JP7493341B2 - モデルの交互作用部を用いた相性決定プログラム、装置及び方法、並びにマッチングプログラム - Google Patents

モデルの交互作用部を用いた相性決定プログラム、装置及び方法、並びにマッチングプログラム Download PDF

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本発明は、パーソナリティといったような特性に基づき、対象間の相性を推定する技術に関する。
英会話教室、社内プロジェクトや、スポーツチーム等の人的活動に係る組織や、例えばコールセンターのオペレータと顧客が形成するような一時的集団等、人と人とがグループを形成する場面は頻繁に発生する。またこの際、構成人員間のいわゆる「相性」が、構成されるグループにおける成績や満足度といったようなフォーマンスを大きく左右することも経験的に知られている。
したがって、相性を考慮したマッチング・グルーピングを実施すれば、グループにおけるパフォーマンスの向上することが大いに期待される。ここで従来、グループのパフォーマンスを決定する重要な要素として、各人のパーソナリティの挙げられることが、いくつかの研究成果として指摘されてきた。
例えば、非特許文献1は、2人のユーザに係るパフォーマンスと、各ユーザの有するパーソナリティとの間で、直接的な相関が見られたとの実験結果を開示している。具体的には例えば、いずれか一方のユーザにおける外向性や協調性が高いほど、両ユーザによる旅行における満足度の向上した結果が示されている。
また、非特許文献2も同様に、2人のユーザに係るパフォーマンスと、各ユーザの有するパーソナリティとが強い相関を示したとの実験結果を開示している。ここでは例えば、いずれか一方のユーザにおける神経症傾向が高いほど、両ユーザにおける満足度の低下することが検証されている。さらに、非特許文献3には、2人のユーザ間におけるパーソナリティの類似性が、相性との間で相関を示すことが開示されている。
D. P. H. Barelds, "Self and partner personality in intimate relationships", European Journal of Personality, vol.19, no. 6, pp.501-518, 2005年 J. P. Caughlin, T. L. Huston, and R. M. Houts, "How does personality matter in marriage? An examination of trait anxiety, interpersonal negativity, and marital satisfaction", Journal of Personality and Social Psychology, vol.78, no. 2, pp.326-336, 2000年 P. Dijkstra and D. P. H. Barelds, "Do People Know What They Want: A Similar or Complementary Partner?", Evolutionary Psychology, vol.6, no. 4, pp. 595-602, 2008年 神嶌敏弘. 「推薦システムのアルゴリズム(1)」, 人工知能学会誌, Vol. 22, No. 6, pp. 826-837, 2007年
しかしながら、非特許文献1~4に記載されたような従来技術によっても依然、2人のユーザの相性を、両者のパーソナリティをもって推定することまではできないのが実情である。
例えば、非特許文献1及び2に記載された技術では、2人のユーザに係るパフォーマンスと、各ユーザの有するパーソナリティとの相関を示唆してはいるものの、両者におけるパーソナリティの関係については何ら言及していない。また実際に、これらのユーザの相性を直接推定することは何ら行われていない。
また、非特許文献3に記載された技術ではたしかに、2人のユーザ間におけるパーソナリティの類似性が、相性との間で相関を示すことを捉えてはいる。しかしながら、個々のパーソナリティ因子の間の関係性にまで言及するものではなく、またそれ故、これらのユーザの相性を、個々のパーソナリティをもって直接推定することまでには至っていないのである。
ちなみに、非特許文献4に記載された技術は、ユーザに合致したコンテンツを推定して推薦するシステムに係るものである。このように、人と商品・モノとのマッチングでは、正解としてのマッチング事例データが通常、多数取得可能であるので、比較的その推定が容易となっている。この点は例えば、ある動画共有サイトにおいて、所定期間で30動画以上を視聴したユーザは大量に存在することからも容易に理解される。
これに対し、人と人とのマッチングにおいては、1人当たりのマッチング事例データを多数取得することは通常難しい。これは例えば、英会話教室において30人の教師から教わった経験を有するユーザは、極めて稀となることからも理解される。またその結果、人と人とのマッチング状況を示すマッチング結果行列は、人と商品とのそれに比較して極めてスパースな空間に係るものとなり、例えばレコメンド技術で常用されている協調フィルタリング等の技術は適用困難となってしまう。
このように人と人とのマッチングは、1人当たりの事例データの希少性からその実施が困難となっているが、このことからも、人と人との相性を推定することは、従来技術では全く容易ではないことが理解されるのである。
そこで、本発明は、各対象の有する特性を考慮することによって、対象間の相性を決定することが可能な相性決定プログラム、装置及び方法を提供することを目的とする。また、このように決定された相性を用いて対象間のマッチングを実施することが可能なマッチングプログラムを提供することを目的とする。
本発明によれば、少なくとも1つの因子スコアで表現される所定の特性を有する対象の間の相性に係る情報を決定するコンピュータを機能させる相性決定プログラムであって、
第1の対象と第2の対象との作用による結果に係る値である結果値を目的変数としたモデルであって、第1の対象の因子スコアである第1の説明変数と、第2の対象の因子スコアである第2の説明変数とについての交互作用部を備えており重回帰式で表現される構築済みのモデルにおける当該交互作用部のみに対し、相性決定対象である一方の対象の因子スコア及び他方の対象の因子スコアを適用して得られる値のみに基づいて、当該一方の対象と当該他方の対象との相性に係る相性スコアを決定する相性スコア決定手段
としてコンピュータを機能させ、
当該モデルは、取得された第1の説明変数としての因子スコア、第2の説明変数としての因子スコア、及び当該結果値の複数の組を用いて、当該交互作用部を含む当該重回帰式の各係数を決定することによって構築される
