JP7539653B1 - ストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアシステム - Google Patents

ストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアシステム Download PDF

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Abstract

Figure 0007539653000001
【課題】ストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアシステム
【解決手段】
ストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアのためのシステムであって、
前記システムが、
ユーザの情報処理端末と、
ストレス対処のための体系的な心理療法を実施する複数のテーマに対応したそれぞれのストレス対処ワークセットと疾患特異的な症状を緩和するための少なくとも一つの症状緩和ワークセットとを記憶する記憶装置と制御部を有するサーバとを含み、
前記制御部が前記情報処理端末を介して前記ユーザに前記ストレス対処ワークセットと前記症状緩和ワークセットとを提供するシステム。
【選択図】図1

Description

本発明は、ストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケア支援用プログラムおよびシステムに関するものである。
心理的・社会的ストレスから生じる病気や、ストレスによって経過が悪くなると考えられる病気をストレス関連疾患と呼ぶ。ストレス関連疾患は心身症とも呼ばれ、 ストレス反応が改善されずに慢性化していくと、メンタルヘルス面での疾患だけでなく、身体面での疾患に至ることがある。ストレス関連疾患のメンタルヘルス面での疾患は、自律神経失調症、うつ病、不安障害、パニック障害、適応障害、アルコール依存症、薬物依存症、摂食障害、過敏性腸症候群、突発性難聴、神経症、片頭痛、不眠症、緊張性頭痛、ストレス関連身体疾患(心身症)としては胃・十二指腸潰瘍、本態性高血圧症、心臓神経症、気管支喘息,過喚起症候群、本態性高血圧症,冠動脈疾患(狭心症,心筋梗塞)、胃・十二指腸潰瘍,潰瘍性大腸炎,心因性嘔吐、単純性肥満症,糖尿病、筋収縮性頭痛,痙性斜頚,書痙、慢性蕁麻疹,アトピー性皮膚炎,円形脱毛症、慢性関節リウマチ,腰痛症、夜尿症,心因性インポテンス、眼精疲労,本態性眼瞼痙攣、メニエール病、顎関節症、PMS/PMDDなどが挙げられる。そして、これらのメンタルヘルス面に起因する疾患については心理療法が用いられている。
心因性疾患を治療するための治療用アプリに関する技術として、次に述べる技術が知られている。特許文献1には、ユーザの症状に基づいて患者のタイプ分けを行い、そのタイプごとに異なる心理療法に基づく治療を提供する技術を開示している。特許文献2には、PMSメモリに記憶された症状に基づいて患者のタイプ分けを行い、そのタイプごとに異なる心理療法に基づく治療を提供する技術を開示している。引用文献3には、禁煙患者から禁煙に関する解釈情報を取得して、その正誤を判断して、誤答の場合に誤った解釈を正すための認知行動療法情報を提供する技術を開示している。引用文献4には、ユーザの就寝時刻、入眠時刻、覚醒時刻、起床時刻に関する情報に基づいてユーザに催告メッセージを提示して眠気テストの実施を促す技術を開示するものである。引用文献5には、患者の精神状態を取得して、その情報を、精神状態を改善させるための情報の提供方法が算出されるように機械学習させた学習済みモデルに入力し、患者の精神状態を改善させるための情報を利用者に提供する技術を開示したものである。
特開2022-042008号公報 特許第7138839号公報 特許第6116769号公報 特許第6245781号公報 特開2022-042008号公報
従来の技術はいずれも患者の症状に対処する治療モジュールを提供するものである。特許文献1および特許文献2では、症状に基づいてアセスメントをおこないタイプ分けを行っているが、症状の要因となっている患者のストレス対処能力を患者に習得させるものではない。特許文献2、特許文献3および特許文献4では特定の疾患の症状を緩和するための情報を提供するものでストレス対処能力を患者に習得させるものではない。前述のように従来の治療用アプリは特定の症状に着目し、その根本原因となっている患者のストレス対処能力の改善法を提供するものではなかった。結果として、ストレスから生じた様々の疾患の症状の緩和のみを提供するもので、症状の根本的な改善につながるものではなかった。これらの対症療法的な治療用アプリの奏効率は20-60%程度と必ずしも高いものではないと発明者らは推測している。この原因として、ストレス自体に対する対処法が十分に身につかずに症状の原因が改善されないこと、治療用アプリに対する患者の考え方や理解の不足などが原因と考えられる。
本発明の一つの課題は、ストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアによる緩和・改善あるいは習慣改善のトレーニングを手軽に、かつ安全に可能とし、従来の治療用アプリの欠点を改善したセルフメンタルケアシステムを提供することにある。本発明の二つ目の課題は、従来のアプリは、従来の心理療法のように段階を踏んでカリキュラムを提供する書籍のようなもので実際にICTの利点を生かしたものでもなかった。本発明の三つ目の課題は、特定のストレス関連疾患のセルフメンタルケアシステムを提供することである。
(発明1)
ストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアのためのシステムであって、
前記システムが、
ユーザの情報処理端末と、
ストレス対処のための体系的な心理療法を実施する複数のテーマに対応したそれぞれのストレス対処ワークセットと疾患特異的な症状を緩和するための少なくとも一つの症状緩和ワークセットとを記憶する記憶装置と、前記システムの動作を制御する制御部とを有するサーバと、を含み、
前記制御部が、
前記ストレス対処ワークセットと、前記症状緩和ワークセットとを、スケジュールに従って前記ユーザに前記情報処理端末を介して提供する、前記ユーザのストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアのためのシステム。
(発明2)
ストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアのためのシステムであって、
前記システムが、
ユーザの情報処理端末と、
ストレス対処のための体系的な心理療法を実行するアクセプタンスアンドコミットメントセラピーまたはマインドフルネスに基づく複数のテーマに対応したそれぞれのストレス対処ワークセットと疾患特異的な症状を緩和するための少なくとも一つの症状緩和ワークセットとを記憶する記憶装置と、前記システムの動作を制御する制御部とを有するサーバと、を含み、
前記制御部が、
前記ストレス対処ワークセットと、前記症状緩和ワークセットとを、スケジュールに従って前記ユーザに前記情報処理端末を介して提供する、前記ユーザのストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアのためのシステム。
(発明3)
ストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアのための情報処理端末であって、
前記情報処理端末が、
ストレス対処のための体系的な心理療法を実行するアクセプタンスアンドコミットメントセラピーまたはマインドフルネスに基づく複数のテーマに対応したそれぞれのストレス対処ワークセットと疾患特異的な症状を緩和するための少なくとも一つの症状緩和ワークセットとを記憶する記憶装置と、前記情報処理端末の動作を制御する制御部とを有し、
前記制御部が、
前記ストレス対処ワークセットと、前記症状緩和ワークセットとを、スケジュールに従って前記ユーザに提供する、前記ユーザのストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアのためのシステム。
(発明4)
前記制御部は、エクササイズのコンテンツの内容(重複、補完、連続性、調整なし)、コンテンツ提供タイミング(同時、ずらす、順番の調整、調整なし)、プロセスの評価(両者の評価の統合、一方の評価で評価)のいずれかのスケジュール調整を行う発明1のシステム、発明2のシステムまたは発明3の情報処理端末。
(発明5)
前記記憶装置がさらに、対象となるストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調を評価するための尺度を含み、前記制御部が定期的に前記尺度により前記ユーザの重症度の評価を行い、評価結果を前記ユーザに提供する発明1のシステム、発明2のシステムまたは発明3の情報処理端末。
(発明6)
前記システムが、慢性疼痛、片頭痛、月経随伴症状、睡眠障害、摂食障害、歯科心身症、ダイエット、ED、うつ病、不安症、ADHD、産後うつ、女性更年期障害、男性更年期障害、糖尿病、アトピー性皮膚炎、過敏性腸症候群、筋緊張型疼痛、自律神経失調症、心因性めまい、気管支喘息、月経前症候群、醜形恐怖症、耳鳴り、心因性難聴、心因性失声症、不妊症、パニック障害、認知症、発達障害、統合失調症、心因性嘔吐、介護者、ヤングケアラー、労働者向けのセルフメンタルケアシステムである発明1のシステム、発明2のシステムまたは発明3の情報処理端末。
(発明7)
前記システムにおいて、前記ユーザの疾患特異的な症状を、生物心理社会的な尺度およびストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調の評価のための尺度を用いて評価し、その評価結果を条件分岐型アルゴリズムを用いてタイプ分けし、タイプに応じた心理療法を実行するワークセットを前記ユーザに提供する発明1のシステム、発明2のシステムまたは発明3の情報処理端末。
(発明8)
月経随伴症状のセルフケアのためのシステムであって、
前記システムが、
ユーザの情報処理端末と、
ストレス対処のための体系的な心理療法を実施する複数のテーマに対応したそれぞれのストレス対処ワークセットと疾患特異的な症状を緩和するための少なくとも一つの症状緩和ワークセットとを記憶する記憶装置と、前記システムの動作を制御する制御部とを有するサーバと、を含み、
前記ストレス対処ワークセットと前記症状緩和ワークセットのいずれかに少なくともアクセプタンスアンドコミットメントセラピーの原理に基づく脱フュージョンのエクササイズが含まれ、
前記制御部が、
前記ストレス対処ワークセットと、前記症状緩和ワークセットとを、スケジュールに従って前記ユーザに前記情報処理端末を介して提供する、月経随伴症状のセルフケアのためのシステム。
