以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。本発明の第1の実施の形態における車両用緩衝器D1は、図1および図4に示すように、緩衝器本体1と、リザーバ2と、ストロークセンサ3とを備えている。また、第1の実施の形態の車両用緩衝器D1は、図2に示すように、車両としての鞍乗型車両Vの車体Bに連結される車体側チューブとしてのアウターチューブ4と、アウターチューブ4内に摺動自在に挿入されて鞍乗型車両Vの操向輪である前輪Wに連結される車軸側チューブとしてのインナーチューブ5とを備えた伸縮体T1内に収容されており、伸縮体T1とともにフロントフォークF1を構成している。
また、フロントフォークF1は、図1から図4に示すように、鞍乗型車両Vの車体Bに連結される車体側チューブとしてのアウターチューブ4と、アウターチューブ4内に摺動自在に挿入されて鞍乗型車両Vの操向輪である前輪Wに連結される車軸側チューブとしてのインナーチューブ5とを備えた伸縮体T2と、伸縮体T2内に収容される減衰力可変緩衝器D2とを備えた他のフロントフォークF2とともに対を成して鞍乗型車両Vの前輪Wを懸架する懸架装置Sを構成している。
まず、第1の実施の形態の車両用緩衝器D1を収容したフロントフォークF1について具体的に説明する。図1に示すように、フロントフォークF1は、アウターチューブ4と、アウターチューブ4内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ5とを有して構成されるテレスコピック型であって倒立型の伸縮体T1を備える。
そして、鞍乗型車両Vが凹凸のある路面を走行するなどして前輪Wが上下に振動すると、インナーチューブ5がアウターチューブ4に出入りして伸縮体T1が伸縮する。このように、伸縮体T1が伸縮すると、アウターチューブ4とインナーチューブ5との内方に収容された車両用緩衝器D1も伸縮して減衰力を発生する。なお、伸縮体T1は、アウターチューブを車軸側チューブとし、インナーチューブを車体側チューブとした正立型とされてもよい。
伸縮体T1の上端となるアウターチューブ4の上端は、キャップ6で塞がれている。その一方、伸縮体T1の下端となるインナーチューブ5の下端は、車軸側のブラケット7で塞がれている。さらに、アウターチューブ4の下端内周には、インナーチューブ5の外周に摺接する環状のシール部材8が設けられており、アウターチューブ4とインナーチューブ5との内部の空間は閉鎖空間とされている。
このようにして伸縮体T1内は閉鎖された空間とされており、その伸縮体T1内に車両用緩衝器D1が収容されている。また、伸縮体T1内であって車両用緩衝器D1の外方は、液体を気体とともに貯留する液溜室R3とされている。
つづいて、車両用緩衝器D1は、緩衝器本体1と、リザーバ2と、ストロークセンサ3とを備えている。緩衝器本体1は、シリンダ10と、シリンダ10内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにシリンダ10内を液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン11と、一端がピストン11に連結されてシリンダ10内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド12とを備えている。
緩衝器本体1におけるシリンダ10の図1中上端は、リザーバ2を形成するリザーバ筒13を介してアウターチューブ4に連結されており、アウターチューブ4およびリザーバ筒13を介して間接的に鞍乗型車両Vにおける車体Bに連結可能とされている。また、ロッド12の図1中下端は、インナーチューブ5の下端を閉塞するブラケット7に連結されており、ブラケット7を介して鞍乗型車両Vの前輪Wにおける車軸に間接的に連結可能とされている。このように緩衝器本体1のシリンダ10は、鞍乗型車両Vの車体Bに連結可能とされており、ロッド12は、鞍乗型車両Vの車輪である前輪Wに連結可能とされているが、シリンダ10を直接的に車体Bに連結可能としてもよいし、ロッド12を直接的に車輪の車軸に連結可能としてもよい。
また、リザーバ2は、リザーバ筒13と、リザーバ筒13の一端を閉塞するキャップ6と、リザーバ筒13内に軸方向へ移動自在に挿入されるとともにリザーバ筒13内を気体が充填される気室Gと液体が充填されるとともに圧側室R2に連通される液室Lとに区画するフリーピストン14とを備えている。なお、車両用緩衝器D1に利用される液体は、本実施の形態では、作動油とされているが、作動油以外の液体の使用も可能である。また、気体には、窒素等の不活性ガスの利用が好ましいが大気の利用も可能である。
以下、車両用緩衝器D1の各部について詳細に説明する。シリンダ10は、図1に示すように、筒状であって上端外周にはリザーバ筒13が螺合されている。リザーバ筒13は、本実施の形態では、シリンダ10よりも大径とされていて、上端外周に設けられた螺子部13aをアウターチューブ4の上端内周に螺着してアウターチューブ4に連結されている。また、リザーバ筒13の上端開口部にはキャップ6が螺着されていてアウターチューブ4およびリザーバ筒13の上端開口部が閉塞される。シリンダ10の下端内周には、内周にロッド12が挿通される筒状のロッドガイド15が装着されており、シリンダ10の下端が閉塞されている。
ロッド12は、図1に示すように、下端がアウターチューブ4の下端を閉塞するブラケット7に連結されており、上端側がシリンダ10内に挿入されている。また、ブラケット7の上端であってインナーチューブ5の内周には、外周に懸架ばね16の下端を支持するフランジ状のばね受17aを備えた筒状のオイルロックケース17が載置されている。
また、シリンダ10の外周には、懸架ばね16の上端を支持するばね受18が装着されている。ばね受18は、シリンダ10の外周に嵌合する上端が最小径であって下方へ向かうほど径が拡大する筒状であって、側部に孔18aを備えている。そして、懸架ばね16は、オイルロックケース17におけるばね受17aとばね受18との間に介装されている。ばね受18は、シリンダ10の外周にシリンダ10に対して上方側への移動が規制された状態で装着されており、シリンダ10を介して懸架ばね16から受ける力をアウターチューブ4に伝達している。よって、懸架ばね16は、アウターチューブ4を上方にインナーチューブ5を下方へ押圧して両者を離間させる弾発力を発揮する。