ことを特徴とする相性決定プログラムが提供される。
本発明によれば、また、少なくとも1つの因子スコアで表現される所定の特性を有する対象の間の相性に係る情報を決定するコンピュータを機能させる相性決定プログラムであって、
第1の対象と第2の対象との作用による結果に係る値である結果値を目的変数としたモデルであって、第1の対象の因子スコアである第1の説明変数と、第2の対象の因子スコアである第2の説明変数とについての交互作用部を備えた構築済みのモデルにおける当該交互作用部のみに対し、相性決定対象である一方の対象の因子スコア及び他方の対象の因子スコアを適用して得られる値のみに基づいて、当該一方の対象と当該他方の対象との相性に係る相性スコアを決定する相性スコア決定手段
としてコンピュータを機能させ、
当該モデルは、当該一方の対象の属する第1の対象群の各対象と、当該他方の対象の属する第2の対象群の各対象との組合せ毎に得られた当該結果値を用いて、第1の対象群に属する対象の各因子スコアと、第2の対象群に属する対象の各因子スコアとの組合せ毎に、当該組合せに係る因子スコアの間の交互作用の有意性を示す値を算出し、算出された有意性を示す値に基づき有意であると判断された当該組合せに係る因子スコアについての項のみを有する交互作用部を決定した上で、決定された当該交互作用部を備えたものとすることによって構築される
ことを特徴とする相性決定プログラムが提供される。
また、本発明による相性決定プログラムにおける具体例として、当該対象は人であって、当該所定の特性はパーソナリティ特性であり、当該結果値は、第1の対象である人及び第2の対象である人のいずれか一方が単独で又は両方が共同で行った所定の行為の結果に対して付与されたスコア、順位又はランクに係る値であることも好ましい。
本発明によれば、また、少なくとも1つの因子スコアで表現される所定の特性を有する対象の集合である第1の対象群及び第2の対象群における、それぞれの群に属する対象間のマッチングを決定するコンピュータを機能させるマッチングプログラムであって、
第1の対象と第2の対象との作用による結果に係る値である結果値を目的変数としたモデルであって、第1の対象の因子スコアである第1の説明変数と、第2の対象の因子スコアである第2の説明変数とについての交互作用部を備えており重回帰式で表現される構築済みのモデルにおける当該交互作用部のみに対し、第1の対象群に属する対象の各因子スコアと、第2の対象群に属する対象の各因子スコアとの組合せを適用して得られる値のみに基づいて、第1の対象群に属する各対象と第2の対象群に属する各対象との組合せ毎に、当該組合せの相性に係る相性スコアを決定する相性スコア決定手段と、
当該組合せ毎に決定された相性スコアに基づいて、第1の対象群に属する対象に対してマッチする、第2の対象群に属する対象を決定するマッチング手段と
してコンピュータを機能させ、
当該モデルは、取得された第1の説明変数としての因子スコア、第2の説明変数としての因子スコア、及び当該結果値の複数の組を用いて、当該交互作用部を含む当該重回帰式の各係数を決定することによって構築される
ことを特徴とするマッチングプログラムが提供される。
この本発明によるマッチングプログラムの一実施形態として、マッチング手段は、第1の対象群に属する各対象を第1のノードとし、第2の対象群に属する各対象を第2のノードとして、第1のノードと第2のノードとをエッジで結んだ有向2部グラフを生成し、当該エッジの費用を、該エッジに係る第1のノードに相当する対象と、該エッジに係る第2のノードに相当する対象との組合せについて決定された相性スコアに基づいて決定した上で、当該有向2部グラフを最小費用流問題として解き、第1の対象群に属する対象に対してマッチする、第2の対象群に属する対象を決定することも好ましい。
ここで上記の実施形態において、マッチング手段は、設定されるソースと第1のノードとを結ぶエッジ、及び第2のノードと設定されるシンクとを結ぶエッジを含む、当該有向2部グラフに係る各エッジについて最大流量を1として最小費用流問題を解くことにより、第1の対象群に属する1つの対象に対してマッチする、第2の対象群に属する1つの対象を決定することも好ましい。
または、上記の実施形態において、マッチング手段は、設定されるソースと第1のノードとを結ぶ各エッジの最大流量をN(Nは2以上の整数)として最小費用流問題を解くことによって、第1の対象群に属する1つの対象に対してマッチする、第2の対象群に属するN個の対象を決定することも好ましい。
本発明によれば、また、少なくとも1つの因子スコアで表現される所定の特性を有する対象の間の相性に係る情報を決定する相性決定装置であって、
第1の対象と第2の対象との作用による結果に係る値である結果値を目的変数としたモデルであって、第1の対象の因子スコアである第1の説明変数と、第2の対象の因子スコアである第2の説明変数とについての交互作用部を備えており重回帰式で表現される構築済みのモデルにおける当該交互作用部のみに対し、相性決定対象である一方の対象の因子スコア及び他方の対象の因子スコアを適用して得られる値のみに基づいて、当該一方の対象と当該他方の対象との相性に係る相性スコアを決定する相性スコア決定手段
を有し、
当該モデルは、取得された第1の説明変数としての因子スコア、第2の説明変数としての因子スコア、及び当該結果値の複数の組を用いて、当該交互作用部を含む当該重回帰式の各係数を決定することによって構築される
ことを特徴とする相性決定装置が提供される。
本発明によれば、さらに、少なくとも1つの因子スコアで表現される所定の特性を有する対象の間の相性に係る情報を決定するコンピュータよって実施される相性決定方法であって、
第1の対象と第2の対象との作用による結果に係る値である結果値を目的変数としたモデルであって、第1の対象の因子スコアである第1の説明変数と、第2の対象の因子スコアである第2の説明変数とについての交互作用部を備えており重回帰式で表現されるモデルを、取得された第1の説明変数としての因子スコア、第2の説明変数としての因子スコア、及び当該結果値の複数の組を用いて、当該交互作用部を含む当該重回帰式の各係数を決定することによって構築する、コンピュータによって実行されるステップと、
構築されたモデルにおける当該交互作用部のみに対し、相性決定対象である一方の対象の因子スコア及び他方の対象の因子スコアを適用して得られる値のみに基づいて、当該一方の対象と当該他方の対象との相性に係る相性スコアを決定する、コンピュータによって実行されるステップと
を有する相性決定方法が提供される。