本発明のセルフメンタルケアシステムによれば、ストレス関連疾患を予防・改善するためのストレス対処能力を高めることが可能で、そのうえで、ストレス関連疾患に特徴的な症状の緩和を図るので効果的で永続的な改善が期待できる。また、ストレス対処能力が高まるので特定の疾患の改善だけでなく、副次的に現れる、抑うつ症状や不安症状の改善といった副次的な効果を得ることもできる。
本発明のシステムを示す概念図である。 本発明の実施例のPMSメモリの(a)ユーザのパーソナルデータのデータベースの一例、(b)入力画面の一例を示す図である。 本発明の実施例の睡眠日誌の(a)ユーザのパーソナルデータのデータベースの一例、(b)入力画面の一例を示す図である。 本発明の実施例の疼痛日誌のユーザのパーソナルデータのデータベースの一例を示す図である。 本発明の実施例の疼痛日誌の入力画面の一例を示す図である。 本発明のシステムの(a)制御プログラムの機能ブロック、(b)制御のフローを示す図である。 本発明の実施例のシステムのユーザ画面の一例を示す図である。 本発明のセルフケアシステムに含まれるプログラムで用いられる疾患と介入プログラムの対応関係を示すリストである。 本発明のプラットフォームのユーザの生物心理社会的要因とプラットフォームの要件の対応関係を示すリストである。
本発明はストレス関連疾患やストレスに起因するメンタル不調のセルフケアシステムにおいて、ストレス関連疾患やストレスに起因するメンタル不調からもたらされる対症的改善提案だけでなく、根本原因となるストレス対処法を身に着けることによって対症的改善提案の効果が向上するという知見に基づく。さらには、ストレス対処法と対症的改善提案の内容や提供時期を関連付けることによってさらに効果を高めることができる。
(セルフケアアプリを含むシステムの構成)
本発明の一実施形態として、インターネット上に設置されたネットワークシステムにインストールされたプログラムを挙げる。ネットワークシステムは、サーバやクラウド上の大容量の記憶装置を備え、ノートパソコンやスマートフォン、タブレットなどのユーザ端末がインターネットを介して接続されたサーバであり、このサーバ装置は、本実施形態に係るプログラムを実行することで、ユーザ端末とのデータ通信を通じて、ユーザ端末から入力された情報や、サーバの記憶装置に格納されている情報を用いてユーザ端末を介してユーザにストレス関連疾患の治療や緩和、セルフケアを可能とする治療用アプリ、セルフメンタルヘルスケアアプリやストレス関連疾患に関わる疾患教育等の各種情報を提供するものである。また、本システムはサーバとユーザ端末が協同して利用者、患者の症状を改善する例として示したが、すべての要素をサーバ側だけに保持し、ユーザ端末は情報入出力と情報表示のためだけに用いるシステム、あるいは、必要なデータやプログラムをユーザ端末にダウンロードして、すべての処理をユーザ端末で実行できるシステムや、ユーザーがアクセスできるウェブページでの提供も本発明の範囲に含まれる。
図1にユーザ端末110とサーバ106を含むネットワークシステム100の構成の概略を示した。ユーザ端末110は、インターネット120を介してサーバ130と通信するための通信装置105、個人情報や、データ、プログラムを記録するための記憶装置102、表示装置103、ユーザからの入力を受け付ける入力装置104、これらの制御を行う制御装置101などを含む。サーバ130には、インターネット120を介してユーザ端末110と通信するための通信装置131、大容量の記憶装置133、および制御装置132などが含まれる。制御装置132には、通信装置131を介してユーザ端末110と通信するための通信制御プログラムが実装されているとともに、記憶装置133に構築されたデータベースを管理するプログラムと、ユーザの現在または過去の症状・状態を記録した症状の記録(日誌)を管理する専用のプログラム(以下、症状日誌プログラムとも言う)や、セルフケアアプリや治療用アプリのサーバ側プログラム、セルフケアアプリや治療用アプリの治療用のモジュールであるワークや疾患教育の動画などのデータが格納されている。そして、サーバ側の制御プログラムは、ユーザ側のセルフケアアプリ・治療用アプリと連携して診断・治療・緩和・改善・維持またはセルフケアを実行し、制御装置132がセルフケア、治療に必要な情報を通信制御プログラムやデータベース管理プログラムと連携させながらユーザ端末に提供する。それによってサーバ130による診断・治療・緩和・改善・維持あるいはセルフケアがユーザに提供される。この例ではセルフケア・治療用アプリはサーバ側部分とユーザ端末側部分に分けられ、診断・治療・緩和・改善・維持またはセルフケアが実行される例を示すが、必要なプログラム・データ等をすべてユーザ端末110にダウンロードし、ユーザ端末110で独立して実行できる構成としてもよい(この場合、ユーザの情報処理端末110の制御部がプログラムの各機能ブロックの機能を制御し、実行し、情報処理端末110の記憶装置に複数のワークセット(ワークセットとは、複数のエクササイズ(ワーク)をセットとしたもの)、テーマ評価尺度や疾患評価尺度が記憶される)。または、ユーザ端末110は入力手段および表示手段としてのみ機能し、サーバ130はユーザ端末110からの入力、例えば専用のウェブページを介した、に基づいてプログラムを実行するように構成してもよい。
(ストレスマネジメント法)
心理療法や心理カウンセリングの手法で、被験者のストレスへの対処法を習得させる方法が確立されている。本発明では心理療法の中でも認知行動療法に基づくストレスの対処法について例示するが、その他の心理療法等の手法を適用することも可能なことはいうまでもない。またストレス対処法を身に着けることによって、普段からストレス耐性を高め、さまざまな不適応行動や症状の問題を予防することが可能となり、結果として、ストレス関連疾患の改善や症状の改善につながり、また、症状に対する心理的介入の効果を高めることができる。体系的なストレス対処法とは、マインドフルネスストレス逓減法(基礎作り(インタビュー、マインドフルネスを探索する、世界と自分自身をどう見ているか、自分自身の体とともにある)、ストレスに対応(ストレスとは何か、ストレス:自動反応かマインドフルな対応か、マインドフルなコミュニケーション、サイレントな1日)、ケアする(自分自身をいたわる、振り返り、前に進む、さらに続けていく)などの一連の流れ、あるいは、問題解決法であれば、問題を具体化する、具体的な解決策を考える、いくつかの解決策のそれぞれの長所と短所を検討する、解決策を決定し、実行する、実行した結果を評価する、などの一連の流れをストレス対処法を身につけるために体系的に行う当業者に周知の心理療法のことをいい、その心理療法の一部の部分のみを使用することは含まれない。
(アクセプタンスアンドコミットメントセラピーの技法)
近年、第3世代の認知行動療法として、アクセプタンスアンドコミットメントセラピー(ACT)が開発されてきた。ACTでは、(1)アクセプタンス,(2)脱フュージョン,(3)今この瞬間への気づき,(4)文脈としての自己,(5)価値,(6)コミットされた行為,の六つのコアプロセスがあり、受容またはマインドフルネス過程と同時にコミットメントと行動変容過程を適用した、関係フレーム理論を含む現代の行動心理学を基礎とする心理療法である((1)-(4)がマインドフルネスと関連すると言われている)。そして、そのそれぞれに対応したスキルを身につけることで、心理的柔軟性を養い、ストレスへの対処能力を身につけるものである。本願発明者らはACTのこういったプロセスが分離され、それぞれのプロセスの訓練方法が確立しているために、情報処理端末での利用に適していると考え、ACTでの手法を提案する。なお、厳密に上記の分類をする必要もなく、それぞれの目的を達成できるのであれば異なる分類でもよく、また、すべてを実行する必要がないこともいうまでもない。体系的な心理療法とはACTでいえば6つのコアプロセスの要素をすべて含むもの、あるいはマインドフルネスとの対応から上記の(1)-(4)のコアプロセスを含むものをいう。
(症状メモリ)
症状メモリはユーザの日々の状態をカレンダー機能・スケジュール機能を用いて記録したものである。対象とする心身症に応じて、ユーザに対する質問項目を変更することができる。また、ユーザの症状に合わせて必要な質問項目を選択するようにしても良い。また広範囲の心身症の症状と質問項目のリストを予め記憶装置に記憶させておき、ユーザがアプリを利用する際に、質問項目に回答を促し、その回答結果から対応する質問項目のリストを症状メモリの毎日の質問項目として設定する構成とすることもできる。心身症の症状は症状の記録を管理することによってセルフケアすることができるので、日々の症状の状態に関する回答結果の推移をユーザがリクエストして画面に表示できる構成とすると好ましい。図2(a)には記憶装置に記憶された症状メモリのデータベースの例をしめした。このデータベースでは日時情報とユーザから取得した質問項目への回答(この場合は、4件法、7件法などで入力されている)との対応付けた記録を示している。ここで典型的には、質問項目だけでなく、体温や、心拍数、活動度、などのバイタルデータや、旅行、結婚式、飲み会などの社会的なイベント等の情報などを同時に対応付けて記憶することもできる。
(PMSメモリ)
図2を用いて、症状メモリの一つとしてPMSメモリを説明する。PMSメモリは、生体リズムの影響によって女性のからだに周期的に表われる症状を把握するために、ユーザの生理周期に合わせた、身体症状、精神症状、社会的症状等と、基礎体温等、あるいは、EMA(Ecological Momentary Assessment、経験サンプリング法)と同時に記録するものである。図2(b)は症状メモリの例としてのPMSメモリのユーザ端末110を介した入力画面の例を示す。PMSメモリではユーザ端末110の表示装置103に入力項目が表示され、表示装置103の表面に設けられたタッチパネルである入力装置104によってそれぞれの項目についての症状のある・なしに基づいてスライダバーを利用して入力する例を記載した(図2(b)の質問項目が、図2(a)の項目A、項目B、、、に対応している。なお、紙面の都合で項目は3つしか図示されていないがほかの項目が省略されているにすぎないことはいうまでもない)。表示や入力方法はこれに限られず、自由記載やチェックボックスを利用してもよい。たとえば、基礎体温の測定時に同時にこのPMSメモリを毎日入力し、基礎体温とその日の身体的症状、精神的症状、社会的症状(これらはすべてではなく必要なものだけでも良い)と、場合によっては追加で入力されたEMAの入力データ(PMSメモリのデータだけでなく、その他の測定結果(加速度センサを用いた身体活動量や心電図センサを用いた心拍数の変動、睡眠時間、食事記録)でもよい)が月経周期と関連付けられて記憶装置102あるいは記憶装置133または両方に記憶される。PMSメモリに記録する質問項目としては、PMSメモリ(川瀬ら「日本女性心身医学会雑誌」第5巻、第1号、31-37)、MDQ(Menstrual Distress Questionnaire)、偏光板MDQ(modified MDQ)、PSST(The Premenstrual Symptoms Screening tool)、DSM-IVのPMDDの診断基準、COPE(Calendar of Premenstrual Experiences)、PMSIS(Premenstrual Symptoms Impact Survey)、健康度・生活習慣診断検査(Diagnostic Inventory of Health and Life Habit; DIHAL.2,中学生~成人用)、MAQ(Menstrual Attitude Questionnaire)、VAS(月経痛レベル)などに記載のものを利用してもよい。これらの尺度は月経随伴症状を診断するために用いることができる。なお、ユーザの心理・社会的な背景として、妊娠を望んでいるか否かや、月経観・月経イメージ、母性性・性役割パーソナリティによっても心理社会的な月経随伴症状に影響が出ると考えることから、ユーザの基礎情報として妊娠を望んでいるか否かや、月経観・月経イメージ、母性性・性役割パーソナリティについても質問項目として、記録されるようにしてもよい。