また、ロッドガイド15の図1中下端外周には、環状のオイルロックピース15aが装着されている。アウターチューブ4とインナーチューブ5とが接近しフロントフォークF1が最収縮近傍まで収縮すると、ロッドガイド15の外周に装着されたオイルロックピース15aがオイルロックケース17内に侵入する。オイルロックピース15aの外周とオイルロックケース17の内周には、適度な隙間が設けられており、オイルロックケース17内から作動油が流出する流れに抵抗が付与される。よって、オイルロックピース15aがオイルロックケース17に侵入すると、オイルロックケース17内の圧力が上昇してフロントフォークF1のそれ以上の収縮を妨げられるので、フロントフォークF1の最収縮時の衝撃が緩和される。
戻って、図1に示すように、シリンダ10内に挿入されたロッド12の上端の外周には、ピストン11が装着されている。ピストン11は、シリンダ10の内周に摺接しており、シリンダ10に対して上下方向となる軸方向へ移動可能であり、前述したように、シリンダ10内を伸側室R1と圧側室R2とに区画している。また、ピストン11は、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側ポート11aと圧側ポート11bとを備えている。そして、ピストン11の圧側室R2側には、伸側ポート11aの出口端を開閉する伸側リーフバルブ20がロッド12の外周に固定された状態で積層され、ピストン11の伸側室R1側には、圧側ポート11bの出口端を開閉するチェックバルブ21がロッド12の外周に固定された状態で積層されている。
伸側リーフバルブ20は、本実施の形態の車両用緩衝器D1では複数枚の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされており、内周がロッド12の外周に固定されて外周側の撓みが許容されている。また、伸側リーフバルブ20は、作動油が伸側室R1から圧側室R2へ伸側ポート11aを介して移動する際に作動油の流れに抵抗を与え、作動油が圧側室R2から伸側室R1へ向かって移動するのを阻止する。
チェックバルブ21は、本実施の形態の車両用緩衝器D1では環状板で構成されており、内周がロッド12の外周に固定されて外周側の撓みが許容されている。また、チェックバルブ21は、圧側室R2から伸側室R1へ圧側ポート11bを介して移動する作動油の流れを略抵抗なく許容し、作動油が伸側室R1から圧側室R2へ向かって移動するのを阻止する。なお、チェックバルブ21は、圧側ポート11bを通過する作動油の流れに抵抗を与える減衰バルブとされてもよい。
なお、ロッド12は、中空となっており、ピストン11の伸側ポート11aおよび圧側ポート11bを迂回して伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路Pを備えていて、内部に当該通路Pの流路面積を変更可能なニードルバルブNを備えている。なお、ニードルバルブNは、ブラケット7の下端に設けられるアジャスタAの回転操作によってロッド12中を軸方向に移動して前記通路Pの流路面積を変更できる。
リザーバ2は、リザーバ筒13、キャップ6およびフリーピストン14を備える他、一端がキャップ6に連結されてリザーバ筒13内に収容される非磁性体で形成された筒状ロッド22を備えている。フリーピストン14は、環状であって筒状ロッド22の外周に摺動自在に装着されていて、外周をリザーバ筒13の内周に摺接させてリザーバ筒13内を気室Gと液室Lとに区画している。
筒状ロッド22は、本実施の形態の車両用緩衝器D1では、アルミニウムで形成されている。なお、筒状ロッド22は、非磁性体であればよいので、アルミニウム以外にもSUS304等の非磁性のステンレス、強度面で問題が無ければ合成樹脂で形成されてもよい。また、筒状ロッド22の図1中下端外周には、バルブケース23がベースバルブ24およびチェックバルブ25とともに装着されたバルブ保持部材26が螺着されている。
つづいて、バルブケース23は、環状であって、前述した通り、キャップ6に連結される筒状ロッド22の図1中下端の外周にバルブ保持部材26を介して装着されている。このようにバルブケース23は、筒状ロッド22によって軸方向に位置決められてリザーバ筒13内に収容されている。バルブケース23は、リザーバ筒13の内周に嵌合しており、筒状ロッド22によってシリンダ10に対して不動に固定されて、前述したように、リザーバ筒13内を圧側室R2とリザーバ2とに区画している。
バルブケース23は、図1および図4に示すように、圧側室R2と液室Lとを連通する排出ポート23aと、圧側室R2と液室Lとを連通する吸込ポート23bとを備えている。そして、バルブケース23の液室L側には、排出ポート23aの出口端を開閉するベースバルブ24が筒状ロッド22の外周に固定された状態で積層され、バルブケース23の圧側室R2側には、吸込ポート23bの出口端を開閉するチェックバルブ25が筒状ロッド22の外周に固定された状態で積層されている。
ベースバルブ24は、本実施の形態の車両用緩衝器D1では複数枚の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされており、内周が筒状ロッド22の外周に固定されて外周側の撓みが許容されている。また、ベースバルブ24は、作動油が圧側室R2から液室Lへ排出ポート23aを介して移動する流れのみを許容して、当該作動油の流れに抵抗を与えるとともに、作動油が圧側室R2から伸側室R1へ向かって移動するのを阻止する。
チェックバルブ25は、本実施の形態の車両用緩衝器D1では環状板で構成されており、内周が筒状ロッド22の外周に固定されて外周側の撓みが許容されている。また、チェックバルブ25は、液室Lから圧側室R2へ吸込ポート23bを介して移動する作動油の流れを略抵抗なく許容し、作動油が圧側室R2から液室Lへ向かって移動するのを阻止する。