本発明の相性決定プログラム、装置及び方法によれば、各対象の有する特性を考慮することによって、対象間の相性を決定することができる。また、本発明のマッチングプログラムによれば、このように決定された相性を用いて対象間のマッチングを実施することができる。
本発明による相性決定装置を包含するマッチング装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。 本発明に係る因子間有意性分析部における因子間有意性分析処理の一実施形態を説明するための模式図である。 本発明に係るモデル構築部及び相性スコア決定部におけるモデル構築処理及び相性スコア決定処理の一実施形態を説明するための模式図である。 本発明に係るマッチング部におけるマッチング処理の一実施形態を説明するための模式図である。 本発明に係るマッチング部におけるマッチング処理の他の実施形態を説明するための模式図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
[相性決定装置,マッチング装置]
図1は、本発明による相性決定装置を包含するマッチング装置の一実施形態における機能構成を示す機能ブロック図である。
図1に示した本実施形態のマッチング装置1は、本発明に係る相性決定装置としての機能を含み、
(a)外部に設置されたパーソナリティ情報データベース(DB)2から例えば通信によって、相性決定対象者、例えばある英会話学校の各教師及び各生徒における、1つ以上の因子で表現される所定の特性の情報であるパーソナリティ情報を取得し、さらに、
(b)外部に設置されたパフォーマンス情報DB3から例えば通信によって、当該相性決定対象者同士の作用による結果に係る値である結果値、例えばある教師からレッスンを受けたある生徒における成績やテスト結果であるパフォーマンス情報を取得し、
(c)上記(a)で取得した情報を説明変数とし、上記(b)で取得した情報を目的変数とした回帰モデルを形成して、このモデルに基づき、相性決定対象者間の相性を決定し、さらに、相性決定対象者同士のマッチングを行うのである。
ここでパーソナリティ情報DB2には、例えば教師及び生徒に対し実施された質問紙調査によって判定・決定された、各教師及び各生徒の主要5因子(Big Five)における各因子のスコアが、その対象IDに紐づけられて記録されていてもよい。ちなみに、主要5因子(Big Five)は、Goldberg等によって提唱されたFFM(Five Factor Model)において提案され広く受け入れられているパーソナリティ情報であり、具体的には、開放性(O)、誠実性(C)、外向性(E)、調和性(A)、及び情緒不安定性(N)の5つの因子で構成されている。
一方、パフォーマンス情報DB3には、例えばこれらの教師および生徒における教師・生徒のペア毎に、又は教師の担任するクラス毎に、生徒の成績やテスト結果であるパフォーマンス情報が、関係する教師及び生徒の対象IDに紐づけられる形で記録されていてもよい。なお、パーソナリティ情報DB2及びパフォーマンス情報DB3は、例えば英会話学校が管理する同一のサーバに格納又は接続され、共通の対象IDで管理されているものとすることができる。
また本実施形態において、パーソナリティ情報DB2及びパフォーマンス情報DB3に記録・保存された情報に係る対象は、第1の対象群(例えば教師群)及び第2の対象群(例えば生徒群)に分類されているものとする。マッチング装置1は、これら第1の対象群及び第2の対象群における、それぞれの群に属する対象間(例えば教師と生徒間)のマッチングを決定するのである。
具体的に、マッチング装置1は、
(A1)第1の対象(例えば教師)と第2の対象(例えば生徒)との作用による結果に係る値である結果値(例えば成績等のパフォーマンス情報)を目的変数とした「モデル」であって、第1の対象の因子スコア(例えば教師のBig Fiveスコアセット)である第1の説明変数と、第2の対象の因子スコア(例えば生徒のBig Fiveスコアセット)である第2の説明変数とについての「交互作用部」を備えた構築済みの「モデル」におけるこの「交互作用部」に対し、
(A2)第1の対象群に属する対象の各因子スコア(例えば教師の各Big Fiveスコア)と、第2の対象群に属する対象の各因子スコア(例えば生徒の各Big Fiveスコア)との組合せを適用して得られる値に基づいて、第1の対象群に属する各対象(各教師)と第2の対象群に属する各対象(各生徒)との組合せ毎に、当該組合せの「相性」に係る「相性スコア」を決定する相性スコア決定部113と、
(B)当該組合せ毎に決定された「相性スコア」に基づいて、第1の対象群に属する対象(教師)に対してマッチする、第2の対象群に属する対象(生徒)を決定するマッチング部114と
を有することを特徴としている。
ここで、上記(A1)の「モデル」における「交互作用部」は、第1の説明変数及び第2の説明変数それぞれにおける目的変数への影響が、互いの値に依存することを示すモデル部分であり、後に詳細に説明するように本実施形態では、「モデル」を重回帰式で表現した場合における当該重回帰式の交互作用項に該当する部分となっている。
本願発明者等は、このような「交互作用部」の交互作用が、両者の作用による結果値(例えば成績等のパフォーマンス情報)に基づき評価される、両者の組合せの好適・有効な度合いとして把握されることから、いわゆる「相性」に相当することを見出し、この「交互作用部」から対象間の「相性スコア」を決定したのである。ちなみに、このような「相性」における交互作用の分かり易い場面として、例えば、外向性の高い教師の方が一般的には生徒の成績を伸ばしやすいと期待されるが、そのような教師は、誠実性(計画性)の高い生徒にとっては鬱陶しく感じられる可能性も考えられることが挙げられる。
このように、マッチング装置1によれば、各対象の有する特性(例えばパーソナリティ情報)の交互作用を考慮することによって、対象間の「相性」を決定することが可能となる。また本実施形態においてマッチング装置1は、このように決定された「相性」を用いて対象間のマッチングを実施することができるのである。ここで、このマッチングの具体的方法については、後に図4及び5を用いて詳細に説明を行う。
なお、マッチング装置1は、第1の対象群の対象(例えば教師)と第2の対象群の対象(例えば生徒)との「相性」に限定されず、例えば第1の対象群の対象間(例えば教師間)の「相性」や、第2の対象群の対象間(例えば生徒間)の「相性」を決定することも、勿論可能となっている。すなわち、マッチング装置1は、ある2つの対象がそれぞれ有する特性から、当該2つの対象間の「相性」を推定することができるのである。