(睡眠日誌)
図3(a)に記憶装置133(場合によっては記憶装置102)に記憶される睡眠日誌のデータの一例を示した。本睡眠日誌は、患者の就寝時刻、入眠時刻、覚醒時刻、起床時刻、睡眠の質(例えば、5段階)、目覚めた回数(あるいは、目覚めていた時間)、昨日の昼寝の時間、睡眠効率、実質睡眠時間、床上時間、翌日業務、睡眠剤やアルコールの摂取などの項目が設けられ、不眠症治療用アプリを含むシステムは例えばスマホなどのユーザ端末110の入力画面(たとえば、図3(b))から、患者に定期的、典型的には起床後、迅速に、ユーザ端末110を介してこれらの項目の値を入力することを求める。また、翌日業務などは帰宅後などで就寝時刻の設定前に入力するようにしてもよい。ここで、翌日業務は、翌日の業務や作業内容の危険度を示す入力値で例えば、居眠りなどをすることによって身体的な危険が及ぶ業務や作業を行う場合が該当する。ここにチェックが入っている場合や5段階で4以上の場合に、就寝時刻の設定で、実質睡眠時間が短くなるような設定を通常(例えば昼間の眠気が5段階評価の5の場合、短くすることを避ける)よりも避けるように設定(例えば昼間の眠気が5段階評価の4の場合、短くすることを避ける)すると安全面から好ましい。このほか、睡眠回数など他のパラメータを入力し、記憶してもよい。また、人の体温の周期と概日リズムについて相関があることが知られており、人の体温の周期と睡眠周期との相関があることも知られているので、定期的に体温を測定し、そのユーザの一日の体温の変化のグラフと就寝時刻との関係をグラフィカルに表示したり、この体温の変化を就寝又は入眠時刻あるいは覚醒時刻または起床時刻の設定に役立ててもよい(例えば、体温が下がっていくときに就寝時刻を合わせる、あるいは、体温が上がっていくときに起床時刻を合わせる)。このように、ユーザのバイタルサインと就寝又は入眠時刻、あるいは覚醒時刻または起床時刻との関係を表示、あるいはこのデータをそれらの時間設定に役立ててもよい。また、図3(a)では7月1日から7月3日の3日分のデータとして記憶データを示したが、治療の継続期間や、必要期間分の記録を保存することは言うまでもない。また、上記例では睡眠日誌への入力はユーザ端末110へのユーザの入力としたが、ウェアラブルデバイス等のユーザ端末からの自動的な入力でも構わない。
睡眠効率とは、ベッド等の寝床にいる全体の時間のうち、実際に眠れている時間の割合をいう。すなわち、睡眠効率は、以下の式により算出される。
睡眠効率=(入眠時刻から覚醒時刻までの時間)/(就寝時刻から起床時刻までの時間)×100[%]
床上時間とは、以下の式により算出される。
床上時間=就寝時刻から起床時刻までの時間
また、睡眠時間は、以下の式により算出される。
睡眠時間=入眠時刻から覚醒時刻までの時間
実質睡眠時間は、以下の式により算出される。
実質睡眠時間=入眠時刻から覚醒時刻までの時間-目覚めた時間
また、これらの時間や睡眠の質はユーザの入力に変えて、アクチグラフィ、睡眠ポリグラフィや、スマートベッド、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスなどによるデータによって取得するようにしてもよい。
さらに、これらのデータはユーザ端末110や管理者や医療者の端末(図示しない)から、特定日の患者のデータの呼び出し、平均データの呼び出し、特定期間のデータの推移(折れ線グラフ等で)を表示できるようにすることによって、患者の状態の確認や、ユーザのセルフケアに役立てることができる。
(疼痛日誌)
図4に記憶装置133(場合によっては記憶装置102)に記憶される疼痛日誌のデータの一例を示した。本疼痛日誌は、患者の午前・午後・夜の疼痛の程度、午前・午後・夜の服薬の記録、午前・午後・夜の生活への疼痛の影響、その日の気分、天候、平均気温(最高気温、最低気温、寒暖差などを記録するようにしても良い)、平均湿度(午前・午後・夜の湿度としても良い)、体温(午前・午後・夜の湿度としても良い)、最高血圧・最低血圧(午前・午後・夜の湿度としても良い)、環境要因や状況などのストレス要因などを記録する、その日の出来事・メモ、生理の有無などをセットにして日毎に記憶している。なお、本日誌はいずれかの慢性疼痛、慢性頭痛、片頭痛、関節痛、腰痛などに対して利用することができるが、さらに、いずれの痛みかを記録するようにしても良い。次に図5にそれぞれのデータをユーザ端末110を介して入力する方法を示す。まず、入力時刻はユーザ入力欄をクリックすると、「午前」、「午後」、「夜」を選択可能とするドロップボックスが表示され、ユーザはいずれかを入力する、次に、その入力時点での痛みの程度を入力するために、入力欄をクリックし、出願するドロップボックスから、「強」、「中」、「弱」、「なし」を選択する、続いて、薬品名個数入力のドロップボックスをクリックし、薬品名「バファリン」、「ロキソニン」、「イミグラン」、「ゾーミッグ」、「レルバックス」、「マクサルト」、「アマージ」、「インデラル」などから選択し、また、その量を「1錠」、「2錠」、「3錠」などから選択する。次に、痛みの生活への影響を記録するために、ユーザ入力欄をクリックし、出現するドロップボックスから「大」、「中」、「小」を選ぶ。さらに、その日の気分を記録するために、気分の横のユーザ入力欄をクリックし、「憂鬱」、「不安」、「イライラ」、「脈打つ痛み」、「吐き気」、「重い痛み」、「嘔吐」、「不眠」、「その他」から感情、症状を選択する。また、女性の場合は、生理の有無を入力することもできる。さらに、毎日一定時間に測定した体温、血圧をユーザー欄をクリックして入力する。さらに、その日の天候をユーザ記入欄をクリックして、出てきたドロップボックスの「晴れ」、「曇り」、「雨」から選択して、入力、気温、湿度を、ユーザ入力欄に記入して記憶する。すべての入力が終わったら、図示していない「完了」ボタンをクリックして、図4に示したリストに入力値を上書きする。また、上記例ではユーザが手入力したが、天候、気温、湿度は地方の気象情報提供サイト等からダウンロードすることができる。さらに、体温、血圧は、スマホのカメラや、スマートウォッチ、イヤホン型のウェアラブルデバイスなどから自動的に取得しても良い。また、痛みを感じたときに都度、タッチするボタンを入力装置として設けて、その都度押すように構成し、その強さや回数から痛みの程度を判定する、あるいは、脈拍などで頭痛の状態にあることが認識できる場合はそのようなバイタルサインを用いて入力するようにしても良い。その他、当業者周知の入力方法でこれらのデータを入力することもできるし、項目を増減することもできる。また、ここでは、日にちの情報はスマートフォンから自動取得されたが、ユーザが入力できるようにしても良い。図4のリストでは3月1日から3月3日のデータの例を示しているが、これに限らず、連続してデータが増えていくことは言うまでもない。さらに、これらのデータはユーザ端末110や管理者や医療機関の端末(図示しない)と連携させ、これらの端末から、特定日の患者のデータの呼び出し、あるいは、評価しやすいように集計・分析したデータ、例えば、平均データの呼び出し、特定期間のデータの推移(折れ線グラフ等で)を呼びだして表示できるようにすることによって、患者の状態の確認や、ユーザのセルフケアに役立てることができる(呼び出すだけでなく定期的にデータを送信するようにしても良い)。さらに、医療機関の端末の電子カルテ等のソフトと連携させ、データをソフトに転送、あるいは特定のデータをソフトに転送して医療機関で利用することもできる。
疼痛日誌は服薬管理アプリとして使うことも可能で、服薬時に服薬した時間、服薬した薬品名、個数を記録できるようにしても良い。ここで、良く服薬する薬品は、簡単に選択できるように、入力画面でボタン表示させ服薬時にボタンを押すと、その押した回数とともに、時間、を記憶させても良い。さらに、この服薬管理と痛みの相関関係のグラフや、両者のデータの折れ線グラフなどを表示、あるいはそれらのデータを医療機関端末に転送するようにしても良い
(実施例1)
本実施例では月経随伴症状(特にPMS)のセルフケアアプリを例示する。本アプリの構成は前半部のストレス対処(ストレスケア)と、後半の症状対処とから構成される(ストレスケアのみを意図した場合は前半部だけのアプリとすることもできる)。本アプリの制御はサーバ130またはユーザの情報処理端末110のいずれか、あるいは両者に記憶されたソフトウェアプログラムで実現される。本プログラムは図6(a)の機能ブロックからなり、図1の各機能を有する装置を制御してソフトウェアプログラムの機能をユーザに提供する。また、ソフトウェアプログラムは典型的には、図6(b)のフローで動作する。入出力ブロック601は表示装置103および入力装置104を制御し、ユーザへの情報(ワーク等も含む)を提示したり、ユーザ入力を受け付けるブロックである。評価ブロック602は各ブロックから入力された情報から所定の評価を行うブロックである。スケジュール管理ブロック603はカレンダー機能を有し、日付情報と各種情報を関連付けて、記憶管理ブロック605と連携しながら処理を行うブロックである。ワーク提供ブロック604はプログラムの流れに沿って、制御ブロック606からワークの提供のリクエストを受けると、記憶管理ブロック605と連携しながらワークを入出力ブロック601に送信するブロックである。記憶管理ブロック605はシステムの記憶装置102,133を制御するブロックで、制御ブロック606やその他ブロックからのリクエストに応じて、リクエストされたワークやデータなどの情報を返すブロックである。制御ブロック606は本プログラムの実行を制御するブロックである。図7に本プログラムに従うホーム画面の例を示した。図7には、ユーザのスマートフォンである情報処理端末110、ユーザの生理日予測や、バイタルデータ、天気や気圧およびそれらの予報、生理周期の中での状態などが表示されるメインウインドウ701、タッチパネル上のタイル(アイコン)706をタッチすることで所定の機能を起動するための機能ウィンドウ702(横スクロールで隠れたタイルを閲覧でき、これらの機能ボタンは固定されたものである)、検索窓703、タッチパネル上のタイル(アイコン)705をタッチすることで所定の情報の閲覧や機能の起動するための情報ウィンドウ704(縦スクロールで隠れたタイルを閲覧でき、新しい情報や機能に対応したアイコンが画面上の上方の情報ウィンドウのタイルに追加され、古い情報は情報ウィンドウの下方に遷移し、所定量のタイルが閲覧可能である(本実施例では18のタイルが閲覧可能で、古くなったものは情報ウィンドウのタイルから削除されるように制御される。なお、本実施例では古くなった情報は機能ウィンドウのアーカイブ機能を起動すると開かれるアーカイブフォルダでカテゴリごと、日付順に整理されて閲覧可能に設定されている)。本実施例では表示される情報のタイルは記憶装置のメモリで管理されており、メモリには情報の新しい物から1-18の順番がつけられ、情報ウィンドウの最上部の左から1-3が、2段目に4-6が表示されるというように制御され、新しい情報が表示されるようにリクエストされると、1に新しい情報が記憶され、元の1の情報は2のメモリに、元の2の情報は3のメモリに、というように書き換えられる。
