JP7486735B2 - マルチビームアンテナ及びマルチビームアンテナの形成方法 - Google Patents
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Description
このようなマルチビームアンテナでは、利得が高く、かつ方位識別性の高い先鋭なアンテナ放射ビームを形成するために、パラボラ反射鏡や誘電体を用いた電波レンズが用いられる。
しかしながら、特許文献1のアンテナでは、誘電体レンズの周囲に位置するアンテナ素子において、アンテナ素子間の相互結合の影響により、アンテナ放射パタ-ンの劣化が生じるという問題がある。
特許文献2に示されるアンテナでは、上部金属板に対し、給電部を中心とする同心円状4段からなる曲線それぞれに沿って、順次等比級数にて増加する多数のヘリカルアンテナを配置する際に、半径方向に隣接する同心円上のヘリカルアンテナを半径方向直線上より左右に位置ずれさせて配置構成する。
これにより、特許文献2のアンテナでは、給電部と同心円外周の放射素子との間に内周の放射素子による影ができることを防止し、等分岐給電を可能とする。
しかしながら、特許文献2のアンテナは平面アンテナに関する技術であり、特許文献1に示される三次元構造のマルチビームレンズアンテナにそのまま適用することができないという問題がある。
この電波レンズは、球形の誘電体から構成され、かつその半径に従って連続的に誘電率を変化させた構造とすることで電波の収束効果を有するものであるが、誘電体の誘電率を変化させるための特別な調整が必要となるという問題がある。
例えば、上記マルチビームアンテナでは、任意の放射素子から放射された電波のみが誘電体に照射される場合に、誘電体により電波が収束され、先鋭なアンテナ放射ビームが形成される。
しかしながら、上記マルチビームアンテナでは、隣接する放射素子が存在する場合に、隣接する放射素子の相互結合の影響を受ける、すなわち、隣接する放射素子に電波が入り込み、隣接する放射素子から電波が再放射される。
従って、任意の放射素子によって放射されるアンテナ放射ビームは、任意の放射素子と相互結合した隣接の放射素子の両方によって形成されるアンテナ放射ビームの合成となる。
このため、上記マルチビームアンテナでは、本来意図していた任意の放射素子のみから形成されるアンテナ放射ビームと異なる形状となり、その結果、放射素子が多い場合に、両側の隣接の放射素子、及び両側のさらに隣の放射素子の影響を受けることになる。
しかしながら、前述した特許文献1及び2には、三次元構造のマルチビームアンテナにおいて、放射素子同士の相互結合により生じるアンテナ放射パタ-ンの劣化を緩和するための有効な構造が提供されていない。
本発明の第1態様に示されるマルチビームアンテナでは、円板状の誘電体と、前記誘電体の円形外周に沿うように配置されて給電部が独立して設けられた複数の放射素子と、前記複数の放射素子を一括して取付ける一定半径を有する円弧状の取付具と、前記誘電体の上面及び下面にそれぞれ配置される導体反射板と、を有し、前記誘電体の中心と前記放射素子の取付具の円弧中心とは、前記誘電体の半径方向に沿う異なる点に配置されることを特徴とする。
なお、これら図において、図1(A)は正面図、図1(B)は図1(A)の平面図を示している。
誘電体1は、例えば円板状又は円筒状に形成された均一の誘電率を有する誘電体から成る。
放射素子2は誘電体1の円形外周に沿うように複数配置されかつその給電部2Aが独立して設けられたものである。
取付具3は誘電体1の外方に位置し、かつ一定半径を有する円弧状の部材により構成されるものであって、複数の放射素子2を一括して保持する。
導体反射板4,5は誘電体1の上面及び下面にそれぞれ配置されている。
これにより、上記マルチビームアンテナ100では、少なくとも互いに隣接する2つの放射素子2からの放射電波が同相とならず、これら放射素子2の相互結合による影響を緩和することができる。
その結果、本発明に係るマルチビームアンテナ100の信頼性を向上させることが可能となる。
本発明の実施形態について、図2~図6を参照して説明する。
図2は本発明の実施形態に係るマルチビームアンテナ101の斜視図であり、図3は図2の平面図であり、水平面を示している。
導体反射板12及び13は、例えば金属等の導体から成り、誘電体11の端面より外側に、曲面状又は直線状に開放した構造となっている。
取付具16は、一定の曲率半径を有する円弧状に形成されて、複数の放射素子14を所定の間隔を固定するための部材である。
また、誘電体11には、基準穴とともに、誘電率を局所的に制御するために複数の調整穴を設けても良い。また、誘電体11の外周に偏波変換板を設けるようにしても良い。
ここで、放射素子14の取付具16では、円弧中心a2からの半径R2が、誘電体11の半径R1に対して以下の数1のような関係にあり、その円弧中心a2を誘電体11の中心a1と同一とせず、誘電体11の中心a1に対して距離dだけシフトさせている。
[数1]
R1<R2
図4(A)は比較例として示したマルチビームアンテナ200であり、図4(B)は本実施形態に係るマルチビームアンテナ101である。
なお、これら図4(A)及び(B)の例では、隣接する3つの放射素子14(符号14A~14Cで示す)について誘電体11との位置関係を示している。また、比較例となるマルチビームアンテナ200において、マルチビームアンテナ101の構成と対応する箇所に同一符号を付している。
