JP7489378B2 - 高速変調サンプルイメージング装置及び方法 - Google Patents

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Description

関連出願の相互参照
このPCT出願は、その全体の内容が全ての目的のために参照により本願に組み入れられる2018年9月10日に出願された米国仮特許出願第62/729,241号及び2019年4月2日に出願された米国仮特許出願第62/828,251号の優先権を主張する。
本発明は、レーザーアブレーション後のイメージング質量分析(IMS)を使用するサンプルのイメージング、及び、イメージングマスサイトメトリー(IMC(商標))による生物学的サンプルのイメージングに関する。
LA-ICP-MS(サンプルがレーザーによってアブレーションされた後に、アブレーションされた材料が誘導結合プラズマでイオン化されてから、質量分析によってイオンが検出されるIMSの形態)は、地質学的サンプルの鉱物分析、考古学的サンプルの分析、及び、生物学的物質のイメージング[i]などの様々な物質の分析のために使用されてきた。
IMCによる生物学的サンプルのイメージングは、細胞分解能でのイメージングに関して既に報告されてしまっている[ii、iii、iv]。細胞内分解能での詳細なイメージングも最近報告されてしまっている[v]。
IMS及びIMCによって画像を生成するためのこれらの手法は、レーザー放射線がサンプルの異なる位置をアブレーションしてピクセルを生成できるようにするべくサンプルを支持するステージの動きによって特徴付けられてきた。しかしながら、サンプルステージの移動に依存すると、ピクセル取得速度が比較的低くなるため、単位時間で調査できるサンプル領域に関してスループットが比較的低くなる。X軸及びY軸の両方で移動できる高速ステージが存在し、その最大速度は100mm/sの範囲である。しかし、これらのステージには、ステージの慣性に起因する欠点があり、このことは、このイメージング方法では、ステージがその最大速度まで加速するのに時間がかかることを意味する。また、ステージの慣性は、任意の走査パターンを迅速にもたらすためにステージの動きを使用できないことも意味する。
本発明の態様の目的は、サンプルのイメージングのための更に改善された装置及び技術を提供することである。
本明細書中には、元素(例えば、原子)質量分析による標識原子の分析を含む、イメージングマスサイトメトリーを行なうためのシステム及び方法が開示される。態様は、フェムト秒(fs)レーザー及び/又はレーザー走査を有するサンプリングシステム及びフェムト秒(fs)レーザー及び/又はレーザー走査を使用する方法を含む。これに代えて又は加えて、態様は、他のイメージングモダリティをイメージングマスサイトメトリーと位置合わせするためのシステム及び方法を含む。
特定の実施形態において、本明細書中に開示される分析器装置は、イメージング元素質量分析を実行するための2つの広く特徴付けられたシステムを備える。
第1のシステムは、サンプリング・イオン化システムである。このシステムはサンプルチャンバを含み、該サンプルチャンバは、サンプルが分析を受けるときにサンプルが配置される構成要素である。サンプルチャンバは、サンプルを保持するステージを備える(一般に、サンプル、例えば、組織切片、細胞の単層、又は、細胞懸濁液が顕微鏡のスライド上へ落とされてしまった細胞塗抹標本などの個々の細胞は、顕微鏡スライドなどのサンプルキャリア上にあり、スライドはステージ上に配置される)。サンプリング・イオン化システムは、サンプルからの材料の除去を引き起こすプロセスの一部として又はサンプリングシステムの下流側の別個のイオン化システムによってイオンに変換されるサンプルチャンバ内のサンプルから材料を除去するように作用する(除去された材料は、本明細書中ではサンプル材料と呼ばれる)。元素イオンを生成するに、ハードイオン化技術が使用される。
その後、イオン化された材料は、検出器システムである第2のシステムによって分析される。検出器システムは、決定されるべきイオン化されたサンプル材料の特定の特性に応じて異なる形態をとることができ、例えば、質量分析ベースの分析器装置内の質量検出器である。
本発明の一態様は、サンプリング・イオン化システムにおけるレーザー走査システムの適用によって現在のIMS及びIMCの装置及び方法に優る改善をもたらす。レーザー走査システムは、アブレーションされるべきサンプルへとレーザー放射線を方向付ける。レーザースキャナは、慣性がはるかに低いか全くないため、サンプルステージよりも速く移動している(つまり、より急速な応答時間を有する)ため、サンプル上の別個のスポットのアブレーションをより迅速に実行できるようにし、したがって、分解能の損失を伴うことなく単位時間当たりかなり大きな領域をアブレーションできるようにする。更に、レーザー放射線が向けられるスポットの急速な変化は、無作為なパターンのアブレーションを可能にし、それにより、例えば、レーザー走査システムによって使用するサンプル上の位置に向けられる急速連続状態のレーザー放射線のパルス/ショットのバーストによって不均一な形状の細胞全体がアブレーションされ、その後、該細胞がイオン化されて単一の材料群として検出され、したがって、単一細胞分析が可能になる。位置は、一般に、隣り合う位置であり、又は、互いに近い。同様の急速バースト技術は、脱着を使用してサンプルキャリアからサンプル材料を除去する方法、すなわち、細胞LIFTing(Laser Induced Forward Transfer(レーザー誘起前方転写))においても展開され得る。そのプルームが連続事象として一緒に分析される隣接する位置は、特定の細胞などの対象の単一の特徴内からのものであり得る。
したがって、動作時、サンプルは、装置に取り込まれて、レーザー走査システムを使用してイオン化された材料を生成するべくサンプリングされ(サンプリングが蒸気/特定の材料を生成してもよく、蒸気/特定の材料は、その後、イオン化システムによってイオン化される)、また、サンプル材料のイオンは検出器システム内へ通される。検出器システムは多くのイオンを検出できるが、これらのイオンの殆どは、サンプルを必然的に形成する原子のイオンになる。一部の用途では、例えば地質学的又は考古学的用途などの鉱物の分析では、これで十分な場合がある。
場合によっては、例えば生物学的サンプルを分析する際に、サンプルの自然元素組成が適切に情報を与えない場合がある。これは、一般に、全てのタンパク質と核酸とが同じ主成分原子から構成されるからであり、そのため、タンパク質/核酸を含む領域を、そのようなタンパク質又は核酸材料を含まない領域から区別することはできるが、特定のタンパク質を他の全てのタンパク質から区別することはできない。しかしながら、通常の条件下で分析されるべき材料に存在しない又は少なくとも有意な量で存在しない原子(例えば、希土類金属などの特定の遷移金属原子;更なる詳細については以下の標識化に関する節を参照されたい)によってサンプルを標識化することによって、サンプルの特定の特性を決定することができる。IHC及びFISHと同様に、検出可能な標識は、とりわけ、サンプル上又はサンプル内の分子を標的にする抗体、核酸又はレクチンなどの特異的結合パートナー(SBP)を使用して、サンプル上又はサンプル内の特定の標的(所定の細胞又はスライド上の組織サンプルなど)に付着され得る。イオン化された標識を検出するために、検出器システムが使用される。これは、検出器システムがサンプルに必然的に存在する原子からイオンを検出するようになっているからである。検出された信号を、それらの信号を生じさせたサンプルのサンプリングの既知の位置に関連付けることにより、それぞれの位置、すなわち、自然元素組成物及び任意の標識原子の両方に存在する原子の画像を生成することができる(例えば、引用文献2,3,4,5参照)。検出前にサンプルの本来の元素組成物が枯渇している態様では、画像が標識原子からしか成っていない場合がある。この技術は、多くの標識の並行分析(多重化とも称される)を可能に、これは、ここでは、本明細書に開示される装置及び方法におけるレーザー走査システムの適用に起因する速度の増大を伴いつつ、生物学的サンプルの分析において大きな利点である。
したがって、本発明の態様は、生物学的サンプルなどのサンプルを分析するための装置であって、
(i)サンプルから材料を除去するとともに、前記材料をイオン化して元素イオンを形成するためのサンプリング・イオン化システムであって、レーザー源、レーザー走査システム、及び、サンプルステージを備える、サンプリング・イオン化システムと、
(ii)前記サンプリング・イオン化システムから元素イオンを受けるとともに、前記元素イオンを検出するための検出器と、
を備える装置を提供する。
幾つかの実施形態では、サンプリング・イオン化システムがサンプリングシステム及びイオン化システムを備え、サンプリングシステムは、レーザー源、レーザー走査システム、及び、サンプルステージを備え、イオン化システムは、サンプリングシステムによってサンプルから除去された材料を受けるとともに、前記材料をイオン化して元素イオンを形成するようになっている。
レーザー走査システムは、1つ以上のポジショナ(例えば、2つのポジショナ)を使用することにより、平行ではなく且つ幾つかの実施形態では直交している1つ以上の軸(例えば、Y軸及びX軸)で、レーザー源によって放出されるレーザービームの方向へのサンプルステージに対する相対移動を与える。以下で説明するように、ポジショナは、ミラーベースのポジショナ(ガルバノメーターミラー、ポリゴンスキャナ、MEMSミラー、圧電デバイスミラーなど)、及び/又は、固体ポジショナ(AOD又はEODなど)の形態をとることができる。レーザー放射線のビームに対するステージ上のサンプルの相対移動をもたらすようにサンプルステージを移動させることもできる。サンプルステージは、一般に、サンプルをx軸及びy軸で、随意的にz軸で移動させることができ、また、その移動は、コントローラモジュールによって、レーザー走査システムのポジショナの移動と調整され得る。例えば、ステージがサンプルを第1の方向で移動させてもよく、また、その位置は、第2の方向でレーザービームに相対移動を導入できる(すなわち、主に直交するなど、平行ではない)。前述したように、IMS及びIMCは細胞内分解能で達成されてしまっており、また、レーザー走査システムをそのような分解能で使用できる。したがって、アブレーションは、直径が10μm未満、5μm未満、2μm未満、約1μm、又は、1μm未満のスポットサイズで行なわれ得る。元素イオンを生成するためのサンプル材料のイオン化は、例えば、ICPの使用、レーザー脱離/イオン化(LDI)及び/又はレーザーによるプラズマ生成、及び、TOF質量分析計の使用による検出によって達成され得る。
特定の態様において、ポジショナは、単一細胞又は単一細胞の一部(細胞核、細胞質、膜、又は、細胞小器官など)などの特徴を走査するように動作されてもよい。特徴は、単一のアブレーションプルームで取得されてもよい。特徴が規則的な境界を有さなくてもよい(例えば、正方形又は円形でなくてもよい)。例えば、組織内の多くの細胞は規則的な形状に適合しない。したがって、光学的調査方法は、レーザー走査及びICP-MSによる分析によって取得されるべき特徴を特定してもよい。特定の態様においては、サンプル中の質量タグ分布の最初のサンプリングが関心領域に情報を与えてもよく、その後、ICP-MSに結合されるレーザー走査による取得のための特徴(細胞など)を特定するべく光学的調査(例えば、光学顕微鏡法)が使用される。
また、レーザー走査システムは、より洗練されたサンプリング方法を伴うIMS/IMC装置を動作させる新たなモードも可能にする。これらのモードの多くは、レーザーパルスのバーストを使用する関心領域/特徴のアブレーションを可能にし、例えば、関心領域/特徴内の複数の既知の位置でレーザーパルスのバーストを発射することにより生成されるプルームを連続事象として分析できる。したがって、以下に説明するように、幾つかの実施形態において、装置は、関心領域/特徴を含む位置を突き止めるのを支援するために、カメラを備える。
したがって、本発明の態様は、サンプルを分析する方法において、
(i)サンプルステージ上でサンプルのレーザーアブレーションを行なうステップであって、レーザー放射線がレーザー走査システムを使用してサンプルへと方向付けられ、複数のプルームを形成するためにアブレーションが複数の既知の位置で行なわれる、ステップと、
(ii)プルームをイオン化及び質量分析に晒すステップであって、プルーム内の原子の検出がサンプルの画像の構築を可能にする、ステップと、
を含む方法を提供する。
また、本発明の態様は、複数の細胞を含むサンプルに関してマスサイトメトリーを行なう方法において、
(i)サンプル中の複数の異なる標的分子を1つ以上の異なる標識原子で標識化して、標識サンプルをもたらすステップと、
(ii)サンプルステージ上のサンプルのレーザーアブレーションを行なうステップであって、レーザー放射線がレーザー走査システムを使用してサンプルへと方向付けられ、複数のプルームを形成するためにアブレーションが複数の位置で行なわれる、ステップと、
(iii)プルームをイオン化及び質量分析に晒すステップであって、プルーム内の原子の検出がサンプルの画像の構築を可能にし、随意的に、複数の位置が複数の既知の位置である、ステップと、
を含む方法も提供する。
特定の態様において、特徴は、例えば、単一のプルームが単一の特徴から生成されて質量分析によって分析されるときに、連続事象として取得される。
場合によっては、この方法は、サンプルの画像を構築するステップを更に含む。
また、本発明の態様は、サンプルを分析する方法において、
(i)レーザー放射線を使用してサンプル材料のスラグを脱着するステップであって、レーザー放射線が、レーザー走査システムを使用してサンプルステージ上のサンプルに向けられる、ステップと、
(ii)サンプル材料のスラグをイオン化し、質量分析によってスラグ内の原子を検出するステップと、
を含む方法も提供する。
本発明の態様によって提供される他の方法は、複数の細胞を含むサンプルに関してマスサイトメトリーを行なう方法において、
(i)サンプル中の複数の異なる標的分子を1つ以上の異なる標識原子で標識化して、標識サンプルを与えるステップと、
(ii)レーザー放射線を使用してサンプル材料のスラグを脱着するステップであって、レーザー放射線が、レーザー走査システムを使用してサンプルステージ上のサンプルへと方向付けられる、ステップと、
(iii)サンプル材料のスラグをイオン化して、質量分析によってスラグ内の原子を検出するステップと、
を含む方法である。
1つの方法は、画像を位置合わせする方法を含んでもよく、該方法は、イメージングマスサイトメトリー以外のイメージングモダリティによって組織サンプルの第1の組織切片から第1の画像を取得するステップと、イメージングマスサイトメトリーによって組織サンプルの第2の組織切片の第2の画像を取得するステップと、第1及び第2の画像を位置合わせするステップとを含む。特定の態様では、第1の画像、又は、第1及び第2の画像の両方が、第三者によって提供されてもよい。イメージングマスサイトメトリーは、LA-ICP-MSによって、随意的にはフェムト秒レーザー及び/又はレーザー走査システムを使用して実行されてもよい。
イメージングマスサイトメトリーの方法は、光学顕微鏡法によってサンプルにおける特徴を特定するステップと、その特徴の全体にわたって放射線を走査して、材料のプルームを生成するステップと、材料のプルームを質量分析器へ送出するステップとを含んでもよい。特徴が単一細胞であってもよい。サンプルは、大量にタグ付けされたSBPを含んでもよい。方法は、1秒間に100個を超える単一細胞を分析するステップを含んでもよい。放射線がレーザー放射線であってもよい。方法は、ICPによって材料をイオン化するステップを更に含んでもよい。質量分析器がTOF検出器を含んでもよい。また、本明細書中には、そのような方法を実行するためのシステムが記載される。
セットアップされた従前の装置の光学素子の概略図である。 本発明の態様の典型的な実施形態の光学素子配置の概略図である。 本発明の態様の更なる典型的な実施形態の光学素子配置の概略図である。 本発明の態様の他の典型的な実施形態の光学素子配置の概略図である。 サンプルキャリアを通じてレーザー放射線を方向付けることによるサンプリングを示す、本発明の態様の他の典型的な実施形態の光学素子配置の概略図である。 一貫したスポットサイズを使用してサンプルをイメージングする際に与えられる分解能の違いを示す。スポットサイズが大きくなるにつれて、異なる細胞からの信号が互いにブリードし始める。この図は、個々の細胞をアブレーションするためのパターンの迅速な任意の走査又はLIFTingによる細胞全体の脱着を使用して個々の細胞から信号を取得できる、本発明の態様で具現化される1つの進歩の重要性を実証するのに役立つ。 本明細書中に記載される少なくとも1つのポジショナを備えるレーザー走査システムを使用してステージの動きとビームの相対的な動きとを組み合わせるレーザー経路を示す。レーザースキャナシステムの動きは、ステージがX軸で動く際にY軸で走査する(X軸でのステージの動きに関する走査システムによる補正を含む)ことによってレーザー放射線のビームを方向付けることにより特定の細胞のアブレーションを可能にする。スキャナは、装置のユーザによってアブレーションされるように望まれる細胞が存在する場合にのみ、ステージの経路からビームを偏向させる。 広い領域にわたるレーザービームの方向付けを可能にする態様でスキャナシステムが移動する、動作の別の走査モードを示す。レーザーのパルスは、アブレーションされるようになっている関心領域(例えば特定の細胞)にレーザービームの焦点が向けられる方向にレーザースキャナシステムがあるときにのみサンプルに発射される。 非共振(図8a)軌道でのレーザースキャナシステムにおける経路移動を描く。 共振(図8b)軌道でのレーザースキャナシステムにおける経路移動を描く。 サンプルキャリア上のサンプルから材料のスラグを脱着するための本発明の態様の方法のシミュレートされた図であり、材料のスラグは単一の細胞を含む。この方法では、対象の細胞が画像(A)中の対象の位置で特定される。画像(B)では、対象の細胞の周囲の領域がアブレーションによって除去され、このアブレーションは、対象の細胞に近い細胞材料を除去することに加えて、サンプルキャリア上に存在する任意の脱着膜も取り除く。対象の細胞を取り巻く囲む様々なアブレーションスポットは、本明細書中に開示されるレーザースキャナシステムを使用して迅速に除去され得る。これは、対象の細胞自体をサンプルキャリアから脱着させることなく、細胞の細胞膜をたどる位置の複雑なパターンのアブレーションを可能にする任意の位置にレーザー放射線のビームをレーザースキャナシステムが迅速に偏向させることができるからである。除去された領域を伴う対象の細胞が画像(C)中に示される。クリアランスに続いて、対象の細胞は、サンプルに向けられた一連のレーザー放射線のスポットを使用してサンプルから脱着される。この画像に示される典型的な方法において、レーザーは、サンプルキャリアからサンプル材料のスラグを解放するために、内側に向けて螺旋状のパターンでレーザー放射線のパルスを送出するための位置へと方向付けられる(D)。レーザー放射線のパルスは、サンプルへと直接に方向付けられてもよく、或いは、サンプルキャリアを介して方向付けられてもよい(図5に示される動作モードにおいて)。 チューブなどの注入器に接続され得るとともにICPトーチとも称される誘導結合プラズマ(ICP)源へのサンプル送出のために装着されるレーザーアブレーション源を含むレーザーアブレーション質量サイトメーターの典型的な概略図である。ICPトーチのプラズマは、サンプルを気化及びイオン化して、飛行時間型質量分析計や磁気セクター型質量分析計などの質量分析器によって受けられ得るイオンを形成する。 本明細書中に記載されるシステムに組み込まれ得る高NA光学素子の概略図である。 ミネソタ大学生物科学部によりオンラインで公開されたコラーゲン組織の第二高調波発生(SHG)画像である。 乳がん組織の非線形顕微鏡法画像を示す。 本発明の実施形態に係る非線形顕微鏡法を組み込むシステムを示す。
したがって、本開示を実施する際に、レーザースキャナシステムを備える様々なタイプの分析器を使用することができ、以下では、その幾つかについて詳しく説明する。
質量検出に基づく分析器
1.サンプリング・イオン化システム
a.レーザーアブレーションサンプリング及びイオン化システム
レーザーアブレーションベースの分析器は、一般に、3つの構成要素を備える。第1の構成要素は、分析用のサンプルから蒸気状及び粒子状材料のプルームを生成するためのレーザーアブレーションサンプリングシステムである。アブレーションされたサンプル材料のプルーム内の原子(以下で説明する検出可能な標識原子を含む)を検出器システム-質量分析計構成要素(MS構成要素;第3の構成要素)-により検出できる前に、サンプルをイオン化(及び霧化)しなければならない。したがって、装置は、原子をイオン化して元素イオンを形成し、質量/電荷比に基づいてMS構成要素によるそれらの検出を可能にするイオン化システムである第2の構成要素を備える(サンプル材料のいくらかのイオン化は、アブレーションのポイントで起こり得るが、空間電荷効果が電荷のほぼ即時の中和をもたらす)。レーザーアブレーションサンプリングシステムは、移送導管によってイオン化システムに接続される。
レーザーアブレーションサンプリングシステム
簡単に言えば、レーザーアブレーションサンプリングシステムの構成要素は、サンプルに向けられるレーザー放射線のビームを放出するレーザー源を含む。サンプルは、レーザーアブレーションサンプリングシステムのチャンバ(サンプルチャンバ)内のステージ上に位置される。ステージは通常は並進ステージであるため、レーザー放射線のビームに対してサンプルを移動させることができ、これにより、サンプル上の様々な場所を分析のためにサンプリングできる(例えば、レーザービーム内での相対移動の結果としてアブレーションされ得るよりも互いから遠く離れた場所を本明細書中に記載されるレーザー走査システムによって誘導することができる)。以下で更に詳しく説明するように、ガスがサンプルチャンバを通じて流され、また、ガスの流れは、レーザー源がサンプルをアブレーションするときに生成されるエアロゾル化された材料のプルームを、その元素組成(元素タグからの標識原子などの標識原子を含む)に基づくサンプルの画像の分析及び構築のために運び去る。以下で更に説明するように、別の作用形態では、レーザーアブレーションサンプリングシステムのレーザーシステムを使用して、サンプルから材料を脱着させることもできる。
特に生物学的サンプル(細胞、組織切片など)の場合、サンプルはしばしば不均一である(不均一なサンプルは、本開示の他の適用分野、すなわち、非生物学的性質のサンプルで知られているが)。不均一サンプルは、異なる材料から構成される部位を含むサンプルであるため、サンプルの一部の部位は、他の部位よりも所定波長で低い閾値フルエンスにおいてアブレーションされ得る。アブレーション閾値に影響を与える要因は、材料の吸光係数及び材料の機械的強度である。生物学的組織の場合、吸光係数は、レーザー放射線の波長に伴って桁違いに変化する可能性があるため、支配的な影響を及ぼす。例えば、生物学的サンプルでは、ナノ秒レーザーパルスを利用すると、タンパク質性材料を含む部位が200~230nmの波長範囲でより容易に吸収し、一方、DNAを主に含む部位は260~280nmの波長範囲でより容易に吸収する。
サンプル材料のアブレーション閾値に近いフルエンスでレーザーアブレーションを行なうことができる。この態様でのアブレーションは、エアロゾル形成を改善することが多く、それにより、分析後のデータの品質の改善に役立ち得る。多くの場合、最小のクレーターを取得して、結果として得られる画像の解像度を最大化するために、ガウスビームが使用される。ガウスビームを横切る断面は、ガウス分布を有するエネルギー密度プロファイルを記録する。その場合、ビームのフルエンスは中心からの距離に伴って変化する。結果として、アブレーションスポットサイズの直径は、2つのパラメータ、すなわち、(i)ガウスビームウエスト(1/e)、及び、(ii)適用されるフルエンスと閾値フルエンスとの間の比率の関数である。
したがって、各アブレーションレーザーパルスを用いた再現可能な量の材料の一貫した除去を確保し、それにより、イメージングデータの品質を最大化するために、一貫したアブレーション直径を維持し、これにより、レーザーパルスにより供給されるエネルギーの標的に対する比率をアブレーションされている材料のアブレーション閾値エネルギーに調整することが有用である。この要件は、DNAとタンパク質材料との比率が変化する生物学的組織などのサンプルの全体にわたって、或いは、サンプルの部位内の鉱物の特定の組成に伴って変化する地質学的サンプルにおいて閾値アブレーションエネルギーが変化する不均一サンプルをアブレーションする場合の問題を表わす。これに対処するために、複数の波長のレーザー放射線をサンプル上の同じアブレーション位置に集束させて、その位置でのサンプルの組成に基づいてサンプルをより効果的にアブレーションすることができる。
レーザーアブレーションサンプリングシステムのレーザーシステム
レーザーシステムは、単一又は複数(すなわち、2つ以上)の波長のレーザー放射線を生み出すようにセットアップされ得る。一般に、論じられるレーザー放射線の波長は、最も高い強度を有する波長(「ピーク」波長)を指す。システムが異なる波長を生み出す場合には、それらの波長を、様々な目的で、例えば、サンプル内の様々な材料を標的にするために使用できる(ここで、標的にするとは、選択される波長が材料によってうまく吸収される波長であることを意味する)。
複数の波長が使用される場合、レーザー放射線の2つ以上の波長のうちの少なくとも2つが離散波長であってもよい。したがって、第1のレーザー源が第2の波長の放射線から離散した第1の波長の放射線を放出する場合、このことは、第2の波長の放射線が第1のレーザー源によって生成されないこと、或いは、第2の波長の非常に低レベルの放射線が、第1のレーザー源によって、第1の波長のパルスで、例えば、第1の波長での強度の10%未満で、例えば、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満で生成されることを意味する。一般に、異なる波長のレーザー放射線が高調波生成によって又は他の非線形周波数変換プロセスによって生み出されるとき、その後、特定の波長が本明細書中で言及されるときには、当業者であれば分かるように、レーザーによって生み出されるスペクトルの特定の波長に関してはある程度の変動がある。例えば、Xnmへの言及は、X±5nmなど、X±10nmの範囲、例えばX±3nmのスペクトルを生み出すレーザーを包含する。
レーザー走査システム
本発明は、サンプリング・イオン化システムにおけるレーザー走査システムの適用によって現在のIMS及びIMCの装置及び方法に優る改善をもたらす。レーザー走査システムは、アブレーションされるべきサンプルへとレーザー放射線を方向付ける。レーザースキャナは、静止したレーザービームに対してサンプルステージを移動させるよりもはるかに急速にサンプル上のレーザー焦点の位置を変向させることができる(走査システムの動作構成要素における慣性がはるかに低い又は全くないことに起因する)ため、サンプル上の別個のスポットのアブレーションをより迅速に行なうことができる。このより急速な速度により、非常に大きな領域をアブレーションして単一のピクセルとして記録することができる、或いは、レーザースポット移動の速度が簡単に例えばピクセル取得速度の増大に変換し得る、或いは、これらの両方の組み合わせになり得る。更に、レーザー放射線のパルスを向けることができるスポットの位置の急速な変化は、任意のパターンのアブレーションを可能にし、それにより、例えば、レーザー走査システムによってサンプル上の位置に向けられる急速連続状態のレーザー放射線のパルス/ショットのバーストによって不均一な形状の細胞全体がアブレーションされ、その後、該細胞がイオン化されて単一の材料群として検出され、したがって、単一細胞分析が可能になる(28頁以降の「レーザーアブレーションサンプリングシステムのサンプルチャンバ」の節を参照)。同様の急速バースト技術は、55頁以降の装置及び方法に関してより詳しく説明されるように、脱着を使用してサンプルキャリアからサンプル材料を除去する方法、すなわち、細胞LIFTing(Laser Induced Forward Transfer(レーザー誘起前方転写))においても展開され得る。
既存のイメージングマスサイトメトリーシステムでは、異なるピクセル(アブレーションスポット)のアブレーションを可能にするべくステージが移動され得る。本明細書中に記載されるポジショナを使用するレーザー走査(随意的にサンプルステージの並進と並行する)は、特徴又は特徴の一部の迅速な取得など、任意の形状及びサイズのピクセルの取得を可能にし得る。一時的なアブレーションプルームによって与えられる連続信号としてピクセルが検出されてもよい。
したがって、本発明の態様は、生物学的サンプルなどのサンプルを分析するための装置であって、
(i)サンプルから材料を除去するとともに、前記材料をイオン化して元素イオンを形成するためのサンプリング・イオン化システムであって、レーザー走査システム及びサンプルステージを備える、サンプリング・イオン化システムと、
(ii)前記サンプリング・イオン化システムから元素イオンを受けるとともに、前記元素イオンを検出するための検出器と、
を備える装置を提供する。
走査システムを使用して取得速度を上げると、サンプルがイメージングされる速度を上げるための他の戦略に優る多くの利点が得られる。例えば、適切に適合された装置を使用して単一のレーザーパルスで100μm×100μmの面積をアブレーションすることができる。しかしながら、そのようなアブレーションは多くの問題をもたらす。単一のレーザーパルスでサンプルの広い領域を一度にアブレーションすると、アブレーションされた材料が、最初は小さな粒子ではなく音速に近い速度で飛ぶ大きな塊に分割され、また、キャリアガスの流れの中で材料がサンプルから急速に離れるように輸送される(以下で更に詳しく説明する)のではなく、大きな塊が、小さな塊よりも同伴に時間がかかる(サンプルチャンバのウォッシュアウト時間が長くなる)、同伴し損なう、或いは、単にサンプルから無作為に飛散する又はサンプルの他の部分へと飛ぶ場合がある。材料の大きな塊がサンプルから飛散する場合には、標識原子などの検出可能な原子の形態を成すその材料の塊内の情報が失われる。材料の塊がサンプルの他の部分に着地する場合には、アブレーションされた領域から情報が失われ、更に、このとき、材料の塊内の任意の検出可能な原子が、サンプルの他の部分に位置して、サンプルの他の部分から取得される信号と干渉する可能性がある。アブレーションされたスポット内の生物学的材料における違い(例えば、軟骨材料対筋肉)も、製品がどのようにして分解するかに影響を及ぼす可能性があるため、アブレーションスポットのサイズが大きくなると、一部の種類の材料が他の種類の材料よりも低い度合いでガス流れ中へ取り込まれる状態で、サンプルの分画の度合いも増す可能性がある。更に、ここで説明されるように、多くの用途では、数百μmではなくμm程度の小さなスポットサイズが好ましく、また、数桁異なるレーザースポットサイズ間の切り換え(例えば、100μm対1μm)も技術的な課題を提示する。例えば、1μmのスポットサイズでアブレーションできるレーザーは、単一のレーザーパルスで100μmのスポットサイズを伴う領域をアブレーションするためのエネルギーを有していない場合があり、また、レーザービームのエネルギーの大幅な損失又はアブレーションスポットの鮮明さの損失を伴うことなく1μmと100μmとの間の移行を容易にするために高度な光学素子が必要とされる。
したがって、100μmの単一スポットをアブレーションするのではなく、100×100(つまり、10,000)個の1μm直径スポットを使用して、領域全体にわたってラスターすることによって領域をアブレーションできる。アブレーションのためのスポットサイズが小さいと、当然ながら、より小さいアブレーションスポットによって必然的に生成される粒子自体のサイズがはるかに小さくなるような大きい度合いまで前述の問題に見舞われない。更に、より小さいスポットに伴い、アブレーションによりもたらされる結果として生じるより小さい粒子は、サンプルチャンバからのウォッシュアウト時間がより短くなるとともに更に明確になる。より小さいスポットのそれぞれを個別に解決することが望まれる場合には、これにより、各アブレーションレーザーパルスからの移行部が検出器で検出される際に重なり合わない(或いは、以下で説明されるように許容できる程度に重なり合う)ため、データをより迅速に取得できるという結果になる。
しかしながら、サンプルステージの1μm刻みでの列に沿う移動及びその後の列の下方への移動は、前述したように慣性に起因して比較的遅い。したがって、サンプルステージを移動させることなく或いはサンプルステージをより少ない頻度で又は一定の速度で移動させることなく、レーザースキャナシステムを使用して領域全体にわたってラスターすることにより、サンプルステージの比較的遅い速度は、サンプルをアブレーションできる速度を制限しない。
そのため、迅速な走査を可能にするべく、レーザー走査システムは、レーザー放射線がサンプルに方向付けられるようになっている位置を迅速に切り換えることができなければならない。レーザー放射線のアブレーション位置を切り換えるのに要する時間は、レーザー走査システムの応答時間と称される。したがって、本発明の態様の幾つかの実施形態において、レーザーサンプリングシステムの応答時間は、1msより速く、500μsより速く、250μsより速く、100μsより速く、50μsより速く、10μsより速く、5μsより速く、1μsより速く、500nsより速く、250nsより速く、100nsより速く、50nsより速く、10nsより速く、又は、約1nsである。
レーザー走査システムは、アブレーション中にサンプルが位置されるサンプルステージに対して少なくとも一方向にレーザービームを方向付けることができる。場合によっては、レーザー走査システムは、サンプルステージに対して2つの方向にレーザー放射線を方向付けることができる。一例として、サンプルステージを使用して、サンプルをX軸で漸増的に移動させてもよく、また、レーザーがY軸でサンプル全体にわたってスイープされてもよい(相対的な動きの例示に関する図7~図9を参照)。1μmのスポットサイズが使用される場合、X軸の動きは1μm刻みであってもよい。X軸の所定の位置で、レーザー走査システムを使用して、Y軸で1μm離れた一連の位置にレーザーを向けることができる。レーザー走査システムがレーザー放射線をY軸の様々な位置に向けることができる速度は、ステージがX軸で漸増的に移動できる速度よりもはるかに速いため、スキャナの動作のこの簡単な例示では、アブレーション速度の大幅な増大が達成される。
特定の態様において、レーザー走査システムは、一方向にのみ走査するように構成されてもよい。例えば、レーザー走査システムは、一方向のみに走査することしかできない1つのポジショナのみを有してもよい。そのような場合、サンプルステージを動かして、レーザービームの方向と平行ではない異なる方向に動きを与えてもよい。
特定の態様において、走査される領域(例えば、関心領域)は、レーザービームがレーザー走査システムによって方向付けられている間のサンプルステージの移動によって増大されてもよい。サンプルステージの動きがない場合、レーザービームによって走査される領域は、レーザーアブレーションセルの上端のウインドウ及び/又は照射されたサンプルを取り込むために位置されるレーザーアブレーションセル(チャンバ)内の注入器チューブの一部におけるウインドウなど、ビームが通過するウインドウのサイズによって制限される場合がある。これに代えて或いは加えて、サンプルステージの動きがない場合、レーザービームによってカバーされる領域は、サンプル(例えば、レーザービームによってアブレーションされる、脱着される、又は、持ち上げられるサンプル)をイオン化システム及び/又は質量検出器に送出するエアロゾル取り込みシステム(例えば、注入器チューブ)の近位側のレーザービームにより衝突されるサンプルの部分を位置決めする必要性によって制限される場合がある。そのため、レーザー走査中のステージの動きが、連続的に走査される領域を増大させ得る。特定の態様では、複数の関心領域が走査される。
場合によっては、レーザー走査システムは、X軸及びY軸の両方にレーザービームを方向付ける。したがって、この場合、より高度なアブレーションパターンをもたらすことができる。例えば、レーザー走査システムがX軸及びY軸の両方にレーザー放射線を方向付けることができる場合には、サンプルステージがX軸において一定の速度で移動されてもよく(これにより、横列の開始/終了時の加速/減速以外の各横列全体にわたる移動中のサンプルステージの慣性に関連する効率の悪さを排除する)、一方、レーザー走査システムは、サンプルステージの動きを補償しつつレーザー放射線パルスをサンプルの縦列の上下に方向付ける。この動きを実現するために、三角波制御信号をX方向でスキャナに適用するとともに、鋸歯信号をY方向で適用することができる。或いは、当業者であれば分かるように、使用される処理アルゴリズムに応じて、鋸歯駆動信号をY方向でスキャナに適用することが望ましい場合がある。更なる代替案として、傾斜した走査パターンを事前に補償するべく、スキャナ構成要素のうちの1つが僅かに事前回転されてもよい。幾つかの実施形態において、レーザー走査システムのコントローラは、サンプルステージが移動する際、レーザースキャナシステムに8の字パターンでビームを移動させる。
したがって、レーザーサンプリングシステムで使用されるレーザーが十分に高い繰り返しレートを有する場合(後述する)には、サンプル上の様々な位置へのレーザー放射線の十分に急速な(再)方向付けが、サンプルの広い領域のかなり急速なアブレーションを可能にする。例えば、1秒当たり5パルス未満しかサンプル上の異なる位置へ方向付けることができない場合、1μmのスポットサイズでアブレーションにより1mm×1mmの領域を調査するのに要する時間は2日を超えることになる。200Hzの速度では、これが約80分になり、パルスの周波数を更に上げるために分析時間が更に短縮される。しかしながら、サンプルは、多くの場合、大幅に大きくなる。組織切片を配置できる平均的な顕微鏡スライドは25×75mmである。これは、200Hzの速度でアブレーションするのに約110日を要する。しかしながら、レーザー走査システムが使用されれば、例えば、サンプルステージがX軸に沿って一定速度(1mm/s)で移動される一方で、レーザービームがレーザー走査システムを用いてY軸方向で前後に移動される場合、時間を大幅に短縮できる。レーザー走査システムは、ステージ動作速度に一致する速度で、この場合には500Hzでレーザー焦点の位置を走査できる。これは、この速度においてラスターパターンで隣り合うライン間に1μmの間隔を生み出す。その後、最大レーザー繰り返しレートに応じて、レーザー走査システムによるレーザー放射線の偏向の程度が一致するように選択される。ここで、100ミクロンのピークツーピーク振幅を生み出すためには、100kHzのレーザー繰り返しレートが必要とされる。これにより、デバイスは、現在の装置における最大0.0004mm/sと比較して、0.1mm/sを処理できる。前述の110日の数字と比較すると、この段落で説明したレーザー走査システムでは、スライドの処理に約5時間しかかからない。
他の用途は、任意のアブレーション領域整形である。高繰り返しレートのレーザーが使用される場合、ナノ秒レーザーが1つのパルスを送出するのと同時に、間隔の狭いレーザーパルスのバーストを送出することができる。レーザーパルスのバースト中にアブレーションスポットのX位置及びY位置をすばやく調整することにより、任意の形状及びサイズ(光の回折限界まで)のアブレーションクレーターを作成できる。例えば、バースト内のn位置及びn+1位置は、スポットサイズの直径の8倍未満、5倍未満、2.5倍未満、2倍未満、1.5倍未満、約1倍、又は、1倍未満など、(n番目のスポット及び(n+1)番目のスポットのアブレーションスポットの中心に基づいて)レーザースポットの直径の10倍に等しい距離を超えて離れていなくてもよい。この技術を使用する特定の方法については、36頁の以下の方法の節で説明する。
したがって、幾つかの実施形態において、レーザー走査システムは、サンプルステージに対するレーザーにより放出されるレーザービームの第1の相対移動(例えば、サンプルの表面に対してY軸)を与えるためのポジショナを備える。
幾つかの実施形態において、レーザー走査システムのポジショナは、サンプルステージに対するレーザービームの第2の相対移動を与えることができ、この場合、第1及び第2の相対移動は平行ではなく、例えば、この場合、相対移動は直交している(例えば、第1の移動方向は、サンプルの表面に対してY軸にあり、また、第2の移動方向は、サンプルの表面に対してX軸にある)。
幾つかの実施形態において、レーザー走査システムは、サンプルステージに対するレーザービームの第2の相対移動を与えることができる第2のポジショナを更に備え、この場合、第1及び第2の相対移動は平行ではなく、例えば、この場合、相対移動は直交している(例えば、第1の移動方向は、サンプルの表面に対してY軸にあり、第2の移動方向は、サンプルの表面に対してX軸にある)。
レーザー走査システム構成要素
レーザー放射線をサンプル上の様々な位置に迅速に向けることができる任意の構成要素をレーザー走査システムにおけるポジショナとして使用できる。以下に論じる様々なタイプのポジショナは、市販されているとともに、それぞれが固有の長所及び制限を有するので、装置が使用されるべき特定の用途に適するように当業者により選択され得る。本発明の態様の幾つかの実施形態では、以下で提示されるように、後述する複数のポジショナを単一のレーザー走査システムに組み合わせることができる。ポジショナは、一般に、レーザービームに相対的な動きを導入するために可動構成要素に依存するもの(その例としては、ガルバノメーターミラー、圧電ミラー、MEMSミラー、ポリゴンスキャナなどが挙げられる)とそうでないもの(その例としては、そのような音響光学デバイス及び電気光学デバイスが挙げられる)とにグループ化され得る。前の文に挙げられたタイプのポジショナは、レーザー放射線のビームを様々な角度に制御可能に偏向させるように作用し、その結果、アブレーションスポットの並進がもたらされる。レーザー走査システムは、単一のポジショナを備えてもよく、或いは、ポジショナ及び第2のポジショナを備えてもよい。レーザー走査システムに2つのポジショナが存在する「ポジショナ」及び「第2のポジショナ」の記述は、レーザー放射線のパルスがレーザー源からサンプルまでのその経路上でポジショナに衝突する順序を規定しない。
-ガルバノメーターミラーポジショナ
ミラーが装着されるシャフト上のガルバノメーターモータを使用して、レーザー放射線をサンプル上の様々な位置へと偏向させることができる。動きは、固定磁石及び可動コイル、或いは、固定コイル及び可動磁石を使用して実現できる。固定コイル及び可動磁石の配置がより急速な応答時間をもたらす。一般に、シャフト及びミラーの位置を感知するためにセンサがモータに存在し、それにより、モータのコントローラにフィードバックが与えられる。1つのガルバノメーターミラーが1つの軸内にレーザービームを方向付けることができるため、この技術を使用してx軸及びY軸の両方でビームの方向付けを可能にするべくガルバノミラーの対が使用される。
ガルバノメーターミラーの1つの長所は、それが大きな偏向角(例えば、固体偏向器よりもはるかに大きい)を可能にすることであり、その結果として、サンプルステージの移動頻度を低くできる。しかしながら、モータ及びミラーの可動構成要素には質量があるため、これらの可動構成要素が慣性を受け、そのため、構成要素の加速時間がサンプリング方法の範囲内で調整されなければならない。一般に、非共振ガルバノメーターミラーが使用される。当業者であれば分かるように、共振ガルバノメーターミラーを使用できるが、レーザー走査システムのポジショナのような共振構成要素のみを使用する装置は、任意の(ランダムアクセスとしても知られる)走査パターンを行なうことができない。ガルバノメーターミラー偏向器は、それがミラーに基づいているため、レーザー放射線ビームの品質を低下させてアブレーションスポットサイズを増大させる可能性があり、したがって、この場合も当業者であれば分かるように、ビームへのそのような影響を許容する状況で最も適用可能である。
ガルバノメーターミラーベースの装置は、センサノイズ又はトラッキングエラーにより、それらの位置決めにおいてエラーが生じる傾向となり得る。したがって、幾つかの実施形態において、各ミラーは位置センサと関連付けられ、このセンサは、ミラーの位置をガルバノメーターにフィードバックしてミラーの位置を精緻化する。場合によっては、位置情報がAOD又はEODなどの他の構成要素及びガルバノメーターミラーに順次に中継され、それにより、ミラーの位置決めエラーが補正される。
ガルバノメーターミラーシステム及び構成要素は、Thorlabs(ニュージャージー州、米国)、Laser2000(英国)、ScanLab(ドイツ)、Cambridge Technology(マサチューセッツ州、米国)などの様々な製造業者から市販されている。
ガルバノメーターミラーベースのポジショナのみを備える実施形態では、アブレーションレーザーパルスがサンプルへ方向付けられ得る速度が、200Hz~1MHz、200Hz~100kHz、200Hz~50kHz、200Hz~10kHz、1kHz~1MHz、5kHz~1MHz、10kHz~1MHz、50kHz~1MHz、100kHz~1MHz、1kHz~100kHz、又は、10kHz~100kHzであってもよい。
したがって、本発明の態様の幾つかの実施形態において、レーザースキャナシステムは、ガルバノメーターミラーアレイなどのガルバノメーターミラーである1つ以上のポジショナを備える。ここで、図1、図2、図3、及び、図5を参照して、ミラーベースのレーザースキャナセットアップについて説明する。
図1は、従前の装置セットアップの光学素子の概略図である。ここで、レーザー源(例えば、随意的にパルスピッカーを組み込むパルスレーザー源)101は、エネルギー制御モジュール102を通じて、その後、ビーム整形光学素子103を通じて方向付けられるレーザー放射線のビームを放出する。放射線のビームは、その後、集束光学素子を介したビーム/照明組み合わせ光学素子104及び対物レンズ105によってサンプルに向けられる。サンプルは、サンプルチャンバ106内の3軸(すなわち、x、y、z)並進ステージ108上に位置するガラス面107上にある。また、図1のセットアップは、同じ集束光学素子及び対物レンズ105を使用してサンプルを観察するためのカメラ111も備える。照明源109が、ビーム/照明組み合わせ光学素子104及び集束光学素子105を介して、照明/検査分割光学素子110によってサンプルに向けられる可視光を放出する。
図2は、本発明の態様の典型的な実施形態の光学素子配置の概略図である。この図は、図1のセットアップと共通の要素を含む。レーザー源(例えば、随意的にパルスピッカーを組み込むパルスレーザー源)201は、エネルギー制御モジュール202を通じて方向付けられるレーザー放射線のビームを放出する。レーザー放射線のビームがビーム整形・イメージング光学素子203によって整形及びイメージングされる前に、ポジショナ-ガルバノメーターミラー(又は以下で説明する圧電ミラー、MEMSミラー又はポリゴンスキャナ)などのミラー212-は、レーザー放射線のビームを偏向する。ガルバノメーターミラーベースの装置の単一のミラーは、一方向で、例えばY軸で、サンプルに対するビームの走査を可能にする。ミラー212によって導入される偏向は、光学素子全体に伝達され、その結果、ミラーの位置に応じて、サンプル207上の異なる位置のアブレーションがもたらされる。ミラーは、モーション・トリガーコントローラ213によって調整される。図2のセットアップにおいて、コントローラ213は、レーザー放射線のビームによってアブレーションされたサンプル上の特定の位置を決定するために、サンプルステージ208上の位置と共にミラーを調整する。また、コントローラ213は、レーザーパルスの生成を調整するためにレーザー源にも接続する(その結果、パルスは、ミラー212が位置間を移動している間ではなく、ミラー212が所定の位置にあるときに、レーザー源によって生成される)。放射線のビームは、その後、集束光学素子を介したビーム/照明組み合わせ光学素子204及び対物レンズ205によってサンプルに向けられる。サンプルは、サンプルチャンバ206内の3軸(すなわち、x、y、z)並進ステージ208上に位置するガラス面207上にある。また、図2のセットアップは、同じ集束光学素子及び対物レンズ205を使用してサンプルを観察するためのカメラ211も備える。照明源209が、ビーム/照明組み合わせ光学素子204及び集束光学素子205を介して、照明/検査分割光学素子210によってサンプルに向けられる可視光を放出する。別の配置を図5に示される。ここで、図5の全ての構成要素は、システムがサンプルキャリアを介してサンプルをアブレーションするように動作することを除いて、図2と同じである。この配置は、例えば、アブレーションスポットに近い領域からの材料の除去を支援するために、アブレーションされるようになっているサンプル材料に付加的な運動エネルギーを与えることが望まれる場合に好ましくなり得る。
図3は、本発明の態様の他の典型的な実施形態の光学素子配置の概略図である。この図は、図2のセットアップと共通の要素を含む。しかしながら、単一のミラーポジショナの代わりに、一対のミラーポジショナを使用して、レーザー放射線のビームに偏向をもたらす。本明細書中の他の場所で説明するように、ミラー対は、2つの直交方向(X及びY)での走査をもたらすように配置することができ、これにより、サンプルステージ上のサンプルの動きを補償できる。図3の他の構成要素は、対応する参照番号で標識付けされた図2の構成要素に対応する(つまり、201が図2などで説明されているように、301はレーザー源(例えば、随意的にパルスピッカーを組み込むパルスレーザー源)である)。
-図1~図5のカメラは、サンプル支持体(スライドガラスなど)の同じ側で示されるが、透光を可能にする形態も対象用途の範囲内である。例えば、並進可能なステージが、サンプル支持体が透光を可能にするようにサンプルからオフセットされてもよい。透光は、特定の用途の光学素子を改善できる場合があるが、アブレーションされた材料を質量分析器に通す注入器と競合する場合がある。したがって、本明細書中に記載のシステムは、透光を可能にしなくてもよい。本明細書中で使用されるサンプル支持体は、サンプルを保持するための任意のスライド及び/又はスライドを保持するためのサンプルステージを指してもよい。スライドガラスは幾つかの例で説明されるが、スライドは、透明な材料(例えば、ガラス、シリコン、石英など)などの任意の適した材料のものであってもよい。圧電ミラーポジショナ
同様に、ミラーが装着されるシャフト上の圧電アクチュエータをポジショナとして使用して、レーザー放射線をサンプル上の様々な位置へと偏向させることができる。この場合も先と同様に、質量のある構成要素の動きに基づくミラーポジショナとして、本質的に慣性があり、したがって、この構成要素によるミラーの動きに固有の時間オーバーヘッドがある。したがって、このポジショナは、当業者には、レーザー走査システムのナノ秒応答時間が必須ではない特定の実施形態に適用されることが理解される。同様に、圧電ミラーポジショナは、ミラーに基づいているので、レーザー放射線ビームの品質を低下させて、アブレーションスポットサイズを増大させ、したがって、この場合も先と同様に、ビームへのそのような影響を許容する状況で最も適切であることが当業者によって理解される。
