JP7841880B2 - 疼痛治療剤 - Google Patents

疼痛治療剤

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Description

本発明は、疼痛治療剤に関する。
身体の各部位に生じる疼痛として、各種疾患にともなって生じるものが知られる。
このような疼痛の原因は長年不明であったが、本発明者の検討の結果、異常な毛細血管(「モヤモヤ血管」として知られる。)の増加による血流の異常化がその一因であることがわかった(例えば、非特許文献1)。このような異常な毛細血管は、神経の増殖等にともなって生じる。
これを踏まえ、本発明者は、異常な毛細血管に塞栓物質(イミペネム・シラスタチン粒子)をデリバリーすることで、異常な毛細血管を詰まらせることによる、疼痛の治療方法を見出した。
奥野祐次、「ヘバーデン結節の痛みはモヤモヤ血管が原因だった」、2020年、ワニブックス
異常な毛細血管を塞栓させることによる疼痛治療方法は、通常、異常な毛細血管の近位に位置する分岐動脈を選択し、該動脈内に、マイクロカテーテルを送達したうえで塞栓物質を放出する工程を含む。塞栓物質は、該動脈から目的とする異常な毛細血管に到達する。
しかし、このような工程は煩雑であり、より簡便な技術に対するニーズがある。
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、より簡便に実施可能な、異常な毛細血管を塞栓させることによる疼痛治療手段の提供を目的とする。
本発明者らは、異常な毛細血管を塞栓させることによる疼痛治療において、塞栓物質の投与を、投与部位に対して血流の上流側及び/又は下流側が駆血された状態で行うことで上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
(1) 疼痛治療剤であって、
前記疼痛治療剤は、平均粒径が10μm以上200μm以下である粒子状塞栓物質を含み、
前記疼痛治療剤は、疼痛部を栄養する主幹動脈に注射投与して用いられ、
前記疼痛治療剤の投与は、投与部位に対して血流の上流側及び/又は下流側が駆血された状態で行われる、
疼痛治療剤。
(2) 前記粒子状塞栓物質は、生理食塩水1000ml中に、前記粒子状塞栓物質5gを分散後、25℃の温度条件下で、4時間以内に溶解する、(1)に記載の疼痛治療剤。
(3) 前記駆血における駆血圧は、収縮期血圧に対して30mmHg以上高い圧である、(1)又は(2)に記載の疼痛治療剤。
(4) 前記主幹動脈は、上腕動脈、腋窩動脈、鼠径動脈、後脛骨動脈、前脛骨動脈、及び腓骨動脈からなる群から選択される1以上である、(1)から(3)のいずれかに記載の疼痛治療剤。
本発明によれば、より簡便に実施可能な、異常な毛細血管を塞栓させることによる疼痛治療手段が提供される。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
<疼痛治療剤>
本発明に係る疼痛治療剤(以下、「本発明の治療剤」ともいう。)は、平均粒径が10μm以上200μm以下である粒子状塞栓物質を含む。
本発明の治療剤は、疼痛部を栄養する主幹動脈に注射投与して用いられ、かつ、該投与は、投与部位に対して血流の上流側及び/又は下流側が駆血された状態で行われる。
上述のとおり、本発明者は、異常な毛細血管に塞栓物質を注入することで、異常な毛細血管を詰まらせ血流を正常化させるという、疼痛の治療方法を開発した。
しかし、従来の方法においては、目的の毛細血管の近位に位置する分岐動脈を投与部位として選択し、該動脈内に、マイクロカテーテルを送達する工程を要する。
このような工程においては、投与部位の選択に精緻な判断を要するうえ、熟練した技術、特殊な用具、及び比較的長い手技時間等も必要となる。
そこで、本発明者がさらに検討した結果、塞栓物質の投与部位に対して血流の上流側及び/又は下流側が駆血された状態で投与を行うことで、血流が制御される結果、主幹動脈に投与したとしても、目的の異常な毛細血管を効率的に詰まらせることができることを見出した。
