JP7494163B2 - ウォルフラム症候群の治療剤 - Google Patents

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Description

この発明は,ウォルフラム症候群の治療剤に関する。
特許第5221392号には,3,5-セコ-4-ノル-コレスタン誘導体を有効成分とするウォルフラム症候群の治療剤が記載されている。
特許第5221392号
この発明は,新規のウォルフラム症候群の治療剤を提供することを目的とする。
この発明は,以下の知見に基づく。
ウォルフラム症候群は若年からI型糖尿病、尿崩症および難聴と失明、けいれんなどの中枢神経症状を呈し、30歳までに亡くなる。本邦で150-200名、全世界で3万人の患者の存在が推定される稀少性難治性疾患である。その原因遺伝子(WFS1)は,シノビオリンの安定を介して機能していると考えられる。換言すれば、変異型WFS1を有する患者ではシノビオリンが不安定化し、種々の病態を呈することが考えられる。実施例により示される通り,膵β細胞内でシノビオリンが転写統合装置CREB regulated transcription coactivator 2(CRTC2)を介してインスリンの分泌調節を司っている。CRTC2はカルシニューリンにより核内移行が制御されていることより、I型糖尿病を呈する膵β細胞特異的シノビオリンノックアウトマウスにカルシニュ-リン(Calcineurin)阻害剤であるシクロスポリンA(CsA)を投与したところ、高血糖が正常化された。これらの結果より,カルシニューリン阻害剤は,ウォルフラム症候群の治療剤として機能すると考えられる。
この明細書に開示される第1の側面は,カルシニュ-リン(Calcineurin)の阻害剤を有効成分として含むウォルフラム症候群の治療剤に関する。
カルシニュ-リンの阻害剤の好ましい例は,シクロスポリン,その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物,タクロリムス,その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物である。
カルシニュ-リンの阻害剤の好ましい上記とは別の例は,ラパマイシン,その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物である。
この発明によれば, ウォルフラム症候群の治療剤を提供できる。
図1Aは,野生型(WT)マウスとSyvn1ノックアウト(KO)の各臓器(肝臓,腎臓,筋肉,及び膵臓)における遺伝子破壊の臓器特異性を示すゲル泳動写真である。KOではCre-loxPシステムにより破壊された異常エクソンが出現する(矢印)。図1Bは,膵臓における野生型(WT)マウスとSyvn1ノックアウト(KO)でのSyvn1 mRNA発現量を示すグラフである。図1Cは,野生型(WT)マウスとSyvn1ノックアウト(KO)の膵臓におけるSyvn1蛋白の発現量を示す写真である。図1Dは,野生型(WT)マウスとSyvn1ノックアウト(KO)の体重の変動を示す。横軸は,日であり,縦軸は0日を100%としたときの体重変動を示す。図1Eは,野生型(WT)マウスとSyvn1ノックアウト(KO)の血糖値を示すグラフである。 図2Aは,グルコース負荷による血糖値変化を示すグラフである。図2Bは,グルコース負荷マウスにおける血中のインスリン濃度変化を示すグラフである。図2Cは,インスリン耐性試験の結果を示すグラフである。横軸は時間(分)を示し,縦軸は血糖値を示す。図2Cは,野生型(WT)マウスとSyvn1ノックアウト(KO)の膵島でのグルコース応答性インスリン分泌能の検討結果を示すグラフである。図2Eは,グルコース刺激によるインスリン分泌量の測定結果を示すグラフである。図2Fは,野生型(WT)マウスとSyvn1ノックアウト(KO)の膵臓の組織化学的検査の結果を示す染色組織の写真である。 図3Aは,Syvn1の結合分子のCTRC2とシノビオリンとの結合を示すウェスタンプロットである。 図3Bは, GST融合Syvn1とCRTC2の結合を示す写真である。図3Cは,Syvn1とCRTC2の結合を免疫沈降で示した写真である。図3Dは,Syvn1とCRTC2が共局在していることを示す写真である。 図4Aはin vitroでのシノビオリンによるCRTC2のユビキチン化を示すウェスタンプロットである。図4Bは,シノビオリン及びその変異体によるCRTC2のユビキチン化を示すウェスタンプロットである。図4Cは,siSyvn1によるCTRC2mRNA発現量を示すグラフである。図4Dは,siSyvn1によるCTRC2発現量を示すウェスタンプロットである。