(第1実施形態)
図1~図8を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明に係る冷凍サイクル装置10を、電動モータから走行用の駆動力を得る電気自動車に搭載された車両用空調装置1に適用している。この車両用空調装置1は、空調対象空間である車室内の空調を行うだけでなく、バッテリ80の温度を調整する機能を有している。このため、車両用空調装置1は、バッテリ温度調整機能付きの空調装置と呼ぶこともできる。
バッテリ80は、電動モータ等の車載機器へ供給される電力を蓄える二次電池である。本実施形態のバッテリ80は、リチウムイオン電池である。バッテリ80は、複数の電池セル81を積層配置し、これらの電池セル81を電気的に直列あるいは並列に接続することによって形成された、いわゆる組電池である。
この種のバッテリは、低温になると出力が低下しやすく、高温になると劣化が進行しやすい。このため、バッテリの温度は、バッテリの充放電容量を充分に活用することができる適切な温度範囲内(本実施形態では、15℃以上、かつ、55℃以下)に維持されている必要がある。
そこで、車両用空調装置1では、冷凍サイクル装置10によって生成された冷熱によってバッテリ80を冷却することができるようになっている。従って、本実施形態の冷凍サイクル装置10における空気とは異なる冷却対象物は、バッテリ80である。
車両用空調装置1は、図1の全体構成図に示すように、冷凍サイクル装置10、室内空調ユニット30、高温側熱媒体回路40、低温側熱媒体回路50等を備えている。
冷凍サイクル装置10は、車室内の空調を行うために、車室内へ送風される空気を冷却する機能、および高温側熱媒体回路40を循環する高温側熱媒体を加熱する機能を果たす。さらに、冷凍サイクル装置10は、バッテリ80を冷却するために、低温側熱媒体回路50を循環する低温側熱媒体を冷却する機能を果たす。
冷凍サイクル装置10は、車室内の空調を行うために、様々な運転モード用の冷媒回路を切替可能に構成されている。例えば、冷房モードの冷媒回路、除湿暖房モードの冷媒回路、暖房モードの冷媒回路等を切替可能に構成されている。さらに、冷凍サイクル装置10は、空調用の各運転モードにおいて、バッテリ80を冷却する運転モードとバッテリ80の冷却を行わない運転モードとを切り替えることができる。
また、冷凍サイクル装置10では、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)を採用しており、圧縮機11から吐出された吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されている。冷凍機油の一部は、冷媒とともにサイクルを循環している。
冷凍サイクル装置10の構成機器のうち、圧縮機11は、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機11は、車室の前方に配置されて電動モータ等が収容される駆動装置室内に配置されている。圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、サイクル制御装置60から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。
圧縮機11の吐出口には、水冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側が接続されている。水冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を流通させる冷媒通路と、高温側熱媒体回路40を循環する高温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。そして、水冷媒熱交換器12は、冷媒通路を流通する高圧冷媒と、水通路を流通する高温側熱媒体とを熱交換させて、高温側熱媒体を加熱する加熱用の熱交換器である。
水冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口には、互いに連通する3つの流入出口を有する第1三方継手13aの流入口側が接続されている。このような三方継手としては、複数の配管を接合して形成されたものや、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されたものを採用することができる。
さらに、冷凍サイクル装置10は、第2~第6三方継手13b~13fを備えている。これらの第2~第6三方継手13b~13fの基本的構成は、第1三方継手13aと同様である。
第1三方継手13aの一方の流出口には、暖房用膨張弁14aの入口側が接続されている。第1三方継手13aの他方の流出口には、バイパス通路22aを介して、第2三方継手13bの一方の流入口側が接続されている。バイパス通路22aには、除湿用開閉弁15aが配置されている。
除湿用開閉弁15aは、第1三方継手13aの他方の流出口側と第2三方継手13bの一方の流入口側とを接続する冷媒通路を開閉する電磁弁である。さらに、冷凍サイクル装置10は、暖房用開閉弁15bを備えている。暖房用開閉弁15bの基本的構成は、除湿用開閉弁15aと同様である。
除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bは、冷媒通路を開閉することで、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bは、サイクルの冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部である。除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bは、サイクル制御装置60から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
暖房用膨張弁14aは、少なくとも車室内の暖房を行う運転モード時に、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した高圧冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量(質量流量)を調整する暖房用減圧部である。暖房用膨張弁14aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
さらに、冷凍サイクル装置10は、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cを備えている。冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cの基本的構成は、暖房用膨張弁14aと同様である。
暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cは、弁開度を全開にすることで流量調整作用および冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能、および弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。
そして、この全開機能および全閉機能によって、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cは、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。
従って、本実施形態の暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cは、冷媒回路切替部としての機能も兼ね備えている。暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cは、サイクル制御装置60から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
暖房用膨張弁14aの出口には、室外熱交換器16の冷媒入口側が接続されている。室外熱交換器16は、暖房用膨張弁14aから流出した冷媒と図示しない冷却ファンにより送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器16は、駆動装置室内の前方側に配置されている。このため、車両走行時には、室外熱交換器16に走行風を当てることができる。
室外熱交換器16の冷媒出口には、第3三方継手13cの流入口側が接続されている。第3三方継手13cの一方の流出口には、暖房用通路22bを介して、第4三方継手13dの一方の流入口側が接続されている。暖房用通路22bには、この冷媒通路を開閉する暖房用開閉弁15bが配置されている。
第3三方継手13cの他方の流出口には、第2三方継手13bの他方の流入口側が接続されている。第3三方継手13cの他方の流出口側と第2三方継手13bの他方の流入口側とを接続する冷媒通路には、逆止弁17が配置されている。逆止弁17は、第3三方継手13c側から第2三方継手13b側へ冷媒が流れることを許容し、第2三方継手13b側から第3三方継手13c側へ冷媒が流れることを禁止する機能を果たす。
第2三方継手13bの流出口には、第5三方継手13eの流入口側が接続されている。第5三方継手13eの一方の流出口には、冷房用膨張弁14bの入口側が接続されている。第5三方継手13eの他方の流出口には、冷却用膨張弁14cの入口側が接続されている。
冷房用膨張弁14bは、少なくとも車室内の冷房を行う運転モード時に、室外熱交換器16から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する冷房用減圧部(換言すれば空調用減圧部)である。
冷房用膨張弁14bの出口には、室内蒸発器18の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器18は、室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。室内蒸発器18は、冷房用膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒と送風機32から送風された空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、低圧冷媒に吸熱作用を発揮させることによって空気を冷却する冷却用熱交換器(換言すれば空気用蒸発部)である。室内蒸発器18の冷媒出口には、第6三方継手13fの一方の流入口側が接続されている。
冷却用膨張弁14cは、少なくともバッテリ80の冷却を行う運転モード時に、室外熱交換器16から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する冷却用減圧部である。
冷却用膨張弁14cの出口には、チラー19の冷媒通路の入口側が接続されている。チラー19は、冷却用膨張弁14cにて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路と、低温側熱媒体回路50を循環する低温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。そして、チラー19は、冷媒通路を流通する低圧冷媒と、水通路を流通する低温側熱媒体とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発部である。チラー19の冷媒通路の出口には、第6三方継手13fの他方の流入口側が接続されている。
第6三方継手13fの流出口には、蒸発圧力調整弁20の入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁20は、室内蒸発器18の着霜を抑制するために、室内蒸発器18における冷媒蒸発圧力を、予め定めた基準圧力以上に維持する機能を果たす。蒸発圧力調整弁20は、室内蒸発器18の出口側冷媒の圧力の上昇に伴って、弁開度を増加させる機械式の可変絞り機構で構成されている。
これにより、蒸発圧力調整弁20は、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度を、室内蒸発器18の着霜を抑制可能な着霜抑制温度(本実施形態では、1℃)以上に維持している。さらに、本実施形態の蒸発圧力調整弁20は、合流部である第6三方継手13fよりも冷媒流れ下流側に配置されている。このため、蒸発圧力調整弁20は、チラー19における冷媒蒸発温度についても、着霜抑制温度以上に維持している。
蒸発圧力調整弁20の出口には、第4三方継手13dの他方の流入口側が接続されている。第4三方継手13dの流出口には、アキュムレータ21の入口側が接続されている。アキュムレータ21は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰液相冷媒を蓄える気液分離器である。アキュムレータ21の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
以上の説明から明らかなように、本実施形態の第5三方継手13eは、室外熱交換器16から流出した冷媒の流れを分岐する分岐部として機能する。また、第6三方継手13fは、室内蒸発器18から流出した冷媒の流れとチラー19から流出した冷媒の流れとを合流させて、圧縮機11の吸入側へ流出させる合流部である。
そして、室内蒸発器18およびチラー19は、冷媒流れに対して互いに並列的に接続されている。さらに、バイパス通路22aは、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒を、分岐部の上流側へ導いている。暖房用通路22bは、室外熱交換器16から流出した冷媒を、圧縮機11の吸入口側へ導いている。
