微鏡を使用して3Dイメージングを実施した。画像面は、Zスタックを使用して網膜の全厚を通して取得し、上限及び下限はそれぞれ内境界膜(ILM)とハニカムキャビティの基部の下10μmで定義されている。スタックは、取得領域が225μm×225μm、360nmのZ方向ステップ、及び0.55μmピンホールの40倍の油浸対物レンズを使用して、各ハニカム象限の中央で取得した。
(B4d)画像分析
共焦点データセットは、ImageJのFiJi分布を使用して分析した。ウェル内及びインプラント上部の細胞密度を分析するために、最初に個々のXY平面のコントラストを最大化して、スタック内のさまざまなZ方向位置での輝度変動を補正するために0.3%のチャネル飽和を確保した。次に、XY平面の斑点を取り除き、バックグラウンドを差し引いた。ガウスぼかしフィルタ(σ=3ピクセル、0.42μm)を適用して、個々の細胞内の明るさの変化を滑らかにした。次に、XY平面をエッジ検出フィルタに通し、処理された画像とエッジ検出された画像の背景を差し引いたORの組み合わせから最終画像を作成した。細胞密度分析では、チャネルしきい値を調整して(デフォルトの方法)、細胞のバイナリ表現を得た。次に、ハニカム壁が占める面積を考慮して、細胞が占める面積のパーセントとして定義されるXY平面内の細胞密度を計算した。網膜組織学の局所的変動を説明するために、各ハニカムユニットを独立して分析し、細胞密度をユニットスタック内の最大値に正規化した。キャビティ内に含まれるINLの割合は、次のように計算される。
式中、D(z)は、基部(z=0)からの高さ(z)の関数としてのXY平面当たりのセルの相対密度であり、z'は壁の高さ(25μm)であり、z"はINLの末端であり、D(z)<0.02の点として定義される。
それぞれ40μm、30μm、及び20μmサイズのハニカムを含む6つの埋め込まれたデバイスを画像化し、分析した。3つのデバイスでは、20μmサイズのハニカムが損傷したため、これらは分析から除外した。
(B4e)組織学的調製物
共焦点イメージング後、サンプルをバッファーですすぎ、1.25%グルタルアルデヒド溶液で24時間室温で固定した。次に、それらを四酸化オスミウムで室温で2時間後固定し、段階的アルコールと酸化プロピレンで脱水した。室温でエポキシ(DMP-30なし)に一晩浸透した後、(Electron Microscopy Sciences-Araldite-EMbed、RT13940、Mollenhauer's kitを使用)、サンプルを70℃のオーブンに36時間放置した。次に、シリコンインプラントが露出するまでエポキシブロックをトリミングした。切断用ナイフの損傷とハニカム構造からのシリコン破片の形成を防ぐために、XeF2エッチング(Xactix e-1、23℃、3トル)を使用してシリコンインプラントを除去した。次に、ブロックにエポキシを再充填し、真空デシケーターに2時間入れた後、70℃で一晩ベーキング処理した。このインプラントのエッチング後に残ったボイドの補充処理が、切断中に構造的サポートを提供した。700nmの厚さの切片(Reichart UltracutEで切断)を光学顕微鏡用にトルイジンブルーで染色した。
(B4f)電界と網膜刺激のモデル化
網膜の電界を、COMSOL Multiphysics 5.0の完全なアレイの3D有限要素モデルを使用して計算し、静電気モジュールを使用して、定常状態の電流を想定して、マクスウェルの電位方程式を解いた。モデル化されたアレイは、直径1mm、厚さ30μmで、表2に示すさまざまなサイズの六角形のピクセルで構成され、戻り電極が1つのメッシュに接続されている。
[表2]モデル化された光起電アレイのピクセル数とその形状
電界は、周囲に接地(0電位)が定義されているボリューム(体積部)(立方体、一辺=10mm)において計算される。モデル化された人工視覚デバイスは、アクティブ電極から注入されたすべての電流が戻り電極に収集されるクローズドシステムとして機能する。電極表面の境界条件は、定常状態に対応する均一な電流密度を有するものとして定義した。
定常状態の電極-電解質界面の電流密度は、単位面積あたりの電極容量に比例する。従って、側壁が絶縁されていなくても、電流は主にSIROFでコーティングされた上部を流れる。例えば、SIROFコーティングを戻り電極材料として使用した場合、その静電容量は金の静電容量の約1000倍になる(10mF/cm対0.01mF/cm)。ピクセルあたりの側壁の面積に対する壁の上部に配置された戻り電極の面積の比率は、壁の半分の幅とその高さの比率に等しい。アスペクト比(高さ対幅)が5:1の壁の場合、壁の上部と側面の面積の比率は約10:1である。従って、側壁の静電容量は、ピクセルあたり、ハニカムの上部に堆積されたSIROF戻り電極の静電容量の100分の1になる。従って、壁が金属でできている場合でも、電解液には非常に低い電流しか受け入れられないため、壁が絶縁性であるかのように機能する。これにより、側壁を絶縁する必要なしに単純な電気めっきが可能になるため、ハニカムの製造が大幅に簡素化される。
