以下に、本願発明の各実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下で説明する実施形態における電気回路遮断装置の各部材の形状や材質等は、一例を示すものであって、これらに限定されるものではない。
<実施形態1>
まず、本願発明の実施形態1に係る電気回路遮断装置Vのハウジング301を構成する下側ハウジング100を図1に示す。なお、図1(a)は、下側ハウジング100の全体斜視図、図1(b)は、下側ハウジング100の平面図、図1(c)は、A-A断面図である。
図1に示すように、下側ハウジング100は、合成樹脂等の絶縁体で形成された略四角柱体であり、内部に中空状の下側収容部110を備える。この下側収容部110は、下側ハウジング100の上面120から下面130に向けて延びており、後述する第二移動体を収容できるように構成されている。また、上面120の一部には、後述する回路部の基部片を載置できるように、基部片の形状に合わせて窪んだ載置部113を備える。この載置部113は、下側収容部110の両側に相対する様に配置されており、載置部113は、直線状に延びる回路部を両側で支えることになる。
次に、本願発明の実施形態1に係るハウジング301を構成する上側ハウジング200を図2に示す。図2(a)は、上側ハウジング200の全体斜視図、図2(b)は、上側ハウジング200の平面図、図2(c)は、上側ハウジング200のB-B断面図である。
図2に示すように、上側ハウジング200は、合成樹脂等の絶縁体で形成された略四角柱体であり、図1に示す下側ハウジング100と、後述する中間ハウジング300と共に、ハウジング301を構成するものである。そして、内部に中空状の上側収容部210を備え、この上側収容部210は、上側ハウジング200の下面230から上面220に向けて延びており、後述する第一移動体を収容できるように構成されている。
さらに、下面230の一部には、後述する被切断部の基部片を挿通できるように、基部片の形状に合わせて窪んだ挿通部213を備える。この挿通部213は上側収容部210の両側に相対する様に配置されると共に、後述する中間ハウジング300の載置部と対応する位置に配置されている。そのため、挿通部213は、中間ハウジング300の載置部に載置された被切断部の基部片に上方から嵌め合わせられる。
さらに、上側ハウジング200の上面220側には、動力源Pが収容される動力源収容部221が形成されている。そして、動力源収容部221は、上側収容部210の上端側と連通している。詳しくは、後述するが、動力源収容部221内に収容された動力源Pから生じた空気圧等の動力が、上側収容部210内の第一移動体へ伝わり、第一移動体を移動させるのである。
次に、本願発明の実施形態1に係るハウジング301を構成する中間ハウジング300を図3に示す。図3(a)は、中間ハウジング300の全体斜視図、図3(b)は、中間ハウジング300の平面図、図3(c)は、中間ハウジング300のC-C断面図である。
図3に示すように、中間ハウジング300は、合成樹脂等の絶縁体で形成された略四角柱体であり、図1に示す下側ハウジング100と、図2に示す上側ハウジング200と共に、ハウジング301を構成するものである。そして、内部に中空状の中間収容部310を備え、この中間収容部310は、中間ハウジング300の上面312から下面313に向けて延びており、後述する第二移動体を収容できるように構成されている。
また、上面312の一部には、後述する被切断部の基部片を載置できるように、基部片の形状に合わせて窪んだ載置部323を備える。この載置部323は、中間収容部310の両側に相対する様に配置されており、載置部323は、直線状に延びる被切断部を両側で支えることになる。また、下面313の一部には、後述する回路部の基部片を挿通できるように、基部片の形状に合わせて窪んだ挿通部333を備える。この挿通部333は中間収容部310の両側に相対する様に配置されると共に、下側ハウジング100の載置部113と対応する位置に配置されている。そのため、挿通部333は、下側ハウジング100の載置部113に載置された回路部の基部片に上方から嵌め合わせられる。
なお、下側ハウジング100、上側ハウジング200、及び中間ハウジング300は、合成樹脂で形成された略四角柱体となっているが、これに限定されず、絶縁性が高く、使用に耐えうる強度を備えていれば、他の材料で任意の形状としてもよい。
では次に、本願発明の実施形態1に係る第一移動体500を図4に示す。なお、図4(a)は第一移動体500の斜視図、図4(b)は第一移動体500の平面図、図4(c)はD-D断面図、図4(d)は第一移動体500の底面図である。
図4に示すように、第一移動体500は、合成樹脂等の絶縁体で形成されており、上端に突出した略円柱体の上端部510と、略直方体の本体部530とを備える。上端部510の上端には窪み部511が設けられており、窪み部511は動力源Pと相対する部分となっている。本体部530はハウジング301の収容空間302の内面形状に対応する形状となっており、本体部530が収容空間302の内面を摺動することで、第一移動体500が収容空間302の内側に沿って姿勢を維持したまま滑らかにスライドできる。また、本体部530の下端側は、下方へ突出した突出部531と、突出部531から上方へ窪んだ凹部532を備える。突出部531は、凹部532の両側に配置されており、後述するように、被切断部400の切断片420に当接して押圧力を加えて、切断片420を破断させる部分となる。また、その切断時に作用する各突出部531と切断片420との接触面積の合計は、図4(d)に示すように、S1となる(なお、図4(d)では、面積S1の箇所を鎖線で表している)。また、一方の突出部531の端部から他方の突出部531の端部までの長さはL1となっている。
なお、第一移動体500は、合成樹脂で形成されているが、これに限定されず、絶縁性が高く、使用に耐えうる強度を備えていれば、他の材料で任意の形状としてもよい。
では次に、本願発明の実施形態1に係る第二移動体600を図5に示す。なお、図5(a)は第二移動体600の斜視図、図5(b)は第二移動体600の平面図、図5(c)はE-E断面図、図5(d)はF-F断面図である。
図5に示すように、第二移動体600は、合成樹脂等の絶縁体で形成されており、上端に突出した略四角柱の上端部610と、略直方体の本体部630とを備える。上端部610の上面は平坦面となっており、第一移動体500の凹部532に挿入できるように構成されている。また、本体部630はハウジング301の収容空間302の内面形状に対応する形状となっており、本体部630が収容空間302の内面を摺動することで、第二移動体600が収容空間302の内側に沿って姿勢を維持したまま滑らかにスライドできる。また、本体部630の上端は平坦な当接部631となっており、後述するように下方へ移動した第一移動体500の突出部531が、被切断部400の切断片420を切断した後に当接できるように構成されている。
また、本体部630の内部は中空状となっており、後述する回路部の一部を挿通させると共に、内部に消弧材を収納可能な収容空間640となっている。収容空間640は、両側が開口部641となっているので、その開口部641から後述する回路部の一部を内部に挿通させられる。また、収容空間640は、上下に上壁642と下壁643を備え、左右に側壁644を備えている。そのため、収容空間640は、挿通した回路部の一部を周方向に囲むことができる。そして、収容空間640は、内部に消弧材を収容できるので、挿通した回路部の一部の周囲を消弧材で充填できるのである。また、後述するように、第二移動体600は、収容空間640内に収容された消弧材を介して回路部の一部を切断しており、収容空間640内において、消弧材と回路部の一部とが接触している接触面積は、S2となる。なお、図5(d)では、収容空間640内に挿通される回路部700の一部を仮想線で示している。また、一方の開口部641から他方の開口部641までの長さはL2となっている。
なお、第二移動体600は、合成樹脂で形成されているが、これに限定されず、絶縁性が高く、使用に耐えうる強度を備えていれば、他の材料で任意の形状としてもよい。
では次に、本願発明の実施形態1に係る電気回路遮断装置Vが遮断する電気回路の一部を構成する被切断部400を図6に示す。なお、図6(a)は被切断部400の斜視図、図6(b)はG-G断面図である。
被切断部400は、電気回路と電気的に接続するために全体が銅などの金属製の導電体となっており、両端に電気回路と接続するための基部片430と、基部片430の間に位置する切断片420とを備える。基部片430の端部には、電気回路と接続する際に利用する接続孔410が形成されている。また、切断片420の略中央には、貫通孔401が設けられているので、切断片420は貫通孔401で分離されて互いに並列に接続された分流路440を形成している。さらに、基部片430と切断片420との境界部分の表面421には、切断片420が基部片430から切断されやすくするために、被切断部400の幅方向に横断するように、直線状の切り込み424が設けられている。さらに、切断片420の表面421には、切断片420の略中央側を切断しやすくするために、被切断部400の幅方向に横断するように、直線状の切り込み425が設けられている。
そして、後述するように、被切断部400の切断片420が第一移動体500によって切断される際は、切断片420は基部片430から切り込み424付近の切断箇所C1で切断されて分離される。さらに、切断片420の略中央も、切り込み425付近の切断箇所C2で切断されて分離される。したがって、切断片420は、切断箇所C1と切断箇所C2によって、両側の端部分離片450とその間の中間分離片460に切断されて分離されるのである。なお、切断片420と一方の基部片430の切断箇所C1と、切断片420と他方の基部片430の切断箇所C1との間の長さは、L3となっている。
このように、切断片420は複数の部分に切断されて分離されるため、異常電流が流れた際に、被切断部400にかかる電圧を分圧させることができ、後述するアークをより効果的に消弧できる。さらに、切断片420は貫通孔401で分離されて互いに並列に接続された分流路440を形成しているため、被切断部400に流れる異常電流を分流させることができ、後述するアークをより効果的に消弧できる。このように、切断片420は、合計8つの切断分離部(D1からD8)を備えており、高い分圧・分流効果を得られることから、後述するアークをより効果的に素早く消弧できる。特に、異常電流が比較的高電流の場合は、切断片420を切断した際に発生する比較的大きなエネルギーのアークを、効果的に素早く消弧できる。
なお、被切断部400は、図6に示す形状に限定されず、電気回路と電気的に接続するための基部片430と、基部片430の間に位置する切断片420とを備えていれば、任意の形状であってもよい。また、切り込みによって切断片420の一部の断面積を最小にして切断しやすいようにしているが、切り込み424の形状や位置は、第一移動体500によって切断されやすいように、適宜変更できる。
では次に、本願発明の実施形態1に係る電気回路遮断装置Vが遮断する電気回路の一部を構成する回路部700を図7に示す。なお、図7(a)は回路部700の斜視図、図7(b)はH-H断面図である。
回路部700は、電気回路や被切断部400と電気的に接続するために全体が銅などの金属製の導電体となっており、電気回路や被切断部400と接続するための基部片730と、基部片730の間に位置する切断片720とを備える。基部片730は、切断片720に隣接した部分と、当該部分から上方へ立ち上がる部分と、当該部分から側方へ延出する端部731を備え、基部片730の端部731には、被切断部400の接続孔410に対応した位置に接続孔710が形成されている。また、切断片720は、第二移動体600の収容空間640を挿通できるように構成されており、後述するように、切断片720の周囲は、収容空間640内に収容された消弧材によって囲まれることになる。また、切断片720の略中央には、溶断部740が設けられている。この溶断部740は、切断片720に設けられた複数の貫通孔741によって、幅が局所的に狭くなった幅狭部742から構成されており、異常電流が流れた際に、幅狭部742が発熱して溶断し、電流を遮断できる。
なお、回路部700は、図7に示す形状に限定されず、電気回路や被切断部400と電気的に接続するための基部片730と、基部片730の間に位置する溶断部740が形成された切断片720とを備えていれば、任意の形状であってもよい。また、切断片720の溶断部740は幅狭部742から構成されているが、これに限定されず、異常電流が流れた際に、発熱して溶断して電流を遮断できるのであれば、溶断部740は任意の構成であってもよい。
では次に、本願発明の電気回路遮断装置Vの組み立て方について、図8を参照して説明する。なお、この図8は、電気回路遮断装置Vの分解斜視図を示している。
電気回路遮断装置Vを組み立てる際は、まず、第二移動体600の収容空間640内に回路部700の切断片720を挿通させる。そして、回路部700の切断片720を内部に挿通させた状態のまま、第二移動体600の略下半分を、下側ハウジング100の下側収容部110に収容する。その際、回路部700の基部片730を下側ハウジング100の載置部113に載置し、切断片720が下側ハウジング100の下側収容部110を横断するように回路部700を配置する。
次に、第二移動体600の略上半分が中間ハウジング300の中間収容部310に挿入されるように、中間ハウジング300を下側ハウジング100の上から嵌め合わせる。すると、中間ハウジング300の挿通部333が、回路部700の基部片730に嵌め合わせられ、中間ハウジング300の挿通部333と下側ハウジング100の載置部113とで、回路部700の基部片730を上下から挟み込んで、回路部700をズレないように固定する。この状態では、第二移動体600が、下側ハウジング100の下側収容部110と中間ハウジング300の中間収容部310内に収容されており、第二移動体600の収容空間640内を回路部700の切断片720が挿通している。そして、第二移動体600の収容空間640内を消弧材Qで埋めることで、切断片720は周囲を消弧材Qで囲まれた状態となっている。消弧材Q(図8では、斜線で示している)は、珪砂等から構成される粒状の消弧材であり、切断片720の溶断部740が溶断した後に、基部片730間に発生するアークを消弧できるように構成されている。なお、事故電流が比較的大電流域に属する場合を想定することから、アークを効果的に素早く消弧するため、第二移動体600の収容空間640周辺に充填される消弧材Qのかさ密度が極めて高くなるように、消弧材Qは締め固められている。そのため、消弧材Qが崩れて第二移動体600の収容空間640から流れ出ることはない。
次に、被切断部400の基部片430を中間ハウジング300の載置部323に載置し、切断片420が中間ハウジング300の中間収容部310の上方を横断するように被切断部400を配置する。さらに、上側ハウジング200の上側収容部210内に第一移動体500が挿入されるように、上側ハウジング200を中間ハウジング300の上から嵌め合わせる。すると、上側ハウジング200の挿通部213が、被切断部400の基部片430に嵌め合わせられる。そして、上下に並んだ上側ハウジング200、中間ハウジング300、及び下側ハウジング100を、ネジ等の連結具で互いに連結固定することで、上側ハウジング200、中間ハウジング300、及び下側ハウジング100からなるハウジング301は、内部に、第一移動体500、被切断部400、第二移動体600、回路部700を収容した状態で組み付けられる。
さらに、上側ハウジング200の動力源収容部221には動力源Pが取り付けられており、動力源Pの一部は第一移動体500の窪み部511に収容される。また、電気回路に異常電流が流れたことを検知すると、外部の装置から動力源Pに異常信号が入力される。そして、例えば、動力源Pの内部の火薬を爆発させて、その爆発による空気圧によって、第一移動体500をハウジング301の収容空間302内で瞬時に押し出して移動させる。なお、動力源Pは、第一移動体500を移動させる動力を発生させるものであれば、火薬を用いた動力源に限られず、その他の既知の動力源を用いても良い。
では次に、本願発明の実施形態1に係る電気回路遮断装置Vの内部構造について、図9を参照して説明する。なお、この図9は、図8に示す電気回路遮断装置Vが組み立てられた状態でのI―I断面図である。
