JP7536035B2 - ピーナツに対する経口免疫療法における全身性アレルギー応答リスク評価 - Google Patents

ピーナツに対する経口免疫療法における全身性アレルギー応答リスク評価 Download PDF

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Description

[0001]
関連出願の相互参照
本出願は、各々「SYSTEMIC ALLERGIC RESPONSE RISK ASSESSMENT IN PEANUT ORAL IMMUNOTHERAPY」を発明の名称とする、2019年3月22日に出願された米国仮特許出願番号第62/822,705号、及び2019年9月6日に出願された米国仮特許出願番号第62/897,086号に対する優先権を主張し、これらのそれぞれは、あらゆる目的で参照により本明細書に援用される。
[0002]本明細書には、用量増加期間と維持期間とを含む経口免疫療法を用いてピーナツアレルギーを治療するための方法が記載される。
[0003]ピーナツアレルギーは、ピーナツタンパク質に対する免疫系のアレルギー性過敏反応である。ピーナツアレルギーは小児で発症することが多く、通常は生涯続く疾患である。ピーナツに対するアレルギー反応は、重度且つ生命を脅かす可能性があり、重度の食物アナフィラキシーの主な原因である。
[0004]最近までの、ピーナツアレルギーを治療する標準治療には、ピーナツの除去食及び回避、アナフィラキシーの徴候に関する教育、及びピーナツタンパク質への食事曝露による重度のアレルギー反応に対処するエピネフリン注射剤の投与などが含められていた。しかしながら、食品ラベルを読み解くことは難しく、ラベル表示のない食品中には説明のされていない成分が存在することから、ピーナツの偶発的な摂取はよくあることである。経口免疫療法(OIT)は、ピーナツアレルギーの有望な新しい治療法である。例えば、Bird et al.,Efficacy and Safety of AR101 in Oral Immunotherapy for Peanut Allergy:Results of ARC001;a randomized Double-Blind,Placebo-Controlled Phase 2 Clinical Trial,J.Allergy Clin.Immunol.Pract,vol.6,no.2,p.476-485(2018)を参照されたい。ピーナツOITは、用量を漸増させたピーナツタンパク質に患者を曝露して脱感作を誘導することを含む。この誘導はピーナツへの偶発的な曝露時に生じる重篤な反応のリスクを低減することを目的とする。
[0005]最近の第III相臨床試験である、Peanut Allergy Oral Immunotherapy Study of AR101 for Desensitization in Children and Adults(PALISADE)では、用量増加期間と6カ月の維持期間とを含む経口免疫療法に従って投与されたAR101(ピーナツタンパク質含有組成物)の効力及び安全性が試験された。Vickery et al.,AR101 Oral Immunotherapy for Peanut Allergy,New England Journal of Medicine,vol.279,pp.1991-2001(2018)。PALISADE試験の間、ピーナツ特異的IgE値の中央値は用量増加後に増加し、6カ月の維持期間後に減少したことが観察された。更に、ピーナツ特異的IgG4値の中央値は、用量増加後に増加し、6カ月の維持期間後には更に増加した。AR101を服用し、治療を完了した患者の84.5%は、600mg用量のピーナツタンパク質に耐容したことが更に明らかになった。
[0006]ピーナツOITは、多くの対象において脱感作状態を誘導するのに有効であることが示されているが、危険なアレルギー反応を回避するために、アレルギー患者にアレルゲン性組成物を投与する際の安全性を考慮すべきである。
[0007]本明細書では、経口免疫療法によるピーナツアレルギー治療を受けている対象における全身性アレルギー応答のリスクを評価する方法であって、ピーナツタンパク質を含む組成物を経口免疫療法スケジュールに従って対象に経口投与することを含む、方法が記載される。経口免疫療法スケジュールは、用量増加期間と維持期間とを含む。いくつかの実施形態では、全身性アレルギー応答のリスクは、対象がピーナツタンパク質に対して脱感作された後に、対象において評価される。
[0008]本明細書では、ピーナツタンパク質を含む組成物を、用量増加期間と維持期間とを含む経口免疫療法スケジュールに従って対象に投与することを含む、経口免疫療法によるピーナツアレルギー治療を受けている対象における全身性アレルギー応答のリスクを評価する方法であって、維持期間中に対象のピーナツ特異的IgE値を取得する工程と;取得したピーナツ特異的IgE値に基づいて、対象による全身性アレルギー応答のリスクを評価する工程であって、ピーナツ特異的IgE値が所定の閾値(例えば、約70kU/L)を上回るものであると、全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する、工程と;を含む、方法が提供される。
[0009]同じく本明細書では、ピーナツタンパク質を含む組成物を、用量増加期間と維持期間とを含む経口免疫療法スケジュールに従って対象に投与することを含む、経口免疫療法によるピーナツアレルギー治療を受けている対象における全身性アレルギー応答のリスクを評価する方法であって、維持期間中に対象のピーナツ特異的IgE値を取得する工程と;取得したピーナツ特異的IgE値に基づいて、対象による全身性アレルギー応答のリスクを評価する工程であって、ピーナツ特異的IgE値が患者のベースラインのピーナツ特異的IgE値を上回るものであると、ベースラインのリスクと比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する、工程と;を含む、方法が提供される。
[0010]いくつかの実施形態では、ピーナツ特異的IgE値が取得され、全身性アレルギー応答のリスクが評価されるとき、対象は、約1000mg以上の用量のピーナツタンパク質に耐容する。いくつかの実施形態では、ピーナツ特異的IgE値が取得され、全身性アレルギー応答のリスクが評価されるとき、対象は、約2043mg以上のピーナツタンパク質の累積用量に耐容する。
[0011]いくつかの実施形態では、方法は、ピーナツタンパク質を含む組成物を、経口免疫療法スケジュールに従って対象に投与する工程を更に含む。
[0012]同じく本明細書では、ピーナツタンパク質を含む組成物を、用量増加期間と維持期間とを含む経口免疫療法スケジュールに従って対象に投与することを含む、経口免疫療法によるピーナツアレルギー治療を受けている対象における全身性アレルギー応答のリスクを評価する方法であって、対象が1000mg以上の用量のピーナツタンパク質に耐容するまで経口免疫療法を用い、対象をピーナツタンパク質に対して脱感作させる工程と;対象が1000mg以上の用量のピーナツタンパク質に耐容したときにピーナツ特異的IgE値を取得する工程と;取得したピーナツ特異的IgE値に基づいて、対象における全身性アレルギー応答のリスクを評価する工程であって、ピーナツ特異的IgE値が所定の閾値(例えば、約70kU/L)を上回るものであると、全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する、工程と;を含む、方法が提供される。
[0013]同じく、経口免疫療法によるピーナツアレルギー治療過程中の対象における全身性アレルギー応答のリスクを評価する方法であって、前記経口免疫療法が、ピーナツタンパク質を含む組成物を、用量増加期間と維持期間とを含む経口免疫療法スケジュールに従って対象に投与することを含み、前記方法が、経口免疫療法の開始前に対象のピーナツ特異的IgE値を取得する工程と;取得したピーナツ特異的IgE値に基づいて、経口免疫療法の過程中に対象による全身性アレルギー応答のリスクを評価する工程であって、ピーナツ特異的IgE値が所定の閾値(例えば、約70kU/L)を上回るものであると、経口免疫療法の過程中の全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する、工程と;を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、ピーナツタンパク質を含む組成物を、経口免疫療法スケジュールに従って対象に投与する工程を更に含む。いくつかの実施形態では、全身性アレルギー応答のリスクは、経口免疫療法の開始前に評価される。
[0014]ピーナツタンパク質を含む組成物を、用量増加期間と維持期間とを含む経口免疫療法スケジュールに従って対象に投与することを含む、経口免疫療法によるピーナツアレルギー治療を受けている対象における、全身性アレルギー応答のリスクを評価する方法であって、対象が1000mg以上の用量のピーナツタンパク質に耐容するまで経口免疫療法を用い、対象をピーナツタンパク質に対して脱感作させる工程と;対象が1000mg以上のピーナツタンパク質の用量に耐容したときにピーナツ特異的IgE値を取得する工程と;取得したピーナツ特異的IgE値に基づいて、対象における全身性アレルギー応答のリスクを評価する工程であって、ピーナツ特異的IgE値が患者のベースラインのピーナツ特異的IgE値を上回るものであると、ベースラインのリスクと比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する、工程と;を含む、方法が更に提供される。
[0015]全身性アレルギー応答のリスクを評価する方法のいくつかの実施形態では、対象の年齢が取得され、全身性アレルギー応答のリスクの評価は、対象の年齢に更に基づくものであり、12歳以上の年齢は、約4歳~約11歳の年齢と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。いくつかの実施形態では、対象の年齢が取得され、全身性アレルギー応答のリスクの評価は、対象の年齢に更に基づくものであり、12歳~17歳の年齢は、約4歳~約11歳の年齢と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。いくつかの実施形態では、対象の性別が取得され、全身性アレルギー応答のリスクの評価は対象の性別に更に基づくものであり、女性である対象は、男性である対象と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。いくつかの実施形態では、対象の性別及び年齢が取得され、全身性アレルギー応答のリスクの評価は対象の性別及び年齢に更に基づくものであり、12歳以上の女性である対象は、12歳以上の女性ではない対象と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。いくつかの実施形態では、対象の性別及び年齢が取得され、全身性アレルギー応答のリスクの評価は対象の性別及び年齢に更に基づくものであり、12歳~17歳の女性である対象は、12~17歳の女性ではない対象と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。