次に、ソフトウェアプログラムのフローを図6(b)を用いて説明する。
(650)ユーザが入出力制御ブロック601によって制御される情報処理端末110の表示装置103のタッチパネル上の本プログラムを示すアイコンをタッチすることによって起動されるログイン画面(図示しない)からログイン動作を行う。これによって図7のホーム画面が表示される。(651)スケジュール管理機能ブロック603が記憶管理ブロック605に当日のデータを入力すべきタイミングでのPMSメモリの入力の有無をリクエストし、記憶管理ブロック605は記憶装置133または記憶装置102のデータベースを検索し、記録の有無を返す。記録がなかった場合は、スケジュール管理ブロック604は入出力ブロック601を介してユーザがPMSメモリに記憶すべき質問項目を提示し、ユーザの入力を受けると記憶管理ブロック605へ送付し、PMSメモリの記憶されるユーザごとのパーソナルデータを記憶したデータベースに追記を行う。(652)ユーザがセルフメンタルケアアプリを起動させる、あるいは、ユーザのバイタルデータの変化や、SNSなどでのユーザーの特定の入力が検出されたなどの条件が満たされアプリの起動がリクエストされた、プログラムの記述としてそのタイミングでのアプリ起動が規定されていたなどで、セルフケア機能が開始される。スケジュール管理ブロック603は、複数のPMSや月経随伴症状の疾患教育および心理療法(ACTであれば、思考のとらわれについてのメタファーと心理教育、心理的柔軟性についてと価値についての心理教育、価値に沿った行動についての心理教育、アクセプタンスと体験の回避についての心理教育、フュージョンについての心理教育、注意訓練や、文脈としての自己についての心理教育、体験の回避が効果的でないことの心理教育など)についての教育用のコンテンツ(典型的には動画であるが、テキスト形式や音声コンテンツ、エクササイズとして、チャットボットやゲーム形式での双方向性を持つものでも構わない)を所定の時間的間隔、所定の順序で、ここでは、毎朝、これらのコンテンツの提供順を定めたリストに従って一つのコンテンツを提供するように制御ブロック606にリクエストを行う。制御ブロック606はこのリクエストに応じて制御ブロック606が記憶管理ブロック605へリクエストし、記憶管理ブロックは記憶装置133または記憶装置102の該当コンテンツを読み出し、制御ブロック606に送信し、制御ブロック606は入出力ブロック601に送信し、入出力ブロックは必要に応じて表示装置103と入力装置104を介してユーザに該当コンテンツを提供する。実際の画面は図7のメインウインドウから、該当コンテンツの提供ページに移り、例えば動画の場合、画面上の情報ウィンドウの左上に新たなタイルとして該当コンテンツ動画が提供される(図示しない)。画面上の「戻る」ボタン(図示しない)をタッチするかコンテンツが終了することでメインウインドウに移る。また、このユーザによる実行状況をスケジュール管理ブロック603が監視して、途中中断していた場合は実行状況として、記憶し、制御ブロック606は、次回起動時に再度中断個所から再開するように制御する。該当のコンテンツをユーザが完了した場合、次の処理に移る。スケジュール管理ブロック603は提供スケジュールの記載されたリストに従って、新たなコンテンツを提供しようとした際に、前のコンテンツが終了していなかったことを検出すると、新たなコンテンツを提供するのではなく、前のコンテンツを再度左上に表示するように制御を制御ブロック606にリクエストして制御することもできる。本アプリのコンテンツは、チャットボット形式などの文章、音声、動画、ゲーム形式などを利用することができるが、それらの一つや、コンテンツの中身に応じて組み合わせを用いたコンテンツ群を設けても、一つのコンテンツを複数の形式で作成しておき、事前に設定、あるいは都度ユーザが選択できるようにしても良い。また、ユーザの利用履歴、たとえばアプリの利用履歴を監視装置106を用いて監視、記録し、ユーザが動画鑑賞の頻度が高い時はコンテンツも動画で、SNSなどの利用が多い場合はチャットボット形式でコンテンツを提供するようにしても良い。
(653)本実施例では、ACTに基づくコアプロセスとして、「文脈としての自己」、「アクセプタンス」、「脱フュージョン」、「いま、この瞬間」(左記例ではそれぞれのプロセスについては10個のエクササイズ(それぞれのプロセスに対するワークセット)として用意されているが数はこれに限られない、また、心理教育や疾患教育のワークもエクササイズの一種として含まれる)、「価値」、「コミットメント」の6つを用いる。ここでは3つを用いたがこれには限られず、ACTの6つのプロセスに基づくプロセスであればいずれでもよい(例えば、「マインドフルネス」、「脱フュージョン」、「アクセプタンス」などの3つのプロセスや、「文脈としての自己」、「アクセプタンス」、「脱フュージョン」、「いま、この瞬間」の4つのプロセスを用いて実施することもできる)。また、以下で用いられる尺度は一例であって、目的に応じて周知の尺度を利用できることはいうまでもない。まず、制御ブロック606はPMDD評価尺度の質問項目をユーザに実施する。つまり、制御ブロック606から記憶管理ブロック605に該当尺度のリクエストを行い、記憶管理ブロック605はリクエストに従い、記憶装置133または記憶装置102の該当尺度を読み出し、制御ブロック606に送信し、制御ブロック606は入出力ブロック601に送信し、入出力ブロックは表示装置103に尺度の項目を表示し、ユーザは入力装置104を介して回答する。項目については「そう思う」「ややそう思う」「あまり そう思わない」「そう思わない」といった回答を選択する4件法、5件法や7件法のような数値で処理可能な選択方法を選択すると都合がよい。そして、この回答結果(典型的には、合計点数、あるいは尺度に含まれる因子ごとの合計点数)からユーザのPMDDの状況を評価ブロック602が、記憶管理ブロック605に記憶された尺度と既知の点数と病状の対応関係を示すリストを記憶管理ブロック605にリクエストし、記憶管理ブロック605は該当リストを記憶装置133または記憶装置102から読み出し、評価ブロック602に返し、評価ブロックはユーザの回答結果の点数をこのリストと対比してユーザの状態を評価する。その後、評価ブロック602は、記憶管理ブロック605に結果を送信し、記憶管理ブロック605は記憶装置133または記憶装置102のユーザごとのパーソナルデータを記憶したデータベースに記憶する(以下、尺度の回答の取得や評価は同様に行う)。次に心理的柔軟性を測定するためにAAQ-IIの尺度を用いて前述同様にユーザの回答を取得し、ユーザのパーソナルデータに記憶する。また、FFMQやCFQなどの尺度の回答をユーザに促し、その回答結果をユーザのパーソナルデータに記憶させ、ベースのデータとして利用することもできる。
次にACTの各プロセスについてのACTの理論に基づくエクササイズを提供する。記憶装置133または記憶装置102には、「文脈としての自己」(観察者/視点としての自己=場/文脈としての自己を理解するための、観察者エクササイズ、MCT(メタ認知療法)の自由連想タスク、チェスボードのメタファーなどの周知のエクササイズ)、「アクセプタンス」(苦痛を伴うような内的出来事にこころを開き,そのための時間をとるための、氷を握るエクササイズなどの周知のエクササイズ)、「価値の明確化」(自分が継続的にどんな行動をとるのか価値の明確化のための、10 個の価値の領域(仕事/職業、友人/社会生活のエクササイズなど)から重要だと考える領域を選択するエクササイズなどの周知のエクササイズ)、「脱フュージョン」(自分の内的な出来事から距離を置くか,それを切り離し観察できるようになるための、バスのエクササイズ、「私は・・・という考え」を持っていると言いかえるエクササイズなどの周知のエクササイズ)、「いま、この瞬間」(この瞬間に起こっていることへつながり,埋没するための、オーケストラの楽器の音色、グミの見た目・味・香り・触感、身体のさまざまな部位の感覚に注意を向けるエクササイズなどの周知のエクササイズ)、「コミットされた行為」(自身の価値に導かれた効果的な行動をとるための、価値に基づくコミットメントを促すワークなどの周知のエクササイズ)が記憶されている。本実施例では、「文脈としての自己」、「アクセプタンス」、「脱フュージョン」、「いま、この瞬間」については10個のエクササイズが、「価値の明確化」、「コミットされた行為」については一つずつのワークが用意されている(エクササイズやワークの数は特に規定がなく適宜変更可能なことはいうまでもない)。なお、エクササイズやワークだけでなく、その実施順が規定されるものについてはその情報も併せて記憶装置133または記憶装置102に記憶されている。また、それぞれのプロセスに関する教育コンテンツを含めて提供しても良い。
次にフロー653のエクササイズ等のワークの実施について説明する。
各プロセスの実行順序は特に規定はないが、例えば、予め順番を決めてその順序を記憶装置133または記憶装置102に記憶させておく、FFMQやCFQの尺度の測定を行って、相対的に弱いプロセスから始める、あるいは、フロー653を始める際にユーザに対して、6つのプロセスについて興味を持っているプロセスに関する質問枝を提供し、ユーザの回答から順序を決定することにしても良い。また、事前にユーザにBIG5、エニアグラム、MBTIのようなユーザ特性を調査する質問をユーザに行い、そのユーザ特性に合わせて順番や、提供するプロセスを決定しても良い。例えば、BIG5で情緒安定性が低く出ている場合は、「アクセプタンス」から、つぎに「脱フュージョン」のように提供し、好奇心が高いと出ている場合は、「今、この瞬間」、「脱フュージョン」のように提供するとユーザのエクササイズへの効果を高めることができる。また、情報処理端末を介してユーザへの質問をする代わりに、スマートフォンの利用履歴からBIG5のような特性評価を行う周知の技術(例えば、特開2022-189376)を使うと、ユーザの負担を増やすことなく、判断することができる。