このような手法によれば、投与部位として分岐動脈を選択しなくともよい。そして、主幹動脈への投与は簡便であるため、投与部位の選択に精緻な判断、熟練した技術、特殊な用具等を要さないうえ、手技時間を大幅に短縮し得る。
駆血によって血流を制御できる理由は、以下のように、動脈の圧環境が変化する結果、主幹動脈の血流に対して目的の異常な毛細血管への血流を相対的に増やせるからであると推察される。
投与部位(主幹動脈)に対して血流の上流側を駆血する場合、投与部位に対して下流側の血流の速度は低下する。かかる場合、血液が、主幹動脈から分岐する分岐動脈、さらには異常な毛細血管へ流れやすくなる。
投与部位(主幹動脈)に対して血流の下流側を駆血する場合、投与部位に対して下流側の血流の一部がせき止められた状態となる。かかる場合、投与部位と駆血部との間の血流の速度が低下し、主幹動脈から分岐する分岐動脈、さらには異常な毛細血管へ流れやすくなる。
本発明において「疼痛の治療」とは、疼痛を緩和、又は完治することを意味する。
本発明の治療剤による効果を奏しやすいという観点から、疼痛は、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)、内側側副靭帯損傷、離断性骨軟骨炎、肘関節滑膜ひだ障害、上腕骨内側上顆骨端線閉鎖不全、肘頭骨端線閉鎖不全、上腕骨疲労骨折、橈骨疲労骨折、尺骨疲労骨折、変形性肘関節症、関節リウマチ、肘関節滑膜炎、手根管症候群、TFCC損傷、腱鞘炎、ヘバーデン結節、CM関節症、ブシャール結節、ばね指、肩関節周囲炎、石灰沈着性腱板炎、有痛性腱板断裂、変形性肩関節症、腱板疎部炎、上腕二頭筋腱長頭腱炎、肩峰下滑液包炎、人工関節置換術後の疼痛、変形性股関節症、グロインペイン症候群、恥骨結合炎、股関節周囲炎、股関節唇損傷、大転子滑液包炎、ハムストリングス付着部炎、坐骨結節炎、変形性膝関節症、膝蓋腱炎(ジャンパー膝)、腸脛靭帯炎(ランナー膝)、鵞足炎、膝蓋大腿靭帯炎、膝蓋下脂肪体炎、シンスプリント、関節リウマチ、アキレス腱炎、オスグッド病、有痛性外脛骨、足底腱膜炎、モートン病、外反母趾、痛風、足関節滑膜炎、及び疲労骨折からなる群から選択される1以上から生じる疼痛であってもよい。
これらの疼痛の種類は、医師による診断によって特定することができる。
以下、本発明の治療剤の治療剤の構成について詳述する。
(塞栓物質)
塞栓物質は、平均粒径が10μm以上200μm以下である粒子状の物質を用いる。
本発明において「塞栓物質」としては、動脈内の血流を遮断できる物質を意味する。
塞栓物質の平均粒径は、塞栓しようとする動脈の直径等に応じて適宜調整できる。
塞栓物質の平均粒径の下限は、塞栓対象である動脈の塞栓効果が奏しやすいという観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上である。
塞栓物質の平均粒径の上限は、異常な毛細血管以外の意図しない動脈を詰まらせることを回避したり、塞栓対象である動脈へデリバリーしやすかったりするという観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。
本発明において「平均粒径」とは粒度分布の平均値を意味し、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、「SALD」シリーズ、株式会社島津製作所製)で特定される。
塞栓物質の形状は特に限定されないが、不定形、球形、角形等であり得る。
塞栓物質としては、動脈内の血流を遮断可能であり、生体に有害な作用を及ぼさないものであれば特に限定されない。
塞栓物質の材料としては、体温(例えば、35~39℃)において血液に不溶又は難溶な材料が挙げられる。
ただし、塞栓物質が正常な血管に迷入した場合に、該血管を詰まらせてしまう可能性を防ぐ観点から、塞栓物質は、体温(例えば、35~39℃)において血液に難溶であるが、経時的に体温における血液に溶解する材料であってもよい。
例えば、塞栓物質は、生理食塩水1000ml中に10gを分散した場合に、25℃の温度条件下で、4時間以内に溶解する性質を有し得る。具体的には、イミペネム・シラスタチンや、下記の水溶性高分子含有物質等が挙げられる。