次に、高温側熱媒体回路40について説明する。高温側熱媒体回路40は、高温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。高温側熱媒体としては、エチレングリコール、ジメチルポリシロキサン、あるいはナノ流体等を含む溶液、不凍液等を採用することができる。高温側熱媒体回路40には、水冷媒熱交換器12の水通路、高温側熱媒体ポンプ41、ヒータコア42等が配置されている。
高温側熱媒体ポンプ41は、高温側熱媒体を水冷媒熱交換器12の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。高温側熱媒体ポンプ41は、サイクル制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
水冷媒熱交換器12の水通路の出口には、ヒータコア42の熱媒体入口側が接続されている。ヒータコア42は、水冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体と室内蒸発器18を通過した空気とを熱交換させて、空気を加熱する熱交換器である。ヒータコア42は、室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。ヒータコア42の熱媒体出口には、高温側熱媒体ポンプ41の吸入口側が接続されている。
従って、高温側熱媒体回路40では、高温側熱媒体ポンプ41が、ヒータコア42へ流入する高温側熱媒体の流量を調整することによって、ヒータコア42における高温側熱媒体の空気への放熱量、すなわち、ヒータコア42における空気の加熱量を調整することができる。
つまり、本実施形態では、水冷媒熱交換器12および高温側熱媒体回路40の各構成機器によって、圧縮機11から吐出された冷媒を熱源として、空気を加熱する加熱部が構成されている。
次に、低温側熱媒体回路50について説明する。低温側熱媒体回路50は、低温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。低温側熱媒体としては、高温側熱媒体と同様の流体を採用することができる。低温側熱媒体回路50には、チラー19の水通路、低温側熱媒体ポンプ51、冷却用熱交換部52、三方弁53、低温側ラジエータ54等が配置されている。
低温側熱媒体ポンプ51は、低温側熱媒体をチラー19の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。低温側熱媒体ポンプ51の基本的構成は、高温側熱媒体ポンプ41と同様である。
チラー19の水通路の出口には、冷却用熱交換部52の入口側が接続されている。冷却用熱交換部52は、バッテリ80を形成する複数の電池セル81に接触するように配置された金属製の複数の熱媒体流路を有している。そして、熱媒体流路を流通する低温側熱媒体と電池セル81とを熱交換させることによって、バッテリ80を冷却する熱交換部である。
このような冷却用熱交換部52は、積層配置された電池セル81同士の間に熱媒体流路を配置することによって形成すればよい。また、冷却用熱交換部52は、バッテリ80に一体的に形成されていてもよい。例えば、積層配置された電池セル81を収容する専用ケースに熱媒体流路を設けることによって、バッテリ80に一体的に形成されていてもよい。
冷却用熱交換部52の出口には、三方弁53の流入口側が接続されている。三方弁53は、1つの流入口と、2つの流出口とを有し、2つの流出口の通路面積比を連続的に調整可能な電気式の三方流量調整弁である。三方弁53は、サイクル制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
三方弁53の一方の流出口には、低温側ラジエータ54の熱媒体入口側が接続されている。三方弁53の他方の流出口には、低温側熱媒体ポンプ51の吸入口側が接続されている。従って、三方弁53は、低温側熱媒体回路50において、冷却用熱交換部52から流出した低温側熱媒体のうち、低温側ラジエータ54へ流入させる低温側熱媒体の流量を連続的に調整する機能を果たしている。
低温側ラジエータ54は、冷却用熱交換部52から流出した冷媒と図示しない外気ファンにより送風された外気とを熱交換させて、低温側熱媒体の有する熱を外気に放熱させる熱交換器である。
低温側ラジエータ54は、駆動装置室内の前方側に配置されている。このため、車両走行時には、低温側ラジエータ54に走行風を当てることができる。従って、低温側ラジエータ54は、室外熱交換器16等と一体的に形成されていてもよい。低温側ラジエータ54の熱媒体出口には、低温側熱媒体ポンプ51の吸入口側が接続されている。
従って、低温側熱媒体回路50では、低温側熱媒体ポンプ51が、冷却用熱交換部52へ流入する低温側熱媒体の流量を調整することによって、冷却用熱交換部52における低温側熱媒体がバッテリ80から奪う吸熱量を調整することができる。つまり、本実施形態では、チラー19および低温側熱媒体回路50の各構成機器によって、冷却用膨張弁14cから流出した冷媒を蒸発させて、バッテリ80を冷却する冷却部が構成されている。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、冷凍サイクル装置10によって温度調整された空気を車室内へ吹き出すためのものである。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。
室内空調ユニット30は、図1に示すように、その外殻を形成する空調ケース31内に形成された空気通路内に送風機32、室内蒸発器18、ヒータコア42等を収容したものである。
空調ケース31は、車室内に送風される空気の空気通路を形成している。空調ケース31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。
空調ケース31の空気流れ最上流側には、内外気切替装置33が配置されている。内外気切替装置33は、空調ケース31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入するものである。
内外気切替装置33は、空調ケース31内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させるものである。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、サイクル制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、送風機32が配置されている。送風機32は、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風するものである。送風機32は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。送風機32は、サイクル制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。
送風機32の空気流れ下流側には、室内蒸発器18、ヒータコア42が、空気流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器18は、ヒータコア42よりも、空気流れ上流側に配置されている。
空調ケース31内には、室内蒸発器18通過後の空気を、ヒータコア42を迂回して流す冷風バイパス通路35が設けられている。空調ケース31内の室内蒸発器18の空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア42の空気流れ上流側には、エアミックスドア34が配置されている。
エアミックスドア34は、室内蒸発器18通過後の空気のうち、ヒータコア42側を通過する空気の風量と冷風バイパス通路35を通過させる空気の風量との風量割合を調整する風量割合調整部である。エアミックスドア34は、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、サイクル制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
空調ケース31内のヒータコア42および冷風バイパス通路35の空気流れ下流側には、混合空間が配置されている。混合空間は、ヒータコア42にて加熱された空気と冷風バイパス通路35を通過して加熱されていない空気とを混合させる空間である。
さらに、空調ケース31の空気流れ下流部には、混合空間にて混合された空気(すなわち、空調風)を、空調対象空間である車室内へ吹き出すための開口穴が配置されている。
この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
従って、エアミックスドア34が、ヒータコア42を通過させる風量と冷風バイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。そして、各吹出口から車室内へ吹き出される空気(空調風)の温度が調整される。
また、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイスドア、フットドア、およびデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。フェイスドアは、フェイス開口穴の開口面積を調整するものである。フットドアは、フット開口穴の開口面積を調整するものである。デフロスタドアは、デフロスタ開口穴の開口面積を調整するものである。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替装置を構成するものである。これらのドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータも、サイクル制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
吹出口モード切替装置によって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開としてフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開とするとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出す吹出口モードである。
さらに、乗員が操作パネル70に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモードに切り替えることもできる。デフロスタモードは、デフロスタ吹出口を全開としてデフロスタ吹出口からフロント窓ガラス内面に空気を吹き出す吹出口モードである。
次に、本実施形態の電気制御部の概要について説明する。サイクル制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器11、14a~14c、15a、15b、32、41、51、53等の作動を制御する。
また、サイクル制御装置60の入力側には、図2のブロック図に示すように、内気温センサ61、外気温センサ62、日射センサ63、第1~第5冷媒温度センサ64a~64e、蒸発器温度センサ64f、第1、第2冷媒圧力センサ65a、65b、高温側熱媒体温度センサ66a、第1、第2低温側熱媒体温度センサ67a、67b、空調風温度センサ68、バッテリ制御装置69等が接続されている。そして、サイクル制御装置60には、これらのセンサ群の検出信号が入力される。
内気温センサ61は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ62は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ63は、車室内へ照射される日射量Tsを検出する日射量検出部である。
第1冷媒温度センサ64aは、圧縮機11から吐出された冷媒の温度T1を検出する吐出冷媒温度検出部である。第2冷媒温度センサ64bは、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の温度T2を検出する第2冷媒温度検出部である。第3冷媒温度センサ64cは、室外熱交換器16から流出した冷媒の温度T3を検出する第3冷媒温度検出部である。
第4冷媒温度センサ64dは、室内蒸発器18から流出した冷媒の温度T4を検出する第4冷媒温度検出部である。第5冷媒温度センサ64eは、チラー19の冷媒通路から流出した冷媒の温度T5を検出する第5冷媒温度検出部である。
蒸発器温度センサ64fは、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。本実施形態の蒸発器温度センサ64fでは、具体的に、室内蒸発器18の熱交換フィン温度を検出している。
第1冷媒圧力センサ65aは、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の圧力P1を検出する第1冷媒圧力検出部である。第2冷媒圧力センサ65bは、チラー19の冷媒通路から流出した冷媒の圧力P2を検出する第2冷媒圧力検出部である。
高温側熱媒体温度センサ66aは、水冷媒熱交換器12の水通路から流出した高温側熱媒体の温度である高温側熱媒体温度TWHを検出する高温側熱媒体温度検出部である。
第1低温側熱媒体温度センサ67aは、チラー19の水通路から流出した低温側熱媒体の温度である第1低温側熱媒体温度TWL1を検出する第1低温側熱媒体温度検出部である。第2低温側熱媒体温度センサ67bは、冷却用熱交換部52から流出した低温側熱媒体の温度である第2低温側熱媒体温度TWL2を検出する第2低温側熱媒体温度検出部である。