チルトチップミラー配置に基づく圧電ミラーでは、X軸及びY軸でのサンプルへのレーザー放射線の方向が単一の構成要素で与えられる。
圧電ミラーは、Physik Instrumente(ドイツ)などの供給元から市販されている。
したがって、本発明の態様の幾つかの実施形態において、レーザースキャナシステムは、圧電ミラーアレイ又は傾斜先端ミラーなどの圧電ミラーを備える。
圧電ミラーアレイ又は傾斜先端ミラーなどの圧電ミラーベースのポジショナのみを備える実施形態において、アブレーションレーザーパルスをサンプルに向けられることができる速度は、200Hz~1MHz、200Hz~100kHz、200Hz~50kHz、200Hz~10kHz、1kHz~1MHz、5kHz~1MHz、10kHz~1MHz、50kHz~1MHz、100kHz~1MHz、1kHz~100kHz、又は、10kHz~100kHzであってもよい。
-MEMSミラーポジショナ
レーザー放射線をサンプルに向ける表面の物理的な動きに依存する第3の種類のポジショナは、MEMS(Micro-Electro Mechanical System)ミラーである。この構成要素におけるマイクロミラーは、静電効果、電気機械効果、及び、圧電効果によって作動され得る。このタイプの構成要素の多くの長所は、軽量、装置内での位置決めの容易さ、低消費電力など、それらのサイズが小さいことに由来する。しかしながら、レーザー放射線の偏向は、最終的には依然として構成要素内の部品の動きに基づいているため、部品が慣性を受ける。前と同じように、MEMSミラーポジショナは、ミラーに基づいているため、レーザー放射線ビームの品質を低下させ、アブレーションスポットサイズを大きくし、したがって、この場合も当業者であれば分かるように、そのようなスキャナ構成要素は、レーザー放射線へのそのような影響を許容する状況に適用できる。
MEMSミラーは、Mirrorcle Technologies(カリフォルニア州、米国)、Hamamatsu(日本)、Precisely Microtechnology Corporation(カナダ)などの供給元から市販されている。
したがって、本発明の態様の幾つかの実施形態では、レーザースキャナシステムがMEMSミラーを備える。
MEMSミラーベースのポジショナのみを備える実施形態では、アブレーションレーザーパルスをサンプルへ方向付けることができる速度が、200Hz~1MHz、200Hz~100kHz、200Hz~50kHz、200Hz~10kHz、1kHz~1MHz、5kHz~1MHz、10kHz~1MHz、50kHz~1MHz、100kHz~1MHz、1kHz~100kHz、又は、10kHz~100kHzであってもよい。
-ポリゴンスキャナ
レーザー放射線をサンプルに向ける表面の物理的な動きに依存する更なる種類のポジショナは、ポリゴンスキャナである。ここでは、反射ポリゴン又は多面ミラーが機械軸上で回転し、また、ポリゴンの平坦なファセットが入射ビームを横切るたびに、角度偏向された走査ビームが生成される。ポリゴンスキャナは、1次元スキャナであり、走査されたラインに沿ってレーザービームを方向付けることができる(したがって、サンプルに対する第2の相対移動をレーザービームに導入するために、2次ポジショナが必要であり、又は、サンプルがサンプルステージ上で移動される必要がある)。例えばガルバノメーターベースのスキャナの前後の動きとは対照的に、ラスタースキャンの1つのラインの終わりに達した時点で、ビームが走査横列の元の開始位置へと向けられる。ポリゴンは、用途に応じて、規則的又は不規則であってもよい。スポットサイズは、ファセットのサイズと平坦度、及び、幾つかのファセット上走査ラインの長さ/走査角度に依存する。非常に高い回転速度を実現できるため、走査速度が速くなる。しかしながら、この種のポジショナには、ファセットの製造公差と軸方向のぐらつきによる位置決め/フィードバック精度の低下、及び、ミラー表面からの波面歪みの可能性という点で欠点がある。したがって、この場合も当業者であれば分かるように、そのようなスキャナ構成要素は、レーザー放射線に対するそのような影響を許容する状況に適用可能である。
ポリゴンスキャナは、例えば、Precision Laser Scanning(アリゾナ州、米国)、II-VI(ペンシルバニア州、米国)、Nidec Copal Electronics Corp(日本)から、とりわけ市販されている。
ポリゴンスキャナベースのポジショナのみを備える実施形態では、アブレーションレーザーパルスをサンプルへ方向付けることができる速度が、200Hz~10MHz、200Hz~1MHz、200Hz~100kHz、200Hz~50kHz、200Hz~10kHz、1kHz~10MHz、5kHz~10MHz、10kHz~10MHz、50kHz~10MHz、100kHz~10MHz、1kHz~1MHz、10kHz~1MHz、又は100kHz~1MHzであってもよい。
-電気光学偏向器(EOD)ポジショナ
レーザースキャナシステム構成要素の前述のタイプとは異なり、EODは固体構成要素である-つまり、EODは可動部品を備えない。したがって、EODは、レーザー放射線を偏向させる際に機械的慣性を受けず、したがって、1ns程度の非常に速い応答時間を有する。また、EODは、機械部品のように摩耗することもない。EODは、屈折率がその両端に印加される電界に応じて変化する光学的に透明な材料(結晶など)で形成され、この屈折率は、媒体に電圧を印加することによって制御される。レーザー放射線の屈折は、ビームの断面全体に位相遅延が導入されることによって引き起こされる。屈折率が電界に比例して変化する場合、この効果はポッケルス効果と称される。屈折率が電界強度に応じて二次関数的に変化する場合、それはカー効果と称される。カー効果は、通常、ポッケルス効果よりもはるかに弱い。2つの典型的な形態は、光学プリズムの界面での屈折に基づくEOD、及び、レーザー放射線の伝搬方向に垂直に存在する屈折率勾配による屈折に基づくEODである。EOD全体に電界をかけるために、電極は、媒体として作用する光学的に透明な材料の反対側に結合される。対向する電極のセットを結合すると、1次元の走査型EODがもたらされる。電極の第2のセットを第1のセットの電極に直交して結合すると、2次元(X、Y)スキャナがもたらされる。
例えば、EODの偏向角はガルバノメーターミラーよりも小さいが、複数のEODを順番に配置することにより、所定の装置のセットアップに必要な場合には、角度を大きくすることができる。EODの屈折媒体に関する典型的な材料としては、タンタル酸リチウムニオブ酸カリウムKTN(KTaNb1-x)、LiTaO、LiNbO、BaTiO、SrTiO、SBN(Sr1-xBaNb)、及び、KTNが同じ電界強度でより大きな偏向角を示すKTiOPOが挙げられる。
EODの角度精度は、高いとともに、主に電極に接続されたドライバの精度に依存する。更に、前述したように、EODの応答時間は非常に速く、また、以下で説明するAODよりも高速である(結晶内の(変化する)電界が材料内の音の速度ではなく材料内の光の速度で確立されるという事実に起因する;Romer and Bechtold、2014、Physics Procedia 56:29-39の説明を参照)。
したがって、本発明の態様の幾つかの実施形態において、レーザースキャナシステムはEODを備える。幾つかの実施形態において、EODは、電極の2つのセットが屈折媒体に直交して接続されているものである。
EODベースのポジショナを備える実施形態では、アブレーションレーザーパルスをサンプルへ方向付けることができる速度が、200Hz~100MHz、200Hz~10MHz、200Hz~1MHz、200Hz~100kHz、200Hz~50kHz、200Hz~10kHz、1kHz~100MHz、5kHz~100MHz、10kHz~100MHz、50kHz~100MHz、100kHz~100MHz、1MHz~100MHz、10~100MHz、1kHz~10MHz、10kHz~10MHz、又は100kHz~10MHzであってもよい。
-音響光学偏向器(AOD)ポジショナ
このクラスのポジショナも固体構成要素である。構成要素の偏向は、周期的に変化する屈折率を誘発するために光学的に透明な材料内で音波を伝搬することに基づいている。屈折率の変化は、材料を通じて伝搬する音波に起因する材料の圧縮及び希薄化(つまり密度の変化)が原因で発生する。周期的に変化する屈折率は、光学格子のように作用することにより材料を通過するレーザービームを回折する。
AODは、トランスデューサ(一般に圧電素子)を音響光学結晶(TeOなど)に結合することによってもたらされる。電気増幅器によって駆動されるトランスデューサは、屈折媒体に音波を導入する。反対側の端では、結晶が一般にスキューカットされ、また、結晶には、音波が結晶に反射して戻るのを防ぐために吸音材が取り付けられる。波が結晶を通って一方向に伝播すると、これが1次元スキャナを形成する。2つのAODを直交して直列に配置するか、2つのトランスデューサを直交する結晶面に結合することにより、2次元スキャナを形成できる。
EODに関しては、AODの偏向角がガルバノメーターよりも小さいが、先と同様に、そのようなミラーベースのスキャナと比較すると、角度精度は高く、結晶を駆動する周波数はデジタル制御され、通常は1Hzに分解できる。Romer and Bechtold,2014は、ガルボベースのスキャナで一般的なドリフト、及び、アナログコントローラと比較した温度依存性が、通常、AODにより直面される問題ではないことに言及する。
AODの屈折媒体として使用するための典型的な材料としては、二酸化テルル、溶融シリカ、結晶石英、サファイア、AMTIR、GaP、GaAs、InP、SF6、ニオブ酸リチウム、PbMoO、三硫化ヒ素、テルライトガラス、ケイ酸鉛、Ge55As1233、塩化水銀(I)、及び、臭化鉛(II)が挙げられる。
偏向角を変えるには、結晶に導入される音の周波数を変える必要があり、また、音波が結晶を埋めるのに有限の時間がかかり(結晶内の音波の伝播速度と結晶のサイズとに依存する)、それにより、つまり、ある程度の遅延がある。それにもかかわらず、可動部品に基づくレーザーシステムポジショナと比較して、応答時間は比較的高速である。
特定の場合に利用できるAODの更なる特徴は、結晶に適用される音響パワーが、ゼロ次(すなわち、非回折)ビームに対して回折されるレーザー放射線の量を決定することである。非回折ビームは、一般に、ビームダンプに向けられる。したがって、AODを使用して、偏向されたビームの強度及びパワーを高速で効果的に制御(又は変調)することができる。
AODの回折効率は一般に非線形であるため、回折効率対パワーの曲線を様々な入力周波数に関してマッピングできる。その後、それぞれの周波数ごとのマッピングされた効率曲線を方程式として又はルックアップテーブルに記録し、本明細書中に開示される装置及び方法でその後に使用することができる。
したがって、本発明の態様の幾つかの実施形態では、レーザースキャナシステムがAODを備える。
図4は、本発明の態様の更なる典型的な実施形態の光学素子配置の概略図である。この図は、図2のセットアップと共通の要素を含む。しかしながら、回転ミラーの代わりに、固体ポジショナ(例えば、AOD又はEOD)412が、図2のミラーベースのポジショナ212ではなくレーザー放射線のビームに偏向をもたらすために使用される。本明細書中の他の場所で説明するように、固体スキャナは、直交電極をEOD媒体に取り付けることによって又は2つのAODを直交して直列に配置することによって、2つの直交方向(X及びY)で走査できる。図4の他の構成要素は、対応する参照番号で標識付けされた図2の構成要素に対応する(つまり、201が図2などで説明されているように、401はレーザー源(例えば、随意的にパルスピッカーを組み込むパルスレーザー源)である)。
AODベースのポジショナを備える実施形態では、アブレーションレーザーパルスをサンプルへ方向付けることができる速度が、200Hz~100MHz、200Hz~10MHz、200Hz~1MHz、200Hz~100kHz、200Hz~50kHz、200Hz~10kHz、1kHz~100MHz、5kHz~100MHz、10kHz~100MHz、50kHz~100MHz、100kHz~100MHz、1MHz~100MHz、10~100MHz、1kHz~10MHz、10kHz~10MHz、又は100kHz~10MHzであってもよい。
-ポジショナの組み合わせ
前の段落では、2つのタイプのレーザー走査システムポジショナ、すなわち、可動部品を備えるミラーベース及び固体ポジショナが説明される。前者は、撓み角が大きいという特徴があるが、慣性に起因して応答時間が比較的遅い。対照的に、固体ポジショナの偏向角範囲は狭くなるが、応答時間ははるかに速くなる。したがって、本発明の態様の幾つかの実施形態において、レーザー走査システムは、ミラーベースの構成要素及び固体構成要素の両方を直列に含む。この配置は、両方の長所、例えば、ミラーベースの構成要素によって与えられる広い範囲であるが、ミラーベースの構成要素の慣性に対応するという長所を利用する。例えば、Matsumoto et al.、2013(Journal of Laser Micro/Nanoengineering 8:315:320)を参照されたい。
したがって、固体ポジショナ(すなわち、AOD又はEOD)を使用して、例えば、ミラーベースのスキャナ構成要素のエラーを修正することができる。この場合、固体構成要素へのミラー位置フィードバックに関連する位置センサ、及び、固体構成要素によってレーザー放射線のビームに導入される偏向角を適切に変更して、ミラーベースのスキャナ構成要素の位置エラーを補正することができる。
複合システムの一例は、ガルバノメーターミラー及びAODを含む(AODは1つ又は2つの方向への偏向を可能にしてもよい(2つのAODを直列に使用するか、2つのドライバを単一のAODの結晶の直交面に結合することによって))。システムは、AOD(AODが1つ又は2つの方向で偏向を可能にしてもよい(2つのAODを直列に使用するか、2つのドライバを単一のAODの結晶の直交面に結合することによって))と組み合わせて、二次元走査システムを形成するように2つのガルバノメーターミラーを備えてもよい。そのようなシステムにおいて、アブレーションレーザーパルスをサンプルに向けることができる速度は、200Hz~100MHz、200Hz~10MHz、200Hz~1MHz、200Hz~100kHz、200Hz~50kHz、200Hz~10kHz、1kHz~100MHz、5kHz~100MHz、10kHz~100MHz、50kHz~100MHz、100kHz~100MHz、1MHz~100MHz、10~100MHz、1kHz~10MHz、10kHz~10MHz、又は、100kHz~10MHzであってもよい。複合システムの代替例は、ガルバノメーターミラー及びEODを含む(EODは、1つ又は2つの方向への偏向を可能にしてもよい(2つの直交して配置された電極を結晶に結合することによって))。システムは、EOD(EODは、1つ又は2つの方向で偏向を可能にしてもよい(2つの直交して配置された電極を結晶に結合することによって))と組み合わせて、2次元走査システムを形成するように2つのガルバノメーターミラーを備えてもよい。そのようなシステムでは、アブレーションレーザーパルスをサンプルに向けることができる速度は、200Hz~100MHz、200Hz~10MHz、200Hz~1MHz、200Hz~100kHz、200Hz~50kHz、200Hz~10kHz、1kHz~100MHz、5kHz~100MHz、10kHz~100MHz、50kHz~100MHz、100kHz~100MHz、1MHz~100MHz、10~100MHz、1kHz~10MHz、10kHz~10MHz、又は、100kHz~10MHzであってもよい。
-レーザー走査システムの更なる随意的な構成要素
レーザー走査システムのポジショナを制御するために、レーザー走査システムは、Y軸及び/又はX軸におけるポジショナの動きをサンプルステージの動きと調整するスキャナ制御モジュール(コンピュータ又はプログラムされたチップなど)を備えてもよい。前後のラスタライズなど、場合によっては、適切なパターンがチップに事前にプログラムされる。しかしながら、他の例では、制御モジュールによって逆運動学を適用して、従うべき適切なアブレーションパターンを決定することができる。逆運動学は、アブレーションされるべき複数の及び/又は不規則な形状の細胞間の最良のアブレーションコースをプロットするために、例えば、任意のアブレーションパターンを生成する際に特に有用となり得る。また、スキャナ制御モジュールは、例えば、パルスピッカーの動作も調整することにより、レーザー放射線のパルスの放出を調整してもよい。
場合により、ポジショナは、それが向けるレーザー放射線のビームの分散を引き起こす可能性がある。したがって、本明細書中に記載の装置の幾つかの実施形態において、レーザー走査システムは、ポジショナ及び/又は第2のポジショナとサンプルとの間に、ポジショナによって引き起こされる任意の分散を補償するようになっている少なくとも1つの分散補償器を備える。ポジショナがAODであり、及び/又は、第2のポジショナがAODである場合、分散補償器は、(i)ポジショナ及び/又は第2のポジショナによって引き起こされる分散を補償するのに適した線間隔を有する回折格子、(ii)ポジショナ及び/又は第2のポジショナによって引き起こされる分散を補償するのに適したプリズム(すなわち、適切な材料、厚さ、及び、プリズム角度)、(iii)回折格子(i)とプリズム(ii)とを備える組み合わせ、及び/又は、(iv)更なる音響光学デバイスである。第1のポジショナが分散を引き起こし、第2のポジショナが分散を引き起こす場合、レーザー走査システムは、第1のポジショナによって引き起こされる任意の分散を補償するための第1の分散補償器と、第2のポジショナによって引き起こされる任意の分散を補償するための第2の分散補償器とを備えてもよい。国際公開第03/028940号パンフレットは、他の適切に適合されたAODを使用してAODポジショナによって引き起こされる分散を補償する方法について記載する。
場合によっては、レーザー放射線を異なる位置に向けるポジショナの動きにより、放射ビームの焦点距離がサンプルの位置に対して変化し得る。これは、様々な方法に関して補償され得る。例えば、可動集束レンズは、レーザー放射線が向けられているサンプル上の特定の位置に関係なく、サンプル上の一定の又はほぼ一定の直径のスポットサイズを維持するように移動され得る。或いは、調整可能な集束レンズ(Optotuneから市販されている)を使用することもできる。サンプルステージのz軸の高さを変更することにより、スポットサイズの変動を補償することもできる。これらの技術はいずれも、可動部品に依存するが、システムの動作にタイミングオーバーヘッドをもたらす。AODをガウスビームと共に使用する場合には、1次対0次のビーム強度を迅速に変調するべく、アブレーションスポットサイズをAOD内の結晶に適用されるパワーによって制御できる。
レーザー
一般に、サンプルのアブレーションに使用されるレーザーの波長及び出力の選択は、細胞分析での通常の使用法に従うことができる。レーザーは、サンプルキャリアを実質的にアブレーションすることなく、所望の深さまでアブレーションを引き起こすのに十分なフルエンスを持たなければならない。一般に、0.1~5 J/cm、例えば、3~4 J/cm又は約3.5J/cmのレーザーフルエンスが適しており、また、レーザーは、理想的には、200Hz以上の速度においてこのフルエンスでパルスを生成することができる。場合によっては、そのようなレーザーからの単一のレーザーパルスは、アブレーションプルームが生成される周波数とレーザーパルス周波数が一致するように、分析のために細胞材料をアブレーションするのに十分であるべきである。一般に、生物学的サンプルのイメージングに有用なレーザーであるためには、レーザーは、例えば、以下で論じる特定のスポットサイズに焦点を合わせることができる100ns未満(好ましくは1ns未満)の持続時間を伴うパルスを生成すべきである。本発明の幾つかの実施形態では、上記のレーザー走査システムの使用をうまく利用するために、アブレーション速度(すなわち、レーザーがサンプルの表面上のスポットをアブレーションする速度)は、200Hz以上、例えば、500Hz以上、750Hz以上、1kHz以上、1.5kHz以上、2kHz以上、2.5kHz以上、3kHz以上、3.5kHz以上、4kHz以上、4.5kHz以上、5kHz以上、10kHz以上、100kHz以上、1MHz以上、10MHz以上、又は、100MHz以上である。多くのレーザーは、レーザーアブレーション周波数を超える繰り返しレートを有するため、パルスピッカーなどの適切な構成要素を使用して、必要に応じてアブレーションの速度を制御できる。したがって、幾つかの実施形態において、レーザー繰り返しレートは、少なくとも1kHz、例えば、少なくとも10kHz、少なくとも100kHz、少なくとも1MHz、少なくとも10MHz、約80MHz、又は、少なくとも100MHzであり、随意的に、サンプリングシステムはパルスピッカーを更に備え、例えば、パルスピッカーは、サンプルステージ及び/又はレーザー走査システムのポジショナの動きも制御する制御モジュールによって制御される。他の例では、複数の間隔が短いパルスバースト(例えば、3つの間隔が短いパルスの列)を使用して、1つの単一スポットをアブレーションすることができる。一例として、10×10μmの領域は、各スポットで3つの間隔が短いパルスの100バーストを使用してアブレーションされてもよく、これは、アブレーションの深さが制限されているレーザー、例えばフェムト秒レーザーにおいて有用となり得るとともに、分解能を失うことなく、アブレーションされた細胞材料の連続的なプルームを生成できる。したがって、幾つかの実施形態において、レーザー走査システムは、3つの時間的に近いパルス(例えば、パルスが1μs未満、例えば、1ns未満、又は1ps未満離れている)を使用してサンプル上の各スポットをアブレーションする方法を使用してサンプルをアブレーションするようになっている。
本明細書中に記載されるように、レーザーがfsレーザーであってもよい。例えば、近赤外範囲のfsレーザーは、第2高調波で動作して緑色範囲のレーザー放射線をもたらしてもよく、又は、第3高調波で動作してUV範囲のレーザー放射線をもたらしてもよい。緑又はUVなどのより低い波長では、分解能がより高くなり得る場合がある(例えば、より小さいスポットサイズ)。レーザー放射線がサンプル支持体の全体にわたって移動してサンプルに衝突する場合には、サンプル支持体がレーザー放射線を透過させる必要がある。ガラス及びシリカは緑色の波長を透過するが、ガラスではなくシリカはUVを透過する。スライドガラスの使用を可能にしながら高い分解能を可能にするために、IR fsレーザーを第2高調波(例えば、約50%の変換効率)で動作させて緑色のレーザー放射線をもたらしてもよい。注目すべきことに、市販の対物レンズは、多くの場合、緑の範囲で最良の補正を有する。緑色又はUV fsレーザーによって達成される分解能は、500nm、400nm、300nm、200nm、150nm、又は、100nm以下のスポットサイズであってもよい。
例えば、レーザーシステムによるアブレーションの周波数は、200Hz~100MHz、200Hz~10MHz、200Hz~1MHz、200Hz~100kHzの範囲内、500~50kHzの範囲内、又は、1kHz~10kHzの範囲内である。レーザーのアブレーション周波数は、上記のようにレーザー走査システムのスキャン速度に一致されるべきである。
これらの周波数で、それぞれのアブレーションされたプルームを個別に分解することが望ましい(以下に示すように、パルスのバーストをサンプルに発射する際に必ずしも望ましくない場合がある)場合、機器は、連続するアブレーション間の実質的な信号の重複を回避するのに十分急速にアブレーションされた材料を分析できなければならない。連続するプルームから生じる信号間の重なり合いは、強度が10%未満、より好ましくは5%未満、理想的には2%未満であることが好ましい。プルームの分析に必要な時間は、サンプルチャンバのウォッシュアウト時間(以下のサンプルチャンバの節を参照)、レーザーイオン化システムへの及びレーザーイオン化システムを通じたプルームエアロゾルの通過時間、及び、イオン化された材料の分析にかかる時間によって決まる。以下でより詳細に説明するように、各レーザーパルスは、後に構築されるサンプルの画像上のピクセルに相関され得る。
幾つかの実施形態において、レーザー源は、ナノ秒又はピコ秒のパルス持続時間のレーザー、又は、超高速レーザー(パルス持続時間が1ps(10-12秒)又はそれよりも速い、例えばフェムト秒レーザーを含む。超高速パルス持続時間は、それらが、アブレーションゾーンからの熱拡散を制限し、それによって、より正確で信頼性の高いアブレーションクレーターをもたらす、並びに、各アブレーション事象からの残骸の散乱を最小限に抑えるため、多くの利点を与える。
場合によっては、フェムト秒レーザーがレーザー源として使用される。フェムト秒レーザーは、1ps未満の持続時間を伴う光パルスを放出するレーザーである。このような短いパルスの生成は、多くの場合、パッシブモードロックの技術を使用する。フェムト秒レーザーは、多くのタイプのレーザーを使用して生成され得る。30fs~30psの典型的な持続時間は、パッシブモードロック固体バルクレーザーを使用して実現され得る。同様に、例えばネオジムドープ又はイッテルビウムドープゲインメディアに基づく様々なダイオード励起レーザーがこの形態で動作する。高度な分散補償を伴うチタンサファイアレーザーは、10fs未満、極端な場合は約5fsまでのパルス幅にさえ適している。パルス繰り返しレートは、殆どの場合、10MHz~500MHzであるが、パルスエネルギーが高い場合は、繰り返しレートが数メガヘルツの低繰り返しレートバージョンがある(例えばLumentum(カリフォルニア州、米国)、Radiantis(スペイン)、Coherent(カリフォルニア州、米国)から入手可能)。このタイプのレーザーは、パルスエネルギーを増大させる増幅器システムを伴うことができる。
また、様々なタイプの超高速ファイバレーザーがあり、これらのレーザーも、殆どの場合、パッシブモードロックされており、一般に、50~500fsのパルス持続時間、及び、10~100MHzの繰り返しレートを与える。そのようなレーザーは、例えば、NKT Photonics(デンマーク、以前はFianium)、Amplitude Systems(フランス)、Laser-Femto(カリフォルニア州、米国)から市販されている。このタイプのレーザーのパルスエネルギーは、多くの場合に一体型ファイバ増幅器の形態を成す増幅器によっても増大され得る。
一部のモードロックダイオードレーザーは、フェムト秒の持続時間を伴うパルスを生成できる。レーザー出力で直接に、パルス持続時間は、通常、約数百フェムト秒である(例えば、Coherent(カリフォルニア州、米国)から入手可能)。
場合によっては、ピコ秒レーザーが使用される。前の段落で既に説明したタイプのレーザーの多くも、ピコ秒範囲の持続時間のパルスを生成するように適合され得る。最も一般的な光源は、アクティブ又はパッシブモードロック固体バルクレーザー、例えばパッシブモードロックNdドープYAG、ガラス、又は、バナジン酸塩レーザーである。同様に、ピコ秒モードロックレーザー及びレーザーダイオードが市販されている(例えば、NKT Photonics(デンマーク)、EKSPLA(リトアニア))。
ナノ秒パルス持続時間レーザー(ゲインスイッチ及びQスイッチ)も、特定の装置セットアップ(Coherent(カリフォルニア州、米国)、Thorlabs(ニュージャージー州、米国)で有用性を見出すことができる。或いは、ナノ秒以下の持続時間のパルスを生成するべく、連続波レーザーが使用されて外部変調されてもよい。
一般に、本明細書中で論じられるレーザーシステムにおいてアブレーションのために使用されるレーザービームは、スポットサイズ、すなわち、サンプリング位置において、100μm以下、例えば、50μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、又は、10μm以下、例えば、約3μm以下、約2μm以下、約1μm以下、約500nm以下、約250nm以下のスポットサイズを有する。スポットサイズと称される距離は、ビームの最長の内部寸法に対応し、例えば、円形のビームの場合にはビーム直径であり、正方形のビームの場合には対向するコーナー間の対角線の長さに対応し、四角形の場合には最長の対角線の長さなどに対応する(前述したように、ガウス分布を伴う円形ビームの直径は、フルエンスがピークフルエンスの1/e倍に減少したポイント間の距離として規定される)。ガウスビームの代わりに、ビーム整形及びビームマスキングを使用して、所望のアブレーションスポットをもたらすことができる。例えば、一部の用途では、トップハットエネルギー分布を伴う正方形のアブレーションスポットが有用となり得る(つまり、ガウスエネルギー分布とは対照的にほぼ均一なフルエンスを伴うビーム)。この配置は、ガウスエネルギー分布のピークでのフルエンスと閾値フルエンスとの間の比率に対するアブレーションスポットサイズの依存性を低減する。閾値フルエンスに近いアブレーションは、より信頼性の高いアブレーションクレーターの生成をもたらし、残骸生成を制御する。したがって、レーザーシステムは、ビームを再シェーミングするとともに±25%未満、例えば±20%未満、±15%、±10%又は±5%未満だけビーム全体で変動するフルエンスなどの均一又はほぼ均一なフルエンスのレーザー焦点スポットを生成するためにガウシアンビーム中に配置された、回折光学素子などのビームマスキング及び/又はビーム整形構成要素を備えてもよい。時として、レーザービームは正方形の断面形状を有する。時として、ビームはトップハットエネルギー分布を有する。
生物学的サンプルの分析に使用される場合、個々の細胞を分析するために使用されるレーザービームのスポットサイズは、細胞のサイズ及び間隔に依存する。例えば、細胞が互いに密に詰まっている場合(例えば組織切片において)、レーザーシステム内の1つ以上のレーザー源は、これらの細胞よりも大きくないスポットサイズを有することができる。このサイズは、サンプル内の特定のセルによって決まるが、一般に、レーザースポットは、4μm未満、例えば、約3μm以下、約2μm以下、約1μm以下、約500nm以下、約250nm以下、又は、300nm~1μmの直径を有する。細胞内分解能で所定の細胞を分析するために、システムは、これらの細胞よりも大きくないレーザースポットサイズを使用し、より具体的には、細胞内分解能で材料をアブレーションできるレーザースポットサイズを使用する。場合によっては、単一細胞分析は、例えば、細胞が細胞間に空間を伴ってスライド上に広げられる場合、細胞のサイズよりも大きいスポットサイズを使用して実行され得る。ここでは、対象の細胞の周りの付加的なアブレーションされた領域が付加的な細胞を含まないので、より大きなスポットサイズを使用することができ、単一細胞の特徴付けを達成することができる。したがって、使用される特定のスポットサイズは、分析されている細胞のサイズに応じて適切に選択され得る。生物学的サンプルでは、細胞が全て同じサイズになることはめったにないため、細胞内分解能イメージングが望まれる場合には、アブレーション手順の全体にわたって一定のスポットサイズが維持されれば、アブレーションスポットサイズを最小の細胞よりも小さくすべきである。レーザービームの集束を使用して、小さなスポットサイズを実現できる。1μmのレーザースポット直径は1μmのレーザーフォーカスポイント(すなわち、ビームの焦点でのレーザービームの直径)に対応するが、レーザーフォーカスポイントは、標的上のエネルギーの空間分布(例えば、ガウスビーム形状)とアブレーション閾値エネルギーに対する総レーザーエネルギーの変動とに起因して+20%以上変化する可能性がある。レーザービームを集束させるための適切な対物レンズは、シュヴァルツシルトカセグレン形態(逆カセグレン)の対物レンズなどの反射対物レンズを含む。反射と屈折とを組み合わせた対物レンズと同様に、屈折対物レンズも使用できる。単一の非球面レンズを使用して、必要な合焦を実現することもできる。ソリッドイマージョンレンズ又は回折光学素子を使用して、レーザービームの合焦させることもできる。単独で又は上記の対物レンズと組み合わせて使用され得る、レーザーのスポットサイズを制御するための他の手段は、合焦前にビームを開口に通すことである。直径のアレイから異なる直径の開口にビームを通過させることにより、異なるビーム直径を達成することができる。場合によっては、例えば、開口が絞りである場合、可変サイズの単一の開口が存在する。時として、絞りが虹彩絞りである。スポットサイズの変化は、光学素子のディザリングによっても実現できる。1つ以上のレンズと1つ以上の開口とがレーザーとサンプルステージとの間に位置される。
完全を期すために、当技術分野で知られているように(例えば[5])、細胞内分解能でのLAにおける標準レーザーは、エキシマレーザー又はエキシプレックスレーザーである。フッ化アルゴンレーザー(λ=193nm)を使用して適切な結果を得ることができる。これらのレーザーによる10~15nsのパルス持続時間は、適切なアブレーションを実現できる。
全体として、レーザーパルス周波数及び強度は、個々のレーザーアブレーションプルームの明確な検出を可能にするためにMS検出器の応答特性と組み合わせて選択される。このとき、小さなレーザースポットの使用と短いウォッシュアウト時間を有するサンプルチャンバとを組み合わせて、迅速で高分解能のイメージングが実現可能である。
レーザーシステムが2つ以上の波長のレーザー放射線を放出する場合には、これが2つ以上のレーザー源を使用することによって達成されてもよく、この場合、各レーザー源は、レーザーシステム内の他のレーザー源から放出されるレーザー放射線の波長とは異なる波長でレーザー放射線を放出するようになっている。
したがって、レーザーシステムは、213nmの波長でレーザー放射線を放出する第1のレーザー源と、266nmでレーザー放射線を放出する第2のレーザー源とを備えてもよい(それにより、第1のレーザー源は主にタンパク性材料を除去し、第2のレーザー源は主にDNA材料を除去する)。レーザー放射線の第3の波長でのアブレーションが望ましい場合には、レーザーシステムで第3のレーザー源が使用され、以下同様である。
時として、複数の波長のレーザー放射線を放出するためのレーザーシステムは、複数の波長のレーザー放射線を放出するようになっている単一のレーザー源を備える(すなわち、1つのレーザーが複数の波長のレーザー放射線を放出する;レーザーシステムは更なるレーザー源を含んでもよい)。一部のレーザー源は、当技術分野の標準として、高調波又は和周波発生などの波長変換方法を使用して、超連続発生により、光パラメトリック増幅器又は発振器(OPA/OPO)技術により、又は、幾つかの技術の組み合わせにより、所望の波長でレーザー放射線を放出する。例えば、Nd-YAGレーザーは、その基本周波数と称される1064nmの波長のレーザー放射線を生成する。この波長は、高調波生成の方法によって(必要に応じて)より短い波長に変換され得る。そのレーザー放射線の4次高調波は266nm(1064nm÷4)になり、5次高調波は213nmになる。したがって、4次高調波はDNA材料の高吸収の光学帯域を標的にでき、一方、5次高調波はタンパク質の高吸収の帯域を標的にできる。多くのレーザー配置では、5次高調波の生成が4次高調波の生成に基づいている。したがって、4次高調波は、5次高調波出力を生成するレーザーに既に存在するが、多くの場合、より低い高調波(より長い波長を伴う)がレーザーでフィルタ除去される。したがって、適切なフィルタを除去すると、複数の波長のレーザー放射線を放出することができる。このようなレーザーの例は、Coherent、Inc、RP Photonics、Lee Laserなどから市販されている。
高調波周波数のもう1つの有用な対は、基本波が約800nmのレーザーの4次及び3次高調波である。ここでの4次及び3次高調波はそれぞれ200nm及び266nmの波長を有する。そのようなレーザーの例は市販されている(Coherent、Inc.、Spectra Physics)。
レーザー放射線の第1波長とレーザー放射線の第2波長とが同じレーザー源によって生成される幾つかの状況において、波長は、高調波を介して生成されず、広い発光スペクトルを伴うレーザーから生成される。レーザーの発光スペクトルは、少なくとも10nm、例えば、少なくとも30nm、少なくとも50nm、又は、少なくとも100nmとなり得る。複数の波長の光は、白色光レーザー又はスーパーコンティニウムレーザーによって生成される。
レーザーアブレーション焦点
レーザーがサンプルから材料をアブレーションする効率を最大化するには、サンプルがレーザーの焦点に対して適切な位置に、例えば焦点にあるべきである。これは、焦点が、レーザービームが最小直径を有する、したがって、最も集中されたエネルギーを有する場所だからである。これは、様々な方法で実現され得る。第1の方法は、サンプルがそれに方向付けられたレーザー光の軸で(すなわち、レーザー光の経路を上下に/レーザー源に向かって及び離れて)所望のアブレーションを行なうのに十分な強度を光が有する所望のポイントへと移動され得る方法である。これに代えて又は加えて、レーザー光の焦点を移動させるために、レンズを使用でき、したがって、例えば縮小によって、サンプルの位置で材料をアブレーションできるレンズの効果的な能力を使用することができる。1つ以上のレンズがレーザーとサンプルステージとの間に位置される。単独で或いは2つの方法のいずれか又は両方と組み合わせて使用され得る第3の方法は、レーザーの位置を変更することである。
システムのユーザがサンプルからの材料のアブレーションに最も適した位置にサンプルを配置するのを支援するために、サンプルを保持するステージにカメラを向けることができる(以下で更に詳しく説明する)。したがって、本開示は、サンプルステージに向けられたカメラを備えるレーザーアブレーションサンプリングシステムを提供する。カメラにより検出される画像は、レーザーが合焦される同じポイントに合焦され得る。これは、レーザーアブレーション及び光学イメージングの両方のために同じ対物レンズを使用することによって実現され得る。2つの焦点を一致させることにより、ユーザは、光学画像の焦点が合っているときにレーザーアブレーションが最も効果的であると確信できる。サンプルに焦点を合わせるためのステージの正確な動きは、Physik Instrumente、Cedrat-technologies、Thorlabs、及び、他の供給元から入手可能なピエゾアクティベータを使用して行なうことができる。
更なる動作モードでは、レーザーアブレーションがサンプルキャリアを介してサンプルに向けられる。この場合、サンプル支持体は、サンプルをアブレーションするために使用されるレーザー放射線の周波数を(少なくとも部分的に)透過するように選択されるべきである。サンプルを介したアブレーションが図5に示される。サンプルを介したアブレーションは、特定の状況で利点がある。これは、このアブレーションモードが、サンプルからアブレーションされた材料のプルームに付加的な運動エネルギーを与え、それにより、アブレーションされた材料をサンプルの表面から更に遠ざけ、したがって、アブレーションされた材料が検出器での分析するためにサンプルから離れるように輸送されるのを促進できるからである。同様に、サンプル材料のスラグを除去する脱着ベースの方法も、キャリアを通過するレーザー放射線によって介在され得る。脱着されている材料のスラグに与えられる付加的な運動エネルギーは、スラグをサンプルキャリアから離れるように打ち出すのを支援し、したがって、スラグがサンプルチャンバを通じて流されるキャリアガスに同伴されるのを容易にし得る。
サンプルの3Dイメージングを達成するために、サンプル又はサンプルの所定の領域は、サンプルを完全に貫通しない第1の深さまでアブレーションされ得る。これに続いて、同じ領域を再び第2の深さまでアブレーションし、以下同様に、第3、第4等の深さまでアブレーションすることができる。このようにして、サンプルの3D画像を作成できる。場合によっては、第2の深さでのアブレーションに進む前に、第1の深さまでアブレーションするために全ての領域をアブレーションすることが好ましい場合がある。或いは、同じ場所で繰り返しアブレーションを行なって、アブレーションのために領域内の次の位置に進む前に、異なる深さを貫いてアブレーションしてもよい。いずれの場合も、MSで得られた信号のサンプルの位置及び深さへのデコンボリューションは、イメージングソフトウェアによって実行され得る。特定の態様において、高速レーザー(例えば、フェムト秒レーザー)は、各スポットをよりきれいにアブレーションする短くて強いレーザーバーストを与え、サンプルを破壊することなく(例えば、元のサンプルスポットの周りの最小限の熱分散で)そのスポットでのリサンプリングを可能にし得る。それぞれのレーザースポットごとに個別のピクセルを取得する場合、3D画像の作成に時間がかかることがある。したがって、関心領域(例えば、細胞など)の本明細書に記載のレーザー走査は、第2の深さでのROIの迅速なリサンプリングを可能にし得る。
複数の動作モードのためのレーザーシステム光学素子
決まり切った配置の問題として、光学部品を使用して、随意的に異なる波長のレーザー放射線を異なる相対位置に向けることができる。光学部品は、随意的に異なる波長のレーザー放射線を異なる方向からサンプルに向けるために配置することもできる。例えば、1つ以上の波長を上からサンプルに向けることができ、1つ以上の波長のレーザー放射線(随意的に異なる波長)を下から(つまり、サンプルキャリアとも称される、サンプルを支持する顕微鏡スライドなどの基板を通じて)向けることができる。これにより、同じ装置で複数の動作モードが可能になる。したがって、レーザーシステムは、随意的に異なる波長のレーザー放射線を異なる方向からサンプルに向けるように配置された光学部品の配置を備えることができる。したがって、光学部品は、その配置が随意的に異なる波長のレーザー放射線を反対方向からサンプルに向けるように配置されてもよい。この文脈における「反対の」方向は、上下からサンプルに垂直に向けられたレーザー放射線(これは180°反対になる)に限定されず、サンプルに垂直以外の角度でサンプルにレーザー放射線を向ける配置を含む。異なる方向からサンプルに向けられたレーザー放射線が平行である必要はない。時として、サンプルがサンプルキャリア上にあるとき、反射器の配置は、第1の波長のレーザー放射線をサンプルに直接に向け、第2の波長のレーザー放射線をサンプルキャリアを通じてサンプルに向けるように配置され得る。
レーザー放射線をサンプルキャリアを通じてサンプルに向けることは、サンプルをアブレーションするために使用され得る。しかしながら、幾つかのシステムにおいて、キャリアを通じてレーザー放射線を方向付けることは、脱着ベースのサンプリングシステムに関して以下でより詳細に論じられるように、「LIFTing」動作モードのために使用され得る(ただし、当業者であれば分かるように、アブレーション及びLIFTingは同じ装置によって実行され得るので、本明細書でレーザーアブレーションサンプリングシステムと称されるものは、脱着ベースのサンプリングシステムとしても作用し得る)。レーザー放射線を第1の方向からサンプルに集束させるために使用されるレンズのNA(開口数)は、レーザー放射線を(随意的に異なる波長で)第2の方向からサンプルに集束するために使用されるレンズのNAとは異なる場合がある。LIFTing動作(例えば、レーザー放射線がサンプルキャリアを介して方向付けられる場合)は、多くの場合、アブレーションが実行されているときよりも大きな直径のスポットサイズを使用する。
高NA対物レンズ及び反対側のアブレーション
特定の態様において、本方法及びシステムのサンプルチャンバは、高NA対物レンズ(例えば、レンズ)を備えてもよい。例えば、図12のサンプルチャンバ1206は、高NA対物レンズ1205を示す。レーザー放射線1216は、高NA対物レンズによって、サンプル支持体1207上のサンプル1215に集束され、その後、サンプル材料が質量分析器に送出される。高NA対物レンズは、空気レンズ、油浸レンズ、又は固体液浸レンズであってもよい。したがって、媒体1207は、空気(又は低圧真空)、油、又は、固体の透明な材料であってもよい。図12に示されるように、レーザー放射線1216及び高NA対物レンズは、サンプル1215からサンプル支持体1207の反対側に位置されてもよい。
液浸レンズを使用する場合(例えば、液浸レンズがサンプルからスライドの反対側に位置される場合)、サンプルは、300nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、75nm以下、50nm以下、又は、30nm以下の厚さを有する組織切片などの極薄サンプルであってもよい。そのような組織切片(特に厚さが100nm以下の組織切片)は、電子顕微鏡法の場合と同様又は同一の方法で調製されてもよい。例えば、組織は、極薄切片化の前に、樹脂(例えば、エポキシ、アクリル、又は、ポリエステル)で埋め込まれてもよい。
高NA対物レンズは、0.5以上、0.7以上、0.9以上、1.0以上、1.2以上、又は、1.4以上のNAを有してもよい。注目すべきことに、1.0を超えるNAは、空気又は真空よりも高い(例えば、1.0よりも高い)高屈折率を有する油又は固体の透明な材料などの媒体で達成されてもよい。高NA光学素子は、400nm以下、300nm以下、200nm以下、150nm以下、又は、100nm以下のスポットサイズを与えてもよい。
特定の態様において、高NA対物レンズによって集束されるレーザー放射線は、緑色又はUV範囲などで、波長が1μm以下である。レーザーは、本明細書に記載されているように、fsレーザーであってもよい。例えば、近赤外範囲のfsレーザーは、第2高調波で動作して緑色範囲のレーザー放射線をもたらしてもよく、又は、第3高調波で動作してUV範囲のレーザー放射線をもたらしてもよい。緑又はUVなどのより低い波長では、分解能がより高くなり得る場合がある(例えば、より小さいスポットサイズ)。レーザー放射線がサンプル支持体の全体にわたって移動してサンプルに衝突する場合には、サンプル支持体がレーザー放射線を透過させる必要がある。ガラス及びシリカは緑色の波長を透過するが、シリカはUVを透過する。スライドガラスの使用を可能にしながら分解能を最大化するために、IR fsレーザーを第2高調波(例えば、約50%の変換効率)で動作させて緑色のレーザー放射線をもたらしてもよい。注目すべきことに、市販の対物レンズは、多くの場合、緑の範囲で最良の補正を有する。
レーザーアブレーションサンプリングシステムのサンプルチャンバ
サンプルは、レーザーアブレーションを受けるときにサンプルチャンバに入れられる。サンプルチャンバは、サンプルを保持するステージを備える(通常、サンプルはサンプルキャリア上にある)。アブレーションされると、サンプル内の材料はプルームを形成し、また、ガス入口からガス出口へ向けてサンプルチャンバを通過するガスの流れは、アブレーションされた位置にあった標識原子を含むエアロゾル化された材料のプルームを運び去る。ガスは材料をイオン化システムに運び、イオン化システムが材料をイオン化して検出器による検出を可能にする。サンプル内の標識原子を含む原子は、検出器によって区別できるため、それらの検出により、プルーム内の複数の標的の有無が明らかになり、サンプル上のアブレーションされた軌跡にどの標的が存在したかが判別される。したがって、サンプルチャンバは、分析される固体サンプルをホストすることにおいて二重の役割を果たすが、イオン化及び検出システムへのエアロゾル化された材料の移動の開始点でもある。このことは、チャンバを通るガスの流れが、システムを通過するときにアブレーションされた材料のプルームがどのように広がるかに影響を与える可能性があることを意味する。アブレーションされたプルームがどのように広がるかの尺度は、サンプルチャンバのウォッシュアウト時間である。この数値は、サンプルからアブレーションされた材料が、サンプルチャンバを流れるガスによってサンプルチャンバから運び出されるまでにかかる時間の尺度である。
このように、レーザーアブレーションから生成された信号の空間分解能(つまり、後述するように、アブレーションが除去のためだけでなくイメージングのために使用される場合)は、(i)アブレーションされる全領域にわたって信号が統合される際のレーザーのスポットサイズ;プルームが生成される速度とレーザーに対するサンプルの動きとの関係、及び、(ii)前述のように連続したプルームからの信号の重なり合いを回避するべく、プルームが生成されている速度に対する、プルームを分析できる速度、を含む要因に依存する。したがって、プルームを可能な限り短い時間で分析できることにより、プルームの個別分析が望ましい場合には、プルームが重なる可能性が最小限に抑えられる(したがって、プルームをより頻繁に生成できる)。
したがって、ウォッシュアウト時間(例えば、100ミリ秒以下)が短いサンプルチャンバは、本明細書に開示される装置及び方法と共に使用するのに有利である。ウォッシュアウト時間が長いサンプルチャンバは、画像を生成できる速度を制限するか、或いは、連続するサンプルスポットから生じる信号間の重なり合いをもたらす(例えば、信号持続時間が10秒を超える引用文献vi)。そのため、エアロゾルウォッシュアウト時間は、総走査時間を増やすことなく高分解能を達成するための重要な制限要因である。ウォッシュアウト時間が100ミリ秒未満のサンプルチャンバは当技術分野で知られている。例えば、引用文献viiは、ウォッシュアウト時間が100ms未満のサンプルチャンバを開示する。サンプルチャンバは、30ms以下のウォッシュアウト時間を有する引用文献viii(引用文献ixも参照)に開示されており、それにより、高いアブレーション周波数(例えば、20Hzを超える)が可能であり、したがって、迅速な分析が可能である。他のそのようなサンプルチャンバは、引用文献xに開示される。引用文献xのサンプルチャンバは、標的に動作可能に近接して配置されるように構成されるサンプル捕捉セルを備え、サンプル捕捉セルは、捕捉セルの表面に形成される開口を有する捕捉キャビティを含み、この場合、捕捉キャビティは、開口を通じて、レーザーアブレーション部位から放出又は生成される標的材料及び捕捉キャビティ内に露出されるガイド壁を受けるように構成されるとともに、捕捉キャビティ内のキャリアガスの流れを入口から出口へ向けて捕捉キャビティ内に受けられる標的材料の少なくとも一部がサンプルとして出口へ移送されるように方向付けるべく構成される。引用文献xのサンプルチャンバ内の捕捉キャビティの体積は、1cm未満であり、0.005cm未満にすることができる。場合により、サンプルチャンバは、25ミリ秒以下、例えば20ミリ秒以下、10ミリ秒以下、5ミリ秒以下、2ミリ秒以下、1ミリ秒以下、500μs以下、200μs以下、100μs以下、50μs以下、又は、25μs以下のウォッシュアウト時間を有する。例えば、サンプルチャンバのウォッシュアウト時間は10μs以上であってもよい。一般に、サンプルチャンバのウォッシュアウト時間は5ミリ秒以下である。
完全を期すために、時として、サンプルチャンバのウォッシュアウト時間よりも頻繁にサンプルからプルームを生成することができ、また、それに応じて、結果として得られる画像が不鮮明になる(例えば、実行中の特定の分析のために最も高い想定し得る分解能が必要でないと見なされる場合)。これは、本明細書で説明するように、高分解能イメージングにとって望ましくない場合があるが、パルスのバーストがサンプルに向けられる(例えば、パルスは全てが細胞などの対象の特徴/関心領域に向けられる)とともに、結果として得られるプルームが連続事象として検出される場合には、特定のプルームからの信号の重なり合いがそのような懸案事項ではない。実際に、ここでは、バースト内の個々のアブレーション事象からのプルームが、事実上、単一のプルームを形成し、該プルームはその後に検出のために持ち運ばれる。
