例えば、符号化装置は、画像のブロックの符号化において、ブロックに対して直交変換を適用することによって、ブロックを圧縮しやすいデータに変換することができる場合がある。一方で、符号化装置は、画像のブロックの符号化において、ブロックに対して直交変換を適用しないことによって、処理遅延を削減することができる場合がある。
また、直交変換が適用されたブロックの特性と、直交変換が適用されなかったブロックの特性とは互いに異なる。直交変換が適用されたブロックに対して用いられる符号化方式と、直交変換が適用されなかったブロックに対して用いられる符号化方式とは、互いに異なっていてもよい。
しかしながら、直交変換が適用されたブロックに対して不適切な符号化方式が用いられた場合、又は、直交変換が適用されなかったブロックに対して不適切な符号化方式が用いられた場合、符号量の増加、又は、処理遅延の増加等が発生する可能性がある。また、直交変換が適用されたブロックに対して用いられる符号化方式と、直交変換が適用されなかったブロックに対して用いられる符号化方式とが大きく乖離している場合、処理が複雑化し、回路規模が増大する可能性がある。
そこで、例えば、本開示の一態様に係る符号化装置は、回路と、前記回路に接続されたメモリとを備え、前記回路は、動作において、画像のブロックを符号化し、前記ブロックの符号化では、前記ブロックに対して直交変換が適用されない場合において、前記ブロックに含まれるサブブロックの複数の係数に対して、それぞれが係数単位で繰り返される処理である複数のループ処理を行うことにより、前記複数の係数を符号化し、前記複数のループ処理のうちの1つのループ処理では、前記複数の係数のそれぞれについて、当該係数の複数の属性をそれぞれ示す複数の係数情報フラグであって、当該係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグと、当該係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグとを含む複数の係数情報フラグを符号化する。
これにより、直交変換が適用されない場合において、係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグの処理と、係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグの処理とが1つのループ処理で行われ、ループ処理の数が削減される可能性がある。そして、直交変換の適用があるブロックに対するループ処理の数が少ない場合、直交変換の適用があるブロックに用いられる符号化方式と、直交変換の適用がないブロックに用いられる符号化方式との差が小さくなり、回路規模が小さくなる可能性がある。
また、例えば、前記複数の係数情報フラグは、さらに、前記係数の値が7よりも大きいか否かを示す係数情報フラグと、前記係数の値が9よりも大きいか否かを示す係数情報フラグとを含む。
これにより、係数の値が3よりも大きいか否か、係数の値が5よりも大きいか否か、係数の値が7よりも大きいか否か、及び、係数の値が9よりも大きいか否かの4つの係数情報フラグが1つのループ処理で処理され、ループ処理の数が削減される可能性がある。そして、直交変換の適用があるブロックに用いられる符号化方式と、直交変換の適用がないブロックに用いられる符号化方式との差が小さくなり、回路規模が小さくなる可能性がある。
また、例えば、本開示の一態様に係る復号装置は、回路と、前記回路に接続されたメモリとを備え、前記回路は、動作において、画像のブロックを復号し、前記ブロックの復号では、前記ブロックに対して逆直交変換が適用されない場合において、前記ブロックに含まれるサブブロックの複数の係数に対して、それぞれが係数単位で繰り返される処理である複数のループ処理を行うことにより、前記複数の係数を復号し、前記複数のループ処理のうちの1つのループ処理では、前記複数の係数のそれぞれについて、当該係数の複数の属性をそれぞれ示す複数の係数情報フラグであって、当該係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグと、当該係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグとを含む複数の係数情報フラグを復号する。
これにより、逆直交変換が適用されない場合において、係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグの処理と、係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグの処理とが1つのループ処理で行われ、ループ処理の数が削減される可能性がある。そして、逆直交変換の適用があるブロックに対するループ処理の数が少ない場合、逆直交変換の適用があるブロックに用いられる復号方式と、逆直交変換の適用がないブロックに用いられる復号方式との差が小さくなり、回路規模が小さくなる可能性がある。
また、例えば、前記複数の係数情報フラグは、前記係数の値が7よりも大きいか否かを示す係数情報フラグと、前記係数の値が9よりも大きいか否かを示す係数情報フラグとを含む。
これにより、係数の値が3よりも大きいか否か、係数の値が5よりも大きいか否か、係数の値が7よりも大きいか否か、及び、係数の値が9よりも大きいか否かの4つの係数情報フラグが1つのループ処理で処理され、ループ処理の数が削減される可能性がある。そして、逆直交変換の適用があるブロックに用いられる復号方式と、逆直交変換の適用がないブロックに用いられる復号方式との差が小さくなり、回路規模が小さくなる可能性がある。
また、例えば、本開示の一態様に係る符号化方法は、画像のブロックを符号化し、前記ブロックの符号化では、前記ブロックに対して直交変換が適用されない場合において、前記ブロックに含まれるサブブロックの複数の係数に対して、それぞれが係数単位で繰り返される処理である複数のループ処理を行うことにより、前記複数の係数を符号化し、前記複数のループ処理のうちの1つのループ処理では、前記複数の係数のそれぞれについて、当該係数の複数の属性をそれぞれ示す複数の係数情報フラグであって、当該係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグと、当該係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグとを含む複数の係数情報フラグを符号化する。
これにより、直交変換が適用されない場合において、係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグの処理と、係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグの処理とが1つのループ処理で行われ、ループ処理の数が削減される可能性がある。そして、直交変換の適用があるブロックに対するループ処理の数が少ない場合、直交変換の適用があるブロックに用いられる符号化方式と、直交変換の適用がないブロックに用いられる符号化方式との差が小さくなり、回路規模が小さくなる可能性がある。
また、例えば、本開示の一態様に係る復号方法は、画像のブロックを復号し、前記ブロックの復号では、前記ブロックに対して逆直交変換が適用されない場合において、前記ブロックに含まれるサブブロックの複数の係数に対して、それぞれが係数単位で繰り返される処理である複数のループ処理を行うことにより、前記複数の係数を復号し、前記複数のループ処理のうちの1つのループ処理では、前記複数の係数のそれぞれについて、当該係数の複数の属性をそれぞれ示す複数の係数情報フラグであって、当該係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグと、当該係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグとを含む複数の係数情報フラグを復号する。
これにより、逆直交変換が適用されない場合において、係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグの処理と、係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグの処理とが1つのループ処理で行われ、ループ処理の数が削減される可能性がある。そして、逆直交変換の適用があるブロックに対するループ処理の数が少ない場合、逆直交変換の適用があるブロックに用いられる復号方式と、逆直交変換の適用がないブロックに用いられる復号方式との差が小さくなり、回路規模が小さくなる可能性がある。
また、例えば、本開示の一態様に係る符号化装置は、分割部と、イントラ予測部と、インター予測部と、予測制御部と、変換部と、量子化部と、エントロピー符号化部と、ループフィルタ部とを備える。
前記分割部は、前記動画像を構成する符号化対象ピクチャを複数のブロックに分割する。前記イントラ予測部は、前記符号化対象ピクチャにおける参照画像を用いて前記符号化対象ピクチャにおける符号化対象ブロックの前記予測画像を生成するイントラ予測を行う。前記インター予測部は、前記符号化対象ピクチャとは異なる参照ピクチャにおける参照画像を用いて前記符号化対象ブロックの前記予測画像を生成するインター予測を行う。
前記予測制御部は、前記イントラ予測部が行うイントラ予測、及び、前記インター予測部が行うインター予測を制御する。前記変換部は、前記イントラ予測部又は前記インター予測部で生成された前記予測画像と、前記符号化対象ブロックの画像との間における予測残差信号を変換して、前記符号化対象ブロックの変換係数信号を生成する。前記量子化部は、前記変換係数信号を量子化する。前記エントロピー符号化部は、量子化済みの前記変換係数信号を符号化する。前記ループフィルタ部は、前記符号化対象ブロックにフィルタを適用する。
また、例えば、前記エントロピー符号化部は、動作において、画像のブロックを符号化し、前記ブロックの符号化では、前記ブロックに対して直交変換が適用されない場合において、前記ブロックに含まれるサブブロックの複数の係数に対して、それぞれが係数単位で繰り返される処理である複数のループ処理を行うことにより、前記複数の係数を符号化し、前記複数のループ処理のうちの1つのループ処理では、前記複数の係数のそれぞれについて、当該係数の複数の属性をそれぞれ示す複数の係数情報フラグであって、当該係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグと、当該係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグとを含む複数の係数情報フラグを符号化する。
また、例えば、本開示の一態様に係る復号装置は、予測画像を用いて動画像を復号する復号装置であって、エントロピー復号部と、逆量子化部と、逆変換部と、イントラ予測部と、インター予測部と、予測制御部と、加算部(再構成部)と、ループフィルタ部とを備える。
前記エントロピー復号部は、前記動画像を構成する復号対象ピクチャにおける復号対象ブロックの量子化済みの変換係数信号を復号する。前記逆量子化部は、量子化済みの前記変換係数信号を逆量子化する。前記逆変換部は、前記変換係数信号を逆変換して、前記復号対象ブロックの予測残差信号を取得する。
前記イントラ予測部は、前記復号対象ピクチャにおける参照画像を用いて前記復号対象ブロックの前記予測画像を生成するイントラ予測を行う。前記インター予測部は、前記復号対象ピクチャとは異なる参照ピクチャにおける参照画像を用いて前記復号対象ブロックの前記予測画像を生成するインター予測を行う。前記予測制御部は、前記イントラ予測部が行うイントラ予測、及び、前記インター予測部が行うインター予測を制御する。
前記加算部は、前記イントラ予測部又は前記インター予測部で生成された前記予測画像と、前記予測残差信号とを足し合わせて、前記復号対象ブロックの画像を再構成する。前記ループフィルタ部は、前記復号対象ブロックにフィルタを適用する。
また、例えば、前記エントロピー復号部は、動作において、画像のブロックを復号し、前記ブロックの復号では、前記ブロックに対して逆直交変換が適用されない場合において、前記ブロックに含まれるサブブロックの複数の係数に対して、それぞれが係数単位で繰り返される処理である複数のループ処理を行うことにより、前記複数の係数を復号し、前記複数のループ処理のうちの1つのループ処理では、前記複数の係数のそれぞれについて、当該係数の複数の属性をそれぞれ示す複数の係数情報フラグであって、当該係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグと、当該係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグとを含む複数の係数情報フラグを復号する。
さらに、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、又は、コンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの非一時的な記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、及び、記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
以下、実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの関係及び順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。
以下では、符号化装置および復号化装置の実施の形態を説明する。実施の形態は、本開示の各態様で説明する処理および/または構成を適用可能な符号化装置および復号化装置の例である。処理および/または構成は、実施の形態とは異なる符号化装置および復号化装置においても実施可能である。例えば、実施の形態に対して適用される処理および/または構成に関して、例えば以下のいずれかを実施してもよい。
(1)本開示の各態様で説明する実施の形態の符号化装置または復号装置の複数の構成要素のうちいずれかは、本開示の各態様のいずれかで説明する他の構成要素に置き換えまたは組み合わせられてもよい。
(2)実施の形態の符号化装置または復号装置において、当該符号化装置または復号装置の複数の構成要素のうち一部の構成要素によって行われる機能または処理に、機能または処理の追加、置き換え、削除などの任意の変更がなされてもよい。例えば、いずれかの機能または処理は、本開示の各態様のいずれかで説明する他の機能または処理に、置き換えまたは組み合わせられてもよい。
(3)実施の形態の符号化装置または復号装置が実施する方法において、当該方法に含まれる複数の処理のうちの一部の処理について、追加、置き換えおよび削除などの任意の変更がなされてもよい。例えば、方法におけるいずれかの処理は、本開示の各態様のいずれかで説明する他の処理に、置き換えまたは組み合わせられてもよい。
(4)実施の形態の符号化装置または復号装置を構成する複数の構成要素のうちの一部の構成要素は、本開示の各態様のいずれかで説明する構成要素と組み合わせられてもよいし、本開示の各態様のいずれかで説明する機能の一部を備える構成要素と組み合わせられてもよいし、本開示の各態様で説明する構成要素が実施する処理の一部を実施する構成要素と組み合わせられてもよい。
(5)実施の形態の符号化装置または復号装置の機能の一部を備える構成要素、または、実施の形態の符号化装置または復号装置の処理の一部を実施する構成要素は、本開示の各態様いずれかで説明する構成要素と、本開示の各態様でいずれかで説明する機能の一部を備える構成要素と、または、本開示の各態様のいずれかで説明する処理の一部を実施する構成要素と組み合わせまたは置き換えられてもよい。
(6)実施の形態の符号化装置または復号装置が実施する方法において、当該方法に含まれる複数の処理のいずれかは、本開示の各態様のいずれかで説明する処理に、または、同様のいずれかの処理に、置き換えまたは組み合わせられてもよい。
(7)実施の形態の符号化装置または復号装置が実施する方法に含まれる複数の処理のうちの一部の処理は、本開示の各態様のいずれかで説明する処理と組み合わせられてもよい。
(8)本開示の各態様で説明する処理および/または構成の実施の仕方は、実施の形態の符号化装置または復号装置に限定されるものではない。例えば、処理および/または構成は、実施の形態において開示する動画像符号化または動画像復号とは異なる目的で利用される装置において実施されてもよい。
[符号化装置]
まず、実施の形態に係る符号化装置を説明する。図1は、実施の形態に係る符号化装置100の機能構成を示すブロック図である。符号化装置100は、動画像をブロック単位で符号化する動画像符号化装置である。
図1に示すように、符号化装置100は、画像をブロック単位で符号化する装置であって、分割部102と、減算部104と、変換部106と、量子化部108と、エントロピー符号化部110と、逆量子化部112と、逆変換部114と、加算部116と、ブロックメモリ118と、ループフィルタ部120と、フレームメモリ122と、イントラ予測部124と、インター予測部126と、予測制御部128と、を備える。
符号化装置100は、例えば、汎用プロセッサ及びメモリにより実現される。この場合、メモリに格納されたソフトウェアプログラムがプロセッサにより実行されたときに、プロセッサは、分割部102、減算部104、変換部106、量子化部108、エントロピー符号化部110、逆量子化部112、逆変換部114、加算部116、ループフィルタ部120、イントラ予測部124、インター予測部126及び予測制御部128として機能する。また、符号化装置100は、分割部102、減算部104、変換部106、量子化部108、エントロピー符号化部110、逆量子化部112、逆変換部114、加算部116、ループフィルタ部120、イントラ予測部124、インター予測部126及び予測制御部128に対応する専用の1以上の電子回路として実現されてもよい。
以下に、符号化装置100の全体的な処理の流れを説明した後に、符号化装置100に含まれる各構成要素について説明する。
[符号化処理の全体フロー]
図2は、符号化装置100による全体的な符号化処理の一例を示すフローチャートである。
まず、符号化装置100の分割部102は、動画像である入力画像に含まれる各ピクチャを複数の固定サイズのブロック(例えば、128×128画素)に分割する(ステップSa_1)。そして、分割部102は、その固定サイズのブロックに対して分割パターン(ブロック形状ともいう)を選択する(ステップSa_2)。つまり、分割部102は、固定サイズのブロックを、その選択された分割パターンを構成する複数のブロックに、さらに分割する。そして、符号化装置100は、その複数のブロックのそれぞれについて、そのブロック(すなわち符号化対象ブロック)に対してステップSa_3~Sa_9の処理を行う。
つまり、イントラ予測部124、インター予測部126および予測制御部128の全てまたは一部からなる予測処理部は、符号化対象ブロック(カレントブロックともいう)の予測信号(予測ブロックともいう)を生成する(ステップSa_3)。
次に、減算部104は、符号化対象ブロックと予測ブロックとの差分を予測残差(差分ブロックともいう)として生成する(ステップSa_4)。
次に、変換部106および量子化部108は、その差分ブロックに対して変換および量子化を行うことによって、複数の量子化係数を生成する(ステップSa_5)。なお、複数の量子化係数からなるブロックを係数ブロックともいう。
次に、エントロピー符号化部110は、その係数ブロックと、予測信号の生成に関する予測パラメータとに対して符号化(具体的にはエントロピー符号化)を行うことによって、符号化信号を生成する(ステップSa_6)。なお、符号化信号は、符号化ビットストリーム、圧縮ビットストリーム、またはストリームともいう。
次に、逆量子化部112および逆変換部114は、係数ブロックに対して逆量子化および逆変換を行うことによって、複数の予測残差(すなわち差分ブロック)を復元する(ステップSa_7)。
次に、加算部116は、その復元された差分ブロックに予測ブロックを加算することによってカレントブロックを再構成画像(再構成ブロックまたは復号画像ブロックともいう)に再構成する(ステップSa_8)。これにより、再構成画像が生成される。
この再構成画像が生成されると、ループフィルタ部120は、その再構成画像に対してフィルタリングを必要に応じて行う(ステップSa_9)。
そして、符号化装置100は、ピクチャ全体の符号化が完了したか否かを判定し(ステップSa_10)、完了していないと判定する場合(ステップSa_10のNo)、ステップSa_2からの処理を繰り返し実行する。
なお、上述の例では、符号化装置100は、固定サイズのブロックに対して1つの分割パターンを選択し、その分割パターンにしたがって各ブロックの符号化を行うが、複数の分割パターンのそれぞれにしたがって各ブロックの符号化を行ってもよい。この場合には、符号化装置100は、複数の分割パターンのそれぞれに対するコストを評価し、例えば最も小さいコストの分割パターンにしたがった符号化によって得られる符号化信号を、出力される符号化信号として選択してもよい。
図示されているように、これらのステップSa_1~Sa_10の処理は、符号化装置100によってシーケンシャルに行われる。あるいは、それらの処理のうちの一部の複数の処理が並列に行われてもよく、それらの処理の順番の入れ替え等が行われてもよい。
[分割部]
分割部102は、入力動画像に含まれる各ピクチャを複数のブロックに分割し、各ブロックを減算部104に出力する。例えば、分割部102は、まず、ピクチャを固定サイズ(例えば128x128)のブロックに分割する。他の固定ブロックサイズが採用されてもよい。この固定サイズのブロックは、符号化ツリーユニット(CTU)と呼ばれることがある。そして、分割部102は、例えば再帰的な四分木(quadtree)及び/又は二分木(binary tree)ブロック分割に基づいて、固定サイズのブロックの各々を可変サイズ(例えば64x64以下)のブロックに分割する。すなわち、分割部102は、分割パターンを選択する。この可変サイズのブロックは、符号化ユニット(CU)、予測ユニット(PU)あるいは変換ユニット(TU)と呼ばれることがある。なお、種々の処理例では、CU、PU及びTUは区別される必要はなく、ピクチャ内の一部又はすべてのブロックがCU、PU、TUの処理単位となってもよい。
図3は、実施の形態におけるブロック分割の一例を示す概念図である。図3において、実線は四分木ブロック分割によるブロック境界を表し、破線は二分木ブロック分割によるブロック境界を表す。
ここでは、ブロック10は、128x128画素の正方形ブロック(128x128ブロック)である。この128x128ブロック10は、まず、4つの正方形の64x64ブロックに分割される(四分木ブロック分割)。
左上の64x64ブロックは、さらに2つの矩形の32x64ブロックに垂直に分割され、左の32x64ブロックはさらに2つの矩形の16x64ブロックに垂直に分割される(二分木ブロック分割)。その結果、左上の64x64ブロックは、2つの16x64ブロック11、12と、32x64ブロック13とに分割される。
右上の64x64ブロックは、2つの矩形の64x32ブロック14、15に水平に分割される(二分木ブロック分割)。
左下の64x64ブロックは、4つの正方形の32x32ブロックに分割される(四分木ブロック分割)。4つの32x32ブロックのうち左上のブロック及び右下のブロックはさらに分割される。左上の32x32ブロックは、2つの矩形の16x32ブロックに垂直に分割され、右の16x32ブロックはさらに2つの16x16ブロックに水平に分割される(二分木ブロック分割)。右下の32x32ブロックは、2つの32x16ブロックに水平に分割される(二分木ブロック分割)。その結果、左下の64x64ブロックは、16x32ブロック16と、2つの16x16ブロック17、18と、2つの32x32ブロック19、20と、2つの32x16ブロック21、22とに分割される。
右下の64x64ブロック23は分割されない。
以上のように、図3では、ブロック10は、再帰的な四分木及び二分木ブロック分割に基づいて、13個の可変サイズのブロック11~23に分割される。このような分割は、QTBT(quad-tree plus binary tree)分割と呼ばれることがある。
なお、図3では、1つのブロックが4つ又は2つのブロックに分割されていたが(四分木又は二分木ブロック分割)、分割はこれらに限定されない。例えば、1つのブロックが3つのブロックに分割されてもよい(三分木ブロック分割)。このような三分木ブロック分割を含む分割は、MBT(multi type tree)分割と呼ばれることがある。
[ピクチャの構成 スライス/タイル]
ピクチャを並列にデコードするために、ピクチャはスライス単位またはタイル単位で構成される場合がある。スライス単位またはタイル単位からなるピクチャは、分割部102によって構成されてもよい。
スライスは、ピクチャを構成する基本的な符号化の単位である。ピクチャは、例えば1つ以上のスライスから構成される。また、スライスは、1つ以上の連続するCTU(Coding Tree Unit)からなる。
図4Aは、スライスの構成の一例を示す概念図である。例えば、ピクチャは、11×8個のCTUを含み、かつ、4つのスライス(スライス1-4)に分割される。スライス1は、16個のCTUからなり、スライス2は、21個のCTUからなり、スライス3は、29個のCTUからなり、スライス4は、22個のCTUからなる。ここで、ピクチャ内の各CTUは、いずれかのスライスに属する。スライスの形状は、ピクチャを水平方向に分割した形になる。スライスの境界は、画面端である必要はなく、画面内のCTUの境界のうちどこであってもよい。スライスの中のCTUの処理順(符号化順または復号順)は、例えばラスタ・スキャン順である。また、スライスは、ヘッダ情報と符号化データを含む。ヘッダ情報には、スライスの先頭のCTUアドレス、スライス・タイプなどそのスライスの特徴が記述されてもよい。
タイルは、ピクチャを構成する矩形領域の単位である。各タイルにはTileIdと呼ばれる番号がラスタ・スキャン順に割り振られてもよい。
図4Bは、タイルの構成の一例を示す概念図である。例えば、ピクチャは、11×8個のCTUを含み、かつ、4つの矩形領域のタイル(タイル1-4)に分割される。タイルが使用される場合、タイルが使用されない場合と比べてCTUの処理順が変更される。タイルが使用されない場合、ピクチャ内の複数のCTUはラスタ・スキャン順に処理される。タイルが使用される場合には、複数のタイルのそれぞれにおいて、少なくとも1つのCTUがラスタ・スキャン順に処理される。例えば、図4Bに示すように、タイル1に含まれる複数のCTUの処理順は、タイル1の1行目左端からタイル1の1行目右端まで向かい、次に、タイル1の2行目左端からタイル1の2行目右端まで向かう順である。
なお、1つのタイルは、1つ以上のスライスを含む場合があり、1つのスライスは、1つ以上のタイルを含む場合がある。
[減算部]
減算部104は、分割部102から入力され、分割部102によって分割されたブロック単位で、原信号(原サンプル)から予測信号(以下に示す予測制御部128から入力される予測サンプル)を減算する。つまり、減算部104は、符号化対象ブロック(以下、カレントブロックという)の予測誤差(残差ともいう)を算出する。そして、減算部104は、算出された予測誤差(残差)を変換部106に出力する。
原信号は、符号化装置100の入力信号であり、動画像を構成する各ピクチャの画像を表す信号(例えば輝度(luma)信号及び2つの色差(chroma)信号)である。以下において、画像を表す信号をサンプルということもある。
[変換部]
変換部106は、空間領域の予測誤差を周波数領域の変換係数に変換し、変換係数を量子化部108に出力する。具体的には、変換部106は、例えば空間領域の予測誤差に対して所定の離散コサイン変換(DCT)又は離散サイン変換(DST)を行う。所定のDCT又はDSTは、予め定められていてもよい。
なお、変換部106は、複数の変換タイプの中から適応的に変換タイプを選択し、選択された変換タイプに対応する変換基底関数(transform basis function)を用いて、予測誤差を変換係数に変換してもよい。このような変換は、EMT(explicit multiple core transform)又はAMT(adaptive multiple transform)と呼ばれることがある。