本実施例では多くのケースで重要なプロセスである、「いま、この瞬間」、「脱フュージョン」からエクササイズを開始するように設定されている。また、ソフトウェアプログラムの各ブロックとハードウェアの各機能との連携は上述と同様であるので詳細は省略する。また、エクササイズの提供プログラムの実行に先立って、制御ブロック606がFFMQやCFQなどの尺度の回答をユーザに促し、その回答結果をベースとして利用することもできる。
まず、スケジュール管理ブロック603は、「いま、この瞬間」のワークセットに含まれる、「お茶を飲む」ワークを提供する。つまり、開始日の朝10:00に情報ウィンドウの最新のタイル(左上)に「お茶を飲む」エクササイズを起動するためのアイコンを表示させるように制御ブロック606にリクエストする。スケジュール管理ブロック603はユーザによる同エクササイズの実行状況を記録する。教育コンテンツと同様に、ユーザが実行していなかった場合、スケジュール管理ブロック603はスケジュールに従ってエクササイズを提供するだけでなく、実行していない、あるいは、中断しているエクササイズを再度最新のタイルに設置するように制御しても良い。また、ユーザがエクササイズを実行した回数をカウントできるように、例えば、エクササイズのページから実施回数ボタンを設け、タッチするたびに積算するようにして、実施回数に応じてポイントを付与するようにしてインセンティブを与えるようにすることもできる。次に、前述と同様に、翌日の朝10:00に、スケジュール管理ブロック603はスケジュールのリストに従って、次のエクササイズ、「足を意識して、文章を読む」エクササイズを最新のタイルに表示する。さらに、リストに従って5日目まで次のエクササイズを毎朝、ユーザに提供し、ユーザの実行を促す。6日目にFFMQ(Five Facet Mindfulness Questionnaire)の下位尺度を用いて、「いま、この瞬間」のプロセスの習熟度(効果)を測定する(尺度はこれに限られずMAAS(Mindful Attention Awareness Scale)などACTで用いられる他の尺度を用いることもできる)。本実施例ではこの評価結果を評価ブロック602が以前のユーザの評価結果(パーソナルデータに記憶された)と比較して、改善が見られた場合、あるいは、このプロセスの5日間のワークセットの実施が2回目だった場合、次のプロセスに進むように設定されている。なお、この設定は適宜修正可能で、尺度の取得を行わない、尺度の評価を行わないで次のプロセスへ進む、評価結果が向上しているだけでなく所定の程度まで向上するまで同じプロセスを繰り返す(本プロセスのワークセットではエクササイズが10個なので、3回目からは同じエクササイズが繰り返される)、など修正が可能である。
次に「脱フュージョン」のエクササイズをスケジュール管理ブロック603は制御ブロック606にリクエストすることで、上述の「いま、この瞬間」と同様に提供する。ここで、評価にはCFQ(Cognitive Fusion Questionnaire)を用いる(尺度はこれに限られずACTで用いられる他の尺度を用いることもできる)。
次に「アクセプタンス」のエクササイズをスケジュール管理ブロック603は制御ブロック606にリクエストすることで、上述の「いま、この瞬間」と同様に提供する。ここで、評価にはAPQ(Acceptance Process Questionnaire)を用いる(尺度はこれに限られずACTで用いられる他の尺度を用いることもできる)。
次に「文脈としての自己」のエクササイズをスケジュール管理ブロック603は制御ブロック606にリクエストすることで、上述の「いま、この瞬間」と同様に提供する。ここで、評価にはSACS(Self-as Context Scale)あるいはFFMQの下位尺度を用いる(尺度はこれに限られずACTで用いられる他の尺度を用いることもできる)。
次に「価値の明確化」のエクササイズをスケジュール管理ブロック603は制御ブロック606にリクエストすることで、価値のワークを実施する。スケジュール管理ブロック603は、制御ブロック606に、次の日の朝10:00に、価値のワークを情報ウィンドウの最新のタイルにエクササイズを起動するためのタイルを表示させるようにリクエストする。タイルがユーザによってタッチされると、制御ブロック606は、画面上に、10個の価値の領域(仕事/職業、友人/社会生活など)からユーザが重要だと考える領域を1乃至3個まで選択し、さらに、ユーザに自由記述で選択した領域内でのユーザが価値があると認める「行動」を入出力ブロック601を制御して入力させる。制御ブロック606はさらに入力された「行動」を記憶管理ブロック605に送信し、記憶する。価値に沿った行動を行っているかどうかはVQ(Valuing Questionnaire)を用いて評価する(尺度はこれに限られずACTで用いられる他の尺度を用いることもできる)。
次に「コミットされた行為」のエクササイズをスケジュール管理ブロック603は制御ブロック606にリクエストすることで、価値のワークを実施する。スケジュール管理ブロック603は、制御ブロック606に、次の日の朝10:00に、価値のワークを情報ウィンドウの最新のタイルにエクササイズを起動するためのタイルを表示させるようにリクエストする。タイルがユーザによってタッチされると、制御ブロック606は、画面上に、前述の価値の明確化で入力された価値を画面上部に表示し、下部に、短期的、中期的、長期的な価値に沿った行為を入力するための窓を表示する。制御ブロック606は入力された行為を記憶管理ブロック605に送信し、記憶する。コミットされた行為を行っているかどうかは同様にVQ(Valuing Questionnaire)を用いて評価する(尺度はこれに限られずACTで用いられる他の尺度を用いることもできる)。
ここで、再度、制御ブロック606は、ユーザのAAQ-II、FFMQ、CFQを測定し、AAQ-IIの点数、6つのプロセスの各数値の変化を、たとえば、AAQ-IIの点数の推移を示す折れ線グラフと6つのプロセスの点数の推移を示す6角形のレーダーチャートの変化をグラフィカルな表示を行い、ユーザに本プログラムの効果を視覚的に理解させる。このグラフの経時的な変化はユーザのパーソナルデータを呼び出すことで随時確認することができる。また、ここで、最新のデータと過去のデータを色を違えて表示するようにするとわかりやすく好ましい。
上述のようにACTに基づくストレス対処の体系的な基本プログラムが提供された。つぎに、前述の6つのプロセスの評価結果(FFMQ、CFQの測定結果、あるいはACTの6つのプロセスの他の尺度を用いた測定結果)を評価ブロック602が評価し、「文脈としての自己」、「アクセプタンス」、「脱フュージョン」、「いま、この瞬間」についてユーザの相対的に得点が低いプロセスを低い順に実施する、実施方法は上述の各プロセスと同様にする。そして、1か月の提供後に、AAQ-II、FFMQ、CFQ、VQを使って、心理的柔軟性と、各プロセスの習熟度(効果)を評価ブロック602が評価する。ここで、必要に応じて(価値の達成度が低く、価値の見直しを必要とする場合や、目標が達成され、設定しなおす必要が出たときなど)「価値の明確化」、「コミットされた行為」の上述のプロセスを再度実行する。そして、このターンがこの実行によって終了すると、再度6つのプロセスの評価結果に基づいて、相対的に得点が低いプロセスから順に実施する工程を繰り返す。この繰り返しを続けても、AAQ-IIの得点がある程度に達し、心理的柔軟性が獲得されたことが認められた場合、エクササイズの実行は停止し、定期的、例えば、1か月ごとにAAQ-IIと6つのプロセスの評価を行い、心理的柔軟性やいずれかのプロセスの習熟度が低くなった場合、あるいはAAQ-IIの評価を行い、心理的柔軟性が低くなった場合、に上述のエクササイズの提供を再開するようにすることもできる。また、ACTの6つのプロセスのうちいずれをどのように繰り返すかは適宜決定できるが、例えば、提供するプロセスの評価点のパターンに応じて提供するプロセスとプロセス順を決定しておき、その複数のパターンと提供するプロセスとその順序(2つ以上の場合)をリスト化して記憶装置に記憶させておき、評価ブロック602がユーザの評価点とこのリストを比較して、次に提供するプロセスを決定し、その提供プロセス(群)が終了したのち、尺度による評価を行ってまた次のプロセスを決定するという工程を繰り返しても良い。また、ユーザの複数のプロセスの評価点のパターンと、その後に提供されるプロセス毎のプロセスの実行後の評価点の変化を教師データとして、機械学習してモデルを構築し、ユーザの初期の評価点のパターンをこのモデルに入力してお勧めのプロセス(群)を提案するようにし、このプロセスの実行と評価を繰り返すようにしても良い。
(654)次に評価ブロック602の第2の機能を、PMSの疾患特異的な症状のセルフケアを例に挙げて説明する。評価ブロック602はユーザによって入力されたPMSメモリのパーソナルデータを分析する機能を持つブロックでもある。また、ユーザの入力した過去の生理日から次の生理日を算出して予測する機能や、ユーザの入力したユーザのPMSの心身の症状や腹痛などの症状の生理日との関連を分析する(例えば、ユーザは生理日の4日前から「イライラ」などの精神症状を、生理日から3日間「腹痛」などの身体症状を訴える傾向を過去の入力の分析から見出した場合、次回の生理日の予測とともに、その4日前の「イライラ」、生理日から3日間の「腹痛」の予測を算出し、スケジュール管理ブロック603に送信する。スケジュール管理ブロック603は、記憶装置133または記憶装置102に記憶された、疾患毎の、介入日時と介入プロセス(心理療法を実行するプロセス、心理学に基づく改善のためのプロセス)のリストを読み出し、PMSに関するリストで、PMSに対して、予測された日を介入日とし、その日時に、設定された介入プログラムを提供するように制御する。本実施例では、4月10日が次の生理日と予測された結果が算出されると、前記リストでは、4月6日に「脱フュージョン」のプロセスを生理日までの期間、つまり4日間提供するようにスケジュールに書き込む。また、4月10日に「いま、この瞬間」のプロセスを3日間提供するように書き込む。多くの精神疾患や心身症では、その症状の発言に対して効果的な介入がある。たとえば、PMSであれば、「イライラして人にあたって嫌われている」というようなフュージョンを起こすことが想定されるので、「脱フュージョン」のエクササイズが効果的であり、また、生理に伴う痛みに対しては過去の痛みを想起して不快な症状を助長することが想定されるので「いま、この瞬間」のエクササイズや「マインドフルネス」のエクササイズが有効である。これらのエクササイズは前述の心理的柔軟性を養うために行ったエクササイズと同じものを使っても良いが、疾患の症状に合わせて修正したものを用いるとさらに都合がよい。(例えば、おちゃというエクササイズの「おちゃ」を「生理痛」に代えて20秒間繰り返し言葉に出して発言する、などのバージョンを作成しておくと都合がよい。)また、身体的な症状を緩和するための生理痛改善ストレッチなどの心理療法以外のエクササイズを提供することもできる。