このように構成されたベースバルブ24、バルブケース23およびチェックバルブ25は、バルブ保持部材26の軸部26aに組み付けられて当該軸部26aの図4中下端となる先端に螺着されたナット27によってバルブ保持部材26に固定される。バルブ保持部材26は、筒状ロッド22の図4中の外周に螺着されて筒状ロッド22に組み付けられる。
つづいて、筒状ロッド22の外周であってバルブケース23よりも図1中上方には、有底筒状のフリーピストン14が摺動自在に装着されている。フリーピストン14の底部14aは、環状であって内周側に筒状ロッド22が挿通されている。また、フリーピストン14は、筒部14bをリザーバ筒13の内周に摺接させており、リザーバ筒13内を作動油が充填される液室Lと気体が充填される気室Gとに区画している。さらに、フリーピストン14の底部14aとキャップ6との間にはコイルばねでなる加圧ばね28が圧縮された状態で介装されていて、フリーピストン14は、加圧ばね28および気室G内の圧力によって常に液室L側を圧縮する方向に付勢されている。なお、フリーピストン14の底部14aと加圧ばね28との間には、ばね受29が介装されている。ばね受29は、加圧ばね28と筒状ロッド22との間の環状隙間に配置される筒部29aと、筒部29aの図4中下端外周に設けられたフランジ29bとを備えて環状とされており、フランジ29bで加圧ばね28の端部を支承している。よって、ばね受29は、加圧ばね28の付勢力でフリーピストン14の底部14aに常に押し付けられており、フリーピストン14が筒状ロッド22に対して軸方向へ移動するとフリーピストン14とともに一体となってる筒状ロッド22に対して変位する。
このように、本実施の形態の車両用緩衝器D1では、フリーピストン14を加圧ばね28で付勢して、液室Lに圧縮力を作用させることで、液室Lに連通されるシリンダ10内の伸側室R1および圧側室R2を加圧して、油柱剛性を高めている。作動油には気体が溶け込んでいるために作動油は弾性を示し、作動油の見掛け上の弾性係数が低くなると車両用緩衝器D1の減衰力発生応答性が悪化するが、前述のようにシリンダ10内を加圧することで油柱剛性を高めて車両用緩衝器D1の減衰力発生応答性を向上できる。
なお、シリンダ10のリザーバ筒13の側部には車両用緩衝器D1外に通じる孔13bが設けられている。孔13bは、フリーピストン14の筒部14bが対向している状態ではフリーピストン14によって閉塞された状態に維持されるが、液室L内の作動油量が規定量よりも多くなってフリーピストン14が孔13bよりも上方に後退すると孔13bを介して液室L内の作動油が車両用緩衝器D1外の液溜室R3へ排出され、シリンダ10内が過剰に高圧となってしまうのを防止できる。
ストロークセンサ3は、キャップ6に保持されるセンサ本体3aと、センサ本体3aから延びて筒状ロッド22内に挿通されるロッド状のプローブ3bと、ばね受29に装着される被検出子としての環状の磁石3cとを備えている。ストロークセンサ3は、本実施の形態では、プローブ3b内の磁歪線にパルス信号を与えて磁石3cの位置を検知する電子回路を有するセンサ本体3aを備えた磁歪式センサとされている。なお、ストロークセンサ3は、フリーピストン14或いはフリーピストン14とともに一体となってリザーバ筒13内を軸方向へ移動できる部品に保持される被検出子と、被検出子の位置を検知できるプローブとを有していれば、前述以外の検出原理を利用したスロトークセンサとされてもよい。このように、被検出子である磁石3cは、フリーピストン14に直接装着されてもよいし、フリーピストン14とともに一体となってリザーバ筒13内を軸方向へ移動できる部品に装着されてもよい。
キャップ6は、前述した通り、リザーバ筒13の図4中で上端内周に螺着されており、図4中上端から開口してストロークセンサ3のセンサ本体3aを収容する収容凹部6aと、図4中下端に筒状ロッド22の上端外周が螺着される筒部6bと、収容凹部6aの底部から開口して筒部6b内に通じる通孔6cとを備えている。
ストロークセンサ3におけるセンサ本体3aは、キャップ6の収容凹部6a内に収容され、収容凹部6aの上端内周に装着されるシール部材6dによって固定される。シール部材6dは、収容凹部6a内への水や埃等の侵入を防止してセンサ本体3aを固定するとともに保護している。なお、収容凹部6aのシールとセンサ本体3aの固定と保護については、前述のシール部材6d以外によって実現してもよい。また、センサ本体3aから延びる配線3dは、シール部材6dを貫通してフロントフォークF1の外部へと引き出されており、図外の外部装置に接続される。
センサ本体3aは、本実施の形態の車両用緩衝器D1では、キャップ6に保持されてプローブ3bと一体とされているが、プローブ3bがフリーピストン14或いはフリーピストン14とともに一体となってリザーバ筒13内を軸方向へ移動できる部品に保持される被検出子の位置を検知可能な態様であれば、プローブ3bと別体とされてもよい。よって、プローブ3bを車両用緩衝器D1内に収容しておき、センサ本体3aを車両用緩衝器D1或いはフロントフォークF1の外方へ配置する態様となっていてもよい。また、本実施の形態の車両用緩衝器D1では、磁石3cは、フリーピストン14とともに一体となってリザーバ筒13に対して軸方向に変位するばね受29の筒部29aの内周に接着されている。磁石3cは、このようにばね受29に保持されているが、フリーピストン14に直接的に装着されてもよい。なお、コイルばねの代わりに気室G内の気体が発揮する弾発力を利用した気体ばねでフリーピストン14を付勢する場合には、磁石3cは、直接フリーピストン14に装着されればよい。
プローブ3bは、キャップ6の通孔6cを通じて筒状ロッド22内に突出している。プローブ3bは、本実施の形態の車両用緩衝器D1では、一体化されているセンサ本体3aおよびキャップ6を介してリザーバ筒13に連結されているが、磁石3cの内周に対向して磁石3cの位置を検知できれば、直接的か間接的かを問わずリザーバ筒13に連結されていればよい。