複数の変換タイプは、例えば、DCT-II、DCT-V、DCT-VIII、DST-I及びDST-VIIを含む。図5Aは、変換タイプ例に対応する変換基底関数を示す表である。図5AにおいてNは入力画素の数を示す。これらの複数の変換タイプの中からの変換タイプの選択は、例えば、予測の種類(イントラ予測及びインター予測)に依存してもよいし、イントラ予測モードに依存してもよい。
このようなEMT又はAMTを適用するか否かを示す情報(例えばEMTフラグまたはAMTフラグと呼ばれる)及び選択された変換タイプを示す情報は、通常、CUレベルで信号化される。なお、これらの情報の信号化は、CUレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、ビットシーケンスレベル、ピクチャレベル、スライスレベル、タイルレベル又はCTUレベル)であってもよい。
また、変換部106は、変換係数(変換結果)を再変換してもよい。このような再変換は、AST(adaptive secondary transform)又はNSST(non-separable secondary transform)と呼ばれることがある。例えば、変換部106は、イントラ予測誤差に対応する変換係数のブロックに含まれるサブブロック(例えば4x4サブブロック)ごとに再変換を行う。NSSTを適用するか否かを示す情報及びNSSTに用いられる変換行列に関する情報は、通常、CUレベルで信号化される。なお、これらの情報の信号化は、CUレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、ピクチャレベル、スライスレベル、タイルレベル又はCTUレベル)であってもよい。
変換部106には、Separableな変換と、Non-Separableな変換とが適用されてもよい。Separableな変換とは、入力の次元の数だけ方向ごとに分離して複数回変換を行う方式であり、Non-Separableな変換とは、入力が多次元であった際に2つ以上の次元をまとめて1次元とみなして、まとめて変換を行う方式である。
例えば、Non-Separableな変換の一例として、入力が4×4のブロックであった場合にはそれを16個の要素を持ったひとつの配列とみなし、その配列に対して16×16の変換行列で変換処理を行うようなものが挙げられる。
また、Non-Separableな変換のさらなる例では、4×4の入力ブロックを16個の要素を持ったひとつの配列とみなした後に、その配列に対してGivens回転を複数回行うような変換(Hypercube Givens Transform)が行われてもよい。
変換部106での変換では、CU内の領域に応じて周波数領域に変換する基底のタイプを切替えることもできる。一例として、SVT(Spatially Varying Transform)がある。SVTでは、図5Bに示すように、水平あるいは垂直方向にCUを2等分し、いずれか一方の領域のみ周波数領域への変換を行う。変換基底のタイプは領域毎に設定でき、例えば、DST7とDCT8が用いられる。本例ではCU内の2つの領域のうち、どちらか一方のみ変換を行い、もう一方は変換を行わないが、2つの領域共に変換してもよい。また、分割方法も2等分だけでなく、4等分、あるいは分割を示す情報を別途符号化してCU分割と同様にシグナリングするなど、より柔軟にすることもできる。なお、SVTは、SBT(Sub-block Transform)と呼ぶこともある。
[量子化部]
量子化部108は、変換部106から出力された変換係数を量子化する。具体的には、量子化部108は、カレントブロックの変換係数を所定の走査順序で走査し、走査された変換係数に対応する量子化パラメータ(QP)に基づいて当該変換係数を量子化する。そして、量子化部108は、カレントブロックの量子化された変換係数(以下、量子化係数という)をエントロピー符号化部110及び逆量子化部112に出力する。所定の走査順序は、予め定められていてもよい。
所定の走査順序は、変換係数の量子化/逆量子化のための順序である。例えば、所定の走査順序は、周波数の昇順(低周波から高周波の順)又は降順(高周波から低周波の順)で定義されてもよい。
量子化パラメータ(QP)とは、量子化ステップ(量子化幅)を定義するパラメータである。例えば、量子化パラメータの値が増加すれば量子化ステップも増加する。つまり、量子化パラメータの値が増加すれば量子化誤差が増大する。
また、量子化には、量子化マトリックスが使用される場合がある。例えば、4x4および8x8などの周波数変換サイズと、イントラ予測およびインター予測などの予測モードと、輝度および色差などの画素成分とに対応して数種類の量子化マトリックスが使われる場合がある。なお、量子化とは、所定の間隔でサンプリングした値を所定のレベルに対応づけてデジタル化することをいい、この技術分野では、丸め、ラウンディング、スケーリングといった他の表現を用いて参照されてもよいし、丸め、ラウンディング、スケーリングを採用してもよい。所定の間隔及びレベルは、予め定められていてもよい。
量子化マトリックスを使用する方法として、符号化装置側で直接設定された量子化マトリックスを使用する方法と、デフォルトの量子化マトリックス(デフォルトマトリックス)を使用する方法とがある。符号化装置側では、量子化マトリックスを直接設定することにより、画像の特徴に応じた量子化マトリックスを設定することができる。しかし、この場合、量子化マトリックスの符号化によって、符号量が増加するというデメリットがある。
一方、量子化マトリックスを使用せず、高域成分の係数も低域成分の係数も同じように量子化する方法もある。なお、この方法は、係数が全て同じ値である量子化マトリックス(フラットなマトリックス)を用いる方法に等しい。
量子化マトリックスは、例えば、SPS(シーケンスパラメータセット:Sequence Parameter Set)またはPPS(ピクチャパラメータセット:Picture Parameter Set)で指定されてもよい。SPSは、シーケンスに対して用いられるパラメータを含み、PPSは、ピクチャに対して用いられるパラメータを含む。SPSとPPSとは、単にパラメータセットと呼ばれる場合がある。
[エントロピー符号化部]
エントロピー符号化部110は、量子化部108から入力された量子化係数に基づいて符号化信号(符号化ビットストリーム)を生成する。具体的には、エントロピー符号化部110は、例えば、量子化係数を二値化し、二値信号を算術符号化し、圧縮されたビットストリームまたはシーケンスを出力する。
[逆量子化部]
逆量子化部112は、量子化部108から入力された量子化係数を逆量子化する。具体的には、逆量子化部112は、カレントブロックの量子化係数を所定の走査順序で逆量子化する。そして、逆量子化部112は、カレントブロックの逆量子化された変換係数を逆変換部114に出力する。所定の走査順序は、予め定められていてもよい。
[逆変換部]
逆変換部114は、逆量子化部112から入力された変換係数を逆変換することにより予測誤差(残差)を復元する。具体的には、逆変換部114は、変換係数に対して、変換部106による変換に対応する逆変換を行うことにより、カレントブロックの予測誤差を復元する。そして、逆変換部114は、復元された予測誤差を加算部116に出力する。
なお、復元された予測誤差は、通常、量子化により情報が失われているので、減算部104が算出した予測誤差と一致しない。すなわち、復元された予測誤差には、通常、量子化誤差が含まれている。
[加算部]
加算部116は、逆変換部114から入力された予測誤差と予測制御部128から入力された予測サンプルとを加算することによりカレントブロックを再構成する。そして、加算部116は、再構成されたブロックをブロックメモリ118及びループフィルタ部120に出力する。再構成ブロックは、ローカル復号ブロックと呼ばれることもある。
[ブロックメモリ]
ブロックメモリ118は、例えば、イントラ予測で参照されるブロックであって符号化対象ピクチャ(カレントピクチャという)内のブロックを格納するための記憶部である。具体的には、ブロックメモリ118は、加算部116から出力された再構成ブロックを格納する。
[フレームメモリ]
フレームメモリ122は、例えば、インター予測に用いられる参照ピクチャを格納するための記憶部であり、フレームバッファと呼ばれることもある。具体的には、フレームメモリ122は、ループフィルタ部120によってフィルタされた再構成ブロックを格納する。
[ループフィルタ部]
ループフィルタ部120は、加算部116によって再構成されたブロックにループフィルタを施し、フィルタされた再構成ブロックをフレームメモリ122に出力する。ループフィルタとは、符号化ループ内で用いられるフィルタ(インループフィルタ)であり、例えば、デブロッキング・フィルタ(DFまたはDBF)、サンプルアダプティブオフセット(SAO)及びアダプティブループフィルタ(ALF)などを含む。
ALFでは、符号化歪みを除去するための最小二乗誤差フィルタが適用され、例えばカレントブロック内の2x2サブブロックごとに、局所的な勾配(gradient)の方向及び活性度(activity)に基づいて複数のフィルタの中から選択された1つのフィルタが適用される。
具体的には、まず、サブブロック(例えば2x2サブブロック)が複数のクラス(例えば15又は25クラス)に分類される。サブブロックの分類は、勾配の方向及び活性度に基づいて行われる。例えば、勾配の方向値D(例えば0~2又は0~4)と勾配の活性値A(例えば0~4)とを用いて分類値C(例えばC=5D+A)が算出される。そして、分類値Cに基づいて、サブブロックが複数のクラスに分類される。
勾配の方向値Dは、例えば、複数の方向(例えば水平、垂直及び2つの対角方向)の勾配を比較することにより導出される。また、勾配の活性値Aは、例えば、複数の方向の勾配を加算し、加算結果を量子化することにより導出される。
このような分類の結果に基づいて、複数のフィルタの中からサブブロックのためのフィルタが決定される。
ALFで用いられるフィルタの形状としては例えば円対称形状が利用される。図6A~図6Cは、ALFで用いられるフィルタの形状の複数の例を示す図である。図6Aは、5x5ダイヤモンド形状フィルタを示し、図6Bは、7x7ダイヤモンド形状フィルタを示し、図6Cは、9x9ダイヤモンド形状フィルタを示す。フィルタの形状を示す情報は、通常、ピクチャレベルで信号化される。なお、フィルタの形状を示す情報の信号化は、ピクチャレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、スライスレベル、タイルレベル、CTUレベル又はCUレベル)であってもよい。
ALFのオン/オフは、例えば、ピクチャレベル又はCUレベルで決定されてもよい。例えば、輝度についてはCUレベルでALFを適用するか否かが決定されてもよく、色差についてはピクチャレベルでALFを適用するか否かが決定されてもよい。ALFのオン/オフを示す情報は、通常、ピクチャレベル又はCUレベルで信号化される。なお、ALFのオン/オフを示す情報の信号化は、ピクチャレベル又はCUレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、スライスレベル、タイルレベル又はCTUレベル)であってもよい。
選択可能な複数のフィルタ(例えば15又は25までのフィルタ)の係数セットは、通常、ピクチャレベルで信号化される。なお、係数セットの信号化は、ピクチャレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、スライスレベル、タイルレベル、CTUレベル、CUレベル又はサブブロックレベル)であってもよい。
[ループフィルタ部 > デブロッキング・フィルタ]
デブロッキング・フィルタでは、ループフィルタ部120は、再構成画像のブロック境界にフィルタ処理を行うことによって、そのブロック境界に生じる歪みを減少させる。
図7は、デブロッキング・フィルタとして機能するループフィルタ部120の詳細な構成の一例を示すブロック図である。
ループフィルタ部120は、境界判定部1201、フィルタ判定部1203と、フィルタ処理部1205と、処理判定部1208と、フィルタ特性決定部1207と、スイッチ1202、1204および1206とを備える。
境界判定部1201は、デブロッキング・フィルタ処理される画素(すなわち対象画素)がブロック境界付近に存在しているか否かを判定する。そして、境界判定部1201は、その判定結果をスイッチ1202および処理判定部1208に出力する。
スイッチ1202は、対象画素がブロック境界付近に存在していると境界判定部1201によって判定された場合には、フィルタ処理前の画像を、スイッチ1204に出力する。逆に、スイッチ1202は、境界判定部1201によって対象画素がブロック境界付近に存在していないと判定された場合には、フィルタ処理前の画像をスイッチ1206に出力する。
フィルタ判定部1203は、対象画素の周辺にある少なくとも1つの周辺画素の画素値に基づいて、対象画素に対してデブロッキング・フィルタ処理を行うか否かを判定する。そして、フィルタ判定部1203は、その判定結果をスイッチ1204および処理判定部1208に出力する。
スイッチ1204は、対象画素にデブロッキング・フィルタ処理を行うとフィルタ判定部1203によって判定された場合には、スイッチ1202を介して取得したフィルタ処理前の画像を、フィルタ処理部1205に出力する。逆に、スイッチ1204は、対象画素にデブロッキング・フィルタ処理を行わないとフィルタ判定部1203によって判定された場合には、スイッチ1202を介して取得したフィルタ処理前の画像をスイッチ1206に出力する。
フィルタ処理部1205は、スイッチ1202および1204を介してフィルタ処理前の画像を取得した場合には、フィルタ特性決定部1207によって決定されたフィルタ特性を有するデブロッキング・フィルタ処理を、対象画素に対して実行する。そして、フィルタ処理部1205は、そのフィルタ処理後の画素をスイッチ1206に出力する。
スイッチ1206は、処理判定部1208による制御に応じて、デブロッキング・フィルタ処理されていない画素と、フィルタ処理部1205によってデブロッキング・フィルタ処理された画素とを選択的に出力する。
処理判定部1208は、境界判定部1201およびフィルタ判定部1203のそれぞれの判定結果に基づいて、スイッチ1206を制御する。つまり、処理判定部1208は、対象画素がブロック境界付近に存在していると境界判定部1201によって判定され、かつ、対象画素にデブロッキング・フィルタ処理を行うとフィルタ判定部1203によって判定された場合には、デブロッキング・フィルタ処理された画素をスイッチ1206から出力させる。また、上述の場合以外では、処理判定部1208は、デブロッキング・フィルタ処理されていない画素をスイッチ1206から出力させる。このような画素の出力が繰り返し行われることによって、フィルタ処理後の画像がスイッチ1206から出力される。
図8は、ブロック境界に対して対称なフィルタ特性を有するデブロッキング・フィルタの例を示す概念図である。
デブロッキング・フィルタ処理では、例えば、画素値と量子化パラメータを用いて、特性の異なる2つのデブロッキング・フィルタ、すなわちストロングフィルタおよびウィークフィルタのうちの何れか1つが選択される。ストロングフィルタでは、図8に示すように、ブロック境界を挟んで画素p0~p2と、画素q0~q2とが存在する場合、画素q0~q2のそれぞれの画素値は、例えば以下の式に示す演算を行うことによって、画素値q’0~q’2に変更される。
q’0=(p1+2×p0+2×q0+2×q1+q2+4)/8
q’1=(p0+q0+q1+q2+2)/4
q’2=(p0+q0+q1+3×q2+2×q3+4)/8
なお、上述の式において、p0~p2およびq0~q2は、画素p0~p2および画素q0~q2のそれぞれの画素値である。また、q3は、画素q2にブロック境界と反対側に隣接する画素q3の画素値である。また、上述の各式の右辺において、デブロッキング・フィルタ処理に用いられる各画素の画素値に乗算される係数が、フィルタ係数である。
さらに、デブロッキング・フィルタ処理では、演算後の画素値が閾値を超えて設定されないように、クリップ処理が行われてもよい。このクリップ処理では、上述の式による演算後の画素値は、量子化パラメータから決定される閾値を用いて、「演算対象画素値±2×閾値」にクリップされる。これにより、過度な平滑化を防ぐことができる。
図9は、デブロッキング・フィルタ処理が行われるブロック境界を説明するための概念図である。図10は、Bs値の一例を示す概念図である。
デブロッキング・フィルタ処理が行われるブロック境界は、例えば、図9で示すような8×8画素ブロックのPU(Prediction Unit)またはTU(Transform Unit)の境界である。デブロッキング・フィルタ処理は、4行または4列を単位に行われ得る。まず、図9に示すブロックPおよびブロックQに対して、図10のようにBs(Boundary Strength)値が決定される。
図10のBs値にしたがい、同一の画像に属するブロック境界であっても、異なる強さのデブロッキング・フィルタ処理を行うか否かが決定される。色差信号に対するデブロッキング・フィルタ処理は、Bs値が2の場合に行われる。輝度信号に対するデブロッキング・フィルタ処理は、Bs値が1以上であって、所定の条件が満たされた場合に行われる。所定の条件は、予め定められていてもよい。なお、Bs値の判定条件は図10に示したものに限定されず、他のパラメータに基づいて決定されてもよい。
[予測処理部(イントラ予測部・インター予測部・予測制御部)]
図11は、符号化装置100の予測処理部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。なお、予測処理部は、イントラ予測部124、インター予測部126、および予測制御部128の全てまたは一部の構成要素からなる。
予測処理部は、カレントブロックの予測画像を生成する(ステップSb_1)。この予測画像は、予測信号または予測ブロックともいう。なお、予測信号には、例えばイントラ予測信号またはインター予測信号がある。具体的には、予測処理部は、予測ブロックの生成、差分ブロックの生成、係数ブロックの生成、差分ブロックの復元、および復号画像ブロックの生成が行われることによって既に得られている再構成画像を用いて、カレントブロックの予測画像を生成する。
再構成画像は、例えば、参照ピクチャの画像であってもよいし、カレントブロックを含むピクチャであるカレントピクチャ内の符号化済みのブロックの画像であってもよい。カレントピクチャ内の符号化済みのブロックは、例えばカレントブロックの隣接ブロックである。
図12は、符号化装置100の予測処理部で行われる処理の他の例を示すフローチャートである。
予測処理部は、第1の方式で予測画像を生成し(ステップSc_1a)、第2の方式で予測画像を生成し(ステップSc_1b)、第3の方式で予測画像を生成する(ステップSc_1c)。第1の方式、第2の方式、および第3の方式は、予測画像を生成するための互いに異なる方式であって、それぞれ例えば、インター予測方式、イントラ予測方式、および、それら以外の予測方式であってもよい。これらの予測方式では、上述の再構成画像を用いてもよい。
次に、予測処理部は、ステップSc_1a、Sc_1b、およびSc_1cで生成された複数の予測画像のうちの何れか1つを選択する(ステップSc_2)。この予測画像の選択、すなわち最終的な予測画像を得るための方式またはモードの選択は、生成された各予測画像に対するコストを算出し、そのコストに基づいて行われてもよい。または、その予測画像の選択は、符号化の処理に用いられるパラメータに基づいて行われてもよい。符号化装置100は、その選択された予測画像、方式またはモードを特定するための情報を符号化信号(符号化ビットストリームともいう)に信号化してもよい。その情報は、例えばフラグなどであってもよい。これにより、復号装置は、その情報に基づいて、符号化装置100において選択された方式またはモードにしたがって予測画像を生成することができる。なお、図12に示す例では、予測処理部は、各方式で予測画像を生成した後に、何れかの予測画像を選択する。しかし、予測処理部は、それらの予測画像を生成する前に、上述の符号化の処理に用いられるパラメータに基づいて、方式またはモードを選択し、その方式またはモードにしたがって予測画像を生成してもよい。
例えば、第1の方式および第2の方式は、それぞれイントラ予測およびインター予測であって、予測処理部は、これらの予測方式にしたがって生成される予測画像から、カレントブロックに対する最終的な予測画像を選択してもよい。
図13は、符号化装置100の予測処理部で行われる処理の他の例を示すフローチャートである。
まず、予測処理部は、イントラ予測によって予測画像を生成し(ステップSd_1a)、インター予測によって予測画像を生成する(ステップSd_1b)。なお、イントラ予測によって生成された予測画像を、イントラ予測画像ともいい、インター予測によって生成された予測画像を、インター予測画像ともいう。
次に、予測処理部は、イントラ予測画像およびインター予測画像のそれぞれを評価する(ステップSd_2)。この評価には、コストが用いられてもよい。つまり、予測処理部は、イントラ予測画像およびインター予測画像のそれぞれのコストCを算出する。このコストCは、R-D最適化モデルの式、例えば、C=D+λ×Rによって算出され得る。この式において、Dは、予測画像の符号化歪であって、例えば、カレントブロックの画素値と予測画像の画素値との差分絶対値和などによって表される。また、Rは、予測画像の発生符号量であって、具体的には、予測画像を生成するための動き情報などの符号化に必要な符号量などである。また、λは、例えばラグランジュの未定乗数である。
そして、予測処理部は、イントラ予測画像およびインター予測画像から、最も小さいコストCが算出された予測画像を、カレントブロックの最終的な予測画像として選択する(ステップSd_3)。つまり、カレントブロックの予測画像を生成するための予測方式またはモードが選択される。
[イントラ予測部]
イントラ予測部124は、ブロックメモリ118に格納されたカレントピクチャ内のブロックを参照してカレントブロックのイントラ予測(画面内予測ともいう)を行うことで、予測信号(イントラ予測信号)を生成する。具体的には、イントラ予測部124は、カレントブロックに隣接するブロックのサンプル(例えば輝度値、色差値)を参照してイントラ予測を行うことでイントラ予測信号を生成し、イントラ予測信号を予測制御部128に出力する。
例えば、イントラ予測部124は、規定の複数のイントラ予測モードのうちの1つを用いてイントラ予測を行う。複数のイントラ予測モードは、通常、1以上の非方向性予測モードと、複数の方向性予測モードと、を含む。規定の複数のモードは、予め規定されていてもよい。
1以上の非方向性予測モードは、例えばH.265/HEVC規格で規定されたPlanar予測モード及びDC予測モードを含む。
複数の方向性予測モードは、例えばH.265/HEVC規格で規定された33方向の予測モードを含む。なお、複数の方向性予測モードは、33方向に加えてさらに32方向の予測モード(合計で65個の方向性予測モード)を含んでもよい。図14は、イントラ予測において用いられ得る全67個のイントラ予測モード(2個の非方向性予測モード及び65個の方向性予測モード)を示す概念図である。実線矢印は、H.265/HEVC規格で規定された33方向を表し、破線矢印は、追加された32方向を表す(2個の非方向性予測モードは図14には図示されていない)。
種々の処理例では、色差ブロックのイントラ予測において、輝度ブロックが参照されてもよい。つまり、カレントブロックの輝度成分に基づいて、カレントブロックの色差成分が予測されてもよい。このようなイントラ予測は、CCLM(cross-component linear model)予測と呼ばれることがある。このような輝度ブロックを参照する色差ブロックのイントラ予測モード(例えばCCLMモードと呼ばれる)は、色差ブロックのイントラ予測モードの1つとして加えられてもよい。
イントラ予測部124は、水平/垂直方向の参照画素の勾配に基づいてイントラ予測後の画素値を補正してもよい。このような補正をともなうイントラ予測は、PDPC(position dependent intra prediction combination)と呼ばれることがある。PDPCの適用の有無を示す情報(例えばPDPCフラグと呼ばれる)は、通常、CUレベルで信号化される。なお、この情報の信号化は、CUレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、ピクチャレベル、スライスレベル、タイルレベル又はCTUレベル)であってもよい。
[インター予測部]
インター予測部126は、フレームメモリ122に格納された参照ピクチャであってカレントピクチャとは異なる参照ピクチャを参照してカレントブロックのインター予測(画面間予測ともいう)を行うことで、予測信号(インター予測信号)を生成する。インター予測は、カレントブロック又はカレントブロック内のカレントサブブロック(例えば4x4ブロック)の単位で行われる。例えば、インター予測部126は、カレントブロック又はカレントサブブロックについて参照ピクチャ内で動き探索(motion estimation)を行い、そのカレントブロック又はカレントサブブロックに最も一致する参照ブロック又はサブブロックを見つける。そして、インター予測部126は、参照ブロック又はサブブロックからカレントブロック又はサブブロックへの動き又は変化を補償する動き情報(例えば動きベクトル)を取得する。インター予測部126は、その動き情報に基づいて、動き補償(または動き予測)を行い、カレントブロック又はサブブロックのインター予測信号を生成する。インター予測部126は、生成されたインター予測信号を予測制御部128に出力する。
動き補償に用いられた動き情報は、多様な形態でインター予測信号として信号化されてもよい。例えば、動きベクトルが信号化されてもよい。他の例として、動きベクトルと予測動きベクトル(motion vector predictor)との差分が信号化されてもよい。
[インター予測の基本フロー]
図15は、インター予測の基本的な流れの一例を示すフローチャートである。
インター予測部126は、まず、予測画像を生成する(ステップSe_1~Se_3)。次に、減算部104は、カレントブロックと予測画像との差分を予測残差として生成する(ステップSe_4)。
ここで、インター予測部126は、予測画像の生成では、カレントブロックの動きベクトル(MV)の決定(ステップSe_1およびSe_2)と、動き補償(ステップSe_3)とを行うことによって、その予測画像を生成する。また、インター予測部126は、MVの決定では、候補動きベクトル(候補MV)の選択(ステップSe_1)と、MVの導出(ステップSe_2)とを行うことによって、そのMVを決定する。候補MVの選択は、例えば、候補MVリストから少なくとも1つの候補MVを選択することによって行われる。また、MVの導出では、インター予測部126は、少なくとも1つの候補MVから、さらに少なくとも1つの候補MVを選択することによって、その選択された少なくとも1つの候補MVを、カレントブロックのMVとして決定してもよい。あるいは、インター予測部126は、その選択された少なくとも1つの候補MVのそれぞれについて、その候補MVで指示される参照ピクチャの領域を探索することによって、カレントブロックのMVを決定してもよい。なお、この参照ピクチャの領域を探索することを、動き探索(motion estimation)と称してもよい。
また、上述の例では、ステップSe_1~Se_3は、インター予測部126によって行われるが、例えばステップSe_1またはステップSe_2などの処理は、符号化装置100に含まれる他の構成要素によって行われてもよい。
[動きベクトルの導出のフロー]
図16は、動きベクトル導出の一例を示すフローチャートである。
インター予測部126は、動き情報(例えばMV)を符号化するモードで、カレントブロックのMVを導出する。この場合、例えば動き情報が予測パラメータとして符号化されて、信号化される。つまり、符号化された動き情報が、符号化信号(符号化ビットストリームともいう)に含まれる。
