JP7841880B2 - 疼痛治療剤 - Google Patents
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Description
このような疼痛の原因は長年不明であったが、本発明者の検討の結果、異常な毛細血管(「モヤモヤ血管」として知られる。)の増加による血流の異常化がその一因であることがわかった(例えば、非特許文献1)。このような異常な毛細血管は、神経の増殖等にともなって生じる。
これを踏まえ、本発明者は、異常な毛細血管に塞栓物質(イミペネム・シラスタチン粒子)をデリバリーすることで、異常な毛細血管を詰まらせることによる、疼痛の治療方法を見出した。
しかし、このような工程は煩雑であり、より簡便な技術に対するニーズがある。
前記疼痛治療剤は、平均粒径が10μm以上200μm以下である粒子状塞栓物質を含み、
前記疼痛治療剤は、疼痛部を栄養する主幹動脈に注射投与して用いられ、
前記疼痛治療剤の投与は、投与部位に対して血流の上流側及び/又は下流側が駆血された状態で行われる、
疼痛治療剤。
本発明に係る疼痛治療剤(以下、「本発明の治療剤」ともいう。)は、平均粒径が10μm以上200μm以下である粒子状塞栓物質を含む。
本発明の治療剤は、疼痛部を栄養する主幹動脈に注射投与して用いられ、かつ、該投与は、投与部位に対して血流の上流側及び/又は下流側が駆血された状態で行われる。
しかし、従来の方法においては、目的の毛細血管の近位に位置する分岐動脈を投与部位として選択し、該動脈内に、マイクロカテーテルを送達する工程を要する。
このような工程においては、投与部位の選択に精緻な判断を要するうえ、熟練した技術、特殊な用具、及び比較的長い手技時間等も必要となる。
このような手法によれば、投与部位として分岐動脈を選択しなくともよい。そして、主幹動脈への投与は簡便であるため、投与部位の選択に精緻な判断、熟練した技術、特殊な用具等を要さないうえ、手技時間を大幅に短縮し得る。
投与部位(主幹動脈)に対して血流の上流側を駆血する場合、投与部位に対して下流側の血流の速度は低下する。かかる場合、血液が、主幹動脈から分岐する分岐動脈、さらには異常な毛細血管へ流れやすくなる。
投与部位(主幹動脈)に対して血流の下流側を駆血する場合、投与部位に対して下流側の血流の一部がせき止められた状態となる。かかる場合、投与部位と駆血部との間の血流の速度が低下し、主幹動脈から分岐する分岐動脈、さらには異常な毛細血管へ流れやすくなる。
これらの疼痛の種類は、医師による診断によって特定することができる。
塞栓物質は、平均粒径が10μm以上200μm以下である粒子状の物質を用いる。
ただし、塞栓物質が正常な血管に迷入した場合に、該血管を詰まらせてしまう可能性を防ぐ観点から、塞栓物質は、体温(例えば、35~39℃)において血液に難溶であるが、経時的に体温における血液に溶解する材料であってもよい。
例えば、塞栓物質は、生理食塩水1000ml中に10gを分散した場合に、25℃の温度条件下で、4時間以内に溶解する性質を有し得る。具体的には、イミペネム・シラスタチンや、下記の水溶性高分子含有物質等が挙げられる。
(A)前記物質100mgを37℃の生理食塩水160ccに混和し、その10分以内に測定される平均粒子径が30μm以上500μm以下である。
(B)前記混和した液を37℃、100rpmで3時間撹拌した後に測定される平均粒子径が、(A)の平均粒子径の50%以下である。
(平均粒子径は、混和液についてレーザ回折式粒度分布測定装置「SALD-2300」(島津製作所社製)及び回文セル「BC23」(同社製)を用いて測定される。)