図9に示すように、第一移動体500は、直線状に並んだ下側収容部110、中間収容部310、及び上側収容部210から構成される収容空間302内部に、収容されている。この収容空間302は、ハウジング301の第一端部320から、第一端部320の反対側の第二端部330まで延びている。そして、第一移動体500は、動力源Pが配置された第一端部320側に配置され、第二移動体600は、第一移動体500の下側(第二端部330側)に上下に並ぶように配置されている。さらに、第一移動体500と第二移動体600の間には、第一移動体500の進行方向(すなわち、第一端部320から第二端部330への方向)において、空間Z1が存在している。また、第二移動体600と第二端部330の間には、第一移動体500の進行方向において、空間Z2が存在している。そのため、後述するように、第一移動体500は、第一端部320から第二端部330へ向けて移動して、第二移動体600に当接し、さらに、第二移動体600は、第一移動体500に押されて第一端部320から第二端部330へ向けて移動できるのである。
また、第一移動体500の上端側の窪み部511は動力源Pに隣接しているので、後述するように動力源P内の火薬の爆発による空気圧は、第一移動体500の上端側へと伝達される。また、被切断部400の基部片430と、回路部700の基部片730の端部731は上下に重ねられており、互いに電気的に接続された状態となっている。そのため、被切断部400と回路部700は並列接続された状態となっている。また、被切断部400の接続孔410と回路部700の接続孔710に、ボルト等の連結部材を挿通させて締め付ければ、被切断部400の基部片430と回路部700の基部片730が強固に固定される。また、図8、及び図9に示すように、電気回路遮断装置Vでは、溶断部740を備えた回路部700と消弧材Qによって、ヒューズ機能回路部800を構成している。後述するように、第二移動体600が移動することによって、ヒューズ機能回路部800の一部である回路部700の切断片720が切断される。
なお、図9に示すように、組み立てられて完成した電気回路遮断装置Vは、保護したい電気回路内に取り付けられて利用される。具体的には、電気回路の一部に被切断部400の基部片430と回路部700の基部片730を接続して、被切断部400及びヒューズ機能回路部800を電気回路の一部を構成するようにする。また、第一移動体500は、被切断部400の切断片420から離間して配置されている。そして、通常時(すなわち、異常電流が流れていない時)においては、被切断部400の基部片430と切断片420は切断されておらず、物理的にも電気的に接続されているので、電流I1が被切断部400の基部片430と切断片420を介して電気回路中を流れるようになっている。なお、ヒューズ機能回路部800の回路部700の切断片720は、切断されておらず、第二移動体600の収容空間640を挿通して両側の基部片730と物理的にも電気的に接続されている。被切断部400と回路部700は並列接続されており、回路部700の抵抗値は被切断部400の抵抗値より大きくなっている。そして、被切断部400を介して流れる電流I1と、回路部700を介して流れる電流I1´は、ぞれぞれの抵抗値の逆数に比例した大きさとなっているので、通常時の電流I1´の大きさは、全体の電流(電流I1+電流I1´)の十パーセント程度と小さくなっている。
では次に、図10及び図11を参照して、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合に、電気回路遮断装置Vが電気回路を遮断する様子について説明する。なお、図10は、図9に示す状態から第一移動体500が移動した様子を示す断面図、図11は、図10に示す状態から、第一移動体500が更に移動した様子を示す断面図である。
まず、図10に示すように、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合には、異常信号が動力源Pに入力され、動力源P内の火薬が爆発する。すると、その爆発による空気圧が第一移動体500の上端側の窪み部511に伝わる。すると、この空気圧によって、第一移動体500は第一端部320から第二端部330に向けて勢いよく吹き飛ばされ、収容空間302内を第二端部330に向けて瞬時に移動する。
第一移動体500が第二端部330に向けて更に移動すると、第一移動体500の突出部531によって、被切断部400の切断片420は下方へ強く押される。すると、切断片420は分断されて、両側の基部片430は物理的に切断された状態となる。つまり、被切断部400の両側の基部片430が切断片420を介して通電した状態が遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。
なお、被切断部400の切断片420が第一移動体500によって切断される際、切断片420は、中間分離片460と両側の端部分離片450とに分離される。そして、両側の端部分離片450は、第一移動体500の突出部531によって下方へ押し出され、中間分離片460は、第二移動体600の上端部610に当接して第一移動体500の凹部532内に留まる。そのため、分離された中間分離片460と端部分離片450は、第一移動体500の進行方向に上下に引き離された状態となる。これにより、切断片420を切断した際に、中間分離片460と端部分離片450の間にアークが僅かに生じたとしても、効果的に素早く消弧できる。特に、切断片420を複数の部分に切断して分離することで、高い分圧・分流効果を得られることから、切断片420を切断した際に生じうるアークは、より効果的に素早く消弧できる。
ここで、異常電流が比較的大電流の場合は、電気回路に接続されている両側の基部片430には大きな電圧がかかることから、切断片420を切断した後でも、基部片430と切断された切断片420との間にアークが引き続き発生する可能性がある。しかしながら、図10に示すように、被切断部400の切断片420が切断される前から、被切断部400の基部片430と回路部700の基部片730は電気的に接続されているので、切断片420が切断された際には、電気回路を流れている事故電流I2が、基部片730を介して切断片720の溶断部740へと誘導されている。そのため、分断された切断片420と基部片430との間にアークが引き続き発生することを防止できるのである。
そして、図10に示すように、回路部700へ誘導された事故電流I2により、回路部700の溶断部740が発熱して溶断する。なお、第一移動体500によって切断片420を切断して電気回路を遮断した際、事故電流I2が回路部700へ誘導されて、電気回路中に電流が流れることから、厳密には電気回路は完全に遮断されていない。しかし、回路部700の溶断部740の定格を小さくしてあるので、事故電流I2により溶断部740は即座に溶断して、電気回路を即座に完全に遮断するのである。
さらに、溶断部740の溶断時には、電気回路に接続されている両側の基部片730にかかる電圧によって、溶断部740周辺にはアークが発生するが、そのアークは、溶断部740の周囲に充填されている消弧材Qによって素早く効果的に消弧されるのである。
このように、本願発明の電気回路遮断装置Vによれば、電気回路を遮断した際に電気回路に流れている電流(事故電流)をヒューズ機能回路部800の回路部700に誘導し、その誘導された電流によって生じるアークを回路部700の溶断部740で効果的に素早く消弧している。特に、近年の自動車等の高性能化によって電気回路にかかる電圧が大きくなる傾向にあり(例えば、電圧は500V~1000Vに達する)、電気回路を遮断した際に電気回路に流れている電流(事故電流)から生じるアークも大きくなる。そこで、本願発明の電気回路遮断装置Vによれば、被切断部400が通電した状態が遮断されて、両側の基部片430の間に事故電流によるアークが発生する前に、被切断部400とヒューズ機能回路部800とが接続された状態が確保されることから、事故電流によるアークをヒューズ機能回路部800へと確実に誘導して、ヒューズ機能回路部800の溶断部740と消弧材Qで消弧できる。その結果、ハウジング301内において、事故電流によるアークが基部片430間で発生して、電気回路遮断装置Vが損傷することを防止でき、安全に電気回路を遮断できるのである。
次に、図11に示すように、切断片420を切断した後、第一移動体500は引き続き、収容空間302内を第一端部320から第二端部330へ移動する。すると、第一移動体500が第二移動体600の上端側(第一端部320側)に当接して、第一移動体500は第二移動体600を第二端部330側へ強く押し出すのである。具体的には、第一移動体500の突出部531が、端部分離片450を挟んだ状態で第二移動体600の当接部631に当接し、第一移動体500の動力が第二移動体600に伝達され、第一移動体500によって第二移動体600は第二端部330側へ移動する。
すると、第二移動体600の収容空間640内を挿通している切断片720は、第二端部330へ向けて移動する第二移動体600によって、下方へ強く押される。そして、切断片720は分断されて、両側の基部片730は物理的に切断された状態となる。なお、収容空間640内には消弧材Qが充填されているので、第二移動体600が第二端部330へ向けて押し出される押圧力は、切断片720の周囲を囲む消弧材Qによって切断片720に効果的に伝達される。そのため、切断片720は確実に切断されて、両側の基部片730から分離されるのである。
なお、異常電流が比較的大電流の場合は、図10に示すように、溶断部740が溶断して電気回路が遮断されている。ただし、図11のように、溶断部740が溶断して電気回路が遮断された後であっても、回路部700の切断片720を切断して基部片730から分離することで、電気回路を物理的により確実に遮断しているのである。なお、第二移動体600の開口部641付近において、切断片720は、一方の基部片730と切断箇所C3で切断され、他方の基部片730と切断箇所C3で切断されている。そして、両側の切断箇所C3間の長さは長さL2となっている。この長さL2は、第二移動体600の両側の開口部641間の長さと等しくなっている。
一方で、異常電流が比較的低電流の場合であっても、図10に示すように、被切断部400の切断片420が切断された際、電気回路を流れている事故電流I2が、基部片730を介して切断片720の溶断部740へと誘導されている。そのため、分断された切断片420と基部片430との間にアークが発生することを防止できるのである。
ただ、ヒューズ機能回路部800へ誘導された事故電流I2が比較的低電流域に属する場合は、ヒューズ機能回路部800の溶断部740が溶断せず電流を遮断できない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかり、電気回路に流れた過電流を即座に遮断できない場合がある。
しかしながら、図11に示すように、第一移動体500によって押し出された第二移動体600が、回路部700の切断片720を切断して基部片730から分離する。そのため、溶断部740が溶断しない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかる場合であっても、ヒューズ機能回路部800の両側の基部片730が切断片720を介して通電した状態が即座に遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。また、切断片720が切断された際に、切断片720と基部片730の間にアークが生じたとしても、そのアークは、切断片720が挿通している収容空間640内の消弧材Qによって、効果的に消弧されている。
以上より、本願発明の電気回路遮断装置Vによれば、比較的低電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図10に示すように、第一移動体500によって被切断部400の切断片420を切断した後、図11に示すように、第二移動体600によって溶断部740を備えるヒューズ機能回路部800の一部である切断片720を切断して、電気回路に過電流が流れるのを防止している。一方で、比較的大電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図10に示すように、第一移動体500によって被切断部400の切断片420を切断した際、事故電流をヒューズ機能回路部800の溶断部740に誘導して安全に遮断し、電気回路に過電流が流れるのを防止している。このように、本願発明の電気回路遮断装置Vによれば、比較的高電流だけでなく、比較的低電流までの広い範囲の電流域で、速断性を備えているのである。
また、本願発明の電気回路遮断装置Vでは、事故電流が比較的大電流域に属する場合であっても、ヒューズ機能回路部800の溶断部740周辺の消弧材Qでアークを効果的に素早く消弧できるようにしている。そして、回路部700の切断片720が消弧材Qを介して切断される構成としているので、動力源Pの動力を、第二移動体600及び消弧材Qを介して、切断片720まで効率的に伝達して、切断片720を素早く確実に切断することが重要となる。特に、事故電流が比較的大電流域に属する場合を想定することから、アークを効果的に素早く消弧するため、第二移動体600の収容空間640周辺に充填される消弧材Qのかさ密度を極めて高くなるように、消弧材Qは締め固められている。さらに、図9に示すように、消弧材Q´が収容空間640の外側まで伸びている場合は、せん断強度が高い消弧材Q´も同時に切断しなければならないため、動力源Pの動力を、より効率的に伝達する必要がある。なお、図9に示すように、締め固められた板状の消弧材Q´が切断片720に沿って延出して、消弧材Q´が収容空間640の外側まで伸びている場合は、ハウジング301の収容空間302内での消弧材Q´の位置や姿勢がズレにくい。
また、本願発明の電気回路遮断装置Vでは、図9及び図10に示すように、ヒューズ機能回路部800の切断片720と各基部片730との切断箇所C3間の長さL2は、被切断部400の切断片420と各基部片430との切断箇所C1間の長さL3よりも短くなっている。つまり、第二移動体600によって切断片720を切断する際の切断長さL2は、第一移動体500によって切断片420を切断する際の切断長さL3よりも短い。そのため、第一移動体500によって切断片420を切断した際の第一移動体500の動力は、切断長さの短い第二移動体600へと集約されて効果的に伝えられる。これにより、動力源Pの動力を、第二移動体600及び消弧材Qを介して、ヒューズ機能回路部800の切断片720まで効率的に伝達して、切断片720を素早く確実に切断することが出来るのである。また、動力源Pの動力を効率的に伝達できることから、火薬量を減らすなどして動力源Pを小さくすることができ、ハウジング301の小型化及び軽量化に寄与するのである。さらに、切断片720を切断する箇所の長さL2が、切断片420を切断する箇所の長さL3よりも小さいので、切断片720を収容する下側ハウジング100側をより小型化及び軽量化できる。
また、本願発明の電気回路遮断装置Vでは、図9及び図10に示すように、ヒューズ機能回路部800の切断片720と各基部片730との切断箇所C3間の長さL2は、被切断部400の切断片420と各基部片430との切断箇所C1間の長さL3よりも短くなっているが、これに限定されず、ヒューズ機能回路部800の切断片720と各基部片730との切断箇所C3間の長さL2は、被切断部400の切断片420と各基部片430との切断箇所C1間の長さL3と等しくてもよい。つまり、第二移動体600によって切断片720を切断する際の切断長さL2は、第一移動体500によって切断片420を切断する際の切断長さL3と等しい。すると、第一移動体500によって切断片420を切断した際の第一移動体500の動力は、切断長さが同じ第二移動体600へと出来るだけ減衰することなく、効果的に伝えられる。したがって、第二移動体600によって切断片720を切断する際の切断長さL2は、第一移動体500によって切断片420を切断する際の切断長さL3以下、すなわち、長さL2≦長さL3の関係であれば、動力源Pの動力を、第二移動体600及び消弧材Qを介して、切断片720まで効率的に伝達して、切断片720を素早く確実に切断することが出来るのである。