[0016]同じく本明細書では、経口免疫療法によるピーナツアレルギー治療の過程中の対象における全身性アレルギー応答のリスクを評価する方法であって、前記経口免疫療法が、ピーナツタンパク質を含む組成物を、用量増加期間と維持期間とを含む経口免疫療法スケジュールに従って対象に投与することを含み、前記方法が、対象の年齢を取得する工程と;年齢に基づいて、経口免疫療法の過程中に対象による全身性アレルギー応答のリスクを評価する工程であって、12歳以上の年齢は、約4歳~約11歳の年齢と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する、工程と;を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、12歳~17歳の年齢は、約4歳~約11歳の年齢と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。いくつかの実施形態では、対象の性別が取得され、全身性アレルギー応答のリスクの評価は対象の性別に更に基づくものであり、女性である対象は、男性である対象と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。いくつかの実施形態では、方法は、ベースラインのピーナツ特異的IgE値を取得する工程を更に含み、この場合に、経口免疫療法の過程中の全身性アレルギー応答のリスクの評価は、取得したピーナツ特異的IgE値に更に基づくものであり、ピーナツ特異的IgE値が所定の閾値(例えば、約70kU/L)を上回るものであると、経口免疫療法の過程中の全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。
[0017]本明細書では、経口免疫療法によるピーナツアレルギー治療の過程中に対象における全身性アレルギー応答のリスクを評価する方法であって、前記経口免疫療法が、ピーナツタンパク質を含む組成物を、用量増加期間と維持期間とを含む経口免疫療法スケジュールに従って対象に投与することを含み、前記方法が、対象の性別を取得する工程と;経口免疫療法の過程中に対象による全身性アレルギー応答のリスクを性別に基づいて評価する工程であって、女性である対象は、男性である対象と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する、工程と;を含む、方法が更に提供される。いくつかの実施形態では、方法は、ベースラインのピーナツ特異的IgE値を取得する工程を更に含み、この場合に、経口免疫療法の過程中の全身性アレルギー応答のリスクの評価は、取得したピーナツ特異的IgE値に更に基づくものであり、ピーナツ特異的IgE値が所定の閾値(例えば、約70kU/L)を上回るものであると、経口免疫療法の過程中の全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。
[0018]同じく本明細書では、経口免疫療法によるピーナツアレルギー治療の過程中の対象における全身性アレルギー応答のリスクを評価する方法であって、前記経口免疫療法が、ピーナツタンパク質を含む組成物を、用量増加期間と維持期間とを含む経口免疫療法スケジュールに従って対象に投与することを含み、前記方法が、対象の年齢及び性別を取得する工程と;対象による全身性アレルギー応答のリスクを年齢及び性別に基づいて評価する工程であって、12歳以上の女性である対象は、12歳以上の女性ではない対象と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する、工程と;を含む、方法が記載される。いくつかの実施形態では、12歳~17歳の女性である対象は、12歳~17歳の女性ではない対象と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。いくつかの実施形態では、方法は、ベースラインのピーナツ特異的IgE値を取得する工程を更に含み、この場合に、経口免疫療法の過程中の全身性アレルギー応答のリスクの評価は、取得したピーナツ特異的IgE値に更に基づくものであり、ピーナツ特異的IgE値が所定の閾値(例えば、約70kU/L)を上回るものであると、経口免疫療法の過程中の全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。
[0019]本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、経口免疫療法の過程中の全身性アレルギー応答のリスクは、経口免疫療法の開始前に評価される。
[0020]いくつかの実施形態では、ピーナツ特異的IgE値を取得する工程は、ピーナツ特異的IgE値を測定することを含む。いくつかの実施形態では、ピーナツ特異的IgE値を取得する工程は、ピーナツ特異的IgE値を受け取ることを含む。
[0021]いくつかの実施形態では、ピーナツ特異的IgE値は、維持期間の開始から6カ月未満の対象から取得される。いくつかの実施形態では、ピーナツ特異的IgE値は、維持期間の開始から約3カ月~6カ月未満の対象から取得される。いくつかの実施形態では、ピーナツ特異的IgE値は、維持期間の開始から約3カ月間の対象から取得される。
[0022]本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、対象の全身性アレルギー応答のリスクが高い場合に、対象は、全身性アレルギー応答のモニタリングを強化される。いくつかの実施形態では、方法は、対象の全身性アレルギー応答のリスクが高いと判定された場合に、ピーナツタンパク質を含む組成物の投与から2時間以内の激しい活動を避けるように対象に助言する工程を更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象の全身性アレルギー応答のリスクが高いと判定された場合に、全身性アレルギー応答に対応した投与のための治療的有効量のエピネフリンを対象に提供する工程を更に含む。
[0023]いくつかの実施形態では、維持期間は、ピーナツタンパク質を含む組成物を含む維持期間用量を対象に毎日投与することを含む。いくつかの実施形態では、維持期間は、約300mg以上のピーナツタンパク質を含む維持期間用量を対象に投与することを含む。
[0024]いくつかの実施形態では、対象は、約4歳以上である。いくつかの実施形態では、対象は、約4歳~18歳未満である。
[0025]いくつかの実施形態では、用量増加期間は、約0.2mgのアレルゲン性食物タンパク質と概ね維持期間用量の用量との間を含む、2つ以上の異なる用量の、ピーナツタンパク質を含む組成物を、対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、用量増加期間は、約20週間~約44週間の長さである。
[0026]いくつかの実施形態では、経口免疫療法は、初期漸増期間を更に含む。
[0027]
初期漸増期間と、用量増加期間と、維持用量の毎日の投与を含む3カ月の維持期間と、を含む経口免疫療法により、対象のピーナツアレルギーの治療を調査する臨床試験である、Europe Measuring Oral Immunotherapy Success in Peanut Allergic Children(ARTEMIS)治療プロトコルにおけるAR101試験を示す。二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)を、用量増加の開始前及び維持期間の終了時に実施して、各時点における最大耐用量及び累積耐用量を決定した。 臨床集団における全身性アレルギー反応(SAR)を経験した患者のオッズ比をベースライン特性及び人口統計学別に示す。オッズ比(第1の条件下で発生するSARのオッズの、第2の条件下で発生するSARのオッズに対する比率)を、対応する95%信頼区間(CI)と共に報告する。
[0029]本明細書に記載されるのは、経口免疫療法によって食物アレルギー(例えば、ピーナツアレルギー)が治療されている対象における全身性アレルギー応答のリスクを評価する方法である。経口免疫療法は、一般に、アレルゲン性食物タンパク質(例えば、ピーナツアレルギーを治療する場合にはピーナツタンパク質)を含む組成物を、用量増加期間と維持期間とを含み得る経口免疫療法スケジュールに従って経口投与することを含む。患者における全身性アレルギー応答のリスクは、維持期間中にピーナツ特異的IgE値に基づいて評価することができる。ベースライン(すなわち、OIT開始前)を上回る、又は所定の閾値(例えば、約70kU/L)を上回る、高いピーナツ特異的IgE値は、ピーナツタンパク質に対する脱感作後(例えば、患者が、1000mg用量(及び/又は累積用量2043mg)のピーナツタンパク質、例えば経口食物負荷試験による評価に耐容可能となった後)であっても、全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。患者における全身性アレルギー応答のリスクは、追加的又は代替的に、対象の年齢及び/又は性別などの対象の1つ以上の人口統計学的因子に基づいて評価され得る。対象の全身性アレルギー応答のリスクが高い場合に、対象のモニタリングを強める、用量投与後の激しい活動を避けるように対象に助言する、及び/又は全身性アレルギー応答が生じた場合に投与するための治療有効量のエピネフリンを患者に提供するなどの、更なる予防措置を講じることができる。
[0030]ピーナツタンパク質に対する耐容の増加は、ピーナツタンパク質の摂取による全身性アレルギー応答のリスクに完全に相関しているわけではないことが判明した。経口免疫療法の結果としてピーナツタンパク質に対し脱感作された患者が、全身性アレルギー応答のリスクを維持する場合もある。胃腸症状(例えば、悪心、嘔吐など)は一般にタンパク質脱感作後に減少するが、対象は、ピーナツ特異的IgE値が低下するまでは全身性アレルギー反応(皮膚炎、咳、くしゃみ、喘鳴など)のリスクを維持する。当該技術分野において十分に理解されるように、全身性アレルギー応答には少なくとも2つの解剖学的系統が関与し、任意の重症度(軽度、中等度、又は重篤、及びアナフィラキシーを含む)を有する、観察された又は経験されたアレルギー有害事象である。解剖学的系統の非限定例としては、呼吸器系、皮膚、胃腸管、心血管系、及び神経系(例えば、差し迫った破滅感、混乱、及び不安を含む)が挙げられる。
[0031]経口免疫療法によるピーナツアレルギー治療を受けている対象における全身性アレルギー応答のリスクは、1つ以上の因子、例えば、患者のピーナツ特異的IgE値(治療前のベースラインのピーナツ特異的IgE値又は所定のピーナツ特異的IgE値の閾値(例えば、約70kU/L)より高いか低いか)、又は所定のベースライン(すなわち、治療の開始前の)のピーナツ特異的IgE値の閾値(例えば、約70kU/L)を使用して評価できる。高年齢の小児患者(例えば、12~17歳)、女性患者、又は高年齢の女性小児患者(例えば、12~17歳の女性)などの特定の人口統計では、初期の脱感作及びいくつかの維持療法の後であっても、全身性アレルギー応答のリスクが高くなり得ることも判明している。したがって、ピーナツタンパク質に対する脱感作は、経口免疫療法維持期間の完了にあたって完全に機能するというものではなく、全身性アレルギー応答のリスクを評価するために使用されるべきではない。