(A)の平均粒子径が過大であると、痛みの原因である異常血管部位よりも上流側で塞栓物質が詰まり、異常血管部位の塞栓が不十分になりやすく、また、異常血管以外への血流を阻害することによる副作用のおそれがある。このため、(A)の平均粒子径は、より好ましくは350μm以下、又は250μm以下である。
(A)の平均粒子径が過小であると、短期間に溶解して異常血管部位から流失してしまい、異常血管を塞栓させ難い。このため、(A)の平均粒子径は、より好ましくは40μm以上、又は50μm以上である。
(A)の平均粒子径が適切であるが(B)の平均粒子径が過大である場合、塞栓物質が正常血管をも長時間に亘って詰まらせ、それによる痛みが施術後に発生するおそれがあり
、また、塞栓物質が脊髄栄養血管や中枢神経の栄養血管に迷入して神経障害を招くおそれがある。(B)の平均粒子径は(A)の平均粒子径に対し、より好ましくは60%以下、又は70%以下である。
本発明の治療剤は、疼痛部を栄養する主幹動脈に注射投与して用いられる剤である。したがって、本発明の治療剤には、塞栓物質による塞栓作用を損なわない範囲で、塞栓物質とともに、生体動脈内に投与可能な媒体(生理緩衝液、滅菌水、生理食塩水、培地、造影剤)や、注射剤に含まれ得る任意の成分等が必要に応じて配合されていてもよい。
注射剤の構成は特に限定されないが、注射針を用いて投与対象である皮膚に投与できる任意の構成を採用できる。
通常、注射剤は、注射針(サーフロー留置針等)、及びシリンジ等を備え、シリンジ内に塞栓物質等が充填される。
ただし、本発明においては、投与部位の選択に精緻な判断を要さないため、血管撮影を行わなくともよく、造影剤を用いなくともよい。
かかる場合、超音波ガイド下で穿刺を行うと、動脈近傍の神経を損傷することを防止できる点で有効である。
本発明の治療剤は、注射針を穿刺可能な、疼痛部を栄養する主幹動脈に投与される。「疼痛部を栄養する主幹動脈」とは、具体的には、疼痛部からの直線距離として、疼痛部の上流側10cm以内に分布する動脈であってよい。
ただし、本発明において、主幹動脈と組み合わせて、分岐動脈も投与対象とすることは除外されない。
駆血は、投与部位に対して血流の上流側及び/又は下流側において行う。本発明の効果が奏されやすいという観点から、駆血は、投与部位に対して血流の上流側及び下流側の両方で行うことが好ましい。
駆血圧の上限は特に限定されないが、通常は、収縮期血圧に対して好ましくは収縮期血圧+100mmHg以下である。
例えば、投与部位が上腕動脈である場合、上腕部及び/又は前腕部のそれぞれにおける、投与部位からの直線距離が10cm以内である箇所を駆血してもよい。
本発明の治療剤の粒子状塞栓物質の量、投与速度、投与頻度等は、患者の状態(年齢、体重、症状の重篤性等)に応じて適宜設定できる。
(A)疼痛部における熱感
(B)疼痛部における疼痛とは異なる痛み
(C)疼痛部の皮膚の変色
(D)レントゲンのX線画像での疼痛部における塞栓物質の検出
疼痛部における熱感が生じたかどうかは、患者の申告に基づき判断できる。
疼痛部における前記疼痛とは異なる痛みが生じたかどうかは、患者の申告に基づき判断できる。
疼痛部の皮膚の変色が生じたかどうかは、外観に基づき判断できる。
具体的には、(A)乃至(D)のうちいずれか1以上の現象を確認した時点の直後に投与終了することが好ましい。
「(A)乃至(D)のうちいずれか1以上の現象を確認した時点の直後」とは、具体的には好ましくは50秒以内、より好ましくは30秒以内、具体的には15秒以内、10秒以内、又は5秒以内であってもよい。
ただし、2以上の現象の確認を基準に塞栓物質の投与を終了する場合、投与量が過度となることを防ぐ観点から、最初に生じた現象の発生時点から、最後に生じた現象の発生時点までの時間ができるだけ短いこと(好ましくは1分以内)が好ましい。