あるいは、インター予測部126は、動き情報を符号化しないモードでMVを導出する。この場合には、動き情報は、符号化信号に含まれない。
ここで、MV導出のモードには、後述のノーマルインターモード、マージモード、FRUCモードおよびアフィンモードなどがあってもよい。これらのモードのうち、動き情報を符号化するモードには、ノーマルインターモード、マージモード、およびアフィンモード(具体的には、アフィンインターモードおよびアフィンマージモード)などがある。なお、動き情報には、MVだけでなく、後述の予測動きベクトル選択情報が含まれてもよい。また、動き情報を符号化しないモードには、FRUCモードなどがある。インター予測部126は、これらの複数のモードから、カレントブロックのMVを導出するためのモードを選択し、その選択されたモードを用いてカレントブロックのMVを導出する。
図17は、動きベクトル導出の他の例を示すフローチャートである。
インター予測部126は、差分MVを符号化するモードで、カレントブロックのMVを導出する。この場合、例えば差分MVが予測パラメータとして符号化されて、信号化される。つまり、符号化された差分MVが、符号化信号に含まれる。この差分MVは、カレントブロックのMVと、その予測MVとの差である。
あるいは、インター予測部126は、差分MVを符号化しないモードでMVを導出する。この場合には、符号化された差分MVは、符号化信号に含まれない。
ここで、上述のようにMVの導出のモードには、後述のノーマルインター、マージモード、FRUCモードおよびアフィンモードなどがある。これらのモードのうち、差分MVを符号化するモードには、ノーマルインターモードおよびアフィンモード(具体的には、アフィンインターモード)などがある。また、差分MVを符号化しないモードには、FRUCモード、マージモードおよびアフィンモード(具体的には、アフィンマージモード)などがある。インター予測部126は、これらの複数のモードから、カレントブロックのMVを導出するためのモードを選択し、その選択されたモードを用いてカレントブロックのMVを導出する。
[動きベクトルの導出のフロー]
図18は、動きベクトル導出の他の例を示すフローチャートである。MV導出のモード、すなわちインター予測モードには、複数のモードがあり、大きく分けて、差分MVを符号化するモードと、差分動きベクトルを符号化しないモードとがある。差分MVを符号化しないモードには、マージモード、FRUCモード、およびアフィンモード(具体的には、アフィンマージモード)がある。これらのモードの詳細については、後述するが、簡単には、マージモードは、周辺の符号化済みブロックから動きベクトルを選択することによって、カレントブロックのMVを導出するモードであり、FRUCモードは、符号化済み領域間で探索を行うことによって、カレントブロックのMVを導出するモードである。また、アフィンモードは、アフィン変換を想定して、カレントブロックを構成する複数のサブブロックそれぞれの動きベクトルを、カレントブロックのMVとして導出するモードである。
具体的には、図示されるように、インター予測部126は、インター予測モード情報が0を示す場合(Sf_1で0)、マージモードにより動きベクトルを導出する(Sf_2)。また、インター予測部126は、インター予測モード情報が1を示す場合(Sf_1で1)、FRUCモードにより動きベクトルを導出する(Sf_3)。また、インター予測部126は、インター予測モード情報が2を示す場合(Sf_1で2)、アフィンモード(具体的には、アフィンマージモード)により動きベクトルを導出する(Sf_4)。また、インター予測部126は、インター予測モード情報が3を示す場合(Sf_1で3)、差分MVを符号化するモード(例えば、ノーマルインターモード)により動きベクトルを導出する(Sf_5)。
[MV導出 > ノーマルインターモード]
ノーマルインターモードは、候補MVによって示される参照ピクチャの領域から、カレントブロックの画像に類似するブロックに基づいて、カレントブロックのMVを導出するインター予測モードである。また、このノーマルインターモードでは、差分MVが符号化される。
図19は、ノーマルインターモードによるインター予測の例を示すフローチャートである。
インター予測部126は、まず、時間的または空間的にカレントブロックの周囲にある複数の符号化済みブロックのMVなどの情報に基づいて、そのカレントブロックに対して複数の候補MVを取得する(ステップSg_1)。つまり、インター予測部126は、候補MVリストを作成する。
次に、インター予測部126は、ステップSg_1で取得された複数の候補MVの中から、N個(Nは2以上の整数)の候補MVのそれぞれを予測動きベクトル候補(予測MV候補ともいう)として、所定の優先順位に従って抽出する(ステップSg_2)。なお、その優先順位は、N個の候補MVのそれぞれに対して予め定められていてもよい。
次に、インター予測部126は、そのN個の予測動きベクトル候補の中から1つの予測動きベクトル候補を、カレントブロックの予測動きベクトル(予測MVともいう)として選択する(ステップSg_3)。このとき、インター予測部126は、選択された予測動きベクトルを識別するための予測動きベクトル選択情報をストリームに符号化する。なお、ストリームは、上述の符号化信号または符号化ビットストリームである。
次に、インター予測部126は、符号化済み参照ピクチャを参照し、カレントブロックのMVを導出する(ステップSg_4)。このとき、インター予測部126は、さらに、その導出されたMVと予測動きベクトルとの差分値を差分MVとしてストリームに符号化する。なお、符号化済み参照ピクチャは、符号化後に再構成された複数のブロックからなるピクチャである。
最後に、インター予測部126は、その導出されたMVと符号化済み参照ピクチャとを用いてカレントブロックに対して動き補償を行ことにより、そのカレントブロックの予測画像を生成する(ステップSg_5)。なお、予測画像は、上述のインター予測信号である。
また、符号化信号に含められる、予測画像の生成に用いられたインター予測モード(上述の例ではノーマルインターモード)を示す情報は、例えば予測パラメータとして符号化される。
なお、候補MVリストは、他のモードに用いられるリストと共通に用いられてもよい。また、候補MVリストに関する処理を、他のモードに用いられるリストに関する処理に適用してもよい。この候補MVリストに関する処理は、例えば、候補MVリストからの候補MVの抽出もしくは選択、候補MVの並び替え、または、候補MVの削除などである。
[MV導出 > マージモード]
マージモードは、候補MVリストから候補MVをカレントブロックのMVとして選択することによって、そのMVを導出するインター予測モードである。
図20は、マージモードによるインター予測の例を示すフローチャートである。
インター予測部126は、まず、時間的または空間的にカレントブロックの周囲にある複数の符号化済みブロックのMVなどの情報に基づいて、そのカレントブロックに対して複数の候補MVを取得する(ステップSh_1)。つまり、インター予測部126は、候補MVリストを作成する。
次に、インター予測部126は、ステップSh_1で取得された複数の候補MVの中から1つの候補MVを選択することによって、カレントブロックのMVを導出する(ステップSh_2)。このとき、インター予測部126は、選択された候補MVを識別するためのMV選択情報をストリームに符号化する。
最後に、インター予測部126は、その導出されたMVと符号化済み参照ピクチャとを用いてカレントブロックに対して動き補償を行ことにより、そのカレントブロックの予測画像を生成する(ステップSh_3)。
また、符号化信号に含められる、予測画像の生成に用いられたインター予測モード(上述の例ではマージモード)を示す情報は、例えば予測パラメータとして符号化される。
図21は、マージモードによるカレントピクチャの動きベクトル導出処理の一例を説明するための概念図である。
まず、予測MVの候補を登録した予測MVリストを生成する。予測MVの候補としては、対象ブロックの空間的に周辺に位置する複数の符号化済みブロックが持つMVである空間隣接予測MV、符号化済み参照ピクチャにおける対象ブロックの位置を投影した近辺のブロックが持つMVである時間隣接予測MV、空間隣接予測MVと時間隣接予測MVのMV値を組み合わせて生成したMVである結合予測MV、および値がゼロのMVであるゼロ予測MV等がある。
次に、予測MVリストに登録されている複数の予測MVの中から1つの予測MVを選択することで、対象ブロックのMVとして決定する。
さらに、可変長符号化部では、どの予測MVを選択したかを示す信号であるmerge_idxをストリームに記述して符号化する。
なお、図21で説明した予測MVリストに登録する予測MVは一例であり、図中の個数とは異なる個数であったり、図中の予測MVの一部の種類を含まない構成であったり、図中の予測MVの種類以外の予測MVを追加した構成であったりしてもよい。
マージモードにより導出した対象ブロックのMVを用いて、後述するDMVR(decoder motion vector refinement)処理を行うことによって最終的なMVを決定してもよい。
なお、予測MVの候補は、上述の候補MVであり、予測MVリストは、上述の候補MVリストである。また、候補MVリストを、候補リストと称してもよい。また、merge_idxは、MV選択情報である。
[MV導出 > FRUCモード]
動き情報は符号化装置側から信号化されずに、復号装置側で導出されてもよい。なお、上述のように、H.265/HEVC規格で規定されたマージモードが用いられてもよい。また例えば、復号装置側で動き探索を行うことにより動き情報が導出されてもよい。実施の形態において、復号装置側では、カレントブロックの画素値を用いずに動き探索が行われる。
ここで、復号装置側で動き探索を行うモードについて説明する。この復号装置側で動き探索を行うモードは、PMMVD(pattern matched motion vector derivation)モード又はFRUC(frame rate up-conversion)モードと呼ばれることがある。
フローチャートの形式でFRUC処理の一例を図22に示す。まず、カレントブロックに空間的又は時間的に隣接する符号化済みブロックの動きベクトルを参照して、各々が予測動きベクトル(MV)を有する複数の候補のリスト(すなわち、候補MVリストであって、マージリストと共通であってもよい)が生成される(ステップSi_1)。次に、候補MVリストに登録されている複数の候補MVの中からベスト候補MVを選択する(ステップSi_2)。例えば、候補MVリストに含まれる各候補MVの評価値が算出され、評価値に基づいて1つの候補MVが選択される。そして、選択された候補の動きベクトルに基づいて、カレントブロックのための動きベクトルが導出される(ステップSi_4)。具体的には、例えば、選択された候補の動きベクトル(ベスト候補MV)がそのままカレントブロックのための動きベクトルとして導出される。また例えば、選択された候補の動きベクトルに対応する参照ピクチャ内の位置の周辺領域において、パターンマッチングを行うことにより、カレントブロックのための動きベクトルが導出されてもよい。すなわち、ベスト候補MVの周辺の領域に対して、参照ピクチャにおけるパターンマッチングおよび評価値を用いた探索を行い、さらに評価値が良い値となるMVがあった場合は、ベスト候補MVを前記MVに更新して、それをカレントブロックの最終的なMVとしてもよい。より良い評価値を有するMVへの更新を行う処理を実施しない構成とすることも可能である。
最後に、インター予測部126は、その導出されたMVと符号化済み参照ピクチャとを用いてカレントブロックに対して動き補償を行ことにより、そのカレントブロックの予測画像を生成する(ステップSi_5)。
サブブロック単位で処理を行う場合も全く同様の処理としてもよい。
評価値は、種々の方法によって算出されてもよい。例えば、動きベクトルに対応する参照ピクチャ内の領域の再構成画像と、所定の領域(その領域は、例えば、以下に示すように、他の参照ピクチャの領域またはカレントピクチャの隣接ブロックの領域であってもよい)の再構成画像とを比較する。所定の領域は予め定められていてもよい。
そして、2つの再構成画像の画素値の差分を算出して、動きベクトルの評価値に用いてもよい。なお、差分値に加えてそれ以外の情報を用いて評価値を算出してもよい。
次に、パターンマッチングの例について詳細に説明する。まず、候補MVリスト(例えばマージリスト)に含まれる1つの候補MVを、パターンマッチングによる探索のスタートポイントとして選択する。例えば、パターンマッチングとしては、第1パターンマッチング又は第2パターンマッチングが用いられ得る。第1パターンマッチング及び第2パターンマッチングは、それぞれ、バイラテラルマッチング(bilateral matching)及びテンプレートマッチング(template matching)と呼ばれることがある。
[MV導出 > FRUC > バイラテラルマッチング]
第1パターンマッチングでは、異なる2つの参照ピクチャ内の2つのブロックであってカレントブロックの動き軌道(motion trajectory)に沿う2つのブロックの間でパターンマッチングが行われる。したがって、第1パターンマッチングでは、上述した候補の評価値の算出のための所定の領域として、カレントブロックの動き軌道に沿う他の参照ピクチャ内の領域が用いられる。所定の領域は、予め定められていてもよい。
図23は、動き軌道に沿う2つの参照ピクチャにおける2つのブロック間での第1パターンマッチング(バイラテラルマッチング)の一例を説明するための概念図である。図23に示すように、第1パターンマッチングでは、カレントブロック(Cur block)の動き軌道に沿う2つのブロックであって異なる2つの参照ピクチャ(Ref0、Ref1)内の2つのブロックのペアの中で最もマッチするペアを探索することにより2つの動きベクトル(MV0、MV1)が導出される。具体的には、カレントブロックに対して、候補MVで指定された第1の符号化済み参照ピクチャ(Ref0)内の指定位置における再構成画像と、前記候補MVを表示時間間隔でスケーリングした対称MVで指定された第2の符号化済み参照ピクチャ(Ref1)内の指定位置における再構成画像との差分を導出し、得られた差分値を用いて評価値を算出する。複数の候補MVの中で最も評価値が良い値となる候補MVを最終MVとして選択することが可能であり、良い結果をもたらし得る。
連続的な動き軌道の仮定の下では、2つの参照ブロックを指し示す動きベクトル(MV0、MV1)は、カレントピクチャ(Cur Pic)と2つの参照ピクチャ(Ref0、Ref1)との間の時間的な距離(TD0、TD1)に対して比例する。例えば、カレントピクチャが時間的に2つの参照ピクチャの間に位置し、カレントピクチャから2つの参照ピクチャへの時間的な距離が等しい場合、第1パターンマッチングでは、鏡映対称な双方向の動きベクトルが導出される。
[MV導出 > FRUC > テンプレートマッチング]
第2パターンマッチング(テンプレートマッチング)では、カレントピクチャ内のテンプレート(カレントピクチャ内でカレントブロックに隣接するブロック(例えば上及び/又は左隣接ブロック))と参照ピクチャ内のブロックとの間でパターンマッチングが行われる。したがって、第2パターンマッチングでは、上述した候補の評価値の算出のための所定の領域として、カレントピクチャ内のカレントブロックに隣接するブロックが用いられる。
図24は、カレントピクチャ内のテンプレートと参照ピクチャ内のブロックとの間でのパターンマッチング(テンプレートマッチング)の一例を説明するための概念図である。図24に示すように、第2パターンマッチングでは、カレントピクチャ(Cur Pic)内でカレントブロック(Cur block)に隣接するブロックと最もマッチするブロックを参照ピクチャ(Ref0)内で探索することによりカレントブロックの動きベクトルが導出される。具体的には、カレントブロックに対して、左隣接および上隣接の両方もしくはどちらか一方の符号化済み領域の再構成画像と、候補MVで指定された符号化済み参照ピクチャ(Ref0)内の同等位置における再構成画像との差分を導出し、得られた差分値を用いて評価値を算出し、複数の候補MVの中で最も評価値が良い値となる候補MVをベスト候補MVとして選択することが可能である。
このようなFRUCモードを適用するか否かを示す情報(例えばFRUCフラグと呼ばれる)は、CUレベルで信号化されてもよい。また、FRUCモードが適用される場合(例えばFRUCフラグが真の場合)、適用可能なパターンマッチングの方法(第1パターンマッチング又は第2パターンマッチング)を示す情報がCUレベルで信号化されてもよい。なお、これらの情報の信号化は、CUレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、ピクチャレベル、スライスレベル、タイルレベル、CTUレベル又はサブブロックレベル)であってもよい。
[MV導出 > アフィンモード]
次に、複数の隣接ブロックの動きベクトルに基づいてサブブロック単位で動きベクトルを導出するアフィンモードについて説明する。このモードは、アフィン動き補償予測(affine motion compensation prediction)モードと呼ばれることがある。
図25Aは、複数の隣接ブロックの動きベクトルに基づくサブブロック単位の動きベクトルの導出の一例を説明するための概念図である。図25Aにおいて、カレントブロックは、16の4x4サブブロックを含む。ここでは、隣接ブロックの動きベクトルに基づいてカレントブロックの左上角制御ポイントの動きベクトルv0が導出され、同様に、隣接サブブロックの動きベクトルに基づいてカレントブロックの右上角制御ポイントの動きベクトルv1が導出される。そして、以下の式(1A)により、2つの動きベクトルv0及びv1が投影されてもよく、カレントブロック内の各サブブロックの動きベクトル(vx,vy)が導出されてもよい。
ここで、x及びyは、それぞれ、サブブロックの水平位置及び垂直位置を示し、wは、所定の重み係数を示す。所定の重み係数は、予め決定されていてもよい。
このようなアフィンモードを示す情報(例えばアフィンフラグと呼ばれる)は、CUレベルで信号化されてもよい。なお、このアフィンモードを示す情報の信号化は、CUレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、ピクチャレベル、スライスレベル、タイルレベル、CTUレベル又はサブブロックレベル)であってもよい。
また、このようなアフィンモードでは、左上及び右上角制御ポイントの動きベクトルの導出方法が異なるいくつかのモードを含んでもよい。例えば、アフィンモードには、アフィンインター(アフィンノーマルインターともいう)モードと、アフィンマージモードの2つのモードがある。
[MV導出 > アフィンモード]
図25Bは、3つの制御ポイントを有するアフィンモードにおけるサブブロック単位の動きベクトルの導出の一例を説明するための概念図である。図25Bにおいて、カレントブロックは、16の4x4サブブロックを含む。ここでは、隣接ブロックの動きベクトルに基づいてカレントブロックの左上角制御ポイントの動きベクトルv0が導出され、同様に、隣接ブロックの動きベクトルに基づいてカレントブロックの右上角制御ポイントの動きベクトルv1、隣接ブロックの動きベクトルに基づいてカレントブロックの左下角制御ポイントの動きベクトルv2が導出される。そして、以下の式(1B)により、3つの動きベクトルv0、v1及びv2が投影されてもよく、カレントブロック内の各サブブロックの動きベクトル(vx,vy)が導出されてもよい。
ここで、x及びyは、それぞれ、サブブロック中心の水平位置及び垂直位置を示し、wは、カレントブロックの幅、hは、カレントブロックの高さを示す。
異なる制御ポイント数(例えば、2つと3つ)のアフィンモードは、CUレベルで切り替えて信号化されてもよい。なお、CUレベルで使用しているアフィンモードの制御ポイント数を示す情報を、他のレベル(例えば、シーケンスレベル、ピクチャレベル、スライスレベル、タイルレベル、CTUレベル又はサブブロックレベル)で信号化してもよい。
また、このような3つの制御ポイントを有するアフィンモードでは、左上、右上及び左下角制御ポイントの動きベクトルの導出方法が異なるいくつかのモードを含んでもよい。例えば、アフィンモードには、アフィンインター(アフィンノーマルインターともいう)モードと、アフィンマージモードの2つのモードがある。
[MV導出 > アフィンマージモード]
図26A、図26Bおよび図26Cは、アフィンマージモードを説明するための概念図である。
アフィンマージモードでは、図26Aに示すように、例えば、カレントブロックに隣接する符号化済みブロックA(左)、ブロックB(上)、ブロックC(右上)、ブロックD(左下)およびブロックE(左上)のうち、アフィンモードで符号化されたブロックに対応する複数の動きベクトルに基づいて、カレントブロックの制御ポイントのそれぞれの予測動きベクトルが算出される。具体的には、符号化済みブロックA(左)、ブロックB(上)、ブロックC(右上)、ブロックD(左下)およびブロックE(左上)の順序でこれらのブロックが検査され、アフィンモードで符号化された最初の有効なブロックが特定される。この特定されたブロックに対応する複数の動きベクトルに基づいて、カレントブロックの制御ポイントの予測動きベクトルが算出される。
例えば、図26Bに示すように、カレントブロックの左に隣接するブロックAが2つの制御ポイントを有するアフィンモードで符号化されている場合は、ブロックAを含む符号化済みブロックの左上角および右上角の位置に投影した動きベクトルv3およびv4が導出される。そして、導出された動きベクトルv3およびv4から、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv0と、右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv1が算出される。
例えば、図26Cに示すように、カレントブロックの左に隣接するブロックAが3つの制御ポイントを有するアフィンモードで符号化されている場合は、ブロックAを含む符号化済みブロックの左上角、右上角および左下角の位置に投影した動きベクトルv3、v4およびv5が導出される。そして、導出された動きベクトルv3、v4およびv5から、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv0と、右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv1と、左下角の制御ポイントの予測動きベクトルv2が算出される。
なお、後述する図29のステップSj_1におけるカレントブロックの制御ポイントのそれぞれの予測動きベクトルの導出に、この予測動きベクトル導出方法を用いてもよい。
図27は、アフィンマージモードの一例を示すフローチャートである。
アフィンマージモードでは、図示されるように、まず、インター予測部126は、カレントブロックの制御ポイントのそれぞれの予測MVを導出する(ステップSk_1)。制御ポイントは、図25Aに示すように、カレントブロックの左上角および右上角のポイント、或いは図25Bに示すように、カレントブロックの左上角、右上角および左下角のポイントである。
つまり、インター予測部126は、図26Aに示すように、符号化済みブロックA(左)、ブロックB(上)、ブロックC(右上)、ブロックD(左下)およびブロックE(左上)の順序にこれらのブロックを検査し、アフィンモードで符号化された最初の有効なブロックを特定する。
そして、ブロックAが特定されブロックAが2つの制御ポイントを有する場合、図26Bに示すように、インター予測部126は、ブロックAを含む符号化済みブロックの左上角および右上角の動きベクトルv3およびv4から、カレントブロックの左上角の制御ポイントの動きベクトルv0と、右上角の制御ポイントの動きベクトルv1とを算出する。例えば、インター予測部126は、符号化済みブロックの左上角および右上角の動きベクトルv3およびv4を、カレントブロックに投影することによって、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv0と、右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv1とを算出する。
或いは、ブロックAが特定されブロックAが3つの制御ポイントを有する場合、図26Cに示すように、インター予測部126は、ブロックAを含む符号化済みブロックの左上角、右上角および左下角の動きベクトルv3、v4およびv5から、カレントブロックの左上角の制御ポイントの動きベクトルv0と、右上角の制御ポイントの動きベクトルv1、左下角の制御ポイントの動きベクトルv2とを算出する。例えば、インター予測部126は、符号化済みブロックの左上角、右上角および左下角の動きベクトルv3、v4およびv5を、カレントブロックに投影することによって、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv0と、右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv1、左下角の制御ポイントの動きベクトルv2とを算出する。
次に、インター予測部126は、カレントブロックに含まれる複数のサブブロックのそれぞれについて、動き補償を行う。すなわち、インター予測部126は、その複数のサブブロックのそれぞれについて、2つの予測動きベクトルv0およびv1と上述の式(1A)、或いは3つの予測動きベクトルv0、v1およびv2と上述の式(1B)とを用いて、そのサブブロックの動きベクトルをアフィンMVとして算出する(ステップSk_2)。そして、インター予測部126は、それらのアフィンMVおよび符号化済み参照ピクチャを用いてそのサブブロックに対して動き補償を行う(ステップSk_3)。その結果、カレントブロックに対して動き補償が行われ、そのカレントブロックの予測画像が生成される。
[MV導出 > アフィンインターモード]
図28Aは、2つの制御ポイントを有するアフィンインターモードを説明するための概念図である。
このアフィンインターモードでは、図28Aに示すように、カレントブロックに隣接する符号化済みブロックA、ブロックBおよびブロックCの動きベクトルから選択された動きベクトルが、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv0として用いられる。同様に、カレントブロックに隣接する符号化済みブロックDおよびブロックEの動きベクトルから選択された動きベクトルが、カレントブロックの右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv1として用いられる。
図28Bは、3つの制御ポイントを有するアフィンインターモードを説明するための概念図である。
このアフィンインターモードでは、図28Bに示すように、カレントブロックに隣接する符号化済みブロックA、ブロックBおよびブロックCの動きベクトルから選択された動きベクトルが、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv0として用いられる。同様に、カレントブロックに隣接する符号化済みブロックDおよびブロックEの動きベクトルから選択された動きベクトルが、カレントブロックの右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv1として用いられる。更に、カレントブロックに隣接する符号化済みブロックFおよびブロックGの動きベクトルから選択された動きベクトルが、カレントブロックの左下角の制御ポイントの予測動きベクトルv2として用いられる。
図29は、アフィンインターモードの一例を示すフローチャートである。
図示されるように、アフィンインターモードでは、まず、インター予測部126は、カレントブロックの2つまたは3つの制御ポイントのそれぞれの予測MV(v0,v1)または(v0,v1,v2)を導出する(ステップSj_1)。制御ポイントは、図25Aまたは図25Bに示すように、カレントブロックの左上角、右上角或いは左下角のポイントである。