空調風温度センサ68は、混合空間から車室内へ送風される空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
バッテリ制御装置69は、バッテリ80の入出力を制御するバッテリ制御部である。バッテリ制御装置69には、バッテリ温度センサ69aからの検出信号が入力される。
バッテリ温度センサ69aは、バッテリ温度TB(すなわち、バッテリ80の温度)を検出するバッテリ温度検出部である。本実施形態のバッテリ温度センサ69aは、複数の温度センサを有し、バッテリ80の複数の箇所の温度を検出している。このため、サイクル制御装置60では、バッテリ80の各部の温度差を検出することもできる。さらに、バッテリ温度TBとしては、複数の温度センサの検出値の平均値を採用している。
サイクル制御装置60には、バッテリ制御装置69から、バッテリ80の急速充電を開始する時刻や、バッテリ温度TB等の情報が入力される。
さらに、サイクル制御装置60の入力側には、図2に示すように、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル70が接続され、この操作パネル70に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
操作パネル70に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置の自動制御運転を設定あるいは解除するオートスイッチ、室内蒸発器18で空気の冷却を行うことを要求するエアコンスイッチ、送風機32の風量をマニュアル設定する風量設定スイッチ、車室内の目標温度Tsetを設定する温度設定スイッチ、吹出モードをマニュアル設定する吹出モード切替スイッチ等がある。
なお、本実施形態のサイクル制御装置60は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
例えば、サイクル制御装置60のうち、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、圧縮機11の回転数)を制御する構成は、圧縮機制御部60aを構成している。また、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cの作動を制御する構成は、膨張弁制御部60bを構成している。除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bの作動を制御する構成は、冷媒回路切替制御部60cを構成している。
さらに、高温側熱媒体ポンプ41の高温側熱媒体の圧送能力を制御する構成は、高温側熱媒体ポンプ制御部60dを構成している。低温側熱媒体ポンプ51の低温側熱媒体の圧送能力を制御する構成は、低温側熱媒体ポンプ制御部60eを構成している。
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。前述の如く、本実施形態の車両用空調装置1は、車室内の空調を行うだけでなく、バッテリ80の温度を調整する機能を有している。このため、冷凍サイクル装置10では、冷媒回路を切り替えて、以下の11種類の運転モードでの運転を行うことができる。
(1)冷房モード:冷房モードは、バッテリ80の冷却を行うことなく、空気を冷却して車室内へ吹き出すことによって車室内の冷房を行う運転モードである。
(2)直列除湿暖房モード:直列除湿暖房モードは、バッテリ80の冷却を行うことなく、冷却されて除湿された空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
(3)並列除湿暖房モード:並列除湿暖房モードは、バッテリ80の冷却を行うことなく、冷却されて除湿された空気を直列除湿暖房モードよりも高い加熱能力で再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
(4)暖房モード:暖房モードは、バッテリ80の冷却を行うことなく、空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
(5)冷房冷却モード:冷房冷却モードは、バッテリ80の冷却を行うとともに、空気を冷却して車室内へ吹き出すことによって車室内の冷房を行う運転モードである。
(6)直列除湿暖房冷却モード:直列除湿暖房冷却モードは、バッテリ80の冷却を行うとともに、冷却されて除湿された空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
(7)並列除湿暖房冷却モード:並列除湿暖房冷却モードは、バッテリ80の冷却を行うとともに、冷却されて除湿された空気を直列除湿暖房冷却モードよりも高い加熱能力で再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
(8)暖房冷却モード:暖房冷却モードは、バッテリ80の冷却を行うとともに、空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
(9)暖房直列冷却モード:暖房直列冷却モードは、バッテリ80の冷却を行うとともに、空気を暖房冷却モードよりも高い加熱能力で加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
(10)暖房並列冷却モード:暖房並列冷却モードは、バッテリ80の冷却を行うとともに、空気を暖房直列冷却モードよりも高い加熱能力で加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
(11)冷却モード:車室内の空調を行うことなく、バッテリ80の冷却を行う運転モードである。
これらの運転モードの切り替えは、制御プログラムが実行されることによって行われる。制御プログラムは、乗員の操作によって操作パネル70のオートスイッチが投入(ON)されて、車室内の自動制御が設定された際に実行される。図3~図5を用いて、制御プログラムについて説明する。また、図3等のフローチャートに示す各制御ステップは、サイクル制御装置60が有する機能実現部である。
まず、図3のステップS10では、上述したセンサ群の検出信号、および操作パネル70の操作信号を読み込む。続くステップS20では、ステップS10にて読み込んだ検出信号および操作信号に基づいて、車室内へ送風される空気の目標温度である目標吹出温度TAOを決定する。従って、ステップS20は、目標吹出温度決定部である。
具体的には、目標吹出温度TAOは、以下数式F1によって算出される。
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×Ts+C…(F1)
なお、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度である。Trは内気センサによって検出された車室内温度である。Tamは外気センサによって検出された車室外温度である。Tsは日射センサによって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
次に、ステップS30では、エアコンスイッチがON(投入)されているか否かが判定される。エアコンスイッチがONされていることは、乗員が車室内の冷房あるいは除湿を要求していることを意味している。換言すると、エアコンスイッチがONされていることは、室内蒸発器18にて空気を冷却することが要求されていることを意味している。
ステップS30にて、エアコンスイッチがONされていると判定された場合は、ステップS40へ進む。ステップS30にて、エアコンスイッチがONされていないと判定された場合は、ステップS160へ進む。
ステップS40では、外気温Tamが予め定めた基準外気温KA(本実施形態では、0℃)以上であるか否かが判定される。基準外気温KAは、室内蒸発器18にて空気を冷却することが、空調対象空間の冷房あるいは除湿を行うために有効となるように設定されている。
より詳細には、本実施形態では、室内蒸発器18の着霜を抑制するために、蒸発圧力調整弁20によって室内蒸発器18における冷媒蒸発温度を着霜抑制温度(本実施形態では、1℃)以上に維持している。このため、室内蒸発器18では、空気を着霜抑制温度より低い温度に冷却することができない。
つまり、室内蒸発器18へ流入する空気の温度が着霜抑制温度の温度よりも低くなっている際には、室内蒸発器18にて空気を冷却することは有効ではない。そこで、基準外気温KAを着霜抑制温度より低い値に設定し、外気温Tamが基準外気温KAより低くなっている際には、室内蒸発器18にて空気を冷却しないようにしている。
ステップS40にて、外気温Tamが基準外気温KA以上であると判定された場合は、ステップS50へ進む。ステップS40にて、外気温Tamが基準外気温KA以上ではないと判定された場合は、ステップS160へ進む。
ステップS50では、目標吹出温度TAOが冷房用基準温度α1以下であるか否かが判定される。冷房用基準温度α1は、サイクル制御装置60によって決定される。
ステップS50にて、目標吹出温度TAOが冷房用基準温度α1以下であると判定された場合は、ステップS60へ進む。ステップS50にて、目標吹出温度TAOが冷房用基準温度α1以下ではないと判定された場合は、ステップS90へ進む。
ステップS60では、バッテリ80の冷却が必要であるか否かが判定される。具体的には、本実施形態では、バッテリ温度センサ69aによって検出されたバッテリ温度TBが予め定めた基準冷却温度KTB(本実施形態では、35℃)以上となっている際に、バッテリ80の冷却が必要であると判定する。また、バッテリ温度TBが基準冷却温度KTBより低くなっている際に、バッテリ80の冷却は必要でないと判定する。
ステップS60にて、バッテリ80の冷却が必要であると判定された場合は、ステップS70へ進み、運転モードとして(5)冷房冷却モードが選択される。ステップS60にて、バッテリ80の冷却が必要でないと判定された場合は、ステップS80へ進み、運転モードとして(1)冷房モードが選択される。
ステップS90では、目標吹出温度TAOが除湿用基準温度β1以下であるか否かが判定される。除湿用基準温度β1は、サイクル制御装置60によって決定される。除湿用基準温度β1は、冷房用基準温度α1よりも高い値に決定される。
ステップS90にて、目標吹出温度TAOが除湿用基準温度β1以下であると判定された場合は、ステップS100へ進む。ステップS90にて、目標吹出温度TAOが除湿用基準温度β1以下ではないと判定された場合は、ステップS130へ進む。
ステップS100では、ステップS60と同様に、バッテリ80の冷却が必要であるか否かが判定される。
ステップS100にて、バッテリ80の冷却が必要であると判定された場合は、ステップS110へ進み、冷凍サイクル装置10の運転モードとして(6)直列除湿暖房冷却モードが選択される。ステップS100にて、バッテリ80の冷却が必要でないと判定された場合は、ステップS120へ進み、運転モードとして(2)直列除湿暖房モードが選択される。
ステップS130では、ステップS60と同様に、バッテリ80の冷却が必要であるか否かが判定される。
ステップS130にて、バッテリ80の冷却が必要であると判定された場合は、ステップS140へ進み、冷凍サイクル装置10の運転モードとして(7)並列除湿暖房冷却モードが選択される。ステップS100にて、バッテリ80の冷却が必要でないと判定された場合は、ステップS150へ進み、運転モードとして(3)並列除湿暖房モードが選択される。
続いて、ステップS30あるいはステップS40からステップS160へ進んだ場合について説明する。ステップS30あるいはステップS40からステップS160へ進んだ場合は、室内蒸発器18にて空気を冷却することが有効ではないと判定された場合である。ステップS160では、図4に示すように、目標吹出温度TAOが暖房用基準温度γ以上であるか否かが判定される。
暖房用基準温度γは、サイクル制御装置60によって決定される。暖房用基準温度γは、ヒータコア42にて空気を加熱することが、空調対象空間の暖房を行うために有効となるように設定されている。
ステップS160にて、目標吹出温度TAOが暖房用基準温度γ以上であると判定された場合は、ヒータコア42にて空気を加熱する必要がある場合であり、ステップS170へ進む。ステップS160にて、目標吹出温度TAOが暖房用基準温度γ以上ではないと判定された場合は、ヒータコア42にて空気を加熱する必要がない場合であり、ステップS240へ進む。
ステップS170では、ステップS60と同様に、バッテリ80の冷却が必要であるか否かが判定される。
ステップS170にて、バッテリ80の冷却が必要であると判定された場合は、ステップS180へ進む。ステップS170にて、バッテリ80の冷却が必要でないと判定された場合は、ステップS230へ進み、運転モードとして(4)暖房モードが選択される。
ここで、ステップS170にて、バッテリ80の冷却が必要であると判定されてステップS180へ進んだ場合は、車室内の暖房とバッテリ80の冷却との双方を行う必要がある。このため、冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12にて冷媒が高温側熱媒体へ放熱する放熱量と、チラー19にて冷媒が低温側熱媒体から吸熱する吸熱量とを適切に調整する必要がある。
そこで、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、車室内の暖房とバッテリ80の冷却との双方を行う必要がある場合には、図4のステップS180~S220に示すように、(8)暖房冷却モード、(9)暖房直列冷却モード、(10)暖房並列冷却モードの3つの運転モードを切り替える。