サンプルチャンバは、一般に、サンプル(及びサンプルキャリア)を保持してレーザー放射線のビームに対してサンプルを移動させる並進ステージを備える(本発明の幾つかの実施形態では、サンプルステージ及びレーザービームの両方が同時に移動してもよく、例えば、この場合、サンプルステージが一定の速度で移動しており、レーザー走査システムが、サンプルステージ上を移動する際に、サンプル全体にわたって一致したスイープでレーザーを方向付けており、例えば、サンプルステージがX軸で移動し、レーザースキャニングシステムがY軸で横切ってスイープし、その場合、レーザー走査システムによる動きの主ベクトルがステージの移動方向に対して直交する(ステージの動きを考慮するべくレーザースキャナの任意の動きを考慮する))。例えば、本明細書で論じられるLIFTing方法の場合のように、サンプルキャリアを介してサンプルへ向かうレーザー放射線の方向を必要とする動作モードが使用される場合、サンプルキャリアを保持するステージも使用されるレーザー放射線を透過すべきである。
したがって、サンプルは、レーザー放射線がサンプルに向けられる際にレーザー放射線に対向するサンプルキャリア(例えば、スライドガラス)の側に位置されてもよく、それにより、アブレーションプルームは、レーザー放射線がサンプルに向けられる側と同じ側で解放されるとともにこの側から捕捉される。或いは、サンプルは、レーザー放射線がサンプルに向けられる際にレーザー放射線とは反対のサンプルキャリアの側に位置されてもよく(すなわち、レーザー放射線は、サンプルに到達する前にサンプルキャリアを通過する)、また、アブレーションプルームは、レーザー放射線のとは反対の側で解放されるとともにこの側から捕捉される。
本発明の態様に係る装置内のサンプルステージの動きの制御は、レーザースキャナシステムの動きを調整するとともに随意的にレーザー放射線のパルスの放出を制御する同じ制御モジュール(例えば、パルスピッカーのためのトリガーコントローラ)によって調整されてもよい。
サンプルの様々な別個の領域内の特定の部分がアブレーションされる特定の用途を成すサンプルチャンバの1つの特徴は、レーザーに対してサンプルを軸x,y(すなわち、水平)で移動できる広範囲の移動(レーザービームがz軸でサンプルへと方向付けられる場合)であり、x軸及びy軸は互いに垂直である。サンプルチャンバ内でステージを移動させるとともにレーザーの位置を装置のレーザーアブレーションサンプリングシステム内で固定されたままにしておくことにより、より信頼できる正確な相対位置が実現される。移動範囲が広いほど、別個のアブレーション領域同士の距離を多くすることができる。サンプルは、サンプルが配置されるステージを移動することにより、レーザーに対して移動される。したがって、サンプルステージは、サンプルチャンバ内において、x及びy軸で少なくとも10mm、例えば、x及びy軸で20mm、x及びy軸で30mm、x軸及びy軸で40mm、x軸及びy軸で50mm、x軸及びy軸で75mmの移動範囲を有することができる。場合によっては、移動範囲は、それが標準的な25mm×75mmの顕微鏡スライドの表面全体をチャンバ内で分析できるようにする。勿論、細胞内アブレーションを達成できるようにするには、広範囲の動きに加えて、動きを正確にする必要がある。したがって、ステージは、x及びy軸においてでサンプルを10μm未満、例えば、5μm未満、4μm未満、3μm未満、2μm未満、1μm、又は、1μm未満、500nm未満、200nm未満、100nm未満の増分で移動させるように構成され得る。例えば、ステージは、少なくとも50nmの増分でサンプルを移動するように構成されてもよい。正確なステージの動きは、1μm±0.1μmなど、約1μmの増分で行なうことができる。市例えば、Thorlabs、Prior Scientific、及び、Applied Scientific Instrumentationから入手できるような市販の顕微鏡ステージを使用することができる。或いは、電動ステージは、Smaractが提供しているSLC-24ポジショナなど、必要な範囲の動きと適切に精密な動きとをもたらすポジショナに基づいて、構成要素から構築することができる。サンプルステージの移動速度も分析の速度に影響を与え得る。したがって、サンプルステージは、1mm/秒を超える動作速度、例えば、10mm/秒、50mm/秒、又は100mm/秒の動作速度を有する。
当然のことながら、サンプルチャンバ内のサンプルステージの動きの範囲が広い場合、ステージの動きに対応できるようにサンプルのサイズを適切に設定する必要がある。したがって、サンプルチャンバのサイズは、関与するサンプルのサイズに依存し、そのサイズは移動式サンプルステージのサイズを決定する。典型的なサイズのサンプルチャンバは、10×10cm、15×15cm、又は、20×20cmの内部チャンバを有する。チャンバの深さは、3cm、4cm、又は5cmであってもよい。当業者は、本明細書の教示内容に従って適切な寸法を選択することができる。レーザーアブレーションサンプラーを使用して生物学的サンプルを分析するためのサンプルチャンバの内部寸法は、サンプルステージの移動範囲よりも大きくなければならず、例えば、少なくとも5mm、例えば、少なくとも10mmでなければならない。これは、チャンバの壁がステージの端に近すぎる場合に、サンプルから離れてイオン化システムへ向かうアブレーションされた材料のプルームを取り込むチャンバを通過するキャリアガスの流れが乱流になる可能性があるからである。乱流はアブレーションされたプルームを乱すため、材料のプルームは、アブレーションされた材料の密な集団として残存するのではなく、アブレーションされて装置のイオン化システムに運び去られた後に広がり始める。アブレーションされた材料のより広いピークは、それがピークの重なり合いに起因する干渉につながるため、イオン化システム及び検出システムによって生成されるデータに悪影響を及ぼし、したがって、最終的には、アブレーションの速度がもはや実験的に関心がないような速度まで減速されなければ、空間的に殆ど分解されないデータを有する。
上記のように、サンプルチャンバは、ガス入口と、イオン化システムに材料を取り込むガス出口とを備える。しかしながら、サンプルチャンバは、実施されている特定のアブレーションプロセスにとって適切であると当業者により判断されるように、チャンバ内のガスの流れを方向付ける及び/又はガスの混合物をチャンバに供給するための入口又は出口として作用する更なるポートを含んでもよい。
カメラ
レーザーアブレーションのためのサンプルの最も効果的な位置取りを特定することに加えて、カメラ(帯電結合デバイスイメージセンサベース(CCD)カメラ又はアクティブピクセルセンサベースのカメラなど)又はその他の光検出手段をレーザーアブレーションサンプリングシステムに含めることにより、様々な更なる分析及び技術が可能になる。CCDは、光を検出し、それを画像の生成に使用できるデジタル情報に変換するための手段である。CCDイメージセンサには、光を検出する一連のコンデンサがあり、各コンデンサは決定された画像上のピクセルを表わす。これらのコンデンサは、入ってくる光子を電荷に変換することを可能にする。次に、CCDを使用してこれらの電荷を読み取り、記録された電荷を画像に変換できる。アクティブピクセルセンサ(APS)は、ピクセルセンサのアレイを含む集積回路から成るイメージセンサ、例えばCMOSセンサであり、各ピクセルは光検出器とアクティブ増幅器とを含む。
カメラは、本明細書で論じられる任意のレーザーアブレーションサンプリングシステムに組み込むことができる。カメラを使用してサンプルを走査し、特定の対象の細胞又は特定の関心領域(例えば特定の形態の細胞)を特定したり、或いは、抗原、細胞内又は構造に特異的なフルオロフォアを特定したりできる。特定の実施形態において、フルオロフォアは、検出可能な金属タグも含む組織化学的染色又は抗体である。そのような細胞が特定された時点で、レーザーパルスをこれらの特定の細胞に方向付けて、自動化されたプロセスで(この場合、システムは、対象の細胞などの特徴/領域の特定及びアブレーションの両方を行なう)又は半自動化されたプロセスで(この場合、システムのユーザ、例えば臨床病理学者が対象の特徴/領域を特定し、その後、システムが自動化された態様でアブレーションする)分析のために材料をアブレーションすることができる。これにより、特定の細胞を分析するためにサンプル全体をアブレーションする必要なく、対象の細胞を特異的にアブレーションできるため、分析を実行できる速度を大幅に高めることができる。これは、アブレーションを実行するのにかかる時間の観点から、しかし、特に、データから画像を構築することに関して、アブレーションからのデータを解釈するのにかかる時間の観点から、生物学的サンプルを分析する方法の効率につながる。データから画像を構築することは、イメージング手順の中で最も時間のかかる部分の1つであるため、収集されたデータをサンプルの関連部分からのデータに最小化することにより、分析の全体的な速度が向上する。
カメラは、共焦点顕微鏡からの画像を記録する場合がある。共焦点顕微鏡法は、焦点面から離れた背景情報(光)からの干渉を低減する機能など、多くの利点を提供する光学顕微鏡法の一種である。これは、焦点が合っていない光やまぶしさを取り除くことによって起こる。共焦点顕微鏡法を使用して、染色されていないサンプルの細胞の形態、又は細胞が個別の細胞であるか、細胞の塊の一部であるかを評価できる。多くの場合、サンプルは蛍光マーカーで特異的に標識化される(標識抗体や標識核酸など)。これらの蛍光マーカーは、特定の細胞集団(特定の遺伝子及び/又はタンパク質の発現など)又は細胞上の特定の形態的特徴(核やミトコンドリアなど)を染色するために使用でき、また、適切な波長の光で照らされると、これらの領域のサンプルを特異的に特定できる。したがって、本明細書に記載の幾つかのシステムは、サンプルを標識するために使用される標識内のフルオロフォアを励起するためのレーザーを備えることができる。或いは、LED光源を使用してフルオロフォアを励起することもできる。非共焦点(広視野など)蛍光顕微鏡法を使用して、生物学的サンプルの特定の領域を特定することもできるが、共焦点顕微鏡法よりも分解能が低くなる。
蛍光とレーザーアブレーションとを組み合わせた技術例として、生物学的サンプル中の細胞の核を、蛍光部分に結合した抗体又は核酸で標識化することができる。したがって、蛍光標識を励起し、次にカメラを使用して蛍光の位置を観察及び記録することにより、アブレーションレーザーを核又は核物質を含まない領域に特異的に向けることができる。サンプルを核領域と細胞質領域とに分割すると、細胞化学の分野で特に応用できるようになる。イメージセンサ(CCD検出器又はアクティブピクセルセンサ、例えばCMOSセンサなど)を使用することにより、蛍光の位置をサンプルのx、y座標と相関させた後にアブレーションレーザーをその位置に向ける制御モジュール(コンピュータ又はプログラムされたチップ)を使用することにより、対象の特徴/関心領域を特定した後にそれらをアブレーションするプロセスを完全に自動化することができる。このプロセスの一部として、イメージセンサによって撮影された第1の画像は、低い対物レンズ倍率(低い開口数)を有していてもよく、これにより、サンプルの広い領域を調査することができる。これに続いて、より高い倍率の対物レンズへの切り換えを使用して、より高い倍率の光学イメージングによって蛍光を発することが決定された対象の特定の特徴に狙いを定めることができる。次に、蛍光を発するように記録されたこれらの特徴は、レーザーによってアブレーションされてもよい。最初に低開口数レンズを使用すると、被写界深度が深くなるという更なる利点があり、そのため、サンプル内に埋め込まれた特徴を、最初から高開口数レンズでスクリーニングするよりも高い感度で検出できる。
蛍光イメージングが使用される方法及びシステムでは、サンプルからカメラへの蛍光の放出経路は、1つ以上のレンズ及び/又は1つ以上の光学フィルタを含み得る。1つ以上の蛍光標識からの選択されたスペクトル帯域幅を通過させるようになっている光学フィルタを含むことにより、システムは、蛍光標識からの発光に関連する色収差を処理するように適合される。色収差は、レンズが異なる波長の光を同じ焦点に集束させることができない結果である。したがって、光学フィルタを含めることにより、光学素子の背景が低減され、結果として得られる光学画像はより高い分解能を有する。カメラに到達する望ましくない波長の放出光の量を最小限に抑えるための更なる方法は、国際公開第2005/121864号パンフレットで説明されたシステムと同種の光学フィルタによって透過される波長の光の透過及び焦点合わせのために設計された一連のレンズを使用することによって、レンズの色収差を意図的に利用することである。
光学画像の精度が、サンプルをアブレーションするためにアブレーションレーザーを向けることができる精度を決定するので、より高い分解能の光学画像は、光学技術とレーザーアブレーションサンプリングとのこの結合において有利である。
したがって、本明細書に開示される幾つかの実施形態では、本発明の態様の装置がカメラを備える。このカメラは、対象の特徴/関心領域でパルスのバーストを発射して対象の特徴/関心領域からサンプル材料のスラグをアブレーションする又は脱着するなどしてその後にアブレーションされ得る(又はLIFTingによって脱着され得る-以下を参照)サンプル、例えば特定の細胞の特徴/領域を特定するためにオンラインで使用できる。パルスのバーストがサンプルに向けられる場合、検出された結果として生じるプルームの材料は連続事象のようなものとなり得る(それぞれの個々のアブレーションからのプルームは、事実上、単一のプルームを形成し、これはその後に検出のために実行される)。対象の特徴/関心領域内の位置からの集合プルームから形成されたサンプル材料のそれぞれの雲を一緒に分析することができるが、それぞれの異なる対象の特徴/関心領域からのプルーム内のサンプル材料は依然として離散的に保たれる。すなわち、(n+1)番目の対象の特徴/関心領域のアブレーションが開始される前に、n番目の対象の特徴/関心領域からのサンプル材料を可能にするべく、異なる対象の特徴/関心領域のアブレーション間に十分な時間が残されている。
蛍光分析及びレーザーアブレーションサンプリングの両方を組み合わせる更なる動作モードでは、レーザーアブレーションをそれらの位置に向ける前にスライド全体の蛍光を分析する代わりに、サンプル上のスポット(サンプルをアブレーションするのではなくサンプル内の蛍光部分を励起するだけの低いエネルギー)でレーザーからパルスを発射することができ、また、予期される波長の蛍光発光が検出される場合、そのスポットにおけるサンプルを、そのスポットにレーザーを全エネルギーで発射することによりアブレーションでき、結果として生じるプルームが後述するように検出器によって分析される。これには、分析のラスターモードが維持されるという利点があるが、蛍光をパルス化して検査し、(領域が対象であるかどうかを判断するために検出器からのイオンデータを分析して解釈するのにかかる時間ではなく)蛍光から直ちに結果を取得することができ、それにより、
先と同様に、重要な位置のみを分析の対象にすることができるため、速度が向上される。したがって、複数の細胞を含む生物学的サンプルをイメージングする際にこの戦略を適用すると、以下のステップ、すなわち、(i)サンプル中の複数の異なる標的分子を1つ以上の異なる標識原子及び1つ以上の蛍光標識で標識化して、標識サンプルをもたらすステップと、(ii)1つ以上の蛍光標識を励起するためにサンプルの既知の位置を光で照らすステップと、(iii)その位置に蛍光があるかどうかを観察して記録するステップと、(iv)蛍光がある場合には、その位置にレーザーアブレーションを方向付けてプルームを形成するステップと、(v)プルームを誘導結合プラズマ質量分析に晒すステップと、(vi)サンプル上の1つ以上の更なる既知の位置に関してステップ(ii)~(v)を繰り返すステップであって、プルーム内の標識原子の検出が、アブレーションされた領域のサンプルの画像の構築を可能にする、ステップと、を実行することができる。
場合によっては、サンプル又はサンプルキャリアは、特定の位置に光学的に検出可能な(例えば、光学顕微鏡法又は蛍光顕微鏡法によって)部分を含むように改変され得る。次に、蛍光位置を使用して、装置内のサンプルを位置的に配向させることができる。そのようなマーカー位置の使用は、例えば、サンプルが視覚的に「オフライン」で、-すなわち本発明の態様の装置以外の装置の一部で検査された可能性がある場合に有用性を見出す。そのような光学画像は、対象の特徴/関心領域を伴う光学画像が強調表示されてサンプルが本発明の態様に係る装置へ移される前に、例えば医師によって特定の細胞に対応する対象の特徴/関心領域でマークされ得る。ここで、注釈付き光学画像内のマーカー位置を参照することにより、本発明の態様の装置は、カメラを使用して対応する蛍光位置を特定できるとともに、それに応じてレーザーパルスの位置に関してアブレーション及び/又は吸収(LIFTing)計画を計算することができる。したがって、幾つかの実施形態において、本発明の態様は、上記のステップを実行することができる配向コントローラモジュールを備える。
場合によっては、対象の特徴/関心領域の選択は、本発明の態様の装置のカメラによって撮影されたサンプルの画像に基づいて、本発明の態様の装置を使用して実行され得る。
非線形顕微鏡法
別のイメージング技術は、2光子励起顕微鏡法(非線形又は多光子顕微鏡法とも称される)である。この技術は、一般に、近赤外光を使用してフルオロフォアを励起する。IR光の2つの光子は、それぞれの励起事象ごとに吸収される。組織内の散乱はIRによって最小限に抑えられる。更に、多光子吸収により、バックグラウンド信号が強く抑制される。最も一般的に使用されるフルオロフォアは、400~500nmの範囲の励起スペクトルを有するが、2光子蛍光を励起するために使用されるレーザーは近赤外範囲にある。フルオロフォアが2つの赤外線光子を同時に吸収する場合、フルオロフォアは励起状態に引き上げられるのに十分なエネルギーを吸収する。次に、フルオロフォアは、その後に検出され得る使用されたフルオロフォアのタイプに依存する波長の単一光子を放出する。
レーザーを使用して蛍光顕微鏡法用のフルオロフォアを励起する場合、このレーザーは、生物学的サンプルから材料をアブレーションするために使用されるレーザー光を生成するのと同じレーザーである場合があるが、サンプルから材料をアブレーションするのに十分でないパワーで使用される。時として、フルオロフォアは、レーザーがサンプルをアブレーションする光の波長によって励起される。他の場合、例えば、レーザーの異なる高調波を生成して異なる波長の光を取得することによって、又は、サンプルをアブレーションするために使用される高調波とは別に、前述の高調波生成システムで生成された異なる高調波を利用することによって、異なる波長が使用されてもよい。例えば、Nd:YAGレーザーの4次及び/又は5次高調波を使用する場合、基本的な高調波又は2次から3次の高調波を蛍光顕微鏡法のために使用できる。
非線形顕微鏡法を統合するイメージングマスサイトメトリーシステムは、2光子蛍光、第二高調波発生(SHG)、3光子蛍光(3PF)、第3高調波発生(THG)、又はコヒーレント反ストークスラマン散乱(CARS)のうちの1つ以上をもたらし得る。特定の態様において、サンプルは、造影剤又はフルオロフォアでタグ付けされたSBPなどによる、1つ以上の形態の非線形顕微鏡法によるイメージングのために準備されてもよい。サンプルは、質量タグ付きSBPを伴って更に準備されてもよい。
第二高調波発生(SHG)では、信号がコラーゲン含有組織で最も強く生成される。この信号は、レーザー焦点のコラーゲンの種類とその3次元配向とに関する豊富な情報を与えることが分かってきた。このような情報は、他の顕微鏡法技術では取得できない。第3高調波の生成において、信号は、異なる材料間の界面が存在するサンプルで一意に生成される。例えば、この信号は、細胞膜で生成され、つまり、細胞のセグメンテーションの精度を向上させるために使用できる。2光子励起蛍光では、信号は「通常の」蛍光と非常によく似た挙動をとるが、レーザー焦点の外側で信号が生成されないため、結果として得られる画像の信号対雑音比が一般的にはるかに優れている点が異なる。誘導ラマン散乱又はコヒーレント反ストークスラマン散乱(SRS、CARS)において、信号は、特定の周波数で共鳴する光学活性振動結合を伴う特定の化学物質(固有又は導入)の濃度によって生成される。一例として、最近の研究では、一連の操作された化学物質の30-plex SRSイメージングを示してきた。この信号のもう1つの強力な用途は、細胞壁や細胞内の脂肪滴などの高脂質濃度の検出である。
図13は、ミネソタ大学生物科学部がオンラインで公開したコラーゲン組織の第二高調波発生(SHG)画像である。
図14は、イリノイ大学のBiophotonicsイメージング研究所によってオンラインで公開された乳がん組織の非線形顕微鏡法画像を示す。乳がん組織は、様々な非線形顕微鏡法信号を使用してイメージングされた。SHGは、細胞外マトリックス(主にコラーゲンで構成されている)を強調し、その構造と方向を明らかにするように見える。THGは、細胞界面及び脂質(すなわち、脂肪滴)の濃度を強調するように見える。2光子及び3光子励起蛍光画像は、組織に導入された蛍光染色又は固有のフルオロフォアからの自家蛍光のいずれかを示す。コヒーレント反ストークスラマン散乱(CARS、SRSと同様の手法)は、組織に固有の又は研究者によって導入された可能性のある特定の化学物質の濃度を示す。これらの信号のそれぞれは、研究者にとって大きな利益となる可能性があり、イメージングマスサイトメトリーからの情報を非常に補完する可能性がある。
図15に示されるように、非線形顕微鏡法を統合するシステムは、他の実施形態及び図に記載されているものに追加の要素を備えてもよい。例えば、システムは、収集対物レンズ1514、光分割光学素子1516、及び、光電子増倍管などの統合検出器1515を含んでもよい。非線形顕微鏡法は(例えば、特定の特徴の検出のために)透光の利益を享受する場合があるが、非線形顕微鏡法を統合するシステムは透光をもたらさない場合がある。例えば、サンプル支持体1507の片側の配向光学素子(両方の照明光学素子及び収集対物レンズ1514、光分割光学素子1516、及び統合検出器1515を含む)は、サンプルの上方に配置された注入器がアブレーションプルームを質量分析器により多く直接に注入できるようにする。そのような注入器は、本明細書に記載されるように、短く及び/又は真っ直ぐであってもよい。
図15は、イメージングマスサイトメトリーで非線形顕微鏡法信号を捕捉するために使用できるセットアップの図を示す。3つの統合検出器1515によって検出された3つの信号など、複数の異なる非線形顕微鏡法信号を検出することができる。これらの信号には、例えば、第二高調波発生、第三高調波発生、及び/又は、二光子励起蛍光が含まれ得る。誘導ラマン散乱(SRS)又はCARSがセットアップに付加されるようになっている場合には、レーザー源も変更する必要がある。これは、明確な波長差を伴う2つのコヒーレントで同期したレーザービームがSRS又はCARS信号を生成するために使用されるからである。したがって、SRS又はCARSを統合するイメージングマスサイトメトリーシステムは、所定の波長差で2つのコヒーレントレーザービームを与えるレーザー源1501を含んでもよい。具体的には、レーザー源1501は、一次パルスとコヒーレントな共伝搬するとともに一次パルスと比較して特定の波長シフトを伴う二次パルスを生成することができる。CARSでは、レーザー源を特定の標的(分子のクラスなど)の化学遷移周波数に合わせて調整できる。CARS顕微鏡法を統合したイメージングマスサイトメーターは、ノッチフィルタを含む。
レーザースキャンに基づくサンプリング及び分析方法
レーザースキャナシステム自体の説明で前述したように、システムはサンプル全体のレーザービームの迅速な走査を可能にし、それにより、サンプルをアブレーション及び分析できる速度を上げることができるだけでなく、任意の形状のアブレーションも可能にし、そのため、隣接する領域/細胞から材料をアブレーションすることなく、不規則な形状の細胞を含む特定の個々の領域をアブレーションできる。
したがって、本発明の態様は、生物学的サンプルなどのサンプルを分析する方法において、
(i)サンプルのレーザーアブレーションを行なうステップであって、レーザー放射線がレーザー走査システムを使用してサンプルステージ上のサンプルへと方向付けられ、複数のプルームを形成するためにアブレーションが複数の位置で行なわれる、ステップと、
(ii)プルームをイオン化及び質量分析に晒すステップであって、プルーム内の原子の検出がサンプルの画像の構築を可能にし、随意的に、複数の位置が複数の既知の位置である、ステップと、
を含む方法を提供する。
また、本発明の態様は、複数の細胞を含むサンプルに関してマスサイトメトリーを行なう方法において、
(i)サンプル中の複数の異なる標的分子を1つ以上の異なる標識原子で標識化して、標識サンプルをもたらすステップと、
(ii)サンプルのレーザーアブレーションを行なうステップであって、レーザー放射線がレーザー走査システムを使用してサンプルステージ上のサンプルへと方向付けられ、複数のプルームを形成するためにアブレーションが複数の位置で行なわれる、ステップと、
(iii)プルームをイオン化及び質量分析に晒すステップであって、プルーム内の原子の検出がサンプルの画像の構築を可能にし、随意的に、複数の位置が複数の既知の位置である、ステップと、
を含む方法も提供する。
サンプル、適切な標識、及び、他の関連する教示を標識付けするための典型的な方法は、本明細書の以下の標識付け部分節で提供される。
多くの用途は、本明細書に記載のレーザー走査方法及びシステムによって独自に有効化又は強化される。
生物学的サンプルは、小さい及び/又は不規則な特徴(例えば、ミクロンスケールの細胞)を有してもよく、広い視野での分析から利益を得ることができる。本明細書で使用されるように、特徴は、組織の領域、個々の細胞、細胞内成分、細胞の膜、細胞間界面、及び/又は、細胞外マトリックス、並びに、セクション又は画像内の異なる組織又は細胞(例えば、健康な組織、腫瘍、腫瘍浸潤リンパ球などのリンパ球、骨格筋又は平滑筋などの筋肉、血管系などの上皮、及び/又は間質又は線維などの結合組織)を含んでもよい。そのような特徴は、本明細書に記載されるように、レーザー走査によって取得され得る(例えば、選択的に取得され得る)。広い視野(例えば、mm又はcmスケール)及び/又は多くのサンプルにわたるそのような特徴の分析は、各ピクセルが約1umであって周囲のピクセルと区別される必要がある従来のIMCでは数時間又は数日かかる場合がある。本方法及びシステムでは、レーザー走査(随意的にステージ移動と組み合わせて)により、個々の特徴の迅速な取得が可能になる場合がある。特定の態様において、システム及び/又は方法は、毎秒10、50、100、200、500、1000、2000又は5000細胞を超える細胞取得速度を可能にする。特徴は、光学顕微鏡法(例えば、明視野及び/又は蛍光顕微鏡法)によって自動的に特定され、本明細書に記載されるようにレーザー変調によってサンプリングされ得る。特定の態様において、造影剤は、そのような特徴の特定を改善し得る。
特定の態様において、方法及び/又はシステムは、関心領域(ROI)を特定するために、広い視野にわたってサンプリングすることができる。具体的には、質量タグの存在をfsレーザーを使用した高速走査によって検出でき、それにより、サンプルの薄層のみを除去し、質量タグ付きサンプルの残りをそのまま残すことができる(更なる分析に適している)。間離間した(隣接していない)スポットからのサンプリングにより、質量タグの空間分布の最初の調査と、より綿密なサンプリングのため(例えば、ピクセルごと又は繰り返しの走査のため)の関心領域の特定とが可能になる場合がある。このような最初の問い合わせの間、レーザーを走査してステージを連続的に移動させることができる。したがって、ROIを特定してIMCによって更に調査するべく、広い視野及び/又は多数のサンプル(例えば、合計が平方センチメートルを超える)を最初に迅速に(例えば、1時間、30分、10分、又は5分未満で)調査できる。
特定の態様において、浮遊細胞のサンプル(末梢血単核細胞(PBMC)、非付着性細胞培養物、又は無傷の組織又は付着性細胞培養物からの脱凝集細胞など)が、細胞塗抹標本として分析のために提供されてもよい。このような細胞は、質量タグ付きSBPを用いて懸濁液中で染色し、対象の方法及びシステムによる分析のために表面(スライドなど)に適用することができる。細胞塗抹標本は、較正及び/又は正規化のために、元素標準粒子と一緒に支持体上に提供され得る。これに代えて又は加えて、生物学的サンプル中の遊離分析物を検出するために、アッセイバーコードビーズに沿って細胞塗抹標本を提供することができる。例えば、PBMCを含む細胞塗抹標本は、PBMCと同じ血液サンプルからの遊離分析物に結合されたアッセイバーコードビーズと一緒に提供され得る。特定の態様において、表面は、細胞及び/又はビーズを保持するための、ミクロンスケールのウェルなどの捕捉部位を有してもよい。
アッセイバーコードビーズは、個別に検出可能であり、ミクロンスケールであってもよい。そのようなビーズは、ビーズ表面上のSBPを特定する、それらの表面又はそれらの内部にアッセイバーコードを備えてもよい。アッセイバーコード同位体の独自の組み合わせにより、ビーズ表面のSBPを特定できるため、異なるSBPを持つ各アッセイバーコードビーズは、アッセイバーコードによって区別される。アッセイバーコードビーズは、生体液(例えば、細胞上清、細胞溶解物、又は血清)と混合され、サンプル中の遊離分析物(例えば、サイトカイン)に結合されてもよい。レポーター質量タグに結合したレポーターSBPは、細胞表面のSBPに結合した分析物に結合する場合がある。アッセイバーコードは分析対象物を区別するため、同じレポーター質量タグをアッセイバーコードビーズ全体で使用できる。
特定の態様では、均質な細胞株又はPBMCなどの対照細胞サンプルをスライドに適用することができる(例えば、細胞塗抹標本、組織の切片として、又は付着細胞として)。対照細胞サンプルは、染色などのサンプル処理の変動を正規化するために使用できる。対照細胞サンプルは、以前に特徴付けられたサンプル(例えば、マーカーの既知の発現レベルを有する)に由来してもよく、及び/又は、他のサンプルと一緒に複数のスライドにわたって使用されてもよい。対照細胞サンプルは、正規化及び/又は定量化、及び/又は、分類に使用されてもよく、サンプル染色の変動を制御してもよい。例えば、元素標準は、機器の感度の変動を考慮するために質量タグの較正、正規化、及び/又は定量化に使用できるが、対象のサンプルと一緒に染色された対照細胞は、サンプル染色の変動を考慮するための正規化を可能にし得る。予め規定された対象の集団(例えば、PBMC)を有する対照細胞を使用して、1つ以上の対象のサンプル中の同様の集団の細胞を分類してもよい。対照細胞は、細胞を対照細胞として特定することができる1つ以上の標識原子(サンプルバーコードなど)を有してもよい。
対照細胞サンプルは、例えば、対象のサンプル(例えば、同じスライド上)もまたパラフィン化されたサンプルである場合、パラフィン化された細胞サンプルであってもよい。特定の態様において、対照細胞サンプルは、サンプル処理の再現性を追跡するために使用されるサンプルスライド上のパラフィン化された細胞株であってもよい。或いは、対照細胞サンプルは、例えば、対象のサンプル(例えば、同じスライド上)も凍結組織サンプルである場合、凍結組織切片であってもよい。いずれの場合も、対照細胞サンプルは、染色ステップを含め、目的のサンプルと一緒に処理することができる。これに代えて又は加えて、対照細胞サンプルを事前に染色することができる。例えば、事前に染色された対照細胞サンプルは、染色が類似しているかどうかを決定するために、対象のサンプルと一緒に染色された対照細胞サンプルに対するものとなり得る(及び随意的に、染色及び/又はサンプル調製の他の態様からの変動を正規化する)。
アッセイバーコードビーズの内部は、金属同位体の特定可能な組み合わせなどのアッセイバーコードを含んでもよい。ビーズの内部は、固体金属コア、金属キレートポリマー内部、ナノコンポジット内部、又はハイブリッド内部など、様々な適切な構造のいずれかであってもよい。固体金属コアは、1つ以上の金属元素及び/又は同位体の混合物(例えば、溶液)を高熱及び/又は圧力に晒すことによって形成されてもよい。ナノコンポジット構造が、ナノ粒子/ナノ構造の組み合わせ(例えば、マトリックス)を含んでもよい(例えば、それぞれが異なる物理的特性を含むとともに1つ以上のアッセイバーコード要素/同位体に寄与する及び/又はアッセイバーコード要素/同位体を含む他のナノ粒子にスキャフォールドを提供する)。ビーズの内部は、アッセイバーコード金属を捕捉する及び/又はアッセイバーコード金属をキレート化するポリマーを含んでもよい(例えば、DOTA、DTPA、又はそれらの誘導体などのペンダント基を介して)適切なポリマー骨格は、分岐(例えば、超分岐)であってもよく又はマトリックスを形成してもよい。幾つかの態様において、ポリマーは、エマルジョン状態で又は制御されたリビング重合によって形成されてもよい。特定の態様において、アッセイビーズの内部は、アッセイ生体分子(例えば、オリゴヌクレオチド又は抗体)に付着する前に(例えば、表面を横切る重合によって)官能化される必要がある不活性表面(例えば、固体金属表面など)を有してもよい。アッセイビーズの表面は、ポリマー、表面から離れたアッセイ生体分子(例えば、SBP)を離間させる及び/又はコロイド安定性(例えば、PEGリンカー)を加えるためのリンカー、アッセイ生体分子及び/又はサンプルバーコードを付着する(又はこれらに付着される)ための官能基を含んでもよい。
複数のサンプルからの細胞塗抹標本及び/又はアッセイバーコードビーズの細胞は、サンプルがバーコード化されたときに組み合わされてもよい。サンプルバーコードは、染色に使用されない(すなわち、SBPの質量タグに関連付けられていない)複数の同位体を含んでもよい。サンプルバーコードは、サンプルバーコード同位体を細胞又はビーズに送出する1つ以上の小分子又はSBPを含んでもよい。同位体の独自の組み合わせが、各サンプルのビーズや細胞に適用される。細胞又はビーズをマスサイトメトリー(LA-ICP-MSなど)で分析する場合、バーコード同位体の独自の組み合わせにより、細胞又はビーズの元のサンプルが特定される。サンプルは、異なる供給源からのものであってもよく、及び/又は、異なる処理及び/又は染色条件に晒されてもよい。特定の態様において、生細胞バーコード(例えば、チオール反応性テルルベースのバーコード、又は広く発現された表面マーカーに対する元素タグ付き抗体)を使用することができ、この生細胞バーコードは、サンプル中の生細胞(例えば、新鮮な血液)もバーコード化するという利点を加えることができるこの手法は、生細胞(例えば、PBMC)の刺激又は別の処理と一緒に実行され得る。場合によっては、サンプルバーコードは、生細胞をバーコード化できる可能性がある。場合によっては、サンプルバーコードは、生細胞に対して無毒であるなど、生細胞に対して無害である可能性がある。
場合によっては、バーコード試薬は、アッセイバーコードとサンプルバーコードとの幾つかの独自の組み合わせでバーコード試薬を準備することにより、事前に構成された形式で提供され得る。このような場合、それぞれの固有のバーコード試薬は、ウェルプレートの別個のウェルなどの別個の容器に保存され得る。一例では、特定の縦列(又は横列)に沿った全てのウェルが同じアッセイバーコードを共有し、一方、特定の横列(又は縦列)に沿った全てのウェルが同じサンプルバーコードを共有するように、ウェルプレートを確立できる。他の例では、充填された各ウェルが、特定の固有のサンプルバーコード及び多数のアッセイバーコードの様々な組み合わせを有するバーコード試薬を含むように、ウェルプレートを確立することができる。したがって、第1のウェルは、全てが第1のサンプルバーコードを有するがそれぞれが異なるアッセイバーコードを有するバーコード試薬を含んでもよく、また、第2のウェルは、全てが第2のバーコードを有するがそれぞれが異なるアッセイバーコードを有するバーコード試薬を含んでもよい。場合によっては、事前構成されたバーコード試薬により、数千のグループの固有のビーズの製造が必要になり得る。
染色を自動化するために、表面上の生物学的サンプル(例えば、細胞を含む)は、細胞の表面の全体にわたって質量タグ付きSBPを流すことによって(例えば、自動フローシステムを使用して)染色されてもよい。
幾つかの実施形態において、レーザーアブレーションを実行することによって生成されたプルームは、個別にイオン化及び質量分析に晒される。この場合、各プルームは画像の個別のピクセルを表わす。しかしながら、他の例では、レーザー放射線のパルスのバーストがサンプルの様々な場所にすばやく連続して向けられるため、各場所からのプルームは個別に分析されるのではなく、イオン化され、サンプル材料の単一の雲として質量分析に晒される。このような方法は、検出器での1つの事象として完全なセルをアブレーションするために使用できる。したがって、場合によっては、本発明の態様の上記の方法では、レーザー放射線パルスのバーストがサンプル上の近接した領域に向けられ、レーザー放射線パルスのバーストから生成されたプルームがイオン化され、連続事象として検出される(つまり、プルームが重なり合う)。フェムト秒レーザーなどのレーザーと高速移動レーザースキャニングアレイ(例えば、AOD及び/又はEODに基づく)とを使用すると、ナノ秒のパルス持続時間を伴うレーザーのパルス持続時間で例えば直径1μmの複数のアブレーションスポットを使用して任意の形状(単一セルなど)のアブレーションが可能になる。したがって、幾つかの実施形態において、この方法は、各レーザーパルスに対して3μm以下、約2μm以下、約1μm以下のスポットサイズを使用して実行される。レーザー放射線のバーストが少なくとも3つのレーザーパルスを含み、各レーザーパルス間の持続時間は、1msより短い、例えば、500μsより短い、250μsより短い、100μsより短い、50μsより短い、10μsより短い、1μsより短い、500nsより短い、250nsより短い、100nsより短い、50nsより短い、又は、約10ns以下である。レーザー放射線のバーストは、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50個、又は、少なくとも100個のレーザーパルスを含んでもよい。レーザーパルス間のそのような短い時間を達成するためには、本発明の態様の装置の議論のレーザーの部分節で前述されたものなど、タイミング間隔に適切な繰り返しレートを伴う高繰り返しレートレーザーを使用する必要がある。例えば、各パルスが約10ns離れているパルスのバーストの場合、レーザーは100MHz(つまり、1秒÷10ns)の繰り返しレートを有するべきである。
幾つかの実施形態において、レーザー走査システムは、アブレーションのために使用されるレーザー放射線のビームにサンプルに対する第1の相対移動(例えば、Y軸)を与える。幾つかの実施形態において、レーザー走査システムは、アブレーションのために使用されるレーザー放射線のビームにサンプルに対する第1の相対移動及び第2の相対移動(例えば、Y軸及びX軸)を与え、この場合、第1及び第2の相対移動が直交する。幾つかの実施形態では、レーザー走査システム内の単一のポジショナが両方の動きを与える(例えば、直交する電極のセットが取り付けられたEOD)。他の実施形態では、第1のポジショナが第1の相対移動を与え、第2のポジショナが第2の相対移動を与える。このセットアップは、例えば、ガルバノメーターミラーの対が使用される場合又は2つの直交して配置されたAODが使用される場合に見られる。したがって、幾つかの実施形態において、方法は、サンプルをアブレーションするために使用されるレーザー放射線のビームに第1及び随意的に第2の相対移動を与えるために、存在する場合、少なくとも第1及び随意的に第2のポジショナを制御することを含む。
前述したように、AODを使用してレーザー放射線のビームの強度を変調することもできる。したがって、先に開示された本発明の態様の方法の幾つかの実施形態において、方法は、AODによってレーザー放射線のビームの強度を制御するステップを含む。更に、ミラーベースのポジショナ及び固体ポジショナの両方を備える実験セットアップでは、固体ポジショナを制御して、ミラーベースのポジショナがサンプルにレーザー放射線を向ける場所の位置エラーやノイズによって引き起こされる不正確さを修正できる。
本発明の1つの利点は、図7~図9の走査装置の移動経路に例示されるように、レーザー走査システムが、サンプルステージを一方向(例えばX)に一定速度で移動させ、次にレーザー走査システムがアブレーションステージによるX軸移動の中心線の上下でアブレーションすることを可能にすることである。更に、X軸及びY軸の両方での移動を可能にするレーザー走査システムでは、走査により、サンプルステージ上のサンプルのX軸に沿った移動を補償できる。したがって、幾つかの実施形態では、分析されるサンプルがサンプルステージ上にある。場合によっては、サンプルステージは、レーザー走査システムに対して第1の方向に一定速度で移動し、それにより、レーザー走査システムに対するサンプルの第1の相対移動(例えば、X軸)を与え、また、レーザー走査システムは、第2の相対移動(Y軸など)を与える。言い換えると、ステージがサンプルを第1の方向で移動させてもよく、また、その位置は、第2の方向でレーザービームに相対移動を導入できる(すなわち、主に直交する、例えば直交するなど、平行ではない)。幾つかの実施形態において、レーザー走査システムは、サンプルステージの相対移動を補償し、それにより、サンプル(すなわち、レーザー走査システムの単一のスイープによってY軸で生成されたスポットがX軸で互いに対してオフセットされないサンプル)上のアブレーションスポットに関して規則的な直線的ラスターパターンが維持される。したがって、幾つかの実施形態において、サンプルステージは、少なくともx軸で移動可能であり、ポジショナは、サンプルステージ上のレーザービームの経路に少なくともy軸で偏向を導入するようになっている。幾つかの実施形態において、ポジショナは、サンプルステージ上へのレーザービームの経路にx軸で偏向を導入するようにもなっており、又は、(ii)装置は、サンプルステージ上へのレーザービームの経路にx軸で偏向を導入するようになっている第2のポジショナを備え、随意的に、前記レーザー走査システムのポジショナは、サンプルステージの動きも制御する制御モジュールによって制御される。これらの実施形態において、サンプルステージは、x軸及びy軸、並びに、随意的にz軸で移動可能である。
しかしながら、レーザー走査システムがシステムで可能な全振幅にわたって全掃引を実行する必要はない。代わりに、個々の細胞などの対象の特定の特徴のみをアブレーションするために、任意のアブレーションパターンをアブレーションすることができる。
アブレーションされるべき領域を特定できるようにするための対象の細胞の特定は、一般に、細胞の視覚的画像の検査を伴う。例えば、単純化された分析のために、細胞塗抹標本では、塗抹標本上に個別の細胞として存在する個々の細胞を分析することが望ましく(すなわち、ダブレット、トリプレット、又はより高い番号の細胞クラスターとしてではなく)、この決定はサンプルの目視検査によって容易に達成できる。以下に論じられるように、本明細書に開示される特定の実施形態において、サンプルは、可視光範囲における細胞の検査から明らかなマーカーについて検査され得る。場合によっては、共焦点顕微鏡法で特定された細胞の形態が、対象の細胞を特定するのに十分な場合がある。他の例において、サンプルは、1つ以上の組織化学的染色又は蛍光標識に結合した1つ以上のSBPで染色することができる(場合によっては、標識原子にも結合するSBPであってもよい)。これらの蛍光マーカーは、特定の細胞集団(特定の遺伝子及び/又はタンパク質の発現など)又は細胞上の特定の形態的特徴(核やミトコンドリアなど)を染色するために使用でき、また、適切な波長の光で照らされると、これらの領域のサンプルを特異的に特定できる。場合によっては、特定の領域からの特定の種類の蛍光がないことが特徴的であってもよい。例えば、細胞膜タンパク質を標的とする第1の蛍光標識を使用して細胞を広く特定することができるが、その後、ki67抗原(MKI67遺伝子によってコードされる)を標的とする第2の蛍光標識は、増殖細胞と非増殖細胞を区別することができる。したがって、第2の標識蛍光からの蛍光を欠く細胞を標的とすることにより、非複製細胞を特に分析の標的にすることができる。したがって、幾つかの実施形態において、本明細書に記載のシステムは、サンプルを標識化するために使用される標識内のフルオロフォアを励起するためのレーザーを含むことができる。或いは、LED光源を使用してフルオロフォアを励起することもできる。非共焦点(例えば、広視野)蛍光顕微鏡法を使用して、生物学的サンプルの特定の領域を特定することもできるが、共焦点顕微鏡法よりも認可異能が低くなる。
レーザーを使用して蛍光顕微鏡法用のフルオロフォアを励起する場合、幾つかの実施形態では、このレーザーは、生物学的サンプルから材料をアブレーションするために(及びLIFTing(脱着)のために)使用されるレーザー放射線を生成するのと同じレーザーであるが、フルエンスで使用されるサンプルからの材料のアブレーション又は脱着を引き起こすのに十分ではない。幾つかの実施形態において、フルオロフォアは、サンプルのアブレーション又は脱着に使用されるレーザー放射線の波長によって励起される。他の場合、例えば、レーザーの異なる高調波を利用して異なる波長のレーザー放射線を得ることによって、異なる波長を使用することができる。フルオロフォアを励起するレーザー放射線は、アブレーション及び/又はliftingレーザー源とは異なるレーザー源によって与えられ得る。
イメージセンサ(CCD検出器又はアクティブピクセルセンサ、例えばCMOSセンサなど)を使用することにより、蛍光の位置をサンプルのx、y座標と相関させた後にその位置の細胞がリフトされる前にアブレーションレーザー放射線をその位置に向ける制御モジュール(コンピュータ又はプログラムされたチップ)を使用することにより、対象の特徴/関心領域を特定した後にそれらをアブレーションするプロセスを完全に自動化することができる。このプロセスの一部として、幾つかの実施形態において、イメージセンサによって撮影された第1の画像は、低い対物レンズ倍率(低い開口数)を有し、これにより、サンプルの広い領域を調査することができる。これに続いて、より高い倍率の対物レンズへの切り換えを使用して、より高い倍率の光学イメージングによって、関心があると判断された、例えばサンプルが蛍光性の標識試薬で染色されてしまった場合に蛍光を発する、特定の対象の特徴に狙いを定めることができる。例えば蛍光を発するために関心があると記録されるこれらの特徴は、その後、アブレーション/脱着されてもよい。最初に低開口数レンズを使用すると、被写界深度が深くなるという更なる利点があり、そのため、サンプル内に埋め込まれた特徴を、最初から高開口数レンズでスクリーニングするよりも高い感度で検出できる。
対象の特徴/関心領域を特定する分析は、本発明の態様の装置によって実施することができ、又は、装置の外部で実施することができる。例えば、スライドは、医師又は組織学者によって本発明の態様の装置から離れて分析されてもよく、また、スライド上のどこでアブレーションされるべきかという位置情報は、装置にフィードバックされ得る。
したがって、幾つかの実施形態において、上記の方法は、サンプル上の対象の1つ以上の特徴と、対象の1つ以上の特徴の位置とを特定するステップを含む。例えば、本発明の態様の幾つかの方法は、
(i)サンプル上の対象の1つ以上の特徴を特定するステップと、
(ii)サンプル上の対象の1つ以上の特徴の位置情報を記録するステップと、
(iiI)サンプルのレーザーアブレーションを実行するステップであって、複数のプルームを形成するために、対象の1つ以上の特徴の位置情報を用いて、レーザー放射線が、レーザー走査システムを使用してサンプルステージ上のサンプルに方向付けられるステップと、
(iv)プルームをイオン化及び質量分析に晒すステップであって、プルーム内の原子の検出がサンプルの画像の構築を可能にする、ステップと、
を含む。
本発明の態様の幾つかの方法は、
(i)サンプル中の複数の異なる標的分子を1つ以上の異なる標識原子で標識化して、標識サンプルをもたらすステップと、
(ii)サンプル上の対象の1つ以上の特徴を特定するステップと、
(ii)サンプル上の対象の1つ以上の特徴の位置情報を記録するステップと、
(iiI)サンプルのレーザーアブレーションを実行するステップであって、複数のプルームを形成するために、対象の1つ以上の特徴の位置情報を用いて、レーザー放射線が、レーザー走査システムを使用してサンプルステージ上のサンプルに方向付けられるステップと、
(iv)プルームをイオン化及び質量分析に晒すステップであって、プルーム内の原子の検出がサンプルの画像の構築を可能にする、ステップと、
を含む。
例えば、本発明の態様の実施形態は、細胞などの対象の特徴の位置を特定すること、及び、細胞の全部又は一部をサンプリングするためにレーザーパルスのバーストを方向付けることとを含んでもよい。本明細書に記載されるように、レーザーパルスのバーストは、対象の特徴内の複数の既知の位置にレーザー走査システムによって向けられ、また、レーザーパルスのバーストから生じるプルームは、単一の事象として検出され得る。
場合によっては、位置情報は、サンプルキャリア上の対象の特徴の位置に関する絶対測定値の形態を成してもよい。他の例において、対象の特徴の位置情報は、相対的な態様で記録されてもよい。例えば、サンプルの視覚的画像は、幾つかの特徴が蛍光を発するUV光での照射に続いて記録されてもよい。対象の特徴の位置は、蛍光特徴のパターンに対する位置情報として記録されてもよい。それに応じてアブレーションされるようになっている位置を特定するための相対位置情報の使用は、装置内のサンプルの不正確な位置決めに起因するエラーを低減する。そのような基準パターンに関して対象の特徴の位置を計算するための方法は、例えば、重心座標系を使用することによって、当業者にとって標準的である。
場合によっては、対象の特徴、例えば生物学的サンプル中の細胞は、他の生物学的材料、例えば、細胞外マトリックス又は対象の細胞のアブレーションに影響を与え得る他の細胞によって囲まれる場合がある。ここで、レーザースキャナシステムを使用するアブレーションは、対象の細胞を取り巻く材料を除去するために使用されてもよく、それにより、レーザーパルスのバーストは、連続事象として又は細胞内分解能で対象の細胞をアブレーションすることができる。時として、対象の特徴(例えば、対象の細胞)の周りの領域を除去するために実行されたアブレーションからのデータが記録されない。時として、データは周辺領域のアブレーションから記録される。周辺領域から得られ得る有用な情報は、タンパク質やRNA転写物などの標的分子が周辺の細胞や細胞間環境に存在するものを含む。これは、直接的な細胞間相互作用が一般的であり、周囲の細胞でどのタンパク質などが発現されているかが対象の細胞の状態について有益である可能性がある固体組織サンプルをイメージングするときに特に興味深い場合がある。
したがって、本明細書に開示される幾つかの実施形態において、方法は、対象の細胞がアブレーションされる前に、最初にレーザーアブレーションを実行して対象の特徴を取り巻くサンプル材料を除去することを含む、対象の特徴の位置情報を使用して細胞をアブレーションすることを含む。幾つかの実施形態において、特徴は、サンプルの光学画像の検査によって特定され、随意的に、サンプルが蛍光標識で標識化され、蛍光標識が蛍光を発するような条件下でサンプルが照射される。