また、本願発明の電気回路遮断装置Vでは、図4に示すように、第一移動体500が切断片420を切断する際に、第一移動体500が切断片420に接触して押圧力を加える部分の面積はS1となっている。また、図5に示すように、第二移動体600が切断片720を切断する際に、収容空間640内に収容された消弧材が切断片720に接触して押圧力を加える部分の面積はS2となっている。そして、第二移動体600によって切断片720を切断する際の面積S2は、第一移動体500によって切断片420を切断する際の面積S1よりも小さい。そのため、第一移動体500によって切断片420を切断した際の第一移動体500の動力は、切断面積が小さい第二移動体600へと集約されて効果的に伝えられる。これにより、動力源Pの動力を、第二移動体600及び消弧材Qを介して、切断片720まで効率的に伝達して、切断片720を素早く確実に切断することが出来るのである。また、動力源Pの動力を効率的に伝達できることから、火薬量を減らすなどして動力源Pを小さくすることができ、ハウジング301の小型化及び軽量化に寄与するのである。
また、本願発明の電気回路遮断装置Vでは、第二移動体600によって切断片720を切断する際の面積S2は、第一移動体500によって切断片420を切断する際の面積S1よりも小さいが、これに限定されず、第二移動体600によって切断片720を切断する際の面積S2は、第一移動体500によって切断片420を切断する際の面積S1と等しくてもよい。すると、第一移動体500によって切断片420を切断した際の第一移動体500の動力は、切断面積が等しい第二移動体600へと出来るだけ減衰することなく、効果的に伝えられる。したがって、第二移動体600によって切断片720を切断する際の面積S2は、第一移動体500によって切断片420を切断する際の面積S1以下、すなわち、面積S2≦面積S1の関係であれば、動力源Pの動力を、第二移動体600及び消弧材Qを介して、切断片720まで効率的に伝達して、切断片720を素早く確実に切断することが出来るのである。
なお、本願発明の電気回路遮断装置Vは、長さL2≦長さL3の関係、及び面積S2≦面積S1の関係が同時に成立するように構成されているが、これに限定されず、長さL2≦長さL3の関係、又は面積S2≦面積S1の関係の一方のみが成立するように構成されてもよい。
また、本願発明の電気回路遮断装置Vでは、比較的高電流に属する異常電流を遮断することを想定していため、ヒューズ機能回路部800の溶断部740が溶断した後に、基部片730間に発生するアークを消弧できるよう、溶断部740を備えた切断片720の周囲を消弧材Qで囲まれた状態としている。そして、消弧材Qを第二移動体600の収容空間640内に切断片720と共に収容しているので、第一移動体500から伝わった動力源Pの動力を、第二移動体600を介して切断片720まで効率的に伝達し、切断片720を素早く確実に切断することができる。仮に第二移動体600を利用せず、消弧材Qを被切断部400の切断片420とヒューズ機能回路部800の切断片720の間に直接充填した場合は、下方へ押し出された第一移動体500が、切断された切断片420を間に挟んだ状態で、切断片720を直接切断することになる。しかし、切断された切断片420の位置、姿勢、切断後の形状等、更には、消弧材Qの状態によって、切断片720への力の伝わり方が変わってしまうため、切断片720を素早く確実に切断することが難しくなるのである。
また、本願発明の電気回路遮断装置Vでは、第一移動体500と第二移動体600とが別体で独立しており、個別に移動可能に構成されているが、これに限定されず、第一移動体500と第二移動体600とが一体となっており、同時に移動するように構成されてもよい。第一移動体500と第二移動体600とが一体の場合は、第一移動体500で切断片420を切断した後に、次に、第二移動体600で切断片720を切断する順序(タイミング)となるように、例えば、切断片720に押圧力が直ぐに伝達されないように、消弧材Qと切断片720の間に隙間を設けるなどの工夫が必要である。ただし、本願発明の電気回路遮断装置Vでは、比較的高電流に属する異常電流を遮断することを想定していため、切断片720は常に消弧材Qによって囲まれていることが望ましく、さらに、消弧材Qと第二移動体600は一体となって移動して、切断片720を素早く確実に切断することが望ましい。
そのため、本願発明の電気回路遮断装置Vでは、第一移動体500と第二移動体600とが別体で独立しており、個別に移動可能に構成することで、第二移動体600の収容空間640内において切断片720は常に消弧材Qによって囲まれて、消弧材Qと第二移動体600は一体となって移動して、切断片720を素早く確実に切断できるのである。また、第一移動体500と第二移動体600とが別体で個別に移動可能に構成することで、第一移動体500と第二移動体600の移動のタイミングを調節しやすく、第一移動体500と第二移動体600の構成を単純に出来る。例えば、第一移動体500と第二移動体600との距離を適宜変更すれば、遮断すべき異常電流の大きさに合わせて、切断片420と切断片720の切断のタイミングの調節を行いやすいのである。
<実施形態2>
では次に、実施形態2に係る本願発明の電気回路遮断装置VAについて、図12から図15を参照して説明する。また、実施形態2に係る電気回路遮断装置VAの構成は、実施形態1に係る電気回路遮断装置Vの構成と基本的に同一なので、同一の構成については説明を省略する。なお、図12(a)は、本願発明の実施形態2に係る電気回路遮断装置VAが遮断する電気回路の一部を構成する被切断部400Aの斜視図、図12(b)はJ-J断面図である。
被切断部400Aでは、基部片430Aと切断片420Aとの境界部分の裏面429Aにおいて、切断片420Aが基部片430Aから切断されやすくするために、被切断部400Aの幅方向に横断するように、直線状の切り込み424Aが設けられている。また、切断片420Aを更に細かく分断するために、切断片420Aの表面421Aには、被切断部400の幅方向に横断するように、直線状の切り込み425Aが2本設けられている。さらに、切断片420Aの裏面429Aには、切断片420Aの略中央側を切断しやすくするために、両側の切り込み425Aの間に、被切断部400Aの幅方向に横断するように、直線状の切り込み426Aが更に設けられている。
そして、後述するように、被切断部400Aの切断片420Aが第一移動体500Aによって切断される際は、切断片420Aは基部片430Aから切り込み424A付近の切断箇所C1Aで切断されて分離される。さらに、切断片420Aは、略中央の切り込み426A付近の切断箇所C2Aと、その両側の切り込み425A付近の切断箇所C3Aで、切断されて分離される。したがって、切断片420Aは切断箇所C1Aと切断箇所C2Aと切断箇所C3Aによって、両側の端部分離片450Aとその間の2つの中間分離片460Aに切断されて分離されるのである。
このように、切断片420Aは複数の部分に切断されて分離されるため、異常電流が流れた際に、被切断部400Aにかかる電圧を分圧させることができ、後述するアークをより効果的に消弧できる。特に、切断片420Aは貫通孔401Aで分離されて互いに並列に接続された分流路440Aを形成しているため、被切断部400Aに流れる異常電流を分流させることができ、後述するアークをより効果的に消弧できる。そして、切断片420Aは、合計10個の切断分離部(D1AからD10A)を備えることから、高い分圧・分流効果を得られ、後述するアークをより効果的に素早く消弧できる。また、後述するように、切断片420Aは、複数の箇所で分断されて略M字状に折り曲げられているので、各分断箇所同士が分離した状態を維持しつつ、切断片420Aの全長が長くなることを防げる。これにより、第一移動体500Aによって切断片420Aを切断する際の切断長さ(図13の長さL3A参照)が長くなることを防ぎ、電気回路遮断装置VAの小型化に寄与する。
では次に、本願発明の実施形態2に係る電気回路遮断装置VAの内部構造について、図13を参照して説明する。なお、この図13は、図9と同様に、実施形態2に係る電気回路遮断装置VAが組み立てられた状態での断面図である。
図13に示すように、第一移動体500Aは、収容空間302A内部に収容されており、ハウジング301Aの第一端部320Aから第二端部330Aへ向けて移動できるように構成されている。また、第一移動体500Aの本体部530Aの下端側は、下方へ突出した突出部531Aと、突出部531Aから上方へ窪んだ凹部532Aを備える。突出部531Aは、本体部530Aの下端側に3つ設けられ、凹部532Aは突出部531Aの間にそれぞれ設けられている。そのため、突出部531Aと凹部532Aによって、本体部530Aの下端側は略M字状の凹凸形状となっている。そして、この略M字状の凹凸形状の部分が、後述するように、被切断部400Aの切断片420Aに当接して押圧力を加え、切断片420Aを破断させる部分となる。
また、図13に示すように、電気回路遮断装置VAが作動する前の状態、つまり、第一移動体500が移動して被切断部400Aの切断片420Aが切断され始める前では、被切断部400Aとヒューズ機能回路部800Aは互いに電気的にも物理的にも接続されていない状態となっている。具体的には、ヒューズ機能回路部800Aの各基部片730Aには、電線等の導体からなる接続部材790Aが連結されており、この各接続部材790Aは、被切断部400Aには接続されておらず、第一移動体500の本体部530Aに設けられた一対の電極部540A及び電極部550Aに電気的に接続されている。この一対の電極部540A及び電極部550Aは、第一移動体500の本体部530Aの両端に設けられており、切断片420Aから離して配置されている。そのため、一対の電極部540A及び電極部550Aは、物理的にも電気的にも被切断部400Aとは接続されていないので、電気回路中を流れる電流は、電極部540A及び電極部550Aを介してヒューズ機能回路部800Aに流れることはない。そのため、電流が常にヒューズ機能回路部800A側に流れることを防止でき、ヒューズ機能回路部800Aの耐久性の向上や無駄な電力消費を抑えることができる。
では次に、図14及び図15を参照して、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合に、電気回路遮断装置VAが電気回路を遮断する様子について説明する。なお、図14は、図13に示す状態から第一移動体500Aが移動した様子を示す断面図、図15は、図14に示す状態から、第一移動体500Aが更に移動した様子を示す断面図である。
まず、図14に示すように、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合には、異常信号が動力源PAに入力され、動力源PA内の火薬が爆発する。すると、その爆発による空気圧によって、第一移動体500Aは第一端部320Aから第二端部330Aに向けて勢いよく吹き飛ばされ、収容空間302A内を第二端部330Aに向けて瞬時に移動する。そして、第一移動体500Aの突出部531Aによって、切断片420Aは下方へ強く押される。すると、切断片420Aは略M字状に複数の箇所で分断されて、両側の基部片430Aとは物理的に切断された状態となる。つまり、被切断部400Aの両側の基部片430Aが切断片420Aを介して通電した状態が遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。
なお、被切断部400Aの切断片420Aが第一移動体500Aによって切断される際は、切断片420Aは略M字状に複数の箇所(具体的には、各端部分離片450Aと各中間分離片460A)に分断されている。これにより、切断片420Aを切断した際に、中間分離片460Aと端部分離片450Aの間にアークが僅かに生じたとしても、効果的に素早く消弧できる。特に、切断片420Aを複数の部分に切断して分離することで、高い分圧・分流効果を得られることから、切断片420Aを切断した際に生じうるアークは、より効果的に素早く消弧できる。
ここで、異常電流が比較的大電流の場合は、電気回路に接続されている両側の基部片430Aには大きな電圧がかかることから、切断片420Aを切断した後でも、基部片430Aと切断された切断片420Aとの間にアークが引き続き発生する可能性がある。ここで、図13に示すように、切断片420Aを切断する突出部531Aの下端と、電極部540A及び電極部550Aの下端は、同じ高さになっている。つまり、第一移動体500Aが第二端部330A側へ移動して、突出部531Aが切断片420Aの切断を開始する瞬間には、それと同時に、電極部540A及び電極部550Aが被切断部400Aの一部に接触しており、電極部540A及び電極部550Aを介して、被切断部400Aとヒューズ機能回路部800Aは電気的に接続された状態となる。そして、図14に示すように、第一移動体500Aが第二端部330A側へ移動して切断片420Aが切断されている間は、上下方向(第一移動体500Aの移動方向)に延出している電極部540A及び電極部550Aが、基部片430Aに常に接触して、被切断部400Aとヒューズ機能回路部800Aは電気的に接続された状態が維持されている。
このように、被切断部400Aの切断片420Aが切断される前から、被切断部400Aの基部片430Aとヒューズ機能回路部800Aの基部片730Aは、一対の電極部540A及び電極部550A並びに接続部材790Aを介して電気的に接続されているので、切断片420Aが切断された際には、電気回路を流れている事故電流I2Aが、基部片730Aを介して切断片720Aの溶断部740Aへと誘導されている。そのため、分断された切断片420Aと基部片430Aとの間にアークが引き続き発生することを防止できるのである。
そして、図14に示すように、ヒューズ機能回路部800Aへ誘導された事故電流I2Aにより、溶断部740Aが発熱して溶断する。さらに、溶断部740Aの溶断時には、電気回路に接続されている両側の基部片730Aにかかる電圧によって、溶断部740A周辺にはアークが発生するが、そのアークは、溶断部740Aの周囲に充填されている消弧材QAによって素早く効果的に消弧されるのである。
次に、図15に示すように、切断片420Aを切断した後、第一移動体500Aは引き続き、収容空間302A内を第一端部320Aから第二端部330Aへ移動する。すると、第一移動体500Aが第二移動体600Aの上端側(第一端部320A側)に当接して、第一移動体500Aは第二移動体600Aを第二端部330A側へ強く押し出すのである。なお、第二移動体600の当接部631は、第一移動体500Aの下面側の形状に合わせて略M字状になっている。
すると、第二移動体600Aの収容空間640A内を挿通している切断片720Aは、第二端部330Aへ向けて移動する第二移動体600Aによって下方へ強く押されて分断され、両側の基部片730Aと物理的に切断された状態となる。なお、収容空間640A内には消弧材QAが充填されているので、第二移動体600Aが第二端部330Aへ向けて押し出される押圧力は、切断片720Aの周囲を囲む消弧材QAによって切断片720に効果的に伝達される。
一方で、異常電流が比較的低電流の場合であっても、図14に示すように、切断片420Aが切断された際、電気回路を流れている事故電流I2Aが、電極部540A及び電極部550Aを介してヒューズ機能回路部800Aの溶断部740Aへと誘導されている。そのため、分断された切断片420Aと基部片430Aとの間にアークが発生することを防止できるのである。ただ、ヒューズ機能回路部800Aへ誘導された事故電流I2Aが比較的低電流域に属する場合は、ヒューズ機能回路部800Aの溶断部740Aが溶断せず電流を遮断できない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかり、電気回路に流れた過電流を即座に遮断できない場合がある。
しかしながら、図15に示すように、第一移動体500Aによって押し出された第二移動体600Aが、ヒューズ機能回路部800Aの切断片720Aを切断して基部片730Aから分離する。そのため、溶断部740Aが溶断しない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかる場合であっても、ヒューズ機能回路部800Aの両側の基部片730Aが切断片720Aを介して通電した状態が即座に遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。また、切断片720Aが切断された際に、切断片720Aと基部片730Aの間にアークが生じたとしても、そのアークは、切断片720Aが挿通している収容空間640A内の消弧材QAによって、効果的に消弧されている。