また、上記(A1)の結果値は当然、成績やテスト結果といったパフォーマンス情報に限定されるものではなく、対象間の作用による結果に係る値であれば種々のものが、この結果値として採用可能である。例えば、トレーナーから指導を受けた選手の状態を示す値、例えば体重、胸囲、腹囲や、身体能力・柔軟性を示す数値等を、結果値として採用することも可能である。さらに、この結果値として、第1の対象である人及び第2の対象である人のいずれか一方が単独で、又は両方が共同で、行った所定の行為の結果に対して付与されたスコア、順位又はランクに係る値を採用することも好ましい。
また、上記(A1)の因子スコアで表現される「特性」も、パーソナリティに限定されるものではない。例えば、対象の有する認知能力(知能指数IQ等)や非認知能力(GRITや心の知能指数EQ等)を採用することも可能である。ただし、本実施形態では特に、目的変数としてのパフォーマンス情報を、より良く説明する説明変数に係る特性として、パーソナリティを採用しているのである。
さらに、相性決定・マッチング処理を実施すべき対象も当然、教師と生徒に限定されるものではない。例えば、コールセンターのオペレータとユーザ(顧客)との間の相性やマッチングを決定することも可能である。この場合、オペレータとユーザとの相性を事前に予測し、ユーザに対し適切なオペレータを割り当てることによって、コールセンターのパフォーマンスが向上することも期待されるのである。
実際、オペレータの接客スキルは一定ではなく、パフォーマンスの実績にもばらつきが存在する。したがって、全てのユーザに高いスキルのオペレータを割り当てることは不可能であるため、ユーザとの相性を勘案してオペレータの割り振りを実施することが、全体のパフォーマンス向上に大きく寄与し得るのである。
ここで、以上に述べたことと一部重複するが、上記(A1)の結果値の具体例として、先生の担任する生徒の学力テスト結果、先生に対する生徒の信頼度、生徒への授業における先生のストレス度、オペレータが顧客から得た成約率、オペレータに対する顧客の満足度、オペレータが顧客に要した対応時間、婚活マッチングにおける男女ペアの成約率、婚活マッチングに参加した男性及び/又は女性の満足度、婚活マッチングに参加した男性及び/又は女性からのクレーム件数等、事業運営の上で検討すべき様々な数値・量を挙げることができる。
また、マッチング装置1における上記(A1)及び(A2)の相性スコア決定部113と、上記(B)のマッチング部114とが、それぞれ別の装置(すなわち相性決定装置及びマッチング装置)に含まれるような形態をとることも可能である。さらにまた、この後詳細に説明するモデル構築機能部である因子間有意性分析部111及びモデル構築部112が、別装置となっている形態も可能となっている。ここでこのような場合でも、これらの全体をもって、本発明による相性決定・マッチング方法を実施する相性決定・マッチング装置又はシステムであると捉えることができるのである。
[装置機能構成,プログラム,相性決定方法,マッチング方法]
同じく図1の機能ブロック図によれば、相性決定装置としての機能も含むマッチング装置1は、通信インタフェース部101と、パーソナリティ情報保存部102と、パフォーマンス情報保存部103と、相性スコア保存部104と、マッチング結果保存部105と、キーボード(KB)106と、ディスプレイ(DP)107と、プロセッサ・メモリとを有する。
ここで、このプロセッサ・メモリは、本発明による相性決定プログラムの機能を含むマッチングプログラムの一実施形態を保存しており、また、コンピュータ機能を有していて、このマッチングプログラムを実行することによって、相性決定処理及びマッチング処理を実施する。このことから、マッチング装置1は、サーバ、クラウドサーバや、マッチング用の専用装置であってもよいが、本発明によるマッチングプログラムを搭載した、例えばパーソナル・コンピュータ(PC)、ノート型若しくはタブレット型コンピュータ、又はスマートフォン等とすることも可能である。
さらに、プロセッサ・メモリは、二元分散分析部111aを含む因子間有意性分析部111と、モデル構築部112と、重回帰分析部113aを含む相性スコア決定部113と、有向2部グラフ生成部114aを含むマッチング部114と、通信制御部121と、入出力制御部122とを有する。なお、これらの機能構成部は、プロセッサ・メモリに保存されたマッチングプログラムの機能と捉えることができる。また、このうち因子間有意性分析部111、モデル構築部112、及び相性スコア決定部113は、マッチングプログラムに含まれる相性決定プログラムの機能と捉えることも可能である。さらに、図1におけるマッチング装置1の機能構成部間を矢印で接続して示した処理の流れは、本発明による相性決定方法を包含するマッチング方法の一実施形態としても理解される。
同じく図1の機能ブロック図において、パーソナリティ情報保存部102及びパフォーマンス情報保存部103は、それぞれパーソナリティ情報DB2及びパフォーマンス情報DB3から、通信インタフェース部101と通信制御部121とを介し、それぞれパーソナリティ情報(例えば教師毎及び生徒毎のBig Fiveスコアセット)及びパフォーマンス情報(例えば教師と生徒との組合せ毎のテスト結果)を保存・管理する。
ここで、パーソナリティ情報保存部102に保存されるパーソナリティ情報(Big Fiveスコア)は、例えば特許文献:特開2019-197338号公報「ユーザのページの閲覧履歴から性格特性を推定するプログラム、装置及び方法」に記載された技術によって推定されたものであってもよい。
また、この場合例えば、マッチング装置1が、ウェブ(Web)サーバからユーザのウェブページの閲覧履歴情報を取得し、当該閲覧履歴情報から当該ユーザのパーソナリティ情報を推定する機能部を備えていて、当該パーソナリティ情報を自ら生成することも好ましい。さらに言えば、マッチング装置1は、パーソナリティ情報やフォーマンス情報を通信以外の方法で取得する、例えばスタンドアローンの装置であってもよい。
同じく図1の機能ブロック図において、因子間有意性分析部111は、
(a)相性決定対象である一方の対象(例えば教師)の属する第1の対象群(例えば教師群)の各対象と、他方の対象(例えば生徒)の属する第2の対象群(例えば生徒群)の各対象との組合せ毎に得られた結果値(例えばテスト結果)を、パフォーマンス情報保存部103から取得し、これらの結果値を用いて、
(b)パーソナリティ情報保存部102から取得した、第1の対象群に属する対象(教師)の各因子スコア(例えばBig Fiveスコア)と、第2の対象群に属する対象(生徒)の各因子スコア(例えばBig Fiveスコア)との組合せ毎に、当該組合せに係る因子スコア(Big Fiveスコア)の間の交互作用の有意性を示す値、本実施形態ではP値を算出する。