[0032]経口免疫療法は、用量を漸増させたアレルゲンに対象を定期的に曝露することによって、対象にアレルゲンに対する脱感作を誘導する方法である。ピーナツアレルギーの場合、OITのプロトコルは、典型的には用量増加期間(ビルドアップ期間とも呼ばれる)及び維持期間を伴う。好ましくは、OITは初期漸増期間を更に含むが、この期間は任意であり、治療に必須ではない。初期漸増期間は、患者のピーナツタンパク質感受性を評価するための、臨床管理下での低用量のピーナツタンパク質への曝露を伴う。この初期漸増期間は、一般に、数時間(例えば、3時間以上)~2日間にわたってとられる。これらの小用量は、対象が初期漸増期間の目標用量又は最大耐量に達するまで増加される。次に、対象は、通常は用量増加期間を開始して、介護者と定期的に相談しながら、初期漸増期間に投与された最大耐量又はそれよりわずかに低い用量から始めて用量増加期間中に一連の用量を通して漸増する。更に、ピーナツOITは、ある期間にわたるピーナツタンパク質の継続投与を伴う維持期間を含む。経口免疫療法の主な目標は、脱感作状態を確立することであり、該状態では、治療されている対象が、ピーナツタンパク質に偶発的に曝露された時に、重度の又は生命を脅かすアレルギー反応を生じる可能性がより低い。
[0033]用量増加期間中の初期治療後、患者は、維持期間中に更に治療される。維持期間用量は、一定期間にわたって、好ましくは毎日、投与することができる。維持期間は、例えば、約3カ月以上、例えば約3カ月~約6カ月、又は約3カ月~約6カ月未満、延長できる。
[0034] 定義
本明細書で使用するとき、単数形「1つの」(「a」、「an」及び「the」)には、別段の明確な指示がない限り、複数の参照物も含まれる。
[0035]本明細書の「約」を伴う値又はパラメーターの参照は、その値又はパラメーターそれ自体のバリエーションを含む(及び記載する)。例えば、「約X」を参照する記載は、「X」の記載を含む。
[0036]「累積用量」は、経口食物負荷試験の過程中に1日に対象に投与される用量の合計である。
[0037]用語「脱感作された」は、本明細書において、食物アレルゲンに対する経口免疫療法の結果としての、食物アレルゲンに対する対象の反応閾値の上昇を指して使用される。食物アレルゲンに対する脱感作は、経口食物負荷などの当該技術分野において公知の方法を使用して試験することができる。脱感作は部分的であってもよく、対象は、治療前と比較して多量(increased amount)の食物アレルゲンに耐容するが、高用量の食物アレルゲンには依然として反応し、又は、脱感作は完全なものであってもよく、完全なものである場合、患者は、その食物アレルゲンに関する全ての試験用量に耐容を示す。
[0038]用語「有効な」、「効力」又は「有効性」は、本明細書において、別途記載のない限り、ある治療が脱感作などの免疫調節を誘導する能力、又は所望の免疫状態、例えば、感作状態を維持する能力を指して使用される。
[0039]本明細書で使用するとき、「維持期間」とは、患者へのピーナツタンパク質(すなわち、維持用量)の投与を含み、且つ用量増加期間の完了後に開始する、ピーナツタンパク質の経口免疫療法の期間を指す。
[0040]本明細書で使用するとき、「軽度のアレルギー性有害事象」とは、一時的な不快感を有する、観察された又は経験されたOIT治療関連アレルギー性有害事象であって、但し入院又はエピネフリンなどの即時の医療介入を必要とせず、かつ毎日の活動を実質的に妨害しない有害事象を指す。
[0041]本明細書で使用するとき、「中等度のアレルギー性有害事象」とは、毎日の活動の妨げとなるのに十分な程度の不快感に関連し、医療介入及び/又は更なる観察を促し得る、観察される又は経験されるOIT治療関連アレルギー性有害事象を指す。
[0042]本明細書で使用するとき、「毎日」の投与は、連続する暦日のそれぞれで用量を投与することを意味する。この用量は、暦日に単一部分として投与されてもよく、又は同じ暦日内に投与される複数の部分に更に分割されてもよい。
[0043]本明細書で使用するとき、「重篤なアレルギー性有害事象」という句は、入院及び/若しくはエピネフリンの投与又はその他の救命医療措置を必要とするアナフィラキシーにつながる、観察された又は経験されたOIT治療関連のアレルギー性有害事象を指す。
[0044]用語「対象/被験者(subject)」又は「患者(patient)」は、任意の年齢のヒトを説明するために本明細書において同義的に使用される。
[0045]ある用量が対象に投与され、中等度又は重度のアレルギー性有害事象を伴わないとき、対象は該用量に「耐容する」。軽度のアレルギー性有害事象が観察された又は経験された場合であっても、対象は用量に耐容するとみなされる。
[0046]用語「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、及び「治療(treatment)」という用語は、少なくとも1つの症状の軽減、阻害、抑制、又は除去を通じた健康状態(condition)の改善、疾患の進行の遅延、疾患の再発の遅延、疾患の阻害、又はアレルゲンに対する応答若しくは反応を部分的に又は完全に低減することと、を含む、疾患の状態(state)又は健康状態(condition)に悩める対象に利益を提供する任意の作用を指すために本明細書において同義的に使用される。
[0047]「用量増加期間」とは、経口免疫療法中に患者に投与される最大用量よりも低い用量の食物アレルゲンの投与から開始し、経口免疫療法中に患者に投与される最大用量が達成されたときに終了する、一連の食物アレルゲン用量の増加を特徴とする経口免疫療法の期間を指す。
[0048]本明細書に記載される本発明の態様及び変形例は、態様及び変形例「を含む」及び/又は「から本質的になる」ものを含むと理解される。
[0049]値の範囲が与えられる場合、その範囲の上限値と下限値との間の各介在値、及び言及された範囲内の任意の他の言及された値又は介在する値は、本開示の範囲内に包含されると理解されるべきである。言及された範囲が上限値又は下限値を含む場合、その含まれる限界値のいずれかを除外した範囲もまた、本開示に含まれる。
[0050]本明細書で使用するセクションの見出しは、構成上の目的のためのものに過ぎず、記載する対象を限定すると解釈されるべきではない。本記載は、当業者が本発明を作製及び使用することを可能にするために提示され、特許出願及びその要件に照らして提供される。記載される実施形態に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書の一般原理は、他の実施形態に適用され得る。したがって、本発明は、示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に記載される原理及び特徴と一致する最も広い範囲を与えられるものである。
[0051]本明細書で参照される全ての刊行物、特許、及び特許出願の開示は、それぞれ参照によりその全体が本明細書に援用される。参照により組み込まれた任意の参照が本開示と矛盾する場合、本開示が優先されるものとする。
[0052] ピーナツに対する経口免疫療法
ピーナツアレルギーを有する対象は、一連の用量のピーナツタンパク質組成物を、経口免疫療法の過程中に投薬スケジュールに従って対象に投与することによって、対象をピーナツアレルギーに対して脱感作させて、ピーナツアレルギーを治療することができる。維持期間は、例えば、約3カ月以上、例えば、約3カ月~約6カ月、又は約3カ月~約6カ月未満延長できる。
[0053]経口免疫療法の全長、例えば、用量増加期間の持続時間の全長は、とりわけ、年齢、健康状態、ピーナツアレルギーの性質及び種類、同時介入、及び/又は複雑化指標(complicating indication)に応じて、対象毎で異なり得る。療法は、一般的に複数期間(multi-phasic)のものであり、少なくとも用量増加期間と維持期間とを含む。いくつかの実施形態では、経口免疫療法は、用量増加期間に先行する初期漸増期間を更に含んでもよい。用量増加期間及び維持期間に投与されるピーナツタンパク質組成物の用量は、増加、減少、又は維持するように周期的に調節又はスケジュールすることができる。用量増加期間及び維持期間に投与されるピーナツタンパク質組成物の用量のサイズは、対象の医療介護者の判断及び/又は対象に関する必要に基づいて、適宜調節することができる。
[0054]ピーナツアレルギーの診断方法は、当該技術分野において公知であり、免疫学的アッセイ(ピーナツ特異的IgEなど)、皮膚プリックテスト、食物負荷試験、及び試験的除去食などがある。ピーナツアレルギーを食物負荷試験により診断する場合、対象は、用量を漸増させてピーナツタンパク質を服用する。食物負荷試験中に観察される、ピーナツタンパク質に対するアレルギー反応は、対象がピーナツアレルギーを有すること、及びピーナツに対する経口免疫療法の候補者であることを意味する。対象が食物負荷試験中に特定の用量に反応するかどうかの判断は試験基準によるものであり、該基準は変更され得る。食物負荷試験における反応は、症状の重症度(例えば、軽度、中等度、若しくは重度)、及び/又は症状の可観測性(例えば、症状が患者によって主観的に報告されるか、医療介護者によって客観的に観察されるか)によって判断することができる。
[0055]ピーナツアレルギー治療のために本明細書に記載されるピーナツOITを受けている対象は、ピーナツアレルギーであることが判明している、又は疑われる。いくつかの実施形態では、対象は、ピーナツタンパク質OITを以前に試みている、又は完了している。いくつかの実施形態では、以前のピーナツタンパク質OITは、効果的でなかった(例えば、許容可能な脱感作を誘導できなかった、許容できないアレルギー性有害反応を生じさせた、又はピーナツタンパク質への偶発的曝露から十分に保護できなかったことによる)、不快感、不便性(例えば、毎日の投与又は臨床期間への頻繁な訪問による)、若しくは必要性(例えば、ピーナツタンパク質用量に対する反応、及び/又はOIT過程中のアレルギー性有害事象による)が原因で患者によって終了された、あるいは患者の医療介護者によって(例えば、ピーナツタンパク質用量に対するアレルギー性有害反応、及び/又はOIT過程中のアレルギー性有害事象による)終了された。
[0056]ピーナツアレルギー治療のために本明細書に記載のピーナツOITを受けている対象は、治療未経験(ピーナツアレルギー治療のためのピーナツOITを受けたことがない)でもよい。食物負荷試験などのピーナツタンパク質への診断曝露によってピーナツアレルギーと診断されているが、ピーナツタンパク質への臨床曝露歴が他にない対象は、本出願の目的とする診断のための曝露後、なおも治療未経験とみなされる。
[0057]ピーナツアレルギーに対する経口免疫療法治療を受ける対象は、ヒト対象である。いくつかの実施形態では、対象は、約4歳以上である。いくつかの実施形態では、対象は、4歳~18歳未満である。いくつかの実施形態では、対象は、18歳以上である。いくつかの実施形態では、対象は、4歳~12歳である。いくつかの実施形態では、対象は、12歳~17歳である。