以上より、本願発明の電気回路遮断装置VAによれば、比較的低電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図14に示すように、第一移動体500Aによって被切断部400Aの切断片420Aを切断した後、図15に示すように、第二移動体600Aによってヒューズ機能回路部800Aの切断片720Aを切断して、電気回路に過電流が流れるのを防止している。一方で、比較的大電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図14に示すように、第一移動体500Aによって被切断部400Aの切断片420Aを切断した際に、事故電流をヒューズ機能回路部800Aの溶断部740Aに誘導して安全に遮断し、電気回路に過電流が流れるのを防止している。このように、本願発明の電気回路遮断装置VAによれば、比較的高電流だけでなく、比較的低電流までの広い範囲の電流域で、速断性を備えているのである。
<実施形態3>
では次に、実施形態3に係る本願発明の電気回路遮断装置VBについて、図16から図19を参照して説明する。また、実施形態3に係る電気回路遮断装置VBの構成は、実施形態2に係る電気回路遮断装置VAの構成と基本的に同一なので、同一の構成については説明を省略する。なお、図16(a)は、本願発明の実施形態3に係る電気回路遮断装置VBが遮断する電気回路の一部を構成する被切断部400Bの斜視図、図16(b)はK-K断面図である。
図16に示す被切断部400Bでは、図12に示す被切断部400Aの構成に加えて、基部片430Bと切断片420Bとの各境界部分の裏面429Bに、被切断部400Bの幅方向に横断するように、直線状の切り込み427Bが設けられている。この切り込み427Bは、基部片430Bと切断片420Bとの間の各境界部490Bを折り曲げやすくする。そして、後述するように、第一移動体500Bによって切断片420Bを切断する際、切断片420Bは、切り込み424Bで切断されて基部片430Bから分離される。一方、切断片420Bと基部片430Bの間の境界部490Bは、切り込み427Bによって折り曲げられて基部片430Bに連結されたままになる。
では次に、本願発明の実施形態3に係る電気回路遮断装置VBの内部構造について、図17を参照して説明する。なお、この図17は、図9と同様に、実施形態2に係る電気回路遮断装置VBが組み立てられた状態での断面図である。
図17に示すように、第一移動体500Bは、収容空間302B内部に収容されており、ハウジング301Aの第一端部320Bから第二端部330Bへ向けて移動できるように構成されている。また、第一移動体500Bの本体部530Bの下端側は、下方へ突出した突出部531Bと、突出部531Bから上方へ窪んだ凹部532Bを備える。突出部531Bは、本体部530Bの下端側に3つ設けられ、凹部532Bは、突出部531Bと交互に合計4つ設けられている。そのため、突出部531Bと凹部532Bによって、本体部530Bの下端側は、山と谷が連続する凹凸形状となっている。そして、この凹凸形状の部分が、後述するように、被切断部400Bの切断片420Bに当接して押圧力を加えて切断片420Bを破断させる部分となる。
また、図17に示すように、電気回路遮断装置VBが作動する前の状態、つまり、第一移動体500Bが移動して被切断部400Bの切断片420Bが切断され始める前では、被切断部400Bとヒューズ機能回路部800Bは互いに電気的にも物理的にも接続されていない状態となっている。そして、ヒューズ機能回路部800Bの各基部片730Bには、導体からなる接続部材790Bが連結されており、この各接続部材790Bは、被切断部400Bには接続されておらず、電極部540B及び電極部550Bに電気的に接続されている。この一対の電極部540B及び電極部550Bは、切断片420Bを挟んで、第一移動体500Bの反対側に設けられており、切断片420Bから離して配置されている。そのため、一対の電極部540B及び電極部550Bは、物理的にも電気的にも被切断部400Bとは接続されていないので、電気回路中を流れる電流は、電極部540B及び電極部550Bを介してヒューズ機能回路部800Bに流れることはない。そのため、電流が常に回路部700B側に流れることを防止でき、ヒューズ機能回路部800Bの耐久性の向上や無駄な電力消費を抑えることができる。
では次に、図18及び図19を参照して、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合に、電気回路遮断装置VBが電気回路を遮断する様子について説明する。なお、図18は、図17に示す状態から第一移動体500Bが移動した様子を示す断面図、図19は、図18に示す状態から、第一移動体500Bが更に移動した様子を示す断面図である。
まず、図18に示すように、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合には、異常信号が動力源PBに入力され、動力源PB内の火薬が爆発する。すると、その爆発による空気圧によって、第一移動体500Bは第一端部320Bから第二端部330Bに向けて勢いよく吹き飛ばされ、収容空間302B内を第二端部330Bに向けて瞬時に移動する。そして、第一移動体500Bの突出部531Bによって、切断片420Bは下方へ強く押される。すると、切断片420Bは略M字状に複数の箇所で分断されて、両側の基部片430Bとは物理的に切断された状態となる。つまり、被切断部400Bの両側の基部片430Bが切断片420Bを介して通電した状態が遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。
ここで、異常電流が比較的大電流の場合は、電気回路に接続されている両側の基部片430Bには大きな電圧がかかることから、切断片420Bを切断した後でも、基部片430Bと切断された切断片420Bとの間にアークが引き続き発生する可能性がある。ここで、図17に示すように、電極部540B及び電極部550Bは、被切断部400Bの境界部490Bに接触していないものの近接配置されている。そして、第一移動体500Bが第二端部330B側へ移動して、突出部531Bが切断片420Bの切断を開始する瞬間には、突出部531Bによって下方へ押されて、境界部490B付近が下方へ撓むように構成されているので、電極部540B及び電極部550Bが被切断部400Bの一部である境界部490B周辺に接触することになる。そのため、電極部540B及び電極部550Bを介して、被切断部400Bとヒューズ機能回路部800Bは電気的に接続された状態となる。そして、図18に示すように、第一移動体500Bが第二端部330B側へ移動して切断片420Bが切断されている間でも、境界部490Bは下方へ折り曲げられるものの、基部片430Bと接続されたままになっている。そのため、電極部540B及び電極部550Bが境界部490Bと常に接触しており、被切断部400Bとヒューズ機能回路部800Bは電気的に接続された状態が維持されている。
このように、被切断部400Bの切断片420Bが切断される前から、被切断部400Bの基部片430Bとヒューズ機能回路部800Bの基部片730Bは、一対の電極部540B及び電極部550B並びに接続部材790Bを介して電気的に接続されているので、切断片420Bが切断された際には、電気回路を流れている事故電流I2Bが、基部片730Bを介してヒューズ機能回路部800Bの溶断部740Bへと誘導されている。そのため、分断された切断片420Bと基部片430Bとの間にアークが引き続き発生することを防止できるのである。
そして、図18に示すように、ヒューズ機能回路部800Bへ誘導された事故電流I2Bにより、ヒューズ機能回路部800Bの溶断部740Bが発熱して溶断する。さらに、溶断部740Bの溶断時には、電気回路に接続されている両側の基部片730Bにかかる電圧によって、溶断部740B周辺にはアークが発生するが、そのアークは、溶断部740Bの周囲に充填されている消弧材QBによって素早く効果的に消弧されるのである。
次に、図19に示すように、切断片420Bを切断した後、第一移動体500Bは引き続き、収容空間302B内を第一端部320Bから第二端部330Bへ移動する。すると、第一移動体500Bが第二移動体600Bの上端側(第一端部320B側)に当接して、第一移動体500Bは第二移動体600Bを第二端部330B側へ強く押し出すのである。すると、第二移動体600Bの収容空間640B内を挿通している切断片720Bは、第二端部330Bへ向けて移動する第二移動体600Bによって下方へ強く押されて分断され、両側の基部片730Bと物理的に切断された状態となる。なお、収容空間640B内には消弧材QBが充填されているので、第二移動体600Bが第二端部330Bへ向けて押し出される押圧力は、切断片720Bの周囲を囲む消弧材QBによって切断片720Bに効果的に伝達される。
一方で、異常電流が比較的低電流の場合であっても、図18に示すように、切断片420Bが切断された際、電気回路を流れている事故電流I2Bが、電極部540B及び電極部550Bを介してヒューズ機能回路部800Bの溶断部740Bへと誘導されている。そのため、分断された切断片420Bと基部片430Bとの間にアークが発生することを防止できるのである。ただ、ヒューズ機能回路部800Bへ誘導された事故電流I2Bが比較的低電流域に属する場合は、ヒューズ機能回路部800Bの溶断部740Bが溶断せず電流を遮断できない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかり、電気回路に流れた過電流を即座に遮断できない場合がある。
しかしながら、図19に示すように、第一移動体500Bによって押し出された第二移動体600Bが、ヒューズ機能回路部800Bの切断片720Bを切断して基部片730Bから分離している。そのため、溶断部740Bが溶断しない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかる場合であっても、ヒューズ機能回路部800Bの両側の基部片730Bが切断片720Bを介して通電した状態が即座に遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。また、切断片720Bが切断された際に、切断片720Bと基部片730Bの間にアークが生じたとしても、そのアークは、切断片720Bが挿通している収容空間640B内の消弧材QBによって、効果的に消弧されている。
以上より、本願発明の電気回路遮断装置VBによれば、比較的低電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図18に示すように、第一移動体500Bによって被切断部400Bの切断片420Bを切断した後、図19に示すように、第二移動体600Bによってヒューズ機能回路部800Bの切断片720Bを切断して、電気回路に過電流が流れるのを防止している。一方で、比較的大電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図18に示すように、第一移動体500Bによって被切断部400Bの切断片420Bを切断した際に、事故電流をヒューズ機能回路部800Bの溶断部740Bに誘導して安全に遮断し、電気回路に過電流が流れるのを防止している。このように、本願発明の電気回路遮断装置VBによれば、比較的高電流だけでなく、比較的低電流までの広い範囲の電流域で、速断性を備えているのである。
<実施形態4>
では次に、実施形態4に係る本願発明の電気回路遮断装置VCについて、図20から図22を参照して説明する。また、実施形態4に係る電気回路遮断装置VCの構成は、実施形態1に係る電気回路遮断装置Vの構成と、第二移動体600Cとヒューズ機能回路部800Cの構成が異なるが、その他の構成は、実施形態1に係る電気回路遮断装置Vの構成と基本的に同一なので、同一の構成については説明を省略する。なお、この図20は、図9と同様に、実施形態4に係る電気回路遮断装置VCが組み立てられた状態での断面図である。
図20に示すように、ヒューズ機能回路部800Cは、基部片430Cに接続される両側の基部片830Cと、両側の基部片830Cを接続する接続部810Cとを備え、電気回路や被切断部400Cと電気的に接続するために全体が銅などの金属製の導電体となっている。また、ヒューズ機能回路部800Cは、接続部810Cと基部片830Cの間にヒューズ部850Cを備えている。ヒューズ部850Cは、金属製の導電体からなるエレメント851Cと、そのエレメント851Cに複数の溶断部852Cと、エレメント851Cを収容するケーシング859Cを備える。溶断部852Cは、エレメント851Cに設けられた複数の貫通孔853Cによって、幅が局所的に狭くなった幅狭部854Cから構成されており、異常電流が流れた際に、幅狭部854Cが発熱して溶断し、電流を遮断できる。
また、ケーシング859C内部の収容空間858Cは、溶断部852Cを備えたエレメント851Cの周囲を囲むように消弧材QCが収納されている。そして、電気回路遮断装置VCのハウジング301C内の収容空間302Cと、ヒューズ機能回路部800Cのヒューズ部850Cの収容空間858Cは、ヒューズ部850Cのケーシング859Cによって互いに隔離されており、ヒューズ機能回路部800Cの消弧材QCを収容している収容空間858Cと、第一移動体500Cや第二移動体600Cを収容している収容空間302Cは、互いに隔離された別の空間となっている。つまり、第一移動体500Cや第二移動体600Cはハウジング301Cの収容空間302C内を第一端部320Cから第二端部330Cへ向けて移動するが、第一移動体500Cや第二移動体600Cの移動範囲内に、ヒューズ機能回路部800Cの収容空間858Cが存在していないため、収容空間858C内の消弧材QCが、第一移動体500Cや第二移動体600Cに干渉することがなく、第一移動体500Cや第二移動体600Cの移動を妨げることはない。
また、接続部810Cには、変形接続部820Cが設けられている。図20に示すように、電気回路遮断装置VCが作動する前の状態、つまり、第一移動体500Cが移動して被切断部400Cの切断片420Cが切断され始める前では、変形接続部820Cは略く字状に曲げられており、後述するように、第二移動体600Cが下方へ移動するのに伴って、変形接続部820Cは、略く字状部分が直線状に開くように弾性変形して、伸長することになる。なお、変形接続部820Cは、弾性変形可能な導体を略く字状に曲げることで、変形可能に構成しているが、これに限定されず、コイル状に巻かれた弾性変形な導体や、長さに余裕を持たせた電線など、変形接続部820Cは、第二移動体600Cの移動を妨げることがないように、第二移動体600Cが下方へ移動するのに伴って、第二端部330Cへ向けて変形できるものであれば、任意の構成であってもよい。
また、第二移動体600Cは、図5に示す第二移動体600と上端部610C側の形状は同一であるが、本体部630Cに収容空間640を備えていない。また、上端部610Cの反対側の下端部650Cは、接続部810Cに当接する平坦面となっている。なお、第二移動体600Cの下端部650Cは、接続部810Cに当接しているが、接続部810Cに固定されておらず独立した状態である。そのため、第二移動体600Cやヒューズ機能回路部800Cの組み付けが容易である。
そして、図20に示すように、電気回路遮断装置VCは、保護したい電気回路内に取り付けられて利用される。具体的には、電気回路の一部に被切断部400Cの基部片430Cとヒューズ機能回路部800Cの基部片830Cを接続して、被切断部400C及びヒューズ機能回路部800Cを電気回路の一部を構成するように並列接続する。そして、通常時(すなわち、異常電流が流れていない時)においては、被切断部400Cの基部片430Cと切断片420Cは切断されておらず、物理的にも電気的に接続されているので、電流I1Cが被切断部400Cの基部片430Cと切断片420Cを介して電気回路中を流れるようになっている。
では次に、図21及び図22を参照して、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合に、電気回路遮断装置VCが電気回路を遮断する様子について説明する。なお、図21は、図20に示す状態から第一移動体500Cが移動した様子を示す断面図、図22は、図21に示す状態から、第一移動体500Cが更に移動した様子を示す断面図である。