図4Eは,KO及びWTマウスの膵島での CTRC2発現量を示すウェスタンプロットである。図4Fは,KO及びWTマウスの膵島での CTRC2mRNA示すグラフである。図4Gは,KO及びWTマウスの膵島での CTRC2mRNA示すグラフである。 図5Aは,FSK刺激転写活性化に対するシノビオリン阻害による影響を示したグラフである。図5Bは,FSK刺激転写活性化に対するCTRC2とシノビオリンの影響を示したグラフである。図5Cは,FSK刺激転写活性化に対するCTRC2の用量依存性を示したグラフである。図5Dは,KO及びWTマウスの膵島でのPGC1α発現量を示したグラフである。図5Eは, KO及びWTマウスの膵島でのATP量を示したグラフである。 図6Aは,FSK刺激転写活性化に対するシノビオリン阻害に対するCsAの賦活化作用を示したグラフである。図6Bは,KO及びWTマウスのグルコース負荷に伴う血糖値上昇に伴うCsAの効果を示したグラフである。図6CはKO及びWTマウスのインシュリン量変化に対するCsAの効果を示したグラフである。図6Dは,KO及びWTマウスの膵島におけるグルコース刺激インシュリン量変化に対するCsAの効果を示したグラフである。 図7は神経特異的 Syvn1 欠損マウス (Syn-Cre, Syvn1fl/fl) の神経障害由来の死亡に対するタクロリムスの延命効果を示したグラフである。
本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
この明細書に開示される第1の側面は,カルシニュ-リン(Calcineurin)の阻害剤を有効成分として有効量含むウォルフラム(Wolfram)症候群の治療剤に関する。カルシニュ-リンの阻害剤の好ましい例は,シクロスポリン,その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物,タクロリムス,その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物である。
各種カルシニュ-リン(Calcineurin)の阻害剤の薬学的に許容される塩や,各種カルシニュ-リン(Calcineurin)の阻害剤の薬学的に許容される溶媒和物もウォルフラム(Wolfram)症候群の治療剤の有効成分として有用である。薬学的に許容される塩の例は,塩酸塩,ナトリウム塩など公知の塩である。薬学的に許容される溶媒和物の例は水和物である。
カルシニュ-リンは、細胞内のシグナル伝達に関与するカルシウム/カルモジュリン調節タンパク質ホスファタ-ゼである。カルシニュ-リン阻害剤は、例えば,遺伝子調節に関与する細胞性酵素であるカルシニューリンホスファターゼ(PP2B、PP3)を標的化することにより適切な基質のカルシニュ-リン脱リン酸化を遮断する物質である。
カルシニュ-リン阻害剤は、カルシニュ-リン抑制活性を有するイムノフィリン-結合化合物が好ましい。イムノフィリン-結合カルシニュ-リン阻害剤は、イムノフィリン、例えばシクロフィリンおよびマクロフィリンと共にカルシニュ-リン阻害複合体を形成する化合物である。シクロフィリン-結合カルシニュ-リン阻害剤の例示は、シクロスポリンまたはシクロスポリン誘導体(以降、シクロスポリン)であり、マクロフィリン-結合カルシニュ-リン阻害剤の例示はアスコマイシン(FR 520)およびアスコマイシン誘導体(以後、アスコマイシン)である。真菌種のなかの天然であるか、または発酵方法の操作または化学誘導体化により得られる、広範囲のアスコマイシン誘導体が知られる。アスコマイシン型マクロライドには、アスコマイシン、タクロリムス(FK506)、シロリムスおよびピメクロリムスが挙げられる。
土壌真菌種であるPotypaciadium inifilatumから最初に抽出されたサイクロスポリン(シクロスポリン)は、環状11-アミノ酸構造を有し、例えばシクロスポリンAからI、例えばシクロスポリンA、B、C、D およびGが挙げられる。シクロスポリンは、免疫応答性リンパ球、特にT-リンパ球の細胞質性タンパク質シクロフィリンと結合して、コンプレックスを形成する。コンプレックスは、通常の環境下では、インターロイキン-2(IL-2)の転写を誘導するカルシニュ-リンを阻害する。シクロスポリンはまた、リンフォカイン産生を阻害し、インタ-ロイキンを放出し、エフェクタ-T-細胞の機能を低下させる。