なお、プローブ3bの長さは、本実施の形態の車両用緩衝器D1の構造では、少なくともフリーピストン14が筒状ロッド22に対して最も図4中下方のストロークエンドとなるバルブ保持部材26に当接する位置から最も図4中上方のストロークエンドとなるリザーバ筒13の孔13bを開放する位置までの範囲で被検出子である磁石3cの位置を検知できる長さに設定されている。また、前述した通り、筒状ロッド22は、非磁性体で形成されているので、プローブ3bは、筒状ロッド22に邪魔されずに磁石3cの位置を検知できる。
車両用緩衝器D1は、以上の通り構成されており、以下にその作動について説明する。まず、フロントフォークF1が伸長する場合、アウターチューブ4とインナーチューブ5との相対的な軸方向の離間に伴って、シリンダ10に対してロッド12に連結されるピストン11が図1中下方へ移動する。シリンダ10内の伸側室R1は、ピストン11の移動によって圧縮されて縮小し、シリンダ10内の圧側室R2は、ピストン11の移動によって拡大する。圧縮される伸側室R1内の作動油は、伸側リーフバルブ20を押し開いてピストン11の伸側ポート11aを通過して拡大される圧側室R2へ移動する。伸側リーフバルブ20が伸側ポート11aを通過する作動油の流れに抵抗を与えるので、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力よりも高くなり、車両用緩衝器D1は自身の伸長を妨げる伸側減衰力を発揮する。
車両用緩衝器D1の伸長時には、シリンダ10からロッド12が退出し、ロッド12がシリンダ10から退出する体積分の作動油がシリンダ10内の圧側室R2で不足する。このように圧側室R2で作動油が不足するために、圧側室R2の圧力がリザーバ2内の圧力よりも低下して、チェックバルブ25が撓んで吸込ポート23bを開放する。よって、圧側室R2で不足する作動油は、リザーバ2の液室Lから吸込ポート23bを通じて圧側室R2に供給される。リザーバ2内では、液室Lから作動油が圧側室R2へ移動するためにフリーピストン14が下方へ移動して液室Lを縮小させるとともに気室Gを拡大させ、ロッド12がシリンダ10から退出する体積の補償がなされる。このように、フロントフォークF1の伸長時には、車両用緩衝器D1がともに伸長して、伸側リーフバルブ20によってフロントフォークF1の伸長を妨げる伸側減衰力を発生する。
つづいて、フロントフォークF1が収縮する場合、アウターチューブ4とインナーチューブ5との相対的な軸方向の接近に伴って、シリンダ10に対してロッド12に連結されるピストン11が図1中上方へ移動する。シリンダ10内の圧側室R2は、ピストン11の移動によって圧縮されて縮小し、シリンダ10内の伸側室R1は、ピストン11の移動によって拡大する。圧縮される圧側室R2内の作動油は、チェックバルブ21を押し開いてピストン11の圧側ポート11bを通過して拡大される伸側室R1へ移動する。チェックバルブ21は、圧側ポート11bを通過する作動油の流れに抵抗をほとんど与えないので、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力はほぼ等圧となる。
車両用緩衝器D1の収縮時には、シリンダ10内へロッド12が侵入し、ロッド12がシリンダ10内へ侵入する体積分の作動油がシリンダ10内で過剰となる。このようにシリンダ10内で過剰となった作動油は、ベースバルブ24を押し開いてバルブケース23の排出ポート23aを通過してリザーバ2の液室Lへ移動する。ベースバルブ24が排出ポート23aを通過する作動油の流れに抵抗を与えるので、シリンダ10内の全体の圧力を上昇させるため、車両用緩衝器D1は自身の収縮を妨げる圧側減衰力を発揮する。リザーバ2内では、作動油がシリンダ10内から液室L内へ排出されるためにフリーピストン14が上方へ後退して液室Lを拡大させるとともに気室Gを縮小させ、ロッド12がシリンダ10内へ侵入する体積の補償がなされる。また、フロントフォークF1の収縮時には、シリンダ10がインナーチューブ5内を図1中下方へ移動し、このシリンダ10の移動に伴って液溜室R3内の作動油の油面が上昇し、液溜室R3内の作動油がばね受18の孔18aを通過する場合がある。孔18aは、作動油の通過する流れに対して絞り弁として機能する。よって、フロントフォークF1の収縮時には、車両用緩衝器D1がともに収縮して、ベースバルブ24によってフロントフォークF1の収縮を妨げる圧側減衰力を発生するとともに、油面がばね受18の孔18aを通過する場合にはフロントフォークF1は、車両用緩衝器D1の圧側減衰力にばね受18による収縮を妨げる減衰力を付加できる。
ここで、車両用緩衝器D1が伸長する場合には、フリーピストン14はリザーバ2内を図4中下方へ移動し、車両用緩衝器D1が収縮する場合には、フリーピストン14はリザーバ2内を図4中上方へ移動する。車両用緩衝器D1の伸縮時におけるフリーピストン14の移動量は、シリンダ10に対して出入りするロッド12の体積に比例している。詳しくは、フリーピストン14の移動量は、ロッド12を中実として考えて、車両用緩衝器D1が伸縮する際にロッド12がシリンダ10内に侵入或いは退出した体積をフリーピストン14の底部14aの液室Lに面する面積で割った値に等しくなる。ここで、ストロークセンサ3は、フリーピストン14の位置を検知できるので、リザーバ2内に出入りする作動油量を把握できる。また、車両用緩衝器D1が最伸長或いは最収縮した際のフリーピストン14のリザーバ筒13に対する軸方向位置とロッド12の断面積については設計事項であるので既知である。そして、リザーバ2内に出入りする作動油量は、ロッド12がシリンダ10内に出入りする体積に他ならないから、ストロークセンサ3で検知したフリーピストン14の現在位置から液室L内の現在の作動油量を把握すれば、シリンダ10内に現在ロッド12がどの程度侵入しているか、つまり、車両用緩衝器D1のストローク変位を知ることができる。このように、フリーピストン14のリザーバ2内での軸方向の位置と車両用緩衝器D1のシリンダ10に対するロッド12の軸方向の位置とは、一対一の関係性があり、フリーピストン14の現在位置を検知すれば車両用緩衝器D1のストローク変位を検知できる。なお、前述の図外の外部装置は、ストロークセンサ3で検知したフリーピストン14の現在位置を処理して車両用緩衝器D1のストローク変位を得る。