ここで本実施形態では、因子間有意性分析部111の二元分散分析部111aが、公知の手法である二元分散分析を実施して、当該組合せ毎のP値Prを算出するのである。ここで二元分散分析については、例えば非特許文献:池田郁男, 「統計検定を理解せずに使っている人のために III」 化学と生物, vol.51, no. 7, pp.483-495, 2013年において詳細に説明されている。
なお、二元分散分析部111aで算出されたP値は、この後、構築するパフォーマンス推定モデルにおける交互作用部(交互作用項)の交互作用の形を決定するのに使用される。すなわち実際には、両者(教師と生徒)間の因子スコア(Big Fiveスコア)の組合せを全て考慮したモデルをもって交互作用項の推定処理を実施しようとすると、当該処理における次元数が膨大となり、回帰が困難となってしまう場合が生じる。そこで本実施形態では、算出されたP値を用いて、有意であると判定された因子の組合せのみを交互作用項に取り込むのである。
図2は、因子間有意性分析部111における因子間有意性分析処理の一実施形態を説明するための模式図である。
図2によれば、因子間有意性分析部111は、最初に、
(a)パーソナリティ情報保存部102から、対象群1に属する複数の教師(対象ID=教師01, 教師02, 教師03, ・・・)のBig Fiveスコアを取得し、
(b)パーソナリティ情報保存部102から、対象群2に属する複数の生徒(対象ID=生徒01, 生徒02, 生徒03, ・・・)のBig Fiveスコアを取得し、
(c)パフォーマンス情報保存部103から、対象群1の教師が担当する対象群2の生徒における全テスト結果、すなわち、対象群1の教師と対象群2の生徒との組合せ毎のテスト結果を取得する。
次いで、因子間有意性分析部111は、対象群1に属する教師のBig Five因子と対象群2に属する生徒のBig Five因子との組合せ毎に、当該教師のBig Five因子のスコアと、当該生徒のBig Five因子のスコアと、当該教師が担任する当該生徒のテスト結果とが対応付けて記録されたテーブルを生成する。なお、図2には、対象群1に属する教師の「外向性」と対象群2に属する生徒の「誠実性」との組合せに係るテーブルが示されている。
さらに、因子間有意性分析部111の二元分散分析部111aは、当該組合せ毎に生成された当該テーブルのデータに対し二元分散分析処理を実施し、当該組合せ毎に、当該教師のBig Five因子と当該生徒のBig Five因子との間の交互作用におけるP値Prを算出するのである。なお、図2には、二元分散分析処理によって得られる、交互作用のP値Pr以外の各種値も示されている。
ここで交互作用のP値Prは、交互作用の有意性を示す値であって、具体的には交互作用によるテスト結果の差は存在しないとの帰無仮説が正しいとの仮定の下で、テスト結果の差が生じる確率に相当する値となっている。また、統計解析の分野では慣習的に、P値が(有意水準としての)0.05(5%)以下であれば帰無仮説は棄却されるとしており、したがって本実施形態では、この交互作用のP値Prが0.05(5%)以下である場合に、当該教師のBig Five因子と当該生徒のBig Five因子との交互作用は「有意である」と判定される。ちなみに、図2に示された交互作用のP値Pr(0.0040287)は有意水準(0.05)以下となっており、その結果、当該教師の「外向性」と当該生徒の「誠実性」との交互作用は有意であると判定されるのである。
なお変更態様として、上記の有意性判定の際、P値に代えて、例えば相関係数の絶対値を利用することも可能である。具体例として、因子間有意性分析部111は、パーソナリティ情報保存部102及びパフォーマンス情報保存部103から取得した上記のデータ(a)~(c)を用いて、教師のBig Five因子と生徒のBig Five因子の積と、テスト結果との相関分析処理を実施し、その相関係数の絶対値|r|が所定閾値(例えば0.5)以上となる(教師と生徒との)Big Five因子の組合せにおいては、「その交互作用は有意である(可能性が高い)」と判定するのである。
因子間有意性分析部111は、以上に説明した二元分散分析処理や相関分析処理といったような処理の結果、互いの交互作用が「有意である」と判定された教師のBig Five因子と当該生徒のBig Five因子との全ての組合せを、有意な因子の組合せとしてモデル構築部112へ通知するのである。
図1の機能ブロック図に戻って、モデル構築部112は本実施形態において、因子間有意性分析部111で有意であると判定された因子の組合せに係る項のみを有する交互作用項を設定し、設定された交互作用項を備えた重回帰式で表現されるパフォーマンス推定モデルを構築する。
ここで、このパフォーマンス推定モデルは、この後図3を用いて具体的に説明するが、
(a)パフォーマンス情報(例えばテスト結果)を目的変数とし、
(b)第1の対象(例えば教師)の因子スコア(例えばBig Fiveスコア)を第1の説明変数とし、
(c)第2の対象(例えば生徒)の因子スコア(例えばBig Fiveスコア)を第2の説明変数とし、
(d)上記(b)の第1の説明変数と上記(c)の第2の説明変数とについての交互作用項を備えた
重回帰式によって表現される。なお、このようなパフォーマンス推定モデルを構築するとは、この重回帰式における各係数を、例えば最小二乗法等を用いて決定することに相当する。
次いで、相性スコア決定部113の重回帰分析部113aは、構築済みのパフォーマンス推定モデルにおける交互作用項に対し、相性決定対象である一方の対象(教師)の因子スコア(Big Fiveスコア)及び他方の対象(生徒)の因子スコア(Big Fiveスコア)を代入して、この交互作用項における因子スコア代入後の値である交互作用値を算出する。
相性スコア決定部113はさらに、算出した交互作用値に基づいて、一方の対象(教師)と他方の対象(生徒)との相性に係る「相性スコア」を決定するのであり、本実施形態では、対象群1に属する対象(教師)と、対象群2に属する対象(生徒)との全ての組合せに対する「相性スコア」を決定するのである。
図3は、モデル構築部112及び相性スコア決定部113におけるモデル構築処理及び相性スコア決定処理の一実施形態を説明するための模式図である。
図3に示したように、モデル構築部112は最初に、因子間有意性分析部111から、有意であると判定された、教師のBig Five因子と生徒のBig Five因子との全ての組合せの通知を受け、次いで、
(a)これらの因子の組合せに係る項のみを有する交互作用項と、
(b)第1の説明変数(教師のBig Fiveスコア)の主効果を表す項と、
(c)第2の説明変数(生徒のBig Fiveスコア)の主効果を表す項と
を備えた重回帰式を設定する。
次いで、モデル構築部112は、