塞栓物質は、水溶性高分子を含有し、(A)及び(B)を満たすものであってもよい。
(A)前記物質100mgを37℃の生理食塩水160ccに混和し、その10分以内に測定される平均粒子径が30μm以上500μm以下である。
(B)前記混和した液を37℃、100rpmで3時間撹拌した後に測定される平均粒子径が、(A)の平均粒子径の50%以下である。
(平均粒子径は、混和液についてレーザ回折式粒度分布測定装置「SALD-2300」(島津製作所社製)及び回文セル「BC23」(同社製)を用いて測定される。)
(A)は、塞栓物質を水中に分散した直後のサイズであり、疼痛治療における投与時における塞栓物質サイズの指標である。
(A)の平均粒子径が過大であると、痛みの原因である異常血管部位よりも上流側で塞栓物質が詰まり、異常血管部位の塞栓が不十分になりやすく、また、異常血管以外への血流を阻害することによる副作用のおそれがある。このため、(A)の平均粒子径は、より好ましくは350μm以下、又は250μm以下である。
(A)の平均粒子径が過小であると、短期間に溶解して異常血管部位から流失してしまい、異常血管を塞栓させ難い。このため、(A)の平均粒子径は、より好ましくは40μm以上、又は50μm以上である。
(B)は、水中での所定時間経過後のサイズであり、投与されて疼痛治療効果を果たした後の血管中塞栓物質サイズの指標である。
(A)の平均粒子径が適切であるが(B)の平均粒子径が過大である場合、塞栓物質が正常血管をも長時間に亘って詰まらせ、それによる痛みが施術後に発生するおそれがあり
、また、塞栓物質が脊髄栄養血管や中枢神経の栄養血管に迷入して神経障害を招くおそれがある。(B)の平均粒子径は(A)の平均粒子径に対し、より好ましくは60%以下、又は70%以下である。
同様の観点で、(B)の平均粒子径は100μm以下であることが好ましく、より好ましくは80μm以下である。(B)の平均粒子径の下限は特に限定されないが、例えば1μm以上、10μm以上、又は25μm以上であってよい。
塞栓物質に含まれる水溶性高分子としては、ゲル化能を有するものであれば特に限定されず、例えば、寒天、ゼラチン、コラーゲン、カードラン等の非架橋型のもの、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ペクチン、カラギーナン等の架橋型のものが挙げられる。また、塞栓物質は水溶性高分子以外の高分子を含んでも、含まなくてもよい。このような水溶性高分子を水中に分散して三次元構造体とし、短時間溶解型のハイドロゲルは、一実施形態における塞栓物質として使用可能である。特に限定されないが、水溶性高分子の親水度や分子量、架橋密度を適宜調整することで、条件(A)及び(B)を充足した塞栓物質を製造可能である。このような塞栓物質の市販品としては、Engain社製の「IPZA100-300」や「IPZA300-500」、Nextbiomedical社製の「Nexsphere」が挙げられる。
(治療剤の形態)
本発明の治療剤は、疼痛部を栄養する主幹動脈に注射投与して用いられる剤である。したがって、本発明の治療剤には、塞栓物質による塞栓作用を損なわない範囲で、塞栓物質とともに、生体動脈内に投与可能な媒体(生理緩衝液、滅菌水、生理食塩水、培地、造影剤)や、注射剤に含まれ得る任意の成分等が必要に応じて配合されていてもよい。
本発明の治療剤の形態は、注射剤であり得る。
注射剤の構成は特に限定されないが、注射針を用いて投与対象である皮膚に投与できる任意の構成を採用できる。
通常、注射剤は、注射針(サーフロー留置針等)、及びシリンジ等を備え、シリンジ内に塞栓物質等が充填される。
本発明の治療剤の投与の際には、治療剤の投与部位の特定のために、血管撮影を行ってもよい。また、このような撮影等のために、本発明の塞栓物質とともに造影剤を併用してもよい。造影剤の種類としては特に限定されないが、イオヘキソール等が挙げられる。
ただし、本発明においては、投与部位の選択に精緻な判断を要さないため、血管撮影を行わなくともよく、造影剤を用いなくともよい。