ボクロスポリンは、シクロスポリンAの半合成の誘導体であるより強力かつ毒性が低い次世代のカルシニュ-リン阻害剤である。このクラスの他の分子と同様に、ボクロスポリンは、免疫応答性リンパ球、特にTリンパ球を可逆的に阻害し、またリンフォカイン産生および放出も阻害する。この作用はカルシニュ-リンの阻害により最初に媒介され、ホスファタ-ゼ酵素は細胞の細胞質に見出された。ボクロスポリンは、カルシニュ-リンのラッチ/調節領域中により深く伸張することが見出された二重結合により単一の炭素伸張を有する。実施態様において、本開示内容の該組成物は、ボクロスポリンのトランス型、トランス-ISA247 CAS RN 368455-04-3であり、これは例えば米国特許公開番号第2006/0217309号に記載されており、出典明示により本明細書に組み込まれる。さらに、ボクロスポリンの組成物が、例えば米国特許番号第7,060,672号に記載されており、これは出典明示により本明細書に組み込まれる。
タクロリムス(FK506)は、真菌生成物でもあるが、マクロライドラクトン構造を有する別のカルシニュ-リン阻害剤である。タクロリムスは、肝臓、腎臓、心臓、肺および心臓/肺の移植と共に免疫抑制剤として使用されている。タクロリムスは、IL-2の産生を阻害することが示されてきた。タクロリムスは、イムノフィリン(FK-結合タンパク質12、FKBP12)に結合し、その後カルシニュ-リンに該コンプレックスが結合して、そのホスファタ-ゼ活性を阻害する。
シロリムス(ラパマイシン)は、放線菌類のStreptomyces hygroscopicusから単離された微生物の生成物である。シロリムスは、mTORコンプレックス1(mTORC1)を直接結合することによりラパマイシン(mTOR)経路の哺乳類標的を阻害するコンプレックスを形成するイムノフィリン(FK-結合タンパク質 12、FKBP12)に結合する。シロリムスは、インタ-ロイキン-2 (IL-2)に対する応答を阻害し、これによりT-およびB-細胞の活性化を阻害する。これに対して、タクロリムスおよびシクロスポリンは、IL-2の産生を阻害する。
ピメクロリムスは、タクロリムスと同様にMalassezia sppに対して抗真菌性特性を有することが見出された新規カルシニュ-リン阻害剤である。
この明細書に開示されるある態様の剤は,経口,非経口投与のいずれでも可能である。非経口投与の場合は,経肺剤型(例えばネフライザーなどを用いたもの),経鼻投与剤型,経皮投与剤型(例えば軟膏,クリーム剤),注射剤型等が挙げられる。注射剤型の場合は,例えば点滴等の静脈内注射,筋肉内注射,腹腔内注射,皮下注射等により全身又は局部的に投与することができる。
投与方法は,患者の年齢,症状により適宜選択する。有効投与量は,一回につき体重1kgあたり0.1μg~100mg,好ましくは1~10μgである。但し,上記治療剤はこれらの投与量に制限されるものではない。siRNA等の核酸を混合する場合,当該核酸の用量の例は,0.01~10μg/ml,好ましくは0.1~1μg/mlである。
この明細書に開示されるある態様の剤は,常法にしたがって製剤化することができ,医薬的に許容される担体や添加物を含むものであってもよい。このような担体及び添加物として,水,医薬的に許容される有機溶剤,コラーゲン,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,カルボキシビニルポリマー,カルボキシメチルセルロースナトリウム,ポリアクリル酸ナトリウム,アルギン酸ナトリウム,水溶性デキストラン,カルボキシメチルスターチナトリウム,ペクチン,メチルセルロース,エチルセルロース,キサンタンガム,アラビアゴム,カゼイン,寒天,ポリエチレングリコール,ジグリセリン,グリセリン,プロピレングリコール,ワセリン,パラフィン,ステアリルアルコール,ステアリン酸,ヒト血清アルブミン,マンニトール,ソルビトール,ラクトース,医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
上記添加物は,本発明の治療剤の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれる。例えば,注射用製剤として使用する場合,カルシニューリン阻害剤を溶剤(例えば生理食塩水,緩衝液,ブドウ糖溶液等)に溶解し,これにTween80,Tween20,ゼラチン,ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは,使用前に溶解する剤型とするために凍結乾燥したものであってもよい。凍結乾燥用賦形剤としては,例えば,マンニトール,ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
この明細書は,ウォルフラム症候群を治療するための剤(ウォルフラム症候群の治療剤)を製造するためのカルシニュ-リンの阻害剤の使用を開示する。この使用は,カルシニュ-リンの阻害剤を有効成分して用い,公知の製剤化方法や,公知の加工方法を用いてウォルフラム症候群の治療剤を製造する方法である。