(a)パーソナリティ情報保存部102から、対象群1に属する複数の教師(対象ID=教師01, 教師02, 教師03, ・・・)のBig Fiveスコアを取得し、
(b)パーソナリティ情報保存部102から、対象群2に属する複数の生徒(対象ID=生徒01, 生徒02, 生徒03, ・・・)のBig Fiveスコアを所得し、
(c)パフォーマンス情報保存部103から、対象群1の教師が担当する対象群2の生徒における全テスト結果、すなわち、対象群1の教師と対象群2の生徒との組合せ毎のテスト結果を取得し、
これら(a)~(c)のデータを用いて、設定した重回帰式のパラメータ、具体的には図3の重回帰式におけるα1, α2, ・・・, α5, β1, β2, ・・・, β5, γ1, γ2, ・・・, γ25,を、例えば最小二乗法によって決定し、これによりパラメータ推定モデルとしての重回帰式を完成させるのである。
ここで、図3に示した重回帰式では、交互作用項において、例えばγ1O1O2の項が設定されているが、これは、教師の「開放性(O1)」と生徒の「開放性(O2)」との組合せは有意である、と通知されたことを示している。したがって本実施形態において、パラメータγnは、必ずしも25個設定されてはおらず、有意であると通知された組合せに係る分だけ設定されるのである。
ちなみに、教師のBig Fiveスコアは、開放性(O1)、誠実性(C1)、外向性(E1)、調和性(A1)、及び情緒不安定性(N1)の5つであって、生徒のFiveスコアは、開放性(O2)、誠実性(C2)、外向性(E2)、調和性(A2)、及び情緒不安定性(N2)の5つであり、したがって本実施形態の交互作用項は、最大25(=5×5)個の項を含むものとなる。
なお、モデル構築部112は、交互作用項において、その有意性を考慮することなく全ての因子の組合せに係る項、すなわち25個の項を設定することも可能である(この場合、因子間有意性分析部111は不要となる)。しかしながら、有意であると判定された因子の組合せのみを交互作用項に取り込むことによって、上述したように、処理負担が増大して回帰が困難となってしまう事態を回避し、より確実に且つ速やかに相性スコアを決定することができるのである。
次いで、相性スコア決定部113は、構築されたパフォーマンス推定モデルである重回帰式における交互作用項(γ1O1O2+γ2O1C2+・・・+γ25 N1N2)を取り出して、相性スコアScを、次式
(1) Sc=γ1O1O2+γ2O1C2+・・・+γ25 N1N2
で定義し、さらに上式(1)に対し、相性決定対象である一方の対象(例えば教師)の因子スコア(例えばBig Fiveスコア)及び他方の対象(例えば生徒)の因子スコア(例えばBig Fiveスコア)を代入して、当該対象間の相性スコアScを算出する。
またさらに、相性スコア決定部113は本実施形態において、対象群1に属する教師(対象ID=教師01, 教師02, 教師03, ・・・)と、対象群2に属する生徒(対象ID=生徒01, 生徒02, 生徒03, ・・・)との全ての組合せに対する相性スコアScを決定するのである。
図1の機能ブロック図に戻って、マッチング部114は、対象群1に属する対象(例えば教師)と対象群2に属する対象(例えば生徒)との組合せ毎に決定された相性スコアScに基づき、第1の対象群に属する対象(教師)に対してマッチする、第2の対象群に属する対象(生徒)を決定する。
ここで本実施形態では最初に、マッチング部114の有向2部グラフ生成部114aが、
(a)第1の対象群に属する各対象(各教師)を第1のノードとし、
(b)第2の対象群に属する各対象(各生徒)を第2のノードとして、
(c)第1のノードと第2のノードとをエッジで結んだ有向2部グラフを生成する。
次いで、マッチング部114は、
(d)上記(c)のエッジの費用を、このエッジに係る第1のノードに相当する対象(教師)と、このエッジに係る第2のノードに相当する対象(生徒)との組合せについて決定された相性スコアScに基づいて決定し、その上で、
(e)生成した有向2部グラフを最小費用流問題として解き、第1の対象群に属する対象(教師)に対してマッチする、第2の対象群に属する対象(生徒)を決定するのである。
なお、上記(e)の最小費用流問題は、例えば非特許文献:Z. Kiraly, P. Kovacs. “Efficient implementation of minimum-cost flow algorithms”, Acta Universitatis Sapientiae, Informatica, vol.4, no. 1, pp.67-118. 2012年に開示された解法アルゴリズムを用いて解くことができる。
また変更態様として、マッチング部114は、例えば第1の対象群に属する対象(教師)と第2の対象群に属する対象(生徒)との間において、互いの相性スコアScが最も高い対象同士を順次、マッチするペアとして決定していくことも可能である(この場合、有向2部グラフ生成部114aは不要となる)。しかしながら、上述したように有向2部グラフを最小費用流問題として解く処理を行うことによって、例えば全ての生徒が、マッチする教師を得るような完全マッチングを、より確実に実現することが可能となるのである。
図4は、マッチング部114におけるマッチング処理の一実施形態を説明するための模式図である。
ここで図4には、第1の対象群の1つの対象(図4では1人の顧客)に対してマッチする、第2の対象群に属する1つの対象(図4では1人のオペレータ)を決定する実施形態、すなわち1対1のマッチングを行う実施形態が示されている。また、これら顧客とオペレータとの相性スコアScは、「成約率」や、顧客に対するアンケート調査結果から得られる「顧客満足度」をパフォーマンス情報としたパフォーマンス推定モデルを用いて算出されているものとする。
図4に示された実施形態では、マッチング部114は、最初に、
(a)有向2部グラフ生成部114aで生成した「有向2部グラフ」を挟む形で「ソース」及び「シンク」を設定し、
(b)「ソース」と各「第1のノード」とを結ぶエッジ、及び各「第2のノード」と「シンク」とを結ぶエッジを含む、「有向2部グラフ」における各エッジについて最大流量を1とする
設定を行う。
ここで、この「有向2部グラフ」では、各エッジの費用は、当該エッジに係る第1のノードに相当する対象(顧客)と、このエッジに係る第2のノードに相当する対象(オペレータ)との組合せについて決定された相性スコアScの-1倍、すなわち-Scに設定される。これにより、相性スコアScのより高い対象に係るノード間ほど、より大きい流量の発生する可能性が高まり、互いの相性がより良くなるようなマッチング処理を実施することが可能となるのである。