本発明において造影剤を用いる場合、本発明の治療剤に配合してもよいし(すなわち、塞栓物質と同時に投与してもよいし)、本発明の治療剤とは別個に投与してもよい。造影剤と本発明の治療剤とを別個に投与する場合、その順序は特に限定されないが、造影剤を先に投与すると、投与部位の特定がより容易になる観点から好ましい。
本発明の治療剤の投与の際には、筒状構造(造影カテーテル、シース、サーフロー等)の先端を主幹動脈に穿刺した後、逆血を確認してから、内針を抜いて外筒と塞栓物質を充填したシリンジとを接続する操作を行ってもよい。
かかる場合、超音波ガイド下で穿刺を行うと、動脈近傍の神経を損傷することを防止できる点で有効である。
(投与部位)
本発明の治療剤は、注射針を穿刺可能な、疼痛部を栄養する主幹動脈に投与される。「疼痛部を栄養する主幹動脈」とは、具体的には、疼痛部からの直線距離として、疼痛部の上流側10cm以内に分布する動脈であってよい。
投与対象である主幹動脈は特に限定されず、疼痛部の位置等に応じ、投与が容易な太さや位置の主幹動脈を任意に選択できる。主幹動脈は、従来の投与対象である分岐動脈と比較して、投与部位の特定や、投与作業が容易である。したがって、主幹動脈を投与対象とする本発明は、簡便な異常な毛細血管の塞栓を実現できる。
ただし、本発明において、主幹動脈と組み合わせて、分岐動脈も投与対象とすることは除外されない。
主幹動脈は、駆血が容易な動脈が好ましい。このような主幹動脈として、上腕動脈、腋窩動脈、鼠径動脈、後脛骨動脈、前脛骨動脈、及び腓骨動脈からなる群から選択される1以上が挙げられる。
疼痛の種類にかかわらず、投与部位への穿刺は、超音波ガイド下で行うことが好ましい。
(駆血)
駆血は、投与部位に対して血流の上流側及び/又は下流側において行う。本発明の効果が奏されやすいという観点から、駆血は、投与部位に対して血流の上流側及び下流側の両方で行うことが好ましい。
駆血の条件は特に限定されないが、異常な毛細血管への血流を増やしやすいという観点から、駆血圧を、収縮期血圧に対して好ましくは収縮期血圧+30mmHg以上、より好ましくは収縮委血圧+40mmHg以上高い圧に設定することが好ましい。
駆血圧の上限は特に限定されないが、通常は、収縮期血圧に対して好ましくは収縮期血圧+100mmHg以下である。
なお、本発明において「駆血圧」とは、駆血部位を締め付ける圧を意味する。
駆血の手段としては任意の駆血帯を採用でき、例えば、マンシェット、ゴムチューブ等が挙げられる。
駆血する部位は特に限定されないが、投与部位の血流をコントロールしやすくする観点から、投与部位の近傍であることが好ましい。具体的には、投与部位からの直線距離が10cm以内である部位(1又は2箇所)を駆血することが好ましい。
例えば、投与部位が上腕動脈である場合、上腕部及び/又は前腕部のそれぞれにおける、投与部位からの直線距離が10cm以内である箇所を駆血してもよい。
駆血及び注射投与の順序は特に限定されないが、作業のしやすさから、通常、投与部位への穿刺を行った後、駆血し、投与を開始することが好ましい。
(投与量等)
本発明の治療剤の粒子状塞栓物質の量、投与速度、投与頻度等は、患者の状態(年齢、体重、症状の重篤性等)に応じて適宜設定できる。
本発明における投与は、従来のような、患部を栄養する動脈(分岐動脈)にカテーテルを挿入する方法と比較して、非選択的な投与であり得る。なぜならば、主幹動脈への投与は、分岐動脈への投与のように、疼痛部に直接繋がる血管への投与では必ずしもないからである。
本発明における投与が非選択的な投与であることを踏まえ、本発明の治療剤の投与開始後、以下の(A)乃至(D)のうちいずれか1以上が確認されたことに基づき投与を終了してもよい。以下の現象は、いずれも、本発明の治療剤が疼痛部に適切に到達したことの指標となる。
(A)疼痛部における熱感
(B)疼痛部における疼痛とは異なる痛み
(C)疼痛部の皮膚の変色
(D)レントゲンのX線画像での疼痛部における塞栓物質の検出
「疼痛部における熱感」とは、本発明の治療剤の投与後において、本発明の治療剤の投与前と比べて疼痛部が熱を帯びたように感じることを意味する。
疼痛部における熱感が生じたかどうかは、患者の申告に基づき判断できる。