例えば、本発明の治療剤に配合される粒子状塞栓物質の量は、1回の投与あたり、好ましくは0.1g以上、より好ましくは0.2g以上であってもよい。
本発明の治療剤に配合される粒子状塞栓物質の量の上限は特に限定されないが、通常、1回の投与あたり、1g以下である。
本発明の治療剤によれば、より簡便に、異常な毛細血管を塞栓させることによって疼痛治療を行うことができる。
本例では、塞栓物質としてイミペネム・シラスタチン(商品名「プリマキシン」、メルク・アンド・カンパニー社製)を用いた。この塞栓物質の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(「SALD」シリーズ、株式会社島津製作所製)を用いて測定した値が70μm以下だった。
塞栓物質は、1g/10mlの生理食塩水溶液として調製した。
ヘバーデン結節を有する患者(20名)に対して、以下の方法で塞栓物質を投与し、その効果を確認した。
上腕動脈、及び橈骨動脈のうちいずれかの動脈を超音波ガイド下で穿刺した後、サーフローの先端を上腕動脈に位置させた。
逆血を確認後、サーフローを、生理食塩水を充填した三方活栓付きシリンジ(延長チューブを備えたもの)に接続し、ロックした。
上記(1)の操作後、上腕動脈の近位の上腕部、及び/又は、上腕動脈の遠位の前腕部にマンシェット(加圧可能な駆血用のカフ)を巻いた。
次いで、マンシェットの圧を、収縮期血圧の+30mmHg以上まで上げた。
外筒とシリンジとを接続後、シリンジを押して塞栓物質の投与を開始した。塞栓物質は、0.2g/分のペースで投与し、塞栓物質を含む溶液を5cc程度投与した時点で投与を終了した。
塞栓物質の投与前、投与1ヶ月後、投与3ヶ月後の各時点で、公知の指標に基づき疼痛を評価した。指標としては、「Numerical Rating Scale」(NRS)を用いた。この指標では、疼痛を十段階評価し、数値が高いほど疼痛が強いことを意味する。
疼痛の評価とあわせて、安全性(しびれ、筋肉低下、皮膚変色、知覚低下、精緻機能障害の有無)も評価した。
さらに、塞栓物質の投与後において重大な合併症は認められなかったうえ、しびれ、筋肉低下、皮膚変色、知覚低下、及び精緻機能障害のいずれも認められなかった。
カテーテルの挿入操作には、上記(1)及び(2)の工程と比較して、何倍もの時間を要するうえ、熟練した技術を要する。
つまり、本発明によれば、塞栓物質の投与部位として分岐動脈を選択するという煩雑な操作を要さずに、所望の治療効果が得られることがわかった。
本例では、塞栓物質の投与部位を非選択的に設定した(つまり、投与部位を主幹動脈に設定した)にもかかわらず、塞栓物質の投与部位を選択的に設定した(つまり、投与部位を分岐動脈に設定した)場合と同等量の塞栓物質で治療効果が得られたことは極めて意外な結果だった。
肩関節周囲炎を有する患者(16名)に対して、以下の方法で塞栓物質を投与し、その効果を確認した。
上腕動脈、橈骨動脈、及び鼠径動脈のうちいずれかの動脈を超音波ガイド下で穿刺した後、サーフローの先端を腋窩動脈領域に位置させた。
逆血を確認後、サーフローを、生理食塩水を充填した三方活栓付きシリンジ(延長チューブを備えたもの)に接続し、ロックした。
上記(1)の操作後、腋窩動脈の近位の上腕部、及び/又は、腋窩動脈の遠位の前腕部にマンシェットを巻いた。
次いで、マンシェットの圧を、収縮期血圧の+30mmHg以上まで上げた。
上記「実施例1」の「(3)塞栓物質の投与」と同様の方法で、塞栓物質の投与を行った。
上記「実施例1」の「(4)治療効果の確認」と同様の方法で、疼痛及び安全性を評価した。