この明細書は,対象となる哺乳動物(ヒト又は非ヒト哺乳動物)に,ウォルフラム症候群の治療剤を投与する工程を含む,対象となる哺乳動物のウォルフラム症候群を治療する方法。対象が,ウォルフラム症候群の治療剤を有効成分とするウォルフラム症候群の治療剤を摂取することで,ウォルフラム症候群が治療されることが期待される。
なお,膵臓のβ細胞特異的なノックアウトマウスなどのノックアウト動物は,ウォルフラム症候群のモデル動物といえる。このため,この明細書は,シノビオリンをノックアウトしたウォルフラム症候群のモデル動物をも提供する。
材料および方法
マウス
動物実験は、動物実験に関する施設内および国内のガイドラインに従って実施し事前に東京医科大学の施設内動物管理使用委員会によって承認された。マウスはSPF環境下、12時間の明暗のサイクルの条件下(温度20~26℃;湿度40~65%)で飼育および実験に供した。飼料はF-1食品(5.1%脂肪、21.3%タンパク質:船橋農場、千葉、日本)を、飲水は水道水を与えた。研究に使用された全てのマウスは、C57BL/6J系統を用い、膵臓β細胞のSyvn1を特異的にノックアウトしたマウスを作製するために、フロックス化ホモ接合性Syvn1flox/floxマウスおよびヘテロ接合性Pdx1-Creマウス(Jackson Laboratories)を交配させて、二重ヘテロ接合性Pdx1-Cre;ホモ接合性Syvn1flox/+マウスを作製し、これをホモ接合体Syvn1flox/floxマウスと交配させてSyvn1ホモ接合体(Pdx1-Cre;flox/flox)、ホモ接合体Syvn1flox/floxを作製した。
耐糖能試験
マウスに16時間絶食させた後、マウスに経口投与により1.5mg/gのグルコースを与えた。血液サンプルを尾から継時的に採取し、自動血糖測定器(Glutest Neo alpha; Sanwa Chemical、名古屋、日本)を用いて血糖値を測定した。また、インスリン濃度をELISAキット(富士フイルムワコーシバヤギ、群馬、日本)のプロトコールに従って測定した。
インスリン耐性試験
マウスを16時間絶食させた後、マウスに0.75mU/gのヒト由来インスリン(Novolin R; Novo Nordisk、Denmark)を腹腔内投与した。血液試料を尾から継時的にで採取し、ELISAキットを用いてインスリン濃度を測定した。
試験結果および考察
膵臓β細胞特異Syvn1ノックアウト(KO)マウスの表現型に関して検討した結果を図1に示した。図1Aは,野生型(WT)マウスとSyvn1ノックアウト(KO)の各臓器(肝臓,腎臓,筋肉,及び膵臓)における遺伝子破壊の臓器特異性を示すゲル泳動写真である。KOではCre-loxPシステムにより破壊された異常エクソンが出現する(矢印)。図1Bは,膵臓における野生型(WT)マウスとSyvn1ノックアウト(KO)でのSyvn1 mRNA発現量を示すグラフである。図1C.は,野生型(WT)マウスとSyvn1ノックアウト(KO)の膵臓におけるSyvn1蛋白の発現量を示す写真である。図1Dは,野生型(WT)マウスとSyvn1ノックアウト(KO)の体重の変動を示す。横軸は,日であり,縦軸は0日を100%としたときの体重変動を示す。図1Eは,野生型(WT)マウスとSyvn1ノックアウト(KO)の血糖値を示すグラフである。Syvn1ノックアウト(KO)では野生型(WT)に比べて膵臓のシノビオリン発現量が減少(図1Bおよび図1C)並びに血糖値が統計学的有意に高かった(図1E)。一方、血清中の正常グルコース濃度維持に重要な役割を担っているインスリン分泌能に関しては影響なかった。
さらに、グルコース応答性の血糖値調節およびインスリン分泌について検討するために野生型(WT)及びSyvn1ノックアウト(KO)マウスにグルコースを経口投与した。グルコース負荷による血糖値変化を図2Aに示す。その結果、WTに比べKOマウスではグルコースクリアランスが統計学的有意に低かった。さらに、グルコース負荷マウスにおける血中のインスリン濃度変化を図2Bに示す。WTでは血中グルコース上昇に伴うインスリン濃度の上昇が認められたが、KOマウスではWTに比べ血中インスリン濃度の上昇が有意に低かった。
次に本マウスにおけるインスリン応答能を検討する目的でインスリン耐性試験を実施し、その結果を図2C、図2Dに示した。WT及びKOマウスではインスリン投与により血中グルコースを減少させたが、両マウス間での差は認められなかった。また、組織化学的検査でも組織的な違いは認められなかった(図2F)。
以上の結果から膵臓β細胞特異的なシノビオリンをノックアウトした本KOマウスではインスリンの分泌機機能低下が認められ、ウォルフラム症候群患者におけるシノビオリンの不安定化による血糖値上昇等の病態に酷似していることから本モデルがウォルフラム症候群の1つの動物モデルになると考えられる。