マッチング部114は、上記の「ソース」及び「シンク」並びにこれらで挟まれた「有向2部グラフ」の系に対し、最小費用流問題の解法アルゴリズムを適用し、図4において太線矢印で示したような、最小費用流を決定する。次いで、最小費用流(太線矢印)で結ばれた、第1の対象群の対象(顧客)と第2の対象群の対象(オペレータ)との組を、マッチした組合せとして出力するのである。この出力は、具体例として図4の場合、
((顧客1a, オペレータ2b), (顧客1b, オペレータ2c), (顧客1c, オペレータ2a),・・)
といったような出力となる。
このように、マッチング部114は、互いの相性の観点から最適とされる対象ペア(顧客とオペレータとの2人からなるグループ)を決定し、これにより、第1の対象群の各対象(顧客)に対し、最適とされる第2の対象群の対象(オペレータ)を配することを可能にするのである。
図5は、マッチング部114におけるマッチング処理の他の実施形態を説明するための模式図である。
ここで図5には、第1の対象群に属する1つの対象(図5では教師)に対してマッチする、第2の対象群に属するN個(Nは2以上の整数)の対象(図5では生徒)を決定する実施形態、すなわち1対多のマッチングを行う実施形態が示されている。また、これら教師と生徒との相性スコアScは、当該教師が担任である生徒におけるテスト結果をパフォーマンス情報としたパフォーマンス推定モデルを用いて算出されているものとする。
図5に示された実施形態では、マッチング部114は、最初に、
(a)有向2部グラフ生成部114aで生成した「有向2部グラフ」を挟む形で「ソース」及び「シンク」を設定し、
(b)「ソース」と各「第1のノード」とを結ぶ各エッジの最大流量をNとする設定を行う。
ここで、この「有向2部グラフ」でも、各エッジの費用は、当該エッジに係る第1のノードに相当する対象(教師)と、このエッジに係る第2のノードに相当する対象(生徒)との組合せについて決定された相性スコアScの-1倍、すなわち-Scに設定される。これにより、相性スコアScのより高い対象に係るノード間ほど、より大きい流量の発生する可能性が高まり、互いの相性がより良くなるようなマッチング処理を実施することが可能となるのである。
マッチング部114は、上記の「ソース」及び「シンク」並びにこれらで挟まれた「有向2部グラフ」系に対し、最小費用流問題の解法アルゴリズムを適用し、最小費用流を決定する。次いで、最小費用流で結ばれた、第1の対象群の1つの対象(教師)と第2の対象群のN個の対象(生徒)とからなるグループを、マッチした組合せとして出力するのである。
このように、マッチング部114は、互いの相性の観点から、第1の対象群に属する1つの対象(教師)に対してマッチする、第2の対象群に属するN個の対象(生徒)を決定し、これにより例えば、第1の対象群の各対象(教師)が担当するクラスの人員とすべき、第2の対象群の対象(生徒)を決定することも可能となるのである。
図1の機能ブロック図に戻って、相性スコア決定部113で決定された相性スコア情報(例えば、対象IDの組合せ毎の相性スコアSc)は、例えば相性スコア保存部104で保存・管理された上、適宜又はキーボード106を介したユーザの指示に従い、入出力制御部122を介してディスプレイ107に表示されてもよい。さらには、通信制御部121及び通信インタフェース部101を介し、外部の情報処理装置、例えばコールセンターの所有する顧客管理サーバへ送信され、そこで様々な用途、例えば顧客対応結果の検討に利用されることも好ましい。
また、マッチング部114で決定されたマッチング情報(例えば、各対象IDの人員が担当すべきグループを構成する人員の対象IDの組)も同じく、例えばマッチング結果保存部105で保存・管理された上、適宜又はキーボード106を介したユーザの指示に従い、入出力制御部122を介してディスプレイ107に表示されてもよい。さらには、通信制御部121及び通信インタフェース部101を介し、外部の情報処理装置、例えば英会話教室の所有する業務管理サーバへ送信され、そこで様々な用途、例えばグラスと当該クラスの担任の決定に利用されることも好ましい。
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、各対象の有する特性(例えばパーソナリティ情報)の交互作用を考慮することによって、対象間の相性を決定することが可能となる。また、本発明の1つの応用形態として、このように決定された相性を用いて対象間のマッチングを実施することもできるのである。
これにより、様々な分野において人員間の相性を考慮して好適な人員配置を行うことも可能となり、例えば、顧客に対する人的サービスの提供において、より有効な又は満足度の高いパフォーマンスの実現を図ることもできるのである。また特に、教育現場において、例えば生徒の学力向上を促す環境づくりに貢献することも可能となる。
上述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。上述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
1 マッチング装置(相性決定装置)
101 通信インタフェース部
102 パーソナリティ情報保存部
103 パフォーマンス情報保存部
104 相性スコア保存部
105 マッチング結果保存部
106 キーボード(KB)
107 ディスプレイ(DP)
111 因子間有意性分析部
111a 二元分散分析部
112 モデル構築部
113 相性スコア決定部
113a 重回帰分析部
114 マッチング部
114a 有向2部グラフ生成部
121 通信制御部
122 入出力制御部
2 パーソナリティ情報データベース(DB)
3 パフォーマンス情報DB

Claims (9)

  1. 少なくとも1つの因子スコアで表現される所定の特性を有する対象の間の相性に係る情報を決定するコンピュータを機能させる相性決定プログラムであって、
    第1の対象と第2の対象との作用による結果に係る値である結果値を目的変数としたモデルであって、第1の対象の因子スコアである第1の説明変数と、第2の対象の因子スコアである第2の説明変数とについての交互作用部を備えており重回帰式で表現される構築済みのモデルにおける当該交互作用部のみに対し、相性決定対象である一方の対象の因子スコア及び他方の対象の因子スコアを適用して得られる値のみに基づいて、当該一方の対象と当該他方の対象との相性に係る相性スコアを決定する相性スコア決定手段
    としてコンピュータを機能させ、
    当該モデルは、取得された第1の説明変数としての因子スコア、第2の説明変数としての因子スコア、及び当該結果値の複数の組を用いて、当該交互作用部を含む当該重回帰式の各係数を決定することによって構築される