さらに、塞栓物質の投与後において重大な合併症は認められなかったうえ、しびれ、筋肉低下、皮膚変色、知覚低下、及び精緻機能障害のいずれも認められなかった。
つまり、本発明によれば、塞栓物質の投与部位として分岐動脈を選択するという煩雑な操作を要さずに、所望の治療効果が得られることがわかった。
本例では、塞栓物質の投与部位を非選択的に設定した(つまり、投与部位を主幹動脈に設定した)にもかかわらず、塞栓物質の投与部位を選択的に設定した(つまり、投与部位を分岐動脈に設定した)場合と同等量の塞栓物質で治療効果が得られたことは極めて意外な結果だった。
変形性股関節症を有する患者(14名)に対して、以下の方法で塞栓物質を投与し、その効果を確認した。
鼠径動脈を超音波ガイド下で穿刺した後、サーフローの先端を鼠径動脈領域に位置させた。
逆血を確認後、サーフローを、生理食塩水を充填した三方活栓付きシリンジ(延長チューブを備えたもの)に接続し、ロックした。
上記(1)の操作後、大腿部にマンシェットを巻いた。
次いで、マンシェットの圧を、収縮期血圧の+30mmHg以上まで上げた。
上記「実施例1」の「(3)塞栓物質の投与」と同様の方法で、塞栓物質の投与を行った。
上記「実施例1」の「(4)治療効果の確認」と同様の方法で、疼痛及び安全性を評価した。
さらに、塞栓物質の投与後において重大な合併症は認められなかったうえ、しびれ、筋肉低下、皮膚変色、知覚低下、及び精緻機能障害のいずれも認められなかった。
つまり、本発明によれば、塞栓物質の投与部位として分岐動脈を選択するという煩雑な操作を要さずに、所望の治療効果が得られることがわかった。
変形性膝関節症を有する患者(25名)に対して、以下の方法で塞栓物質を投与し、その効果を確認した。
鼠径動脈、膝窩動脈、及び足背動脈のうちいずれかの動脈を超音波ガイド下で穿刺した後、サーフローの先端を膝窩動脈領域、後脛骨動脈、前脛骨動脈、又は腓骨動脈に位置させた。
逆血を確認後、サーフローを、生理食塩水を充填した三方活栓付きシリンジ(延長チューブを備えたもの)に接続し、ロックした。
上記(1)の操作後、大腿部にマンシェットを巻いた。
次いで、マンシェットの圧を、収縮期血圧の+30mmHg以上まで上げた。
上記「実施例1」の「(3)塞栓物質の投与」と同様の方法で、塞栓物質の投与を行った。
上記「実施例1」の「(4)治療効果の確認」と同様の方法で、疼痛及び安全性を評価した。
さらに、塞栓物質の投与後において重大な合併症は認められなかったうえ、しびれ、筋肉低下、皮膚変色、知覚低下、及び精緻機能障害のいずれも認められなかった。
つまり、本発明によれば、塞栓物質の投与部位として分岐動脈を選択するという煩雑な操作を要さずに、所望の治療効果が得られることがわかった。
Claims (4)
- 疼痛治療剤であって、
前記疼痛治療剤は、平均粒径が10μm以上200μm以下である粒子状塞栓物質を含み、
前記疼痛治療剤は、疼痛部を栄養する主幹動脈に注射投与して用いられ、
前記疼痛治療剤の投与は、投与部位に対して血流の上流側及び/又は下流側が駆血された状態で行われる、
疼痛治療剤。 - 前記粒子状塞栓物質は、生理食塩水1000ml中に、前記粒子状塞栓物質5gを分散後、25℃の温度条件下で、4時間以内に溶解する、請求項1に記載の疼痛治療剤。
- 前記駆血における駆血圧は、収縮期血圧に対して30mmHg以上高い圧である、請求項1又は2に記載の疼痛治療剤。
- 前記主幹動脈は、上腕動脈、腋窩動脈、鼠径動脈、後脛骨動脈、前脛骨動脈、及び腓骨動脈からなる群から選択される1以上である、請求項1から3のいずれかに記載の疼痛治療剤。
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