2つの電極構成、(1)局所的戻り電極を有する平面状構成(図3-1(A))、及び(2)局所的戻り電極を有するハニカム型構成(図3-1(B))について調べた。いずれの構成においても、共通の戻り電極は、収集された電流の合計が個々のアクティブ電極に注入された電流の合計になるように、すべてのアクティブピクセルによって生成された電流を収集する。ハニカム型の側壁は非導電性である。アクティブデバイスを使用した以前の検査では、さまざまな空間周波数の格子パターンを100%のコントラストで投影することにより、生体内の空間分解能を評価した。最大解像度は、ピクセルの交互の行をアクティブにすること(ON行、OFF行を設ける)に対応する。シミュレーションでこの構成を複製するために、同一のアクティブ化スキームを使用して電界分布を計算し、隣接するピクセル間のクロストークが最も高いアレイの中心で電界を分析する。電気的シミュレーションを当社の光起電力プロテーゼで光強度に関連付けるべく、ピクセルあたりの総電流を、2ダイオード構成のダイオード面積と測定された光から電流への変換効率(140μm、70μm、55μm、及び40μmピクセルでそれぞれ0.40、0.31、0.26、及び0.24A/W)に基づいて計算した。
網膜刺激しきい値は、ネットワークを介したアクティブ化のモデルを使用して評価した。このアプローチでは、双極細胞間の電圧降下によって定義されるネットワークを介した刺激しきい値を想定した。外部電界中では、細胞内媒体はマイクロ秒以内に等電位になり、アノードの近位と遠位の細胞膜において過分極と脱分極がそれぞれもたらされる。文献から得た10msパルスの大きな電極の網膜ネットワークを介した刺激しきい値電流密度、網膜の平均抵抗率(1000Ω・cm)、及びINLの中央からIPLの中央までの距離(37μm)として推定される双極細胞の平均長さを用いて、アノード刺激のための体細胞から軸索終末までの4.8mVの電位差しきい値を計算した。-21mVのカソードしきい値は、アノード及びカソード刺激でラット網膜で測定されたネットワーク媒介アクティブ化曲線(計算されたアノードしきい値に一致するようにスケーリングされたもの)に基づいて計算した。
重要な点として、本発明者らのモデルは文献から得た刺激電流密度に基づいているが、計算された経細胞電圧は網膜抵抗率に線形に比例していることに注意されたい。これについては従来の文献にコンセンサスがない。刺激しきい値に対して、組織内のアクティブ化ゾーンの境界を評価するための手段としてのみ経細胞電圧を使用している。想定される網膜抵抗率のばらつきは、しきい値電位を含め、同じ電流の電位に直線的に影響する。従って、これらのばらつきは、刺激しきい値に関連して計算されるため、アクティブ化ゾーンの境界に影響を与えない。
本発明者らは増加する電界に対するネットワークを介した網膜応答のシグモイド依存性を、従前に行われた実験から(1)刺激しきい値を横断するバイナリ遷移をモデル化するステップ関数と、(2)刺激の増加に応じた神経出力の漸次的増加をモデル化する線形関数、という2つの極端な方式のモデル化で近似した。その結果、総網膜応答は、INLのボリューム全体の細胞応答を、(1)バイナリ係数(つまり刺激しきい値を超えるINLボリュームの一部のみを計算する)、または(2)その分極に比例する細胞応答のいずれかと統合することによって計算される。

Claims (9)

  1. 神経細胞の電気刺激のための装置であって、
    キャビティ内の神経細胞の移動を可能にするように構成されたキャビティのアレイを備え、
    前記キャビティの各々は、床部と、前記床部に対して垂直な導電性の壁によって画定された空間であり、前記空間の水平方向の断面の形状が平面において詰めて配置可能な正多角形であり、前記キャビティのアレイは、前記キャビティの各々の前記壁を形成する複数の中空の正多角柱が周期的に並んで詰めて配置された形態で作りだされ、
    前記壁の各々は、その全体が導電性材料で作製されており、
    前記キャビティの各々は、前記床部に配置された第1の電極を有し、
    前記キャビティの各々は、その各キャビティに対応する前記壁の上面に配置され、前記床部の対応する前記第1の電極から垂直方向に離隔された第2の電極を有し、
    前記装置の動作中、イオン電流が前記キャビティの内容物を通って流れ、
    各キャビティ内における導電性の前記壁の静電容量より、前記第2の電極の静電容量の方が大きく、それにより、前記第2の電極は、導電性の前記壁の側面に対して優先的にイオン電流を収集することを特徴とする装置。
  2. 請求項1に記載の装置であって、
    前記キャビティの深さが、10μm~100μmの間であることを特徴とする装置。
  3. 請求項1に記載の装置であって、
    前記キャビティの幅が、5μm~100μmの間であることを特徴とする装置。
  4. 請求項1に記載の装置であって、
    前記キャビティの深さが、前記キャビティの幅より大きいことを特徴とする装置。
  5. 請求項1に記載の装置であって、
    前記第1の電極と前記第2の電極の間に接続されたフォトダイオードを使用して、前記装置に当たる光を電流に変換するように構成されることを特徴とする装置。
  6. 請求項1に記載の装置であって、
    前記キャビティの前記水平方向の断面が、六角形であることを特徴とする装置。
  7. 請求項1に記載の装置であって、
    前記神経細胞が網膜細胞であることを特徴とする装置。
  8. 請求項1に記載の装置であって、
    前記装置の動作時に、前記キャビティの前記第1の電極に注入される電荷密度は、0.1mC/cm~10mC/cmであることを特徴とする装置。
  9. 請求項1に記載の装置であって、
    前記第2の電極の単位面積あたりの静電容量は、前記導電性の壁の単位面積あたりの静電容量より少なくとも100倍大きいことを特徴とする装置。
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