「疼痛部における疼痛とは異なる痛み」とは、本発明の治療剤の投与後において、本発明の治療剤の投与前と比べて、それまで生じていた疼痛とは異なる痛みを感じることを意味する。このような痛みとしては、ビリビリとした、チクチクとした、重いような、という感覚等が挙げられる。
疼痛部における前記疼痛とは異なる痛みが生じたかどうかは、患者の申告に基づき判断できる。
「疼痛部の皮膚の変色」とは、本発明の治療剤の投与後において、本発明の治療剤の投与前と比べて、疼痛部の皮膚の色が変化することを意味する。変色としては、例えば、直後には蒼白色となり、その後に赤色への変化等が挙げられる。
疼痛部の皮膚の変色が生じたかどうかは、外観に基づき判断できる。
「レントゲンのX線画像での疼痛部における塞栓物質の検出」とは、疼痛部のレントゲンのX線画像から塞栓物質が疼痛部に存在していることを確認することである。かかる検出を行う場合、本発明の治療剤は造影剤と併用することが好ましい。
(A)乃至(D)のうちいずれか1以上の現象を確認した時点から、塞栓物質の投与終了時点までの時間間隔は、(A)乃至(D)のうちいずれか1以上が確認された時点を基準とする限りにおいて特に限定されないが、副作用抑制の観点では時間間隔が短いほうが好ましい。
具体的には、(A)乃至(D)のうちいずれか1以上の現象を確認した時点の直後に投与終了することが好ましい。
「(A)乃至(D)のうちいずれか1以上の現象を確認した時点の直後」とは、具体的には好ましくは50秒以内、より好ましくは30秒以内、具体的には15秒以内、10秒以内、又は5秒以内であってもよい。
なお、上記(A)乃至(D)のうちいずれかの現象は、1つが認められたことを基準に塞栓物質の投与を終了してもよいし、2以上が認められたことを基準に塞栓物質の投与を終了してもよい。
ただし、2以上の現象の確認を基準に塞栓物質の投与を終了する場合、投与量が過度となることを防ぐ観点から、最初に生じた現象の発生時点から、最後に生じた現象の発生時点までの時間ができるだけ短いこと(好ましくは1分以内)が好ましい。
本発明の治療剤の投与終了は、投与部位への治療剤の注入を停止できる任意の操作によって行う。このような操作として、例えば、注射剤の外筒を投与部位から抜き、圧迫止血を行うことが挙げられる。
本発明における投与が非選択的な投与であることを踏まえ、本発明の治療剤に配合される粒子状塞栓物質の量は、従来の方法における量よりも多くてもよい。ただし、本発明においては、駆血によって、粒子状塞栓物質を効率的に異常な毛細血管へ到達させるため、粒子状塞栓物質の量は過度でなくともよい。
例えば、本発明の治療剤に配合される粒子状塞栓物質の量は、1回の投与あたり、好ましくは0.1g以上、より好ましくは0.2g以上であってもよい。
本発明の治療剤に配合される粒子状塞栓物質の量の上限は特に限定されないが、通常、1回の投与あたり、1g以下である。
<本発明の治療剤による治療効果>
本発明の治療剤によれば、より簡便に、異常な毛細血管を塞栓させることによって疼痛治療を行うことができる。
本発明の治療剤による治療効果は、痛みを評価する任意の方法によって評価できる。このような方法として、「NRS(Numerical Rating Scale)スコア」に基づく方法、痛みの改善の度合いを患者の主観で答える方法(「Patients Global Impression of Change」)等が挙げられる。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<塞栓物質等の準備>
本例では、塞栓物質としてイミペネム・シラスタチン(商品名「プリマキシン」、メルク・アンド・カンパニー社製)を用いた。この塞栓物質の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(「SALD」シリーズ、株式会社島津製作所製)を用いて測定した値が70μm以下だった。
塞栓物質は、1g/10mlの生理食塩水溶液として調製した。
なお、本例では、造影剤としてイオパーク(富士製薬社製)を用いた。造影剤は塞栓物質と混合して用いた。混合比は塞栓物質1gに対して造影剤10ccに設定した。