つまり、インター予測部126は、図28Aまたは図28Bに示すカレントブロックの各制御ポイント近傍の符号化済みブロックのうちの何れかのブロックの動きベクトルを選択することによって、カレントブロックの制御ポイントの予測動きベクトル(v0,v1)または(v0,v1,v2)を導出する。このとき、インター予測部126は、選択された2つの動きベクトルを識別するための予測動きベクトル選択情報をストリームに符号化する。
例えば、インター予測部126は、カレントブロックに隣接する符号化済みブロックからどのブロックの動きベクトルを制御ポイントの予測動きベクトルとして選択するかを、コスト評価等を用いて決定し、どの予測動きベクトルを選択したかを示すフラグをビットストリームに記述してもよい。
次に、インター予測部126は、ステップSj_1で選択または導出された予測動きベクトルをそれぞれ更新しながら(ステップSj_2)、動き探索を行う(ステップSj_3およびSj_4)。つまり、インター予測部126は、更新される予測動きベクトルに対応する各サブブロックの動きベクトルをアフィンMVとして、上述の式(1A)または式(1B)を用いて算出する(ステップSj_3)。そして、インター予測部126は、それらのアフィンMVおよび符号化済み参照ピクチャを用いて各サブブロックに対して動き補償を行う(ステップSj_4)。その結果、インター予測部126は、動き探索ループにおいて、例えば最も小さいコストが得られる予測動きベクトルを、制御ポイントの動きベクトルとして決定する(ステップSj_5)。このとき、インター予測部126は、さらに、その決定されたMVと予測動きベクトルとのそれぞれの差分値を差分MVとしてストリームに符号化する。
最後に、インター予測部126は、その決定されたMVと符号化済み参照ピクチャとを用いてカレントブロックに対して動き補償を行ことにより、そのカレントブロックの予測画像を生成する(ステップSj_6)。
[MV導出 > アフィンインターモード]
異なる制御ポイント数(例えば、2つと3つ)のアフィンモードをCUレベルで切り替えて信号化する場合、符号化済みブロックとカレントブロックで制御ポイントの数が異なる場合がある。図30Aおよび図30Bは、符号化済みブロックとカレントブロックで制御ポイントの数が異なる場合の、制御ポイントの予測ベクトル導出方法を説明するための概念図である。
例えば、図30Aに示すように、カレントブロックが左上角、右上角および左下角の3つの制御ポイントを有し、カレントブロックの左に隣接するブロックAが2つの制御ポイントを有するアフィンモードで符号化されている場合は、ブロックAを含む符号化済みブロックの左上角および右上角の位置に投影した動きベクトルv3およびv4が導出される。そして、導出された動きベクトルv3およびv4から、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv0と、右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv1が算出される。更に、導出された動きベクトルv0およびv1から、左下角の制御ポイントの予測動きベクトルv2が算出される。
例えば、図30Bに示すように、カレントブロックが左上角および右上角の2つの制御ポイントを有し、カレントブロックの左に隣接するブロックAが3つの制御ポイントを有するアフィンモードで符号化されている場合は、ブロックAを含む符号化済みブロックの左上角、右上角および左下角の位置に投影した動きベクトルv3、v4およびv5が導出される。そして、導出された動きベクトルv3、v4およびv5から、カレントブロックの左上角の制御ポイントの予測動きベクトルv0と、右上角の制御ポイントの予測動きベクトルv1が算出される。
図29のステップSj_1におけるカレントブロックの制御ポイントのそれぞれの予測動きベクトルの導出に、この予測動きベクトル導出方法を用いてもよい。
[MV導出 > DMVR]
図31Aは、マージモードおよびDMVRの関係を示すフローチャートである。
インター予測部126は、マージモードでカレントブロックの動きベクトルを導出する(ステップSl_1)。次に、インター予測部126は、動きベクトルの探索、すなわち動き探索を行うか否かを判定する(ステップSl_2)。ここで、インター予測部126は、動き探索を行わないと判定すると(ステップSl_2のNo)、ステップSl_1で導出された動きベクトルを、カレントブロックに対する最終の動きベクトルとして決定する(ステップSl_4)。すなわち、この場合には、マージモードでカレントブロックの動きベクトルが決定される。
一方、ステップSl_1で動き探索を行うと判定すると(ステップSl_2のYes)、インター予測部126は、ステップSl_1で導出された動きベクトルによって示される参照ピクチャの周辺領域を探索することによって、カレントブロックに対して最終の動きベクトルを導出する(ステップSl_3)。すなわち、この場合には、DMVRでカレントブロックの動きベクトルが決定される。
図31Bは、MVを決定するためのDMVR処理の一例を説明するための概念図である。
まず、(例えばマージモードにおいて)カレントブロックに設定された最適MVPを、候補MVとする。そして、候補MV(L0)に従って、L0方向の符号化済みピクチャである第1参照ピクチャ(L0)から参照画素を特定する。同様に、候補MV(L1)に従って、L1方向の符号化済みピクチャである第2参照ピクチャ(L1)から参照画素を特定する。これらの参照画素の平均をとることでテンプレートを生成する。
次に、前記テンプレートを用いて、第1参照ピクチャ(L0)および第2参照ピクチャ(L1)の候補MVの周辺領域をそれぞれ探索し、コストが最小となるMVを最終的なMVとして決定する。なお、コスト値は、例えば、テンプレートの各画素値と探索領域の各画素値との差分値および候補MV値等を用いて算出してもよい。
なお、典型的には、符号化装置と、後述の復号化装置とでは、ここで説明した処理の構成および動作は基本的に共通である。
ここで説明した処理例そのものでなくても、候補MVの周辺を探索して最終的なMVを導出することができる処理であれば、どのような処理を用いてもよい。
[動き補償 > BIO/OBMC]
動き補償では、予測画像を生成し、その予測画像を補正するモードがある。そのモードは、例えば、後述のBIOおよびOBMCである。
図32は、予測画像の生成の一例を示すフローチャートである。
インター予測部126は、予測画像を生成し(ステップSm_1)、例えば上述の何れかのモードによってその予測画像を補正する(ステップSm_2)。
図33は、予測画像の生成の他の例を示すフローチャートである。
インター予測部126は、カレントブロックの動きベクトルを決定する(ステップSn_1)。次に、インター予測部126は、予測画像を生成し(ステップSn_2)、補正処理を行うか否かを判定する(ステップSn_3)。ここで、インター予測部126は、補正処理を行うと判定すると(ステップSn_3のYes)、その予測画像を補正することによって最終的な予測画像を生成する(ステップSn_4)。一方、インター予測部126は、補正処理を行わないと判定すると(ステップSn_3のNo)、その予測画像を補正することなく最終的な予測画像として出力する(ステップSn_5)。
また、動き補償では、予測画像を生成するときに輝度を補正するモードがある。そのモードは、例えば、後述のLICである。
図34は、予測画像の生成の他の例を示すフローチャートである。
インター予測部126は、カレントブロックの動きベクトルを導出する(ステップSo_1)。次に、インター予測部126は、輝度補正処理を行うか否かを判定する(ステップSo_2)。ここで、インター予測部126は、輝度補正処理を行うと判定すると(ステップSo_2のYes)、輝度補正を行いながら予測画像を生成する(ステップSo_3)。つまり、LICによって予測画像が生成される。一方、インター予測部126は、輝度補正処理を行わないと判定すると(ステップSo_2のNo)、輝度補正を行うことなく通常の動き補償によって予測画像を生成する(ステップSo_4)。
[動き補償 > OBMC]
動き探索により得られたカレントブロックの動き情報だけでなく、隣接ブロックの動き情報も用いて、インター予測信号が生成されてもよい。具体的には、(参照ピクチャ内の)動き探索により得られた動き情報に基づく予測信号と、(カレントピクチャ内の)隣接ブロックの動き情報に基づく予測信号と、を重み付け加算することにより、カレントブロック内のサブブロック単位でインター予測信号が生成されてもよい。このようなインター予測(動き補償)は、OBMC(overlapped block motion compensation)と呼ばれることがある。
OBMCモードでは、OBMCのためのサブブロックのサイズを示す情報(例えばOBMCブロックサイズと呼ばれる)は、シーケンスレベルで信号化されてもよい。さらに、OBMCモードを適用するか否かを示す情報(例えばOBMCフラグと呼ばれる)は、CUレベルで信号化されてもよい。なお、これらの情報の信号化のレベルは、シーケンスレベル及びCUレベルに限定される必要はなく、他のレベル(例えばピクチャレベル、スライスレベル、タイルレベル、CTUレベル又はサブブロックレベル)であってもよい。
OBMCモードの例について、より具体的に説明する。図35及び図36は、OBMC処理による予測画像補正処理の概要を説明するためのフローチャート及び概念図である。
まず、図36に示すように、処理対象(カレント)ブロックに割り当てられた動きベクトル(MV)を用いて通常の動き補償による予測画像(Pred)を取得する。図36において、矢印“MV”は参照ピクチャを指し、予測画像を得るためにカレントピクチャのカレントブロックが何を参照しているかを示している。
次に、符号化済みの左隣接ブロックに対して既に導出された動きベクトル(MV_L)を符号化対象ブロックに適用(再利用)して予測画像(Pred_L)を取得する。動きベクトル(MV_L)は、カレントブロックから参照ピクチャを指す矢印”MV_L”によって示される。そして、2つの予測画像PredとPred_Lとを重ね合わせることで予測画像の1回目の補正を行う。これは、隣接ブロック間の境界を混ぜ合わせる効果を有する。
同様に、符号化済みの上隣接ブロックに対して既に導出された動きベクトル(MV_U)を符号化対象ブロックに適用(再利用)して予測画像(Pred_U)を取得する。動きベクトル(MV_U)は、カレントブロックから参照ピクチャを指す矢印”MV_U”によって示される。そして、予測画像Pred_Uを1回目の補正を行った予測画像(例えば、PredとPred_L)に重ね合わせることで予測画像の2回目の補正を行う。これは、隣接ブロック間の境界を混ぜ合わせる効果を有する。2回目の補正によって得られた予測画像は、隣接ブロックとの境界が混ぜ合わされた(スムージングされた)、カレントブロックの最終的な予測画像である。
なお、上述の例は、左隣接および上隣接のブロックを用いた2パスの補正方法であるが、その補正方法は、右隣接および/または下隣接のブロックも用いた3パスまたはそれ以上のパスの補正方法であってもよい。
なお、重ね合わせを行う領域はブロック全体の画素領域ではなく、ブロック境界近傍の一部の領域のみであってもよい。
なお、ここでは1枚の参照ピクチャから、追加的な予測画像Pred_LおよびPred_Uを重ね合わせることで1枚の予測画像Predを得るためのOBMCの予測画像補正処理について説明した。しかし、複数の参照画像に基づいて予測画像が補正される場合には、同様の処理が複数の参照ピクチャのそれぞれに適用されてもよい。このような場合、複数の参照ピクチャに基づくOBMCの画像補正を行うことによって、各々の参照ピクチャから、補正された予測画像を取得した後に、その取得された複数の補正予測画像をさらに重ね合わせることで最終的な予測画像を取得する。
なお、OBMCでは、対象ブロックの単位は、予測ブロック単位であっても、予測ブロックをさらに分割したサブブロック単位であってもよい。
OBMC処理を適用するかどうかの判定の方法として、例えば、OBMC処理を適用するかどうかを示す信号であるobmc_flagを用いる方法がある。具体的な一例としては、符号化装置は、対象ブロックが動きの複雑な領域に属しているかどうかを判定してもよい。符号化装置は、動きの複雑な領域に属している場合は、obmc_flagとして値1を設定してOBMC処理を適用して符号化を行い、動きの複雑な領域に属していない場合は、obmc_flagとして値0を設定してOBMC処理を適用せずにブロックの符号化を行う。一方、復号化装置では、ストリーム(例えば圧縮シーケンス)に記述されたobmc_flagを復号することで、その値に応じてOBMC処理を適用するかどうかを切替えて復号を行う。
インター予測部126は、上述の例では、矩形のカレントブロックに対して1つの矩形の予測画像を生成する。しかし、インター予測部126は、その矩形のカレントブロックに対して矩形と異なる形状の複数の予測画像を生成し、それらの複数の予測画像を結合することによって、最終的な矩形の予測画像を生成してもよい。矩形と異なる形状は、例えば三角形であってもよい。
図37は、2つの三角形の予測画像の生成を説明するための概念図である。
インター予測部126は、カレントブロック内の三角形の第1パーティションに対して、その第1パーティションの第1MVを用いて動き補償を行うことによって、三角形の予測画像を生成する。同様に、インター予測部126は、カレントブロック内の三角形の第2パーティションに対して、その第2パーティションの第2MVを用いて動き補償を行うことによって、三角形の予測画像を生成する。そして、インター予測部126は、これらの予測画像を結合することによって、カレントブロックと同じ矩形の予測画像を生成する。
なお、図37に示す例では、第1パーティションおよび第2パーティションはそれぞれ三角形であるが、台形であってもよく、それぞれ互いに異なる形状であってもよい。さらに、図37に示す例では、カレントブロックが2つのパーティションから構成されているが、3つ以上のパーティションから構成されていてもよい。
また、第1パーティションおよび第2パーティションは重複していてもよい。すなわち、第1パーティションおよび第2パーティションは同じ画素領域を含んでいてもよい。この場合、第1パーティションにおける予測画像と第2パーティションにおける予測画像とを用いてカレントブロックの予測画像を生成してもよい。
また、この例では2つのパーティションともにインター予測で予測画像が生成される例を示したが、少なくとも1つのパーティションについてイントラ予測によって予測画像を生成してもよい。
[動き補償 > BIO]
次に、動きベクトルを導出する方法について説明する。まず、等速直線運動を仮定したモデルに基づいて動きベクトルを導出するモードについて説明する。このモードは、BIO(bi-directional optical flow)モードと呼ばれることがある。
図38は、等速直線運動を仮定したモデルを説明するための概念図である。図38において、(vx,vy)は、速度ベクトルを示し、τ0、τ1は、それぞれ、カレントピクチャ(Cur Pic)と2つの参照ピクチャ(Ref0,Ref1)との間の時間的な距離を示す。(MVx0,MVy0)は、参照ピクチャRef0に対応する動きベクトルを示し、(MVx1、MVy1)は、参照ピクチャRef1に対応する動きベクトルを示す。
このとき速度ベクトル(vx,vy)の等速直線運動の仮定の下では、(MVx0,MVy0)及び(MVx1,MVy1)は、それぞれ、(vxτ0,vyτ0)及び(-vxτ1,-vyτ1)と表され、以下のオプティカルフロー等式(2)が採用されてもよい。
ここで、I(k)は、動き補償後の参照画像k(k=0,1)の輝度値を示す。このオプティカルフロー等式は、(i)輝度値の時間微分と、(ii)水平方向の速度及び参照画像の空間勾配の水平成分の積と、(iii)垂直方向の速度及び参照画像の空間勾配の垂直成分の積と、の和が、ゼロと等しいことを示す。このオプティカルフロー等式とエルミート補間(Hermite interpolation)との組み合わせに基づいて、マージリスト等から得られるブロック単位の動きベクトルが画素単位で補正されてもよい。
なお、等速直線運動を仮定したモデルに基づく動きベクトルの導出とは異なる方法で、復号装置側で動きベクトルが導出されてもよい。例えば、複数の隣接ブロックの動きベクトルに基づいてサブブロック単位で動きベクトルが導出されてもよい。
[動き補償 > LIC]
次に、LIC(local illumination compensation)処理を用いて予測画像(予測)を生成するモードの一例について説明する。
図39は、LIC処理による輝度補正処理を用いた予測画像生成方法の一例を説明するための概念図である。
まず、符号化済みの参照ピクチャからMVを導出して、カレントブロックに対応する参照画像を取得する。
次に、カレントブロックに対して、参照ピクチャとカレントピクチャとで輝度値がどのように変化したかを示す情報を抽出する。この抽出は、カレントピクチャにおける符号化済み左隣接参照領域(周辺参照領域)および符号化済み上隣参照領域(周辺参照領域)の輝度画素値と、導出されたMVで指定された参照ピクチャ内の同等位置における輝度画素値とに基づいて行われる。そして、輝度値がどのように変化したかを示す情報を用いて、輝度補正パラメータを算出する。
MVで指定された参照ピクチャ内の参照画像に対して前記輝度補正パラメータを適用する輝度補正処理を行うことで、カレントブロックに対する予測画像を生成する。
なお、図39における前記周辺参照領域の形状は一例であり、これ以外の形状を用いてもよい。
また、ここでは1枚の参照ピクチャから予測画像を生成する処理について説明したが、複数枚の参照ピクチャから予測画像を生成する場合も同様であり、各々の参照ピクチャから取得した参照画像に、上述と同様の方法で輝度補正処理を行ってから予測画像を生成してもよい。
LIC処理を適用するかどうかの判定の方法として、例えば、LIC処理を適用するかどうかを示す信号であるlic_flagを用いる方法がある。具体的な一例としては、符号化装置において、カレントブロックが、輝度変化が発生している領域に属しているかどうかを判定し、輝度変化が発生している領域に属している場合はlic_flagとして値1を設定してLIC処理を適用して符号化を行い、輝度変化が発生している領域に属していない場合はlic_flagとして値0を設定してLIC処理を適用せずに符号化を行う。一方、復号化装置では、ストリームに記述されたlic_flagを復号化することで、その値に応じてLIC処理を適用するかどうかを切替えて復号を行ってもよい。
LIC処理を適用するかどうかの判定の別の方法として、例えば、周辺ブロックでLIC処理を適用したかどうかに従って判定する方法もある。具体的な一例としては、カレントブロックがマージモードであった場合、マージモード処理におけるMVの導出の際に選択した周辺の符号化済みブロックがLIC処理を適用して符号化したかどうかを判定する。その結果に応じてLIC処理を適用するかどうかを切替えて符号化を行う。なお、この例の場合でも、同じ処理が復号装置側の処理に適用される。
LIC処理(輝度補正処理)の態様について図39を用いて説明したが、以下、その詳細を説明する。
まず、インター予測部126は、符号化済みピクチャである参照ピクチャから符号化対象ブロックに対応する参照画像を取得するための動きベクトルを導出する。
次に、インター予測部126は、符号化対象ブロックに対して、左隣接および上隣接の符号化済み周辺参照領域の輝度画素値と、動きベクトルで指定された参照ピクチャ内の同等位置における輝度画素値とを用いて、参照ピクチャと符号化対象ピクチャとで輝度値がどのように変化したかを示す情報を抽出して輝度補正パラメータを算出する。例えば、符号化対象ピクチャ内の周辺参照領域内のある画素の輝度画素値をp0とし、当該画素と同等位置の、参照ピクチャ内の周辺参照領域内の画素の輝度画素値をp1とする。インター予測部126は、周辺参照領域内の複数の画素に対して、A×p1+B=p0を最適化する係数A及びBを輝度補正パラメータとして算出する。
次に、インター予測部126は、動きベクトルで指定された参照ピクチャ内の参照画像に対して輝度補正パラメータを用いて輝度補正処理を行うことで、符号化対象ブロックに対する予測画像を生成する。例えば、参照画像内の輝度画素値をp2とし、輝度補正処理後の予測画像の輝度画素値をp3とする。インター予測部126は、参照画像内の各画素に対して、A×p2+B=p3を算出することで輝度補正処理後の予測画像を生成する。
なお、図39における周辺参照領域の形状は一例であり、これ以外の形状を用いてもよい。また、図39に示す周辺参照領域の一部が用いられてもよい。例えば、上隣接画素および左隣接画素のそれぞれから間引いた所定数の画素を含む領域を周辺参照領域として用いてもよい。また、周辺参照領域は、符号化対象ブロックに隣接する領域に限らず、符号化対象ブロックに隣接しない領域であってもよい。画素に関する所定数は、予め定められていてもよい。
また、図39に示す例では、参照ピクチャ内の周辺参照領域は、符号化対象ピクチャ内の周辺参照領域から、符号化対象ピクチャの動きベクトルで指定される領域であるが、他の動きベクトルで指定される領域であってもよい。例えば、当該他の動きベクトルは、符号化対象ピクチャ内の周辺参照領域の動きベクトルであってもよい。
なお、ここでは、符号化装置100における動作を説明したが、復号装置200における動作も典型的には同様である。
なお、LIC処理は輝度のみではなく、色差に適用してもよい。このとき、Y、Cb、およびCrのそれぞれに対して個別に補正パラメータを導出してもよいし、いずれかに対して共通の補正パラメータを用いてもよい。
また、LIC処理はサブブロック単位で適用してもよい。例えば、カレントサブブロックの周辺参照領域と、カレントサブブロックのMVで指定された参照ピクチャ内の参照サブブロックの周辺参照領域を用いて補正パラメータを導出してもよい。
[予測制御部]
予測制御部128は、イントラ予測信号(イントラ予測部124から出力される信号)及びインター予測信号(インター予測部126から出力される信号)のいずれかを選択し、選択した信号を予測信号として減算部104及び加算部116に出力する。
図1に示すように、種々の符号化装置例では、予測制御部128は、エントロピー符号化部110に入力される予測パラメータを出力してもよい。エントロピー符号化部110は、予測制御部128から入力されるその予測パラメータ、量子化部108から入力される量子化係数に基づいて、符号化ビットストリーム(またはシーケンス)を生成してもよい。予測パラメータは復号装置に使用されてもよい。復号装置は、符号化ビットストリームを受信して復号し、イントラ予測部124、インター予測部126および予測制御部128において行われる予測処理と同じ処理を行ってもよい。予測パラメータは、選択予測信号(例えば、動きベクトル、予測タイプ、または、イントラ予測部124またはインター予測部126で用いられた予測モード)、または、イントラ予測部124、インター予測部126および予測制御部128において行われる予測処理に基づく、あるいはその予測処理を示す、任意のインデックス、フラグ、もしくは値を含んでいてもよい。
[符号化装置の実装例]
図40は、符号化装置100の実装例を示すブロック図である。符号化装置100は、プロセッサa1及びメモリa2を備える。例えば、図1に示された符号化装置100の複数の構成要素は、図40に示されたプロセッサa1及びメモリa2によって実装される。
プロセッサa1は、情報処理を行う回路であり、メモリa2にアクセス可能な回路である。例えば、プロセッサa1は、動画像を符号化する専用又は汎用の電子回路である。プロセッサa1は、CPUのようなプロセッサであってもよい。また、プロセッサa1は、複数の電子回路の集合体であってもよい。また、例えば、プロセッサa1は、図1等に示された符号化装置100の複数の構成要素のうち、複数の構成要素の役割を果たしてもよい。
メモリa2は、プロセッサa1が動画像を符号化するための情報が記憶される専用又は汎用のメモリである。メモリa2は、電子回路であってもよく、プロセッサa1に接続されていてもよい。また、メモリa2は、プロセッサa1に含まれていてもよい。また、メモリa2は、複数の電子回路の集合体であってもよい。また、メモリa2は、磁気ディスク又は光ディスク等であってもよいし、ストレージ又は記録媒体等と表現されてもよい。また、メモリa2は、不揮発性メモリでもよいし、揮発性メモリでもよい。
例えば、メモリa2には、符号化される動画像が記憶されてもよいし、符号化された動画像に対応するビット列が記憶されてもよい。また、メモリa2には、プロセッサa1が動画像を符号化するためのプログラムが記憶されていてもよい。
また、例えば、メモリa2は、図1等に示された符号化装置100の複数の構成要素のうち、情報を記憶するための構成要素の役割を果たしてもよい。例えば、メモリa2は、図1に示されたブロックメモリ118及びフレームメモリ122の役割を果たしてもよい。より具体的には、メモリa2には、再構成済みブロック及び再構成済みピクチャ等が記憶されてもよい。
なお、符号化装置100において、図1等に示された複数の構成要素の全てが実装されなくてもよいし、上述された複数の処理の全てが行われなくてもよい。図1等に示された複数の構成要素の一部は、他の装置に含まれていてもよいし、上述された複数の処理の一部は、他の装置によって実行されてもよい。
[復号装置]
次に、例えば上記の符号化装置100から出力された符号化信号(符号化ビットストリーム)を復号可能な復号装置について説明する。図41は、実施の形態に係る復号装置200の機能構成を示すブロック図である。復号装置200は、動画像をブロック単位で復号する動画像復号装置である。
図41に示すように、復号装置200は、エントロピー復号部202と、逆量子化部204と、逆変換部206と、加算部208と、ブロックメモリ210と、ループフィルタ部212と、フレームメモリ214と、イントラ予測部216と、インター予測部218と、予測制御部220と、を備える。
復号装置200は、例えば、汎用プロセッサ及びメモリにより実現される。この場合、メモリに格納されたソフトウェアプログラムがプロセッサにより実行されたときに、プロセッサは、エントロピー復号部202、逆量子化部204、逆変換部206、加算部208、ループフィルタ部212、イントラ予測部216、インター予測部218及び予測制御部220として機能する。また、復号装置200は、エントロピー復号部202、逆量子化部204、逆変換部206、加算部208、ループフィルタ部212、イントラ予測部216、インター予測部218及び予測制御部220に対応する専用の1以上の電子回路として実現されてもよい。
以下に、復号装置200の全体的な処理の流れを説明した後に、復号装置200に含まれる各構成要素について説明する。
[復号処理の全体フロー]
図42は、復号装置200による全体的な復号処理の一例を示すフローチャートである。
まず、復号装置200のエントロピー復号部202は、固定サイズのブロック(例えば、128×128画素)の分割パターンを特定する(ステップSp_1)。この分割パターンは、符号化装置100によって選択された分割パターンである。そして、復号装置200は、その分割パターンを構成する複数のブロックのそれぞれに対してステップSp_2~Sp_6の処理を行う。
つまり、エントロピー復号部202は、復号対象ブロック(カレントブロックともいう)の符号化された量子化係数および予測パラメータを復号(具体的にはエントロピー復号)する(ステップSp_2)。
次に、逆量子化部204および逆変換部206は、複数の量子化係数に対して逆量子化および逆変換を行うことによって、複数の予測残差(すなわち差分ブロック)を復元する(ステップSp_3)。
次に、イントラ予測部216、インター予測部218および予測制御部220の全てまたは一部からなる予測処理部は、カレントブロックの予測信号(予測ブロックともいう)を生成する(ステップSp_4)。
次に、加算部208は、差分ブロックに予測ブロックを加算することによってカレントブロックを再構成画像(復号画像ブロックともいう)に再構成する(ステップSp_5)。
そして、この再構成画像が生成されると、ループフィルタ部212は、その再構成画像に対してフィルタリングを行う(ステップSp_6)。