まず、図21に示すように、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合には、異常信号が動力源PCに入力され、動力源PC内の火薬が爆発する。すると、この空気圧によって、第一移動体500Cは第一端部320Cから第二端部330Cに向けて勢いよく吹き飛ばされ、収容空間302C内を第二端部330Cに向けて瞬時に移動する。そして、第一移動体500Cによって、切断片420は下方へ強く押されて分断され、両側の基部片430Cは物理的に切断された状態となる。つまり、被切断部400Cの両側の基部片430Cが切断片420Cを介して通電した状態が遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。
ここで、異常電流が比較的大電流の場合は、電気回路に接続されている両側の基部片430Cには大きな電圧がかかることから、切断片420Cを切断した後でも、基部片430Cと切断された切断片420Cとの間にアークが引き続き発生する可能性がある。しかしながら、図20に示すように、被切断部400Cの切断片420Cが切断される前から、被切断部400Cの基部片430Cとヒューズ機能回路部800Cの基部片830Cは電気的に接続されている。そして、切断片420Cが切断された際には、図21に示すように、電気回路を流れている事故電流I2Cが、基部片830Cを介してヒューズ機能回路部800Cのヒューズ部850Cへと誘導されている。そのため、分断された切断片420Cと基部片430Cとの間にアークが引き続き発生することを防止できるのである。
そして、図21に示すように、ヒューズ部850Cへ誘導された事故電流I2Cにより、ヒューズ部850Cの溶断部852Cが発熱して溶断する。なお、第一移動体500Cによって切断片420Cを切断して電気回路を遮断した際、事故電流I2Cがヒューズ部850Cへ誘導されて、電気回路中に電流が流れることから、厳密には電気回路は完全に遮断されていない。しかし、ヒューズ部850Cの溶断部852Cの定格を小さくしてあるので、事故電流I2Cにより溶断部852Cは即座に溶断して、電気回路を即座に完全に遮断するのである。さらに、溶断部852Cの溶断時には、電気回路に接続されている両側の基部片830Cにかかる電圧によって、溶断部852C周辺にはアークが発生するが、そのアークは、溶断部852Cの周囲に充填されている消弧材QCによって素早く効果的に消弧されるのである。
このように、本願発明の電気回路遮断装置VCによれば、被切断部400Cが通電した状態が遮断されて、両側の基部片430Cの間に事故電流によるアークが発生する前から、被切断部400Cとヒューズ機能回路部800Cとが接続されているので、事故電流によるアークをヒューズ機能回路部800Cへと確実に誘導して、ヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cと消弧材QCで消弧できる。その結果、ハウジング301C内において、事故電流によるアークが基部片430C間で発生して、電気回路遮断装置VCが損傷することを防止でき、安全に電気回路を遮断できるのである。
次に、図22に示すように、切断片420Cを切断した後、第一移動体500Cは引き続き、収容空間302C内を第一端部320Cから第二端部330Cへ移動する。すると、第一移動体500Cが第二移動体600Cの上端部610C側(第一端部320C側)に当接して、第一移動体500Cは第二移動体600Cを第二端部330C側へ強く押し出すのである。
すると、第二移動体600Cの下端部650Cが、ヒューズ機能回路部800Cの接続部810Cに強く当接して第二端部330C側へ押し出す。その押圧力によって、ヒューズ機能回路部800Cの接続部810Cは下方へ強く押し下げられ、接続部810Cの片側に連結されているヒューズ部850Cのエレメント851Cも、下方へ強く引っ張られる。すると、溶断部852Cは上下に分断されて、両側の基部片830Cは物理的に切断された状態となる。なお、異常電流が比較的大電流の場合は、図21に示すように、溶断部852Cが溶断して電気回路が遮断されている。ただし、図22のように、溶断部852Cが溶断して電気回路が遮断された後であっても、エレメント851Cの一部を切断することで、電気回路を物理的により確実に遮断しているのである。なお、ヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cの切断箇所間の長さは、L2Cとなっている。
また、第二移動体600Cが下方へ移動するのに伴って、変形接続部820Cは、略く字状部分が直線状に開くように弾性変形している。そのため、変形接続部820Cは、第二移動体600Cの移動を妨げることがないのである。また、第二移動体600Cによって、ヒューズ機能回路部800Cの一部が押し出されても、変形接続部820Cは変形して切断されないので、溶断部852C側のみを確実に切断でき、切断箇所で発生しうるアークを溶断部852C周辺の消弧材QCで確実かつ安全に消弧できる。
一方で、異常電流が比較的低電流の場合であっても、図21に示すように、切断片420Cが切断された際、電気回路を流れている事故電流I2Cが、基部片830Cを介してヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cへと誘導されている。そのため、分断された切断片420Cと基部片430Cとの間にアークが発生することを防止できるのである。
ただ、ヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cへ誘導された事故電流I2Cが比較的低電流域に属する場合は、ヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cが溶断せず電流を遮断できない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかり、電気回路に流れた過電流を即座に遮断できない場合がある。
しかしながら、図22に示すように、第一移動体500Cによって押し出された第二移動体600Cが、ヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cを切断する。そのため、溶断部852Cが溶断しない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかる場合であっても、ヒューズ機能回路部800Cを介して通電した状態が即座に遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。また、溶断部852Cが切断された際に、溶断部852C周辺にアークが生じたとしても、そのアークは、溶断部852C周辺の消弧材QCによって、効果的に消弧されている。
以上より、本願発明の電気回路遮断装置VCによれば、比較的低電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図21に示すように、第一移動体500Cによって被切断部400Cの切断片420Cを切断した後、図22に示すように、第二移動体600Cによって、ヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cを切断して、電気回路に過電流が流れるのを防止している。一方で、比較的大電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図21に示すように、第一移動体500Cによって被切断部400Cの切断片420Cを切断した際に、事故電流をヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cに誘導して安全に遮断し、電気回路に過電流が流れるのを防止している。このように、本願発明の電気回路遮断装置VCによれば、比較的高電流だけでなく、比較的低電流までの広い範囲の電流域で、速断性を備えているのである。
また、第一移動体500Cと第二移動体600Cとが別体で個別に移動可能に構成することで、第一移動体500Cと第二移動体600Cの移動のタイミングを調節しやすく、第一移動体500Cと第二移動体600Cの構成を単純に出来る。例えば、第一移動体500Cと第二移動体600Cとの距離を適宜変更すれば、遮断すべき異常電流の大きさ等に合わせて、切断片420Cとヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cの切断のタイミングの調節を行いやすいのである。
また、本願発明の電気回路遮断装置VCでは、図21及び図22に示すように、ヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cの両側の切断箇所間の長さL2Cは、被切断部400Cの切断片420Cと各基部片430Cとの切断箇所C1C間の長さL3Cよりも短くなっている。つまり、第二移動体600Cによってヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cを切断する際の切断長さL2Cは、第一移動体500Cによって切断片420Cを切断する際の切断長さL3Cよりも短い。また、第二移動体600Cによってヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cを切断する際の切断長さL2Cは、第一移動体500Cによって切断片420Cを切断する際の切断長さL3Cと等しくてもよい。このように、第二移動体600Cによってヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cを切断する際の切断長さL2Cは、第一移動体500Cによって切断片420Cを切断する際の切断長さL3C以下、すなわち、長さL2C≦長さL3Cの関係であれば、第一移動体500Cによって切断片420Cを切断した際の第一移動体500Cの動力は、切断長さの短い又は等しい第二移動体600へと集約又は減衰しないように効果的に伝えられ、ヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cを素早く確実に切断することが出来るのである。そして、動力源PCの動力を効率的に伝達できることから、火薬量を減らすなどして動力源PCを小さくすることができ、ハウジング301Cの小型化及び軽量化に寄与するのである。
また、本願発明の電気回路遮断装置VCでは、図4に示したのと同様に、第一移動体500Cが切断片420Cを切断する際に、第一移動体500Cが切断片420Cに接触して押圧力を加える部分の面積は、S1Cとなっている。また、図22に示すように、第二移動体600Cがヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cを切断する際に、ヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cを切断する部分の面積の合計は、S2Cとなっている。そして、第二移動体600Cによってヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cを切断する面積S2Cは、第一移動体500Cによって切断片420Cを切断する面積S1Cよりも小さい。または、第二移動体600Cによってヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cを切断する面積S2Cは、第一移動体500Cによって切断片420Cを切断する面積S1Cと等しくてもよい。このように、第二移動体600Cによってヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cを切断する面積S2Cは、第一移動体500Cによって切断片420Cを切断する面積S1C以下、すなわち、面積S2C≦面積S1Cの関係であれば、第一移動体500Cによって切断片420Cを切断した際の第一移動体500Cの動力は、第二移動体600Cの切断面積が小さい又は等しい切断箇所へと集約又は減衰しないように効果的に伝えられ、ヒューズ機能回路部800Cの溶断部852Cを素早く確実に切断することが出来るのである。そして、動力源PCの動力を効率的に伝達できることから、火薬量を減らすなどして動力源PCを小さくすることができ、ハウジング301Cの小型化及び軽量化に寄与するのである。
なお、本願発明の電気回路遮断装置VCは、長さL2C≦長さL3Cの関係、及び面積S2C≦面積S1Cの関係が同時に成立するように構成されているが、これに限定されず、長さL2C≦長さL3Cの関係、又は面積S2C≦面積S1Cの関係の一方のみが成立するように構成されてもよい。
<実施形態5>
では次に、実施形態5に係る本願発明の電気回路遮断装置VDについて、図23から図25を参照して説明する。また、実施形態5に係る電気回路遮断装置VDの構成は、実施形態4に係る電気回路遮断装置VCの構成と、ヒューズ機能回路部800Dの構成が異なるが、その他の構成は、実施形態4に係る電気回路遮断装置VCの構成と、基本的に同一なので、同一の構成については説明を省略する。なお、図23は、図20と同様に、実施形態5に係る電気回路遮断装置VDが組み立てられた状態での断面図である。
図23に示すように、ヒューズ機能回路部800Dは、図20に示すヒューズ機能回路部800Cと基本的に同一の構成であるが、変形接続部820Cの代わりにヒューズ部850Dを備えている点で異なる。つまり、ヒューズ機能回路部800Dは、2つのヒューズ部850Dを備えている。具体的には、接続部810Dと一方の基部片830Dとの間にヒューズ部850Dが接続され、接続部810Dと他方の基部片830Dとの間にもヒューズ部850Dが接続されており、第二移動体600Dによって押し出される接続部810Dの両側に、ヒューズ部850Dが接続された状態となっている。なお、第二移動体600Dの下端部は、接続部810Dに当接しているが、接続部810Dに固定されておらず独立した状態である。そのため、第二移動体600Dやヒューズ機能回路部800Dの組み付けが容易である。
また、両側の各ヒューズ部850Dのケーシング859D内部の収容空間858Dには、溶断部852Dの周囲を囲むように消弧材QDが収納されている。そして、電気回路遮断装置VDのハウジング301D内の収容空間302Dと、両側の各ヒューズ機能回路部800Dのヒューズ部850Dの収容空間858Dは、ヒューズ部850Dのケーシング859Dによって互いに隔離されており、ヒューズ機能回路部800Dの消弧材QDを収容した収容空間858Dと、第一移動体500Dや第二移動体600Dを収容している収容空間302Dは、互いに隔離された別の空間となっている。つまり、第一移動体500Dや第二移動体600Dはハウジング301Dの収容空間302D内を第一端部320Dから第二端部330Dへ向けて移動するが、第一移動体500Dや第二移動体600Dの移動範囲内に、ヒューズ機能回路部800Dの収容空間858Dが存在していないため、収容空間858D内の消弧材QDが、第一移動体500Dや第二移動体600Dに干渉することがなく、第一移動体500Dや第二移動体600Dの移動を妨げることはない。
そして、図23に示すように、電気回路遮断装置VDは、保護したい電気回路内に取り付けられて利用される。具体的には、電気回路の一部に被切断部400Dの基部片430Dとヒューズ機能回路部800Dの基部片830Dを接続して、被切断部400D及びヒューズ機能回路部800Dを電気回路の一部を構成するように並列接続する。そして、通常時(すなわち、異常電流が流れていない時)においては、被切断部400Dの基部片430Dと切断片420Dは切断されておらず、物理的にも電気的に接続されているので、電流I1Dが被切断部400Dの基部片430Dと切断片420Dを介して電気回路中を流れるようになっている。
では次に、図24及び図25を参照して、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合に、電気回路遮断装置VDが電気回路を遮断する様子について説明する。なお、図24は、図23に示す状態から第一移動体500Dが移動した様子を示す断面図、図25は、図24に示す状態から、第一移動体500Dが更に移動した様子を示す断面図である。
まず、図24に示すように、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合には、異常信号が動力源PDに入力され、動力源PD内の火薬が爆発する。すると、この空気圧によって、第一移動体500Dは、収容空間302D内を第二端部330Dに向けて瞬時に移動し、切断片420Dを下方へ強く押して分断する。すると、被切断部400Dの両側の基部片430Dが切断片420Dを介して通電した状態が遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。