スケジュール管理ブロック603は前述の心理的柔軟性を養うプロセスのエクササイズと、疾患に特異的な症状のセルフケアのためのプロセスのエクササイズの両者を管理し、スケジュールに従ってそれぞれのエクササイズを提供することになる。両者を並行して実施する場合、同時点で前者のプロセスのエクササイズと後者のプロセスのエクササイズとを同時期に提供するような事態が生じる。この場合、スケジュール管理ブロック603は、単純に両者のエクササイズを提供する、前者のエクササイズを中断して、後者のエクササイズを実行する、同時期に提供されるエクササイズが同じテーマ、ここで言えば例えば「脱フュージョン」であれば、前者の「脱フュージョン」のプロセスのエクササイズに代えて、後者の「脱フュージョン」のプロセスのエクササイズを提供する、両者を提供するが提供する時間をずらす、また、プロセスやエクササイズによっては、提供順が重要になる場合があるので、前述のリストに、提供順が逆転すると問題の生じるエクササイズを記録しておき、例えば、脱フュージョンのエクササイズで、エクササイズCがエクササイズDより先になってはいけない場合、後者でエクササイズDが提供されることが決まっている際には前者のエクササイズCがこれより前になるように、プロセスを調整したり、エクササイズの提供順を変更することによって避けるように調整する。なお、スケジュール管理ブロック603はこれらの機能と並行して、毎日のPMSメモリへの入力やEMAへの入力、監視装置のデータの取得やこれらの記録を制御ブロック606、記憶管理ブロック605、入出力ブロック601と連携して行っている。最後に、疾患に特異的な症状の評価をするために尺度、例えばPMDD尺度、で定期的に評価を行う。評価結果についてはパーソナルデータの一つとして記憶装置に記憶し、変化の推移をユーザからのリクエストによって表示可能とするとよい。
(追加機能)
記憶装置102または記憶装置103にPMSの症状緩和用として記憶されるワークセットも単一のワークセットだけでなく、同じ心理療法の異なるエクササイズや異なる心理療法の異なるエクササイズを記憶させ、それらの優先順位に従って、上記尺度による評価結果で効果が見られない場合に、次の優先順位のワークセットを提供するようにワーク提供ブロックの機能を修正してもよい。これらの優先順位はあらかじめワークセットの記憶された記憶装置にリストとして記憶させておいてもよいし、ワークセットの提供時点でユーザによって選択させる、あるいは、BIG5などから得られるユーザの行動特性と対応付けて優先順位を決定したり、そのリストを記憶しておき、それを読み出して提供するワークを変更するなどの変更も可能である。また、月経随伴症状として大きく生理前のPMSによるイライラ、あるいは月経中の腰痛などが考えられるが、ユーザによっては症状の大小やユーザのお困りごとの有無などが異なるので、アプリの初期設定や、定期的にPMDD尺度などでユーザの困り感を取得し、困り感のある症状に対する疾患特異的なワークセットのみを提供するといった変更も可能である。
本実施例では、一つ一つのプロセスがテーマを習得するためのワークのセットがパッケージ化されているのでそれぞれのプロセスの習熟度(効果)を測りやすく、情報処理端末で自動的に心理療法を提供することができ、繰り返しもやりやすい。また、それぞれのプロセスに対してエビデンスのある尺度で測定することによって信頼性、効果の確認の精度が高まる。
本発明の趣旨からは、その心理療法においてストレス対処を習得するための必要なすべての要素、ACTでは心理的柔軟性を養うための6つのプロセス、または、ACTのマインドフルネスと関連する要素では4つのプロセス、が含まれることが好ましいが、それぞれのプロセスは関連づいているので、いくつかのプロセスをまとめてワークセット(エクササイズのセット)として提供することもできる(たとえば、「脱フュージョン」、「マインドフルネス」、「価値の明確化」の3つ)。この場合、習熟度の確認等の観点から3つ以上のプロセスであると都合が良い(これらのそれぞれのプロセスに評価尺度があるとさらに都合が良い)。ただし、制作するアプリの目的によっては必要なすべての要素(たとえば、ACTの6つのプロセス)を含む必要がないことは言うまでもない。なお、本実施例では説明のためにストレス対処能力を養うパートと疾患に特異的な症状の緩和のパートとがあるPMSを例に挙げたがストレス対処だけを目的とする場合にはストレス対処のパートだけでシステムを構成することもできる。
ストレス対処能力を養うパートと疾患に特異的な症状の緩和のパートとのエクササイズの連携方法は、たとえば、所定の条件の場合に所定の調整や処理を行うための手順を記載したリストや条件分岐のアルゴリズムに従って、エクササイズのコンテンツの内容(重複していたら別のものに差し替える、それぞれ補完する内容のもの順序だてて提供する、連続性のあるものは順序を正しく提供する、必要に応じてあえて調整しない)、コンテンツ提供タイミング(時刻的に同時間帯に提供する、提供時間をずらす、コンテンツの提供順番の変更、必要に応じてあえて調整しない)、プロセスの評価(両者の評価を統合して治療効果を評価する、一方の評価で両者の治療効果を評価)などが想定されるがそれには限られず、その他の周知の連携も可能である。
(実施例2)
本実施例では、睡眠障害のセルフケアに本発明を適用した例を説明する。体系的なストレス低減法としてはマインドフルネスストレス低減法(MSBR)を用いる。
マインドフルネスストレス低減法は(1)ボディスキャン(咀嚼瞑想のエクササイズ、呼吸法のエクササイズ、ボディスキャンのエクササイズ)、(2)ボディスキャンとヨガ(ボディスキャンのエクササイズ、ヨガのエクササイズ、歩行瞑想のエクササイズ)、(3)静座瞑想とヨガ(静座瞑想のエクササイズ、ヨガのエクササイズ)、からなり、提供方法としては、ACTのプロセス同様に、文章形式、音声形式、動画形式、ゲーム形式などが選択できるが、マインドフルネスとの相性が動画が良いので本実施例では動画によるエクササイズを提供する。つまり、記憶装置102または記憶装置133に、(1)から(3)のテーマのエクササイズのワークセットが、マインドフルネスの教育動画コンテンツと、睡眠障害の疾患教育コンテンツ動画記憶されている。アプリケーションプログラムの構成としては、図6(a)と同様であり、それぞれのブロックの機能・動作や、情報処理装置110の各ハードウェアの機能・動作は実施例1と同様であるので詳細は省略する。
アプリケーションプログラムのフローは図6(b)と同様に制御ブロック606が各ブロックと連携して制御する。まず、(650)ユーザがアプリにログインしてアプリが起動される。つぎに(651)症状メモリとしては、図3(a)のようなデータをパーソナルデータとして記憶し、図3(b)のような入力画面を介して入力される。入力の詳細はPMSメモリの入力と同様である。また、この段階にセルフケアの効果を検証するためのベースラインとするためにFFMQの尺度によるユーザの回答結果のデータを取得し、これもパーソナルデータに記憶する。(652)制御ブロック606がスケジュール管理ブロック603と連携して、まず、教育コンテンツを、(653)1,2週間目に、(1)のコンテンツ、3,4週間目に、(2)のコンテンツ、5,6週間目に、(3)のコンテンツをユーザに提供する。ここで再度FFMQの尺度の回答をユーザに促し、結果を取得する。そして、その結果とベースデータとを評価ブロック602が比較分析して、効果をグラフィカルにユーザに提示する。また、この比較分析結果でFFMQの得点が所定の値に達成していない場合は、(1)-(3)のテーマのエクササイズを提供する工程を繰り返す。また、(1)、(2)、(3)のそれぞれの間に評価尺度による評価を行い、所定の基準に達していない場合は以前の段階を繰り返すといった修正も可能である。
(654)睡眠障害への疾患特異的な症状への介入としては、「いま、この瞬間」のプロセスや、マインドフルネス、認知再構成法、刺激性漁法、睡眠制限法、斬新的筋弛緩法、睡眠スケジュール法などが知られており、これを用いることもできる。
「いま、この瞬間」のプロセスの適用については、実施例1の「脱フュージョン」や「いま、この瞬間」のプロセスの適用と同様に、制御ブロック606とスケジュール管理ブロック603の連携でユーザに提供することができる(本発明においても、ストレス対処用のセルフケア機能のエクササイズと同じものを使っても、睡眠障害用に修正したものを用いても良い)。実施例1と異なる点は、適用の時期である。時期は評価ブロック602が睡眠日誌のユーザの睡眠効率と、ユーザの通常時の睡眠効率あるいは同年代の模範的な睡眠効率とを比較して問題があると評価した際、あるいは、睡眠日誌に記載されたユーザの傾向を評価ブロック602が評価し、睡眠障害が発症しそうと評価した時期をスケジュール管理ブロック603に送信し、そのタイミングで、上記プロセスを実行する。この場合、プロセスのエクササイズは睡眠障害が起きている期間に提供するように、スケジュール管理ブロック603が制御ブロック606と連携して制御する。本実施例の変形例として、提供するエクササイズとして、認知再構成法を提供する場合は、周知の技法(例えば、特許文献4)を「いま、この瞬間」の代わりに提供することができる。スケジュール管理ブロック603は実施例1同様にストレス対処法のエクササイズと、疾患に特有のエクササイズの提供を調整することができる。最後に、尺度による評価を行うが例えば介入がストレス対処で提供するものと同じ原理に基づくもの(例えば、「いま、この瞬間」か、またはその症状への適合版のエクササイズ)であれば、同じ尺度(たとえば、FFMQの下位因子)を用いてもよいし、疾患の症状に特化した尺度(例えば、BPS、PSQI、ISI、AIS)を利用してもよい。また、これらの評価結果を継時的にユーザに提供してユーザの満足度を高めることもできる。
(実施例3)
多くの疾患では症状の発生機序が解明されており、ストレス関連疾患の緩和のためにどのような介入を行えばよいかが決まっている(例えば、上述の実施例のように)。しかしながら、疾患によっては発生原因が複雑に絡み合っている場合があり、単純によく知られた介入を行っても疾患の症状が改善されない場合がある、この多くは疾患の原因の大きな要因が患者自身というよりは、患者を取り巻く社会的要因等との兼ね合いが大きい場合に起こっていることに発明者らは気づいた。そこで、こういった疾患の例としてED(勃起障害)を例に挙げて説明する。なお、上述の疾患についても症状の緩和の効果が見られない場合には同様の原因が考えられるので本実施例の手法を活用してもよい。EDの場合はパートナーが必須の条件で発症する疾患なので社会的な影響が強い。そこで、疾患に特異的な症状の原因をアセスメントして介入方針を決定する。ストレス対処能力を向上させるためのワークセットの実施は上述と同様に行うため説明は省略する。