そして、本実施の形態の車両用緩衝器D1は、鞍乗型車両(車両)Vにおける車体B側に連結可能なシリンダ10と、シリンダ10内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにシリンダ10内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン11と、一端がピストン11に連結されてシリンダ10内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに他端が鞍乗型車両(車両)Vにおける前輪(車輪)W側に連結可能なロッド12とを有する緩衝器本体1と、リザーバ筒13とリザーバ筒13内に軸方向へ移動自在に挿入されるとともにリザーバ筒13内を気室Gと圧側室R2に連通される液室Lとに区画するフリーピストン14とを備えたリザーバ2と、緩衝器本体1のストローク変位を検出するストロークセンサ3とを備え、ストロークセンサ3は、フリーピストン14に連結される磁石(被検出子)3cとリザーバ筒13に一端が連結されるとともにリザーバ筒13内に収容されて磁石(被検出子)3cの位置を検知するロッド状のプローブ3bとを有している。
このように構成された車両用緩衝器D1では、フリーピストン14と一体となって移動する被検出子としての磁石3cの位置をプローブ3bで検知でき、シリンダ10に対するロッド12の軸方向の位置と一対一の関係を持つフリーピストン14のリザーバ2内での軸方向の位置を検知できるから、車両用緩衝器D1のストローク変位を検知できる。
そして、このように構成された車両用緩衝器D1は、緩衝器本体1に対して設置箇所に自由度があるリザーバ2にストロークセンサ3を設けているので、ストロークセンサ3の配線3dを路面から離間した位置に配置できるようになって配線3dを飛来物から保護できる。
また、このように構成された車両用緩衝器D1では、リザーバ2にストロークセンサ3を収容してフリーピストン14の変位を検知しているので、ストロークセンサ3が長尺にならずに済み、車両用緩衝器D1に曲げモーメントが作用しても変形の影響を受けづらくなるためプローブ3bを保護できる。つまり、ストロークセンサ3は、リザーバ2内のフリーピストン14のストローク変位を検知すれば足りるため、少なくともロッド或いはシリンダの全長に以上の長さに設定されなければならない従来の車両用緩衝器に比較してプローブ3bの全長を短くできる。よって、このように構成された車両用緩衝器D1によれば、ストロークセンサ3のプローブ3bの全長を従来の車両用緩衝器に比較して短くでき製造コストを低減できる。なお、ロッド12の断面積よりもフリーピストン14の底部14aの面積を大きくすれば、シリンダ10に対するロッド12の変位に対してフリーピストン14の変位を小さくできるので、よりプローブ3bの全長を短くできる。
以上より、本実施の形態の車両用緩衝器D1によれば、ストロークセンサ3を保護できるとともにコストを低減できるのである。
また、本実施の形態の車両用緩衝器D1は、リザーバ2がリザーバ筒13の一端を閉塞するキャップ6と、一端がキャップ6に連結されてリザーバ筒13内に収容される非磁性体で形成された筒状ロッド22とを有し、フリーピストン14が環状であって筒状ロッド22の外周に摺動自在に装着されてリザーバ筒13の内周に摺接し、ストロークセンサ3のプローブ3bが筒状ロッド22内に収容されている。このように構成された車両用緩衝器D1では、車両用緩衝器D1に曲げモーメントが負荷されてもプローブ3bが筒状ロッド22によって保護されるとともに筒状ロッド22によってフリーピストン14の軸方向移動を案内するので、プローブ3bが正確にフリーピストン14の位置を検知できるため、車両用緩衝器D1のストローク変位を精度良く検知できる。
さらに、本実施の形態の車両用緩衝器D1は、筒状ロッド22の他端の外周に装着されて液室Lと圧側室R2とを仕切るとともに圧側室R2と液室Lとを連通する排出ポート23aと吸込ポート23bとを有するバルブケース23と、排出ポート23aを開閉するとともに排出ポート23aを圧側室R2から液室Lへ向けて通過する作動油(液体)の流れのみを許容するとともに作動油(液体)の流れに抵抗を与えるベースバルブ24と、吸込ポート23bを開閉するとともに液室Lから圧側室R2へ向かう作動油(液体)の流れのみを許容するチェックバルブ25とを備えている。このように構成された車両用緩衝器D1によれば、車両用緩衝器D1の圧側減衰力を発生するためのベースバルブ24とチェックバルブ25の設置のために設けられる筒状ロッド22内にストロークセンサ3のプローブ3bを設置できるので、安価にストロークセンサ3を設置できる。
そして、本実施の形態の車両用緩衝器D1は、フリーピストン14を液室L側へ向けて付勢する加圧ばね(コイルばね)28と、フリーピストン14と加圧ばね(コイルばね)28との間に介装される環状のばね受29とを備え、ばね受29が加圧ばね(コイルばね)28の内周に配置される筒部29aと筒部29aの一端に設けられて加圧ばね(コイルばね)28の一端を支承するフランジ29bとを有し、磁石(被検出子)3cがばね受29の筒部29aの内周に装着されている。このように構成された車両用緩衝器D1によれば、磁石(被検出子)3cがばね受29の筒部29aの内周に装着されているので、シリンダ10内を加圧ばね(コイルばね)28で加圧しつつも磁石(被検出子)3cと加圧ばね(コイルばね)28との干渉を防止して磁石(被検出子)3cを保護できる。また、このように構成された車両用緩衝器D1によれば、磁石(被検出子)3cがばね受29に装着されているので、加圧ばね(コイルばね)28の寸法変更があった場合でもフリーピストン14の設計変更まで要求されずにばね受29の設計変更のみで磁石(被検出子)3cの設置が可能となる場合もあり、コスト的に有利となる。
また、本実施の形態の車両用緩衝器D1は、リザーバ筒13がシリンダ10の車体B側端に連結されて構成されているので、ストロークセンサ3の配線3dを車両用緩衝器D1における路面から最も遠い上端となる車体B側へ配置させ得るため、配線3dの劣化を効果的に防止できる。