ここで、異常電流が比較的大電流の場合は、切断片420Dを切断した後でも、基部片430Dと切断された切断片420Dとの間にアークが引き続き発生する可能性がある。しかしながら、図24に示すように、被切断部400Dの切断片420Dが切断される前から、被切断部400Dの基部片430Dとヒューズ機能回路部800Dの基部片830Dは電気的に接続されているので、切断片420Dが切断された際には、電気回路を流れている事故電流I2Dが、基部片830Dを介してヒューズ機能回路部800Dのヒューズ部850Dへと誘導されている。そのため、分断された切断片420Dと基部片430Dとの間にアークが引き続き発生することを防止できるのである。
そして、図24に示すように、各ヒューズ部850Dへ誘導された事故電流I2Dにより、各ヒューズ部850Dの溶断部852Dが発熱して溶断する。さらに、溶断部852D周辺に発生したアークは、溶断部852Dの周囲に充填されている消弧材QDによって素早く効果的に消弧されるのである。
このように、本願発明の電気回路遮断装置VDによれば、被切断部400Dが通電した状態が遮断されて、両側の基部片430Dの間に事故電流によるアークが発生する前から、被切断部400Dとヒューズ機能回路部800Dとが接続されているので、事故電流によるアークをヒューズ機能回路部800Dへと確実に誘導して、ヒューズ機能回路部800Dの溶断部852Dと消弧材QDで消弧し、電気回路に過電流が流れるのを防止している。
次に、図25に示すように、切断片420Dを切断した後、第一移動体500Dは引き続き、収容空間302D内を第一端部320Dから第二端部330Dへ移動する。すると、第一移動体500Dが第二移動体600Dの上端部610D側(第一端部320D側)に当接して、第一移動体500Dは第二移動体600Dを第二端部330D側へ強く押し出すのである。すると、第二移動体600Dの下端部650Dが、ヒューズ機能回路部800Dの接続部810Dに強く当接して第二端部330D側へ押し出す。その押圧力によって、ヒューズ機能回路部800Dの接続部810Dは下方へ強く押し下げられ、接続部810Dの両側に連結されている各ヒューズ部850Dのエレメント851Dも、下方へ強く引っ張られる。すると、溶断部852Dやエレメント851Dの一部は上下に分断されて、両側の基部片830Dは物理的に切断された状態となる。なお、異常電流が比較的大電流の場合は、図24に示すように、溶断部852Dが溶断して電気回路が遮断されている。ただし、図25のように、溶断部852Dが溶断して電気回路が遮断された後であっても、溶断部852Dやエレメント851Dの一部を切断することで、電気回路を物理的により確実に遮断しているのである。なお、両側のヒューズ部850Dの切断箇所間の長さはL2Dとなっている。
一方で、異常電流が比較的低電流の場合であっても、図24に示すように、切断片420Dが切断された際、電気回路を流れている事故電流I2Dが、基部片830Dを介して両側のヒューズ部850Dの溶断部852Dへと誘導されている。そのため、分断された切断片420Dと基部片430Dとの間にアークが発生することを防止できるのである。
ただ、ヒューズ機能回路部800Dの各溶断部852Dへ誘導された事故電流I2Dが比較的低電流域に属する場合は、ヒューズ機能回路部800Dの各溶断部852Dが溶断せず電流を遮断できない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかり、電気回路に流れた過電流を即座に遮断できない場合がある。
しかしながら、図25に示すように、第一移動体500Dによって押し出された第二移動体600Dが、ヒューズ機能回路部800Dの溶断部852Dを切断する。そのため、溶断部852Dが溶断しない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかる場合であっても、ヒューズ機能回路部800Dを介して通電した状態が即座に遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。また、溶断部852Dが切断された際に、溶断部852D周辺にアークが生じたとしても、そのアークは、溶断部852D周辺の消弧材QDによって、効果的に消弧されている。
以上より、本願発明の電気回路遮断装置VDによれば、比較的低電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図24に示すように、第一移動体500Dによって被切断部400Dの切断片420Dを切断した後、図25に示すように、第二移動体600Dによって、ヒューズ機能回路部800Dの溶断部852Dを切断して、電気回路に過電流が流れるのを防止している。一方で、比較的大電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図24に示すように、第一移動体500Dによって被切断部400Dの切断片420Dを切断した際に、事故電流をヒューズ機能回路部800Dの溶断部852Dに誘導して安全に遮断し、電気回路に過電流が流れるのを防止している。このように、本願発明の電気回路遮断装置VDによれば、比較的高電流だけでなく、比較的低電流までの広い範囲の電流域で、速断性を備えているのである。
また、本願発明の電気回路遮断装置VDでは、図24及び図25に示すように、ヒューズ機能回路部800Dの切断箇所間の長さL2Dは、被切断部400Dの切断片420Dと各基部片430Dとの切断箇所C1D間の長さL3Dよりも短くなっている。また、ヒューズ機能回路部800Dの切断箇所間の長さL2Dは、被切断部400Dの切断片420Dと各基部片430Dとの切断箇所C1D間の長さL3Dと等しくてもよい。このように、第二移動体600Dによって切断した、ヒューズ機能回路部800Dの切断箇所間の長さL2Dは、第一移動体500Dによって切断片420Dを切断する切断長さL3D以下、すなわち、長さL2D≦長さL3Dの関係であれば、第一移動体500Dによって切断片420Dを切断した際の第一移動体500Dの動力は、第二移動体600Dの切断距離の短い又は等しい切断箇所へと集約又は減衰しないように効果的に伝えられ、ヒューズ機能回路部800Dの一部(例えば、溶断部852D)を素早く確実に切断することが出来るのである。そして、動力源PDの動力を効率的に伝達できることから、火薬量を減らすなどして動力源PDを小さくすることができ、ハウジング301Dの小型化及び軽量化に寄与するのである。
また、本願発明の電気回路遮断装置VDでは、図4に示したのと同様に、第一移動体500Dが切断片420Dを切断する際に、第一移動体500Dが切断片420Dに接触して押圧力を加える部分の面積は、S1Dとなっている。また、図25に示すように、第二移動体600Dがヒューズ機能回路部800Dの各溶断部852Dを切断する際に、溶断部852Dを切断する部分の面積の合計は、面積S2Dとなっている。そして、第二移動体600Dによってヒューズ機能回路部800Dの溶断部852Dを切断する面積S2Cは、第一移動体500Dによって切断片420Dを切断する面積S1Dよりも小さい。または、第二移動体600Dによってヒューズ機能回路部800Dの溶断部852Dを切断する面積S2Dは、第一移動体500Dによって切断片420Dを切断する面積S1Dと等しくてもよい。このように、第二移動体600Dによってヒューズ機能回路部800Dの溶断部852Dを切断する面積S2Dは、第一移動体500Dによって切断片420Dを切断する面積S1D以下、すなわち、面積S2D≦面積S1Dの関係であれば、第一移動体500Dによって切断片420Dを切断した際の第一移動体500Dの動力は、第二移動体600Dの切断面積が小さい又は等しい切断箇所へと集約又は減衰しないように効果的に伝えられ、ヒューズ機能回路部800Dの溶断部852Dを素早く確実に切断することが出来るのである。そして、動力源PDの動力を効率的に伝達できることから、火薬量を減らすなどして動力源PDを小さくすることができ、ハウジング301Dの小型化及び軽量化に寄与するのである。
なお、本願発明の電気回路遮断装置VDは、長さL2D≦長さL3Dの関係、及び面積S2D≦面積S1Dの関係が同時に成立するように構成されているが、これに限定されず、長さL2D≦長さL3Dの関係、又は面積S2D≦面積S1Dの関係の一方のみが成立するように構成されてもよい。
また、本願発明の電気回路遮断装置VDでは、2つのヒューズ部850Dが直列に接続されているが、これに限定されず、2つのヒューズ部850Dが並列に接続されてもよい。また、本願発明の電気回路遮断装置VDでは、ヒューズ機能回路部800Dのヒューズ部850Dが合計2つ設けられているが、これに限定されず、ヒューズ部850Dを3つ以上設けてもよい。ヒューズ部850Dを2つ以上設けることで、高電流に対する遮断性能が向上する。また、本願発明の電気回路遮断装置VDでは、ヒューズ機能回路部800Dのヒューズ部850Dの溶断部852Dを切断しているが、これに限定されず、ヒューズ機能回路部800Dを遮断できるのであれば、溶断部852Dを切断するのではなく、接続部810Dを切断するなど、ヒューズ機能回路部800Dの任意の箇所を切断してもよい。また、本願発明の電気回路遮断装置VDでは、ヒューズ機能回路部800Dのヒューズ部850Dを被切断部400Dの下側に配置しているが、これに限定されない。例えば、ヒューズ部850Dが被切断部400Dと同じ高さとなるように並べれば(図面上、ヒューズ部850Dを被切断部400Dの奥側にズラして並べる)、電気回路遮断装置VDの高さを低くすることができる。
<実施形態6>
では次に、実施形態6に係る本願発明の電気回路遮断装置VEについて、図26から図28を参照して説明する。また、実施形態6に係る電気回路遮断装置VEの構成は、実施形態4に係る電気回路遮断装置VCの構成と、ヒューズ機能回路部800Dと第二移動体600Dの構成が異なるが、その他の構成は、実施形態4に係る電気回路遮断装置VCの構成と、基本的に同一なので、同一の構成については説明を省略する。なお、図26は、図20と同様に、実施形態6に係る電気回路遮断装置VEが組み立てられた状態での断面図である。
図26に示すように、ヒューズ機能回路部800Eは、図20に示すヒューズ機能回路部800Cと基本的に同一の構成であるが、変形接続部820Cを備えていない点で異なる。また、第二移動体600Eは、図20に示す第二移動体600Cと基本的に同一の構成であるが、下端部650Eがヒューズ機能回路部800Eの接続部810Eを押し出して切断可能に構成されている。そして、切断片420Eと平行に並べられた接続部810Eが、第二移動体600Eによって下方へ押されて切断されるように構成されているので、図20に示すように、ヒューズ部850Cの溶断部852Cを上下に引っ張るように切断する必要はない。そのため、図26に示すように、ヒューズ部850Eを水平方向へ寝かせるように設け、ヒューズ機能回路部800Eの溶断部852Eを接続部810Eと直線状に(言い換えると、溶断部852Eを接続部810Eと同じ高さに)配置できることから、ヒューズ機能回路部800Eを備えた電気回路遮断装置VE全体の高さを低くできるのである。
また、図26に示すヒューズ部850Eは、図20に示すヒューズ部850Cを水平方向へ寝かせるように設けただけで、その構成は同一となっている。そして、第一移動体500Eや第二移動体600Eの移動範囲内に、ヒューズ機能回路部800Eの収容空間858Eが存在していないため、収容空間858E内の消弧材QEが、第一移動体500Eや第二移動体600Eに干渉することがなく、第一移動体500Eや第二移動体600Eの移動を妨げることはない。
そして、図26に示すように、電気回路遮断装置VEは、保護したい電気回路内に取り付けられて利用される。具体的には、電気回路の一部に被切断部400Eの基部片430Eとヒューズ機能回路部800Eの基部片830Eを接続して、被切断部400E及びヒューズ機能回路部800Eを電気回路の一部を構成するように並列接続する。そして、通常時(すなわち、異常電流が流れていない時)においては、被切断部400Eの基部片430Eと切断片420Eは切断されておらず、物理的にも電気的に接続されているので、電流I1Eが被切断部400Eの基部片430Eと切断片420Eを介して電気回路中を流れるようになっている。
では次に、図27及び図28を参照して、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合に、電気回路遮断装置VEが電気回路を遮断する様子について説明する。なお、図27は、図26に示す状態から第一移動体500Eが移動した様子を示す断面図、図28は、図27に示す状態から、第一移動体500Eが更に移動した様子を示す断面図である。
まず、図27に示すように、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合には、異常信号が動力源PEに入力され、動力源PE内の火薬が爆発する。すると、この空気圧によって、第一移動体500Eは、収容空間302E内を第二端部330Eに向けて瞬時に移動し、切断片420Eを下方へ強く押して分断する。すると、被切断部400Eの両側の基部片430Eが切断片420Eを介して通電した状態が遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。
ここで、異常電流が比較的大電流の場合は、切断片420Eを切断した後でも、基部片430Eと切断された切断片420Eとの間にアークが引き続き発生する可能性がある。しかしながら、図27に示すように、被切断部400Eの切断片420Eが切断される前から、被切断部400Eの基部片430Eとヒューズ機能回路部800Eの基部片830Eは電気的に接続されているので、切断片420Eが切断された際には、電気回路を流れている事故電流I2Eが、基部片830Eを介してヒューズ機能回路部800Eのヒューズ部850Eへと誘導されている。そのため、分断された切断片420Eと基部片430Eとの間にアークが引き続き発生することを防止できるのである。
そして、図27に示すように、ヒューズ部850Eへ誘導された事故電流I2Eにより、ヒューズ部850Eの溶断部852Eが発熱して溶断する。さらに、溶断部852E周辺に発生したアークは、溶断部852Eの周囲に充填されている消弧材QEによって素早く効果的に消弧されるのである。このように、異常電流が比較的大電流の場合は、事故電流をヒューズ機能回路部800Eの溶断部852Eに誘導して安全に遮断し、電気回路に過電流が流れるのを防止している。
次に、図28に示すように、切断片420Eを切断した後、第一移動体500Eは引き続き、収容空間302E内を第一端部320Eから第二端部330Eへ移動する。すると、第一移動体500Eが第二移動体600Eに当接して、第一移動体500Eは第二移動体600Eを第二端部330E側へ強く押し出すのである。すると、第二移動体600Eの下端部650Eが、ヒューズ機能回路部800Eの接続部810Eに強く当接して第二端部330E側へ押し出す。その押圧力によって、ヒューズ機能回路部800Eの接続部810Eは下方へ強く押し下げられて切断され、両側の基部片830Eは物理的に切断された状態となる。
一方で、異常電流が比較的低電流の場合であっても、図27に示すように、切断片420Eが切断された際、電気回路を流れている事故電流I2Eが、基部片830Eを介してヒューズ部850Eの溶断部852Eへと誘導されている。そのため、分断された切断片420Eと基部片430Eとの間にアークが発生することを防止できるのである。
ただ、ヒューズ機能回路部800Eの溶断部852Eへ誘導された事故電流I2Eが比較的低電流域に属する場合は、ヒューズ機能回路部800Eの溶断部852Eが溶断せず電流を遮断できない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかり、電気回路に流れた過電流を即座に遮断できない場合がある。
しかしながら、図28に示すように、第一移動体500Eによって押し出された第二移動体600Eが、ヒューズ機能回路部800Eの接続部810Eを切断する。そのため、溶断部852Eが溶断しない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかる場合であっても、ヒューズ機能回路部800Eを介して通電した状態が即座に遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。