[0058]用量増加期間は、維持期間に先行するものであり、経口免疫療法の過程中に対象に投与される最大用量に達するように、一連の漸増用量を投与することを含む。用量増加期間の長さは、個々の対象による必要性に従って調整できるが、一般に約20週間~約40週間で完了する。一部の患者では、用量増加期間は、2年以上継続してもよい。用量増加期間は、例えば、患者がより高い用量で一連の服用を開始した後にアレルギー性有害事象を経験した場合、延長され得る。
[0059]ピーナツOITの用量増加期間は、典型的には、投与するピーナツタンパク質の用量を、ある期間後(例えば、約1週~4週毎)に徐々に増加させることを伴う。上記一連の漸増用量内の特定の用量は、その一連に含まれる次の用量に進むまで、患者に繰返し(例えば、毎日)投与される。一連の用量の内の特定の用量に対象が耐容しない場合、又は対象が1つ以上のアレルギー性有害事象を経験した場合などのいくつかの場合には、用量を低減する、又は一連の用量の内の当該用量を、一連の用量内の次の用量に進む前に一定期間繰り返す。増量の速度(例えば、一連の用量内の個々の用量が投与される期間の長さ、又は一連の用量内の用量と用量との間の用量増分の大きさ)は、観察された1つ以上のアレルギー性有害事象に基づいて調整されてもよい。
[0060]任意で、経口免疫療法は、用量増加期間の前に初期漸増期間を含み、該期間において、対象は、一連の漸増用量を1日又は2日にわたって投与される。初期漸増期間は、用量増加期間よりも用量の範囲が低く、用量漸増の間隔が短く、典型的には対象の医療介護者によるモニタリングがより綿密であることで、用量増加期間と区別される。例えば、2日間の初期漸増は、約0.5mg~約6mgのピーナツタンパク質である一連の用量、例えば、約0.5mg、約1mg、約1.5mg、約3mg、及び約6mgのピーナツタンパク質の個別用量などを含んでもよい。初期漸増期間の最大耐用量、又は初期漸増期間における最大耐用量よりも少ない用量が、用量増加期間の初回用量であってもよい。対象が初期漸増期間において少なくとも特定の用量に耐容しない場合、対象は、経口免疫療法から除外され得る。例えば、対象が、0.5mg、1mg、又は1.5mgのピーナツタンパク質用量の投与後に重篤なアレルギー性有害事象を生じた場合、対象は、用量増加期間に進むことが許されない場合がある。初期漸増期間の目的としては、用量増加期間の用量(例えば、用量増加期間の初回用量)を調整すること、及び用量増加期間を安全に進めるために対象の適性(suitability)を確認することが挙げられる。
[0061]経口免疫療法の前、間、又は後(例えば、経口免疫療法の維持期間の前、間、又は後)に、ピーナツ特異的IgE(ps-IgE)値を取得することができる。値又は比率は、その値若しくは比率を測定すること、又は別のエンティティ(臨床検査室など)からその値若しくは比率を受け取ることによって得ることができる。
[0062]ピーナツ特異的IgE値の測定は、患者血清サンプルに対して(すなわち、血清値を測定する)、又は患者血漿サンプルに対して(すなわち、血漿値を測定する)実施できる。全血を患者から採取することができ、血清又は血漿を、既知の方法を用いて全血から単離できる。ps-IgE値は、例えば、定量的イムノアッセイを使用して、インビトロで測定することができる。定量的イムノアッセイは当該技術分野において既知であり、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA);IMMULITE(登録商標)システム(Siemens Healthcare Diagnostics,Erlangen,Germany)などのアルカリホスファターゼイムノアッセイ自動分析器;放射性アレゲン収着検査(RAST)、又はImmunoCAP(登録商標)システム(Thermo Fisher Scientific/Phadia,Uppsala,Sweden)又はUniCAP(商標)(Phadia AB,Uppsala,Sweden)などの、蛍光酵素イムノアッセイ自動分析器を含むことができる。他の技術も信頼性をもって使用できるものの、蛍光酵素イムノアッセイ(FEIA)自動分析器(例えば、ImmunoCAP(登録商標)システム)は好ましい技術である。例えば、その技術によって決定された抗体(例えば、IgE)値を蛍光酵素イムノアッセイ自動分析器による測定に対して正規化できる、別の技術を使用することができる。すなわち、抗体(例えば、IgE)値を、ある技術によって決定でき、かつ蛍光酵素イムノアッセイ自動分析器によって測定された値と対応させることができる。
[0063]維持期間中に取得したps-IgE値を、経口免疫療法の前又は最中の別の時点で取得した値又は比と比較して全身性アレルギー応答のリスクを評価することができる。例えば、維持期間中に取得した値又は比を、ベースラインの値又は比と比較することができる。ベースラインの値又は比は、経口免疫療法の開始前に対象から取得する値又は比である。一般に、経口免疫療法中、ps-IgE値は、用量増加期間中にベースライン値と比較して増加し、維持期間中に減少する。維持期間中のいくつかの時点で、ps-IgE値はベースラインの値未満まで減少した場合、この減少は、ベースラインのリスク(すなわち、経口免疫療法の開始前のリスク)と比較して全身性アレルギー応答のリスクが低下したことを意味する。一方で、取得したps-IgE値がベースラインの値と比較して増加していることは、ベースラインのリスクと比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。
[0064]対象は、対象のピーナツタンパク質に対する耐容性が増加した場合でも、全身性アレルギー応答のリスクが高い可能性がある。IgG4抗体値は、経口免疫療法の用量増加期間中に増加し、維持期間中に上昇した状態を維持する、又は更に上昇する。増加したIgG4値は、ピーナツタンパク質の耐容性の増加に関連している。しかしながら、患者におけるIgE値は、用量増加期間中にベースラインと比較して増加する場合もあり、このIgE値の増加は、全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。
[0065]全身性アレルギー応答リスクの評価は、経口免疫療法の開始前又は経口免疫療法の過程中の1つ以上の因子に基づいてもよい。例えば、経口免疫療法の開始前に対象のベースラインのピーナツ特異的IgE値が取得されてもよく、経口免疫療法の過程で生じる全身性アレルギー応答のリスクを、ベースラインのピーナツ特異的IgE値に基づいて評価してもよく、この場合に、ベースラインのピーナツ特異的IgE値が所定の閾値(例えば、約70kU/L)を上回るものであると、経口免疫療法の過程中に生じる全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。別の例では、経口免疫療法の過程中(例えば、維持期間中など)の対象のピーナツ特異的IgE値を取得して、患者のベースラインのピーナツ特異的IgE値(すなわち、経口免疫療法の開始前の患者のピーナツ特異的IgE値)と比較し、その際、前記患者から取得したピーナツ特異的IgE値がベースラインのピーナツ特異的IgE値を上回ることは、ベースラインのリスク(すなわち、経口免疫療法の開始前のリスク)と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。別の例では、経口免疫療法の過程中(例えば、維持期間中など)の対象のピーナツ特異的IgE値を取得して、所定のピーナツ特異的IgE値の閾値(例えば、約70kU/L)と比較し、この場合、前記患者から取得したピーナツ特異的IgE値が所定のピーナツ特異的IgE値の閾値を上回ることは、閾値を下回るピーナツ特異的IgE値を有する患者と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する。患者の全身性アレルギー応答のリスクが高い場合に、患者は、強化されたモニタリングを受け得る。
[0066]いくつかの実施形態では、全身性アレルギー応答のリスクは、経口免疫療法の開始前に評価される。いくつかの実施形態では、全身性アレルギー応答のリスクは、経口免疫療法の過程中(例えば、維持期間中など)に評価される。いくつかの実施形態では、全身性アレルギー応答のリスクは、ピーナツタンパク質に対する脱感作後(例えば、1000mg又はそれ以上の用量のピーナツタンパク質への脱感作後、又は2043mg又はそれ以上の累積用量のピーナツタンパク質に対する脱感作後)に評価される。
[0067]いくつかの実施形態では、全身性アレルギー応答のリスクを評価するために、維持期間中に患者から取得したps-IgEの値をベースライン値又は所定の閾値と比較することができる。いくつかの実施形態では、ps-IgEの値が所定の閾値(例えば、約70kU/L)を上回る場合、対象は全身性アレルギー応答のリスクが高いとみなされ、任意選択で強化されたモニタリングを受ける。別の実施形態では、ps-IgEの値がベースラインの値(すなわち、治療前の対象のps-IgEの値)を上回る場合、対象は、ベースラインのリスク(すなわち、治療前の全身性アレルギー応答のリスク)と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高い。
[0068]対象による全身性アレルギー応答のリスクは、追加的又は代替的に、対象の人口統計学データに基づいて評価されてもよい。いくつかの実施形態では、対象による全身性アレルギー応答のリスクは、対象の年齢及び/又は性別のうちの1つ以上に基づいて評価されてもよい。いくつかの実施形態では、全身性アレルギー応答のリスクは、対象の年齢に基づいて評価されてもよく、ここで12歳~17歳の対象は、4歳~11歳の対象と比較してリスクが高い。いくつかの実施形態では、全身性アレルギー応答のリスクは、対象の性別に基づいて評価されてもよく、女性の対象は、男性の対象と比較してリスクが高い。いくつかの実施形態では、全身性アレルギー応答のリスクは、対象の年齢及び性別に基づいて評価されてもよく、12歳~17歳の女性である対象は、4歳~11歳の男性である被検者と比較してリスクが高い。
[0069]既にピーナツタンパク質に対して脱感作された対象は、例えば対象におけるps-IgE値に起因するリスクを維持し得ることから、これらの対象における全身性アレルギー応答のリスクが評価されてもよい。例として、患者のピーナツ特異的IgE値がベースライン値又は所定の閾値(例えば、約70kU/L)を上回る場合、患者は、ピーナツタンパク質に脱感作されていても、全身性アレルギー応答のリスクを維持し得る。全身性アレルギー応答のリスクは、追加的又は代替的に、例えば対象の年齢及び/又は性別に起因して、既に脱感作されているがまだリスクがある対象において評価され得る。脱感作は、一般に、食物負荷試験を使用して測定され、量を漸増させてピーナツタンパク質を対象に投与して、当該患者によって耐容される最大用量を決定する。異なる用量の間は、ある期間(一般的に約15~約30分)の間隔をあけ、対象は、この期間中にアレルギー応答について観察される。次いで、耐量(Dose tolerance)を、対象が耐容する最大投与量、又は対象が耐容する最大累積用量に従って評価することができる。いくつかの実施形態では、全身性アレルギー応答のリスクが評価されるとき、対象は、約10mg又はそれ以上のピーナツタンパク質、約30mg又はそれ以上のピーナツタンパク質、約100mg又はそれ以上のピーナツタンパク質、約300mg又はそれ以上のピーナツタンパク質、約600mg又はそれ以上のピーナツタンパク質、あるいは約1000mg又はそれ以上の用量のピーナツタンパク質に耐容する。いくつかの実施形態では、対象は、約13mg又はそれ以上のピーナツタンパク質、約43mg又はそれ以上のピーナツタンパク質、約443mg又はそれ以上のピーナツタンパク質、約1043mg又はそれ以上のピーナツタンパク質、あるいは約2043mg又はそれ以上のピーナツタンパク質の、累積用量に耐容する。