膵島単離およびβ細胞調製
KOおよびWTマウスからの膵島の単離を行った。総胆管を十二指腸出口に近い点でクランプした後、HEPES(Sigma)およびリベラーゼ(Roche Diagnostics、Mannheim、Germany)を含有するHBSS緩衝液(Sigma)を管内に注入した。腫大した膵臓を摘出し、37℃で24分間インキュベートした。膵臓をピペッティングにより分散させ、10%FBSを含むHBSS緩衝液で2回洗浄した。膵島は手動ピッキングによって集めた。インスリン分泌の分析のために、単離された膵島からのインスリン分泌を、2.8mmol/Lのグルコース濃度を有するクレブス-リンガー重炭酸塩緩衝液を用いて測定した。通常のグルコース濃度で30分間プレインキュベートした後、1培養容器あたり10個の膵島を用いてインキュベーションを37℃で1時間行った。プロトコール(富士フイルムワコーシバヤギ、群馬、日本))に従ってELISAキットを用いてインスリンレベルを決定した。
細胞培養および一過性トランスフェクションアッセイ
HEK293とHEK293T細胞5X106個になるようにプレートに播種し、常法に従ってダルベッコの改良イーグル培地にて培養した。ラットINS細胞はDr. Claes B. Wollheimから供与され、RPMI 1640培養液を用いて1~5X106個で培養された。一過性トランスフェクションは、プロトコール(Invitrogen)に従ってLipofectamine 2000を用いて行った。トランスフェクションの24時間後に細胞溶解緩衝液(Promega、Madison、WI、USA)で細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性を測定した。等量のDNAを確実にするために、空のプラスミドを各トランスフェクションに加えた。
β細胞由来の培養細胞であるラットINS細胞を用いてシノビオリン特異的siRNAを細胞導入によるインスリン分泌量を測定した
プラスミドと抗体
全長CRTC2配列をマウスcDNAからPCR増幅した。CRTC2欠失変異体の断片をPCR増幅によって得て、これらを全長CRTC2と共にpcDNA3 HAプラスミドまたはpcDNA3 FLAGプラスミド(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)に挿入した。プラスミド配列を配列決定により確認した。SYVN1プラスミドは以前に記載されているものを使用した。また、以下の抗体を使用した:抗FLAG(M2)(Sigma)、抗チューブリン(Sigma)、抗HA(12CA5および3F10; Roche、インディアナポリス、IN、米国)、抗TORC2(Novus Biologicals、CO、米国、およびプロテインテック、IL、米国)。抗SYVN1ウサギポリクローナル抗体は以前に報告されているものを使用した。
GSTプルダウンアッセイ
GST融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(GE Healthcare、Little Chalfont、UK)を用いて発現および精製した。細胞抽出物を、セファロースビーズに結合した各GST融合タンパク質と共に1mlの緩衝液A [20mMトリス-HCl、100mM NaCl、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1mMジチオトレイトール(DTT)、0.1%ノニデットP-40(NP-40)、5%グリセロール、 1mMのNaVO、5mM NaF、1μg/mlアプロチニン,1μg/mlロイペプチン,pH8.0]で4℃で4時間インキュベートした。緩衝液Aで洗浄した後、結合タンパク質をドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分画し、続いてウエスタンブロッティングによって検出した。
免疫沈降アッセイ
HEK293T細胞にHA-CRTC2およびSYVN1/FLAG発現ベクターをトランスフェクトした。24時間後、細胞を200μLの溶解緩衝液(20mM Tris-HCl、pH8.0;100mM NaCl;1mM EDTA;1mM DTT;1%NP-40;5%グリセロール;およびプロテアーゼインヒビター)中で溶解した。溶解物を結合緩衝液(それが0.1%のNP-40を含有することを除いて溶解緩衝液と同じ組成のもの)中に希釈し、そしてプロテインG-セファロースビーズに結合した20μLの抗HA抗体と混合した。4℃で4時間インキュベートした後、ビーズを結合緩衝液で3回洗浄した。結合したタンパク質をSDS-PAGEによって分画し、ウエスタンブロッティングによって分析した。内因性SYVN1とCRTC2との間の相互作用を検出するために、HEK293細胞を100mMトリス-HCl、80mM NaCl、1mM EDTA、5mMエチレングリコールテトラ酢酸、5%グリセロール、2%(w/v)ジギトニン、0.1%Brij 35、プロテアーゼ阻害剤カクテル、および20mM MG132からなる溶液中で溶解した。免疫沈降を抗CRTC2抗体または対照IgGを用いて行い、その後抗Syvn1抗体を用いてウエスタンブロットをSynv1の検出を行った。