さもなければ、一般にこの方法において、レーザーアブレーションは、本明細書に関連する変更に照らして、例えば、Giesen et al,2014及び国際公開第2014169394号パンフレットに既に記載された態様で実行される(例えば、ICPを使用してサンプル材料をイオン化することは必須ではなく、TOF MS検出器を使用することも必須ではない)。例えば、以下で議論されるように、方法が実行されてもよいが、質量分析検出をOES検出に置き換えてもよい。
また、本明細書に開示される方法は、本明細書に記載のプロセスを実行するようにコンピュータ(又は他の電子デバイス)をプログラムするために使用できる命令を記憶した持続性機械可読媒体を含むコンピュータプログラムプロダクトとして提供されてもよい。機械可読媒体としては、ハードドライブ、フロッピーディスク、光ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ROM、RAM、EPROM、EEPROM、磁気カード又は光学カード、固体メモリデバイス、又は、電子命令を保存するのに適した他のタイプの媒体/コンピュータ可読媒体を挙げることができるが、これらに限定されない。したがって、本発明の態様は、本明細書に開示されるような方法を実行するための命令を含む機械可読媒体も提供する。移送導管
特定の態様において、移送導管(注入器とも称される)は、レーザーアブレーションサンプリングシステムとイオン化システムとの間にリンクを形成するとともに、サンプルのレーザーアブレーションによって生成されたサンプル材料のプルームをレーザーアブレーションサンプリングシステムからイオン化システムへ輸送できる。移送導管の一部(又は全て)は、例えば、適切な材料をドリルで貫通して、プルームを通過させるためのルーメン(例えば、円形、長方形、又は他の断面を有するルーメン)を生成することによって形成されてもよい。移送導管は、時として、0.2mm~3mmの範囲の内径を有する。時として、移送導管の内径はその長さに沿って変化し得る。例えば、移送導管は、端部が先細になっていてもよい。移送導管の長さは、1センチメートル~100センチメートルの範囲であってもよい。場合によっては、長さが10センチメートル以下(例えば、1~10センチメートル)、5センチメートル以下(例えば、1~5センチメートル)、又は、3センチメートル以下(例えば、0.1~3センチメートル)である。時として、移送導管のルーメンは、アブレーションシステムからイオン化システムまでの全距離又はほぼ全距離に沿って真っ直ぐである。また、時として、移送導管のルーメンは、距離全体にわたって真っ直ぐではなく、向きが変わる。例えば、移送導管は、漸進的な90度巻回部を形成してもよい。この構成により、レーザーアブレーションサンプリングシステムでのサンプルのアブレーションによって生成されたプルームは、移送導管入口の軸が真上を向いている間、最初は垂直面内を移動でき、イオン化システム(例えば、対流冷却を利用するために一般的に水平に向けられたICPトーチ)に近づくにつれて水平方向に移動できる。移送導管は、プルームが入るか又は形成される入口開口から少なくとも0.1センチメートル、少なくとも0.5センチメートル、又は、少なくとも1センチメートルの距離にわたって真っ直ぐであってもよい。大まかに言えば、一般に、移送導管は、レーザーアブレーションサンプリングシステムからイオン化システムに材料を移送するのにかかる時間を最小限に抑えるように適合される。
1つ以上のガス流が、イオン化システムにアブレーションプルームを送出してもよい。例えば、ヘリウム、アルゴン、又は、それらの組み合わせが、イオン化システムにアブレーションプルームを送出してもよい。特定の態様では、別個のガス流がサンプルチャンバ及び注入器に供給されてもよく、これらのガス流は、注入器内のアブレーションプルームの同伴時に混合する。場合によっては、注入器の入口がサンプルチャンバ内で開始するときなど、1つのガスの流れのみが存在する。
移送導管の入口及び/又は開口
移送導管は、レーザーアブレーションサンプリングシステム内の入口を含んでもよい(特に、レーザーアブレーションサンプリングシステムのサンプルチャンバ内であり、したがって、その入口は、サンプルチャンバの主要なガス出口にも相当する)。移送導管の入口は、レーザーアブレーションサンプリングシステム内のサンプルからアブレーションされたサンプル材料を受けて、それをイオン化システムに移送する。場合によっては、レーザーアブレーションサンプリングシステムの入口は、イオン化システムへの移送導管に沿った全てのガス流の供給源である。場合によっては、レーザーアブレーションサンプリングシステムから材料を受けるレーザーアブレーションサンプリングシステムの入口は、第2の「移送」ガスが別個の移送流入口から流れる導管の壁の開口である(例えば、国際公開第2014146724号パンフレット及び国際公開第2014147260号パンフレットに開示されているように)。この場合、移送ガスはかなりの割合を占め、多くの場合、ガスの大部分がイオン化システムに流れる。レーザーアブレーションサンプリングシステムのサンプルチャンバはガス入口を含む。この入口を通ってチャンバにガスを流すと、移送導管の入口を通ってチャンバから出るガスの流れが生じる。このガスの流れは、アブレーションされた材料の個々のプルームを捕捉することができるとともに、プルームが移送導管(例えば、移送導管の開口を貫通して、本明細書ではサンプルコーンと称される円錐の形状を成してもよい)に入ってサンプルチャンバから出てチャンバの上方を通過する導管内へ入る際にプルームを同伴することができる。この導管は、別個の移送流入口(移送流矢印で示される図の左側)から導管内へ流れるガスも有する。移送流入口、レーザーアブレーションサンプリングシステム入口を備えるとともにアブレーションされたサンプル材料をイオン化システムに向けて運ぶ移送導管を開始する構成要素は、フローセルとも称され得る(国際公開第2014146724号パンフレット及び国際公開第2014147260号パンフレットにあるように)。
移送フローは、少なくとも3つの役割を果たす。すなわち、移送フローは、イオン化システムの方向で移送導管に入るプルームをフラッシングして、プルーム材料が移送導管の側壁に接触するのを防ぐ;移送フローは、サンプル表面の上方に「保護領域」を形成して、アブレーションが制御された雰囲気下で実行されるようにする;及び、移送フローは、移送導管内の流速を増大させる。通常、捕捉ガスの粘度は、移送ガスの粘度よりも低い。これは、移送導管の中央にある捕捉ガスにサンプル材料のプルームを閉じ込め、レーザーアブレーションサンプリングシステムの下流にあるサンプル材料のプルームの拡散を最小限に抑えるのに役立つ(流れの中央にあるため、輸送速度はより一定でほぼフラットである)。ガスは、例えば、これらに限定されないが、アルゴン、キセノン、ヘリウム、窒素、又はこれらの混合物であってもよい。一般的な移送ガスはアルゴンである。アルゴンは、プルームが移送導管の壁に到達する前にプルームの拡散を停止するのに特に適している(また、アルゴンは、イオン化システムがアルゴンガスベースのICPである装置での機器感度の向上にも役立つ)。捕捉ガスは好ましくはヘリウムである。しかしながら、捕捉ガスは、他のガス、例えば、水素、窒素、又は、水蒸気によって置き換えられてもよく或いはそれらを含んでもよい。25℃では、アルゴンが22.6μPasの粘度を有し、一方、ヘリウムが19.8μPasの粘度を有する。場合によっては、捕捉ガスがヘリウムであり、移送ガスがアルゴンである。
国際公開第2014169394号パンフレットに記載されるように、サンプルコーンの使用は、標的と移送導管のレーザーアブレーションサンプリングシステム入口との間の距離を最小化する。サンプルと、捕捉ガスがコーンを流れることができるコーンのポイントとの間の距離が短くなるため、これにより、乱流の少ないサンプル材料の捕捉が改善され、アブレーションされたサンプル材料のプルームの広がりが減少する。したがって、移送導管の入口は、サンプルコーンの先端の開口である。コーンはサンプルチャンバ内へ突出する。
サンプルコーンの随意的な変更は、サンプルコーンを非対称にすることである。コーンが対称である場合、ちょうど中央で全ての方向からのガスの流れが中和されるため、サンプルコーンの軸でサンプルの表面に沿ってガスの全体的な流れがゼロになる。コーンを非対称にすることにより、サンプル表面に沿ってゼロ以外の速度がもたらされ、それにより、レーザーアブレーションサンプリングシステムのサンプルチャンバからのプルーム材料のウォッシュアウトが支援される。
実際には、コーンの軸でサンプルの表面に沿って非ゼロのベクトルガス流を引き起こすサンプルコーンの任意の修正を使用することができる。例えば、非対称円錐は、円錐の軸でサンプルの表面に沿って非ゼロのベクトルガス流を生成するようになっている、切り欠き又は一連の切り欠きを備えてもよい。非対称コーンは、コーンの軸でサンプルの表面に沿って非ゼロのベクトルガス流を生成するようになっているオリフィスをコーンの側面に含んでもよい。このオリフィスは、コーンの周りのガスの流れのバランスを崩し、それによって、標的のコーンの軸でサンプルの表面に沿って非ゼロのベクトルガスの流れを再び生成する。円錐の側面は、2つ以上のオリフィスを備えてもよく、1つ以上の切り欠き及び1つ以上のオリフィスの両方を含んでもよい。切り欠き及び/又はオリフィスの縁部は、乱流を防止又は最小化するために、一般に、平滑化、丸み付け、又は、面取りされている。
コーンの非対称性の異なる方向は、捕捉及び移送ガスの選択及びその流量に応じて、異なる状況に適切であり、また、それぞれの方向ごとにガス及び流量の組み合わせを適切に特定することは当業者の能力の範囲内である。
上記の適応の全ては、本発明の態様で使用されるように、単一の非対称サンプルコーンに存在し得る。例えば、円錐は、非対称に切り詰められ、2つの異なる楕円形の円錐の半分から形成されてもよく、円錐は、非対称に切り詰められ、1つ以上のオリフィスなどを備えてもよい。
したがって、サンプルコーンは、レーザーアブレーションサンプリングシステムでサンプルからアブレーションされた材料のプルームを捕捉するようになっている。使用時、サンプルコーンは、既に前述したように、例えば、可動サンプルキャリアトレイ上のレーザーアブレーションサンプリングシステム内でサンプルを操作することによって、サンプルに動作可能に近接して位置される。前述したように、アブレーションされたサンプル材料のプルームは、サンプルコーンの狭い端にある開口を通って移送導管に入る。開口の直径は、a)調整可能となり得る、b)アブレーションされたプルームが移送導管に入る際の摂動を防ぐように寸法付けられ得る、及び/又は、c)アブレーションされたプルームの断面直径にほぼ等しくなり得る。
テーパー導管
内径が小さいチューブでは、同じ流量のガスがより高速で移動する。したがって、より小さな内径を有するチューブを使用することにより、ガス流で運ばれるアブレーションされたサンプル材料のプルームは、所定の流量でより迅速に所定の距離にわたって輸送され得る(例えば、レーザーアブレーションサンプリングシステムから移送導管内のイオン化システムへ)。個々のプルームをどれだけ迅速に分析できるかを決める重要な要因の1つは、アブレーションによる生成から装置の質量分析計構成要素で成分イオンが検出されるまでの時間(検出器での過渡時間)にプルームがどれだけ拡散したかである。したがって、狭い移送導管を使用することにより、アブレーションと検出との間の時間が短縮され、それにより、拡散が発生する可能性のある時間が少なくなるため、拡散が減少し、最終的に、検出器での各アブレーションプルームの過渡時間が削減される。過渡時間が短いということは、単位時間当たりにより多くのプルームを生成及び分析でき、それにより、より高品質及び/又はより高速の画像を生成できることを意味する。
テーパーは、移送導管の長さの前記部分に沿った移送導管の内径の漸進的な変化を含んでもよい(すなわち、管の内径は、管を貫く断面で、入口(レーザーアブレーションサンプリングシステムの端部にある)へ向かう部分の端部から出口(イオン化システムの端部にある)へ向かう部分に沿って減少する)。通常、アブレーションが発生する場所の近くの導管の領域は、比較的広い内径を有する。テーパーの前の導管のより大きな体積は、アブレーションによって生成された材料の閉じ込めを容易にする。アブレーションされた粒子がアブレーションされたスポットから飛散するとき、それらは高速で移動する。ガスの摩擦によりこれらの粒子は遅くなるが、プルームは、1ミリメートル未満から1ミリメートルのスケールで依然として広がる可能性がある。壁までの十分な距離を確保することは、流れの中心近くのプルームの封じ込めに役立つ。
広い内径部分は、短い(1~2mm程度)だけであるため、プルームがより狭い内径の移送導管のより長い部分でより多くの時間を費やす場合、全体的な過渡時間に大きく寄与しない。したがって、より大きな内径部分がアブレーション生成物を捕捉するために使用され、また、より小さな内径導管がこれらの粒子をイオン化システムに迅速に輸送するために使用される。
狭い内径セクションの直径は、乱流の開始に対応する直径によって制限される。レイノルズ数は、丸いチューブと既知の流れに関して計算され得る。一般に、4000を超えるレイノルズ数は、乱流を示すため、避ける必要がある。2000を超えるレイノルズ数は、遷移流(非乱流と乱流の間)を示し、したがって、回避することも望ましい場合がある。ガスの所定の質量流量に関して、レイノルズ数は導管の直径に反比例する。移送導管の狭い内径セクションの内径は、一般に2mmよりも狭く、例えば、1.5mmよりも狭く、1.25mmよりも狭く、1mmよりも狭いが、導管内の1分当たり4リットルのヘリウムの流れが4000を超えるレイノルズ数を有する直径よりも大きい。
移送導管の一定直径部分とテーパーとの間の移行部における粗い又は角のある縁部は、ガス流に乱流を引き起こす可能性があり、通常は回避される。
犠牲流れ
より高い流量では、導管で乱流が発生するリスクが高まる。これは、特に、移送導管の内径が小さい(例えば1mm)場合に当てはまる。しかしながら、従来使用されているアルゴンの代わりにヘリウムや水素などの軽質ガスを使用がガスの移送流として使用されれば、内径の小さい移送導管で高速移送(最大で300m/s及び300m/sを超えて)を実現することができる。
高速移送は、許容可能なレベルのイオン化が行なわれることなくアブレーションされたサンプル材料のプルームをイオン化システムに通過させるようにし得る限り、問題を提示する。低温ガスの流れが増えると、トーチの端部でプラズマの温度が下がるため、イオン化のレベルが低下する可能性がある。サンプル材料のプルームが適切なレベルまでイオン化されない場合には、アブレーションされたサンプル材料から情報が失われる-その成分(任意の標識原子/元素タグを含む)を質量分析計によって検出できないからである。例えば、ICPイオン化システムにおけるトーチの端部にあるプラズマをサンプルが非常に速く通過できるため、プラズマイオンは、サンプル材料に作用してそれをイオン化するのに十分な時間を持たない。狭い内径の移送導管における高流量、高速移送によって引き起こされるこの問題は、移送導管の出口に流れ犠牲システムを導入することによって解決され得る。流れ犠牲システムは、移送導管からガスの流れを受けるとともに、その流れの一部(アブレーションされたサンプル材料の任意のプルームを含むフローの中央部分)のみをイオン化システムに通じる注入器内へと前方に通過させるようになっている。流れ犠牲システムにおける移送導管からのガスの分散を容易にするために、移送導管出口を外側に広げることができる。
流れ犠牲システムはイオン化システムの近傍に位置されるため、流れ犠牲システムからイオン化システムにつながるチューブ(例えば注入器)の長さは短い(例えば、通常は、約50cmなど、数十cm程度の長さを有する移送導管の長さに比べて、長さが約1cm)。したがって、全体的な輸送システムの比較的遅い部分がはるかに短いため、流れ犠牲システムからイオン化システムにつながるチューブ内のより低いガス速度は、総移送時間に大きな影響を与えない。
殆どの構成では、体積流量でガスの速度を低下させる方法として、流れ犠牲システムからイオン化システムへと通過するチューブ(例えば注入器)の直径を大幅に大きくすることは望ましくない或いは場合によっては想定し得る。例えば、イオン化システムがICPである場合、流れ犠牲システムからの導管は、ICPトーチの中央に注入器チューブを形成する。より広い内径の注入器を使用すると、アブレーションされたサンプル材料のプルームをプラズマの中心(プラズマの最も高温で最も効率的にイオン化する部分)に正確に注入できないため、信号品質が低下する。内径が1mm以下(例えば、600μm以下、500μm以下、又は、400μm以下など、内径が800μm以下)の注入器が強く推奨される。他のイオン化技術は、3次元空間の比較的小さな体積内でイオン化されるべき材料に依存し(イオン化に必要なエネルギー密度を小さな体積でしか達成できないため)、したがって、内径が広い導管により、導管を通過するサンプル材料の大部分は、エネルギー密度がサンプル材料をイオン化するのに十分なゾーンの外側にある。したがって、流れ犠牲システムからイオン化システムへ至る細い直径のチューブは、非ICPイオン化システムを伴う装置でも使用される。前述したように、サンプル材料のプルームが適切なレベルまでイオン化されない場合には、アブレーションされたサンプル材料から情報が失われる-その成分(任意の標識原子/元素タグを含む)を質量分析計によって検出できないからである。
犠牲流れとイオン化システムの入口に入る流れとの間の望ましい分割比を確保するのに役立つべく圧送を使用できる。したがって、場合によっては、流れ犠牲システムは、犠牲流れ出口に取り付けられるポンプを備える。制御されたリストリクタをポンプに付加して、犠牲流れを制御することができる。場合によっては、流量犠牲システムは、リストリクタを制御するようになっているマスフローコントローラも備える。
高価なガスが使用される場合、犠牲流れ出口からポンプで送出されたガスは、既知のガス精製方法を使用して一掃されて元の同じシステム内へと再循環され得る。ヘリウムは、前述のように輸送ガスとして特に適しているが、高価であり、したがって、システム内のヘリウムの損失を減らすことが有利である(つまり、ヘリウムがイオン化システムに渡されてイオン化されるとき)。したがって、ガス浄化システムが、流れ犠牲システムの犠牲流れ出口に接続されることがある。
イオン化システム
元素イオンを生成するには、噴霧されたサンプルを気化、噴霧、及び、イオン化できるハードイオン化技術を使用する必要がある。
誘導結合プラズマトーチ
一般に、分析されるべき材料をそれが分析のために質量検出器に通される前にイオン化するために誘導結合プラズマが使用される。誘導結合プラズマは、電磁誘導によって生成される電流によってエネルギーが供給されるプラズマ源である。誘導結合プラズマは、複数(例えば、3つ)の同心円管から成ってもよいトーチ内で維持され、最も内側の管が注入器として知られている。
図11は、チューブなどの注入器に接続され得るとともにICPトーチとも称される誘導結合プラズマ(ICP)源へのサンプル送出のために装着されるレーザーアブレーション源を含むレーザーアブレーション質量サイトメーターの典型的な概略図である。ICPトーチのプラズマは、サンプルを気化及びイオン化して、飛行時間型質量分析計や磁気セクター型質量分析計などの質量分析器によって受けられ得るイオンを形成する。レーザーアブレーション源は、レーザー及びサンプルチャンバの両方を含んでもよい。レーザーアブレーション源は、本明細書に記載されるようなポジショナを含んでもよい。特定の態様において、レーザーアブレーション源は、図1~図5のいずれか1つに記載されるシステムであってもよい。注入器は、レーザーアブレーション源のサンプルチャンバに結合されてもよい。
[i]Tanner et al.Cancer Immunol Immunother(2013)62:955-965
[ii]Hutchinson et al.(2005)Anal.Biochem.346:225-33.
[iii]Seuma et al.(2008)Proteomics 8:3775-84.
[iv]Giesen et al.(2011)Anal.Chem.83:8177-83.
[v]Giesen et al.(2014)Nature Methods.11:417-422.
[vi]Kindness et al.(2003)Clin Chem 49:1916-23.
[vii]Gurevich&Hergenroder(2007)J.Anal.At.Spectrom.、22:1043-1050.
[viii]Wang et al.(2013)Anal.Chem.85:10107-16.
[ix]国際公開第2014/146724号パンフレット
[x]国際公開第2014/127034号パンフレット

注入器は、本明細書に記載のサンプルチャンバに結合されてもよい。注入器は、レーザーアブレーションによってサンプルから解放された材料が注入器へと運ばれるように、サンプル支持体の上方に位置される入口又は開口を備えてもよい。サンプルチャンバは、アブレーションプルームを注入器へと運ぶための1つ以上のガス入口を含んでもよく、また、注入器は、注入器に捕捉されたアブレーションプルームをICPトーチに輸送するための移送ガス入口(例えば、シースガス入口)を含んでもよい。特定の態様では、システムが単一のガス源を含んでもよい。
注入器は、サンプルチャンバの外側に入口と出口を有する場合もあれば、サンプルチャンバ内に入口を有する場合もある。例えば、注入器がレーザー放射線と同じサンプル(又はサンプル支持体)の側に位置される場合、注入器は、レーザー放射線が通過するウインドウと、レーザー放射線が通過するとともに結果として生じるレーザーアブレーションプルームがICPトーチへの送出のために注入器によって捕捉される開口とを含んでもよい。或いは、注入器は、レーザーアブレーションのためにレンズ、ウインドウ、又は、他の光学素子を貫通して延びてもよい。他の例において、レーザー放射線は、注入器からサンプル(又はサンプルチャンバ)の反対側に向けられてもよく、また、サンプル支持体を通過してもよい。レーザー放射線がサンプル支持体を通過してサンプルに衝突するとき、注入器は、レーザー放射線の側とは反対側にある、レーザーアブレーションの部位よりも近位側の入口を備えてもよい。特定の態様において、注入器の入口又は開口は、サンプルコーンの形態を成してもよい(例えば、狭い端部がレーザーアブレーションの部位へと方向付けられる)。
注入器は、剛性であってもよく、レーザーアブレーションの部位からICPトーチまで直線状に延びてもよい。注入器は、短くてもよく、20未満、10未満、5cm未満、又は、3cm未満の長さであってもよい。真っ直ぐな及び/又は短い注入器は、レーザーアブレーションプルームをICPトーチに送出する時間を短縮でき、及び/又は、レーザーアブレーションプルームの広がりを低減でき、それにより、より明確なレーザーアブレーションプルームを毎秒分析できるようにする。特定の態様において、レーザーアブレーション光学素子、照明光学素子、イメージセンサ(例えば、CCD又はCMOS)などの光学素子は、注入器が前述したようにアブレーションプルームを短い距離にわたってICP-MSシステムに送出できるように注射器から離れて(例えば、注入器からサンプル支持体の反対側に)位置されてもよい。
流体工学及び/又は光学素子の態様は、注入器の開口又は入口からICP-MSシステムへの短い及び/又は直線の経路を可能にするように構成されてもよい。例えば、光学素子の幾つか又は全ては、注入器からのサンプル支持体の反対側に方向付けられてもよい。これに代えて又は加えて、注入器は、1つ以上のレンズ及び/又はミラーなどの光学素子を通過してもよい。
プラズマを維持する電磁エネルギーを与える誘導コイルは、トーチの出力端の周りに位置される。交番電磁場が1秒間に何百万回も極性を反転させる。アルゴンガスが2つの最も外側の同心円管の間に供給される。自由電子が放電によって導入され、これらの自由電子は、交流電磁場で加速され、その場合、アルゴン原子と衝突してそれらをイオン化させる。定常状態において、プラズマは、主に、自由電子及びアルゴンイオンをごく少量伴うアルゴン原子から成る。
2つの最も外側のチューブ間のガスの流れがプラズマをトーチの壁から遠ざけるため、ICPをトーチ内に保持できる。注入器(中央のチューブ)と中間のチューブとの間に導入されるアルゴンの第2の流れが、注入器からプラズマを除去した状態に保つ。ガスの第3の流れが、トーチの中央にある注入器に導入される。分析されるべきサンプルは、注入器を介してプラズマに導入される。
ICPは、サンプルからプラズマに材料を導入するために、内径が2mm未満で250μmを超える注入器を備えることができる。注入器の直径とは、プラズマよりも近位側の端部にある注入器の内径を指す。注入器は、プラズマから離れて延びると、異なる直径、例えばより広い直径を有してもよく、直径の差は、直径の段階的な増大によって又は注入器がその長さに沿って先細になっているために達成される。例えば、注入器の内径は、1.75mm~250μm、例えば、1.5mm~300μm直径、1.25mm~300μm直径、1mm~300μm直径、900μm~300μm直径、900μm~400μm直径、例えば約850μm直径であってもよい。内径が2mm未満の注入器を使用すると、直径が大きい注入器に優る大きな利点がもたらされる。この機能の利点の1つは、サンプル材料のプルームがプラズマに導入されたときに質量検出器で検出される信号の過渡状態がより狭い注入器により低減されるという点である(サンプル材料のプルームは、レーザーアブレーションサンプリングシステムによりサンプルから除去される一群の特定の蒸気材料である)。したがって、サンプル材料のプルームをイオン化のためのICP内へのその導入から質量検出器で結果として生じるイオンの検出まで分析するのに要する時間が減少される。サンプル材料のプルームを分析するのに要する時間のこの減少により、任意の期間でより多くのサンプル材料のプルームを検出することができる。また、内径が小さい注入器は、誘導結合プラズマの中心にサンプル材料をより正確に導入し、そこで、より効率的なイオン化が発生する(より多くのサンプル材料をイオン化がそれほど効率的ではないプラズマの末端へと導入できるより大きな直径の注入器とは対照的に)。
ICPトーチ(Agilent、Varian、Nu Instruments、Spectro、Leeman Labs、PerkinElmer、Thermo Fisherなど)及び注入器(Elemental ScientificやMeinhardなど)が利用できる。
反対側アブレーション
前述のように、放射線(例えば、レーザー放射線線)は、サンプル支持体を通過してサンプルに衝突してもよい。放射線は、UV、IR又は緑色レーザーなどのfsレーザーによって生成されてもよい。レーザーがUVレーザーの場合、サンプル支持体は石英又はシリカであってもよい。レーザーがIR又は緑色の場合、サンプル支持体はガラスとなり得る。緑色のfsレーザーは、依然として高分解能を可能にしつつ、コストの観点から好ましいガラス支持体(スライドガラスなど)を可能にする場合がある。
他のイオン化技術
電子イオン化
電子イオン化は、気相サンプルと電子ビームとを衝突させることを伴う。電子イオン化チャンバが電子源及び電子トラップを含む。電子ビームの典型的な供給源は、通常は70電子ボルトのエネルギーで動作するレニウム又はタングステンワイヤである。電子イオン化用の電子ビーム源は、Markes Internationalから入手できる。電子ビームは電子トラップへ方向付けられ、また、電子の移動方向と平行に印加された磁場により、電子が螺旋状の経路で移動する。気相サンプルは、電子イオン化チャンバを通過して方向付けられ、電子ビームと相互作用してイオンを形成する。電子イオン化は、プロセスが一般にサンプル分子をフラグメント化させるため、イオン化の難しい方法と見なされる。市販の電子イオン化システムの例としては、Advanced Markus Electron Ionisation Chamberが挙げられる。
レーザーアブレーションベースのサンプリング・イオン化システムの随意的な更なる構成要素
イオン偏向器
質量分析計は、イオンが検出器の表面に当たるとイオンを検出する。イオンと検出器との衝突は、検出器表面からの電子の解放を引き起こす。これらの電子は、検出器を通過するときに増大される(最初に解放された電子は、検出器内の更なる電子をたたき出し、これらの電子は、その後、二次プレートに衝突し、それにより、電子の数が更に増幅する)。検出器のアノードに当たる電子の数が電流を生成する。アノードに当たる電子の数は、二次プレートに印加される電圧を変更することによって制御され得る。電流は、アナログ-デジタル変換器によって検出器に当たるイオンの計数に変換され得るアナログ信号である。検出器が線形範囲で動作している場合、電流をイオンの数に直接に相関させることができる。一度に検出できるイオンの量には限界がある(1秒当たりに検出できるイオンの数として表わされ得る)。このポイントを超えると、検出器に当たるイオンによって解放される電子の数は、もはやイオンの数と相関しなくなる。したがって、これは検出器の定量的能力に上限を課す。
イオンが検出器に当たると、その表面が汚染によって損傷されるようになる。経時的に、この不可逆的な汚染による損傷によって、イオンが検出器に当たるときに検出器の表面により解放される電子が少なくなり、最終的には検出器を交換する必要がある。これは、「検出器の経年劣化」と称され、MSでよく知られている現象である。
したがって、MSへの過負荷量のイオンの導入を回避することにより、検出器の寿命を延ばすことができる。前述のように、MS検出器に衝突するイオンの総数が検出の上限を超えると、信号は、定量的ではなくなるため、イオンの数が上限を下回る場合ほど情報量が少なくなる。したがって、有用なデータを生成せずに検出器の経年劣化が加速するため、検出上限を超えないようにすることが望ましい。
質量分析によるイオンの大きなパケットの分析には、通常の質量分析には見られない特定の一連の課題が含まれる。特に、典型的なMS技術は、検出限界に近づいたり、検出器の劣化を加速させたりしてはならない、低レベルで一定レベルの材料を検出器に導入することを伴う。一方、レーザーアブレーション及び脱着ベースの技術は、MSの非常に短い時間窓で比較的大量の材料を、すなわち、例えば、MSで一般に分析されるイオンの小さなパケットよりもはるかに大きい組織サンプルの細胞サイズのパッチからのイオンを分析する。事実上、それは、アブレーション又はliftingから生じるイオンの分析されたパックによる検出器の殆ど意図的な過負荷である。分析事象の合間に、信号はベースラインにある(標識原子からのイオンがサンプリング・イオン化システムからMSに意図的に入っていないため、ゼロに近い信号;MSが完全な真空でないため、一部のイオンが必然的に検出される)。
したがって、本明細書に記載の装置では、多数の検出可能な原子で標識化されたイオン化サンプル材料のパケットからのイオンが検出の上限を超え、有用なデータを提供せずに検出器を損傷する可能性があるため、検出器の老化が加速するリスクが高い。
これらの問題に対処するために、装置は、サンプリング・イオン化システムと検出器システム(質量分析計)との間に位置されて質量分析計へのイオンの侵入を制御するように動作可能なイオン偏向器を備えることができる。1つの構成では、イオン偏向器がオンの場合、サンプリング・イオン化システムから受けられたイオンが偏向される(つまり、イオンの経路が変更され、そのため、イオンが検出器に到達しない)が、偏向器がオフの場合、イオンは偏向されずに検出器に到達する。イオン偏向器がどのように展開されるかは、サンプリング・イオン化システム及び装置のMSの配置によって決まる。例えば、イオンがMSに入るポータルが、サンプリング・イオン化システムから出るイオンの経路と直接一致していない場合、デフォルトでは、サンプリング・イオン化システムからMSにイオンを導くために、適切に配置されたイオン偏向器がオンになる。イオン化に起因する事象がMSに過負荷をかける可能性があると考えられるイオン化サンプル材料のパケットが検出されると(以下を参照)、イオン偏向器がオフに切り換えられ、それにより、事象からの残りのイオン化材料がMSに偏向されなくなって代わりにシステムの内面にぶつかることができるだけとなり、結果として、MS検出器の寿命が保たれる。損傷事象からのイオンがMSに入るのを防いだ後、イオン偏向器はその元の状態に戻され、それにより、イオン化されたサンプル材料の後続のパケットからのイオンがMSに入って検出される。
或いは、(通常の動作条件下で)MSに入る前にサンプリング・イオン化システムから出るイオンの方向に変化がない配置では、イオン偏向器がオフになり、サンプリング・イオン化システムからのイオンがMSで分析されるべくそれを通過する。検出器の潜在的な過負荷が検出されたときの損傷を防ぐために、この構成において、イオン偏向器は、オンになり、そのため、検出器の損傷を防ぐためにイオンが検出器に入らないようにイオンを迂回させる。
サンプル材料のイオン化からMSに入るイオン(レーザーアブレーション又は脱離によって生成された材料のプルームなど)は、同時にMSに入るのではなく、代わりに、確率分布曲線に従う周波数がほぼ最大周波数であるピークとして入る。すなわち、ベースラインから、最初に少数のイオンがMSに入って検出され、次に、イオンの周波数が最大に増大してから、数が再び減少し、ベースラインに到達する。ピークの立ち上がりでイオンの頻度がゆっくりと増大する代わりに、検出器に当たるイオンの数が非常に急速に増大するため、検出器に損傷を与える可能性のある事象を特定できる。
以下で説明する特定のタイプの検出器であるTOF MSの検出器に当たるイオンの流れは、イオン化されたサンプル材料のパケット内のイオンの分析中は継続的ではない。TOFは、パルスグループでTOF MSのフライトチャンバにイオンを定期的に解放するパルサーを備える。既知の同じ時間に全てのイオンを解放することにより、飛行時間型質量分析が可能になる。飛行時間型質量分析のためのイオンパルスの解放間の時間は、TOF MSの抽出又はプッシュとして知られている。プッシュはマイクロ秒程度である。したがって、サンプリング・イオン化システムからのイオンの1つ以上のパケットからの信号は、多数のプッシュをカバーする。
したがって、イオンカウントの読み取り値が1回のプッシュでベースラインから非常に高いカウントにジャンプする場合(つまり、イオン化されたサンプル材料の特定のパケットからのイオンの最初の部分)、サンプル材料のパケットのイオン化に起因するイオンの本体が更に大きくなるため検出上限を超えることが予期され得る。この時点で、イオン偏向器を動作させて、損傷を与えるイオンの大部分が検出器から離れる方向に向けられるようにすることができる(前述のように、システムの配置に応じて、アクティブ化又は非アクティブ化される)。
四重極に基づく適切なイオン偏向器は、当技術分野で入手可能である(例えば、Colutron Research Corporation及びDreebit GmbHから)。
b.脱着ベースのサンプリング・イオン化システム
脱着ベースの分析器は、一般に、3つの構成要素を備える。第1の構成要素は、分析用のサンプルからサンプル材料のスラグを生成するための脱着システムである。脱離したサンプル材料のスラグ内の原子(以下で説明する任意の検出可能な標識原子を含む)を検出できる前に、サンプルをイオン化(及び霧化)しなければならない。したがって、装置は、原子をイオン化して元素イオンを形成することにより質量/電荷比に基づいてMS検出器構成要素(第3の構成要素)によるそれらの検出を可能にするイオン化システムである第2の構成要素を備える。脱着ベースのサンプリングシステム及びイオン化システムは、移送導管によって接続される。多くの場合、脱着ベースのサンプリングシステムは、レーザーアブレーションベースのサンプリングシステムでもある。
脱着サンプリングシステム
場合によっては、サンプル材料の粒子状及び/又は気化したプルームを生成するためにレーザーアブレーションが使用されるのではなく、サンプル材料のバルク塊が、サンプルの実質的な崩壊及びサンプルの小さな粒子及び/又は蒸気への変換を伴うことなく、それが配置されるサンプルキャリアから脱着される(例えば、参照により本明細書に組み入れられる国際公開第2016109825号パンフレットの図8、及び付随する説明を参照)。本明細書中において、スラグという用語は、この脱着された材料(本明細書で論じられるサンプル材料のパケットの1つの特定の形態)を指すために使用される。スラグは、10nm~10μm、100nm~10μm、場合によっては1μm~100μmの寸法を有し得る。このプロセスは、サンプルカタパルティングと称され得る。一般に、スラグは単一の細胞に相当する(この場合、プロセスを細胞カタパルティングと称することができる)。
サンプルから解放されるサンプル材料のスラグは、脱着ステップの前に、随意的にサンプルが装置に挿入される前のプロセスにおいて、脱着のために個々のスラグに切断されたサンプルの一部であってもよい。分析前に個別のスラグに分割されたサンプルは、構造化サンプルと称される。したがって、これらの個々のスラグのそれぞれは、装置内で脱着、イオン化、及び、分析され得るサンプルの個別の部分に相当する。別個の部位からのスラグの分析により、前述のレーザーアブレーションサンプリングシステムによってサンプルの各位置がアブレーションされたのと同じ方法で、画像のピクセルを表わす各スラグにより画像を構築することができる。
構造化サンプルは、様々な方法で調製されてもよい。例えば、生物学的サンプルを切断するように構成される地形的特徴を含むサンプルキャリアが使用されてもよい。ここで、生物学的サンプルがキャリアの表面に適用され、これにより、地形的特徴がサンプルを切断及び切断し、ひいては、生物学的材料のセクションが、特徴間の複数の別個の部位によって保持されて、構造化された生物学的サンプルがもたらされる。或いは、サンプルキャリアは、そのような地形的特徴(実際には、顕微鏡スライドのような平坦な表面、以下で説明するように随意的に機能化される)を含まなくてもよく、その場合、サンプルがサンプルキャリアに適用されてもよく、また、イオン化及び分析のために脱着され得るサンプルのスラグを規定するためにサンプルが切断されてもよい。サンプルが組織切片である場合、サンプルの切片化は、ブレード又はスタンプなどの機械的な工具によって達成され得る。或いは、脱着されるべきサンプルの切片の周りの材料は、同じ又は別個のサンプル調製セットアップにおいてレーザーアブレーションにより除去され得る。特定の技術では、集束電子又はイオンビームを使用するセットアップによって材料を除去することができる。集束された電子又はイオンビームは、1μm程度又は特定の場合には100nmのピクセルサイズをもたらす部分切片間に特に狭いカット(潜在的には10nmスケール)をもたらす。
サンプル材料のスラグをキャリアから解放でき、また、サンプル材料のそれぞれの離散部分は、離散事象として分析するために検出器に順次導入される(以下で説明する技術によって画像のピクセルを生成する)。従来のマスサイトメトリー又は質量分析のように生物学的サンプルをランダムに導入するのとは対照的に、別個の材料を順次に導入することの利点としては、より高いサンプル処理速度が挙げられる。これは、スラグがサンプルチャンバからイオン化システムに好ましくは単一の物質として輸送され、それにより、アブレーションされた材料のプルームがガス流(特に何らかの乱流が存在するガス流)中にある際にスラグが広がることができないからである。
サンプリングのための脱着
サンプル材料は、熱エネルギー、機械的エネルギー、運動エネルギー、及び、先のいずれかの組み合わせによってサンプルから脱着され得る。この種のサンプリングは、特に生物学的サンプルの分析に役立つ。
特定の例において、サンプル材料は、熱的メカニズムによってサンプルから解放されてもよい。例えば、サンプルキャリアの表面は、サンプル材料のスラグを脱着するのに十分なほど熱くなる。サンプルキャリアは、バルク脱着プロセスを容易にするために、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)ポリマー又はPMMAポリマー膜でコーティングされてもよい。熱は、レーザー(上記のレーザーアブレーションサンプリングシステムのレーザーなど)などの放射源によって与えられ得る。表面に印加されるエネルギーは、生物学的材料を脱着するのに十分でなければならず、好ましくは、サンプル材料が生物学的サンプルからのものである場合、サンプル材料を変更することなくサンプル材料を脱着するのに十分でなければならない。サンプルキャリアの吸収特性に部分的に依存する可能性のある、任意の適切な放射波長を使用することができる。サンプルキャリアの表面又は層は、熱に変換するためにレーザー放射線を吸収する吸収体でコーティングされてもよく又は吸収体を含んでもよい。放射線は、サンプルが位置される表面以外のキャリアの表面に送出されてもよく又はキャリアの厚さを貫通するなどしてサンプルを支持する表面に送出されてもよい。加熱された表面は、表面層であってもよく、又は、サンプルキャリアの多層構造の内層であってもよい。レーザー放射線エネルギーの使用の一例は、サンプルキャリアが脱着膜層を含む場合がある、LIFTingと呼ばれる技術にある(レーザー誘起前方移動;例えば、Doraiswamy et al.,2006,Applied Surface Science,52:4743-4747;Fernandez-Pradas,2004,Thin Solid Films 453-454:27-30;Kyrkis et al.,in Recent Advances in Laser Processing of Materials,Eds.Perriere et al.,2006,Elsivier参照)。脱着膜は、放射線を吸収して、脱着膜及び/又は生物学的サンプルの放出を引き起こすことができる(例えば、ある場合には、サンプル膜は、生物学的サンプルと共にサンプルキャリアから脱着し、他の場合には、膜は、サンプルキャリアに付着したままである、及び、物学的サンプルは脱着膜から脱着する)。
加熱による脱着は、脱着に使用されるレーザーに応じて、ナノ秒、ピコ秒、又は、フェムト秒の時間スケールで行なわれ得る。
サンプルは、開裂可能な光反応性部分によってサンプルキャリアに付着されてもよい。開裂可能な光反応性部分に放射線を照射する(例えば、レーザーアブレーションサンプリングシステムのレーザーシステム内のレーザーから)と、光反応性部分は開裂してサンプル材料を解放することができる。サンプルキャリアは、(i)サンプルをサンプルキャリアに結合する開裂可能な光反応性部分、及び、(ii)前述したような脱着膜を備えてもよい。この状況では、第1のレーザー放射線パルスを使用して光反応性部分の開裂を引き起こしてもよく、また、第2のレーザー放射線パルスを使用して脱着膜を標的とし、liftingによってサンプルキャリアからサンプルを分離させてもよい(或いは、他の手段によって導入される熱エネルギーパルスは、脱着膜を加熱し、したがって、サンプルキャリアからのサンプル材料の分離を引き起こすために使用されてもよい)。第1及び第2のパルスは異なる波長を有してもよい。したがって、幾つかの方法(例えば、アブレーション及び脱着の両方を含む)では、サンプルキャリアからのサンプルの分離が、異なる波長の複数のレーザーパルスを伴ってもよい。場合によっては、光反応性部分の開裂及びliftingが、同じレーザーパルスによって達成されてもよい。
サンプルキャリアは、サンプルに運動エネルギーを与えてサンプルを表面から解放する化学反応性種のコーティング又は層を含んでもよい。例えば、化学反応性種は、例えば、H、CO、N、又は、ヒドロクロロフルオロカーボンなどのガスを解放してもよい。そのような化合物の例は、加熱するとガスを解放する発泡剤及び発泡剤を含む。ガスの生成は、材料の再現性と解放方向とを改善できる運動エネルギーを脱着サンプル材料に与えるために使用され得る。
サンプルキャリアは、サンプル材料を脱着するための熱を生成するために発熱反応を受ける光開始化学反応物を含んでもよい。先の段落で説明したキャリアのコーティング又は実際にはそのキャリア内の特定の化学結合(キャリアからサンプル材料のスラグを解放するためにレーザーにより照射される)は、レーザー放射線の波長によって標的にされ得る材料の一例である。
本発明の態様に係る装置において、レーザーアブレーションベースのサンプリングシステムに関連して前述したレーザー走査システムは、サンプル材料の一部又は全てが脱着によるイオン化及び分析のために導入される装置及び技術にも適用できる。レーザー走査システムの利点は、この場合も先と同様に、サンプル上の様々なスポットを迅速にアブレーションするシステムの能力から生じる。したがって、LIFTingは、脱着膜などのサンプル標的でレーザーパルスの急速なバーストを発射することによって実行でき、そのため、サンプルから材料のスラグを解放できる。そうすることで、レーザーパルスの特定のパターンを使用して、スラグを効率的に脱着させることができる。そのような例の1つは、図10に示すように、細胞の周辺から内側に移動する螺旋パターンである。したがって、幾つかの実施形態において、脱着は、螺旋パターンで脱着されるサンプル材料に一連のレーザー放射線のパルスを方向付けることによって達成され、随意的に、一連のパルスがバーストとして送出され、例えば、バースト中のパルスは10-12秒よりも短いパルス持続時間を有する。一般に、アブレーションを実行する場合、アブレーションされた位置は、重なり合わない個別のスポットとして分解される。しかしながら、脱着がサンプル材料を装置に導入するための手段として使用される場合、例えば、特定の位置でサンプルキャリアにサンプルを固定する全ての脱着膜が除去されるようにするために、重なり合うスポットが使用されてもよい。本発明者らは、サンプルキャリアから細胞を完全に脱着するのに十分な大きさのスポットサイズを有する単一のレーザーパルスによる細胞の脱着がしばしば材料のスラグの破壊を引き起こすことを確認した。サンプル材料のスラグがより小さな部分に分解されると直ぐに、アブレーションされたスラグ内の材料の過渡時間が増大する。これは、サンプルが脱着されるチャンバから輸送導管を通じてイオン化システムへ及びその後に検出器へと材料が通過する際に材料が必然的に広がるからである。したがって、脱着されたスラグの完全性を維持することにより、例えばサンプルが細胞塗抹標本である場合、アブレーションされたスラグの分析の最高速度、すなわち、細胞の分析の最高速度が可能になる。イオン化まで一般に完全性を維持する別個のスラグとしての単一細胞の脱着は、CyTOF(Fluidigm、カリフォルニア州、米国)による溶液中の細胞の分析によって可能になった速度と同様の速度でスライドから単一細胞を分析する機会を与える。しかしながら、スライドからの個々の細胞の脱着は、細胞を最初に視覚的に分析することができるという更なる利点をもたらし、したがって、対象の細胞を選択できるとともに、例えば誤った細胞タイプの細胞を除去することができ、それにより、分析の効率が向上する。更に、それにより、脱着される材料のスラグが実際に単一細胞になるように選択され得る。液体サンプルの分析では、細胞がダブレット、高次マルチマーのトリプレットに凝集し得る場合があり、或いは、偶然に、サンプル導入プロセスの結果として、2つの別個の細胞が同じ事象で分析され得る。したがって、2つ以上の細胞からの原子が一緒にイオン化システム及び検出システムへ移行し、それにより、不正確な結果だけでなく、MS検出器の過負荷による機器の損傷の可能性も生じる。そのため、本発明の態様によって提供されるレーザー走査を使用することにより可能とされる、脱着されたスラグの分解がない又は最小限の脱着による単一細胞分析は、当技術分野で知られているものよりも改善された分析モードを提供する。
多くの場合、対象となるサンプル上の特徴/領域は、単独で簡単に脱着できる個別の部位にある、孤立した細胞などの別個の実体を表わさない。代わりに、対象の細胞は、分析が不要又は望ましくない他の細胞又は材料によって囲まれる場合がある。したがって、対象の特徴/関心領域の脱着(例えば、lifting)を実行しようとすると、対象の細胞及び周囲の材料の両方が一緒に脱着される場合がある。したがって、対象の特定の特徴/関心領域(例えば細胞)に加えて材料の脱着されたスラグで担持されるサンプルの周囲の領域からの(例えば、標識化された他のセルからの)元素タグ(以下の説明を参照)で使用される標識原子などの原子は、対象の位置に関する読み取り値を汚染する可能性がある。
アブレーション及び脱着(liftingによるなど)の技術は、単一の方法で組み合わせられ得る。例えば、サンプルキャリア上で、生物学的サンプル上の、例えば、組織切片サンプル又は細胞懸濁液分散液の対象の特徴/関心領域(例えば、細胞)の正確な脱着を実行するために、レーザーアブレーションを使用して、対象の細胞の周囲の領域をアブレーションし、それから他の材料を除去することができる。アブレーションによって周囲の領域を除去した後、対象の特徴/関心領域をサンプルキャリアから脱着し、その後、イオン化して、標準的なマスサイトメトリー又は質量分析手順に従って質量分析によって分析することができる。上記の議論に沿って、随意的に、脱着される位置を取り囲む領域を除去するためにアブレーションが使用された後、熱的、光分解的、化学的、又は、物理的技術を使用して、特徴/関心領域から材料を脱着することができる。多くの場合、材料のスラグをサンプルキャリア(例えば、サンプル材料の別個のスラグの脱着に関して前述したように、lifting手順を支援するべく脱着膜でコーティングされたサンプルキャリア)から分離するためにliftingが使用される。
したがって、本発明の態様は、サンプルを分析する方法において、
(i)レーザー放射線を使用してサンプル材料のスラグを脱着するステップであって、レーザー放射線が、レーザー走査システムを使用してサンプルステージ上のサンプルに向けられる、ステップと、
(ii)サンプル材料のスラグをイオン化し、質量分析によってスラグ内の原子を検出するステップと、
を含む方法を提供する。
サンプルをサンプルキャリア上に置くことができ、また、場合によっては、サンプルキャリアからサンプル材料のスラグを脱着させるためにレーザー放射線がサンプルキャリアを通じて方向付けられる。
幾つかの実施形態において、方法は、ステップ(i)の前に、サンプルのレーザーアブレーションを実行するステップを更に含む。場合によっては、サンプルのアブレーションによってサンプル材料の1つ以上のプルームが生成され、また、プルームが個別にイオン化されて、プルーム内の原子が質量分析によって検出される。場合によっては、この方法は、ステップ(i)の前に、サンプル中の複数の異なる標的分子を1つ以上の異なる標識原子/元素タグで標識化して、標識サンプルをもたらす更なるステップを更に含む。レーザーアブレーションは、対象の特徴/関心領域のサンプル材料が材料のスラグとしてサンプルキャリアから脱着される前に、特徴/関心領域の周りの材料をアブレーションして周囲の領域を除去するための方法の幾つかの変形で使用される。
対象の特徴/関心領域は、レーザーアブレーション及び脱着(例えば、liftingによる)が実行される前に、別の技術によって特定され得る。カメラ(電荷結合デバイスイメージセンサベース(CCD)カメラ又はCMOSカメラ又はアクティブピクセルセンサベースのカメラなど)又は前の節で説明した任意の他の光検出手段を含めることは、オンライン分析及びオフライン分析の両方のために、これらの技術を可能にする1つの方法である。カメラを使用してサンプルを走査し、特定の対象の細胞又は特徴/特定の関心領域(例えば、特定の形態の細胞)を特定することができる。そのような位置が特定された時点で、位置(例えば細胞)がリフトされる前にアブレーションによって他の材料を除去するべく、レーザーパルスが特徴/関心領域の周囲の領域に方向付けられた後に位置をリフトできる。このプロセスは、自動化プロセス(この場合、システムは、対象の特徴/関心領域を特定して、アブレーションし、及び、リフトする)又は半自動化プロセス(この場合、システムのユーザ、例えば臨床病理学者は、対象の特徴/関心領域を特定し、その後、システムは、自動化された態様でアブレーション及びliftingを実行する)であってもよい。これにより、特定の細胞を分析するためにサンプル全体をアブレーションする必要なく、対象の細胞を特異的にアブレーションできるため、分析を実行できる速度を大幅に高めることができる。