[0070]1つ以上の悪化因子が患者に存在する場合、リスクが更に増加し得る。このような悪化因子としては、例えば、炎症(全身性炎症又は局所的炎症、例えば、局所的な外傷又は手術によるものであり得る)、感染(例えば、ウイルス、真菌、寄生虫、又は細菌感染)、アレルギー反応(ピーナツ又はその他のアレルギーを引き起こす物質によるものであり得る)、地理的出自(欧州又は北米など)、病歴(アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アナフィラキシー、喘息、及び/又は複数の食物アレルギーなど)、人種群、皮膚プリックテスト(膨疹径)、又は月経期間(対象が初潮を経験しているかどうかを含む)が挙げられる。
[0071]対象の全身性アレルギー応答のリスクが高いと判定された場合、予防措置を講じることができる。例えば、対象は、全身性アレルギー応答のモニタリングを強化され、ピーナツタンパク質を含む組成物が対象に投与された後、ある期間(例えば、約2時間)身体活動を制限するよう助言されてもよく、及び/又は対象には、全身性アレルギー応答に対応した投与のための治療有効量のエピネフリンが提供されてもよい。
[0072] 維持期間の投与スケジュール
ピーナツに対する経口免疫療法の維持期間は、用量増加期間の最大用量が達成された後に始まる。維持期間は、例えば、約3カ月以上、例えば約3カ月~約6カ月、又は約3カ月~約6カ月未満、延長できる。いくつかの実施形態では、維持期間用量は、維持期間中に毎日対象に投与される。維持期間中に対象に投与されるピーナツタンパク質の用量は、約200mg~約1,000mgのピーナツタンパク質である。例えば、いくつかの実施形態では、維持期間中の用量は、約200mg~約300mgのピーナツタンパク質、約300mg~約500mgのピーナツタンパク質、約500mg~約1,000mgのピーナツタンパク質、又はこれらの間の値及び範囲である。例示的実施形態では、維持期間中に対象に投与される維持期間用量は、約300mgのピーナツタンパク質である。
[0073] 用量増加期間
経口免疫療法の用量増加期間は、経口免疫療法の最大用量よりも低い用量で始まり、経口免疫療法の最大用量で終わる、一連の漸増用量を患者に投与することを含む。一連の用量の各用量は、毎日など、定期的に投与される。一連の各用量は、約1週間~約4週間、例えば約2週間などのある期間にわたる、ピーナツタンパク質組成物の毎日の投与を含むことができる。一連の用量内の特定の用量についての期間が完了した後、治療を、一連の用量内のより高用量へと進めることができる。いくつかの実施形態では、治療の用量増加期間は、一連の2通り~10通りの異なる用量レベルを含む。対象が用量増加期間中にある期間にわたって特定の用量レベルに耐容する場合、対象は、一連の用量増加期間内の次の用量レベルに進むことができる。対象が用量増加期間中にある期間にわたって特定の用量レベルに耐容しない場合、患者は、一連の用量の内の実施中の用量レベルを繰り返してもよい。あるいは、対象が用量増加期間中にある期間にわたって特定の用量レベルに耐容しない場合、対象は、一連の用量の内の、より早期の用量レベルに戻ってもよい。したがって、用量増加期間の継続は、対象の特異的な応答に依存する。対象は、一連の用量を必要に応じた回数繰り返して、一連の用量における最大用量を達成してもよい。用量増加期間は、最大用量が2週間にわたって耐容されたときに終了する。
[0074]用量増加期間中に投与される用量のピーナツタンパク質の医薬組成物は、約0.5mg~約5,000mgのピーナツタンパク質、例えば約0.5mg~約10mgのピーナツタンパク質、約10mg~約100mgのピーナツタンパク質、約100mg~約300mgのピーナツタンパク質、約300mg~約500mgのピーナツタンパク質、約500mg~約1,000mgのピーナツタンパク質、約1,000mg~約2,000mgのピーナツタンパク質、又は約2,000mg~約5,000mgのピーナツタンパク質、並びにこれらの間の値及び範囲のピーナツタンパク質を含む。非限定的な例示的実施形態では、用量増加期間の用量は、初期漸増期間の最大耐用量(例えば、3mg又は6mgのピーナツタンパク質)、続いて約12mgのピーナツタンパク質、約20mgのピーナツタンパク質、約40mgのピーナツタンパク質、約80mgのピーナツタンパク質、約120mgのピーナツタンパク質、約160mgのピーナツタンパク質、約200mgのピーナツタンパク質、約240mgのピーナツタンパク質、及び約300mgのピーナツタンパク質という一連の用量の毎日投与であり、ここで各用量レベルは、一連の用量内の次の用量に進む前に、約1週間~約4週間(約2週間など)にわたって投与される。別の例示的実施形態では、用量増加期間の用量は、初期漸増期間の最大耐用量(例えば、3mg又は6mgのピーナツタンパク質)、続いて、対象の医療介護者によって指示される一連の漸増する1日用量であり、ここで各1日用量は、0.5mgのピーナツタンパク質カプセル、1mgのピーナツタンパク質カプセル、10mgのピーナツタンパク質カプセル、20mgのピーナツタンパク質カプセル、100mgのピーナツタンパク質カプセル、又は300mgのピーナツタンパク質サッシェを含み、各用量レベルは、一連の用量の内の次の用量に進む前に、約1週間~約4週間(約2週間など)にわたって投与される。
[0075]用量増加期間の一連の用量は、投与される用量の調節によって区別される。用量増加期間中の一連の用量における用量のサイズは、1週間に1回及び6週間に1回など、定期的に調節される。いくつかの実施形態では、用量増加期間は、1週間に1回の用量調節、2週間に1回の用量調節、3週間に1回の用量調節、4週間に1回の用量調節、5週間に1回の用量調節、6週間に1回の用量調節、又は対象の医療介護者の判断に基づく必要に応じた調節を含む。用量は、一連の用量内の次に予定された用量まで増加されてもよく、アレルギー性有害事象に対応して、一連の用量内の以前の用量まで低減されてもよく、一連の用量内の実施中の用量で追加の間隔で維持されてもよく、対象の医療介護者の判断に基づいて一連の用量内のより高い用量まで増加されてもよく、又は対象の医療介護者の判断に基づいて、一連の用量内のより低い用量まで低減されてもよい。いくつかの実施形態では、用量増加期間は、対象が一連の用量内の実施中の用量に耐容しなかったという医療介護者の判断に基づいて、任意の時点で調節される。
[0076]用量増加期間は、対象が、一連の用量増加で最終用量を達成するまで進められる。いくつかの実施形態では、用量増加期間は、約1か月~約6か月、例えば、約1か月~約3か月、又は約3か月~約6か月である。いくつかの実施形態では、用量増加期間は、約6か月~約2年、例えば、約6か月~約1年、約1年~約18か月、又は約18か月~約2年である。非限定的な例示的実施形態では、用量増加期間は、用量の低減及び再増加並びに用量レベルの繰返しの数に応じて、22週間~2年間継続し、12mgのピーナツタンパク質、20mgのピーナツタンパク質、40mgのピーナツタンパク質、80mgのピーナツタンパク質、120mgのピーナツタンパク質、160mgのピーナツタンパク質、200mgのピーナツタンパク質、240mgのピーナツタンパク質の用量を経て、300mgのピーナツタンパク質で終了する。記載された実施形態のいずれかにおいて、用量増加期間は、対象が、用量増加期間の一連の用量内の最終用量として予定された用量に2週間にわたって耐容したときに終了し、それによって維持期間を開始する。
[0077]用量増加期間の一連の各用量は、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、又はそれらの間の期間及び範囲で継続するように予定されてもよい。アレルギー性有害事象の観察に基づいて、対象の介護者は、対象の実施中の用量を一連の用量増加において繰り返すことができる。特定の用量を用いる特定の部分は、対象がその用量に充分に脱感作する(対象が食物アレルゲンへの偶発的な(又は意図的な)曝露時に中等度又は重篤なアレルギー性有害事象を経験しないときなど)ために必要な回数、例えば、1回、2回、3回、又は4回以上、繰り返されてもよい。
[0078] 初期漸増期間
任意で、経口免疫療法は、用量増加期間に先行する初期漸増期間を含む。初期漸増期間は、特定の対象に対する経口免疫療法の安全性及び適性を確保することができる。初期漸増期間は、診療所又はアレルギークリニックなどの適切な医療施設で、1日又は2日などの短期間にわたって投与される。対象は、通常、医療介護者によって注意深くモニタリングされ、該医療介護者は、介入を必要とするアレルギー性有害反応が発生した場合、エピネフリン、アルブテロール、及びジフェンヒドラミンなどの介入を提供することができる。経口免疫療法の初期漸増期間は、存在する場合、複数の低用量のピーナツタンパク質組成物の対象への投与を含む。低用量は、約10分~約60分などの時間間隔をあけることができ、1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つの用量、又はそれ以上の用量を含むことができる。
[0079]初期漸増期間は、約0.5mg~約6mgのピーナツタンパク質、例えば、約0.5mg~約1.5mgのピーナツタンパク質、約1.5mg~約3mgのピーナツタンパク質、又は約3mg~約6mgのピーナツタンパク質の用量を含んでもよい。非限定的な例では、初期漸増期間は、1日に約0.5mgのピーナツタンパク質から最大約6mgのピーナツタンパク質まで1日かけて漸増することを含み、1回の用量は約0.5mg、約1mg、約1.5mg、約3mg、及び約6mgのピーナツタンパク質であって、3mg又は6mgのピーナツタンパク質用量に耐容することは、対象を経口免疫療法の用量増加期間へと安全に進めることができることを意味する。
[0080] 経口免疫療法のための組成物
ピーナツアレルギーを治療するための例示的な組成物は、その内容全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2014/0271721号に詳細に記載されている。ピーナツタンパク質製剤を調製するための例示的な方法は、その内容全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2014/0271836号に詳細に記載されている。