インビトロユビキチン化アッセイ
インビトロユビキチン化アッセイを常法に従って実施した。簡単に説明すると、GST-CRTC2を0.75μgのHA-Ub、125ngのE1(Biomol International、米国ペンシルベニア州、プリマスミーティング)、150ngのUBcH5C、および150ngのマルトース結合タンパク質タグ付きSYVN1ΔTM-His(50μl)と1mM トリス-HCl、pH7.5;5mM MgCl;0.6mM DTT;および2mM ATPの反応液とともに37℃で2時間インキュベートした。次いで、グルタチオンセファロースを添加し、混合物をGST洗浄緩衝液(50mM Tris-HCl、pH7.5;0.5M NaCl;1%Triton X;1mM EDTA;1mM DTT;およびプロテアーゼ阻害剤)で洗浄した。ユビキチン化CRTC2は、抗HA抗体を用いたウエスタンブロッティングにより解析した。
インビボユビキチン化アッセイ
HEK293T細胞を5×106個になるようにプレートに播種し、HA-CRTC2、Ub/FLAG、SYVN1、またはSYVN1 3S発現プラスミドでトランスフェクトした。 24時間後、20μMのMG-132を添加し、細胞を溶解緩衝液(50mMのHEPES、pH7.9;150mMのKCl;1mMのフェニルメタンスルホニルフルオリド、1%のTriton X-100;10%のグリセロール;およびプロテアーゼ阻害剤)に溶解した。)溶解物を、プロテインG-セファロースビーズにコンジュゲートした1μgの抗HA抗体と混合した。4℃で4時間インキュベートした後、ビーズを溶解緩衝液で3回洗浄した。結合したタンパク質をSDS-PAGEによって分画し、そしてイムノブロッティングによって分析した。
免疫細胞化学
免疫細胞化学検査は常法に従って実施した。簡潔には、細胞にプラスミドをトランスフェクトし、その24時間後に3.7%ホルムアルデヒドで固定し、0.2%トリトンX-100で透過処理し、そして2%ウシ血清アルブミンでブロックした。細胞をラット抗HA(1:1,000)またはウサギ抗FLAG(1:1,000)の一次抗体とインキュベートし、続いてAlexa Fluor 594抗マウス抗体(Molecular Probes、Eugene、OR、USA)またはAlexa Fluor 488抗ラット二次抗体(1:1,000)(Molecular Probes、Eugene、OR、USA)で染色した。
RNA干渉とリアルタイムPCR
ヒト、マウスおよびラットSYVN1のためのsiRNAは、Ambion Inc.(米国テキサス州オースティン)から購入した。siRNAはDNase/RNase free waterにて溶解後、リポフェクタミン2000を用いてsiRNAトランスフェクションを行った。膵島由来の全RNAをRNeasy(Qiagen)のプロトコールに従って精製し、ReverTra Aceを用いてランダムプライマー(Toyobo、大阪市、日本)を用いて逆転写した。 LightCycler 480 Probes Master(Roche Diagnostics、Mannheim、Germany)を用いてリアルタイムPCRを行った。発現レベルは18s rRNAのそれと比較して決定した。
結果
膵島での機能を直接評価するために、WTまたはKOマウスからの膵島でのグルコース応答性インスリン分泌能を検討した。その結果を図2Dに示す。WTマウスではグルコース濃度に依存してインスリン分泌量が亢進するのに対して、KOからのβ細胞ではグルコース刺激によりインスリン分泌の亢進が認められなかった。
さらに、ラットINS細胞を用いてシノビオリン特異的siRNA(siSyvn1)を細胞導入し、シノビオリン機能をノックダウンした結果、グルコース刺激によるインスリン分泌量がコントロールsiRNA(siControl)に比して有意に抑制された(図2E)。以上の結果からβ細胞におけるシノビオリン機能低下はインスリン分泌を阻害し、高血糖等の症状を引き起こすことが示唆された。