以上より、本願発明の電気回路遮断装置VEによれば、比較的低電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図27に示すように、第一移動体500Eによって被切断部400Eの切断片420Eを切断した後、図28に示すように、第二移動体600Eによって、ヒューズ機能回路部800Eの接続部810Eを切断して、電気回路に過電流が流れるのを防止している。一方で、比較的大電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図27に示すように、第一移動体500Eによって被切断部400Eの切断片420Eを切断した際に、事故電流をヒューズ機能回路部800Eの溶断部852Eに誘導して安全に遮断し、電気回路に過電流が流れるのを防止している。このように、本願発明の電気回路遮断装置VEによれば、比較的高電流だけでなく、比較的低電流までの広い範囲の電流域で、速断性を備えているのである。
また、本願発明の電気回路遮断装置VEでは、図27及び図28に示すように、ヒューズ機能回路部800Eの接続部810Eの切断箇所間の長さL2Eは、被切断部400Eの切断片420Eと各基部片430Eとの切断箇所C1E間の長さL3Eよりも短くなっている。また、ヒューズ機能回路部800Eの接続部810Eの切断箇所間の長さL2Eは、被切断部400Eの切断片420Eと各基部片430Eとの切断箇所C1E間の長さL3Eと等しくてもよい。このように、第二移動体600Eによって切断した接続部810Eの切断箇所間の長さL2Eは、第一移動体500Eによって切断片420Eを切断する切断長さL3E以下、すなわち、長さL2E≦長さL3Eの関係であれば、第一移動体500Eによって切断片420Eを切断した際の第一移動体500Eの動力は、切断長さの短い又は等しい第二移動体600Eへと集約又は減衰しないように効果的に伝えられ、ヒューズ機能回路部800Eの接続部810Eを素早く確実に切断することが出来るのである。そして、動力源PEの動力を効率的に伝達できることから、火薬量を減らすなどして動力源PEを小さくすることができ、ハウジング301Eの小型化及び軽量化に寄与するのである。
また、本願発明の電気回路遮断装置VEでは、図4に示したのと同様に、第一移動体500Eが切断片420Eを切断する際に、第一移動体500Eが切断片420Eに接触して押圧力を加える部分の面積は、S1Eとなっている。また、図28に示すように、第二移動体600Eがヒューズ機能回路部800Eの接続部810Eを切断する際に、接続部810Eを切断する部分の面積は、S2Eとなっている。そして、第二移動体600Eによってヒューズ機能回路部800Eの接続部810Eを切断する面積S2Eは、第一移動体500Eによって切断片420Eを切断する面積S1Eよりも小さい。または、第二移動体600Eによってヒューズ機能回路部800Eの接続部810Eを切断する面積S2Eは、第一移動体500Eによって切断片420Eを切断する際の面積S1Eと等しくてもよい。このように、第二移動体600Eによってヒューズ機能回路部800Eの接続部810Eを切断する面積S2Eは、第一移動体500Eによって切断片420Eを切断する面積S1E以下、すなわち、面積S2E≦面積S1Eの関係であれば、第一移動体500Eによって切断片420Eを切断した際の第一移動体500Eの動力は、第二移動体600Eの切断面積が小さい又は等しい切断箇所へと集約又は減衰しないように効果的に伝えられ、ヒューズ機能回路部800Eの接続部810Eを素早く確実に切断することが出来るのである。そして、動力源PEの動力を効率的に伝達できることから、火薬量を減らすなどして動力源PEを小さくすることができ、ハウジング301Eの小型化及び軽量化に寄与するのである。
なお、本願発明の電気回路遮断装置VEは、長さL2E≦長さL3Eの関係、及び面積S2E≦面積S1Eの関係が同時に成立するように構成されているが、これに限定されず、長さL2E≦長さL3Eの関係、又は面積S2E≦面積S1Eの関係の一方のみが成立するように構成されてもよい。また、本願発明の電気回路遮断装置VEは、ヒューズ部850Eを水平方向へ寝かせるように設けているが、これに限定されず、ヒューズ部850Eを上下方向へ立てて配置するなど、任意の位置姿勢であってもよい。また、本願発明の電気回路遮断装置VEは、ヒューズ部850Eを一つ備えているが、これに限定されず、並列又は直列に接続された2つ以上のヒューズ部850Eを備えてもよい。
<実施形態7>
では次に、実施形態7に係る本願発明の電気回路遮断装置VFについて、図29から図32を参照して説明する。また、実施形態7に係る電気回路遮断装置VFの構成は、実施形態4に係る電気回路遮断装置VCの構成と、ヒューズ機能回路部800Fの構成が異なる点及び変換機構900Fを備えた点で異なり、その他の構成は、実施形態4に係る電気回路遮断装置VCの構成と、基本的に同一なので、同一の構成については説明を省略する。なお、図29は電気回路遮断装置VFの内部構造を示すために、ハウジングを取り除いた状態の斜視図、図30は、図20と同様に、実施形態7に係る電気回路遮断装置VFが組み立てられた状態での断面図である。
図29及び図30に示すように、ヒューズ機能回路部800Fは、2つのヒューズ部850Fと、この2つのヒューズ部850Fの両側の各端部同士を電気的に接続している接続部810Fとを備えている。ヒューズ部850Fは、図20に示すヒューズ部850Cと同じ構成となっている。そして、各ヒューズ部850Fのエレメント851Fの両端は、各接続部810Fに電気的及び物理的に連結されているので、2つのヒューズ部850Fは、両側の接続部810Fによって互いに並列接続された状態となっている。また、各接続部810Fは、ヒューズ部850Fのエレメント851Fの延出方向に沿ってスライドできるように構成されており、各接続部810Fは、スライド時の力によって変形しない程度の剛性を備えた金属製の導電体となっている。また、一方の接続部810Fは、電線等の接続部材815Fによって被切断部400Fの一方の基部片430Fに電気的に接続されており、他方の接続部810Fは、電線等の接続部材815Fによって被切断部400Fの他方の基部片430Fに電気的に接続されている。そのため、ヒューズ機能回路部800Fのヒューズ部850Fは、被切断部400Fの基部片430Fに並列に接続された状態となっている。
また、第二移動体600Fの下端部650F側には、変換機構900Fが連結されている。この変換機構900Fは、2本の脚部910Fを備えており、両側の脚部910Fの先端911Fが、軸部材920Fによって第二移動体600Fの下端部650Fに回動可能に連結されている。また、各脚部910Fの末端912Fも、軸部材920Fによって接続部810Fに回動可能に連結されている。そのため、第二移動体600Fが第一端部320Fから第二端部330Fへ向かう第一方向N1へ移動すると、両側の脚部910Fは、先端911Fの軸部材920Fを中心に開くように回動して、第一方向N1に交差する第二方向N2へ向けて移動するのである。詳しくは、後述するが、両側の脚部910Fは第一方向N1に交差する第二方向N2へ向けて移動するため、脚部910Fに接続された各接続部810Fも第二方向N2へ向けて互いに離れるように移動する。そのため、ヒューズ部850Fのエレメント851Fは両側の接続部810Fによって引張されて切断されるのである。
このように、図30に示す電気回路遮断装置VFでは、図20に示すように、ヒューズ部850Cのエレメント851Cを上下に引っ張るように切断する必要はないため、図30に示すように、ヒューズ部850Fを水平方向へ寝かせるように配置できることから、ヒューズ部850Fを寝かせた分だけ、電気回路遮断装置VF全体の高さを低く抑えることが出来るのである。また、電気回路遮断装置VFのハウジング301F内の収容空間302Fと、ヒューズ機能回路部800Fのヒューズ部850Fの収容空間858Fは、ヒューズ部850Fのケーシング859Fによって互いに隔離されており、ヒューズ機能回路部800Fの消弧材QFを収容した収容空間858Fと、第一移動体500Fや第二移動体600Fを収容している収容空間302Fは、互いに隔離された別の空間となっている。つまり、第一移動体500Fや第二移動体600Fの移動範囲内に、ヒューズ機能回路部800Fの収容空間858Fが存在していないため、収容空間858F内の消弧材QFが、第一移動体500Fや第二移動体600Fに干渉することがなく、第一移動体500Fや第二移動体600Fの移動を妨げることはない。なお、図29及び図30では、変換機構900Fの構成をわかりやすく示すために、変換機構900Fを大きく図示している。
そして、図30に示すように、電気回路遮断装置VFは、保護したい電気回路内に取り付けられて利用される。具体的には、電気回路の一部に被切断部400Fの基部片430Fを接続して、被切断部400F及びヒューズ機能回路部800Fを電気回路の一部を構成するように並列接続する。そして、通常時(すなわち、異常電流が流れていない時)においては、被切断部400Fの基部片430Fと切断片420Fは切断されておらず、物理的にも電気的に接続されているので、電流I1Fが被切断部400Fの基部片430Fと切断片420Fを介して電気回路中を流れるようになっている。
では次に、図31及び図32を参照して、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合に、電気回路遮断装置VFが電気回路を遮断する様子について説明する。なお、図31は、図30に示す状態から第一移動体500Fが移動した様子を示す断面図、図32は、図31に示す状態から、第一移動体500Fが更に移動した様子を示す断面図である。
まず、図31に示すように、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合には、異常信号が動力源PFに入力され、動力源PF内の火薬が爆発する。すると、この空気圧によって、第一移動体500Fは、収容空間302F内を第二端部330Fに向けて瞬時に移動し、切断片420Fを下方へ強く押して分断する。すると、被切断部400Fの両側の基部片430Fが切断片420Fを介して通電した状態が遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。
ここで、異常電流が比較的大電流の場合は、切断片420Fを切断した後でも、基部片430Fと切断された切断片420Fとの間にアークが引き続き発生する可能性がある。しかしながら、図31に示すように、被切断部400Fの切断片420Fが切断される前から、被切断部400Fの基部片430Fとヒューズ機能回路部800Fのヒューズ部850Fは、接続部材815Fによって電気的に接続されているので、切断片420Fが切断された際には、電気回路を流れている事故電流I2Fが、接続部材815Fを介してヒューズ部850Fへと誘導されている。そのため、分断された切断片420Fと基部片430Fとの間にアークが引き続き発生することを防止できるのである。
そして、図31に示すように、ヒューズ部850Fへ誘導された事故電流I2Fにより、ヒューズ部850Fの溶断部852Fが発熱して溶断する。さらに、溶断部852F周辺に発生したアークは、溶断部852Fの周囲に充填されている消弧材QFによって素早く効果的に消弧されるのである。このように、異常電流が比較的大電流の場合は、事故電流をヒューズ機能回路部800Fの溶断部852Fに誘導して安全に遮断し、電気回路に過電流が流れるのを防止している。
次に、図32に示すように、切断片420Fを切断した後、第一移動体500Fは引き続き、収容空間302F内を第一端部320Fから第二端部330Fへ移動する。すると、第一移動体500Fは第二移動体600Fを第二端部330F側へ強く押し出すのである。そして、第二移動体600Fが第一端部320Fから第二端部330Fへ向かう第一方向N1へ移動すると、脚部910Fは、第一方向N1に交差する第二方向N2へ向けて移動する。そのため、各脚部910Fに接続された両側の接続部810Fは、第二方向N2へ向けて互いに離れるように移動する。すると、ヒューズ部850Fのエレメント851Fは、両側の接続部810Fによって引張されて、溶断部852F付近で分断されるのである。このように、変換機構900Fは、第二移動体600Fの第一方向N1への押圧力を、第二方向N2への引張力へと変換して、ヒューズ機能回路部800Fの一部を切断している。
一方で、異常電流が比較的低電流の場合であっても、図31に示すように、切断片420Fが切断された際、電気回路を流れている事故電流I2Fが、ヒューズ部850Fの溶断部852Fへと誘導されている。そのため、分断された切断片420Fと基部片430Fとの間にアークが発生することを防止できるのである。
ただ、ヒューズ機能回路部800Fの溶断部852Fへ誘導された事故電流I2Fが比較的低電流域に属する場合は、ヒューズ機能回路部800Fの溶断部852Fが溶断せず電流を遮断できない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかり、電気回路に流れた過電流を即座に遮断できない場合がある。
しかしながら、図32に示すように、第一移動体500Fによって押し出された第二移動体600Fの押圧力を受けて、変換機構900Fは、ヒューズ機能回路部800Fの一部を切断する。そのため、溶断部852Fが溶断しない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかる場合であっても、ヒューズ機能回路部800Fを介して通電した状態が即座に遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。
以上より、本願発明の電気回路遮断装置VFによれば、比較的低電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図31に示すように、第一移動体500Fによって被切断部400Fの切断片420Fを切断した後、図32に示すように、第二移動体600Fの押圧力を受けた変換機構900Fによって、ヒューズ機能回路部800Fの一部を切断して、電気回路に過電流が流れるのを防止している。一方で、比較的大電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図31に示すように、第一移動体500Fによって被切断部400Fの切断片420Fを切断した際に、事故電流をヒューズ機能回路部800Fの溶断部852Fに誘導して安全に遮断し、電気回路に過電流が流れるのを防止している。このように、本願発明の電気回路遮断装置VFによれば、比較的高電流だけでなく、比較的低電流までの広い範囲の電流域で、速断性を備えているのである。
また、本願発明の電気回路遮断装置VFでは、図31及び図32に示すように、ヒューズ機能回路部800Fのヒューズ部850F内での切断箇所間の長さL2Fは、被切断部400Fの切断片420Fと各基部片430Fとの切断箇所C1F間の長さL3Fよりも短くなっている。また、ヒューズ機能回路部800Fのヒューズ部850F内での切断箇所間の長さL2Fは、被切断部400Fの切断片420Fと各基部片430Fとの切断箇所C1F間の長さL3Fと等しくてもよい。このように、第二移動体600Fの押圧力を受けた変換機構900Fによって切断したヒューズ部850F内での切断箇所間の長さL2Fは、第一移動体500Fによって切断片420Fを切断する切断長さL3F以下、すなわち、長さL2F≦長さL3Fの関係であれば、第一移動体500Fによって切断片420Fを切断した際の第一移動体500Fの動力は、切断長さの短い又は等しい変換機構900Fへと集約又は減衰しないように効果的に伝えられ、ヒューズ機能回路部800Fの一部を素早く確実に切断することが出来るのである。そして、動力源PFの動力を効率的に伝達できることから、火薬量を減らすなどして動力源PFを小さくすることができ、ハウジング301Fの小型化及び軽量化に寄与するのである。
また同様に、本願発明の電気回路遮断装置VFでは、図29及び図31に示すように、ヒューズ機能回路部800Fの両側のヒューズ部850Fの切断箇所間の長さL4Fは、被切断部400Fの切断片420Fと各基部片430Fとの切断箇所C1F間の長さL3Fよりも短くなっている。また、ヒューズ機能回路部800Fの両側のヒューズ部850Fの切断箇所間の長さL4Fは、被切断部400Fの切断片420Fと各基部片430Fとの切断箇所C1F間の長さL3Fと等しくてもよい。このように、第二移動体600Fの押圧力を受けた変換機構900Fによって切断した、両側のヒューズ部850Fの切断箇所間の長さL4Fは、第一移動体500Fによって切断片420Fを切断する切断長さL3F以下、すなわち、L4F≦長さL3Fの関係であれば、第一移動体500Fによって切断片420Fを切断した際の第一移動体500Fの動力は、切断長さの短い又は等しい変換機構900Fへと集約又は減衰しないように効果的に伝えられ、ヒューズ機能回路部800Fの一部を素早く確実に切断することが出来るのである。そして、動力源PFの動力を効率的に伝達できることから、火薬量を減らすなどして動力源PFを小さくすることができ、ハウジング301Fの小型化及び軽量化に寄与するのである。