EDに適用する場合は、まず、セルフケアアプリを実行する前にAAQ-IIの測定と並行してユーザに対して疾患の原因を特定するためのアセスメントを実施する。アセスメントは前述の実施例同様の手順で評価用の尺度を用いて行うことができる。これらの疾患の評価を行う場合には、生物心理社会的要因と疾患の状態を測定する尺度が必要となる。本実施例では生物心理社会的要因を測定する尺度として、一般的なSF-36、特にパートナー関係の評価が必要なので,カンザス結婚満足度尺度(KMS)と(社会的ケア関連 QOL 尺度 the Adult Social Care Outcomes Toolkit (ASCOT)など他の周知の尺度を用いることもできる)、一般的なEDの重症度を評価するための国際勃起スコア5(IIEF 5) 、CFQを用いた。アセスメントは評価ブロック602で行い、これらの尺度に含まれる因子の得点に基づいて、まず、IIEF-5の評価点でグループ1(EDではない)、グループ2(EDである)、グループ3(EDであるがかなり重症)に分類し、グループ1は特に疾患に特異的な介入は行わない、グループ3についてセルフケアできるレベルを超えているとして、ユーザに医療機関等への受診をすすめるメッセージを発出する対応を行う。グループ2についてはさらに、KMSの尺度を評価し、夫婦関係が悪いとの評価が出ていた場合にはグループ2a、続いて、SF-36で得点が低く、CFQで認知的フュージョンの傾向が見られない場合はストレス過多としてグループ2b、その他の場合は予期不安型としてグループ2cに分類する。分類の仕方はこれに限られず、任意の尺度を組み合わせ、それぞれの得点での条件分岐、複数の尺度の組み合わせての条件分岐などで分類することができる。次に、(図示しない)グループと介入のワークセットとの対応関係を記載したリストを参照して、所定のワークセットを提供する。スケジュール管理機能がどのようにワークセットを提供するかについての手順についても対応付けて記載してあり、スケジュール管理ブロック603はそれに基づいてワークセットをユーザに提供する。また、リストにさらに尺度による評価結果を記憶できるようにし、それらのデータを教師データとして機械学習させてモデルを構築し、そのモデルによってリストを更新してもよい。(これによって、介入のワークセットやエクササイズ、評価尺度、条件分岐の条件、条件分岐手順などを最適化できる。)疾患の症状を緩和する心理療法に基づくワークセットとして、グループ2aには、夫婦間関係改善セラピーの動画視聴、センセートフォーカステクニック、サイコ・ドラマ、ノンエレクト法などのエクササイズからなるワークセット、グループ2bにはストレス解消のためのマインドフルネス瞑想を中心としたいくつかのエクササイズからなるワークセットを、グループ3cには、いまこの瞬間と脱フュージョンのエクササイズからなるワークセットを提供する。グループ2aの場合はパートナーと共同しておこなうエクササイズとなるため、EMAとして、性行為の日時を記録するように設定し、スケジュール機能(管理ブロック)が夫婦が性行為の期待できる日や排卵日前後の就寝する30分程度前にエクササイズを提供する。グループ2bの場合は、EMAで帰宅時間を記録するように設定し、帰宅後、雑事をすましたころの時間にエクササイズを提供するようにする。また、グループ2cは今この瞬間と、脱フュージョンのエクササイズを提供する。いまこの瞬間のエクササイズはストレス対処法のパートで提供しているエクササイズと同じものを提供し、例えば、朝10:00にストレス対処法のパートのエクササイズを提供していたら、そのエクササイズにしたがって、2回エクササイズを提供したら、1回疾患対処のエクササイズとして、いまこの瞬間のエクササイズを1回挿入し、また通常のエクササイズを2回提供したら、いまこの瞬間のエクササイズを1回挿入するというような提供を繰り返す。ここで、通常のエクササイズがいまこの瞬間のエクササイズを提供している場合はエクササイズが重複するので、通常のエクササイズで今この瞬間のエクササイズが終了するまで、疾患対処のエクササイズを挿入するのは停止する。一方で、脱フュージョンのエクササイズは、2aのエクササイズ同様に設定し、スケジュール機能(管理ブロック)が夫婦が性行為の期待できる日や排卵日前後の就寝する30分程度前にエクササイズを提供する。この提供方法やエクササイズは一例であり、適宜修正できることはいうまでもない。
(その他の実施例)
本発明の応用として、体系的なストレス対処法を提供するために、周知の問題解決法などの「問題焦点型コーピング」や「情動焦点型コーピング」などの技法を用いて上述の実施例と同様にユーザに提供することができる。またそれに組み合わせて、疾患に特有な症状をセルフケアするためのプロセス(エクササイズのセット)を提供しても良い。慢性疼痛や片頭痛に対する、プロセスとしては、「アクセプタンス」、「脱フュージョン」、「今、この瞬間」などが利用可能である(慢性疼痛等の症状のセルフケアするためのその他の心理療法を実施するエクササイズでも構わない)。この実施例でも、評価ブロック602が、ユーザの疼痛日誌を分析して、ユーザの痛みの発現するタイミング(気圧や天候の変化、周期性、イベントとの関連)を分析し、そのタイミングをスケジュール管理ブロック603に送信し、スケジュール管理ブロック603と制御ブロック606が連携して、疾患の症状をセルフケアするためのプロセスを調整しながら提供する。その他の疾患の症状のセルフケア用のアプリも同様に構成可能で、たとえば、これらの実施例のストレス対処法に追加して、各疾患の症状をセルフケアするプロセス(たとえば、更年期障害なら、アクセプタンス、脱フュージョン、今この瞬間)を提供し、提供する時期を評価ブロック602,スケジュール管理ブロック603で調整しながら、制御ブロック606が提供するようにすればよい。また、本アプリの実施の適性を確認するための工程を設けてもよい。たとえば、慢性疼痛であれば、痛みに対する破局的思考の程度を示すPCSの下位因子(反すう・無力感・拡大視)について、アプリ起動後の当初の時点でユーザの回答を促し、その得点がすべて平均以上であった場合、ユーザの痛みに対する破局的な思考によって腰痛に対する嫌悪性が増し、その結果、腰痛を避ける頻度がさらに多くなっていると考えられると判断して本アプリによるセルフケアを継続する、得点が基準より下回っていた場合はユーザの思考には問題がなく、肉体的な要因が強いと判断してセルフケアを終了するようにすることもできる。
上述の実施例では、ストレス対処法の提供パートと、疾患の症状の対処パートで同じ心理学の理論に基づくエクササイズを提供するものと異なる心理学の理論に基づくエクササイズを提供するものとを例示しているが、同じ理論に基づくエクササイズを提供するもののほうが一貫性があり効果が高い。ただし、疾患の症状の対処パートでは、心理療法を実行するものだけでなく、心理療法に基づく音楽鑑賞や、心理療法以外の運動や、食事療法を含んでもよい。
(その他の実施例:統合診療システム)
本アプリは特定の疾患に限らず、複数の疾患の症状のセルフケア用のアプリとすることができる。この場合、システムには、ユーザの症状/疾患を聴取するための問診機能(典型的には入出力ブロックが実行)、プログラムの各機能ブロックと症状メモリの基となる、カレンダー機能(典型的にはスケジュール管理ブロックが実行)ストレス対処用のワークセットと、基礎となる症状メモリと、症状メモリに追加する疾患毎の質問項目のセット、疾患毎の症状のセルフケア用のプロセスのワークセット、を記憶させ、アプリの起動後にユーザの症状を入力する工程を設け、入力結果を評価ブロック602で、記憶装置に記憶された、症状と疾患、評価ブロック602とスケジュールブロック603での処理事項の関連を示すリスト(図8に一例を示した)と対比して分析し、例えば、ユーザが「眠れない」を入力した場合、リストを参照し、症状(眠れない)-疾患(睡眠障害)という結果を得ると、症状メモリに睡眠障害用の質問項目をセットし、ストレス対処法のワークセットと、睡眠障害の症状緩和用のワークセットを、制御ブロック606が、評価ブロック602、スケジュール管理ブロック603と連携しながら提供するようにすることができる。前述の本発明に従うシステムを本実施例の統合診療システムに適用することができる。
(その他の実施例:ライフステージ対応プラットフォーム)
本発明はユーザのライフステージ毎にシステムのプログラムを変更することができるシステムに関し、前述のシステムに適用することができる。システムには、ユーザの生物心理社会的要因を聴取するための問診機能(典型的には入出力ブロックが実行)、プログラムの各機能ブロックと症状メモリの基となる、カレンダー機能(典型的にはスケジュール管理ブロックが実行)、ストレス対処用のワークセットと、基礎となる症状メモリと、症状メモリに追加する、想定される疾患やメンタル不調毎の質問項目のセット、疾患毎の症状のセルフケア用のプロセスのワークセット、ライフステージに応じた尺度のセット等を記憶させ図8にユーザのライフステージの一例として、いくつかの生物心理社会的状態と、システムに搭載される要件とを対比づけた表を示した。ここでは、性別、年齢、学生と就業状態、子の有る/無し、管理職など責任を持っているか、生理があるかどうか、睡眠の問題があるかどうか、疼痛などの問題があるかといって生物心理社会的な事項(ただし、これらは一例にすぎず、他の生物心理社会的な事項を追加しても良く、また、これらの記載された事項を削除しても良い)と、これらの生物心理社会的事項と対応付けられるシステムの要件を記載したリストの例を示した。例えば、女性で18歳の学生の生理のある場合は、タイプ3に該当し、システムは、生理機能をカレンダー機能にセットし、PMSのセルフケア機能を設定する。尺度については例えば、上記例では、心理的柔軟性を評価する尺度として、AAQ-IIを用いていたが、児童期から青年期までの若者の心理的非柔軟性を測定する尺度AFQ-Y(Avoidance and Fusion Questionnaire for Youth)を利用し、その他の尺度は同じ尺度を利用する。また、35歳で子持ちの専業主婦で、睡眠障害を持つ場合は症状メモリとして、生理項目と睡眠項目とをセットされ、それらの合わせた質問項目をユーザは入力することになる。また産後うつの可能性も想定されるので、尺度のセットにはうつ病の尺度(たとえば、エジンバラ産後うつ病自己評価票)が追加され、心理的柔軟性の尺度とともにユーザの回答を取得し、うつ病が検出されたら、うつ病に対するワークセットを提供する。また、ストレス対処用のワークセットや、特定疾患用のワークセットも生物心理社会的要因に合わせて修正することもできる。たとえば、45歳以上の男性に対しては、活字メインの読み物として、あるいは20歳以下のものに対しては、漫画形式の読み物として提供するなどである。これはワークセットの形式に限られず、アプリのUI/UXを生物心理社会的要因に合わせて変更するなどの修正も可能である。