カメラは、顕微鏡(共焦点顕微鏡など)からの画像を記録できる。特定は、光学顕微鏡法によって、例えば、細胞形態又は細胞サイズを調べることによって、又は、細胞が別個の単一細胞であるかどうか(細胞の塊の要素とは対照的に)に基づいて行なわれてもよい。場合によっては、対象の特徴(例えば細胞)を特定するためにサンプルを特異的に標識化できる。多くの場合、蛍光マーカーは、視覚的に特定された対象の特徴/関心領域をアブレーションする方法に関連して前述したように、対象の細胞を特異的に染色するために使用され(標識抗体又は標識核酸を使用することによるなど);そのセクションは、簡潔にするためにここでは完全には繰り返されないが、当業者は、これらの方法の特徴が脱着ベースの方法に適用でき、これがこの文書の技術的教示の範囲内であることを直ぐに理解し得る。高解像度の光学画像は、光学技術とliftingとのこの結合において有利である。これは、光学画像の精度が、その後に脱着され得る対象の細胞の周囲の領域をアブレーションするようにアブレーションレーザー源を方向付けることができる精度を決定するからである。
また、本発明の態様は、複数の細胞を含むサンプルを分析する方法において、
(i)サンプル中の複数の異なる標的分子を1つ以上の異なる標識原子で標識化して、標識サンプルをもたらすステップと、
(ii)対象の1つ以上の特徴を特定するためにサンプルを照らすステップと、
(iii)サンプル上の対象の1つ以上の特徴の位置情報を記録するステップと、
(iv)対象の特徴の位置情報を使用して、対象の特徴からサンプル材料のスラグを脱着するステップであって、サンプル材料のスラグがレーザー放射線を使用して位置から脱着される前に、レーザー放射線を使用して対象の特徴を取り囲むサンプル材料を除去するべく最初にレーザーアブレーションを実行することを含み、レーザー放射線がレーザー走査システムを使用してサンプルへと方向付けられる、ステップと、
(v)サンプル材料の脱着されたスラグをイオン化するステップと、
(vi)サンプル材料中の標識原子の検出のために、イオン化されたサンプル材料を質量分析に晒すステップと、
を含む方法も提供する。
また、本発明の態様は、上記の方法の変形、例えば、複数の細胞を含むマスサイトメトリーを実行する方法において、
(i)サンプル中の複数の異なる標的分子を1つ以上の異なる標識原子及び1つ以上の蛍光標識で標識化して、標識サンプルをもたらすステップと、
(ii)1つ以上の蛍光標識を励起するためにサンプルにレーザー放射線を照射するステップと、
(iii)蛍光のパターンに基づいてサンプルの1つ以上の位置の位置情報を記録するステップと、
(iv)蛍光のパターンに基づく位置情報を使用して、対象の特徴からサンプル材料のスラグを脱着するステップであって、サンプル材料のスラグがレーザー放射線を使用して位置から脱着される前に、レーザー放射線を使用して対象の特徴を取り囲むサンプル材料を除去するべく最初にレーザーアブレーションを実行することを含み、レーザー放射線がレーザー走査システムを使用してサンプルへと方向付けられる、ステップと、
(v)サンプル材料の脱着されたスラグをイオン化するステップと、
(vi)サンプル材料中の標識原子の検出のために、イオン化されたサンプル材料を質量分析に晒すステップと、
を含む方法も提供する。
場合によっては、脱着されるべき位置の周囲の領域(例えば、対象の細胞)を除去するために実行されるアブレーションからデータが記録されない。時として、データは周辺領域のアブレーションから記録される。周辺領域から得られ得る有用な情報は、タンパク質やRNA転写物などの標的分子が周辺の細胞や細胞間環境に存在するものを含む。これは、直接的な細胞間相互作用が一般的であり、周囲の細胞でどのタンパク質などが発現されているかが対象の細胞の状態について有益である可能性がある固体組織サンプルをイメージングするときに特に興味深い場合がある。
上記と一致して、ここでのスラグの脱着は、レーザー走査システムによって方向付けられるように、サンプルにレーザーパルスのバーストを発射することによって達成され得る。
カメラ
脱着ベースのサンプリングシステムで使用されるカメラは、レーザーアブレーションベースのサンプリングシステムについて前述したようにすることができ、また、レーザーアブレーションベースのサンプリングシステムのカメラに関する議論がここで読まれるべきである。
サンプルチャンバ
脱着ベースのサンプリングシステムで使用されるサンプルチャンバは、レーザーアブレーションベースのサンプリングシステムについて前述した通りにすることができる。サンプル材料の大きなスラグのサンプリングが行なわれている場合、熟練した開業医は、材料のスラグがガスの流れに同伴されてイオン化システムへの輸送のために移送導管に運ばれるようにするべくガス流量を増大させる必要があり得ることを理解し得る。
移送導管
脱着ベースのサンプリングシステムで使用されるサンプルチャンバは、レーザーアブレーションベースのサンプリングシステムについて前述した通りにすることができる。サンプル材料の大きなスラグのサンプリングが行なわれている場合、熟練した開業医は、スラグがルーメンの側面に接触することなく任意のスラグを受け入れるように導管のルーメンの直径を適切に寸法付ける必要があることを理解し得る(接触すると、スラグが断片化し、信号が重なり合う場合がある-この場合、n番目の脱離事象に伴うスラグからの原子が、n+1番目以降のスラグのための検出ウインドウへと拡散される)。
脱着ベースのシステムのイオン化システム
多くの場合、前述のlifting技術は、粒子状及び蒸気状の材料に変換されなかったサンプル材料の比較的大きなスラグ(10nm~10μm、100nm~10μm、場合によっては1μm~100μm)の除去を伴う。したがって、この比較的大量の材料を気化及び噴霧することができるイオン化技術が必要とされる。
誘導結合プラズマトーチ
そのような適切なイオン化システムの1つは、レーザーアブレーションベースのサンプリング・イオン化システムに関連して49頁から始まる節で既に説明したように、誘導結合プラズマである。
脱着ベースのサンプリング・イオン化システムの随意的な更なる構成要素
イオン偏向器
脱着ベースのサンプリングシステムで使用されるイオン偏向器は、レーザーアブレーションベースのサンプリングシステムについて前述した通りにすることができる。サンプル材料の無傷の大きなスラグを除去するための脱離ベースのサンプリングの可能性を考えると、イオン偏向器は、検出器を保護するためのこの種のシステムで特に有用となり得る。
2.質量検出器システム
質量検出器システムの典型的なタイプとしては、四重極、飛行時間(TOF)、磁気セクター、高分解能、シングル又はマルチコレクターベースの質量分析計が挙げられる。
イオン化された材料の分析にかかる時間は、イオンの検出に使用される質量分析計のタイプによって決まる。例えば、ファラデーカップを使用する機器は、一般に、高速信号を分析するには遅すぎる。全体として、望ましいイメージング速度、分解能、及び、多重化の程度によって、使用されるべき質量分析計のタイプが決まる(又は、逆に、質量分析計の選択によって、達成され得る速度、分解能、及び、多重化が決まる)。
例えばポイントイオン検出器を使用して、一度に1つの質量電荷比(m/Q、一般にMSではm/zと称される)のみでイオンを検出する質量分析機器は、イメージング検出において不十分な結果をもたらす。第1に、質量電荷比間の切り換えにかかる時間は、複数の信号を決定できる速度を制限し、また、第2に、イオンの存在量が少ない場合、機器が他の質量電荷比に焦点を合わせているときに信号が失われる可能性がある。したがって、異なるm/Q値を有するイオンの実質的に同時の検出をもたらす技術を使用することが好ましい。
検出器タイプ
四重極検出器
四重極質量分析計は、一端に検出器を伴う4本の平行ロッドを備える。交番RF電位及び所定のDCオフセット電位が、一方の対のロッドと他方の対との間に印加され、それにより、一方の対のロッド(互いに反対のロッドのそれぞれ)が、他方の対のロッドに対して反対の代替電位を有するようにする。イオン化されたサンプルは、ロッドに平行な方向で、検出器に向かって、ロッドの中央に通される。印加された電位はイオンの軌道に影響を与え、それにより、特定の質量電荷比のイオンのみが、安定した軌道を持ち、検出器に到達する。他の質量電荷比のイオンはロッドと衝突する。
磁気セクター検出器
磁気セクター質量分析では、イオン化されたサンプルが湾曲したフライトチューブを通過してイオン検出器に向かう。フライトチューブ全体に磁場を印加すると、イオンはその経路から偏向する。各イオンの偏向量は、各イオンの質量電荷比に基づいているため、一部のイオンのみが検出器に衝突し、他のイオンは検出器から偏向される。マルチコレクターセクターフィールド機器では、検出器のアレイを使用して、様々な質量のイオンを検出する。ThermoScientific Neptune PlusやNu Plasma IIなどの一部の機器では、磁気セクターを静電セクターと組み合わせて、質量電荷比に加えて、運動エネルギーによってイオンを分析する二重集束磁気セクター機器を提供する。特に、Mattauch-Herzog形状を有するマルチ検出器を使用できる(例えば、半導体直接電荷検出器を使用した1回の測定でリチウムからウランまでの全ての元素を同時に記録できるSPECTRO MS)。これらの機器は、複数のm/Q信号を実質的に同時に測定できる。それらの感度は、検出器に電子増倍管を含めることによって高められ得る。アレイセクター機器は、常に適用可能であるが、それらが増大する信号の検出に役立つものの信号レベルが減少しているときにあまり有用ではないため、標識が特に非常に変動する濃度で存在する状況ではあまり適さない。
飛行時間(TOF)検出器
飛行時間型質量分析計は、サンプル注入口、強電界が印加された加速チャンバ、及び、イオン検出器を備える。イオン化されたサンプル分子のパケットが、サンプル注入口を通じて加速チャンバに導入される。最初に、イオン化されたサンプル分子はそれぞれ同じ運動エネルギーを有するが、イオン化されたサンプル分子が加速チャンバを通じて加速されると、それらのサンプル分子がそれらの質量によって分離され、その場合、軽いイオン化されたサンプル分子が重いイオンよりも速く移動する。次に、検出器は、到着した全てのイオンを検出する。各粒子が検出器に到達するのにかかる時間は、粒子の質量電荷比によって決まる。
したがって、TOF検出器は、単一のサンプルに複数の質量をほぼ同時に登録できる。理論的には、TOF技術はそれらの空間電荷特性に起因してICPイオン源に理想的に適していないが、TOF機器は、実際に、ICPイオンエアロゾルを十分迅速且つ高感度に分析して、実行可能な単一セルイメージングを可能にする。TOF質量分析器は、通常、TOF加速器内及び飛行管内の空間電荷の影響に対処するために必要な妥協に起因して原子分析には人気がないが、本開示に係る組織イメージングは、標識原子のみを検出することによって有効とることができ、したがって、他の原子(例えば、原子量が100未満の原子)を除去できる。これにより、密度の低いイオンビームがもたらされ、より効率的に操作されて集束され得る(例えば)100~250ダルトン領域の質量が濃縮され、それにより、TOF検出が容易になり、TOFの高いスペクトル走査レートを利用できる。したがって、TOF検出と、サンプルでは一般的ではなく、より高い質量の遷移元素を使用することにより、理想的には標識のないサンプルで見られる質量を超える質量を持つ標識原子を選択すること、との組み合わせによって迅速なイメージングを実現できる。したがって、標識質量のより狭いウインドウを使用することは、TOF検出が効率的なイメージングに使用されることを意味する。
適切なTOF機器は、Tofwerk、GBC Scientific Equipment(例えばOptimass 9500 ICP-TOFMS)、及び、Fluidigm Canada(例えばCyTOF(商標)機器及びCyTOF(商標)2機器)から入手できる。これらのCyTOF(商標)機器は、Tofwerk機器及びGBC機器よりも感度が高く、ランタニドなどの希土類金属の質量範囲(特に100-200のm/Q範囲)のイオンを迅速且つ高感度で検出できるため、マスサイトメトリーでの使用が知られている[xi]。本出願の質量サイトメーターは、そのような質量範囲のイオンを優先的に検出することができる。例えば、本出願の装置は、質量タグのランタニド同位体などの複数の質量タグの存在を選択的に検出するように構成され得る。
したがって、これらは、本開示で使用するための好ましい機器であり、当技術分野で既に知られている機器設定(例えば引用文献xii及びxiiiを参照)によるイメージングにおいて使用することができる。それらの質量分析計は、高周波レーザーアブレーション又はサンプル脱離のタイムスケールで、高いマススペクトル取得周波数で準同時に多数のマーカーを検出することができる。それらの質量分析計は、細胞当たり約100の検出限界を伴って標識原子の存在量を測定でき、それにより、組織サンプルの画像の高感度な構築を可能にする。これらの機能に起因して、マスサイトメトリーを使用して、細胞内解像度での組織イメージングにおける感度及び多重化のニーズを満たすことができる。マスサイトメトリー機器を高解像度レーザーアブレーションサンプリングシステム及び高速トランジット低分散サンプルチャンバと組み合わせることにより、実用的なタイムスケールで高多重化された組織サンプルの画像の構築を可能にすることができた。
TOFは、質量割り当て補正器と結合されてもよい。イオン化事象の大部分はMイオンを生成し、この場合、単一の電子が原子からノックアウトされる。TOF MSの動作モードに起因して、特に質量Mの多数のイオンが検出器に入っている場合、時として、隣接する質量(M±1)のためのチャネルへの1つの質量(M)のイオンの何らかのブリーディング(又はクロストーク)が存在する(つまり、イオンカウントは高いが、装置がイオン偏向器を含むようになっていた場合、サンプリングイオン化システムとMSとの間に位置されたイオン偏向器がMSへのイオンの流入を妨げるほど高くはない)。検出器での各Mイオンの到着時間は平均(それぞれのMごとに既知)に関する確率分布に従うため、質量Mのイオンの数が多い場合、通常はM-1又はM+1イオンに関連付けられる時間に到着するものもある。しかしながら、各イオンはTOF MSに入るときに既知の分布曲線を持っているため、質量Mチャネルのピークに基づいて、質量MのイオンのM±1チャネルへの重なりを決定できる(既知のピーク形状と比較して)。TOF MSで検出されるイオンのピークは非対称であるため、この計算はTOF MSに特に適用できる。したがって、M-1、M、及び、M+1チャネルの読み取り値を修正して、検出された全てのイオンをMチャネルに適切に割り当てることができる。そのような補正は、サンプルから材料を除去するための技術としてレーザーアブレーション(又は以下で説明する脱着)を伴う本明細書に開示されるようなサンプリング・イオン化システムによって生成されるイオンの大きなパケットの性質に起因してイメージングデータを補正する際に特定の用途を有する。TOF MSからのデータをデコンボリューションすることによってデータの品質を改善するためのプログラム及び方法が、引用文献xiv、xv及びxviで論じられる。
デッドタイムコレクタ
前述のように、MS内の信号は、イオンと検出器との間の衝突、及び、イオンが当たった検出器の表面からの電子の解放に基づいて検出される。多数のイオンがMSによって検出され、多数の電子が放出されると、MSの検出器が一時的に疲労し、その結果、検出器から出力されるアナログ信号がイオンの後続のパケットのうちの1つ以上に関して一時的に抑制される。言い換えると、イオン化されたサンプル材料のパケット内のイオンの数が特に多いと、イオン化されたサンプル材料のパケットからイオンを検出するプロセスで、検出器の表面と二次乗算器から多くの電子が放出され、それにより、イオン化されたサンプル材料の後続のパケット内のイオンが検出器に当たると、検出器表面と二次増幅器内の電子が補充されるまで、解放されるべく利用できる電子が少なくなる。
検出器の挙動の特性に基づいて、このデッドタイム現象を補償することができる。第1のステップは、検出器によるイオン化されたサンプル材料のn番目のパケットの検出から生じるアナログ信号のイオンピークを分析することである。ピークの大きさは、ピークの高さ、ピークの面積、又は、ピークの高さとピークの面積との組み合わせによって決定されてもよい。
次に、ピークの大きさを比較して、それが所定の閾値を超えているかどうかを確認する。大きさがこの閾値を下回っている場合、修正は必要ない。大きさが閾値を超える場合、イオン化されたサンプル材料の少なくとも1つの後続パケットからのデジタル信号の補正が実行され(イオン化されたサンプル材料の少なくとも(n+1)番目のパケット、しかし場合によっては、(n+2)番目、(n+3)番目、(n+4)番目など、イオン化されたサンプル材料の更なるパケット)、イオン化されたサンプル材料のn番目のパケットによって引き起こされる検出器の疲労に起因するイオン化されたサンプル材料のこれらのパケットからのアナログ信号の一時的な低下が補償される。イオン化されたサンプル材料のn番目のパケットのピークの大きさが大きいほど、イオン化されたサンプル材料の後続のパケットからのより多くのピークを補正する必要があり、また、補正の大きさを大きくする必要がある。このような現象を補正する方法は、引用文献xvii、xviii、xix、xx、及びxxiで説明されており、これらの方法は、本明細書で説明するように、デッドタイム補正器によってデータに適用できる。
光学発光スペクトル検出に基づく分析器装置
1.サンプリング・イオン化システム
a.レーザーアブレーションベースのサンプリング・イオン化システム
質量ベースの分析器に関連して前述したレーザー走査システムを備えるレーザーアブレーションサンプリングシステムは、OES検出器ベースのシステムで使用することができる。原子発光スペクトルの検出に関しては、ICPを使用してサンプルから除去されたサンプル材料をイオン化するが、元素イオンを生成できる任意のハードイオン化技術を使用できる。
当業者であれば分かるように、質量ベースの検出器の過負荷の回避に関連して説明された、上記のレーザーアブレーションベースのサンプリング・イオン化システムの特定のオプションの更なる構成要素は、全てのOES検出器ベースのシステムに適用できるとは限らず、また、不適切な場合、当業者によって組み込まれない。
b.脱着ベースのサンプリング・イオン化システム
レーザー走査システムを備える質量ベースの分析器に関連して前述した脱着ベースのサンプリングシステムは、OES検出器ベースのシステムで使用することができる。原子発光スペクトルの検出に関しては、ICPを使用してサンプルから除去されたサンプル材料をイオン化するが、元素イオンを生成できる任意のハードイオン化技術を使用できる。
当業者であれば分かるように、質量ベースの検出器の過負荷の回避に関連して説明された、上記の脱着ベースのサンプリング・イオン化システムの特定のオプションの更なる構成要素は、全てのOES検出器ベースのシステムに適用できるとは限らず、また、不適切な場合、当業者によって組み込まれない。
c.レーザー脱離/イオン化システム
レーザー脱離/イオン化ベースの分析器は、一般に、2つの構成要素を備える。第1の構成要素は、分析用のサンプルからイオンを生成するシステムである。この装置において、これは、レーザービームをサンプルに方向付けてイオンを生成することによって達成され、本明細書では、それがレーザー脱離イオン生成システムと呼ばれる。これらの放出されたサンプルイオン(以下で説明するように、標識原子からの検出可能なイオンを含む)は、検出器システム(第2の構成要素)、例えば質量分析計によって検出され得る(検出器については以下で更に詳しく説明する)。この技術は、レーザー脱離/イオン化質量分析(LDI-MS)として知られている。LDIは、以下で詳しく説明する脱着ベースのサンプリングシステムとは異なる。これは、脱着ベースのサンプリングシステムでは、その後にイオン化されて元素イオンを形成する電荷中性の材料のスラグとしてサンプル材料が脱着されるからである。それどころか、ここでは、レーザーによるサンプルの照射の結果としてイオンが直接生成され、別個のイオン化システムは必要ない。
レーザー脱離イオン生成システムは、レーザーと、レーザーからの放射線が方向付けられるサンプルを収容するためのサンプルチャンバと、サンプルから生成されたイオンを取り込んでそれらを分析のために検出器に方向付けるイオン光学素子とを備える。したがって、本発明の態様は、サンプルを分析するための装置であって、a.サンプルを収容するためのサンプルチャンバ;b.サンプルから材料を脱離及びイオン化してイオンを形成するようになっているレーザー;c.脱離イオン化によって形成されたイオンをサンプリングし、それらをサンプルから離れるように検出器に向けて方向付けるようになっているイオン光学素子;d.前記イオン光学素子からイオンを受けて前記イオンを分析するための検出器を備え、随意的に、装置が前述した本発明の態様のレーザー走査システムを更に備える、装置を提供する。幾つかの実施形態において、装置は、サンプルから材料を脱着及びイオン化して元素イオンを形成するようになっているレーザーを備え、また、この場合、検出器は、前記サンプリング・イオン化システムから元素イオンを受けて前記元素イオンを検出する。場合によっては、LDIはマトリックス支援(すなわちMALDI)である。
このプロセスにおいて、一部の分子は、サンプルから脱離してイオン化されるようになるエネルギーレベルに達する。
イオンは、レーザー照射の結果として直接一次イオンとして又は電荷中性種と一次イオンとの衝突によって形成される二次イオンとして発生し得る(例えば、プロトン移動、カチオン化、電子捕捉)。場合によっては、以下で説明するように、サンプルの準備中にサンプルに付加される化合物(マトリックスなど)によってイオン化が支援される。
レーザー
必要に応じてイオンの脱離を可能にするようになっている、レーザーアブレーションサンプリングシステムのレーザーに関連して前述したような市販のレーザーを含む、様々な異なるレーザーをLDIのために使用することができる。したがって、幾つかの実施形態において、装置は、サンプルから材料を脱着及びイオン化して元素イオンを形成するようになっているレーザーを備え、また、この場合、検出器は、前記サンプリング・イオン化システムから元素イオンを受けて前記元素イオンを検出する。時として、装置は、サンプルから材料を脱着及びイオン化して元素イオンを形成するようになっているレーザーを備え、また、この場合、検出器は、前記サンプリング・イオン化システムから分子イオンを受けて前記分子イオンを検出するようになっている。他の場合には、装置は、サンプルから材料を脱着及びイオン化して元素イオン及び分子イオンの両方を形成するようになっているレーザーを備え、また、この場合、検出器は、前記サンプリング・イオン化システムからイオンを受けて前記元素及び前記分子イオンの両方を検出するようになっている。
典型的なレーザーとしては、193nm、213nm又は266nmで発光するレーザーが挙げられる(MALDIのように、イオン化を促進するためのマトリックスを必要とせずにサンプルからイオンの解放を引き起こすことができる深紫外線レーザー)。サンプルのレーザー照射後の地衣類代謝物を表わすイオンの脱離は、355nmでLe Pogam et al.2016(Scientific Reports 6、Article number:37807)において実証される。
前述のフェムト秒レーザーは、特定のLDI用途でも有利である。
サンプルの迅速な分析には、例えば200Hzを超える高周波のアブレーションが必要である(つまり、1秒当たり200を超えるイオン雲を与える、1秒当たり200を超えるレーザーショット)。一般に、レーザーシステムによるイオン雲生成の周波数は、少なくとも400Hz、例えば、少なくとも500Hz、少なくとも1kHz、少なくとも10kHz、少なくとも100kHz、又は少なくとも1MHzである。例えば、レーザーシステムによるアブレーションの周波数は、200Hz~1MHzの範囲内、500Hz~100kHzの範囲内、1~10kHzの範囲内である。
レーザーアブレーションサンプリングシステムに関して前述したように、レーザー放射線は、様々な光学部品を介してサンプルに向けられるとともに、100μm以下、例えば、50μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、又は10μm、又は、1um以下のスポットサイズ(つまり、レーザー放射線のビームのそれがサンプルに当たるときのサイズ)に合焦され得る。組織切片を含む生物学的サンプルの分析に使用される場合には、個々の細胞を分析するべく、使用されるレーザービームのスポットサイズは、細胞のサイズ及び間隔に依存する。例えば、細胞が互いに密に詰まっている場合(組織切片など)、単一細胞分析が行なわれるようになっていれば、レーザースポットはこれらの細胞よりも大きくないスポットサイズを持つことができる。このサイズはサンプル内の特定の細胞に依存するが、一般に、LDIのレーザースポットの直径は、4μm未満、例えば0.1~4μm、0.25~3μm、又は、0.4~2μmの範囲内である。細胞内分解能で所定の細胞を分析するために、LDIシステムは、これらの細胞よりも大きくないレーザースポットサイズを使用し、より具体的には、細胞内分解能で材料をアブレーションできるレーザースポットサイズを使用する。場合によっては、単一細胞分析は、例えば、細胞が細胞間に空間を伴ってスライド上に広げられる場合、細胞のサイズよりも大きいスポットサイズを使用して実行され得る。したがって、使用される特定のスポットサイズは、分析されている細胞のサイズに応じて適切に選択され得る。生物学的サンプルでは、細胞が全て同じサイズになることはめったにないため、細胞内分解能イメージングが望まれる場合には、イオン生成手順の全体にわたって一定のスポットサイズが維持されれば、レーザースポットサイズを最小の細胞よりも小さくすべきである。
時として、レーザーは、レーザーアブレーションサンプリングに関連して前述したレーザースキャナを備えることができる(8頁参照)。
サンプルチャンバ
LDIシステムのサンプルチャンバは、前述のレーザーアブレーションベース及び脱着ベースのサンプリングシステムのサンプルチャンバと共通する多くの特徴を共有する。サンプルチャンバは、サンプルを支持するためのステージを備える。ステージは、x-y軸又はx-y-z軸で移動可能な並進ステージであってもよい。また、サンプルチャンバは、レーザー放射線によってサンプルから除去された材料を方向付けることができる出口も備える。出口は検出器に接続され、それにより、サンプルイオンの分析が可能である。
サンプルチャンバは大気圧にあってもよい。大気圧でのLDI(特にMALDI)が知られている。ここで、LDIによって生成されたイオンは、窒素などの空気圧ガス流による分析(例えばMS検出器)のためのイオン化から高真空領域への移動を支援する(Laiko et al.,2000.Anal.Chem.,72:652-657)。
場合によっては、サンプルチャンバが真空下又は部分真空下に保持される。したがって、場合によっては、サンプルチャンバ圧力は、50000Pa未満、10000Pa未満、5000Pa未満、1000Pa未満、500Pa未満、100Pa未満、10Pa未満、1Pa未満、約0.1Pa、又は0.1Pa未満、例えば0.01Pa以下である。例えば、部分真空圧は約200~700Paであってもよく、真空圧は0.2Pa以下であってもよい。
当業者であれば分かるように、サンプル圧力が(部分)真空下で大気圧にあるかどうかの選択は、実行される特定の分析に依存する。例えば、大気圧では、サンプルの取り扱いが簡単で、よりソフトなイオン化を適用できる。更に、衝突冷却の現象が発生できるようにするために、ガス分子の存在が望まれる場合があり、これは、標識が大きな分子であり、その断片化、例えば標識原子又はそれらの組み合わせを含む分子フラグメントが望ましくない場合に興味深い可能性がある。
サンプルチャンバを真空下に保持すると、LDIによって生成されたサンプルイオンとチャンバ内の他の粒子との間の衝突を防ぐことができる。場合によっては、チャンバ内のガス分子との衝突により、生成されたサンプルイオンから電荷が失われる可能性があるため、これが好ましい場合がある。サンプルイオンから電荷が失われると、サンプルイオンが装置によって検出されなくなる。
幾つかの実施形態において、サンプルチャンバは、レーザー脱離/イオン化中にサンプル上のレーザー脱離/イオン化の位置へのガスの1つ以上の流れの送出を可能にするべく配置される1つ以上のガスポートを備え、例えば、1つ以上のガスポートはノズルの形態を成す。ガスポート(例えばノズル)は、脱離及びイオン化の瞬間にガスを送出して脱離したイオンに衝突冷却を与えるように動作可能であるが、その特定の時間に限る。残りの時間、ガスポートは、チャンバにガスを導入しないため、真空ポンプへの負担が軽減される。
イオン光学素子
サンプルイオンビームは、当技術分野では抽出電極として知られている、サンプルの近くに位置された静電プレートを介してサンプルから捕捉される。抽出電極は、レーザーアブレーションによって脱離したサンプルイオンをサンプルの局所性から除去する。これは、一般に、作用するプレート上に位置されたサンプルと電極(サンプル電極)、及び電位差が大きい抽出電極によって実現される。抽出電極に対するサンプルの極性に応じて、正又は負に帯電した二次イオンが抽出電極によって捕捉される。
幾つかの実施形態において、電極全体にわたる電荷は、レーザー脱離/イオン化の間一定である。場合によっては、脱離/イオン化に続いて電荷が変化され、例えば、遅延抽出では、レーザーパルスによって誘導された脱離/イオン化に続く何らかの短い時間遅延の後に加速電圧が印加される。この技術は、イオンエネルギーの広がりに対する飛行時間補償をもたらし、この場合、運動エネルギーが大きいイオンは、運動エネルギーが小さいイオンよりも、サンプルから検出器に向かってより速い速度で移動する。したがって、全てのイオンが同じ速度で移動しているわけではないため、この速度の違いにより、検出器の分解能が低下する可能性がある。したがって、サンプル電極と抽出電極の両端間の電圧の印加を遅らせることにより、運動エネルギーの低いイオンは、加速電圧が印加されたときにサンプル電極に近いままであり、したがって、標的電極からより遠いイオンと比較してより大きな電位で加速され始める。適切な遅延時間により、より遅いイオンは、十分に加速されて、パルス加速システムからある程度の距離を飛行した後にレーザー脱離/イオン化後に高い運動エネルギーを持っていたイオンを捕捉する。同じ質量電荷比のイオンは、同時にフライトチューブを通って検出器にドリフトする。したがって、幾つかの実施形態において、サンプル電極及び抽出電極は、サンプルの脱離/イオン化を引き起こすレーザー短絡後の設定された時間に電極全体にわたって電荷を印加するように制御可能である。
次に、サンプルイオンは、1つ以上の更なる静電レンズ(当技術分野では転写レンズとして知られている)を介して検出器に移送される。転写レンズは、サンプルイオンのビームを検出器に集束させる。一般に、複数の転写レンズを伴うシステムでは、1つの転写レンズのみが特定の分析に関与する。各レンズは、サンプル表面の異なる倍率を与えてもよい。一般に、電極と検出器との間には、更なるイオン操作構成要素、例えば、1つ以上の開口、質量フィルタ又はデフレクタプレートのセットが存在する。電極、転写レンズ、及び、任意の更なる構成要素は、共に合わさって、イオン光学素子を形成する。適切なイオン光学装置を製造するための構成要素は、商業的供給業者、例えばAgilent,Waters,Brukerから入手可能であり、本明細書で以下に論じられるようにイオンを検出器に送出するために当業者によって適切に位置決めされ得る。
以下で説明する検出器に加えて、ソフトイオン化(例えば分析対象の分子の結合を切断せずにイオン化するなど)をもたらすようにLDIを実行でき、場合によっては、検出器がタンデムMSであってもよく、この場合、第1のm/z分離は、選択されたイオンがそれらのフラグメントに分解されてフラグメントが検出される第2のm/z分離を受ける前に、サンプルからイオンを選択するように実行される。
LDIを採用する方法
また、本発明の態様は、LDIを使用して生物学的サンプルを分析するための方法を提供する。この分析では、細胞は標識で標識化され、これらの標識は、サンプルのLDIに続いて生成されたイオンで検出される。したがって、本発明の態様は、複数の細胞を含むサンプルに関してマスサイトメトリーを実施するための方法において、a.サンプル中の1つ以上の異なる標的分子を1つ以上の質量タグで標識化して、標識サンプルをもたらすステップと、b.サンプルのレーザー脱離イオン化を実行するステップであって、複数の個々のイオン雲を形成するべくレーザー脱離/イオン化が複数の位置で行なわれる、ステップと、c.イオン雲を個別に質量分析に晒すステップであって、プルーム内の標識の検出がサンプルの画像の構築を可能にし、随意的に、複数の位置が複数の既知の位置である、ステップとを含む、方法を提供する。
幾つかの実施形態では、1つ以上の標識が標識原子を含む。この場合、標識は本明細書で以下に記載されるように機能し、それにより、特異的結合対の要素(例えば、タンパク質抗原に結合する抗体、又はサンプル中のRNAに結合する核酸)が、1つ以上の標識原子(例えば、ランタニド及びアクチニド)を含む元素タグに付着される。元素タグは、単一タイプの標識原子(例えば、特定の元素の単一同位体の1つ以上の原子)を含むこともでき、或いは、異なる複数の種類の標識原子(例えば、異なる元素/同位体)を含むこともでき、それにより、特定の組み合わせ要素/同位体が標識として作用するように多数の異なるタグを生成することができる。場合によっては、標識原子が元素イオンとして検出される。幾つかの実施形態では、標識原子が分子イオン内のサンプルから放出される。したがって、標識原子の質量チャネルでの検出の代わりに、サンプル内の標識物質の存在が分子イオンの質量チャネルで検出される(つまり、質量チャネルは、標識原子のみに対して、分子から標識原子を差し引いた質量によって単純にシフトされる)。しかしながら、幾つかの実施形態において、標識原子を含む分子は、異なる標識原子間で異なり得る。その場合、分子残基と標識原子とを含むイオンが、タンデムMSの適用などにより、それぞれの試薬ごとにより一貫した質量ピークをもたらすフラグメンテーション方法に晒される。腫瘍なLDIイメージングマスサイトメトリースキームに対するこれら全ての変形及び変更の目標は、利用可能なマスチャネルの数を最大化すると同時に、マスチャネル間の重なり合いを減らすことである。
幾つかの実施形態において、染色試薬は、質量標識材料及び個々の元素イオン又は標識原子の単一コピーを含む分子イオンの解放及びイオン化を促進するように設計され得る。また、染色試薬は、質量標識材料及び個々の元素イオン又は標識原子の幾つかのコピーを含む分子イオン(又は上記のようにそれらの組み合わせ)の解放及びイオン化を促進するように設計され得る。更なる代替案として、染色試薬自体の質量を利用して、マスサイトメトリー用の検出チャネルを作成することができる。この場合、希土類同位体は染色に使用されず、染色試薬の化学的性質を変更して多数の質量チャネルを作成することにより、染色試薬の質量が変化する。この変化は、希土類同位体を必要とせずに、炭素、酸素、窒素、硫黄、リン、水素、及び、同様の同位体を使用して行なうことができる。
幾つかの実施形態において、サンプルは、レーザー放射線線吸収剤組成物によっても処理される。この組成物は、照射されたときにサンプルによるレーザー光の吸収を高めるように作用し、したがって、エネルギーの伝達を増大させて標識原子を励起する(したがって、標識原子又はそれらの組み合わせを含む元素イオン又は分子イオンの生成を促進する)。
LDIに関連する番号付きの実施形態
1.サンプルを分析するための装置であって、a.サンプルを収容するためのサンプルチャンバ;b.サンプルから材料を脱離及びイオン化してイオンを形成するようになっているレーザー;c.脱離イオン化によって形成されたイオンをサンプリングし、それらをサンプルから離れるように検出器に向けて方向付けるようになっているイオン光学素子;d.前記イオン光学素子からイオンを受けて前記イオンを分析するための検出器を備え、随意的に、装置が本発明の態様のレーザー走査システムを備える、装置。
2.装置が、サンプルから材料を脱着及びイオン化して元素イオンを形成するようになっているレーザーを備え、検出器が、前記サンプリング・イオン化システムから元素イオンを受けて前記元素イオンを分析するようになっている、実施形態1の装置。
3.装置が、サンプルから材料を脱着及びイオン化して元素イオンを形成するようになっているレーザーを備え、検出器が、前記サンプリング・イオン化システムから分子イオンを受けて前記分子イオンを検出するようになっている、実施形態1又は2の装置。
4.装置が、サンプルから材料を脱着及びイオン化して元素イオン及び分子イオンの両方を形成するようになっているレーザーを備え、検出器が、前記サンプリング・イオン化システムからイオンを受けて前記元素及び前記分子イオンの両方を検出するようになっている、実施形態1から3のいずれかの装置。
5.レーザーが、193nm、213nm、又は、266nmで放射線を放出するレーザーなどの深紫外線レーザーである、実施形態1から4のいずれかの装置。
6.レーザーがフェムト秒レーザーである、実施形態1から5のいずれかの装置。
7.脱離イオン化が、真空下、部分真空下、又は、大気圧下においてサンプルチャンバ内で起こる、実施形態1から6のいずれかの装置。
8.サンプルチャンバは、レーザー脱離イオン化中にサンプル上のレーザー脱離イオン化の位置へのガスの1つ以上の流れの送出を可能にするべく配置される1つ以上のガスポートを備え、例えば、1つ以上のガスポートはノズルの形態を成す、実施形態1から7のいずれかの装置。
9.1つ以上のガスポートは、ガスの1つ以上のパルスがレーザーからのレーザー放射線によってサンプルから生成されたイオンを衝突冷却できるようになっている、実施形態8に記載の装置。
10.複数の細胞を含むサンプルに関してマスサイトメトリーを実施するための方法において、a.サンプル中の1つ以上の異なる標的分子を1つ以上の質量タグで標識化して、標識サンプルをもたらすステップと、b.サンプルのレーザー脱離イオン化を実行するステップであって、複数のイオン雲を形成するべくレーザー脱離イオン化が複数の既知の位置で行なわれる、ステップと、c.イオン雲を質量分析に晒すステップであって、雲内の1つ以上の質量タグからのイオンの検出がサンプルの画像の構築を可能にする、ステップとを含む、方法。
11.複数のイオン雲が複数の個々のイオン雲であり、それぞれの個々のイオン雲が既知の位置でレーザー脱離イオン化から形成され、イオン雲を質量分析に晒すステップは、個々のイオン雲を質量分析に晒すことを含む、実施形態10に記載の方法。
12.それぞれの異なる標的が異なる特異的結合対要素(SBP)によって結合され、それぞれの異なるSBPが質量タグに連結され、それにより、各標的が特定の質量タグで標識化される、実施形態10又は11に記載の方法。
13.ステップaの前に又はステップa,b間に、イオン化促進剤組成物でサンプルを処理するステップを更に含む、実施形態10から12のいずれか1つに記載の方法。
14.イオン化促進剤組成物は、標識原子及び/又は標識原子を含む分子イオンのイオン化を促進する、実施形態13に記載の方法。
15.ステップaの前に又はステップa,b間に、サンプルをレーザー放射線吸収剤組成物で処理するステップを更に含む、実施形態10から14のいずれか1つに記載の方法。
2.光検出器
光検出器の典型的なタイプは、光電子増倍管及び電荷結合デバイス(CCD)を含む。光検出器を使用して、元素質量分析によるイメージングの前に、サンプルをイメージングする及び/又は対象の特徴/関心領域を特定してもよい。
光電子増倍管は、光電陰極、幾つかのダイノード、及び、アノードを備える真空チャンバを備える。光電陰極に入射した光子は、光電効果の結果として光電陰極に電子を放出させる。増倍電子電流を生成するための二次放出のプロセスに起因して電子がダイノードによって増倍され、その後、光電陰極に入射する電磁放射の検出の指標をもたらすべく増倍電子電流がアノードによって検出される。光電子増倍管は、例えば、ThorLabsから入手可能である。
CCDは、感光性ピクセルのアレイを含むシリコンチップを備える。露光中、各ピクセルは、ピクセルに入射する光の強度に比例して電荷を生成する。露光後、制御回路は、一連の電荷の移動を引き起こして、一連の電圧を生成する。次に、これらの電圧を分析して画像を生成できる。適切なCCDは、例えば、Cell Biosciencesから入手可能である。
画像の構築
上記の装置は、サンプルから除去されたイオン化されたサンプル材料のパケット内の複数の原子に信号を与えることができる。サンプル材料のパケット内の原子の検出は、原子がサンプル内に自然に存在するため、又は原子が標識試薬によってその位置に局在化されているため、アブレーションの位置にその存在を明らかにする。サンプルの表面の既知の空間位置からイオン化されたサンプル材料の一連のパケットを生成することにより、検出器信号はサンプル上の原子の位置を明らかにするため、信号を使用してサンプルの画像を構築できる。複数の標的を特定可能な標識で標識化することにより、標識原子の位置を同族の標的の位置に関連付けることができるため、この方法では複雑な画像を作成でき、蛍光顕微鏡法などの従来の手法を使用して達成できるレベルをはるかに超える多重化レベルに到達できる。
画像への信号の組み立ては、コンピュータを使用し、既知の技術とソフトウェアパッケージとを使用して実現できる。例えば、Kylebank Softwareが提供するGRAPHISパッケージが使用されてもよく、或いは、TERAPLOTなどの他のパッケージを使用することもできる。MALDI-MSIなどの技術からのMSデータを使用するイメージングは、当技術分野で知られており、例えば、引用文献xxiiは、Matlabプラットフォーム上のMSイメージングファイルを表示して分析するための「MSiReader」インタフェースを開示し、また、引用文献xxiiiは、完全な空間及びスペクトル分解能で2D MSIデータセット及び3D MSIデータセットの両方を迅速にデータ探索及び視覚化するための2つのソフトウェア機器、例えば「Datacube Explorer」プログラムを開示する。
本明細書に開示された方法を使用して得られた画像は、例えばIHCの結果が分析されるのと同じ方法で、更に分析され得る。例えば、画像は、サンプル内の細胞亜集団を描写するために使用され得るとともに、臨床診断に役立つ情報を与えることができる。同様に、SPADE分析を使用して、本開示の方法が提供する高次元サイトメトリーデータから細胞階層を抽出することができる[xxiv]。特定の態様において、細胞型(例えば、SPADE分析によって特定される)は、複数の細胞型(少なくともその幾つかがマーカーの組み合わせによって特徴付けられる)が同時に視覚化されることを可能にするために着色され得る。
これに代えて又は加えて、連続切片は、イメージングマスサイトメトリーによってイメージングされて、積み重ねられ、サンプルの3D画像を提供してもよい。豊富なタグ付け原子は、細胞、細胞のクラスター、微小転移巣、腫瘍、又は、組織のサブ領域など、2次元又は3次元の特徴又は関心領域(ROI)全体にわたって統合されてもよい。特定の態様では、1つ以上の組織切片上のそのような特徴又はROIを迅速に分析するために、レーザー走査を実行することができる。信号のそのような統合は、分析を単純化し、及び/又は、感度を改善し得る。
複数のイメージングモダリティ
複数のイメージングモダリティを使用して、1つ以上の組織切片をイメージングすることができる。場合によっては、同じ組織からの切片がそれぞれ、その後に位置合わせされる異なるモダリティによってイメージングされてもよい(例えば、同じ座標系にマッピングされ、積み重ねられ、重ね合わされ、及び/又は、組み合わされて、より高いレベルの特徴を特定する)。
本発明の態様は、画像を位置合わせする方法を含んでもよく、該方法は、イメージングマスサイトメトリー以外のイメージングモダリティによって組織サンプルの第1の組織切片から第1の画像を取得するステップと、イメージングマスサイトメトリーによって組織サンプルの第2の組織切片の第2の画像を取得するステップと、第1及び第2の画像を位置合わせするステップとを含む。特定の態様では、第1の画像、又は、第1及び第2の画像の両方が、第三者によって提供されてもよい。
場合によっては、イメージングマスサイトメーターが、明視野、蛍光、及び/又は、非線形顕微鏡法などの光学顕微鏡法を含むがこれらに限定されない、更なるモダリティでイメージングするために装備されてもよい。例えば、イメージングマスサイトメーターは、レーザーアブレーション及び光学顕微鏡法のための光学素子を積み重ねることができる。組織化学的染色液は、イメージングマスサイトメトリーによる分析のために関心領域(ROI)を特定するべく光学顕微鏡法によってイメージングされてもよい。これに代えて又は加えて、本明細書に記載されるように、光学顕微鏡法を使用して、第1の組織切片からのイメージングマスサイトメトリーによって得られた画像を、別のモダリティ(例えば、別のシステム)によって第2の組織切片(例えば、連続切片)から得られた画像と位置合わせしてもよい。高速(例えば、フェムト秒)レーザーが使用される場合、非線形顕微鏡法は、1つ以上の高調波で実行され、それにより、サンプルの構造的態様をイメージングしてもよい。抗体が標識原子及びフルオロフォア標識の両方でタグ付けされる場合、フルオロフォア標識の分布の分析は、サンプルを破壊しない場合があり、その後に標識原子のIMC分析が続く場合がある。特定の態様において、フルオロフォア標識は、関心領域から開裂され(例えば、光切断され)て吸引後に分析される蛍光バーコードであってもよい。
場合によっては、更なるイメージングモダリティは、走査型電子顕微鏡法や透過型電子顕微鏡法などの電子顕微鏡法であってもよい。一般的なレベルでは、電子顕微鏡は、電子銃(例えば、タングステンフィラメントカソードを伴う)、及び、ビームを制御してサンプルチャンバ内のサンプルに向ける静電/電磁レンズ及び開口を備える。サンプルは真空下に保持されるため、ガス分子は、電子銃からサンプルに向かう途中で電子を妨害又は回折することができない。透過型電子顕微鏡法(TEM)では、電子がサンプルを通過すると、電子が偏向される。偏向された電子は、蛍光スクリーンなどの検出器又は場合によってはCCDに結合された高解像度蛍光体によって検出される。サンプルと検出器との間には、検出器上の偏向された電子の倍率を制御する対物レンズがある。
TEMは、検出器に衝突する偏向電子から画像を再構成できるように十分な電子がサンプルを通過できるようにするべく極薄切片を必要とする。通常、TEMサンプルは、ウルトラミクロトームを使用して調製される際、100nm以下である。生物学的組織標本は、化学的に固定され、脱水され、ポリマー樹脂に埋め込まれて、極薄の切片化を可能にするのに十分に安定化される。生体試料、有機ポリマー、及び、同様の材料の切片は、必要な画像コントラストを実現するために、重原子標識による染色を必要とする場合がある。これは、本来の未染色状態の未染色の生物学的サンプルが電子を偏向させて電子顕微鏡法画像を記録できるようにするために電子と強く相互作用することはめったにないからである。
前述のように、薄い切片を使用すると、IMS又はIMCによって分析されたサンプルに対して電子顕微鏡法を実行することができる。したがって、高解像度の構造画像を、電子顕微鏡法、例えば透過型電子顕微鏡法によって取得して、その後、この高解像度画像を使用して、IMS又はIMCによって取得された画像データの解像度を、レーザー放射線を使用するアブレーションで達成可能な解像度を超える解像度に精緻化することができる(光子と比較して電子の波長がはるかに短いため)。場合によっては、電子顕微鏡法とIMC又はIMSによる元素分析の両方が単一の装置でサンプルに関して実行される(IMC/IMSは破壊的なプロセスであるため、電子顕微鏡法はIMC/IMSの前に実行される)。
1つ以上の組織切片は、イメージングマスサイトメトリー及び1つ以上の更なるイメージングモダリティによって分析されるとともに、組織切片を保持するスライド上に存在する基準(座標系など)に基づいて位置合わせされてもよい。これに代えて又は加えて、位置合わせは、同じ組織からの2つの切片に存在する特徴(例えば、構造又はパターン)を整列させることによって実行され得る。特徴は、同じ又は異なるイメージングモダリティによって特定されてもよい。同じイメージングモダリティによって特定された場合でも、特徴又はそれらのx、y座標を使用して、異なるイメージングモダリティを位置合わせしてもよい。
特定の態様では、更なるイメージングモダリティがMALDI質量分析イメージングである。MALDIイメージング用の組織切片のサンプル調製は、イメージングマスサイトメトリー用の調製と互換性がない場合がある。したがって、第1の切片のMALDIイメージングは、同じ組織からの第2の切片(例えば、連続切片)のイメージングマスサイトメトリーと位置合わせされてもよい。MALDIイメージングにおけるレーザー脱離イオン化は、質量分析によって検出される分子イオンをもたらす。サンプルのMALDI画像は、腫瘍及び/又は健康な組織を含む組織切片又はそのサブ領域における分析物(例えば、癌薬物、潜在的な癌薬物、又はそれらの代謝産物などの薬物)の分布を特定してもよい。分析物が薬物である場合、その分析物は、本明細書に記載されるように分析のために組織サンプルが収集される被検体(例えば、ヒト患者又は動物モデル)に投与されてもよい。他の点では、同一の分析物が、天然に存在しない同位体(H、C、又はNなど)などで同位体標識化されて、特定すべきマトリックス及び当初の分析物に関連する質量スペクトルにおける予期されるピークとともに組織に適用される。分析物の分布をイメージングすることに代えて又は加えて、MALDI画像は、内因性生体分子(又はその分子イオン)の分布をもたらしてもよい。MALDIイメージングは、共有又は類似の組織化学的染色液(クレシルバイオレット、ポンソーS、ブロモフェノールブルー、ルテニウムレッド、トリクローム染色液、四酸化オスミウムなど)を介してIMC画像と位置合わせされてもよい。特定の態様において、MALDIイメージングによって分析されたサンプルの標識原子は、手順を切り抜け、IMCの分析を可能にし得る。しかしながら、MALDIサンプル調製はIMCイメージングのサンプル調製を複雑にする可能性があり、その場合、MALDI及びIMC画像は異なる組織切片から取得されてもよい。