また、本願発明の電気回路遮断装置VFでは、図4に示したのと同様に、第一移動体500Fが切断片420Fを切断する際に、第一移動体500Fが切断片420Fに接触して押圧力を加える部分の面積は、S1Fとなっている。また、図32に示すように、第二移動体600Fの押圧力を受けた変換機構900Fがヒューズ機能回路部800Fの一部を切断する部分の面積の合計は、S2Fとなっている。そして、変換機構900Fによってヒューズ機能回路部800Fの一部を切断する面積S2Fは、第一移動体500Fによって切断片420Fを切断する面積S1Fよりも小さい。または、変換機構900Fによってヒューズ機能回路部800Fの一部を切断する面積S2Fは、第一移動体500Fによって切断片420Fを切断する際の面積S1Fと等しくてもよい。このように、変換機構900Fによってヒューズ機能回路部800Fの一部を切断する面積S2Fは、第一移動体500Fによって切断片420Fを切断する際の面積S1F以下、すなわち、面積S2F≦面積S1Fの関係であれば、第一移動体500Fによって切断片420Fを切断した際の第一移動体500Fの動力は、第二移動体600Fの押圧力を受けた変換機構900Fの切断面積が小さい又は等しい切断箇所へと集約又は減衰しないように効果的に伝えられ、ヒューズ機能回路部800Fの一部を素早く確実に切断することが出来るのである。そして、動力源PFの動力を効率的に伝達できることから、火薬量を減らすなどして動力源PFを小さくすることができ、ハウジング301Fの小型化及び軽量化に寄与するのである。
なお、本願発明の電気回路遮断装置VFは、長さL2F≦長さL3Fの関係、L4F≦長さL3Fの関係、及び面積S2F≦面積S1Fの関係が同時に成立するように構成されているが、これに限定されず、長さL2F≦長さL3Fの関係、L4F≦長さL3Fの関係、及び面積S2F≦面積S1Fの少なくとも一つのみが成立するように構成されてもよい。また、本願発明の電気回路遮断装置VFでは、ヒューズ機能回路部800Fのヒューズ部850Fが合計2つ設けられているが、これに限定されず、ヒューズ部850Fを1つ、又は3つ以上設けてもよい。また、変換機構900Fは2本の脚部910Fを備えた構成であるが、これに限定されず、変換機構900Fは、第二移動体600Fの第一方向N1への押圧力を、第二方向N2への引張力へと変換して、ヒューズ機能回路部800Fの一部を切断できるのであれば、任意の構成であってもよい。
<実施形態8>
では次に、実施形態8に係る本願発明の電気回路遮断装置VGについて、図33及び図34を参照して説明する。また、実施形態8に係る本願発明の電気回路遮断装置VGの構成は、主に第二移動体600G及びヒューズ機能回路部800Gの構成を除き、実施形態4に係る電気回路遮断装置VCの構成と基本的に同一なので、同一の構成については説明を省略する。なお、図33は、電気回路遮断装置VGを分解して示した全体斜視図、図34(a)は、図33のL―L断面図、図34(b)は、図33のM―M断面図である。
図33及び図34に示すように、下側ハウジング100Gは、合成樹脂等の絶縁体で形成された略四角柱体であり、内部に中空状の下側収容部110Gを備える。この下側収容部110Gは、第一移動体500Gを収容できるように構成されている。また、下側ハウジング100Gは、下側収容部110Gに隣接するように、中空状の下側収容部160Gを備える。この下側収容部160Gは、第二移動体600Gを収容できるように構成されている。
また、下側ハウジング100Gの上面120Gの一部には、被切断部400Gの基部片430Gを載置できるように、基部片430Gの形状に合わせて窪んだ載置部113Gを備える。この載置部113Gは、下側収容部110Gの両側に相対する様に配置されており、載置部113Gは、直線状に延びる被切断部400Gを両側で支えることになる。
また、ヒューズ機能回路部800Gが、被切断部400Gと、同一平面上に並列に接続されている。このヒューズ機能回路部800Gは、被切断部400Gと電気的に接続するために、全体が銅などの金属製の導電体となっている。そして、ヒューズ機能回路部800Gは、被切断部400Gの一方の基部片430Gと直接連結された基部片830Gと、被切断部400Gの他方の基部片430Gとヒューズ部850Gを介して連結される基部片830Gとを備える。さらに、両側の基部片830Gの間に位置する接続部810Gを備える。
また、下側ハウジング100Gの上面120Gの一部には、ヒューズ機能回路部800Gの基部片830Gを載置できるように、基部片830Gの形状に合わせて窪んだ載置部115Gを備える。この載置部115Gは、下側収容部160Gの両側に相対する様に配置されており、載置部115Gは、直線状に延びるヒューズ機能回路部800Gを両側で支えることになる。
また、上側ハウジング200Gは、合成樹脂等の絶縁体で形成された略四角柱体であり、下側ハウジング100Gと対をなしてハウジング301Gを構成するものである。そして、内部に中空状の上側収容部210Gを備え、この上側収容部210Gは、第一移動体500Gを収容できるように構成されている。また、上側ハウジング200Gは、上側収容部210Gに隣接するように、中空状の上側収容部170Gを備える。この上側収容部170Gは、第二移動体600Gを収容できるように構成されている。
また、上側ハウジング200Gの下面230Gの一部には、被切断部400Gの基部片430Gを挿通できるように、基部片430Gの形状に合わせて窪んだ挿通部213Gを備える。この挿通部213Gは、上側収容部210Gの両側に相対する様に配置されると共に、下側ハウジング100Gの載置部113Gと対応する位置に配置されている。また、上側ハウジング200Gの下面230Gの一部には、ヒューズ機能回路部800Gの基部片830Gを配置できるように、基部片830Gの形状に合わせて窪んだ挿通部215Gを備える。この挿通部215Gは、上側収容部170Gの両側に相対する様に配置されており、挿通部215Gは、直線状に延びるヒューズ機能回路部800Gを両側で支えることになる。
また、ヒューズ機能回路部800Gはヒューズ部850Gを備えており、このヒューズ部850Gは、図20に示すヒューズ部850Cと同じ構成となっている。そして、ヒューズ部850Gの一方の端子855Gは、被切断部400Gの基部片430Gに接続され、ヒューズ部850Gの他方の端子855Gは、接続部810Gに連続した基部片830Gに接続されている。そのため、ヒューズ機能回路部800Gは、ヒューズ部850Gを介して被切断部400Gと並列接続された状態となっている。また、第一移動体500Gは、第二移動体600Gの上端側へ向けて延出する押圧部590Gを備える。この押圧部590Gは、第二移動体600Gの上端側に当接して、第二移動体600Gを下方へ押圧できるように構成されている。
また、図34に示すように、電気回路遮断装置VGは、保護したい電気回路内に取り付けられて利用される。具体的には、電気回路の一部に被切断部400Gの基部片430Gを接続して、被切断部400Gを電気回路の一部を構成するようにする。また、通常時においては、被切断部400Gの基部片430Gと切断片420Gは切断されておらず、物理的にも電気的に接続されているので、電流I1Gが被切断部400Gを介して電気回路中を流れるようになっている。
では次に、図35及び図36を参照して、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合に、電気回路遮断装置VGが電気回路を遮断する様子について説明する。なお、図35は、図34(a)に示す状態から第一移動体500Gが移動した様子を示す断面図、図36は、図35に示す状態から、第一移動体500Gが更に移動した様子を示す断面図である。
まず、図35に示すように、電気回路に過電流が流れる等の異常が検知された場合には、異常信号が動力源PGに入力され、動力源PG内の火薬が爆発する。すると、この空気圧によって、第一移動体500Gは、収容空間302G内を第二端部330Gに向けて瞬時に移動し、切断片420Gを下方へ強く押して分断する。すると、被切断部400Gの両側の基部片430Gが切断片420Gを介して通電した状態が遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。なお、第一移動体500Gの押圧部590Gが第二端部330Gへ向けて移動するため、押圧部590Gに押圧されて、第二移動体600Gも収容部380G内を第二端部330Gに向けて移動する。ただ、図35に示す状態では、第二移動体600Gは、ヒューズ機能回路部800Gの接続部810Gを切断していない。また、収容部380Gは、上側ハウジング200Gの上側収容部170Gと下側ハウジング100Gの下側収容部160Gから構成されている。
ここで、異常電流が比較的大電流の場合は、切断片420Gを切断した後でも、基部片430Gと切断された切断片420Gとの間にアークが引き続き発生する可能性がある。しかしながら、図35に示すように、被切断部400Gの切断片420Gが切断される前から、被切断部400Gの基部片430Gとヒューズ機能回路部800Gのヒューズ部850Gは電気的に接続されているので、切断片420Gが切断された際には、図34(a)に示すように、電気回路を流れている事故電流I2Gが、ヒューズ機能回路部800Gのヒューズ部850Gへと誘導されている。そのため、分断された切断片420Gと基部片430Gとの間にアークが引き続き発生することを防止できるのである。
そして、図34(a)に示すように、ヒューズ部850Gへ誘導された事故電流I2Gにより、ヒューズ部850Gの溶断部852Gが発熱して溶断する。さらに、溶断部852Gの溶断時には、電気回路に接続されている両側の端子855Gにかかる電圧によって、溶断部852G周辺にはアークが発生するが、そのアークは、溶断部852Gの周囲に充填されている消弧材QGによって素早く効果的に消弧され、電気回路は遮断されるのである。
次に、図36に示すように、切断片420Gを切断した後、第一移動体500Gは引き続き、収容空間302G内を第一端部320Gから第二端部330Gへ移動する。すると、第一移動体500Gの押圧部590Gは、第二移動体600Gを第二端部330G側へより強く押し出す。そして、その押圧力を受けた第二移動体600Gによって、ヒューズ機能回路部800Gの接続部810Gは下方へ強く押し下げられて切断され、両側の基部片830Gは物理的に切断された状態となる。
一方で、異常電流が比較的低電流の場合であっても、図35に示すように、切断片420Gが切断された際、電気回路を流れている事故電流I2Gが、ヒューズ機能回路部800Gのヒューズ部850Gの溶断部852Gへと誘導されている。そのため、分断された切断片420Gと基部片430Gとの間にアークが発生することを防止できるのである。
ただ、ヒューズ機能回路部800Gの溶断部852Gへ誘導された事故電流I2Gが比較的低電流域に属する場合は、ヒューズ機能回路部800Gの溶断部852Gが溶断せず電流を遮断できない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかり、電気回路に流れた過電流を即座に遮断できない場合がある。
しかしながら、図36に示すように、第一移動体500Gの押圧部590Gによって押し出された第二移動体600Gが、ヒューズ機能回路部800Gの接続部810Gを切断する。そのため、溶断部852Gが溶断しない、又は、遮断するまでに比較的長い時間がかかる場合であっても、ヒューズ機能回路部800Gを介して通電した状態が即座に遮断されて、電気回路に過電流が流れるのを防止できるのである。
以上より、本願発明の電気回路遮断装置VGによれば、比較的低電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図35に示すように、第一移動体500Gによって被切断部400Gの切断片420Gを切断した後、図36に示すように、第二移動体600Gによって、ヒューズ機能回路部800Gの接続部810Gを切断して、電気回路に過電流が流れるのを防止している。一方で、比較的大電流域に属する過電流が電気回路に流れた場合は、図35に示すように、第一移動体500Gによって被切断部400Gの切断片420Gを切断した際に、事故電流をヒューズ機能回路部800Gの溶断部852Gに誘導して安全に遮断し、電気回路に過電流が流れるのを防止している。このように、本願発明の電気回路遮断装置VGによれば、比較的高電流だけでなく、比較的低電流までの広い範囲の電流域で、速断性を備えているのである。
また、本願発明の電気回路遮断装置VGでは、図34(a)に示すように、ヒューズ機能回路部800Gの接続部810Gの切断箇所間の長さL2Gは、被切断部400Gの切断片420Gと各基部片430Gとの切断箇所C1G間の長さL3Gよりも短くなっている。また、ヒューズ機能回路部800Gの接続部810Gの切断箇所間の長さL2Gは、被切断部400Gの切断片420Gと各基部片430Gとの切断箇所C1G間の長さL3Gと等しくてもよい。このように、第二移動体600Gによって切断する接続部810Gの切断長さL2Gは、第一移動体500Gによって切断片420Gを切断する切断長さL3G以下、すなわち、長さL2G≦長さL3Gの関係であれば、第一移動体500Gによって切断片420Gを切断した際の第一移動体500Gの動力は、切断長さの短い又は等しい第二移動体600Gへと集約又は減衰しないように効果的に伝えられ、ヒューズ機能回路部800Gの接続部810Gを素早く確実に切断することが出来るのである。そして、動力源PGの動力を効率的に伝達できることから、火薬量を減らすなどして動力源PGを小さくすることができ、ハウジング301Gの小型化及び軽量化に寄与するのである。
また、本願発明の電気回路遮断装置VGでは、図34(a)に示すように、第一移動体500Gが切断片420Gを切断する際に、第一移動体500Gが切断片420Gに接触して押圧力を加える部分の面積は、S1Gとなっている。また、図34(a)に示すように、第二移動体600Gがヒューズ機能回路部800Gの接続部810Gを切断する際に、接続部810Gを切断する部分の面積は、S2Gとなっている。そして、第二移動体600Gによってヒューズ機能回路部800Gの接続部810Gを切断する面積S2Gは、第一移動体500Gによって切断片420Gを切断する面積S1Gよりも小さい。または、第二移動体600Gによってヒューズ機能回路部800Gの接続部810Gを切断する面積S2Gは、第一移動体500Gによって切断片420Gを切断する面積S1Gと等しくてもよい。このように、第二移動体600Gによってヒューズ機能回路部800Gの接続部810Gを切断する面積S2Gは、第一移動体500Gによって切断片420Gを切断する面積S1G以下、すなわち、面積S2G≦面積S1Gの関係であれば、第一移動体500Gによって切断片420Gを切断した際の第一移動体500Gの動力は、第二移動体600Gの切断面積が小さい又は等しい切断箇所へと集約又は減衰しないように効果的に伝えられ、ヒューズ機能回路部800Gの接続部810Gを素早く確実に切断することが出来るのである。そして、動力源PGの動力を効率的に伝達できることから、火薬量を減らすなどして動力源PGを小さくすることができ、ハウジング301Gの小型化及び軽量化に寄与するのである。
なお、本願発明の電気回路遮断装置VGは、長さL2G≦長さL3Gの関係、及び面積S2G≦面積S1Gの関係が同時に成立するように構成されているが、これに限定されず、長さL2G≦長さL3Gの関係、又は面積S2G≦面積S1Gの関係の一方のみが成立するように構成されてもよい。また、本願発明の電気回路遮断装置VGでは、被切断部400Gとヒューズ機能回路部800Gを横並びに配置しているので、被切断部400Gとヒューズ機能回路部800Gを上下方向に並べている場合と比較して(例えば、図20など参照)、電気回路遮断装置VGの高さを低くできる。
また、本願発明の電気回路遮断装置は、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。