    ことを特徴とする相性決定プログラム。
  2. 少なくとも1つの因子スコアで表現される所定の特性を有する対象の間の相性に係る情報を決定するコンピュータを機能させる相性決定プログラムであって、
    第1の対象と第2の対象との作用による結果に係る値である結果値を目的変数としたモデルであって、第1の対象の因子スコアである第1の説明変数と、第2の対象の因子スコアである第2の説明変数とについての交互作用部を備えた構築済みのモデルにおける当該交互作用部のみに対し、相性決定対象である一方の対象の因子スコア及び他方の対象の因子スコアを適用して得られる値のみに基づいて、当該一方の対象と当該他方の対象との相性に係る相性スコアを決定する相性スコア決定手段
    としてコンピュータを機能させ、
    当該モデルは、当該一方の対象の属する第1の対象群の各対象と、当該他方の対象の属する第2の対象群の各対象との組合せ毎に得られた当該結果値を用いて、第1の対象群に属する対象の各因子スコアと、第2の対象群に属する対象の各因子スコアとの組合せ毎に、当該組合せに係る因子スコアの間の交互作用の有意性を示す値を算出し、算出された有意性を示す値に基づき有意であると判断された当該組合せに係る因子スコアについての項のみを有する交互作用部を決定した上で、決定された当該交互作用部を備えたものとすることによって構築される
    ことを特徴とする相性決定プログラム。
  3. 当該対象は人であって、当該所定の特性はパーソナリティ特性であり、当該結果値は、第1の対象である人及び第2の対象である人のいずれか一方が単独で又は両方が共同で行った所定の行為の結果に対して付与されたスコア、順位又はランクに係る値であることを特徴とする請求項1又は2に記載の相性決定プログラム。
  4. 少なくとも1つの因子スコアで表現される所定の特性を有する対象の集合である第1の対象群及び第2の対象群における、それぞれの群に属する対象間のマッチングを決定するコンピュータを機能させるマッチングプログラムであって、
    第1の対象と第2の対象との作用による結果に係る値である結果値を目的変数としたモデルであって、第1の対象の因子スコアである第1の説明変数と、第2の対象の因子スコアである第2の説明変数とについての交互作用部を備えており重回帰式で表現される構築済みのモデルにおける当該交互作用部のみに対し、第1の対象群に属する対象の各因子スコアと、第2の対象群に属する対象の各因子スコアとの組合せを適用して得られる値のみに基づいて、第1の対象群に属する各対象と第2の対象群に属する各対象との組合せ毎に、当該組合せの相性に係る相性スコアを決定する相性スコア決定手段と、
    当該組合せ毎に決定された相性スコアに基づいて、第1の対象群に属する対象に対してマッチする、第2の対象群に属する対象を決定するマッチング手段と
    してコンピュータを機能させ、
    当該モデルは、取得された第1の説明変数としての因子スコア、第2の説明変数としての因子スコア、及び当該結果値の複数の組を用いて、当該交互作用部を含む当該重回帰式の各係数を決定することによって構築される
    ことを特徴とするマッチングプログラム。
  5. 前記マッチング手段は、第1の対象群に属する各対象を第1のノードとし、第2の対象群に属する各対象を第2のノードとして、第1のノードと第2のノードとをエッジで結んだ有向2部グラフを生成し、当該エッジの費用を、該エッジに係る第1のノードに相当する対象と、該エッジに係る第2のノードに相当する対象との組合せについて決定された相性スコアに基づいて決定した上で、当該有向2部グラフを最小費用流問題として解き、第1の対象群に属する対象に対してマッチする、第2の対象群に属する対象を決定することを特徴とする請求項4に記載のマッチングプログラム。
  6. 前記マッチング手段は、設定されるソースと第1のノードとを結ぶエッジ、及び第2のノードと設定されるシンクとを結ぶエッジを含む、当該有向2部グラフに係る各エッジについて最大流量を1として最小費用流問題を解くことにより、第1の対象群に属する1つの対象に対してマッチする、第2の対象群に属する1つの対象を決定することを特徴とする請求項5に記載のマッチングプログラム。
  7. 前記マッチング手段は、設定されるソースと第1のノードとを結ぶ各エッジの最大流量をN(Nは2以上の整数)として最小費用流問題を解くことによって、第1の対象群に属する1つの対象に対してマッチする、第2の対象群に属するN個の対象を決定することを特徴とする請求項5に記載のマッチングプログラム。
  8. 少なくとも1つの因子スコアで表現される所定の特性を有する対象の間の相性に係る情報を決定する相性決定装置であって、
    第1の対象と第2の対象との作用による結果に係る値である結果値を目的変数としたモデルであって、第1の対象の因子スコアである第1の説明変数と、第2の対象の因子スコアである第2の説明変数とについての交互作用部を備えており重回帰式で表現される構築済みのモデルにおける当該交互作用部のみに対し、相性決定対象である一方の対象の因子スコア及び他方の対象の因子スコアを適用して得られる値のみに基づいて、当該一方の対象と当該他方の対象との相性に係る相性スコアを決定する相性スコア決定手段
    を有し、
    当該モデルは、取得された第1の説明変数としての因子スコア、第2の説明変数としての因子スコア、及び当該結果値の複数の組を用いて、当該交互作用部を含む当該重回帰式の各係数を決定することによって構築される
    ことを特徴とする相性決定装置。
  9. 少なくとも1つの因子スコアで表現される所定の特性を有する対象の間の相性に係る情報を決定するコンピュータによって実施される相性決定方法であって、
    第1の対象と第2の対象との作用による結果に係る値である結果値を目的変数としたモデルであって、第1の対象の因子スコアである第1の説明変数と、第2の対象の因子スコアである第2の説明変数とについての交互作用部を備えており重回帰式で表現されるモデルを、取得された第1の説明変数としての因子スコア、第2の説明変数としての因子スコア、及び当該結果値の複数の組を用いて、当該交互作用部を含む当該重回帰式の各係数を決定することによって構築する、コンピュータによって実行されるステップと、
    構築されたモデルにおける当該交互作用部のみに対し、相性決定対象である一方の対象の因子スコア及び他方の対象の因子スコアを適用して得られる値のみに基づいて、当該一方の対象と当該他方の対象との相性に係る相性スコアを決定する、コンピュータによって実行されるステップと
    を有することを特徴とする相性決定方法。
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