まず、ステップS180では、目標吹出温度TAOが低温側冷却基準温度α2以下であるか否かが判定される。低温側冷却基準温度α2は、サイクル制御装置60によって決定される。低温側冷却基準温度α2は、冷房用基準温度α1よりも高く、かつ除湿用基準温度β1よりも低い値に決定される。
ステップS180にて、目標吹出温度TAOが低温側冷却基準温度α2以下であると判定された場合は、ステップS190へ進み、運転モードとして(8)暖房冷却モードが選択される。ステップS180にて、目標吹出温度TAOが低温側冷却基準温度α2以下ではないと判定された場合は、ステップS200へ進む。
ステップS200では、目標吹出温度TAOが高温側冷却基準温度β2以下であるか否かが判定される。高温側冷却基準温度β2は、サイクル制御装置60によって決定される。高温側冷却基準温度β2は、除湿用基準温度β1よりも高い値に決定される。
ステップS200にて、目標吹出温度TAOが高温側冷却基準温度β2以下であると判定された場合は、ステップS210へ進み、運転モードとして(9)暖房直列冷却モードが選択される。ステップS200にて、目標吹出温度TAOが高温側冷却基準温度β2以下ではないと判定された場合は、ステップS220へ進み、運転モードとして(10)暖房並列冷却モードが選択される。
続いて、ステップS160からステップS240へ進んだ場合について説明する。ステップS160からステップS240へ進んだ場合は、ヒータコア42にて空気を加熱する必要がない場合である。そこで、ステップS240では、ステップS60と同様に、バッテリ80の冷却が必要であるか否かが判定される。
ステップS240にて、バッテリ80の冷却が必要であると判定された場合は、ステップS250へ進み、運転モードとして(11)冷却モードが選択される。ステップS200にて、バッテリ80の冷却が必要でないと判定された場合は、ステップS260へ進み、運転モードとして送風モードが選択されて、ステップS10へ戻る。
送風モードは、圧縮機11を停止させて、風量設定スイッチによって設定された設定信号に応じて送風機32を作動させる運転モードである。なお、ステップS240にて、バッテリ80の冷却が必要でないと判定された場合は、車室内の空調および電池の冷却のための冷凍サイクル装置10を作動させる必要がない場合である。
本実施形態の制御プログラムでは、以上の如く、冷凍サイクル装置10の運転モードの切り替えを行う。さらに、この制御プログラムでは、冷凍サイクル装置10の各構成機器の作動のみならず、加熱部を構成する高温側熱媒体回路40の高温側熱媒体ポンプ41、並びに、冷却部を構成する低温側熱媒体回路50の低温側熱媒体ポンプ51および三方弁53の作動も制御している。
具体的には、サイクル制御装置60は、上述した冷凍サイクル装置10の運転モードによらず、予め定めた各運転モード毎の基準圧送能力を発揮するように、高温側熱媒体ポンプ41の作動を制御する。
従って、高温側熱媒体回路40では、水冷媒熱交換器12の水通路にて、高温側熱媒体が加熱されると、加熱された高温側熱媒体がヒータコア42へ圧送される。ヒータコア42へ流入した高温側熱媒体は、空気と熱交換する。これにより、空気が加熱される。ヒータコア42から流出した高温側熱媒体は、高温側熱媒体ポンプ41に吸入されて、水冷媒熱交換器12へ圧送される。
また、サイクル制御装置60は、上述した冷凍サイクル装置10の運転モードによらず、予め定めた各運転モード毎の基準圧送能力を発揮するように、低温側熱媒体ポンプ51の作動を制御する。
さらに、サイクル制御装置60は、第2低温側熱媒体温度センサ67bによって検出された第2低温側熱媒体温度TWL2が外気温Tam以上となっている場合には、冷却用熱交換部52から流出した低温側熱媒体を低温側ラジエータ54へ流入させるように三方弁53の作動を制御する。
第2低温側熱媒体温度TWL2が外気温Tam以上となっていない場合には、冷却用熱交換部52から流出した低温側熱媒体を低温側熱媒体ポンプ51の吸入口へ吸入させるように三方弁53の作動を制御する。
従って、低温側熱媒体回路50では、チラー19の水通路にて、低温側熱媒体が冷却されると、冷却された低温側熱媒体が冷却用熱交換部52へ圧送される。冷却用熱交換部52へ流入した低温側熱媒体は、バッテリ80から吸熱する。これにより、バッテリ80が冷却される。冷却用熱交換部52から流出した低温側熱媒体は三方弁53へ流入する。
この際、第2低温側熱媒体温度TWL2が外気温Tam以上となっている場合には、冷却用熱交換部52から流出した低温側熱媒体は、低温側ラジエータ54へ流入して外気に放熱する。これにより、低温側熱媒体は外気温Tamと同等となるまで冷却される。低温側ラジエータ54から流出した低温側熱媒体は、低温側熱媒体ポンプ51に吸入されて、チラー19へ圧送される。
一方、第2低温側熱媒体温度TWL2が外気温Tamより低くなっている場合には、冷却用熱交換部52から流出した低温側熱媒体は、低温側熱媒体ポンプ51に吸入されて、チラー19へ圧送される。このため、低温側熱媒体ポンプ51に吸入される低温側熱媒体の温度は、外気温Tam以下となる。
以下に、各運転モードにおける車両用空調装置1の詳細作動について説明する。各運転モードでは、サイクル制御装置60が、各運転モードの制御フローを実行する。
(1)冷房モード
冷房モードの制御フローでは、最初のステップで目標蒸発器温度TEOを決定する。目標蒸発器温度TEOは、目標吹出温度TAOに基づいて、サイクル制御装置60に記憶された制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標蒸発器温度TEOが上昇するように決定される。
次のステップでは、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVOを決定する。増減量ΔIVOは、目標蒸発器温度TEOと蒸発器温度センサ64fによって検出された蒸発器温度Tefinとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、蒸発器温度Tefinが目標蒸発器温度TEOに近づくように決定される。
次のステップでは、室外熱交換器16から流出した冷媒の目標過冷却度SCO1を決定する。目標過冷却度SCO1は、例えば、外気温Tamに基づいて、制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、サイクルの成績係数(COP)が極大値に近づくように、目標過冷却度SCO1を決定する。
次のステップでは、冷房用膨張弁14bの絞り開度の増減量ΔEVCを決定する。増減量ΔEVCは、目標過冷却度SCO1と室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1が目標過冷却度SCO1に近づくように決定される。
室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1は、第3冷媒温度センサ64cによって検出された温度T3および第1冷媒圧力センサ65aによって検出された圧力P1に基づいて算出される。
次のステップでは、以下数式F2を用いて、エアミックスドア34の開度SWを算定する。
SW={TAO+(Tefin+C2)}/{TWH+(Tefin+C2)}
…(F2)
なお、TWHは、高温側熱媒体温度センサ66aによって検出された高温側熱媒体温度である。C2は制御用の定数である。
次のステップでは、冷凍サイクル装置10を冷房モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを全開状態とし、冷房用膨張弁14bを冷媒減圧作用を発揮する絞り状態とし、冷却用膨張弁14cを全閉状態とし、除湿用開閉弁15aを閉じ、暖房用開閉弁15bを閉じる。さらに、上述のステップで決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、最初のステップへ戻る。
従って、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、逆止弁17、冷房用膨張弁14b、室内蒸発器18、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12および室外熱交換器16が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(換言すれば放熱部)として機能し、冷房用膨張弁14bが冷媒を減圧させる減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
これによれば、室内蒸発器18にて、空気を冷却することができるとともに、水冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができる。
従って、冷房モードの車両用空調装置1では、エアミックスドア34の開度調整によって、室内蒸発器18にて冷却された空気の一部をヒータコア42にて再加熱し、目標吹出温度TAOに近づくように温度調整された空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
(2)直列除湿暖房モード
直列除湿暖房モードの制御フローでは、最初のステップで、冷房モードと同様に、目標蒸発器温度TEOを決定する。次のステップでは、冷房モードと同様に、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVOを決定する。
次のステップでは、ヒータコア42にて空気を加熱できるように、高温側熱媒体の目標高温側熱媒体温度TWHOを決定する。目標高温側熱媒体温度TWHOは、目標吹出温度TAOおよびヒータコア42の効率に基づいて、制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標高温側熱媒体温度TWHOが上昇するように決定される。
次のステップでは、開度パターンKPN1の変化量ΔKPN1を決定する。開度パターンKPN1は、暖房用膨張弁14aの絞り開度および冷房用膨張弁14bの絞り開度の組合せを決定するためのパラメータである。
具体的には、直列除湿暖房モードでは、目標吹出温度TAOが上昇するに伴って、開度パターンKPN1が大きくなる。そして、開度パターンKPN1が大きくなるに伴って、暖房用膨張弁14aの絞り開度が小さくなり、冷房用膨張弁14bの絞り開度が大きくなる。
次のステップでは、冷房モードと同様に、エアミックスドア34の開度SWを算定する。ここで、直列除湿暖房モードでは、冷房モードよりも目標吹出温度TAOが高くなるので、エアミックスドア34の開度SWが100%に近づく。このため、直列除湿暖房モードでは、室内蒸発器18通過後の空気のほぼ全流量がヒータコア42を通過するように、エアミックスドア34の開度が決定される。
次のステップでは、冷凍サイクル装置10を直列除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを絞り状態とし、冷却用膨張弁14cを全閉状態とし、除湿用開閉弁15aを閉じ、暖房用開閉弁15bを閉じる。さらに、上述のステップで決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、最初のステップへ戻る。
従って、直列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、逆止弁17、冷房用膨張弁14b、室内蒸発器18、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、直列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(換言すれば放熱部)として機能し、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bが減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
さらに、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が、外気温Tamよりも高くなっている際には、室外熱交換器16が放熱器(換言すれば放熱部)として機能するサイクルが構成される。室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が、外気温Tamよりも低くなっている際には、室外熱交換器16が蒸発器として機能するサイクルが構成される。
これによれば、室内蒸発器18にて、空気を冷却することができるとともに、水冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができる。従って、直列除湿暖房モードの車両用空調装置1では、室内蒸発器18にて冷却されて除湿された空気を、ヒータコア42にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。
(3)並列除湿暖房モード
並列除湿暖房モードの制御フローの最初のステップでは、ヒータコア42にて空気を加熱できるように、直列除湿暖房モードと同様に、高温側熱媒体の目標高温側熱媒体温度TWHOが決定される。
次のステップでは、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVOを決定する。並列除湿暖房モードでは、増減量ΔIVOは、目標高温側熱媒体温度TWHOと高温側熱媒体温度TWHとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、高温側熱媒体温度TWHが目標高温側熱媒体温度TWHOに近づくように決定される。