そして、復号装置200は、ピクチャ全体の復号が完了したか否かを判定し(ステップSp_7)、完了していないと判定する場合(ステップSp_7のNo)、ステップSp_1からの処理を繰り返し実行する。
図示されたように、ステップSp_1~Sp_7の処理は、復号装置200によってシーケンシャルに行われる。あるいは、それらの処理のうちの一部の複数の処理が並列に行われてもよく、順番の入れ替え等が行われてもよい。
[エントロピー復号部]
エントロピー復号部202は、符号化ビットストリームをエントロピー復号する。具体的には、エントロピー復号部202は、例えば、符号化ビットストリームから二値信号に算術復号する。そして、エントロピー復号部202は、二値信号を多値化(debinarize)する。エントロピー復号部202は、ブロック単位で量子化係数を逆量子化部204に出力する。エントロピー復号部202は、実施の形態におけるイントラ予測部216、インター予測部218および予測制御部220に、符号化ビットストリーム(図1参照)に含まれている予測パラメータを出力してもよい。イントラ予測部216、インター予測部218および予測制御部220は、符号化装置側におけるイントラ予測部124、インター予測部126および予測制御部128で行われる処理と同じ予測処理を実行することができる。
[逆量子化部]
逆量子化部204は、エントロピー復号部202からの入力である復号対象ブロック(以下、カレントブロックという)の量子化係数を逆量子化する。具体的には、逆量子化部204は、カレントブロックの量子化係数の各々について、当該量子化係数に対応する量子化パラメータに基づいて当該量子化係数を逆量子化する。そして、逆量子化部204は、カレントブロックの逆量子化された量子化係数(つまり変換係数)を逆変換部206に出力する。
[逆変換部]
逆変換部206は、逆量子化部204からの入力である変換係数を逆変換することにより予測誤差を復元する。
例えば符号化ビットストリームから読み解かれた情報がEMT又はAMTを適用することを示す場合(例えばAMTフラグが真)、逆変換部206は、読み解かれた変換タイプを示す情報に基づいてカレントブロックの変換係数を逆変換する。
また例えば、符号化ビットストリームから読み解かれた情報がNSSTを適用することを示す場合、逆変換部206は、変換係数に逆再変換を適用する。
[加算部]
加算部208は、逆変換部206からの入力である予測誤差と予測制御部220からの入力である予測サンプルとを加算することによりカレントブロックを再構成する。そして、加算部208は、再構成されたブロックをブロックメモリ210及びループフィルタ部212に出力する。
[ブロックメモリ]
ブロックメモリ210は、イントラ予測で参照されるブロックであって復号対象ピクチャ(以下、カレントピクチャという)内のブロックを格納するための記憶部である。具体的には、ブロックメモリ210は、加算部208から出力された再構成ブロックを格納する。
[ループフィルタ部]
ループフィルタ部212は、加算部208によって再構成されたブロックにループフィルタを施し、フィルタされた再構成ブロックをフレームメモリ214及び表示装置等に出力する。
符号化ビットストリームから読み解かれたALFのオン/オフを示す情報がALFのオンを示す場合、局所的な勾配の方向及び活性度に基づいて複数のフィルタの中から1つのフィルタが選択され、選択されたフィルタが再構成ブロックに適用される。
[フレームメモリ]
フレームメモリ214は、インター予測に用いられる参照ピクチャを格納するための記憶部であり、フレームバッファと呼ばれることもある。具体的には、フレームメモリ214は、ループフィルタ部212によってフィルタされた再構成ブロックを格納する。
[予測処理部(イントラ予測部・インター予測部・予測制御部)]
図43は、復号装置200の予測処理部で行われる処理の一例を示すフローチャートである。なお、予測処理部は、イントラ予測部216、インター予測部218、および予測制御部220の全てまたは一部の構成要素からなる。
予測処理部は、カレントブロックの予測画像を生成する(ステップSq_1)。この予測画像は、予測信号または予測ブロックともいう。なお、予測信号には、例えばイントラ予測信号またはインター予測信号がある。具体的には、予測処理部は、予測ブロックの生成、差分ブロックの生成、係数ブロックの生成、差分ブロックの復元、および復号画像ブロックの生成が行われることによって既に得られている再構成画像を用いて、カレントブロックの予測画像を生成する。
再構成画像は、例えば、参照ピクチャの画像であってもよいし、カレントブロックを含むピクチャであるカレントピクチャ内の復号済みのブロックの画像であってもよい。カレントピクチャ内の復号済みのブロックは、例えばカレントブロックの隣接ブロックである。
図44は、復号装置200の予測処理部で行われる処理の他の例を示すフローチャートである。
予測処理部は、予測画像を生成するための方式またはモードを判定する(ステップSr_1)。例えば、この方式またはモードは、例えば予測パラメータなどに基づいて判定されてもよい。
予測処理部は、予測画像を生成するためのモードとして第1の方式を判定した場合には、その第1の方式にしたがって予測画像を生成する(ステップSr_2a)。また、予測処理部は、予測画像を生成するためのモードとして第2の方式を判定した場合には、その第2の方式にしたがって予測画像を生成する(ステップSr_2b)。また、予測処理部は、予測画像を生成するためのモードとして第3の方式を判定した場合には、その第3の方式にしたがって予測画像を生成する(ステップSr_2c)。
第1の方式、第2の方式、および第3の方式は、予測画像を生成するための互いに異なる方式であって、それぞれ例えば、インター予測方式、イントラ予測方式、および、それら以外の予測方式であってもよい。これらの予測方式では、上述の再構成画像を用いてもよい。
[イントラ予測部]
イントラ予測部216は、符号化ビットストリームから読み解かれたイントラ予測モードに基づいて、ブロックメモリ210に格納されたカレントピクチャ内のブロックを参照してイントラ予測を行うことで、予測信号(イントラ予測信号)を生成する。具体的には、イントラ予測部216は、カレントブロックに隣接するブロックのサンプル(例えば輝度値、色差値)を参照してイントラ予測を行うことでイントラ予測信号を生成し、イントラ予測信号を予測制御部220に出力する。
なお、色差ブロックのイントラ予測において輝度ブロックを参照するイントラ予測モードが選択されている場合は、イントラ予測部216は、カレントブロックの輝度成分に基づいて、カレントブロックの色差成分を予測してもよい。
また、符号化ビットストリームから読み解かれた情報がPDPCの適用を示す場合、イントラ予測部216は、水平/垂直方向の参照画素の勾配に基づいてイントラ予測後の画素値を補正する。
[インター予測部]
インター予測部218は、フレームメモリ214に格納された参照ピクチャを参照して、カレントブロックを予測する。予測は、カレントブロック又はカレントブロック内のサブブロック(例えば4x4ブロック)の単位で行われる。例えば、インター予測部218は、符号化ビットストリーム(例えば、エントロピー復号部202から出力される予測パラメータ)から読み解かれた動き情報(例えば動きベクトル)を用いて動き補償を行うことでカレントブロック又はサブブロックのインター予測信号を生成し、インター予測信号を予測制御部220に出力する。
符号化ビットストリームから読み解かれた情報がOBMCモードを適用することを示す場合、インター予測部218は、動き探索により得られたカレントブロックの動き情報だけでなく、隣接ブロックの動き情報も用いて、インター予測信号を生成する。
また、符号化ビットストリームから読み解かれた情報がFRUCモードを適用することを示す場合、インター予測部218は、符号化ストリームから読み解かれたパターンマッチングの方法(バイラテラルマッチング又はテンプレートマッチング)に従って動き探索を行うことにより動き情報を導出する。そして、インター予測部218は、導出された動き情報を用いて動き補償(予測)を行う。
また、インター予測部218は、BIOモードが適用される場合に、等速直線運動を仮定したモデルに基づいて動きベクトルを導出する。また、符号化ビットストリームから読み解かれた情報がアフィン動き補償予測モードを適用することを示す場合には、インター予測部218は、複数の隣接ブロックの動きベクトルに基づいてサブブロック単位で動きベクトルを導出する。
[MV導出 > ノーマルインターモード]
符号化ビットストリームから読み解かれた情報がノーマルインターモードを適用することを示す場合、インター予測部218は、符号化ストリームから読み解かれた情報に基づいて、MVを導出し、そのMVを用いて動き補償(予測)を行う。
図45は、復号装置200におけるノーマルインターモードによるインター予測の例を示すフローチャートである。
復号装置200のインター予測部218は、ブロックごとに、そのブロックに対して動き補償を行う。インター予測部218は、時間的または空間的にカレントブロックの周囲にある複数の復号済みブロックのMVなどの情報に基づいて、そのカレントブロックに対して複数の候補MVを取得する(ステップSs_1)。つまり、インター予測部218は、候補MVリストを作成する。
次に、インター予測部218は、ステップSs_1で取得された複数の候補MVの中から、N個(Nは2以上の整数)の候補MVのそれぞれを予測動きベクトル候補(予測MV候補ともいう)として、所定の優先順位に従って抽出する(ステップSs_2)。なお、その優先順位は、N個の予測MV候補のそれぞれに対して予め定められていてもよい。
次に、インター予測部218は、入力されたストリーム(すなわち符号化ビットストリーム)から予測動きベクトル選択情報を復号し、その復号された予測動きベクトル選択情報を用いて、そのN個の予測MV候補の中から1つの予測MV候補を、カレントブロックの予測動きベクトル(予測MVともいう)として選択する(ステップSs_3)。
次に、インター予測部218は、入力されたストリームから差分MVを復号し、その復号された差分MVである差分値と、選択された予測動きベクトルとを加算することによって、カレントブロックのMVを導出する(ステップSs_4)。
最後に、インター予測部218は、その導出されたMVと復号済み参照ピクチャとを用いてカレントブロックに対して動き補償を行ことにより、そのカレントブロックの予測画像を生成する(ステップSs_5)。
[予測制御部]
予測制御部220は、イントラ予測信号及びインター予測信号のいずれかを選択し、選択した信号を予測信号として加算部208に出力する。全体的に、復号装置側の予測制御部220、イントラ予測部216およびインター予測部218の構成、機能、および処理は、符号化装置側の予測制御部128、イントラ予測部124およびインター予測部126の構成、機能、および処理と対応していてもよい。
[復号装置の実装例]
図46は、復号装置200の実装例を示すブロック図である。復号装置200は、プロセッサb1及びメモリb2を備える。例えば、図41に示された復号装置200の複数の構成要素は、図46に示されたプロセッサb1及びメモリb2によって実装される。
プロセッサb1は、情報処理を行う回路であり、メモリb2にアクセス可能な回路である。例えば、プロセッサb1は、符号化された動画像(すなわち符号化ビットストリーム)を復号する専用又は汎用の電子回路である。プロセッサb1は、CPUのようなプロセッサであってもよい。また、プロセッサb1は、複数の電子回路の集合体であってもよい。また、例えば、プロセッサb1は、図41等に示された復号装置200の複数の構成要素のうち、複数の構成要素の役割を果たしてもよい。
メモリb2は、プロセッサb1が符号化ビットストリームを復号するための情報が記憶される専用又は汎用のメモリである。メモリb2は、電子回路であってもよく、プロセッサb1に接続されていてもよい。また、メモリb2は、プロセッサb1に含まれていてもよい。また、メモリb2は、複数の電子回路の集合体であってもよい。また、メモリb2は、磁気ディスク又は光ディスク等であってもよいし、ストレージ又は記録媒体等と表現されてもよい。また、メモリb2は、不揮発性メモリでもよいし、揮発性メモリでもよい。
例えば、メモリb2には、動画像が記憶されてもよいし、符号化ビットストリームが記憶されてもよい。また、メモリb2には、プロセッサb1が符号化ビットストリームを復号するためのプログラムが記憶されていてもよい。
また、例えば、メモリb2は、図41等に示された復号装置200の複数の構成要素のうち、情報を記憶するための構成要素の役割を果たしてもよい。具体的には、メモリb2は、図41に示されたブロックメモリ210及びフレームメモリ214の役割を果たしてもよい。より具体的には、メモリb2には、再構成済みブロック及び再構成済みピクチャ等が記憶されてもよい。
なお、復号装置200において、図41等に示された複数の構成要素の全てが実装されなくてもよいし、上述された複数の処理の全てが行われなくてもよい。図41等に示された複数の構成要素の一部は、他の装置に含まれていてもよいし、上述された複数の処理の一部は、他の装置によって実行されてもよい。
[各用語の定義]
各用語は一例として、以下のような定義であってもよい。
ピクチャは、モノクロフォーマットにおける複数の輝度サンプルの配列、又は、4:2:0、4:2:2及び4:4:4のカラーフォーマットにおける複数の輝度サンプルの配列及び複数の色差サンプルの2つの対応配列である。ピクチャは、フレーム又はフィールドであってもよい。
フレームは、複数のサンプル行0、2、4、・・・が生じるトップフィールド、及び、複数のサンプル行1、3、5、・・・が生じるボトムフィールドの組成物である。
スライスは、1つの独立スライスセグメント、及び、(もしあれば)同じアクセスユニット内の(もしあれば)次の独立スライスセグメントに先行する全ての後続の従属スライスセグメントに含まれる整数個の符号化ツリーユニットである。
タイルは、ピクチャにおける特定のタイル列及び特定のタイル行内の複数の符号化ツリーブロックの矩形領域である。タイルは、タイルのエッジを跨ぐループフィルタが依然として適用されてもよいが、独立して復号及び符号化され得ることが意図された、フレームの矩形領域であってもよい。
ブロックは、複数のサンプルのMxN(N行M列)配列、又は、複数の変換係数のMxN配列である。ブロックは、1つの輝度及び2つの色差の複数の行列からなる複数の画素の正方形又は矩形の領域であってもよい。
CTU(符号化ツリーユニット)は、3つのサンプル配列を有するピクチャの複数の輝度サンプルの符号化ツリーブロックであってもよいし、複数の色差サンプルの2つの対応符号化ツリーブロックであってもよい。あるいは、CTUは、モノクロピクチャと、3つの分離されたカラー平面及び複数のサンプルの符号化に用いられるシンタックス構造を用いて符号化されるピクチャとのいずれかの複数のサンプルの符号化ツリーブロックであってもよい。
スーパーブロックは、1つ又は2つのモード情報ブロックを構成し、又は、再帰的に4つの32×32ブロックに分割され、さらに分割され得る64×64画素の正方形ブロックであってもよい。
[係数符号化の第1態様]
図47は、第1態様に係る基本的な係数符号化方法を示すフローチャートである。具体的には、図47は、イントラ符号化又はインター符号化で予測残差が得られた領域の係数符号化方法を表している。以下の説明では、符号化装置100が行う動作が示されている。復号装置200は、符号化装置100が行う動作に対応する動作を行ってもよい。例えば、復号装置200は、符号化装置100が行う直交変換及び符号化に対応する逆直交変換及び復号を行ってもよい。
図47において、last_sig_coeff、subblock_flag、thres及びCCBが示されている。last_sig_coeffは、ブロック内をスキャンしたときにゼロでない係数(非ゼロ係数)が最初に出現する座標位置を表すパラメータである。subblock_flagは、4x4サブブロック(16変換係数レベルともいう)の中にゼロでない係数があるかどうかを表すフラグである。subblock_flagは、coded_sub_block_flag、または、サブブロックフラグとも表現される。
thresは、ブロック単位で決められた定数である。thresは、予め決められていてもよい。thresは、ブロックのサイズに応じて違う値でもよいし、ブロックのサイズによらず同じ値でもよい。thresは、直交変換の適用がある場合と適用がない場合とで違う値をとってもよい。thresは、last_sig_coeffによってブロックにおいて定められる座標位置に依存して決められてもよい。
CCBは、CABAC(コンテキスト適応二値算術符号化)のコンテキストモードで符号化されたbinの個数を表す。つまり、CCBは、CABACのコンテキストモードに基づく符号化の処理回数を表す。コンテキストモードは、レギュラーモードとも呼ばれる。ここでは、CABACのコンテキストモードに基づく符号化をCABAC符号化又はコンテキスト適応符号化と呼ぶ。また、CABACのバイパスモードに基づく符号化をバイパス符号化と呼ぶ。バイパス符号化の処理は、CABAC符号化の処理よりも軽い。
CABAC符号化は、符号化対象の信号を二値化して得られたbinの列を各binに対する0と1との発生確率に基づいて符号化bit列に変換する処理である。なお、CCBは、残差係数符号化に用いられる全てのフラグの数をカウントしてもよいし、残差係数符号化に用いられる一部のフラグの数をカウントしてもよい。バイパス符号化は、各binに対する0と1との可変の発生確率を使わずに(言い換えれば固定の確率を用いて)、binの列における1binを符号化bit列の1bitとして符号化する処理である。
例えば、符号化装置100は、CCB値とthres値とを比較して、係数符号化の方式を決定する。
具体的には、図47において、まず、CCBが0に初期化される(S101)。そして、ブロックに対する直交変換の適用有無が判定される(S102)。ブロックに対して直交変換の適用がある場合(S102でYes)、符号化装置100は、last_sig_coeffを符号化する(S131)。そして、符号化装置100は、サブブロック毎にループ処理を行う(S141~S148)。
サブブロック毎のループ処理(S141~S148)において、符号化装置100は、そのサブブロックに関するsubblock_flagを符号化する。そして、subblock_flagが0とは異なる場合(S146でYes)、符号化装置100は、そのサブブロック内の16個の係数を後述の第1符号化方式で符号化する(S147)。
また、ブロックに対して直交変換の適用がない場合(S102でNo)、符号化装置100は、サブブロック毎にループ処理を行う(S121~S128)。
サブブロック毎のループ処理(S121~S128)において、符号化装置100は、CCBがthres以下であるか否かを判定する(S122)。CCBがthres以下であるならば(S122でYes)、符号化装置100は、subblock_flagをCABAC符号化で符号化する(S123)。そして、符号化装置100は、CCBをカウントアップする(S124)。そうでないなら(S122でNo)、符号化装置100は、subblock_flagをバイパス符号化で符号化する(S125)。
そして、subblock_flagが0とは異なる場合(S126でYes)、符号化装置100は、そのサブブロック内の16個の係数を後述の第2符号化方式で符号化する(S127)。
ブロックに対して直交変換の適用がない場合は、例えば直交変換がスキップされた場合であってもよい。CCBは、第1符号化方式及び第2符号化方式でも用いられる。CCBは、サブブロック単位で初期化されてもよい。その場合、thresは、ブロックで固定の値ではなく、サブブロック毎に変化する値であってもよい。
なお、ここでは、CCBは0からカウントアップされthresに到達したかどうかが判定されているが、CCBはthres(又は特定の値)からカウントダウンされ0に到達したかどうかが判定されてもよい。
図48は、図47に示された第1符号化方式の詳細を示すフローチャートである。第1符号化方式において、サブブロック内の複数の係数が符号化される。その際、サブブロック内の各係数の係数情報フラグ毎に第1ループ処理(S151~S156)が行われ、また、サブブロック内の係数毎に第2ループ処理(S161~S165)が行われる。
第1ループ処理(S151~S156)では、係数の1つ以上の属性をそれぞれ示す1つ以上の係数情報フラグが順次符号化される。1つ以上の係数情報フラグは、後述のsig_flag、gt1_flag、parity_flag及びgt3_flagを含んでいてもよい。そして、CCBがthresを超えない範囲で、1つ以上の係数情報フラグがCABAC符号化で順次符号化され、符号化のたびにCCBが1つずつカウントアップされる。CCBがthresを超えた後、係数情報フラグは符号化されない。
つまり、第1ループ処理(S151~S156)において、符号化装置100は、CCBがthres以下であるか否かを判定する(S152)。そして、CCBがthres以下である場合(S152でYes)、符号化装置100は、係数情報フラグをCABAC符号化で符号化する(S153)。そして、符号化装置100は、CCBをカウントアップする(S154)。CCBがthres以下でない場合(S152でNo)、符号化装置100は、第1ループ処理(S151~S156)を終了する。
第2ループ処理(S161~S165)では、係数情報フラグが符号化された係数について、係数情報フラグで表現されない残値(つまり係数情報フラグを用いて係数の値を再構成するための残値)であるremainderがゴロムライス符号化で符号化される。係数情報フラグが符号化されなかった係数は、そのままゴロムライス符号化で符号化される。なお、ゴロムライス符号化を用いず、他の符号化方式を用いて、remainderが符号化されてもよい。
つまり、第2ループ処理(S161~S165)において、符号化装置100は、処理対象の係数に対応する係数情報フラグが符号化されているか否かを判定する(S162)。そして、係数情報フラグが符号化されている場合(S162でYes)、符号化装置100は、remainderをゴロムライス符号化で符号化する(S163)。係数情報フラグが符号化されていない場合(S162でNo)、符号化装置100は、係数の値をゴロムライス符号化で符号化する(S164)。
なお、ここでは、ループ処理の数は2であるが、ループ処理の数は、2とは異なっていてもよい。
上述されたsig_flagは、AbsLevelが非ゼロであるかどうかを表すフラグである。AbsLevelは、係数の値であって、より具体的には、係数の絶対値である。gt1_flagは、AbsLevelが1より大きいかどうかを表すフラグである。parity_flagは、AbsLevelの第1bitを表すフラグであり、AbsLevelが奇数であるか偶数であるかを表すフラグである。gt3_flagは、AbsLevelが3より大きいかどうかを表すフラグである。
gt1_flag及びgt3_flagは、それぞれ、abs_gt1_flag及びabs_gt3_flagと表現される場合がある。また、例えば、上述されたremainderとして、(Abslevel-4)/2の値がゴロムライス符号化で符号化されてもよい。
上記の1つ以上の係数情報フラグとは異なる他の1つ以上の係数情報フラグが符号化されてもよい。例えば、一部の係数情報フラグが符号化されなくてもよい。上記の1つ以上の係数情報フラグに含まれる係数情報フラグが、他の意味を持つ係数情報フラグ又はパラメータに置き換えられてもよい。
図49は、図47に示された第2符号化方式の詳細を示すフローチャートである。第2符号化方式において、サブブロック内の複数の係数が符号化される。その際、サブブロック内の各係数の係数情報フラグ毎に第1ループ処理(S171~S176)が行われ、また、サブブロック内の係数毎に第2ループ処理(S181~S185)が行われる。
第1ループ処理(S171~S176)では、係数の1つ以上の属性をそれぞれ示す1つ以上の係数情報フラグが順次符号化される。1つ以上の係数情報フラグは、sig_flag、sign_flag、gt1_flag、parity_flag、gt3_flag、gt5_flag、gt7_flag及びgt9_flagを含んでいてもよい。
ここで、sign_flagは、係数の正負符号を表すフラグである。gt5_flagは、AbsLevelが5より大きいかどうかを表すフラグである。gt7_flagは、AbsLevelが7より大きいかどうかを表すフラグである。gt9_flagは、AbsLevelが9より大きいかどうかを表すフラグである。gt5_flag、gt7_flag及びgt9_flagは、それぞれ、abs_gt5_flag、abs_gt7_flag及びabs_gt9_flagと表現される場合がある。また、AbsLevelがx(xは1以上の整数)より大きいかどうかを表すフラグをまとめて、gtx_flagまたはabs_gtx_flagと表現されてもよい。AbsLevelとは、例えば、変換係数レベルの絶対値である。
なお、上記の1つ以上の係数情報フラグとは異なる他の1つ以上の係数情報フラグが符号化されてもよい。例えば、一部の係数情報フラグが符号化されなくてもよい。上記の1つ以上の係数情報フラグに含まれる係数情報フラグが、他の意味を持つ係数情報フラグ又はパラメータに置き換えられてもよい。
上記の1つ以上の係数情報フラグはCABAC符号化で順次符号化される。そして、符号化のたびにCCBが1つずつカウントアップされる。CCBがthresを超えた後、係数情報フラグは、バイパス符号化で符号化される。
つまり、第1ループ処理(S171~S176)において、符号化装置100は、CCBがthres以下であるか否かを判定する(S172)。そして、CCBがthres以下である場合(S172でYes)、符号化装置100は、係数情報フラグをCABAC符号化で符号化する(S173)。そして、符号化装置100は、CCBをカウントアップする(S174)。CCBがthres以下でない場合(S172でNo)、符号化装置100は、係数情報フラグをバイパス符号化で符号化する(S175)。
CCBがthresを超える前と超えた後とで、図49の第2ループ処理のシンタックスは変わらない。つまり、係数情報フラグがCABAC符号化で符号化されても、係数情報フラグがバイパス符号化で符号化されても、第2ループ処理(S181~S185)では、以下の同じ処理が行われる。
具体的には、第2ループ処理(S181~S185)において、符号化装置100は、係数情報フラグで表現されない残値(つまり係数情報フラグを用いて係数の値を再構成するための残値)であるremainderをゴロムライス符号化で符号化する(S183)。なお、ゴロムライス符号化を用いず、他の符号化方式を用いて、remainderが符号化されてもよい。
なお、ここでは、ループ処理の数は2であるが、ループ処理の数は、2とは異なっていてもよい。
図47、図48及び図49の通り、本態様の基本的な動作では、直交変換の適用があるか直交変換の適用がないかで、CABAC符号化の処理回数の制限に含められるか否かが異なるフラグが存在する。また、直交変換の適用がある場合と直交変換の適用がない場合とで、係数符号化のシンタックスが異なる。これにより、回路をそれぞれ用意しなければならない可能性がある。したがって、回路構成が複雑になる可能性がある。
[係数符号化の第1態様の第1の例]
図50は、第1態様の第1の例に係る係数符号化方法を示すフローチャートである。図50の例において、last_sig_coeffの後処理(S132)及びsubblock_flagの処理(S142~S145)が図47の例とは異なる。
図47では、直交変換の適用がある場合、CCBは、sig_flag、parity_flag、及び、gtX_flag(X=1、3)に対して、カウントアップされている。図50の例では、last_sig_coeff及びsubblock_flagに対しても、CCBがカウントアップされている。一方、直交変換の適用がない場合の処理フローは、図47の例と同様である。
つまり、図50の例において、符号化装置100は、last_sig_coeffを符号化し(S131)、その後、last_sig_coeffの符号化におけるCABAC符号化の処理回数をCCBに加算する(S132)。