なお、車両用緩衝器D1は、車両走行中に外部から入力される振動エネルギを熱エネルギに変換して振動を減衰させるため、伸縮の際に発熱して内部の作動油(液体)の温度が上昇する。また、車両用緩衝器D1を取り囲む雰囲気の温度の影響によっても車両用緩衝器D1内の作動油(液体)の温度が変化する。作動油(液体)は、温度が変化すると体積が変化するので、シリンダ10に対してロッド12が或る量だけストロークした際にリザーバ2の液室Lに出入りする作動油(液体)量も作動油(液体)の温度に応じて変化する。したがって、予め、車両用緩衝器D1に使用する作動油(液体)の熱膨張係数を把握しておき、作動油(液体)の温度を検知すれば、温度変化による体積変化分を補正して車両用緩衝器D1のストローク変位をより正確に検知できる。具体的には、たとえば、図1中の破線で示すように、車両用緩衝器D1にリザーバ2内或いはシリンダ10内の作動油(液体)の温度を検知する温度センサTSを設け、基準となる温度を設定して、当該基準温度と温度センサTSで検知した温度との差を求める。リザーバ2内の作動油(液体)量は、フリーピストン14の液室Lに面している面積にフリーピストン14の現在位置を乗じれば把握できる。熱膨張係数をβとし、前記差をtとし、リザーバ2内の作動油(液体)量をVとし、基準温度でのリザーバ2内の作動油(液体)量をV0とすると、V0=V/(1+β・t)となる。また、初期のシリンダ10内およびリザーバ2の液室L内の全作動油量(全液体量)は既知であるから、シリンダ10内の作動油(液体)の温度とリザーバ2内の作動油(液体)の温度とが等しいとして、全作動油量(全液体量)からV0を差し引けば、基準温度におけるシリンダ10内の作動油(液性)量を把握できる。シリンダ10内の作動油(液体)量からシリンダ10内の実行容積を差し引けば、実際にロッド12がシリンダ10内にどの程度侵入しているか、つまり、車両用緩衝器D1の実際のストローク変位を検知できる。よって、車両用緩衝器D1に温度センサTSを設けて作動油(液体)の温度を検知すれば温度変化によらずして車両用緩衝器D1のストローク変位をより正確に検知できる。このように、温度センサTSで作動油(液体)の温度を検知してストローク変位を補正すれば、作動油(液体)の温度変化に対応して正確なストローク変位を求め得る。なお、温度センサTSによるストローク変位の補正は、ストロークセンサ3の信号を取り込む前述の外部装置によって行ってもよいし、ストロークセンサ3のセンサ本体3aに温度センサTSの信号を入力してセンサ本体3aで補正処理を行ってもよい。また、温度センサTSは、シリンダ10内或いは液室L内の温度を検知するのが望ましいが、液溜室R3内の作動油(液体)の温度を検知してもよい。なお、温度センサTSを設けずとも車両用緩衝器D1のストローク変位をある程度の精度で検知できるので温度センサTSの設置は必須ではない。
つづいて、懸架装置Sにおいて既に詳細に説明したフロントフォークF1と対を成す他のフロントフォークF2について説明する。フロントフォークF2は、図3に示したように、車両用緩衝器D1の構成とリザーバ38においてストロークセンサ3を備える代わりに減衰力調整バルブDVを備えた減衰力可変緩衝器D2を備えている点で異なっている。したがって、他のフロントフォークF2の説明においてすでに説明したフロントフォークF1と同様の構成については同一の符号を付すこととして詳しい説明を省略する。
図3に示すように、他のフロントフォークF2は、キャップ30、筒状のガイドロッド31と、ガイドロッド31の先端となる図3中下端の外周に螺着されるバルブ保持部材32と、バルブ保持部材32に保持されるバルブケース23、ベースバルブ24およびチェックバルブ25と、フリーピストン14とを備えてリザーバ38を構成している。
そして、減衰力調整バルブDVは、バルブ保持部材32内に設けられた環状弁座32dに軸方向で遠近可能なニードルバルブ33と、キャップ30に装着されてキャップ30に対する回転操作によって軸方向へ移動可能なアジャスタ34と、アジャスタ34の軸方向の変位をニードルバルブ33へ伝達するコントロールロッド35とを備えて構成されている。
キャップ30は、軸心部にアジャスタ34を回転可能に収容するとともに内周に螺子溝を有する収容部30aと、図3中下端にガイドロッド31の上端が螺合されるソケット30bとを備えている。また、収容部30aは、ソケット30b内に連通されている。アジャスタ34は、収容部30aの螺子溝に螺合されて収容部30a内に収容されており、外部からの操作によって回転させられるとキャップ30に対して軸方向に移動可能である。
また、アジャスタ34の先端は、ガイドロッド31内に挿入されたコントロールロッド35に接している。バルブ保持部材32は、筒状であってガイドロッド31の図3中下端外周に螺着される環状の連結部32aと、連結部32aから下方側へ延びる筒状のバルブ保持軸32bと、連結部32aの外周から開口してバルブ保持軸32b内に通じるポート32cと、バルブ保持軸32b内に設けられた環状弁座32dとを備えている。
そして、バルブ保持部材32は、バルブ保持軸32bの外周に嵌合されるバルブケース23、ベースバルブ24およびチェックバルブ25をバルブ保持軸32bの下端外周に螺着されるナット27と連結部32aとで挟持して保持している。バルブ保持部材32におけるバルブ保持軸32bの先端は圧側室R2に臨み、ポート32cは液室Lに臨んでいるので、バルブ保持部材32は、バルブ保持軸32b内とポート32cとで排出ポート23aを迂回して圧側室R2と液室Lとを連通するバイパス路を形成している。
また、ニードルバルブ33は、先端にニードルを備えてガイドロッド31内に軸方向移動自在に挿入されており、先端のニードルをバルブ保持部材32のバルブ保持軸32b内に突出させている。そして、ニードルバルブ33は、先端のニードルを環状弁座32dに当接させると前記バイパス路を遮断し、前記ニードルを環状弁座32dから離間させた状態ではバイパス路を開く。また、ニードルバルブ33は、前記ニードルを環状弁座32dから離間させた状態で環状弁座32dへ遠近させてバイパス路の流路面積を大小変更させ得る。