次のステップでは、室内蒸発器18の出口側冷媒の目標過熱度SHEOを決定する。目標過熱度SHEOとしては、予め定めた定数(本実施形態では、5℃)を採用することができる。
次のステップでは、開度パターンKPN1の変化量ΔKPN1を決定する。並列除湿暖房モードでは、目標過熱度SHEOと室内蒸発器18の出口側冷媒の過熱度SHEとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、過熱度SHEが目標過熱度SHEOに近づくように決定される。
室内蒸発器18の出口側冷媒の過熱度SHEは、第4冷媒温度センサ64dによって検出された温度T4および蒸発器温度Tefinに基づいて算出される。
また、並列除湿暖房モードでは、開度パターンKPN1が大きくなるに伴って、暖房用膨張弁14aの絞り開度が小さくなり、冷房用膨張弁14bの絞り開度が大きくなる。従って、開度パターンKPN1が大きくなると、室内蒸発器18へ流入する冷媒流量が増加し、室内蒸発器18の出口側冷媒の過熱度SHEが低下する。
次のステップでは、冷房モードと同様に、エアミックスドア34の開度SWを算定する。ここで、並列除湿暖房モードでは、冷房モードよりも目標吹出温度TAOが高くなるので、直列除湿暖房モードと同様に、エアミックスドア34の開度SWが100%に近づく。このため、並列除湿暖房モードでは、室内蒸発器18通過後の空気のほぼ全流量がヒータコア42を通過するように、エアミックスドア34の開度が決定される。
次のステップでは、冷凍サイクル装置10を並列除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを絞り状態とし、冷却用膨張弁14cを全閉状態とし、除湿用開閉弁15aを開き、暖房用開閉弁15bを開く。さらに、上述のステップで決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、最初のステップへ戻る。
従って、並列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、暖房用通路22b、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、バイパス通路22a、冷房用膨張弁14b、室内蒸発器18、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、並列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(換言すれば放熱部)として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、室外熱交換器16が蒸発器として機能するとともに、暖房用膨張弁14aおよび室外熱交換器16に対して並列的に接続された冷房用膨張弁14bが減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
これによれば、室内蒸発器18にて空気を冷却することができるとともに、水冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができる。従って、並列除湿暖房モードの車両用空調装置1では、室内蒸発器18にて冷却されて除湿された空気を、ヒータコア42にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。
(4)暖房モード
暖房モードの制御フローの最初のステップでは、並列除湿暖房モードと同様に、高温側熱媒体の目標高温側熱媒体温度TWHOが決定される。次のステップでは、並列除湿暖房モードと同様に、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVOを決定する。
次のステップでは、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の目標過冷却度SCO2を決定する。目標過冷却度SCO2は、室内蒸発器18へ流入する空気の吸込温度あるいは外気温Tamに基づいて、制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、サイクルの成績係数(COP)が極大値に近づくように、目標過冷却度SCO2を決定する。
次のステップでは、暖房用膨張弁14aの絞り開度の増減量ΔEVHを決定する。増減量ΔEVHは、目標過冷却度SCO2と水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の過冷却度SC2との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の過冷却度SC2が目標過冷却度SCO2に近づくように決定される。
水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の過冷却度SC2は、第2冷媒温度センサ64bによって検出された温度T2および第1冷媒圧力センサ65aによって検出された圧力P1に基づいて算出される。
次のステップでは、冷房モードと同様に、エアミックスドア34の開度SWを算定する。ここで、暖房モードでは、冷房モードよりも目標吹出温度TAOが高くなるので、エアミックスドア34の開度SWが100%に近づく。このため、暖房モードでは、室内蒸発器18通過後の空気のほぼ全流量がヒータコア42を通過するように、エアミックスドア34の開度が決定される。
次のステップでは、冷凍サイクル装置10を暖房モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、冷却用膨張弁14cを全閉状態とし、除湿用開閉弁15aを閉じ、暖房用開閉弁15bを開く。さらに、上述のステップで決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、最初のステップへ戻る。
従って、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、暖房用通路22b、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(換言すれば放熱部)として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、室外熱交換器16が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
これによれば、水冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができる。従って、暖房モードの車両用空調装置1では、ヒータコア42にて加熱された空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
(5)冷房冷却モード
冷房冷却モードでは、サイクル制御装置60が、図5に示す冷房冷却モードでの制御フローを実行する。冷房冷却モードの以下の説明で参照される制御マップは、予め各運転モード毎にサイクル制御装置60に記憶されたものである。
まず、ステップS1100~S1140では、冷房モードと同様に、目標蒸発器温度TEO、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVO、冷房用膨張弁14bの絞り開度の増減量ΔEVC、エアミックスドア34の開度SWを決定する。
次に、ステップS1150では、チラー19の冷媒通路の出口側冷媒の目標過熱度SHCOを決定する。目標過熱度SHCOとしては、予め定めた定数(本実施形態では、5℃)を採用することができる。
ステップS1160では、冷却用膨張弁14cの絞り開度の第1仮増減量ΔEVB1を決定する。冷房冷却モードでは、第1仮増減量ΔEVB1は、目標過熱度SHCOとチラー19の冷媒通路から流出した冷媒の過熱度SHCとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、チラー19の冷媒通路から流出した冷媒の過熱度SHCが目標過熱度SHCOに近づくように決定される。
チラー19の冷媒通路から流出した冷媒の過熱度SHCは、第5冷媒温度センサ64eによって検出された温度T5および第2冷媒圧力センサ65bによって検出された圧力P2に基づいて算出される。
ステップS1170では、バッテリ80の目標温度である目標電池温度TBOを決定する。目標電池温度TBOは、バッテリ制御装置69から取得した情報に基づいて決定される。本例では、通常、目標電池温度TBOは40℃に決定され、バッテリ80の急速充電時には20℃に決定される。バッテリ80の急速充電が予約されている場合、目標電池温度TBOは、急速充電の開始時刻の所定時間前から20℃に決定される。
ステップS1180では、バッテリ80の目標冷却量である目標電池冷却量QBOを決定する。目標電池冷却量QBOは、第1仮目標冷却量QBO1および第2仮目標冷却量QBO2のうちいずれかの値に決定される。
第1仮目標冷却量QBO1は、電池温度TBに基づいて、予めサイクル制御装置60に記憶された制御マップを参照して決定される。本実施形態では、図6に示すように、電池温度TBの上昇に伴って、第1仮目標冷却量QBO1が高い値となるように決定される。この制御マップでは、制御ハンチングを防止するためのヒステリシス幅が設定されている。
第1仮目標冷却量QBO1は、バッテリ80の発熱量QBを基準として決定される。具体的には、第1仮目標冷却量QBO1は、バッテリ80の発熱量QBに、電池温度TBに応じた加算冷却量a、b、c、dを加算したり、必要空気冷却量ΔQAに応じた補正冷却量δを減算したりして決定される。
加算冷却量a、b、c、dの大小関係は、a<b<c<dとなっている。すなわち、加算冷却量は、電池温度TBの上昇に伴って大きな値に決定される。
図6の制御マップにおいて、横軸のA~Jの値は目標電池温度TBOに基づいて決定される。例えば、横軸のBには目標電池温度TBOの値が設定される。したがって、目標電池温度TBOが低くなると、電池温度TBに対する第1仮目標冷却量QBO1は大きな値なる。
必要空気冷却量ΔQAは、目標空気冷却量から実際の空気冷却量を減算した冷却量である。必要空気冷却量ΔQAは、蒸発器温度センサ64fによって検出された蒸発器温度Tefinから目標蒸発器温度TEOを減算した偏差に、室内蒸発器18を流れる空気流量を乗算することによって算出される。
図7に示すように、補正冷却量δは、必要空気冷却量ΔQAが大きいほど、大きな値に決定される。
第2仮目標冷却量QBO2は、以下数式F3を用いて決定される。
QBO2=QB+HB・(TB-TBO)/tb…(F3)
ここで、HBは、バッテリ80の熱容量である。TBは、電池温度(すなわち、バッテリ80の実際の温度)である。TBOは、目標電池温度(すなわち、バッテリ80の目標温度)である。tbは、バッテリ80の温度を目標電池温度TBOまで低下させるまでの時間(以下、目標時間と言う。)である。目標時間tbは、例えばバッテリ80の急速充電が開始される時刻を考慮して決定される。具体的には、急速充電の要求が入った時刻から急速充電を開始する時刻までの時間が目標時間tbとして決定される。
そして、目標電池温度TBOに変化がない場合は、第1仮目標冷却量QBO1が目標電池冷却量QBOとして決定される。目標電池温度TBOに変化がある場合は、電池温度TBが目標電池温度TBOに到達するまでは第2仮目標冷却量QBO2が目標電池冷却量QBOとして決定され、電池温度TBが目標電池温度TBOに到達した後は、再び第1仮目標冷却量QBO1が目標電池冷却量QBOとして決定される。
ステップS1190では、以下数式F4~F5を用いて、冷却用膨張弁14cの絞り開度の第2仮増減量ΔEVB2を決定する。
Gr=QBO/Δib…(F4)
A=Gr/{C・√(2・ΔP・ρ)}…(F5)
ここで、Grは、チラー19での電池冷却量が目標電池冷却量QBOになるためにチラー19で必要とされる冷媒の流量(以下、必要冷媒流量と言う。)である。QBOは、ステップS1180で算出した目標電池冷却量である。Δibは、チラー19の出口側冷媒のエンタルピiboutからチラー19の入口側冷媒のエンタルピibinを減算したエンタルピ差である。
チラー19の出口側冷媒のエンタルピiboutは、第5冷媒温度センサ64eが検出した冷媒の温度T5と、第2冷媒圧力センサ65bが検出した冷媒の圧力P2とから算出する。チラー19の入口側冷媒のエンタルピibinは、第3冷媒温度センサ64cが検出した冷媒の温度T3と、第1冷媒圧力センサ65aが検出した冷媒の圧力P1とから算出する。
Aは、チラー19での電池冷却量が目標電池冷却量QBOとなる冷却用膨張弁14cの流路断面積である。Cは、冷却用膨張弁14cの流量係数である。流量係数Cは定数であり、予めサイクル制御装置60に記憶されている。
ΔPは、冷却用膨張弁14cの入口側冷媒の圧力から冷却用膨張弁14cの出口側冷媒の圧力を減算した圧力差である。すなわち、ΔPは、第1冷媒圧力センサ65aが検出した冷媒の圧力P1から、第2冷媒圧力センサ65bが検出した冷媒の圧力P2を減算した圧力差である。
ρは、冷却用膨張弁14cの入口側冷媒の密度であり、第3冷媒温度センサ64cが検出した冷媒の温度T3と、第1冷媒圧力センサ65aが検出した冷媒の圧力P1とから算出する。
数式F5で算出した流路断面積Aから、必要流量を確保するための冷却用膨張弁14cの開度が算出され、その開度と現在の冷却用膨張弁14cの開度とから、第2仮増減量ΔEVB2を算出できる。
ステップS1200では、第1仮増減量ΔEVB1および第2仮増減量ΔEVB2のうち小さい方を冷却用膨張弁14cの開度の増減量ΔEVBとして決定して、ステップS1200へ進む。