また、符号化装置100は、subblock_flagの符号化前に、CCBがthres以下であるか否かを判定する(S142)。そして、CCBがthres以下である場合(S142でYes)、符号化装置100は、subblock_flagをCABAC符号化で符号化する(S143)。そして、符号化装置100は、CCBに1を加算する(S144)。一方、CCBがthres以下でない場合(S142でNo)、符号化装置100は、subblock_flagをバイパス符号化で符号化する(S145)。
[係数符号化の第1態様の第1の例の効果]
図50の例によると、直交変換が行われる場合と行われない場合とで、subblock_flagの符号化の処理フローを共通化し統一することが可能になる場合がある。したがって、直交変換が行われる場合と行われない場合とで一部の回路が共有化される可能性があり、回路規模が削減される可能性がある。その結果、直交変換の有無で分かれる複数の処理フローが、last_sig_coeffの有無を除いて、同じになる可能性がある。
例えば、ブロックレベルでCABAC符号化の処理回数を制限しても、図47の例では、CCBがthresに達した後、subblock_flagがCABAC符号化で符号化されてしまう。一方、図50の場合、CCBがthresに達した後、subblock_flagがCABAC符号化で符号化されない。これにより、CABAC符号化の処理回数が適切にthresに制限される可能性がある。
なお、last_sig_coeffにおけるCABAC符号化の処理回数は、CCBに含まれなくてもよい。また、thresは、last_sig_coeffによってブロックにおいて定められる座標位置に依存して決められてもよい。
また、符号化装置100は、CCBがthresを超えた後においてsubblock_flagの値を常に1と決定して符号化してもよい。CCBがthresを超えた後においてsubblock_flagの値が常に1であると定められている場合、符号化装置100は、CCBがthresを超えた後においてsubblock_flagを符号化しなくてもよい。
また、直交変換の適用がない場合も、符号化装置100は、CCBがthresを超えた後においてsubblock_flagの値を常に1と決定して符号化してもよい。また、この場合においても、CCBがthresを超えた後においてsubblock_flagの値が常に1であると定められている場合、符号化装置100は、CCBがthresを超えた後においてsubblock_flagを符号化しなくてもよい。
[係数符号化の第1態様の第2の例]
図51は、第1態様の第2の例に係る係数符号化方法を示すフローチャートである。図51の例において、subblock_flagの処理(S123)が、図47の例とは異なる。
図47では、直交変換の適用がない場合、CCBは、sig_flag、parity_flag、gtX_flag(X=1、3、5、7、9)、及び、subblock_flagに対して、カウントアップされている。図51の例では、subblock_flagに対して、CCBはカウントアップされない。一方、直交変換の適用がある場合の処理フローは、図47の例と同様である。
つまり、図51の例において、符号化装置100は、CCBがthresを超えているか否かにかかわらず、CCBをカウントアップせずに、常に、subblock_flagをCABAC符号化で符号化する(S123)。
[係数符号化の第1態様の第2の例の効果]
図51の例によると、直交変換が行われる場合と行われない場合とで、subblock_flagの符号化の処理を共通化し統一することが可能になる場合がある。したがって、直交変換が行われる場合と行われない場合とで一部の回路が共有化される可能性があり、回路規模が削減される可能性がある。その結果、直交変換の有無で分かれる複数の処理フローは、last_sig_coeffの有無を除いて、同じになる可能性がある。
また、図50に比べて、図51では処理が簡素化されている。したがって、回路規模が削減される可能性がある。また、subblock_flagに関する0又は1の出現頻度は、周辺の状況に従って偏りを有しやすいと想定される。したがって、subblock_flagのCABAC符号化において、処理遅延の増加量に対して符号量の削減量が大きいと想定される。したがって、subblock_flagのCABAC符号化をCABAC符号化の処理回数の制限に入れずに行うことは有用である。
なお、last_sig_coeffに対するCABAC符号化の処理回数は、CCBに含まれてもよい。また、thresは、last_sig_coeffによってブロックにおいて定められる座標位置に依存して決められてもよい。
[係数符号化の第2態様]
[係数符号化の第2態様の第1の例]
図52は、第2態様の第1の例に係る係数符号化方法を示すフローチャートである。図52の例において、ブロックに対して直交変換の適用がない場合でも、サブブロック内の16個の係数を第1符号化方式で符号化すること(S127a)が、図47の例とは異なる。
つまり、図52の例において、符号化装置100は、ブロックに対して直交変換の適用がない場合において、図49に示された第2符号化方式ではなく、図48に示された第1符号化方式で、サブブロック内の16個の係数を符号化する(S127a)。すなわち、符号化装置100は、直交変換の適用がある場合でも、直交変換の適用がない場合でも、図49に示された第2符号化方式ではなく、図48に示された第1符号化方式で、サブブロック内の16個の係数を符号化する。
より具体的には、符号化装置100は、直交変換の有無にかかわらず、図48に示された第1符号化方式に従い、第1ループ処理において、CCBがthresを超えた場合、バイパス符号化を用いず、係数情報フラグの符号化をスキップする。そして、符号化装置100は、第2ループ処理において、処理対象の係数に対応する係数情報フラグが符号化されていない場合、係数情報フラグを用いずに、係数の値をゴロムライス符号化で符号化する。
なお、図48の第1ループ処理において係数情報フラグを符号化するためのシンタックスは、直交変換の適用がある場合と適用がない場合とで異なっていてもよい。例えば、直交変換の適用がある場合の1つ以上の係数情報フラグと、直交変換の適用がない場合の1つ以上の係数情報フラグとの間で、それらの係数情報フラグの一部又は全部が異なっていてもよい。
[係数符号化の第2態様の第1の例の効果]
図52の例により、係数情報フラグの符号化のシンタックスが直交変換の有無によって異なる場合でも、直交変換の有無にかかわらず、CCBがthresを超えた後においてサブブロック内の16個の係数の符号化のシンタックスが共通化される可能性がある。これにより、直交変換の適用がある場合と直交変換の適用がない場合とで一部の回路が共有化される可能性があり、回路規模が削減される可能性がある。
また、CCBがthresを超えた後、係数は、バイパス符号化によって符号化される係数情報フラグと、ゴロムライス符号化によって符号化される残値情報とに分けられることなく符号化される。したがって、情報量の増加が抑制される可能性があり、符号量の増加が抑制される可能性がある。
[係数符号化の第2態様の第2の例]
図53は、第2態様の第2の例に係る係数符号化方法を示すフローチャートである。図53の例において、ブロックに対して直交変換の適用がある場合でも、サブブロック内の16個の係数を第2符号化方式で符号化すること(S147a)が、図47の例とは異なる。
つまり、図53の例において、符号化装置100は、ブロックに対して直交変換の適用がある場合において、図48に示された第1符号化方式ではなく、図49に示された第2符号化方式で、サブブロック内の16個の係数を符号化する(S147a)。すなわち、符号化装置100は、直交変換の適用がある場合でも、直交変換の適用がない場合でも、図48に示された第1符号化方式ではなく、図49に示された第2符号化方式で、サブブロック内の16個の係数を符号化する。
より具体的には、符号化装置100は、直交変換の有無にかかわらず、図49に示された第2符号化方式に従い、第1ループ処理において、CCBがthresを超えた場合、符号化をスキップせず、係数情報フラグをバイパス符号化で符号化する。そして、符号化装置100は、第2ループ処理において、係数情報フラグに依存するremainderをゴロムライス符号化で符号化する。
なお、図49の第1ループ処理において係数情報フラグを符号化するためのシンタックスは、直交変換の適用がある場合と適用がない場合とで異なっていてもよい。例えば、直交変換の適用がある場合の1つ以上の係数情報フラグと、直交変換の適用がない場合の1つ以上の係数情報フラグとの間で、それらの係数情報フラグの一部又は全部が異なっていてもよい。
[係数符号化の第2態様の第2の例の効果]
図53の例により、係数情報フラグの符号化のシンタックスが直交変換の有無によって異なる場合でも、直交変換の有無にかかわらず、CCBがthresを超えた後においてサブブロック内の16個の係数の符号化のシンタックスが共通化される可能性がある。これにより、直交変換の適用がある場合と直交変換の適用がない場合とで一部の回路が共有化される可能性があり、回路規模が削減される可能性がある。
[係数符号化の第3態様]
図54は、第3態様に係る基本的な第1符号化方式を示すシンタックス図である。図54に示されたシンタックスは、図47に示された第1符号化方式のシンタックスの一例に対応する。基本的に、第1符号化方式は、直交変換の適用がある場合に用いられる。
ここで、係数情報フラグ及びパラメータは、第1態様において示された係数情報フラグ及びパラメータと同様である。なお、ここで示される複数の係数情報フラグは一例であり、他の複数の係数情報フラグが符号化されてもよい。例えば、一部の係数情報フラグが符号化されなくてもよい。また、ここで示される係数情報フラグが、他の意味を持つ係数情報フラグ又はパラメータに置き換えられてもよい。
図54の例における最初のforループは、図48の例における第1ループ処理に対応する。この最初のforループにおいて、CCBが残っていれば、つまり、CCBが閾値を超えなければ、sig_flag等の係数情報フラグがCABAC符号化で符号化される。CCBが残っていなければ、係数情報フラグが符号化されない。なお、本例に、第2態様の第2の例が適用されてもよい。つまり、CCBが残っていなければ、係数情報フラグがバイパス符号化で符号化されてもよい。
上から2つ目のforループ、及び、上から3つ目のforループは、図48の例における第2ループ処理に対応する。上から2つ目のforループでは、係数情報フラグが符号化された係数に関して、残値がゴロムライス符号化で符号化される。上から3つ目のforループでは、係数情報フラグが符号化されなかった係数に関して、係数がゴロムライス符号化で符号化される。なお、本例に、第2態様の第2の例が適用されることにより、常に残値がゴロムライス符号化で符号化されてもよい。
上から4つ目のforループでは、sign_flagがバイパス符号化で符号化される。
本態様で説明されたシンタックスが、図47、図48、図50、図51及び図52の各例に適用されてもよい。
図55は、第3態様に係る基本的な第2符号化方式を示すシンタックス図である。図55に示されたシンタックスは、図47の第2符号化方式のシンタックスの一例に対応する。基本的に、第2符号化方式は、直交変換の適用がない場合に用いられる。
なお、ここで示される複数の係数情報フラグは一例であり、他の複数の係数情報フラグが符号化されてもよい。例えば、一部の係数情報フラグが符号化されなくてもよい。また、ここで示される係数情報フラグが、他の意味を持つ係数情報フラグ又はパラメータに置き換えられてもよい。
図55の例における最初の5つのforループは、図49の例における第1ループ処理に対応する。この最初の5つのforループにおいて、CCBが残っていれば、つまり、CCBが閾値を超えなければ、sig_flag等の係数情報フラグがCABAC符号化で符号化される。CCBが残っていなければ、係数情報フラグがバイパス符号化で符号化される。なお、本例に、第2態様の第1の例が適用されてもよい。つまり、CCBが残っていなければ、係数情報フラグが符号化されなくてもよい。
上から6つ目のforループは、図49の例における第2ループ処理に対応する。上から6つ目のforループでは、残値がゴロムライス符号化で符号化される。なお、本例に、第2態様の第1の例が適用されてもよい。つまり、係数情報フラグが符号化された係数に関して、残値がゴロムライス符号化で符号化されてもよい。そして、係数情報フラグが符号化されなかった係数に関して、係数がゴロムライス符号化で符号化されてもよい。
本態様で説明されたシンタックスが、図47、図49、図50、図51及び図53の各例に適用されてもよい。
直交変換の適用がない場合(図55)において、直交変換の適用がある場合(図54)に比べて、係数情報フラグを符号化するためのループ処理の数が多い。よって、直交変換の適用がない場合において、直交変換の適用がある場合に比べて、ハードウェアの処理量が増えてしまう場合がある。また、係数符号化のシンタックスが直交変換を行うか否かで異なるため、回路をそれぞれ用意しなければならない可能性がある。したがって、回路が複雑になる可能性がある。
[係数符号化の第3態様の第1の例]
図56は、第3態様の第1の例に係る第2符号化方式を示すシンタックス図である。図56に示されたシンタックスは、図47の第2符号化方式の一例に対応する。図47の第1符号化方式には、図54に示されたシンタックスが用いられてもよい。なお、本例は、第3態様の他の例と組み合わされてもよいし、他の態様と組み合わされてもよい。
図56の例における最初のforループは、図49の例における第1ループ処理に対応する。この最初のforループにおいて、CCBが8以上残っていれば、つまり、8が加算されたCCBが閾値を超えなければ、係数に従って、最大8つの係数情報フラグがCABAC符号化で符号化され、CCBが最大8回カウントアップされる。CCBが8以上残っていなければ、つまり、8が加算されたCCBが閾値を超えれば、係数に従って、8つの係数情報フラグがバイパス符号化で符号化される。
言い換えれば、8つの係数情報フラグが符号化される前に、8つの係数情報フラグをCABAC符号化で符号化することが可能であるか否かが包括的に判定される。そして、8つの係数情報フラグをCABAC符号化で符号化することが可能である場合、最大8つの係数情報フラグがCABAC符号化で符号化される。
なお、本例に、第2態様の第1の例が適用されてもよい。つまり、CCBが8以上残っていなければ、8つの係数情報フラグが符号化されなくてもよい。すなわち、この場合、8つの係数情報フラグがバイパス符号化で符号化されることなく、8つの係数情報フラグの符号化がスキップされてもよい。
また、図56の通り、係数の値に従って、8つの係数情報フラグのうち1つ以上の係数情報フラグの符号化が省略されてもよい。例えば、sig_flagが0である場合、残りの7つの係数情報フラグの符号化が省略されてもよい。
上から2つ目のforループは、図49の例における第2ループ処理に対応する。上から2つ目のforループでは、残値がゴロムライス符号化で符号化される。なお、本例に、第2態様の第1の例が適用されてもよい。つまり、8つの係数情報フラグが符号化された係数に関して、残値がゴロムライス符号化で符号化され、8つの係数情報フラグが符号化されなかった係数に関して、係数がゴロムライス符号化で符号化されてもよい。
ここで示される複数の係数情報フラグは一例であり、他の複数の係数情報フラグが符号化されてもよい。例えば、一部の係数情報フラグが符号化されなくてもよい。また、ここで示される係数情報フラグが、他の意味を持つ係数情報フラグ又はパラメータに置き換えられてもよい。
また、図55の例と図56の例とが組み合わされてもよい。例えば、図55の例において、sig_flag及びsign_flag等の4つの係数情報フラグが符号化される前に、4つの係数情報フラグをCABAC符号化で符号化することが可能であるか否かが包括的に判定されてもよい。
[係数符号化の第3態様の第1の例の効果]
図56の例では、CABAC符号化で符号化される全ての係数情報フラグが、1つのループ処理において符号化される。すなわち、図55の例と比較して、図56の例では、ループ処理の数が少ない。したがって、処理量が削減される可能性がある。
また、図54の例と図56の例とでは、複数の係数情報フラグをCABAC符号化で符号化するためのループ処理の数が一致している。したがって、図54の例と図55の例との組み合わせと比べて、図54の例と図56の例との組み合わせでは、回路の変更部分が少なくなる可能性がある。
また、複数の係数情報フラグが符号化される前に、複数の係数情報フラグをCABAC符号化で符号化することが可能であるか否かが包括的に判定されるため、処理が簡素化され、処理遅延が削減される可能性がある。
なお、直交変換の適用がある場合と、直交変換の適用がない場合との両方において、複数の係数情報フラグが符号化される前に、複数の係数情報フラグをCABAC符号化で符号化することが可能であるか否かが包括的に判定されてもよい。これにより、直交変換の適用があるブロックに用いられる符号化方式と、直交変換の適用がないブロックに用いられる符号化方式との差がさらに小さくなり、回路規模がさらに小さくなる可能性がある。
また、図56の例では、sig_flagからabs_gt9_flagまでが1つのループに含まれるが、符号化方式は、これに限られない。複数のループ(例えば2つのループ)が用いられてもよく、ループ毎に複数の係数情報フラグをCABAC符号化で符号化することが可能であるか否かが包括的に判定されてもよい。1つのループと比較すると処理は増えるが、図55の例と比較すると処理削減の効果が同様に得られる。
[係数符号化の第3態様の第2の例]
図57は、第3態様の第2の例に係る第2符号化方式を示すシンタックス図である。図57に示されたシンタックスは、図47の第2符号化方式の一例に対応する。図47の第1符号化方式には、図54に示されたシンタックスが用いられてもよい。なお、本例は、第3態様の他の例と組み合わされてもよいし、他の態様と組み合わされてもよい。
図57の例における最初のforループは、図49の例における第1ループ処理に対応する。この最初のforループにおいて、CCBが7以上残っていれば、つまり、7が加算されたCCBが閾値を超えなければ、係数に従って、最大7つの係数情報フラグがCABAC符号化で符号化され、CCBが最大7回カウントアップされる。CCBが7以上残っていなければ、つまり、7が加算されたCCBが閾値を超えれば、係数に従って、7つの係数情報フラグがバイパス符号化で符号化される。
言い換えれば、7つの係数情報フラグが符号化される前に、7つの係数情報フラグをCABAC符号化で符号化することが可能であるか否かが包括的に判定される。そして、7つの係数情報フラグをCABAC符号化で符号化することが可能である場合、7つの係数情報フラグがCABAC符号化で符号化される。
なお、本例に、第2態様の第1の例が適用されてもよい。つまり、CCBが7以上残っていなければ、7つの係数情報フラグが符号化されなくてもよい。すなわち、この場合、7つの係数情報フラグがバイパス符号化で符号化されることなく、7つの係数情報フラグの符号化がスキップされてもよい。
また、図57の通り、係数の値に従って、7つの係数情報フラグのうち1つ以上の係数情報フラグの符号化が省略されてもよい。例えば、sig_flagが0である場合、残りの6つの係数情報フラグの符号化が省略されてもよい。
上から2つ目のforループは、図49の例における第2ループ処理に対応する。上から2つ目のforループでは、残値がゴロムライス符号化で符号化される。なお、本例に、第2態様の第1の例が適用されてもよい。つまり、7つの係数情報フラグが符号化された係数に関して、残値がゴロムライス符号化で符号化され、7つの係数情報フラグが符号化されなかった係数に関して、係数がゴロムライス符号化で符号化されてもよい。
上から3つ目のforループでは、CCBが残っていれば、つまり、CCBが閾値を超えなければ、sign_flagがCABAC符号化で符号化され、CCBがカウントアップされる。CCBが残っていなければ、sign_flagがバイパス符号化で符号化される。なお、図54の例と同様に、sign_flagは、常にバイパス符号化で符号化されてもよい。
ここで示される複数の係数情報フラグは一例であり、他の複数の係数情報フラグが符号化されてもよい。例えば、一部の係数情報フラグが符号化されなくてもよい。また、ここで示される係数情報フラグが、他の意味を持つ係数情報フラグ又はパラメータに置き換えられてもよい。
また、図55の例と図57の例とが組み合わされてもよい。例えば、図55の例において、sig_flag及びsign_flag等の4つの係数情報フラグが符号化される前に、4つの係数情報フラグをCABAC符号化で符号化することが可能であるか否かが包括的に判定されてもよい。
[係数符号化の第3態様の第2の例の効果]
図56の例と同様に、図57の例では、係数の大きさを閾値と比較して表すための複数の係数情報フラグ(具体的には、abs_gt3_flag及びabs_gt5_flag等)が、1つのループ処理において符号化される。したがって、図55の例と比較して、図57の例では、ループ処理の数が少ない。そのため、処理量が削減される可能性がある。
図56の例と比べると、図57の例において、複数の係数情報フラグを符号化するためのループ処理の数は増えてしまう。しかし、図56の例に比べて、図57の例において、図54の例に似ている部分がある。例えば、sign_flagは、最後に符号化されている。したがって、図54の例と図56の例との組み合わせに比べて、図54の例と図57の例との組み合わせにおいて、回路の変更部分が少なくなる可能性がある。
また、複数の係数情報フラグが符号化される前に、複数の係数情報フラグをCABAC符号化で符号化することが可能であるか否かが包括的に判定されるため、処理が簡素化され、処理遅延が削減される可能性がある。
なお、直交変換の適用がある場合と、直交変換の適用がない場合との両方において、複数の係数情報フラグが符号化される前に、複数の係数情報フラグをCABAC符号化で符号化することが可能であるか否かが包括的に判定されてもよい。これにより、直交変換の適用があるブロックに用いられる符号化方式と、直交変換の適用がないブロックに用いられる符号化方式との差がさらに小さくなり、回路規模がさらに小さくなる可能性がある。
また、図57の例では、sig_flagからabs_gt9_flagまでが1つのループに含まれるが、符号化方式は、これに限られない。複数のループ(例えば2つのループ)が用いられてもよく、ループ毎に複数の係数情報フラグをCABAC符号化で符号化することが可能であるか否かが包括的に判定されてもよい。1つのループと比較すると処理は増えるが、図55の例と比較すると処理削減の効果が同様に得られる。
[係数符号化の第4態様]
図58は、第4態様に係る係数情報フラグとコンテキスト番号との基本的な対応を示す図である。具体的には、図58において、直交変換の適用がない場合に符号化される係数情報フラグをCABAC符号化で符号化するためのコンテキスト番号の決定方法の一例が示されている。1つのコンテキスト番号は、0又は1の値に対する1つの出現確率を指し示す。符号化装置100は、この出現確率で係数情報フラグの算術符号化を行う。
例えば、符号化対象の係数情報フラグが0である可能性が高い場合、0の値に対して高い出現確率を指し示すコンテキスト番号に基づいてその係数情報フラグがCABAC符号化で符号化されることで、符号量が削減される可能性がある。すなわち、適切な出現確率を指し示す適切なコンテキスト番号に基づいて係数フラグの算術符号化が行われることで、符号量が削減される可能性がある。
図59は、第4態様に係る基本的な複数の隣接係数を示す概念図である。図59において、xは、符号化対象の係数を示す。
係数スキャンは、図59に示された4x4のサブブロックの左上から斜めに行われる。具体的には、左上が(0,0)、右上が(3,0)、左下が(0,3)、右下が(3,3)で表現される座標系において、(0,0)、(0,1)、(1,0)(0,2)、(1,1)、・・・、(3,3)の順で係数スキャンが行われる。L及びUは、xに隣接する2つの係数を示す。係数L及びUのそれぞれの位置は、係数xの位置に隣接する。直交変換の適用がない場合、係数x、L及びUの3つの位置は、それぞれ、3つの画素位置に対応する。
この場合、図58の例では、係数xのsig_flagを符号化するためのコンテキスト番号として、係数L及びUのsig_flagの和が用いられる。つまり3つのコンテキスト番号が選択的に用いられる。また、parity_flag及びgtX_flag(gtXのXは例えば1、3、5、7又は9である)のそれぞれに対して、固定の1つのコンテキスト番号が用いられる。
つまり、図58では、sig_flag以外の係数情報フラグには、1つのコンテキスト番号のみが用いられている。一般に、直交変換が適用されないブロックにおいては、横又は縦の方向に並ぶ複数の画素が相関を有する傾向がある。しかし、1つのコンテキスト番号のみが用いられる場合、この傾向に対応するコンテキスト番号が選択されない。
例えば、gt3_flagが符号化される場合において、符号化済みの複数の係数のうちgt3_flagが符号化された係数が、符号化対象の係数の横のライン又は縦のラインに存在しない場合がある。この場合、過去に符号化された他のgt3_flagの値と、符号化対象のgt3_flagの値とが異なる可能性が高い。結果として符号化対象のgt3_flagの値の適切な出現確率が用いられずに、圧縮効率が低下する可能性がある。
[係数符号化の第4態様の第1の例]
図60は、第4態様の第1の例に係る複数の隣接係数を示す概念図である。図60において、xは、符号化対象の係数を示す。x0、x1及びx2のそれぞれは、xに隣接する3つの符号化済みの係数を示す。直交変換の適用がない場合、係数x、x0、x1及びx2の4つの位置は、それぞれ、4つの画素位置に対応する。また、以下において、x、x0、x1及びx2のそれぞれは、係数の絶対値である係数絶対値を示す場合がある。
この場合、3つの隣接係数絶対値x0、x1及びx2に基づいて、xの予測値であるpredが、以下のように定められる。
ただし、xがブロック境界に位置しているため隣接画素が存在しない場合、その隣接画素の係数は0とみなされ、predが求められる。
ブロックに対して直交変換が適用されない場合、ブロックにおいて、縦又は横の方向に沿うエッジが存在する傾向がある。ここで、エッジは、周りと比べてその部分だけ画素値が大きい画素の集まりである。上記のpredに関して、係数xがエッジ上にある場合とエッジ上にない場合の両方において、予測精度が高いと想定される。理由は以下の通りである。
図61Aは、水平方向のエッジの位置に存在する符号化対象係数を示す概念図である。図61Aにおいて、斜線部分がエッジであり、xがエッジ上にある。この場合、x1がx0以上であるので、predの算出の条件では、条件式(3A)が成り立ちやすい。そして、この場合、x1はx2以上であるから、pred=x1である。すなわち、エッジ上のxに対するpredが、エッジ上のx1として求められる。
図61Bは、垂直方向のエッジの位置に存在する符号化対象係数を示す概念図である。図61Bでも同様の論理で、predは、エッジ上のx2と求められる。具体的には、図61Bにおいて、斜線部分がエッジであり、xがエッジ上にある。この場合、x2がx0以上であるので、predの算出の条件では、条件式(3A)が成り立ちやすい。そして、この場合、x2はx1以上であるから、pred=x2である。すなわち、エッジ上のxに対するpredが、エッジ上のx2として求められる。
図62Aは、水平方向のエッジの位置に隣接する符号化対象係数を示す概念図である。図62Aにおいて、斜線部分がエッジであり、xがエッジの外にある。この場合、x0は、エッジ上にあり、x1より大きいので、predの算出の条件では、条件式(3B)が成り立ちやすい。そして、この場合、x2はx1以上であるからpred=x1である。すなわち、エッジの外のxに対するpredが、エッジの外のx1と求められる。