ニードルバルブ33は、圧側室R2の圧力が先端のニードルに作用しているため当該圧力によって付勢されてコントロールロッド35の他端に常に当接するように押し付けられている。よって、オペレータが回転操作してキャップ30に対してアジャスタ34が軸方向へ移動すると、コントロールロッド35を通じてニードルバルブ33も軸方向へ変位してバイパス路が開閉および流路面積の変更が行われる。
このように構成された減衰力可変緩衝器D2では、シリンダ10に対してロッド12が侵入する収縮作動時に排出ポート23aを通過する作動油の流量をバイパス路の流路面積の変更によって調節できるので、収縮時の減衰力の調整を行える。
そして、収縮時の減衰力調整を行える減衰力可変緩衝器D2が組み込まれたフロントフォークF2と、収縮時の減衰力調整機能を備えていないがストロークセンサ3が組み込まれたフロントフォークF1とは、対を成して懸架装置Sを構成している。
より具体的には、懸架装置Sは、アウターチューブ4とアウターチューブ4内に軸方向移動自在に挿入されるインナーチューブ5とを備えて鞍乗型車両(車両)Vの車体Bと前輪Wとの間に介装される一対の伸縮体T1,T2と、伸縮体T1、T2の一方の内部に収容されて一方の伸縮体T1の伸縮に伴って伸縮作動する車両用緩衝器D1と、伸縮体T1,T2の他方の内部に収容されて他方の伸縮体T2の伸縮に伴って伸縮して減衰力を発生するとともに減衰力のうち少なくとも収縮時の減衰力の調整が可能な減衰力可変緩衝器D2とを備え、各伸縮体T1,T2の収縮時の減衰力の調整が減衰力可変緩衝器D2のみで可能とされている。このように構成された懸架装置によれば、一方の車両用緩衝器D1によってストローク変位の検知をしつつも他方の減衰力可変緩衝器D2で収縮時の減衰力調整が可能であるが、収縮時の減衰力の調整が減衰力可変緩衝器D2のみで可能であるので、ストロークセンサ3を組み込んだ車両用緩衝器D1に収縮時の減衰力を調整する減衰力調整バルブを設置せずに済む。よって、このように構成された懸架装置Sによれば、ストロークセンサ3を設置しても構造が複雑とならず、ストローク変位の検知をしつつも収縮側の減衰力調整が可能となる。また、ストロークセンサ3が車両用緩衝器D1のリザーバ2に組み込まれているので、懸架装置Sは、車両用緩衝器D1と同様に、ストロークセンサ3を保護できるとともにコストを低減できる。
なお、一つのフロントフォークF3にて車両用緩衝器D3のストローク変位と収縮側の減衰力の調整を行えるようにするには、たとえば、図3に示した減衰力可変緩衝器D2のリザーバ38部分の構成を図5に示した第2の実施の形態の車両用緩衝器D3の如く変更してもよい。具体的には、第2の実施の形態の車両用緩衝器D3では、キャップ30に螺着したアジャスタ36とガイドロッド31内に挿通されるコントロールロッド37とを筒状として、ストロークセンサ3のプローブ3bをアジャスタ36内およびコントロールロッド37内に挿通し、ばね受29に被検出子としての磁石3cを装着し、プローブ3bから延びる配線3eを車両用緩衝器D3の外へ引き出して車両用緩衝器D3の外部に設置される図外のセンサ本体に接続させている。他の車両用緩衝器D3の構成は、減衰力可変緩衝器D2と同様の構成となっている。
このように構成された車両用緩衝器D3では、オペレータがアジャスタ36をキャップ30に対して回転操作して軸方向へ移動させるとニードルバルブ33が環状弁座32dに対して遠近してバイパス路の開閉と流路面積の変更とが可能である。また、ガイドロッド31とコントロールロッド37とは、車両用緩衝器D3の場合、非磁性体とされており、プローブ3bで磁石3cの位置を検知できる。
以上、このように構成された車両用緩衝器D3を利用すれば、構造は複雑となるものの1つのフロントフォークF3にてストローク変位の検知と収縮側の減衰力の調整が可能となる。
最後に、本発明の第3の実施の形態における車両用緩衝器D4について説明する。車両用緩衝器D4は、図6に示すように、緩衝器本体40と、緩衝器本体40に対して並列に配置されるリザーバ41と、ストロークセンサ42とを備えて構成されている。
緩衝器本体40は、図6に示すように、シリンダ43と、シリンダ43内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにシリンダ43内を液体としての作動油が充填される伸側室R4と圧側室R5とに区画するピストン44と、一端がピストン44に連結されてシリンダ43内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド45とを備えている。
シリンダ43は、図6中上端が閉塞された筒体であって上端に設けられたアイ型のブラケット43aを介して図示しない鞍乗型車両の車体に連結可能とされている。また、シリンダ43の下端内周には、ロッド45を軸支してロッド45のシリンダ43に対する軸方向の移動を案内するロッドガイド46がシール部材47とともに設けられている。他方、ロッド45は、図6中下端に設けられたアイ型のブラケット45aを介して図示しない鞍乗型車両の後輪に連結可能とされている。
ピストン44には、伸側室R4と圧側室R5とを連通する伸側ポート44aおよび圧側ポート44bと、伸側ポート44aに設けられて伸側室R4から圧側室R5へ向かう作動油の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブ44cと、圧側ポート44bに設けられて圧側室R5から伸側室R4へ向かう作動油の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブ44dとを備えている。なお、ロッド45に伸側ポート44aおよび圧側ポート44bを迂回して伸側室R4と圧側室R5とを連通する通路を設けて、当該通路に当該通路の流路面積を変更可能なニードルバルブ等を設けて車両用緩衝器D4の減衰力の調整を可能としてもよい。