ステップS1210では、冷凍サイクル装置10を冷房冷却モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを全開状態とし、冷房用膨張弁14bを絞り状態とし、冷却用膨張弁14cを絞り状態とし、除湿用開閉弁15aを閉じ、暖房用開閉弁15bを閉じる。さらに、ステップS1110、S1130、S1140、S1160、S1190で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
従って、冷房冷却モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、逆止弁17、冷房用膨張弁14b、室内蒸発器18、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、逆止弁17、冷却用膨張弁14c、チラー19、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、冷房冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12および室外熱交換器16が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(換言すれば放熱部)として機能し、冷房用膨張弁14bが減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能するとともに、冷房用膨張弁14bおよび室内蒸発器18に対して並列的に接続された冷却用膨張弁14cが減圧部として機能し、チラー19が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
これによれば、室内蒸発器18にて空気を冷却することができるとともに、水冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができる。さらに、チラー19にて低圧側熱媒体を冷却することができる。
従って、冷房冷却モードの車両用空調装置1では、エアミックスドア34の開度調整によって、室内蒸発器18にて冷却された空気の一部をヒータコア42にて再加熱し、目標吹出温度TAOに近づくように温度調整された空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
さらに、チラー19にて冷却された低温側熱媒体を冷却用熱交換部52へ流入させることによって、バッテリ80の冷却を行うことができる。
バッテリ80の発熱量QBに基づいて冷却用膨張弁14cを制御するので、冷媒の過熱度のみに基づいて冷却用膨張弁14cを制御する場合と比較して、空調能力を維持しながらバッテリ80の温度を適切に制御できる。
目標時間tbに基づいて冷却用膨張弁14cを制御するので、例えばバッテリ80の急速充電が開始される時刻にバッテリ80の温度を目標電池温度TBOまで低下させることができる。したがって、急速充電時にバッテリ80の発熱量が増加することを先読みしてバッテリ80の温度を適切に制御できるので省電力化できる。
(6)直列除湿暖房冷却モード
直列除湿暖房冷却モードの制御フローの最初のステップでは、直列除湿暖房モードと同様に、目標蒸発器温度TEO、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVO、目標高温側熱媒体温度TWHO、開度パターンKPN1の変化量ΔKPN1、エアミックスドア34の開度SWを決定する。
次のステップでは、冷房冷却モードと同様に、目標過熱度SHCO、冷却用膨張弁14cの絞り開度の第1仮増減量ΔEVB1、目標電池温度TBO、目標電池冷却量QBO、第2仮増減量ΔEVB2を決定し、それらに基づいて冷却用膨張弁増減量ΔEVBを決定する。
次のステップでは、冷凍サイクル装置10を直列除湿暖房冷却モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを絞り状態とし、冷却用膨張弁14cを絞り状態とし、除湿用開閉弁15aを閉じ、暖房用開閉弁15bを閉じる。
さらに、上述のステップで決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、最初のステップへ戻る。
従って、直列除湿暖房冷却モードでは、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、逆止弁17、冷房用膨張弁14b、室内蒸発器18、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、逆止弁17、冷却用膨張弁14c、チラー19、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、直列除湿暖房冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(換言すれば放熱部)として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、さらに、冷房用膨張弁14bが減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能するとともに、冷房用膨張弁14bおよび室内蒸発器18に対して並列的に接続された冷却用膨張弁14cが減圧部として機能し、チラー19が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
さらに、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が、外気温Tamよりも高くなっている際には、室外熱交換器16が放熱器(換言すれば放熱部)として機能するサイクルが構成される。室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が、外気温Tamよりも低くなっている際には、室外熱交換器16が蒸発器として機能するサイクルが構成される。
これによれば、室内蒸発器18にて空気を冷却することができるとともに、水冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができる。さらに、チラー19にて低圧側熱媒体を冷却することができる。
従って、直列除湿暖房冷却モードの冷凍サイクル装置10では、室内蒸発器18にて冷却されて除湿された空気を、ヒータコア42にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。この際、開度パターンKPN1を大きくすることにより、直列除湿暖房モードと同様に、ヒータコア42における空気の加熱能力を向上させることができる。
さらに、チラー19にて冷却された低温側熱媒体を冷却用熱交換部52へ流入させることによって、バッテリ80の冷却を行うことができる。
(7)並列除湿暖房冷却モード
並列除湿暖房冷却モードの制御フローの最初のステップでは、並列除湿暖房モードと同様に、目標高温側熱媒体温度TWHO、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVO、目標過熱度SHEO、開度パターンKPN1の変化量ΔKPN1、エアミックスドア34の開度SWを決定する。
次のステップでは、冷房冷却モードと同様に、目標過熱度SHCO、冷却用膨張弁14cの絞り開度の第1仮増減量ΔEVB1、目標電池温度TBO、目標電池冷却量QBO、第2仮増減量ΔEVB2を決定し、それらに基づいて冷却用膨張弁増減量ΔEVBを決定する。
次のステップでは、冷凍サイクル装置10を並列除湿暖房冷却モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを絞り状態とし、冷却用膨張弁14cを絞り状態とし、除湿用開閉弁15aを開き、暖房用開閉弁15bを開く。
さらに、上述のステップで決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、最初のステップへ戻る。
従って、並列除湿暖房冷却モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、暖房用通路22b、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、バイパス通路22a、冷房用膨張弁14b、室内蒸発器18、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環し、さらに、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、バイパス通路22a、冷却用膨張弁14c、チラー19、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、並列除湿暖房冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(換言すれば放熱部)として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、室外熱交換器16が蒸発器として機能するとともに、暖房用膨張弁14aおよび室外熱交換器16に対して並列的に接続された冷房用膨張弁14bが減圧部として機能し、室内蒸発器18が蒸発器として機能し、さらに、暖房用膨張弁14aおよび室外熱交換器16に対して並列的に接続された冷却用膨張弁14cが減圧部として機能し、チラー19が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
これによれば、室内蒸発器18にて空気を冷却することができるとともに、水冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができる。さらに、チラー19にて低圧側熱媒体を冷却することができる。
従って、並列除湿暖房冷却モードの車両用空調装置1では、室内蒸発器18にて冷却されて除湿された空気を、ヒータコア42にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。この際、室外熱交換器16における冷媒蒸発温度を室内蒸発器18における冷媒蒸発温度よりも低下させることで、直列除湿暖房冷却モードよりも高い加熱能力で空気を再加熱することができる。
さらに、チラー19にて冷却された低温側熱媒体を冷却用熱交換部52へ流入させることによって、バッテリ80の冷却を行うことができる。
(8)暖房冷却モード
暖房冷却モードの制御フローの最初のステップでは、冷却用熱交換部52にてバッテリ80を冷却できるように、冷房冷却モードと同様に、目標電池温度TBO、目標電池冷却量QBOが決定される。
次のステップでは、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVOを決定する。暖房冷却モードでは、増減量ΔIVOは、目標電池冷却量QBOと電池冷却量QBとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、電池冷却量QBが目標電池冷却量QBOに近づくように決定される。
次のステップでは、室外熱交換器16から流出した冷媒の目標過冷却度SCO1を決定する。暖房冷却モードの目標過冷却度SCO1は、外気温Tamに基づいて、制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、サイクルの成績係数(COP)が極大値に近づくように、目標過冷却度SCO1を決定する。
次のステップでは、冷却用膨張弁14cの絞り開度の増減量ΔEVBを決定する。増減量ΔEVBは、目標過冷却度SCO1と室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、室外熱交換器16の出口側冷媒の過冷却度SC1が目標過冷却度SCO1に近づくように決定される。過冷却度SC1は、冷房モードと同様に算出される。
次のステップでは、冷房モードと同様に、エアミックスドア34の開度SWを算定する。
次のステップでは、冷凍サイクル装置10を暖房冷却モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを全開状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、冷却用膨張弁14cを絞り状態とし、除湿用開閉弁15aを閉じ、暖房用開閉弁15bを閉じる。さらに、上述のステップで決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、最初のステップへ戻る。
従って、暖房冷却モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、逆止弁17、冷却用膨張弁14c、チラー19、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、暖房冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12および室外熱交換器16が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(換言すれば放熱部)として機能し、冷却用膨張弁14cが冷媒を減圧させる減圧部として機能し、チラー19が蒸発器として機能する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