次に膵臓β細胞においてシノビオリンと結合する因子について探索を行った。腎臓由来の培養細胞(HEK293細胞)とβ細胞由来INS細胞を用いて検討を行ったところシノビオリンとCRTC2が結合していることが示された(図3AーD)。
また、シノビオリンと結合する因子について探索を行った。シノビオリンはE3ユビキチン化酵素であることが知られている(AmanoT.らGenes Dev 17:2436-2449)ため,CRTC2がE3ユビキチン化酵素としてのシノビオリンの基質になっていないかを検証した。GST-CRTC2、HA-UA、E1、HbcH5c、およびSYVN1ΔTM -His用いてインビトロユビキチン化アッセイの結果を図4Aに示す。その結果、ATP、HA-UA、E1、HbcH5c、SYVN1ΔTM、GST-CRTC2のすべてが存在する条件下ではポリユビキチン化されたCRTC2が検出されたことからCRTC2がシノビオリンの基質になっていることが確認された。さらにINS細胞にsiSyvn1を導入し、CRTC2の発現量を検討した結果、siControlに比べ、siSyvn1処置群では明らかなCRTC2タンパク量の亢進が認められた(図4D、E及びG)。
次に、シノビオリン過剰発現系におけるCRTC2の転写活性化能に関して検討した。その結果を図5に示す。HEK293細胞を用いてFSK誘発転写活性化に関してシノビオリンの過剰発現により転写活性化を抑制が認められ(図5B)、そのシノビオリンによるFSK刺激転写活性の抑制はCRTC2量の増加に伴い回復が認められた(図5C)。
更に、INS細胞にsiSyvn1を導入し、FSK刺激転写活性化への影響を検討した結果、siControlに比べ、siSyvn1処置群では明らかなPGC1α発現量の亢進が認められた(図5D)。
また、ATP量を検討した結果、基底状態(グルコース3mM)、および、グルコース刺激時(グルコース25mM)において、コントロールマウスと比較して、KO マウスで有意なATP量の減少が認められた。(図5E)。
以上の結果から、CRTC2はシノビオリンの基質であり、シノビオリンはCRTC2のネガティブ制御に係っていることが示され、KOマウスにおける血糖値異常はシノビオリン減少に伴うCRTC2過剰発現により、PGC1αの上昇とATP量の減少を伴いインスリン分泌量を低下させた結果であることが示唆された。
動物モデルを用いた治療実験
試験方法
実験には前述の環境下、膵臓β細胞のSyvn1を特異的にノックアウトしたマウス並びに同系の野生型マウスを用い、グルコース反応性のインスリン分泌量の継時変化に対する被験物質の作用を検討した。被験物質としてシクロスポリンA(CsA)を用いた。CsAを、ナカライテスク(京都、日本)から購入した。マウスに、オリーブ油(Sigma、St.Louis、MO、US)に溶解したCsAを10mg/kg/日の用量で3週間投与した。対照マウスにはオリーブ油を処置した。経口投与最終日にKO並びにWTを一晩絶食後、グルコースを経口投与し、0、15、30、60、120分後に継時的採血し、前述に記載した方法にて血糖値を測定した。
結果
被験化合物として、シクロスポリンを使用した場合の血糖値変化を図6Bに示す。その結果、シクロスポリンを投与した群ではオリーブ油(対照群)に比べ、統計学的有意な血糖値の減少が認められた。さらに、インスリンの分泌量はシクロスポリンの処置により増加した(図6C)。さらに、WTおよびKOマウスから膵島を用いてグルコース応答性のインスリン分泌量を検討した。以上の結果から、シクロスポリンはKOマウスの膵島ではシクロスポリンによるインシュリン分泌量の統計学的有意な増加が認められた(図6D)。
また、神経特異的Syvn1 欠損マウスが痙攣・歩行障害といった表現型を示し生後数週間で死亡することを明らかにしており、その神経障害に WFS1 と Syvn1 の関連が推測されるため、同マウスを神経症状のモデルマウスとして用いた。神経特異的 Syvn1 ヘテロ欠損マウス (Syn-Cre, Syvn1fl/+) と Syvn1 flox マウス (Syvn1fl/fl) を交配し神経特異的 Syvn1 欠損マウス (Syn-Cre, Syvn1fl/fl) を作出した。受精後 15 日からで離乳まで母体にリン酸緩衝生理食塩水に溶解したFK506-水和物,富士フィルム和光純薬(大阪市、日本)を0.1 mg/kg で経口投与し、産子の表現型への影響を検討した。
また、神経特異的Syvn1 欠損マウスの生存率を検討した。その結果を図7に示す。図7に示される通り、未処理の母体から生まれたマウスの平均生存日数が 18.5 日 (標準偏差2.6 日) であるのに対し、タクロリムスを投与した母体からうまれたマウスは34.7 日 (標準偏差7.6 日) であった。このことからタクロリムスがシノビオリンを介した神経障害に対して効果を有することが示唆された。