<実施例1:上腕動脈からの投与>
ヘバーデン結節を有する患者(20名)に対して、以下の方法で塞栓物質を投与し、その効果を確認した。
(1)投与部位への穿刺
上腕動脈、及び橈骨動脈のうちいずれかの動脈を超音波ガイド下で穿刺した後、サーフローの先端を上腕動脈に位置させた。
逆血を確認後、サーフローを、生理食塩水を充填した三方活栓付きシリンジ(延長チューブを備えたもの)に接続し、ロックした。
なお、本例において、サーフローの代わりに、シース、及び造影カテーテル等の管腔構造を有する医療機器も代用可能だった。
(2)駆血
上記(1)の操作後、上腕動脈の近位の上腕部、及び/又は、上腕動脈の遠位の前腕部にマンシェット(加圧可能な駆血用のカフ)を巻いた。
次いで、マンシェットの圧を、収縮期血圧の+30mmHg以上まで上げた。
本例において、「上腕動脈の近位の上腕部」は、穿刺部位から上腕側に約5cm離れた部位に設定した。また、「上腕動脈の遠位の前腕部」は、穿刺部位から前腕側に約5cm離れた部位に設定した。
(3)塞栓物質の投与
外筒とシリンジとを接続後、シリンジを押して塞栓物質の投与を開始した。塞栓物質は、0.2g/分のペースで投与し、塞栓物質を含む溶液を5cc程度投与した時点で投与を終了した。
本例において、塞栓物質の投与とともにレントゲン撮影を行い、塞栓物質が患部に流入することを確認した。
(4)治療効果の確認
塞栓物質の投与前、投与1ヶ月後、投与3ヶ月後の各時点で、公知の指標に基づき疼痛を評価した。指標としては、「Numerical Rating Scale」(NRS)を用いた。この指標では、疼痛を十段階評価し、数値が高いほど疼痛が強いことを意味する。
疼痛の評価とあわせて、安全性(しびれ、筋肉低下、皮膚変色、知覚低下、精緻機能障害の有無)も評価した。
評価の結果、塞栓物質の投与前のNRSは平均7.3であったのに対し、投与1ヶ月後では平均3.1、投与3ヶ月後では2.6だった。この結果から、塞栓物質の投与により、ヘバーデン結節の症状が顕著に改善したことがわかった。
さらに、塞栓物質の投与後において重大な合併症は認められなかったうえ、しびれ、筋肉低下、皮膚変色、知覚低下、及び精緻機能障害のいずれも認められなかった。
なお、上記の上腕動脈からの塞栓物質投与により、ヘバーデン結節に限らず、その他の疼痛(上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)、内側側副靭帯損傷、離断性骨軟骨炎、肘関節滑膜ひだ障害、上腕骨内側上顆骨端線閉鎖不全、肘頭骨端線閉鎖不全、上腕骨疲労骨折、橈骨疲労骨折、尺骨疲労骨折、変形性肘関節症、関節リウマチ、肘関節滑膜炎、手根管症候群、TFCC損傷、腱鞘炎、CM関節症、ブシャール結節、ばね指)を有する患者に対しても良好な治療効果が奏された。
対照例として、上記(1)及び(2)の工程の代わりに、患部を栄養する動脈(分岐動脈)にカテーテルを挿入して、上記と同量の塞栓物質を投与したところ、上記と同等の効果が得られた。
カテーテルの挿入操作には、上記(1)及び(2)の工程と比較して、何倍もの時間を要するうえ、熟練した技術を要する。
つまり、本発明によれば、塞栓物質の投与部位として分岐動脈を選択するという煩雑な操作を要さずに、所望の治療効果が得られることがわかった。
本例では、塞栓物質の投与部位を非選択的に設定した(つまり、投与部位を主幹動脈に設定した)にもかかわらず、塞栓物質の投与部位を選択的に設定した(つまり、投与部位を分岐動脈に設定した)場合と同等量の塞栓物質で治療効果が得られたことは極めて意外な結果だった。
さらに、比較例として、駆血(上記(2)の工程)を行わずに、上腕動脈、及び橈骨動脈のうちいずれかの動脈から塞栓物質の投与を行ったところ、治療効果が全く認められなかった。この結果は、塞栓物質の投与量を増やしても改善されなかった。
<実施例2:腋窩動脈からの投与>
肩関節周囲炎を有する患者(16名)に対して、以下の方法で塞栓物質を投与し、その効果を確認した。
(1)投与部位への穿刺