これによれば、水冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができるとともに、チラー19にて低温側熱媒体を冷却することができる。
従って、暖房冷却モードの車両用空調装置1では、ヒータコア42にて加熱された空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。さらに、チラー19にて冷却された低温側熱媒体を冷却用熱交換部52へ流入させることによって、バッテリ80の冷却を行うことができる。
(9)暖房直列冷却モード
暖房直列冷却モードの制御フローの最初のステップでは、暖房冷却モードと同様に、目標電池温度TBO、目標電池冷却量QBOを決定する。次のステップでは、暖房冷却モードと同様に、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVOを決定する。
次のステップでは、直列除湿暖房モードと同様に、高温側熱媒体の目標高温側熱媒体温度TWHOを決定する。
次のステップでは、暖房用膨張弁14aの絞り開度および冷却用膨張弁14cの絞り開度を決定する。具体的には、暖房直列冷却モードでは、目標吹出温度TAOが上昇するに伴って、暖房用膨張弁14aの絞り開度を小さくし、冷却用膨張弁14cの絞り開度を大きくする。
次のステップでは、冷房モードと同様に、エアミックスドア34の開度SWを算定する。
次のステップでは、冷凍サイクル装置10を暖房直列冷却モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、冷却用膨張弁14cを絞り状態とし、除湿用開閉弁15aを閉じ、暖房用開閉弁15bを閉じる。さらに、上述のステップで決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、最初のステップへ戻る。
従って、暖房直列冷却モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、逆止弁17、冷却用膨張弁14c、チラー19、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、暖房直列冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(換言すれば放熱部)として機能し、暖房用膨張弁14aおよび冷却用膨張弁14cが減圧部として機能し、チラー19が蒸発器として機能する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
さらに、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が、外気温Tamよりも高くなっている際には、室外熱交換器16が放熱器(換言すれば放熱部)として機能するサイクルが構成される。室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が、外気温Tamよりも低くなっている際には、室外熱交換器16が蒸発器として機能するサイクルが構成される。
これによれば、水冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができるとともに、チラー19にて、低温側熱媒体を冷却することができる。
従って、暖房直列冷却モードの車両用空調装置1では、ヒータコア42にて加熱された空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。さらに、チラー19にて冷却された低温側熱媒体を冷却用熱交換部52へ流入させることによって、バッテリ80の冷却を行うことができる。
(10)暖房並列冷却モード
暖房並列冷却モードの制御フローの最初のステップでは、ヒータコア42にて空気を加熱できるように、直列除湿暖房モードと同様に、高温側熱媒体の目標高温側熱媒体温度TWHOが決定される。
次のステップでは、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVOを決定する。暖房並列冷却モードでは、増減量ΔIVOは、直列除湿暖房モードと同様に、目標高温側熱媒体温度TWHOと高温側熱媒体温度TWHとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、高温側熱媒体温度TWHが目標高温側熱媒体温度TWHOに近づくように決定される。
次のステップでは、チラー19の冷媒通路の出口側冷媒の目標過熱度SHCOを決定する。目標過熱度SHCOとしては、予め定めた定数(本実施形態では、5℃)を採用することができる。
次のステップでは、開度パターンKPN2の変化量ΔKPN2を決定する。暖房並列冷却モードでは、目標過熱度SHCOとチラー19の冷媒通路の出口側冷媒の過熱度SHCとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、過熱度SHCが目標過熱度SHCOに近づくように決定される。
また、暖房並列冷却モードでは、開度パターンKPN2が大きくなるに伴って、暖房用膨張弁14aの絞り開度が小さくなり、冷却用膨張弁14cの絞り開度が大きくなる。従って、開度パターンKPN2が増加すると、チラー19の冷媒通路へ流入する冷媒流量が増加し、チラー19の冷媒通路の出口側冷媒の過熱度SHCが低下する。
次のステップでは、冷房モードと同様に、エアミックスドア34の開度SWを算定する。次のステップでは、冷房冷却モードと同様に、目標電池温度TBO、目標電池冷却量QBOが決定される。
次のステップでは、冷凍サイクル装置10を暖房並列冷却モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、冷却用膨張弁14cを絞り状態とし、除湿用開閉弁15aを開き、暖房用開閉弁15bを開く。
さらに、上述のステップで決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、最初のステップへ戻る。
従って、暖房並列冷却モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、暖房用通路22b、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、バイパス通路22a、冷却用膨張弁14c、チラー19、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、暖房並列冷却モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(換言すれば放熱部)として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、室外熱交換器16が蒸発器として機能するとともに、暖房用膨張弁14aおよび室外熱交換器16に対して並列的に接続された冷却用膨張弁14cが減圧部として機能し、チラー19が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
これによれば、水冷媒熱交換器12にて、高温側熱媒体を加熱することができるとともに、チラー19にて低温側熱媒体を冷却することができる。
従って、暖房並列冷却モードの車両用空調装置1では、ヒータコア42にて加熱された空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。さらに、チラー19にて冷却された低温側熱媒体を冷却用熱交換部52へ流入させることによって、バッテリ80の冷却を行うことができる。
(11)冷却モード
冷却モードの制御フローの最初のステップでは、暖房冷却モードと同様に、目標電池温度TBO、目標電池冷却量QBO、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVO、目標過冷却度SCO1、冷却用膨張弁14cの絞り開度の増減量ΔEVB、エアミックスドア34の開度SWを決定する。
ここで、冷却モードでは、目標吹出温度TAOが暖房用基準温度γより低くなるので、エアミックスドア34の開度SWが0%に近づく。このため、冷却モードでは、室内蒸発器18通過後の空気のほぼ全流量が冷風バイパス通路35を通過するように、エアミックスドア34の開度が決定される。
次のステップでは、冷凍サイクル装置10を冷却モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを全開状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、冷却用膨張弁14cを絞り状態とし、除湿用開閉弁15aを閉じ、暖房用開閉弁15bを閉じる。さらに、上述のステップで決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、最初のステップへ戻る。
従って、冷却モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、逆止弁17、冷却用膨張弁14c、チラー19、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、冷却モードの冷凍サイクル装置10では、室外熱交換器16が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(換言すれば放熱部)として機能し、冷却用膨張弁14cが減圧部として機能し、チラー19が蒸発器として機能する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
これによれば、チラー19にて、低温側熱媒体を冷却することができる。従って、冷却モードの車両用空調装置1では、チラー19にて冷却された低温側熱媒体を冷却用熱交換部52へ流入させることによって、バッテリ80の冷却を行うことができる。
以上の如く、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、各種運転モードを切り替えることができる。これにより、車両用空調装置1では、バッテリ80の温度を適切に調整しつつ、車室内の快適な空調を実現することができる。
本実施形態による冷房冷却モードの作動例を図8の太実線に示す。図8中、時間t1は、急速充電の要求が入った時刻である。本作動例では、時間t1までは目標電池温度TBOが40℃に決定され、時間t1以降は目標電池温度TBOが20℃に決定される。
目標電池温度TBOが40℃から20℃に下げられると制御装置60は目標電池冷却量QBOを第1仮目標冷却量QBO1から第2仮目標冷却量QBO2に変更する。ここで、第2仮目標冷却量QBO2は、電池温度を目標時間tbで40℃から20℃まで冷却するために必要な冷却量に設定される。そのため、図8に示すように、電池温度TBは一定の速度で低下していく。換言すれば、一定の冷却量で作動する。
このように、冷却量の変動を抑制できるので、良好なサイクル効率を実現できるともに、圧縮機11の回転数を低く抑えて静粛性を向上できる。
本実施形態の変形例による冷房冷却モードの作動例を図8の太二点鎖線に示す。この変形例では、第2仮目標冷却量QBO2を算出せず、目標電池温度TBOが変更されても目標電池冷却量QBOを第1仮目標冷却量QBO1に決定する。
この変形例では、目標電池温度TBOが40℃から20℃に下げられることによって、目標電池温度TBOが40℃の時よりも第1仮目標冷却量QBO1が大きな値に決定される。これにより、目標電池温度TBOが40℃の時よりも目標電池冷却量QBOが大きな値に決定されるので、電池温度TBが20℃に向かって低下していく。
電池温度TBが20℃に向かって低下していくにつれて第1仮目標冷却量QBO1が小さくなっていくので目標電池冷却量QBOも小さくなっていく。したがって、電池温度TBの低下が緩やかになっていく。
本実施形態の冷房冷却モードでは、サイクル制御装置60は、冷却用熱交換部52におけるバッテリ80の冷却量が目標電池冷却量QBOとなるように冷却用膨張弁14cを制御する。これによると、バッテリ80の冷却量を適切に制御できるので、バッテリ80の温度を適切に制御できる。
本実施形態の冷房冷却モードでは、サイクル制御装置60は、目標電池温度TBOの変更がない場合、バッテリ80の温度が高くなるにつれて目標電池冷却量QBOを大きくする。これによると、目標電池冷却量QBOを適切に決定できる。
本実施形態の冷房冷却モードでは、サイクル制御装置60は、バッテリ80の温度に基づいて第1目標冷却量QBO1を算出する。サイクル制御装置60は、目標時間tb後にバッテリ80を目標電池温度TBOまで冷却するために必要な冷却量である第2目標冷却量QBO2を算出する。サイクル制御装置60は、目標電池温度TBOの変更がない場合、第1目標冷却量QBO1を目標電池冷却量QBOとして決定し、目標電池温度TBOの変更があった場合、第2目標冷却量QBO2を目標電池冷却量QBOとして決定する。これによると、目標時間tb後のバッテリ80の温度を適切に制御できる。
本実施形態では、サイクル制御装置60は、室内蒸発器18における空気の冷却量の目標値である目標空気冷却量Qa2を算出し、目標空気冷却量Qa2に基づいて目標電池冷却量QBOを減少させる補正を行い、目標空気冷却量Qa2が大きいほど目標電池冷却量QBOの補正量αを大きくする。
これによると、バッテリ80の温度を適切に制御しつつ、室内蒸発器18における空気冷却能力が不足することを抑制できる。
本実施形態では、サイクル制御装置60は、チラー19を流出した冷媒の過熱度SHEを目標過熱度SHEOにするために必要な冷却用膨張弁14cの開度変化量である第1開度変化量ΔEVB1と、冷却用熱交換部52におけるバッテリ80の冷却量を目標電池冷却量QBOにするために必要な冷却用膨張弁14cの開度変化量である第2開度変化量ΔEVB2とを算出する。