[0081]ピーナツアレルギーを有する対象は、ピーナツタンパク質の経口免疫療法の過程中に、一連の用量のピーナツタンパク質組成物を対象に投与することによって、ピーナツアレルギー治療を受けることができる。ピーナツタンパク質組成物は、好ましくは、ピーナツアレルギーを治療するための1種以上のピーナツアレルゲンタンパク質を含む医薬組成物である。いくつかの実施形態では、ピーナツタンパク質はピーナツ粉から単離されてもよく、任意で、1種以上の希釈剤、1種以上の流動促進剤、及び1種以上の滑沢剤を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、ピーナツタンパク質の医薬組成物は、約0.05%~約100%(重量/重量)のピーナツタンパク質を含む。
[0082]いくつかの実施形態では、ピーナツタンパク質の医薬組成物は、特性評価されたピーナツタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、特性評価されたピーナツタンパク質は、特性評価されたピーナツアレルゲンタンパク質Ara h1、Ara h2、及び/又はAra h6を含む。一実施形態では、ピーナツアレルギーを治療するための最終製剤は、特性評価されたピーナツアレルゲンタンパク質Ara h1、Ara h2及びAra h6を含むピーナツ粉を含み、希釈剤、流動促進剤及び滑沢剤と共に、経口免疫療法の用量増加期間、維持期間、及び/又は初期漸増期間における投与のための約0.5~約5,000mgのピーナツタンパク質を含有するカプセル剤を含む段階用量で製剤化される。
[0083]本明細書に記載される方法のいずれかにおいて、経口免疫療法の維持期間に投与するためのピーナツタンパク質の医薬組成物は、約200mg~約1,000mgのピーナツタンパク質、例えば、約200mg~約250mgのピーナツタンパク質、約250mg~約300mgのピーナツタンパク質、約300mg~約500mgのピーナツタンパク質、及び約500mg~約1,000mgのピーナツタンパク質の用量を含み得る。非限定的な好ましい実施形態では、経口免疫療法の維持期間に投与するためのピーナツタンパク質の用量は、約300mgのピーナツタンパク質である。
[0084]いくつかの実施形態では、経口免疫療法の用量増加期間に投与するためのピーナツタンパク質の医薬組成物は、約0.5mg~約5,000mgのピーナツタンパク質、例えば、約3mg、約6mg、約10mg、約12mg、約20mg、約40mg、約80mg、約100mg、約120mg、約160mg、約200mg、約240mg、及び約300mgのピーナツタンパク質の一連の用量のうちの個々の用量を含む。非限定的な例示的実施形態では、経口免疫療法の用量増加期間に投与するためのピーナツタンパク質の用量は、初期漸増期の最大耐用量(例えば、約3mgのピーナツタンパク質又は約6mgのピーナツタンパク質)の毎日の投与、続いて対象の医療介護者によって指示される一連の漸増1日用量であり、ここで各1日用量は、約0.5mgのピーナツタンパク質カプセル、約1mgのピーナツタンパク質カプセル、約10mgのピーナツタンパク質カプセル、約20mgのピーナツタンパク質カプセル、約100mgのピーナツタンパク質カプセル、又は約300mgのピーナツタンパク質サッシェからなる群から選択される1つ以上のカプセル又はサッシェを含み、各用量レベルは、次の用量に進む前に約1週間~約4週間(例えば、約2週間)にわたって投与される。
[0085]本明細書に記載される方法では、経口免疫療法は、任意で初期漸増期間を含んでもよい。いくつかの実施形態では、経口免疫療法の初期漸増期間に投与するためのピーナツタンパク質の医薬組成物は、約0.5mg~約6mgのピーナツタンパク質、例えば約0.5mg、約1mg、約1.5mg、約3mg、及び約6mgのピーナツタンパク質の個別の用量を含む。いくつかの実施形態では、経口免疫療法の初期漸増期間に投与するためのピーナツタンパク質の医薬組成物は、約0.5mg~約6mgのピーナツタンパク質、例えば約0.5mg、約1mg、約1.5mg、約3mg、約6mg、及び約12mgのピーナツタンパク質の個別の用量を含む。
[0086]本願は、以下の非限定的な実施例を参照することでよりよく理解され得、この実施例は、本願の例示的な実施形態として提供される。以下の実施例は、実施形態を更に十分に説明するために提示されるが、決して本願の広範な範囲を限定するものと解釈すべきでない。本願のある特定の実施形態を本明細書中に示し説明してきたが、このような実施形態は例示のためにのみ提供されたことが明らかである。多くの変形形態、変更、及び置き換えは、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって想起し得る。本明細書に記載の実施形態に対する様々な代替が、本明細書に記載の方法を実施するために利用できることは理解されるべきである。
[0087] 実施例1:ピーナツアレルギーの小児におけるAR101により経口免疫療法の有効性を調査する、欧州での第3相臨床試験
以下の試験は、ピーナツアレルギー患者において評価された脱感作経口免疫療法レジメンにおけるピーナツタンパク質製剤(AR101)の効力及び安全性についての欧州多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験であり、「AR101 Trial in Europe Measuring Oral Immunotherapy Success in Peanut Allergic Children(ARTEMIS)」と題されている。4~17歳の小児期及び思春期の患者が適格とみなされた。全ての参加者は、二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)でのスクリーニングによって確認されたピーナツアレルギーの病歴を有しており、かつ過去12カ月以内のUniCAP(商標)(Phadia AB,Uppsala,Sweden)による血清ピーナツ特異的IgE(psIgE)値が0.35kU/L以上である、及び/又はピーナツの皮膚プリックテストの平均膨疹径がスクリーニング時の陰性対照(例えば、生理食塩水)よりも3mm以上大きい、のいずれかであった。全ての適格な被験者は、PRACTALLガイドラインに従って実施されたDBPCFCによるスクリーニングで、300mg(累積444mg)の負荷用量のピーナツタンパク質(600mgのピーナツ粉として測定)で又はそれより前に、用量制限症状(dose-limiting symptoms)を経験した。
[0088]主要除外基準としては、血行力学的に有意な心血管疾患の既往歴;DBPCFCスクリーニングの60日以内のアナフィラキシー又はアナフィラキシーショックの重度の又は生命を脅かすエピソード;好酸球性食道炎、他の好酸球性GI疾患、慢性、再発性、又は重度の胃食道逆流疾患、嚥下困難の症状、又は未診断病因の再発性GI症状;及び重度の喘息の既往歴が挙げられる。重度の/生命を脅かすアナフィラキシーの既往歴を有する患者は、そのエピソードがスクリーニングの60日以上前に発生した場合に許可した。同一の住所に住む患者は、偶発的な盲検解除(unblinding)、又は正しくない治験薬の誤投与の機会を最小限に抑えるため、試験から除外した。試験終了時の診察では、試験を通して参加者のケアに実質的に参加していなかった、手順の経験豊富な現場の医師が、DBPCFCの出口を独立して評価した。
[0089]効力評価項目:臨床有効性主要評価項目は、DBPCFCの出口において、単回用量として少なくとも1,000mg(累積2,043mg)のピーナツタンパク質に、軽度以下の症状で耐容する被験者の割合とした。重要な副次評価項目には、DBPCFCの出口において、単回用量として少なくとも600m(累積1,043mg)のピーナツタンパク質に、軽度以下の症状で耐容する被験者の割合;DBPCFCの出口において、少なくとも300mg(累積443mg)のピーナツタンパク質に軽度以下の症状で耐容した被験者の割合;及びDBPCFCの出口の間、ピーナツタンパク質の摂取後に最大重症度の症状が生じること、が含まれた。他の有効性副次評価項目には、DBPCFCの出口において最大耐用量(MTD)での症状が軽度以下であること;DBPCFCの出口におけるピーナツタンパク質のMTDのベースラインからの変化;DBPCFCの出口における救急薬としてのエピネフリンの使用、及びDBPCFCのスクリーニングにおけるその使用との比較;血清中ピーナツ特異的IgE値、総IgE値、及びピーナツ特異的IgG4値の変化;並びにピーナツの皮膚プリックテスト(SPT)膨疹径の変化が含まれた。
[0090]初期登録:被験者を、二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)によって、ピーナツに対するアレルギーについてスクリーニングした。このDBPCFCは、PRACTALLガイドラインに記載されているDBPCFCの簡略版であり、300mg(累積444mg)の最大負荷用量まで進められる。300mg以下のピーナツタンパク質に非耐容の患者を試験に登録した。300mg用量のピーナツタンパク質に耐容した患者は除外した。登録した175名の被験者を、AR101を用いたピーナツタンパク質経口免疫療法(OIT)群とプラセボ群とに3:1で分けた。132名の被験者はピーナツタンパク質OITを受け、43名の被験者はプラセボを受けるように指定した。年齢、性別、総IgE値、ピーナツ特異的IgE(ps-IgE)値、ピーナツ特異的IgG(ps-IgG)値、ps-IgE/IgGの比、平均膨疹径(ピーナツ膨疹の長軸と単軸の平均から、生理食塩水の膨疹の長軸と単軸の平均を減算して計算)、及び試験集団のDBPCFCによるスクリーニングにおけるピーナツタンパク質の最大耐用量(MTD)などの特性を表1に要約する。
[0091]初期漸増(連続する2日):適格な被験者の無作為抽出後、ピーナツOIT被験者及びプラセボ被験者は、0.5mgの用量のAR101又はプラセボで開始し、その後1日の間に20~30分間隔で最大用量6mgまで漸増負荷を受けた。少なくとも3mgの用量に耐容できなかった被験者は、漸増不良とみなした。3mg及び6mg用量の両方の治験用生成物に耐容した被験者、又は3mgには耐容したが6mg用量には耐容しなかった被験者は、翌日に3mg用量の耐容性の確認試験を受けた(下の表2の1日目の最初の漸増スケジュールを参照)。確認試験の3mg用量に耐容しなかった被験者は、中止した。
[0092]用量増加:用量レベルを維持又は低減することなく用量増加が進められた場合、被験者は、毎日のピーナツ又はプラセボOITの経口投与を約20週間;最大で40週間、受けた。用量増加期間は、3mg、6mg、12mg、20mg、40mg、80mg、120mg、160mg、200mg、及び240mgのピーナツ又はプラセボの用量段階を経る、隔週での移行(progression)からなった。全ての漸増用量(下表3の用量増加スケジュールを参照)は、臨床研究センター又は他のモニタリング環境で投与された。毎日の用量は、家庭で被験者又はその介護者によって自己投与された。300mg用量漸増を受け、耐容した被験者は、試験の維持期間を開始した。
[0093]維持:300mg/日のAR101又はプラセボの目標維持用量に達した被験者は、300mg/日を継続投与される約12週間の維持期間に入り、この投与は更に4週間(最大維持期間継続期間の16週間)延長された、又は56週間の全治療フェーズ継続期間(初期漸増、増加用量期間、及び維持期間)まで延長された。延長はこれらのうち先に達成されるものを行った。初期維持期間用量の後、被験者は、自宅で1日300mg用量のAR101又はプラセボを自己投与した。