MALDI画像とマスサイトメトリー画像との位置合わせは、薬物を保持している組織の部分及び/又は組織に対する薬物の効果への更なる洞察を提供し得る。例えば、組織化学的染色液、生存率試薬及び/又は細胞状態指標を含む金属は、薬物が結合組織(例えば、間質、細胞外マトリックス又はコラーゲン又は糖タンパク質などの高分子、アクチン、ケラチン、チューブルインなどの繊維性タンパク質など)、細胞又は細胞のサブ領域(例えば、細胞膜、細胞質及び/又は核)、増殖細胞、生細胞又は死細胞、低酸素細胞又は領域、壊死領域、腫瘍細胞又は腫瘍痕跡を有する領域(例えば、腫瘍に特徴的な表面マーカー及び/又は細胞状態マーカーの組み合わせ)、及び/又は、健康な組織のうちの少なくとも1つを標的とするかどうかを特定してもよい。場合によっては、薬物の効果は、薬物の分布(例えば、MALDIイメージングによって特定される)と薬物又はその周辺の組織の状態(例えば、イメージングマスサイトメトリーによって特定される)との組み合わせによって推測され得る。例えば、数、位置、細胞活性表面マーカー、細胞内シグナル伝達マーカー、腫瘍細胞又は腫瘍浸潤免疫細胞の細胞型マーカーを使用して、薬物の効果を特定し、及び/又は、更なる薬物標的(薬物に応答して腫瘍細胞又は腫瘍浸潤免疫細胞でアップ又はダウンレギュレートされる受容体など)を特定してもよい。腫瘍浸潤免疫細胞は、樹状細胞、リンパ球(B細胞、T細胞及び/又はNK細胞など)、又は、CD4+、CD8+、及び/又はCD4+CD25+T細胞などの免疫細胞のサブセットのうちの1つ以上を含んでもよい。場合によっては、イメージングマスサイトメトリーは、腫瘍微小環境内の複数の免疫細胞タイプを特定してもよく、更に細胞状態(例えば、免疫応答の活性化又は抑制に関与する受容体の細胞内シグナル伝達及び/又は発現)を特定してもよい。MALDIによってイメージングされた薬物分布の領域は、イメージングマスサイトメトリー分析のためのROIを特定してもよく、及び/又は、マスサイトメトリー画像と位置合わせされてもよい。
特定の態様では、IMC画像を非IMC画像と位置合わせすることにより、細胞又は細胞内解像度で複数(例えば、少なくとも5、10、20、又は30)の異なる標的(例えば、又はそれらに関連する標識原子)の分布が与えられる。IMC画像は、LA-ICP-MSを介して及び随意的に本明細書に記載されるようなフェムト秒レーザー及び/又はレーザー走査システムの使用によって取得されてもよい。
位置合わせは、2つの画像(異なるイメージングモダリティによって取得された)を互いに(例えば、共有座標系に)マッピング(例えば、位置合わせ)することを含んでもよい。2つの位置合わせされた画像(又は各画像の態様)を重ね合わせたり組み合わせたりして、2つの異なる画像モダリティによって検出された2つの標的の共発現などのより高いレベルの特徴を提示してもよい。特定の態様では、位置合わせが関心領域でのみ行なわれてもよい。
サンプル
本開示の特定の態様は、生物学的サンプルをイメージングする方法を提供する。そのようなサンプルは、サンプル中のこれらの細胞の画像を提供するためにイメージングマスサイトメトリー(IMC)に晒され得る複数の細胞を含むことができる。一般に、本発明の態様は、免疫組織化学(IHC)技術によって現在研究されている組織サンプルを分析するために使用できるが、質量分析(MS)又は発光分光分析(OES)による検出に適した標識原子の使用を伴う。
特定の態様では、サンプルが複数の切片(例えば、連続組織切片)を含んでもよい。特定の態様において、組織切片は、切片化の前に、冷却(例えば、凍結)され及び/又はワックス(例えば、パラフィン)が埋め込まれてもい。当業者に知られている任意の切片化方法が使用されてもよいが、切片化の殆どの方法は、鋭い刃を斜めに適用して組織サンプルを切断し、得られた組織切片をスライドなどの固体支持体に取り付けることを伴う。同じ組織からの切片(例えば、連続切片)は、イメージングマスサイトメトリー及び/又は異なるモダリティによってイメージングされて、本明細書に記載されるように互いに位置合わせされてもよい。染色及び/又はイメージングモダリティの浸透が組織切片の最上層のみを分析することを可能にする場合、組織切片化は、互いに向き合う側で染色及び/又はイメージングされる2つの連続切片を調製することを伴ってもよい。例えば、一方の切片が、もう一方の切片に隣接する面を与えるように反転されてもよい。最初の切片に基づいてROIを特定する場合、及び/又は、2つの切片からの画像を位置合わせする場合、1つの切片から取得した画像が反転されてもよい。これに代えて又は加えて、連続切片は、切片化前の互いに対するそれらの大まかな位置が保存又は表わされるように、それぞれのスライド(又は同じスライド)上の基準と位置合わせされ得る。任意の適切な組織サンプルを、本明細書に記載の方法で使用することができる。例えば、組織は、上皮、筋肉、神経、皮膚、腸、膵臓、腎臓、脳、肝臓、血液(例えば、血液塗抹標本)、骨髄、頬スワイプ、頸部スワイプ、又は、任意の他の組織のうちの1つ以上からの組織を含むことができる。生物学的サンプルは、生きている被検体から得られた不死化細胞株又は一次細胞であってもよい。診断、予後、又は、実験(例えば、薬剤開発)の目的のために、組織が腫瘍からのものであってもよい。幾つかの実施形態において、サンプルは、既知の組織からのものであってもよいが、サンプルが腫瘍細胞を含むかどうかが不明であってもよい。イメージングは、腫瘍の存在を示す標的の存在を明らかにすることができるため、診断を容易にする。腫瘍からの組織は、対象の方法によっても特徴付けられる免疫細胞を含んでもよく、腫瘍生物学への洞察を提供してもよい。組織サンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織を含んでもよい。組織は、哺乳動物、動物研究モデル(例えば、ヒト腫瘍異種移植片を伴う免疫不全齧歯類などの特定の疾患の動物研究モデル)、又は、ヒト患者などの任意の生きている多細胞生物から得ることができる。
組織サンプルは、例えば、2~10μmの範囲内、例えば4~6μmの厚さを有する切片であってもよい。そのような切片を調製するための技術は、脱水ステップ、固定、埋め込み、透過処理、切片化などを含めて、ミクロトームを使用するなど、IHCの分野からよく知られている。したがって、組織を化学的に固定することができ、その後、切片を所望の平面で調製することができる。凍結切片又はレーザーキャプチャーマイクロダイセクションを使用して組織サンプルを調製することもできる。細胞内標的の標識化のための試薬の取り込みを可能にするためにサンプルが透過処理されてもよい(上記を参照)。
分析される組織サンプルのサイズは、現在のIHC法と同様であるが、最大サイズはレーザーアブレーション装置、特にサンプルチャンバに収まるサンプルのサイズによって決定付けられる。最大5mm×5mmのサイズが一般的であるが、より小さなサンプル(1mm×1mmなど)も有用である(これらの寸法は、切片の厚さではなく、切片のサイズを指す)。
本開示は、組織サンプルのイメージングに有用であることに加えて、代わりに、付着細胞又は固体表面に固定化された細胞の単層などの細胞サンプルのイメージングに使用することができる(従来の免疫細胞化学の場合のように)。これらの実施形態は、細胞懸濁液マスサイトメトリーのために容易に可溶化することができない付着細胞の分析に特に有用である。したがって、本開示は、現在の免疫組織化学的分析を強化するために有用であるだけでなく、免疫細胞化学を強化するために使用することができる。
シリアルセクション及びリサンプリング
特定の態様において、組織の連続切片は、イメージングマスサイトメトリーによって分析されてもよい。連続切片は、同じように染色されるか、異なるマーカーで染色されてもよい。例えば、第1の連続切片は、タンパク質マーカー(又は主にタンパク質マーカー)に関して染色されてもよく、第2の連続切片は、RNAマーカー(又は主にRNAマーカー)に関して染色されてもよい。これは、あるセットのマーカー(タンパク質マーカーの抗原検索など)のサンプル調製が、別のセットのマーカー(RNAマーカーなど)を検出する機能を損傷又は損なう可能性がある場合に特に有用である。
複数の連続切片は、同じ又は重複する質量タグを含む異なるセットのSBPで染色されてもよい。或いは、連続切片は、同じ又は重複する質量タグを含む同じ又は重複するSBPのセットで染色されてもよい。連続切片の全体にわたって共有される特徴に存在するマーカーは、分析のために統合又は結合されてもよい。例えば、細胞などの特徴において後続の切片にわたって検出された同じマーカー(例えば、同じSBPによって結合される)を一緒に加えて、その特徴における発現を決定することができる。これは、より高い感度をもたらす可能性があり、低発現マーカーの存在量を検出及び/又は決定するために特に有用となり得る。細胞などの特徴は、単一の切片よりも大きい場合があり、或いは、切片間で分割されている場合がある。様々な方法により、薄い切片をミクロンスケールで切断できる。レーザーアブレーションの深さと組み合わせたサンプル調製中の切片の脱水は、切片の厚さの大部分をアブレーションすることを可能にし得る。切片がレーザーアブレーションの深さよりも大幅に厚い場合、ある場所でリサンプリングすると、特徴からより多くの材料を分析できるようになる。fsレーザーなど、強いパルスが短いレーザーは、サンプルからよりきれいにサンプリングでき(例えば、アブレーション部位を超える熱放散が殆どない)、リサンプリングがより適切に可能になる。上記のように、複数の連続切片のリサンプリング及び/又は分析により、より高い感度が可能になる場合がある。更に、複数の連続切片のリサンプリング及び/又は分析により、3Dマスサイトメトリー画像の再構成が可能になる場合がある。
特定の態様において、特徴の特定は、光学的調査中に行なわれてもよく、また、レーザーは、光学的に特定された対象の特徴に沿って走査されてもよい。或いは、特徴は、ミクロンのスケール(例えば、直径0.5から2ミクロン)のピクセルのアレイなどの、ピクセルごとのマスサイトメトリー画像から特定されてもよい。特徴に関連するピクセルが分析段階で特定されてもよく、また、その特徴のマーカーからの信号が統合されてもよい。特徴に沿ったレーザー走査、ピクセルのグループ化(ステージの変換及び/又はレーザー走査によって取得される)、1つの位置でのリサンプリング、及び/又は、連続切片全体にわたる特徴の統合は、任意の組み合わせで、特徴と関連付けられたマーカーの感度を向上させることができる。レーザー走査を適用すると、大幅な時間の節約が可能になる場合があり、これは、連続切片を分析するときに更に価値がある。
IMCは、金属標識からの信号が殆ど又は全く重複せず、それにより、1つの組織切片から40以上のタンパク質(及び/又は他のマーカー)を同時にイメージングできるという点で、免疫組織化学イメージングや免疫蛍光顕微鏡法に比べて固有の利点をもたらす。場合によっては、IMCは、他の方法よりも低い感度を有する場合がある。例えば、従来のIMCの検出限界は、100個の原子で標識された抗体とICP-TOF-MSの典型的な透過率とに基づいて、直径1マイクロメートルのレーザースポット(ピクセル)当たり400コピーの抗体となる場合がある。細胞などの特徴は、10、20、50、又は100平方ミクロンを超える場合がある。従来のIMCでは、3~10ミリメートルの厚さ(例えば、5~7マイクロメートルの厚さ)の組織は、一般に、IMCで使用される典型的なレーザーエネルギーにおける完全なアブレーションのおよその限界である(レーザーヘッドで1マイクロジュールを想定)マイクロメートル以下の厚さまで乾燥される。多くではないにしても、幾つかの細胞は最初の切片の厚さがより大きい。したがって、組織切片は、多くの場合、完全な細胞ではなく、細胞の断片を含む。注目すべきことに、異なるレーザー速度、波長、及び、エネルギーは、これらの想定を変更する場合がある。場合によっては、高速(fsなど)レーザーにより、より厚い組織切片へのリサンプリング及び「ドリル穿孔」が可能になる場合がある。
IMCにより細胞などの特徴を調べると、均一に分布し得る(例えば、細胞質全体にわたって)存在量の少ないマーカーの検出力が低くなる場合があり、細胞の一部におけるそれらの存在量は、細胞全体におけるよりも低い場合がある。更に、幾つかのマーカーは特定の細胞区画に存在する可能性があるため、幾つかのマーカーは細胞の特定の部分に過小表示される可能性がある。例えば、細胞の核(例えば、イリジウム核酸インターカレーターによって検出可能)は、特定の組織切片において、完全に存在するか、完全に存在しないか、又は、その画分に存在し得る。結果として、細胞の核は、良好な信号対雑音比で完全に検出可能であるか、或いは、部分的に検出可能であるか、或いは、検出できない/全く存在しないかのいずれかとなり得る。同様に、タンパク質マーカーは、細胞内コンパートメント/セクションでの存在に応じて、検出可能、部分的に検出可能、又は、全く検出不可能となり得る。検出閾値を超えるマーカーの場合でも、感度が高いほど、マーカーの存在量の定性的又は定量的評価が改善又は可能になる場合がある。
本明細書に記載されるように、方法又はシステムは、細胞内に大量に存在する主要なマーカーを測定することができ、測定は連続する組織切片で行なわれる。その後、主要なマーカー信号を使用して、各断面の特定の細胞を表わす対象物を特定したり、細胞のような対象物をセグメント化したり、各組織切片に存在する細胞の典型的な表現型を開発したりできる。その後、マーカーの署名又は細胞の表現型を、特定された各対象物のXY座標にリンクすることができる。次に、XY座標が近い同様の主要なマーカー署名/表現型の対象物が、マイクロトミング中に切断された同じ細胞の断片として相互にリンクされる。連続切片内の対象物が同じ細胞を表わすものとして特定されると、全てのマーカーの信号が連続組織切片間で統合(例えば、合計)され、マーカー信号の「体積積分」が効果的に生成される。これにより、マーカー信号の合計が合計切片の数に比例する可能性があるのに対し、バックグラウンド信号は合計切片数の平方根に比例するため、信号と信号対雑音比が向上する。
更に、特定の細胞コンパートメント(又はコンパートメント内のマーカー)が1つの組織切片に存在しない場合、該細胞コンパートメントは、同じ組織ブロックの前又は次の切片に存在し得る。したがって、幾つかのマーカーの検出を、何倍も改善することができ、更には有効にすることさえできる。画像セグメンテーションのフィールド法(例えば、分水界法)で知られているものを含め、同じ細胞に属するものとして主要なマーカー署名を認識する複数の方法が利用可能である。上記の例は細胞に関して与えられるが、この手法は、ここで説明する任意の特徴に関して使用され得る。形状及び/又はマーカー発現などの同様の特徴を有する及び/又は同様の周囲の特徴のセットを有する同様のXY座標の特徴は、そのようなセグメンテーション後に同じ細胞特徴(例えば、細胞)に属するものとして認識され得る。
サンプルキャリア
特定の実施形態において、サンプルは、イメージング質量分析のためにサンプルを位置決めするために、固体支持体(すなわち、サンプルキャリア)上に固定化されてもよい。固体支持体は、光学的に透明で、例えばガラス又はプラスチックから形成されてもよい。サンプルキャリアが光学的に透明である場合、図5に示すように、支持体を介したサンプル材料のアブレーションが可能になる。時として、サンプルキャリアは、例えば、アブレーション又は脱着及び分析されるべき対象の特徴/関心領域の相対位置の計算を可能にするために、本明細書に記載の装置及び方法と共に使用するための基準点として作用する特徴を含む。基準点は、光学的に分解可能であってもよく、或いは、質量分析によって分解可能であってもよい。
標的要素
イメージング質量分析では、1つ以上の標的元素(つまり、元素又は元素同位体)の分布が重要となり得る。特定の態様において、標的要素は、本明細書に記載されるように標識原子である。標識原子は、サンプルに直接に単独で加えられてもよく或いは生物学的に活性な分子に又は分子内に共有結合されてもよい。特定の実施形態において、標識原子(例えば、金属タグ)は、以下でより詳細に説明するように、DNA又はRNA標的にハイブリダイズするための抗体(その同族抗原に結合する)、アプタマー、又は、オリゴヌクレオチドなどの特異的結合対(SBP)の要素にコンジュゲートされてもよい。標識原子は、当技術分野で知られている任意の方法によってSBPに結合されてもよい。特定の態様において、標識原子は、ランタニド又は遷移元素などの金属元素又は本明細書に記載の別の金属タグである。金属元素は、60amuを超える、80amuを超える、100amuを超える、又は、120amuを超える質量を有してもよい。本明細書に記載の質量分析計は、金属元素の質量より下の元素イオンを枯渇させる場合があり、それにより、豊富なより軽い元素が空間電荷効果を生み出さない及び/又は質量検出器を圧倒しない。
組織サンプルの標識化
本開示は、標識原子、例えば複数の異なる標識原子で標識化されたサンプルの画像を生成し、この場合、標識原子は、サンプルの特定の、好ましくは細胞内の領域をサンプリングすることができる装置によって検出される(したがって、標識原子が元素タグに相当する)。複数の異なる原子への言及は、複数の原子種がサンプルを標識化するために使用されることを意味する。質量検出器を使用してこれらの原子種を区別でき(例えば、原子種が異なるm/Q比を有する)、それにより、プルーム内に2つの異なる標識原子が存在すると、2つの異なるMS信号が発生する。光学分光計を使用して原子種を区別することもでき(例えば、異なる原子は異なる発光スペクトルを有する)、それにより、プルーム内に2つの異なる標識原子が存在すると、2つの異なる発光スペクトル信号が発生する。
質量タグ付き試薬
本明細書で使用される質量タグ付き試薬は、幾つかの成分を含む。第1の成分はSBPである。第2の成分は質量タグである。質量タグ及びSBPは、少なくとも部分的に質量タグとSBPとのコンジュゲーションによって形成されたリンカーによって結合される。また、SBPと質量タグとの間の結合は、スペーサを備えてもよい。質量タグ及びSBPは、様々な反応化学反応によってコンジュゲートされ得る。典型的なコンジュゲーション反応化学としては、チオールマレイミド、NHSエステル及びアミン、又はクリックケミストリー反応性(好ましくは、Cu(I)フリーケミストリー)、例えば歪みアルキン及びアジド、歪みアルキン及びニトロン、及び、歪みアルケン及びテトラジンが挙げられる。
質量タグ
本発明で使用される質量タグ(元素タグとも称される)は、幾つかの形態をとることができる。一般に、タグは少なくとも1つの標識原子を含む。標識原子については、以下で説明する。
したがって、その最も単純な形態において、質量タグは、リガンド内で配位された金属標識原子を伴う金属キレート基である金属キレート部分を含み得る。場合によっては、質量タグごとに1つの金属原子のみを検出するだけで十分な場合がある。しかしながら、他の例では、各質量タグが複数の標識原子を含むことが望ましい場合がある。これは、以下で説明するように、幾つかの方法で実現できる。
複数の標識原子を含むことができる質量タグを生成するための第1の手段は、ポリマーの複数のサブユニットに結合した金属キレート配位子を含むポリマーの使用である。ポリマー中の少なくとも1つの金属原子を結合することができる金属キレート基の数は、5~100、10~250、250~5,000、500~2,500、又は、500~1,000など、約1~10,000個となり得る。少なくとも1つの金属原子は、金属キレート基の少なくとも1つに結合することができる。ポリマーは、5~100、10~250、250~5,000、500~2,500、又は、500~1,000など、約1~10,000個の重合度を有することができる。したがって、ポリマーベースの質量タグは、5~100、10~250、250~5,000、500~2,500、又は、500~1,000など、約1~10,000個の標識原子を含むことができる。
ポリマーは、線状ポリマー、コポリマー、分岐ポリマー、グラフトコポリマー、ブロックポリマー、スターポリマー、及びハイパーブランチポリマーからなるグループから選択され得る。ポリマーの骨格は、置換ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、又はポリメタクリルアミドから誘導することができ、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリル酸又はメタクリル酸のホモポリマー又はコポリマーの置換誘導体となり得る。ポリマーは、可逆的付加フラグメンテーション重合(RAFT)、原子移動ラジカル重合(ATRP)、及び、アニオン重合からなるグループから合成することができる。ポリマーをもたらすステップは、N-アルキルアクリルアミド、N、N-ジアルキルアクリルアミド、N-アリールアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、N、N-ジアルキルメタクリルアミド、ナリルメタクリルアミド、メタクリレートエステル、アクリレートエステル及びそれらの機能的同等物からなるグループから選択される化合物からのポリマーの合成を含むことができる。
ポリマーは水溶性となり得る。この部分は化学成分によって制限されない。しかしながら、スケルトンのサイズが比較的再現性がある場合(例えば、長さ、タグ原子の数、再現性のあるデンドリマー特性など)、分析が簡単になる。安定性、溶解性、及び、非毒性の要件も考慮される。したがって、骨格に沿う多くの官能基に加えて、リンカー及び随意的にスペーサを介してポリマーを分子に結合するために使用できる異なる反応性基(連結基)(例えば、SBP)を配置する合成戦略による機能性水溶性ポリマーの調製及び特性評価が考慮される。ポリマーのサイズは、重合反応を制御することによって制御可能である。一般に、ポリマーのサイズは、ポリマーの回転半径が2~11ナノメートルなど、可能な限り小さくなるように選択される。典型的なSBPであるIgG抗体の長さは約10ナノメートルであり、したがって、SBPのサイズに対して過度に大きいポリマータグは、その標的へのSBPの結合を立体的に妨害する場合がある。
少なくとも1つの金属原子を結合することができる金属キレート基は、少なくとも4つの酢酸基を含むことができる。例えば、金属キレート基は、ジエチレントリアミンペンタアセテート(DTPA)基又は1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)基となり得る。別のグループとしては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びエチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N、N、N’、N’-四酢酸(EGTA)が挙げられる。
金属キレート基は、エステル又はアミドを介してポリマーに結合され得る。適切な金属キレートポリマーの例としては、Fluidigm Canada、Incから入手可能なX8ポリマー及びDM3ポリマーが挙げられる。
ポリマーは水溶性となり得る。それらの加水分解安定性のために、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、及びメタクリレートエステル又は機能的同等物を使用することができる。約1~1000(1~2000の主鎖原子)の重合度(DP)は、対象のポリマーの殆どを包含する。より大きなポリマーは、同じ機能を有する本発明の態様の範囲内であり、当業者によって理解されるように想定し得る。一般に、重合度は1~10,000、例えば5~100、10~250、250~5,000、500~2,500、又は500~1,000である。ポリマーは、比較的狭い多分散性をもたらす経路による合成の影響を受けやすい場合がある。ポリマーは、原子移動ラジカル重合(ATRP)又は可逆的付加フラグメンテーション(RAFT)重合によって合成でき、これにより、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)の値が1.1~1.2の範囲になるはずである。Mw/Mnが約1.02~1.05のポリマーが得られる、アニオン重合を伴う代替戦略。いずれの方法でも、開始剤又は終了剤を選択することにより、エンドグループを制御できる。これにより、リンカーを結合できるポリマーを合成することができる。後のステップで配位子化遷移金属ユニット(例えば、Ln単位)を結合できる繰り返しユニットに官能性ペンダント基を含むポリマーを調製する戦略を採用することができる。この実施形態には、幾つかの利点がある。この実施形態は、リガンド含有モノマーの重合を実行することから生じ得る複雑さを回避する。
ペンダント基間の電荷反発を最小限に抑えるために、(M3+)の標的リガンドはキレートに-1の正味電荷を与える必要がある。
本発明の態様で使用されるポリマーとしては以下が挙げられる。
-ランダム共重合体ポリ(DMA-co-NAS):Mw/Mnが約1.1で、5000~130,000の範囲で高変換の優れたモル質量制御を伴うRAFTによるN-アクリルオキシスクシンイミド(NAS)とN、N-ジメチルアクリルアミド(DMA)との75/25モル比ランダム共重合体の合成が、Relogio et al.(2004)(Polymer,45,8639-49)で報告される。活性NHSエステルは、反応性アミノ基を有する金属キレート基と反応して、RAFT重合によって合成された金属キレートコポリマーを生成する。
-ポリ(NMAS):NMASはATRPで重合でき、平均分子量が12~40KDaの範囲で、Mw/Mnが約1.1のポリマーが得られる(例えば、Godwin et al.,2001;Angew.Chem.Int.Ed,40:594-97を参照)。
-ポリ(MAA):ポリメタクリル酸(PMAA)は、そのt-ブチル又はトリメチルシリル(TMS)エステルのアニオン重合によって調製され得る。
-ポリ(DMAEMA):ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)(PDMAEMA)は、ATRPによって調製され得る(Wang et al,2004,J.Am.Chem.Soc,126,7784-85を参照)。これはよく知られたポリマーであり、平均Mn値が2~35KDaの範囲で、Mw/Mnが約1.2であると便利に調製される。このポリマーは、より狭いサイズ分布のアニオン重合によっても合成できる。
-ポリアクリルアミド、又はポリメタクリルアミド。
金属キレート基は、当業者に知られている方法によってポリマーに結合することができ、例えば、ペンダント基は、エステル又はアミドを介して結合されてもよい。例えば、メチルアクリレートベースのポリマーに対して、金属キレート基は、最初にポリマーをメタノール中のエチレンジアミンと反応させ、続いて炭酸緩衝液中でアルカリ性条件下でDTPA無水物を反応させることによってポリマー骨格に結合させることができる。
第2の手段は、質量タグとして機能できるナノ粒子を生成することである。このような質量タグを生成するための最初の経路は、ポリマーでコーティングされた金属のナノスケール粒子の使用である。ここで、金属は、ポリマーによって隔離されて環境から保護されており、ポリマーシェルを反応させることができる場合、例えばポリマーシェルに組み込まれた官能基によって反応しない。官能基をリンカー成分(随意的にスペーサを組み込む)と反応させてクリック化学試薬を結合できるため、このタイプの質量タグを上記の合成戦略に単純なモジュール方式で差し込むことができる。
grafting-to及びgrafting-fromは、ナノ粒子の周りにポリマーブラシを生成するための2つの主要なメカニズムである。grafting-toでは、ポリマーが別々に合成されるため、ナノ粒子をコロイド的に安定に保つ必要性によって合成が制約されることはない。ここでは、多種多様なモノマーと容易な機能化とに起因して、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)合成が優れている。連鎖移動剤(CTA)は、官能基自体として容易に使用することができ、官能化されたCTAを使用することができ、又は、ポリマー鎖を後官能化することができる。化学反応又は物理吸着を使用して、ポリマーをナノ粒子に付着させる。grafting-toの欠点の1つは、粒子表面への付着中にコイル状のポリマー鎖が立体的に反発するため、通常はグラフト密度が低くなるという点である。全てのgrafting-to法には、機能化されたナノコンポジット粒子から過剰な遊離リガンドを除去するために厳密な精密検査が必要であるという欠点がある。これは、一般に、選択的沈殿と遠心分離とによって達成される。grafting-from手法では、原子移動ラジカル重合(ATRP)の開始剤や(RAFT)重合のCTAなどの分子が粒子表面上に固定化される。この方法の欠点は、新しい開始剤カップリング反応の開発である。更に、grafting-toとは反対に、粒子は重合条件下でコロイド的に安定でなければならない。
質量タグを生成する更なる手段は、ドープされたビーズの使用によるものである。キレート化ランタニド(又は他の金属)イオンをミニエマルジョン重合に使用して、キレート化ランタニドイオンがポリマーに埋め込まれたポリマー粒子を作成することができる。キレート基は、当業者に知られているように、金属キレートが水への溶解度を無視できるがミニエマルジョン重合のためのモノマーへの溶解度が妥当であるように選択される。当業者に知られているように、使用できる典型的なモノマーは、とりわけ、スチレン、メチルスチレン、様々なアクリレート及びメタクリレートである。機械的なロバスト性のため、金属タグ付き粒子のガラス転移温度(Tg)は室温より高くなっている。場合によっては、コアシェル粒子が使用され、この場合、ミニエマルジョン重合によって調製された金属含有粒子が、表面機能性の性質を制御するためにシード乳化重合のためのシード粒子として使用される。表面機能は、この第2段階の重合に適したモノマーを選択することで導入できる。更に、エステル基がランタニド錯体の満たされていない配位子部位に結合又は安定化できるため、アクリレート(及び可能なメタクリレート)ポリマーはポリスチレン粒子よりも有利である。そのようなドープされたビーズを形成するための典型的な方法は、(a)少なくとも1つの標識原子含有複合体が可溶性である、少なくとも1つの有機モノマー(1つの実施形態ではスチレン及び/又はメチルメタクリレートなど)を含む溶媒混合物中の少なくとも1つの標識原子含有複合体と、前記有機モノマー及び前記少なくとも1つの標識原子含有複合体の溶解性が低い、少なくとも1つの異なる溶媒とを組み合わせるステップ、(b)ステップ(a)の混合物を十分な時間にわたって乳化して均一なエマルジョンをもたらすステップ、(c)重合を開始するとともに、モノマーのかなりの部分がポリマーに変換されるまで反応を継続するステップ、(d)少なくとも1つの標識原子含有複合体が粒子中又は粒子上に組み入れられたポリマー粒子のラテックス懸濁液を得るのに十分な時間にわたってステップ(c)の生成物をインキュベートするステップであって、ポリマー質量タグの調査時に前記少なくとも1つの標識原子から別個の質量信号が得られるように前記少なくとも1つの原子含有複合体が選択される、ステップである。異なる標識原子を含む2つ以上の複合体を使用することにより、2つ以上の異なる標識原子を含むドープビーズを作製することができる。更に、異なる標識原子を含む複合体の比率を制御することにより、異なる比率の標識原子を有するドープされたビーズの製造が可能になる。複数の標識原子を使用することにより、また、異なる無線機で、明確に特定可能な質量タグの数が増大する。コアシェルビーズでは、これは、第1の標識原子含有複合体をコアに組み込み、第2の標識原子含有複合体をシェルに組み込むことによって達成されてもよい。
更に別の手段は、配位金属配位子としてではなく、ポリマーの主鎖に標識原子を含むポリマーの生成である。例えば、Carerra and Seferos(Macromolecules 2015,48,297-308)は、ポリマーの主鎖にテルルが含まれていることを開示している。標識原子として機能することができる原子を組み込んだ他のポリマー、スズ、アンチモン、及び、ビスマスを組み込んだポリマー。このような分子は、とりわけPriegert et al.,2016(Chem.Soc.Rev.,45,922-953)で議論される。
したがって、質量タグは、少なくとも2つの成分、すなわち、標識原子、及び、標識原子をキレート化する、標識原子を含む、或いは、標識原子でドープされるポリマーを含むことができる。更に、質量タグは、先の議論に沿ったクリックケミストリー反応で、2つの成分の反応に続く質量タグとSBPとの間の化学結合の一部を形成する付着基(SBPにコンジュゲートされない場合)を含む。
SBPを例えばドープされたビーズ又はナノ粒子に付着させる更なる方法としてポリドーパミンコーティングを使用できる。ポリドーパミンの機能の範囲を考えると、SBPは、例えば、抗体などのSBP上のアミン基又はスルフヒドリル基の反応によってPDAコーティングされたビーズ又は粒子から形成された質量タグにコンジュゲートされ得る。或いは、PDAの官能性は、SBPとの反応のために更に官能性を導入する二官能性リンカーなどの試薬と反応させることができる。場合によっては、以下で説明するように、リンカーがスペーサを含むことができる。これらのスペーサは、質量タグとSBPとの間の距離を広げ、SBPの立体障害を最小限に抑える。したがって、本発明の態様は、SBPを含む質量タグ付きSBPと、ポリドーパミンを含む質量タグとを含み、この場合、ポリドーパミンは、SBPと質量タグとの間のリンクの少なくとも一部を含む。ナノ粒子及びビーズ、特にポリドーパミンでコーティングされたナノ粒子及びビーズは、それらが数千の金属原子を有するとともに同じ親和性試薬の複数のコピーを有し得るため、存在量の少ない標的を検出するための信号増強に役立つ場合がある。親和性試薬は、信号を更に増強できる二次抗体となり得る。
標識原子
本開示で使用することができる標識原子は、MS又はOESによって検出可能であるとともに標識化されない組織サンプルには実質的に存在しない任意の種を含む。したがって、例えば、12C原子は、天然に豊富であるため、標識原子としては不適切であるが、11Cは、天然に存在しない人工同位体であるため、理論的にはMSに使用できる。多くの場合、標識原子は金属である。しかしながら、好ましい実施形態において、標識原子は、希土類金属(15個のランタニドに加えてスカンジウム及びイットリウム)などの遷移金属である。これらの17個の元素(OES及びMSによって区別できる)は、(MSにより)簡単に区別できる多くの異なる同位体をもたらす。これらの様々な元素は、濃縮された同位体の形で入手でき、例えば、サマリウムは6つの安定同位体を有し、ネオジムは7つの安定同位体を有し、これらは全て濃縮された形で入手できる。15個のランタニド元素は、非冗長に固有の質量を持つ少なくとも37個の同位体をもたらす。標識原子としての使用に適した元素の例としては、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、ネオジミウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、スカンジウム(Sc)、及び、イットリウム(Y)が挙げられる。希土類金属に加えて、他の金属原子、例えば、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ビスマス(Bi)などが検出に適している。放射性同位元素の使用は、取り扱いが不便で不安定であるため、好ましくなく、例えば、Pmは、ランタニドの中で好ましい標識原子ではない。
飛行時間(TOF)分析(本明細書で説明する)を容易にするために、80~250の範囲内、例えば80~210の範囲内、又は100~200の範囲内の原子量を有する標識原子を使用することが有用である。この範囲には全てのランタニドが含まれるが、Sc及びYは含まれない。100~200の範囲では、TOF MSの高いスペクトルスキャンレートを利用しながら、様々な標識原子を使用した理論的な101プレックス分析が可能である。前述のように、質量が非標識サンプルで見られるものより上のウインドウ内にある標識原子を選択することにより(例えば、100~200の範囲内)、TOF検出を使用して生物学的に有意なレベルで迅速なイメージングを提供できる。
使用される質量タグ(及び質量タグ当たりの標識原子の数)及び各SBPに付着される質量タグの数に応じて、様々な数の標識原子を単一のSBP要素に付着することができる。より多くの標識原子がSBP要素に付着されると、より高い感度を実現できる。例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100を超える標識原子を、最大で10,000など、例えば5~100、10~250、250~5,000、500~2,500、又は500~1,000の標識原子をSBP要素に付着できる。前述のように、それぞれがジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はDOTAなどのキレート剤を含む複数のモノマーユニットを含む単分散ポリマーを使用することができる。例えば、DTPAは3+ランタニドイオンを約10-6Mの解離定数で結合する。これらのポリマーは、先の説明に沿ってクリックケミストリー反応性を結合するべくマレイミドとの反応によってSBPに結合するために使用され得るチオールで終端できる。他の官能基、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドエステルなどのアミン反応性基、又は、カルボキシル基に対して又は抗体のグリコシル化に対して反応性のある基も、これらのポリマーのコンジュゲーションのために使用できる。任意の数のポリマーが各SBPに結合されてもよい。使用できるポリマーの具体例としては、直鎖(「X8」)ポリマー又は第3世代樹枝状(「DN3」)ポリマーが挙げられ、いずれもMaxPar(商標)薬として入手できる。金属ナノ粒子の使用は、先にも説明したように、標識内の原子数を増やすためにも使用され得る。
幾つかの実施形態では、質量タグにおける全ての標識原子は同じ原子質量を有する。或いは、質量タグは、異なる原子量の標識原子を含むことができる。したがって、場合によっては、標識サンプルは、それぞれが単一のタイプの標識原子のみを含む一連の質量タグ付きSBPで標識化されてもよい(各SBPはその同族の標的に結合するため、各種類の質量タグがサンプル上で特定の、例えば抗原に局在化される)。或いは、場合によっては、標識サンプルは、それぞれが標識原子の混合物を含む一連の質量タグ付きSBPで標識化されてもよい。場合によっては、サンプルを標識化するために使用される質量タグ付きSBPは、単一の標識原子質量タグを伴うものの混合物と標識原子の混合物とをそれらの質量タグ内に含んでもよい。
スペーサ
前述のように、場合によっては、SBPは、スペーサを含むリンカーを介して質量タグにコンジュゲートされる。SBPとクリック化学試薬との間(例えば、SBPと歪みシクロアルキン(又はアジド);歪みシクロアルケン(又はテトラジン)などとの間)にスペーサがあってもよい。質量タグとクリック化学試薬との間(例えば、質量タグとアジド(又は歪みシクロアルキン);テトラジン(又は歪みシクロアルケン)などとの間)にスペーサがあってもよい。場合によっては、SNPとクリックケミストリー試薬との間及びクリックケミストリー試薬と質量タグとの間の両方にスペーサが存在してもよい。
スペーサは、ポリエチレングリコール(PEG)スペーサ、ポリ(N-ビニルピロリド)(PVP)スペーサ、ポリグリセロール(PG)スペーサ、ポリ(N-(2-ヒドロキシルプロピル)メタクリルアミド)スペーサ、又は、ポリオキサゾリン(POZ、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン又はポリプロピレンオキサゾリンなど)又はC5-C20非環状アルキルスペーサであってもよい。例えば、スペーサは、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、15以上、20以上のEG(エチレングリコール)ユニットを伴うPEGスペーサであってよい。PEGリンカーは、3~12個のEGユニット、4~10個のEGユニットを有してもよく、或いは、4、5、6、7、8、9、又は10個のEGユニットを有してもよい。リンカーは、シスタミン又はその誘導体を含んでもよく、1つ以上のジスルフィド基を含んでもよく、或いは、当業者に知られている任意の他の適切なリンカーであってもよい。
スペーサは、コンジュゲートされるSBPに対する質量タグの立体的効果を最小限に抑えるのに有利となり得る。PEGベースのスペーサなどの親水性スペーサも、質量タグ付きSBPの溶解性を改善するように作用するとともに、凝集を防ぐように作用し得る。
SBP
イメージングマスサイトメトリーを含むマスサイトメトリーは、特異的結合対の要素間の特異的結合の原理に基づいている。質量タグは特異的結合対要素にリンクされ、これにより、質量タグが対のもう一方の要素である標的/分析物に局在化する。しかしながら、特異的結合では、他の分子種を除いて、1つの分子種だけに結合する必要はない。むしろ、それは、結合が非特異的でない、つまり、ランダムな相互作用ではないことを規定する。したがって、複数の標的に結合するSBPの例は、多くの異なるタンパク質間で共通のエピトープを認識する抗体である。ここでは、結合は、特異的であるとともに、抗体のCDRによって媒介されるが、複数の異なるタンパク質が抗体によって検出される。一般的なエピトープが天然に存在する場合もあり、或いは、一般的なエピトープがFLAGタグなどの人工的なタグとなり得る。同様に、核酸の場合、所定の配列の核酸は、完全に相補的な配列に排他的に結合しない場合があるが、当業者であれば分かるように、異なるストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の使用下で、ミスマッチの様々な耐性を導入することができる。それにもかかわらず、このハイブリダイゼーションは、それがSBP核酸と標的分析物との間の相同性によって媒介されるため、非特異的ではない。同様に、リガンドは複数の受容体に特異的に結合することができ、簡単な例は、TNFR1及びTNFR2の両方に結合するTNFαである。
SBPは、以下のいずれか、すなわち、抗体/抗原複合体;受容体/リガンド対;又はアプタマー/標的対のいずれかを含んでもよい。したがって、標識原子を核酸プローブに付着させることができ、核酸プローブは、その後、DNA/DNA二重鎖、DNA/RNA二重鎖、又はRNA/RNA二重鎖を形成するべく、プローブがその中の相補的核酸にハイブリダイズできるように組織サンプルと接触される。同様に、標識原子を抗体に結合させることができ、抗体は、その後、それがその抗原に結合できるように組織サンプルと接触される。標識原子をリガンドに結合させることができ、リガンドは、その後、それがその受容体に結合できるように組織サンプルと接触される。標識原子をアプタマーリガンドに結合させることができ、アプタマーリガンドは、その後、それがその標的に結合できるように組織サンプルと接触される。したがって、標識化されたSBP要素は、DNA配列、RNA配列、タンパク質、糖、脂質、代謝物を含むサンプル中の様々な標的を検出するために使用され得る。
したがって、質量タグ付きSBPは、タンパク質又はペプチド、或いは、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドとなり得る。
タンパク質SBPの例としては、抗体又はその抗原結合フラグメント、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、抗体融合タンパク質、scFv、抗体模倣物、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラビジン、ビオチン、又はそれらの組み合わせが挙げられ、その場合、随意的に、抗体模倣物は、ナノボディ、アフィボディ、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、DARPin、ファイノマー、クニッツドメインペプチド、モノボディ、又はそれらの任意の組み合わせ、受容体-Fc融合物などの受容体、リガンド-Fc融合物などのリガンド、レクチン、例えば、小麦胚芽凝集素などの凝集素を含む。
ペプチドは、線状ペプチド、又は二環式ペプチドなどの環状ペプチドであってもよい。使用できるペプチドの一例はファロイジンである。
ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、一般に、3’-5’ホスホジエステル結合によって連結されたデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドを含むヌクレオチドの一本鎖又は二本鎖ポリマー、並びにポリヌクレオチド類似体を指す。核酸分子は、DNA、RNA、及びcDNAを含むが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド類似体は、天然のポリヌクレオチドに見られる標準的なホスホジエステル結合以外の骨格、及び、随意的に、改質された糖部分又はリボース又はデオキシリボース以外の部分を有してもよい。ポリヌクレオチド類似体は、標準的なポリヌクレオチド塩基へのワトソン-クリック塩基対形成による水素結合が可能な塩基を含み、アナログ骨格は、オリゴヌクレオチド類似体分子と標準的なポリヌクレオチド中の塩基との間の配列特異的な形式でのそのような水素結合を可能にする態様で塩基を有する。ポリヌクレオチド類似体の例としては、異種核酸(XNA)、架橋核酸(BNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、yPNA、モルホリノポリヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)
、スレオス核酸(TNA)、2’-0-メチルポリヌクレオチド、2’-0-アルキルリボシル置換ポリヌクレオチド、ホスホロチオエートポリヌクレオチド、及びボロノホスフェートポリヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド類似体は、例えば、7-デアザプリン類似体、8-ハロプリン類似体、5-ハロピリミジン類似体を含む、プリン又はピリミジン類似体、又は、ヒポキサンチン、ニトロアゾール、イソカルボスチリル類似体、アゾールカルボキサミド、及び芳香族トリアゾール類似体を含む任意の塩基と対を成し得るユニバーサル塩基類似体、又は、親和性結合のためのビオチン部分などの更なる機能を伴う塩基類似体を有してもよい。
抗体SBP要素
典型的な実施形態では、標識化されたSBP要素が抗体である。抗体の標識化は、例えば、NHS-アミン化学、スルフヒドリル-マレイミド化学、又はクリックケミストリー(歪みアルキン及びアジド、歪みアルキン及びニトロン、歪みアルケン及びテトラジンなど)を使用する質量タグの付着により、分子を抗体に結合させる1つ以上の標識原子のコンジュゲーションを通じて達成され得る。イメージングに有用な細胞タンパク質を認識する抗体は、IHCでの使用に既に広く利用可能であり、また、現在の標識化技術(例えば蛍光)の代わりに標識原子を使用することにより、これらの既知の抗体を本明細書の開示方法で用いるのに容易に適合させることができるが、多重化機能を向上させるという利点を伴う。抗体は、細胞表面上の標的又は細胞内の標的を認識することができる。抗体は様々な標的を認識でき、例えば、抗体は、個々のタンパク質を特異的に認識でき、又は、共通のエピトープを共有する複数の関連タンパク質を認識でき、又は、タンパク質の特定の翻訳後修飾を認識できる(例えば、対象のタンパク質のチロシンとホスホチロシンとを区別するため、リジンとアセチル-リジンとを区別するため、ユビキチン化を検出するためなど)。その標的に結合した後、抗体にコンジュゲートされた標識原子を検出して、サンプル中のその標的の位置を明らかにすることができる。
標識化されたSBP要素は、通常、サンプル内の標的SBP要素と直接に相互作用する。しかしながら、幾つかの実施形態では、標識化されたSBP要素が間接的に、標的SBP要素と相互作用することができ、例えば、一次抗体が標的SBP要素に結合してもよく、また、標識化された二次抗体は、その後、サンドイッチアッセイの態様で一次抗体に結合し得る。しかしながら、通常、この方法は、これをより簡単に実現できるとともに、これがより高度な多重化を可能にするため、直接相互作用に依存する。しかしながら、いずれの場合も、サンプルは、サンプル内の標的SBP要素に結合し得るSBP要素と接触され、また、その後の段階で、標的SBP要素に付着された標識が検出される。
核酸SBP、及び標識化方法の変更
RNAは、本明細書に開示される方法及び装置が特定の高感度で必要に応じて定量的な態様で検出できる他の生物学的分子である。タンパク質の分析について前述したのと同じ態様で、RNAに特異的に結合する元素タグで標識化されたSBP要素の使用によってRNAを検出できる(例えば、相補配列のロックされた核酸(LNA)分子、相補配列のペプチド核酸(PNA)分子、相補配列のプラスミドDNA、相補配列の増幅されたDNA、相補配列のRNAの断片、及び相補配列のゲノムDNAの断片を含む、前述したような相補配列のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド)。RNAは、成熟したmRNAだけでなく、RNAプロセシング中間体や新生プレmRNA転写物も含む。
特定の実施形態において、RNA及びタンパク質の両方は、特許請求の範囲に記載される本発明の方法を使用して検出される。
RNAを検出するために、本明細書に記載の生物学的サンプル中の細胞は、本明細書に記載の方法及び装置を使用して、RNA及びタンパク質含有量の分析のために調製され得る。特定の態様において、細胞は、ハイブリダイゼーションステップの前に固定されて透過処理される。細胞は、固定され及び/又は透過処理されるように与えられる。細胞は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなどの架橋固定剤によって固定されてもよい。これに代えて又は加えて、エタノール、メタノール又はアセトンなどの沈殿固定剤を使用して細胞を固定してもよい。細胞は、ポリエチレングリコール(Triton X-100など)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween-20)、サポニン(両親媒性配糖体のグループ)、又はメタノールやアセトンなどの化学物質などの界面活性剤によって透過処理されてもよい。場合によっては、固定及び透過処理が同じ試薬又は試薬のセットを使用して実行されてもよい。固定技術及び透過処理技術は、「Permeabilization of Cell Membranes」(Methods Mol.Biol.、2010)においてJamur et al.によって論じられる。
細胞内の標的核酸の検出又は「in-situハイブリダイゼーション」(ISH)は、以前はフルオロフォアタグ付きオリゴヌクレオチドプローブを使用して行なわれていた。本明細書で論じられるように、イオン化及び質量分析と組み合わせた質量タグ付きオリゴヌクレオチドを使用して、細胞内の標的核酸を検出することができる。in-situハイブリダイゼーションの方法は当技術分野で知られている(Zenobiらの「単一細胞メタボロミクス:分析的及び生物学的展望」、Science第342刊、第6163号、2013年を参照)。ハイブリダイゼーションプロトコルは、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,225,326号及び米国特許公開第2010/0092972号及び米国特許公開第2013/0164750号にも記載されている。
ハイブリダイゼーションの前に、懸濁状態で存在する又は固体支持体上に固定化される細胞が前述のように固定されて透過処理されてもよい。透過処理は、標的ハイブリダイゼーションヌクレオチド、増幅オリゴヌクレオチド、及び/又は質量タグ付きオリゴヌクレオチドが細胞に入るのを可能にしつつ、細胞が標的核酸を保持することを可能にし得る。細胞は、任意のハイブリダイゼーションステップの後、例えば、標的ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドの核酸標的へのハイブリダイゼーション後、増幅オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション後、及び/又は質量タグ付きオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション後に洗浄されてもよい。