本実施形態では、サイクル制御装置60は、第1開度変化量ΔEVB1および第2開度変化量ΔEVB2のうち小さい方の開度変化量で冷却用膨張弁14cを制御する。
これによると、チラー19を流出した冷媒の過熱度SHEを極力適切に制御しつつバッテリ80の温度を適切に制御できる。
本実施形態では、サイクル制御装置60は、目標電池冷却量QBOとチラー19におけるエンタルピ変化量Δibとに基づいて、バッテリ80の冷却量が目標電池冷却量QBOとなるためにチラー19に必要とされる冷媒の流量である必要冷媒流量Grを算出する。サイクル制御装置60は、チラー19における冷媒の流量が必要冷媒流量Grとなるように冷却用膨張弁14cを制御する。
これにより、冷却用熱交換部52におけるバッテリ80の冷却量が目標電池冷却量QBOとなるように冷却用膨張弁14cを適切に制御できる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、第1仮目標冷却量QBO1を算出する際に、バッテリ80の発熱量QBに加算冷却量a、b、c、dを加算するが、本実施形態では、図9に示すように、第1仮目標冷却量QBO1を算出する際に、バッテリ80の発熱量QBに加減算冷却量を加減算する。
具体的には、電池温度TBが低い場合、バッテリ80の発熱量QBから加減算冷却量を減算して第1仮目標冷却量QBO1を算出する。電池温度TBが低いほど、加減算冷却量を大きくする。電池温度TBが高い場合、バッテリ80の発熱量QBから加減算冷却量を加算して第1仮目標冷却量QBO1を算出する。電池温度TBが高いほど、加減算冷却量を大きくする。
上記第1実施形態では、第1仮目標冷却量QBO1を算出する際に、バッテリ80の発熱量QBに対して電池温度TBに応じて加算するので、バッテリ80の発熱量QBが多いほど電池温度TBが高い温度で制御される。
本実施形態によると、第1仮目標冷却量QBO1を算出する際に、バッテリ80の発熱量QBに対して電池温度TBに応じて加算のみならず減算もするので、電池温度TBを一定の温度で制御しやすくなる。
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、第2仮増減量ΔEVB2を目標電池冷却量QBOとチラー19でのエンタルピ差Δibとに基づいて決定するが。本実施形態では、以下数式F6に示すように、第2仮増減量ΔEVB2をチラー19での低温側熱媒体の温度変化量ΔTWLに基づいて決定する。
具体的には、チラー19での低温側熱媒体の冷却量QWL(以下、熱媒体冷却量と言う。)を以下数式F6を用いて算出する。
QWL=GWL・ΔTWL…(F6)
ここで、GWLは、チラー19を流れる低温側熱媒体の流量である。チラー19での低温側熱媒体の温度変化量ΔTWLは、チラー19から流出した低温側熱媒体の温度から、チラー19に流入する低温側熱媒体の温度を減じた温度差である。
サイクル制御装置60は、バッテリ80の冷却量が目標電池冷却量となるように冷却用膨張弁14cを制御する。具体的には、熱媒体冷却量QWLがバッテリ80の発熱量QBよりも大きい場合、第2仮増減量ΔEVB2の開度を小さく絞り、熱媒体冷却量QWLがバッテリ80の発熱量QBよりも小さい場合、第2仮増減量ΔEVB2の開度を大きく開く。
すなわち、本実施形態では、熱媒体冷却量QWLをバッテリ80の冷却量とみなし、バッテリ80の発熱量QBを目標電池冷却量とする。
本実施形態では、サイクル制御装置60は、チラー19における熱媒体の流量GWLと、チラー19における熱媒体の温度変化量ΔTWLとに基づいてチラー19における熱媒体の冷却量である熱媒体冷却量QWLを算出し、熱媒体冷却量QWLに基づいて冷却用膨張弁14cを制御する。
これによると、チラー19における熱媒体の温度変化量ΔTWLに基づいて冷却用膨張弁14cを制御するので、構成および制御を簡素化できる。
(第4実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図10に示すように、低温側熱媒体回路50を廃止した例を説明する。なお、図10では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。
より具体的には、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷却用膨張弁14cの出口に、冷却用熱交換部52aの入口側が接続されている。冷却用熱交換部52aは、冷媒通路を流通する冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによってバッテリ80を冷却する、いわゆる直冷式の冷却器である。従って、本実施形態では、冷却用熱交換部52aによって、冷却部が構成されている。
冷却用熱交換部52aでは、バッテリ80の全域を均等に冷却できるように、互いに並列的に接続された複数の冷媒流路を有するものが採用されていることが望ましい。冷却用熱交換部52aの出口には、第6三方継手13fの他方の流入口側が接続されている。
また、本実施形態のサイクル制御装置60の入力側には、冷却用熱交換部入口温度センサ64gが接続されている。冷却用熱交換部入口温度センサ64gは、冷却用熱交換部52の冷媒通路へ流入する冷媒の温度を検出する冷却用熱交換部入口温度検出部である。
さらに、本実施形態の第5冷媒温度センサ64eは、冷却用熱交換部52の冷媒通路から流出した冷媒の温度T5を検出する。本実施形態の第2冷媒圧力センサ65bは、冷却用熱交換部52aの冷媒通路から流出した冷媒の圧力P2を検出する。
その他の冷凍サイクル装置10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。これによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、本実施形態の冷凍サイクル装置10においても、バッテリ80の温度を適切に調整しつつ、空気の温度を幅広い範囲で連続的に調整することができる。
(第5実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図11に示すように、低温側熱媒体回路50を廃止して、電池用蒸発器55、電池用送風機56、バッテリケース57を追加した例を説明する。
より具体的には、電池用蒸発器55は、冷却用膨張弁14cにて減圧された冷媒と電池用送風機56から送風された冷却用空気とを熱交換させて冷媒を蒸発させ、冷媒に吸熱作用を発揮させることによって冷却用空気を冷却する冷却用熱交換器である。電池用蒸発器55の冷媒出口には、第6三方継手13fの一方の流入口側が接続されている。
電池用送風機56は、電池用蒸発器55にて冷却された冷却用空気をバッテリ80へ向けて送風するものである。電池用送風機56は、サイクル制御装置60から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される電動送風機である。
バッテリケース57は、内部に電池用蒸発器55、電池用送風機56およびバッテリ80を収容するとともに、電池用送風機56から送風された冷却用空気をバッテリ80へ導く空気通路を形成するものである。この空気通路は、バッテリ80に吹き付けられた冷却用空気を電池用送風機56の吸い込み側へ導く循環通路となっていてもよい。
従って、本実施形態では、電池用送風機56が、電池用蒸発器55にて冷却された冷却用空気を、バッテリ80に吹き付けることによって、バッテリ80が冷却される。つまり、本実施形態では、電池用蒸発器55、電池用送風機56、バッテリケース57によって冷却部が構成されている。
また、本実施形態のサイクル制御装置60の入力側には、電池用蒸発器温度センサ64hが接続されている。電池用蒸発器温度センサ64hは、電池用蒸発器温度T7(すなわち、電池用蒸発器55における冷媒蒸発温度)を検出する電池用蒸発器温度検出部である。本実施形態の電池用蒸発器温度センサ64hでは、具体的に、電池用蒸発器55の熱交換フィン温度を検出している。
また、本実施形態のサイクル制御装置60では、運転モードによらず、予め定めた各運転モード毎の基準送風能力を発揮するように、電池用送風機56の作動を制御する。
その他の冷凍サイクル装置10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。これによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第6実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図12に示すように、高温側熱媒体回路40を廃止して、室内凝縮器12aを採用した例を説明する。
より具体的には、室内凝縮器12aは、圧縮機11から吐出された高温高圧冷媒と空気とを熱交換させて、冷媒を凝縮させるとともに空気を加熱する加熱部である。室内凝縮器12aは、第1実施形態で説明したヒータコア42と同様に室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。
その他の冷凍サイクル装置10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。これによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。例えば、第2、第3実施形態で説明した冷凍サイクル装置10の加熱部として、第4実施形態で説明した室内凝縮器12aを採用してもよい。
(a)上述の実施形態では、複数の運転モードに切り替え可能な冷凍サイクル装置10について説明したが、冷凍サイクル装置10の運転モードの切り替えはこれに限定されない。少なくとも(5)冷房冷却モードを実行可能であればよい。
また、上述の実施形態では、高温側冷却基準温度β2が除湿用基準温度β1よりも高い値に決定される例を説明したが、高温側冷却基準温度β2と除湿用基準温度β1が同等となっていてもよい。さらに、低温側冷却基準温度α2が冷房用基準温度α1よりも高い値に決定される例を説明したが、低温側冷却基準温度α2と冷房用基準温度α1が同等となっていてもよい。
また、各運転モードの詳細制御は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。例えば、ステップS260で説明した送風モードを、圧縮機11のみならず送風機32を停止させる停止モードとしてもよい。
(b)冷凍サイクル装置の構成機器は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。上述した効果を発揮できるように、複数のサイクル構成機器を一体化等を行ってもよい。例えば、第2三方継手13bと第5三方継手13eとを一体化させた四方継手構造のものを採用してもよい。また、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cとして、全閉機能を有しない電気式膨張弁と開閉弁とを直接的に接続したものを採用してもよい。
また、上述の実施形態では、冷媒としてR1234yfを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R134a、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、等を採用してもよい。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。さらに、冷媒として二酸化炭素を採用して、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成してもよい。
(c)加熱部の構成は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。例えば、第1実施形態で説明した高温側熱媒体回路40に対して、低温側熱媒体回路50の三方弁53および低温側ラジエータ54と同様の三方弁および高温側ラジエータを追加し、余剰の熱を外気に放熱させるようにしてもよい。さらに、ハイブリッド車両のように内燃機関(エンジン)を備える車両では、高温側熱媒体回路40にエンジン冷却水を循環させるようにしてもよい。
(d)冷却部の構成は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。例えば、冷却部として、第1実施形態で説明した低温側熱媒体回路50のチラー19を凝縮部とし、冷却用熱交換部52を蒸発部として機能させるサーモサイフォンを採用してもよい。これによれば、低温側熱媒体ポンプ51を廃止することができる。
サーモサイフォンは、冷媒を蒸発させる蒸発部と冷媒を凝縮させる凝縮部とを有し、蒸発部と凝縮部とを閉ループ状に(すなわち、環状に)接続することによって構成されている。そして、蒸発部における冷媒の温度と凝縮部における冷媒の温度との温度差によって回路内の冷媒に比重差を生じさせ、重力の作用によって冷媒を自然循環させて、冷媒とともに熱を輸送する熱輸送回路である。
また、上述の実施形態では、冷却部にて冷却される冷却対象物がバッテリ80である例を説明したが、冷却対象物はこれに限定されない。直流電流と交流電流とを変換するインバータ、バッテリ80に電力を充電する充電器、電力を供給されることによって走行用の駆動力を出力するとともに、減速時等には回生電力を発生させるモータジェネレータのように作動時に発熱を伴う電気機器であってもよい。
(e)上述の各実施形態では、本発明に係る冷凍サイクル装置10を車両用空調装置1に適用したが、冷凍サイクル装置10の適用はこれに限定されない。例えば、据置型バッテリの温度を適切に調整しつつ、室内の空調を行うバッテリ冷却機能付きの空調装置等に適用してもよい。