上腕動脈、橈骨動脈、及び鼠径動脈のうちいずれかの動脈を超音波ガイド下で穿刺した後、サーフローの先端を腋窩動脈領域に位置させた。
逆血を確認後、サーフローを、生理食塩水を充填した三方活栓付きシリンジ(延長チューブを備えたもの)に接続し、ロックした。
なお、本例において、サーフローの代わりに、シース、及び造影カテーテル等の管腔構造を有する医療機器も代用可能だった。
(2)駆血
上記(1)の操作後、腋窩動脈の近位の上腕部、及び/又は、腋窩動脈の遠位の前腕部にマンシェットを巻いた。
次いで、マンシェットの圧を、収縮期血圧の+30mmHg以上まで上げた。
本例において、「腋窩動脈の近位の上腕部」は、穿刺部位から上腕側に約10cm離れた部位に設定した。また、「腋窩動脈の遠位の前腕部」は、穿刺部位から前腕側に約10cm離れた部位に設定した。
(3)塞栓物質の投与
上記「実施例1」の「(3)塞栓物質の投与」と同様の方法で、塞栓物質の投与を行った。
(4)治療効果の確認
上記「実施例1」の「(4)治療効果の確認」と同様の方法で、疼痛及び安全性を評価した。
評価の結果、塞栓物質の投与前のNRSは平均7.8であったのに対し、投与1ヶ月後では平均4.2、投与3ヶ月後では3.6だった。この結果から、塞栓物質の投与により、肩関節周囲炎の症状が顕著に改善したことがわかった。
さらに、塞栓物質の投与後において重大な合併症は認められなかったうえ、しびれ、筋肉低下、皮膚変色、知覚低下、及び精緻機能障害のいずれも認められなかった。
なお、上記の腋窩動脈からの塞栓物質投与により、肩関節周囲炎に限らず、その他の疼痛(石灰沈着性腱板炎、有痛性腱板断裂、変形性肩関節症、腱板疎部炎、上腕二頭筋腱長頭腱炎、肩峰下滑液包炎、関節リウマチ、人工関節置換術後の疼痛)を有する患者に対しても良好な治療効果が奏された。
対照例として、上記(1)及び(2)の工程の代わりに、患部を栄養する動脈(分岐動脈)にカテーテルを挿入して上記と同量の塞栓物質を投与したところ、上記と同等の効果が得られた。
つまり、本発明によれば、塞栓物質の投与部位として分岐動脈を選択するという煩雑な操作を要さずに、所望の治療効果が得られることがわかった。
本例では、塞栓物質の投与部位を非選択的に設定した(つまり、投与部位を主幹動脈に設定した)にもかかわらず、塞栓物質の投与部位を選択的に設定した(つまり、投与部位を分岐動脈に設定した)場合と同等量の塞栓物質で治療効果が得られたことは極めて意外な結果だった。
さらに、比較例として、駆血(上記(2)の工程)を行わずに、上腕動脈、橈骨動脈、及び鼠径動脈のうちいずれかの動脈から塞栓物質の投与を行ったところ、治療効果が全く認められなかった。この結果は、塞栓物質の投与量を増やしても改善されなかった。
<実施例3:鼠径動脈からの投与>
変形性股関節症を有する患者(14名)に対して、以下の方法で塞栓物質を投与し、その効果を確認した。
(1)投与部位への穿刺
鼠径動脈を超音波ガイド下で穿刺した後、サーフローの先端を鼠径動脈領域に位置させた。
逆血を確認後、サーフローを、生理食塩水を充填した三方活栓付きシリンジ(延長チューブを備えたもの)に接続し、ロックした。
なお、本例において、サーフローの代わりに、シース、及び造影カテーテル等の管腔構造を有する医療機器も代用可能だった。
(2)駆血
上記(1)の操作後、大腿部にマンシェットを巻いた。
次いで、マンシェットの圧を、収縮期血圧の+30mmHg以上まで上げた。
本例において、「大腿部」は、穿刺部位から大腿側に約10cm離れた部位に設定した。
(3)塞栓物質の投与
上記「実施例1」の「(3)塞栓物質の投与」と同様の方法で、塞栓物質の投与を行った。
(4)治療効果の確認
上記「実施例1」の「(4)治療効果の確認」と同様の方法で、疼痛及び安全性を評価した。
評価の結果、塞栓物質の投与前のNRSは平均7.3であったのに対し、投与1ヶ月後では平均3.2、投与3ヶ月後では3.3だった。この結果から、塞栓物質の投与により、変形性股関節症の症状が顕著に改善したことがわかった。
さらに、塞栓物質の投与後において重大な合併症は認められなかったうえ、しびれ、筋肉低下、皮膚変色、知覚低下、及び精緻機能障害のいずれも認められなかった。