細胞は、取り扱いを容易にするために、方法の全て又は殆どのステップにわたって懸濁状態となり得る。しかしながら、この方法は、固体組織サンプル(例えば、組織切片)中の細胞及び/又は固体支持体(例えば、スライド又は他の表面)に固定化された細胞にも適用可能である。したがって、場合によっては、細胞がサンプル中及びハイブリダイゼーションステップ中に浮遊している可能性がある。また、ハイブリダイゼーション中に細胞が固体支持体に固定化される場合もある。
標的核酸は、本方法によって検出されるべき、細胞内に十分に存在する対象の任意の核酸を含む。標的核酸は、細胞内に複数のコピーが存在するRNAであってもよい。例えば、標的RNAの10以上、20以上、50以上、100以上、200以上、500以上、又は1000以上のコピーが細胞内に存在してもよい。標的RNAは、メッセンジャーNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、低分子核RNA(snRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、長非コードRNA(IncRNA)、又は当技術分野で知られている任意の他のタイプのRNAであってもよい。標的RNAは、長さが20ヌクレオチド以上、30ヌクレオチド以上、40ヌクレオチド以上、50ヌクレオチド以上、100ヌクレオチド以上、200ヌクレオチド以上、500ヌクレオチド以上、1000ヌクレオチド以上、20~1000ヌクレオチド、20~500ヌクレオチド、40~200ヌクレオチドなどであってもよい。
特定の実施形態において、質量タグ付けされたオリゴヌクレオチドは、標的核酸配列に直接ハイブリダイズされてもよい。しかしながら、更なるオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、改善された特異性及び/又はシグナル増幅を可能にし得る。
特定の実施形態において、2つ以上の標的ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドは、標的核酸上の近位領域にハイブリダイズされてもよく、共に合わさってハイブリダイゼーションスキームにおける更なるオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションのための部位を与えてもよい。
特定の実施形態において、質量タグ付けされたオリゴヌクレオチドは、2つ以上の標的ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドに直接ハイブリダイズされ得る。他の実施形態では、2つ以上の標的ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドをハイブリダイズして質量タグ付きオリゴヌクレオチドが結合できる複数のハイブリダイゼーション部位を与えるために、1つ以上の増幅オリゴヌクレオチドが同時に又は連続して添加されてもよい。質量タグ付きオリゴヌクレオチドを伴う又は伴わない1つ以上の増幅オリゴヌクレオチドは、2つ以上の標的ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができる多量体として与えられてもよい。
2つ以上の標的ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドを使用すると特異性が向上するが、増幅オリゴヌクレオチドを使用するとシグナルが増大する。2つの標的ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドが細胞内の標的RNAにハイブリダイズされる。2つの標的ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドは、共に合わさって、増幅オリゴヌクレオチドが結合することができるハイブリダイゼーション部位を与える。ハイブリダイゼーション及び/又はその後の増幅オリゴヌクレオチドの洗浄は、2つの近位標的ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションを可能にするが、ただ1つの標的ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドへの増幅オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの融解温度より高い温度で実施され得る。第1の増幅オリゴヌクレオチドは、第2の増幅オリゴヌクレオチドが結合して分岐パターンを形成することができる複数のハイブリダイゼーション部位を与える。質量タグ付きオリゴヌクレオチドは、第2の増幅ヌクレオチドによって与えられる複数のハイブリダイゼーション部位に結合し得る。これらの増幅オリゴヌクレオチド(質量タグ付きオリゴヌクレオチドを含む又は含まない)は、共に合わさって、本明細書では「マルチマー」と称される。したがって、「増幅オリゴヌクレオチド」という用語は、更なるオリゴヌクレオチドがアニーリングすることができる同じ結合部位の複数のコピーを与えるオリゴヌクレオチドを含む。他のオリゴヌクレオチドの結合部位の数を増やすことにより、標的に見つけることができる標識の最終的な数が増える。したがって、複数の標識オリゴヌクレオチドは、間接的に単一の標的RNAにハイブリダイズされる。これにより、RNAごとに使用される元素の検出可能な原子の数を増やすことにより、低コピー数のRNAの検出が可能になる。
この増幅を実行するための1つの特定の方法は、以下でより詳細に議論されるように、高度な細胞診断からのRNAscope(登録商標)方法を使用することを含む。更なる代替案は、QuantiGene(登録商標)FlowRNA方法(Affymetrix eBioscience)を適応させる方法の使用である。この分析は、分岐DNA(bDNA)シグナル増幅を伴うオリゴヌクレオチド対プローブの設計に基づいている。カタログには4,000を超えるプローブがあり、又は、追加料金なしでカスタムセットをリクエストできる。前の段落と一致して、この方法は、標的ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドの標的へのハイブリダイゼーション、続いて第1の増幅オリゴヌクレオチド(QuantiGene(登録商標)法では前増幅オリゴヌクレオチドと称される)を含む分岐構造の形成によって機能し、複数の第2の増幅オリゴヌクレオチドがアニーリングできるステムを形成する(QuantiGene(登録商標)方法では単に増幅オリゴヌクレオチドと称される)。その後、複数の質量タグ付きオリゴヌクレオチドが結合できる。
RNA信号を増幅する別の手段は、ローリングサークル増幅手段(RCA)に依存している。この増幅システムを増幅プロセスに導入できる手段は様々である。第1の事例では、第1の核酸がハイブリダイゼーション核酸として使用され、この場合、第1の核酸は環状である。第1の核酸は、一本鎖であってもよく、又は、二本鎖であってもよい。第1の核酸は、標的RNAに相補的な配列を含む。第1の核酸の標的RNAへのハイブリダイズに続いて、第1の核酸に相補的なプライマーが第1の核酸にハイブリダイズされて一般的にはサンプルに外因的に添加されるポリメラーゼ及び核酸を使用するプライマー伸長のために使用される。しかしながら、場合によっては、第1の核酸がサンプルに追加されるときに、それに伸長用のプライマーが既にハイブリダイズされてしまっている場合がある。第1の核酸が環状である結果として、プライマー伸長が完全な複製ラウンドを完了すると、ポリメラーゼがプライマーを置換でき、伸長が継続し(すなわち、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を伴わずに)、それにより、更に連結されて、第1の核酸の補体の鎖状コピーが更にもたらされ、その結果、その核酸配列が増幅される。したがって、上記のような元素タグ(RNA又はDNA、又はLNA又はPNAなど)を含むオリゴヌクレオチドは、第1の核酸の補体の鎖状コピーにハイブリダイズされ得る。したがって、RNA信号の増幅の程度は、環状核酸の増幅のステップに割り当てられた時間の長さによって制御され得る。
RCAの別の用途において、RCAは、第1の、例えば、環状である標的RNAにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドではなく、直線状であってもよく、その標的に相補的な配列を有する第1の部分とユーザが選択する第2の部分とを含む。その後、この第2の部分に相同な配列を有する環状RCAテンプレートがこの第1のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズされてもよく、また、RCA増幅が上記のように実施されてもよい。第1の、例えば、標的特異的部分及びユーザ選択部分を有するオリゴヌクレオチドの用途は、様々な異なるプローブ間で共通であるようにユーザ選択部分を選択することができることである。これは、異なる標的を検出する一連の反応で同じ後続の増幅試薬を使用できるため、試薬効率が高い。しかしながら、当業者であれば分かるように、この戦略を採用する場合、多重反応における特定のRNAの個々の検出のために、標的RNAにハイブリダイズする各第1の核酸は、固有の第2の配列を有する必要があり、ひいては、各環状核酸は、標識オリゴヌクレオチドによってハイブリダイズできる固有の配列を含むべきである。このようにして、各標的RNAからの信号を特異的に増幅及び検出することができる。
RCA分析をもたらすための他の構成は、当業者に知られている。場合によっては、第1の、例えば、オリゴヌクレオチドが次の増幅及びハイブリダイゼーションステップ中に標的から解離するのを防ぐために、第1の、例えば、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション後に(例えば、ホルムアルデヒドによって)固定されてもよい。
更に、ハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)を使用して、RNAシグナルを増幅することができる(例えば、Choi et al.,2010,Nat.Biotech,28:1208-1210を参照)。Choiは、開始剤がないと重合しない2つの核酸ヘアピン種からHCR増幅器が成ると説明している。各HCRヘアピンは、露出した一本鎖のつま先を持つ入力ドメインと、折りたたまれたヘアピンに隠された一本鎖のつま先を持つ出力ドメインとから成る。2つのヘアピンのうちの1つの入力ドメインへのイニシエータのハイブリダイゼーションは、ヘアピンを開いてその出力ドメインを露出させる。この(以前は非表示だった)出力ドメインを第2のヘアピンの入力ドメインにハイブリダイゼーションすると、そのヘアピンが開き、イニシエータと同じ順序で出力ドメインが露出される。イニシエータ配列の再生は、ニックの入った二本鎖「ポリマー」の形成につながる、交互の第1及び第2のヘアピン重合ステップの連鎖反応の基礎を与える。第1及び第2のヘアピンのいずれか又は両方は、本明細書に開示される方法及び装置の適用において、元素タグで標識化され得る。増幅手順は特定の配列の出力ドメインに依存しているため、ヘアピンの別々のセットを使用した様々な個別の増幅反応を同じプロセスで独立して実行できる。したがって、この増幅により、多数のRNA種のマルチプレックス分析での増幅も可能になる。Choiが言及するように、HCRは等温でトリガーされる自己組織化プロセスである。したがって、ヘアピンは、その場でトリガーされた自己組織化を受ける前にサンプルに浸透する必要があり、深いサンプル浸透と高い信号対バックグラウンド比の可能性を示唆している。
ハイブリダイゼーションは、標的ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチド、増幅オリゴヌクレオチド、及び/又は質量タグ付きオリゴヌクレオチドなどの1つ以上のオリゴヌクレオチドと細胞を接触させること、及び、ハイブリダイゼーションが起こり得る条件を与えることを含んでもよい。ハイブリダイゼーションは、生理食塩水-クエン酸ナトリウム(SCC)緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、生理食塩水-リン酸ナトリウム-EDTA(SSPE)緩衝液、TNT緩衝液(Tris-HCl、塩化ナトリウム、及びTween 20)、又は任意の他の適切なバッファにおいて実行されてもよい。ハイブリダイゼーションは、1つ以上のオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの融解温度の前後又はそれより低い温度で実行されてもよい。
特異性は、結合していないオリゴヌクレオチドを除去するために、ハイブリダイゼーションに続いて1回又は複数回の洗浄を行なうことによって改善され得る。洗浄のストリンジェンシーを上げると、特異性は向上するが、全体的な信号が減少する。洗浄のストリンジェンシーは、洗浄緩衝液の濃度を増大又は減少させ、温度を上昇させ、及び/又は、洗浄の期間を増大させることによって高められてもよい。RNAse阻害剤が、ハイブリダイゼーションインキュベーション及びその後の洗浄のいずれか又は全てにおいて使用されてもよい。
1つ以上の標的ハイブリダイズオリゴヌクレオチド、増幅オリゴヌクレオチド及び/又は質量タグ付きオリゴヌクレオチドを含むハイブリダイゼーションプローブの第1のセットを使用して、第1の標的核酸を標識することができる。ハイブリダイゼーションプローブの更なるセットを使用して、更なる標的核酸を標識化することができる。ハイブリダイゼーションプローブの各セットは、異なる標的核酸に特異的であってもよい。ハイブリダイゼーションプローブの更なるセットは、異なるセットのオリゴヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを低減又は防止するように設計され、ハイブリダイズされ、及び、洗浄されてもよい。更に、各セットの質量タグ付きオリゴヌクレオチドは、固有の信号を与えてもよい。したがって、オリゴヌクレオチドの複数のセットを使用して、2、3、5、10、15、20又はそれ以上の別個の核酸標的を検出することができる。
時として、検出された異なる核酸は、単一の遺伝子のスプライスバリアントである。質量タグ付きオリゴヌクレオチドは、エクソンの配列内でハイブリダイズして(以下で説明するように他のオリゴヌクレオチドを介して直接的又は間接的に)そのエクソンを含む全ての転写物を検出するように設計され得る、或いは、スプライスジャンクションをブリッジして特異的バリアントを検出するように設計されてもよい(例えば、遺伝子に3つのエクソンがあり、2つのスプライスバリアント-エクソン1-2-3とエクソン1-3-がある場合、2つを区別できる。すなわち、バリアント1-2-3は、エクソン2にハイブリダイズすることで特異的に検出でき、バリアント1-3は、エクソン1-3ジャンクションを介してハイブリダイズすることで特異的に検出できる)。
組織化学的染色液
1つ以上の固有の金属原子を有する組織化学的染色試薬は、本明細書に記載されるように、他の試薬及び使用方法と組み合わせることができる。例えば、組織化学的染色液は、金属含有薬物、金属標識抗体、及び/又は蓄積された重金属と共局在化されてもよい(例えば、細胞又は細胞内の分解能で)。特定の態様において、1つ以上の組織化学的染色液は、他のイメージング方法(例えば、蛍光顕微鏡法、光学顕微鏡法、又は電子顕微鏡法)のために使用されるものからより低い濃度(例えば、半分未満、1/4、1/10など)で使用されてもよい。
構造を視覚化及び特定するために、広範囲の組織学的染色液及び指標が利用可能であり、これらは十分に特徴付けられる。金属含有染色液は、病理学者によるイメージングマスサイトメトリーの受け入れに影響を与える可能性がある。特定の金属含有染色液は、細胞成分を明らかにすることがよく知られており、本発明での使用に適している。更に、明確な染色液をデジタル画像分析で使用して、特徴認識アルゴリズムのコントラストを与えることができる。これらの機能は、イメージングマスサイトメトリーの開発にとって戦略的に重要である。
多くの場合、組織切片の形態学的構造は、抗体などの親和性産物を使用して対比され得る。親和性産物は、組織化学的染色を使用する場合と比較して、高価であり、金属含有タグを使用する更なる標識手順を必要とする。この手法は、利用可能なランタニド同位体で標識化された抗体を使用するイメージングマスサイトメトリーの先駆的な研究で使用されたため、機能性抗体が生物学的質問に答えるための質量(金属など)タグを枯渇させた。
本発明は、Ag、Au、Ru、W、Mo、Hf、Zr(粘液性間質を特定するために使用されるルテニウムレッド、コラーゲン線維を特定するための三色染色、細胞対比染色剤としての四酸化オスミウムなどの化合物を含む)などの元素を含む利用可能な同位体のカタログを拡張する。核型分析には銀染色が使用される。硝酸銀は、核小体形成領域(NOR)関連タンパク質を染色して、銀が沈着する暗い領域を生成し、NOR内のrRNA遺伝子の活性を示す。IMCに適合させるには、プロトコル(過マンガン酸カリウムによる酸化、銀濃度1%など)を、0.5%、0.01%、0.05%未満の銀溶液などの低濃度の銀溶液を使用するように変更する必要がある。
特定の態様において、同じ組織の2つの切片(例えば、連続組織切片)は、両方とも、組織化学的染色液を含む金属によって染色されてもよく、また、2つ以上の異なるイメージングモダリティによって分析されてもよい。これらのイメージングモダリティのうちの1つが原子質量分析法であってもよい。
オートメタログラフィック増幅技術は、組織化学における重要なツールに進化してきた。多くの内因性及び毒性の重金属は、Agイオンとの反応によって自己触媒的に増幅され得る硫化物又はセレン化物のナノ結晶を形成する。より大きなAgナノクラスターは、IMCによって容易に視覚化され得る。現在、Zn-S/Seナノ結晶の銀増幅検出及び銀-セレンナノ結晶の形成によるセレンの検出のための堅牢なプロトコルが確立されてきた。更に、市販の量子ドット(Cdの検出)も、自己触媒的に活性であり、組織化学的標識として使用され得る。
本発明の態様は、組織化学的染色液及び元素質量分析によるイメージングにおける組織化学的染色液の使用を含んでもよい。元素質量分析によって分解可能な任意の組織化学的染色液を本発明で使用することができる。特定の態様において、組織化学的染色液は、サンプルをイメージングするために使用される元素質量分析計のカットオフよりも大きい、例えば、60amu、80amu、100amu、又は120amuを超える質量の1つ以上の原子を含む。例えば、組織化学的染色液は、本明細書に記載されるような金属タグ(例えば、金属原子)を含んでもよい。金属原子は、組織化学的染色にキレート化され又は組織化学的染色液の化学構造内で共有結合されてもよい。特定の態様では、組織化学的染色液が有機分子であってもよい。組織化学的染色液は、極性、疎水性(例えば、親油性)、イオン性であってもよく、或いは、異なる特性を有する基を含んでもよい。特定の態様では、組織化学的染色液が複数の化学物質を含んでもよい。
組織化学的染色液は、2000、1500、1000、800、600、400、又は200amu未満の小分子を含む。組織化学的染色液は、共有結合又は非共有結合(例えば、イオン性又は疎水性)相互作用を介してサンプルに結合してもよい。組織化学的染色液は、例えば、個々の細胞、細胞内構造、及び/又は細胞外構造を特定するのを助けるために、生物学的サンプルの形態を解明するためのコントラストを与えてもよい。組織化学的染色液によって分解され得る細胞内構造は、細胞膜、細胞質、核、ゴルジ体、小胞体、ミトコンドリア、及び他の細胞小器官を含む。組織化学的染色液は、核酸、タンパク質、脂質、リン脂質、又は炭水化物などの生体分子のタイプに関して親和性を有してもよい。特定の態様において、組織化学的染色液は、DNA以外の分子を結び付けてもよい。適切な組織化学的染色液は、間質(例えば、粘膜間質)、基底膜、間質間質、コラージュ又はエラスチンなどのタンパク質、プロテオグリカン、非プロテオグリカン多糖類、細胞外小胞、フィブロネクチン、ラミニンなどを含む細胞外構造(例えば、細胞外マトリックスの構造)を結び付ける染色液も含む。
特定の態様において、組織化学的染色液及び/又は代謝プローブは、細胞又は組織の状態を示してもよい。例えば、組織化学的染色液は、シスプラチン、エオシン、ヨウ化プロピジウムなどの生体染色液を含んでもよい。他の組織化学的染色液は、低酸素症に関して染色してもよく、例えば、低酸素条件下でのみ結合又は沈着してもよい。ロドデオキシウリジン(IdU)又はその誘導体などのプローブが、細胞増殖を染色してもよい。特定の態様において、組織化学的染色液が細胞又は組織の状態を示さなくてもよい。細胞の状態(例えば、生存率、低酸素症及び/又は細胞増殖)を検出するが生体内(例えば、生きている動物又は細胞培養物に)投与されるプローブは、本方法のいずれかで使用されるが、組織化学的染色液として適格ではない。
組織化学的染色液は、核酸(例えば、DNA及び/又はRNA)、タンパク質、脂質、リン脂質、炭水化物(例えば、単糖又は二糖又はポリオールなどの糖;オリゴ糖;及び/又はデンプン又はグリコーゲンなどの多糖)、糖タンパク質、及び/又は糖脂質などの生物学的分子のタイプに関して親和性を有してもよい。特定の態様では、組織化学的染色液が対比染色剤であってもよい。
以下は、特定の組織化学的染色液及び本方法でのそれらの使用の例である。
粘液性間質検出用の金属含有染色剤液としてのルテニウムレッド染色液は、以下のように使用されてもよい。すなわち、免疫染色された組織(例えば、脱パラフィンFFPE又は凍結切片)は、0.0001-0.5%、0.001-0.05%、0.1%未満、0.05%未満、又は約0.0025%のルテニウムレッドで処理されてもよい(例えば、4~42℃で少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも30分、又は約30分にわたって、又は室温付近で)。生物学的サンプルは、例えば、水又は緩衝液で濯がれてもよい。その後、元素質量分析によるイメージングの前に組織が乾燥されてもよい。
リンタングステン酸(例えば、三色染色液として)がコラーゲン線維の金属含有染色液として使用されてもよい。スライド上の組織切片(脱パラフィンFFPE又は凍結切片)は、ブアン液中で固定されてもよい(例えば、4~42℃又は室温付近で少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも30分間、又は約30分間にわたって)。その後、切片は、0.0001%~0.01%、0.0005%~0.005%、又は約0.001%のホスホタンジン酸で(例えば、4~42℃又は室温付近で少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも30分間、又は約15分間にわたって)処理されてもよい。その後、元素質量分析によるイメージングの前に、サンプルが水及び/又は緩衝液で濯がれて必要に応じて乾燥されてもよい。トリクロム染色液が、光学(例えば、蛍光)顕微鏡法によるイメージングに使用される濃度と比較して希釈して(例えば、5倍、10倍、20倍、50倍、又は大希釈)使用されてもよい。
幾つかの実施形態では、組織化学的染色液が有機分子である。幾つかの実施形態では、第2の金属が共有結合している。幾つかの実施形態では、第2の金属がキレート化される。幾つかの実施形態では、組織化学的染色液が細胞膜を特異的に結び付ける。幾つかの実施形態では、組織化学的染色液が四酸化オスミウムである。幾つかの実施形態では、組織化学的染色液が親油性である。幾つかの実施形態において、組織化学的染色液は、細胞外構造を特異的に結び付ける。幾つかの実施形態において、組織化学的染色液は、細胞外コラーゲンを特異的に結び付ける。幾つかの実施形態において、組織化学的染色液は、リンタングステン酸/リンモリブデン酸を含む三色染色である。幾つかの実施形態では、サンプルを抗体と接触させた後、例えば、光学イメージングに使用されるよりも低い濃度で、三色染色液が使用され、例えば、この場合、濃度は50倍希釈以上の三色染色液である。
金属含有薬物
医学における金属は、薬理学において新規でエキサイティングな分野である。金属タンパク質、核酸金属錯体又は金属含有薬物に組み込まれる前に金属イオンを一時的に貯蔵することに関与する細胞構造、或いは、タンパク質又は薬物分解時の金属イオンの最終結果については殆ど知られていない。微量金属の輸送、貯蔵、及び分配に関与する調節メカニズムを解明するための重要な最初のステップは、理想的には組織、細胞における或いは更には個々の細胞小器官及び細胞内コンパートメントのレベルでのそれらの本来の生理学的環境との関連で、金属の特定及び定量化に相当する。組織学的研究は、一般に、組織の薄い切片又は培養細胞に関して実施される。
多くの金属含有薬、すなわち、シスプラチン、ルテニウムイミダゾール、Moを伴うメタロセンベースの抗がん剤、Wを伴うタングステンセン、Hf又はZrを伴うB-ジケトネート錯体、Auを伴うオーラノフィン、ポリオキソモリブデート薬が様々な病気の治療に使用されているが、その作用又は生体内分布のメカニズムについては十分に分かっていない。多くの金属錯体がMRI造影剤(Gd(III)キレート)として使用される。金属ベースの抗がん剤の取り込み及び生体内分布の特性評価は、根底にある毒性を理解して最小限に抑えるために非常に重要である。
薬物に存在する特定の金属の原子量は、マスサイトメトリーの範囲に分類される。具体的には、シスプラチンなどのPt錯体(イプロプラチン、ロブプラチン)は、様々な癌を治療するための化学療法薬として広く使用される。プラチナベースの抗がん剤の腎毒性及び骨髄毒性はよく知られている。ここで、本明細書に記載の方法及び試薬を用いて、組織切片内でのそれらの細胞内局在、及び、質量(例えば、金属)タグ付き抗体及び/又は組織化学的染色液との共局在化を調べることができる。化学療法薬は、直接的なDNA損傷、DNA損傷修復経路の阻害、放射能などを通じて、増殖細胞などの特定の細胞に対して毒性を示す場合がある。特定の態様において、化学療法薬は、抗体中間体を介して腫瘍を標的とし得る。
特定の態様では、金属含有薬物が化学療法薬である。本方法は、生物学的サンプルを取得する前に、前述のように、動物研究モデル又はヒト患者などの生きている動物に金属含有薬物を投与することを含み得る。生物学的サンプルは、例えば、癌性組織又は一次細胞の生検であってもよい。或いは、金属含有薬物は、不死化細胞株又は一次細胞であってもよい生物学的サンプルに直接添加され得る。動物がヒト患者である場合、本方法は、金属含有薬物の分布を検出することに基づいて、金属含有薬物を含む治療レジメンを調整することを含んでもよい。
金属含有薬物を検出する方法ステップは、元素質量分析による金属含有薬物の細胞内イメージングを含んでもよく、また、細胞内構造(膜、細胞質、核、ゴルジ体、ER、ミトコンドリア、及び他の細胞オルガネラなど)及び/又は細胞外構造(ストロマ、粘膜ストロマ、基底膜、間質ストロマ、コラージュ又はエラスチンなどのタンパク質、プロテオグリカン、非プロテオグリカン多糖類、細胞外小胞、フィブロネクチン、ラミニン等を含むなど)における金属含有薬物の保持を検出することを含んでもよい。
上記構造のうちの1つ以上を分解する(例えば、上記構造のうちの1つ以上に結合する)組織化学的染色液及び/又は質量(例えば、金属)タグ付きSBPは、特定の細胞内又は細胞外構造での薬物の保持を検出するために、金属含有薬物と共局在化されてもよい。例えば、シスプラチンなどの化学療法薬は、コラーゲンなどの構造と共局在化されてもよい。これに代えて又は加えて、薬物の局在化は、細胞生存率、細胞増殖、低酸素症、DNA損傷応答、又は免疫応答のマーカーの存在に関連し得る。
幾つかの実施形態では、金属含有薬物が非内因性金属を含み、この場合、例えば、非内因性金属は、プラチナ、パラジウム、セリウム、カドミウム、銀又は金である。特定の態様において、金属含有薬物は、シスプラチン、ルテニウムイミダゾール、Moを伴うメタロセンベースの抗がん剤、Wを伴うタングステンセン、Hf又はZrを伴うB-ジケトネート錯体、Auを伴うオーラノフィン、ポリオキソモリブデート薬、Pdを伴うN-ミリストイルトランスフェラーゼ-1阻害剤(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム)又はこれらの誘導体のうちの1つである。例えば、薬物は、Ptを含んでもよく、また、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、イプロプラチン、ロバプラチン又はそれらの誘導体であってもよい。金属含有薬物としては、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、金(Au)、ガドリニウムなどの非内因性金属が含まれ得る。(Gd)、パラジウム(Pd)又はそれらの同位体を挙げることができる。癌に対する光熱療法のための金化合物(例えば、オーラノフィン)及び金ナノ粒子バイオコンジュゲートは、組織切片で特定され得る。
多重分析
本開示の1つの特徴は、サンプル中の複数(例えば、10以上、更には最大100以上)の異なる標的SBP要素を検出して、複数の異なるタンパク質及び/又は複数の異なる核酸配列を検出できるその能力である。これらの標的SBP要素の差分検出を可能にするには、それらのそれぞれのSBP要素が信号を区別できるように異なる標識原子を担持する必要がある。例えば、10個の異なるタンパク質が検出されている場合には、10個の異なる抗体(それぞれが異なる標的タンパク質に特異的)を使用でき、そのそれぞれは固有の標識を有しているため、異なる抗体からの信号を区別できる。幾つかの実施形態では、例えば同じタンパク質上の異なるエピトープを認識する複数の異なる抗体を単一の標的に対して使用することが望ましい。したがって、方法は、このタイプの冗長性に起因して標的よりも多くの抗体を使用してもよい。しかしながら、一般に、本開示は、複数の異なる標識原子を使用して、複数の異なる標的を検出する。
複数の標識抗体が本開示で使用される場合、抗体は、それらのそれぞれの抗原に対して同様の親和性を有することが好ましい。これは、それによって、検出された標識原子の量と組織サンプル内の標的抗原の存在量との間の関係が異なるSBPにわたって一貫性がある(特に高い走査周波数で)ようにするのに役立つからである。同様に、様々な抗体の標識が同じ効率を有すれば、それにより、抗体がそれぞれ同等の量の標識原子を担持し、好ましい。
場合によっては、SBPが蛍光標識並びに元素タグを担持してもよい。その後、サンプルの蛍光を使用して、サンプルの領域、例えばその後に標識原子の検出のためにサンプリングされ得る対象の材料を含む組織切片を決定してもよい。例えば、蛍光標識は、癌細胞に豊富に存在する抗原に結合する抗体にコンジュゲートされてもよく、また、任意の蛍光細胞は、その後、標識原子にコンジュゲートされるSBPによる他の細胞タンパク質の発現を決定するべく標的にされてもよい。
標的SBP要素が細胞内にある場合には、一般に、サンプルを標識に接触させる前又は接触中に細胞膜を透過処理する必要がある。例えば、標的がDNA配列であるが、標識化されたSBP要素が生細胞の膜に浸透できない場合、組織サンプルの細胞を固定して透過処理することができる。標識化されたSBP要素は、細胞に入って標的SBP要素とともにSBPを形成できる。この点で、IHC及びFISHとともに用いるための既知のプロトコルを利用することができる。
少なくとも1つの細胞内標的及び少なくとも1つの細胞表面標的を検出するために方法が使用されてもよい。しかしながら、幾つかの実施形態において、本開示は、細胞内標的を無視しながら、複数の細胞表面標的を検出するために使用することができる。全体として、標的の選択は、開示がサンプル内の選択された標的の位置の画像を提供するので、方法から望まれる情報によって決定される。
本明細書で更に説明するように、標識原子を含む特異的結合パートナー(すなわち、親和性試薬)を使用して、生物学的サンプルを染色(接触)することができる。適切な特定のビンギングパートナーは抗体(抗体フラグメントを含む)を含む。標識原子が質量分析によって区別されてもよい(つまり、異なる質量を有してもよい)。標識原子は、それらが1つ以上の金属原子を含む場合、本明細書では金属タグと称される場合がある。金属タグは、炭素骨格を有するポリマーと、それぞれが金属原子に結合する複数のペンダント基とを含んでもよい。これに代えて又は加えて、金属タグが金属ナノ粒子を含んでもよい。抗体は、共有又は非共有相互作用によって金属タグでタグ付けされてもよい。
抗体染色液は、細胞又は細胞内の分解能でタンパク質をイメージングするために使用されてもよい。本発明の複数の態様のうちの態様は、生物学的サンプルの細胞によって発現されるタンパク質に特異的に結合する1つ以上の抗体とサンプルとを接触させることを含み、抗体は第1の金属タグでタグ付けされる。例えば、サンプルは、それぞれが特定可能な金属タグを有する5つ以上、10つ以上、15以上、20以上、30以上、40以上、50以上の抗体と接触されてもよい。サンプルは、サンプルを抗体で染色する前、最中(例えば、ワークフローを容易にするため)、又は後に(例えば、抗体の抗原標的の変更を回避するために)、1つ以上の組織化学的染色液と更に接触されてもよい。サンプルは、本明細書に記載されるように、1つ以上の金属含有薬物及び/又は蓄積された重金属を更に含んでもよい。
本発明で用いる金属標識抗体は、金属を含まない代謝プローブ(例えば、EF5)に特異的に結合し得る。他の金属タグ付き抗体は、蛍光及び光学顕微鏡法で使用される従来の染色の標的(例えば、上皮組織、間質組織、核など)に特異的に結合し得る。そのような抗体としては、抗カドヘリン、抗コラーゲン、抗ケラチン、抗EFS、抗ヒストンH3抗体、及び当技術分野で知られている他の多くの抗体が挙げられる。
組織化学的染色液
本明細書に記載の1つ以上の固有の金属原子を有する組織化学的染色試薬及び使用方法は、本明細書に記載される他の試薬及び使用方法と組み合わされてもよい。例えば、組織化学的染色液は、金属含有薬物、金属標識抗体、及び/又は蓄積された重金属と共局在化されてもよい(例えば、細胞又は細胞内の分解能で)。特定の態様において、1つ以上の組織化学的染色液は、他のイメージング方法(例えば、蛍光顕微鏡法、光学顕微鏡法、又は電子顕微鏡法)のために使用されるものからより低い濃度(例えば、半分未満、1/4、1/10など)で使用されてもよい。
構造を視覚化及び特定するために、広範囲の組織学的染色液及び指標が利用可能であり、これらは十分に特徴付けられる。金属含有染色液は、病理学者によるイメージングマスサイトメトリーの受け入れに影響を与える可能性がある。特定の金属含有染色液は、細胞成分を明らかにすることがよく知られており、本発明での使用に適している。更に、明確な染色液をデジタル画像分析で使用して、特徴認識アルゴリズムのコントラストを与えることができる。これらの機能は、イメージングマスサイトメトリーの開発にとって戦略的に重要である。
多くの場合、組織切片の形態学的構造は、抗体などの親和性産物を使用して対比され得る。親和性産物は、組織化学的染色を使用する場合と比較して、高価であり、金属含有タグを使用する更なる標識手順を必要とする。この手法は、利用可能なランタニド同位体で標識化された抗体を使用するイメージングマスサイトメトリーの先駆的な研究で使用されたため、機能性抗体が生物学的質問に答えるための金属タグを枯渇させた。
本発明は、Ag、Au、Ru、W、Mo、Hf、Zr(粘液性間質を特定するために使用されるルテニウムレッド、コラーゲン線維を特定するための三色染色、細胞対比染色剤としての四酸化オスミウムなどの化合物を含む)などの元素を含む利用可能な同位体のカタログを拡張する。核型分析には銀染色が使用される。硝酸銀は、核小体形成領域(NOR)関連タンパク質を染色して、銀が沈着する暗い領域を生成し、NOR内のrRNA遺伝子の活性を示す。IMCに適合させるには、プロトコル(過マンガン酸カリウムによる酸化、銀濃度1%など)を、0.5%、0.01%、0.05%未満の銀溶液などの低濃度の銀溶液を使用するように変更する必要がある。
オートメタログラフィック増幅技術は、組織化学における重要なツールに進化してきた。多くの内因性及び毒性の重金属は、Agイオンとの反応によって自己触媒的に増幅され得る硫化物又はセレン化物のナノ結晶を形成する。より大きなAgナノクラスターは、IMCによって容易に視覚化され得る。現在、Zn-S/Seナノ結晶の銀増幅検出及び銀-セレンナノ結晶の形成によるセレンの検出のための堅牢なプロトコルが確立されてきた。更に、市販の量子ドット(Cdの検出)も、自己触媒的に活性であり、組織化学的標識として使用され得る。
本発明の態様は、組織化学的染色液及び元素質量分析によるイメージングにおける組織化学的染色液の使用を含んでもよい。元素質量分析によって分解可能な任意の組織化学的染色液を本発明で使用することができる。特定の態様において、組織化学的染色液は、サンプルをイメージングするために使用される元素質量分析計のカットオフよりも大きい、例えば、60amu、80amu、100amu、又は120amuを超える質量の1つ以上の原子を含む。例えば、組織化学的染色液は、本明細書に記載されるような金属タグ(例えば、金属原子)を含んでもよい。金属原子は、組織化学的染色にキレート化され又は組織化学的染色液の化学構造内で共有結合されてもよい。特定の態様では、組織化学的染色液が有機分子であってもよい。組織化学的染色液は、極性、疎水性(例えば、親油性)、イオン性であってもよく、或いは、異なる特性を有する基を含んでもよい。特定の態様では、組織化学的染色液が複数の化学物質を含んでもよい。
組織化学的染色液は、2000、1500、1000、800、600、400、又は200amu未満の小分子を含む。組織化学的染色液は、共有結合又は非共有結合(例えば、イオン性又は疎水性)相互作用を介してサンプルに結合してもよい。組織化学的染色液は、例えば、個々の細胞、細胞内構造、及び/又は細胞外構造を特定するのを助けるために、生物学的サンプルの形態を解明するためのコントラストを与えてもよい。組織化学的染色液によって分解され得る細胞内構造は、細胞膜、細胞質、核、ゴルジ体、小胞体、ミトコンドリア、及び他の細胞小器官を含む。組織化学的染色液は、核酸、タンパク質、脂質、リン脂質、又は炭水化物などの生体分子のタイプに関して親和性を有してもよい。特定の態様において、組織化学的染色液は、DNA以外の分子を結び付けてもよい。適切な組織化学的染色液は、間質(例えば、粘膜間質)、基底膜、間質間質、コラージュ又はエラスチンなどのタンパク質、プロテオグリカン、非プロテオグリカン多糖類、細胞外小胞、フィブロネクチン、ラミニンなどを含む細胞外構造(例えば、細胞外マトリックスの構造)を結び付ける染色液も含む。
組織化学的染色液及び/又は代謝プローブは、細胞又は組織の状態を示し得る。例えば、組織化学的染色液は、シスプラチン、エオシン、ヨウ化プロピジウムなどの生体染色液を含んでもよい。他の組織化学的染色液は、低酸素症に関して染色してもよく、例えば、低酸素条件下でのみ結合又は沈着してもよい。ロドデオキシウリジン(IdU)又はその誘導体などのプローブが、細胞増殖を染色してもよい。特定の態様において、組織化学的染色液が細胞又は組織の状態を示さなくてもよい。細胞の状態(例えば、生存率、低酸素症及び/又は細胞増殖)を検出するが生体内(例えば、生きている動物又は細胞培養物に)投与されるプローブは、本方法のいずれかで使用されるが、組織化学的染色液として適格ではない。
組織化学的染色液は、核酸(例えば、DNA及び/又はRNA)、タンパク質、脂質、リン脂質、炭水化物(例えば、単糖又は二糖又はポリオールなどの糖;オリゴ糖;及び/又はデンプン又はグリコーゲンなどの多糖)、糖タンパク質、及び/又は糖脂質などの生物学的分子のタイプに関して親和性を有してもよい。特定の態様では、組織化学的染色液が対比染色剤であってもよい。
本明細書で使用され得る一般的な組織化学的染色液は、ルテニウムレッド及びリンタングステン酸(例えば、三色染色として)を含む。
サンプルに染色液を導入するサンプルの特定の染色に加え、時として、サンプルは、該サンプルが取得された組織又は有機体に金属含有薬物が投与され又はこれらの組織又は有機体が環境曝露からの蓄積金属を有する結果として金属原子を含む場合がある。時として、組織又は動物は、金属含有材料の保持及び除去を観察するために、パルス追跡実験戦略に基づくこの技術を使用する方法で検査されてもよい。
例えば、医学における金属は、薬理学において新規でエキサイティングな分野である。金属タンパク質、核酸金属錯体又は金属含有薬物に組み込まれる前に金属イオンを一時的に貯蔵することに関与する細胞構造、或いは、タンパク質又は薬物分解時の金属イオンの最終結果については殆ど知られていない。微量金属の輸送、貯蔵、及び分配に関与する調節メカニズムを解明するための重要な最初のステップは、理想的には組織、細胞における或いは更には個々の細胞小器官及び細胞内コンパートメントのレベルでのそれらの本来の生理学的環境との関連で、金属の特定及び定量化に相当する。組織学的研究は、一般に、組織の薄い切片又は培養細胞に関して実施される。
多くの金属含有薬、すなわち、シスプラチン、ルテニウムイミダゾール、Moを伴うメタロセンベースの抗がん剤、Wを伴うタングステンセン、Hf又はZrを伴うB-ジケトネート錯体、Auを伴うオーラノフィン、ポリオキソモリブデート薬が様々な病気の治療に使用されているが、その作用又は生体内分布のメカニズムについては十分に分かっていない。多くの金属錯体がMRI造影剤(Gd(III)キレート)として使用される。金属ベースの抗がん剤の取り込み及び生体内分布の特性評価は、根底にある毒性を理解して最小限に抑えるために非常に重要である。
薬物に存在する特定の金属の原子量は、マスサイトメトリーの範囲に分類される。具体的には、シスプラチンなどのPt錯体(イプロプラチン、ロブプラチン)は、様々な癌を治療するための化学療法薬として広く使用される。プラチナベースの抗がん剤の腎毒性及び骨髄毒性はよく知られている。ここで、本明細書に記載の方法及び試薬を用いて、組織切片内でのそれらの細胞内局在、及び、金属タグ付き抗体及び/又は組織化学的染色液との共局在化を調べることができる。化学療法薬は、直接的なDNA損傷、DNA損傷修復経路の阻害、放射能などを通じて、増殖細胞などの特定の細胞に対して毒性を示す場合がある。特定の態様において、化学療法薬は、抗体中間体を介して腫瘍を標的とし得る。
特定の態様では、金属含有薬物が化学療法薬である。本方法は、生物学的サンプルを取得する前に、前述のように、動物研究モデル又はヒト患者などの生きている動物に金属含有薬物を投与することを含み得る。生物学的サンプルは、例えば、癌性組織又は一次細胞の生検であってもよい。或いは、金属含有薬物は、不死化細胞株又は一次細胞であってもよい生物学的サンプルに直接添加され得る。動物がヒト患者である場合、本方法は、金属含有薬物の分布を検出することに基づいて、金属含有薬物を含む治療レジメンを調整することを含んでもよい。
金属含有薬物を検出する方法ステップは、元素質量分析による金属含有薬物の細胞内イメージングを含んでもよく、また、細胞内構造(膜、細胞質、核、ゴルジ体、ER、ミトコンドリア、及び他の細胞オルガネラなど)及び/又は細胞外構造(ストロマ、粘膜ストロマ、基底膜、間質ストロマ、コラージュ又はエラスチンなどのタンパク質、プロテオグリカン、非プロテオグリカン多糖類、細胞外小胞、フィブロネクチン、ラミニン等を含むなど)における金属含有薬物の保持を検出することを含んでもよい。
上記構造のうちの1つ以上を分解する(例えば、上記構造のうちの1つ以上に結合する)組織化学的染色液及び/又は金属タグ付きSBPは、特定の細胞内又は細胞外構造での薬物の保持を検出するために、金属含有薬物と共局在化されてもよい。例えば、シスプラチンなどの化学療法薬は、コラーゲンなどの構造と共局在化されてもよい。これに代えて又は加えて、薬物の局在化は、細胞生存率、細胞増殖、低酸素症、DNA損傷応答、又は免疫応答のマーカーの存在に関連し得る。
特定の態様において、金属含有薬物は、シスプラチン、ルテニウムイミダゾール、Moを伴うメタロセンベースの抗がん剤、Wを伴うタングステンセン、Hf又はZrを伴うB-ジケトネート錯体、Auを伴うオーラノフィン、ポリオキソモリブデート薬、Pdを伴うN-ミリストイルトランスフェラーゼ-1阻害剤(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム)又はこれらの誘導体のうちの1つである。例えば、薬物は、Ptを含んでもよく、また、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、イプロプラチン、ロバプラチン又はそれらの誘導体であってもよい。金属含有薬物としては、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、金(Au)、ガドリニウム(Gd)、パラジウム(Pd)などの非内因性金属、又はそれらの同位体を挙げることができる。癌に対する光熱療法のための金化合物(例えば、オーラノフィン)及び金ナノ粒子バイオコンジュゲートは、組織切片で特定され得る。
重金属への曝露は、食物や水の摂取、皮膚を介した接触、又はエアロゾルの摂取によって発生する可能性がある。重金属は体の軟部組織に蓄積する可能性があるため、長時間の曝露は深刻な健康影響を及ぼす。特定の態様において、重金属は、動物研究モデルにおける制御された曝露を通じて、又はヒト患者における環境曝露を通じて、体内で蓄積され得る。重金属は、ヒ素(As)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、オスミウム(Os)、タリウム(Tl)、水銀(Hg)などの有毒な重金属であってもよい。
単一細胞分析
本開示の方法は、サンプル中の複数の細胞のレーザーアブレーションを含み、したがって、複数の細胞からのプルームが分析され、それらの内容物がサンプル内の特定の位置にマッピングされて、画像がもたらされる。殆どの場合、方法のユーザは、サンプル全体ではなく、サンプル内の特定の細胞に信号を局在化する必要がある。これを達成するために、サンプル内の細胞の境界(例えば、原形質膜、又は場合によっては細胞壁)を定めることができる。
細胞境界の境界画定は、様々な方法で実現できる。例えば、サンプルは、上記のような顕微鏡法など、細胞の境界を定めることができる従来の技術を使用して検討され得る。したがって、これらの方法を実行する場合、上記のようなカメラを含む分析システムが特に有用である。その後、このサンプルの画像は、本開示の方法を使用して調製することができ、この画像は、以前の結果に重ね合わせることができ、それにより、検出された信号を特定の細胞に局在化させることができる。実際に、前述したように、場合によっては、レーザーアブレーションは、顕微鏡法に基づく技術の使用によって関心があると決定されたサンプル中の細胞のサブセットにのみ方向付けられてもよい。
しかしながら、複数の技術を使用する必要性を回避するために、本開示のイメージング方法の一部として細胞境界を定めることが可能である。このような境界確定戦略は、IHC及び免疫細胞化学でよく知られており、また、これらの手法は、検出可能な標識を使用して適合され得る。例えば、この方法は、細胞の境界に位置することが知られている標的分子の標識化を伴うことができ、また、これらの標識からの信号を境界の画定のために使用することができる。適切な標的分子は、接着複合体の要素(例えば、β-カテニン又はE-カドヘリン)などの細胞境界の豊富な又は普遍的なマーカーを含む。幾つかの実施形態は、境界を強化するために、複数の膜タンパク質を標識することができる。
適切な標識を含めることによって細胞境界を画定することに加えて、このようにして特定の細胞小器官を画定することもできる。例えば、ヒストン(例えば、H3)などの抗原を使用して核を特定することができ、また、ミトコンドリア特異的抗原、細胞骨格特異的抗原、ゴルジ特異的抗原、リボソーム特異的抗原などを標識化して、細胞超構造を本開示の方法によって分析できるようにすることもできる。
細胞(又は細胞小器官)の境界を画定する信号は、目で評価することも、画像処理を使用してコンピュータで分析することもできる。そのような技術は、他のイメージング技術に関して当該技術分野において知られており、例えば、引用文献xxvは、空間フィルタリングを使用して蛍光画像から細胞境界を決定するセグメンテーションスキームについて記載し、引用文献xxviは、明視野顕微鏡法画像から境界を決定するアルゴリズムを開示し、引用文献xxviiは、共焦点顕微鏡画像から細胞形状を抽出するCellSeT方法を開示し、引用文献xxviiiは、蛍光顕微鏡画像用のCellSegm MATLAB(登録商標)ツールボックスを開示する。本開示を用いて有用な方法は、分水界変換及びガウスぼかしを使用する。これらの画像処理技術は、単独で使用することも、使用してから目で確認することもできる。
細胞の境界が明確になった時点で、特定の標的分子から個々の細胞に信号を割り当てることができる。例えば定量標準に対して方法を較正することによって、個々の細胞内の標的分析物の量を定量化することも可能である。
元素標準
特定の態様では、サンプルキャリアが元素標準を含んでもよい。本開示の方法は、元素標準をサンプルキャリアに適用することを含んでもよい。これに代えて又は加えて、本開示の方法は、本明細書で更に論じられるように、元素標準に基づいて較正を実行すること、及び/又は、元素標準に基づいてサンプルから得られたデータを正規化することを含んでもよい。元素標準を含むサンプルキャリア及び方法は、本開示の他の場所で説明される更なる態様又はステップを更に含んでもよい。
元素標準は、既知の量の複数の同位体を備える粒子(例えば、ポリマービーズ)を含んでもよい。特定の態様では、粒子が異なるサイズを有してもよく、それぞれの粒子が所定量の複数の同位体を含む。粒子は、サンプルを保持する支持体に適用されてもよい。例えば、サンプルが細胞塗抹標本である場合には、元素標準粒子が支持体に(例えば、細胞塗抹標本と一緒に)適用されてもよい。
元素標準が本明細書に記載されるような別個の粒子を含む場合、本システム及び方法は、粒子の表面の全体にわたってレーザーを走査して、ICP-MSによる分析のための連続プルームをもたらすことを可能にし得る。粒子の全てがこのようにして取得され、それにより、既知の量の複数の同位体を有する粒子から統合された信号がもたらされてもよい。粒子から取得された信号は、時間の経過とともに積分され、本明細書に記載されているように正規化又は較正のために使用され得る。
システム及び用途に応じて、機器の感度ドリフトは、イオン光学ドリフト、表面帯電、検出器ドリフト(例えばエージング)、拡散に影響を与える温度及びガスフロードリフト、電子機器の挙動(例えば、プラズマパワー、イオン光学電圧など)を含む多くの要因によって引き起こされ得る。そのような機器の感度は、本明細書に記載されている元素標準を使用して正規化又は較正することによって受け入れられ得る。
元素標準は、1つ以上の元素又は同位体を含む粒子、膜、及び/又はポリマーを含んでもよい。元素標準は、元素標準全体にわたって一貫した豊富な元素又は同位体を含んでもよい。或いは、元素標準は、それぞれが異なる量の1つ以上の元素又は同位体を有する別個の領域を含んでもよい(例えば、標準曲線を与える)。元素標準の異なる領域は、元素又は同位体の異なる組み合わせを含んでもよい。
本明細書に記載されるように、既知の元素又は同位体組成物の元素標準粒子(すなわち、基準粒子)が、サンプル中の標的元素イオンの検出中の基準として使用するためにサンプル(又はサンプル支持体又はサンプルキャリア)に加えられてもよい。特定の実施形態において、基準粒子は、遷移金属又はランタニドなどの金属元素又は同位体を含む。例えば、基準粒子は、60amuを超える、80amuを超える、100amuを超える、又は120amuを超える質量の元素又は同位体を含んでもよい。1つ以上の元素又は同位体の量が知られている場合がある。例えば、同じ元素又は同位体組成物の基準粒子中の原子数の標準偏差は、平均原子数の50%、40%、30%、20%又は10%であってもよい。