試薬・被験化合物溶液の調製
CsAを、ナカライテスク(京都、日本), FK506-水和物を,富士フィルム和光純薬(大阪市、日本)薬を適量秤量し、ジメチルスルオキサイド(DMSO)に溶解後、培養液を用いて最終濃度になるように調製した。
転写活性化の測定
ルシフェラーゼアッセイは常法に従って行った(Chakravartら、Nature 383:99-103(1998))。簡潔にはHEK293細胞を1×106個になるようになるようプレートに播種し、100ngのSom-lucレポータープラスミド、25ngのpcDNA3 HA-CRTC2、0.01ngのpRL-SV40、および20nMのSyvn1 siRNAで一過性にトランスフェクトした。一方、SYVN1過剰発現のために、100ngのSom-lucレポータープラスミド、10ngのpcDNA3 HA-CRTC2、0.01ngのpRL-SV40、および50または100ngのSYVN1発現ベクターをトランスフェクトした。24時間後、細胞を10μMのFSKで6時間処理し、細胞溶解緩衝液で溶解した後、ルシフェラーゼ活性を市販のLuc活性測定キット(Promega)用い、ルミノメーター(BertholdのCentroXS3 LB-960)を用いて測定した。各実験は少なくとも3回行った。なお、下記式に従い、転写活性化の抑制率を算出した。抑制率(%)=(1-被験化合物とFSKの刺激ありのLuc活性値/DMSOとFSKの刺激ありのLuc活性値)×100(%)統計解析は一元配置分散分析を使用して、相関関係を決定した。その後、Studentのt検定もしくは多重比較解析を用いて、対照マウスとKOマウスとの間のルシフェラーゼ活性の平均差を解析した。P値が0.05未満の時、統計的に有意な差とみなした。
結果
図6Aに結果を示す。Luc値は平均(例数3)を示す。その結果、siSyvn1s導入細胞をFSKの刺激によって、CRTC2転写活性化は亢進した。その亢進に対し、カルシニューリン阻害剤である25nMのシクロスポリンの処理は統計学的に有意な抑制作用を示した。
転写抑制作用(2)
その他の被験物質溶解液の調製及び試験方法
さらに、その他のカルシニューリン阻害剤であるタクロリムス(FK506)も同様に被験化合物溶液を調製し、ソマトスタチン転写性をルシフェラーゼ測定法にて前述と同様に測定した。
結果および考察
その他のカルシニューリン阻害剤であるタクロリムス(FK506)の作用を表に結果を示す。Luc値は平均(例数4)を示す。その結果、siSyvn1を導入した細胞をFSKの刺激によって、ソマトスタチンの転写活性化は亢進した。その亢進に対し、カルシニューリン阻害剤でタクロリムスは抑制作用を示した。
表1 CRTC2転写活性化に対するタクロリムスの作用
Figure 0007494163000001
平均値±標準偏差の値を示す。
以上の結果から、本発明におけるカルシニューリン阻害剤は、シノビオリン減少に伴うCRTC2の核内移行を阻害することによってインスリン分泌を増加させ、最終的には血糖値の上昇を抑えることから、ウォフラム症候群の疾患の予防若しくは治療剤として有用であることが示唆された。
カルシニューリン阻害剤であるラパマイシンも同様に被験化合物溶液を調製し、ソマトスタチン転写性をルシフェラーゼ測定法にて前述と同様に測定した。ラパマイシンを富士フィルム和光純薬(大阪市、日本)から購入し、FK506-水和物に代えてラパマイシンを用いて、転写活性化を測定した。その結果を表2に示す。
Figure 0007494163000002
その結果、siSyvn1を導入した細胞をFSKの刺激によって、ソマトスタチンの転写活性化は亢進した。その亢進に対し、カルシニューリン阻害剤でラパマイシンは抑制作用を示した。
上記の例を検討すると, カルシニュ-リンの阻害剤として代表的なサイクロスポリン,タクロリムスやラパマイシンであれば,ウォルフラム症候群の治療に有効であることが示されたので,作用機序を考慮すれば,一般的にカルシニュ-リンの阻害剤であれば,ウォルフラム症候群の治療に有効であると考えられる。
この発明は医薬産業において利用され得る。

Claims (1)

  1. カルシニュ-リン(Calcineurin)の阻害剤を有効成分として含むウォルフラム症候群の治療剤であって、
    前記カルシニュ-リン(Calcineurin)の阻害剤が,タクロリムス,その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物であり
    前記ウォルフラム症候群は、WFS1を原因遺伝子とするウォルフラム症候群である、治療剤。
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