なお、上記の鼠径動脈からの塞栓物質投与により、変形性股関節症に限らず、その他の疼痛(グロインペイン症候群、恥骨結合炎、股関節周囲炎、股関節唇損傷、大転子滑液包炎、ハムストリングス付着部炎、坐骨結節炎、関節リウマチ、人工関節置換術後の疼痛)を有する患者に対しても良好な治療効果が奏された。
対照例として、上記(1)及び(2)の工程の代わりに、患部を栄養する動脈(分岐動脈)にカテーテルを挿入して塞栓物質を投与したところ、上記と同等の効果が得られた。
つまり、本発明によれば、塞栓物質の投与部位として分岐動脈を選択するという煩雑な操作を要さずに、所望の治療効果が得られることがわかった。
<実施例4:膝窩動脈、後脛骨動脈、前脛骨動脈、又は腓骨動脈からの投与>
変形性膝関節症を有する患者(25名)に対して、以下の方法で塞栓物質を投与し、その効果を確認した。
(1)投与部位への穿刺
鼠径動脈、膝窩動脈、及び足背動脈のうちいずれかの動脈を超音波ガイド下で穿刺した後、サーフローの先端を膝窩動脈領域、後脛骨動脈、前脛骨動脈、又は腓骨動脈に位置させた。
逆血を確認後、サーフローを、生理食塩水を充填した三方活栓付きシリンジ(延長チューブを備えたもの)に接続し、ロックした。
なお、本例において、サーフローの代わりに、シース、及び造影カテーテル等の管腔構造を有する医療機器も代用可能だった。
(2)駆血
上記(1)の操作後、大腿部にマンシェットを巻いた。
次いで、マンシェットの圧を、収縮期血圧の+30mmHg以上まで上げた。
本例において、「大腿部」は、穿刺部位から大腿側に約10cm離れた部位に設定した。
(3)塞栓物質の投与
上記「実施例1」の「(3)塞栓物質の投与」と同様の方法で、塞栓物質の投与を行った。
(4)治療効果の確認
上記「実施例1」の「(4)治療効果の確認」と同様の方法で、疼痛及び安全性を評価した。
評価の結果、塞栓物質の投与前のNRSは平均7.0であったのに対し、投与1ヶ月後では平均3.5、投与3ヶ月後では3.1だった。この結果から、塞栓物質の投与により、変形性膝関節症の症状が顕著に改善したことがわかった。
さらに、塞栓物質の投与後において重大な合併症は認められなかったうえ、しびれ、筋肉低下、皮膚変色、知覚低下、及び精緻機能障害のいずれも認められなかった。
なお、上記の膝窩動脈、後脛骨動脈、前脛骨動脈、又は腓骨動脈からの塞栓物質投与により、変形性膝関節症に限らず、その他の疼痛(膝蓋腱炎(ジャンパー膝)、腸脛靭帯炎(ランナー膝)、鵞足炎、膝蓋大腿靭帯炎、膝蓋下脂肪体炎、シンスプリント、関節リウマチ、人工関節置換術後の痛み、アキレス腱炎、オスグッド病、有痛性外脛骨、足底腱膜炎、モートン病、外反母趾、痛風、足関節滑膜炎、疲労骨折)を有する患者に対しても良好な治療効果が奏された。
対照例として、上記(1)及び(2)の工程の代わりに、患部を栄養する動脈(分岐動脈)にカテーテルを挿入して塞栓物質を投与したところ、上記と同等の効果が得られた。
つまり、本発明によれば、塞栓物質の投与部位として分岐動脈を選択するという煩雑な操作を要さずに、所望の治療効果が得られることがわかった。

Claims (4)

  1. 疼痛治療剤であって、
    前記疼痛治療剤は、平均粒径が10μm以上200μm以下である粒子状塞栓物質を含み、
    前記疼痛治療剤は、疼痛部を栄養する主幹動脈に注射投与して用いられ、
    前記疼痛治療剤の投与は、投与部位に対して血流の上流側及び/又は下流側が駆血された状態で行われる、
    疼痛治療剤。
  2. 前記粒子状塞栓物質は、生理食塩水1000ml中に、前記粒子状塞栓物質5gを分散後、25℃の温度条件下で、4時間以内に溶解する、請求項1に記載の疼痛治療剤。
  3. 前記駆血における駆血圧は、収縮期血圧に対して30mmHg以上高い圧である、請求項1又は2に記載の疼痛治療剤。
  4. 前記主幹動脈は、上腕動脈、腋窩動脈、鼠径動脈、後脛骨動脈、前脛骨動脈、及び腓骨動脈からなる群から選択される1以上である、請求項1から3のいずれかに記載の疼痛治療剤。

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