特定の実施形態において、基準粒子は、光学的に分解可能であってもよい(例えば、1つ以上のフルオロフォアを含んでもよい)。
特定の実施形態において、基準粒子は、100amuを超える質量を有する元素又は元素同位体(例えば、ランタニド又は遷移元素系列の元素)を含んでもよい。これに代えて又は加えて、基準粒子は、複数の元素又は元素同位体を含んでもよい。例えば、基準粒子は、サンプル中の全ての、一部の、又はいずれの標識原子の元素又は元素同位体と同一である元素又は元素同位体を含んでもよい。或いは、基準粒子は、標識原子の少なくとも1つの質量を上回る及び下回る質量の元素又は元素同位体を含んでもよい。基準粒子は、既知の量の1つ以上の元素又は同位体を有してもよい。基準粒子は、標的要素とは異なる元素又は同位体、或いは、標的要素とは異なる元素又は同位体の組み合わせを有する基準粒子を含んでもよい。
元素標準粒子(すなわち、基準粒子)は、本明細書に一般的に記載される粒子と同様の直径範囲、例えば、1nm~1μm、10nm~500nm、20nm~200nm、50nm~100nm、1um未満、800nm未満、600nm未満、400nm未満、200nm未満、100nm未満、50nm未満、20nm未満、10nm未満、又は1nm未満の直径を有してもよい。特定の態様では、元素標準粒子がナノ粒子であってもよい。元素標準粒子は、本明細書に一般的に記載されている粒子と同様の組成を有してもよく、例えば、金属ナノ結晶コア及び/又はポリマー表面を有してもよい。
本発明の態様は、イメージング質量分析によって実行されるサンプル中の正規化のための方法、サンプル、及び基準粒子を含む。正規化は、個々の基準粒子を検出することによって実行されてもよい。基準粒子は、例えば、以下に記載される実施形態の態様のいずれかにしたがって、サンプルのイメージング中の機器感度ドリフトを補正するために、イメージング質量分析における標準として使用されてもよい。
特定の態様において、サンプルの質量分析をイメージングする方法は、固体支持体上にサンプルを提供することを含み、この場合、サンプルは1つ以上の標的要素を含み、また、基準粒子は、複数の基準粒子が個別に分解できるようにサンプル上又はサンプル内に分布される。標的元素イオン及び基準粒子元素イオンを生成するためにサンプル上のイオン化配置及び噴化配置が実行されてもよい。個々の基準粒子からの標的元素イオン及び元素イオンが検出されてもよい(例えば、サンプル上の異なる位置で)。標的元素イオンは、検出された標的元素イオンの近くで検出された1つ以上の個々の基準粒子の正規化された元素イオンであってもよい。これに代えて又は加えて、第1及び第2の位置で検出された標的元素イオンは、異なる個々の基準粒子から検出された元素イオンに対して正規化されてもよい。その後、正規化された標的元素イオンの画像が、当技術分野で知られている又は本明細書に記載されている任意の手段によって生成されてもよい。
本発明の態様は、標識原子(例えば、標識原子を含む元素タグ)に(例えば、共有結合又は非共有結合で)付着した複数の特異的結合パートナーを含む固体支持体上の生物学的サンプルを含む。生物学的サンプルは、複数の基準粒子が個別に分解可能であるように、固体支持体上の生物学的サンプル上又は生物学的サンプル内に分布される基準粒子を更に含んでもよい。
本発明の態様は、固体支持体上にサンプルを提供することによってそのような生物学的サンプルを調製するステップであって、サンプルが固体支持体上の生物学的サンプルである、ステップと、標識原子に付着された特異的結合パートナーで生物学的サンプルを標識化するステップと、複数の基準粒子が個別に分解可能であるように、生物学的サンプル上に又は生物学的サンプル内に基準粒子を分配するステップとを含む。特定の態様において、サンプルは、生物学的サンプルであり、本明細書に記載の標識原子などの1つ以上の標的要素を含んでもよい。
本発明の態様は、サンプルのイメージング中の機器の感度ドリフトを補正するためのイメージング質量分析における標準としての基準粒子又は基準粒子の組成物の使用を含む。特定の態様において、サンプルは、生物学的サンプルであり、本明細書に記載の標識原子などの1つ以上の標的要素を含んでもよい。
上記の方法及び使用は、以下に説明するように、更なる要素を含んでもよい。
元素標準は、サンプル又はその一部の上又は中に堆積されてもよい。これに代えて又は加えて、元素標準は、サンプルとは異なる或いはサンプルが配置されるようになっている場所とは異なるサンプルキャリア上の位置にあってもよい。
他の例では、6時間、3時間、1時間、30分、10分、1分、30秒、10秒、1秒、500us、100us、50us、又は10us以内又は標的元素イオンの検出からの特定の数のレーザー又はイオンビームパルス(1000パルス、500パルス、100パルス、又は50パルス内など)内など、サンプルの一部の時間的近接内で検出された元素標準粒子が正規化又は較正のために使用されてもよい。
標識原子などの標的元素は、個々の基準粒子から検出された元素イオンに基づいて、サンプル分析内で正規化され得る。例えば、本方法は、個々の基準粒子からの元素イオンの検出と、標的元素イオンのみの検出との間の切り換えを含んでもよい。
標的元素イオンは、イオンピークの下方の面積又は同じ質量チャネル内のイオン事象(パルス)の数などの強度値として検出されてもよい。特定の実施形態において、検出された標的元素イオンは、個々の基準粒子から検出された元素イオンに対して正規化されてもよい。特定の実施形態において、異なる場所にある標的元素イオンは、同じサンプル分析中に異なる基準粒子に対して正規化される。
正規化は、標的元素イオンの定量化を含んでもよい。基準粒子が既知の量の1つ以上の元素又は同位体を有する実施形態では(例えば、上記のようにある程度の確実性で)、基準粒子からの元素イオンから検出された信号を使用して、標的元素イオンを定量化することができる。
サンプル分析中の基準粒子に対する正規化は、機器の感度ドリフトを補償することができ、この場合、異なる位置にある同じ数の標的元素が異なって検出されてもよい。システム及び用途に応じて、機器の感度ドリフトは、イオン光学ドリフト、表面帯電、検出器ドリフト(例えばエージング)、拡散に影響を与える温度及びガスフロードリフト、電子機器の挙動(例えば、プラズマパワー、イオン光学電圧など)を含む多くの要因によって引き起こされ得る。
本発明の態様は、元素標準として、サンプルキャリアなどの支持体に適用又は存在することができる元素膜又は複数の元素膜を含む。元素膜は、接着性元素膜及び/又はポリマー膜であってもよい。例えば、元素膜は、図10に示されるように、ポリエステルステッカー上の薄層ポリマー膜(例えば、要素又はY、In、Ce、Eu、Luなどの同位体の組み合わせでコード化された)であってもよい。特定の実施形態において、元素膜は、支持体上に取り付けられ得るポリマー(例えば、プラスチック)層を含んでもよい。本明細書に記載されているように、支持体がサンプルスライドであってもよい。他の実施形態では、元素膜がサンプルスライド上に事前に印刷されてもよい。本明細書で論じられるように、サンプルスライドは、サンプル中の細胞及び/又は遊離分析物を結合するための1つ以上の領域を有してもよい。
特定の態様では、ポリマー膜がポリエステルプラスチック膜であってもよい。ポリマーは、金属溶液及び揮発性溶媒と混合されると、溶媒が蒸発した後に金属を閉じ込める膜を形成する可能性がある長鎖ポリマーであってもよい。例えば、ポリマー膜は、ポリ(メチルメタクリレート)ポリマーであってもよく、また、溶媒がトルエンであってもよい。ポリマーは、均一な分布を可能にするためにスピンコーティングされてもよい。
元素膜は、少なくとも1、2、3、4、5、10、又は20個の異なる元素を含んでもよい。元素膜は、少なくとも1、2、3、4、5、10、20、30、40、又は50個の異なる元素同位体を含んでもよい。元素又は元素同位体は、ランタニド及び/又は遷移元素などの金属を含んでもよい。元素同位体の一部又は全ては、60amu以上、70amu以上、80amu以上、90amu以上、又は100amu以上の質量を有してもよい。特定の実施形態において、元素膜は、1つ以上の標識原子と同一の元素、元素同位体、又は元素同位体質量を含んでもよい。例えば、元素膜は、同じ支持体上のサンプルにタグを付けるために使用されるものと同一の質量タグを含んでもよい。元素膜は、ポリマーに(共有結合又はキレート化のいずれかによって)結合した元素原子を含んでもよく、或いは、膜に直接に結合した元素原子(遊離、クラスター、又はキレート化のいずれか)を含んでもよい。元素膜は、その表面全体にわたって元素又は元素同位体の均一なコーティングを含んでもよいが、個々の同位体は同じ又は異なる量で存在してもよい。或いは、異なる量の同じ同位体が、膜の表面全体にわたって既知の分布でパターン化されてもよい。元素膜は、少なくとも0.01、0.1、1、10、又は100平方ミリメートルであってもよい。
特定の態様において、元素膜は、質量タグでタグ付けした後(及び場合によっては未結合の質量タグを洗浄した後)にサンプルスライドに適用されてもよい。これにより、元素膜からのサンプルの相互汚染を減らすことができる。例えば、元素膜を使用すると、サンプル取得中にバックグラウンドの増大が50%、25%、10%、又は5%未満になる場合がある。バックグラウンドは、元素膜に存在する同位体の1つ以上(例えば、大部分)の質量の信号強度であってもよい。
特定の態様において、元素膜全体にわたる各元素同位体(又は元素同位体の大部分)の平均数(又は平均強度)は、20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満又は2%の変動係数(CV)を有してもよい。例えば、CVが6%未満であってもよい。CVは、少なくとも2、5、10、20、又は40個の関心領域にわたって測定されてもよく、この場合、各領域は、少なくとも100、500、1,000、5,000、又は10,000平方マイクロメートルである。同様に、元素膜間の各元素同位体(又は元素同位体の大部分)の平均数(又は平均強度)のCVは、20%、15%、10%、5%、又は2%未満であってもよい。
元素膜は、標識原子の調整、信号の正規化、及び/又は定量化のために使用されてもよい(例えば、サンプル実行内及び/又はサンプル実行間)。例えば、元素膜は、長いサンプル実行(例えば、1、2、4、12、24、又は48時間を超える)の全体にわたって使用されてもよい。
特定の態様では、接着元素膜を使用して、サンプル取得前、単一の固体支持体上の異なる領域から(又は異なる時間に)サンプルを取得する間、又はその両方で装置を調整してもよい。調整中、接着元素膜はレーザーアブレーションに晒されてもよく、また、結果として生じるアブレーションプルーム(例えば、過渡的)は、本明細書に記載されるように質量検出器に移送されてもよい。その後、空間分解能、過渡的クロストーク、及び/又は信号強度(例えば、所定の過渡の全てのプッシュにわたるなど、1つ以上のプッシュにわたるイオンカウントの数)が読み取られてもよい。読み出しに基づいて、1つ以上のパラメータが調整されてもよい。そのようなパラメータとしては、ガス流(例えば、シース、キャリア、及び/又はメークアップガス流)、電圧(例えば、増幅器又はイオン検出器に印加される電圧)、及び/又は光学パラメータ(例えば、アブレーション周波数、アブレーションエネルギー、アブレーション距離など)が挙げられる。例えば、イオン検出器に印加される電圧は、信号強度が期待値(例えば、プリセット値又は同じ又は類似の接着元素膜から得られた以前の信号強度から得られた値)に戻るように調整されてもよい。
特定の態様では、接着元素膜を使用して、異なる固体支持体上のサンプル間で検出された標識原子から、単一の固体支持体上のサンプルからの領域間(又は異なる時間)で検出された標識原子から、又はその両方からの信号強度を正規化してもよい。正規化は、サンプル取得後に実行されるとともに、様々なサンプル、領域、時間、又は動作条件から取得された信号強度の比較を可能にする。サンプル又はその領域の所定の元素同位体(例えば、質量タグに関連する)から取得された信号強度(例えば、イオンカウント)は、空間的又は時間的に近接した元素膜から取得された同じ(又は類似の)元素同位体の信号強度に対して正規化されてもよい。例えば、検出された標的元素イオンの100μm、50μm、25μm、10μm又は5μm以内などの空間的に近接した範囲内の元素膜が正規化のために使用されてもよい。他の例では、1分、30秒、10秒、1秒、500us、100us、50us、又は10us以内又は標的元素イオンの検出からの特定の数のレーザー又はイオンビームパルス(1000パルス、500パルス、100パルス、又は50パルス内など)内など、時間的近接内で検出された元素膜が正規化のために使用されてもよい。
正規化は、標的元素イオン(イオン化された元素同位体など)の定量化を含んでもよい。元素膜が既知の量の1つ以上の元素又は同位体を有する実施形態では(例えば、上記のようにある程度の確実性で)、元素膜からの元素イオンから検出された信号を使用して、標的元素イオンを定量化することができる。
サンプル分析中の元素膜に対する正規化は、機器の感度ドリフトを補償することができ、この場合、異なる位置にある同じ数の標的元素が異なって検出されてもよい。システム及び用途に応じて、機器の感度ドリフトは、イオン光学ドリフト、表面帯電、検出器ドリフト(例えばエージング)、拡散に影響を与える温度及びガスフロードリフト、電子機器の挙動(例えば、プラズマパワー、イオン光学電圧など)を含む多くの要因によって引き起こされ得る。正規化に代えて又は加えて、上記の機器感度ドリフト係数に影響を与えるパラメータが、元素膜から取得された信号に基づいて調整されてもよい。
以下に説明するように、元素(例えば、元素同位体)標準を使用して、質量タグの量(例えば、標識原子の数)又は所定の質量タグによって結合された分析物の数を定量化するための標準曲線を生成してもよい。異なる既知量の元素又は元素同位体を有する複数の元素膜(又は単一の元素膜の複数の領域)を使用して、そのような標準曲線を生成してもよい。
特定の実施形態では、元素膜が粘着テープ上の金属含有標準であってもよい。このテープは、長時間の画像取得時に染色された組織スライドに適用され得る。これらの長い取得は、機器の性能を積極的に監視するためのデータを取得するための定期的なサンプリングの恩恵を受けることができる。これにより、縦断的研究のための標準化及び/又は正規化が更に可能になる。
本明細書に記載されるように、元素標準は、既知の元素の基準粒子を含んでもよく、或いは、同位体組成物が、サンプル中の標的元素イオンの検出中に基準として使用するためにサンプル(又はサンプルキャリア)に加えられてもよい。特定の実施形態において、基準粒子は、遷移金属又はランタニドなどの金属元素又は同位体を含む。例えば、基準粒子は、60amuを超える、80amuを超える、100amuを超える、又は120amuを超える質量の元素又は同位体を含んでもよい。
標識原子などの標的元素は、個々の基準粒子から検出された元素イオンに基づいて、サンプル分析内で正規化され得る。例えば、本方法は、個々の基準粒子からの元素イオンの検出と、標的元素イオンのみの検出との間の切り換えを含んでもよい。
ヒドロゲルを使用した分析前サンプル拡張
従来の光学顕微鏡法は、照明源の波長の約半分に制限されており、可能な最小分解能は約200nmである。拡大顕微鏡法は、ポリマーネットワークを使用してサンプルを物理的に拡大し、サンプルの光学的可視化の解像度を約20nmに上げる(特に生物学的サンプルに関して)サンプル調製の方法である(国際公開第2015127183号パンフレット)。拡張手順は、イメージング質量分析及びイメージングマスサイトメトリーのためにサンプルを調製するべく使用され得る。このプロセスにより、1μmのアブレーションスポット直径は、拡張されていないサンプルで1μmの分解能をもたらすが、この1μmのアブレーションスポットでは、拡張後の分解能が約100nmになる。
拡大顕微鏡法は、付着組織内の個々の細胞(又は別の特徴)が本明細書に記載のレーザー走査システム及び方法によって別々にサンプリングされ得る拡大されたサンプルをもたらし得る。
生物学的サンプルの拡大顕微鏡法は、一般に、固定、固定の準備、ゲル化、機械的均質化、及び拡大のステップを含む。
固定段階では、サンプルが化学的に固定されて洗浄される。しかしながら、特定のシグナル伝達機能又は生理学的状態に応じたタンパク質間相互作用などの酵素機能は、固定ステップを伴うことなく拡張顕微鏡法を使用して調べることができる。
次に、サンプルは、後続のゲル化ステップで形成されたヒドロゲルに付着(「固定」)できるように調製される。ここで、本明細書の他の場所で論じられるようなSBP(例えば、抗体、ナノボディ、非抗体タンパク質、ペプチド、核酸、及び/又はサンプル中の対象の標的分子に特異的に結合することができる小分子)は、標的がサンプルに存在する場合にはその標的に結合するべくサンプルとともにインキュベートされる。随意的に、サンプルは、イメージングに役立つ検出可能な化合物で標識化(「アンカー」と呼ばれることもある)され得る。光学顕微鏡法の場合、検出可能な化合物は、例えば、蛍光標識された抗体、ナノボディ、非抗体タンパク質、ペプチド、核酸、及び/又はサンプル中の対象の標的分子に特異的に結合することができる小分子を含むことができ、例えばこれらによって提供され得る(米国特許第2017276578号)。イメージングマスサイトメトリーを含むマスサイトメトリーの場合、検出可能な標識は、例えば、抗体、ナノボディ、非抗体タンパク質、ペプチド、核酸、及び/又は、サンプル中の対象の標的分子に特異的に結合することができる小分子により標識化された元素タグによって提供され得る。場合によっては、標的に結合するSBPは、標識を含まないが、代わりに、二次SBPによって結合され得る特徴を含む(例えば、免疫組織化学的技術で一般的なように、標的に結合する一次抗体及び一次抗体に結合する二次抗体など)。一次SBPのみが使用される場合、これは、それ自体、サンプルをヒドロゲルにつなぎとめることができるように後続のゲル化ステップで形成されたヒドロゲルにサンプルを付着又は架橋する部分に連結されてもよい。或いは、二次SBPが使用される場合、これは、サンプルをヒドロゲルに付着又は架橋する部分を含んでもよい。場合によっては、第2のSBPに結合する第3のSBPが使用される。Chen et al.,2015(Science 347:543-548)に記載される1つの典型的な実験プロトコルは、一次抗体を使用して標的に結合し、二次抗体が一次抗体に結合し、この場合、二次抗体がオリゴヌクレオチドに付着され、その後、三次SBPとして、配列に相補的なオリゴヌクレオチドが二次抗体に付着され、三次SBPは、アクリルアミドヒドロゲルに組み込まれ得るメタクリロイル基を含む。場合によっては、ヒドロゲルに組み込まれる部分を含むSBPも標識を含む。これらの標識は、蛍光標識又は元素タグとなることができ、したがって、例えば、フローサイトメトリー、光学走査及び蛍光測定(米国特許第2017253918号)、又はマスサイトメトリー又はイメージングマスサイトメトリーによるその後の分析で使用され得る。
ゲル化段階は、高密度に架橋された高電荷のモノマーを含むヒドロゲルをサンプルに注入することにより、サンプル内にマトリックスを生成する。例えば、アクリル酸ナトリウムは、コモノマーアクリルアミド及び架橋剤N-N’メチレンビスアクリルアミドとともに、固定及び透過処理された脳組織に導入されてしまっている(Chen et al.,2015参照)。ポリマーが形成されると、固定ステップで標的にリンクされた部分が組み込まれるため、サンプル内の標的がゲルマトリックスに付着する。
次に、サンプルを均質化剤で処理して、サンプルの機械的特性を均質化し、サンプルが膨張に抵抗しないようにする(国際公開第2015127183号パンフレット)。例えば、サンプルは、酵素(プロテアーゼなど)による分解によって、化学的タンパク質分解(臭化シアンなど)によって、サンプルを摂氏70~95度に加熱することによって、又は、超音波処理などの物理的破壊によって均質化され得る(米国特許第2017276578号)。
次に、サンプル/ヒドロゲル複合材料は、低塩緩衝液又は水で複合材料を透析することによって拡張され、サンプルが3次元で元のサイズの4倍又は5倍に拡張できるようにする。ヒドロゲルが膨張すると、サンプル、特に標的に付着した標識とヒドロゲルが膨張するが、標識の元の3次元配置は維持される。サンプルは低塩溶液又は水で膨張するため、膨張したサンプルは透明であり、それにより、サンプルの深部で光学イメージングが可能であり、また、マスサイトメトリーを実行するときにかなりのレベルの汚染元素を導入することなくイメージングが可能である(例えば蒸留水の使用によって或いは容量性脱イオン、逆浸透、炭素ろ過、精密ろ過、限外ろ過、紫外線酸化、又は電離化を含む他のプロセスによって精製される)。
膨張したサンプルは、イメージング技術によって分析でき、それにより、疑似的に改善された分解能がもたらされる。例えば、蛍光顕微鏡法を蛍光標識とともに使用でき、また、イメージングマスサイトメトリーを元素タグとともに、随意的に組み合わせて使用できる。ヒドロゲルの膨潤と、それに伴うネイティブサンプルと比較した拡張サンプルの標識間の距離の増大とに起因して、以前は個別に分解できなかった標識(光学顕微鏡法での可視光の回折限界又はIMCのスポット直径に起因するもの)。
拡大顕微鏡法(ExM)の変形が存在し、これはまた、本明細書に開示される装置及び方法を使用して適用することができる。これらの変形としては、タンパク質保持ExM(proExM)、拡張蛍光in situハイブリダイゼーション(ExFISH)、反復ExM(iExM)が挙げられる。繰り返し拡張顕微鏡法は、先の技術を使用して既に予備的な拡張を受けてしまっているサンプル中の第2の拡張可能なポリマーゲルを形成することを伴う。次に、第1の膨張ゲルが溶解され、その後、総膨張を最大約20倍にするべく第2の膨張可能なポリマーゲルが膨張される。例えば、Chang et al.,2017(Nat Methods 14:593-599)は、前述のChen et al.2015の方法に基づいており、形成される第1のゲルが開裂可能な架橋剤と置き換えられている(例えば、そのジオール結合が高pHで開裂され得る市販の架橋剤N、N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド(DHEBA))。第1のゲルの固定及び拡張に続いて、第1のゲルに組み込まれたオリゴヌクレオチドに相補的な標識オリゴヌクレオチド(第2のゲルに組み込むための部分を含む)が、拡張されたサンプルに加えられた。標識オリゴヌクレオチドの部分を組み込んだ第2のゲルが形成され、第1のゲルは、開裂可能なリンカーの開裂によって分解された。次に、第2のゲルを第1のゲルと同じ方法で拡張し、標識を更に空間的に分離したが、元のサンプルの標的の配置に対して空間的な配置を維持した。場合によっては、第1のゲルの膨張に続いて、中間の「再包埋ゲル」を使用して、実験ステップが行なわれている間、例えば、標識されたSBPを第1のゲルマトリックスにハイブリダイズするために、膨張した第1のゲルを所定の位置に保持し、第1のヒドロゲル及び再包埋ゲルが分解されて第2のヒドロゲルの膨張を可能にする前に、膨張していない第2のヒドロゲルを形成する。以前のように、使用される標識は、蛍光タグ又は元素タグであってもよく、したがって、例えば、フローサイトメトリー、光学走査及び蛍光測定、又はマスサイトメトリー又はイメージングマスサイトメトリーによるその後の分析で適切に使用される。
定義
「備える」という用語は、「含む」及び「から成る」を包含し、例えば、Xを「備える」組成は、専らXのみから成ってもよく、或いは、更なる何か、例えばX+Yを含んでもよい。
数値xに関連する「約」という用語は、随意的であり、例えばx+10%を意味する。
「実質的に」という単語は「完全に」を排除せず、例えば、Yが「実質的にない」組成は、Yが完全になくてもよい。必要に応じて、「実質的に」という単語が本開示の定義から省かれてもよい。
本明細書中で引用された全ての刊行物、特許、及び、特許出願は、全ての目的のためにその全体が参照により本願に組み入れられる。先行技術であると認められるものはない。
[xi]Bandura et al.(2009)Anal.Chem.,81:6813-22.
[xii]Bendall et al.(2011)Science 332、687-696.
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[xiv]国際公開第2011/098834号パンフレット
[xv]米国特許第8723108号
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以下は、本発明の例である。
(例1)
生物学的サンプルを分析するための装置において、
(i)前記サンプルから材料を除去するとともに、前記材料をイオン化して元素イオンを形成するためのサンプリング・イオン化システムであって、レーザー源、レーザー走査システム、及び、サンプルステージを備える、サンプリング・イオン化システム、
を備える装置。
(例2)
(ii)前記サンプリング・イオン化システムから元素イオンを受けて前記元素イオンを検出するための検出器、
を更に備える例1に記載の装置。
(例3)
前記サンプリング・イオン化システムがサンプリングシステム及びイオン化システムを備え、前記サンプリングシステムは、前記レーザー源、前記レーザー走査システム、及び、前記サンプルステージを備え、前記イオン化システムは、前記レーザーシステムによって前記サンプルから除去された材料を受けるとともに、前記材料をイオン化して元素イオンを形成するようになっている、例1又は2に記載の装置。
(例4)
前記レーザー走査システムは、前記レーザー源によって放出されるレーザービームの前記サンプルステージに対する第1の相対移動を与えることができるポジショナを備える、例1、2又は3に記載の装置。
(例5)
前記レーザー走査システムの前記ポジショナは、前記サンプルステージに対する前記レーザービームの第2の相対移動も与えることができ、前記第1及び第2の相対移動が平行ではなく、例えば前記相対移動が直交している、例4に記載の装置。
(例6)
前記レーザー走査システムは、前記サンプルステージに対する前記レーザービームの第2の相対移動を与えることができる第2のポジショナを更に備え、前記第1及び第2の相対移動が平行ではなく、例えば前記相対移動が直交している、例4に記載の装置。
(例7)
前記レーザー走査システムの応答時間は、1msより速く、500μsより速く、250μsより速く、100μsより速く、50μsより速く、10μsより速く、5μsより速く、1μsより速く、500nsより速く、250nsより速く、100nsより速く、50nsより速く、10nsより速く、又は、約1nsである、例1から6のいずれか一項に記載の装置。
(例8)
前記ポジショナ及び/又は前記第2のポジショナは、(i)ガルバノメーターミラー、MEMSミラー、ポリゴンスキャナ、圧電デバイスミラーなどのミラーベースのポジショナ、及び/又は、(ii)音響光学デバイス(AOD)又は電気光学デバイス(EOD)などの固体ポジショナである、例4から7のいずれか一項に記載の装置。
(例9)
前記レーザー走査システムは、
(i)EOD、例えば電極の2つのセットが屈折媒体に直交して接続されているEODであるポジショナ、
(ii)2つの直交配置されたAODの形態を成すポジショナ及び第2のポジショナ、又は、
(iii)ガルバノメーターミラー対の形態を成すポジショナ及び第2のポジショナ、
を備える例8に記載の装置。
(例10)
前記レーザー走査システムは、
(i)ガルバノメーターミラーであるポジショナ及びAODである第2のポジショナ、
(ii)ガルバノメーターミラーであるポジショナ及びEODである第2のポジショナ、
(iii)ガルバノメーターミラー対の形態を成すポジショナ及び第2のポジショナ、並びに、AODを更に備える、又は
(iv)ガルバノメーターミラー対の形態を成すポジショナ及び第2のポジショナ、並びに、EODを更に備える、
を備える例8又は9に記載の装置。
(例11)
前記AOD屈折媒体は、二酸化テルル、溶融シリカ、ニオブ酸リチウム、三硫化ヒ素、テルライトガラス、ケイ酸鉛、Ge55As12S33、塩化水銀(I)、及び、臭化鉛(II)から選択される材料から形成される、例8、9又は10に記載の装置。
(例12)
前記EOD屈折媒体は、KTN(KTaxNb1-xO3)、LiTaO3、LiNbO3、BaTiO3、SrTiO3、SBN(Sr1-xBaxNb2O6)、BSKNN(Ba2-xSrxK1-yNayNb5O15)、及び、PBN(Pb1-xBaxNb2O6)から選択される材料から形成される、例8、9又は10に記載の装置。
(例13)
AODである場合の前記ポジショナ及び/又はAODである場合の前記第2のポジショナによって引き起こされる任意の分散を補償するようになっている少なくとも1つの分散補償器を前記ポジショナ及び/又は前記第2のポジショナと前記サンプルとの間に更に備え、随意的に、前記分散補償器は、(i)前記ポジショナによって引き起こされる前記分散を補償するのに適した線間隔を有する回折格子、(ii)前記ポジショナ及び/又は第2のポジショナによって引き起こされる前記分散を補償するのに適したプリズム、(iii)前記回折格子(i)とプリズム(ii)とを備える組み合わせ、及び/又は、(iv)更なる音響光学デバイスである、例4から12のいずれか一項に記載の装置。
(例14)
前記サンプルステージが少なくともx軸で移動可能であり、前記ポジショナは、前記サンプルステージ上への前記レーザービームの経路に少なくともy軸で偏向を導入するようになっている、例4から13のいずれか一項に記載の装置。
(例15)
(i)前記ポジショナは、前記サンプルステージ上への前記レーザービームの経路にx軸で偏向を導入するようにもなっており、又は
(ii)前記装置は、前記サンプルステージ上への前記レーザービームの経路にx軸で偏向を導入するようになっている第2のポジショナを備え、
随意的に、前記レーザー走査システムの前記ポジショナは、前記サンプルステージの動きも制御する制御モジュールによって制御される、
例14に記載の装置。
(例16)
前記レーザー源がピコ秒レーザー又はフェムト秒レーザー、特に、随意的にパルスピッカーを備えるフェムト秒レーザーであり、例えば、前記パルスピッカーは、前記サンプルステージ及び/又は前記レーザー走査システムの前記ポジショナの動きも制御する制御モジュールによって制御される、例1から15のいずれか一項に記載の装置。
(例17)
(i)アブレーション速度は、200Hz以上、例えば、500Hz以上、750Hz以上、1kHz以上、1.5kHz以上、2kHz以上、2.5kHz以上、3kHz以上、3.5kHz以上、4kHz以上、4.5kHz以上、5kHz以上、又は、10kHz以上、約100kHz、100kHz以上、1MHz以上、10MHz以上、又は、100MHz以上であり、及び/又は、
(ii)レーザー繰り返しレートは、少なくとも1kHz、例えば、少なくとも10kHz、少なくとも100kHz、少なくとも1MHz、少なくとも10MHz、約50MHz、又は、少なくとも100MHzであり、随意的に、
前記サンプリングシステムがパルスピッカーを更に備え、例えば、前記パルスピッカーは、前記サンプルステージ及び/又は前記レーザー走査システムの前記ポジショナの動きも制御する制御モジュールによって制御される、
例1から16のいずれか一項に記載の装置。
(例18)
前記レーザー源は、10μm未満、5μm未満、2μm未満、約1μm、又は、1μm未満の直径のスポットサイズをもたらすようになっている、例1から17のいずれか一項に記載の装置。
(例19)
カメラを更に備える、例1から18のいずれか一項に記載の装置。
(例20)
前記イオン化システムがICPである、例1から19のいずれか一項に記載の装置。
(例21)
前記検出器がTOF質量分析計である、例1から20のいずれか一項に記載の装置。
(例22)
サンプルを分析する方法において、
(i)サンプルステージ上で前記サンプルのレーザーアブレーションを行なうステップであって、レーザー放射線がレーザー走査システムを使用して前記サンプルへと方向付けられ、複数のプルームを形成するために前記アブレーションが複数の位置で行なわれる、ステップと、
(ii)前記プルームをイオン化及び質量分析に晒すステップであって、前記プルーム内の原子の検出が前記サンプルの画像の構築を可能にし、随意的に、前記複数の位置が複数の既知の位置である、ステップと、
を含む方法。
(例23)
複数の細胞を含むサンプルに関してマスサイトメトリーを行なう方法において、
(i)前記サンプル中の複数の異なる標的分子を1つ以上の異なる標識原子で標識化して、標識サンプルをもたらすステップと、
(ii)サンプルステージ上の前記サンプルのレーザーアブレーションを行なうステップであって、レーザー放射線がレーザー走査システムを使用して前記サンプルへと方向付けられ、複数のプルームを形成するために前記アブレーションが複数の位置で行なわれる、ステップと、
(iii)前記プルームをイオン化及び質量分析に晒すステップであって、前記プルーム内の原子の検出が前記サンプルの画像の構築を可能にし、随意的に、前記複数の位置が複数の既知の位置である、ステップと、
を含む方法。
(例24)
a.前記プルームのうちの1つ以上が個別にイオン化及び質量分析に晒され、及び/又は、
b.前記プルームのうちの1つ以上が既知の位置から生成される、
例22又は23に記載の方法。
(例25)
隣り合う既知の位置からのプルームが単一の事象として分析され、例えば、アブレーションが前記サンプルの対象の1つ以上の特徴で実行され、隣り合う既知の位置からの前記プルームが全て対象の特徴からのもの、例えば単一の細胞である、例22又は23に記載の方法。
(例26)
前記隣り合うスポットが、前記サンプルをアブレーションするために使用される前記レーザー放射線の前記スポットサイズの直径の10倍未満であり、例えば、前記スポットサイズの直径の8倍未満、5倍未満、2.5倍未満、2倍未満、1.5倍未満、約1倍、又は、1倍未満である例25に記載の方法。
(例27)
前記方法は、前記レーザー走査システム内のポジショナを制御して、前記レーザーによって放出されるレーザービームの前記サンプルステージに対する第1の相対移動を与えるステップを含む、例22から26のいずれか一項に記載の方法。
(例28)
前記方法は、前記レーザー走査システム内のポジショナを制御して、前記サンプルステージに対する前記レーザービームの第2の相対移動を与えるステップを含み、前記第1及び第2の相対移動が平行ではなく、例えば前記相対移動が直交している、例27に記載の方法。
(例29)
前記方法は、前記レーザー走査システム内の第2のポジショナを制御して、前記サンプルステージに対する前記レーザービームの第2の相対移動を与えるステップを含み、前記第1及び第2の相対移動が平行ではなく、例えば前記相対移動が直交している、例27に記載の方法。
(例30)
前記サンプルステージの動きを制御することによって前記サンプルを第1の方向で移動させるとともに、前記レーザー走査システム内のポジショナを制御することによって第2の方向で前記サンプルに対する相対移動を前記レーザー放射線のビームに導入するステップを含み、前記第1及び第2の方向が平行ではなく、随意的に、前記相対移動が直交し、随意的に、前記走査領域が前記サンプルステージを動かさずに走査され得るよりも大きい、例27から29のいずれか一項に記載の方法。
(例31)
前記サンプルステージの動きを制御することによってX軸で前記サンプルを移動させるとともに、前記レーザー走査システム内のポジショナを制御することによってY軸で前記サンプルに対する相対移動を前記レーザー放射線のビームに導入するステップを含む、例27から29のいずれか一項に記載の方法。
(例32)
前記レーザー走査システムは、X軸でも前記サンプルに対する相対移動を前記レーザー放射線に導入し、例えば、前記レーザー走査システムは、前記サンプルステージの前記相対移動を補償し、それにより、前記サンプル上の前記アブレーションスポットに関する規則的なラスターパターンを維持する、例31に記載の方法。
(例33)
前記サンプルの3Dイメージングを実行するステップであって、レーザーアブレーションを使用して、前記サンプルの少なくとも一部を第1の深さまでアブレーションした後に、前記第1の深さまでのアブレーションにより露出された前記サンプルの部分を第2の深さまでアブレーションする、ステップを含む、例27から32のいずれか一項に記載の方法。
(例34)
アブレーション深さの変化をもたらすように前記焦点距離が制御され、及び/又は、サンプル深さの変化に影響を与えるように前記サンプルステージ上の前記サンプルは、Z軸で移動される、例33に記載の方法。
(例35)
前記ポジショナ及び/又は前記第2のポジショナは、(i)ガルバノメーターミラー、MEMSミラー、ポリゴンスキャナ、圧電デバイスミラーなどのミラーベースのポジショナ、及び/又は、(ii)音響光学デバイス(AOD)又は電気光学デバイス(EOD)などの固体ポジショナである、例26から33のいずれか一項に記載の方法。
(例36)
前記レーザー放射線をもたらすレーザーと、前記レーザー走査システムのポジショナとを制御して、前記サンプル上の位置に向けられるレーザー放射線パルスのバーストを生み出すステップを含み、前記レーザー放射線パルスのバーストから生成される前記プルームがイオン化されて連続事象として検出され、随意的に、前記バースト内の前記パルスが10-12秒よりも短いパルス持続時間を有する、例22、23及び25から35のいずれか一項に記載の方法。
(例37)
前記レーザー放射線のバーストが少なくとも3つのレーザーパルスを含み、各レーザーパルス間の持続時間は、1msより短い、例えば、500μsより短い、250μsより短い、100μsより短い、50μsより短い、10μsより短い、1μsより短い、500nsより短い、250nsより短い、100nsより短い、50nsより短い、又は、約10ns以下である、例36に記載の方法。
(例38)
前記レーザー放射線のバーストは、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50個、又は、少なくとも100個のレーザーパルスを含む、例37に記載の方法。
(例39)
前記ポジショナは、(i)EOD、例えば電極の2つのセットが前記屈折媒体に直交して接続されているEODである、又は、(ii)前記ポジショナが2つの直交して配置されるAODであり、随意的に、前記方法は、AODによって前記レーザー放射線のビームの強度を制御するステップも含む、例36から38のいずれか一項に記載の方法。
(例40)
前記方法は、サンプル上の対象の1つ以上の特徴を特定し、前記サンプル上の対象の前記1つ以上の特徴の位置情報を記録し、及び、前記サンプルのレーザーアブレーションを実行するステップを含み、レーザー放射線が、前記対象の1つ以上の特徴の前記位置情報を用いて、レーザー走査システムを使用して前記サンプルへと方向付けられ、1つ以上のプルームを形成する、例22から39のいずれか一項に記載の方法。
(例41)
対象の特徴からのプルームが連続事象として分析される、例40に記載の方法。
(例42)
前記特徴は、前記サンプルの光学画像の検査によって特定され、随意的に、前記サンプルが蛍光標識で標識化され、前記蛍光標識が蛍光を発するような条件下で前記サンプルが照射される、例40又は41に記載の方法。
(例43)
サンプルを分析する方法において、
(i)レーザー放射線を使用してサンプル材料のスラグを脱着するステップであって、レーザー放射線が、レーザー走査システムを使用してサンプルステージ上の前記サンプルに向けられる、ステップと、
(ii)前記サンプル材料のスラグをイオン化し、質量分析によって前記スラグ内の原子を検出するステップと、
を含む方法。
(例44)
複数の細胞を含むサンプルに関してマスサイトメトリーを行なう方法において、
(i)前記サンプル中の複数の異なる標的分子を1つ以上の異なる標識原子で標識化して、標識サンプルを与えるステップと、
(ii)レーザー放射線を使用してサンプル材料のスラグを脱着するステップであって、レーザー放射線が、レーザー走査システムを使用してサンプルステージ上の前記サンプルへと方向付けられる、ステップと、
(iii)前記サンプル材料のスラグをイオン化して、質量分析によって前記スラグ内の原子を検出するステップと、
を含む方法。
(例45)
前記脱着は、レーザー放射線の一連のパルスを脱着されるべき前記サンプル材料へと方向付けることによって達成され、
随意的に、
a.前記レーザー放射線の一連のパルスが前記サンプル材料へと螺旋パターンで方向付けられ、例えば、前記一連のパルスがバーストとして送出され、例えば、前記バースト内の前記パルスが10-12秒よりも短いパルス持続時間を有し、及び/又は
b.前記一連のパルスが前記サンプル上の既知の位置の範囲内にある、
例43又は44に記載の方法。
(例46)
前記レーザー放射線のバーストが少なくとも3つのレーザーパルスを含み、各レーザーパルス間の持続時間は、1msより短い、例えば、500μsより短い、250μsより短い、100μsより短い、50μsより短い、10μsより短い、1μsより短い、500nsより短い、250nsより短い、100nsより短い、50nsより短い、又は、約10ns以下である、例45に記載の方法。
(例47)
前記レーザー放射線のバーストは、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50個、又は、少なくとも100個のレーザーパルスを含む、例46に記載の方法。
(例48)
レーザーアブレーションを使用して、対象の特徴の周囲の前記材料をアブレーションし、前記対象の特徴における前記サンプル材料が前記サンプルキャリアから材料のスラグとして脱着される前に前記周囲の領域を除去する、例43から47のいずれか一項に記載の方法。
(例49)
前記方法は、前記レーザー走査システム内のポジショナを制御して、前記レーザーによって放出されるレーザービームの前記サンプルステージに対する第1の相対移動を与えるステップを含む、例43から48のいずれか一項に記載の方法。
(例50)
前記方法は、前記レーザー走査システム内のポジショナを制御して、前記サンプルステージに対する前記レーザービームの第2の相対移動を与えるステップを含み、前記第1及び第2の相対移動が平行ではなく、例えば前記相対移動が直交している、例49に記載の方法。
(例51)
前記方法は、前記レーザー走査システム内の第2のポジショナを制御して、前記サンプルステージに対する前記レーザービームの第2の相対移動を与えるステップを含み、前記第1及び第2の相対移動が平行ではなく、例えば前記相対移動が直交している、例49に記載の方法。
(例52)
前記ポジショナ及び/又は前記第2のポジショナは、(i)ガルバノメーターミラー、MEMSミラー、ポリゴンスキャナ、圧電デバイスミラーなどのミラーベースのポジショナ、及び/又は、(ii)音響光学デバイス(AOD)又は電気光学デバイス(EOD)などの固体ポジショナであり、例えば、前記レーザー走査システムは、(a)ガルバノメーターミラーであるポジショナ及びAODである第2のポジショナ、
(b)ガルバノメーターミラーであるポジショナ及びEODである第2のポジショナ、
(c)ガルバノメーターミラー対の形態を成すポジショナ及び第2のポジショナ、及び、AODを更に備える、又は、
(d)ガルバノメーターミラー対の形態を成すポジショナ及び第2のポジショナ、及び、EODを更に備える、
を備える、例43から51のいずれか一項に記載の方法。
(例53)
前記方法は、サンプル上の対象の1つ以上の特徴を特定し、前記サンプル上の対象の前記1つ以上の特徴の位置情報を記録し、及び、前記サンプルからサンプル材料を脱着させるステップを含み、レーザー放射線が、前記対象の1つ以上の特徴の前記位置情報を用いて、レーザー走査システムを使用して前記サンプルへと方向付けられ、前記対象の1つ以上の特徴から材料のスラグを脱着させる、例43から51のいずれか一項に記載の方法。
(例54)
前記特徴は、前記サンプルの光学画像の検査によって特定され、随意的に、前記サンプルが蛍光標識で標識化され、前記蛍光標識が蛍光を発するような条件下で前記サンプルが照射される、例53に記載の方法。
(例55)
前記サンプルがサンプルキャリア上にあり、前記サンプルキャリアが前記サンプルと前記サンプルキャリアとの間に脱着膜層を備え、前記レーザー放射線が前記脱着膜へと方向付けられてサンプル材料を脱着させる、例43から54のいずれか一項に記載の方法。
(例56)
例22から42のいずれか一項に記載の方法を更に含む、例43から55のいずれか一項に記載の方法。
(例57)
例1から21のいずれか一項に記載の装置の使用を含む、例22から55のいずれかに記載の方法。
(例58)
例22から57のいずれか一項に記載の方法で用いるレーザー走査システム。
(例59)
画像を位置合わせする方法において、
a)イメージングマスサイトメトリー以外のイメージングモダリティによって組織サンプルの第1の組織切片から第1の画像を取得するステップと、
b)イメージングマスサイトメトリーによって前記組織サンプルの第2の組織切片の第2の画像を取得するステップと、
c)前記第1及び第2の画像を位置合わせするステップと、
を含む方法。
(例60)
イメージングマスサイトメトリー以外の前記イメージングモダリティが非線形顕微鏡法である、例59に記載の方法。
(例61)
前記装置は、複数の質量タグの存在を選択的に検出するように構成され、前記質量タグがランタニド同位体を含む、例2に記載の装置。
(例62)
イメージングマスサイトメトリーの方法において、
光学顕微鏡法によってサンプルにおける特徴を特定するステップと、
その特徴の全体にわたって放射線を走査して、材料のプルームを生成するステップと、
前記材料のプルームを質量分析器へ送出するステップと、
を含む方法。
(例63)
前記特徴が細胞である、例62に記載の方法。
(例64)
前記サンプルが質量タグ付きSBPを含む、例62又は63に記載の方法。
(例65)
1秒間に100を超える単一細胞を分析するステップを更に含む、例63又は64に記載の方法。
(例66)
前記放射線がレーザー放射線である、例62から65のいずれか一項に記載の方法。
(例67)
ICPによって前記材料をイオン化するステップを更に含む、例66に記載の方法。
(例68)
前記質量分析器がTOF検出器を備える、例62から67のいずれか一項に記載の方法。
(例69)
例62から68のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置。

Claims (20)

  1. 複数の細胞を含むサンプルに関してマスサイトメトリーを行なう方法において、
    (i)前記サンプル中の複数の異なる標的分子を1つ以上の異なる標識原子で標識化して、標識サンプルをもたらすステップと、
    (ii)前記サンプル上にレーザー放射線をラスター照射することにより、サンプルステージ上の前記サンプルのレーザーアブレーションを行なうステップであって、複数のプルームを形成するために前記アブレーションが複数の細胞のうちの1つの細胞上の複数の位置で行なわれる、ステップと、
    (iii)前記複数のプルームをイオン化及び質量分析に晒すステップと、
    (iv)前記複数のプルーム内の前記1つ以上の異なる標識原子を連続事象として検出するステップと、
    を含む方法。
  2. 前記レーザー放射線は、アブレーションのためのスポットサイズ直径によって特徴付けられ、前記複数の位置の任意の2つの隣接する位置の間隔が、前記スポットサイズ直径の10倍未満である請求項に記載の方法。
  3. 前記ラスター照射することは、レーザー走査システム内のポジショナを制御して、前記サンプルステージに対して第1の方向に前記レーザー放射線を移動させることを含む、請求項に記載の方法。
  4. 前記ラスター照射することは、前記ポジショナを制御して、前記サンプルステージに対して第2の方向に前記レーザー放射線を移動させることを含み、前記第1の方向及び前記第2の方向が平行ではない、請求項に記載の方法。
  5. 前記ラスター照射することは、前記レーザー走査システム内の第2のポジショナを制御して、前記サンプルステージに対して第2の方向に前記レーザー放射線を移動させることを含み、前記第1の方向及び前記第2の方向が平行ではな、請求項に記載の方法。
  6. 前記第1の方向及び前記第2の方向が直交している、請求項5に記載の方法。
  7. 前記ラスター照射することは、前記サンプルステージを第3の方向に移動させることによって前記サンプルを移動させることを含み前記第3の方向が前記第1の方向に対して平行ではない、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記第3の方向が前記第1の方向に対して垂直である、請求項に記載の方法。
  9. 前記サンプルの3Dイメージングを実行するステップであって、レーザーアブレーションを使用して、前記サンプルの少なくとも一部を第1の深さまでアブレーションした後に、前記第1の深さまでのアブレーションにより露出された前記サンプルの部分を第2の深さまでアブレーションする、ステップを含む、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記レーザー放射線は焦点距離によって特徴付けられ、
    アブレーション深さの変化をもたらすように前記焦点距離が制御され、及び/又は、
    前記サンプルステージは、前記第2の深さまでアブレーションするためにZ軸で移動される、請求項に記載の方法。
  11. 前記ポジショナは、(i)ミラーベースのポジショナ、及び/又は、(ii)固体ポジショナである、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記第2のポジショナは、(i)ミラーベースのポジショナ、及び/又は、(ii)固体ポジショナである、請求項5に記載の方法。
  13. 前記レーザー放射線をもたらすレーザーと、レーザー走査システムのポジショナとを制御して、前記複数の位置に向けられるレーザー放射線パルスのバーストを生み出すステップを含、請求項から12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記レーザー放射線のバーストが少なくとも3つのレーザーパルスを含み、各レーザーパルス間の持続時間は、1msより短い、請求項13に記載の方法。
  15. 前記持続時間は、500μsより短い、請求項14に記載の方法。
  16. 前記レーザー放射線のバーストは、少なくとも10個のレーザーパルスを含む、請求項14に記載の方法。
  17. 前記複数のプルームは第1の複数のプルームであり、
    前記方法は、前記サンプル上の前記複数の細胞を特定し、前記サンプル上の前記複数の細胞の位置情報を記録し、前記サンプルのレーザーアブレーションを実行するステップを含み、レーザー放射線が、前記複数の細胞の前記位置情報を用いて、前記サンプルへと方向付けられ、第2の複数のプルームを形成する、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記第2の複数のプルームが連続事象として分析される、請求項17に記載の方法。
  19. 前記ラスター照射することは、100μm の領域に及ぶ、請求項1に記載の方法。
  20. 前記レーザー放射線は、2μm未満のスポットサイズによって特徴付けられる、請求項19に記載の方法。
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