上述の実施例ではワークセットのエクササイズはシステムの提供者が記憶装置に記憶したエクササイズをユーザに提供するようなシステムとして説明しているが、ユーザがエクササイズを実行するうえで、そのテーマに沿った自らやりやすいエクササイズを考案することも可能となる。この場合、ユーザが図示しないシステムの投稿機能を介してエクササイズを投稿し、システムはそのエクササイズをワークセットの一つとして追加してシステムの利用するワークセットを更新することができる。この場合、投稿が問題ないかを確認するために、目視やAIによる確認工程を含めると都合がよい。たとえば、年代、性別、環境などの生物心理社会的要因が近いユーザに対しては元々のエクササイズよりも親しみやすく、同じテーマのプロセスを繰り返しても同じエクササイズをすることがなくなるので飽きることがなく、また投稿者も励みになるので、システムへの参加率、システム利用の継続率を高めることができる。
(その他の実施例:調査ツール)
本発明のセルフケアシステムは、典型的にはACTに基づく6つのプロセスのワークセットとそれぞれのプロセスの評価するための尺度を持っている。ここで、本システムをいずれのプロセスが効果的であるかが未知の精神疾患や心身症に本システムを適用し、それぞれのプロセスの患者の状況とプロセス実行後の患者の状況と当該疾患の重症度を評価する尺度による疾患の重症度の変化をモニタリングし、それぞれのプロセスへの介入前後の変化と疾患の重症度の変化の相関を調査することによって、いずれのプロセスが当該疾患の改善につながるかを評価することができる。本システムを有効なプロセスが未知の疾患に羅漢する患者に適用することによって有効なプロセスを探索するツールとすることができる。また、効果的なプロセスが発見されたら、そのプロセスをその疾患の症状に最適化するように修正し、提供することで新たな治療法とすることが可能である。AIを用いて自動的に多数の患者に本ツールを適用し、その結果を分析することで自動的に様々な疾患への治療法を開発することができる
疾患に特異的な症状のセルフケアのためのプロセスのエクササイズは症状の発生するとき、あるいはその前、または、症状が発生すると予測されるとき、あるいはその前に短期的なエクササイズとして提供されることを教示したが、これに限られず、症状が継続的あるいは断続的に続いている場合はエクササイズを所定期間行って、その後、尺度による評価を行い、効果が見られれば、再度同じテーマのエクササイズを繰り返す、効果が見られなければほかのエクササイズを提供するといった修正も可能である。
本発明のシステムは心因性疾患やストレス関連疾患、心身症に適応可能で、例えば、慢性疼痛、片頭痛、月経随伴症状、睡眠障害、摂食障害、歯科心身症、ダイエット、ED、うつ病、不安症、ADHD、産後うつ、女性更年期障害、男性更年期障害、糖尿病、アトピー性皮膚炎、過敏性腸症候群、筋緊張型疼痛、自律神経失調症、心因性めまい、気管支喘息、月経前症候群、醜形恐怖症、耳鳴り、心因性難聴、心因性失声症、不妊症、パニック障害、認知症、発達障害、統合失調症、心因性嘔吐、介護者、ヤングケアラー、労働者向けのセルフメンタルケアシステムとして利用できる。また、いくつかの実施例に基づいて本発明を説明してきたがそれぞれの実施例に用いられた要素を他の実施例の構成に追加して用いることが可能なことは言うまでもない。
本発明は体系的なストレス対処をセットにした心理療法を提供するパートと、ストレス関連疾患やその特徴的な症状を改善するエクササイズを提供するパートの二つを同時に兼ね備えたことを特徴とする。従来の治療用アプリは特徴的な症状の改善のための心理療法(ストレス対処法の一部の技法を含む場合もある)とエクササイズを提供するものであった。従来の治療用アプリは医療機関での治療を模倣したもので、医師やカウンセラーは患者の面談や問診を行い、患者に足りないストレス対処能力や特徴的な症状を長年の経験に基づいて診察・診断を行ない、足りないストレス対処能力や特徴的な症状の改善のための介入を行っていたので、従来の治療用アプリでは、疾患に応じて、その足りないストレス対処能力や特徴的な症状の改善のためのエクササイズを提供するものであった。しかし、本願発明者らは従来の治療用アプリが十分な効果を示さない大きな理由として、尺度を用いたアセスメントだけでは患者の正確な状況を把握することができず、患者の根本的なストレス対処能力を正確に把握できていなかったことが問題であると気づき、疾患に特徴的な症状を改善するエクササイズだけでなく、体系的なストレス対処プログラムを合わせて提供するアプリを開発した。このアプリによって、従来の治療用アプリに比べて飛躍的に改善効果を高めることができる。また本発明では尺度として、エビデンスのある尺度の量論的な評価によって評価を進める例を示したが、これに限られず、提供方法を、音声、動画、ゲーム形式に替える、あるいは質問項目を短縮、あるいは独自の質問項目を使うなどの変更が可能なことはいうまでもない。

100 本発明のシステム
101 制御装置
102 記憶装置
103 表示装置
104 入力装置
105 通信装置
106 監視装置
110 ユーザの情報処理端末
120 インターネット
130 サーバ
131 通信装置
132 制御装置
133 記憶装置

Claims (8)

  1. ストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアのためのシステムであって、
    前記システムが、
    ユーザの情報処理端末と、
    ストレス対処のための体系的な心理療法を実施する複数のテーマに対応したそれぞれのストレス対処ワークセットと疾患特異的な症状を緩和するための少なくとも一つの症状緩和ワークセットとを記憶する記憶装置と、前記システムの動作を制御する制御部とを有するサーバと、を含み、
    前記制御部が、
    前記ストレス対処ワークセットと、前記症状緩和ワークセットとを、スケジュールに従って前記ユーザに前記情報処理端末を介して提供する、前記ユーザのストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアのためのシステム。
  2. ストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアのためのシステムであって、
    前記システムが、
    ユーザの情報処理端末と、
    ストレス対処のための体系的な心理療法を実行するアクセプタンスアンドコミットメントセラピーまたはマインドフルネスに基づく複数のテーマに対応したそれぞれのストレス対処ワークセットと疾患特異的な症状を緩和するための少なくとも一つの症状緩和ワークセットとを記憶する記憶装置と、前記システムの動作を制御する制御部とを有するサーバと、を含み、
    前記制御部が、
    前記ストレス対処ワークセットと、前記症状緩和ワークセットとを、スケジュールに従って前記ユーザに前記情報処理端末を介して提供する、前記ユーザのストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアのためのシステム。
  3. ストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアのための情報処理端末であって、
    前記情報処理端末が、
    ストレス対処のための体系的な心理療法を実行するアクセプタンスアンドコミットメントセラピーまたはマインドフルネスに基づく複数のテーマに対応したそれぞれのストレス対処ワークセットと疾患特異的な症状を緩和するための少なくとも一つの症状緩和ワークセットとを記憶する記憶装置と、前記情報処理端末の動作を制御する制御部とを有し、
    前記制御部が、
    前記ストレス対処ワークセットと、前記症状緩和ワークセットとを、スケジュールに従ってユーザに提供する、前記ユーザのストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアのための情報処理端末。
  4. 前記制御部は、エクササイズのコンテンツの内容(重複、補完、連続性、調整なし)、コンテンツ提供タイミング(同時、ずらす、順番の調整、調整なし)、プロセスの評価(両者の評価の統合、一方の評価で評価)のいずれかのスケジュール調整を行う請求項1のシステム、請求項2のシステムまたは請求項3の情報処理端末。
  5. 前記記憶装置がさらに、対象となるストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調を評価するための尺度を含み、前記制御部が定期的に前記尺度により前記ユーザの重症度の評価を行い、評価結果を前記ユーザに提供する請求項1または請求項2のシステム。
  6. 前記システムが、慢性疼痛、片頭痛、月経随伴症状、睡眠障害、摂食障害、歯科心身症、ダイエット、ED、うつ病、不安症、ADHD、産後うつ、女性更年期障害、男性更年期障害、糖尿病、アトピー性皮膚炎、過敏性腸症候群、筋緊張型疼痛、自律神経失調症、心因性めまい、気管支喘息、月経前症候群、醜形恐怖症、耳鳴り、心因性難聴、心因性失声症、不妊症、パニック障害、認知症、発達障害、統合失調症、心因性嘔吐、介護者、ヤングケアラー、労働者向けのセルフメンタルケアシステムである請求項1または請求項2のシステム。
  7. 前記システムにおいて、前記ユーザの疾患特異的な症状を、生物心理社会的な尺度およびストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調の評価のための尺度を用いて評価し、その評価結果を条件分岐型アルゴリズムを用いてタイプ分けし、タイプに応じた心理療法を実行するワークセットを前記ユーザに提供する請求項1または請求項2のシステム。
  8. 月経随伴症状のセルフケアのためのシステムであって、
    前記システムが、
    ユーザの情報処理端末と、
    ストレス対処のための体系的な心理療法を実施する複数のテーマに対応したそれぞれのストレス対処ワークセットと疾患特異的な症状を緩和するための少なくとも一つの症状緩和ワークセットとを記憶する記憶装置と、前記システムの動作を制御する制御部とを有するサーバと、を含み、
    前記ストレス対処ワークセットと前記症状緩和ワークセットのいずれかに少なくともアクセプタンスアンドコミットメントセラピーの原理に基づく脱フュージョンのエクササイズが含まれ、
    前記制御部が、
    前記ストレス対処ワークセットと、前記症状緩和ワークセットとを、スケジュールに従って前記ユーザに前記情報処理端末を介して提供する、月経随伴症状のセルフケアのためのシステム。
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