[0094]DBPCFCの出口:約12週間の維持期間の終了後、ピーナツOIT及びプラセボの被験者には、最大1,000mg用量(累積最大2,043mg)のピーナツタンパク質でDBPCFCの出口を実施した。
[0095] 結果
一般的な治療意図の有効性:治療意図群は、治療遵守、治験からの離脱、又は治験計画からの逸脱に関わらず、治験のOIT群又はプラセボ群のいずれかに登録した全ての被験者を含む。ベースラインから出口まで、ピーナツ特異的IgG4(psIgG4)は増加し、一方、SPT膨疹径及びpsIgE/psIgG4は、AR101治療対象においてプラセボ治療対象と比較して減少した。治療意図群では、psIgE値は、用量漸増の終わりまで増加し、維持中に減少してベースライン値に戻り、治療群(AR101及びプラセボ)間の違いは、ベースラインから出口まで認められなかった。ピーナツOITを受けた被験者は、ピーナツタンパク質への曝露に対して大いに脱感作された。表4に要約するように、DBPCFCの出口において症状が軽度以下となる最大耐用量で評価したとき、OIT患者群の58.3%が1,000mg用量(累積2,043mg)に耐容した。対照的に、プラセボを受けた患者群では2.3%のみが1,000mg用量に耐容した。この顕著な脱感作は、わずか約12週間の維持投与の後で達成された。
[0096]アナフィラキシー反応:死亡、又は予期しない重篤な有害反応の疑い(SUSAR)は認められなかった。表5に要約されるように、ピーナツタンパク質OIT群について、軽度及び/又は中等度のアナフィラキシー反応が、全ての試験期間(初期漸増、用量増加、及び維持)で報告された。驚くべきことに、維持期間に、対象は20~40週間の用量増加を受け、300mg/日の維持用量へと進んだにもかかわらず、用量増加期間中にアナフィラキシー反応を経験した被験者の割合は、維持期間中にアナフィラキシー反応を経験した被験者の割合とほぼ同じであった(用量増加期間中の被験者では7.4%であったのに対し、維持期間中の被験者では7.2%;表5を参照されたい)。治療集団は、最初に、用量増加期間の結果として300mg/日の用量のピーナツタンパク質に対して脱感作されていたが、軽度/中等度のアナフィラキシー反応などの全身性アレルギー反応の発生率は維持期間中に変化しなかった。
[0097]治療に起因しており治験用生成物の中止につながる有害事象:治療に起因した、治験用生成物の中止につながる有害事象の要約を、下表6に示す。これらの有害事象により、OIT患者群の3.8%は治療期間の初期漸増部分中に中止し、OIT患者群の5.6%は治療期間の用量増加部分中に中止した。驚くべきことに、ピーナツOIT群では、維持期間中に、治療に起因した中止につながる有害事象を経験した被験者はゼロであった。治療期間の初期漸増部分中及び用量増加部分中では、胃腸障害が治験用生成物の中止の主な原因であった。更に、先行する節で論じたように、OIT試験集団は、維持期間中に軽度/中等度のアナフィラキシー反応を経験し続けたのに対し、意外にも、治療期間の維持部分では胃腸障害による中止がなくなった。
[0098] 実施例2.AR101の臨床安全性試験
実施例1で考察した試験に加えて、ピーナツアレルギー患者において評価された脱感作経口免疫療法におけるピーナツタンパク質製剤(AR101)の効力及び安全性も、以下の4つの治験において調査した。ARC003及びARC007という名称の2つの試験が完了しており、ARC004及びARC011という名称でのそれらの非盲検継続試験が進行中である。進行中の試験については、提示されるデータは、カットオフ日2018年12月15日からのデータである。
[0099]ARC003(PALISADEとも呼ばれる)は、ピーナツアレルギーを有する4~55歳の患者におけるAR101の大規模二重盲検プラセボ対照第3相試験であり、入口及び出口の両方での二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)を含む最初の試験であった。Jones et al.,「Efficacy and Safety of AR101 in Peanut Allergy:Results from a Phase 3,Randomized,Double-Blind,Placebo-Controlled Trial(PALISADE)」,J.Allergy Clin.Immunol.141(2),suppl.AB400(2018);及びVickery et al.,「AR101 Oral Immunotherapy for Peanut Allergy」,N.Engl.J.Med.,vol 379,no.21,pp.1991-2001(2018)を参照されたい。一次試験集団は、4~17歳の患者499名(374名はAR101、125名はプラセボ)から構成された。対象は、3:1で治療又はプラセボに無作為抽出され、2日間かけて0.5mgから6mgまでのピーナツタンパク質の初期用量漸増を受け、約20~40週で3mgから600mgまでのピーナツタンパク質の用量増加期間を完了し、1日300mgのピーナツタンパク質の約24~28週間の維持期間に入った。
[0100]ARC004は、ARC003を完了した被験者(completers)に対する継続的な非盲検安全性試験である。ARC004のグループ1は、ARC003においてプラセボ治療を受けていた患者であった。グループ1の被験者は、ARC003においてAR101治療された被験者と同様の初期用量漸増及び用量増加期間による処置を受けた。グループ1の患者は、次に、約24週間の維持期間において1日当たり300mgのピーナツタンパク質による処置を受けた。約24週間の維持期間の後、グループ1の患者は、耐容に応じて毎日、週2回(1週間に2回)、週1回、又はQOW(2週間に1回)の投与で88~136週間を目標として延長された維持期間に入った。ARC004のグループ2は、ARC003においてAR101治療を受けていた患者であった。グループ2の患者は、約28~84週間の可変持続時間及び3コホートにおよぶ(across)投与レジメンを目標として延長された維持期間に入った。この試験には、380名のAR101治療患者が含まれた。
[0101]ARC007(RAMSESとも呼ばれる)は、AR101安全性の評価のためにより大きな患者データセットを提供するように計画された、大規模二重盲検無作為化プラセボ対照安全性試験であった。この試験には、初期用量漸増及び用量増加期間が含まれたが、維持期間は含まれなかった。DBPCFCによるスクリーニングは実施せず、ピーナツアレルギーの通常の臨床診断に沿ったものとした。ARC007の患者は、2日間かけて0.5mgから6mgへのピーナツタンパク質の初期用量漸増、続いて、約20~48週間で1日3mgから300mgへのピーナツタンパク質の用量増加期間を受けた。この治験は、AR101治療された少なくとも337名の被験者と、168名のプラセボ患者とを含む。
[0102]ARC011は、ARC007からの患者を含む、進行中の非盲検長期安全性試験である。ARC007からのAR101治療された患者は、1日300mgのピーナツタンパク質で約24~28週間を目標とする維持期間に入る。この試験は、AR101で治療した226名の被験者を含む。
[0103]4つの臨床試験のうち、重複する2つの集団(集合的に、「安全性集団」)において安全性データを一緒に分析した。安全性集団には、「対照集団(Controlled Population)」と「統合集団(Integrated Population)」とが含まれた。対照集団には、プラセボ対照試験(ARC003及びARC007)に組み込まれた初期漸増期間及び用量増加期間中の709名のAR101治療患者及び292名のプラセボ患者と、ARC003単独で1日300mgの維持治療中の310名のAR101治療患者及び118名のプラセボ治療患者とが含まれた。統合集団(ARC003、ARC007、ARC004、及びARC011)は、初期漸増中の812名のAR101治療患者、用量増加期間中の794名の患者、及び1日300mgのピーナツタンパク質の維持療法中の662名の患者が含まれた。
[0104]AR101の投与によるアレルギー有害事象が予想されたため、安全性情報は包括的な方法で収集した。有害事象(AE)情報は、患者が家庭での治験生成物の投与を完了した後、及び医療監督下で投与するための治験場所における医師による治験生成物の投与を完了後に記入した治験日誌により収集した。AR101の軽度又は中等度の症状が試験治療中にマスクされないことを確保するために、患者は抗ヒスタミン剤を使用することを禁じられた。この解析では、用語「アナフィラキシー」を使用して、重度の、生命を脅かす、又は致死的なアナフィラキシー反応事象のサブセットを区別した。
[0105]対照集団の初期用量漸増(IDE)期間及び用量増加期間の両方に及ぶ有害事象を、下表7に要約する。

[0106]1日300mgの維持期間中の対照集団の有害事象を、下表8に要約する。
[0107]脱感作治療で予想されるように、任意の重症度の少なくとも1つの有害事象又は治験用生成物との関係を有する患者の割合は、初期用量漸増と用量増加とを合せた場合(AR101 97.9%、プラセボ92.1%)、300mg/日の投与中(AR101 87.1%、プラセボ79.7%)よりも高かった。対照集団では、有害事象が試験治療の中止につながったのは、初期用量漸増と用量増加とを合せて、AR101群の患者の11.3%及びプラセボ群の2.4%であり、これと比較して、300mgのピーナツタンパク質の毎日の維持投与中は、AR101群の患者で1.3%、プラセボ群の患者ではゼロであった。
[0108]試験治療の中止につながる最も一般的な有害事象は、下の表9に要約されるように、初期用量漸増中及び用量増加中に発生した胃腸関連応答(腹痛、嘔吐、及び悪心)であった。全身性アレルギー反応は、初期用量漸増(IDE)中及び用量増加中を合せて11名の患者(1事象のアナフィラキシー)、及び300mgのピーナツタンパク質の維持用量中に2名の患者(1事象のアナフィラキシー)で、試験治療の中止につながった。
[0109]臨床上重要な有害事象は、解析のために予め指定され、全身性アレルギー反応(アナフィラキシーを含む)、救急薬としてのエピネフリンの使用、及び好酸球性食道炎(EoE)を含む試験中止につながる慢性/再発性のGI有害事象などが含まれた。対照集団に関する臨床上重要な有害事象の概要を、下表10に要約する。臨床上重要な有害事象を経験した患者の割合は、プラセボで治療された患者よりも、AR101で治療された患者の方が高かった。
[0110]対照集団では、初期用量漸増中と用量増加中とを合せて、AR101群において67名の患者で81例の全身性アレルギー反応が報告され(9.4%)、プラセボ群の11名の患者では11例が報告され(3.8%)、1日300mgの維持期間中には、AR101群において27名の患者で33例の全身性アレルギー反応が報告され(8.7%)、プラセボ群では2名の患者で2例が報告された(1.7%)。曝露調整の後、全身性アレルギー反応の頻度は、AR101治療群では初期用量漸増中と用量増加中を合せて患者1名1年当たり0.28例であり、1日300mgの維持投与中は患者1名1年当たり0.22例であった。