図62Bは、垂直方向のエッジの位置に隣接する符号化対象係数を示す概念図である。図62Bでも同様の論理で、predは、エッジの外のx2として求められる。具体的には、図62Bにおいて、斜線部分がエッジであり、xがエッジの外にある。この場合、x0は、エッジ上にあり、x2より大きいので、predの算出の条件では、条件式(3B)が成り立ちやすい。そして、この場合、x1はx2以上であるからpred=x2である。すなわち、エッジの外のxに対するpredが、エッジの外のx2として求められる。
なお、xの周辺においてエッジが存在しない場合、xは、x0、x1及びx2の画素から滑らかに変化する値に対応すると想定される。したがって、条件式(3C)のように、平面予測値に対応するx1+x2-x0が、predの値として求められる。
本例では、上記のpredに基づいて、係数xのsig_flagのコンテキスト番号が決定される。係数符号化のためのシンタックスとして、第3態様の第1の例のシンタックスが用いられるが、他のシンタックスが用いられてもよい。
xに隣接するx0、x1及びx2で表現される係数絶対値の最小値は、第1ループ処理で処理された複数の係数情報フラグのみに基づいて推定される。すなわち、y0、y1及びy2が、元々の係数絶対値である場合、推定されるx0、x1及びx2の最小値は、以下のように表現される。ここで、a%bは、aをbで割った余りを表す。
この3つの値を用いて、predが算出される。predは、第1ループ処理で処理された複数の係数情報フラグのみに基づいて推定されるxの最小値の予測値であって、具体的には、min(x,11-!(x%2))の値の予測値である。そして、係数xのsig_flagのコンテキスト番号であるsig_ctxは、以下のように定められる。
図58では、sig_flagのコンテキスト番号を決定するため、左及び上の2つの係数を用いて3種類のコンテキスト番号が使い分けられている。本例では、符号化対象係数に隣接する3つの係数を用いて2種類のコンテキスト番号が使い分けられている。
なお、本例では、符号化対象係数に隣接する3つの係数を用いて、係数の予測値であるpredが求められている。predを求めるための隣接係数の数は、他の数でもよい。また、3つの係数が本例とは別の位置から取得されてもよい。また、predを求めるための方法が変更されてもよい。また、係数絶対値x0、x1及びx2は、同一ループ処理内の全てのフラグを使って推定されてもよいし、一部のフラグのみを使って推定されてもよい。
また、図58の例では、sig_flag以外の係数情報フラグに関して、1つのコンテキスト番号が用いられている。しかし、sig_flag以外の係数情報フラグについても、本例と同様の方法が用いられることにより、複数のコンテキスト番号が選択的に用いられてもよい。例えば、符号化対象の係数であるxのparity_flag及びgtX_flag(gtXのXは例えば1、3、5、7又は9である)のコンテキスト番号であるparity_ctx及びgtX_ctxは、以下のように導出されてもよい。
この例では、各係数情報フラグのコンテキスト番号は、2種類のコンテキスト番号から、predの値によって選択される。2種類のコンテキスト番号が、互いに異なる複数の係数情報フラグで共通化されてもよい。また、別の決定方法でコンテキスト番号が決定される係数情報フラグが存在してもよい。例えば、sig_flagのコンテキスト番号の決定方法には図58の方法が用いられ、それ以外の係数情報フラグのコンテキスト番号の決定方法には本例の方法が用いられてもよいし、その逆でもよい。
[係数情報符号化の第4態様の第1の例の効果]
上述したように、predに関して、係数の予測精度が高い可能性がある。したがって、例えばgtX_ctxに関して予測値であるpredが閾値であるX(gtXのX)よりも大きいか小さいかどうかでコンテキスト番号が切り替えられることで、適切な発生確率が用いられる可能性があり、圧縮率が高くなる可能性がある。また、sig_flagについても、図58及び図59のような2つの隣接係数を用いる例と比較して、本例では、係数の高い予測精度に従って、圧縮率が高くなる可能性がある。
[係数情報符号化の第4態様の第2の例]
第4態様の第1の例では、係数xに関する係数情報フラグのコンテキスト番号を選択するため、その係数情報フラグが符号化されるループ処理内で既に符号化された複数種の係数情報フラグの値を用いて求められる予測値predが用いられている。
本例では、符号化対象の係数に対する符号化対象の係数情報フラグの値が、符号化対象の係数に隣接する3つの係数に対する3つの係数情報フラグの値であって、符号化対象の係数情報フラグと同種の3つの係数情報フラグの値を用いて予測される。
例えば、符号化対象の係数であるxのgt3_flagが符号化される場合、gt3_flagの予測値であるgt3_flag_predは、以下のように求められる。ここで、x0、x1及びx2は、図60のように、xに隣接する3つの係数である。
そして、gt3_flag_predは、係数xのgt3_flagのコンテキスト番号であるgt3_ctxとして定められる。
なお、本例において、予測に用いられる3つの隣接係数の3つのgt3_flagの値、及び、予測値gt3_flag_predのそれぞれは、0又は1である。したがって、gt3_flag_predは、以下のようなbit演算のみで表される。
同様に、sig_flag、parity_flag、gt1_flag、gt5_flag、gt7_flag及びgt9_flagのそれぞれについても、上記の方法で、係数情報フラグの予測値が求められる。そして、コンテキスト番号が定められる。
なお、係数情報フラグの予測に用いられる係数の数が変更されてもよいし、係数の位置が変更されてもよい。また、係数情報フラグの予測方法は、変更されてもよい。また、係数情報フラグのコンテキスト番号の候補数が増やされてもよい。
[係数符号化の第4態様の第2の例の効果]
第4態様の第2の例における係数情報フラグの予測でも、第4態様の第1の例における係数情報フラグの予測と同様に、係数がエッジの上にある場合とエッジ上にない場合との両方で、予測精度が高くなる可能性がある。そして、結果としてcabacの圧縮率が高くなる可能性がある。
また、係数情報フラグの予測値がbit演算のみで求められるので、第4態様の第1の例のpredの算出よりも処理量が削減される可能性がある。
[係数符号化の第4態様の第3の例]
本例も、図47の例において、直交変換の適用がない場合の処理フローに関する。係数符号化のためのシンタックスとして、第3態様の第1の例、つまり図56の例のシンタックスが用いられるが他のシンタックスが用いられてもよい。図56の例では、係数情報フラグで表されない係数の残値であるremainderがゴロムライス符号で符号化される。remainderの説明は、係数符号化の第1態様に記載の通りである。
本例では、ゴロムライス符号化で用いられるライスパラメータの選択に、第4態様の第1の例で述べたような、符号化対象の係数に隣接する3つの係数を用いて予測される値であるpredが用いられる。
まず、ゴロムライス符号化の概要を説明する。remainderの符号化では、ゴロムライス符号化という手法が用いられている。ゴロムライス符号化では、remainderの値が、プレフィックスとサフィックスとを用いて二値化される。
プレフィックスに対して、ライス符号が用いられる。また、ライスパラメータg(gは例えば、0、1又は2の3値)によって符号化方法が切り替えられる。また、サフィックスに対して、ユーナリー符号及び指数ゴロム符号が用いられる。
図63は、第4態様の第3の例に係る残値とゴロムライス符号との対応を示す概念図である。具体的には、図63は、ライスパラメータの値に応じて、remainderがゴロムライス符号化で符号化された場合のプレフィックス及びサフィックスのそれぞれの符号化binを示す。
ここで、xは、符号化対象の係数を示す。xは、係数の絶対値を示していてもよい。remainder[x]は、図49の処理フローにおけるxのremainderを示す。remainder[x0]、remainder[x1]及びremainder[x2]は、それぞれ、図60におけるxに隣接する3つの係数の3つのremainderを示す。
また、符号化対象の係数に隣接する3つの係数のいずれかが、1つ以上の係数情報フラグで表現されている、つまりremainderが発生していない場合、その係数のremainderは0と表されてもよい。そしてremainder[x]の予測値remainder_predを以下のように定められる。
そして、remainder[x]のゴロムライス符号化に用いられるライスパラメータrは、以下のように導出される。
この場合、ライスパラメータテーブルは、例えば以下のように定義されてもよい。
なお、remainder[x]の予測に用いられる係数の数が変更されてもよいし、remainder[x]の予測に用いられる係数の位置が変更されてもよい。remainder_predを求めるための方法が変更されてもよい。また、ライスパラメータテーブルの値が変更されてもよい。上記で挙げられたライスパラメータの算出方法とは異なる算出方法が用いられてもよい。第4態様の第3の例が、第4態様の第1の例、第4態様の第2の例、又は、他の態様と組み合わせて使用されてもよい。
また、remainder_predは、符号化対象の係数に隣接する係数のremainderではなく、第4態様の第1の例のように、符号化対象の係数に隣接する係数の絶対値に基づいて導出されてもよい。
具体的には、符号化対象の係数に隣接する3つの係数の3つの絶対値x0、x1及びx2に基づいて、図60を用いて説明された方法と同様の方法で、xの予測値であるremainder_predが算出されてもよい。そして、remainder_predを用いて上述された方法でライスパラメータが導出されてもよい。
上記の場合、remainder_predは、係数のremainderではなく、係数の絶対値に基づいているため大きくなる。したがって、ライスパラメータテーブルは、remainderに基づくremainder_predに対するライスパラメータと比較して、絶対値に基づくremainder_predに対するライスパラメータが小さくなるように設計されてもよい。
もしくは、remainder_predを例えば下記のようにremainder_pred’に変換されてもよい。そして、remainderに基づくremainder_predに対してライスパラメータを導出するためのテーブルと同じテーブルが、remainder_pred’に対してライスパラメータを導出するためのテーブルとして用いられてもよい。
[係数符号化の第4態様の第3の例の効果]
第4態様の第3の例におけるremainderの予測でも、第4態様の第1の例における係数情報フラグの予測と同様に、係数がエッジの上にある場合とエッジ上にない場合との両方で、予測精度が高くなる可能性がある。
また、例えば、ライスパラメータテーブルは、ライスパラメータテーブルに代入されるremaider_predに応じて得られるライスパラメータを用いてゴロムライス符号化で符号化されたremainderの符号長が最短になるように設計されている。そのため、実際に、このライスパラメータを用いてゴロムライス符号化で符号化されたremainderの符号長が最短になる可能性がある。
[係数符号化の変形例]
上記の係数符号化に関する任意の複数の態様及び任意の複数の例が組み合わされてもよい。また、上記の係数符号化に関する複数の態様、複数の例及びこれらの任意の複数の組み合わせのいずれかが、輝度のブロックに対して適用されてもよいし、色差のブロックに対して適用されてもよい。その際に、輝度のブロックと色差のブロックとで、異なるthresが用いられてもよい。
また、直交変換が適用されないブロックであって、BDPCM(Block-based Delta Pulse Code Modulation)が適用されるブロックに対して、上記の係数符号化に関する複数の態様、複数の例及びこれらの任意の複数の組み合わせのいずれかが用いられてもよい。BDPCMが適用されるブロックでは、ブロック内の各残差信号が、その残差信号に垂直又は水平に隣接する残差信号で減算されることで情報量が削減される。
また、BDPCMが適用されるブロックであって、色差のブロックに対して、上記の係数符号化に関する複数の態様、複数の例及びこれらの任意の複数の組み合わせのいずれかが用いられてもよい。
また、ISP(Intra Sub-Partitions)が適用されるブロックに対して、上記の係数符号化に関する複数の態様、複数の例及びこれらの任意の複数の組み合わせのいずれかが用いられてもよい。ISPでは、イントラブロックが縦又は横に分割され、各サブブロックのイントラ予測が、そのサブブロックに隣接するサブブロックの画素値を用いて行われる。
また、ISPが適用されるブロックであって、色差のブロックに対して、上記の係数符号化に関する複数の態様、複数の例及びこれらの任意の複数の組み合わせのいずれかが用いられてもよい。
また、色差のブロックの符号化モードとして、色差結合符号化(Chroma Joint Coding)が用いられる場合、上記の係数符号化に関する複数の態様、複数の例及びこれらの任意の複数の組み合わせのいずれかが用いられてもよい。ここで、色差結合符号化は、Cbの値からCrの値を導出する符号化方法である。
また、直交変換の適用がある場合におけるthresの値が、直交変換の適用がない場合におけるthresの値の2倍であってもよい。あるいは、直交変換の適用がない場合におけるthresの値が、直交変換の適用がある場合におけるthresの値の2倍であってもよい。
また、色差結合符号化が用いられる場合に関してのみ、直交変換の適用がある場合におけるCCBのthresの値が、直交変換の適用がない場合におけるCCBのthresの値の2倍であってもよい。あるいは、色差結合符号化が用いられる場合に関してのみ、直交変換の適用がない場合におけるCCBのthresの値が、直交変換の適用がある場合におけるCCBのthresの値の2倍であってもよい。
また、上記の係数符号化に関する複数の態様及び複数の例において、直交変換の適用がないブロックにおける複数の係数のスキャン順は、直交変換の適用があるブロックにおける複数の係数のスキャン順と同じであってもよい。
また、第3態様、及び、第3態様の複数の例において、シンタックスのいくつかの例が示されているが、適用されるシンタックスは、これらの例に限られない。例えば、第3態様とは異なる複数の態様、及び、それらの複数の例において、第3態様及びその複数の例に示された複数のシンタックスのいずれとも異なるシンタックスが用いられてもよい。16個の係数を符号化するための様々なシンタックスが適用され得る。
なお、係数符号化の複数の態様及び複数の例において、符号化の処理フローが示されているが、ビットストリームを送るか受け取るかの違いを除いて、復号化の処理フローも符号化の処理フローと基本的に同じである。例えば、復号装置200は、符号化装置100が行う直交変換及び符号化に対応する逆直交変換及び復号を行ってもよい。
また、係数符号化の複数の態様及び複数の例に関する各フローチャートは一例である。各フローチャートに対して、新たに条件又は処理が追加されたり、条件又は処理が削除されたり、条件又は処理が変更されたりしてもよい。
また、ここで、係数は、ブロック又はサブブロック等の画像を構成する値である。具体的には、画像を構成する複数の係数が、画像の複数の画素値から直交変換を介して得られてもよい。また、画像を構成する複数の係数が、画像の複数の画素値から直交変換を介さずに得られてもよい。つまり、画像を構成する複数の係数が、画像の複数の画素値自体であってもよい。また、各画素値は、原画像の画素値であってもよいし、予測残差の値であってもよい。また、係数は、量子化されていてもよい。
[構成及び処理の代表例]
上記に示された符号化装置100及び復号装置200の構成及び処理の代表例を以下に示す。
図64は、符号化装置100の動作を示すフローチャートである。例えば、符号化装置100は、回路、及び、回路に接続されたメモリを備える。符号化装置100が備える回路及びメモリは、図40に示されるプロセッサa1及びメモリa2に対応していてもよい。符号化装置100の回路が、図64に示された動作を行う。具体的には、符号化装置100の回路は、動作において、画像のブロックを符号化する(S211)。
例えば、符号化装置100の回路は、ブロックに対して直交変換が適用されない場合において、ブロックに含まれるサブブロックの複数の係数に対して、複数のループ処理を行うことにより、複数の係数を符号化してもよい。ここで、複数のループ処理のそれぞれは、係数単位で繰り返される処理である。
また、複数のループ処理のうちの1つのループ処理では、複数の係数のそれぞれについて、当該係数の複数の属性をそれぞれ示す複数の係数情報フラグが符号化されてもよい。複数の係数情報フラグは、係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグと、係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグとを含んでいてもよい。
これにより、直交変換が適用されない場合において、係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグの処理と、係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグの処理とが1つのループ処理で行われ、ループ処理の数が削減される可能性がある。そして、直交変換の適用があるブロックに対するループ処理の数が少ない場合、直交変換の適用があるブロックに用いられる符号化方式と、直交変換の適用がないブロックに用いられる符号化方式との差が小さくなり、回路規模が小さくなる可能性がある。
また、複数の係数情報フラグは、係数の値が7よりも大きいか否かを示す係数情報フラグと、係数の値が9よりも大きいか否かを示す係数情報フラグとを含んでいてもよい。
これにより、係数の値が3よりも大きいか否か、係数の値が5よりも大きいか否か、係数の値が7よりも大きいか否か、及び、係数の値が9よりも大きいか否かの4つの係数情報フラグが1つのループ処理で処理され、ループ処理の数が削減される可能性がある。そして、直交変換の適用があるブロックに用いられる符号化方式と、直交変換の適用がないブロックに用いられる符号化方式との差が小さくなり、回路規模が小さくなる可能性がある。
なお、符号化装置100の回路によって行われる上記の動作は、符号化装置100のエントロピー符号化部110によって行われてもよい。
図65は、復号装置200の動作を示すフローチャートである。例えば、復号装置200は、回路、及び、回路に接続されたメモリを備える。復号装置200が備える回路及びメモリは、図46に示されるプロセッサb1及びメモリb2に対応していてもよい。復号装置200の回路が、図65に示された動作を行う。具体的には、復号装置200の回路は、動作において、画像のブロックを復号する(S221)。
例えば、復号装置200の回路は、ブロックに対して逆直交変換が適用されない場合において、ブロックに含まれるサブブロックの複数の係数に対して、複数のループ処理を行うことにより、複数の係数を復号してもよい。ここで、複数のループ処理のそれぞれは、係数単位で繰り返される処理である。
また、複数のループ処理のうちの1つのループ処理では、複数の係数のそれぞれについて、当該係数の複数の属性をそれぞれ示す複数の係数情報フラグが復号されてもよい。複数の係数情報フラグは、係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグと、係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグとを含んでいてもよい。
これにより、逆直交変換が適用されない場合において、係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグの処理と、係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグの処理とが1つのループ処理で行われ、ループ処理の数が削減される可能性がある。そして、逆直交変換の適用があるブロックに対するループ処理の数が少ない場合、逆直交変換の適用があるブロックに用いられる復号方式と、逆直交変換の適用がないブロックに用いられる復号方式との差が小さくなり、回路規模が小さくなる可能性がある。
また、複数の係数情報フラグは、係数の値が7よりも大きいか否かを示す係数情報フラグと、係数の値が9よりも大きいか否かを示す係数情報フラグとを含んでいてもよい。
これにより、係数の値が3よりも大きいか否か、係数の値が5よりも大きいか否か、係数の値が7よりも大きいか否か、及び、係数の値が9よりも大きいか否かの4つの係数情報フラグが1つのループ処理で処理され、ループ処理の数が削減される可能性がある。そして、逆直交変換の適用があるブロックに用いられる復号方式と、逆直交変換の適用がないブロックに用いられる復号方式との差が小さくなり、回路規模が小さくなる可能性がある。
なお、復号装置200の回路によって行われる上記の動作は、復号装置200のエントロピー復号部202によって行われてもよい。
[その他の例]
上述された各例における符号化装置100及び復号装置200は、それぞれ、画像符号化装置及び画像復号装置として利用されてもよいし、動画像符号化装置及び動画像復号装置として利用されてもよい。
また、符号化装置100及び復号装置200は、上述された動作のうち一部の動作のみを行い、他の装置が、他の動作を行ってもよい。また、符号化装置100及び復号装置200は、上述された複数の構成要素のうち一部の構成要素のみを備え、他の装置が、他の構成要素を備えてもよい。
また、上述された各例の少なくとも一部が、符号化方法又は復号方法として利用されてもよいし、その他の方法として利用されてもよい。
また、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
具体的には、符号化装置100及び復号装置200のそれぞれは、処理回路(Processing Circuitry)と、当該処理回路に電気的に接続された、当該処理回路からアクセス可能な記憶装置(Storage)とを備えていてもよい。例えば、処理回路はプロセッサa1又はb1に対応し、記憶装置はメモリa2又はb2に対応する。
処理回路は、専用のハードウェア及びプログラム実行部の少なくとも一方を含み、記憶装置を用いて処理を実行する。また、記憶装置は、処理回路がプログラム実行部を含む場合には、当該プログラム実行部により実行されるソフトウェアプログラムを記憶する。
ここで、上述された符号化装置100又は復号装置200等を実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
例えば、このプログラムは、コンピュータに、画像のブロックを符号化し、前記ブロックの符号化では、前記ブロックに対して直交変換が適用されない場合において、前記ブロックに含まれるサブブロックの複数の係数に対して、それぞれが係数単位で繰り返される処理である複数のループ処理を行うことにより、前記複数の係数を符号化し、前記複数のループ処理のうちの1つのループ処理では、前記複数の係数のそれぞれについて、当該係数の複数の属性をそれぞれ示す複数の係数情報フラグであって、当該係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグと、当該係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグとを含む複数の係数情報フラグを符号化する符号化方法を実行させてもよい。
また、例えば、このプログラムは、コンピュータに、画像のブロックを復号し、前記ブロックの復号では、前記ブロックに対して逆直交変換が適用されない場合において、前記ブロックに含まれるサブブロックの複数の係数に対して、それぞれが係数単位で繰り返される処理である複数のループ処理を行うことにより、前記複数の係数を復号し、前記複数のループ処理のうちの1つのループ処理では、前記複数の係数のそれぞれについて、当該係数の複数の属性をそれぞれ示す複数の係数情報フラグであって、当該係数の値が3よりも大きいか否かを示す係数情報フラグと、当該係数の値が5よりも大きいか否かを示す係数情報フラグとを含む複数の係数情報フラグを復号する復号方法を実行させてもよい。
また、各構成要素は、上述の通り、回路であってもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路であってもよい。また、各構成要素は、汎用的なプロセッサで実現されてもよいし、専用のプロセッサで実現されてもよい。
また、特定の構成要素が実行する処理を別の構成要素が実行してもよい。また、処理を実行する順番が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。また、符号化復号装置が、符号化装置100及び復号装置200を備えていてもよい。
また、説明に用いられた第1及び第2等の序数は、適宜、付け替えられてもよい。また、構成要素等に対して、序数が新たに与えられてもよいし、取り除かれてもよい。
以上、符号化装置100及び復号装置200の態様について、複数の例に基づいて説明したが、符号化装置100及び復号装置200の態様は、これらの例に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を各例に施したものや、異なる例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、符号化装置100及び復号装置200の態様の範囲内に含まれてもよい。
ここで開示された1以上の態様を本開示における他の態様の少なくとも一部と組み合わせて実施してもよい。また、ここで開示された1以上の態様のフローチャートに記載の一部の処理、装置の一部の構成、シンタックスの一部などを他の態様と組み合わせて実施してもよい。
[実施及び応用]
以上の各実施の形態において、機能的又は作用的なブロックの各々は、通常、MPU(micro proccessing unit)及びメモリ等によって実現可能である。また、機能ブロックの各々による処理は、ROM等の記録媒体に記録されたソフトウェア(プログラム)を読み出して実行するプロセッサなどのプログラム実行部として実現されてもよい。当該ソフトウェアは、配布されてもよい。当該ソフトウェアは、半導体メモリなどの様々な記録媒体に記録されてもよい。なお、各機能ブロックをハードウェア(専用回路)によって実現することも可能である。ハードウェア及びソフトウェアの様々な組み合わせが採用され得る。
各実施の形態において説明した処理は、単一の装置(システム)を用いて集中処理することによって実現してもよく、又は、複数の装置を用いて分散処理することによって実現してもよい。また、上記プログラムを実行するプロセッサは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、又は分散処理を行ってもよい。
本開示の態様は、以上の実施例に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本開示の態様の範囲内に包含される。
さらにここで、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)又は動画像復号化方法(画像復号方法)の応用例、及び、その応用例を実施する種々のシステムを説明する。このようなシステムは、画像符号化方法を用いた画像符号化装置、画像復号方法を用いた画像復号装置、又は、両方を備える画像符号化復号装置を有することを特徴としてもよい。このようなシステムの他の構成について、場合に応じて適切に変更することができる。
[使用例]
図66は、コンテンツ配信サービスを実現する適切なコンテンツ供給システムex100の全体構成を示す図である。通信サービスの提供エリアを所望の大きさに分割し、各セル内にそれぞれ、図示された例における固定無線局である基地局ex106、ex107、ex108、ex109、ex110が設置されている。