シリンダ43の上端の側部には、リザーバ41を連結する連結部43bが設けられている。他方、リザーバ41は、図6中上端が連結部43bに保持されるリザーバ筒48と、リザーバ筒48の図6中下端を閉塞するキャップ49と、キャップ49に一端が取り付けられる非磁性体で形成された筒状ロッド50と、可能であって筒状ロッド50の外周に摺動自在に装着されてリザーバ筒48の内周に摺接してリザーバ筒48内を液室L1と気室G1とに区画する環状のフリーピストン51と、気室G1内の気体の弾発力によって液室L1を圧縮する方向へフリーピストン51を付勢する気体ばね(符示せず)とを備えている。
リザーバ筒48内の図6中上方の液室L1は、シリンダ43の連結部43b内に設けられた排出ポート43cと吸込ポート43dとによりシリンダ43内の圧側室R5に連通されている。また、排出ポート43cには、圧側室R5から液室L1へ向かう作動油の流れのみを許容するとともに作動油の前記流れに対して抵抗を与えるベースバルブ43eが設けられている。さらに、吸込ポート43dには、液室L1から圧側室R5へ向かう作動油の流れのみを許容するチェックバルブ43fが設けられている。このようにシリンダ43における連結部43bは、バルブケースとして機能している。
また、ストロークセンサ42は、キャップ49に保持されたセンサ本体42aと、センサ本体42aから延長されてキャップ49に連結された筒状ロッド50内に挿入されるロッド状のプローブ42bと、フリーピストン51に装着されて筒状ロッド50の外周に配置される環状の被検出子としての磁石42cとを備えている。よって、ストロークセンサ42は、フリーピストン51のリザーバ筒48に対する軸方向の現在位置を検知できる。なお、ストロークセンサ42の出力する信号は、センサ本体42aから延びてリザーバ41の外方へ引き出される配線42dを介して図外の前記外部装置へ入力される。
このように構成された車両用緩衝器D4における緩衝器本体40が伸長する場合には、ピストン44がシリンダ43内で図6中下方へ移動するため、圧縮される伸側室R4の作動油は伸側ポート44aおよび伸側減衰バルブ44cを通過して圧側室R5へ移動する。そして、伸側減衰バルブ44cが伸側ポート44aを通過する作動油の流れに抵抗を与えるので、伸側室R4の圧力が圧側室R5の圧力よりも高くなり、車両用緩衝器D4は自身の伸長を妨げる伸側減衰力を発揮する。
車両用緩衝器D4の伸長時には、シリンダ43からロッド45が退出し、ロッド45がシリンダ43から退出する体積分の作動油がシリンダ43内の圧側室R5で不足する。このように圧側室R5で作動油が不足するために、圧側室R5の圧力がリザーバ41内の圧力よりも低下して、チェックバルブ43fが撓んで吸込ポート43dを開放する。よって、圧側室R5で不足する作動油は、リザーバ41の液室L1から吸込ポート43dを通じて圧側室R5に供給される。リザーバ41内では、液室L1から作動油が圧側室R5へ移動するためにフリーピストン51が上方へ移動して液室L1を縮小させるとともに気室G1を拡大させ、ロッド45がシリンダ43から退出する体積の補償がなされる。
また、車両用緩衝器D4における緩衝器本体40が収縮する場合には、ピストン44がシリンダ43内で図6中上方へ移動するため、圧縮される圧側室R5の作動油は圧側ポート44bおよび圧側減衰バルブ44dを通過して伸側室R4へ移動する。圧側減衰バルブ44dは、圧側ポート44bを通過する作動油の流れに抵抗を与えて、圧側室R5の圧力と伸側室R4の圧力とに差を生じさせる。
車両用緩衝器D4の収縮時には、シリンダ43内へロッド45が侵入し、ロッド45がシリンダ43内へ侵入する体積分の作動油がシリンダ43内で過剰となる。このようにシリンダ43内で過剰となった作動油は、ベースバルブ43eを押し開いて排出ポート43cを通過してリザーバ41の液室L1へ移動する。ベースバルブ43eが排出ポート43cを通過する作動油の流れに抵抗を与えるので、シリンダ43内の全体の圧力を上昇させる。よって、車両用緩衝器D4は、圧側減衰バルブ44dおよびベースバルブ43eによって、自身の収縮を妨げる圧側減衰力を発揮する。リザーバ41内では、作動油がシリンダ43内から液室L1内へ排出されるためにフリーピストン51が上方へ後退して液室L1を拡大させるとともに気室G1を縮小させ、ロッド45がシリンダ43内へ侵入する体積の補償がなされる。
そして、本実施の形態の車両用緩衝器D4にあっても、フリーピストン51の現在位置は、ストロークセンサ42によって検知できるので、車両用緩衝器D4のストローク変位を検知できる。
このように構成された車両用緩衝器D4は、緩衝器本体40におけるシリンダ43に対してリザーバ筒48が側方に配置されて別体となっているので、リザーバ41に収容されるストロークセンサ42の配線42dを路面から離間した位置に配置できるので、配線42dを飛来物から保護できる。
また、このように構成された車両用緩衝器D4では、リザーバ41にストロークセンサ3を収容してフリーピストン51の変位を検知しているので、ストロークセンサ3が長尺にならずに済むので製造コストを低減できる。
さらに、車両用緩衝器D4によれば、リザーバ筒48がシリンダ43とは別体となっているので緩衝器本体40に曲げモーメントが作用してもリザーバ41に曲げモーメントが殆ど負荷されない。よって、車両用緩衝器D4によれば、ストロークセンサ42に曲げモーメントが作用しない構造となっているのでストロークセンサ42をより効果的に保護できる。
以上より、本実施の形態の車両用緩衝器D4によれば、ストロークセンサ42を保護できるとともにコストを低減できるのである。なお、リザーバ筒48は、図示したところでは、シリンダ43と平行に配置されているが、シリンダ43に対して平行以外の姿勢で側方に配置されてもよい。したがって、リザーバ筒48は、たとえば、シリンダ43の軸線に対して直交する平面上に軸線を持つように配置されもよい。また、車両用緩衝器D4は、収縮側の減衰力の調整を可能とするべく、圧側室R5と液室L1とを排出ポート43cおよび吸込ポート43dを迂回して連通するバイパス路と、バイパス路にバイパス路の流路面積を変更可能なニードルバルブ等の可変減衰バルブを備えていてもよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形および変更が可能である。