[0111]812名の患者の統合集団において、186例の全身性アレルギー反応の事象が127名の患者で報告された。ほとんどの全身性のアレルギー反応の重症度は、軽度又は中等度であった。統合集団の全身性アレルギー反応を、下表11に要約する。全身性アレルギー反応事象の解析には、いずれかの試験のDBPCFC中に発生する事象は含まれない。
[0112]曝露調整したとき、全身性アレルギー反応の事象発生率は、下表12に要約されるように、初期用量漸増期後に減少し、その後治療1年目にわたって比較的一定を保った(PYE、患者1名1年当たりの曝露量;IDE、初期用量漸増)。全身性アレルギー反応の事象発生率は、初期用量漸増中は患者1名1年当たり1.14例、用量増加中は0.25例、及び1日300mgの維持投与中は0.20例であった。同様に、全身性アレルギー反応に関連するエピネフリンの使用は、初期用量漸増後に減少し、その後比較的一定を保った。
[0113]治療持続時間が長くなると、脱感作の増加及び免疫調節の継続により、全身性アレルギー反応の頻度は低下すると予想される。
[0114]統合集団では、下表13に要約されるように、アナフィラキシーは次の10名の患者で報告された:用量増加中に4名の患者、及び1日300mgの維持投与中に6名(14~26週目に1名、17~52週目に5名)の患者。
[0115]AR101の臨床試験中に報告された全身性アレルギー反応を更に理解するために、関連する外因性因子(補因子)の決定に取り組んだ。最も完全かつ信頼性の高いデータは、対照集団を構成した完了した試験ARC003及びARC007のものが入手可能である。ARC003及びARC007のAR101群で、4~17歳の89名の患者において、117例の全身性アレルギー反応があった。試験ARC003及びARC007の最終的な臨床試験報告書において提出された患者の叙述をレビューすることによって、アナフィラキシーを含む全身性アレルギー反応における補助因子の寄与を評価した。
[0116]4~17歳の患者において、任意の重症度又はトリガー(試験製品、食物アレルゲン、又は他のアレルゲン)の全身性アレルギー反応が、AR101群では89名の患者で合計117例(12.6%)報告され、プラセボ群では13名の患者で13例(4.5%)報告された。これらのうち、合計57名のAR101治療患者(64.0%)及び3名のプラセボ治療患者(23.1%)は、1つ以上の寄与因子を有した。全体として、いずれかの治療群において患者の少なくとも10%の全身性アレルギー反応に寄与する補助因子は、運動(AR101 40.4%、プラセボ7.7%)、熱いお湯への曝露(AR101 13.5%、プラセボ0%)、併発性疾患(AR101 12.4%、プラセボ0%)、空腹(AR101 11.2%、プラセボ0%)、及び治験用生成物の調製に使用される食品マトリックス、ストレス等に関係する他の理由(AR101 14.6%、プラセボ7.7%)であった。全AR101治療患者の2.2%~5.6%で報告されたその他の要因には、月経、睡眠不足、NSAID使用、及びコントロール不良喘息が含まれた。
[0117]いくつかのベースライン因子は、アナフィラキシーの既往歴、欧州地域、高年齢の小児群(12~17歳)、及びベースラインピーナツ特異的IgE値≧70kU/Lを含む、全身性アレルギー反応のオッズ増加(統合集団のオッズ比1.74~1.91)と関連性があった。統合集団におけるベースライン特性別の任意の全身性アレルギー反応の確率の解析を図2に示す。アナフィラキシーの既往症(あり/なし、オッズ比1.74;95%CI:1.12~2.71)、地域(欧州/北米、オッズ比1.80;95%CI:1.06~3.06)、年齢群(12~17/4~11、オッズ比1.91;95%CI:1.30~2.80)、及びピーナツ特異的IgE(≧70/<70kU/L、オッズ比1.74、95%CI:1.17~2.61)は、オッズ比1を包含しない(上回る)95%CIを有した。
[0118]対照集団では、全身性アレルギー反応に関連する人口統計学的臨床特性及びベースライン臨床特性を、以前の一連の患者結果から解析した。解析時点で、AR101治療を受けた被験者の12.4%(88/709)に対してプラセボ治療を受けた被験者の4.5%(13/292)が、任意の重症度の全身性アレルギー反応を報告した。一変量及び多変量ロジスティック回帰分析を実行し、治療群(AR101、プラセボ)をコントロールし、次のベースライン変数を含む、任意の重症度の全身性アレルギー反応のリスク因子を評価した:性別;年齢;人種;地域(欧州/北米);ピーナツ関連アナフィラキシー、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息、及び複数の食物アレルギーの既往歴;ピーナツ特異的IgE(psIgE);皮膚プリックテスト(SPT)膨疹径。各変量について、対照を階層化し、オッズ比(OR;95%信頼区間)を計算した。全身性アレルギー反応を経験する可能性を高めた因子としては、アナフィラキシーの既往歴(あり/なし;2.18、95%信頼区間(CI):1.31~3.63);欧州地域(欧州/北米;2.12、95%CI:1.19~3.77);年齢群(12~17歳/4~11歳;2.08、95%CI:1.37~3.16);及びベースラインピーナツ特異的IgE群値(≧70/<70kU/L;1.70、95%CI:1.09~2.63)が挙げられる。他の変数の95%CIはOR=1.00を包含し、全身性アレルギー反応のリスクに差がないことを示唆している。同じ結果が、多変量解析において観察された。
[0119]ピーナツ皮膚プリックテスト膨疹径の中央値及び入口におけるピーナツ特異的IgE(psIgE)を用い、対照集団のARC003部分のAR101で治療した4~17歳の患者を、2つのコホート(中央値より上及び下)に分類した。DBPCFCの出口において用量制限症状を伴わずに300mg、600mg、又は1000mgのピーナツタンパク質に耐容した患者の割合(治療差、95%CI)を、中央値カットポイントに基づいて比較した。DBPCFCの出口を完了した治療意図集団(AR101 n=372、プラセボn=124)では、67.2%対4.0%が、DBPCFCの出口において用量制限症状を伴わずに600mgに耐容した。DBPCFCの出口において600mgのピーナツタンパク質に耐容する能力(AR101対プラセボ)は、下表14に要約するように、ベースラインSPT膨疹径中央値カットポイント(11mm;Q1、Q3:9.0、15.0)に関係なく、全集団でほぼ同じであった。同様に、中央値より上又は下のベースラインpsIgE値(70.0kU/L;Q1、Q3:19.70、202.00)は、DBPCFCの出口における600mgのピーナツタンパク質への耐容性を予測しなかった。更に、DBPCFCの出口において300mg又は1000mgのピーナツタンパク質に耐容する能力は、ベースラインSPT膨疹径又はpsIgEによって予測されなかった。

Claims (8)

  1. 対象における全身性アレルギー応答のリスクを評価する方法における使用のためのアレルゲン性ピーナツ組成物であって、
    前記対象が、ピーナツタンパク質を含む前記アレルゲン性ピーナツ組成物の、一日あたり3mg~300mgのピーナツタンパク質の用量を含む用量増加期間と、一日あたり300mgのピーナツタンパク質の維持用量を含む維持期間と、を含む経口免疫療法スケジュールに従った対象への投与を含む、経口免疫療法によるピーナツアレルギー治療を受けており、
    前記リスクを評価する方法が、
    前記維持期間中に前記対象のピーナツ特異的IgE値を取得する工程と;
    前記取得したピーナツ特異的IgE値に基づいて、前記対象による全身性アレルギー性応答のリスクを評価する工程であって、ピーナツ特異的IgE値が70kU/Lの閾値を上回るものであると、全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する、工程と、を含む、組成物。
  2. 前記ピーナツ特異的IgE値が取得され、前記全身性アレルギー応答のリスクが評価されるとき、前記対象が、
    1000mg以上の用量のピーナツタンパク質に耐容する;及び/又は
    2043mg以上のピーナツタンパク質の累積用量に耐容する、
    請求項1に記載の組成物。
  3. 前記ピーナツ特異的IgE値が、前記維持期間の開始から、6カ月未満;3カ月~6カ月未満;及び/又は3カ月の前記対象から取得される、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記ピーナツ特異的IgE値を取得する工程が、前記ピーナツ特異的IgE値を測定することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 前記リスクを評価する方法において、
    (i)前記対象の年齢が取得され、全身性アレルギー応答のリスクの評価が、前記対象の年齢に更に基づくものであり、12歳以上の年齢が、4歳~11歳の年齢と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する;
    (ii)前記対象の年齢が取得され、全身性アレルギー応答のリスクの評価が、前記対象の年齢に更に基づくものであり、12歳~17歳の年齢が、4歳~11歳の年齢と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する;
    (iii)前記対象の性別が取得され、全身性アレルギー応答のリスクの評価が、前記対象の性別に更に基づくものであり、女性である前記対象が、男性である前記対象と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する;
    (iv)前記対象の性別及び年齢が取得され、全身性アレルギー応答のリスクの評価が、前記対象の性別及び年齢に更に基づくものであり、12歳以上の女性である前記対象が、12歳以上の女性ではない前記対象と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する;又は
    (v)前記対象の性別及び年齢が取得され、全身性アレルギー応答のリスクの評価が、前記対象の性別及び年齢に更に基づくものであり、12歳~17歳の女性である前記対象が、12~17歳の女性ではない前記対象と比較して全身性アレルギー応答のリスクが高いことを意味する、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 前記対象が、4歳以上であり、又は4歳~18歳未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 前記対象の全身性アレルギー応答のリスクが高い場合に、前記対象が、全身性アレルギー応答のモニタリングを強化される、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 前記用量増加期間が、20週間~44週間の長さである;及び/又は
    前記経口免疫療法が、初期漸増期間を更に含む、
    請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
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