このコンテンツ供給システムex100では、インターネットex101に、インターネットサービスプロバイダex102又は通信網ex104、及び基地局ex106~ex110を介して、コンピュータex111、ゲーム機ex112、カメラex113、家電ex114、及びスマートフォンex115などの各機器が接続される。当該コンテンツ供給システムex100は、上記のいずれかの装置を組合せて接続するようにしてもよい。種々の実施において、基地局ex106~ex110を介さずに、各機器が電話網又は近距離無線等を介して直接的又は間接的に相互に接続されていてもよい。さらに、ストリーミングサーバex103は、インターネットex101等を介して、コンピュータex111、ゲーム機ex112、カメラex113、家電ex114、及びスマートフォンex115などの各機器と接続されてもよい。また、ストリーミングサーバex103は、衛星ex116を介して、飛行機ex117内のホットスポット内の端末等と接続されてもよい。
なお、基地局ex106~ex110の代わりに、無線アクセスポイント又はホットスポット等が用いられてもよい。また、ストリーミングサーバex103は、インターネットex101又はインターネットサービスプロバイダex102を介さずに直接通信網ex104と接続されてもよいし、衛星ex116を介さず直接飛行機ex117と接続されてもよい。
カメラex113はデジタルカメラ等の静止画撮影、及び動画撮影が可能な機器である。また、スマートフォンex115は、2G、3G、3.9G、4G、そして今後は5Gと呼ばれる移動通信システムの方式に対応したスマートフォン機、携帯電話機、又はPHS(Personal Handy-phone System)等である。
家電ex114は、冷蔵庫、又は家庭用燃料電池コージェネレーションシステムに含まれる機器等である。
コンテンツ供給システムex100では、撮影機能を有する端末が基地局ex106等を通じてストリーミングサーバex103に接続されることで、ライブ配信等が可能になる。ライブ配信では、端末(コンピュータex111、ゲーム機ex112、カメラex113、家電ex114、スマートフォンex115、及び飛行機ex117内の端末等)は、ユーザが当該端末を用いて撮影した静止画又は動画コンテンツに対して上記各実施の形態で説明した符号化処理を行ってもよく、符号化により得られた映像データと、映像に対応する音を符号化した音データと多重化してもよく、得られたデータをストリーミングサーバex103に送信してもよい。即ち、各端末は、本開示の一態様に係る画像符号化装置として機能する。
一方、ストリーミングサーバex103は要求のあったクライアントに対して送信されたコンテンツデータをストリーム配信する。クライアントは、上記符号化処理されたデータを復号化することが可能な、コンピュータex111、ゲーム機ex112、カメラex113、家電ex114、スマートフォンex115、又は飛行機ex117内の端末等である。配信されたデータを受信した各機器は、受信したデータを復号化処理して再生してもよい。即ち、各機器は、本開示の一態様に係る画像復号装置として機能してもよい。
[分散処理]
また、ストリーミングサーバex103は複数のサーバ又は複数のコンピュータであって、データを分散して処理したり記録したり配信するものであってもよい。例えば、ストリーミングサーバex103は、CDN(Contents Delivery Network)により実現され、世界中に分散された多数のエッジサーバとエッジサーバ間をつなぐネットワークによりコンテンツ配信が実現されていてもよい。CDNでは、クライアントに応じて物理的に近いエッジサーバが動的に割り当てられ得る。そして、当該エッジサーバにコンテンツがキャッシュ及び配信されることで遅延を減らすことができる。また、いくつかのタイプのエラーが発生した場合又はトラフィックの増加などにより通信状態が変わる場合に複数のエッジサーバで処理を分散したり、他のエッジサーバに配信主体を切り替えたり、障害が生じたネットワークの部分を迂回して配信を続けることができるので、高速かつ安定した配信が実現できる。
また、配信自体の分散処理にとどまらず、撮影したデータの符号化処理を各端末で行ってもよいし、サーバ側で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。一例として、一般に符号化処理では、処理ループが2度行われる。1度目のループでフレーム又はシーン単位での画像の複雑さ、又は、符号量が検出される。また、2度目のループでは画質を維持して符号化効率を向上させる処理が行われる。例えば、端末が1度目の符号化処理を行い、コンテンツを受け取ったサーバ側が2度目の符号化処理を行うことで、各端末での処理負荷を減らしつつもコンテンツの質と効率を向上させることができる。この場合、ほぼリアルタイムで受信して復号する要求があれば、端末が行った一度目の符号化済みデータを他の端末で受信して再生することもできるので、より柔軟なリアルタイム配信も可能になる。
他の例として、カメラex113等は、画像から特徴量(特徴又は特性の量)を抽出し、特徴量に関するデータをメタデータとして圧縮してサーバに送信する。サーバは、例えば特徴量からオブジェクトの重要性を判断して量子化精度を切り替えるなど、画像の意味(又は内容の重要性)に応じた圧縮を行う。特徴量データはサーバでの再度の圧縮時の動きベクトル予測の精度及び効率向上に特に有効である。また、端末でVLC(可変長符号化)などの簡易的な符号化を行い、サーバでCABAC(コンテキスト適応型二値算術符号化方式)など処理負荷の大きな符号化を行ってもよい。
さらに他の例として、スタジアム、ショッピングモール、又は工場などにおいては、複数の端末によりほぼ同一のシーンが撮影された複数の映像データが存在する場合がある。この場合には、撮影を行った複数の端末と、必要に応じて撮影をしていない他の端末及びサーバを用いて、例えばGOP(Group of Picture)単位、ピクチャ単位、又はピクチャを分割したタイル単位などで符号化処理をそれぞれ割り当てて分散処理を行う。これにより、遅延を減らし、よりリアルタイム性を実現できる。
複数の映像データはほぼ同一シーンであるため、各端末で撮影された映像データを互いに参照し合えるように、サーバで管理及び/又は指示をしてもよい。また、各端末からの符号化済みデータを、サーバが受信し複数のデータ間で参照関係を変更、又はピクチャ自体を補正或いは差し替えて符号化しなおしてもよい。これにより、一つ一つのデータの質と効率を高めたストリームを生成できる。
さらに、サーバは、映像データの符号化方式を変更するトランスコードを行ったうえで映像データを配信してもよい。例えば、サーバは、MPEG系の符号化方式をVP系(例えばVP9)に変換してもよいし、H.264をH.265に変換等してもよい。
このように、符号化処理は、端末、又は1以上のサーバにより行うことが可能である。よって、以下では、処理を行う主体として「サーバ」又は「端末」等の記載を用いるが、サーバで行われる処理の一部又は全てが端末で行われてもよいし、端末で行われる処理の一部又は全てがサーバで行われてもよい。また、これらに関しては、復号処理についても同様である。
[3D、マルチアングル]
互いにほぼ同期した複数のカメラex113及び/又はスマートフォンex115などの端末により撮影された異なるシーン、又は、同一シーンを異なるアングルから撮影した画像或いは映像を統合して利用することが増えてきている。各端末で撮影した映像は、別途取得した端末間の相対的な位置関係、又は、映像に含まれる特徴点が一致する領域などに基づいて統合され得る。
サーバは、2次元の動画像を符号化するだけでなく、動画像のシーン解析などに基づいて自動的に、又は、ユーザが指定した時刻において、静止画を符号化し、受信端末に送信してもよい。サーバは、さらに、撮影端末間の相対的な位置関係を取得できる場合には、2次元の動画像だけでなく、同一シーンが異なるアングルから撮影された映像に基づき、当該シーンの3次元形状を生成できる。サーバは、ポイントクラウドなどにより生成した3次元のデータを別途符号化してもよいし、3次元データを用いて人物又はオブジェクトを認識或いは追跡した結果に基づいて、受信端末に送信する映像を、複数の端末で撮影した映像から、選択、又は、再構成して生成してもよい。
このようにして、ユーザは、各撮影端末に対応する各映像を任意に選択してシーンを楽しむこともできるし、複数画像又は映像を用いて再構成された3次元データから選択視点の映像を切り出したコンテンツを楽しむこともできる。さらに、映像と共に、音も複数の相異なるアングルから収音され、サーバは、特定のアングル又は空間からの音を対応する映像と多重化して、多重化された映像と音とを送信してもよい。
また、近年ではVirtual Reality(VR)及びAugmented Reality(AR)など、現実世界と仮想世界とを対応付けたコンテンツも普及してきている。VRの画像の場合、サーバは、右目用及び左目用の視点画像をそれぞれ作成し、Multi-View Coding(MVC)などにより各視点映像間で参照を許容する符号化を行ってもよいし、互いに参照せずに別ストリームとして符号化してもよい。別ストリームの復号時には、ユーザの視点に応じて仮想的な3次元空間が再現されるように互いに同期させて再生するとよい。
ARの画像の場合には、サーバは、現実空間のカメラ情報に、仮想空間上の仮想物体情報を、3次元的位置又はユーザの視点の動きに基づいて重畳してもよい。復号装置は、仮想物体情報及び3次元データを取得又は保持し、ユーザの視点の動きに応じて2次元画像を生成し、スムーズにつなげることで重畳データを作成してもよい。または、復号装置は仮想物体情報の依頼に加えてユーザの視点の動きをサーバに送信してもよい。サーバは、サーバに保持される3次元データから受信した視点の動きに合わせて重畳データを作成し、重畳データを符号化して復号装置に配信してもよい。なお、重畳データは、典型的には、RGB以外に透過度を示すα値を有し、サーバは、3次元データから作成されたオブジェクト以外の部分のα値が0などに設定し、当該部分が透過する状態で、符号化してもよい。もしくは、サーバは、クロマキーのように所定の値のRGB値を背景に設定し、オブジェクト以外の部分は背景色にしたデータを生成してもよい。所定の値のRGB値は、予め定められていてもよい。
同様に配信されたデータの復号処理はクライアント(例えば、端末)で行っても、サーバ側で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。一例として、ある端末が、一旦サーバに受信リクエストを送り、そのリクエストに応じたコンテンツを他の端末で受信し復号処理を行い、ディスプレイを有する装置に復号済みの信号が送信されてもよい。通信可能な端末自体の性能によらず処理を分散して適切なコンテンツを選択することで画質のよいデータを再生することができる。また、他の例として大きなサイズの画像データをTV等で受信しつつ、鑑賞者の個人端末にピクチャが分割されたタイルなど一部の領域が復号されて表示されてもよい。これにより、全体像を共有化しつつ、自身の担当分野又はより詳細に確認したい領域を手元で確認することができる。
屋内外の近距離、中距離、又は長距離の無線通信が複数使用可能な状況下で、MPEG-DASHなどの配信システム規格を利用して、シームレスにコンテンツを受信することが可能かもしれない。ユーザは、ユーザの端末、屋内外に配置されたディスプレイなどの復号装置又は表示装置を自由に選択しながらリアルタイムで切り替えてもよい。また、自身の位置情報などを用いて、復号する端末及び表示する端末を切り替えながら復号を行うことができる。これにより、ユーザが目的地へ移動している間に、表示可能なデバイスが埋め込まれた隣の建物の壁面又は地面の一部に情報をマップ及び表示することが可能になる。また、符号化データが受信端末から短時間でアクセスできるサーバにキャッシュされている、又は、コンテンツ・デリバリー・サービスにおけるエッジサーバにコピーされている、などの、ネットワーク上での符号化データへのアクセス容易性に基づいて、受信データのビットレートを切り替えることも可能である。
[スケーラブル符号化]
コンテンツの切り替えに関して、図67に示す、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法を応用して圧縮符号化されたスケーラブルなストリームを用いて説明する。サーバは、個別のストリームとして内容は同じで質の異なるストリームを複数有していても構わないが、図示するようにレイヤに分けて符号化を行うことで実現される時間的/空間的スケーラブルなストリームの特徴を活かして、コンテンツを切り替える構成であってもよい。つまり、復号側が性能という内的要因と通信帯域の状態などの外的要因とに応じてどのレイヤを復号するかを決定することで、復号側は、低解像度のコンテンツと高解像度のコンテンツとを自由に切り替えて復号できる。例えばユーザが移動中にスマートフォンex115で視聴していた映像の続きを、例えば帰宅後にインターネットTV等の機器で視聴したい場合には、当該機器は、同じストリームを異なるレイヤまで復号すればよいので、サーバ側の負担を軽減できる。
さらに、上記のように、レイヤ毎にピクチャが符号化されており、ベースレイヤの上位のエンハンスメントレイヤでスケーラビリティを実現する構成以外に、エンハンスメントレイヤが画像の統計情報などに基づくメタ情報を含んでいてもよい。復号側が、メタ情報に基づきベースレイヤのピクチャを超解像することで高画質化したコンテンツを生成してもよい。超解像は、解像度を維持及び/又は拡大しつつ、SN比を向上してもよい。メタ情報は、超解像処理に用いるような線形或いは非線形のフィルタ係数を特定するため情報、又は、超解像処理に用いるフィルタ処理、機械学習或いは最小2乗演算におけるパラメータ値を特定する情報などを含む。
または、画像内のオブジェクトなどの意味合いに応じてピクチャがタイル等に分割される構成が提供されてもよい。復号側が、復号するタイルを選択することで一部の領域だけを復号する。さらに、オブジェクトの属性(人物、車、ボールなど)と映像内の位置(同一画像における座標位置など)とをメタ情報として格納することで、復号側は、メタ情報に基づいて所望のオブジェクトの位置を特定し、そのオブジェクトを含むタイルを決定できる。例えば、図68に示すように、メタ情報は、HEVCにおけるSEI(supplemental enhancement information)メッセージなど、画素データとは異なるデータ格納構造を用いて格納されてもよい。このメタ情報は、例えば、メインオブジェクトの位置、サイズ、又は色彩などを示す。
ストリーム、シーケンス又はランダムアクセス単位など、複数のピクチャから構成される単位でメタ情報が格納されてもよい。復号側は、特定人物が映像内に出現する時刻などを取得でき、ピクチャ単位の情報と時間情報を合わせることで、オブジェクトが存在するピクチャを特定でき、ピクチャ内でのオブジェクトの位置を決定できる。
[Webページの最適化]
図69は、コンピュータex111等におけるwebページの表示画面例を示す図である。図70は、スマートフォンex115等におけるwebページの表示画面例を示す図である。図69及び図70に示すようにwebページが、画像コンテンツへのリンクであるリンク画像を複数含む場合があり、閲覧するデバイスによってその見え方は異なっていてもよい。画面上に複数のリンク画像が見える場合には、ユーザが明示的にリンク画像を選択するまで、又は画面の中央付近にリンク画像が近付く或いはリンク画像の全体が画面内に入るまで、表示装置(復号装置)は、リンク画像として各コンテンツが有する静止画又はIピクチャを表示してもよいし、複数の静止画又はIピクチャ等でgifアニメのような映像を表示してもよいし、ベースレイヤのみを受信し、映像を復号及び表示してもよい。
ユーザによりリンク画像が選択された場合、表示装置は、例えばベースレイヤを最優先にしつつ復号を行う。なお、webページを構成するHTMLにスケーラブルなコンテンツであることを示す情報があれば、表示装置は、エンハンスメントレイヤまで復号してもよい。さらに、リアルタイム性を担保するために、選択される前又は通信帯域が非常に厳しい場合には、表示装置は、前方参照のピクチャ(Iピクチャ、Pピクチャ、前方参照のみのBピクチャ)のみを復号及び表示することで、先頭ピクチャの復号時刻と表示時刻との間の遅延(コンテンツの復号開始から表示開始までの遅延)を低減できる。またさらに、表示装置は、ピクチャの参照関係を敢えて無視して、全てのBピクチャ及びPピクチャを前方参照にして粗く復号し、時間が経ち受信したピクチャが増えるにつれて正常の復号を行ってもよい。
[自動走行]
また、車の自動走行又は走行支援のため2次元又は3次元の地図情報などのような静止画又は映像データを送受信する場合、受信端末は、1以上のレイヤに属する画像データに加えて、メタ情報として天候又は工事の情報なども受信し、これらを対応付けて復号してもよい。なお、メタ情報は、レイヤに属してもよいし、単に画像データと多重化されてもよい。
この場合、受信端末を含む車、ドローン又は飛行機などが移動するため、受信端末は、当該受信端末の位置情報を送信することで、基地局ex106~ex110を切り替えながらシームレスな受信及び復号の実行を実現できる。また、受信端末は、ユーザの選択、ユーザの状況及び/又は通信帯域の状態に応じて、メタ情報をどの程度受信するか、又は地図情報をどの程度更新していくかを動的に切り替えることが可能になる。
コンテンツ供給システムex100では、ユーザが送信した符号化された情報をリアルタイムでクライアントが受信して復号し、再生することができる。
[個人コンテンツの配信]
また、コンテンツ供給システムex100では、映像配信業者による高画質で長時間のコンテンツのみならず、個人による低画質で短時間のコンテンツのユニキャスト、又はマルチキャスト配信が可能である。このような個人のコンテンツは今後も増加していくと考えられる。個人コンテンツをより優れたコンテンツにするために、サーバは、編集処理を行ってから符号化処理を行ってもよい。これは、例えば、以下のような構成を用いて実現できる。
撮影時にリアルタイム又は蓄積して撮影後に、サーバは、原画データ又は符号化済みデータから撮影エラー、シーン探索、意味の解析、及びオブジェクト検出などの認識処理を行う。そして、サーバは、認識結果に基づいて手動又は自動で、ピントずれ又は手ブレなどを補正したり、明度が他のピクチャに比べて低い又は焦点が合っていないシーンなどの重要性の低いシーンを削除したり、オブジェクトのエッジを強調したり、色合いを変化させるなどの編集を行う。サーバは、編集結果に基づいて編集後のデータを符号化する。また撮影時刻が長すぎると視聴率が下がることも知られており、サーバは、撮影時間に応じて特定の時間範囲内のコンテンツになるように上記のように重要性が低いシーンのみならず動きが少ないシーンなどを、画像処理結果に基づき自動でクリップしてもよい。または、サーバは、シーンの意味解析の結果に基づいてダイジェストを生成して符号化してもよい。
個人コンテンツには、そのままでは著作権、著作者人格権、又は肖像権等の侵害となるものが写り込んでいるケースもあり、共有する範囲が意図した範囲を超えてしまうなど個人にとって不都合な場合もある。よって、例えば、サーバは、画面の周辺部の人の顔、又は家の中などを敢えて焦点が合わない画像に変更して符号化してもよい。さらに、サーバは、符号化対象画像内に、予め登録した人物とは異なる人物の顔が映っているかどうかを認識し、映っている場合には、顔の部分にモザイクをかけるなどの処理を行ってもよい。または、符号化の前処理又は後処理として、著作権などの観点からユーザが画像を加工したい人物又は背景領域を指定してもよい。サーバは、指定された領域を別の映像に置き換える、又は焦点をぼかすなどの処理を行ってもよい。人物であれば、動画像において人物をトラッキングして、人物の顔の部分の映像を置き換えることができる。
データ量の小さい個人コンテンツの視聴はリアルタイム性の要求が強いため、帯域幅にもよるが、復号装置は、まずベースレイヤを最優先で受信して復号及び再生を行ってもよい。復号装置は、この間にエンハンスメントレイヤを受信し、再生がループされる場合など2回以上再生される場合に、エンハンスメントレイヤも含めて高画質の映像を再生してもよい。このようにスケーラブルな符号化が行われているストリームであれば、未選択時又は見始めた段階では粗い動画だが、徐々にストリームがスマートになり画像がよくなるような体験を提供することができる。スケーラブル符号化以外にも、1回目に再生される粗いストリームと、1回目の動画を参照して符号化される2回目のストリームとが1つのストリームとして構成されていても同様の体験を提供できる。
[その他の実施応用例]
また、これらの符号化又は復号処理は、一般的に各端末が有するLSIex500において処理される。LSI(large scale integration circuitry)ex500(図66参照)は、ワンチップであっても複数チップからなる構成であってもよい。なお、動画像符号化又は復号用のソフトウェアをコンピュータex111等で読み取り可能な何らかの記録メディア(CD-ROM、フレキシブルディスク、又はハードディスクなど)に組み込み、そのソフトウェアを用いて符号化又は復号処理を行ってもよい。さらに、スマートフォンex115がカメラ付きである場合には、そのカメラで取得した動画データを送信してもよい。このときの動画データはスマートフォンex115が有するLSIex500で符号化処理されたデータであってもよい。
なお、LSIex500は、アプリケーションソフトをダウンロードしてアクティベートする構成であってもよい。この場合、端末は、まず、当該端末がコンテンツの符号化方式に対応しているか、又は、特定サービスの実行能力を有するかを判定する。端末がコンテンツの符号化方式に対応していない場合、又は、特定サービスの実行能力を有さない場合、端末は、コーデック又はアプリケーションソフトをダウンロードし、その後、コンテンツ取得及び再生してもよい。
また、インターネットex101を介したコンテンツ供給システムex100に限らず、デジタル放送用システムにも上記各実施の形態の少なくとも動画像符号化装置(画像符号化装置)又は動画像復号化装置(画像復号装置)のいずれかを組み込むことができる。衛星などを利用して放送用の電波に映像と音が多重化された多重化データを載せて送受信するため、コンテンツ供給システムex100のユニキャストがし易い構成に対してマルチキャスト向きであるという違いがあるが符号化処理及び復号処理に関しては同様の応用が可能である。
[ハードウェア構成]
図71は、図66に示されたスマートフォンex115のさらに詳細を示す図である。また、図72は、スマートフォンex115の構成例を示す図である。スマートフォンex115は、基地局ex110との間で電波を送受信するためのアンテナex450と、映像及び静止画を撮ることが可能なカメラ部ex465と、カメラ部ex465で撮像した映像、及びアンテナex450で受信した映像等が復号されたデータを表示する表示部ex458とを備える。スマートフォンex115は、さらに、タッチパネル等である操作部ex466と、音声又は音響を出力するためのスピーカ等である音声出力部ex457と、音声を入力するためのマイク等である音声入力部ex456と、撮影した映像或いは静止画、録音した音声、受信した映像或いは静止画、メール等の符号化されたデータ、又は、復号化されたデータを保存可能なメモリ部ex467と、ユーザを特定し、ネットワークをはじめ各種データへのアクセスの認証をするためのSIMex468とのインタフェース部であるスロット部ex464とを備える。なお、メモリ部ex467の代わりに外付けメモリが用いられてもよい。
表示部ex458及び操作部ex466等を統括的に制御し得る主制御部ex460と、電源回路部ex461、操作入力制御部ex462、映像信号処理部ex455、カメラインタフェース部ex463、ディスプレイ制御部ex459、変調/復調部ex452、多重/分離部ex453、音声信号処理部ex454、スロット部ex464、及びメモリ部ex467とが同期バスex470を介して接続されている。
電源回路部ex461は、ユーザの操作により電源キーがオン状態にされると、スマートフォンex115を動作可能な状態に起動し、バッテリパックから各部に対して電力を供給する。
スマートフォンex115は、CPU、ROM及びRAM等を有する主制御部ex460の制御に基づいて、通話及データ通信等の処理を行う。通話時は、音声入力部ex456で収音した音声信号を音声信号処理部ex454でデジタル音声信号に変換し、変調/復調部ex452でスペクトラム拡散処理を施し、送信/受信部ex451でデジタルアナログ変換処理及び周波数変換処理を施し、その結果の信号を、アンテナex450を介して送信する。また受信データを増幅して周波数変換処理及びアナログデジタル変換処理を施し、変調/復調部ex452でスペクトラム逆拡散処理し、音声信号処理部ex454でアナログ音声信号に変換した後、これを音声出力部ex457から出力する。データ通信モード時は、本体部の操作部ex466等の操作に基づいてテキスト、静止画、又は映像データが操作入力制御部ex462を介して主制御部ex460の制御下で送出され得る。同様の送受信処理が行われる。データ通信モード時に映像、静止画、又は映像と音声を送信する場合、映像信号処理部ex455は、メモリ部ex467に保存されている映像信号又はカメラ部ex465から入力された映像信号を上記各実施の形態で示した動画像符号化方法によって圧縮符号化し、符号化された映像データを多重/分離部ex453に送出する。音声信号処理部ex454は、映像又は静止画をカメラ部ex465で撮像中に音声入力部ex456で収音した音声信号を符号化し、符号化された音声データを多重/分離部ex453に送出する。多重/分離部ex453は、符号化済み映像データと符号化済み音声データを所定の方式で多重化し、変調/復調部(変調/復調回路部)ex452、及び送信/受信部ex451で変調処理及び変換処理を施してアンテナex450を介して送信する。所定の方式は、予め定められていてもよい。
電子メール又はチャットに添付された映像、又はウェブページにリンクされた映像を受信した場合等において、アンテナex450を介して受信された多重化データを復号するために、多重/分離部ex453は、多重化データを分離することにより、多重化データを映像データのビットストリームと音声データのビットストリームとに分け、同期バスex470を介して符号化された映像データを映像信号処理部ex455に供給するとともに、符号化された音声データを音声信号処理部ex454に供給する。映像信号処理部ex455は、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法に対応した動画像復号化方法によって映像信号を復号し、ディスプレイ制御部ex459を介して表示部ex458から、リンクされた動画像ファイルに含まれる映像又は静止画が表示される。音声信号処理部ex454は、音声信号を復号し、音声出力部ex457から音声が出力される。リアルタイムストリーミングがますます普及しだしているため、ユーザの状況によっては音声の再生が社会的にふさわしくないこともあり得る。そのため、初期値としては、音声信号は再生せず映像データのみを再生する構成の方が望ましく、ユーザが映像データをクリックするなど操作を行った場合にのみ音声を同期して再生してもよい。
またここではスマートフォンex115を例に説明したが、端末としては符号化器及び復号化器を両方持つ送受信型端末の他に、符号化器のみを有する送信端末、及び、復号化器のみを有する受信端末という他の実装形式が考えられる。デジタル放送用システムにおいて、映像データに音声データが多重化された多重化データを受信又は送信するとして説明した。ただし、多重化データには、音声データ以外に映像に関連する文字データなどが多重化されてもよい。また、多重化データではなく映像データ自体が受信又は送信されてもよい。
なお、CPUを含む主制御部ex460が符号化又は復号処理を制御するとして説明したが、種々の端末はGPUを備えることも多い。よって、CPUとGPUで共通化されたメモリ、又は共通に使用できるようにアドレスが管理されているメモリにより、GPUの性能を活かして広い領域を一括して処理する構成でもよい。これにより符号化時間を短縮でき、リアルタイム性を確保し、低遅延を実現できる。特に動き探索、デブロックフィルタ、SAO(Sample Adaptive Offset)、及び変換・量子化の処理を、CPUではなく、GPUでピクチャなどの単位で一括して行うと効率的である。