なお、図4(A)及び(B)に示す平面図では、マルチビームアンテナ101の水平面(x-y平面)における誘電体11と放射素子14との位置関係を示している。
その結果、取付具16上に保持された複数の放射素子14A~14Cは、誘電体11の中心aまでの各通路長L1~L3が以下の数2のような関係になる。
[数2]
L1=L2=L3
このとき、放射素子14(放射素子14A~14C)は、それら半径R2の円弧中心a2が誘電体1の中心a1から、半径方向(矢印B方向)に沿い距離dだけ図中左にずれているため、誘電体11の中心a1までの各通路長L1~L3が以下の数3のような関係になる。
[数3]
L1≠L2≠L3
本発明の実施形態に係る計算例について図5及び図6を参照して説明する。
図5は計算例に使用したマルチビームアンテナ101の寸法例を示す図であって、前述したように、「R1」は誘電体11の半径、「R2」は放射素子14(実験例では放射素子A~I)の設置列で描かれる半径をそれぞれ示している。
また、「θ´」は半径R2上でかつ高さhに位置する放射素子14において、誘電体11の中心a1を中心点としたx軸とのなす角度を示している。
また、「θ」は、高さhに位置する放射素子14が、誘電体11の中心a1と同心円をなす半径R2上に位置したと仮定した場合における、誘電体11の中心a1を中心点としたx軸とのなす角度を示している。
また、「d」は誘電体11の半径R1と、放射素子14の半径R2とのx軸方向に沿う径方向のずれ量を示している。
この例で互いに隣接する3つの放射素子14(放射素子A~C:14A~14C)について、中間の放射素子14Bに給電した場合における、隣接する放射素子14Aと放射素子14Cの相互結合による影響を考える。
これら放射素子14Aと放射素子14Bから放射される電波のa1での通路長差は、図6の表のLの値の差をみればよいから、315.58mm-310.48mm=5.1mmであり、放射素子14Bと放射素子14Cとの通路長差は、310.48mm-304.11mm=6.37mmである。これらを、例えば25GHzの周波数で使用する場合には、波長は「12mm」となり、波長から換算される位相関係は、5.1mm/12mm×360度=153度、6.37mm/12mm×360度=191度となり、それぞれの位相関係は概ね180度の逆相と考えることができる。
よって、本例のマルチビームアンテナ101では、相互結合による放射パターンへの劣化の影響は大きく緩和されることがわかる。
その結果、本実施形態に係るマルチビームアンテナ101の信頼性を向上させることが可能となる。
また、上記マルチビームアンテナ101の活用例として、第5世代移動通信における無線通信電波の到来方向の推定にも使用可能である。
2 放射素子
2A 給電部
3 取付具
4 導体反射板
5 導体反射板
11 誘電体
12 導体反射板
13 導体反射板
14(14A、14B、14C) 放射素子
15 給電部
16 取付具
100 マルチビームアンテナ
101 マルチビームアンテナ
a1 誘電体の中心
a2 放射素子の円弧中心
Claims (8)
- 円板状の誘電体と、
前記誘電体の円形外周に沿うように配置されて給電部が独立して設けられた複数の放射素子と、
前記複数の放射素子を一括して取り付ける一定半径を有する円弧状の取付部と、
前記誘電体の上面及び下面にそれぞれ配置される導体反射板と、を有し、
前記誘電体の中心と前記放射素子の取付具の円弧中心とは、前記誘電体の半径方向に沿う異なる点に配置され、
前記放射素子が前記誘電体へ電波を照射する、
ことを特徴とするマルチビームアンテナ。 - 前記放射素子のそれぞれと前記誘電体の中心点とを結ぶ長さが、前記放射素子毎に異なることを特徴とする請求項1に記載のマルチビームアンテナ。
- 前記円板状の誘電体は均一の誘電率を有することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載のマルチビームアンテナ。
- 前記円板状の誘電体の中心には、製造を容易にするための位置合わせ用の基準穴を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のマルチビームアンテナ。
- 前記円板状の誘電体には、誘電率を制御するために複数の調整穴を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のマルチビームアンテナ。
- 前記放射素子としてホーンアンテナが用いられることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のマルチビームアンテナ。
- 円板状の誘電体の上面及び下面のそれぞれに導体反射板を設けるとともに、該円板状の誘電体の円形外周に沿う円弧状の取付具に、給電部を独立させて、前記誘電体へ電波を照射する複数の放射素子を設置した上で、
前記誘電体の中心と前記放射素子の取付具の円弧中心とを、前記誘電体の半径方向に沿う異なる点に配置することを特徴とするマルチビームアンテナの形成方法。 - 前記誘電体と前記放射素子との中心とのシフト距離の値を最低使用波長の概ね0.3波長としたことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のマルチビームアンテナ。
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